JP2015135323A - 近赤外分光法を用いた植物油脂またはその原料中の遊離脂肪酸の定量方法 - Google Patents

近赤外分光法を用いた植物油脂またはその原料中の遊離脂肪酸の定量方法 Download PDF

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Abstract

【課題】植物油脂及び/またはその原料となる植物体を含む試料中の遊離脂肪酸を迅速、簡便かつ高精度で定量する方法を提供すること。
【解決手段】植物油脂及び/またはその原料となる植物体を含む試料中の遊離脂肪酸を定量するための回帰式を、以下の工程(1)〜(3)を含む方法により得られた回帰式と、当該回帰式の作成に使用した波長領域における被験試料の近赤外光スペクトルデータとを用いて試料中の遊離脂肪酸を定量する方法。
(1)試料、試料の溶媒抽出液、または該溶媒抽出液から溶媒を除いた脂質濃縮物の近赤外光スペクトルを測定する工程
(2)工程(1)に供した試料中の遊離脂肪酸を特異的に定量する工程
(3)近赤外光スペクトルを測定した波長範囲の全部または一部の波長領域で得られたスペクトルデータと、遊離脂肪酸の定量値を多変量解析法により解析し、遊離脂肪酸と関係する因子を決定する工程
【選択図】なし

Description

本発明は、近赤外分光法を用いた植物油脂またはその原料中の遊離脂肪酸の定量方法に関するものである。
米糠から抽出して得られる米油は、栄養・生理機能に富み、味質、食感にも優れた高付加価値の食用油として注目され、利用が拡大している。一方、米油の原料である米糠は、供給量が限られている上に劣化しやすい性質を持つため貯蔵が利かないこと、また抽出後の米原油に不純物が多く精製工程が複雑なことによって、米油は他の植物油脂と比較して製造コストが高く増産が困難という欠点がある。また、米油は機能性成分を豊富に含むが、その含量は原料によって変動する。よって米油の生産において原料米糠の品質管理が極めて重要である。
米糠は他の植物油脂原料と異なり、脂質分解酵素リパーゼを豊富に含んでいることが特徴であり、このリパーゼは玄米の状態では不活性であるが、精米によって米糠を分離すると活性化して急速に油分(トリアシルグリセロールやリン脂質など)を分解し、遊離脂肪酸(FFA)を生じさせる(下式1)ことが知られている(非特許文献1)。生じたFFA、特に二重結合を有するFFAは酸化を受けやすく、人体に有害な過酸化脂質などの酸化生成物を生じ、脂質成分の劣化を促進する。劣化の進んだ米糠から抽出した米原油には酸化生成物が多く含まれ、トリアシルグリセロール(TAG)の含量も低下しているため、精製負荷の増大や収率の悪化につながる。よって、米糠から良質な米原油を効率よく得るためには、原料米糠だけでなく米原油の劣化度も評価し、その品質を評価・管理することが必要である。
また昨今では食用油脂原料としての利用性に優れた稲品種(油糧米)の開発が進められており、米糠の急速な劣化を防ぐためにリパーゼやホスフォリパーゼなどのFFAを生成する酵素の低減などの改良を施した品種の育種開発が一つのテーマとなっている。そこで米糠の劣化度を迅速に評価することが可能となれば、劣化度を経時的に評価することにより劣化しにくい米糠を選別することが出来るため、改良種の選定が容易となり、育種開発の効率を飛躍的に高めることができる。
以上の点から、米油の生産効率および品質の維持・向上のために、米糠や米原油の劣化度の迅速かつ正確な評価方法が求められている。
前述のように、米糠や米原油の劣化はFFAの増加とともに起こるため、米糠や米原油の劣化度を評価する指標としてはFFA量をモニターすることが有効である。油脂中のFFAは、一般的にはアルカリ滴定法を用いて測定される酸価(1gの油脂に含まれる酸を中和するのに必要な水酸化カリウム量)によって評価される。ただし脂質中にはFFA以外にも水酸化カリウムと反応する酸性物質が存在するため、酸価は正確なFFA量を表しているとは言えない。またアルカリ滴定法は夾雑物の影響によって測定値が変動するという欠点を有している。
FFAを正確に測定する手法としてはガスクロマトグラフィー(GC)法(特許文献1)、各種高速液体クロマトグラフィー(HPLC)法(非特許文献2)などが報告されている。しかし、GC法、HPLC法は脂肪酸を分子種毎に定量し、その定量値を合算する手法のため、煩雑さと測定精度に問題がある。一方、一度に脂肪酸含量の総量を測定できる手法として前述の滴定法以外に、酵素法(比色定量法)(特許文献2)やフーリエ変換赤外分光法(FT−IR)を利用した方法(非特許文献3)が報告されている。これらは分子種毎の計算が不要なため、GC法やHPLC法よりも簡便な分析・評価が可能である。しかしこれらの方法についても、米糠中のFFAを分析する場合には事前に油脂の抽出工程が必要となるため、迅速分析法としての運用は難しい。
一方、油脂類および食物中(米など)の油脂成分の劣化度を評価するため、近赤外分光(NIR)法を用いて酸価を定量する分析法が報告されており(特許文献3、4)、実際に定量モデルが実用化されている。NIR法は試料に近赤外光を照射して得られた散乱光や透過光のスペクトルから試料の物理的または化学的性質についての情報を得る手法であり、試料中の特定成分含量を、試料を破壊することなく、極めて短時間で予測することが可能である。ただしNIR法は化学分析値とNIRスペクトルとの相関関係より検量モデルを作成するため、精度の高い検量モデルを得るためには高い分析精度を持った化学分析法の確立が必要である。
発明者らは過去にNIR法を用いた玄米・米糠中のTAG含量の予測法を確立している
(特許文献5)。NIR法はその迅速性から米糠や米原油中のFFA量を定量し、劣化度を評価する上で非常に有望なツールであるが、NIR法の適用には米糠や米原油に含まれるFFA量を正確に測定できる化学分析法の確立が必要である。これまでにもNIRによるFFAの検量モデルは作成されているが、その化学分析値はアルカリ滴定法(酸価)に基づくものであり、同法は先述のとおりFFAを特異的に定量できる方法ではない。よって米糠や米原油の正確なFFA含量を予測できるNIR検量モデルの構築のために化学分析法の選定が課題となっている。
米油製品の原料としての観点から米糠および米原油の品質を評価する場合、油脂成分の劣化度だけでなくγ-オリザノール(OZ)、ステロール(ST)、ステロールエステル(SE)などの米油に特徴的な機能性成分の含量も重要な指標である。また、最近油脂中のグリシドール脂肪酸エステルが発癌性を有することから問題となっている。本物質は精製工程において米原油中のジアシルグリセロールより生成すると考えられており、アシルグリセロール(トリ、ジ、モノ)のパターンも評価の指標となる。これらの成分の分析法については多数の報告があるが、いずれも分子種毎の評価法であるために手法として非常に煩雑である。品質管理・評価の上では分子種毎の評価は必ずしも必要でなく、これらの成分の量的なパターン(原油プロフィール)を簡便・迅速に分析・評価できる分析法が求められる。発明者は米油の主要な機能性成分であるγ-オリザノールについてNIRを用いた迅速分析法を開発しているが、原油プロフィールを迅速に得ることができるような分析法については報告されていない。
油脂成分の分析法として最近開発されたものに、分子量分画(GPC)と極性相互作用の2つの分離モードを組み合わせたHPLC法(非特許文献4)がある。本法により植物油脂から合成したバイオディーゼル中の主成分であるTAG、ジアシルグリセロール(DAG)、モノアシルグリセロール(MAG)および脂肪酸メチルエステルをそれぞれ一つのピークとして分離することが可能となっている。本法はこれまでパーム油から合成したバイオディーゼル(非特許文献4)や、米糠由来のワックスの組成分析(非特許文献5)に用いられている。しかし、本法を米原油の分析に用いた報告はなく、米油に特徴的な機能性成分の分析についても報告はない。またOZやSTを含んだ油脂の分析例も報告されていない。
特開2009−204596号公報 特開平2−184759号公報 特開平4−77648号公報 特開平6−91181号公報 特開2013−72726号公報
日本食品工業学会誌、36(6)、519(1989) Journal of Chromatographic Science、 48、 663(2010) 分析化学、54(5)、381(2005) Eur. J. Lipid Sci. Technol、 110、 422(2008) Journal of the American Oil Chemists' Society、88(10)、 1497(2011)
本発明は、植物油脂及び/またはその原料となる植物体を含む試料中の遊離脂肪酸を迅速、簡便かつ高精度で定量する方法を提供することを課題とする。また、同法を用いて植物油脂の原料となる植物体中の油脂成分の劣化度および劣化のしやすさ(安定性)を迅速かつ適切に評価する方法を提供することを課題とする。さらに、植物油脂の品質を評価するため、含有するγ-オリザノール、ステロール、ステロールエステルなどの量的なパターン(原油プロフィール)を得る方法を提供することを課題とする。
本発明は、上記課題を解決するために、以下の各発明を包含する。
[1]植物油脂及び/またはその原料となる植物体を含む試料中の遊離脂肪酸を定量するための回帰式を得る方法であって、以下の工程(1)〜(3)を含むことを特徴とする回帰式を得る方法。
(1)試料、試料の溶媒抽出液、または該溶媒抽出液から溶媒を除いた脂質濃縮物の近赤外光スペクトルを測定する工程
(2)工程(1)に供した試料中の遊離脂肪酸を特異的に定量する工程
