JP2015126358A - スピーカ装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】音声ビームの特性を活かしつつ、仮想音源による定位を用いて、明瞭に音源を定位させることができるスピーカ装置を提供する。
【解決手段】各チャンネルの音声ビームが聴取位置に到達するレベル差を検出し、検出したレベル差に基づいてゲイン調整部43SRのゲインを他のレベル調整部よりも高く設定し、SRチャンネルについては、他のチャンネルより定位付加部のレベルを高くし、仮想音源による定位付加の効果を強くした設定にし、定位付加部42の各チャンネルと音声ビームの各チャンネルとのレベル比率を調整し、オーディオ信号を合成して、オーディオ信号VL、VRを補正部51に出力する。補正部51はフィルタ処理をしオーディオ信号VLD、VLC、VRC、VRDを出力し、合成部52L、52R、遅延処理部60L、60R、加算処理部32を介しウーファ33L、33Rに入力される。
【選択図】図6

Description

本発明は、指向性を有する音声ビームを出力するスピーカ装置に関する。
従来、オーディオ信号をそれぞれ遅延させて複数のスピーカユニットに分配することで指向性を有する音声ビームを出力するアレイスピーカ装置が知られている(特許文献1を参照)。
特許文献1のアレイスピーカ装置は、各チャンネルの音声ビームを壁に反射させて聴者の周囲から到達させることで、音源を定位させるものである。
また、特許文献1のアレイスピーカ装置は、部屋の形状等によって音声ビームを到達させることができないチャンネルについて、頭部伝達関数に基づくフィルタ処理を行うことにより、仮想音源を定位させる処理を行っている。
特開2008−227803
しかし、音声ビームを到達させることができるチャンネルであっても、聴取環境によっては明瞭に音源を定位させることができない場合がある。例えば、聴取位置と壁との距離が遠い環境、あるいは音響反射率の低い壁素材からなる環境では、十分な定位感が得られない。
一方、仮想音源は、音声ビームに比べると距離感が得られない。また、仮想音源による定位では、聴取位置が規定の位置からずれると定位感が弱くなるため、定位感の得られる領域が狭い。また、頭部伝達関数は、モデルとなる頭部の形状に基づいて設定されているため、定位感に個人差がある。
また、特許文献1のように特定のチャンネルについてだけ頭部伝達関数に基づくフィルタ処理を行うと、音声ビームだけのチャンネルと仮想音源だけのチャンネルとが発生し、チャンネルごとの定位感に差が生じるため、サラウンド感が低下する場合がある。
そこで、本発明は、音声ビームの特性を活かしつつ、仮想音源による定位を用いて、明瞭に音源を定位させることができるスピーカ装置を提供することを目的とする。
本発明のスピーカ装置は、複数チャンネルのオーディオ信号が入力される入力部と、複数のスピーカと、前記入力部に入力された複数チャンネルのオーディオ信号をそれぞれ遅延させて前記複数のスピーカに分配することにより、前記複数のスピーカに複数の音声ビームを出力させる指向性制御部と、前記入力部に入力された複数チャンネルのオーディオ信号のいずれかに頭部伝達関数に基づくフィルタ処理を行って前記複数のスピーカに入力する定位付加部と、前記定位付加部の各チャンネルのオーディオ信号と前記音声ビームの各チャンネルのオーディオ信号とのレベル比率を調整するレベル調整部と、を備えたことを特徴とする。
このように、本発明のスピーカ装置は、音声ビームによる定位感を仮想音源によって補う態様とする。これにより、音声ビームだけを用いた場合または仮想音源だけを用いた場合に比べて、定位感を向上させることができる。そして、本発明のスピーカ装置は、各チャンネルの音声ビームが聴取位置に到達するレベル差を検出し、検出したレベル差に基づいて定位付加部の各チャンネルと音声ビームの各チャンネルとのレベル比率を調整する。例えば、音響反射率の低い壁等の影響により音声ビームのレベルが低くなるチャンネルについては、他のチャンネルより定位付加部のレベルを高く設定し、仮想音源による定位付加の効果を強くする。また、本発明のスピーカ装置では、仮想音源による定位付加の効果が強く設定されたチャンネルについても、音声ビームによる定位感は存在するため、特定のチャンネルだけ仮想音源となって違和感が発生することがなく、チャンネル間のつながりが維持される。
また、本発明のスピーカ装置は、聴取位置に設置されるマイクと、各チャンネルの音声ビームが聴取位置に到達するレベルを検出する検出手段と、前記検出手段が検出したレベルに基づいて前記レベル調整部におけるレベル比率を設定する設定手段と、を備え、前記検出手段は、前記指向性制御部にテスト信号を入力して前記複数のスピーカにテスト音声ビームを出力させ、当該テスト音声ビームが前記マイクに入力されるレベルを測定し、前記設定手段は、前記ピークのレベル差に基づいて前記レベル調整部におけるレベル比率を設定することが好ましい。
この場合、聴取位置にマイクを設置して測定を行うだけで各チャンネルの音声ビームの出力角度とともに、定位付加部の各チャンネルと音声ビームの各チャンネルとのレベル比率が自動調整される。
また、本発明のスピーカ装置は、前記入力部に入力された複数チャンネルのオーディオ信号のレベルを比較する比較手段を備え、前記設定手段は、前記比較手段の比較結果に基づいて前記レベル調整部におけるレベル比率を設定する態様とすることも可能である。
例えば、特定のチャンネルだけ高レベルの信号が入力された場合、コンテンツの制作者が当該チャンネルに定位感を持たせる意図があると考えられるため、当該特定のチャンネルには明瞭な定位感を与えることが望ましい。したがって、高レベルの信号が入力されたチャンネルは、他のチャンネルより定位付加部のレベルを高く設定し、仮想音源による定位付加の効果を強くすることで、明瞭に音像を定位させる。
