本発明の実施の形態に係る地図生成システムは、ダンプトラックおよび油圧ショベルを含む複数の作業機械の移動と作業が可能な程度に面的広がりを有する所定の閉領域であるアプローチエリア(例えば、放土場や積込場など)の境界線を地図データとして生成するものを対象としている。当該地図作成システムにより作成された境界線は、自律走行車両であるダンプトラック(自律走行ダンプ)の目標軌道の生成が可能なエリアを特定するためのものであり、アプローチエリア内での自律走行ダンプの走行は当該境界線内に適宜生成される目標軌道に基づいて行われる。
アプローチエリア内には、自律走行ダンプが放土を行う放土ポイントや、自律走行ダンプが積込機(油圧ショベルなど)から土砂や鉱物の積込みを行う積込ポイントが設定され、これらのポイントは自律走行ダンプの目的地として設定されることがある。また、アプローチエリアには、他のアプローチエリア等に繋がる道路である搬送路が接続されており、自律走行ダンプは当該搬送路上に設定される目標軌道に沿って自律走行することも可能である。
本実施の形態におけるアプローチエリア内の自律走行ダンプの目標軌道は、「搬送路とアプローチエリアの接続部」と「放土ポイントまたは積込ポイント」とを接続する線で定義される。アプローチエリア内の目標軌道を生成する際には、アプローチエリアの外周の境界線(輪郭)や、アプローチエリア内に配置された建物、鉄塔などへの接触防止のためにアプローチエリアの内部に設けられた境界線に交差しないように目標軌道を計算し、これらと自律走行ダンプの接触を避ける。
しかし、このアプローチエリアの外周および内部の境界線に沿ってGPS受信機を搭載した航測車を走行させ、その走行中の走行軌跡をGPSにより取得する際に、マルチパスや電波伝搬時の遅延などによりGPS測位誤差が発生すると、実際の走行軌跡とGPSによる走行軌跡の間にズレが発生する。そのため、GPSによる走行軌跡から得た地図データに基づいて目標軌道を作成すると、当該目標軌道が切羽、建物および鉄塔などの障害物と交差してしまい、自律走行ダンプが障害物に衝突するおそれがある。
そこで、本発明の実施の形態の地図生成システムでは、GPSによる航測車の走行軌跡を得た際の測位誤差を考慮して当該走行軌跡を補正したものを地図データとすることで、測位誤差に起因した自律走行ダンプと障害物の衝突防止を図った。本発明の実施の形態に係る地図作成システムに含まれる主な特徴は次のようになる。
(1)本発明の実施の形態に係る地図作成システムは、或る領域(例えば、後述のアプローチエリア120)の境界上を移動体(例えば、後述の航測車210)に移動させ、当該移動中に衛星測位システムにより測位した複数の位置により描かれる当該移動体の移動軌跡を前記領域の境界線を示す地図データとして記憶する地図生成システムにおいて、前記複数の位置のそれぞれについての測位精度を計算する測位精度計算部と、当該測位精度計算部で計算された各測位精度に基づいて前記複数の位置のそれぞれについて補正量を算出する補正量計算部と、当該補正量計算部により計算された補正量の分だけ前記複数の位置をそれぞれ移動し、その移動後の移動軌跡を前記領域の境界線(例えば、後述の境界線430,450(図4参照))とする境界線生成部とを備えることを特徴とする。
このように前記補正量計算部により計算された補正量(マージン)の分だけ前記移動体の前記移動軌跡に係る各測位位置を移動すると、前記移動体が測位に利用した航法衛星の配置に起因する測位誤差により障害物(切り羽、鉄塔、建物、土砂の山など)の向こう側に前記境界線が設定されることが防止できるので、前記領域中を自律走行する自律走行体(例えば、自律走行ダンプなど)の目標軌道上に障害物が位置することが回避され、当該自律走行体が障害物と衝突することを防止できる。
なお、前記或る領域の境界線の生成に利用される前記移動体の例としては、GPS受信機を備え、GPS(衛星測位システム)により自車位置を測位する航測車がある。また、前記測位精度計算部により計算される測位精度としてはDOP値(Dilution of Precision)が利用できる。DOP値は測位に利用した各航法衛星と前記移動体の相対位置に基づいて決定できる。例えば、測位に利用した複数の航法衛星の配置が移動体に対して均等であればDOP値は小さくなりGPS精度は高精度となり、逆に当該航法衛星の配置に偏りがあればDOP値が大きくなり低精度となる。これにより、前記補正量計算部によって算出される補正量は、DOP値が小さいほど(高精度のときほど)小さく算出され、DOP値が大きいほど(低精度のときほど)大きく算出される。
(2)上記(1)において、前記境界線生成部は、前記複数の位置を前記補正量に応じて移動するに際し、当該複数の位置を前記領域の内側に移動することが好ましい。
ここにおける「前記領域の内側」とは、例えば「前記領域の面積を縮小する方向」と換言できる。また、「前記領域の内側」とは、「前記領域の境界を規定する障害物から当該領域内で遠ざかる方向」とも換言できる。この「障害物」としては、例えば、当該領域の外周の境界(輪郭)を規定する切羽および崖等や、当該領域の内部に飛び地的に形成される閉領域であって当該領域から除外すべきものの境界を規定する鉄塔、建物および土砂等が該当する。
上記のように前記複数の位置を前記補正量に応じて前記領域の内側に移動すると、前記領域中を自律走行する自律走行ダンプなどの自律走行体が障害物と衝突することをさらに確実に回避できる。
(3)上記(2)において、前記領域に含まれる一部の閉領域を特別領域として設定する特別領域設定部をさらに備え、前記境界線生成部は、前記複数の位置を前記補正量に応じて移動するに際し、前記複数の位置のうち前記特別領域に含まれるものの移動量を前記補正量よりも低減して前記領域の境界線を生成することが好ましい。
移動体(例えば、航測車)の移動軌跡の取得時に発生した測位誤差を吸収するために、上記(1)または(2)に基づいて当該移動軌跡に係る測位位置を補正量に応じて機械的に移動させると、自律走行体の目的地(例えば、自律走行ダンプの放土ポイントや積込ポイント)の手前に境界線が生成され、当該目的地への当該自律走行体の進入が不可能になるおそれがある。具体的には、油圧ショベルによる自律走行ダンプへの積込作業が前記領域内の境界線付近で行われている場合に、当該境界線の近傍での測位精度が低く、積込ポイントが補正後の境界線の外側に位置することになったときには、当該積込ポイントに自律走行ダンプを停止させることが不可能になる。
これに対して、自律走行体の目的地(例えば、油圧ショベルからの積込ポイント)を含む所定の領域を上記のように特別領域として設定し、前記移動軌跡のうち当該特別領域に含まれる測位位置の移動量(補正量)を低減またはゼロにすれば、測位誤差に基づく補正処理が自律走行体の目的地への移動(放土ポイントや積込ポイントへのアプローチ)を阻害することを回避できる。
(4)また、上記(3)では、前記領域内に配置された作業機械の位置を取得する位置取得部をさらに備え、前記特別領域設定部は、前記作業機械の位置を基準とした所定の範囲を前記特別領域として設定することが好ましい。