(3)近赤外光スペクトルを測定した波長範囲の全部または一部の波長領域で得られたスペクトルデータと、遊離脂肪酸の定量値を多変量解析法により解析し、遊離脂肪酸と関係する因子を決定する工程
[2]試料が米糠及び/または米油を含むことを特徴とする前記[1]に記載の回帰式を得る方法。
[3]工程(2)において非水系GPCカラムを用いたHPLC分析法で遊離脂肪酸を特異的に定量することを特徴とする前記[1]または[2]に記載の回帰式を得る方法。
[4]非水系GPCカラムを用いたHPLC分析法で用いる移動相の組成が0〜0.03%(v/v)の酢酸を含むトルエンであることを特徴とする前記[3]に記載の回帰式を得る方法。
[5]非水系GPCカラムを用いたHPLC分析法で用いる試料溶媒がトルエンとアルコールとの混液であり、アルコール濃度が20%(v/v)以上であることを特徴とする前記[3]または[4]に記載の回帰式を得る方法。
[6]工程(1)において試料または脂質濃縮物を、クロロホルム、アセトニトリル、t−ブタノール及びジメチルスルホキシドから選択される溶媒に溶解し、得られた溶液の近赤外光スペクトルを測定することを特徴とする前記[1]〜[5]のいずれかに記載の回帰式を得る方法。
[7]工程(3)における波長領域が、1435±10nm、1662±10nm、1763±10nm、2162±10nmおよび2245±10nmから選択される少なくとも1つの領域を含むことを特徴とする前記[1]〜[6]のいずれかに記載の回帰式を得る方法。
[8]近赤外光スペクトルが、拡散反射光または透過光のスペクトルであることを特徴とする前記[1]〜[7]のいずれかに記載の回帰式を得る方法。
[9]植物油脂及び/またはその原料となる植物体を含む試料中の遊離脂肪酸の定量方法であって、前記[1]〜[8]のいずれかに記載の回帰式を得る方法により得られた回帰式と、当該回帰式の作成に使用した波長領域における被験試料の近赤外光スペクトルデータとを用いることを特徴とする遊離脂肪酸の定量方法。
[10]植物油脂及び/またはその原料となる植物体を含む試料中の、遊離脂肪酸、トリアシルグリセロール、ジアシルグリセロール、モノアシルグリセロール、ステロールエステル、ステロール及びγ−オリザノールからなる群より選択される少なくとも2以上の成分を同時に分析する分析方法であって、非水系GPCカラムを用いたHPLC分析法を用いることを特徴とする分析方法。
[11]試料が米糠及び/または米油を含むことを特徴とする前記[10]に記載の分析方法。
[12]非水系GPCカラムを用いたHPLC分析法で用いる移動相の組成が0〜0.03%(v/v)の酢酸を含むトルエンであることを特徴とする前記[10]または[11]に記載の分析方法。
[13]非水系GPCカラムを用いたHPLC分析法で用いる試料溶媒がトルエンとアルコールとの混液であり、アルコール濃度が20%(v/v)以上であることを特徴とする前記[10]〜[12]のいずれかに記載の分析方法。
[14]前記[9]に記載の遊離脂肪酸の定量方法を用いることを特徴とする植物油脂及び/またはその原料となる植物体を含む試料の劣化度評価方法。
[15]前記[10]〜[13]のいずれかに記載の分析方法を用いることを特徴とする植物油脂及び/またはその原料となる植物体を含む試料の脂質成分の組成分析法。
本発明によれば、植物油脂及び/またはその原料となる植物体を含む試料中の遊離脂肪酸を迅速、簡便かつ高精度で定量する方法を提供することができる。当該定量方法を用いることにより、植物油脂及び/またはその原料となる植物体を含む試料の劣化度及び安定性を迅速かつ適切に評価することができる。また、本発明によれば、植物油脂及び/またはその原料となる植物体を含む試料中の遊離脂肪酸量を従来の化学分析法より簡便かつ正確に分析できるとともに、植物油脂及び/またはその原料となる植物体を含む試料中に含まれる他の成分を同時に分析できる分析法を提供することができる。
HPLC−GPC法における移動相(酢酸含有トルエン)中の酢酸濃度の影響を検討した結果を示す図であり、(a)は酢酸濃度が0.25%(v/v)の場合の結果を示し、(b)は酢酸濃度が0.03%(v/v)の場合の結果を示し、(c)は酢酸濃度が0.01%(v/v)の場合の結果を示し、(d)は酢酸濃度が0.003%(v/v)の場合の結果を示す。なお、TAGはトリアシルグリセロールを、DAGはジアシルグリセロールを、MAGはモノアシルグリセロールを、OZはγ-オリザノールを、SEはステロールエステルを、STはステロールを、FFAは遊離脂肪酸を指す。 HPLC−GPC法における試料溶媒(トルエン:2−プロパノール)中の2−プロパノール濃度の影響を検討した結果を示す図であり、(a)は2−プロパノール濃度が0%(v/v)の場合の結果を示し、(b)は2−プロパノール濃度が20%(v/v)の場合の結果を示し、(c)は2−プロパノール濃度が50%(v/v)の場合の結果を示し、(d)は2−プロパノール濃度が80%(v/v)の場合の結果を示し、(e)は濃度が2−プロパノール100%(v/v)の場合の結果を示す。 HPLC−GPC法における試料溶媒(トルエン:2−プロパノール)中の2−プロパノール濃度が50%(v/v)の場合のRIクロマトグラムにおける各成分(FFA、TAG、DAG、ST、OZ)のピークの分離状態を示す図である。 NIR法による予測値と各分析値の相関を示す図であり、(a)は化学分析値がHPLC−GPC法による分析値である場合の結果を示し、(b)は化学分析値がアルカリ滴定法による分析値である場合の結果を示す図である。 HPLC−GPC法及びアルカリ滴定法との分析値におけるγ−オリザノールの影響を検討した結果を示す図である。 米糠中の遊離脂肪酸含量について、近赤外光スペクトル予測値(定量値)とHPLC−GPC法分析値(実測値)の相関を示す図であり、(a)は脂質濃縮物当たりの遊離脂肪酸含量についての結果、(b)は米糠当たりの遊離脂肪酸含量についての結果である。 米糠の脂質濃縮物中の遊離脂肪酸含量(脂質濃縮物当たり)について、近赤外光スペクトル予測値(定量値)とHPLC−GPC法分析値(実測値)の相関を示す図である。 米糠の保管時間と遊離脂肪酸含量(脂質濃縮物当たり)の関係を示す図である。 米糠の保管時間と遊離脂肪酸含量の化学分析値およびNIR法による予測値の関係を示す図であり、(a)は脂質濃縮物当たりの遊離脂肪酸含量についての結果、(b)は米糠当たりの遊離脂肪酸含量についての結果である。
本明細書において「植物油脂」は原料となる植物体から分離されたTAGを主成分とする脂質を指し、その調製法は特に限定されず、未精製のものも精製後のものも含む。「原料」は植物油脂の主原料となる植物体を指し、加工剤は含まない。「試料の溶媒抽出液」は脂質の抽出に適した溶媒を用いて試料を抽出した液を指し、「脂質濃縮物」は該試料の溶媒抽出液から溶媒を留去して得られる未精製の脂質を指す。単に「脂質濃縮物」と記述した場合、その原料や組成については限定しない。
本明細書において「米糠」は玄米を精米した際に白米の副産物として得られる糠(赤糠、中糠、白糠)を指し、玄米表層部の果皮、種皮、胚芽、アリューロン層、サブアリューロン層、加工工程で混入した粉状の胚乳などが含まれる。「原油」は天然の原料から分離された未精製の油脂を指し、「米原油」は米糠を原料とする原油を指す。本明細書において「米油」とは米糠を原料とした米原油及び精製途中の米油、及び最終製品である精製米油のいずれかを指し、製法については特に限定しない。これは米油に限らず、「原料名+油」と記述したもの全てについて同様である。
本明細書において遊離脂肪酸(FFA)は、植物油に含まれるものであれば特に限定されないが、炭素数8〜24で単鎖のモノカルボン酸が好ましい。好ましいFFAとして、オクタン酸、デカン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、パルミトレイン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、アラキジン酸、エイコセン酸、ベヘン酸、エルシン酸、リグノセリン酸などが挙げられる。
本明細書においてトリアシルグリセロール(TAG)、ジアシルグリセロール(DAG)、モノアシルグリセロール(MAG)は特に限定されないが、上記のFFAとグリセリンのエステル体であることが好ましい。本明細書においてステロール(ST)は一般的なステロール類の他に、トリテルペンアルコール類、およびステロール類、トリテルペンアルコール類の一部構造が変化(置換や異性化など)したステロール類似体も含まれる。STは植物油に含まれるものであれば特に限定されない。好ましいSTとして、コレスタノール、カンペスタノール、エルゴスタール、スチグマスタノールコレステロール、デスモステロール、カンペステロール、ジヒドロブラシカステロールクリノステロール、ブラシカステロール、24-メチレンコレステロール、コジステロール、β-シトステロール、スチグマステロール、フコステロール、イソフコステロール、クレロステロール、22-デヒドロクレロステロール、ラトステロール、フンギステロール、エピステロール、22-ジヒドロスピナステロール、スピナステロール、コンドリラステロール、アベナステロールなどの4-デスメチルステロール類、ロフェノール、グラミステロール、シトロスタジエノール、29-ノルラノステロール、オブツシホリオール、シクロオイカレノール、29-ノルシクロラウデノールなどの4α-メチルステロール類、24-ジヒドロラノステロール、パルケオール、シクロアルタノール、シクロアルテノール、シクロサドール、24-メチレンシクロアルタノール、シクロブラノール、シクロラウデノール、ブチロスペルモール、Δ7−チルカノール、10α-ククルビタジエノールなどの四環性トリテルペンアルコール類、ブラシノステロイドなどのステロール類似体などが挙げられる。本明細書においてγ−オリザノール(OZ)は、上記のSTとフェルラ酸のエステル体が好ましい。本明細書においてステロールエステル(SE)は、上記のSTとFFAのエステル体が好ましい。
