発明の詳細な説明
〔連邦政府が後援する研究または開発に基づいてなされる発明に対する権利に関する明細書〕
本発明は、米国エネルギー省がカルフォルニア大学の理事に対して与えた規約番号W−7405−ENG−36、および米国エネルギー省がロスアラモス国家安全保障有限責任会社に対して与えた規約番号DE−AC52−06NA25396に基づく支援によってなされた。政府は本発明の所定の権利を有する。
〔関連文献〕
本明細書は、2008年8月29日に提出された米国仮特許番号第61/190,520号に対して優先権を主張するものである。
〔背景技術〕
世界的に人口が増加し、使用可能な農地が失われるか、または使用不能になり続けるため、より効率的で、かつ、地球に優しい農業システムに対する必要性は、人類にとって興味のある最優先事項である。収穫率、タンパク質含有量、および植物の成長速度を向上させることは、より効率的に目下の課題に対処し得る農業システムの開発において主な目的になっている。
近年では、十分に開発された多くの農作物の生産量は横這い状態になる傾向にあるため、改良された農作物の生産技術の重要性が高まるばかりである。多くの農作業は、コストおよび収益が農作物の迅速な回転率または市場までの時間に依存することから、時間に敏感である。そのため、価値の高い農作物(穀物、野菜、ベリーおよび他の果物など)に関する多くの農業ビジネスにとって、植物の早い成長が経済的に重要な目標である。
遺伝子工学は、いまだ持続的な農業技術の開発において賛否両論があるもののますます重要な役割を果たしており、今後もその役割を果たし続ける。近年、数多くの遺伝的に改変された植物および関連技術が開発されており、今日では当該植物および関連技術の多くが広く用いられている(Factsheet: Genetically Modified Crops in the United States, Pew Initiative on Food and Biotechnology, August 2004, (pewagbiotech.org/resources/factsheets))。現在、採用されるトランスジェニック植物の種類は非常に多く、また増加しており、2006年には約2億5000万エーカーでトランスジェニック植物を栽培している。
トランスジェニック植物技術の承認は徐々に増加しているかもしれないが(特に、米国、カナダおよびオーストラリアにおいて)、世界中の多くの地域(特に、ヨーロッパ)では農業における遺伝的に改変された植物の導入は未だに遅れている。そのため、信頼性があり、永続的な農業という目的を追い求めるとともに、毒素または他の潜在的に問題のある物質を植物および/または環境に取り込むことのない、遺伝的に設計された植物の開発への強い関心がある。また、目的(除草剤耐性、ペストおよび疾病への抵抗性、ならびに総生産量を改良することなど)達成のコストを最小限にすることへの強い関心がある。したがって、これらの目的を満足させることが可能なトランスジェニック植物に関する必要性がいまだにある。
植物の早い成長という目標は、様々な植物調節システムに関する数多くの研究によって追求されている。この調節システムの多くはいまだ完全には理解されていない。特に、炭素および窒素の代謝を調整する植物調節機構は、完全に明らかになっていない。これらの調節機構は植物の成長および発達に欠かせない影響力があると推定される。
光合成生物における炭素および窒素の代謝は、植物資源およびエネルギーの効果的な利用を保証する調整方法において調節されなければならない。炭素および窒素の代謝に関する従来の理解は、所定のステップおよびより大きなシステムのサブシステムである代謝経路の詳細を含む。光合成生物において炭素代謝はCO2固定によって始まり、2つの主な処理(C−3代謝およびC−4代謝と呼ばれる)によって進行する。C−3代謝を伴う植物において、酵素リブロース二リン酸カルボキシラーゼ(ribulose bisphosphate carboxylase:RuBisCo)は、CO2とリブロース二リン酸との結合を触媒し、3−ホスホグリセリン酸塩を産生する。当該3−ホスホグリセリン酸塩は、植物が炭素含有化合物を合成するために用いる3炭素化合物(C−3)である。C−4代謝を伴う植物において、CO2は、酵素ホスホエノールピルビン酸カルボキシラーゼによって触媒される反応において、ホスホエノールピルビン酸塩と結合されて4炭素を含有する酸を形成する。この酸は、脱炭酸されてCO2を放出する場である維管束鞘細胞に輸送されて、その後、C−3植物に用いられた同じ反応中でリブロース二リン酸と結合される。
数多くの研究では、様々な代謝産物が窒素代謝の植物調整に重要であることがわかっている。これらの化合物としては、有機酸であるリンゴ酸、ならびにアミノ酸であるグルタミン酸およびグルタミンが挙げられる。窒素は、酵素であるグルタミンシンテターゼ(glutamine synthetase:GS)の働きによって光合成生物に吸収される。グルタミンシンテターゼは、アンモニアとグルタミン酸との結合を触媒し、グルタミンを作る。GSは、植物における窒素吸収に重要な役割を果たしており、グルタミン酸に対するアンモニアの付加を触媒することによってATP依存性反応の中でグルタミンを作り出す(Miflin and Habash, 2002, Journal of Experimental Botany, Vol. 53, No. 370, pp. 979-987)。また、GSは、光吸収ならびにタンパク質および窒素輸送化合物の機能停止の結果として放出されたアンモニアを再吸収する。GS酵素は2つの一般分類に分けられ得る。その1つは細胞質の形態(GS1)を表し、もう1つは色素体(すなわち、葉緑体)の形態(GS2)を表す。
これまでの研究では、GS1の増大した発現量がGS活性および植物成長のレベルを増加させることを証明しているが、報告は一貫性が欠けている。例えば、Fuentesらには、タバコ中のCaMV S35プロモーターによるアルファルファGS1(細胞質の形態)の過剰発現は、葉組織内におけるGS発現およびGS活性のレベルを増加させたり、窒素欠乏状態で成長を増大させたりするが、最適な窒素肥沃状態における成長に影響を及ぼさないことが報告されている(Fuentes et al., 2001, J. Exp. Botany 52: 1071-81)。Templeらには、非常に高いレベルのGS転写産物を含有する、全長アルファルファGS1をコードする配列を過剰発現するトランスジェニックタバコ植物、および活性な酵素に組み込まれるGSポリペプチドについて報告されているが、成長における表現型の作用について報告されていない(Temple et al., 1993, Molecular and General Genetics 236: 315-325)。Corruziらには、CaMV S35プロモーターの制御下でエンドウマメの細胞質ゾルGS1導入遺伝子を過剰に発現するトランスジェニックタバコが、増加されたGS活性、増加された細胞質ゾルGSタンパク質、および改善された成長特性を示すことが報告されている(米国特許出願第6,107,547号明細書)。さらに最近、Unkeferらには、葉状組織内においてアルファルファGS1を過剰発現するトランスジェニックタバコ植物(葉から根において増大されたGS活性に関してスクリーニングした後、増大したS1導入遺伝子のコピー数が得られるように、自家受粉によって遺伝的に分離した植物)が、それらの葉状部位において増大された量の2−ヒドロキシ−5−オキソプロリンを製造することを見出したことが報告されている。当該2−ヒドロキシ−5−オキソプロリンは、野生型のタバコ植物全体に顕著に増大された成長率を導くことが見出されている(米国特許出願第6,555,500号明細書、米国特許出願第6,593,275号明細書、米国特許出願第6,831,040号明細書を参照)。
さらに、Unkeferらには、植物の発育を改良するための2−ヒドロキシ−5−オキソプロリン(また、2−オキソグルタラメート(2-oxoglutaramate)として知られる)の使用について記載されている(米国特許第6,555,500号明細書、米国特許第6,593,275号明細書、米国特許第6,831,040号明細書)。特に、Unkeferらには、葉状組織(根幹組織に関連する)における増加された濃度の2−ヒドロキシ−5−オキソプロリンが、植物発育特性を増強させることになる事象のカスケードの引き金になることが開示されている。Unkeferらには、2−ヒドロキシ−5−オキソプロリンの葉状濃度が植物発育特性を増強させる引き金となるために増加され得る(具体的には、植物の葉状部分に直接2−ヒドロキシ−5−オキソプロリンの溶液を投与し、葉組織に特異的にグルタミンシンテターゼを過剰発現させることによって)方法が記載されている。
動物の2−ヒドロキシ−5−オキソプロリンの合成に関連があることが知られる数多くのトランスアミナーゼおよびヒドロリアーゼ酵素は、動物の肝組織および膵組織において同定されている(Cooper and Meister, 1977, CRC Critical Reviews in Biochemistry, pages 281-303; Meister, 1952, J. Biochem. 197: 304)。植物では2−ヒドロキシ−5−オキソプロリンの生化学的合成が知られているが、十分に特性が示されていない。さらに、植物における2−ヒドロキシ−5−オキソプロリンの機能、およびその液溜まりの大きさ(組織濃度)の重要性は知られていない。結局、当該技術では、どのような(複数の)トランスアミナーゼまたは(複数の)加水分解酵素が存在し得るか、および/またはどのような(複数の)トランスアミナーゼまたは(複数の)加水分解酵素が植物中で2−ヒドロキシ−5−オキソプロリンの合成を触媒するときに機能し得ることに関してはっきりと明確な指針を提供しておらず、当該植物トランスアミナーゼが報告されたり、単離または特徴づけられたりしていない。
〔発明の概要〕
本発明は、劇的に増強された成長速度、増大された種子および果実/さやの収量、早期、かつ、より生産力のある開花、より効率的な窒素利用、高い塩分環境に対して増強された耐性、および増大されたバイオマス収量を示すトランスジェニック植物に関する。一実施形態において、グルタミンフェニルピルビン酸トランスアミナーゼ(glutamine phenylpyruvate transaminase:GPT)およびグルタミンシンテターゼ(GS)の両者を過剰に発現するように設計されたトランスジェニック植物が提供される。本発明に係るGPT+GSの二重トランスジェニック植物は増強された成長特性を示しており、T0世代の系統では野生型の植物よりも50%から300%のバイオマスの増加を示している。雌雄交雑および/またはより多く典型的に行なわれる自家受粉から得られる世代では、いくつかの二重トランスジェニック植物が野生型の植物よりも4倍という驚異的なバイオマス増加を達成している。同様に、花の収量および果実またはさやの収量もまた大いに向上しており、T0世代の系統では典型的に野生型の収率よりも50%から70%の増加を示し、いくつかの場合には100%の増加を示す。このような増強された成長表現型の特性を示すトランスジェニック植物は、本明細書において提供される多くの実施例によって実証されるように、様々な形質転換方法、種々の発現ベクターおよびプロモーター、ならびに多くの種からの異種導入遺伝子配列および同種導入遺伝子配列によって、個々の植物種の範囲にわたって首尾よく生成されている。よって、本発明は、実質的にすべての分野の農業を変貌させる可能性を秘めている抜本的な躍進技術を提供する。
出願人は、酵素であるグルタミンフェニルピルビン酸トランスアミナーゼ(GPT)を植物における2−ヒドロキシ−5−オキソプロリン(2−オキソグルタラメート)シンテターゼの触媒として同定する。2−オキソグルタラメートは、光合成用途、炭素固定および窒素代謝に関連のある多数の遺伝子の機能を調節する強力なシグナル代謝産物である。本発明は、GPTをコードする単離された核酸分子を提供する。また、本発明は、コードされた酵素が2−ヒドロキシ−5−オキソプロリンの合成に直接的に関与するという新規の知見を開示する。本発明のこの観点は、本明細書において、いくつかの種からのGPTsをコードするGPTポリヌクレオチドの開示によって実証される。当該種としては、シロイヌナズナ(Arabidopsis)、ブドウ、イネ、ダイズ、オオムギ、バンブー、およびゼブラフィッシュからの非植物ホモログが挙げられる。これらの多くは組換えGPTsとして発現しており、GPT活性を有することが確認されている。
さらに、本発明は、GPT導入遺伝子およびGS導入遺伝子の両者を発現するトランスジェニック植物を提供する。「二重導入遺伝子(double-transgene)」植物などにおけるこれら2種類の導入遺伝子の発現は、これらの植物が、極めて顕著であり、また、ときに大いに増強された成長速度および花/果実/さや/種子の収量を示すため、実質的に増加された二酸化炭素固定率、および非常に強い成長増強効果をもたらす。このように成長が増強されたトランスジェニック植物を産生する方法を提供する。
シグナル代謝産物2−オキソグルタラメートの濃度を特異的に増加させることによって(すなわち、葉状組織において)、本発明の導入遺伝子植物は短期間でより高い総収量を生産することが可能であるため、幅広い農作物にわたって増強された生産性を有する農業を提供し得る。重要なことに、今日までに記載されている多くのトランスジェニック植物とは異なり、本発明は天然の植物酵素をコードする天然の植物遺伝子を利用する。本発明のトランスジェニック植物の増強された成長特性は、植物に追加のGPTおよびGSの能力を取り込むことによって本質的に達成される。このように、本発明のトランスジェニック植物は、有毒な物質、成長ホルモン、ウイルス性または細菌性の遺伝産物のいずれも発現せず、またそれゆえ、世界の一部の地域においてこれまで遅れていたトランスジェニック植物の採用についての多くの懸念がなくなる。
一実施形態において、本発明は、GPT導入遺伝子およびGS導入遺伝子を含むトランスジェニック植物であって、上記GPT導入遺伝子および上記GS導入遺伝子は、植物プロモーターに操作可能に結合される、トランスジェニック植物を提供する。特定の実施形態において、上記GS導入遺伝子はGS1導入遺伝子である。別の特定の実施形態において、上記GPT導入遺伝子は、(a)配列番号2、配列番号9、配列番号15、配列番号19、配列番号21、配列番号24、配列番号30、配列番号31、配列番号32、配列番号33、配列番号34、配列番号35および配列番号36に示すアミノ酸配列、ならびに(b)配列番号2、配列番号9、配列番号15、配列番号19、配列番号21、配列番号24、配列番号30、配列番号31、配列番号32、配列番号33、配列番号34、配列番号35および配列番号36のいずれか1つと少なくとも75%の同一性を有し、かつ、GPT活性を有するアミノ酸配列、からなる群から選択されるアミノ酸配列を有するポリペプチドをコードする。さらに別の特定の実施形態において、上記GS導入遺伝子は、(a)残基11からの配列番号4および配列番号7に示すアミノ酸配列、および(b)配列番号4または配列番号7と少なくとも75%の同一性のあるアミノ酸配列、からなる群から選択されるアミノ酸配列を有するポリペプチドをコードする。いくつかの実施形態において、上記GPT導入遺伝子および上記GS導入遺伝子は、植物のゲノムに取り込まれている。本発明に係るトランスジェニック植物は、単子葉植物または双子葉植物であり得る。
また、本発明は、本発明に係るトランスジェニック植物の任意の世代の子孫を提供する。ここで、当該子孫は、上記GPT導入遺伝子および上記GS導入遺伝子を含む。また、本発明は、本発明に係るトランスジェニック植物の任意の世代の種子を提供する。ここで、当該種子は、上記GPT導入遺伝子および上記GS導入遺伝子を含む。本発明に係るトランスジェニック植物は、類似の野生型植物または非形質転換植物と比較して、1つ以上の増強された成長特性を示してもよい。増強された成長特性としては、限定されないが、増強された成長速度、増大されたバイオマス収量、増大された種子の収量、増大された花または花芽の収量、増大された果実またはさやの収量、大型の葉が挙げられる。また、本発明に係るトランスジェニック植物は、類似の野生型植物または非形質転換植物と比較して、増大されたGPTおよび/もしくはGS活性のレベル、ならびに/または増大された2−オキソグルタラメートのレベルを示し得る。いくつかの実施形態において、本発明に係るトランスジェニック植物は、向上された窒素利用効率または塩または塩分を含んだ環境に対して増強された耐性を示す。
また、本発明のトランスジェニック植物およびその種子を生産する方法を提供しており、類似の野生型植物または非形質転換植物と比較して増強された成長特性、増大された窒素利用効率、および塩または食塩水の環境において発芽または成長に対して増大された耐性を有する植物の生産に関する方法を含む。
〔図面の簡単な説明〕
特許または出願書類は、カラーで作成された少なくとも1つの図面を含む。このカラー図面を含む特許または特許出願書類の公報のコピーは、請求および必要な手数料を支払いに基づいて特許庁により提供される。
図1.窒素吸収および2−オキソグルタラメートの生合成:概略的な代謝経路。
図2.野生型のタバコ植物に対して、GS1またはGPTのいずれかが過剰に発現しているトランスジェニックタバコ植物の比較を示す写真である。左から右に向かって、野生型植物、アルファルファ(Alfalfa)GS1導入遺伝子、シロイヌナズナGPT導入遺伝子。後述する実施例3および5を参照。
図3.野生型のトマト植物に対してGS1またはGPTのいずれかを過剰に発現するトランスジェニックマイクロトム(Micro-Tom)トマト植物の比較を示す写真である。左から右に向かって、野生型植物、アルファルファGS1導入遺伝子、シロイヌナズナGPT導入遺伝子。後述する実施例4および6を参照。
図4.野生型のタバコ植物とGS1またはGPTトランスジェニックタバコ植物との葉の大きさの比較を示す写真である。A:GS1トランスジェニックタバコからの葉(下の葉)と、野生型からの葉(上の葉)との比較。B:GPTトランスジェニックタバコからの葉と(下の葉)と、野生型からの葉(上の葉)との比較。
図5.GS1トランスジェニックタバコ系統とGPTトランスジェニックタバコ系統との多様な交雑から生成されたトランスジェニックタバコ植物と、野生型の植物と、1種類の導入遺伝子植物との比較を示す写真である。A−C:それぞれ2、3、および7の交雑。後述する実施例7を参照。
図6.野生型の植物と、GS1およびGPTを交雑したトランスジェニックタバコ植物との葉の大きさの比較を示す写真である。A:GS×GPT交雑3からの葉(下の葉)と野生型からの葉(上の葉)との比較。B:GS×GPT交雑7からの葉(下の葉)と野生型からの葉(上の葉)との比較。後述する実施例7を参照。
図7.トランスジェニックペッパー植物(右)および野生型のコントロールペッパー植物(左)の写真であり、トランスジェニック植物では野生型のコントロール植物に対して大型のペッパー果実収穫高を示す。
図8.トランスジェニックマメ植物を野生型のコントロールマメ植物と比較した(いくつかのトランスジェニック系統はシロイヌナズナGPTおよびGSの導入遺伝子を発現している)。上段左:様々な日数における草高;上段右:花芽の数;下段左:花の数;下段右:マメさやの数。野生型はコントロールであり、系統2A、4Aおよび5Bはすべてトランスジェニック植物の系統である。後述する実施例9を参照。
図9.トランスジェニックマメ植物(右)および野生型のコントロールマメ植物(左)の写真であり、トランスジェニック植物では野生型のコントロール植物に対して増加された成長を示す。トランスジェニック系統はシロイヌナズナGPTおよびGSの導入遺伝子を発現している。後述する実施例9を参照。
図10.トランスジェニックマメ植物のさや、花および花芽を、野生型のコントロールマメ植物と比較した(トランスジェニック系統はブドウGPTおよびシロイヌナズナGSの導入遺伝子を発現している)。後述する実施例10を参照。
図11.トランスジェニックマメ植物(右)および野生型のコントロールマメ植物(左)の写真であり、トランスジェニック植物では野生型のコントロール植物に対して増加された成長を示す。トランスジェニック系統はブドウGPTおよびシロイヌナズナGSの導入遺伝子を発現している。後述する実施例10を参照。
図12.トランスジェニックササゲ(Cowpea)系統A植物を野生型のコントロールササゲ植物と比較した(トランスジェニック系統はシロイヌナズナGPTおよびGSの導入遺伝子を発現している)。このトランスジェニック植物は野生型のコントロール植物よりも早い成長、ならびにより早い開花およびさやの固定を示す。(A)5月21日時点における高さおよび葉の長さの寸法の比較、(B)6月18日時点における三つ葉および花芽の比較、(C)6月22日時点における花、花芽およびエンドウマメのさやの数の比較。後述する実施例11を参照。
図13.トランスジェニックササゲ系統A植物(右)および野生型のコントロールササゲ植物(左)の写真であり、トランスジェニック植物では野生型のコントロール植物に対して増加された成長を示す。トランスジェニック系統はシロイヌナズナGPTおよびGSの導入遺伝子を発現している。後述する実施例11を参照。
図14.トランスジェニックササゲ系統G植物を野生型のコントロールササゲ植物と比較した(トランスジェニック系統はブドウGPTおよびシロイヌナズナGSの導入遺伝子を発現している)。このトランスジェニック植物は野生型のコントロール植物よりも早い成長、ならびにより早い開花およびさやの固定を示す。(A)草高、(B)花およびエンドウマメのさやの数、(C)葉芽および三つ葉の数。後述する実施例12を参照。
図15.トランスジェニックササゲ系統G植物(右)および野生型のコントロールササゲ植物(左)の写真であり、トランスジェニック植物では野生型のコントロール植物に対して増加された成長を示す。トランスジェニック系統はブドウGPTおよびシロイヌナズナGSの導入遺伝子を発現している。後述する実施例12を参照。
図16.トランスジェニックカンタループ(Cantaloupe)植物(右)および野生型のコントロールカンタループ植物(左)の写真であり、トランスジェニック植物では野生型のコントロール植物に対して増加された成長を示す。トランスジェニック系統はシロイヌナズナGPTおよびGSの導入遺伝子を発現している。後述する実施例14を参照。
図17.トランスジェニックカボチャ植物(右)および野生型のコントロールカンタループ植物(左)の写真であり、トランスジェニック植物では野生型のコントロール植物に対して増加された成長を示す。トランスジェニック系統はシロイヌナズナGPTおよびGSの導入遺伝子を発現している。後述する実施例15を参照。
図18.トランスジェニックシロイヌナズナ植物(右)および野生型のコントロールシロイヌナズナ植物(左)の写真であり、トランスジェニック植物では野生型のコントロール植物に対して増加された成長を示す。トランスジェニック系統はシロイヌナズナGPTおよびGSの導入遺伝子を発現している。後述する実施例16を参照。