例えば、前記位置取得部として、GPS受信機を介して取得したGPS衛星信号に基づいて位置を取得する構成を前記作業機械(例えば、油圧ショベル)に搭載した場合、GPSにより取得した当該作業機械の位置を基準として予め設定しておいた所定の領域を前記特別領域として設定すれば、前記作業機械が作業の進捗に合わせて移動しても、当該作業機械の移動後の位置に合わせて自動的に前記特別領域が設定されるので、当該作業機械の移動が自律走行体(例えば、自律走行ダンプ)の作業を阻害することがなくなる。
(5)上記(2)は、前記測位精度計算部で計算された測位精度において、前記移動体の進行方向の誤差と当該進行方向に垂直方向の誤差とが設定値以上の場合、前記移動軌跡の再取得を促す再取得指示部をさらに備えることが好ましい。
このように移動軌跡の再取得を促せば、著しい誤差が含まれた測位位置に基づいて境界線が作成されることが回避できるので、境界線生成部によって生成される前記領域の境界線の精度をある程度担保できる。なお、再取得指示部の具体例としては、移動軌跡を再取得する旨を表示装置上に表示して報知するものや、音声アラームを介してその旨をオペレータに報知するものがある。
(6)上記(2)は、前記境界線生成部によって生成された前記境界線が表示される表示部をさらに備えることが好ましい。
このように表示部(例えば、移動体(航測車)に搭載された表示装置)に境界線を表示すれば、当該移動体の移動軌跡により描かれた境界線を当該移動体のオペレータが目視で確認できるので、実際の移動軌跡から大きく外れた境界線が表示された場合には、オペレータによる自発的な移動軌跡の再度取得が促され、結果的に境界線が現実の境界と乖離することが防止できる。
以下、本発明の実施の形態について図面を用いて具体的に説明する。はじめに、本発明の実施の形態におけるアプローチエリアについて図1を用いて説明する。
図1に示したアプローチエリア120は搬送路110とつながっており、自律走行ダンプ150は搬送路110を通じてアプローチエリア120への進入・退出を行う。本実施の形態のアプローチエリア120には、自律走行ダンプ150に対して鉱物や土砂の積込を行う積込機(油圧ショベル)165と、自律走行ダンプ150が衝突を回避しなければならない障害物125,140が存在する。この障害物としては、アプローチエリア120の輪郭を形成する切羽および崖などの外側障害物125と、アプローチエリア120内に存在する無線中継器、建物または土砂山等の内側障害物140が存在する。
なお、図1の例では、外側障害物125として切羽が示され、内側障害物140として無線中継器(鉄塔)が示されているが、これらはあくまで例示に過ぎず、自律走行ダンプ150が衝突を回避すべき障害物であれば他のものでも良い。また、図1中には積込機165と自律走行ダンプ150を1台ずつしか示していないが、両者の台数は1台だけに限られない。
本実施の形態に係る地図生成システムでは、複数の航法衛星(例えばGPS衛星)から送信される航法信号が受信可能な受信機(例えばGPS受信機)を自動車等の移動体に搭載し、当該受信機で受信した複数の航法信号に基づいて当該移動体の位置を計測する衛星測位システムを利用してアプローチエリア120に係る地図を生成する。具体的には、前記受信機を搭載した移動体(例えば航測車)を障害物125,140の周囲に沿って移動させて閉じた図形を描き、その移動中に測位した当該移動体の移動軌跡をアプローチエリア120の地図データとして記憶する。移動軌跡の取得は障害物ごとに行い、アプローチエリア120内に複数の障害物が存在する場合には、一群の障害物とみなせる場合を除いて、原則、全ての障害物について移動軌跡の取得が完了するまで作業を繰り返すことになる。移動軌跡は、時系列で隣り合う測位点同士を直線または曲線で接続することで描くことができる。
航測車210,230(図2参照)を外側障害物125に沿って移動させた場合に取得される移動軌跡は、アプローチエリア120の外形を規定する図形となる。図1には航測車210,230を外側障害物125に沿って走行させた際の実際の走行軌跡(外側走行軌跡)130(衛星測位システムによる走行軌跡ではない)が描かれている。一方、航測車210,230を内側障害物140に沿って移動させた場合に取得される移動軌跡は、外側走行軌跡130の内部に位置する図形であって、外側走行軌跡130で規定される領域から除外する領域を規定する図形となる。図1には航測車210,230を内側障害物140の外周に沿って走行させた際の実際の走行軌跡(内側走行軌跡)145が描かれている。
アプローチエリア120内における自律走行ダンプ150の目標軌道170は、外側走行軌跡130の内部かつ内側走行軌跡145の外部に位置する領域(すなわち、外側走行軌跡130で囲まれる領域から内側走行軌跡145で囲まれる領域を除外した領域)に生成することが理想的である。すなわち図1の例では、外側走行軌跡130で囲まれる領域から内側走行軌跡145で囲まれる領域を除いたドーナツ状の領域の内部に目標軌道170を生成することが理想的である。目標軌道170を生成を当該ドーナツ状の領域の内部に限定できれば、外側走行軌跡130により外側障害物125と自律走行ダンプの衝突を防止でき、内側走行軌跡145により内側障害物140と自律走行ダンプの衝突を防止できる。
しかし、障害物125,140に沿って航測車210,230を走行させても、GPS衛星の配置、電離層、大気層変化による電波遅延の影響、マルチパスなどの影響により測位誤差が発生し、GPSを介して取得された走行軌跡が外側走行軌跡130と内側走行軌跡145からズレてしまうことがある。
次に、本発明の実施の形態におけるアプローチエリア120に係る上記2種の障害物125,140に沿って航測車を走行させた場合に測位誤差が発生し、衛星測位システムにより得られた走行軌跡が実際の走行軌跡130,145とズレてしまった場合について、図2を用いて説明する。なお、先の図と同じ部分には同じ符号を付して説明を省略することがある(後の図についても同様とする)。
図2では、アプローチエリア120の地図生成に際して、GPS受信機を搭載した航測車210,230に障害物125,140に沿って走行させ、当該走行中にGPSにより測位した走行軌跡から地図データ(境界線)を生成する。図2の例では、航測車210が外側走行軌跡130を走行したときGPSによる走行軌跡(以下、「測位軌跡」と称することがある)225が収集され、航測車230が内側走行軌跡145を走行したときGPSによる走行軌跡(測位軌跡)245が収集されている。なお、図2の例では、2台の航測車210,230を別々の障害物125,140に沿って走行させて測位軌跡225,245を取得しているが、同一の航測車を複数の障害物125,140に沿って走行させて測位軌跡を取得しても良い。