また、前記比較手段は、前記比較手段は、フロントチャンネルとサラウンドチャンネルとのレベルを比較し、前記設定手段は、前記フロントチャンネルとサラウンドチャンネルとの相対的なレベル差に基づいて前記定位付加部のレベル比率を設定することが好ましい。
サラウンドチャンネルは、聴取位置の後方から音声ビームを到達させる必要があり、音声ビームを壁に2度反射させる必要がある。そのため、サラウンドチャンネルは、フロントチャンネルに比べて明瞭な定位感が得られない場合がある。したがって、例えば、サラウンドチャンネルのレベルが相対的に高くなった場合に定位付加部のレベルを高く設定し、仮想音源による定位付加の効果を強くすることで、サラウンドチャンネルの定位感を維持するように設定し、フロントチャンネルのレベルが相対的に高い場合には音声ビームによる定位感を強く設定する。一方で、サラウンドチャンネルのレベルが相対的に低くなった場合に定位付加部のレベル比率を低くすると、サラウンドチャンネルが聞き取り難くなる場合もあるため、逆にサラウンドチャンネルのレベルが相対的に低くなった場合に定位付加部のレベル比率を高くし、サラウンドチャンネルのレベルが相対的に高くなった場合に定位付加部のレベル比率を低くする態様としてもよい。
なお、前記比較手段は、前記入力部に入力された複数チャンネルのオーディオ信号を所定の帯域に分割して、分割した帯域毎のレベルを比較する態様としてもよい。
また、本発明のスピーカ装置は、前記複数のスピーカの音量設定を受け付ける音量設定受付部を備え、前記設定手段は、前記音量設定に基づいて前記レベル調整部におけるレベル比率を設定する態様としてもよい。
特に、複数のスピーカの音量設定(マスタボリューム設定)が低くなると、壁からの反射音のレベルが低下して厚みのない音になり、チャンネル間のつながりが失われ、サラウンド感が低下する可能性がある。そこで、マスタボリューム設定が低くなるにつれて定位付加部のレベルを高く設定し、仮想音源による定位付加の効果を強くすることで、チャンネル間のつながりを維持し、サラウンド感を維持することが好ましい。
本発明のスピーカ装置は、音声ビームと仮想音源との両方で定位感を与えるため、音声ビームの特性を活かしつつ、仮想音源による定位を用いて、明瞭に音源を定位させることができる。
AVシステムの構成を示す概略図である。 アレイスピーカ装置の構成を示すブロック図である。 フィルタ処理部の構成を示すブロック図である。 ビーム化処理部の構成を示すブロック図である。 音声ビームとチャンネル設定の関係を示した図である。 バーチャル処理部の構成を示すブロック図である。 定位付加部および補正部の構成を示すブロック図である。 アレイスピーカ装置2が生成する音場について説明する図である。 変形例1に係るアレイスピーカ装置の構成を示すブロック図である。 変形例2に係るアレイスピーカ装置の構成を示すブロック図である。 変形例3に係るアレイスピーカ装置を示す図である。
図1は、本実施形態に係るアレイスピーカ装置2を備えたAVシステム1の概略図である。AVシステム1は、アレイスピーカ装置2、サブウーファ3、テレビ4、およびマイク7を備えている。アレイスピーカ装置2は、サブウーファ3およびテレビ4に接続される。アレイスピーカ装置2には、テレビ4で再生される映像に応じたオーディオ信号や不図示のコンテンツプレーヤからのオーディオ信号が入力される。
アレイスピーカ装置2は、図1に示すように、例えば、直方体形状の筐体を備え、テレビ4の近傍(テレビ4の表示画面の下部)に設置される。アレイスピーカ装置2は、前面(聴者に対向する面)に、例えば16個のスピーカユニット21A〜21P、ウーファ33L、およびウーファ33Rを備えている。この例では、スピーカユニット21A〜21P、ウーファ33L、およびウーファ33Rが本発明の「複数のスピーカ」に相当する。
スピーカユニット21A〜21Pは、聴者から見て横方向に沿って一列に配置されている。スピーカユニット21Aは、聴者から見て最も左側に配置され、スピーカユニット21Pは、聴者から見て最も右側に配置されている。ウーファ33Lは、スピーカユニット21Aのさらに左側に配置されている。ウーファ33Rは、スピーカユニット21Pのさらに右側に配置されている。
なお、スピーカユニットの数は、16個に限らず、例えば8個等であってもよい。また、配置態様も横方向に沿って1列に配置する例に限らず、例えば横方向に沿って3列に配置する等であってもよい。
サブウーファ3は、アレイスピーカ装置2の近傍に設置される。図1の例では、アレイスピーカ装置2の左側に配置されているが、設置位置はこの例に限るものではない。
また、アレイスピーカ装置2には、聴取環境測定用のマイク7が接続されている。マイク7は、聴取位置に設置されている。マイク7は、聴取環境を測定する場合に用いられ、実際にコンテンツを視聴する際には設置する必要はない。
図2は、アレイスピーカ装置2の構成を示すブロック図である。アレイスピーカ装置2は、入力部11、デコーダ10、フィルタ処理部14、フィルタ処理部15、ビーム化処理部20、加算処理部32、加算処理部70、バーチャル処理部40、および制御部35を備えている。
入力部11は、HDMIレシーバ111、DIR112、およびA/D変換部113を備えている。HDMIレシーバ111は、HDMI規格に適合したHDMI信号を入力し、デコーダ10に出力する。DIR112は、デジタルオーディオ信号(SPDIF)を入力し、デコーダ10に出力する。A/D変換部113は、アナログオーディオ信号を入力し、デジタルオーディオ信号に変換してデコーダ10に出力する。
デコーダ10は、DSPからなり、入力された信号をデコードする。デコーダ10は、例えば、AAC(登録商標)、Dolby Digital(登録商標)、DTS(登録商標)、MPEG−1/2、MPEG−2マルチチャンネル、MP3等の各種フォーマットの信号を入力し、マルチチャンネルオーディオ信号(FLチャンネル、FRチャンネル、Cチャンネル、SLチャンネル、およびSRチャンネルのデジタルオーディオ信号。以下、単にオーディオ信号と称す場合は、デジタルオーディオ信号を示すものとする。)に変換して出力する。図2に示す太い実線は、マルチチャンネルオーディオ信号を示すものである。なお、デコーダ10は、例えばステレオチャンネルのオーディオ信号をマルチチャンネルオーディオ信号に拡張する機能も有する。