図19.シロイヌナズナGPTおよびGSの導入遺伝子を発現しているトランスジェニックトマト植物を野生型のコントロールトマト植物と比較した。(A)トランスジェニック植物の葉(右)対野生型のコントロールの葉(左)の写真であり、トランスジェニック植物においてより大型の葉を示す。(B)トランスジェニックトマト植物(右)および野生型のコントロール植物(左)の写真であり、トランスジェニック植物では野生型のコントロール植物に対して増加された成長を示す。後述する実施例17を参照。
図20.トランスジェニックカメリナ(Camelina)植物(右)および野生型のコントロールカメリナ植物(左)の写真であり、トランスジェニック植物では野生型のコントロール植物に対して増加された成長を示す。トランスジェニック系統はシロイヌナズナGPTおよびGSの導入遺伝子を発現している。後述する実施例18を参照。
〔発明の詳細な説明〕
(定義)
特に規定されない限り、本明細書において用いられるすべての技術用語、注釈、および他の科学専門用語は、本発明に関連する分野の当業者に通常理解される意味を有することが意図される。ある場合には、一般的に理解される意味を有する用語が本明細書において定義づけされており、関係を明らかにしたり、および/または整えたりする。また、本明細書においてそのような定義に含まれるものは、当該分野において一般的に理解されるものに対して実質的に差異を表すために必ずしも説明されるべきではない。本明細書において説明されるか、または参照される技術および方法は、従来の理論を用いて当業者に一般的に十分理解され、通常用いられる。当該技術および方法としては、例えば、Sambrookらにおいて広く用いられる分子クローニングの手法などがあり、分子クローニング:A Laboratory Manual 3rd. edition (2001) Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, N.Y、分子生物学における従来のプロトコル(Ausbel et al., eds., John Wiley & Sons, Inc. 2001)、トランスジェニック植物:方法およびプロトコル(Leandro Pena, ed., Humana Press, 1st edition, 2004)、およびアグロバクテリウムプロトコル(Wan, ed., Humana Press, 2nd edition, 2006)が挙げられる。適切な場合、市販のキットおよび試薬の使用を含む方法は、他に記載されていない限り、工業的に規定されるプロトコルおよび/またはパラメータによって一般的に実施される。
用語「核酸」は、一本鎖か、または二本鎖いずれかの形態におけるデオキシリボヌクレオチドまたはリボヌクレオチド、およびそれらのポリマー(「ポリヌクレオチド」)を指す。特に制限されない限り、用語「ポリヌクレオチド」は天然ヌクレオチドの公知の類似物を含んでいる核酸を包含する。当該類似物は、参照核酸と同様の結合特性を有しており、天然に存在するヌクレオチドと同様の方法で代謝される。また、他に指示されない限り、特定の核酸配列は保存的に改変されたそれらのバリアント(例えば、変質コドン置換体)および相補的な配列、ならびに明示的に示された配列を暗に含む。具体的には、変質コドン置換体は、1つ以上の選択された(またはすべての)コドンの第3位に生成している配列が、混合塩基および/またはデオキシイノシン残基と置換されることによって取得され得る(Batzer et al., 1991, Nucleic Acid Res. 19: 5081; Ohtsuka et al., 1985 J. Biol. Chem. 260: 2605-2608; and Cassol et al., 1992; Rossolini et al., 1994, Mol. Cell. Probes 8: 91-98)。用語核酸は、遺伝子、cDNAおよび遺伝子にコードされるmRANと同義的に用いられる。
用語「プロモーター」は、核酸制御配列または操作可能に結合された核酸の転写を方向づける配列を指す。本明細書において用いられるとき、「植物プロモーター」とは植物の中で機能するプロモーターである。プロモーターは、転写の開始領域(ポリメラーゼII型プロモーターの場合、TATA因子など)付近の核酸配列を必然的に含む。また、プロモーターは、任意により、末端部のエンハンサー因子またはレセプター因子を含む。当該エンハンサー因子またはレセプター因子は、転写の開始領域からほぼ数千塩基対に配置され得る。「恒常的」プロモーターは、ほとんどの環境条件下および発生条件下において活性なプロモーターである。「誘導」プロモーターは、環境または発生調節下において活性なプロモーターである。用語「操作可能に結合された」とは、核酸発現制御配列(例えば、プロモーターまたは転写因子結合部位のアレイ)と、第2の核酸配列との機能的な結合を指す。ここで、発現制御配列は、第2の配列に対応する核酸の転写を方向づける。
用語「ポリペプチド」、「ペプチド」および「タンパク質」は、本明細書において同義的に用いられており、アミノ酸残基のポリマーを指す。当該用語は、1つ以上のアミノ酸残基が対応する天然に存在するアミノ酸、ならびに天然に存在するアミノ酸ポリマーおよび非天然に存在するアミノ酸ポリマーの人為的な化学擬態であるアミノ酸ポリマーに適用される。
用語「アミノ酸」は、天然に存在するアミノ酸および合成的なアミノ酸、ならびに天然に存在するアミノ酸とある程度同様に機能するアミノ酸類似物およびアミノ酸模倣物を指す。天然に存在するアミノ酸は、遺伝コードによってコードされたアミノ酸、および後修飾されるアミノ酸である。そのようなアミノ酸としては、例えば、ヒドロキシプロリン、γ−カルボキシグルタミン酸、およびO−ホスホセリンが挙げられる。アミノ酸類似物とは、天然に存在するアミノ酸と同じ基本化学構造(すなわち、水素、カルボキシル基、アミノ基、およびR基と結合するα炭素)を有する化合物を指す。当該アミノ酸類似物としては、例えば、ホモセリン、ノルロイシン、メチオニンスルホキシド、メチオニンメチルスルホニウムが挙げられる。当該類似物は、改変されたR基(例えば、ノルロイシン)または改変されたペプチド骨格を有するが、天然に存在するアミノ酸のような同じ基本化学構造を維持する。アミノ酸模倣物は、アミノ酸の一般化学構造とは異なる構造を有するが、天然に存在するアミノ酸とある程度同じように機能する化学物質を指す。
本明細書において、アミノ酸は、一般的に知られる3つの文字記号か、または国際純正応用化学連合−国際生化学連合(IUPAC−IUB)生化学命名委員によって推奨されている1つの記号によって表され得る。同様に、ヌクレオチドは一般的に認められている1つの文字コードによって表され得る。
用語「植物」は、植物全体、植物組織(例えば、葉、幹、花、根、生殖器官、胚芽およびそれらの一部など)、苗、種子および植物細胞、ならびにそれらの子孫を含む。本発明の方法に用いられ得る植物の分類は、通常、形質転換技術に影響を受け易い高等植物の分類と同様である。当該高等植物としては、被子植物(単子葉植物および双子葉植物)および裸子植物が挙げられる。これらは、多様な倍数性段階(多数体、二倍体、半数体および半接合が挙げられる)の植物を含む。
用語「GPTポリヌクレオチド」および「GPT核酸」は本明細書において同義的に用いられており、2−オキソグルタラメートの合成を触媒することに関連するポリヌクレオチドをコードする遺伝子の全長か、もしくは一部の長さのポリヌクレオチド配列を指す。当該「GPTポリヌクレオチド」および「GPT核酸」としては、翻訳(コーディング)配列および非翻訳配列、ならびにそれらの相補体を共に包含するポリヌクレオチドが挙げられる。用語「GPTコード配列」は、転写されてGPTタンパク質をコードする遺伝子の一部を指す。用語「ターゲッティング配列」は、タンパク質を細胞の細胞内コンパートメント(例えば、植物細胞内の葉緑体)に方向づけるタンパク質のアミノ末端部を指す。さらに、GPTポリヌクレオチドは、規定条件下でGPTポリヌクレオチドと、またはGPTポリヌクレオチド由来のPCR産物とハイブリダイズさせる能力によって規定される。
「GPT導入遺伝子」は、核酸分子をもち、トランスジェニック植物または植物胚、組織もしくは種子に対して外因性であるか、またはGPTポリヌクレオチドをもつトランスジェニック植物の原種植物またはその植物胚、組織もしくは種子に対して外因性であるGPTポリヌクレオチドを含む核酸分子である。
用語「GSポリヌクレオチド」および「GS核酸」は、本明細書において同義的に用いられており、グルタミンシンテターゼタンパク質をコードする遺伝子の全長または部分的な長さのポリヌクレオチド配列を指す。また、当該用語は、翻訳される(コーディング)配列および翻訳されない配列、ならびにそれらの相補体をともに含んでいるポリヌクレオチドを包含する。用語「GSコード配列」とは、遺伝子のうち、転写されてGSタンパク質をコードする部分を指す。用語「GS1ポリヌクレオチド」および「GS1核酸」は、本明細書において同義的に用いられており、グルタミンシンテターゼのアイソフォーム1タンパク質をコードする遺伝子の全長または部分的な長さのポリヌクレオチド配列を指す。また、当該用語は、翻訳される(コーディング)および翻訳されない配列、ならびにこれらの相補体をともに含んでいるポリヌクレオチドを包含する。用語「GS1コード配列」とは、遺伝子のうち、転写されてGS1タンパク質をコードする部分を指す。
「GS導入遺伝子」は核酸分子であり、当該核酸分子を有するトランスジェニック植物または植物の胚、器官もしくは種子に対して外来性であるか、またはGSポリヌクレオチドを有するトランスジェニック植物の、祖先の植物または植物の胚、器官もしくは種子に対して外来性である、GSポリヌクレオチドを含んでいる。「GS1導入遺伝子」は核酸分子であり、当該核酸分子を有するトランスジェニック植物または植物の胚、器官もしくは種子に対して外来性であるか、またはGS1ポリヌクレオチドを有するトランスジェニック植物の祖先の、植物または植物の胚、器官若しくは種子に対して外来性であるGS1ポリヌクレオチドを含んでいる。
本発明のGPTポリヌクレオチドの例は本明細書に示されており、当該GPTポリヌクレオチドとしては、シロイヌナズナ、イネ、オオムギ、バンブー、ダイズ、ブドウ、およびゼブラフィッシュのGPTが挙げられる。
部分長GPTポリヌクレオチドとしては、N末端またはC末端がトランケートしたGPTをコードするポリヌクレオチド配列、成熟GPT(ターゲッティング配列を含まない)をコードするポリヌクレオチド配列、およびGPTのドメインをコードする配列が挙げられる。N末端がトランケートしたGPTをコードするGPTポリヌクレオチドの例としては、シロイヌナズナの−30コンストラクト、−45コンストラクト、および−56コンストラクトが挙げられる。これらは、配列番号2の全長GPT構造のアミノ酸からそれぞれ最初の30、45、および56のアミノ酸が除去されているコード配列である。
形質転換された細胞およびトランスジェニック植物の生産において、本発明のGPTポリヌクレオチドを用いるとき、挿入されたポリヌクレオチド配列が同一である必要はないが、以下にさらに述べるように、由来する本発明のGPTポリヌクレオチドの遺伝子の配列と「実質的に同一」でありさえすればよいことを当業者は理解する。用語「GPTポリヌクレオチド」は、厳密に言うと、当該実質的に同一のバリアントを包含する。同様に、当業者は、コドン縮重のために数多くのポリヌクレオチド配列が同じポリペプチドをコードし、すべての当該ポリヌクレオチド配列が用語GPTポリヌクレオチドの中に含まれると意図されることを理解する。さらに、具体的にいうと、当該用語は、本明細書において開示されるGPTポリヌクレオチド配列と実質的に同一であり、野生型GPTポリペプチドの突然変異によるか、またはGPTポリペプチドの機能(例えば、GPTポリペプチドにおけるアミノ酸の保存的な置換に起因する)を保持するポリペプチドをコードする配列(後述のように決定される)を含む。よって、用語「GPTポリヌクレオチド」もまた、当該実質的に同一のバリアントを含む。
用語「保存的に改変されたバリアント」とは、アミノ酸配列および核酸配列の両者に適用できる。特定の核酸配列に関して、保存的に改変されたバリアントは同一の、または実質的に同一のアミノ酸配列をコードする核酸を指すか、または実質的に同一の配列に対してアミノ酸配列をコードしない核酸を指す。遺伝コードの縮退が原因で、数多くの機能的に同一の核酸が任意の所定のタンパク質をコードする。例えば、コドンGCA、GCC、GCGおよびGCUは、すべてアミノ酸アラニンをコードする。このように、コドンによってアラニンが指定されるすべての位置において、当該コドンは、コードされるタンパク質が変更されることなく対応する任意のコドンへ変換され得る。当該核酸バリアントは「サイレントバリアント」であり、保存的に修飾されるバリアントの一種である。また、本明細書においてポリペプチドをコードするすべての核酸配列は、当該核酸の起こり得るサイレントバリアントすべてを表現する。当業者は、核酸中の各コドン(通常、メチオニンに関するコドンのみであるAUG、および通常トリプトファンに関するコドンのみであるTGGを除く)は、機能的に同一の分子を産生するように修飾され得ることを理解する。したがって、ポリペプチドをコードする核酸配列のサイレントのバリエーションはそれぞれ記載される各配列に関与している。
アミノ酸配列に関して、当業者は、核酸、ペプチド、ポリペプチドまたはタンパク質の配列に対する個々の置換、欠失または付加は、「保存的に修飾されたバリアント」であることを理解する。当該置換、欠失または付加では、コードされた配列のうち1つのアミノ酸または数パーセントのアミノ酸を変更、付加または削除しており、「保存的に修飾されたバリアント」において、変更は化学的に類似しているアミノ酸とのアミノ酸の置換をもたらす。機能的に類似しているアミノ酸を示す同類置換表は、本技術分野において公知である。当該保存的に修飾されたバリアントは本発明の多形性バリアント、種間ホモログおよび対立遺伝子に加えられ、取り除かれない。
以下の8つの群は互いに同類置換であるアミノ酸をそれぞれ含む:1)アラニン(A)、グリシン(G);2)アスパラギン酸(D)、グルタミン酸(E);3)アスパラギン(N)、グルタミン(Q);4)アルギニン(R)、リシン(K);5)イソロイシン(I)、ロイシン(L)、メチオニン(M)、バリン(V);6)フェニルアラニン(F)、チロシン(Y)、トリプトファン(W);7)セリン(S)、スレオニン(T);および8)システイン(C)、メチオニン(M)(例えば、Creighton, Proteins (1984)を参照)。
高分子構造(例えば、ポリペプチド構造)は、組織体の様々な段階の観点から説明され得る。この組織体の一般的な議論に関しては、例えば、 Alberts et al., Molecular Biology of the Cell (3rd ed., 1994) およびCantor and Schimmel, Biophysical Chemistry Part I: The Conformation of Biological Macromolecules (1980)を参照すればよい。「一次構造」は、特定のペプチドのアミノ酸配列を指す。「二次構造」は局所的に配置されたポリペプチド内の3次元構造を指す。これらの構造は、通常ドメインとして知られる。ドメインはポリペプチドの小型の単位を形成するポリペプチドの一部であり、典型的に、25からおよそ500のアミノ酸長である。標準的なドメインは、さらに小さなユニットの組織体からなる(例えば、β−シートおよびα−ヘリックスの一帯)。「三次構造」は、ポリペプチドモノマーの完全な三次元構造を指す。「四次構造」は、独立した三次単位の非共有の関係によって形成される三次元構造を指す。また、異方性という用語は、エネルギーの表現として知られる。
用語「単離された」は、野生型か、もしくは天然の状態において見られるような物質と通常同時に生じる成分から、実質的または本質的に遊離した物質を指す。しかしながら、当該用語「単離された」は、電気泳動ゲルか、または別の分離培地に存在する成分を指すことを意図するものではない。単離された成分は、この分離培地から離れて、別の用途に使用する状態にあるか、またはすでに新たな用途/環境において使用されている状態にある。「単離された」抗体は、特定されて自然環境の成分から分離されるか、および/または回収された抗体である。自然環境の汚染成分は、診断上の抗体の利用、または薬学的な抗体の利用に干渉し得る物質であり、酵素、ホルモン、および他のタンパク性の溶質もしくは非タンパク性の溶質を含み得る。好ましい実施形態において、抗体は、(1)ローリー法で測定したとき、95%(抗体重量)以上であり、最も好ましくは99%(重量)以上に精製されるか、(2)回転キャップ配列決定装置によって少なくとも15残基のN末端のアミノ酸配列または内部のアミノ酸配列を得るのに十分な量に精製されるか、または(3)クマシーブルー、または好ましくは銀染色により還元条件または非還元条件においてSDS−PAGEによって均質に精製される。自然環境の抗体の少なくとも1つの成分が存在しないため、単離された抗体としては、組換え細胞内のインシチュにある抗体を含む。しかし、通常、単離された抗体は少なくとも1回の精製工程によって調製される。
核酸の一部に対して用いられるとき、用語「異種」とは、当該核酸が2つ以上のサブ配列(天然において、互いに同じ関係に見られない)を含むことを示す。例えば、新たな機能的な核酸を作るために配置された、関連のない遺伝子からの2つ以上の配列(例えば、1つの原料からのタンパク質をコードする核酸、および別の原料からのペプチド配列をコードする核酸)を有している核酸が、典型的に組換えにより作られる。同様に、異種タンパク質とは、当該タンパク質が、天然において互いに同じ関係に見られない2つ以上のサブ配列を含むことを示す(例えば、融合タンパク質)。
2つ以上の核酸配列またはポリペプチド配列に関して、用語「同一の」または割合の「同一性」とは、比較領域全体を比較して整列させたときか、または配列比較アルゴリズムもしくは手動の配列検査および目視によって測定されるような領域を指定したとき、最大限の一致を考慮して同一か、または同じ(すなわち、特定の領域全体で約70%の同一性、好ましくは約75%、約80%、約85%、約90%もしくは約95%の同一性である)アミノ酸残基またはヌクレオチドを特定の割合で含む2つ以上の配列またはサブ配列を指す。また、この定義は、試験配列が基準配列と実質的に同一であるとき、実質的に配列相補性またはサブ配列相補性を有している試験配列の相補体を指す。また、この定義は、試験配列が基準配列と実質的に同一であるとき、実質的に配列相補性またはサブ配列相補性を有している試験配列の相補体を指す。
配列同一性の割合がポリペプチドに関して用いられるとき、同一でない残基部分はしばしばアミノ酸の同類置換によって異なるということが理解される。ここで、アミノ酸残基は同様の化学的特性(例えば、電荷または疎水性)を有する別のアミノ酸残基と置き換えられるため、ポリペプチドの機能特性は変化しない。配列が同類置換ではない場合、保存的な天然の置換に関して修正するために、配列同一性の割合が上流に向かって修正され得る。
配列比較に関して、典型的に1つの配列は基準配列として働き、試験配列は当該基準配列と比較される。配列比較アルゴリズムを用いるとき、試験配列および基準配列はコンピュータに入力され、サブ配列座標が指定され、必要ならば、配列アルゴリズムプログラムのパラメータが指定される。初期設定プログラムのパラメータが用いられるか、または代替的なパラメータが指定される。そして、配列比較アルゴリズムは、当該プログラムのパラメータに基づき、基準配列に対する試験配列の配列同一性の割合を算出する。
本明細書において用いられるとき、「比較領域(comparison window)」は、2つの配列を最適に配列させた後、同数の連続した位置の基準配列と比較され得る配列のうち、20から600、通常は約50から約200、より通常は約100から約150からなる群から選択される複数の連続した位置の任意の1つのセグメントに関する。比較のための配列の配置方法は、当分野において周知である。比較のための配列の最適な配置は、例えば、Smith & Waterman, 1981, Adv. Appl. Math. 2:482の局所相同アルゴリズムによって、Needleman & Wunsch, 1970, J. Mol. Biol. 48:443の相同配置アルゴリズムによって、Pearson & Lipman, 1988, Proc. Nat'l. Acad. Sci. USA 85:2444の類似方法に関する研究によって、これらアルゴリズム(the Wisconsin Genetics Software Package, Genetics Computer Group, 575 Science Dr., Madison, WIのGAP、BESTFIT、FASTA、およびTFASTA)のコンピュータ制御の実施によって、または手動の位置合わせによって、および目視(例えば、Current Protocols in Molecular Biology (Ausubel et al., eds. 1995 supplement)を参照)によって、実行され得る。
配列同一性および配列類似性の割合の測定に適したアルゴリズムの好ましい例としては、BLASTおよびBLAST2.0アルゴリズム(それぞれ、Altschul et al., 1977, Nuc. Acids Res. 25:3389-3402および Altschul et al., 1990, J. Mol. Biol. 215:403-410に記載されている)が挙げられる。BLASTおよびBLAST2.0は、典型的に本明細書に記載される初期パラメータとともに使用され、本発明の核酸およびタンパク質の配列同一性の割合を決定する。BLAST分析を実行するためのソフトウェアは、全米バイオテクノロジー情報センターによって公に利用可能である。このアルゴリズムは、まず、クエリシーケンスにおいて長さWの短いワードを特定することによって、ハイスコアの配列ペア(high scoring sequence pairs:HSPs)を特定することを含む。ここで、当該クエリシーケンスは、データベースシーケンスにおいて同じ長さのワードとともに配列されたとき、ある正の数の基準スコアTと一致するか、または満足する。Tは、基準点に近いワードとみなされる(上述のAltschul ら)。これら冒頭付近のワードのヒットは、当該ワードを含んでいる長いHSPsを見つけるための検索を開始するための根源として働く。当該ワードのヒットは、累積の配列スコアが増加し得る限り、各配列に沿って両方向に拡張される。ヌクレオチド配列に関して、累積のスコアはパラメータM(一致する残基の対に関するリワードスコア;常に>0)、およびパラメータN(一致しない残基に関するペナルティスコア;常に<0)によって算出される。アミノ酸配列に関して、採点マトリクスが用いられて、累積のスコアを算出する。それぞれの方向におけるワードのヒットの拡張は、累積の配列スコアが数量Xによって達成される最大値から低減したときか、累積スコアが1つ以上の負に採点された残基の配列の累積のためにゼロもしくはそれ以下になったときか、またはいずれかの配列の末端が標的に到達したときに停止される。BLASTアルゴリズムのパラメータW,TおよびXは、配列の検出感度および配列の速度を決定する。BLASTNプログラム(ヌクレオチド配列のための)では、ワード長(W)11を初期設定値、10を期待値(E)、M=5、N=−4、および両ストランドの比較として用いる。アミノ酸配列に関して、BLASTPプログラムでは、ワード長3を初期設定値、10を期待値(E)、および50をBLOSUM62スコアマトリクス(Henikoff & Henikoff, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 89:10915 (1989)) 配置(B)、10を期待値(E)、M=5、N=−4、および両ストランドの比較として用いる。