GPSを用いて測位を行う場合には、GPS衛星の配置、電離層、大気層変化による電波遅延の影響、マルチパスなどの影響により測位誤差が発生する。そのため、GPS誤差により走行軌跡で取得した位置にズレが生じるため、切羽(外側障害物)125に沿って走行軌跡130を描いても、GPS測位結果によりプロットされる測位軌跡225が実際の走行軌跡130とズレてしまったり、無線中継器(内側障害物)140の外周に沿って走行軌跡145を描いても、GPS測位結果によりプロットされる測位軌跡245が実際の走行軌跡145とズレてしまったりする。これにより、測位軌跡225,245をアプローチエリア120の境界線とし、測位軌跡225の内側かつ測位軌跡245の外側の領域に対して、図2に示すように中継器140および切り羽125に交差する目標軌跡170Aが生成されると、自律走行ダンプ150が切羽125に衝突したり、無線中継器140に衝突したりするおそれがある。
図3は、GPS受信機を同一場所に設置した際のGPS測位結果の一例を示す図である。GPSによる測位では、GPS衛星からの受信機までの電波(航測信号)の伝搬時間から距離を算出し位置を求めるが、GPS衛星の配置、電離層、大気層変化による電波遅延の影響、マルチパスなどの影響により自車位置に分布が発生する。
図3に示した分布結果300では、自車(航測車)330の進行方向(車長方向)に設けた軸310と、当該軸310に対して垂直な横方向(車幅方向)に設けた軸320に対して、GPSの緯度、経度の測位出力をプロットしている。このときの確率分布から自車330の存在範囲340を求める。この存在範囲340を用いて、進行方向に対する誤差または横方向に対する誤差を算出する。本実施の形態におけるダンプトラックと障害物の衝突の有無は横方向の誤差の大きさに依存するので、航測車の走行軌跡により障害物と衝突しないアプローチエリアの境界線を生成するためには横方向の誤差が必要となる。この進行方向に対する誤差および横方向に対する誤差は、GPSによる航測車330の測位とともに算出可能であり、公知の方法としては例えばDOP値で表すことができる。
次に、後述するシステム構成を備えた本実施の形態に係る地図生成システムにより実現される、GPS測位誤差を考慮したアプローチエリアの境界線の生成について図4を用いて説明する。図4は、航測車に搭載したGPS受信機による測位軌跡410および測位軌跡440を補正する一例の説明図である。
切羽125に沿って図2の線130上を航測車に走行させ、その間のGPS測位結果により描かれた測位軌跡410は、GPS測位時に発生した航測車の進行方向に対して垂直方向(航測車の横方向)の誤差を含んでいる。この航測車の横方向の誤差を考慮し、例えば、横方向の誤差2.0mを含む地点415では2.0m分アプローチエリア120の内側に、横方向の誤差2.5mを含む地点420では2.5m分内側に、横方向の誤差1.8mを含む地点425では1.8m分内側に測位点を移動させ、誤差を考慮した境界線430を生成する。また、鉄塔140の周囲を図2の線145上を航測車が走行した間にGPSにより描かれた測位軌跡440が2.5mの誤差を含んでいる場合には、測位軌跡からアプローチエリア120の内側に向かって測位点を2.5m移動させ、これにより測位軌跡440の外側2.5mに誤差を考慮した境界線450を生成する。
なお、上記のように測位誤差を考慮した境界線430,450を生成する際には、測位誤差の補正を完了した測位点の点列に対してスプライン曲線など補間処理を行って曲線状の境界線を生成しても良い。また、図4の例では測位誤差量に応じて測位軌跡を補正したが、誤差が発生した部分をすべて同じ値(例えば3.0m)だけ内側に移動して測位軌跡を補正して境界線を生成してもよい。また、図4の例では誤差と同じ分だけ測位点を移動させたが、測位点の移動量は誤差より大きくしても良いし、小さくしても良い。例えば、誤差よりも移動量を大きくすれば、他の場合よりも障害物とダンプトラックの衝突確率を低減できる。
図5は、図4に示したように測位軌跡410,440を補正して境界線(地図データ)430,450を生成した後に、自律走行ダンプ150の目標軌道を生成する際の一例の説明図である。図5のアプローチエリア120には、航測車の測位軌跡410に対して、航測中のGPS測位誤差分をアプローチエリア120の内側に移動して補正した境界線(外側境界線)430が存在する。また、測位軌跡440に対して、航測中のGPS測位誤差分をアプローチエリア120の内側に移動して補正した境界線(内側境界線)450が存在する。
このとき、アプローチエリア120内の自律走行ダンプ150の目標軌道550は、外側境界線430の内側かつ内側境界線450の外側に入るように生成される。これにより、GPS測位誤差による自律走行ダンプ150の障害物125,140への衝突を抑制することができる。
なお、目標軌道550の生成アルゴリズムとしては、例えば、搬送路からアプローチエリア120内に進入したダンプトラックの位置から目標地点である積込機165までの最短ルートを目標軌道として設定し、目的地到達後に積込機165による積込作業の完了が確認できたら、当該位置から搬送路までの最短ルートを目標軌道として設定するものがある。このようにアプローチエリア120内での作業の前後で別々に目標軌道を設定しても良いし、作業の前後に亘る目標軌道を一括で設定しても良い。
次に、後述するシステム構成を備えた本実施の形態に係る地図生成システムにより実現される、アプローチエリア内に配置された作業機械の近傍における境界線の補正の一例について図6を用いて説明する。図6は、アプローチエリア120内の積込機165の配置位置付近における境界線補正の一例についての説明図である。
積込機165が切羽125の付近で作業を行っている場合、GPS誤差分だけ測位軌跡をアプローチエリア120の内側に移動して境界線を生成すると、誤差の大きさによっては積込機165が境界線の外側に存在して、自律走行ダンプ150が積込機165に近づくことができない状況が発生するおそれがある。そこで、図6の例では積込機165の位置を基準とした所定の閉領域を特別領域600として設定し、測位軌跡410,440に係る測位点のうち特別領域600内に含まれるものについては図4に示したGPS測位誤差による補正を行わず、特別領域600に含まれない測位点についてのみGPS測位誤差による補正を行うようにした。図6の例では、特別領域600は測位軌跡410に対して設定されており、測位軌跡410に係る測位点のうち特別領域600内に含まれるものは補正を行わずそのままの位置とし、特別領域600に含まれない測位点については図5に示したように測位誤差分だけアプローチエリア120の内側に移動し、両者を接続することで境界線620を生成する。
こうすることで、図5に示した自律走行ダンプ150の目標軌道550よりも切羽125に接近可能な目標軌道550Aを生成することができ、積込機165が切羽125の近傍で作業をする場合でも近づくことが可能となる。なお、この場合には、境界線620付近に存在する切羽125との接触を防止するために、自律走行ダンプ150に外界認識センサを搭載することが好ましい。
なお、特別領域600の設定基準の一例としては、積込機165の作業半径および移動範囲があり、これらの値を考慮して決定した積込機165の作業領域を特別領域600として設定しても良い。また、積込機165の位置と作業半径から特別領域600を設定し、積込機165の位置に応じて特別領域600が変化するようにしても良い。