デコーダ10から出力されたマルチチャンネルオーディオ信号は、フィルタ処理部14およびフィルタ処理部15に入力される。フィルタ処理部14は、デコーダ10から出力されたマルチチャンネルオーディオ信号について、各スピーカユニットに適した帯域を抽出して出力する。
図3(A)は、フィルタ処理部14の構成を示すブロック図であり、図3(B)は、フィルタ処理部15の構成を示すブロック図である。
フィルタ処理部14は、FLチャンネル、FRチャンネル、Cチャンネル、SLチャンネル、およびSRチャンネルのデジタルオーディオ信号をそれぞれ入力するHPF14FL、HPF14FR、HPF14C、HPF14SL、およびHPF14SRを備えている。また、フィルタ処理部14は、FLチャンネル、FRチャンネル、Cチャンネル、SLチャンネル、およびSRチャンネルのデジタルオーディオ信号をそれぞれ入力するLPF15FL、LPF15FR、LPF15C、LPF15SL、およびLPF15SRを備えている。
HPF14FL、HPF14FR、HPF14C、HPF14SL、およびHPF14SRは、それぞれ入力された各チャンネルのオーディオ信号の高域を抽出して出力する。HPF14FL、HPF14FR、HPF14C、HPF14SL、およびHPF14SRのカットオフ周波数は、スピーカユニット21A〜21Pの再生周波数の下限(例えば200Hz)に合うように設定されている。HPF14FL、HPF14FR、HPF14C、HPF14SL、およびHPF14SRの出力信号は、ビーム化処理部20に出力される。
LPF15FL、LPF15FR、LPF15C、LPF15SL、およびLPF15SRは、それぞれ入力された各チャンネルのオーディオ信号の低域(例えば200Hz未満)を抽出して出力する。LPF15FL、LPF15FR、LPF15C、LPF15SL、およびLPF15SRのカットオフ周波数は、上記HPF14FL、HPF14FR、HPF14C、HPF14SL、およびHPF14SRのカットオフ周波数に対応している(例えば200Hzである)。
LPF15FL、LPF15C、およびLPF15SLの出力信号は、加算部16で加算され、Lチャンネルオーディオ信号となる。Lチャンネルオーディオ信号は、さらにHPF30LおよびLPF31Lに入力される。
HPF30Lは、入力されたオーディオ信号の高域を抽出して出力する。LPF31Lは、入力されたオーディオ信号の低域を抽出して出力する。HPF30LおよびLPF31Lのカットオフ周波数は、ウーファ33Lとサブウーファ3とのクロスオーバ周波数(例えば100Hz)に対応する。なお、当該クロスオーバ周波数は、聴者により変更できるようにしてもよい。
LPF15FR、LPF15C、およびLPF15SRの出力信号は、加算部17で加算され、Rチャンネルオーディオ信号となる。Rチャンネルオーディオ信号は、さらにHPF30RおよびLPF31Rに入力される。
HPF30Rは、入力されたオーディオ信号の高域を抽出して出力する。LPF31Rは、入力されたオーディオ信号の低域を抽出して出力する。HPF30Rのカットオフ周波数は、ウーファ33Rとサブウーファ3とのクロスオーバ周波数(例えば100Hz)に対応する。上述のように、クロスオーバ周波数は、聴者により変更できるようにしてもよい。
HPF30Lから出力されたオーディオ信号は、加算処理部32を介してウーファ33Lに入力される。同様に、HPF30Rから出力されたオーディオ信号は、加算処理部32を介してウーファ33Rに入力される。
LPF31Lから出力されたオーディオ信号およびLPF31Rから出力されたオーディオ信号は、加算処理部70で加算されてモノラル化され、サブウーファ3に入力される。なお、図示は省略するが、加算処理部70には、LFEチャンネルも入力され、LPF31Lから出力されたオーディオ信号およびLPF31Rから出力されたオーディオ信号と加算されてサブウーファ3に出力される。
一方、フィルタ処理部15は、FLチャンネル、FRチャンネル、Cチャンネル、SLチャンネル、およびSRチャンネルのデジタルオーディオ信号をそれぞれ入力するHPF40FL、HPF40FR、HPF40C、HPF40SL、およびHPF40SRを備えている。また、フィルタ処理部15は、FLチャンネル、FRチャンネル、Cチャンネル、SLチャンネル、およびSRチャンネルのデジタルオーディオ信号をそれぞれ入力するLPF41FL、LPF41FR、LPF41C、LPF41SL、およびLPF41SRを備えている。
HPF40FL、HPF40FR、HPF40C、HPF40SL、およびHPF40SRは、それぞれ入力された各チャンネルのオーディオ信号の高域を抽出して出力する。HPF40FL、HPF40FR、HPF40C、HPF40SL、およびHPF40SRのカットオフ周波数は、ウーファ33Rおよびウーファ33Lとサブウーファ3とのクロスオーバ周波数(例えば100Hz)に対応する。上述のように、クロスオーバ周波数は、聴者により変更できるようにしてもよい。また、HPF40FL、HPF40FR、HPF40C、HPF40SL、およびHPF40SRのカットオフ周波数は、HPF14FL、HPF14FR、HPF14C、HPF14SL、およびHPF14SRのカットオフ周波数と同一にしてもよい。また、フィルタ処理部15においては、HPF40FL、HPF40FR、HPF40C、HPF40SL、およびHPF40SRのみ備える態様として、低域をサブウーファ3に出力させないようにしてもよい。HPF40FL、HPF40FR、HPF40C、HPF40SL、およびHPF40SRから出力されたオーディオ信号は、バーチャル処理部40に出力される。