また、BLASTアルゴリズムは、2つの配列間の類似性に関して統計に基づく分析を実行する(例えば、Karlin & Altschul, 1993, Proc. Nat'l. Acad. Sci. USA 90:5873-5787を参照)。BLASTアルゴリズムによって提供される類似性の測定の1つには、最小合計確率(P(N))がある。この最小合計確率は、2つのヌクレオチド配列間か、または2つのアミノ酸配列間の一致が偶然生じ得ることによる確率の表れを示す。例えば、核酸は、参照核酸との試験核酸の比較において最小合計確率が約0.2以下、より好ましくは約0.01以下、最も好ましくは約0.001以下である場合に、基準配列と類似しているとみなされる。
「ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件」という用語は、典型的に、核酸の複合混合物においてその標的サブ配列へハイブリダイズするが、別の配列にハイブリダイズしないプローブにおける条件を指す。ストリンジェントな条件は配列依存性であり、様々な環境において異なる。長い配列は特に高い温度にてハイブリダイズする。核酸のハイブリダイゼーションへの広範な指針は、Tijssen(生化学および分子生物学における技術――核酸によるハイブリダイゼーション、「ハイブリダイゼーションの原理および核酸アッセイの概論」(1993))において見出される。一般的に、高いストリンジェント条件では、特定の配列に関して、規定されたイオン強度のpHにおいて融解点(Tm)以下の約5〜10℃になるよう選択される。Tmは、50%のプローブが平衡状態でのターゲットシーケンスに対するターゲットハイブリダイズに相補的な温度である(ターゲットシーケンスが過度に存在し、Tmにおいて50%のプローブが平衡状態にあるとき)。ストリンジェントな条件は、塩濃度が約1.0Mナトリウムイオン以下、典型的には、pH7.0から8.3において約0.01から1.0Mナトリウムイオン濃度(または他の塩)であり、短いプローブ(例えば、10から50ヌクレオチド)に関しては温度が少なくとも約30℃であり、長いプローブ(例えば、50ヌクレオチド以上)に関しては少なくとも約60℃であることが条件である。また、ストリンジェントな条件は、不安定化試薬(ホルムアミドなど)の付加によって達成され得る。選択的な、または特定のハイブリダイゼーションに関して、ポジティブシグナルは少なくとも2倍のバックグラウンドであり、好ましくは10倍のバックグラウンドのハイブリダイゼーションである。
ストリンジェントな条件において互いにハイブリダイズしない核酸は、それらがコードするポリペプチドが実質的に同一であるのであれば、実質的に同一のままである。これは、例えば、核酸のコピーが遺伝コードによって許容されるコドンの最大量の縮退によって作られるときに、生じる。そのような場合において、核酸は適度にストリンジェントなハイブリダイゼーション条件において典型的にハイブリダイズする。
GPTポリペプチドを含んでいるゲノムDNAまたはcDNAは、本明細書に開示されるGPTポリヌクレオチド配列によって、ストリンジェントな条件下での標準的なサザンブロットにおいて同定され得る。この目的に関して、当該ハイブリダイゼーションに最適なストリンジェントな条件としては、40%ホルムアミド、1M NaCl、1%SDSの緩衝液において、37℃でのハイブリダイゼーション、および少なくとも約50℃、通常、約55℃から約60℃の温度で20分間0.2 X SSC中での少なくとも1回の洗浄を含む。
2つのポリヌクレオチドが実質的に同一であるというさらなる目安としては、基準配列(一対のオリゴヌクレオチドプライマーによって増幅される)がストリンジェントなハイブリダイゼーション条件においてプローブとして使用されるとき、cDNAもしくはゲノムライブラリーから試験配列を単離することが可能であるか、または、例えばノウザンもしくはサザンブロットで試験配列を同定することが可能であるかである。
(トランスジェニック植物)
本発明は、農学的な性質が十分に向上している新規なトランスジェニック植物を提供する。十分に向上した農学的な性質は、促進された生育、増大した成熟植物の生体重および全現存量、より早期かつより豊富な量の開花、ならびに果実、さやおよび種子におけるより多くの収量を含む。本発明のトランスジェニック植物は、1つ以上の発現可能な遺伝的コンストラクトを植物に対して導入することにより生成される。この遺伝的コンストラクトは、グルタミンシンテターゼ(GS)およびグルタミンフェニルピルビン酸トランスアミナーゼ(GPT)をコードする1つ以上のポリヌクレオチドの発現を促進することができる。一実施例において、GPTまたはGS1導入遺伝子コード配列を有する1つの導入遺伝子系統の親が生成される(好ましくは、導入遺伝子に関して同型の遺伝子がその後両遺伝子を含有している植物の子孫を生成するまで自己自身)。
本発明における安定な形質転換の実施形態では、発現可能な遺伝的コンストラクトの1つ以上のコピーが宿主植物ゲノム中に組み込まれるようになる。これによって、植物内におけるGSおよびGPT酵素能力を増加させる。これは、2−オキソグルタラメート(2-oxoglutaramate)の合成、言い換えればシグナル代謝遺伝子発現、の増加を仲介するのに役立つ。その結果、植物の生育が増大し、かつ他の農学的な性質が向上する。2−オキソグルタラメートは、代謝産物であり、遺伝子発現、代謝および植物生育における極めて強力なエフェクターである(米国特許第6,555,500号)。そして、この代謝産物は、炭素および窒素の代謝システムの調整において極めて重要な役割を果たし得る(Lancien et al., 2000, Enzyme Redundancy and the Importance of 2-Oxoglutarate in HigherPlants Ammonium Assimilation, Plant Physiol. 123: 817-824)。図1に示す2−オキソグルタラメート経路の概略図も参照されたい。
本発明の一局面において、出願人らは、シロイヌナズナのグルタミンフェニルピルビン酸トランスアミナーゼ(GPT)酵素をコードする核酸分子を同定した(後述する実施例1を参照)。そして、発現された組換え酵素が活性を有し、シグナル代謝産物、2−オキソグルタラメートの合成を促進させ得ることを最初に示した(後述する実施例2)。さらに、出願人らは、このシロイヌナズナのグルタミントランスアミナーゼ遺伝子を、形質転換された異種植物において過剰発現させた結果、CO2固定の割合を向上させ、かつ生育特性を増加させることを最初に示した(後述する実施例3)。
出願人らは、以前の研究で、強固な構成的プロモーターの制御下にある過剰発現のアルファルファGS1遺伝子が、葉内に高レベルのGS活性を有するトランスジェニックタバコ植物を生じさせることを実証した。これらの植物は、野生型の植物よりも早く成長し、CO2を速く固定し、グルタミンおよび2−オキソグルタラメート濃度の増大と同様に、全タンパク質の濃度が増大し、根を介した硝酸塩の吸収速度の増大を示す。
また、本明細書に記載するように(後述する実施例3を参照)、トランスジェニックタバコ植物において、シロイヌナズナのGPTコード配列の全長を含む導入遺伝子を過剰発現させると、CO2固定を速め、かつ全タンパク質、グルタミンおよび2−オキソグルタラメートの量を増加させる結果となる。また、これらのトランスジェニック植物は、野生型の植物よりも速く生育する(図2)。同様に、トマト植物に関する予備試験では(後述する実施例4を参照)、シロイヌナズナのGPT導入遺伝子が形質転換されたトマト植物は、野生型のコントロール植物と比較して、生育速度、開花、および種子収量の顕著な向上を示した(図3および後述する実施例4)。
本明細書において実施例3、5および7(後述する)によって説明されるある特定の実施形態において、5’および3’非翻訳領域を含むアルファルファGS1遺伝子を有する、第1組の親の1種類の導入遺伝子タバコ植物系統は、選択的な圧力下のもと、最も早く成長する表現型のスクリーニングおよび導入遺伝子/表現型ホモ接合体の自家受精をするとともに、アグロバクテリウムを介した遺伝子の形質転換によって作製した(後述の実施例5参照)。シロイヌナズナGPTの全長コード配列を有する、第2組の親の1種類の導入遺伝子タバコ植物系統は、同様の方法で作成した(後述の実施例3)。それぞれの親系統由来の成長速度が速い植物を、子系統を得るために有性交雑した(後述の実施例7)。
シロイヌナズナGS1およびGPTトランスジェニックタバコ植物の多系交雑によって生じた子孫は、野生型植物だけでなくシングルトランスジーンの親系統に比べ、成長速度においてはるかに優れ、非常に驚くべき増大を示した。図5は、野生型およびシングルトランスジーンの親植物と比較した、シングルトランスジーンGS1植物×GPT植物の交配からの二重導入遺伝子の子孫の写真を示す。図6は、二重導入遺伝子の子孫および野生型植物の葉の大きさを比較した写真を示す。これらの二重トランスジェニック植物において、実験的に観察された成長速度は、野生型植物の200%から300%に及んだ(後述の実施例7)。さらに、全現存量は二重導入遺伝子植物において十分に増加されており、植物の全生体量は典型的に野生型植物の約2倍から3倍である。同様に、種子の収穫量は、二重導入遺伝子植物内で類似の増加を示した。また、二重導入遺伝子植物において、種子のさやの収穫量は、典型的に野生型植物の平均値の2倍から3倍、および全種子の収穫量は野生型植物の300%から400%も上回る種子の総収穫量を示した。
上述したトランスジェニックタバコ植物に加えて、GPTおよびGS導入遺伝子を含む様々な他の種類のトランスジェニック植物を本明細書において具体的に例示する。本明細書に例示されるように、2種のトマト(実施例4および実施例17を参照)、トウガラシ(Pepper)(実施例8)、マメ(Beans)(実施例9および実施例10)、ササゲ(実施例11および実施例12)、アルファルファ(実施例13)、カンタロープ(実施例14)、カボチャ(実施例15)、シロイヌナズナ(実施例16)、およびアマナズナ(実施例18)において、増大された生育特性を示すトランスジェニック植物を作製した。本発明のこれらのトランスジェニック植物は種々の形質転換方法を用いて生成された。種々の形質転換方法は、アグロバクテリウム媒介されたカルス、花の浸漬、種子の播種、さやの播種、および花の直接の接種、これらの組合せ、ならびに本明細書に例示されているような1種類の導入遺伝子を持つ植物における有性の異種交配を介する方法を含む。様々なGPTおよびGS導入遺伝子を、本明細書において例示されるように、本発明のトランス下ニック植物の生成に首尾よく採用した。
本発明はまた、生育および他の農学的性質が向上されたトランスジェニック植物を生成する方法を提供する。一実施形態において、生育および他の農学的性質が向上されたトランスジェニック植物を生成する方法は、GPT導入遺伝子をコードする核酸分子を含む発現カセットを植物細胞に導入することにより形質転換された植物細胞を生産する工程と、コードされたGPTを発現するトランスジェニック植物を取得する工程とを含む。GPT導入遺伝子は、この導入遺伝子の発現を促進することが可能な適切なプロモーターの制御下にある。他の実施形態において、生育および他の農学的性質が向上されたトランスジェニック植物を生成する方法は、GPT導入遺伝子をコードする核酸分子を含む1個以上の核酸コンストラクトまたは発現カセットを植物細胞に導入することにより形質転換された植物細胞を生産する工程と、GPTおよびGS導入遺伝子を発現するトランスジェニック植物を取得する工程とを含む。GPTおよびGS導入遺伝子は、この導入遺伝子の発現を促進することが可能な1個以上の適切なプロモーター(および、任意に、他の制御エレメント)の制御下にある。
本明細書に開示される結果に基づけば、任意の数のGPTおよびGSポリヌクレオチドが、本発明に係るトランスジェニック植物を生成するために使用され得ることは明白である。GS1およびGPTタンパク質は、ともに種々の植物種の間で高く保存されており、密接に関連している非植物のGPT(例えばゼブラフィッシュのGPT)もまた使用され得ることは、本明細書に記載の実験データから明らかである。GPTに関して、異なる種由来の多数のGPTポリヌクレオチドが活性を有しかつGPT導入遺伝子として有用であることが示されている。同様に、様々なGSポリヌクレオチドが用いられ得る。様々なGSポリヌクレオチドとしては、限定されないが、表現できるGS1コンストラクトによって形質転換された宿主細胞内でGS活性を産生するポリヌクレオチドをコードする任意の植物のGS1が挙げられる。
特定の実施形態において、GPT導入遺伝子は、シロイヌナズナ由来のGPT(例えば配列番号2、配列番号21および配列番号30に示すGPT)をコードするGPTポリヌクレオチドであり、GS導入遺伝子は、アルファルファ由来のGS1(すなわち、配列番号4)またはシロイヌナズナ由来のGS1(配列番号7)をコードするGSポリヌクレオチドである。GPT導入遺伝子は、配列番号1に示す塩基配列;配列番号1と少なくとも75%およびより好ましくは少なくとも80%の同一性を有する塩基配列であって、GPT活性を有するポリペプチドをコードする塩基配列;配列番号2に示すポリペプチド、またはこれと少なくとも75%およびより好ましくは少なくとも80%の配列同一性を有するとともにGPT活性を有するポリペプチド、をコードする塩基配列;ならびにアミノ末端の30〜56アミノ酸残基がトランケートされている、配列番号2に示すポリペプチド、またはこれと少なくとも75%およびより好ましくは少なくとも80%の配列同一性を有するとともにGPT活性を有するポリペプチド、をコードする塩基配列によってコードされ得る。GS1導入遺伝子は、配列番号3もしくは配列番号6に示すポリヌクレオチドによってコードされ得るか、または配列番号3もしくは配列番号6と少なくとも75%およびより好ましくは少なくとも80%の同一性を有する塩基配列であって、GPT活性を有するポリヌクレオチドをコードする塩基配列;ならびに配列番号4もしくは7に示すポリペプチド、またはこれと少なくとも75%およびより好ましくは少なくとも80%の配列同一性を有するとともに、GS活性を有するポリペプチド、をコードする塩基配列によってコードされ得る。
他の特定の実施形態において、GPT導入遺伝子は、ブドウ由来のGPT(例えば配列番号9および配列番号31に示すブドウGPTs)をコードするGPTポリヌクレオチドであり、GS導入遺伝子はGS1ポリヌクレオチドである。このGPT導入遺伝子は、配列番号8に示す塩基配列;配列番号8と少なくとも75%およびより好ましくは少なくとも80%の同一性を有する塩基配列であって、GPT活性を有するポリペプチドをコードする塩基配列;配列番号9もしくは配列番号31に示すポリペプチド、またはこれらと少なくとも75%およびより好ましくは少なくとも80%の配列同一性を有するとともにGPT活性を有するポリペプチド、をコードする塩基配列によってコードされ得る。
さらに他の特定の実施形態において、GPT導入遺伝子は、イネ由来のGPT(例えば配列番号11および配列番号32に示すイネGPTs)をコードするGPTポリヌクレオチドであり、GS導入遺伝子はGS1ポリヌクレオチドである。このGPT導入遺伝子は、配列番号10に示す塩基配列;配列番号10と少なくとも75%およびより好ましくは少なくとも80%の同一性を有する塩基配列であって、GPT活性を有するポリペプチドをコードする塩基配列;配列番号11もしくは配列番号32に示すポリペプチド、またはこれらと少なくとも75%およびより好ましくは少なくとも80%の配列同一性を有するとともにGPT活性を有するポリペプチド、をコードする塩基配列によってコードされ得る。
さらに他の特定の実施形態において、GPT導入遺伝子は、ダイズ由来のGPT(例えば配列番号13、配列番号33または配列番号33のN末端にイソロイシンがさらに付加された配列に示すダイズGPTs)をコードするGPTポリヌクレオチドであり、GS導入遺伝子はGS1ポリヌクレオチドである。このGPT導入遺伝子は、配列番号12に示す塩基配列;配列番号12と少なくとも75%およびより好ましくは少なくとも80%の同一性を有する塩基配列であって、GPT活性を有するポリペプチドをコードする塩基配列;配列番号13もしくは配列番号33もしくは配列番号33のN末端にイソロイシンがさらに付加された配列に示すポリペプチド、またはこれらと少なくとも75%およびより好ましくは少なくとも80%の配列同一性を有するとともにGPT活性を有するポリペプチド、をコードする塩基配列によってコードされ得る。
さらに他の特定の実施形態において、GPT導入遺伝子は、オオムギ由来のGPT(例えば配列番号15および配列番号34に示すオオムギGPTs)をコードするGPTポリヌクレオチドであり、GS導入遺伝子はGS1ポリヌクレオチドである。このGPT導入遺伝子は、配列番号14に示す塩基配列;配列番号14と少なくとも75%およびより好ましくは少なくとも80%の同一性を有する塩基配列であって、GPT活性を有するポリペプチドをコードする塩基配列;配列番号15もしくは配列番号34に示すポリペプチド、またはこれらと少なくとも75%およびより好ましくは少なくとも80%の配列同一性を有するとともにGPT活性を有するポリペプチド、をコードする塩基配列によってコードされ得る。
さらに他の特定の実施形態において、GPT導入遺伝子は、ゼブラフィッシュ由来のGPT(例えば配列番号17および配列番号35に示すゼブラフィッシュGPTs)をコードするGPTポリヌクレオチドであり、GS導入遺伝子はGS1ポリヌクレオチドである。このGPT導入遺伝子は、配列番号16に示す塩基配列;配列番号16と少なくとも75%およびより好ましくは少なくとも80%の同一性を有する塩基配列であって、GPT活性を有するポリペプチドをコードする塩基配列;配列番号17もしくは配列番号35に示すポリペプチド、またはこれらと少なくとも75%およびより好ましくは少なくとも80%の配列同一性を有するとともにGPT活性を有するポリペプチド、をコードする塩基配列によってコードされ得る。
さらに他の特定の実施形態において、GPT導入遺伝子は、バンブー由来のGPT(例えば配列番号36に示すバンブーGPT)をコードするGPTポリヌクレオチドであり、GS導入遺伝子はGS1ポリヌクレオチドである。このGPT導入遺伝子は、配列番号36に示すポリペプチド、またはこれと少なくとも75%およびより好ましくは少なくとも80%の配列同一性を有するとともにGPT活性を有するポリペプチド、をコードする塩基配列によってコードされ得る。
本発明の実施におけるGPT導入遺伝子としての使用に適した他のGPTポリヌクレオチドは、種々の方法により取得され得る。種々の方法とは、当業者によって理解され得るように、組換え発現システム(すなわち、大腸菌(E. coli)(実施例20〜23を参照)、植物体における一過性の発現システム(実施例19を参照)、または遺伝子導入植物における(実施例1〜18を参照))において、GPTの発現を導く能力についてGPT活性を用いて試験する方法である。
(導入遺伝子コンストラクト/発現ベクター)
本発明に係るトランスジェニック植物を生成するために、所望の導入遺伝子に関する遺伝子コード配列は、形質転換された植物細胞内で導入遺伝子配列の発現を導くことができる核酸コンストラクト(本明細書中において、(導入遺伝子)発現ベクター、発現カセット、発現コンストラクトまたは遺伝的コンストラクトとしても交換可能に引用される)中に組み込まれなければならない。所定の導入遺伝子を保有する核酸コンストラクトは、多数の公知の方法を用いて、植物細胞または種々の細胞内に導入され得る。公知の方法は、限定されないが、エレクトロポレーション、DNAボンバードメントまたは遺伝子銃、マイクロインジェクション、ならびに種々のDNAベースのベクター(例えばアグロバクテリウム・ツメファシエンス(Agrobacterium tumefaciens)およびアグロバクテリウム・リゾゲネス(Agrobacterium rhizogenes)のベクター)の使用を介する方法を含む。形質転換植物細胞中にいったん導入されると、核酸コンストラクトは、一過的に、あるいは安定的に、組み込まれた導入遺伝子(すなわちGPT)の発現を導くであろう。安定的に発現させることが好ましく、安定的な発現は、核酸コンストラクトをクロモソームに組み込ませることができる植物の形質転換ベクターを利用することにより達成される。一度植物細胞への形質転換が成功すれば、これを栽培することによりトランスジェニック植物を再生し得る。
形質転換植物における挿入遺伝子の本質的な発現または発現誘導の促進に適した、多数の発現ベクターが知られている。さらに、種々の一過性の発現ベクターおよびシステムが知られている。大体において、遺伝子の形質転換における特定の方法に使用するために、適切な発現ベクターが選択される(以下を参照)。概して、トランスジェニック植物を生成するための典型的な植物発現ベクターは、プロモーターの発現制御コントロール下にある所定の導入遺伝子、形質転換体の選択を助けるための選択マーカー、および転写終結配列を含み得る。
より具体的には、本発明に係るトランスジェニック植物の生成に使用するための核酸コンストラクトの基本要素は、以下である:形質転換植物細胞において(1つもしくは複数の)導入遺伝子の機能的な発現を促進することができる適切なプロモーター、このプロモーターに実施可能に連結された(1つもしくは複数の)導入遺伝子(すなわちGPTコード配列)、好ましくは、この導入遺伝子に実施可能に連結された適切な転写終結配列(すなわちノパリン合成酵素遺伝子のターミネーター)、およびときにこの導入遺伝子の発現を制御するために有用な他の要素、ならびに所望のトランスジェニック産物を選択するために適した1つ以上の選択マーカー遺伝子(すなわち抗生物質耐性遺伝子)。
アグロバクテリウム・ツメファシエンスは、トランスジェニック植物を生成するために使用する初期の形質転換システムであるため、アグロバクテリウム形質転換用に設計された多数のベクターが存在する。安定な形質転換のため、アグロバクテリウムのシステムは、大腸菌およびアグロバクテリウムの両方で操作可能なプラスミドである「バイナリー」ベクターを利用する。このベクターは、典型的に、形質転換された植物を回収するための1つ以上の選択マーカーを含有する(Hellens et al., 2000, Technical focus: A guideto Agrobacterium binary Ti vectors. Trends Plant Sci 5:446-451)。アグロバクテ
