JP2015134123A - 介護用の頭頸部サポート具 - Google Patents

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Abstract

【課題】使用者の頸部を側方から確実に支持することができ、望ましくは更に使用者の下顎部を下方から支持する事により、使用者の頭部が前方に傾倒して俯き姿勢となり、呼吸が困難になるといった問題を解決し、使用者の呼吸や姿勢を改善して、健常な日常生活を可能にすることのできる頭頸部サポート具を提供する。【解決手段】使用者を一定の姿勢に保持する姿勢保持具又は車椅子に装着される頭頸部サポート具であって、使用者の頸部の右側及び/又は左側に延在して突出することのできる杆状の頸部サポート杆を具備することを特徴とする、介護用の頭頸部サポート具を提供する。【選択図】図1

Description

本発明は、被介護者等の使用者を一定の姿勢に保持する姿勢保持具又は車椅子等に装着して、利用者の頭頸部や下顎部を支持する為の介護用の頭頸部サポート具に関し、特に頭頸部の正中位での支持が難しい患者、障がい者、高齢者などの被介護者の頭頸部や下顎部を適切に支持することで、呼吸や姿勢を改善し、健常な日常生活を可能にする介護用の頭頸部サポート具に関する。
交通事故などによる頸椎捻挫や頸椎骨折を患った者、高齢者、或いは先天的に頸部に障がいを有する者等の被介護者にあっては、頸椎関節を保護する為に、頭部又は頸部を保持して頭頸部を安定させることが必要である。この為、従前においては、頸椎関節を保護する頸部コルセットが提供されている。
例えば、特許文献1(特開2006−197953号公報)では、頸部コルセットの平板状骨格部材及び外皮部分、又は駆体自体の、表裏間を貫通する多数の通気穴を設けたエアーバッグ等で構成して、頸部への接触を柔らかにすると共に、頸部皮膚面から外部への通気を確保して、暑さ対策と共に装着時の当たりを柔らかくして、頸部コルセットの装着感を改善することが提案されている。
また、身体の機能障害により歩行困難となった者の移動に使われる福祉用具として車椅子がある。かかる車椅子を利用する者(歩行困難となった者)が、更に頸部に損傷乃至は障害を有している場合には、車椅子にヘッドサポートを設けて、当該ヘッドサポートによって利用者の頭頸部を安定させる事も種々提案されている。
例えば特許文献2(特開2007−159951号公報)では、様々な種類の車椅子に着設することが可能で、着脱自在で、高さの調節はもとより、横方向への移動調節も可能な調整式ヘッドレストとして、「コの字状の本体パイプと該本体パイプに嵌着する嵌着部と他方端に背もたれフレームに挟着する挟着部を有する本体パイプ固定金具と、該本体パイプの上部に握着する握着部と調整パイプを嵌挿する嵌挿部を有する調整パイプ固定金具と、該調整パイプの先端にボールジョイントで回動自在に着設されたヘッドレストよりなる構成とする車椅子用の調整式ヘッドレスト」が提案されている。
また、特許文献3(特開2006−026140号公報)では、後付けヘッドレストであっても、車椅子の後部背面側から着座者を抱えたりすることが可能な後付けヘッドレストの支持機構を提供するべく、「伸縮自在で決めた長さを固定できる横バー部材と、該バー部材の両端に設けて車椅子後部の左右の縦フレームに緊締固定できると共に開放取外し自在のクランプ部材と、前記横バー部材の中間部に左右にスライドできスライド位置で固定できると共に、縦バー部材を挿脱自在で上下にスライドさせてスライド位置で固定できる当該縦バー部材の支持部を備えたクロスブラケット部材と、ヘッドレストを有するヘッドレスト取付バーを備えた縦バー部材と、該縦バー部材の上部に前後にスライドできスライド位置で固定できるように設けられ、前端部にヘッドレストを首振り固定可能に有するヘッドレスト取付バーとにより形成」することが提案されている。
更に特許文献4(特開2010−268868号公報)では、頸部に障害がある使用者であっても頭部を安定に保持することができ、また洗髪・整容にも好適な車椅子用頭部支持装置を提供するべく、「車椅子の背もたれの上部に、頭部支持部と頸部支持部とを上下2段に形成」する事が提案されている。
特開2006−197953号公報 特開2007−159951号公報 特開2006−026140号公報 特開2010−268868号公報
上記の様に、従前においても頸部を保護するコルセットは提案されており、また車椅子にヘッドサポート(「ヘッドレスト」と同義)を設置する事も知られている。更に特許文献4では、車椅子用頭部支持装置であって、車椅子の背もたれの上部に、頭部支持部と頸部支持部とを上下2段に形成することも提案されている。