次に、図5および図6に示した機能を発揮する本発明の実施の形態に係る地図生成システムのシステム構成について説明する。図7は、本発明の実施の形態に係る地図生成システムの一例の構成図であり、図8は本発明の実施の形態に係る航測車210の一例の概略構成図であり、図9は本発明の実施の形態に係る管制センタ900の一例の概略構成図であり、図10は本発明の実施の形態に係る積込機165の一例の概略構成図である。
図7に示した地図生成システムは、航測車210,230に搭載される車載地図航測システム700と、管制センタ900(図9参照)内に構築される地図編集システム740と、積込機165に搭載される積込機端末システム790とを備えている。なお、航測車210および航測車230は同じ構成を備えるので、以下では簡略して航測車210についてのみ説明する。
図8に示した航測車210には、コンピュータから成る車載地図航測システム700を車室内に装備している。車載地図航測システム700には、GPS測位を行うために航測車210に装備されたGPSアンテナ805と、地図編集システム740と無線通信を行うために航測車210に装備された無線LANアンテナ810が接続されている。
図7において、車載地図航測システム700は、GPSアンテナ805(図8参照)等のGPS受信機を介して受信した航測信号が入力され、GPSおよびIMU(Inertial Measurement Unit:慣性計測装置)を使って自車位置を測位する航測車側自車位置測位部703と、航測車210に搭乗したオペレータに情報提示を行う航測車側表示部(例えば、液晶モニタ等の表示装置)709と、航測車210に乗車したオペレータからの作業指示を受け付ける航測車側入力部(例えば、搭乗中の操作が容易なタッチパネル)712と、航測車側自車位置測位部703で取得した自車位置の時系列情報である走行軌跡(測位軌跡)を蓄積する航測車側走行軌跡DB715と、航測車側自車位置測位部703で測位した結果からGPS測位誤差(測位精度)を計算する測位誤差計算部(測位精度計算部)724と、測位誤差計算部724で計算したGPS測位誤差を蓄積する航測車側測位誤差DB721と、無線LANアンテナ810(図8参照)等の無線通信装置を介して地図編集システム740などと通信を行う航測車側通信部727と、測位誤差計算部724で計算されたGPS測位誤差が設定値を超えた場合にオペレータに走行軌跡(測位軌跡)の再取得指示を行う走行軌跡再取得指示部730と、車載地図航測システム700全体の処理を制御する航測車側制御部706とを備えている。
航測車側自車位置測位部703は、GPSのみでも自車位置の測位が可能であるが、IMUを利用すると測位の精度を向上させることができる。測位誤差計算部724で計算されるGPS測位誤差(測位精度)はDOP値から求めることができる。
図9に示した管制センタ900内には、コンピュータから成る地図編集システム740が設置されている。地図編集システム740には、オペレータ910(図9参照)からの作業指示を受け付けるためのマウスおよびキーボード等の入力装置(センタ側入力部)752と、表示画面920上に画像を表示してオペレータ910への情報提示を行うモニタ等の表示装置(センタ側表示部)755が接続されている。
図7において、地図編集システム740は、オペレータ910(図9参照)からの作業指示を受け付けるためのセンタ側入力部(例えば、マウスおよびキーボード等の入力装置)752と、地図編集システム740を操作するオペレータ910に情報提示を行うセンタ側表示部(モニタ等の表示装置)755と、無線通信装置を介して車載地図航測システム700や積込機端末システム790と無線通信を行うセンタ側通信部758と、車載地図航測システム700で取得された走行軌跡が蓄積されるセンタ側走行軌跡DB764と、車載地図航測システム700で計算された測位誤差が蓄積されるセンタ側測位誤差DB771と、積込機165の位置に基づき測位誤差による補正を行わない領域(特別領域)を設定する特別領域設定部777と、測位誤差に基づき境界線の補正量(マージン)を計算する補正量計算部746と、補正量計算部746による補正量および特別領域設定部777による特別領域に基づいて自律走行ダンプの目標軌道の生成が可能な領域の境界線を生成する境界線生成部743と、境界線生成部743で生成された境界線を蓄積するセンタ側地図DB761と、積込機側自車位置測位部792で計算された積込機165の位置を取得する積込機位置取得部774と、地図編集システム740全体の処理を制御するセンタ側制御部749とを備えている。
図10に示した積込機165は、コンピュータから成る積込機端末システム790をコックピット1010内に装備している。積込機端末システム790には、GPS測位を行うため積込機165に装備されたGPSアンテナ1020と、地図編集システム740等と無線通信を行うために積込機165に装備された無線LANアンテナ1030が接続されている。
図7において、積込機端末システム790は、GPSアンテナ1020(図10参照)等のGPS受信機を介して受信した航測信号に基づいて自車位置を測位する積込機側自車位置測位部(位置取得部)792と、無線LANアンテナ1030(図10参照)等の無線通信装置を介して地図編集システム740などとデータ(例えば、積込機側自車位置測位部792で測位された自車位置)の通信を行う積込機側通信部794とを備えている。
なお、上記では、車載地図航測システム700、地図編集システム740および積込機端末システム790の主に機能的構成について説明したが、上記の車載地図航測システム700、地図編集システム740および積込機端末システム790は、ハードウェア的構成として、各種プログラムを実行するための演算手段としての演算処理装置(例えば、CPU)と、当該プログラムをはじめ各種データを記憶するための記憶手段としての記憶装置(例えば、ROM、RAMおよびフラッシュメモリ等の半導体メモリや、ハードディスクドライブ等の磁気記憶装置)と、各装置のデータ及び指示等の入出力制御を行うための入出力演算処理装置を備えている。各システム800,740,790における演算処理装置は、図7に示した各部のうち演算処理が必要なものに係る演算処理を実行し、各システム800,740,790におけるデータベース(DB)は前記記憶装置内に構成されている。
次に、本発明の実施の形態における地図生成の処理フローについて図を用いて説明する。はじめに図11を用いて車載地図航測システム700における地図生成処理フローについて説明する。
図11は地図生成に関する車載地図航測システム700における処理フローの一例である。図11において、ステップ1100では、はじめに、車載地図航測システム700において、航測車に搭乗したオペレータからの処理スタート要求の受付や、車載地図航測システム700の起動状態を確認する初期設定処理を行う。ここでオペレータからの処理スタート要求は航測車側入力部712を介して行われる。本実施の形態では、処理スタート要求の際には、図12のような地図航測画面2000が航測車側表示部709に表示され、オペレータが地図航測画面2000に表示された開始ボタン2015を航測車側入力部712を介して押下することで処理スタート要求が行われる。
