JP2009141879A - ヘッドフォン装置、ヘッドフォン音響再生システム - Google Patents

ヘッドフォン装置、ヘッドフォン音響再生システム Download PDF

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文孝 西尾
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Abstract

【課題】マルチチャンネルに対応するヘッドフォンとして、より理想的な音場の再現が行えるようにする。
【解決手段】5.1chサラウンドに対応して、ヘッドフォンの左右の各ハウジング部においてLFch、Cch、RFch、LSch、RFch及びLFEchに対応するドライブユニットを個別に設ける。これらのドライブユニットは、ITU勧告に基づいて定めた聴取環境モデルのスピーカ配置パターンに対応させた配列順で前後方向に配置するとともに、各チャンネルのドライブユニットから耳までの距離について、聴取環境モデルでの各チャンネル音源から耳までの距離に準じた関係が与えられるように、位置を調整して配置させる。
【選択図】図14

Description

本発明は、いわゆるサラウンド音声の再生に対応するヘッドフォン装置と、このようなヘッドフォン装置を備えて音響再生を行うヘッドフォン音響再生システムとに関するものである。
例えば、5.1chサラウンドなどに代表される、いわゆるマルチチャンネルといわれるチャンネル構成により音響再生を行うことが知られている。このようなマルチチャンネルの音声ソースは、一般的には、チャンネル数に対応してしかるべき位置関係により配置させたスピーカのそれぞれから出力させるものとされており、また、このようにして再生出力されることを前提として各チャンネルの音声信号がつくられる。そして、実際にスピーカから再生出力されるマルチチャンネルの音声を聴いた場合には、いろいろな音源の音像が聴取位置の周囲で定位するようになり、例えば2チャンネルステレオなどよりもより立体的で臨場感のある音響効果を楽しむことができる。
上記のようにして、本来のマルチチャンネルの音響再生は、チャンネル数分のスピーカを配置して行うべきものなのであるが、ヘッドフォン再生によっても、あたかも、実際にスピーカを配置して聴く場合と同様に、聴取者の頭外のしかるべき位置にて音像が定位して聴こえるようにするための信号処理技術が提案されており、また実現化されて普及してきている状況にある。
このような信号処理技術では、例えば、チャンネルごとに対応する音源から発せられた音が、聴取者の左耳と右耳に到達して聴こえるまでの経路の伝達関数を利用するようにされる。この場合において用いられる伝達関数は、例えば、音源から聴取者の鼓膜に到達するまでの音の伝達特性に対応するものとされており、頭部伝達関数ともいわれる。
そして、マルチチャンネルを構成するチャンネルごとの音源となる音声信号を、左耳と右耳に対応させて振り分けた上で、これらの音声信号に対して、頭部伝達関数に基づいた信号特性を与えるようにされる。つまり、各チャンネルの音声信号の原音から、そのチャンネルとしての音源位置から左耳に到達するとされる特性の信号と、右耳に到達するとされる特性の信号を生成する。そして、各チャンネルの左耳に到達するまでの経路の頭部伝達関数を有する信号を合成して得られる信号を、ヘッドフォンの左ドライブユニットから音として再生出力させ、同じく各チャンネルの右耳に到達するまでの経路の頭部伝達関数を有する信号を合成して得られる信号を、ヘッドフォンの右ドライブユニットから音として再生出力させるようにする。
このようにして再生出力される音を、例えば聴取者がヘッドフォンによりほぼ直接的に両耳で聴くことで、頭内で音像が定位するのではなく、例えばマルチチャンネルに対応するスピーカを実際に配置した環境で聴いているのと同等の音像定位が感じられることになる。つまり、いわゆるサラウンドといわれる音響効果を得ることが可能になる。
特開2003−274493号公報
しかしながら、上記のようなヘッドフォンによる音響再生システムは、あくまでも頭部伝達関数を利用した信号処理によって仮想的な音場を得るものであることから、実際にユーザが聴き取ることのできる音響効果が不十分であると感じられてしまうことが、少なからずあるというのが現状である。
この主たる原因の1つは、頭部伝達関数に基づいて得られた各チャンネルの音声信号を、左右のドライブユニットごとに対応させて、左右のチャンネルの音声信号として合成していることが挙げられる。
実際にスピーカを配置したマルチチャンネルの再生環境では、各チャンネルのスピーカから発せられた音(音波)が空間にて合成される。聴取者は、この合成された音を聴くことになる。例えばこの場合において、異なるチャンネル間で、逆相となるような信号が再生されているとしても、空間で合成されることで正確に打ち消し合わされるようなことにはならず、これがかえって豊かな音場感が得られることの要因となっている。
これに対して、上記のヘッドフォン音響再生システムでは、空間で音を合成する代わりに、音声信号段階での合成を行っている。すると、異なるチャンネル間で信号が逆相になったような場合には、その信号が的確に打ち消し合うようなことになり、これが音場感を不自然なものとしたり、不充分なものとすることにつながってしまう。
上記のような問題については、特に有効な解決が図られていない、というのが現状であり、従って、マルチチャンネルに対応して仮想音場を得るようにされるヘッドフォン音響再生システムとしては、より忠実な音響効果が得られるようにするための余地が残っている、ということがいえる。
そこで本発明は上記した課題を考慮して、ヘッドフォン装置として次のように構成する。
つまり、左右の各耳ごとに対応して、所定のチャンネル構成を成す複数のチャンネルごとに対応する複数のドライブユニットを備え、1つの耳に対応する上記複数のドライブユニットについて、上記所定のチャンネル構成に対応して予め規定した聴取環境における、各チャンネルの音源位置から上記1つの耳に対応して設定した音声到達点までの距離を音源距離とし、また、複数のドライブユニットのそれぞれから上記1つの耳に対応して設定した音声到達点までの距離をユニット距離としたうえで、各チャンネルに対応するユニット距離について、同じチャンネルに対応する音源距離の間での距離差に準じた関係が得られるようにして複数のドライブユニットを配置することとした。
また、ヘッドフォン音響再生システムとしては次のように構成することとした。
つまり、本願のヘッドフォン音響再生システムは、ヘッドフォン装置と音声信号処理装置とから成る。
そして、ヘッドフォン装置は、左右の各耳ごとに対応して、所定のチャンネル構成を成す複数のチャンネルごとに対応する複数のドライブユニットを備え、1つの耳に対応する上記複数のドライブユニットについて、
上記所定のチャンネル構成に対応して予め規定した聴取環境における、各チャンネルの音源位置から上記1つの耳に対応して設定した音声到達点までの距離を音源距離とし、また、複数のドライブユニットのそれぞれから上記1つの耳に対応して設定した音声到達点までの距離をユニット距離としたうえで、各チャンネルに対応するユニット距離の長さについて、各チャンネルに対応する音源距離に準じた距離差の関係が得られるようにして、上記複数のドライブユニットを配置して構成することとした。
また、音声信号処理装置は、所定のチャンネル構成に対応する音声ソースに対応する各チャンネルの音声信号が、それぞれ、ヘッドフォン装置の左右の各耳に対応して備えられる、対応するチャンネルのドライブユニットから音として発せられるようにして音声信号処理を行うように構成することとした。
上記各構成によると、ヘッドフォン装置としては、左右の耳ごとに対応して、所定のチャンネル構成を成す複数のチャンネルに対応した、複数のドライブユニットの組を備える。
ここで、ドライブユニットとは、振動板などを備えた構造を有して、音声信号に応じた駆動信号により駆動されることで音声を出力するための部位である。
これにより、先ず、チャンネルごとの音源位置から左右の各耳に到達すべき音は、それぞれがドライブユニットから発せられて、先ずは耳に近いところの空間で合成されたうえで、耳介、鼓膜に到達することになる。
そのうえで、1つの耳側に対応する複数のドライブユニットについては、そのチャンネルごとに対応するユニット間距離が、上記所定のチャンネル構成に対応して予め規定した聴取環境において求められる、同じチャンネルに対応する音源距離に準じた距離差の関係が得られるようにして、配置することとしている。これにより、各チャンネルのドライブユニットから耳に対して音が実際に到達するときの到達時間差について、時間聴取環境モデルにおいて得られているとされる各チャンネルの音源から左右の各耳への音の到達時間差に近づけることが可能になる。
上記のようにして、本願発明にあっては、ヘッドフォンによる再生でありながら、チャンネルごとの音源位置から左右の各耳に到来してくるとされる音は、空間にて合成されてから耳に到達してくるようにされる。これとともに、ドライブユニットから耳までの距離について、聴取環境モデルにおける各チャンネル音源から耳への距離、即ち各チャンネルの音の到達時間差に基づいて設定されている。
これにより、これまでよりも理想に近いとされる音場を再現することが可能なヘッドフォン装置、ヘッドフォン音響再生システムを提供することが可能になる。
以下、本願発明を実施するための最良の形態(以下、実施の形態という)について説明を行っていく。