しかしながら、当該特許文献4で提案されている車椅子用頭部支持装置において、頸部支持部は、外側端が左右の支柱に支持された左右一対の屈曲バーからなり、後方に屈曲させた部分で使用者の頸部を左右両側から支持するものとして構成されている。すなわち、引用文献4における頸部支持部は、後方に屈曲させた部分で使用者の頸部を支持するものとなっていることから、頸部の後ろ側の左右両側を支持できるに過ぎず、頭部が前方に傾斜した姿勢の場合には、当該頸部支持による頸部の支持が困難になっていた。
そこで本発明では、使用者の頸部を側方から確実に支持することができ、望ましくは更に使用者の下顎部を下方から支持する事により、使用者の頭部が前方に傾倒して俯き姿勢となり、呼吸が困難になるといった問題を解決し、使用者の呼吸や姿勢を改善して、健常な日常生活を可能にすることのできる頭頸部サポート具を提供することを第一の課題とする。
また、前記特許文献4に開示されている車椅子用頭部支持装置において、頸部支持部は、頸部における後ろ向きの移動を支持するものであって、実質的に従前におけるヘッドサポートと同じ向きに頸部を支持できるに過ぎなかった。この為、座位などの姿勢においては頭部の荷重を支持することができず、頭部の荷重がそのまま頸部にかかるものとなっていた。
そこで本発明では、頸部にかかる頭部の荷重を効果的に負担して、頸椎に障害乃至は損傷を有する使用者に適した頭頸部サポート具を提供することを第二の課題とする。
更に、頸椎に障害乃至は損傷を有する使用者(被介護者)であっても、仰臥姿勢においては頸部に対する負担も比較的軽い一方で、着座姿勢や起立した姿勢などでは頭部の傾倒を抑えたり、或いは頸部に対する頭部の荷重を負担したりする必要が生じる場合もある。また動かない場合には頸部をサポートする必要はないが、移動などを行う際には、頸部をサポートする必要が生じる場合もある。このような場合、姿勢を変える度、或いは移動などの状況に応じて、都度、頸部コルセットを付けたり外したりするのは煩わしく、また常に着けている場合には汗によるかぶれ等皮膚の炎症も考えられる。
そこで本発明では、着座位や移動時など、必要な場合にのみ簡易に装着でき、且つ確実に頭頸部をサポートすることのできるようにした頭頸部サポート具を提供すること、特に車椅子に着座して移動する場合などにおいて、頭頸部を確実にサポートすることのできるようにした頭頸部サポート具を提供することを第三の課題とする。
上記課題の少なくとも何れかを解決するべく、本発明では頸部を側方から、望ましくは更に下顎部を下方からサポートすることのできる頸部サポート杆を備えた頭頸部サポート具を提供する。
即ち本発明では、使用者を一定の姿勢に保持する姿勢保持具又は車椅子に装着される頭頸部サポート具であって、使用者の頸部の右側及び/又は左側に延在して突出することのできる杆状の頸部サポート杆を具備する介護用の頭頸部サポート具を提供する。
上記姿勢保持具は、交通事故などによる頸椎捻挫や契椎骨折を患った者、頸部の筋肉等が衰えた高齢者、或いは先天的に頸部に障害を有する者(被介護者)等が、一定の姿勢を保持する為に使用する器具であって、着座位、30℃仰臥位、立位等、一定の姿勢を保持することができるように使用者を支持する為の介護用器具であり、使用者が着座位を保持できるようにした介護椅子や自動車用シートなども含まれる。また車椅子とは、身体の機能障害により歩行困難となった者の移動に使われる福祉用具である。
そして本発明にかかる頭頸部サポート具は、当該姿勢保持具又は車椅子に装着して使用され、特に使用者の頸部を支持したり、補強したりするなどのサポートを達成するものである。かかる頭頸部サポート具は、使用者の頸部の右側及び/又は左側に延在して突出することのできる杆状の頸部サポート杆を備えている事から、当該頸部サポート杆で使用者の頸部、望ましくは更に下顎部を保持することができる。
かかる頸部サポート杆は、使用者の頸部の右側及び左側の両方に延在させる他、使用者の頸部の右側又は左側の何れか一方に延在するように形成する事もできる。左右何れか一方にだけ設けても良いのは、例えば何れか一方の頸部をサポートすれば十分な場合や、頸部における左右の何れか一方が怪我などによりサポートできない場合も考えられるためである。