ステップ1105では、航測車側自車位置測位部703において、当該時刻における航測車210の位置をGPSやIMUを利用して測位する。
ステップ1110では、測位誤差計算部724において、ステップ1105で測位した位置について、図3で説明した自車位置の進行方向に対する誤差および横方向に対する誤差を算出する。
ステップ1115では、航測車側自車位置測位部703で取得した自車位置が航測車側走行軌跡DB715に蓄積される。これにより自車位置の時系列情報である走行軌跡が航測車側走行軌跡DB715に蓄積されていく。
ステップ1120では、ステップ1110で算出した自車位置の進行方向に対する誤差あるいは横方向に対する誤差が航測車側測位誤差DB721に蓄積される。
ここで、航測車側走行軌跡DB715が管理する走行軌跡テーブルと、航測車側測位誤差DB721が管理する測位誤差テーブルについて、図を用いて説明する。
図13は航測車側走行軌跡DB715によって管理される走行軌跡テーブル2300の一例を示す図である。この図に示す走行軌跡テーブルは、自車位置を測位した日時が格納される第1列2310と、第1列2310の日時に係る自車位置の緯度(北緯)が格納される第2列2320、第1列2310の日時に係る自車位置の経度(東経)が格納される第3列2330を備えている。図13に示した例では、1秒ごとに航測車210の測位されており、1秒ごとの緯度と経度が格納されている。図示した例に限定されず、自車位置情報として南緯および西経を格納しても良い。
図14は航測車側測位誤差DB721によって管理される測位誤差テーブル2400の一例を示す図である。この図の測位誤差テーブル2400は、自車位置を測位した日時が格納される第1列2410と、第1列2410の日時に係る自車位置の進行方向に対する測位誤差を示す誤差半径(進行方向)が格納される第2列2420と、第1列2410の日時に係る自車位置の進行方向に垂直な方向の測位誤差を示す誤差半径(横方向)が格納される第3列2430を備えている。
図13の走行軌跡テーブル2300で管理される走行軌跡と、図14の測位誤差テーブル2400で管理される測位誤差は、それぞれの第1列である測位日時をキーとして用いることで、測位した自車位置とそのときの測位誤差をリンクさせることができる。
図11に戻り、ステップ1125では、GPSによる航測車210のこれまでの走行軌跡をオペレータに提示するために、図12に示した地図航測画面2000が航測車側表示部709に表示される。この地図航測画面2000は、航測車側自車位置測位部703で測位した位置の時系列が走行軌跡(測位軌跡)として表示される走行軌跡表示ウィンドウ2005と、測位誤差計算部724で計算された現在地における自車位置の測位誤差(誤差半径)が表示される誤差情報表示ウィンドウ2010と、オペレータからの処理スタート要求を受け付ける開始ボタン2015と、オペレータからの処理終了要求を受け付ける終了ボタン2020とを備えている。走行軌跡表示ウィンドウ2005上において、航測車210の走行軌跡は点列で表されており、航測車210の現在値にはシンボルが表示されている。
ステップ1130では、ステップ1110で算出した横方向に対する誤差(図14の第3列2430に格納されるデータ)が設定値(例えば5m)を超えた場合に、測位誤差が大きいものと判断しステップ1135に進み、当該設定値を超えない場合には、測位誤差が小さいものと判断しステップ1140に進む。
ステップ1135では、走行軌跡再取得指示部730において、測位誤差が大きいため走行軌跡の再取得を促す旨(走行軌跡再取得指示)をオペレータに報知する。この際の報知の手段としては、文字、図形、記号などで走行軌跡の再取得を促す旨を航測車側表示部709に表示してもよいし、音声アラームとしてオペレータに報知してもよい。
ステップ1140では、航測車側制御部706において、オペレータからの航測処理終了の有無の判断を行い、オペレータから航測処理終了要求を受け付けた場合にはステップ1145に進み、オペレータから航測処理終了要求がない場合には、ステップ1105に戻る。ステップ1140のオペレータからの処理終了要求は航測車側入力部712を介して行われる。処理終了要求は、航測車側表示部709に表示されている地図航測画面2000(図12参照)上の終了ボタン2020をオペレータが押下することで行われる。
ステップ1145では、航測車側通信部727において、航測車側走行軌跡DB715に蓄積した走行軌跡と、航測車側測位誤差DB721に蓄積された自車位置の進行方向に対する誤差および横方向に対する誤差を地図編集システム740に送信する。ここで送信された自車位置の進行方向に対する誤差および横方向に対する誤差は、後述する地図編集システムのフローにおけるステップ1205で受信される。なお、図11および図15中の記号A1及び矢印は誤差情報の流れを示している。
そして最後に、ステップ1150において、車載地図航測システム700における地図生成の終了処理を行う。
次に図15を用いて地図編集システム740における地図生成処理フローを説明する。図15は地図生成に関する地図編集システム740における処理フローの一例である。
はじめにステップ1200では、地図編集システム740において、オペレータ910からのスタート要求の受付や、地図編集システム740の起動状態を確認する初期設定処理を行い、スタート要求と地図編集システム740の起動が確認できたら処理を開始する。
次にステップ1205において、車載地図航測システム700のフローに係るステップ1145で送信された航測車の走行軌跡と、その走行軌跡に関する自車位置の進行方向に対する誤差あるいは横方向に対する誤差をセンタ側通信部758において受信する。
ステップ1210では、ステップ1205で受信した航測車の走行軌跡をセンタ側走行軌跡DB764に蓄積し、ステップ1205で受信した走行軌跡に関する自車位置の進行方向に対する誤差あるいは横方向に対する誤差をセンタ側測位誤差DB771に蓄積する。
センタ側走行軌跡DB764で管理される走行軌跡は、航測車側走行軌跡DB715の走行軌跡テーブル2300(図13)と同じ構造で管理されており、ここでは説明は省略する。センタ側測位誤差DB771で管理される測位誤差についても、航測車側測位誤差DB721の測位誤差テーブル2400(図14)と同じ構造で管理されており、説明は省略する。
ステップ1215では、補正量計算部746は、図11に示した一連の処理を介してセンタ側走行軌跡DB764に蓄積された航測車210の走行軌跡(測位軌跡410,440(図4参照))に係る各測位点の補正量を、センタ側測位誤差DB771に蓄積された各測位点における横方向に対する誤差に基づいて算出する。