リウム形質転換システムに使用するバイナリーベクターは、典型的に、T−DNAのボーダー領域、マルチクローニングサイト、大腸菌およびアグロバクテリウム・ツメファシエンスのための複製機能、ならびに選択マーカーおよびレポーター遺伝子を含む。
いわゆる「スーパー−バイナリー」ベクターは、高い形質転換効率を提供し、一般的にTi由来の別の病原性遺伝子を含む(Komari et al., 2006, Methods Mol. Biol. 343: 15-41)。スーパーバイナリーベクターは、一般的に、低い形質転換効率を示す植物(例えば穀類)に用いられる。別の病原性遺伝子は、限定されないが、virB,virE,およびvirGを含む(Vain et al., 2004, The effect of additional virulence genes on transformation efficiency, transgene integration and expression in rice plants using the pGreen/pSoup dual binary vector system. Transgenic Res. 13: 593-603; Srivatanakul et al., 2000, Additional virulence genes influence transgene expression: transgene copy number, integration pattern and expression. J. Plant Physiol. 157, 685-690; Park et al., 2000, Shorter T-DNA or additional virulence genesimprove Agrobacterium-mediated transformation. Theor. Appl. Genet. 101, 1015-1020; Jin et al., 1987, Genes responsible for the supervirulence phenotype of Agrobacterium tumefaciens A281. J. Bacteriol. 169: 4417-4425)。
本明細書において実証された実施形態(後述する実施例を参照)では、挿入される導入遺伝子をCaMV 35SプロモーターおよびRuBisCoプロモーターの制御下に配置する発現ベクターが使用される。CaMV 35SおよびRuBisCoプロモーターを利用する多数の発現ベクターが知られており、および/または市販されており、および/または通常の当業者によって導出できる。さらに、導入遺伝子の発現を導くために適した多くのプロモーターが知られており、後ほどさらに説明するように、本発明の実施に用いられ得る。
(植物プロモーター)
植物内で機能する多数のプロモーターが公知である。GPTおよびGS導入遺伝子コンストラクトを構築する際、選択されるプロモーターは、恒常的な非特異的プロモーターであってもよく、例えばカリフラワーモザイクウイルス35Sリボソーマルプロモーター(CaMV 35Sプロモーター)であってもよい。このプロモーターは、植物内における導入遺伝子の発現のために広く使用されている。他の強力な恒常的プロモーターの具体例は、限定されないが、イネのアクチン1プロモーター、CaMV 19Sプロモーター、Tiプラスミドのノパリン合成酵素プロモーター、アルコールデヒドロゲナーゼプロモーターおよびスクロース合成酵素プロモーターを含む。
あるいは、ある実施形態において、導入遺伝子コンストラクトにより形質転換させたい植物細胞、導入遺伝子の所望の発現量、導入遺伝子を発現させたい組織または細胞内コンパートメント、目標とする発生段階などに基づいてプロモーターを選択することが望ましい。
例えば、光合成組織およびコンパートメントにおいて発現させたいときには、リブロース2リン酸カルボキシラーゼ(RuBisCo)遺伝子のプロモーターが使用され得る。後述する実施例では、トマトRuBisCoプロモーターの制御下にGPTおよびGS1導入遺伝子を含む発現可能な核酸コンストラクトが調製され、トランスジェニック植物の生成に用いられるか、または植物内もしくは大腸菌におけるGPT活性に関してアッセイするために用いられる。
種子で発現させたいときには、種々の貯蔵タンパク質遺伝子のプロモーターが使用され得る。果実内で発現させるためには、果実特異的なプロモーター(例えばトマトの2A11)が使用され得る。他の組織特異的プロモーターの具体例は、レクチンをコードするプロモーター(Vodkin et al., 1983, Cell 34:1023-31; Lindstrom et al., 1990, Developmental Genetics 11:160-167)、トウモロコシのアルコールデヒドロゲナーゼ1(Vogelet al, 1989, J. Cell. Biochem. (Suppl. 0) 13:Part D; Dennis et al., 1984, Nucl. Acids Res., 12(9): 3983-4000)、トウモロコシの集光性複合体(Simpson, 1986, Science, 233: 34-38; Bansal et al., 1992, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 89: 3654-3658)、トウモロコシの熱ショックタンパク質(Odell et al., 1985, Nature, 313: 810-812; Rochester et al., 1986, EMBO J., 5: 451-458)、エンドウマメのスモールサブユニットRuBPカルボキシラーゼ(Poulsen et al., 1986, Mol. Gen. Genet., 205(2): 193-200; Cashmore et al., 1983, Gen. Eng. Plants, Plenum Press, New York, pp 29-38)、Tiプラスミドのマンノピン合成酵素およびTiプラスミドのノパリン合成酵素(Langridge et al., 1989, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 86: 3219-3223)、ペチュニアのカルコンイソメラーゼ(Van Tunen et al., 1988, EMBO J. 7(5): 1257-1263)、マメのグリシンリッチタンパク質1(Keller et al., 1989, EMBO J. 8(5): 1309-1314)、トランケートされたCaMV 35s(Odell et al., 1985, supra)、ポテトのパタチン(Wenzler et al., 1989, Plant Mol. Biol. 12: 41-50)、根細胞(Conkling et al., 1990, Plant Physiol. 93: 1203-1211)、トウモロコシのゼイン(Reina et al., 1990, Nucl. Acids Res. 18(21): 6426; Kriz et al., 1987, Mol. Gen. Genet. 207(1): 90-98; Wandelt and Feix, 1989, Nuc. Acids Res. 17(6): 2354; Langridge and Feix, 1983, Cell 34: 1015-1022; Reina et al., 1990, Nucl. Acids Res. 18(21): 6426)、グロブリン−1(Belanger and Kriz, 1991, Genetics 129: 863-872)、α−チューブリン(Carpenter et al., 1992, Plant Cell 4(5): 557-571; Uribe et al., 1998, Plant Mol. Biol. 37(6): 1069-1078)、cab(Sullivan, et al., 1989, Mol. Gen. Genet. 215(3): 431-440)、PEPCase(Hudspeth and Grula, 1989, Plant Mol. Biol. 12: 579-589)、R遺伝子複合体(Chandler et al., 1989, The Plant Cell 1: 1175-1183)、カルコン合成酵素(Franken et al., 1991, EMBO J. 10(9): 2605-2612)およびグルタミン合成酵素プロモーター(U.S. Pat. No. 5,391,725; Edwards et al., 1990, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 87: 3459-3463; Brears et al., 1991, Plant J. 1(2): 235-244)を含む。
恒常的プロモーターに加えて、トランスジェニック植物が再生し、成熟し、開花するなどに従って導入遺伝子の発現を制御したい場合には、種々の誘導性プロモーター配列が使用され得る。このような誘導性プロモーターの具体例は、熱ショック遺伝子、防御応答遺伝子(すなわち、フェニルアラニンアンモニアリアーゼ;例えばBevan et al., 1989, EMBO J. 8(7): 899-906を参照)、創傷応答遺伝子(すなわち、細胞壁タンパク質の遺伝子)、化学的誘導性遺伝子(すなわち、硝酸還元酵素、キチナーゼ)および暗誘導性遺伝子(すなわち、アスパラギン合成酵素;例えば、米国特許第5,256,558号を参照)のプロモーターを含む。また、主要なクロロフィルa/b結合タンパク質(cab)をコードする遺伝子ファミリー、およびリブロース−1,5−2リン酸カルボキシラーゼ(rbcS)のスモールサブユニットをコードする遺伝子ファミリーを含む多くの植物の核内遺伝子は、光によって活性化される(例えば、Tobin and Silverthorne, 1985, Annu. Rev. Plant Physiol. 36: 569-593; Dean et al., 1989, Annu. Rev. Plant Physiol. 40: 415-439.を参照)。
他の誘導性プロモーターは、ABA誘導性プロモーターおよび膨圧誘導性プロモーター、オーキシン結合タンパク質遺伝子プロモーター(Schwob et al., 1993, Plant J. 4(3): 423-432)、UDPグルコース フラボノイド グリコシルトランスフェラーゼ遺伝子プロモーター(Ralston et al., 1988, Genetics 119(1): 185-197);MPIプロテイナーゼインヒビタープロモーター(Cordero et al., 1994, Plant J. 6(2): 141-150)、グリセルアルデヒド−3−リン酸デヒドロゲナーゼ遺伝子プロモーター(Kohler et al., 1995, Plant Mol. Biol. 29(6): 1293-1298; Quigley et al., 1989, J. Mol. Evol. 29(5): 412-421; Martinez et al.,1989, J. Mol. Biol. 208(4): 551-565)、およびエンドウマメ由来の光誘導性プラスチド グルタミン合成酵素遺伝子(米国特許第5,391,725号;Edwards et al., 1990, supra)を含む。
トランスジェニック植物技術において使用される植物プロモーターのレビューについては、Potenza et al., 2004, In Vitro Cell. Devel. Biol - Plant, 40(1): 1-22を参照されたい。植物の合成プロモーター工学のレビューについては、例えば、Venter, M., 2007, Trends Plant Sci., 12(3): 118-124を参照されたい。
(グルタミンフェニルピルビン酸トランスアミナーゼ(GPT)導入遺伝子)
本発明は、シグナル代謝産物である2−ヒドロキシ−5−オキソプロリンの合成に直接的に機能する、グルタミンフェニルピルビン酸トランスアミナーゼ(GPT)酵素を含む植物を最初に開示する。これまで、機能が明らかになった植物のグルタミンフェニルピルビン酸トランスアミナーゼは全く記載されていない。出願人は、いくつかの植物種および動物種由来のGPTポリヌクレオチドコード配列を同定し、試験した。そして、この遺伝子を宿主植物に組み込み、生育がより速く、葉のタンパク質量が向上され、葉組織内におけるグルタミンシンテターゼ活性が増加され、そしてCO2固定速度がより速い、生育特性が顕著に向上されている異種性のトランスジェニック植物とすることに成功した。
本発明の実施において、GPT遺伝子は、本発明のトランスジェニック植物に取り込まれた少なくとも2つの導入遺伝子のうちの一方として機能し、他方はグルタミンシンテターゼ遺伝子である(下記を参照)
シグナル代謝産物2−ヒドロキシ−5−オキソプロリンの生合成を包含する同様の代謝経路で機能するGPTは、全ての植物種に含まれていることが期待される。したがって、本発明の実施において、GPTホモログまたはその機能的な変異体をコードするあらゆる植物の遺伝子は、本発明に係るトランスジェニック植物を生成するために有用であり得る。さらに、種々の植物GPTタンパク質構造と、ゼブラフィッシュ(Danio rerio(Zebrafish))由来の推定上の(および生物学的に活性な)GPTホモログとの間の構造的な同一性、を考慮すれば(実施例22を参照)、他の非植物GPTホモログは、本発明に係るトランスジェニック植物の生成に使用するためのGPT導入遺伝子の調製に使用され得る。
配列番号30に示すシロイヌナズナの成熟タンパク質配列と(BLASTアラインメントにより)個々に比較された際、以下の成熟GPTタンパク質配列について、以下の配列同一性および相同性(BLAST「陽性」、類似アミノ酸を含む)が得られた。
GPTタンパク質構造では多くの植物種を超えて特徴が保存されていることを強調するように、この保存は、上述した植物種内だけでなく、ゼブラフィッシュおよびクラミドモナス由来の推定上の非ヒトGPTsにまで及んで見られる。ゼブラフィッシュの場合、同一性の範囲は非常に高い(配列番号30で示すシロイヌナズナの成熟GPTとアミノ酸配列で83%の同一性、かつ類似アミノ酸残基を計算に加えれば92%の相同性)。ゼブラフィッシュの成熟GPTは、大腸菌においてこれを発現させ、かつ生物学的活性(2−オキソグルタラメート合成)を証明することにより確認された。
推定上のGPTホモログが、本発明における生育が向上されたトランスジェニック植物を生成するために適しているかどうかを調べるために、まずそのコード配列を大腸菌あるいは他の適した宿主内で発現させ、そして合成される2−オキソグルタラメートシグナル代謝産物の量が増加するかどうかを調べる必要がある(実施例19〜23を参照)。このような増加が示される場合には、次にそのコード配列を、同種の植物宿主および異種の植物宿主の両方に導入させた後に生育特性を評価してもよい。この目的のために、2−オキソグルタラメートを特異的に検出することができるあらゆるアッセイを使用することができる。あらゆるアッセイは、限定されないが、後述する実施例2に記載のNMRおよびHPLCアッセイを含む。また、成熟GPT活性を直接測定するためのアッセイ(例えば、実施例7で説明するGPT活性アッセイ)を用いてもよい。
本発明に係るトランスジェニック植物を生成するために、2−オキソグルタラメート合成活性を有するあらゆる植物GPTが、植物細胞を形質転換するために使用され得る。植物種間における構造的な相同性のレベルは高いと考えられ、種々の植物GPTタンパク質と、ゼブラフィッシュの推定上のGPTホモログとの間の密接な相同性によって証明されるように、この高いレベルは、植物を超えて及ぶと考えられる。したがって、種々の植物GPT遺伝子が、種々の異種の植物種において生育が向上されたトランスジェニック植物を生成するために使用され得る。さらに、同種植物においてGPT導入遺伝子を発現させた場合には、異種細胞においては起こりえないであろう何らかの方法で、同種細胞内の制御が、導入遺伝子の発現を減じ得る可能性もある。しかし、たいていは生育特性が所望に向上される結果になることが期待されるであろう(すなわち、イネのグルタミントランスアミナーゼを、トランスジェニックイネ植物内で過剰発現させる)。
(グルタミンシンテターゼ(GS)導入遺伝子)
本発明の実施において、グルタミンシンテターゼ(GS)遺伝子は、本発明に係るトランスジェニック植物に組み込まれた少なくとも2つの導入遺伝子のうちの1つとして機能する(GPTが2つのうちのもう一方である)。
グルタミンシンテターゼは、動物および真正細菌と同様に、植物の窒素代謝に重要な役割を果たす。GS酵素は、グルタミンを合成するために、ATP依存反応において、グルタミン酸へのアンモニウムの付加を触媒する。分類された種に由来するGS酵素は、活性部位の機能に重要であるとみられる、高度に保存されたアミノ酸残基を示し、GS酵素が類似の機能を果たすことを示す(for review, see Eisenberg et al., Biochimica et Biophysica Acta, 1477:122 145, 2000)。
GSは、細胞小器官の異なる場所(葉緑体および細胞質)に分布し、葉、根、苗芽、種子および果実などの様々な植物組織にみられる。植物GSの主な2つのアイソフォーム:細胞質のアイソフォーム(GS1)および色素体(葉緑体)のアイソフォーム(GS2)がある。GS2は、原則として葉の組織にみられ、光呼吸または硝酸還元により生成されたアンモニアの同化において機能する。GS1は、主に葉および根の組織にみられ(典型的に、高等植物の多数の異なるアイソフォームに存在する)、他の全ての生理学的過程により生成されたアンモニアを同化する機能がある(Coruzzi, 1991, Plant Science 74: 145-155; McGrath and Coruzzi, 1991, Plant J. 1(3): 275-280; Lam et al., 1996, Ann. Rev. Plant Physiol. Plant Mol. Biol. 47: 569-593; Stitt, 1999, Curr. Op. PlantBiol. 2: 178-186; Oliveira et al., 2001, Brazilian J. Med. Biol. Res. 34: 567-575)。複合GS遺伝子は、器官および組織に特有の方法、ならびに環境要因に依存した方法でGSの発現を可能にする、複合プロモーターのレパートリーに付随する。
植物のグルタミンシンテターゼは、8つのサブユニットから成り、植物のネイティブ酵素は、320から380kDの範囲の分子量を有し、それぞれのサブユニットは、38から45kDの分子量を有している。いくつかの植物、特にマメ科植物のGS1遺伝子は、クローニングされて配列が読まれている(Tischer et al., 1986, Mol Gen Genet. 203: 221-229; Gebhardt et al., 1986, EMBO J. 5: 1429-1435; Tingey et al., 1987, EMBO J. 6: 1-9; Tingey et al., 1988, J Biol Chem. 263: 9651-9657; Bennett et al., 1989, Plant Mol Biol. 12: 553-565; Boron and Legocki, 1993, Gene 136: 95-102; Rocheet al., 1993, Plant Mol Biol. 22: 971-983; Marsolier et al., 1995, Plant Mol Biol. 27: 1-15; Temple et al., 1995, Mol Plant-Microbe Interact. 8: 218-227). All have been found to be encoded by nuclear genes (for review, see, Morey et al., 2002, Plant Physiol. 128(1): 182-193)。
葉緑体GS2は、単一の遺伝子としてコードされるとみられ、一方、様々な細胞質GS1のアイソフォームは、多重遺伝子ファミリーにコードされる(上述のTingey et al., 1987; 上述のSakamoto et al., 1989, Plant Mol. Biol. 13: 611-614; Brears et al, 1991; Li et al., 1993, Plant Mol. Biol., 23:401-407; 上述のDubois et al., 1996, Plant Mol. Biol., 31:803-817; Lam et al., 1996)。GS1多重遺伝子ファミリーは、ホモまたはヘテロ八量体を形成するように結合し得る異なるサブユニットをコードするとみられる。また、異なる構成要素は、遺伝子の構成要素が、異なる制御がなされることを示唆する独特な発現パターンを示すが、それは、窒素代謝全体において果たすグルタミンシンテターゼの様々な機能的な役割に関係し得る(上述のGebhardt et al., 1986; 上述のTingey et al., 1987, ; 上述のBennett et al., 1989; 上述のWalker and Coruzzi, 1989; Peterman and Goodman, 1991, Mol Gen Genet. 1991;330:145-154.; 上述のMarsolier et al., 1995; 上述のTemple et al., 1995; 上述のDubois et al., 1996)。
一実施形態では、GS1遺伝子コード配列を用いてGS導入遺伝子コンストラクトを生成する。特定の実施形態では、後述の実施例でさらに説明するアルファルファまたはシロイヌナズナのGS1遺伝子コード配列を用いて、GS1導入遺伝子を発現するトランスジェニック植物を生成するために使用し得る導入遺伝子コンストラクトを生成する。一実施例として、当該コンストラクトは、アグロバクテリウムを形質転換するために使用し得る。その後、形質転換したアグロバクテリウムは、T0トランスジェニック植物を生成するために用いられる。実施例5では、この方法によってToのGS1トランスジェニックタバコ植物の生成を実証する。同様に、実施例6および17ではToGS1トランスジェニックトマト植物の生成を実証し、実施例8ではToGS1トランスジェニックトウガラシ(pepper)植物の生成を実証し、実施例9および10ではToのGS1トランスジェニックマメ植物の生成を実証し、実施例11および12ではToのGS1トランスジェニックササゲ植物生成を実証し、実施例13ではToのGS1トランスジェニックアルファルファ植物の生成を実証し、実施例14ではToのGS1トランスジェニックカンタロープ植物の生成を実証し、実施例15ではToのGS1トランスジェニックカボチャ植物の生成を実証し、実施例16ではToのGS1トランスジェニックシロイヌナズナ植物の生成を実証し、実施例18ではToのGS1トランスジェニックアマナズナ植物の生成を実証する。