また、かかる頸部サポート杆は、杵状に長い物として形成されており、一定の形状を維持できる範囲内において、任意に曲折できるように形成することが望ましい。使用者の体形や身長等は様々であって、使用者に合わせた形状に変形させることにより、頸部を的確にサポートできるようにするためである。例えば、この頸部サポート杆は、取り付け部分となる基端側を角パイプで形成すると共に、この角パイプに芯材となるアルミニウム製の丸棒を連結し、これを内側が発泡ゴムチューブで、外側がウレタンからなる二層構造のクッション材で覆って形成することができる。基端側を角パイプで形成する事により、基端側が不用意に曲折してしまう事を阻止することができ、また芯材にアルミニウム製の棒を使用することにより、使用者の頸部や下顎部に接してこれらを支持する部分が任意に変形できるようにすると共に、変形後の形を維持して、使用者の頸部や下顎部に的確に接して頭頸部をサポートすることができる。なお、かかるアルミニウム製の芯材に代わり、金属製の蛇腹管やその他の材料からなり、曲折自在であると共に曲折後の形状を維持できるものを使用しても良い。
また、この頸部サポート杆は、任意の太さに形成することができるが、直径20mm以上、100mm以下の範囲に形成するのが望ましい。20mm未満であると、芯材の太さも必要であることから、十分なクッション性を確保することができず、長時間の使用にあっては痛みが生じる可能性も否定できない為である。また100mmを超えると頸部に設置するのが困難になり、また設置した際にも違和感が生じる為である。
かかる頭頸部サポート具によれば、頸部サポート杆が使用者の頸部を、背後から前方に向かって延在する事により、頸部の傾倒を保持することができ、仮に使用者の頭部が前方に傾倒したとしても、確実に頸部を保持することができる。更に、当該頸部サポート杆が使用者の下顎部をも支持する場合には、頭部が前方に傾倒する事態を確実に阻止することができる。その結果、使用者の姿勢を改善して、俯き姿勢になることにより呼吸が困難になるのを未然に防止し、健常な日常生活を可能にすることのできる頭頸部サポート具が実現している。
よって、当該頸部サポート杆は、使用者の下顎部を支持する向きに突出可能であると共に、曲折自在に形成されている事が望ましい。使用者の下顎部を支持する事により、頸部に対する頭部の荷重の一部を負担することができ、頸部に対する負荷を軽減することができ、また頭部が前方に傾倒するのを阻止できる為である。よって、当該頸部サポート杆は曲折自在に形成し、頸部の側面から下顎の前方部分を支持できるように、利用者の体形に合わせて任意に変形できるように形成することが望ましい。
そして当該頭頸部サポート具は、介護用姿勢保持具又は車椅子に取り付けて使用されるものであることから、仮に当該頸部サポート杆が常に使用者の頸部をサポートする状態に突出しているとすれば、姿勢保持具又は車椅子への乗り降りが困難になる。そこで前記頸部サポート杆の基端側を、使用者の横方向又は上方向に回動自在に設け、当該頸部サポート杆の回動により、その先端側が使用者の正面に対して出没自在乃至は進退自在に形成するのが望ましい。このように形成する事により、利用者が介護用姿勢保持具又は車椅子の乗降する際、当該当該頸部サポート杆が邪魔になることはない。
また、この頭頸部サポート具は、更にヘッドサポートを備えて構成されるのが望ましい。即ち、この頭頸部サポート具が取り付けられる介護用姿勢保持具又は車椅子が、背凭れ部を有する介護用姿勢保持具又は車椅子であって、当該頭頸部サポート具は、更に当該背凭れ部の上方に設けられて使用者の頭部を支持するヘッドサポートを備えており、前記頸部サポート杆は、当該ヘッドサポートを介護用姿勢保持具又は車椅子に固定する支持フレーム又は当該ヘッドサポートの下方に回動自在に設けられることが望ましい。ヘッドサポートを備える事により、頭部が後方に傾倒する事を阻止することができ、頸部サポート杆と協働する事によって、一層確実に頭頸部をサポートすることができる。また、前記頸部サポート杆を、ヘッドサポートの下方、又は当該ヘッドサポートを介護用姿勢保持具又は車椅子に固定する支持フレームに対して回動自在に設ける事により、ヘッドサポートと頸部サポート杆とが一体になったモジュールとすることができ、これにより各種の介護用姿勢保持具又は車椅子に対して、取り付けを簡易に行う事ができる。
そして本発明では、前記課題の少なくとも何れかを解決するべく、背凭れ部を備えると共に、使用者を一定の姿勢に保持する姿勢保持具又は車椅子に装着される頭頸部サポート具であって、使用者の頭部を支持するヘッドサポートと、当該ヘッドサポートの下方であって、使用者の頸部の右側及び左側の何れか一方に延在して突出可能な頸部サポート杆を具備し、当該頸部サポート杆の基端側は、前記ヘッドサポート又は当該ヘッドサポートを介護用姿勢保持具又は車椅子に固定する支持フレームに回動自在に設けられると共に、当該頸部サポート杆の基端側には、当該頸部サポート杆を、その先端側が使用者の前方に存在する状態で固定可能なロック機構を具備する頭頸部サポート具を提供する。