ステップ1220では、境界線生成部743は、ステップ1215で算出された補正量から各測位点の移動先の座標を計算し、各測位点を当該座標まで移動させる。そして、移動後の測位点の点列について、スプライン補間などのスムージング処理を行い境界線(境界線430,450(図4参照))を生成する。なお、各測位点の移動先の座標(補正後の座標)の計算に際して、境界線生成部743は、アプローチエリア120の外形を規定する測位軌跡410に含まれる測位点に対してはアプローチエリア120の内側方向に移動するように、一方、アプローチエリア120から除外される領域を規定する測位軌跡440に含まれる測位点に対しては内側障害物140の外側方向(アプローチエリア120の内側方向)に移動するように補正後の座標を計算する。
ステップ1225では、センタ側地図DB761において、ステップ1220で作成した境界線が蓄積される。そして、ステップ1230では、地図編集システム740における地図生成の終了処理を行う。
以上により、アプローチエリア120内での航測誤差による自律走行ダンプ150の衝突事故を防止するための境界線を生成することができる。
ところで、上記のように境界線が生成されたアプローチエリア120内に積込機165等の作業機械が存在し、その位置に応じて特別領域600(図6参照)を設定して、上記フローにより生成した境界線をさらに補正する必要がある。そこで、次に、積込機165の位置に基づく境界線の補正処理について図面を用いて説明する。当該補正処理に関連する処理は積込機端末システム790と地図編集システム740で行われるが、はじめに積込機端末システム790における処理フローについて図16を用いて説明する。
図16は積込機165の位置に基づく境界線補正に関する積込機端末システム790における処理フローの一例である。ステップ1300では、積込機端末システム790において、オペレータからのスタート要求の受付や、積込機端末システム790の起動状態を確認する初期設定処理を行い、スタート要求と積込機端末システム790の起動が確認できたら処理を開始する。
ステップ1305では、積込機側自車位置測位部792において、積込機165の自車位置をGPSにより測位する。ステップ1310では、積込機側通信部794において、ステップ1305で測位された積込機165の位置を地図編集システム740に送信する。なお、図16および図17中の記号B1および矢印は積込機165の位置情報の流れを示している。
積込機165の位置の送信が完了したら、ステップ1315では、積込機端末システム790における地図生成の終了処理を行う。
次に地図編集システム740における処理フローについて図17を用いて説明する。図17は、積込機165の位置に基づく境界線補正に関する地図編集システム740における処理フローの一例である。
ステップ1400では、地図編集システム740において、オペレータからのスタート要求の受付や、地図編集システム740の起動状態を確認する初期設定処理を行い、スタート要求と地図編集システム740の起動が確認できたら処理を開始する。
ステップ1405では、図16のステップ1305で積込機端末システム790から送信された積込機165の位置をセンタ側通信部758において受信する。
ステップ1410では、特別領域設定部777において、ステップ1405で受信した積込機165の位置に基づいて特別領域600(図6参照)を設定する。ここでは積込機165の作業半径および通常の移動範囲を考慮して決定した略矩形の領域(図18の領域2110参照)が特別領域600として設定されており、積込機165の位置が特別領域600の中心と一致するように設定される。
ステップ1415では、境界線生成部743は、図15の処理フローにより測位誤差を考慮して生成した境界線(境界線430,450(図4参照))に対して、ステップ1410で設定された特別領域600に関する補正をかける処理を行う。具体的には、図15のステップ1220で生成した補正後の境界線(図4の境界線430,450)に係る各測位点のうち、特別領域600内に含まれるものについては図15の測位誤差に基づく補正をかけないようにし(すなわち、図15のステップ1220で行った補正をキャンセルして、測位点を元の座標に戻す)、特別領域600の外のものについてはそのままとし(すなわち、ステップ1220で行った補正をかけたままにする)、両者を接続することで境界線を生成する。
なお、ここでは、特別領域600内の測位点の補正に関して、図15のステップ1220で行った補正をキャンセルする場合、すなわち測位誤差による補正量をゼロにする場合について説明したが、必ずしも当該補正量をゼロにする必要は無く、当該補正量をステップ1215で算出した値より低減するだけでも良い。
ステップ1420では、ステップ1415で生成した境界線をセンタ側地図DB761に蓄積し、ステップ1425で、地図編集システム740における地図生成の終了処理を行う。
上記のように特別領域600と補正誤差を考慮して生成された境界線は、オペレータ910の要求に応じて、センタ側表示部755に表示することができる。図18は、管制センタ900内のオペレータ910に対してセンタ側表示部755を介して提示される境界線の確認画面2100の一例である。
図18に示した特別領域確認画面2100は、アプローチエリア120の境界線が表示される境界線表示部2170と、確認ボタン2120を備えている。境界線表示部2170には、積込機165の位置を示すアイコン2105と、特別領域600を示す略矩形の領域2110と、GPSによる航測車210の測位軌跡2130(細い破線)と、測位誤差のみに基づいて補正した境界線2140(太い破線)と、特別領域600と測位誤差に基づいて補正した境界線2150(実線)が表示されている。
オペレータ910は特別領域確認画面2100による特別領域600の確認が完了したらセンタ側入力部752を介して確認ボタン2120を押下し、境界線の確認作業を終了する。
なお、ここでは、境界線表示部2170に、測位車210の測位軌跡2130と、測位軌跡2130に測位誤差のみを反映して得られる境界線2140と、測位軌跡2130に測位誤差と特別領域600を反映して得られる境界線2150の3つを表示したが、最終的に得られる境界線2150のみを表示しても良い。
ところで、図16及び図17の例では、特別領域600を積込機165の位置に応じて自動的に決定する場合について説明したが、特別領域600は他の方法で決定しても良い。次に、図19及び図20を用いて、他の2つの方法について例示する。
特別領域600の他の設定例としては、オペレータ910に設定させるものがある。図19に示した特別領域入力画面2200は、特別領域600を設定するための特別領域設定部2270と、特別領域600の設定作業完了を通知する完了ボタン2220を備えている。特別領域設定部2270には、特別領域600の位置をオペレータ910が指定するための特別領域指定ポインタ2205と、オペレータ910により設定された特別領域600を示す領域2210と、GPSによる航測車210の測位軌跡2130(細い破線)と、測位誤差のみに基づいて補正した境界線2140(太い破線)と、特別領域600と測位誤差に基づいて補正した境界線2150(実線)が表示されている。