本実施の形態は、ヘッドフォン音響再生システムとして、例えば5.1chサラウンドなどに代表されるマルチチャンネル構成により得られる音像定位を仮想的に実現しようとするものである。先ず、このような仮想音像定位をヘッドフォン再生により実現する技術についての基本構成概念について説明しておくこととする。
ここでは音源の音像定位については最も簡単な例を挙げる。つまり、聴取者に対して或る位置関係にある単一の音源の音像定位をヘッドフォンにより仮想的に再生する場合を考える。これは、例えば図20の音響モデルにより模式的に示すようにして、聴取者Mと、この聴取者Mに対して一定角度及び一定距離に在るとされる1つの音源Srcとの関係として捉えることができる。この図に示すように、音源Srcから発せられる音は、聴取者Mの左耳に対しては伝達関数Hlが畳み込まれるようにして与えられて伝達され、右耳に対しては伝達関数Hrが与えられて伝達される。
なお、ここでの伝達関数Hl、Hrは、音源から聴取者の鼓膜に到達するまでの音の伝達特性に対応する頭部伝達関数とされる。また、この場合の音源Srcは、聴取者Mの前方において左側に位置していることから、音源Srcから聴取者Mの左右の各耳に到達する音のうちで、左耳に到達する音は、直接音的な主音声成分であるとして、また、右耳に到達する音は、本来は左耳に到達して聴こえる音が回折などして右耳にて聴き取られるクロストーク成分であり、従って、主音声成分に対して副音声成分となるものであるとして扱うことができる。
図21は、上記図20において、音源Srcから発せられて聴取者Mの左耳にて聴き取られたとされる、伝達関数Hlの経路による音の周波数特性Aと、聴取者Mの右耳にて聴き取られたとされる、伝達関数Hrの経路による音の周波数特性Bを示している。
上記もしているように、この場合の音源Srcは聴取者Mの左前方に位置していることで、聴取者Mの左耳にて聴き取られる音は直接音的なものである。これに対して、聴取者Mの右耳にて聴き取られる音は、間接音、クロストーク成分とされる。周波数特性Aに対する周波数特性Bの差分として、周波数特性Bのほうの音圧が小さくなっているのは、このことに対応したものである。
このようにして、1つの音源Srcから発せられて左右の各耳に到達して聴こえる音は、その周波数特性が異なっている。また、図20において示されているように、音源Srcから左耳までの距離と右耳までの距離との間には距離差Dsが存在し、この距離差Dsに応じて、音源Srcから発せられた音が左右の各耳に到達する時間差である到達時間差dlも生じることになる。図20に示した伝達関数Hl、Hrは、音源Srcから発せられたものとされる原音に対して、このような周波数特性差や到達時間差などの特性差を与えるものとなる。
そして、人の音像定位能力としては、上記のような左耳と右耳との間で聴き取る音についての周波数特性差(ここでは音量差の要素を含む)、時間差などの所定特性の差分から、音像の定位感を知覚するものであるとされている。このことに基づけば、1音源の仮想音像定位をヘッドフォンにより再生するためには、原音の音声信号を基として上記のような、主音声分と副音声成分とに対応する信号特性差を与えた2つの音声信号を得て、これらの音声信号の一方を左耳に対応するドライブユニットから再生出力させ、他方を右耳に対応するドライブユニットから再生出力させればよい、ということになる。
上記したことをふまえた上で、図22の音響モデルに示すようにして、聴取者Mに対して左右前方に配置した左音源Srclと右音源Srcrにより得られるとされる音像定位をヘッドフォンにより再現する場合を考えてみる。
この場合、先ず、左音源Srclから発せられる音は、主音声分として伝達関数Hllが与えられた聴取者Mの左耳に到達するとともに、副音声として伝達関数Hlrが与えられて右耳に到達するものとされる。また、右音源Srcrから発せられる音は、主音声分として伝達関数Hrrが与えられた聴取者Mの右耳に到達するとともに、副音声として伝達関数Hrlが与えられて聴取者Mの左耳に到達するものとされる。
そして、上記図22に示した左右前方による音像定位をヘッドフォン再生により実現するための信号処理系の構成としては、図23に示す態様を考えることができる。
先ず、この図23に示される構成においては、入力信号として、図22の左音源Srclにて発せられる原音に対応した原音声信号Slと、同じ図22の右音源Srcrとして発せられる原音に対応した原音声信号Srとを入力するようにされる。
原音声信号Slは、合成器13aに直接的に入力される系と、フィルタ11bから遅延器12bを介して合成器13bに入力される系とに分岐される。また、原音声信号Srも、合成器13bに直接的に入力される系と、フィルタ11aから遅延器12aを介して合成器13aに入力される系とに分岐される。
合成器13aでは、上記のようにして、直接的に入力された原音声信号Slと、原音声信号Srをフィルタ11a、遅延器12aにより処理した信号とを合成して、左(L)出力チャンネル用信号として、左耳に対応したドライブユニットSPu−Lにより音声として出力させるものとしている。
また、合成器13bは、直接的に入力された原音声信号Srと、原音声信号Slをフィルタ11b、遅延器12bにより処理した信号とを合成して、右(R)出力チャンネル用信号として、右耳に対応したドライブユニットSPu−Rにより音声として出力させるものとされる。
これらのドライブユニットの実際としては、例えば所定の材質形状による振動板を備え、音声信号を増幅して得られる駆動電流により上記振動板が駆動されることで音を再生するようにされた部位をいう。つまりは、ヘッドフォンなどの耳に近いところで音を再生するようにされたスピーカとされる。
上記図23に示す構成において、先ず、原音声信号Slが合成器13aに直接的に入力されてドライブユニットSPu−Lに至る系は、左音源Srclから左耳に到達する主音声成分に対応するものとされ、後述するようにして、伝達関数Hllに応じた信号特性を与えていることと等価となる。これに対して、原音声信号Slがフィルタ11b、遅延器12b、合成器13bを経由してドライブユニットSPu−Rに至る系は、左音源Srclから右耳に到達する副音声成分に対応するものとされ、フィルタ11b、遅延器12bにより主音声成分に対する信号特性差(周波数特性差、到達時間差dl)を与えることで、伝達関数Hlrが畳み込まれたのと等価の信号特性を与えるようにされる。
同様にして、原音声信号Srが合成器13bに直接的に入力されてドライブユニットSPu−Rに至る系は、右音源Srcrから右耳に到達する主音声成分に対応し、伝達関数Hrrに応じた信号特性を与えているものとされ、原音声信号Srがフィルタ11a、遅延器12a、合成器13aを経由してドライブユニットSPu−Lに至る系は、右音源Srcから左耳に到達する副音声成分に対応するものとされ、フィルタ11a、遅延器12aにより、主音声成分に対する特性差を与えることで、伝達関数Hlrが畳み込まれたのと等価の信号特性を与えるようにされる。
例えばL,Rによる2チャンネルステレオのヘッドフォンについての一般的なこととして、ドライブユニットの再生音声の周波数特性をはじめ、ハウジング内にて再生される音の特性は、実際に聴取者がヘッドフォンを装着して左右各耳のハウジング内部にて再生される音を聴いたときに、周波数帯域のバランスなどが自然なものとして聴こえるようにして設定されている。このことから、ヘッドフォン装置により音声再生された段階で、例えばL,Rの各チャンネルの再生音声には、それぞれのチャンネルが対応して、左右の各耳に到達するまでの経路に応じた伝達関数が近似的に与えられているものとして考えることができる。なお、後述する本実施の形態に対応したヘッドフォン装置も、このようなことを前提として例えばドライブユニットなどがつくられている。
上記したことに基づけば、少なくとも、図23における主音声成分である、信号Slが合成器13aに直接的に入力されてドライブユニットSPu−Lに至る系と、信号Srが合成器13bに直接的に入力されてドライブユニットSPu−Rに至る系については、特にフィルタ処理や遅延処理を行わなくとも、ドライブユニットから音として出力されることを以て、伝達関数Hll、Hlrが畳み込まれたことと等価とされる特性の音が得られるものとして捉えることができることになるわけである。
そして、そのうえで、先にも説明したようにして、上記主音声成分に対応する副音声成分については、フィルタ及び遅延器により、伝達関数に応じた主音声成分に対する周波数特性差、到達時間差が与えられるようにされる。
これにより、左音源Srclから左耳に到達すべき伝達関数Hllによる主音声と、右耳に到達すべき伝達関数Hlrによる副音声とが、それぞれドライブユニットSPu−L、SPu−Rから再生出力されることになり、この音の成分を聴いたとすれば、しかるべき位置に左音源Srclが定位していると知覚できることになる。同様にして、右音源Srcrから右耳に到達すべき伝達関数Hrrによる主音声と、左耳に到達すべき伝達関数Hrlによる副音声とが、それぞれドライブユニットSPu−R、SPu−Lから再生出力されることになり、この音の成分を聴いた場合には、しかるべき位置に右音源Srcrが定位していると知覚できることになる。つまり、聴取者は、左音源Srclと右音源Srcrが左右前方におけるしかるべき位置にて定位した音像を知覚できることになり、仮想音像定位が実現される。