(転写終結)
好ましい実施形態において、転写終結を導き、mRNA転写産物のポリアデニル化を正常にさせるために、3’転写終結配列が導入遺伝子の下流に組み込まれる。好適な転写終結因子は、植物において機能することが知られている転写終結因子であり、限定されないが、アグロバクテリウム・ツメファシエンスのノパリン合成酵素(nopaline synthase:NOS)およびオクトピン合成酵素(octopine synthase:OCS)遺伝子、オクトピン合成酵素遺伝子由来のT7転写産物、ジャガイモまたはトマト由来のプロテアーゼインヒビターIまたはII遺伝子の3’末端、CaMV 35Sターミネーター、tmlターミネーターおよびエンドウマメのrbcS E9ターミネーターを含む。さらに、天然の遺伝子における転写終結因子が使用され得る。ある実施形態では、実施例として後述するが、ノパリン合成酵素の転写終結因子が使用される。
(選択マーカー)
選択マーカーは、形質転換体を選抜する手段を可能にするために、導入遺伝子の発現ベクターに通常含まれる。種々のタイプのマーカーが使用可能であるが、種々のネガティブセレクションマーカーが通常利用される。ネガティブセレクションマーカーは、形質転換されていない細胞を阻害し、または殺す選択剤に対する耐性を付与するマーカーを含み、例えば、抗生物質(例えばカナマイシン、ゲンタマイシン、アナマイシン(anamycin)、ハイグロマイシンおよびハイグロマイシンB)に対する耐性、または除草剤(例えばスルホニル尿素、グルホシネート(gulfosinate)、ホスフィノトリシンおよびグリフォセート)に対する耐性を付与する遺伝子を含む。スクリーニング可能なマーカーは、例えば、β−グルクロニダーゼをコードする遺伝子(Jefferson, 1987, Plant Mol. Biol. Rep 5: 387-405)、ルシフェラーゼをコードする遺伝子(Ow et al., 1986, Science 234: 856-859)およびアントシアニン色素の生産もしくは制御に関わるタンパク質をコードする種々の遺伝子(例えば米国特許第6,573,432号を参照)を含む。大腸菌のグルクロニダーゼ遺伝子(gus,gusAまたはuidA)は、植物の遺伝子導入において広く使用されてきた選択マーカーである。この大きな理由は、グルクロニダーゼ酵素の安定性、高い感受性および検出の容易性(例えば、蛍光定量的方法、分光光度的方法、種々の組織化学的方法)にある。さらに、最も高等な植物種には、検出可能なグルクロニダーゼが基本的に存在しない。
(形質転換の手法およびシステム)
本発明における導入遺伝子の発現ベクターコンストラクトを、植物または植物細胞に導入するための種々の方法は、当業者によく知られており、あらゆる形質転換可能な植物または植物細胞が標的として利用され得る。
アグロバクテリウムによって媒介される形質転換は、おそらく植物の遺伝子導入に利用される最も一般的な方法である。そして、アグロバクテリウムに媒介される、多数の植物における形質転換プロトコルは、広く文献に記載されている(例えば、Agrobacterium Protocols, Wan, ed., Humana Press, 2nd edition, 2006を参照)。アグロバクテリウム・ツメファシエンスは、腫瘤を誘導するDNA(「T−DNA」、「トランスファーDNA」)の小断片の植物細胞への挿入を介して、非常に多数の双子葉植物種において腫瘤(クラウンゴール疾患)を引き起こすグラム陰性土壌細菌である。T−DNAは、植物ゲノム中の半ランダムな位置に組み込まれ、そして最終的にそこに安定的に組み込まれ得る。T−DNAボーダーとよばれる直接繰り返しDNA配列が、T−DNAの左端および右端を規定している。T−DNAは、「バイナリーベクター」システムを作り出すために、Tiプラスミドの残りの部分から物理的に分離されることができる。
アグロバクテリウム形質転換は、双子葉植物、単子葉植物、およびこれらの細胞を安定的に形質転換するために使用され得る(Rogers et al., 1986, Methods Enzymol., 118: 627-641; Hernalsteen et al., 1984, EMBO J., 3: 3039-3041; Hoykass-Van Slogteren et al., 1984, Nature, 311: 763-764; Grimsley et al., 1987, Nature 325: 167-1679; Boulton et al., 1989, Plant Mol. Biol. 12: 31-40; Gould et al., 1991, Plant Physiol. 95: 426-434)。アグロバクテリアにDNAを導入する種々の方法が知られており、エレクトロポレーション、凍結融解法、および三親接合(triparental mating)を含む。外部DNAをアグロバクテリウム内に配置する最も効率的な方法は、エレクトロポレーションを介する方法である(Wise et al., 2006, Three Methods for the Introduction of Foreign DNA into Agrobacterium, Methods in Molecular Biology, vol. 343: Agrobacterium Protocols, 2/e, volume 1; Ed., Wang, Humana Press Inc., Totowa, NJ, pp. 43-53)。さらに、T−DNAの大部分は組み込まれないことを考慮すれば、アグロバクテリウムにより媒介される形質転換を使用することにより、組み込まれていない導入遺伝子コンストラクト分子の転写能力を介した導入遺伝子の一過的な発現を得ることができる(Helens et al., 2005, Plant Methods 1:13)。
多数のアグロバクテリウム形質転換ベクターおよび方法が記載されてきた(Karimi et al., 2002, Trends Plant Sci. 7(5): 193-5)。そして、これらの多くのベクターは商業的に手に入れることができる(例えばインビトロジェン、カールズバッド、CA)。さらに、より多くの「オープンソース」のアグロバクテリウム形質転換ベクターが使用可能である(例えばpCambiaベクター;Cambia,Canberra,Australia)。また、本明細書中に上述した「導入遺伝子コンストラクト」の項を参照されたい。さらに実施例に記載した特定の実施形態において、生育が向上したタバコおよびトマトのトランスジェニック植物を生成するために、Horschらのリーフディスク形質転換システム(Horsch et al.,1995, Science 227:1229-1231)において、pMON316由来のベクターが使用された。
本発明に係るトランスジェニック植物の生成に使用され得る、他に一般に使用される形質転換法は、限定されないが、微粒子銃(microprojectile bombardmentもしくはbiolistic)形質転換法、カルシウムによるネイキッドDNAのプロトプラスト形質転換、ポリエチレングリコール(PEG)またはエレクトロポレーション(Paszkowski et al., 1984, EMBO J. 3: 2727-2722; Potrykus et al., 1985, Mol. Gen. Genet. 199: 169-177; Fromm et al., 1985, Proc. Nat. Acad. Sci. USA 82: 5824-5828; Shimamoto et al., 1989, Nature, 338: 274-276)を含む。
微粒子銃形質転換は、DNAによってコートされた数百万個の金属粒子を、微粒子銃装置(もしくは「遺伝子銃」)を用いて標的の細胞または組織に注入する。様々な種類の微粒子銃が商業的に入手可能である。いったん細胞中に入れば、DNAが粒子から溶出され、一部が安定的に細胞の1つ以上のクロモソーム中に組み込まれ得る(レビューのために、Kikkert et al., 2005, Stable Transformation of Plant Cells by Particle Bombardment/Biolistics, in: Methods in Molecular Biology, vol. 286: Transgenic Plants: Methods and Protocols, Ed. L. Pena, Humana Press Inc., Totowa, NJを参照)。
エレクトロポレーションは、短い、高強度の電場を利用して、細胞膜の脂質二重層を可逆的に透過可能にする技術である(例えば、Fisk and Dandekar, 2005, Introduction and Expression of Transgenes in Plant Protoplasts, in: Methods in Molecular Biology, vol. 286: Transgenic Plants: Methods and Protocols, Ed. L. Pena, Humana PressInc., Totowa, NJ, pp. 79-90; Fromm et al.,1987, Electroporation of DNA and RNA into plant protoplasts, in Methods in Enzymology, Vol. 153, Wu and Grossman, eds., Academic Press, London, UK, pp. 351-366; Joersbo and Brunstedt, 1991, Electroporation: mechanism and transient expression, stable transformation and biological effects in plant protoplasts. Physiol. Plant. 81, 256-264; Bates, 1994, Genetic transformation of plants by protoplast electroporation. Mol. Biotech. 2: 135-145; Dillen et al., 1998, Electroporation-mediated DNA transfer to plant protoplasts and intact plant tissues for transient gene expression assays, in Cell Biology, Vol. 4, ed., Celis, Academic Press, London, UK, pp. 92-99を参照)。この技術は、細胞膜に水溶性の細孔を作り出すことにより行なう。細孔は、DNA分子(および他の高分子)が細胞に入るのに充分な大きさのサイズである。そして、導入遺伝子発現コンストラクト(T−DNA等)は、植物ゲノムDNA中に安定的に組み込まれることができ、形質転換細胞の生成が導かれ、その後に形質転換細胞はトランスジェニック植物に再生され得る。
より新しい形質転換法は、いわゆる「フローラルディップ(floral dip)」法を含む。フローラルディップ法は、他の一般に使用される全ての形質転換方法のように植物組織培養が要求されず、単純性が期待される(Bent et al., 2006, Arabidopsis thaliana Floral Dip Transformation Method, Methods Mol Biol, vol. 343: Agrobacterium Protocols, 2/e, volume 1; Ed., Wang, Humana Press Inc., Totowa, NJ, pp. 87-103; Clough and Bent, 1998, Floral dip: a simplified method for Agrobacterium-mediated transformation of Arabidopsis thaliana, Plant J. 16: 735-743)。しかしながら、シロイヌナズナを除いて、これらの方法は、広範囲の種類の植物種にわたって広く使用されていない。簡単にいえば、フローラルディップによる形質転換は、アグロバクテリウム・ツメファシエンスの適切な菌株を用いて、開花している植物を浸漬し、もしくは開花している植物に噴霧することにより成し遂げられる。その後、3つのT0植物から回収した種子を発芽させ、トランスジェニックT1個体を同定して選択した。実施例16は、花の浸漬によりシロイヌナズナを接種し、トランスジェニックシロイヌナズナ植物を生成したことを示す。
他の形質転換法は、アグロバクテリウムベクター等を用いて、生育中の植物の種子または苗を形質転換させる方法を含む。例えば、実施例8で説明されるように、このようなベクターは、ベクター(すなわちアグロバクテリア)の懸濁液または混合物を、生育中の種子のさや(すなわち、トウガラシのさや、マメのさや、およびエンドウマメのさやなど)における空洞中に直接的に注入することによって、生育中の種子を形質転換するために使用し得る。苗は、実施例13のアルファルファに関する記載のように形質転換され得る。発芽した種子は、実施例18のカメリアに関する記載のように形質転換され得る。実施例14のカンタロープメロンおよび実施例15のカボチャに関する記載のように、ベクターが果実または生育中の果実内に注入される果実内部法もまた使用し得る。
他の形質転換法は、花器官をベクター接種のための標的とする方法、例えば実施例9および10のマメ、実施例11および12のエンドウマメ、ならびに実施例17のトマトに関して説明される花接種法などをも含む。
上述した植物形質転換法は、導入遺伝子を多くの種類の植物細胞および組織に導入するために使用され得る。植物細胞および組織は、限定されないが、植物全体、葉緑体を含む組織および器官の移植片、葉緑体を含む組織および器官の移植片、開花組織および細胞、プロトプラスト、分裂組織細胞、カルス、小胞子などの未成熟の胚および配偶子細胞、花粉、精子および卵細胞、上述した組織の培養細胞、再生された繁殖性のトランスジェニック植物が生成され得る他のあらゆる細胞を含む。カルスは、組織源から生じる。組織源は、限定されないが、未成熟の胚、苗の頂端分裂組織、小胞子などを含む。カルスとして増殖可能な細胞もまた、遺伝的形質転換を受ける細胞である。
形質転換された植物細胞、組織および器官から個々の植物を再生する方法は、多くの植物種について知られており、かつ記載されている。
例として、形質転換された小植物(形質転換細胞または組織由来)を、形質転換法に使用する選択剤(つまり、およびカナマイシンなどの抗生物質)が添加された植え付け可能な生育培地において培養する。この形質転換された小植物を、根を下ろした後に土壌に移し、十分に成長させる。開花した後、成熟植物に好ましくは自家受粉させる。そして、その結果生じた種子を回収し、次の世代を生育させるために使用する。実施例3〜6は、トランスジェニックタバコ植物およびトランスジェニックトマト植物の再生について記載する。
T0トランスジェニック植物は、第1の形質転換体もしくは第2の形質転換体の自家受粉によって、または他の植物(形質転換植物もしくは非形質転換植物)の第1もしくは第2の形質転換体の雌雄交雑によって、次の世代(例えば、T1、T2など)を生成するために使用され得る。例えば、後述の実施例7において説明するように、アルファルファGS1遺伝子を過剰に発現し、野生型植物よりも優れている特定の植物と、シロイヌナズナのGPT遺伝子を過剰に発現し、野生型植物よりも優れている特定の植物とを、手作業で花粉を移すという簡単な雌雄交雑によって交雑した。相反交雑は、各植物が一つ目の組の交雑において雄として提供され、各植物が2つ目の組の交雑において雌として提供されるようにした。成熟した植物の成長段階中に、当該植物を、主として成長表現型、CO2固定速度などについて試験した(下記のサブセクションを参照)。
(生育が向上されたトランスジェニック植物の選抜)
トランスジェニック植物は、標準的な方法を用いて選抜され、スクリーニングされ、そして同定され得る。本発明の好ましいトランスジェニック植物は、向上された生育および/または他の所望の農学的性質を示す1つ以上の表現型の特徴を提示し得る。トランスジェニック植物は、通常、形質転換体を選抜するために、選択圧下で再生され、その後にトランスジェニック植物生成が行なわれる。さらに、使用される選択圧は、所望の導入遺伝子発現コンストラクトまたはカセットの存在を確認するために、T0世代を超えて使用され得る。
T0形質転換された植物細胞、カルス、組織または植物は、形質転換に用いる導入遺伝子発現コンストラクトに含まれるマーカー遺伝子の遺伝的組成物、および/またはマーカー遺伝子によりコードされる表現型の特徴を選抜し、またはスクリーニングすることにより、同定され、かつ単離され得る。例えば、遺伝的コンストラクトによって耐性を付与することができる抗生物質または除草剤の抑圧的な量を含む生育培地において、形質転換されている可能性のある植物、組織または細胞を生育させることによって、選抜が行なわれ得る。さらに、形質転換された植物細胞、組織および植物は、導入遺伝子発現コンストラクト内に存在し得るマーカー遺伝子(すなわち、β−グルクロニダーゼ)の活性をスクリーニングすることによっても同定され得る。
周知のとおり、所望の導入遺伝子発現コンストラクトを含む植物を同定するために、種々の物理的方法および生化学的方法が使用され得る。これらの方法の具体例は、例えば、導入遺伝子、導入遺伝子発現コンストラクトまたはその要素を同定するためのサザンブロット解析または種々の核酸増幅法(いわゆるPCR)、RNA転写産物を検出しかつ決定するためのノザンブロッティング、S1 RNase保護法、逆転写酵素PCR(RT−PCR)増幅法、導入遺伝子によってコードされかつ発現されるタンパク質を同定するためのタンパク質ゲル電気泳動、ウェスタンブロッティング、免疫沈降および酵素免疫測定などが用いられ得る。
他の手段では、形質転換体を同定するために、標的植物における導入遺伝子の発現により改変されることが知られている遺伝子、タンパク質および/または代謝化合物の発現量が使用され得る。本発明に係る一実施形態において、シグナル代謝産物2−オキソグルタラメートの量の増加は、実施例で説明するように、所望の形質転換体をスクリーニングするために使用され得る。同様に、実施例に説明するように、増加されたレベルのGPTおよび/またはGS活性が分析され得る。
最後に、本発明の形質転換植物は、向上された生育および/または他の所望の農学的性質を用いてスクリーニングされ得る。実際、特にその後の自家受粉、異種交配および戻し交配による植物を同定する際には、最も速い生育速度、最も高い種子の収量などを有する形質転換ラインを同定するために、ある一定の表現型のスクリーニングが通常望ましい。この目的のために、種々のパラメータが使用できる。パラメータは、限定されないが、生育速度、全生体重、乾燥重量、種子および果実の収量(数、重量)、種子および/または種子のさやのサイズ、種子のさやの収量(例えば数、重量)、葉のサイズ、植物のサイズ、開花の向上、開花の時期、全体のタンパク質量(種子、果実、植物組織内)、特定のタンパク質量(すなわちGS)、窒素量、遊離アミノ酸、および特定の代謝化合物量(すなわち2−オキソグルタラメート)を含む。一般的に、これらの表現型の測定値は、親と同一もしくは類似の植物ライン、形質転換されていない植物と同一もしくは類似の植物、または野生型植物と同一もしくは類似の植物(すなわち、標準の植物もしくは親植物)から得られた測定値と比較される。好ましくは、そして少なくとも最初に、標的トランスジェニック植物における選択された表現型の特徴の測定は、標準の植物もしくは親植物における同じ特徴の測定と並行に行なわれる。通常、特定の表現型の特徴について、トランスジェニック植物における表現型の好ましさおよび/または優位性を確立するために、複数の植物が使用される。
好ましくは、最初の形質転換体は、導入遺伝子の遺伝子型が先祖の形質を維持する(すなわち、植物が、導入遺伝子について同型となる)まで、選択された後にT1およびこれに続く世代を自家受粉により生成するために使用される。実際には、これは、各世代において所望の形質についてスクリーニングし、そしてそれら個々を自家受粉させること(たいてい繰り返し(すなわち、3または4世代))により成し遂げられる。本明細書において説明するように、少なくとも1つの雌雄世代を介して繁殖させたトランスジェニック植物の系統(タバコ、シロイヌナズナ、トマト)は、有性生殖の利点、および付随する導入遺伝子のコピー数の増加を有さない系統と比較して、より高度な導入遺伝子産生活性を示す。
安定なトランスジェニックラインは、いくつもの所望の形質を有する変種を作り出すために交雑され、かつ戻し交配されてもよい。変種は、積み重ねられた導入遺伝子を有する変種、導入遺伝子のマルチコピーを有する変種などを含む。種々の一般的な育種方法は、当業者によく知られている(例えば、Breeding Methods for Cultivar Development, Wilcox J. ed., American Society of Agronomy, Madison Wis. (1987) を参照)。さらに、安定なトランスジェニック植物は、これらの植物に導入遺伝子もしくは親の導入遺伝子のさらなるコピーをさらに形質転換することによって、遺伝的にさらに改変されてもよい。また、所定の導入遺伝子もしくは複数の導入遺伝子のマルチコピーを導入する形質転換を1回行なうことによって、トランスジェニック植物を作り出すことが検討される。
別の態様において、本発明は、増加された窒素利用効率を特徴とするトランスジェニック植物を提供する。窒素利用効率は、規定量の窒素あたりの植物の収量として発現され得る。本明細書に提供される実施例では、導入遺伝子およびコントロール植物のすべてには同じ栄養溶液を同量で与えた。トランスジェニック植物は、一貫してより高い収量を特徴としており、そのためより高い窒素効率を有する。
さらに別の態様では、本発明は、高い塩分の生育環境に対して向上された耐性を有するトランスジェニック植物およびそれらの種子を提供する。この本発明の態様は、非常に高い塩分環境(200mM NaCl)におけるトランスジェニックタバコ植物の種子の発芽を記載した、実施例24で説明する。対応する野生型のタバコ植物の種子がわずか約10%(平均で)の割合で発芽する一方、トランスジェニックタバコの種子は、トランスジェニックおよび野生型の種子の両方に関して非塩分環境下で得られる発芽率(すなわち、約92%)とほとんど同じ発芽率を達成した。
〔実施例〕
本発明の様々な態様を、いくつかの実施例によりさらに記載および説明するが、いずれも本発明の範囲を限定するものではない。
<実施例1:シロイヌナズナのグルタミンフェニルピルビン酸トランスアミナーゼ(GPT)遺伝子の単離>