LPF41FL、LPF41FR、LPF41C、LPF41SL、およびLPF41SRは、それぞれ入力された各チャンネルのオーディオ信号の低域を抽出して出力する。LPF41FL、LPF41FR、LPF41C、LPF41SL、およびLPF41SRのカットオフ周波数は、上記クロスオーバ周波数に対応している(例えば100Hzである)。LPF41FL、LPF41FR、LPF41C、LPF41SL、およびLPF41SRから出力されたオーディオ信号は、加算器171で加算されたてモノラル化された後、加算処理部70を介しサブウーファ3に入力される。加算処理部70では、LPF41FL、LPF41FR、LPF41C、LPF41SL、およびLPF41SRから出力されたオーディオ信号と、LPF31RおよびLPF31Lから出力されたオーディオ信号と、上述のLFEチャンネルのオーディオ信号と、が加算される。なお、加算処理部70は、これら信号の加算比率を変更するゲイン調整部を備えていてもよい。
次に、ビーム化処理部20について説明する。図4は、ビーム化処理部20の構成を示すブロック図である。ビーム化処理部20は、FLチャンネル、FRチャンネル、Cチャンネル、SLチャンネル、およびSRチャンネルのデジタルオーディオ信号をそれぞれ入力するゲイン調整部18FL、ゲイン調整部18FR、ゲイン調整部18C、ゲイン調整部18SL、およびゲイン調整部18SRを備えている。
ゲイン調整部18FL、ゲイン調整部18FR、ゲイン調整部18C、ゲイン調整部18SL、およびゲイン調整部18SRは、各チャンネルのオーディオ信号のゲインを調整する。ゲイン調整された各チャンネルのオーディオ信号は、それぞれ指向性制御部91FL、指向性制御部91FR、指向性制御部91C、指向性制御部91SL、および指向性制御部91SRに入力される。指向性制御部91FL、指向性制御部91FR、指向性制御部91C、指向性制御部91SL、および指向性制御部91SRは、各チャンネルのオーディオ信号をスピーカユニット21A〜21Pに分配する。分配されたスピーカユニット21A〜21Pに対するオーディオ信号は、合成部92で合成されてスピーカユニット21A〜21Pに供給される。このとき、指向性制御部91FL、指向性制御部91FR、指向性制御部91C、指向性制御部91SL、および指向性制御部91SRは、各スピーカユニットに供給するオーディオ信号の遅延量を調整する。
スピーカユニット21A〜21Pから出力される音は、位相が揃う箇所において互いに強められ、指向性を有した音声ビームとして出力される。例えば、全スピーカから同じタイミングで音が出力されると、アレイスピーカ装置2の前方に指向性を有する音声ビームが出力される。指向性制御部91FL、指向性制御部91FR、指向性制御部91C、指向性制御部91SL、および指向性制御部91SRは、各オーディオ信号に付与する遅延量を変更することで、音声ビームの出力方向を変更することができる。
また、指向性制御部91FL、指向性制御部91FR、指向性制御部91C、指向性制御部91SL、および指向性制御部91SRは、スピーカユニット21A〜21Pから出力される各音の位相が所定位置でそろうように遅延量を付与し、当該所定位置で焦点を結ぶ音声ビームを形成することもできる。
音声ビームは、アレイスピーカ装置2から直接、または室内の壁等に反射して聴取位置に到達させることができる。例えば、図5(C)に示すように、Cチャンネルオーディオ信号の音声ビームは、正面方向に出力させて、Cチャンネルの音声ビームが聴取位置の正面から到達させることができる。また、FLチャンネルオーディオ信号およびFRチャンネルオーディオ信号の音声ビームは、アレイスピーカ装置2の左右方向に出力させ、聴取位置の左右に存在する壁に反射させて、それぞれ聴取位置の左方向および右方向から到達させることができる。また、SLチャンネルオーディオ信号およびSRチャンネルオーディオ信号の音声ビームを左右方向に出力させ、聴取位置の左右に存在する壁および後方に存在する壁に2回反射させて、それぞれ聴取位置の左後方方向および右後方方向から到達させることができる。
このような音声ビームの出力方向の設定は、マイク7を用いて聴取環境を測定することにより、自動的に行うことができる。図5(A)に示すように、聴者が聴取位置にマイク7を設置し、不図示のリモコンや本体操作部を操作して、音声ビームの設定を指示すると、制御部35は、テスト信号(例えばホワイトノイズ)からなる音声ビームをビーム化処理部20に出力させる。
制御部35は、アレイスピーカ装置2の前面と平行な左方向(0度方向と称する。)から、アレイスピーカ装置2の前面と平行な右方向(180度方向と称する。)まで、音声ビームを旋回させる。アレイスピーカ装置2の前面において音声ビームを旋回させると、音声ビームの旋回角θに応じて、部屋Rの壁に音声ビームが反射して、所定の角度でマイク7に音声ビームが収音される。
制御部35は、以下のようにして、マイク7から入力されるオーディオ信号のレベルを解析する。
制御部35は、マイク7から入力されたオーディオ信号のレベルを音声ビームの出力角度と対応付けてメモリ(不図示)に記憶する。そして、制御部35は、オーディオ信号のレベルのピークに基づいて、マルチチャンネルオーディオ信号の各チャンネルと音声ビームの出力角度を割り当てる。例えば、制御部35は、収音データ中に所定の閾値以上のピークを検出する。制御部35は、これらピークの中で、最も高レベルである時の音声ビームの出力角度を、Cチャンネルの音声ビームの出力角度として割り当てる。例えば、図5(B)では、最も高レベルである時の角度θ3aをCチャンネルの音声ビームの出力角度として割り当てる。また、制御部35は、Cチャンネルに設定したピークを挟んで近接するピークについて、SLチャンネルおよびSRチャンネルの音声ビームの出力角度を割り当てる。例えば、図5(B)では、Cチャンネルに近接し、0度方向に近い角度θ2aをSLチャンネルの音声ビームとして割り当て、Cチャンネルに近接し、180度方向に近い角度θ4aをSRチャンネルの音声ビームの出力角度として割り当てる。さらに、制御部35は、最も外側のピークについて、FLチャンネルおよびFRチャンネルの音声ビームの出力角度を割り当てる。例えば、図5(B)の例では、最も0度方向に近い角度θ1aをFLチャンネルの音声ビームとして割り当て、最も0度方向に近い角度θ5aをFRチャンネルの音声ビームの出力角度として割り当てる。このようにして、制御部35は、各チャンネルの音声ビームが聴取位置に到達するレベル差を検出する検出手段、および検出手段が測定したレベルのピークに基づいて音声ビームの出力角度を設定するビーム角度設定手段を実現する。