オペレータ910が特別領域600を設定する場合には、センタ側入力部752を介してポインタ2205を移動させ、所望の位置でポインタ2205の位置を決定することで特別領域600の位置を決定できる。例えば、センタ側入力部752としてマウスを利用する場合の操作方法の具体例としては、マウス操作でポインタ2205を領域2210上に移動してマウスをクリックすることで領域2210を移動可能にし、所望の位置に領域2210を移動した状態で再度マウスをクリックすることで領域2210の位置を決定するものがある。領域2210の形状及び大きさは予め設定しておいても良いし、事後的に変更可能にしても良い。
このように構成した場合には、特別領域600の指定は積込機165の位置に限らず、オペレータ910が所望する位置に特別領域600を設定することができる。この方法は、例えば、自律走行ダンプがアプローチエリア内の崖から放土する場合、またはクラッシャによる破砕作業などのために放土場の位置が予め決まっている場合など、特別領域600の位置が作業機械の位置に依存せず、自律走行ダンプが目的地とする領域が予め決まっている場合に適している。
特別領域600のさらに他の設定例としては、積込機(油圧ショベル)165の作業半径に基づいて自動的に決定するものがある。図20は、管制センタ900内のオペレータ910に対してセンタ側表示部755を介して提示される境界線の確認画面2100の一例である。図20に示した特別領域確認画面2100の境界線表示部2170には、積込機165の位置を示すアイコン2105と、特別領域600を示す円形の領域2110Aと、測位誤差のみに基づいて補正した境界線2140(太い破線)と、特別領域600と測位誤差に基づいて補正した境界線2150(実線)が表示されている。
領域2110Aは、積込機165の最大作業半径(例えば、旋回中心からバケットの先端までの最大水平距離(最大掘削半径ともいう))を半径とする円が設定されており、積込機165の現在位置に連動して当該円形の領域2110Aが自動的に移動するように設定されている。オペレータ910は特別領域600の確認が完了したら、先の場合と同様にセンタ側入力部752を介して確認ボタン2120を押下し、境界線の確認作業を終了する。
このように積込機165の最大作業半径に基づいて特別領域600を設定すると、図18,19に示した場合よりも特別領域600を縮小することができ、自律走行ダンプ150が障害物と衝突する可能性を低減することができる。
次に、上記の図15または図17の処理フローにより生成した境界線を用いた自律走行ダンプ150の目標軌道の設定処理と、当該目標軌道に沿った自律走行ダンプ150の自律走行制御とを実行するための構成について説明する。
図21は本発明の実施の形態に係る自律走行ダンプ150のシステム構成図である。この図に示す自律走行ダンプシステムは、管制センタシステム1500と、自律走行ダンプ車載端末システム1530を備えている。
管制センタシステム1500は、地図編集システム740と、自律走行ダンプ150の自車位置を管理するダンプ位置管理部1506と、自律走行ダンプ150の目的地を管理する配車管理部1512と、センタ側地図DB761に管理された境界線(例えば、図5の境界線430,450)を用いて、アプローチエリア120に係る外側境界線(例えば、境界線430)の内側かつ内側境界線(例えば、境界線450)の外側に入るように目標軌道を生成する目標軌道生成部1509と、目標軌道生成部1509で生成された目標軌道を自律走行ダンプ車載端末システム1530に送信する目標軌道送信部1503とを備えている。
自律走行ダンプ車載端末システム1530は、自車位置をGPSやIMU(Inertial Measurement Unit:慣性計測装置)を使って測位するダンプ側自車位置測位部1533と、自律走行ダンプ150にオペレータが搭乗した場合に当該オペレータに情報提示を行うためのダンプ側表示部1554と、自律走行ダンプ150にオペレータが搭乗した場合に当該オペレータからの作業指示を受け付けるためのダンプ側入力部1551と、無線通信装置を介して管制センタシステム1500と無線通信を行うダンプ側通信部1542と、管制センタシステム1500から送信されるアプローチエリア120内の目標軌道を受信する目標軌道受信部1548と、搬送路を自律走行するための搬送路に関わる道路情報、アプローチエリア内の建物などの障害物の位置に関する情報、および車止め位置など自律走行ダンプ150が停止すべきポイントを管理する車載側地図DB1545と、自律走行ダンプ150の進行方向に存在する障害物との衝突を防止するために外界環境を認識するための外界認識部(例えば、レーザによる測距を行うLiDAR(Laser Imaging Detection and Ranging)やステレオカメラ等の外界認識装置)1539と、自律走行ダンプ150を自律走行させるための車両制御部1580と、車両制御部1580に走行指令を出す走行指令部1557と、自律走行ダンプ車載端末システム1530の全体の処理を制御するダンプ側制御部1556とを備えている。
図22は本発明の実施の形態に係る自律走行ダンプ150の概略構成図である。この図に示す自律走行ダンプ150には、コックピット1610内に自律走行ダンプ車載端末システム1530を搭載している。自律走行ダンプ150は、GPS測位を行うためにGPSアンテナ1620と、管制センタシステム1500と無線通信を行うために無線LANアンテナ1615を備えている。
次に、アプローチエリア120における自律走行ダンプ150の目標軌道の生成と、当該目標軌道に基づいた自律走行の処理フローを図23,図24,図25を用いて説明する。図23は目標軌道生成に関して行われる自律走行ダンプ車載端末システム1530の自車位置測位処理フローであり、図24は目標軌道生成に際して行われる管制センタシステム1500の目標起動設定処理フロー、図25は図24の処理フローで生成された目標軌道に基づいて行われる自律走行ダンプ車載端末システム1530の自律走行処理フローである。
はじめに、図23を用いて、目標軌道生成に際して自律走行ダンプ車載端末システム1530で行われる処理フローを説明する。図23において、ステップ1700では、自律走行ダンプ車載端末システム1530において、オペレータからのスタート要求の受付や、自律走行ダンプ車載端末システム1530の起動状態を確認する初期設定処理を行い、スタート要求と自律走行ダンプ車載端末システム1530の起動が確認できたら処理を開始する。
ステップ1705では、ダンプ側自車位置測位部1533において、GPSにより自律走行ダンプ150の位置を測位する。そして、ステップ1710では、ダンプ側通信部1542において、ステップ1705で測位した自律走行ダンプ150の位置を管制センタシステム1500に送信する。ステップ1715では、自律走行ダンプ車載端末システム1530における目標起動生成に関する終了処理を行う。なお、図23および図24中の記号C1及び矢印は自律走行ダンプ150の位置情報の流れを示している。