すなわち、かかる頭頸部サポート具では、特に頸部サポート杆を、使用者の頸部の右側及び左側の何れか一方にだけ設けている。これは、前述したように、使用者が左右どちらかの頸部に怪我をしている場合など、頸部サポート杆を設置するのが適切でない場合も考えられるためである。そしてこの様に、頸部の左右何れか一方にのみ、頸部サポート杆を設けた場合には、頸部サポート杆の先端側が使用者の前方に存在する状態で当該頸部サポート杆を固定できるように、当該頸部サポート杆の基端側には、その回動を阻止する為のロック機構を設ける事が望ましい。仮に当該頸部サポート杆を、頸部の左右両側に存在させた場合には、その先端側をベルトなどで締結する事も可能であるが、左右一方にのみ設けた場合には、ベルトなどによる固定が困難である。そこで頸部サポート杆の基端側にロック機構を設けて、当該頸部サポート杆の回動を阻止し、利用者の頸部を的確に保持できるようにするものである。
かかるロック機構は、頸部サポート杆が前に突出している状態において、その回動を阻止できるものであれば良く、例えば前方に突出した状態の頸部サポート杆の後ろ側を支持して、当該頸部サポート杆の回動を阻止するように回動する金属製平板からなる支持プレートにより構成することができる。また当該ロック機構は、一定の力で凹むようにした突起と当該突起が嵌入する孔との組み合わせ、或いは使用者の前方に向かってのみ回動可能に構成したラチェット機構と、このラチェット機構を解除する解除手段との組み合わせによって構成しても良い。
そして上記頭頸部サポート具は、前記頸部サポート杆における基端側の設置位置を、任意に調整できるように構成することが望ましい。即ち、当該頸部サポート杆を、ヘッドサポート、又はヘッドサポートを姿勢保持具又は車椅子に固定する支持フレームに取り付ける場合、当該頸部サポート杆の取り付け位置を、高さ方向に調整自在としたり、或いは左右に頸部サポート杆を設ける場合には、両者の取り付け間隔を任意に調整できるようにする事が望ましい。これは、当該頸部サポート杆が使用者の乳様突起を支持する事により、当該頭頸部のサポートを確実に行う事ができる点に着目したものであり、各使用者の乳様突起位置に合わせて頸部サポート杆を突出させることができるようにしたものである。当該頸部サポート杆の取り付け位置の調整は、当該頸部サポート杆をネジで固定する場合には、当該ネジが羅着するネジ穴を複数の場所に設け、任意のネジ穴を選択することによって行うことができる。また、当該頸部サポート杆の取り付け部にスライダー機構を設けて、任意の位置で固定できるようにしても良い。
そして本発明では、前記課題の少なくとも何れかを解決する為に、使用者を一定の姿勢に保持する姿勢保持具又は車椅子であって、使用者の頸部が存在する位置に、前記した本発明にかかる頭頸部サポート具が設けられている姿勢保持具又は車椅子を提供する。
この姿勢保持具又は車椅子は、頸椎捻挫や契椎骨折を患った者、頸部の筋肉等が衰えた高齢者、或いは先天的に頸部に障害を有する者(被介護者)等を一定の姿勢に保持する為に使用される器具であって、望ましくは、使用者を着座位、30℃仰臥位、立位等、一定の姿勢を保持する介護用器具である。使用者の上半身が起き上がっている状態において、頸部をサポートする効果が高い為である。また、当該姿勢保持具又は車椅子、特に使用者の移動を補助するものであることが望ましい。移動時における頭部の傾倒を阻止し、頸部をサポートする為である。
上記本発明にかかる頭頸部サポート具は、使用者の頸部の右側及び/又は左側に延在して突出することのできる杆状の頸部サポート杆を具備することから、使用者における少なくとも頸部、更に望ましくは下顎部を確実に支持することができ、これにより使用者が俯き姿勢になるのを防止して呼吸を楽にし、また姿勢を改善して、健常な日常生活を可能にすることのできる頭頸部サポート具を提供することができる。よって、かかる頭頸部サポート具によれば、頸部の後ろ側の左右両側だけの支持に留まらず、頸部の側方を支持できることから、仮に頭部が前方に傾斜した姿勢の場合であっても、利用者の頸部を確実にサポートすることができる。
また、頸部サポート杆を、使用者の頸部の右側及び/又は左側に延在して突出させ、更に使用者の下顎部を支持する向きに突出させることにより、頸部にかかる頭部の荷重を効果的に負担して、頸椎に障害乃至は損傷を有する使用者に適した頭頸部サポート具を提供することができる。かかる構成により、従前において提供されているような、単に頸部の後ろ向きの移動を支持するヘッドサポートとは異なり、頭部の荷重をも支持できることができることから、頸部に対する頭部の荷重を軽減させることができる。