ここで、上記図23に示すシステム構成に対応したヘッドフォン装置と聴取者の頭部との関係を図24に示しておく。この場合のヘッドフォン装置は、図24に示すようにして、聴取者Mの左右の耳ごとに対応して左ハウジング部1L、右ハウジング部1Rを有している。ここでは図示していないが、例えば左ハウジング部1L、右ハウジング部1Rをヘッドバンドなどにより連結して、頭部に装着可能な構造を採るようにされている。そして、左ハウジング部1L、左ハウジング部1Rには、それぞれ、ドライブユニットSPu−L、SPu−Rが取り付けられており、ヘッドフォン装置が適正に頭部に装着された状態では、ドライブユニットSPu−L、SPu−Rが、それぞれ、左耳、右耳により聴き取ることのできる最適とされる位置に在るようにされる。
次に、上記図22〜図24により説明した2音源(2チャンネル構成)に対応する構成に基づいた、より実際的なマルチチャンネル構成に対応するヘッドフォン音響再生システムの構成について、図25及び図26を参照して説明する。ここでは、マルチチャンネル構成として、5.1chサラウンドの規格に対応させた場合を例に挙げることとする。
先ず、図25は、5.1chサラウンドのチャンネル構成のモデルを模式的に示している。
周知のようにして、5.1chサラウンドは、LF(Left Front)ch、C(Center)ch、RF(Right Front)ch、LS(Left Surround)ch、RS(Right Surround)chと、サブウーファともいわれるLFE(Low Frequency Effect)chの、計6チャンネルによるチャンネル構成を採るものとされる。これらのチャンネルについては例えばITU(International Telecommunication Union)勧告(ITU-R BS.775-1)などによって標準とされる音源位置、つまり、リスニングポジション(聴取者M)に対するスピーカの位置、高さなどが規定されている。ただし、LFEchについては、その再生周波数帯域が他のチャンネルに対して相当に低いために指向性が鈍く、聴取者にとっても明確な定位を感じにくいことから、その音源位置についての規定は緩やかなものとされている。
そのうえで、図25においては、LFch、Cch、RFch、LSch、RSch、LFEchのそれぞれに応じた音源として、スピーカSP−LF、SP−C、SP−RF、SP−LS、SP−RS、SP−LFEが示され、これらのスピーカから出力されて左耳と右耳のそれぞれ到達する音声を聴取者Mが聴き取る、というモデルが示されている。
例えば5.1chサラウンドの規格に従ったこれらスピーカの配置位置としては、聴取者Mの位置に対する左前方にスピーカSP−LFを配置し、中央前方にスピーカSP−Cを配置し、右前方にスピーカSP−RFを配置し、左後方にスピーカSP−LSを配置し、右後方にスピーカSP−RSを配置するようにされる。
そして、図22に倣えば、図25に示されるチャンネル構成の下での、各スピーカから聴取者Mの右耳、左耳に到達する音の経路については、下記の伝達関数(頭部伝達関数)により表すことができる。
Hlfl:スピーカSP−LFから主音声成分として左耳に到達する経路の伝達関数
Hlfr:スピーカSP−LFから副音声成分として右耳に到達する経路の伝達関数
Hcl:スピーカSP−Cから主音声/副音声成分として左耳に到達する経路の伝達関数
Hcr:スピーカSP−Cから副音声/主音声成分として右耳に到達する経路の伝達関数
Hrfl:スピーカSP−RFから副音声成分として左耳に到達する経路の伝達関数
Hrfr:スピーカSP−RFから主音声成分として右耳に到達する経路の伝達関数
Hlsl:スピーカSP−LSから主音声成分として左耳に到達する経路の伝達関数
Hlsr:スピーカSP−LSから副音声成分として右耳に到達する経路の伝達関数
Hrsl:スピーカSP−RSから副音声成分として左耳に到達する経路の伝達関数
Hrsr:スピーカSP−RSから主音声成分として右耳に到達する経路の伝達関数
図26は、先の図22及び図23により示される基本概念を基として構成した、5.1chサラウンドに対応するヘッドフォン再生システムの例を示している。
先ず、この図においても、ドライブユニットとしては、左出力チャンネルと右出力チャンネルに対応した一対のドライブユニットSPu−L、SPu−Rが備えられる。ドライブユニットSPu−Lには、合成器13aにより入力音声信号を合成して得られた左出力チャンネル用音声信号が入力され、ドライブユニットSPu−Rには、合成器13bにより入力音声信号を合成して得られた右出力チャンネル用音声信号が入力される。
そのうえで、5.1chサラウンドとしての各チャンネルの音声信号を、下記のようにして振り分けて合成器13a、13bに入力するようにされている。
先ず、LFchの原音声信号は、合成器13aに対して直接入力するようにしているとともに、フィルタ11b、遅延値12bを経由して合成器13bに入力させることとしている。
また、RFchの原音声信号は、合成器13bに対して直接入力するようにしていると共に、フィルタ11a、遅延器12bを経由して合成器13aに入力させることとしている。
Cchの原音声信号は、フィルタ11e、遅延器12eを経由した上で二系統に分岐させたうえで、各系の信号を、それぞれ合成器13a、遅延器13bに入力させることとしている。
LSchの原音声信号は、フィルタ11d、遅延器12dを経由して合成器13aに入力させるとともに、フィルタ11g、遅延器12gを経由して合成器13bに入力させることとしている。
RSchの原音声信号は、フィルタ11c、遅延器12cを経由して合成器13aに入力させるとともに、フィルタ11f、遅延器12fを経由して合成器13bに入力させることとしている。z
LFEchの原音声信号は、先ず、2系統に分岐した上で、各系の信号をそれぞれ、合成器13a、合成器13bに直接入力させることとしている。
上記図26に示される構成において、先ず、LFch、RFchの組に対応する信号系の構成は、先に図23に示した左音源Srclと右音源Srcrの2チャンネル分に対応するヘッドフォンシステムの基本構成に対応している。このために、LFchの主音声成分(左出力チャンネル)に対応する信号は、フィルタ、遅延器を経由させないで合成器13aからドライブユニットSPu−Lにより出力させることとしており、これにより、伝達関数Hlflが畳み込まれたのと同等の信号特性の音を得ようとしているものである。また、LFchの副音声成分(右出力チャンネル)に対応する信号については、フィルタ11b、遅延器12bを経由させることで、主音声に対する副音声の周波数特性差、到達時間差を与えるようにすることで、伝達関数Hlfrが畳み込まれたのと同等の信号特性の音を得るようにされる。
同様にして、RFchの主音声成分(右出力チャンネル)に対応する信号は、フィルタ、遅延器を経由させずに合成器13bからドライブユニットSPu−Rにより出力させることで、伝達関数Hrflが畳み込まれたのと同等の信号特性の音を得るようにされ、RFchの副音声成分(左出力チャンネル)に対応する信号については、フィルタ11a、遅延器12aを経由させることで、主音声に対する副音声の周波数特性差、到達時間差を与え、伝達関数Hrflが畳み込まれたのと同等の信号特性の音を得るようにされる。
また、LSchの主音声成分(左出力チャンネル)に対応して備えられるフィルタ11d、遅延器12dは、対応する伝達関数Hlslが畳み込まれたのと同等の信号特性を得るために、LFchの主音声成分に対する特性差(周波数特性差、及び到達時間差)を与えるためのパラメータ(通過帯域特性、遅延時間)が設定されるようになっている。つまり、LSchの主音声成分を基準とすれば、LFchの主音声成分は、互いの音源位置に応じて左耳に到達するまでの経路が異なってくることから、LSchの主音声成分に対する特性差を持つものであり、この特性差を、上記フィルタ11d、遅延器12dにより得ることとしているものである。
そのうえで、LSchの副音声成分(右出力チャンネル)に対応して備えられるフィルタ11g、遅延器11gは、対応する伝達関数Hlsrが畳み込まれたのと同等の信号特性を得るために、同じLSchの主音声成分に対する特性差を与えるためのパラメータを設定する。
また、RSchの主音声成分(右出力チャンネル)に対応して備えられるフィルタ11f、遅延器11fは、対応する伝達関数Hlslが畳み込まれたのと同等の信号特性を得るために、LFchの主音声成分に対する特性差を与えるためのパラメータが設定されるようになっている。そのうえで、LSchの副音声成分(右出力チャンネル)に対応して備えられるフィルタ11g、遅延器11gは、対応する伝達関数Hrsrが畳み込まれたのと同等の信号特性を得るために、同じLSchの主音声成分に対する特性差を与えるためのパラメータを設定する。
またCchについては、フィルタ11e、遅延器12eを経由してから、左出力チャンネルと右出力チャンネルとに対応する信号系に分岐されている。Cchは、図25に示されるようにして、聴取者Mの前方正面に位置する音源とされる。このために、理想的には、聴取者Mの左右の耳に到達する各系の音に対応する伝達特性Hcl、Hcrは同等であり、また、LFch、RFch、LSch、RSchのような主音声成分と副音声成分の相違も生じない。換言すれば、Cchでは、聴取者Mの左の耳に対応する系と、右の耳対応する系との間で、どちらを主音声成分、副音声成分としてあつかったとしても、実質的な差違は無いものである。
ただし、LFch、RFchの主音声成分を基準とすると、これに対するCchの左右の各耳に対応する音成分の信号特性差は存在する。従って、この信号特性差を与えれば、Cchとしての伝達特性Hcl、Hcrが得られ、その音像定位が実現されることになる。フィルタ11e、遅延器12eは、この信号特性差を与えるようにしてそのパラメータが設定される。