〔植物油脂及び/またはその原料となる植物体を含む試料中のFFAを定量するための回帰式を得る方法〕
本発明は、植物油脂及び/またはその原料となる植物体を含む試料中のFFAを定量するための回帰式を得る方法(以下「本発明の回帰式を得る方法」という。)を提供する。本発明の回帰式を得る方法は、以下の工程(1)〜(3)を含むものであればよい。
(1)試料、試料の溶媒抽出液、または該溶媒抽出液から溶媒を除いた脂質濃縮物の近赤外光スペクトルを測定する工程
(2)工程(1)に供した試料中の遊離脂肪酸を特異的に定量する工程
(3)NIRスペクトルを測定した波長範囲の全部または一部の波長領域で得られたスペクトルデータと、FFAの定量値を多変量解析法により解析し、FFAと関係する因子を決定する工程
本発明の回帰式を得る方法は、(1)〜(3)以外の工程を含んでいてもよく、その内容は問わない。
工程(1)では、植物油脂及び/またはその原料となる植物体を含む試料、試料の溶媒抽出液、または該溶媒抽出液から溶媒を除いた脂質濃縮物のNIRスペクトルを測定する。NIRスペクトルの測定方法は特に限定されないが、拡散反射法または透過法が好ましく、これらを試料によって使い分けることがより好ましい。試料が固体であれば主に拡散反射法を用い、試料が液体であれば主に透過法を用いて測定することが好ましいが、液体の場合でも着色が強く、光を透過しにくい試料の場合は拡散反射光を測定することが好ましい。試料が溶液の場合は、適宜濃度を調整して透過光を測定することが好ましい。測定セルは特に限定されないが、測定試料、測定法に応じて使い分けることが好ましい。NIRスペクトルの測定は、オフライン(off line)分析だけではなく、アットライン(at line)、オンライン(on line)、インライン(in line)、無侵襲(non-invasive)分析などの形で実施してもよい。NIRスペクトルの測定は、試料を採取し分析室の近赤外分析計で測定することもできるが、生産現場や倉庫に近赤外分析計を持ち込みその場で測定することもできる。また製造ラインに近赤外分析計を組み込むことにより連続的に試料のNIRスペクトルを測定することも可能である。
NIRスペクトルの測定には、市販の近赤外分光分析計を用いることができるが、透過光と拡散反射光を測定できるものが好ましい。また、試料に応じて固体測定モジュール、液体測定モジュール、光ファイバーモジュール、固体透過測定モジュールを備えたものが利用できる。また、測定セルの温度調節機能を備えたものがより好ましい。具体的にはMPA(ブルカー・オプティクス)、TANGOシリーズ(ブルカー・オプティクス)、NIRFlex N−500(ビュッヒ)、NIRFlex N−400(ビュッヒ)、NIRLab N−200(ビュッヒ)、NIRMaster(ビュッヒ)、NIRS6500(ニレコ)、XDS・NIRシリーズ(ニレコ)、SpectraStar Series(BLTEC)、光品質チェッカーHOS−Fシリーズ(SAIKA)、光品質チェッカーポータブルHQC−F30(SAIKA)、IRAffinity−1(島津製作所)、LAMBDA750/950/1050及びFrontier NIR(パーキンエルマー)、FT−IR4000シリーズ及びFT−IR6000シリーズ(日本分光)、FT−NIR MB3600(ABB BOMEM)などが挙げられ、MPAとTANGOシリーズ(ブルカー・オプティクス)が特に好ましい。得られるスペクトルは、フーリエ変換スペクトルであることが好ましい。
工程(1)において、植物油脂及び/またはその原料となる植物体を含む試料、試料の溶媒抽出液、または該溶媒抽出液から溶媒を除いた脂質濃縮物のいずれかをNIRスペクトルの測定に供すればよく、その組成、植物油脂の原料となる植物体、植物油脂については限定されない。
植物油脂の原料となる植物体としては、稲、とうもろこし、ごま、ベニバナ、大豆、ナタネ、ひまわり、オリーブ、オオムギ、ブドウ、ヤシ、パーム、綿、アマ、トウゴマ(ヒマ)の種子、果実の一部、藻類などが挙げられる。このうち、稲の種子の一部であることが好ましく、玄米の一部であることがより好ましく、米糠であることがさらに好ましい。植物油脂としては米油、コーン油、ごま油、サフラワー油、大豆油、菜種油、ひまわり油、オリーブ油、オオムギ油、グレープシードオイル、ヤシ油、パーム油、パーム核油、綿実油、ヤシ油、アマニ油、ひまし油、藻類油などが挙げられ、この内米油が好ましい。植物油脂は精製後であっても、精製前であっても、精製途中であってもかまわない。
好ましい米糠としては、例えば、玄米の精米により得られる米糠、加工糠、脱脂糠、米糠の搾油残渣、脱脂途中の米糠などが挙げられる。このうち、脱脂処理を行っていないものが好ましく、精米後未加工のものがより好ましい。試料となる米糠の原料となる稲の品種は特に限定されない。米糠は玄米を精米して得られる赤糠、中糠、白糠のいずれかを主成分とすることが好ましく、赤糠や中糠を主成分とすることが特に好ましい。またこれらの糠には白米が混ざっていてもかまわないが、その混入率は20重量%以下であることが好ましく、10重量%以下であることがより好ましい。
NIRスペクトルの測定に供する試料の油脂の純度は特に限定されない。試料として植物油脂を用いる場合、その製法については限定されないが、油脂の溶解性に優れた溶媒で抽出したもの、圧搾抽出したものなどが好ましく、精製途中の植物油脂や精製された植物油脂を用いる場合にも、このような原油から精製したものが好ましい。好ましい抽出溶媒としてはヘキサン、ジエチルエーテル、エタノール、2−プロパノール、アセトン、クロロホルムあるいはこれらの混液などが挙げられる。精製された植物油脂を用いる場合、使用前のものでもよく、使用後のもの(廃油)でもよい。また、精油過程で副産物として生じた脱臭スカム、ソープストック、FFA、ワックス(ロウ)、ガム質などの副産物も試料として好適に用いることができる。
工程(1)において、異なる植物油脂の混合物をNIRスペクトルの測定に供してもよい。また、異なる植物油脂の混合物は牛脂、ラード、鶏油(チー油)、魚油などの動物油を含んでいてもよいし、食品、飼料、化粧品、医薬品など用途に合わせて加工されたものであってもよい。
試料中の脂質の含有量は5重量%以上であることが好ましく、10重量%以上であることがさらに好ましい。試料中の脂質の含有量が10重量%を下回る場合、脂質の抽出処理を行って得られる溶媒抽出液または該溶媒抽出液から溶媒を除いた脂質濃縮物をNIRスペクトル測定に供することが好ましい。脂質の抽出方法については後述する。
試料が植物油脂の原料の加工品の場合、試料は植物油脂の原料となる植物体を原料に用いた食品、飼料、化粧品、医薬品のいずれであってもよい。食品としては、例えば、菓子類(米菓、蒸菓子、ロックケーキ、クレープ、餅、ホットケーキ、マフィン、蒸しまんじゅう、カップケーキ、焼き菓子、鯛焼き、団子、クッキー、カステラ、マドレーヌ、ワッフルなど)、パン類(パン、スコーン、ナンなど)、麺類(うどん、ラーメン、そば、パスタ、マカロニなど)、練り製品(かまぼこ、ちくわ、はんぺん、さつま揚げ、ソーセージなど)、料理全般(白飯、おにぎり、おかゆ、豆腐、シリアル、ニョッキスープ、お好み焼き、カレー、シチュー、グラタン、天ぷら衣、パスタスープ、だんご汁、ピザ、ハンバーグ、チャーハン、スープの素など)、粉類(米粉、玄米粉、コーンスターチ、パン粉、片栗粉、天ぷら粉など)、ドリンク類(茶、コーヒー、ココア、清涼飲料、果実飲料、乳性飲料、酒類、栄養ドリンクなど)、調味料(醤油、ソース、料理酒、みりん、だし類、味噌など)、錠菓、サプリメント類などが挙げられる。飼料としては、例えば、ウシ、ウマ、ブタなどの家畜用飼料、ニワトリなどの家禽用飼料、イヌ、ネコなどのペット用飼料、養殖魚用飼料などが挙げられる。化粧品としては、例えば、植物油脂の原料となる植物体を配合したクリーム、ローション、ジェル、ミスト、マスク、パック、シャンプー、リンス、入浴剤などが挙げられる。このような原料や素材を含む医薬品としては、例えば植物油脂の原料となる植物体を賦形剤として用いた錠剤、粉薬、カプセル剤などが挙げられる。
試料が植物油脂の加工品の場合、その原料となる植物体、組成、製法などについては特に限定されない。加工品としては、例えば、天ぷら、天かす、唐揚げ、フライ、マーガリン、バター、チーズ、フライドポテト、油揚げ、厚揚げ、生クリーム、コーヒーミルク(粉)、ホイップクリーム、ドレッシング、マヨネーズ、タルタルソース、オイスターソース、ホワイトソース、ポテトチップス、チョコレート、ビスケット、コーンスナック、ポップコーン、クラッカー、揚げせんべい、米菓、ショートケーキ、エクレア、シュークリーム、ウエハース、ババロア、ドーナッツ、かりんとう、アイスクリームなどの食品が挙げられる。また、例えば、石鹸、洗剤、ファンデーション、クレンジングオイル、アロマオイル、リップクリーム、マニキュアなどの油脂を主体とする化粧品などが挙げられる。