更に、本発明にかかる頭頸部サポート具は、姿勢保持具又は車椅子に取り付けて使用できることから、着座位や移動時など、必要な場合にのみ簡易に装着でき、且つ確実に頭頸部をサポートすることのできるようにした頭頸部サポート具を提供することができ、特に車椅子に着座して移動する場合などにおいて、頭頸部を確実にサポートすることのできるようにした頭頸部サポート具を提供することができる。
即ち、仰臥姿勢でいる時など、特に頸部をサポートする必要がない場合には、頸部に対する設置物を無くし、一方で移動や座位など、頸部をサポートする必要がある場合には、当該頭頸部サポート具を設けた姿勢保持具又は車椅子を利用する事で、簡易に頭部乃至は頸部のサポートを実施することができる。
第1の実施の形態にかかる頭頸部サポート具を示す斜視図 第1の実施の形態にかかる頭頸部サポート具を示す背面図 第1の実施の形態にかかる頭頸部サポート具の、頸部サポート杵の接続構造を示す(A)要部分解斜視図、(B)要部斜視図 第1の実施の形態にかかる頭頸部サポート具の、(A)ロック機構を施錠した状態を示す要部斜視図、(B)ロック機構を開錠した状態を示す要部斜視図 他の実施の形態にかかるロック機構について、(A)ロック機構を施錠した状態を示す要部斜視図、(B)ロック機構を開錠した状態を示す要部斜視図 第1の実施の形態にかかる頸部サポート具の、頸部サポート杆が開いた状態を示す斜視図 第1の実施の形態にかかる頸部サポート具を、介護用姿勢保持具又は車椅子に設置した状態を示す側面図 第2の実施の形態にかかる頭頸部サポート具(片側のみ)を示す斜視図 第3の実施の形態にかかる頭頸部サポート具(バンド締結)の、(A)バックルを外した状態を示す斜視図、(B)バックルを嵌めた状態を示す斜視図
以下、図面を参照しながら本実施の形態にかかる頭頸部サポート具を具体的に説明する。図1は、第1の実施の形態にかかる頭頸部サポート具を示す斜視図である。本実施の形態にかかる頭頸部サポート具は、ヘッドサポート11、頸部サポート杵21及び支持フレーム31とから成る。ヘッドサポート11は、ウレタン樹脂を用いて低反発性を有するクッション部材として構成しており、使用の際には使用者の後頭部ないし頸部の形状に合わせて適切に支持することができる。また、本実施の形態においては、ヘッドサポート11における、使用者の後頭部を支持する支持部分を、使用者の後頭部の形状に合わせた曲面形状(エルゴノミクス形状)に形成しており、これにより、一層効果的に使用者の頭部を支持することができる。ヘッドサポート11により、使用者の後頭部を支持することで、頭部が後方に傾倒する事を阻止することができ、後述する頸部サポート杆21と協働する事によって、一層確実に頭頸部をサポートすることができる。
頸部サポート杵21は、ヘッドサポート11との接続部分へ取り付ける基端側の取り付け部分を角パイプ22で形成すると共に、角パイプ22に芯材となるアルミニウム製の丸棒(図示せず)を連結し、これを内側が発泡ゴムチューブで、外側がウレタンからなる二層構造のクッション材23で覆って構成した。基端側を角パイプ22で形成する事により、基端側が不用意に曲折してしまう事を阻止することができる。また芯材にアルミニウム製の丸棒を使用することにより、使用者の頸部や下顎部に接してこれらを支持する部分が任意に変形できるようにすると共に、変形後の形を維持して、使用者の頸部や下顎部に的確に接して頭頸部をサポートすることができる。芯材はアルミニウム製の丸棒の他にも、例えば金属製の蛇腹管等を用いて形成することもできる。頸部サポート杵21の太さは、本実施の形態においては直径40mmとして形成しており、十分なクッション性を確保しつつも使用の際に違和感を感じることなく使用することができる。頸部サポート杵21は、任意の太さに形成することができ、他にも20mm、30mm、50mm、60mm、或いはその他の太さとして適宜形成してよい。特に本実施の形態にかかる頭頸部サポート具において、頸部サポート杵21は、使用者の頸部の横を通り、襟元側に沿うように曲折しており、これにより利用者の下顎部分を支持して、頭部の荷重を支持することができる。
本実施の形態においては、以上のように構成した頸部サポート杵21を、使用者の頸部の右側及び左側に各々1本ずつ、頸部サポート杆21が使用者の頸部の背後から前方に向かって延在するよう設けて構成した。頸部サポート杆21は使用者の頸部の背後から前方に向かって延在しており、頸部の傾倒を保持することができ、仮に使用者の頭部が前方に傾倒したとしても、確実に頸部を保持することができる。また、頸部サポート杆21は使用者の下顎部も支持することができ、頭部が前方に傾倒する事態を確実に阻止することができる。これにより、使用者の姿勢を改善して、俯き姿勢になることにより呼吸が困難になるのを未然に防止し、健常な日常生活を可能にすることのできる頭頸部サポート具とすることができる。なお、頸部サポート杵21は、後述するように使用者の頸部の右側又は左側の何れか一方のみに延在させてもよい。