また、LFEchについては、先に図25により説明したように、その再生周波数帯域が低いために他のチャンネルの音と比較して指向性が鈍い。この点ではヘッドフォン再生においても同様である。そこで、LFEchについては、特に信号特性を与えることなく、直接、合成器13a、13bに分岐して入力させることとしているものである。
このようにして、図26に示す構成では、LFEch以外のチャンネルの音声信号について、左耳に到達する音成分に対応する伝達特性と、右耳に到達する音成分の伝達特性とを畳み込むようにして与えたうえで合成し、左出力チャンネルのドライブユニットSPu−Lと右出力チャンネルのドライブユニットSPu−Rからそれぞれ出力させることとしている。そして、このようにして出力される音を聴取者Mが聴くことで、図25により示したとされる音源位置に応じた音像定位が知覚されることになるものである。
ところで、上記のようにして、図26に示した構成のヘッドフォン再生システムによっては、原理的には、5.1chサラウンドのチャンネル構成に対応する仮想的音像定位を聴くことが可能となるのであるが、現実には、音像定位が、希薄あるいは不自然になるなどして良好に知覚されない場合のあることが分かっている。
その原因の主たる要因として、1つには、左右の各耳に到達すべきチャンネルごとの音声成分を、合成器13a、13bを用いて音声信号の段階で電気的に合成していることが挙げられる。
5.1chサラウンドとしての本来の音響再生システムは、例えば図25に準じて各チャンネルのスピーカを配置し、これらのスピーカから、対応のチャンネル音声を再生出力させるようにして構成される。この場合、聴取者Mの左右の耳には、各チャンネルのスピーカから発せられて到達しようとする音成分が空間上で合成された上で鼓膜に伝わるようにされる。
例えば、チャンネル間で再生される音声は、相互に逆相、同相になるような状態となり得る。原理的に逆相の音同士は打ち消し合って聴こえなくなり、同相の音は強め合うのであるが、空間上で合成される場合には、周囲環境などの影響で、的確に打ち消し合ったり強め合ったりするようなことには成りにくく、このような現象がかえって豊かな音場感が得られることにつながっていると考えられている。しかしながら、このような位相関係の音同士が、音声信号の段階にて電気的に合成された場合には、ほぼ正確に打ち消し合ったり、あるいは強め合ったりすることになり、これが例えば不自然な聴こえ方になってしまうなどして、音場感が良好でないと知覚させる要因となっているものである。
また、実際の聴取者における個人差が大きく影響することも、音像定位感が良好でなくなることの、もう1つの主たる原因となる場合がある。
これまでに図20〜図26により説明したヘッドフォン再生システムにおいて用いられる伝達関数は頭部伝達関数といわれるもので、例えば音源から聴取者の鼓膜に到達するまでの音の経路についての伝達特性を表すものとされている。このために、頭部伝達関数においては、人の耳介により反射して鼓膜に到達するとされる特性成分も含むことになる。現実に、人の耳介の形状には個人差が有り、このような違いに対応させて頭部伝達関数を設定することは困難である。そこで、頭部伝達関数の設定にあたっては、しかるべき手法により、標準として設定した耳介形状を想定するようにされている。しかしながら、頭部伝達関数において、耳介形状が与える特性が占める割合は相応に高い。また、現実における人の耳介形状は、個人ごとに異なるものと考えて良いうえ、その個人差も相応に大きい。このために、例えば、標準として設定した耳介形状とかなり違った形状の耳介を持った聴取者には、設定した伝達関数による音とはかけ離れた音をきくことになり、結果、良好でない音像定位が知覚されることになるわけである。
そこで、本実施の形態としては、上記したような要因ができるだけ排除されるようにして、良好な仮想音像定位感が得られるように構成されたヘッドフォン再生システムを提供するようにされる。以降、このための構成について説明を行っていくこととする。
先ず、図1により、本実施の形態としてのヘッドフォン再生システムにおいて前提となる基本の音響モデルを示す。この図では、図22の場合と同様にして、聴取者M(リスニングポジション)の前方における左右対称の位置に、左音源Srcl、右音源Srcrをそれぞれ設定した場合を示している。
例えば図22に示した音響モデルでは、左音源Srcl、右音源Srcrから左右の各耳に到達する音の伝達関数Hll、Hlr、Hrr、Hrlは、音源位置から鼓膜に至る音の経路までに対応する頭部伝達関数であることとしており、従って、その測定点としては、鼓膜に対応した耳介内であるものとされている。
これに対して、本実施の形態としては、左音源Srcl、右音源Srcrから左右の各耳に到達する音の測定点について、空間測定範囲P1,P2として示される、左右の耳介の外側近傍となる空間上の位置範囲を設定することとしている。この空間測定範囲P1,P2においては、図2に示すようにして、各音源に対応する測定位置が設定されている。先ず、空間測定範囲P1においては、左音源Srclが左耳に到達する音の測定点Pllと、右音源Srcrが左耳に到達する音の測定点Prlが設定される。また、空間測定範囲P2においては、右音源Srcrが右耳に到達する音の測定点Prrと、左音源Srclが左耳に到達する音の測定点Plrが設定される。なお、これらの測定点に対する、水平方向(横の並び方向)及び垂直方向(高さ方向)、及び耳介からの距離等についての位置の設定は、図4により後述するようにしてヘッドフォン装置を構成することとした場合における、4つの各音を再生出力するためのドライブユニットの配置位置に対応して決められるものとされる。つまり、これらの測定点(Pll、Prl、Prr、Plr)は、対応する音のドライブユニットが配置される空間上の位置であることとされる。このようにして測定点を設定していることで、本実施の形態における、左音源Srcl、右音源Srcrから左右の各耳に到達する音の伝達関数としては、耳介に到達する直前までの空間経路に対応するものとされ、耳介の影響が排除されたものとして得られることになる。
なお、左音源Srclから左、右の各耳に到達する主音声成分、副音声成分と、右音源Srcrから右、左の各耳に到達する主音声成分、副音声成分について、図22では、それぞれHll、Hlr、Hrr、Hrlと表記したが、上記図1のようにして、本実施の形態で扱う耳介の影響が排除された伝達関数については、sHll、sHlr、sHrr、sHrlと表記することにする。
次に、図3により、本実施の形態のヘッドフォン音響再生システムの音声信号処理系の構成例として、上記図1の音響モデルに対応した基本構成を示す。
この図3の構成においては、入力信号として、上記図1の左音源Srclにて発せられる原音に対応した原音声信号Slと、同じ図22の右音源Srcrとして発せられる原音に対応した原音声信号Srとを入力するようにされている。
そのうえで、原音声信号Slについては、左音源Srclから左耳に到達する主音声成分と、右耳に到達する副音声成分とに対応させて2系統に分岐し、主音声成分に対応する系はフィルタ処理、遅延処理を特に施すことなく、ドライブユニットSPu−Lにより再生出力させることで、伝達関数sHllが畳み込まれたのと等価の音声を得るようにされる。
先の図23においては、ドライブユニットを含むハウジング部の構成により、ヘッドフォン装置により音声再生された段階で、主音音声成分の再生音声には、左右の各耳に到達するまでの経路に応じた伝達関数が近似的に与えられているものであり、従って、主音声成分に対応する系の音声信号についてのフィルタ処理、及び遅延処理を施すことなく省略できることを説明した。
本実施の形態においても、主音声成分に対応する系について、特にフィルタ処理、及び遅延処理を施さないことにより、伝達関数sHllが畳み込まれたのと等価の信号特性が与えられることとしているのは、上記の図23において、主音声成分に対応する系の音声信号について、フィルタ処理及び遅延処理を施していないことと同じ理由によるものである。
この点については、後述する、右音源Srcrの主音声成分に対応して原音声信号SrをドライブユニットSPu−Rから出力させる系についても同様とされる。
また、左音源Srclからの副音声成分に対応する系は、フィルタ11−f(L)、遅延器12−f(L)を経由させた上で、ドライブユニットSPu−f(L)により再生出力させるようにする。本実施の形態では、耳介の影響が排除された伝達関数が与えられるものの、1つの音源から左耳側に到達してしかるべき測定点にて測定される音の信号特性と、右耳側に到達して測定点にて測定される音の信号特性との間には、依然として、音の到達角度や到達方向の違いによる周波数特性差、到達時間差が生じるものであり、これが伝達特性の差としても表されるものである。そこで、フィルタ11−f(L)、遅延器12−f(L)によっては、左音源Srclからの主音声成分に対する信号特性差を与えることとして、これにより、伝達関数sHlrが畳み込まれたのと等価の信号特性を得るようにされる。
また、原音声信号Srについても、右音源Srcrから右耳に到達する主音声成分と、左耳に到達する副音声成分とに対応させて2系統に分岐させ、主音声成分に対応する系はフィルタ処理、遅延処理を特に施すことなく、ドライブユニットSPu−Rにより再生出力させ、伝達関数sHrrが畳み込まれたのと等価の音声を得る。