シグナル代謝産物である2−オキソグルタラメートの合成に直接的に関与する植物酵素を見出す試みとして、出願人らは、推定される植物酵素が、2−オキソグルタラメートの合成に関与していると特徴づけられているヒトのタンパク質と、ある程度の構造上の関連性を有しているであろうとの仮説を立てた。ヒトのパンパク質であるグルタミントランスアミナーゼK(E.C.2.6.1.64)(文献では、システイン共役β―リアーゼ、キヌレニンアミノトランスフェラーゼ、グルタミンフェニルピルビン酸トランスアミナーゼ、等ともいわれている)は、ハロゲン化した生体異物のシステイン共役の処理に関与していることがわかっている(Perry et al., 1995, FEBS Letters 360:277-280)。ヒトのシステイン共役β―リアーゼは、窒素同化に関与する活性を有するよりも、むしろヒトおよび動物において解毒活性を有する(上述したCooper and Meister, 1997)。とはいえ、2−オキソグルタラメートの合成におけるこのタンパク質の潜在的な関与は重要であった。
ヒトのシステイン共役β―リアーゼのタンパク質配列を用いて、TIGRシロイヌナズナ植物のタンパク質配列のデータベースを検索して、関連する可能性がある1つの配列、すなわち、シロイヌナズナの遺伝子のAt1q77670に位置する部分的な配列によりコードされるポリペプチドを同定した。このポリペプチドは、アライメントした領域で約36%の配列相同性を共有する。
全長の遺伝子コーディング領域は、下記のプライマーによりシロイヌナズナのcDNAライブラリーから増幅した。
5'- CCCATCGATGTACC TGGACATAAATGGTGTGATG-3' [配列番号37]
5'- GATGGTACCTCAGACTTTTCTCTTAAGCTTCTGCTTC-3' [配列番号38]
これらのプライマーは、後述のトランスジェニック植物を作成するための発現ベクターでのサブクローニングを促進するため、ClaI(ATCGAT)およびKpnI(GGTACC)の制限酵素部位を含むように設計した。TaKaRa ExTaq DNAポリメラーゼ酵素を用いて、次の条件により高性能のPCRを行なった:まず94℃で4分間変性し、94℃で30秒間の変性、55℃で30秒間のアニーリング、および72℃で90秒の伸長反応を30サイクル行ない、最後に72℃で7分間伸長反応させる。増幅産物はClaIおよびKpnI制限酵素で切断し、アガロースゲル電気泳動法で単離して、カリフラワーモザイクウイルス(cauliflower mosaic virus:CaMV、同様にCMV)35Sの構成的プロモーターおよびノパリンシンターゼ(nopaline synthase:NOS)3'ターミネーターを含むベクターpMon316(Rogers, et. al. 1987 Methods in Enzymology 153:253-277)にライゲーションした。ライゲーション産物をDH5α細胞に形質転換し、挿入されたことを確認するために形質転換体の配列を決定した。
1.3kbのcDNAを単離して配列を決定したところ、推定される葉緑体のシグナル配列を含む、長さ440アミノ酸の全長タンパク質をコードすることを見出した。
<実施例2:生物学的に活性な組み換えシロイヌナズナのグルタミンフェニルピルビン酸トランスアミナーゼ(GPT)の産生>
上述の実施例1に記載したように、単離したcDNAによりコードされたタンパク質が、2−オキソグルタラメートの合成を触媒することが可能か否かを調べるため、当該cDNAを大腸菌で発現させて、2−オキソグルタラメートの合成能を標準的な方法で検定した。
(2−オキソグルタラメートのNMRアッセイ)
簡潔にいえば、精製したタンパク質の産物を、150mM Tris−HCl(pH8.5)、1mM β−メルカプトエタノール、200mM グルタミン、100mM グリオキシル酸および200μM ピリドキサル5'−リン酸を含む反応液に加えた。試験するタンパク質を加えていない反応液をコントロールとして用いた。試験反応液およびコントロール反応液を37℃で20時間インキュベートし、遠心分離によって浄化して沈殿物を取り除いた。化学的に合成した標準の2−オキソグルタラメートを参照として、13CNMRを用いて、2−オキソグルタラメートの存在と量を分析するために上清を試験した。反応産物は2−オキソグルタラメートおよびグリシンであり、一方、基質(グルタミンおよびグリオキシル酸)は存在比が減少した。サイクリック2−オキソグルタラメートは、オープンチェーンのグルタミン前駆体から容易に区別できる、まったく異なるシグナルを生じさせた。
(2−オキソグルタラメートのHPLCアッセイ)
GPT活性に関する代替的なアッセイは、Calderon et al., 1985, J Bacteriol 161(2): 807-809の変性に続いて、HPLCを用いて2−オキソグルタラメート産物を測定した。簡潔にいえば、25mM Tris−HCl(pH8.5)、1mM EDTA、20μM FAD、10mM システインおよび〜1.5%(v/v)メルカプトエタノールを含む、変性抽出バッファーを用いた。検査物質からの組織サンプル(すなわち、植物組織)を約1/3の比率(w/v)で抽出バッファーに加え、37℃で30分間インキュベートし、200μMの20%TCAによって停止させた。約5分後、アッセイ溶液を遠心分離し、その上清を用いてHPLC(0.01N H2SO4の移動相、約0.2ml/minの流速、40℃、でのION−300 7.8mm ID X 30cm L columnを用いる)によって2−オキソグルタラメートを定量した。注入量は約20μlであり、保持時間はおよそ38分から39分である。検出は210nmのUV光で行なう。
(NMRアッセイの結果)
本実験は、試験タンパク質が2−オキソグルタラメートの合成を触媒することができるということを証明した。ゆえに、これらのデータは、単離したcDNAが、植物において2−オキソグルタラメートの合成に直接的に関与するグルタミンフェニルピルビン酸トランスアミナーゼをコードするということを示す。よって、試験タンパク質はシロイヌナズナのグルタミンフェニルピルビン酸トランスアミナーゼ、すなわちGPTといえる。
シロイヌナズナGPTのコード配列のヌクレオチド配列を配列番号1に示す。GPTパンパク質の翻訳されたアミノ酸配列を、配列番号2に示す。
<実施例3:シロイヌナズナのGPTを過剰発現するトランスジェニックタバコ植物の作成>
(植物の発現ベクターpMON−PJUの生成)
簡潔に、植物の発現ベクターpMon316−PJUを以下のように作製した。単離したシロイヌナズナのGPTをコードするcDNA(実験例1)をpMon316ベクターのClaI−KpnIポリリンカー部位に入れて、クローニングした。これにより、GPT遺伝子は、カリフラワーモザイクウイルス(CaMV)35Sプロモーターおよびノパリンシンターゼ(NOS)転写ターミネーターの制御下におかれる。選択マーカーを提供するためにカナマイシン耐性遺伝子を加えた。
(アグロバクテリウムを介した植物の形質転換)
pMON−PJUおよびコントロールベクターpMon316(挿入したDNAなし)は標準的なエレクトロポレーション法(McCormac et al., 1998, Molecular Biotechnology 9:155-159)を用いてアグロバクテリウム・ツメファシエンス株のpTiTT37ASEに形質転換し、続いて抗生物質スペクチノマイシン(100μg/ml)およびカナマイシン(50μg/ml)を含んだLBプレートに塗り広げた。アグロバクテリウムの抗生物質耐性コロニーをPCRによって試験し、プラスミドを含むことを確認した。
ニコチアナ・タバカムcvクサンチ(Nicotiana tabacum cv Xanthi)植物を、Horschらのリーフディスク形質転換法(Horsch et al.,1995, Science 227:1229-1231)を用いて、アグロバクテリウムを形質転換したpMON−PJUにより形質転換させた。つまり、無菌のリーフディスクに接種し、2日間培養して、100μg/mlのカナマイシンおよび500μg/mlのクラファラン(clafaran)を含んでいる選択MS培地に移植した。選択培地中で根を形成する能力により形質転換体を確認した。
(GPTトランスジェニックタバコ植物の生成)
無菌の葉の切片を、Murashige&Skoog(M&S)培地上でカルスに発達させ、そこから形質転換小植物体が出現した。そして、これらの小植物体を発根可能な選択培地(選択試薬としてカナマイシンを含むM&S培地)に移植した。その後、正常で、発根した、形質転換したタバコの小植物体を土壌に移植し、成熟期まで生育させて、花が咲いた植物を自家受精させて、得られた種子を収穫した。成長期の間、植物の成長表現型を調べ、多くの若いトランスジェニック植物でCO2固定速度を測定した。
(T1およびT2世代のGPTトランスジェニック植物の生成)
トランスジェニックタバコ植物のT0世代から収穫した種子を、カナマイシン(100mg/L)を含むM&S培地で発芽させて、導入遺伝子の質を高めた。種子のうち少なくとも1/4がこの培地で発芽せず(カナマイシンは、通常の遺伝子分離の結果もたらされ得る、耐性のない種子の発芽を阻害すると期待される)、残りの種子のうち半分以上がカナマイシンに対して感受性(ごく弱い)を示したため取り去られた。
生き残った植物(T1世代)を成長させ、これらの植物をT2世代の種子を生産するために自家受精させた。T1世代からの種子は、形質転換体の系統のためにカナマイシン(10mg/L)が追加されたMS培地で発芽させた。14日後、種子を砂地に移し、25mMの硝酸カリウムが追加された4分の1の濃度のホーグランド栄養液を与えた。これを900マイクロモル/m2/秒の光の強さで16時間の明期および8時間の暗期という光周期にして、24℃で成長させた。それらを砂地培養に移植した14日後に収穫した。
(GPTトランスジェニック植物のキャラクタリゼーション)
収穫されたトランスジェニック植物(GPT形質転換体およびベクターコントロール形質転換体の両方)を根および葉のグルタミンシンテターゼ活性、乾燥させていない植物の総量、根および葉の総タンパク質ならびにCO2固定速度(Knight et al., 1988, Plant Physiol. 88: 333)を分析した。形質転換していない野生型A.ツメファシエンス植物もベースラインコントロールを設けるため、同じパラメータで分析した。生育特性の結果は、下記の表Iに示す。さらに、野生型のコントロール植物と比較したGPTトランスジェニック植物の写真を図2に示す(GS1トランスジェニックタバコ植物と一緒に示す、実施例5を参照)。評価した全パラメータにわたって、GPTトランスジェニックタバコ植物は促進された生育特性を示す。特に、GPTトランスジェニック植物は、野生型のコントロール植物と比較して、CO2固定速度において50%増を示し、葉の組織におけるグルタミンシンテターゼ活性は2倍を示した。さらに、葉と根とのGS比は、トランスアミナーゼのトランスジェニック植物では野生型のコントロールと比較してほぼ3倍に増加した。生体重および全タンパク質量も、トランスジェニック植物では野生型のコントロールと比較して、それぞれ約50%および80%(葉)増加した。これらのデータは、シロイヌナズナGPT導入遺伝子が過剰発現したタバコ植物が、有意に促進された成長とCO2固定速度を獲得することを実証する。
データ=3個体の平均値である。
野生型−コントロール植物;再生または形質転換されていない。
PN1系統は導入遺伝子を有していないコンストラクトで形質転換した後、再生により生成した。
再生および形質転換の処理に対するコントロール。PN9系統はシロイヌナズナGPT遺伝子を有するコンストラクトで形質転換した後、再生により生成した。
<実施例4:シロイヌナズナGPT遺伝子を持つトランスジェニックトマト植物の生成>
シロイヌナズナGPT遺伝子を持つトランスジェニックトマト(Lycopersicon esculentum)(マイクロトムトマト)植物を、実施例3で記載したベクターおよび方法を用いて作成した。T0トランスジェニックトマト植物を作成し、成熟期まで生育させた。トランスジェニックトマト植物の初期生育特性のデータを表IIに示す。トランスジェニック植物は野生型のコントロール植物と比較して、成長速度、開花および種子の収穫量の有意な促進を示した。さらに、トランスジェニック植物は複数の主茎を発達させた、一方、野生型の植物は単数の主茎を発達させた。野生型の植物と比較したGPTトランスジェニックトマト植物の写真を図3に示す(GS1トランスジェニックトマト植物とともに、実施例6を参照)。
<実施例5:アルファルファGS1を過剰発現するトランスジェニックタバコ植物の生成>
(植物発現ベクターpGS111の生成)
アルファルファGS1遺伝子を過剰発現するトランスジェニックタバコ植物は、以前に記載されたように生成した(Temple et al., 1993, Mol. Gen. Genetics 236: 315-325)。簡単にいえば、アルファルファGS1遺伝子における5'非翻訳領域及び3'非翻訳領域の両方の広範囲な領域を含むアルファルファGS1遺伝子の完全なコード配列(配列番号3)(DasSarma at al., 1986, Science, Vol 232, Issue 4755, 1242-1244)を、pMON316(Rogers et al., 1987, supra)の中に挿入することにより、植物発現ベクターpGS111を構築した。これにより、恒常的なカリフラワー・モザイク・ウイルス(CaMV)35Sプロモーターと、ノパリン合成酵素(NOS)の転写終結因子との制御下に、導入遺伝子を置いた。選択マーカーを付与するため、カナマイシン耐性遺伝子が含有された。
(GS1転写産物の生成)
pGS111は、三親接合(triparental mating)(上述したRogers et al., 1987;Unkefer et al.,米国特許第6,555,500号)を用いて、アグロバクテリウム・ツメファシエンス(Agrobacterium tumefaciens)菌株pTiTT37ASEに形質転換される。タバコ(Nicotiana tabacum cv. Xanthi)植物は、pGS111が形質転換されたアグロバクテリアにより、Horschらのリーフディスク形質転換システム(Horsch et al.,1995, Science 227:1229-1231)を用いて形質転換された。形質転換体は、100μg/mlカナマイシンを含むMS培地上で選択され、かつ再生された。シュートは、同じ培地(カナマイシンを含み、ホルモンがない)上に植え付けた後に鉢植え用土:パーライト:バーミキュライト(3:1:1)に移し、成熟期まで生育させた後に自家受粉させた。T0世代と、自家受粉し、かつカナマイシンによる選抜を続けることによって生成された次の世代とから、種子を回収した。最もよく生育するものが、実施例3に記載のような最も多くGPTを過剰発現することが同定された系統と交雑させ、T3子孫を生成するために使用された。野生型コントロール植物と比較したGS1トランスジェニック植物の写真を図2に示す(GPTトランスジェニックタバコ植物とともに,実施例3を参照)。
<実施例6:アルファルファGS1導入遺伝子を保有するトランスジェニックトマト植物の生成>
アルファルファGS1導入遺伝子を保有するトランスジェニックトマト(Lycopersiconesculentum)(マイクロトム(Micro−Tom)トマト)植物は、実施例5に記載
のベクター及び基本的に(Sun et al., 2006. Plant Cell Physiol. 46(3) 426-31)に記載された形質転換プロトコルを用いて生成された。T0トランスジェニックトマト植物を生成し、かつ成熟期まで生育させた。GPTトランスジェニックトマト植物の初期の生育特性データを表IIIに示す。このトランスジェニック植物は、野生型コントロール植物に対して、生育速度、開花期及び種子収量の顕著な向上を示した。さらに、野生型植物は1つの主茎しか展開させない一方で、このトランスジェニック植物は、複数の主茎を展開させた。野生型植物と比較したGS1トランスジェニックトマト植物の写真を図3に示す(GPTトランスジェニックトマト植物とともに,実施例4を参照)。
<実施例7:GS1導入遺伝子及びGPT導入遺伝子を保有する二重トランスジェニックタバコ植物の生成>
1個のトランスジェニック植物におけるGS1導入遺伝子とGPT導入遺伝子との組合せが、生育及び他の農学的な特性が向上され得る範囲を改善するかどうかを確認するための試験において、単一の導入遺伝子(GS1又はGPT)を有するトランスジェニック植物のうちの高生産性系統の間で多くの有性交雑を行なった。得られた結果は著しく、これらの交雑は、生育速度、バイオマス収量及び種子生産が、驚くほど、そしてこれまで見たこともないほど増加している子孫の植物を反復して生成した。
(材料及び方法)
単一の導入遺伝子を有する、GPT又はGS1を過剰発現するトランスジェニックタバコ植物を、それぞれ実施例3及び4に記載のように生成した。いくつかの最も速く生育するT2世代のGPTトランスジェニック植物系統を、最も速く生育するT3世代のGS1トランスジェニック植物系統と、相反交雑を用いて交雑した。その後、実施例3に記載のようなカナマイシンを含むM&S培地上で子孫を選抜し、そしてそれらの生育、開花期および種子収量を調べた。
GPT及びGS活性のための組織抽出:GPT活性は、1mmエチレンジアミン四酢酸、200mMピリドキサールリン酸及び6mMメルカプトエタノールを組織1グラム当たり3mlの割合で含む冷却した100mM Tris−HCl,pH7.6中ですりつぶした後の新鮮な植物組織から抽出した。この抽出物を遠心により透明にし、アッセイに用いた。GS活性は、10mM MgCl2及び12.5mMメルカプトエタノールを組織1グラムあたり3mlの割合で含む冷却した50mMイミダゾール,pH7.5中ですりつぶした後の新鮮な植物組織から抽出した。この抽出物を遠心により透明にし、アッセイに用いた。GPT活性は、Calderon and Mora, 1985, Journal Bacteriology 161:807-809に記載のようにアッセイした。GS活性は、Shapiro and Stadtmann, 1970, Methods inEnzymology 17A: 910-922に記載のように測定した。両方のアッセイは、適切なpHで基質およびコファクターと共にインキュベートすることを含む。検出はHPLCにより行なった。
(結果)
結果を2つの方法で示す。まず、特異的な生育特性を、表IV.A及び表IV.Bに示す(バイオマス、種子収量、生育速度、GS活性、GPT活性、2−オキソグルタメート活性など)。次に、子孫植物及びそれらの葉の写真を、単一の導入遺伝子を持つ植物及び野生型植物ならびに葉と比較して示し、図5及び図6に表す。図5及び図6は、単一導入遺伝子を持つ親植物及び野生型コントロール植物と比較して、特により大きい植物全体、より大きい葉、ならびにより早く、及び/又はより十分な開花を示す。
表IV.Aを参照すれば、これらの交雑由来の二重導入遺伝子を持つ子孫植物の全バイオマス(生体重)は、個々の野生型植物あたり19〜24グラムの範囲と比べて、個々の子孫植物あたり45〜89グラムの範囲の生体重であり、甚だしい増加を示した。バイオマスにおいて、平均で言えば野生型植物に対して約2倍〜3倍の増加であり、そして最大値で言えば野生型植物に対して驚くべき4倍の増加である。二重導入遺伝子を持つ24個の個々の子孫植物を評価したところ、個々の植物のバイオマスの平均は、野生型コントロール植物の平均の約2.75倍であった。子孫の系統のうち4つは、野生型植物と比較して、植物の新鮮重あたりおよそ2.5倍大きい平均を示した。一方、2つの系統は、野生型植物と比較して3倍以上大きい生体重を示した。
シングルトランスジーンを持つ親の系統と比較して、二重導入遺伝子を持つ子孫植物は、さらなる顕著な生育の向上をも示した。GPT単一導入遺伝子系統が野生型のバイオマスに対して約50%ほどの増加を示し、GS1単一導入遺伝子系統が66%ほどの増加を示したのに対し、子孫植物は、野生型植物に対して平均してほとんど200%の増加を示した。
同様に、二重導入遺伝子を持つ子孫植物は、野生型又は単一の導入遺伝子を持つ親の系統のいずれよりも、早く開花し、かつより多産性であった。そして、この子孫植物が生産した植物あたりの種子の総数だけでなく、植物あたりの種子のさやの数も、はるかに多かった。表IV.Aを再度参照すれば、平均的に、二重導入遺伝子を持つ子孫は、野生型植物によって生産される数の2倍以上の数の種子のさやを生産し、高生産性の植物のうち2つは、野生型と比べて3倍以上の数の種子のさやを生成した。子孫植物における全種子収量は、植物重量を基準として測定され、野生型植物において生産された数の約2倍から4倍近い数の範囲であった。
表IV.Bは、GS1を発現する単一の導入遺伝子系統及び野生型コントロールタバコと比較した、系統XX(系統3がさらに自家受粉した)における生育速度、バイオマス及び収量、ならびに生化学的性質を示す。二重トランスジェニック植物(系統XX)では、全てのパラメータが顕著に増加している。特に、系統XX植物では、コントロール植物に対して、2−オキソグルタラメート活性がほぼ17倍高くなっており、種子収量及び葉のバイオマスが3倍高くなっている。
<実施例8:GS1導入遺伝子及びGPT導入遺伝子を保有する二重トランスジェニックコショウ植物>
本実施例では、CMV 35Sプロモーターの制御下にあるシロイヌナズナのGPT全長のコード配列(配列番号1)、及びRuBisCoプロモーターの制御下にあるシロイヌナズナのGS1コード配列(配列番号6に含まれる)を、アグロバクテリウム媒介によって種子のさやに導入することにより、Big Jim chiliコショウ植物(New Mexicoの変種)を形質転換した。3日後、種子を回収し、T0植物を生成するために使用し、形質転換体をスクリーニングした。得られた二重トランスジェニック植物は、コントロール植物と比較して、より高いさやの収率、より速い生育速度、及びより多いバイオマス収量を示した。
(材料及び方法)
発現ベクターpMON(実施例3を参照)内のCMV 35Sプロモーターの制御下にあるシロイヌナズナのGPT全長のコード配列(配列番号1)と、発現ベクターpCambia1201(トマトのrubisco rbcS3C プロモーター:Kyozulka et al., 1993, Plant Physiol. 103: 991-1000;配列番号22;ベクターコンストラクト(配列番号6))内のRuBisCoプロモーター制御下にあるシロイヌナズナのGS1コード配列(配列番号6に含まれる)とを用いて、アグロバクテリウム媒介による種子のさやへの導入によって、コショウ植物であるソラナセアエ・カピシカム(Solanaceae Capisicum)(「Big Jim」の変種)を形質転換した。
本実施例及びその後の全ての実施例において、Cambia1201又は1305.1ベクターは、標準的なクローニング方法(上述したSambrook et al., 1989, Saiki et al., 1988, Science 239: 487-491)によって構築された。35S CaMVプロモーターが付与されたベクター;このプロモーターは、標的遺伝子の発現を制御するためのトマト由来のRcbS−3Cプロモーターと交換された。Cambia1201ベクターは、細菌のクロロフェニコール耐性選択マーカー遺伝子と植物のハイグロマイシン耐性選択マーカー遺伝子とを含む。Cambia1305.1ベクターは、細菌のクロロフェニコール耐性選択マーカー遺伝子とハイグロマイシン耐性選択マーカー遺伝子とを含む。