支持フレーム31は、角パイプにより形成しており、後述するように介護椅子や車椅子等の姿勢保持具又は車椅子に接続することができるように構成されている。よって、当該支持フレーム31により、当該頭頸部サポート具を姿勢保持具又は車椅子に設置することができる。なお、姿勢保持具又は車椅子に対する頭頸部サポート具の設置構造は、他の固定手段によってもよく、例えば、本実施の形態にかかる頭頸部サポート具と姿勢保持具又は車椅子とを紐やベルトで固定したり、或いはネジ止めや溶接により固定一体化することもできる。
図2は、第1の実施の形態にかかる頭頸部サポート具を示す背面図である。本実施の形態においては、ヘッドサポート11の背面部分において左右の頸部サポート杵21及び支持フレーム31とを接続した。その際、当該ヘッドサポート11の背面部分には、これら左右の頸部サポート杵21及び支持フレーム31を接続する為に、硬質な板状で複数のネジ穴が形成されているプレート部材34を設けても良い。支持フレーム31は、このプレート部材に設けられた「コ」字状のステー35に対して軸回り自在に設けられた軸部材32に対して、軸方向に摺動自在に連結されている。その結果、この頭頸部サポート具を姿勢保持具又は車椅子に設置する際に、ヘッドサポート11の位置や角度を適宜調整して設置することができる。但し、その他の取り付け金具を使用することも当然可能である。左右の頸部サポート杵21とヘッドサポート11との接続は、左右の頸部サポート杵21の回動を阻止するロック機構を備える接続部分により行った。
図3は、かかる接続部分の構成を示しており、第1の実施の形態にかかる頭頸部サポート具の、頸部サポート杵の接続構造を示す(A)要部分解斜視図、(B)要部斜視図である。本実施の形態においては、角パイプから成る中軸24に対して頸部サポート杵21及びロック機構26を連結し、中軸24をヘッドサポートの背面部分に設けたプレート部材34に固定している。本実施の形態において、当該中軸24はプレート部材34に対してネジによって締結されており、その他にも溶着などによってヘッドサポートに接続することができる。
頸部サポート杵21は、その基端部分に存在する角パイプ22を上下から2枚の固定プレート25で挟み、これらをネジとナットにより固定した。この固定プレート25は、金属を用いて平板状に形成したものであり、角パイプを挟んだ反対側の端部は中軸24に溶接して固定されている。これにより当該頸部サポート杵21は、固定プレート25を介して中軸24に固定されている。また、角パイプ22に設けるネジ穴をネジの径よりも大きく形成することで、ネジに対して軸周りに回動自在(使用者から見て横方向)となるよう頸部サポート杵21を連結している。本実施の形態のように、頸部サポート杵21を使用者の横方向に回動自在に設けることで、頸部サポート杆21を回動させる事により、その先端側を使用者の正面に対して出没自在乃至は進退自在とすることができ、頸部サポート杆が、介護用姿勢保持具又は車椅子への乗降に際して邪魔になることを無くすことができる。また、本実施の形態にかかる頭頸部サポート具では、ヘッドサポート11と頸部サポート杆21とが一体になったモジュールを構成しており、これにより各種の介護用姿勢保持具又は車椅子に対して、取り付けを簡易に行うことができる。
前記ロック機構26は、金属板からなり、基端側が前記中軸24に軸支されて回動自在となっているロック板27と、このロック板の先端側に突出して設けられ、当該ロック板27の回動を操作する取っ手とで構成している。この取っ手の先端側には、作業者における操作性や安全性を考慮して球状の把持部を形成している。特に、このロック機構において、ロック板27は、前方に突出した状態となっている頸部サポート杵21の角パイプの側面を支持するように構成されており、ロック板の回動により、当該角パイプの側面を支持して、頸部サポート杵21の回動を阻止するものとして形成されている。
図4は、第1の実施の形態にかかる頭頸部サポート具の、(A)ロック機構を施錠した状態を示す要部斜視図、(B)ロック機構を開錠した状態を示す要部斜視図である。図4(A)に示すように、ロック機構26を施錠した状態においては、ロック板27が前方に突出した状態の頸部サポート杆21における接続部分の角パイプ22の基端部分の内側面を支持して、当該頸部サポート杆の回動を阻止することができる。そして、図4(B)に示すように、ロック機構26の解錠は、取っ手28を把持して回動させて、ロック板27による角パイプ22の基端部分の支持を解除することにより行う事ができる。このロック機構の解除の状態において、頸部サポート杵21は回動自在となる。このようにして回動自在となった頸部サポート杵21は、後述する図5に示すように、外側に開く向きに回動させることができる。