また、右音源Srcrからの副音声成分に対応する系は、フィルタ11−f(R)、遅延器12−f(R)を経由させて、右音源Srcrからの主音声成分に対する信号特性差を与え、ドライブユニットSPu−f(R)により再生出力させる。これにより、伝達関数sHrlが畳み込まれたのと等価の信号特性による音が再現される。
例えば、先に示した図23によるヘッドフォン再生システムの構成では、ドライブユニットは、左右の出力チャンネルごとに応じて、各1つのみとされおり、2つの音源から左耳に到達して聴こえる音に対応する音声信号と、右耳に到達して聴こえる音に対応する音声信号とを、それぞれ合成したうえで、左右の各出力チャンネルのドライブユニットSPu−L、SPu−Rにより出力させることとしていたものである。
これに対して本実施の形態では、左音源Srclと右音源Srcrの各音源から左耳側、右耳側に到達するとされる音に対応した音声信号を、左右の出力チャンネル(L,R)ごとに合成するのではなく、個々に独立したドライブユニットから出力させるようにしているものである。つまり、本実施の形態では、左音源Srclと右音源Srcrの各音源から左耳側、右耳側に到達するとされる音に対応した音声信号ごとに対応して、出力チャンネル、つまりドライブユニットSPu−Lが設けられるものである。なお、ここでは、ドライブユニットSPu−L、SPu−R、SPu−f(R)、SPu−f(L)ごとに対応して、出力チャンネルL,R,f(R),f(L)として示している。
図4は、上記図3に示した音声信号系の構成に対応したヘッドフォン装置の態様例として、左右のハウジング部におけるドライブユニットの配置構造例を模式的に示している。
この図に示されるようにして、先ず、ヘッドフォン装置の左ハウジング部1Lにおいては、ドライブユニットSPu−L、SPu−f(R)が設けられて、左耳により、これらのドライブユニットにて再生される音が聴こえるようにされる。また、右ハウジング部1Rにおいては、ドライブユニットSPu−R、SPu−f(L)が設けられて、右耳により、これらのドライブユニットにて再生される音が聴こえるようにされる。
そのうえで、左ハウジング部1Lにおけるドライブユニットの配置としては、先ず、ドライブユニットSPu−Lを、図2の測定点Pllに対応するとされる位置に対応させて配置させることとしている。この位置は、例えば耳に対して前方にも後方にも偏りが無いとされる基準位置(前後方向対応の基準位置)としてみなされる。ドライブユニットSPu−f(R)は、ドライブユニットSPu−Lに対して前方であって、例えば所定の距離差DS1だけ離れた測定点Prlに対応する位置に配置するようにされる。
右用ハウジング部1Rにおけるドライブユニットの配置も、上記左ハウジング部1Lに準じて、ドライブユニットSPu−Rを、図1の測定点Prrに対応するとされる前後方向対応の基準位置に対応させて配置させたうえで、ドライブユニットSPu−f(L)は、ドライブユニットSPu−Rに対して、距離差DS1だけ前方に離れた測定点Plrに対応する位置に配置する。
上記図3及び図4に示す本実施の形態としてのヘッドフォン再生システムの基本構成では、先ず、左音源Srclについては、左耳にて、ドライブユニットSPu−Lから出力される主音声成分を聴き取り、右耳にて、ドライブユニットSPu−f(L)から出力される副音声成分を聴き取るようにされる。このとき、ドライブユニットSPu−f(L)は、右耳に対して基準的に配置されるドライブユニットSPu−Rより前方に位置していることから、この副音声成分の音は前方から到来するようにして耳に到達することになる。これにより、聴取者は、左音源Srclの音については、左前方に定位するものとして知覚することができる。
同様にして、右音源Srcrについては、右耳にて、ドライブユニットSPu−Rから出力される主音声成分を聴き取り、左耳にて、ドライブユニットSPu−f(R)から出力される副音声成分を聴き取るようにされる。ドライブユニットSPu−f(R)も、左耳側において基準的に配置されるドライブユニットSPu−Lより前方に位置しているので、この副音声成分の音も前方から到来するようにして耳に到達することになり、右音源Srcrの音についても、右前方に定位するものとして知覚できることになる。つまり、左音源Srcl、右音源Srcrの音像定位を知覚することが可能とされる。
そのうえで、聴取者Mの左耳には、出力チャンネルLに対応する左音源Srclからの主音声成分と、出力チャンネルf(R)に対応する右音源Srcrからの副音声成分とが、左ハウジング部1L内の空間で合成されたうえで到達して聴こえることになる。同様にして、聴取者Mの右耳には、出力チャンネルRに対応する右音源Srcrからの主音声成分と、出力チャンネルf(L)に対応する左音源Srclからの副音声成分とが、右ハウジング部1R内の空間で合成されたうえで到達して聴こえることになる。
このようにして本実施の形態のヘッドフォン装置では、音源から各耳に到達するとされる出力チャンネルの音を、それぞれ独立したドライブユニットにより再生した上で、左右の各耳に近い空間で合成するようにしている。このために、例えば、音源から各耳に到達するとされる音に対応する音声信号を電気的に合成してから音声として出力させる場合のように、逆相、同相の信号同士が的確に打ち消し合ったり強め合ったりするような現象も解消される。これにより、より良好な音場感を得ることが可能になる。
また、本実施の形態のようにして、音源から各耳に到達するものとされる出力チャンネルごとの音が空間上で合成されてから耳に到達するようにされているということは、ドライブユニットから発せられた音は、空間上で合成された後に耳介にて反射などしてから鼓膜に到達するものである、ということがいえる。
従って、本実施の形態のようにして、音源から各耳に到達するものとされる出力チャンネルごとの音声信号について耳介の影響を排除した伝達特性(周波数特性、遅延時間差)を与えるようにすれば、この耳介に対応して変化する特性は、実際の聴取者個人の耳介により形成できることになる。このことは、例えば耳介の形状などの個人差によらず、良好な音像定位を感じることが可能になるということを意味している。
このようにして、本実施の形態のヘッドフォン再生システムは、これまでよりも良好とされる音像定位感が、より多くの人にとって得られるようにされているものである。
ところで、図3に示される遅延器12−f(R)、遅延器12−f(L)の遅延時間は、これまでにも述べてきているように、同じ音源位置から一方の耳に主音声成分が到達するまでの距離と、他方の耳に副音声成分が到達するまでの距離とに応じて決まる到達時間差を、副音声成分の音声信号に与えるためのものとされる。例えば図23に示される構成の場合であれば、一方の音源の主音声成分と、他方の音源の副音声成分の音は,音声信号の段階で合成されることから、遅延器によって上記の到達時間差をそのまま与えるようにすることがベストモードとなる。
しかしながら、本実施の形態では、図4に示しているように、例えば左ハウジング部1Lであれば、ドライブユニットSPu−LとドライブユニットSPu−f(R)の配置位置について、物理的な距離DS1が与えられているので、必然的に、この距離DS1に応じて、ドライブユニットSPu−Lから出力される左音源Srclの主音声が左耳に到達する時間に対して、ドライブユニットSPu−f(R)から出力される右音源Srcrの副音声が左耳に到達する時間の遅延が生じることになる。従って、ベストモードの到達時間差を得るようにするためには、左音源Srclから左耳に主音声成分が到達するまでの距離と、右耳に副音声成分が到達するまでの距離とに応じて決まる到達時間差から、上記距離DS1に応じた遅延時間を差し引いた分の時間を、遅延器12−f(R)に設定すべきことになる。
続いて、上記図1〜図4により説明した基本構成に基づいた、マルチチャンネルに対応するヘッドフォン音響再生システムの構成例について説明していくこととする。なお、ここでも、マルチチャンネル構成としては、5.1chサラウンドの規格に例に挙げる。
先ず、図5により、本実施の形態に対応する5.1chサラウンドの音響モデルを示す。
この図に示す音響モデルとしても,例えば図25において示したのと同様に、LFch、Cch、RFch、LSch、RSch、LFEchのそれぞれに応じた音源として、スピーカSP−LF、SP−C、SP−RF、SP−LS、SP−RS、SP−LFEが示されている。また、これらのスピーカの配置も,図25と同様となる。
ただし、本実施の形態では、5.1chサラウンドに対応するヘッドフォン音響再生システムを構成するのにあたり、各チャンネルの音源(スピーカ)から聴取者Mの左右の耳に到達するものとされる各音の伝達関数については、図1によっても説明したように、耳介の影響が排除されたものを用いるようにされる。つまり、左右の耳介の外側近傍において、各音に対応するドライブユニットが位置するとされる空間上の測定点の集合範囲である空間測定範囲P1、P2内にて設定した測定点にて測定される、各音源からの音の伝達関数を用いるものである。
この場合の空間測定範囲P1、P2における測定点の設定例は、図6に示されている。先ず、左耳に対応する空間測定範囲P1においては、スピーカSP−LFから到達する音に対応する測定点Plflを基準に、その前方にSP−Cから到達する音の測定点Pclを設定し、このさらに前方に、スピーカSP−RFから到達する音の測定点Prflを設定する。また、上記基準の測定点Plflの後方に対して、スピーカSP−LSから到達する音の測定点Plslを設定し、さらに後方に対して、スピーカSP−RSから到達する音の測定点Prslを設定している。