標準的なエレクトロポレーション法(McCormac et al., 1998, Molecular Biotechnology 9:155-159)を用いて、導入遺伝子発現ベクターpMON(GPT導入遺伝子)及びpCambia1201(GS導入遺伝子)を、それぞれアグロバクテリウム・ツメファシエンスLBA4404菌株に導入した。コンストラクトのためのストレプトマイシン、又はCambiaコンストラクトのためのクロラムフェニコールのいずれかを50μg/ml含む培地上で、形質転換したアグロバクテリウムを選抜した。形質転換されたアグロバクテリウム細胞を、抗生物質を25μg/ml含むLB培地中で36時間生育させた。36時間の生育期間の後に、遠心によって細胞を回収し、各形質転換より得られた細胞を、抗生物質を含まない100mlのLB培養液中に懸濁した。
その後、得られたアグロバクテリウム細胞の懸濁液の混合物により、アグロバクテリウムを直接的に種子における成長中のさやの穴の中に注入する形質転換プロトコルを用いて、コショウ植物を形質転換した。簡単に言えば、未成熟の種子にアグロバクテリアを接種するために、基本的に(Wang and Waterhouse, 1997, Plant Mol. Biol. Reporter 15: 209-215)に記載のように、成長中のさやに200mlの混合物を注入した。アグロバクテリアの病原性を導入し、かつ形質転換効率を改善するために、さや接種に先立って、10μg/mlのアセトシリンゴノンをアグロバクテリア培養液に加えた(Sheikholeslam and Weeks, 1986, Plant Mol. Biol. 8: 291-298を参照)。
シリンジを用いて、さやに充分な量のアグロバクテリウムベクター混合物を注入し、約3日間インキュベートした。その後、種子を回収して発芽させ、植物を成長させて生育及び抗生物質耐性を含む表現型特性を観察した。導入遺伝子を保有する植物は緑であるが、形質転換されていない植物は葉頂が萎黄病の徴候を示した。活発に生育する形質転換体をさらに生育させ、同一の条件下で生育させた野生型のコショウ植物と比較した。
(結果)
結果を図7及び表Vに示す。図7は、同一の条件下で同時に生育させたコントロール植物と比較した、GPT+GS二重トランスジェニックコショウ植物の写真を示す。この写真は、コントロール植物と比較して、トランスジェニック系統のコショウ収量が甚だしいことを示す。
表Vは、野生型コントロールと比較した、トランスジェニック系統におけるバイオマス収量及びGS活性、ならびに導入遺伝子の遺伝子型を示す。表Vを参照すれば、二重−導入遺伝子の子孫植物は、全バイオマス(生体重)の甚だしい増加を示した。野生型植物あたりの平均328グラムと比較して、個々のトランスジェニック植物あたりの生体重は、393〜662グラムの範囲であった。トランスジェニック系統A5は、コントロールの2倍以上の全バイオマスを生産した。さらに、トランスジェニック系統のコショウ収量は、野生型植物に対して著しく改善され、コントロール植物よりも50%多かった(平均で)。特に、導入遺伝子系統の1つは、コントロール植物の平均よりも2倍多いコショウを生産した。
<実施例9:シロイヌナズナのGS1導入遺伝子とGPT導入遺伝子とを保有する二重トランスジェニックマメ植物の生成>
本実施例では、発現ベクターpCambia1201中のCMV 35Sプロモーターの制御下にあるシロイヌナズナGPT全長コード配列(配列番号1)と、発現ベクターpCambia 1201中のRuBisCoプロモーターの制御下にあるシロイヌナズナGS1コード配列(配列番号6に含まれる)とを、アグロバクテリウム媒介により花へ導入することによって、黄色ワックスマメ植物(インゲンマメ(Phaseolus vulgaris))を形質転換した。
(材料及び方法)
導入遺伝子発現ベクターpCambia 1201−GPT(配列番号27のコンストラクトを含む)と、pCambia 1201−GS(配列番号6のコンストラクトを含む)とを、標準的なエレクトロポレーション法を用いて、それぞれアグロバクテリウム・ツメファシエンスLBA4404菌株に導入した(McCormac et al., 1998, Molecular Biotechnology 9:155-159)。50μg/mlのクロラムフェニコールを含む培地上で、形質転換したアグロバクテリウムを選択した。形質転換したアグロバクテリウム細胞を、25μg/mlの抗生物質を含むLB培地中で36時間生育させた。36時間の生育期間の最後に、遠心により細胞を回収し、それぞれの形質転換由来の細胞を、抗生物質を含まない100mlLB培養液中に懸濁した。
その後、結果として生じたアグロバクテリウム細胞懸濁液の混合物により、アグロバクテリアを花器官に直接的に注入する形質転換プロトコルを用いて、マメ植物に形質転換した(Yasseem, 2009, Plant Mol. Biol. Reporter 27: 20-28)。アグロバクテリア病原性を誘導し、形質転換効率を改善するために、花に接種する前のアグロバクテリア培養液に10μg/mlアセトシリンゴノンを添加した。簡単に言えば、花の開花後すぐに、アグロバクテリア混合物を導入できるように、外部構造が被包している生殖器官をピンセットで優しく開き、葯を浸すために十分な程度、花器官にアグロバクテリア混合物を加えた。
マメの鞘が成長するまで植物を生育させ、種子を回収して、トランスジェニック植物を生成するために使用した。その後、トランスジェニック植物をコントロールのマメ植物とともに同一条件下で生育させ、撮影するとともに表現型を同定した。トランスジェニック植物とコントロール植物との両方の生育速度を測定した。本実施例及び全ての実施例において、Shapiro and Stadtmann, 1970, Methods in Enzymology 17A: 910-922中の方法により、グルタミン合成酵素(GS)活性をアッセイした;そして、Calderon et al., 1985, J. Bacteriol. 161: 807-809中の方法により、グルタミンフェニルピルビン酸トランスアミナーゼ(GPT)活性をアッセイした。上述した実施例7の方法の項にて詳細を参照されたい。
(結果)
結果を図8、図9及び表VIに示す。
図8は、コントロール植物に対するGPT+GSトランスジェニックマメ系統Aの生育速度データを示す。生育速度データは、栽培中における様々な日の植物の高さ、ならびに花のつぼみ、花、及びマメの鞘の数を含む。これらのデータは、GPT+GS二重トランスジェニックマメ植物が、これらの対応するコントロール植物よりも大きくなることを示す。トランスジェニック植物は、野生型コントロール植物に対し、より高く育ち、より早く開花し、より多くの花のつぼみ及び花を作り、そしてマメの鞘を成熟させてより多くのマメの鞘を作った。
表VIは、野生型コントロール(いくつかの健全なコントロール植物の平均;良好に生育しなかったコントロール植物は解析から除外した)と比較した、トランスジェニック系統におけるマメの鞘の収量、GPT活性及びGS活性、ならびに抗生物質耐性の状態を示す。表VIを参照すれば、二重−導入遺伝子を持つ子孫植物は、コントロール植物と比較して、マメの鞘のバイオマスの十分な増加(未乾燥の鞘の重量)を示した。マメの鞘のバイオマス収量は、野生型植物あたり平均127グラムであるのと比較して、個々のトランスジェニック植物あたり常に200グラム以上であった。これは、二重導入遺伝子系統では、コントロール植物に対して鞘の収量が60%以上増加していることを示す。
最後に、図9は、同一条件下で同時に生育させたコントロール植物と比較したGPT+GS二重トランスジェニックマメ植物の写真を示す。図9は、トランスジェニック植物において生育が増加したことを示す。
<実施例10:シロイヌナズナGS1導入遺伝子及びブドウGPT導入遺伝子を保有する二重トランスジェニックマメ植物の生成>
本実施例では、発現ベクターpCambia1305.1中のRuBisCoプロモーターの制御下にあるブドウGPT全長コード配列(配列番号8に含まれる)と、発現ベクターpCambia1201中のRuBisCoプロモーターの制御下にあるシロイヌナズナGS1コード配列(配列番号6に含まれる)とを、アグロバクテリウムで媒介して成長中の鞘に導入することにより、黄色ワックスマメ植物(インゲンマメ)を形質転換した。
(材料及び方法)
導入遺伝子発現ベクターpCambia1201−GPT(ブドウ)(配列番号8のコンストラクトを含む)と、pCambia1201−GS(配列番号6のコンストラクトを含む)とを、それぞれアグロバクテリウム・ツメファシエンスLBA4404菌株に、標準的なエレクトロポレーション法を用いて形質転換した(McCormac et al., 1998, Molecular Biotechnology 9:155-159)。50μg/mlのクロラムフェニコールを含む培地上で、形質転換したアグロバクテリウムを選択した。形質転換したアグロバクテリウム細胞を、25μg/mlの抗生物質を含むLB培地中で36時間生育させた。36時間の生育期間の最後に、遠心により細胞を回収し、それぞれの形質転換由来の細胞を、抗生物質を含まない100mlLB培養液中に懸濁した。
その後、結果として生じたアグロバクテリウム細胞懸濁液の混合物により、アグロバクテリアを花器官に直接的に注入する形質転換プロトコルを用いて、マメ植物に形質転換した。アグロバクテリア病原性を誘導し、形質転換効率を改善するために、花に接種する前のアグロバクテリア培養液に10μg/mlアセトシリンゴノンを添加した。簡単に言えば、花の開花後すぐに、アグロバクテリア混合物を導入できるように、外部構造が被包している生殖器官をピンセットで優しく開き、葯を浸すために十分な程度、花器官にアグロバクテリア混合物を加えた。
マメの鞘が成長するまで植物を生育させ、種子を回収して、トランスジェニック植物を生成するために使用した。その後、トランスジェニック植物をコントロールのマメ植物とともに同一条件下で生育させ、撮影するとともに表現型を同定した。トランスジェニック植物とコントロール植物との両方の生育速度を測定した。トランスジェニック植物及びコントロール植物の両方について、生育速度を測定した。
(結果)
結果を図10、図11及び表VIIに示す。
図10は、コントロール植物に対するGPT+GSトランスジェニックマメ系統Gの生育速度データを示す。生育速度データは、特に、花のつぼみ、花、及びマメの鞘の数を含む。これらのデータは、GPT+GS二重トランスジェニックマメ植物が、これらの対応するコントロール植物よりも大きくなることを示す。特に、トランスジェニック植物は、野生型コントロール植物よりも十分に多くのマメの鞘を作った。
表VIIは、野生型コントロール(いくつかの健全なコントロール植物の平均;良好に生育しなかったコントロール植物は解析から除外した)と比較した、トランスジェニック系統におけるマメの鞘の収量及び抗生物質耐性の状態を示す。表VIIを参照すれば、二重−導入遺伝子を持つ子孫植物は、コントロール植物と比較して、十分なマメの鞘のバイオマスの増加(未乾燥の鞘の重量)を示した。マメの鞘のバイオマス収量は、野生型植物あたり平均158グラムであるのと比較して、個々のトランスジェニック植物あたり200.5グラム(系統G1)及び178グラム(系統G2)であった。これは、二重導入遺伝子系統では、コントロール植物に対して鞘の収量が27%以上増加していることを示す。
最後に、図11は、同一条件下で同時に生育させたコントロール植物と比較したGPT+GS二重トランスジェニックマメ植物の写真を示す。トランスジェニック植物は、コントロール植物と比較して、サイズ及びバイオマスが十分に増加し、葉がより大きく、花がより成熟していることが示された。
<実施例11:シロイヌナズナのGS1及びGPT導入遺伝子を保有する二重トランスジェニックササゲ植物の生成>
本実施例では、発現ベクターpMON中のCMV 35Sプロモーターの制御下にあるシロイヌナズナGPT全長コード配列(配列番号1)と、発現ベクターpCambia1201中のRuBisCoプロモーターの制御下にあるシロイヌナズナGS1コード配列(配列番号6に含まれる)とを、アグロバクテリウムで媒介して花に導入することにより、一般的なササゲ植物を形質転換した。材料及び方法は、上述した実施例9と同様である。
(結果)
結果を図12及び図13、ならびに表VIに示す。図12は、栽培中の数区間で、GPT+GSトランスジェニックササゲ系統A及び野生型コントロールササゲにおける相対的な生育速度を示す。図12は、高さ及びもっとも長い葉の長さ(図12A)、三出葉及び花のつぼみ(図12B)、ならびに花、花のつぼみ及びマメの鞘(図12C)を含む。これらのデータは、GPT+GS二重トランスジェニックササゲ植物が、その対応するコントロール植物よりも大きく生育することを示す。トランスジェニック植物は、野生型コントロール植物に対し、より早くかつより高く生育し、より長い葉を持ち、そしてより早く花及び鞘を作った。
表VIIIは、野生型コントロール(いくつかの健全なコントロール植物の平均;良好に生育しなかったコントロール植物は解析から除外した)と比較した、トランスジェニック系統におけるエンドウマメ鞘の収量、GPT活性及びGS活性、ならびに抗生物質耐性の状態を示す。表VIIIを参照すれば、二重−導入遺伝子を持つ子孫植物は、コントロール植物と比較して、エンドウマメの鞘のバイオマスの十分な増加(新鮮な鞘の重量)を示した。トランスジェニック植物におけるエンドウマメ鞘のバイオマス収量の平均は、コントロール植物で測定された収量よりも52%近く多かった。
最後に、図13は、同一条件下で同時に生育させたコントロール植物と比較したGPT+GS二重トランスジェニックマメ植物の写真を示す。図13は、トランスジェニック植物のバイオマス及び鞘収量が、野生型コントロール植物に対して増加したことを示す。
<実施例12:シロイヌナズナGS1及びブドウGPT導入遺伝子を保有する二重トランスジェニックササゲ植物の生成>
本実施例では、発現ベクターpCambia1305.1(配列番号8のコンストラクトを含む)中のRuBisCoプロモーターの制御下にあるブドウGPT全長コード配列(配列番号8に含まれる)と、発現ベクターpCambia1201(配列番号6のコンストラクトを含む)中のRuBisCoプロモーターの制御下にあるシロイヌナズナGS1コード配列(配列番号6に含まれる)とを、アグロバクテリウムで媒介して花に導入することにより、一般的なササゲ植物を形質転換した。材料及び方法は、上述した実施例11と同様である。
(結果)
結果を図14及び図15、ならびに表IXに示す。
図14は、GPT+GSトランスジェニックササゲ系統G及び野生型コントロールササゲにおける相対的な生育速度を示す。これらのデータは、トランスジェニック植物が、常により高く(図14A)、より十分に多くの花、花のつぼみ及びエンドウマメの鞘を作り(図14B)、そして三出葉及びつぼみをより早く展開させる(図14C)ことを示す。
表IXは、野生型コントロール(いくつかの健全なコントロール植物の平均;良好に生育しなかったコントロール植物は解析から除外した)と比較した、トランスジェニック系統におけるエンドウマメ鞘の収量、GPT活性及びGS活性、ならびに抗生物質耐性の状態を示す。表IXを参照すれば、二重−導入遺伝子を持つ子孫植物は、コントロール植物と比較して、エンドウマメの鞘のバイオマスの十分な増加(新鮮な鞘の重量)を示した。トランスジェニック植物におけるエンドウマメ鞘のバイオマス収量の平均は、コントロール植物と比較して70%多かった。
最後に、図15は、同一条件下で同時に生育させたコントロール植物と比較したGPT+GS二重トランスジェニックエンドウマメ植物の写真を示す。図15は、トランスジェニック植物の高さ、バイオマス及び葉のサイズが、野生型コントロール植物に対して増加したことを示す。
<実施例13:シロイヌナズナのGS1及びGPT導入遺伝子を保有する二重トランスジェニックアルファルファ植物の生成>
本実施例では、発現ベクターpMON316(上述した実施例3を参照)中のCMV 35Sプロモーターの制御下にあるシロイヌナズナGPT全長コード配列(配列番号1)と、発現ベクターpCambia1201(配列番号6のコンストラクトを含む)中のRuBisCoプロモーターの制御下にあるシロイヌナズナGS1コード配列(配列番号6に含まれる)とを、アグロバクテリウム媒介により苗植物中に導入することによって、アルファルファ植物(Medicago sativa, var Ladak)を形質転換した。アグロバクテリウムベクター及び混合物は、苗接種するために、上述した実施例11にて記載したように調製した。
(苗接種)
アルファルファの苗がまだ約1/2インチ以下の高さのときに、両方の導入遺伝子コンストラクトを含むアグロバクテリア混合液に浸したペーパータオル中に浸した。苗をこのペーパータオル中に2〜3日間置き、取り除いた後に鉢植え用の土に植えた。その結果生じたT0及びコントロール植物は、グロースチャンバー内で最初の30日間を生育させ、次いで温室内で栽培し、そして発芽後42日で回収した。この時点で、野生型植物は未成熟の花のつぼみを作っているのみであるのに対し、トランスジェニック アルファルファ系統のみが開花していた。これらの植物の開花の状態及び全バイオマスを同定した。
(結果)
結果を表Xに示す。このデータは、トランスジェニックアルファルファ植物が、コントロール植物に対して、より速く生育し、より早く開花し、そしてバイオマス収量の平均が約62%増加したことを示す。
<実施例14:シロイヌナズナGS1及びGPT導入遺伝子を保有する二重トランスジェニックカンタロープ植物の生成>
本実施例では、発現ベクターpMON316(上述した実施例3を参照)中のCMV 35Sプロモーターの制御下にあるシロイヌナズナGPT全長コード配列(配列番号1)と、発現ベクターpCambia 1201(配列番号6のコンストラクトを含む)中のRuBisCoプロモーターの制御下にあるシロイヌナズナGS1コード配列(配列番号6に含まれる)とを、アグロバクテリウムで媒介して成長中のメロン中に注入して導入することにより、カンタロープ植物(Cucumis melo var common)を形質転換した。上述した実施例8に記載のように、メロン内接種のために、アグロバクテリウムベクター及び混合物を調製した。成長中のメロン内への接種は、基本的に実施例8に記載のように行なった。植物は、同一条件下で生育させたコントロールメロン植物に対する開花の状態及び全バイオマスについて、特徴づけされた。
結果を図16及び表XIに示す。表XIを参照すれば、トランスジェニック植物は、コントロール植物と比較して、葉の植物のバイオマスがかなりの量増加し、バイオマスの平均が63%増加したことを示す。さらに、5つ全てのトランスジェニック系統において、花及び花のつぼみの収量の甚だしい増加が観察された。コントロール植物は、平均して、犠牲において花を全く作らずかつつぼみを5個のみ表した。より著しい対照において、トランスジェニック植物は、植物あたり2〜5個の花を作り、また植物あたり21〜30個の花のつぼみを作った。これは、基本的に生育速度と花の収量とが高いことを示す。トランスジェニック植物において花の収量が増加することは、相応して言い換えれば、メロンの収量が増加することが期待されるであろう。図16(コントロールカンタロープ植物と比較したトランスジェニックカンタロープ植物の写真)を参照すれば、トランスジェニックカンタロープ植物は、コントロール植物と比較して高さ、全体のバイオマス、及び開花状態が劇的に増加していることが示される。
<実施例15:シロイヌナズナGS1およびGPT導入遺伝子を持つ二重トランスジェニックカボチャ植物の作成>
本実施例では、一般的なカボチャ植物(Cucurbita maxima)を、発現ベクターpMON316(上記実施例3参照)中のCMV 35Sプロモーターの制御下で、配列番号1に示すシロイヌナズナGPTの全長コード配列によって形質転換した。また、当該カボチャ植物を、発現ベクターpCambia 1201(配列番号6のコンストラクトを含む)中のRuBisCoプロモーターの制御下で、配列番号6に含まれるシロイヌナズナGS1のコード配列によって形質転換した。この形質転換には、基本的には上述した実施例14に示されるように、生育中のカボチャへの、接種によるアグロバクテリウムを介在した転移を用いた。トランスジェニックのカボチャ植物とコントロールのカボチャ植物とは、コントロール植物に花芽が現れるまで同一の条件下で生育し、その後、開花状況およびバイオマスの総量に関して、すべての植物を特徴づけた。
その結果を図17および表XIIに示す。表XIIに関して、トランスジェニック植物は、コントロール植物と比較して葉の植物バイオマスが実質的に増加を示し、平均して67%バイオマス量が増加した。さらに、コントロールと比較して花芽の収量の増加は、5つのトランスジェニック系統のうち4つのトランスジェニック系統でみられた。コントロール植物は、サクリファイスでわずか4つの芽を示した(平均)。これに対し、4つのトランスジェニック植物の系統では、1つの植物あたり、8から15個の芽を示し、2から約4倍の増加を示した。
図17(トランスジェニックカボチャ植物をコントロール植物と比較した写真)に関して、トランスジェニックカボチャ植物は、コントロール植物と比較して、植物の大きさ、バイオマスならびに葉の大きさおよび数の十分な増加を示す。
<実施例16:シロイヌナズナGS1およびGPT導入遺伝子を持つダブルトランスジェニックシロイヌナズナ植物の作成>
本実施例では、シロイヌナズナ植物(Arabidopsis thaliana)を、発現ベクターpMON316(上記実施例3参照)中のCMV 35Sプロモーターの制御下で配列番号18に示すトランケートされたシロイヌナズナGPTのコード配列によって形質転換し、その後、トランスジェニック植物を発現ベクターpCambia 1201(配列番号6のコンストラクトを含む)中のRuBisCoプロモーターの制御下で、配列番号6に含まれるシロイヌナズナGS1コード配列によって形質転換した。この形質転換には、(Harrison et al., 2006, Plant Methods 2:19-23; Clough and Bent, 1998, Plant J. 16:735-743)に記載のアグロバクテリウムを介在した「フローラルディップ法」を用いた。GPTを有するアグロバクテリウムのベクターpMON316、およびGS1を有するpCambia 1201はそれぞれ、実施例3および11に記載したとおりに準備した。
pMon316+シロイヌナズナGPTコンストラクトまたはCambia 1201+シロイヌナズナGSコンストラクトのいずれかによる2つの異なるアグロバクテリウム培地の形質転換は、ウェイゲル アンド グレイズブルック 2002の方法を用いたエレクトロポレーションにより行なった。そして、形質転換したアグロバクテリウムを、抗生物質による選択下で生育させ、抗生物質を含むLB培養液中で再懸濁された遠心分離により集菌し、シロイヌナズナの花部のフローラルディップ法に用いた。フローラルディップされたシロイヌナズナ植物を、成熟期まで生育させ、自家受粉させて種子を回収した。2度浸漬した植物からの種子を20μg/mlのカナマイシンを含む培地にまず播種し、次いで生存している苗を通常の選抜方法で、20μgのハイグロマイシンを含んだ培地に移した。両方の抗生物質における選抜工程を生き残った植物(3)を自家受粉させて、種子を回収した。T1世代からの種子を20μg/mlのハイグロマイシンを含むMS培地で発芽させて、生き残った苗を成熟期まで生育して自家受精させて、種子を回収した。この種子団のT2世代を、その後の生育調査に用いた。