なお、ロック機構26は、頸部サポート杆21が前方に突出している状態において、その回動を阻止できるものであればよく、他にも例えば一定の力で凹むようにした突起と当該突起が嵌入する孔との組み合わせや、或いは使用者の前方に向かって飲み回動可能に構成したラチェット機構と、このラチェット機構を解除する解除手段との組み合わせによって構成することもできる。
また、前述したロック機構26に関して、更に頸部サポート杵21が開いて横方向に存在する状態において、前記ロック板27により、その回動が阻止されることの無い様に、当て板を設ける事が望ましい。例えば利用者が、開いた状態においてロックされていることを知らず、頸部サポート杵21を前方に回動させた場合には、当該ロック機構が壊れてしまう事も考えられるためである。
図5は、前記ロック機構26の他の実施の形態を示しており、頸部サポート杵21における基端部分に存在する角パイプ22には、外側に向かって広がる当て板29を一体形成している。かかる当て板29を設けることにより、頸部サポート杵21を外側に向けた状態において、前記ロック板27が施錠方向に回動しようとしても、当該回動はこの当て板29によって制限される為、当該頸部サポート杵21の施錠を阻止することができる。その結果、意図しない頸部サポート杵21の施錠状態を無くし、ロック機構が壊れる可能性を大幅に減じることができる。
図6は、第1の実施の形態にかかる頸部サポート具の、頸部サポート杆が開いた状態を示す斜視図である。前述のようにロック機構が解錠された状態において、頸部サポート杵21は回動自在となっており、その先端側は使用者から見て横方向に任意に移動することができる。これにより、頸部サポート杵21は使用者の正面に対して出没自在乃至は進退自在となる為、装用の際に邪魔になることを防ぎ、また頸部サポート杵21の位置を任意に調整することができる。
以上のように構成される本実施の形態にかかる頭頸部サポート具は、例えば、図7に示すように使用することができる。図7は、第1の実施の形態にかかる頸部サポート具を、車椅子に設置した状態を示す側面図である。本実施の形態にかかる頭頸部サポート具と車椅子41との連結は、車椅子41の背面部分に支持フレーム31を挿入することができる筒部材33を溶接等によって固定し、当該筒部材33に支持フレーム31を挿入することで行った。これにより、本実施の形態にかかる頭頸部サポート具を設置する際には、筒部材33に支持フレーム31を挿入するだけでよく、また本実施の形態にかかる頭頸部サポート具を外す際には支持フレーム31を筒部材33から抜くだけでよいので、車椅子41から簡易に着脱することができる。
以上のように構成される本実施の形態にかかる頭頸部サポート具は、使用者の頸部の右側及び左側に延在して突出することのできる杆状の頸部サポート杆21を具備することから、使用者における少なくとも頸部、更に望ましくは下顎部を確実に支持することができ、これにより使用者が俯き姿勢になるのを防止して呼吸を楽にし、また姿勢を改善して、健常な日常生活を可能にすることのできる頭頸部サポート具を提供することができる。よって、かかる頭頸部サポート具によれば、頸部の後ろ側の左右両側だけの支持に留まらず、頸部の側方を支持できることから、仮に頭部が前方に傾斜した姿勢の場合であっても、利用者の頸部を確実にサポートすることができる。
また、本実施の形態にかかる頭頸部サポートは、頸部サポート杆21を、使用者の頸部の右側及び/又は左側に延在して突出させ、更に使用者の下顎部を支持する向きに突出させることにより、頸部にかかる頭部の荷重を負担して、頸椎に障害乃至は損傷を有する使用者に適した頭頸部サポート具を提供することができる。かかる構成により、単に頸部の後ろ向きの移動を支持するヘッドサポートとは異なり、頭部の荷重をも支持できることができることから、頸部に対する頭部の荷重を軽減させることができる。
更に、本実施の形態にかかる頭頸部サポート具は、車椅子41のみならず、その他の介護用姿勢保持具(図示せず)に取り付けて使用できる。これら車椅子や姿勢保持具に取り付けて使用することにより、着座位や移動時など、必要な場合にのみ、簡易にこれら車椅子などに装着でき、且つ確実に頭頸部をサポートすることのできるようにした頭頸部サポート具を提供することができる。特に車椅子に着座して移動する場合などにおいて、頭頸部を確実にサポートすることのできるようにした頭頸部サポート具を提供することができる。即ち、仰臥姿勢でいる時など、特に頸部をサポートする必要がない場合には、頸部に対する設置物を無くし、一方で移動や座位など、頸部をサポートする必要がある場合には、当該頭頸部サポート具を設けた姿勢保持具や車椅子を利用する事で、簡易にサポートを実施することができる。