また、右耳に対応する空間測定範囲P2においては、スピーカSP−RFから到達する音に対応する測定点Prfrを基準に、その前方にSP−Cから到達する音の測定点Pcrを設定し、このさらに前方に、スピーカSP−LFから到達する音の測定点Plfrを設定する。また、上記基準の測定点Prfrの後方に対して、スピーカSP−RSから到達する音の測定点Prsrを設定し、さらに後方に対して、スピーカSP−RSから到達する音の測定点Plsrを設定している。
そして、ここでは図5に示されるようにして、各音に対応する伝達関数を下記のようにして表すこととしている。
sHlfl:スピーカSP−LFから主音声成分として左耳側(測定点Plfl)に到達する経路の伝達関数
sHlfr:スピーカSP−LFから副音声成分として右耳側(測定点Plfr)に到達する経路の伝達関数
sHcl:スピーカSP−Cから主音声/副音声成分として左耳側(測定点Pcl)に到達する経路の伝達関数
sHcr:スピーカSP−Cから副音声/主音声成分として右耳側(測定点Pcr)に到達する経路の伝達関数
sHrfl:スピーカSP−RFから副音声成分として左耳側(測定点Prfl)に到達する経路の伝達関数
sHrfr:スピーカSP−RFから主音声成分として右耳側(測定点Prfr)に到達する経路の伝達関数
sHlsl:スピーカSP−LSから主音声成分として左耳側(測定点Plsl)に到達する経路の伝達関数
sHlsr:スピーカSP−LSから副音声成分として右耳側(測定点Plsr)に到達する経路の伝達関数
sHrsl:スピーカSP−RSから副音声成分として左耳側(測定点Prsl)に到達する経路の伝達関数
sHrsr:スピーカSP−RSから主音声成分として右耳側(測定点Prsr)に到達する経路の伝達関数
続いて、図7により、本実施の形態のヘッドフォン音響再生システムとして、5.1chサラウンドに対応した信号系の構成例について説明する。
先ず、この構成では、5.1chサラウンドを構成する6つのチャンネル(LFch、Cch、RFch、LSch、RSch、LFEch)ごとについて、左耳と右耳とにそれぞれ到達する音成分に対応した12の出力チャンネル(LF、f(LF)、RF、f(RF)、C(L)、C(R)LS、f(LS)、RS、f(RS)、LFE(L)、LFE(R))を設けることとしている。そのうえで、ドライブユニットとしても、これらの出力チャンネルごとに対応して、ドライブユニットSPu−LF、SPu−f(LF)、SPu−RF、SPu−f(RF)、SPu−C(L)、SPu−C(R)、SPu−LS、SPu−f(LS)、SPu−RS、SPu−f(RS)、SPu−LFE(L)、SPu−LFE(R)を設けるようにされている。
そのうえで、5.1chサラウンドとしての各チャンネルの音声信号ごとの信号系を下記のようにして形成するようにされる。
なお、図7においては、計7つのフィルタ11と、計5つの遅延器12が示されている。これらの全てのフィルタ11及び遅延器12を備えた構成してもよいのであるが、本実施の形態としては、これらのうちで、破線により示すフィルタ11及び遅延器11については、後述するようにして省略することが可能である。そこで、ここでの図7の信号系についての説明では、破線で示されているフィルタ11及び遅延器12は、省略されているものとして説明を行っていく。
先ず、この図7に示す信号系の構成においては、図3に対応する基本構成部分を、LFchとRFchに対応した信号系として備える。つまり、図3と図7とのチャンネルの対応関係として、入力ソース側については、図3の左音源Srcl、右音源Srcrがそれぞれ図7のLFch、RFchに対応し、出力チャンネル側については、図3のL、f(L)、R、f(R)がそれぞれ、LF、f(LF)、RF、f(RF)に対応する。
上記した対応関係に応じて、先ず、LFchの原音声信号は2系統に分岐され、一方の系は、主音声成分として、フィルタ処理、遅延処理が施されることなく、直接的にドライブユニットSPu−LFに入力されるようにしている。この系により、伝達関数sHlflが与えられるものとしている。また、他方の系は、フィルタ11−f(LF)、遅延器12−f(LF)を経由することで、上記主音声成分に対する差分の信号特性が与えられて、上記ドライブユニットSPu−f(LF)に入力されるようになっており、これにより、伝達関数sHlfrが畳み込まれるようにして与えられた音声が再生されるようにする。
また、LFchに対して左右対象となる音源であるRFchの原音声信号も、主音声成分と副音声成分の2系統に分岐され、主音声成分の系は、フィルタ処理、遅延処理が施されることなく、直接的にドライブユニットSPu−RFに入力されるようにして、伝達関数sHrfrが与えられる。また、副音声成分の系は、フィルタ11−f(RF)、遅延器12−f(RF)を経由することで、上記主音声成分に対する差分の信号特性が与えられて、上記ドライブユニットSPu−f(LF)に入力されており、これにより、伝達関数sHrflが与えられた音声が再生されるようにする。
そして、この基本構成部分に対して、下記のようにして、残るLSch、RSch、Cch、LFEchの信号系が備えられることになる。
Lschの原音声信号は、主音声成分についてはフィルタ処理などを介することなく直接的にドライブユニットSPu−LSに入力されており、これにより、伝達関数sHlslが与えられた音声が再生されるようにする。また、副音声成分については、主音声成分に対する信号特性差を与えるためにフィルタ11−f(LS)を経由させてドライブユニットSPu−f(LS)に入力させることで、伝達関数sHlsrが与えられた再生音声を得る。
また、LSchに対して左右対称となるRschの原音声信号は、主音声成分についてはフィルタ処理などを介することなく直接的にドライブユニットSPu−RSに入力されており、これにより、伝達関数sHrsrが与えられた音声が再生されるようにする。また、副音声成分については、主音声成分に対する信号特性差を与えるためにフィルタ11−f(RS)を経由させてドライブユニットSPu−f(RS)に入力させることで、伝達関数sHrslが与えられた再生音声を得る。
また、Cchの原音声信号も、2分岐させることとして、一方の系は、ドライブユニットSPu−C(L)に直接的に入力させ、他方の系はドライブユニットSPu−C(R)に直接的に入力させるようにしている。先に図26により説明したのと同様に、Cchは、聴取者Mの正面前方にて定位する音源であるために、聴取者Mの左右の耳に対応した位置(測定点P1,P2)にて観測される音について、主音声成分と副音声成分とに対応した信号特性差は生じないとされ、各音の伝達関数sHcl、sHcrとしても同等であるとされる。このために、上記のようにして、左右のハウジング部に対応するドライブユニットSPu−C(R)、SPu−C(L)に対して、同じCchの原音信号を入力させることとしているものである。
また、LFEchの音声については、図26によっても説明したように、指向性が鈍い。そこで、左右のハウジング部から同じ音が出力されていれば充分であるとの考え方をとることとして、ここでは、LFEchの原音声信号は、2系統に分岐して、各系の信号を、左右のハウジング部に対応するドライブユニットSPu−LFE(L)、SPu−LFE(R)に対して、直接的に入力させることとしているものである。
ここで、図7に示される12個のドライブユニットの音響再生特性としては、同一とされるものを用いてよい。ドライブユニットの音響再生特性が同一であれば、フィルタ11の通過帯域特性をはじめ、信号処理系の設計が容易になる。ただし、LFEchに対応するドライブユニットSPu−LFE(L)、SPu−LFE(R)については、他のドライブユニットが再生すべき周波数帯域と比較すると、相当に低い帯域を再生することが要求されることから、このような低域再生に適合するような音響再生特性のものとしてよい。
ちなみに、本実施の形態の実際としては、例えば、LFEch以外に対応する10個のドライブユニットについては同じ音響再生特性のものを採用し、LFEchに対応する2つのドライブユニットについては、より口径を大きくして低音再生に音響再生特性のものを用いることとしている。
続いて、上記図7に示した信号系の構成に対応した、ヘッドフォン装置におけるドライブユニットの配置例について、図8〜図10を参照して説明する。
先ず、図8と図9に示すようにして、ヘッドフォン装置の左ハウジング部1Lにおいては、前方から後方にかけて、水平仮想線H上に発音部の中心位置が沿うようにして、ドライブユニットSPu−f(RF)、SPu−C(L)、SPu−LF、SPu−LS、SPu−f(RS)を配置するようにされる。また、ドライブユニットSPu−LFE(L)については、この場合には、ドライブユニットSPu−C(L)、SPu−LFが配置される位置の下側に配置させるようにしている。
また、ヘッドフォン装置の右ハウジング部1Rにおいては、前方から後方にかけて、水平仮想線H上に発音部の中心位置が沿うようにして、ドライブユニットSPu−f(LF)、SPu−C(R)、SPu−RF、SPu−RS、SPu−f(LS)を配置するようにされる。また、ドライブユニットSPu−LFE(R)については、ドライブユニットSPu−C(R)、SPu−RFが配置される位置の下側に配置させるようにしている。
上記した配置の態様では、先ず、LFEch以外のチャンネルに対応するドライブユニットが、左右のハウジング部において、同じ水平仮想線H上に沿うようにして配置されている。この配置態様では、5.1chサラウンドとしての各チャンネル音源(スピーカ)の配置位置関係に対応したものとなっている。