以上のようにして、図5(C)に示すように、聴者(マイク7)の位置において、周囲から音声ビームが到達するような設定を行う。
次に、バーチャル処理部40について説明する。図6は、バーチャル処理部40の構成を示すブロック図である。バーチャル処理部40は、レベル調整部43、定位付加部42、補正部51、遅延処理部60L、および遅延処理部60Rを備えている。
レベル調整部43は、FLチャンネル、FRチャンネル、Cチャンネル、SLチャンネル、およびSRチャンネルのデジタルオーディオ信号をそれぞれ入力するゲイン調整部43FL、ゲイン調整部43FR、ゲイン調整部43C、ゲイン調整部43SL、およびゲイン調整部43SRを備えている。
ゲイン調整部43FL、ゲイン調整部43FR、ゲイン調整部43C、ゲイン調整部43SL、およびゲイン調整部43SRは、各チャンネルのオーディオ信号のゲインを調整する。各ゲイン調整部のゲインは、設定手段である制御部35によりテスト音声ビームの検出結果に基づいて設定される。例えば、図5(B)に示すように、Cチャンネルの音声ビームは、直接音であるため、最も高レベルである。したがって、ゲイン調整部43Cのゲインは最も低く設定される。また、Cチャンネルの音声ビームは、直接音であり、部屋の環境に依存する可能性が低いため、例えば固定値としてもよい。そして、他のゲイン調整部は、Cチャンネルとのレベル差に応じたゲインが設定される。例えば、Cチャンネルの検出レベルG1=1.0としてゲイン調整部43Cのゲイン0.1を設定する場合、FRチャンネルの検出レベルG3=0.6であればゲイン調整部43FRのゲインを0.4とし、SRチャンネルの検出レベルG2=0.4であれば、ゲイン調整部43SRのゲインを0.6とする。このようにして、各チャンネルのゲインが調整される。なお、図5(A)、図5(B)、および図5(C)の例では、制御部35がテスト信号の音声ビームを旋回させて各チャンネルの音声ビームが聴取位置に到達するレベル差を検出する例を示したが、聴者が不図示のユーザインタフェースを用いて、制御部35に対して手動で音声ビームを出力させる指示を行い、各チャンネルの音声ビームが聴取位置に到達するレベル差を検出させる態様としてもよい。また、ゲイン調整部43FL、ゲイン調整部43FR、ゲイン調整部43C、ゲイン調整部43SL、およびゲイン調整部43SRの設定は、テスト音声ビームをスイープさせて検出したレベルとは別に、それぞれチャンネルごとにレベルを測定してもよい。具体的には、各チャンネルについてテスト音声ビームのスイープにより決定した方向にテスト音声ビームを出力し、聴取位置においてマイク7で収音した音を解析することにより行うことができる。
ゲイン調整された各チャンネルのオーディオ信号は、定位付加部42に入力される。定位付加部42は、入力された各チャンネルのオーディオ信号を所定の位置に仮想音源として定位させる処理を行う。仮想音源として定位させるためには、所定位置と聴者の耳との間の伝達関数を示す頭部伝達関数(以下、HRTFと称す。)を用いる。
HRTFは、ある位置に設置した仮想スピーカからそれぞれ左右の耳に至る音の大きさ、到達時間、および周波数特性等を表現したインパルス応答である。定位付加部42は、入力された各チャンネルのオーディオ信号にHRTFを付与して、ウーファ33Lまたはウーファ33Rから放音させることにより、聴者に仮想音源を定位させることができる。
図7(A)は、定位付加部42の構成を示すブロック図である。定位付加部42は、各チャンネルのオーディオ信号にHRTFのインパルス応答を畳み込むためのFLフィルタ421L、FRフィルタ422L、Cフィルタ423L、SLフィルタ424L、およびSRフィルタ425Lと、FLフィルタ421R、FRフィルタ422R、Cフィルタ423R、SLフィルタ424R、およびSRフィルタ425Rと、を備えている。
例えば、FLチャンネルのオーディオ信号は、FLフィルタ421LおよびFLフィルタ421Rに入力される。FLフィルタ421Lは、FLチャンネルのオーディオ信号に、聴者の左前方の仮想音源VSFL(図8を参照。)の位置から左耳に至る経路のHRTFを付与する。FLフィルタ421Rは、FLチャンネルのオーディオ信号に、仮想音源VSFLの位置から右耳に至る経路のHRTFを付与する。同様にして、各チャンネルについて、聴者の周囲の仮想音源の位置から各耳に至るHRTFが付与される。
加算部426Lは、FLフィルタ421L、FRフィルタ422L、Cフィルタ423L、SLフィルタ424L、およびSRフィルタ425LでそれぞれHRTFが付与されたオーディオ信号を合成して、オーディオ信号VLとして補正部51に出力する。加算部426Rは、FLフィルタ421R、FRフィルタ422R、Cフィルタ423R、SLフィルタ424R、およびSRフィルタ425RでそれぞれHRTFが付与されたオーディオ信号を合成して、オーディオ信号VRとして補正部51に出力する。
補正部51は、クロストークキャンセル処理を行う。図7(B)は、補正部51の構成を示すブロック図である。補正部51は、ダイレクト補正部511L、ダイレクト補正部511R、クロス補正部512L、およびクロス補正部512Rを備えている。