試料が植物油脂の原料となる植物体を含み、固体の場合、そのまま工程(1)のNIR分析に供してもよいが、均質化のために粉砕処理を行うことが好ましく、さらに乾燥処理を行って水分を除去することが好ましい。この場合の乾燥処理法は特に限定されず、加熱乾燥法、凍結乾燥法、真空乾燥法などが使用できるが、試料の変性を避けられる方法が好ましい。粉砕処理法は特に限定されないが、例えば試料が固体の場合で試料が大きすぎてそのまま破砕できない場合は、適切な大きさに切断、破断してから粉砕処理を施すのがよく、試料が軟質の場合はまず凍結乾燥処理や真空乾燥処理を行ってから破砕するのがよい。試料が液体の場合で油脂を主成分とするものは、後述の油脂試料と同様に扱う。油脂を主成分としないものは乾燥処理を行って水分を除去し、得られた残渣を固体試料と同様に扱うか、残渣から溶媒抽出し、得られた抽出物を後述の試料の溶媒抽出液と同様に扱う。
試料が植物油脂を含む油脂の場合、異物が除去されており、均質な状態であることが好ましい。試料が液体の場合、そのまま透過法により工程(1)のNIRスペクトル測定に供してもよい。固体の油脂の場合、固体のまま拡散反射法によりNIRスペクトルを測定してもかまわないが、加温による溶解が可能であれば加温して液体状態とし、透過法によりNIRスペクトルを測定することが好ましい。試料が液体の油脂で沈殿(不溶物)がある場合、加温によってその沈殿が溶解する場合には、測定セルを加温し沈殿を溶解させた後、透過法によって測定することが好ましい。沈殿を加温しても溶解しない場合には試料に均質化処理を行い、拡散反射法によってNIRスペクトルを測定するか、溶媒抽出処理や溶解処理を行って得られた溶媒抽出液を試料とすることが好ましい。試料の粘度が高い場合には試料を入れた測定セルを加温して試料粘度を下げることが好ましい。試料が不透明な場合であって加温により透明化できる場合には測定セルを加温して透明化した状態で測定することが好ましい。
試料が植物油脂の加工品の場合、試料が油脂を主成分とする場合は油脂試料と同様に扱う。油脂が主成分でない場合、試料が均質ないし容易に均質化できるものであれば、均質化処理を行った後NIRスペクトルを測定してもよいが、均質化が困難な試料であれば測定精度を向上させるために後述の溶媒抽出処理や溶解処理を行って得られた溶媒抽出液を試料とすることが好ましい。均質化した試料のNIRスペクトルの測定法については油脂原料を含む試料と同様に扱い、溶媒抽出を行って得られた溶媒抽出液を分析する場合は後述の試料の溶媒抽出液と同様に扱う。
試料が固体、液体に関わらずタンパク質を含む場合は、タンパク質の除去処理を行うことが好ましい。除タンパク処理の方法は特に限定されず、酸や有機溶媒の添加や加熱処理などによる変性沈殿法、限外濾過法、透析法、カラム法、などが挙げられる。試料が固体の場合は試料を破断・粉砕した上で適当な溶媒に懸濁し、除タンパク処理を行うことが好ましい。
試料が固体の場合または油脂を主成分としない液体の場合、試料中のFFA濃度(脂質濃縮物当たり)は、1.5重量%以上が好ましく、3.0重量%以上がさらに好ましい。試料が油脂を主成分とする液体試料、油脂試料または油脂加工試料の場合、試料中のFFA濃度(脂質濃縮物当たり)は0.5重量%以上が好ましく、1.0重量%以上がより好ましい。
工程(1)において、試料の溶媒抽出液、または該抽出液から溶媒を除いた脂質濃縮物を好適にNIRスペクトルの測定に供することができる。抽出に用いる溶媒は、FFAを溶解可能な溶媒であることが好ましい。FFAを溶解可能な溶媒としては、例えば、ジエチルエーテル、ジメチルエーテル、メチルエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、2−メトキシエタノール、テトラヒドロフラン(THF)などのエーテル類、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール(2−プロパノール)、ブタノール、t−ブタノール、グリセリン、エチレングリコールなどの炭素数3〜11のアルコール類、ペンタン、ヘキサンなどの炭素数5〜17のアルカン類、ペンテン、ヘキセンなどの炭素数5〜20のアルケン類、シクロペンタン、シクロヘキサンなどのシクロアルカン類、アセトン、アセトニトリル、クロロホルム、酢酸エチル、ジオキサン、トリフルオロ酢酸(TFA)、ベンゼン、ジメチルスルホキシド(DMSO)、石油エーテル、トルエン、ジメチルホルムアミド、ジクロロメタン、四塩化炭素、t−ブチルアセトアセタートなどが挙げられる。これらの溶媒は単独で用いてもよいし、均質に混合できるならば任意の割合で混合したものを用いてもよい。抽出法は特に限定されず、公知の脂質抽出法を用いることができる。例えば、ソックスレー抽出法、クロロホルム−メタノール抽出法、酸分解法などが挙げられ、中でもソックスレー抽出法が抽出効率の点で好ましい。溶媒抽出液を用いる場合、溶媒が後述するNIR測定に好ましい溶媒であれば、そのままNIRスペクトルを測定すればよい。溶媒がNIR測定に好ましい溶媒でない場合、いったん溶媒を除去して得られた脂質濃縮物をNIR測定に好ましい溶媒に再溶解するか、脂質濃縮物を直接分析することが好ましい。NIR測定に好ましい溶媒は、特に限定されないが、クロロホルム、アセトニトリル、t−ブタノール、ジメチルスルホキシドなどが挙げられ、この内、クロロホルム、アセトニトリルがより好ましい。試料が溶媒抽出液または脂質濃縮物をNIR測定に好ましい溶媒に再溶解した溶液の場合はそのまま透過法にてNIR分析に供することが可能で、脂質濃縮物の場合は油脂の場合と同様に扱う。試料が溶媒抽出液の場合、そのFFA濃度(溶媒抽出液当たり)は0.03%(w/v)以上が好ましく、0.06%(w/v)以上がより好ましい。
本発明により得られる回帰式は、臨床試験などを目的とした生体由来の試料中のFFAの定量にも利用することができる。生体由来の試料は特に限定されないが、例えば、動物の生体構成成分が好適である。動物由来の試料としては、例えばヒト、実験動物、家畜、養殖魚などの血液、血清、血漿、組織液、リンパ液、脳脊髄液、母乳、膿、粘液、鼻水、喀痰、尿、糞便、腹水、精液などの体液類、皮膚、粘膜、各種臓器、骨などの組織、毛髪、体毛などを挙げることができる。
試料が生体由来の試料であって、非破壊分析を目的とする場合は、試料をそのまま工程(1)のNIRスペクトル測定に供してもよいが、測定精度を向上させるために試料の調製を行うことが好ましい。試料が固体の場合、異物を取り除くことが好ましく、試料が液体の場合、異物や沈殿を除き攪拌処理を行って均質化することが好ましい。
非破壊分析を目的としない場合は、粉砕や攪拌による均一化や除タンパク処理を行うことが好ましい。しかし試料中に含まれるFFAは非常に低濃度であることが予測されるため、直接分析では十分な測定感度が得られない可能性もある。よって、安定した回収率が得られることが条件であるが、試料を直接分析するよりも溶媒を用いて抽出した脂質濃縮物を測定試料として調製するのがより好ましい。抽出法については特に限定されないが、抽出効率の向上のため、除タンパク処理を先に行うことが好ましい。除タンパク処理の方法は特に限定されず、酸や有機溶媒の添加による沈殿法、限外濾過法、透析法、カラム法などが挙げられる。試料を直接分析する場合、測定試料中のFFA濃度(脂質濃縮物当たり)は、1.5重量%以上が好ましく、3.0重量%以上がさらに好ましい。
工程(1)に供する試料として、FFA含量の異なる複数の試料を用いることが好ましい。例えば米糠を試料とする場合、精米直後の新鮮な米糠及び当該米糠をある程度大量に保存し、劣化の進行に応じて経時的に測定に必要な量をサンプリングして測定することや、測定に適した量を最初からサンプリングして保存し、その同じ試料を経時的に測定することができる。また、例えば米油を試料とする場合、FFA含量の低い米油とFFA含量の高い米油を混合することによりFFA含量の異なる複数の米油を調製して用いることができる。工程(1)に供する複数の試料は、試料に含まれるFFAの最小値と最大値の範囲内に、得られる回帰式を用いて定量する被験試料中のFFA含量が含まれるように調製することが好ましい。工程(1)に供する試料数は多いほどよく、十分な予測精度を得るためには30試料以上が好ましく、50試料以上であることがより好ましい。
工程(2)では、工程(1)に供した試料中のFFAを特異的に定量する。工程(2)においてFFAを特異的に定量する方法は、特に限定されないが、例えば、酵素法、LC/MS法、非水系ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)カラムを用いたHPLC分析法(以下「HPLC−GPC法」という。)などが挙げられる、このうちHPLC−GPC法が好ましい。なお、アルカリ滴定法は試料中のFFAを特異的に定量することができないので、FFAを特異的に定量する方法に含まれない。
FFAを特異的に定量する方法がHPLC−GPC法である場合、HPLC−GPC法に用いる分離カラムとしては、特に限定されないが、移動相としてトルエンなどの低極性溶媒の使用が可能なものが好ましい。カラムの形状は必要な分離が得られるものであれば特に限定されない。カラム充填剤の材質は特に限定されないが、ポリマーベースのものが好ましく、ポリスチレンベースのものがより好ましく、スチレンジビニル共重合体をベースとするものがさらに好ましい。また、GPCカラムの排除限界分子量は300以上である必要があり、1000以上が好ましく、1000〜5000がより好ましい。浸透限界分子量は200以下である必要があり、100以下が好ましく、50以下がより好ましい。カラム温度はカラムの性能上問題ない範囲であれば特に限定されない。本発明に適するGPCカラムとして具体例を挙げれば、Phenogelシリーズ(Phenomenex)、GPC UT−800、GPC HT−800、GPC AT−800シリーズ(昭和電工)、HSPgelシリーズ(Waters)、TSKgelシリーズ(東ソー)、PLgelシリーズ(agilent technology)、SDVシリーズ(PSS)などが挙げられるが、中でもPhenogelシリーズ(Phenomenex)が好ましい。なお一本のGPCカラムで必要な分離を得ることが好ましいが、必要に応じて同種または異種のGPCカラムを複数本接続して用いてもかまわない。また、GPCカラムとそれ以外のHPLC用カラムを接続して用いてもかまわない。GPCカラム以外のHPLC用カラムとしては順相カラム、逆相カラム、アミノカラム、フェニルカラム、銀カラムなどが挙げられる。