つまり、例えば左ハウジング部1Lの側であれば、LFchの主音声成分に対応するドライブユニットSPu−LFの後方に、LSchの主音声成分に対応するドライブユニットSPu−LSを配置することとしている。また、ドライブユニットSPu−LFの前方に、Cchに対応するドライブユニットSPu−C(L)を配置している。このようにして主音声成分、及び主音成分に相当するチャンネルの音に対応するドライブユニットについては、チャンネル音源の位置に対応して配置されていることが分かる。また、副音声成分に対応するドライブユニットのうち、前方の音源に対応するドライブユニットSPu−f(RF)については、基準位置にあるドライブユニットSPu−LFに対して前方側に配置するようにされ、後方の音源に対応するドライブユニットSPu−f(RS)については、基準位置より後方側に配置するようにされる。
また、右ハウジング部1Rの側においては、左ハウジング部1Lとは左右対称となる位置関係により、ドライブユニットSPu−f(RF)、SPu−C(R)、SPu−LF、SPu−LS、SPu−f(RF)を配置するようにしており、従って、右ハウジング部1Rの側においても、主音声成分に対応するドライブユニットについては、チャンネル音源の位置に対応して配置され、かつ、副音声成分として前方の音源に対応するドライブユニットSPu−f(LF)については、基準位置より前方側に配置され、後方の音源に対応するドライブユニットSPu−f(LS)は基準位置より後方側に配置されるようになっている。
この場合においては、上記もしているように、左右のハウジング部において配置されるドライブユニットのうちで、それぞれドライブユニットSPu−LF、SPu−RFの配置位置を基準としている。つまり、ドライブユニットSPu−LF、SPu−RFについては、左右それぞれの耳に出力音声が到達する位置、方向として、前方にも後方にも偏っていないとされる位置が設定される。この位置は、例えば通常のL,Rステレオとしてのヘッドフォン装置を構成することとした場合の、左右のドライブユニットの配置態様と同等になるものとされる。そのうえで、他のドライブユニットについての前後方向における位置関係が設定されているものである。
そのうえで、さらに、ドライブユニットSPu−f(RF)、SPu−f(LF)が、左右の各ハウジング部において、基準位置より前方にあることで、LFch、RFchとしての音像が前方のしかるべき位置に定位して聴こえることとなるのは、先に図4により説明したとおりである。
また、ドライブユニットSPu−f(LF)、SPu−f(RF)が、左右の各ハウジング部において、基準位置より後方にあることによっては、図4の説明に準じて、後方のしかるべき位置にて音像が定位して聴こえることになるものである。
そして、上記したLF,RF,LSch、RSchの音とともに、Cch、LFEchの音がハウジング部内にて空間的に合成されたうえで、左右の各耳に到達してくることになる。この結果、聴取者には、例えば図5に示したチャンネル構成に応じた音源位置による音像定位が明確に感じられることになる。
このようなLFEch以外のチャンネルに対応するドライブユニットの配置は、例えば図5に示した音響モデル(聴取環境のモデル)におけるチャンネルの音源(スピーカ)の配置パターンに従ったものになっているといえる。つまり、図5のスピーカの配置では、先ず左耳に関しては、この左耳を、前方側から後方側にかけて、スピーカSP−RF、SP−C、SP−LF、SP−LS、SP−RSの順で取り巻いているものとしてみることができる。左ハウジング部1Lにおけるドライブユニットの配置も、上記スピーカの取り巻き順に対応して、前方から後方にかけて、ドライブユニットSPu−f(RF)、SPu−C(L)、SPu−LF、SPu−LS、SPu−f(RF)の順で配置されている。
同様に、右耳に関しては、左耳とは対称に、前方側から後方側にかけて、スピーカSP−LF、SP−C、SP−RF、SP−LS、SP−RSの順で取り巻いているものとしてみることができるる。そして、右側ハウジング部1Rにおいては、このスピーカの取り巻き順に対応して、ドライブユニットSPu−f(LF)、SPu−C(R)、SPu−RF、SPu−RS、SPu−f(LF)の順で配置されている。
さらに、図8によれば、各ハウジング部において、仮想線H上に沿って配置されるLFEch以外に対応する5つのドライブユニット([SPu−f(RF)、SPu−C(L)、SPu−LF、SPu−LS、SPu−f(RF)][ドライブユニットSPu−f(LF)、SPu−C(R)、SPu−RF、SPu−RS、SPu−f(LF)]については、それぞれ、前後方向において平面的に配置されるのではなく、耳を囲む曲面に沿うようにして角度が与えられている。これにより、例えばドライブユニットの配置位置関係が、5.1chサラウンドのチャンネル構成における音源位置により近づくようにされ、その音像定位感がより明確になるようにされている。
なお、上記のようにして、曲面的にドライブユニットを配置していく場合における取り付け角度などについては、実際に得られる音像定位感などを検証して設定してよいが、例えば、耳の穴に対応して決めた或る位置(音声到達点Ap)に対して、できるだけその音軸が向くようにした設定が、好ましい態様の1つとなる。
ところで、この図9のようにして、ドライブユニットを聴取者の前後方向に沿って配置することによっては、次のような作用も得られる。
例えば左ハウジング部1Lにおける、RFchの副音声成分に対応するドライブユニットSPu−f(RF)と、LFchの主音声成分に対応するドライブユニットSPu−LFとの位置関係に着目してみると、左耳に対しては、ドライブユニットSPu−LFに対してドライブユニットSPu−f(RF)のほうが遠い位置に在ることになる。
このことは、例えば、先に図4にて説明した距離DS1が、ドライブユニットSPu−LFに対するドライブユニットSPu−f(RF)との間に存在する、ということを意味する。従って、ドライブユニットSPu−LFから左耳に音が到達する時間よりも、ドライブユニットSPu−f(RF)から左耳に音が到達する時間のほうが長くなるという時間差を生じる。ドライブユニットSPu−LFと、これと左右対称のドライブユニットSPu−RFとについての耳までの音の到達時間は同等である。副音声成分の信号特性としては、主音声成分に対する到達時間差を与えることが必要であるが、上記したことからすると、この到達時間差を、ドライブユニットSPu−f(RF)とドライブユニットSPu−Lとの位置関係により、稼ぐことができていることになる。これにより、後述もするようにして、本実施の形態としては、ドライブユニットSPu−f(RF)により音声を出力させる系における遅延器の省略が可能となり、簡易な信号処理系の構成を実現できるものである。
このことと同様の理由によって、右ハウジング部1RにおけるドライブユニットSPu−f(LF)も、ドライブユニットSPu−f(RF)と同じ位置関係により配置されている。また、左ハウジング部1LにおけるドライブユニットSPu−f(RS)も、ドライブユニットSPu−LSよりも後方に配置され、同様にして、右ハウジング部1RにおけるドライブユニットSPu−f(LS)も、ドライブユニットSPu−RSよりも後方に配置される。
なお、先に図6に示した空間測定範囲P1、P2における測定点は、上記図8及び図9に示される、ドライブユニットの空間的な配置位置に対応して設定されているものとされる。つまり、左耳に対応する空間測定範囲P1内の測定点Prfl、Pcl、Plfl、Plsl、Prslは、それぞれ、左ハウジング部1LにおけるドライブユニットSPu−f(RF)、SPu−C(L)、SPu−LF、SPu−LS、SPu−f(RS)の配置位置との対応を考慮して設定されるべきものとなる。同様にして、右耳に対応する空間測定範囲P2内の測定点Plfr、Pcr、Prfr、Prsr、Plsrは、それぞれ、右ハウジング部1RにおけるドライブユニットSPu−f(LF)、SPu−C(R)、SPu−RF、SPu−RS、SPu−f(LS)の配置位置との対応を考慮して設定されるべきものとなる。
また、図10により、ハウジング部内におけるドライブユニットの配置態様の変形例を示す。なお、この図において図9と同一部分には同一符号を付して説明を省略する。
図10においては、先ず、左ハウジング部1Lにおいて備えられるLFEch以外のチャンネルに対応する5つのドライブユニットのうちで、ドライブユニットSPu−f(RF)、SPu−C(L)、SPu−LFについては、図9と同様の仮想水平線H上に沿って配置させているのに対して、ドライブユニットSPu−LS、SPu−f(RS)については、仮想水平線Hよりも所定だけ高い位置に設定された仮想水平線Hu上に沿うようにして配置させている。同様にして、右ハウジング部1Rにおいても、ドライブユニットSPu−f(LF)、SPu−C(R)、SPu−RFについては仮想水平線H上に沿って配置させ、ドライブユニットSPu−RS、SPu−f(LS)については、仮想水平線Hu上に沿うようにして配置させている。
つまり、5.1chサラウンドのチャンネル構成においては、聴取位置に対して位置するとされるLSch、RSchを音源とする主音声成分、副音声成分に対応するドライブユニットを、他のチャンネルのドライブユニットよりも高い位置となるように設定しているものである。