オーディオ信号VLは、ダイレクト補正部511Lおよびクロス補正部512Lに入力される。オーディオ信号VRは、ダイレクト補正部511Rおよびクロス補正部512Rに入力される。
ダイレクト補正部511Lは、ウーファ33Lから出力された音が左耳付近で放音されたように聴者に知覚させる処理を行う。ダイレクト補正部511Lは、ウーファ33Lから出力された音の周波数特性が左耳の位置でフラットになるようなフィルタ係数が設定されている。ダイレクト補正部511Lは、入力されたオーディオ信号VLを当該フィルタで処理して、オーディオ信号VLDを出力する。ダイレクト補正部511Rは、ウーファ33Rから出力された音の周波数特性が右耳の位置でフラットになるようなフィルタ係数が設定されている。ダイレクト補正部511Rは、入力されたオーディオ信号VLを当該フィルタで処理して、オーディオ信号VRDを出力する。
クロス補正部512Lは、ウーファ33Lから右耳に回り込む音の周波数特性を付与するためのフィルタ係数が設定されている。このウーファ33Lから右耳に回り込む音(VLC)を合成部52Rで逆相にしてウーファ33Rから放音させることにより、ウーファ33Lの音が右耳に聞こえるのを抑制する。これにより、ウーファ33Rから放音される音が右耳付近で放音されたように聴者に知覚させる。
クロス補正部512Rは、ウーファ33Rから左耳に回り込む音の周波数特性を付与するためのフィルタ係数が設定されている。このウーファ33Rから左耳に回り込む音(VRC)を合成部52Lで逆相にしてウーファ33Lから放音させることにより、ウーファ33Rの音が左耳に聞こえるのを抑制する。これにより、ウーファ33Lから放音される音が左耳付近で放音されたように聴者に知覚させる。
合成部52Lから出力されたオーディオ信号は、遅延処理部60Lに入力される。遅延処理部60Lによって所定時間遅延されたオーディオ信号は、加算処理部32に入力される。また、合成部52Rから出力されたオーディオ信号は、遅延処理部60Rに入力される。遅延処理部60Rによって所定時間遅延されたオーディオ信号は、加算処理部32に入力される。
遅延処理部60Lおよび遅延処理部60Rによる遅延時間は、例えば、ビーム化処理部20の指向性制御部で与えられる遅延時間のうち、最長の遅延時間よりも長く設定される。これにより、仮想音源を知覚させる音が、音声ビームの形成を阻害することがない。なお、ビーム化処理部20の後段に遅延処理部を設け、音声ビーム側に遅延を加えて、音声ビームが仮想音像を定位させる音を阻害しないようにする態様であってもよい。
遅延処理部60Lから出力されたオーディオ信号は、加算処理部32を介してウーファ33Lに入力される。加算処理部32では、遅延処理部60Lから出力されたオーディオ信号とHPF30Lから出力されたオーディオ信号とが加算される。なお、加算処理部32は、これらオーディオ信号の加算比率を変更するゲイン調整部の構成を備えていてもよい。同様に、遅延処理部60Rから出力されたオーディオ信号は、加算処理部32を介してウーファ33Rに入力される。加算処理部32では、遅延処理部60Rから出力されたオーディオ信号とHPF30Rから出力されたオーディオ信号とが加算される。加算処理部32は、これらオーディオ信号の加算比率を変更するゲイン調整部の構成を備えていてもよい。
次に、アレイスピーカ装置2が生成する音場について図8(A)を用いて説明する。図8(A)において、実線矢印は、アレイスピーカ装置2から出力される音声ビームの経路を示す。図8(A)において、白い星印は、音声ビームが生成する音源の位置を示し、黒い星印は、仮想音源の位置を示す。
図8(A)の例では、アレイスピーカ装置2は、図5(C)で示した例と同様に、音声ビームを5本出力する。Cチャンネルのオーディオ信号は、アレイスピーカ装置2の後方の位置に焦点を結ぶ音声ビームが設定される。これにより、聴者は、音源SCが聴者の前方にあると知覚する。
同様に、FLチャンネルのオーディオ信号は、部屋Rの左前方の壁の位置に焦点を結ぶ音声ビームが設定され、聴者は、音源SFLが聴者の左前方の壁にあると知覚する。FRチャンネルのオーディオ信号は、部屋Rの右前方の壁の位置に焦点を結ぶ音声ビームが設定され、聴者は、音源SFRが聴者の右前方の壁にあると知覚する。SLチャンネルのオーディオ信号は、部屋Rの左後方の壁の位置に焦点を結ぶ音声ビームが設定され、聴者は、音源SSLが聴者の左後方の壁にあると知覚する。SRチャンネルのオーディオ信号は、部屋Rの右後方の壁の位置に焦点を結ぶ音声ビームが設定され、聴者は、音源SSRが聴者の左後方の壁にあると知覚する。
さらに、定位付加部42は、上記音源SFL,SFR,SC,SSL,およびSSRの位置と略同じ位置に仮想音源の位置を設定する。したがって、聴者は、図8(A)に示すように、仮想音源VSC,VSFL,VSFR,VSSL,およびVSSRを音源SFL,SFR,SC,SSL,およびSSRの位置と略同じ位置に知覚する。なお、仮想音源の位置は、音声ビームの焦点と同じ位置に設定する必要はなく予め定めた方向としてもよい。例えば、仮想音源VSFLは左30度、仮想音源VSFRは右30度、仮想音源VSSLは左120度、仮想音源VSSRは右120度等に設定する。
これにより、アレイスピーカ装置2は、音声ビームによる定位感を仮想音源によって補うことができ、音声ビームだけを用いた場合または仮想音源だけを用いた場合に比べて、定位感を向上させることができる。特に、SLチャンネルおよびSRチャンネルの音源SSLおよび音源SSRは、音声ビームが壁に2度反射することにより生成されるため、フロント側のチャンネルに比べて明瞭な定位感が得られない場合がある。しかし、アレイスピーカ装置2は、ウーファ33Lおよびウーファ33Rにより聴者の耳に直接届く音で生成される仮想音源VSSLおよび仮想音源VSSRで定位感を補うことができ、SLチャンネルおよびSRチャンネルの定位感を損なうことがない。