図8は、第2の実施の形態にかかる頭頸部サポート具(片側のみ)を示す斜視図である。本実施の形態においては、頸部サポート杵21を使用時の状態から見て左側のみに設けて構成した。本実施の形態のように、左右一方にのみに頸部サポート杵21を設けた場合には、後述するベルトなどによる固定が困難である。よって頸部サポート杵21の回動を阻止するロック機構を設けることが望ましく、本実施の形態においても、第1の実施形態と同様に頸部サポート杵21とヘッドサポート11との接続部分にはロック機構を設けた。これにより、頸部サポート杆21の回動を阻止し、利用者の頸部を的確に保持することができる。本実施の形態にかかる頭頸部サポート具によれば、何れか一方の頸部をサポートすれば十分な場合や、頸部における左右の何れか一方が怪我などによりサポートできない場合等の事情から頸部サポート杆21を設置するのが適切でない場合であっても利用することができる頭頸部サポート具を提供することができる。
図9は、第3の実施の形態にかかる頭頸部サポート具(バンド締結)の、(A)バックルを外した状態を示す斜視図、(B)バックルを嵌めた状態を示す斜視図である。本実施の形態は、第1の実施形態において示した頸部サポート杵21の回動を阻止するロック機構に代えて、バンド51及びバックル52により固定するものである。図9(A)に示すように、本実施の形態にかかる頭頸部サポート具は、バックルを外した状態においては頸部サポート杵21が回動自在であり、図9(B)に示すようにバックル52を嵌めた状態においては頸部サポート杵21の回動が阻止される。バックル52に代えて、面ファスナー等の他の固定部材を用いて構成することもできる。本実施の形態にかかる頭頸部サポート具は、頭頸部サポート杵21の固定を使用者から見て正面で行うことができるので、より簡易に頸部サポート杵21の固定を行うことができる。これにより、補助者無しに着脱する場合等であっても容易に着脱することができる頭頸部サポート具を提供することができる。
11 ヘッドサポート
21 頸部サポート杵
22 角パイプ
23 クッション材
24 中軸
25 固定プレート
26 ロック機構
27 ロック板
28 取っ手
31 支持フレーム
32 軸部材
33 筒部材
41 車椅子
51 バンド
52 バックル

Claims (6)

  1. 使用者を一定の姿勢に保持する姿勢保持具又は車椅子に装着される頭頸部サポート具であって、
    使用者の頸部の右側及び/又は左側に延在して突出することのできる杆状の頸部サポート杆を具備することを特徴とする、介護用の頭頸部サポート具。
  2. 前記頸部サポート杆は、使用者の下顎部を支持する向きに突出可能であると共に、曲折自在に形成されている、請求項1に記載の頭頸部サポート具。
  3. 前記頸部サポート杆の基端側は、使用者の横方向又は上方向に回動自在に設けられており、当該頸部サポート杆の回動により、その先端側が使用者の正面に対して進退自在となっている、請求項1又は2に記載の頭頸部サポート具。
  4. 前記介護用姿勢保持具又は車椅子は、背凭れ部を有する介護用姿勢保持具又は車椅子であって、
    更に当該背凭れ部の上方に設けられて使用者の頭部を支持するヘッドサポートを備えており、
    前記頸部サポート杆は、当該ヘッドサポートを介護用姿勢保持具又は車椅子に固定する支持フレーム又は当該ヘッドサポートの下方に回動自在に設けられる、請求項1〜3の何れか一項に記載の頭頸部サポート具。
  5. 使用者を一定の姿勢に保持すると共に背凭れ部を備えた姿勢保持具又は車椅子に装着される頭頸部サポート具であって、
    使用者の頭部を支持するヘッドサポートと、当該ヘッドサポートの下方であって、使用者の頸部の右側及び左側の何れか一方に延在して突出可能な頸部サポート杆を具備し、
    当該頸部サポート杆の基端側は、前記ヘッドサポート又は当該ヘッドサポートを介護用姿勢保持具又は車椅子に固定する支持フレームに回動自在に設けられると共に、当該頸部サポート杆の基端側には、当該頸部サポート杆を、その先端側が使用者の前方に存在する状態で固定可能なロック機構を設けたことを特徴とする頭頸部サポート具。
  6. 使用者を一定の姿勢に保持する姿勢保持具又は車椅子であって、使用者の頸部が存在する位置に、請求項1〜5の何れか一項に記載の頭頸部サポート具が設けられている、姿勢保持具又は車椅子。
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