次に図24を用いて管制センタシステム1500の目標軌道生成処理フローを説明する。ステップ1800では、管制センタシステム1500において、オペレータからのスタート要求の受付や、管制センタシステム1500の起動状態を確認する初期設定処理を行い、スタート要求と管制センタシステム1500の起動が確認できたら処理を開始する。
次にステップ1805において、自律走行ダンプ車載端末システム1530のステップ1705で送信された自律走行ダンプ150の自車位置をセンタ側通信部758において受信し、その自律走行ダンプ150の位置をダンプ位置管理部1506において管理する。
ステップ1810において、目標軌道生成部1509は、ステップ1805で受信した自律走行ダンプ150の現在位置と、配車管理部1512で管理される自律走行ダンプ150の目的地に基づいてアプローチエリア内の目標軌道を生成する。目標軌道は、図15または図17の処理フローで取得された境界線のなかで、アプローチエリア120の外形(外側の輪郭)を規定する境界線(外側境界線)の内側に入るように原則生成される。そして、当該外側境界線の内部に障害物がある場合には、当該障害物の周囲を航測車210に走行させて1以上の境界線(内側境界線)を取得し、前記外側境界線で規定される領域から当該内側境界線で規定される領域を除外した領域の内側に入るように目標軌道を生成する。このように生成された目標軌道に沿って自律走行ダンプ150を走行させれば、GPS測位誤差による自律走行ダンプ150の切羽や構造物などへの衝突を防止できる。
ステップ1815では、ステップ1810で生成した目標軌道を、目標軌道送信部1503からセンタ側通信部758を介して自律走行ダンプ車載端末システム1530に送信し、ステップ1820で、管制センタシステム1500における目標起動生成に関する終了処理を行う。なお、図24および図25中の記号D1及び矢印は目標軌道情報の流れを示している。
次に、図24の処理フローで生成された目標軌道に基づいて行われる自律走行ダンプの自律走行処理について図25を用いて説明する。
図25のステップ1900では、自律走行ダンプ車載端末システム1530は、オペレータからのスタート要求の受付や、自律走行ダンプ車載端末システム1530の起動状態を確認する初期設定処理を行い、スタート要求と自律走行ダンプ車載端末システム1530の起動が確認できたら処理を開始する。
ステップ1905では、目標軌道受信部1548において、図24のステップ1815で管制センタシステム1500から送信された自律走行ダンプ150の目標軌道を、ダンプ側通信部1542を介して受信する。
ステップ1910では、走行指令部1557は、ステップ1905で受信した目標軌道への追従走行指示を出し、車両制御部1580は当該追従走行指示に従って自律走行ダンプ150のステアリング制御、アクセル制御およびブレーキ制御を行う。このとき、切羽125付近にいる積込機165への接近時には、外界認識部1539により、切羽や積込機との距離、車止めへの距離等を測位しつつ、これらとの衝突を防止する。
そして、ステップ1915では、自律走行ダンプ車載端末システム1530におけるアプローチエリアにおける自律走行に関する終了処理を行う。
以上のように構成された本実施の形態によれば、アプローチエリア120の切羽、建物、鉄塔などの障害物への接触防止のために設けられた境界線を航測車210で航測する際に、マルチパスや電波伝搬時の遅延などによりGPS測位誤差が発生しても、当該測位誤差を考慮した境界線を設定することができるので、当該測位誤差に起因する自律走行ダンプ150の渉外粒との衝突を防止することができる。
さらに、積込機165が切羽付近で作業を行っている場合、先のように境界線を測位誤差に応じて補正すると、補正後の境界線の外側に積込機165が存在することもあり、この場合には自律走行ダンプ150が積込機165に近づくことができないようになるが、積込機165の周囲に特別領域600を設け、その特別領域600以外のところのみ測位誤差による境界線の補正を行うことで、障害物との衝突を防止する目標軌道を生成しつつ、切羽付近の積込機に接近することができる。
なお、上記の実施の形態では、航測車210を利用してGPSにより測位軌跡を取得して目標軌跡を作成する範囲を規定する境界線を生成したが、航測車210以外の移動体をアプローチエリア120内の障害物に沿って移動させ、当該移動中にGPSおよび他の衛星測位システムにより測位した移動軌跡に基づいて境界線を生成する場合についても本発明は適用可能である。
また、上記の実施の形態では、アプローチエリア120内で作業する作業機械として、積込機械165が存在する場合について説明したが、クレーン、ホイールローダ等の他の作業機械が存在する場合にも適用可能である。
さらに、上記の説明では、測位軌跡の補正量を算出する際のGPS測位誤差の基準としてDOP値を利用する場合について触れたが、航測車の測位と同時にGPS誤差が取得可能であれば利用可能な指標はDOP値に限定されず、種々の測位精度の指標の利用が可能である。
また、図7に示した地図生成システムの各部の配置は一例に過ぎない。例えば、車載地図航測システム700における航測車側走行軌跡DB715、航測車側測位誤差DB721、測位誤差計算部724および走行軌跡再取得指示部730は、航測車および管制センタと通信可能であれば他の場所に配置しても良い。また、地図編集システム740における境界線生成部743、マージン計算部746、センタ側地図DB761、センタ側走行軌跡DB764、センタ側測位誤差DB771および特別領域設定部777は、航測車および積込機と通信可能であれば、他の場所に配置しても良い。さらに、機能の共通するものを同じ場所に存在させる場合にはこれらを併合しても良い。例えば、航測車側走行軌跡DB715とセンタ側走行軌跡DB764を同じ場所に存在させる場合には、両者を併合して走行軌跡DBとしても良い。
ところで、本発明は、上記の実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲内の様々な変形例が含まれる。例えば、本発明は、上記の実施の形態で説明した全ての構成を備えるものに限定されず、その構成の一部を削除したものも含まれる。
また、上記の各システムに係る各構成や当該各構成の機能及び実行処理等は、それらの一部又は全部をハードウェア(例えば各機能を実行するロジックを集積回路で設計する等)で実現しても良い。また、上記の各システムに係る構成は、演算処理装置(例えばCPU)によって読み出し・実行されることで当該各システムの構成に係る各機能が実現されるプログラム(ソフトウェア)としてもよい。当該プログラムに係る情報は、例えば、半導体メモリ(フラッシュメモリ、SSD等)、磁気記憶装置(ハードディスクドライブ等)及び記録媒体(磁気ディスク、光ディスク等)等に記憶することができる。
また、上記の実施の形態の説明では、制御線や情報線は、当該実施の形態の説明に必要であると解されるものを示したが、必ずしも製品に係る全ての制御線や情報線を示しているとは限らない。実際には殆ど全ての構成が相互に接続されていると考えて良い。