そして、上述したように、アレイスピーカ装置2の制御部35は、各チャンネルの音声ビームが聴取位置に到達するレベル差を検出し、検出したレベル差に基づいてレベル調整部43のゲイン調整部43FL、ゲイン調整部43FR、ゲイン調整部43C、ゲイン調整部43SLおよびゲイン調整部43SRのレベルを設定する。これにより、定位付加部42の各チャンネルと音声ビームの各チャンネルとのレベル比率を調整する。
例えば、図8(A)の部屋Rの右側の壁には、音響反射率の低いカーテン501が存在し、音声ビームが反射しにくい状態となっている。したがって、図8(B)に示すように、角度θa4のピークのレベルは、他の角度のピークのレベルよりも低くなる。この場合、SRチャンネルの聴取位置に到達する音声ビームのレベルは、他のチャンネルと比較して低くなる。
そこで、制御部35は、ゲイン調整部43SRのゲインを他のレベル調整部よりも高く設定し、SRチャンネルについては、他のチャンネルより定位付加部のレベルを高く設定して、仮想音源による定位付加の効果を強くする。このように、制御部35は、テスト音声ビームにより検出したレベル差に基づいてレベル調整部43におけるレベル比率を設定する。これにより、音声ビームによる定位感が低くなるチャンネルについては、仮想音源によって定位感が強く補われる。この場合においても、音声ビーム自体は出力されているため、当該音声ビームによる定位感は残り、特定のチャンネルだけ仮想音源となって違和感が発生することがなく、チャンネル間の聴感上のつながりが維持される。
なお、アレイスピーカ装置2は、図8(C)に示すように、チャンネル数に対して検出されたピークの数が少ない場合であっても、音声ビームの到達する角度を推定し、各チャンネルの音声ビームの出力角度を割り当てることが好ましい。例えば、図8(C)の例では、SRチャンネルを割り当てるべき角度にピークが検出されていないが、最も高レベルである角度θa3を中心角度として、角度θa2と対称となる角度θa4にSRチャンネルを割り当て、SRチャンネルの音声ビームを出力させる。そして、制御部35は、角度θa3における検出レベルG1と角度θa4における検出レベルG2とのレベル差に応じて、ゲイン調整部43SRのゲインを高く設定する。これにより、仮想音源による定位付加の効果が強く設定されたチャンネルについても、音声ビーム自体は出力されているため、ある程度当該チャンネルの音声ビームの音を聴くことができる。したがって、特定のチャンネルだけ仮想音源となって違和感が発生することがなく、チャンネル間の聴感上のつながりが維持される。
なお、本実施形態では、レベル調整部43の各ゲイン調整部のゲインを調整することで、定位付加部42の各チャンネルと音声ビームの各チャンネルとのレベル比率を調整する態様を示したが、ビーム化処理部20におけるゲイン調整部18FL、ゲイン調整部18FR、ゲイン調整部18C、ゲイン調整部18SL、およびゲイン調整部18SRのゲインを調整することで、定位付加部の各チャンネルと音声ビームの各チャンネルとのレベル比率を調整する態様としてもよい。
次に、図9(A)は、変形例1に係るアレイスピーカ装置2Aの構成を示すブロック図である。図2に示したアレイスピーカ装置2と共通する構成については同一の符号を付し、説明を省略する。
アレイスピーカ装置2Aは、音量設定受付部77をさらに備えている。音量設定受付部77は、聴者からマスタボリューム設定を受け付けるものである。制御部35は、音量設定受付部77から受け付けたマスタボリューム設定に応じて、不図示のパワーアンプ(例えばアナログアンプ)のゲインを調整する。これにより、全てのスピーカユニットの音量がまとめて変更される。
そして、制御部35は、音量設定受付部77から受け付けたマスタボリューム設定に応じて、レベル調整部43における全ゲイン調整部のゲインを設定する。例えば、図9(B)に示すように、マスタボリュームの値が小さくなるにつれて、レベル調整部43における全ゲイン調整部のゲインを高く設定する。このようにマスタボリューム設定が低くなると、音声ビームの壁からの反射音のレベルが低下して、サラウンド感が低下する可能性がある。そこで、制御部35は、マスタボリュームの値が小さくなるにつれて定位付加部42のレベルを高く設定し、仮想音源による定位付加の効果を強くすることで、サラウンド感を維持する。
次に、図10(A)は、変形例2に係るアレイスピーカ装置2Bの構成を示すブロック図である。図2に示したアレイスピーカ装置2と共通する構成については同一の符号を付し、説明を省略する。
アレイスピーカ装置2Bは、制御部35が各チャンネルのオーディオ信号を入力して、各チャンネルのオーディオ信号のレベルを比較する(比較手段として機能する)。制御部35は、比較結果に基づいてレベル調整部43における各ゲイン調整部のゲインを動的に設定する。
例えば、特定のチャンネルだけ高レベルの信号が入力された場合、当該特定のチャンネルの信号に音源があると判断できるため、このチャンネルのゲイン調整部のゲインを高く設定して、明瞭な定位感を与える。また、制御部35は、例えば、図10(B)に示すように、フロントチャンネルとサラウンドチャンネルとのレベル比率(フロントレベル比)を算出し、フロントレベル比に応じてレベル調整部43における各ゲイン調整部のゲインを設定することも可能である。すなわち、制御部35は、サラウンドチャンネルのレベルが相対的に高い場合にはレベル調整部43(ゲイン調整部43SLおよびゲイン調整部43SR)のゲインを高く設定し、サラウンドチャンネルのレベルが相対的に低い場合にはレベル調整部43(ゲイン調整部43SLおよびゲイン調整部43SR)のゲインを低く設定する。したがって、サラウンドチャンネルのレベルが相対的に高くなった場合に仮想音源による定位付加の効果を強くすることで、サラウンドチャンネルの効果を強調する。一方で、フロントチャンネルのレベルが相対的に高い場合には音声ビームによるレベルを大きく設定することで、音声ビームによるフロントチャンネルの効果を強調することにより、仮想音源定位に比べて定位感が得られる聴取領域を相対的に広くすることが可能である。