移動相の流速はカラムの性能上問題ない範囲であれば特に限定されない。検出器はFFAを検出できるものであれば特に限定されないが、FFAと同時にTAG、DAG、MAG、ステロールエステル(SE)、ST、OZなどの成分を検出できるものが好ましい。具体的には、蛍光(FL)検出器、紫外可視分光(UV-Vis)検出器、フォトダイオードアレイ(PDA)検出器、蒸発光散乱(ELSD)検出器、質量(MS)検出器、電気化学(EC)検出器、示差屈折率(RI)検出器、電気電導度(CD)検出器、コロナCAD検出器などが挙げられる。中でも、RI検出器、MS検出器、ELSD検出器、UV-Vis検出器、PDA検出器、コロナCAD検出器を用いることが好ましく、RI検出器、ELSD検出器、コロナCAD検出器がより好ましい。なお必要に応じてこれらの異なる検出器を複数接続して用いてもかまわない。
HPLC−GPC法に用いる移動相は、FFAを溶解でき、かつGPCに適した溶媒が好ましく、さらにTAG、DAG、MAG、SE、ST、OZなどの成分を溶解できる溶媒がより好ましい。移動相はGPCカラムで用いることができる溶媒が好ましく、具体的にはTHF、クロロホルム、N、N−ジメチルホルムアミド(DMF)、ヘキサフルオロイソプロピルアルコール(HFIP)、ジクロロメタン(塩化メチレン)、トルエン及びこれらの混合溶媒などが挙げられる。この内、低極性溶媒を主成分とすることが好ましく、少量の酸を添加することが好ましい。低極性溶媒としては、トルエン、ベンゼン、キシレンなどの芳香族炭化水素のほか、ペンタン、ヘキサンなどの炭素数5〜17のアルカン類、シクロペンタン、シクロヘキサンなどのシクロアルカン類、ペンテン、ヘキセンなどの炭素数5〜20のアルケン類、石油エーテルなどを単独または混合(均質に混合できる場合)して用いることができるが、トルエンを用いることが好ましい。添加する酸としては、例えば、酢酸、リン酸、クエン酸、酒石酸、ホウ酸、ギ酸、TFAなどを好ましく用いることができ、中でも酢酸が好ましい。例としてPhenogelを分離カラムとして用いる場合にはトルエンと酸の混液が好ましい。酢酸とトルエンとの混液を移動相に用いる場合、酢酸を0.003〜0.03%(v/v)含むことが好ましく、0.005〜0.03%(v/v)含むことがより好ましく、0.01〜0.03%(v/v)含むことがさらに好ましい。
均質に混合できるならば、移動相にTHF、クロロホルム、DMF、HFIP、ジエチルエーテル、トリクロロベンゼン、ピリジン、o−ジクロロベンゼン、トリクロロベンゼン、ジクロロメタン、キノリン、m−クレゾール、炭素数3〜11のアルコール類、エーテル類、ジオキサン、アセトニトリル、ジメチルスルホキシド、酢酸エチル、アセトン、メチルエチルケトン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジクロロメタン、四塩化炭素、t−ブチルアセトアセタートなどの極性溶媒を必要に応じて加えてもよい。この中でも好ましいものはTHF、DMF、HFIP、ジクロロメタンである。
工程(2)において、HPLC−GPC法により試料中のFFAを定量する場合は、公知の脂質抽出法(例えば、ジエチルエーテル抽出法など)により試料から脂質濃縮物を抽出し、これを試料溶媒に溶解してHPLC−GPC法に供することが好ましい。HPLC−GPC法により試料中のFFAを定量する場合は、試料を直接試料溶媒に溶解してHPLC−GPC法に供してもよく、試料と同様に、公知の脂質抽出法により脂質濃縮物を抽出し、これを試料溶媒に溶解してHPLC−GPC法に供してもよい。HPLC−GPC法に供する試料濃度は脂質成分が完全に溶解していれば特に限定されず、試料液中のFFA濃度は検出器で定量的に測定できる範囲であれば特に限定されない。
試料から抽出した脂質濃縮物はそのまま試料溶媒に溶解し、HPLC法に供して構わないが、必要に応じてFFA以外の成分を低減するための前処理を行ってもよい。前処理の手法としては遠心分離による沈殿・不溶物の除去、脱水処理、脱ガム処理、ウインタリングによるロウ分の除去処理、複数の溶媒を用いた液液抽出処理、固相抽出処理などが挙げられる。
固相抽出処理にはあらかじめ固定相が充てんされたカラムを用いるカラム法と試料に固定相を添加するバッチ法の2通りがあるが、これらのいずれであっても構わない。カラム法で用いる好適なカラムとしては順相カラム、逆相カラム、アミノカラム、フェニルカラム、イオン交換カラム等が挙げられ、これらは単独で用いても、組み合わせて用いても構わない。固相抽出処理に適するカラムとしてはSep-pakシリーズ、Oasisシリーズ(Waters)、Inertsepシリーズ(ジーエルサイエンス)、BondEluteシリーズ(アジレントテクノロジー)、Presepシリーズ(和光純薬)などが挙げられる。一方バッチ法ではカラム法で用いられるカラムに充てんされている固定相と同様のものが使用できる。バッチ法での固定相は単独で用いてもよいが、複数の固定相を組み合わせてもよく、脱水剤を組み合わせて用いてもよい。固定相や脱水剤を組み合わせた処理法の一例としてはQuEChERS法やその改良法などが挙げられる。
これらの前処理を行う際には試料の酸化を避けるために抗酸化剤を添加してもよい。添加する酸化防止剤としては、例えばピロガロール(ピロガロール酸)、ジブチルヒドロキシトルエン(BHT)、ブチルヒドロキシアニソール(BHA)、t−ブチルハイドロキノン(TBHQ)、エトキシキンなどが挙げられる。
試料溶媒は、FFAを溶解できる溶媒であればよく、さらにTAG、DAG、MAG、SE、ST、OZなどの成分を溶解できる溶媒が好ましい。工程(2)において用いる試料溶媒としては、トルエン、ベンゼンのほか、ペンタン、ヘキサンなどの炭素数5〜17のアルカン類、ペンテン、ヘキセンなどの炭素数5〜20のアルケン類、石油エーテルなどの低極性溶媒を単独あるいは混合して用いるか、これにTHF、クロロホルム、DMF、HFIP、t−ブチルアセトアセタートなどの極性溶媒を必要に合わせて添加・混合した液が好ましい。なお、検出器としてRI検出器を用いる場合は試料溶媒の主成分は移動相に用いたものと同じものを用いることが好ましい。
一例として、Phenogel(Phenomenex社製)を用いた場合にはトルエンとアルコールの混液が好ましい。アルコールは特に限定されないが、炭素数4以下の低級アルコールが好ましく、具体的にはエタノール、メタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、n−ブタノール、t−ブタノールなどが挙げられ、中でも2−プロパノールが好ましい。試料溶媒としてトルエンとアルコールの混液を用いる場合、アルコール濃度は20〜100%(v/v)であることが好ましく、40〜100%(v/v)であることがより好ましく、40〜80%(v/v)であることがさらに好ましい。
HPLC−GPC法は、例えばアルカリ滴定法などの従来の化学分析法と比較して、高精度にFFAを定量することができる点で優れている。HPLC−GPC法は、分析試料を溶媒に溶解する以外の前処理を必要とせず、種々の分子種を含むFFAのピークを1本のピークとして分離できるため、脂肪酸を分子種毎に定量し、その定量値を合算する従来の分析法に比べて定量が非常に容易であり、測定値の再現性も高い。
上記HPLC−GPC法では分子量の近いMAGとFFAの分離を実現し、FFAの分析だけでなく、同時にTAG、DAG、MAG、SE、ST、OZなどの成分の量的なパターンを明らかにすることが可能である。工程(2)での分析条件はこれらの成分のピークが分離・検出できる条件で設定することが好ましい。
工程(2)のHPLC−GPC法は単独でFFAの分析法として用いることが可能である。この場合の分析試料は特に限定されないが、油脂原料及び/または油脂を含むことが好ましい。この場合の油脂原料は植物体であることが好ましく、米糠であることがより好ましい。その他の条件については上記HPLC−GPC法と同様である。
工程(3)ではNIRスペクトルを測定した波長範囲の全部または一部の波長領域で得られたスペクトルデータと、FFAの定量値を多変量解析法により解析し、FFAと関係する因子を決定する。NIRスペクトルを測定した波長範囲の一部とはNIRスペクトルを測定した波長範囲に含まれる任意の部分領域である。NIRスペクトルを測定した波長範囲の一部は特に限定されないが、800〜2500nmまたはその一部であることが好ましく、1063〜2355nmまたはその一部であることがより好ましい。また、FFAに関連する群(1435±10、1662±10、1763±10、2162±10および2245±10nm)の好ましくは1つ以上、より好ましくは2つ以上の領域を含むことがさらに好ましい。また、この1つの波長領域は最大波長と最小波長の差が20nm以上の連続した領域であることが好ましく、100nm以上の連続した領域である事がより好ましく、150nm以上であればさらに好ましい。この波長領域は1つのみを設定してもよく、複数設定してもよい。