その結果を、図18および表XIIIに示す。表XIII(6つの野生型および6つのトランスジェニックシロイヌナズナ植物のデータ(平均)を示す)に関して、トランスジェニック植物はともに増加したレベルのGPT活性およびGS活性を示した。GPT活性はコントロール植物より20倍以上高かった。さらに、トランスジェニック植物の葉の生体重の平均値は、野生型コントロール植物の平均値の4倍以上であった。同一の条件下で生育した野生型コントロールのシロイヌナズナ植物と比較した若い導入遺伝子シロイヌナズナ植物の写真を図18に示す。トランスジェニック植物において、この若い導入遺伝子シロイヌナズナ植物はコントロール植物に対して一貫した非常に顕著な成長/バイオマス増加を示す。
<実施例17:シロイヌナズナGPTおよびGS1導入遺伝子を持つトランスジェニックトマト植物の作成>
本実施例では、トマト植物(Solanum lycopersicon,品種「マネーメーカー(Money maker)」)を、発現ベクターpMON316(上記実施例3参照)中のCMV 35Sプロモーターの制御下で、配列番号1に示すシロイヌナズナGPTの全長コード配列を形質転換し、発現ベクターpCambia 1201(配列番号6のコンストラクトを含む)中のRuBisCoプロモーターの制御下で、配列番号6に含まれるシロイヌナズナGS1コード配列を形質転換した。1種類の導入遺伝子(GPT)のトランスジェニックトマト植物を作製し、基本的には実施例4に記載したように開花するまで生育した。そして、直接的な花への注入(実施例8で説明したように)によるアグロバクテリウムを介在した転移によって、シロイヌナズナGS1導入遺伝子をシングルトランスジーンT0植物に導入した。トランスジェニックおよびコントロールのトマト植物を同一の条件下で生育し、生育表現型の特性について評価した。得られたT0二重導入遺伝子植物を成熟期まで成長させ、コントロールのトマト植物とともに撮影し、表現型の評価をした。
その結果を、図19および表Xに示す。表XIXに関して、二重導入遺伝子トマト植物は、コントロール植物と比較して、葉の植物バイオマスの十分な増加を示し、平均して45%のバイオマス量の増加を示した。さらに、コントロール植物と比較したトランスジェニック系統では、トマトの果実の収穫量において70%の増加がみられた(例えば、系統4Cからは51個のトマトが収穫されたが、対してコントロール植物からは平均約30個のトマトが収穫された)。非常に高いレベルのGPT活性が、トランスジェニック植物においてみられた(例えば、系統4Cは、コントロール植物で測定したGPT活性の平均値と比較して、およそ32倍高いGPT活性を示している)。また、GS活性は、コントロール植物と比較してトランスジェニック植物では高かった(系統4Cでは、ほぼ2倍)。
生育表現型、および図19に関して、トランスジェニックトマト植物は、コントロール植物と比較して実質的により大きなレベルを示した(図19A)。さらに、トランスジェニックトマト植物は、実質的により大きく、高く、また、優れた総バイオマスであった(図19B参照)。
<実施例18:シロイヌナズナGPTおよびGS1導入遺伝子を持つトランスジェニックアマナズナ植物の作成>
本実施例では、カメリナ植物(Camelina sativa,Var MT 303)を、発現ベクターpCambia 1201中のRuBisCoプロモーターの制御下で、配列番号1に示すシロイヌナズナGPTの全長コード配列によって形質転換し、発現ベクターpCambia 1201中のRuBisCoプロモーターの制御下で、配列番号6に含まれるシロイヌナズナGS1コード配列を形質転換した。この形質転換は、Chee et al., 1989, Plant Physiol. 91: 1212-1218に記載の方法に従って、アグロバクテリウムを介在した発芽種子への転移によって行なった。
アグロバクテリウムベクターおよび混合物を、上記の実施例11に記載したように、種子播種のために準備した。
トランスジェニックおよびコントロールのカメリナ植物を、同一の条件下(生育室で30日間、その後温室栽培に移した)で39日間生育させ、バイオマス、生育特性および開花状態について評価した。
その結果を、表XXおよび図20に示す。表XXに関して、トランスジェニック植物の総バイオマスは、平均で、コントロール植物のバイオマスのほぼ2倍であったことがみてとれる。また、草冠の直径はトランスジェニック植物で顕著に向上した。図20は、コントロールと比較したトランスジェニックアマナズナの写真を示す。トランスジェニック植物は、著しく大きく、より促進された開花を示す。
<実施例19:植物体におけるオオムギGPT導入遺伝子の活性>
本実施例では、オオムギのGPTの推定コード配列を、植物体への一過性発現アッセイによって導入遺伝子コンストラクトから単離し、発現させた。生物学的に活性な組換えオオムギGPTが生成され、HPLCで確認したところ、2−オキソグルタラメートの増加した合成を触媒した。
オオムギ(Hordeum vulgare)GPTのコード配列を決定し、合成した。この実施例で用いるオオムギGPTのコード配列のDNA配列を配列番号14に示し、コードされたGPTタンパク質のアミノ酸配列を配列番号15に示す。
オオムギGPTのコード配列を1305.1Canbiaベクターに挿入し、標準的なエレクトロポレーション法(McCormac et al., 1998, Molecular Biotechnology 9:155-159)を用いて、アグロバクテリウム・ツメファシエンス株のLBA404に形質転換し、ハイグロマイシン(50μg/ml)を含んだLBプレートに塗り広げた。アグロバクテリウムの抗生物質耐性コロニーを解析のために選択した。
タバコ葉の一過性発現アッセイは、形質転換したアグロバクテリウム(1.5−2.0 OD650)の懸濁液を、急速に成長するタバコ葉へ注入することから成る。皮内注射は有意な量の葉の表面がアグロバクテリウムにさらされることを確実にするため、葉の表面にわたる格子内で行った。植物を3−5日間生育させて、組織を他の全ての組織抽出で説明したように抽出し、GPT活性を測定した。
接種した葉の組織のGPT活性(1217nmol/gFWt/h)は、コントロール植物の葉の組織で測定した活性(407nmol/gFWt/h)の3倍であり、ダイズ(Hordeum)GPTコンストラクトはトランスジェニック植物において生物学的に活性なGPTの発現に導かれることを示した。
<実施例20:組換えイネGPT遺伝子コード配列の単離および発現ならびに生物学的活性の解析>
本実施例では、イネのGPTの推定コード配列を単離し、大腸菌で発現させた。生物学的に活性な組換えイネGPTが作成され、HPLCで確認したところ、2−オキソグルタラメートの増加した合成を触媒した。
〔材料と方法〕
(イネGPTコード配列と大腸菌における発現)
イネ(Oryza sativa)のGPTコード配列を決定し、合成して、PET28ベクターに導入し、大腸菌で発現させた。つまり、大腸菌細胞を発現ベクターにより形質転換し、LB培養液で一晩培養した形質転換体を希釈し、OD0.4まで成長させて、イソプロピル−β−D−チオガラクトシド(0.4μM)で誘導して発現させ、3時間培養して集菌した。そして、合計25×106個の細胞の生物学的活性に関して、以下のNMRアッセイによって分析した。形質転換していない野生型の大腸菌細胞をコントロールとして分析した。追加のコントロールには、空のベクターで形質転換した大腸菌細胞を用いた。
本実施例で用いるイネGPTのコード配列のDNA配列を配列番号10に示し、コードされたGPTタンパク質のアミノ酸配列を配列番号11に示す。
(2−オキソグルタラメートのHPLCアッセイ)
Calderon et al., 1985, J Bacteriol 161(2): 807-809の変性に続いて、HPLCを用いてGPTを過剰発現している大腸菌細胞における2−オキソグルタラメートの産生量を測定した。つまり、25mM Tris−HCl(pH8.5)、1mM EDTA、20μM ピリドキサルリン酸、10mM システインおよび〜1.5%(v/v)メルカプトエタノールを含む変性抽出バッファーを用いた。サンプル(大腸菌細胞25×106個の溶菌液)を抽出バッファーに約1/3比率(w/v)で加え、37℃で30分間インキュベートし、200μMの20%TCAで停止した。約5分後、アッセイ溶液を遠心分離し、上清を用いて、0.01N H2SO4の移動相、流速約0.2ml/分、40℃においてION−300 7.8mm ID X 30cm L columnを用いたHPLCにより、2−オキソグルタラメートを定量した。注入量は約20μlであり、保持時間はおよそ38分から39分である。検出は210nmのUV光で行なった。
標準の2−オキソグルタラメートとのNMRアッセイの比較は、シロイヌナズナの全長配列が、2−オキソグルタラメート合成活性を持つGPTを発現することを立証するために用いた。つまり、アッセイの産物(発現GPTに対する応答において合成された分子)および標準の2−オキソグルタラメートが同じ保持時間で溶出することを確認することによって、上記のHPLCアッセイを有効なものとするために、化学的合成により標準の2−オキソグルタラメート(NMRで確認した構造)を作製した。加えて、アッセイ産物および標準の化合物を共に混合すると単一のピークとして溶出した。さらに、HPLCアッセイの有効化は、基質であるグルタミンの消失のモニタリングおよびグルタミンの消費と2−オキソグルタラメートの生成との間に1:1のモル比があることを示すことも含んでいた。分析の工程には常に2つのコントロールを含んでおり、1つは酵素の添加がなく、1つはグルタミンの添加がない。第一に、2−オキソグルタラメートの生成物は酵素の存在に依存することを示し、第二に2−オキソグルタラメートの生成は基質であるグルタミンに依存することを示す。
(結果)
配列番号10のイネGPTコード配列の発現は、2−オキソグルタラメート合成触媒の生物学的活性を持つ組換えGPTタンパク質の過剰発現という結果になった。特に、1.72nmolの2−オキソグルタラメートの活性が組換えイネGPTを過剰発現している大腸菌細胞においてみられ、コントロールの大腸菌細胞における、わずか0.02nmolの2−オキソグルタラメートの活性に比べて、86倍の活性レベルの増加がみられた。
<実施例21:組換えダイズGPT遺伝子コード配列の単離および発現ならびに生物学的活性の解析>
本実施例では、ダイズのGPTの推定コード配列を単離し、大腸菌で発現させた。生物学的に活性な組換えダイズGPTが生成され、HPLCで確認したところ、2−オキソグルタラメートの増加した合成を触媒した。
(材料と方法)
(ダイズGPTコード配列と大腸菌における発現)
ダイズ(Glycine max)のGPTコード配列を決定し、合成して、PET28ベクターに導入し、大腸菌で発現させた。つまり、大腸菌細胞を発現ベクターにより形質転換し、LB培養液で一晩培養した形質転換体を希釈し、OD0.4まで培養して、イソプロピル−β−D−チオガラクシド(0.4μM)で誘導して発現させ、3時間培養して、集菌した。合計25×106個の細胞により、下記のHPLCアッセイを用いて生物学的活性を分析した。形質転換していない野生型の大腸菌をコントロールとして分析した。追加のコントロールには、空のベクターを形質転換した大腸菌細胞を用いた。
本実施例で用いるダイズGPTのコード配列のDNA配列を配列番号12に示し、コードされたGPTタンパク質のアミノ酸配列を配列番号13に示す。
(2−オキソグルタラメートのHPLCアッセイ)
上記の実施例20に記載したように、GPTを過剰発現している大腸菌細胞における2−オキソグルタラメートの生成を判定するためにHPLCを用いた。
(結果)
配列番号12のダイズGPTコード配列の発現は2−オキソグルタラメート合成触媒の生物学的に活性な組換えGPTタンパク質の過剰発現という結果になった。特に、31.9nmolの2−オキソグルタラメートの活性が組換えダイズGPTを過剰発現している大腸菌細胞においてみられ、コントロールの大腸菌細胞における、わずか0.02nmolの2−オキソグルタラメートの活性に比べて、1600倍近くの活性レベルの増加がみられた。
<実施例22:組換えゼブラフィッシュGPT遺伝子コード配列の単離および発現ならびに生物学的活性の解析>
本実施例では、ゼブラフィッシュのGPTの推定コード配列を単離し、大腸菌で発現させた。生物学的活性のある組換えゼブラフィッシュGPTが作成され、HPLCで確認したところ、2−オキソグルタラメートの増加した合成を触媒した。
(材料と方法)
(ゼブラフィッシュGPTコード配列および大腸菌における発現)
ゼブラフィッシュ(Danio rerio)のGPTコード配列を決定し、合成して、PET28ベクターに導入し、大腸菌で発現させた。つまり、大腸菌細胞を発現ベクターにより形質転換し、LB培養液で一晩培養した形質転換体を希釈し、OD0.4まで培養して、イソプロピル−β−D−チオガラクシド(0.4μM)で誘導して発現させ、3時間培養して、集菌した。合計25×106個の細胞により、下記のHPLCアッセイを用いて生物学的活性を分析した。形質転換していない野生型の大腸菌をコントロールとして分析した。追加のコントロールには、空のベクターで形質転換した大腸菌細胞を用いた。
この実施例で用いるゼブラフィッシュGPTのコード配列のDNA配列を配列番号16に示し、コードされたGPTタンパク質のアミノ酸配列を配列番号17に示す。
(2−オキソグルタラメートのHPLCアッセイ)
上記の実施例20に記載したように、GPTを過剰発現している大腸菌細胞における2−オキソグルタラメートの生成を判定するためにHPLCを用いた。
(結果)
配列番号16のゼブラフィッシュGPTコード配列の発現は2−オキソグルタラメート合成触媒の生物学的活性を持つ組換えGPTタンパク質の過剰発現という結果になった。特に、28.6nmolの2−オキソグルタラメートの活性が組換えゼブラフィッシュGPTを過剰発現している大腸菌細胞においてみられ、コントロールの大腸菌細胞における、わずか0.02nmolの2−オキソグルタラメートの活性に比べて、1400倍以上の活性レベルの増加がみられた。
<実施例23:トランケートされた組換えシロイヌナズナGPT遺伝子コード配列の単離および発現ならびに生物学的活性の解析>
この実施例では、シロイヌナズナのGPTの推定コード配列の異なる2つの断片を構築し、推定される葉緑体のシグナルペプチドが欠失しているまたはトランケートされたGPTタンパク質の活性を評価するために、大腸菌で発現させた。最初の30個のアミノ末端のアミノ酸残基または最初の45個のアミノ末端のアミノ酸残基を欠失するようにトランケートされた、シロイヌナズナGPTの全長アミノ酸配列の配列番号2に対応するトランケートされた組換えGPTタンパク質は、無事に発現し、HPLCで確認したところ、2−オキソグルタラメートの増加した合成を触媒する生物学的活性を示した。
(材料と方法)
(トランケートされたシロイヌナズナGPTコード配列と大腸菌における発現)
配列番号1のシロイヌナズナ(Arabidopsis thaliana)のGPTコード配列の断片のDNAコード配列を構築し、合成して、PET28ベクターに導入し、大腸菌で発現させた。本実施例で用いたトランケートされたシロイヌナズナGPTコード配列のDNA配列を配列番号20(−45AAコンストラクト)に示し、対応するトランケートされたGPTタンパク質のアミノ酸配列を配列番号21に示す。つまり、大腸菌細胞を発現ベクターにより形質転換し、LB培養液で一晩培養した形質転換体を希釈し、OD0.4まで培養して、イソプロピル−β−D−チオガラクシド(0.4μM)で誘導して発現させ、3時間培養して、集菌した。合計25×106個の細胞により、実施例20に記載したように、HPLCアッセイを用いて生物学的活性を分析した。形質転換していない野生型の大腸菌をコントロールとして分析した。追加のコントロールには、空のベクターで形質転換した大腸菌細胞を用いた。
配列番号20のトランケートされた−45のシロイヌナズナGPTコード配列の発現は、生物学的活性(2−オキソグルタラメートの合成を触媒する生物学的活性)を持つ、組換えGPTタンパク質の過剰発現という結果になった。特に、16.1nmolの2−オキソグルタラメートの活性がトランケートされた−45のGPTを過剰発現している大腸菌細胞においてみられ、コントロールの大腸菌細胞における、わずか0.02nmolの2−オキソグルタラメートの活性に比べて、800倍以上の活性レベルの増加がみられた。比較として、同じE.coliで発現するシロイヌナズナ遺伝子の全長コード配列では、2.8nmolの2−オキソグルタラメートの活性が生じ、トランケートされた組換えGPTタンパク質のおよそ1/5の活性がみられた。
<実施例24:GPT+GSトランスジェニックタバコの種子の高い塩濃度の発芽耐性>
本実施例では、二重導入遺伝子タバコの系統XX−3(表4の交雑3、実施例7参照)を、高い塩濃度への耐性を評価するために設計した種子発芽アッセイにおいて試験した。
<材料と方法>
野生型およびXX−3集団からのタバコ種子を表面殺菌し(5%漂白液に5分間、次いで10%エタノールで3分間洗浄)、滅菌蒸留水で洗浄処理した。その後、表面殺菌した種子を、スクロースを含まず、0か、または200mMのNaClを含むMurashige and Skoog培地(10%アガロース)に拡散した。これらの種子を暗所で2日間、次いで16:8の光周期で6日間置いて(24℃で)発芽させた。8日目に、発芽速度を、発芽したコントロールまたはトランスジェニック植物からの種子の割合を測定して決定した。
<結果>
その結果を、下記の表XXIに示す。無塩条件におけるトランスジェニック植物の系統の種子の発芽速度は、コントロール植物の種子でみられるものと同じであった。著しく対照的に、高塩濃度条件におけるトランスジェニック植物系統の種子の発芽速度は、野生型のコントロールの種子でみられた速度をはるかに上回っていた。トランスジェニック植物の種子の81%以上が高塩濃度下で発芽したが、野生型のコントロール植物の種子は同時点でわずか9%しか発芽しなかった。これらのデータは、トランスジェニックの種子が、高塩濃度下で非常によく発芽する能力があることを示しており、水および/または土壌の塩分が高さを増す地域における植物の生育のために重要な特性である。
この明細書中で引用されている全ての出版物、特許および特許出願は、個々の出版物または特許出願が参照として組み込まれると明確におよび個々に表示されているように、参照として本明細書に組み込まれる。
この発明は本明細書で明らかにされた具体例によって範囲を限定されるものではなく、具体例は発明の個々の態様の一例とする意図であり、機能的に同等のものはいずれも発明の範囲内である。本明細書に記載されたもの加えて、発明のモデルおよび方法の様々な変更が前記の説明および手引きから、当業者にとって明白になるであろうし、同様に発明の範囲に含まれることを意図する。そのような変更または他の具体例は、発明の正当な範囲および趣旨から離れることなく実施され得る。
〔配列表〕
窒素吸収および2−オキソグルタラメートの生合成の概略的な代謝経路を示す図である。
野生型のタバコ植物に対して、GS1またはGPTのいずれかが過剰に発現しているトランスジェニックタバコ植物の比較を示す写真である。
野生型のトマト植物に対してGS1またはGPTのいずれかを過剰に発現するトランスジェニックミクロトームトマト植物の比較を示す写真である。
野生型のタバコ植物とGS1またはGPTトランスジェニックタバコ植物との葉の大きさの比較を示す写真である。
野生型のタバコ植物とGS1またはGPTトランスジェニックタバコ植物との葉の大きさの比較を示す写真である。
GS1トランスジェニックタバコ系統とGPTトランスジェニックタバコ系統との多様な交雑から生成されたトランスジェニックタバコ植物と、野生型の植物と、1種類の導入遺伝子植物との比較を示す写真である。
GS1トランスジェニックタバコ系統とGPTトランスジェニックタバコ系統との多様な交雑から生成されたトランスジェニックタバコ植物と、野生型の植物と、1種類の導入遺伝子植物との比較を示す写真である。
GS1トランスジェニックタバコ系統とGPTトランスジェニックタバコ系統との多様な交雑から生成されたトランスジェニックタバコ植物と、野生型の植物と、1種類の導入遺伝子植物との比較を示す写真である。
野生型の植物と、GS1およびGPTを交雑したトランスジェニックタバコ植物との葉の大きさの比較を示す写真である。
野生型の植物と、GS1およびGPTを交雑したトランスジェニックタバコ植物との葉の大きさの比較を示す写真である。
トランスジェニックペッパー植物(右)および野生型のコントロールペッパー植物(左)の写真である。
トランスジェニックマメ植物を野生型のコントロールマメ植物と比較したグラフである。
トランスジェニックマメ植物(右)および野生型のコントロールマメ植物(左)の写真である。
トランスジェニックマメ植物のさや、花および花芽を、野生型のコントロールマメ植物と比較したグラフである。
トランスジェニックマメ植物(右)および野生型のコントロールマメ植物(左)の写真である。
トランスジェニックササゲ(Cowpea)系統A植物を野生型のコントロールササゲ植物と比較したグラフである。
トランスジェニックササゲ系統A植物を野生型のコントロールササゲ植物と比較したグラフである。
トランスジェニックササゲ系統A植物を野生型のコントロールササゲ植物と比較したグラフである。
トランスジェニックササゲ系統A植物(右)および野生型のコントロールササゲ植物(左)の写真である。
トランスジェニックササゲ系統G植物を野生型のコントロールササゲ植物と比較したグラフである。
トランスジェニックササゲ系統G植物を野生型のコントロールササゲ植物と比較したグラフである。
トランスジェニックササゲ系統G植物を野生型のコントロールササゲ植物と比較したグラフである。
トランスジェニックササゲ系統G植物(右)および野生型のコントロールササゲ植物(左)の写真である。
トランスジェニックカンタループ(Cantaloupe)植物(右)および野生型のコントロールカンタループ植物(左)の写真である。
トランスジェニックカボチャ植物(右)および野生型のコントロールカンタループ植物(左)の写真である。
トランスジェニックシロイヌナズナ植物(右)および野生型のコントロールシロイヌナズナ植物(左)の写真である。
シロイヌナズナGPTおよびGSの導入遺伝子を発現しているトランスジェニックトマト植物を野生型のコントロールトマト植物と比較した写真である。
シロイヌナズナGPTおよびGSの導入遺伝子を発現しているトランスジェニックトマト植物を野生型のコントロールトマト植物と比較した写真である。
トランスジェニックカメリナ(Camelina)植物(右)および野生型のコントロールカメリナ植物(左)の写真である。