なお、サラウンドチャンネルのレベルが相対的に低くなった場合にレベル調整部43(ゲイン調整部43SLおよびゲイン調整部43SR)のゲインを低くすると、音声ビームによるサラウンドチャンネルがさらに聞き取り難くなる場合もあるため、サラウンドチャンネルのレベルが相対的に低い場合にレベル調整部43(ゲイン調整部43SLおよびゲイン調整部43SR)のゲインを高く設定し、サラウンドチャンネルのレベルが相対的に高い場合にレベル調整部43(ゲイン調整部43SLおよびゲイン調整部43SR)のゲインを低くする態様としてもよい。
また、チャンネル間のレベル比較、およびフロントチャンネルとサラウンドチャンネルとのレベル比率の算出は、全周波数帯域について行う態様であってもよいが、各チャンネルのオーディオ信号を所定の帯域に分割して、分割した帯域毎のレベルを比較する、またはフロントチャンネルとサラウンドチャンネルとのレベル比率を算出する態様としてもよい。例えば、音声ビームを出力するための各スピーカユニット21A〜21Pの再生周波数の下限は、200Hzであるため、200Hz以上の帯域においてフロントチャンネルとサラウンドチャンネルとのレベル比率を算出する。
次に、図11(A)は、変形例3に係るアレイスピーカ装置2Cを示す図である。アレイスピーカ装置2と重複する構成の説明は省略する。
アレイスピーカ装置2Cは、ウーファ33Lおよびウーファ33Rから出力する音をそれぞれスピーカユニット21Aおよびスピーカユニット21Pから出力する点において、アレイスピーカ装置2と相違する。
アレイスピーカ装置2Cは、仮想音源を知覚させる音をスピーカユニット21A〜21Pのうち、両端のスピーカユニット21Aおよびスピーカユニット21Pから出力する。
スピーカユニット21Aおよびスピーカユニット21Pは、アレイスピーカにおける最も端部に配置されたスピーカユニットであり、聴者から見てそれぞれ最も左側および右側に配置されている。したがって、スピーカユニット21Aおよびスピーカユニット21Pは、それぞれLチャンネルおよびRチャンネルの音を出力する場合に好適であり、仮想音源を知覚させる音を出力するスピーカユニットとして好適である。
また、アレイスピーカ装置2は、一つの筐体にスピーカユニット21A〜21P、ウーファ33Lおよびウーファ33Rを全て備える必要はない。例えば、図11(B)に示すスピーカセット2Dのように、各スピーカユニットを個別の筐体に設けて、各筐体を並べて配置する態様であってもよい。
いずれにしても、入力された複数チャンネルのオーディオ信号をそれぞれ遅延させて複数のスピーカに分配し、かつ、入力された複数チャンネルのオーディオ信号のいずれかに頭部伝達関数に基づくフィルタ処理を行って複数のスピーカに入力する態様であれば、本発明の技術的範囲に属するものである。
1…AVシステム
2…アレイスピーカ装置
3…サブウーファ
4…テレビ
7…マイク
10…デコーダ
11…入力部
14,15…フィルタ処理部
18C,18FL,18FR,18SL,18SR…ゲイン調整部
20…ビーム化処理部
21A〜21P…スピーカユニット
32…加算処理部
33L,33R…ウーファ
35…制御部
40…バーチャル処理部
42…定位付加部
43…レベル調整部
43C,43FL,43FR,43SL,43SR…ゲイン調整部
51…補正部

Claims (6)

  1. 複数チャンネルのオーディオ信号が入力される入力部と、
    複数のスピーカと、
    前記入力部に入力された複数チャンネルのオーディオ信号をそれぞれ遅延させて前記複数のスピーカに分配することにより、前記複数のスピーカに複数の音声ビームを出力させる指向性制御部と、
    前記入力部に入力された複数チャンネルのオーディオ信号のいずれかに頭部伝達関数に基づくフィルタ処理を行って前記複数のスピーカに入力する定位付加部と、
    前記定位付加部の各チャンネルのオーディオ信号と前記音声ビームの各チャンネルのオーディオ信号とのレベル比率を調整するレベル調整部と、
    を備えたスピーカ装置。
  2. 聴取位置に設置されるマイクと、
    各チャンネルの音声ビームが聴取位置に到達するレベルを検出する検出手段と、
    前記検出手段が検出したレベルに基づいて前記レベル調整部におけるレベル比率を設定する設定手段と、
    を備え、
    前記検出手段は、前記指向性制御部にテスト信号を入力して前記複数のスピーカにテスト音声ビームを出力させ、当該テスト音声ビームが前記マイクに入力されるレベルを測定し、
    前記設定手段は、前記ピークのレベル差に基づいて前記レベル調整部におけるレベル比率を設定する請求項1に記載のスピーカ装置。
  3. 前記入力部に入力された複数チャンネルのオーディオ信号のレベルを比較する比較手段を備え、
    前記設定手段は、前記比較手段の比較結果に基づいて前記レベル調整部におけるレベル比率を設定する請求項1または請求項2に記載のスピーカ装置。
  4. 前記比較手段は、フロントチャンネルとサラウンドチャンネルとのレベルを比較し、
    前記設定手段は、前記フロントチャンネルとサラウンドチャンネルとの相対的なレベル差に基づいて前記定位付加部のレベル比率を設定する請求項3に記載のスピーカ装置。
  5. 前記比較手段は、前記入力部に入力された複数チャンネルのオーディオ信号を所定の帯域に分割して、分割した帯域毎のレベルを比較する請求項3または請求項4に記載のスピーカ装置。
  6. 前記複数のスピーカの音量設定を受け付ける音量設定受付部を備え、
    前記設定手段は、前記音量設定に基づいて前記レベル調整部におけるレベル比率を設定する請求項1乃至請求項5のいずれかに記載のスピーカ装置。
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