工程(3)で用いられる多変量解析法には、PLS(partial least squares)回帰分析法、多重線形回帰分析(MLR、multiple linear regression)法、主成分回帰分析(PCR、principal component regreesion)法、CLS(classical least squares)回帰分析法などがあるが、この内PLS回帰分析法を用いるのが好ましい。PLS回帰分析は市販のソフトウェアを使用して行うことができる。使用するソフトウェアは、例えば、The Unscrambler(株式会社カモソフトウェアジャパン)、OPUS(ブルカー・オプティクス社)、NIRCal(日本ビュッヒ社)、Pirouette(ジーエルサイエンス社)などが例示できる。これらのソフトウェアを利用して、NIR拡散反射光スペクトルを解析し、その結果を本発明で用いる。使用するスペクトルデータまたはフーリエ変換スペクトルデータは、原スペクトルデータでもよいが、原スペクトルデータを加工したものを使用することが好ましい。データ加工の方法としては、例えば、一次微分、二次微分、三次微分などの多次微分(Derivative)、平滑化(Smoothing)、スペクトルの減算(Subtraction)、正規化(Normalize)、MSC補正(Multiplicative Scatter Correction)、SNV補正(Standard Normal Variate Correction)などが挙げられる。これらの加工方法は単独で用いても組み合わせて用いてもよい。中でも好ましい加工方法としてはSNV単独、二次微分単独、一次微分とSNV補正の組み合わせ、一次微分とMSC補正の組み合わせなどがある。
解析に用いる波長領域のスペクトルデータと定量したFFA含量(FFAの実測値)とを多変量解析法に供することにより、FFA含量と関係する因子を決定して回帰式を得ることができる。FFA含量と関係する因子とは、スペクトルデータの中に内在するFFA含量の変化と相関の高い仮想的な変量を指す。この因子の回帰係数を用いてスペクトルデータからFFA含量を予測する回帰式を作成する。近赤外分光法では、通常回帰式作成後、回帰式を得るための試料以外の試料(評価用試料)を用いて、作成された回帰式の測定精度を評価する。回帰式の測定精度は評価用試料の実測値と作成した回帰式によって算出された予測値による分析値との残差(測定誤差)の標準偏差や平均値によって評価する。この予測値(定量値)と実測値の散布図が図6、7である。検量線回帰式はこの実測値と予測値(定量値)の相関が最大となるように導出された回帰式である。
なお本発明においては、被験試料に水分が多く含まれる場合が想定され、その場合には乾物量あたりで定量することが考えられる。そうしたケースでは測定試料に水分除去処理を行ってからNIRスペクトルデータを取得し定量するか、何らかの方法で水分含量を定量し、予測値(定量値)を補正する必要がある。水分含量の定量法としては試料の一部を採取して乾燥減量法、カールフィッシャー法にて計測する方法が挙げられる。また、非破壊分析を目的とする場合には、NIRスペクトルデータを用いて水分含量を予測する方法を好適に用いることができる。
〔NIR分光法を利用したFFAの定量方法〕
本発明は、上記本発明の回帰式を得る方法により得られた検量線回帰式と、当該回帰式の作成に使用した波長領域における被験試料のNIRスペクトルデータとを用いるFFAの定量方法(以下「本発明のFFA定量法」という。)を提供する。具体的には、まず、被験試料のNIRスペクトルを測定する。被験試料の形態は、FFAの定量に用いる検量線回帰式を得るためにNIRスペクトル測定に供した試料と同じ形態であることが好ましい。換言すれば、本発明のFFA定量法においては、被験試料の形態と同じ形態の試料のNIRスペクトル測定値に基づいて得られた検量線回帰式を用いることが好ましい。NIRスペクトルを測定する波長範囲は、検量線回帰式の作成に使用した波長領域を含むものであればよく、800〜2500nmであることが好ましい。
被験試料のNIRスペクトルデータは、上記本発明の検量線回帰式を得る方法においてNIRスペクトルデータを取得する場合と同様にして取得することができる。すなわち、市販の近赤外分光分析計を用いてNIRスペクトルを測定しスペクトルデータ、好ましくはフーリエ変換スペクトルデータを取得する。スペクトルデータまたはフーリエ変換スペクトルデータは、原スペクトルデータでもよいが、原スペクトルデータを加工したものを使用することが好ましい。データ加工の方法としては、例えば、一次微分、二次微分、三次微分などの多次微分(Derivative)、平滑化(Smoothing)、スペクトルの減算(Subtraction)、正規化(Normalize)、MSC補正(Multiplicative Scatter Correction)、SNV補正(Standard Normal Variate Correction)などが挙げられる。これらの加工方法は単独で用いても組み合わせて用いてもよい。中でも好ましい加工方法としてはSNV単独、二次微分単独、一次微分とSNV補正の組み合わせ、一次微分とMSC補正の組み合わせなどがある。
被験試料のNIRスペクトルデータ(好ましくは前項の加工を施されたもの)を解析して、先に得られた検量線回帰式を適用することにより、FFA含量の予測値を算出する。ここでのスペクトルデータの解析と予測値(定量値)の算出は市販のソフトウェアを使用して行うことができる。使用するソフトウェアは例えばThe Unscrambler(株式会社カモソフトウェアジャパン)、OPUS(ブルカー・オプティクス社)、NIRCal(日本ビュッヒ社)、Pirouette(ジーエルサイエンス社)などが例示できる。
〔HPLC−GPC法を用いる植物油脂及び/またはその原料となる植物体を含む試料中の各種成分含量の分析方法〕
本発明者らは、本発明の検量線回帰式を得る方法および本発明のNIR定量方法を完成させる過程において、植物油脂及び/またはその原料となる植物体を含む試料中の各種成分(FFA、TAG、DAG、MAG、SE、STなど、米糠及び米油の場合はOZも含む)含量をHPLC−GPC法を用いて同時に分析する方法を完成させた。すなわち、本発明は、植物油脂及び/またはその原料となる植物体を含む試料のFFA、TAG、DAG、MAG、SE、ST、OZからなる群より選択される少なくとも2以上の成分を同時に分析する分析方法であって、GPCカラムを用いたHPLC分析法を用いることを特徴とする分析方法(以下「本発明の一斉分析法」という。)を提供する。
本発明の一斉分析法を用いれば、植物油脂及び/またはその原料となる植物体の成分であるFFA、TAG、DAG、MAG、SE、ST、OZを、それぞれ別々のピークとして検出することができるので、従来の分析方法では困難であった、これらの成分のうちの2以上の成分を同時に分析することが可能となる。
本発明の一斉分析法は、上記本発明の回帰式を得る方法の工程(2)において説明したHPLC−GPC法により、実施することができる。本発明の一斉分析法においても上記本発明の回帰式を得る方法の工程(2)と同様に、試料を直接試料溶媒に溶解するか、または公知の脂質抽出法により脂質濃縮物を抽出し、試料溶媒に溶解してHPLC−GPC法に供してもよい。測定しようとする成分の濃度は検出器で定量的に測定できる範囲であれば特に限定されない。
本発明の一斉分析法において分析対象となる成分が限定されている場合には、必要に応じて分析対象外の成分を低減するための前処理を行ってもよい。前処理法としては遠心分離による沈殿・不溶物の除去、脱水処理、脱ガム処理、ウインタリングによるロウ分の除去処理、複数の溶媒を用いた液液抽出処理、ケン化処理、アルカリ処理、蒸留処理、脱色処理、固相抽出処理などが挙げられる。
固相抽出処理および抗酸化剤の使用については本発明の回帰式を得る方法の工程(2)においてFFAの分析のためにHPLC−GPC法を用いる場合と同様である。
本発明の一斉分析法で用いる標品は特に限定されないが、測定しようとする成分の内、試料中に主成分として含まれる分子種を一つ以上含むものが好ましい。標品は市販の単一組成の標品でもよいし、複数の分子種の標品を混合して用いてもかまわない。また、試料から定量目的の成分だけを精製したものを標品として用いてもよい。
例えば米油を試料としてFFAを分析する場合、標品として、米油中に含まれるFFAの主成分であるオレイン酸、リノール酸、パルミチン酸を単独で用いてもよく、混合して用いてもよく、または米油から別途精製したFFA(分子種混合物)を標品として用いてもよい。同様に米油のTAGを定量する場合には、トリオレインなどの単一組成の標品を単独で用いてもよく、混合して用いてもよく、または精製米油をTAGの標品として用いてもよい。
〔植物油脂及び/またはその原料となる植物体を含む試料の劣化度の評価方法〕
本発明は、上記本発明のFFA定量法を用いた植物油脂及び/またはその原料となる植物体を含む試料の劣化度の評価方法を提供する。評価の基準は特に限定されないが、例えば米糠の場合、精米直後の米糠中のFFA濃度と比較して、保存後の米糠中のFFA濃度の増加の程度により劣化度を評価することができる。例えば米油の場合、精製直後の米油中のFFA濃度と比較して、保存後の米油中のFFA濃度の増加の程度により劣化度を評価することができる。本発明は、米糠中のFFAを迅速かつ簡便かつ非破壊的に定量することができるため、その米糠の劣化度を迅速に評価することができる点で非常に優れている。
〔米糠の安定性の評価方法〕
米糠を保存し、その劣化度を先述の評価方法を用いて評価し、その経時的な変化を記録することで、劣化速度を求めることができる。この劣化速度は米糠の安定性の指標であり、より米糠の劣化速度の低い品種を選定することで、酸化に強く、精製米油への加工性に優れた稲品種を選抜することができる。
なお、FFAの増加速度はTAGの濃度に影響されるため、米糠の劣化度が低く、TAG濃度が十分に高いうちは一定の速度(初速度)で進行するが、劣化が進みTAGの濃度が減少するに従ってFFAの増加速度は徐々に低下する。米糠の劣化速度は米糠の劣化度が低い段階のFFAの初期増加速度で評価することが好ましく、保存試験開始時の米糠は劣化の進んでいないものであることが好ましい。保存試験開始時のFFA濃度(脂質濃縮物当たり)は10重量%以下が好ましく、5重量%以下が好ましい。米糠の劣化速度には水分含量、酸素濃度も影響することから、水分含量、酸素濃度が同程度になるように試料調製することが好ましい。
米糠の保存条件は特に限定されないが、暗所で保存することが好ましく、インキュベーターなどを使用し、湿度と温度が一定な環境で保存することが好ましい。
〔植物油脂及び/またはその原料となる植物体を含む試料中の脂質成分の量的なパターンの測定〕
本発明は、上記本発明の一斉分析法を用いた植物油脂及び/またはその原料となる植物体を含む試料の組成分析法を提供する。本発明を用いれば、1回のHPLC−GPC分析により、植物油脂及び/またはその原料となる植物体を含む試料中の各種成分(FFA、TAG、DAG、MAG、SE、ST、OZなど)の量的なパターンが簡単に取得可能となる。
以下、実施例により本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
〔実施例1:HPLC−GPC法の移動相中の酢酸濃度の検討〕
まず、米原油に含まれる主要な脂質成分であるFFA、TAG、DAG、MAG、ST、SE、OZについて分析するHPLC−GPC法の移動相中の酢酸濃度の条件を検討した。以下の標品を試料とし、後述のHPLC-GPC法にて分析した。
<標品の一覧>
FFAとしてオレイン酸、TAGとしてトリオレイン、DAGとしてジオレイン酸グリセリル、MAGとしてモノオレイン酸グリセリル、STとしてβ-シトステロール、SEとしてオレイン酸β-シトステリル、OZとしてγ-オリザノール分子種混合物を標品として用いた。
<HPLC−GPC法>
(1)試料を試料溶媒(トルエン)に加えて25mg/mLとなるように溶解させた。
(2)HPLC−GPC法の検出器には示差屈折率検出器(RI検出器)を、カラムには、Phenomenex製「Phenogel」(7.8×300mm、粒子径5μm)を用いた。カラム温度60℃、流速1.0mL/minとし、酢酸濃度が0.25%(v/v)のトルエンを移動相として(1)の標品を個別に分析した。
(3)移動相の酢酸濃度を0.003、0.01、0.03%(v/v)に代えて同様の分析を行った。
得られたRIクロマトグラム(各標品のクロマトグラムを重ねて表示)を図1(a)〜(d)に示す。(a)は酢酸濃度が0.25%(v/v)の場合の結果、(b)は酢酸濃度が0.03%(v/v)の場合の結果、(c)は酢酸濃度が0.01%(v/v)の場合の結果、(d)は酢酸濃度が0.003%(v/v)の場合の結果である。なお、TAG、DAG、MAG、FFAは本条件では負のピークとして現れるが、便宜上クロマトグラムを正負反転して示した。
図1(a)〜(d)に示すように、酢酸濃度0.25%(v/v)ではFFAとSTのピークが分離できないが、酢酸濃度0.03%(v/v)以下でFFAとSTの良好な分離が得られることが判明した。ただし酢酸濃度が0.003%(v/v)未満になるとFFAの溶出が非常に遅くなって試料溶媒のピークと重なってしまうため、酢酸の適正濃度は0.003〜0.03%(v/v)であった。なお検出器として蒸発光散乱(ELSD)検出器など、溶媒のピークが検出されない検出器を用いた場合には、酢酸濃度が0.003%(v/v)以下であってもピークはブロードになるが分析可能であった。
〔実施例2:HPLC−GPC法の試料溶媒に用いる溶媒の検討〕
実施例1において試料を米原油とし、試料溶媒を2−プロパノールが各濃度(0、20、50、80、100%(v/v))のトルエン及び2−プロパノールの混液とし、移動相の酢酸濃度を0.01%(v/v)とし、その他の条件は実施例1と同じ条件でHPLC−GPC法を行った。得られたRIクロマトグラムから米原油中のFFA、TAG、DAG、ST、SE、OZのピークを同定するために、実施例1で用いた標品を同条件で分析した。
各濃度の2−プロパノールの米原油のRIクロマトグラムを図2(a)〜(e)に示す。(a)は2−プロパノール濃度が0%(v/v)の場合の結果、(b)は2−プロパノール濃度が20%(v/v)の場合の結果、(c)は2−プロパノール濃度が50%(v/v)の場合の結果、(d)は2−プロパノール濃度が80%(v/v)の場合の結果、(e)は濃度が2−プロパノール100%(v/v)の場合の結果である。なお、主たる分析対象であるFFAのピークを正にするため、便宜上、RIクロマトグラムを正負反転して示す。
図2(a)〜(e)に示すように、2−プロパノール濃度が0%(v/v)の場合はFFAのピークは未同定のピークと分離できず正確な定量ができないが、20〜100%(v/v)ではFFAと未同定のピークは分離し、単一のピークとして得られた。なお、MAGとSEは米原油にほとんど含まれていないため、ピークとして検出されなかった。
一例として2−プロパノール濃度が50%(v/v)の場合のRIクロマトグラムにおける各成分(FFA、TAG、DAG、ST、OZ)のピークの分離状態を図3に示す。 図3から明らかなように、米原油に含まれる5つの各成分のピークについて良好な分離が得られた。
〔実施例3:HPLC−GPC法による米原油の組成分析〕
図3のデータから米原油中のFFA、TAG、DAG、ST、OZの含量を算出した。各成分の定量値(重量%)について表1に示す。以下、図3のデータが得られたHPLC−GPC条件、すなわち実施例1のHPLC−GPC法において試料溶媒として2−プロパノール濃度が50%(v/v)のトルエン/2−プロパノール混液を用い、移動相の酢酸濃度が0.01%(v/v)である条件を「実施例3のHPLC−GPC法」という。
表1から明らかなように、HPLC−GPC法の条件を最適化することで米原油のTAGおよびその分解物(DAG、FFA)と代表的な機能性成分の含量を一度の分析で定量することが可能となった。
〔実施例4:遊離脂肪酸の測定法による化学分析値の比較〕
後述のLC/MS法にてFFA濃度を精密分析した種々の米原油について、実施例3のHPLC−GPC法、公知のアルカリ滴定法によりFFAを定量し、それぞれの測定値と精密分析値との相関を求めた。
<LC/MS法によるFFA精密測定>
(1)米原油を2−プロパノールに溶解して分析試料とした。
(2)下記の条件でLC/MS法にて分析を行った。分離カラムとしてODSカラムを、移動相としてメタノール/酢酸=99/1(v/v)を用いた。カラム温度は40℃、流速は0.45mL/minとした。LC/MS検出器を用いて、オレイン酸、リノール酸、パルミチン酸、ステアリン酸の4種について分子種毎にモニターイオンを設定して分析し、モニターイオンのクロマトグラムを得た。
(3)(2)と同様の条件でそれぞれの標品を分析し、モニターイオンによる定量を行った。
(4)4種の脂肪酸の定量値の合計値を脂肪酸含量の精密分析値として算出した。
結果を図4(a)および(b)に示した。(a)はHPLC−GPC法による分析値と精密分析値との相関であり、(b)はアルカリ滴定法による分析値と精密分析値との相関である。図4(a)および(b)からわかるように、HPLC−GPC法の方がアルカリ滴定法よりも精密分析値と高い相関を示しており、FFAの簡易測定法としての精度が優れていることが明らかとなった。
〔実施例5:OZ濃度の化学分析値への影響の検討〕
脱酸米原油(米原油に常法に従って蒸留脱酸処理とアルカリ脱酸処理を行い、FFA濃度0.1重量%以下としたもの)と、FFAを含まずOZ含量が約30重量%の米油(「胚芽油ガンマ30」(商品名)、築野食品工業株式会社製)とをOZの終濃度10〜20重量%となるように混合し、OZを高濃度で含みFFAを少量含むモデル試料を調製した。このモデル試料について実施例3のHPLC−GPC法およびアルカリ滴定法にてFFA含量を測定した。
OZ添加量とFFA含量の定量値の関係を図5に示す。HPLC−GPC法では試料中のOZ濃度が増加してもFFAの定量値に変化はなかったが、アルカリ滴定法では試料中のOZ濃度の増加に応じて滴定量が増加し、FFAの定量値が増大した。この結果から、米油に特徴的な成分であるOZを含む油脂試料のFFA含量を測定する場合、FFAを誤検出する恐れのあるアルカリ滴定法よりも、HPLC−GPC法の方が適していることが明らかとなった。
〔実施例6:米糠のFFA含量検量線回帰式の作成〕
(1)検量線回帰式を取得するための試料として、玄米を精米して得た米糠を30℃で保存し、経時的にサンプリングすることで劣化度の異なる米糠を得た。
(2)NIRスペクトル分析装置としてFT型近赤外分析計MPA(ブルカー・オプティクス社)を用いて、(1)の米糠のNIR拡散反射光を800nmから2500nm(12500〜4000cm−1)の範囲で測定した。
(3)スペクトルを取得した米糠についてジエチルエーテルを用いたソックスレー抽出法で脂質濃縮物を抽出し、実施例3のHPLC−GPC法を用いてFFA含量(脂質濃縮物当たり、または、米糠当たり)を定量した。
(4)(2)で得られた原スペクトルの前処理(SNV補正)を行い、前処理スペクトル(1333〜1640、2173〜2355nm)の波長データを説明変数とし、測定したFFA含量(脂質濃縮物当たり、または、米糠当たり)を目的変数とするPLS回帰分析により、米糠のFFA検量モデルを作成した。NIR予測値(定量値)と化学分析値(実測値)の相関を図6(a)および(b)に示した。(a)は脂質濃縮物当たりのFFA含量についての結果、(b)は米糠当たりのFFA含量についての結果である。ここでのNIR予測値(重量%、定量値)はFFA含量(脂質濃縮物当たり、または、米糠当たり)の検量線回帰式とNIRスペクトルのデータから測定装置によって導出される計算値である。定量値と実測値は高い相関(それぞれR=0.955およびR=0.962)を示し、本検量線回帰式が高い予測精度を持つことが明らかとなった。また、PLS回帰分析結果から、FFA含量に関連する重要な波長データとして1435nm±10nm、1662±10nm、1763±10nm、2162±10nm、2245±10nmの5つの領域がリストアップされた。
〔実施例7:米糠の脂質濃縮物のFFA含量検量線回帰式の作成〕
(1)実施例6の(3)で得た米糠の脂質濃縮物を測定試料とした。
(2)試料のNIR透過光を、FT型近赤外分析計MPA(ブルカー・オプティクス社)を用いて800nm〜2500nm(12500〜4000cm−1)の範囲で測定した。なお、油脂試料を均質化させるため、測定セルを75℃に加熱して温度の安定を確認してからNIRスペクトルを取得した。
(3)スペクトルを取得した脂質濃縮物について実施例3のHPLC−GPC法を用いてFFA含量を定量した。
(4)(2)で得られた原スペクトルの前処理(SNV補正)を行い、前処理スペクトル(1639〜2175nm)の波長データを説明変数とし、FFA含量を目的変数とするPLS回帰分析により、脂質濃縮物のFFA含量(脂質濃縮物当たり)の検量モデルを作成した。NIR予測値(定量値)と化学分析値(実測値)の相関を図7に示した。ここでのNIR予測値(重量%、定量値)はFFA含量の検量線回帰式とNIRスペクトルのデータから測定装置によって導出される計算値である。定量値と実測値は非常に高い相関(R=0.99)を示し、本検量線回帰式が高い予測精度を持つことが明らかとなった。
〔実施例8:至適波長範囲の検討〕
実施例6の米糠試料について、前処理スペクトルの波長データの波長範囲を様々に変えてFFA検量モデルを作成した。得られた検量モデルの全条件の決定係数Rを表2に示した。波長は用いた波長範囲を示しており、最小波長と最大波長で区切られた1区間(条件No.4、6〜8、10、16〜21)ないし2区間(条件No.1〜3、5、9、11〜15)のデータを用いて解析を行った。表2からわかるように条件No.1〜16でNIR予測値(定量値)と化学分析値(実測値)には高い相関関係(R>0.90)が見られた。これらの相関の高い条件には実施例6で示されたFFAに関連する波長領域である1435nm±10nm、1662±10nm、1763±10nm、2162±10nm、2245±10nmの領域を2つ以上含むという共通点があった。
〔実施例9:米原油の溶媒抽出液のFFA含量の化学分析値とNIR予測値の相関〕
FFA含量の異なる米原油を種々の溶媒(クロロホルム、アセトニトリル、t−ブタノール、アセトン、テトラヒドロフラン、ジメチルスルホキシド)にて抽出し、1%(w/v)溶液としてNIR透過光スペクトルを測定し、実施例3のHPLC−GPC法によるFFA含量(抽出液当たり)の化学分析値とNIRによる予測値の相関を調べた。表3に溶媒と相関係数Rの関係を示した。使用した溶媒の種類によって相関係数に大きな差が見られ、クロロホルム、アセトニトリルで高い相関が得られることから、米原油を希釈して測定する場合には溶媒としてクロロホルム、アセトニトリルが適することが確認された。
〔実施例10:米糠の劣化評価試験〕
精米直後でFFA含量(脂質濃縮物当たり)が5重量%程度の米糠を30℃のインキュベーターで保存した。経時的に米糠をサンプリングし、実施例3のHPLC−GPC法を用いてFFA含量(脂質濃縮物当たり)を測定した。米糠中のFFA含量(脂質濃縮物当たり)の経時的変化を図8に示す。FFA含量(脂質濃縮物当たり)5〜10重量%程度では保管時間に対して直線的に増加するが、その後は緩やかなカーブを描いて増加した。なお、劣化速度を直線性のある0〜96時間までのFFA含量の増加度で評価すると脂質濃縮物当たりで0.056重量%/hとなった。
〔実施例11:米糠の劣化評価試験における化学分析値とNIR予測値の比較〕
精米直後でFFA含量(脂質濃縮物当たり)が5重量%程度の米糠を40℃のインキュベーターで保存した。経時的に米糠をサンプリングし、NIRスペクトル分析装置としてFT型近赤外分析計MPA(ブルカー・オプティクス社)を用いて、米糠のNIR拡散反射光を800nmから2500nm(12500〜4000cm−1)の範囲で測定した。測定したNIRスペクトルを、実施例6で作成した米糠のFFA含量(脂質濃縮物当たり、または、米糠当たり)の検量モデルに当てはめて、FFA含量を予測した。また、実施例3のHPLC−GPC法を用いて、FFA含量(脂質濃縮物ないし米糠当たり)を測定した。米糠のFFA含量の経時的変化を図9(a)および(b)に示した。(a)は米糠の脂質濃縮物当たり、(b)は米糠当たりのFFA含量(重量%)である。劣化速度を直線性のある0〜96時間までのFFA含量の増加度で評価すると、脂質濃縮物当たりではNIR予測値が0.054重量%/h、化学分析値が0.055重量%/h、米糠当たりではNIR予測値が0.011重量%/h、化学分析値が0.012重量%/hとなり、共に有意差は見られなかった。

Claims (15)

  1. 植物油脂及び/またはその原料となる植物体を含む試料中の遊離脂肪酸を定量するための回帰式を得る方法であって、以下の工程(1)〜(3)を含むことを特徴とする回帰式を得る方法。
    (1)試料、試料の溶媒抽出液、または該溶媒抽出液から溶媒を除いた脂質濃縮物の近赤外光スペクトルを測定する工程
    (2)工程(1)に供した試料中の遊離脂肪酸を特異的に定量する工程
    (3)近赤外光スペクトルを測定した波長範囲の全部または一部の波長領域で得られたスペクトルデータと、遊離脂肪酸の定量値を多変量解析法により解析し、遊離脂肪酸と関係する因子を決定する工程
  2. 試料が米糠及び/または米油を含むことを特徴とする請求項1に記載の回帰式を得る方法。
  3. 工程(2)において非水系GPCカラムを用いたHPLC分析法で遊離脂肪酸を特異的に定量することを特徴とする請求項1または2に記載の回帰式を得る方法。
  4. 非水系GPCカラムを用いたHPLC分析法で用いる移動相の組成が0〜0.03%(v/v)の酢酸を含むトルエンであることを特徴とする請求項3に記載の回帰式を得る方法。
  5. 非水系GPCカラムを用いたHPLC分析法で用いる試料溶媒がトルエンとアルコールとの混液であり、アルコール濃度が20%(v/v)以上であることを特徴とする請求項3または4に記載の回帰式を得る方法。
  6. 工程(1)において試料または脂質濃縮物を、クロロホルム、アセトニトリル、t−ブタノール及びジメチルスルホキシドから選択される溶媒に溶解し、得られた溶液の近赤外光スペクトルを測定することを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の回帰式を得る方法。
  7. 工程(3)における波長領域が、1435±10nm、1662±10nm、1763±10nm、2162±10nmおよび2245±10nmから選択される少なくとも1つの領域を含むことを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の回帰式を得る方法。
  8. 近赤外光スペクトルが、拡散反射光または透過光のスペクトルであることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の回帰式を得る方法。
  9. 植物油脂及び/またはその原料となる植物体を含む試料中の遊離脂肪酸の定量方法であって、請求項1〜8のいずれかに記載の回帰式を得る方法により得られた回帰式と、当該回帰式の作成に使用した波長領域における被験試料の近赤外光スペクトルデータとを用いることを特徴とする遊離脂肪酸の定量方法。
  10. 植物油脂及び/またはその原料となる植物体を含む試料中の、遊離脂肪酸、トリアシルグリセロール、ジアシルグリセロール、モノアシルグリセロール、ステロールエステル、ステロール、及びγ−オリザノールからなる群より選択される少なくとも2以上の成分を同時に分析する分析方法であって、非水系GPCカラムを用いたHPLC分析法を用いることを特徴とする分析方法。
  11. 試料が米糠及び/または米油を含むことを特徴とする請求項10に記載の分析方法。
  12. 非水系GPCカラムを用いたHPLC分析法で用いる移動相の組成が0〜0.03%(v/v)の酢酸を含むトルエンであることを特徴とする請求項10または11に記載の分析方法。
  13. 非水系GPCカラムを用いたHPLC分析法で用いる試料溶媒がトルエンとアルコールとの混液であり、アルコール濃度が20%(v/v)以上であることを特徴とする請求項10〜12のいずれかに記載の分析方法。
  14. 請求項9に記載の遊離脂肪酸の定量方法を用いることを特徴とする植物油脂及び/またはその原料となる植物体を含む試料の劣化度評価方法。
  15. 請求項10〜13のいずれかに記載の分析方法を用いることを特徴とする植物油脂及び/またはその原料となる植物体を含む試料の脂質成分の組成分析法。
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