例えば、実際の5.1chサラウンドなどのマルチチャンネル構成に対応したスピーカシステムにより音響再生を行う場合においては、聴取位置よりも後ろの位置に配置されるチャンネルのスピーカを、聴取位置に対して前方となる位置に配置されるチャンネルのスピーカよりも若干高い位置に設置すると、良好な音像定位感の得られることが経験的に知られている。上記図10に示したドライブユニットの配置例は、このことを応用したものであり、これにより、本実施の形態のヘッドフォン装置としても、より良好な音場を得ることが可能となるものである。
なお、この図10に示すようにして、ドライブユニットの配置位置を高さ方向に変更した場合には、空間測定範囲P1、P2内の各測定点についての高さ方向の位置が変更設定されるべきことになる。
ところで、先に述べたように、先の図7についての説明は、破線により示したフィルタ11、遅延器12などが省略されているものとした、簡易化した構成であることを前提としてはいるが、図7に示される信号系においては、LFch、RFch、LSch、RSchにおける副音声の系について、主音声との周波数特性差を与えるためのフィルタ11が省略されることなく備えられている。このフィルタ11については、例えばデジタルフィルタにより構成することができるが、信号処理系についてできるだけ簡易化、低コスト化が図られるようにすることを考慮した場合には、フィルタ11としてアナログのフィルタを用いることも考えられる。
図11は、アナログ回路によるフィルタ11の構成例を示している。
この図に示おいては、先ず、信号が入力される初段においてインダクタL1が直列に挿入されており、このインダクタL1の後段に対して、順次、フィルタ部11a、11b、11cが接続されて成るものとしている。フィルタ部11aは、インダクタL2、抵抗R2、コンデンサC2から成る直列回路と、インダクタL3、抵抗R3、コンデンサC3から成る並列回路を図示するようにして接続して形成される。また、フィルタ部11bは、インダクタL4、抵抗R4、コンデンサC4から成る直列回路と、インダクタL5、抵抗R5、コンデンサC5から成る並列回路を図示するようにして接続して形成される。また、フィルタ部11cは、インダクタL6及び抵抗R6から成る並列回路と、抵抗R7、コンデンサC7から成る直列回路とを、図示するようにして接続して成る。
図12は、主音声の周波数特性を基準のフラットな特性であるとして設定した場合における、副音声の周波数特性の例を示すものである。この副音声の周波数特性は、特性部分Aとして示すようにして、先ずは、低域から高域となっていくのに応じて緩やかに電圧(振幅)が低下していき、次いで、特性部分B,Cとして示すように、中域における2つの或る周波数のポイントで、ディップが生じるものとなる。これより高い帯域では、特性部分Dとして示すように、緩やかに電圧が低下していく。
図11のフィルタ11は、主音声成分に対応した特性の音声信号(原音声信号)を入力して、図12に示す信号特性を与えるためのものとされ、インダクタL1により、特性部分Dの特性を与え、フィルタ部11aにより特性部分Bの特性を与え、フィルタ部11bにより特性部分Cの特性を与え、フィルタ部11cにより特性部分Aの特性を与えるようにするものである。
なお、図11に示される、アナログ回路としてのフィルタ11の構成例はあくまでも一例であり、例えば図12に示すような特性が実用上許容される範囲で得られるようにされるのであれば、他の回路構成が採られてかまわないものである。
また、5.1chサラウンドに対応したヘッドフォン音響再生システムを構成する場合においては、厳密には、先に図26にても説明したように、例えばLFch、RFchを基準にしたとすると、この基準のチャンネルに対する、他のチャンネル(Cch、LSch、RSch)の音の信号特性差を与えて、しかるべき伝達関数が畳み込まれた音を得ることが必要である。
しかしながら、図7の構成では、Cch、LSch、RSchについては、主音声成分に対するフィルタは省略されている。つまり、LFch、RFchの音に対する信号特性差を与えるフィルタが省略されているものである。
これも、本実施の形態では、ハウジング部において、各出力チャンネルに応じたドライブユニットが個別に配置されていることによるものである。つまり、本実施の形態では、先に図8により説明したようにして、例えば5.1chサラウンドを形成する各チャンネルの音源(スピーカ)位置に対応させた配置位置関係により、ドライブユニットを配列することとしている。このことが、良好な音像定位が得られることの主要な要因となっている。即ち、ハウジング部内におけるドライブユニットの配置位置関係によって、例えばLFch、RFchの音に対する信号特性差を与えることと等価の作用が得られているものである。図7との対応であれば、破線により示している、Cch、LSch、RSchのフィルタ11−C、11−LS、11−RSについて、実際の回路としてはこれらを省略しているが、上記の理由により、これらのフィルタ11を挿入しているのと等価の構成が得られている、ということになる。
また、例えば図3に示した基本構成の下では、副音声成分の系に対しては、フィルタ11とともに、遅延器12が備えられている。前述のように、遅延器12は、音源から一方の耳に主音声成分が到達するまでの時間に対する、他方の耳に副音声成分が到達するまでの時間の差(ここでは「主・副音声間到達時間差」という)を作り出すことを主たる目的として設けられる。しかしながら、図7に示される簡易信号処理系としての構成では、LFch、RFch、LSch、RSchの各副音声の系について、この遅延器12が省略された形態が示されている。つまり、本実施の形態のヘッドフォン音響再生システムでは、下記のようにして、副音声成分を出力する系そのものにより相応の遅延時間を得るようにされており、このために遅延器を省略可能としている。
先ず、副音声成分を出力すべき系においては、上記のようにして、主音声成分に対する周波数特性差を与えるためのフィルタ11が備えられる。一般的なこととして、信号がフィルタを通過することによっては、入力信号に対する位相差が生じる。この位相差は、信号の遅延としてみることができる。つまり、副音声成分の音声信号は、フィルタ11を通過することで遅延時間が与えられる。
また、副音声を出力すべきドライブユニットは、図4、図8などにより示したように、ハウジング部において、基準となるチャンネルのドライブユニット(SPu−L、SPu−R)(SPu−LF、SPu−RF)に対して、或る一定の距離を隔てるようにして配置される。これにより、例えば図8の右ハウジング部1R側を例に採れば、基準となるドライブユニットSPu−RFから右耳までの音の到達時間に対して、副音声成分に対応するドライブユニットSPu−f(LF)、SPu−f(LS)から右耳までのそれぞれの音の到達時間は、ドライブユニットSPu−RFの配置位置からドライブユニットSPu−f(LF)、SPu−f(LS)の配置位置までの距離に応じた遅延時間を持つことになる。ここで、ドライブユニットSPu−RFから右耳までの音の到達時間が、左ハウジング部1L側における、ドライブユニットSPu−RFから左耳までの音の到達時間と同等であるとすれば、上記の遅延時間が、即ち、主・副音源間到達時間差となる。そこで、このようにしてドライブユニットの配置位置に応じて得られる遅延時間が、実際に遅延器12により設定すべき遅延時間に対して許容範囲内の誤差に収まるようであれば、その系における遅延器12を省略することが可能となるわけである。
なお、図7においては、Cchの系についても、破線で示すようにして、遅延器12−Cを省略した形態が示されている。Cchの系は、左右の耳に到達する音の間での信号特性差は存在しないものとして扱うことができるが、例えば基準となるLFch、RFchの主音声成分に対する信号特性差として、LFch、RFchの音源から左右の耳に音が到達する各時間に対する、Cchの音源から左右の耳に音が到達する各時間との差も含まれることになる。なお、このようにして異なるチャンネルの音源から同じ片側の耳に到達する音の時間差については「チャンネル間到達時間差」という。遅延器12−Cは、本来、Cchと、LFch及びRFchとの間についてのチャンネル間到達時間差を正確に発生させるためのものであるが、この遅延器12−Cが省略可能とされているのは、これも、ドライブユニットの配置位置により可能となっているものである。
つまり、左右のCchに対応するドライブユニットSPu−C(L)、SPu−C(R)は、図8に示すように、それぞれ、ドライブユニットSPu−LF、SPu−RFの位置を基準として、その前方に対して一定の距離を隔てて配置されている。これにより、左ハウジング部1L側では、ドライブユニットSPu−LF、ドライブユニットSPu−C(L)のそれぞれから左耳に到達する音についての時間差が生じる。つまり、CchとLFchとの間のチャンネル間到達時間差が生じているものとしてみることができる。同様に、右ハウジング部1R側においても、ドライブユニットSPu−RF、ドライブユニットSPu−C(R)から右耳に到達する時間差により、CchとLFchとの間のチャンネル間到達時間差が生じているものとしてみることができる。これにより、遅延器12−Cを省略しても、これを備えたことと等価の信号特性を得ることを可能としている。
ところで、上述したチャンネル間到達時間差の設定による遅延回路の省略は、CchとLFch、及びCchとRFchによる、左右それぞれにおける2つのチャンネル間のみに関してのものとなっている。
しかし、上記のようなチャンネル間到達時間差は、例えば室内環境などでマルチチャンネル対応のスピーカを実際に配置して音響再生する場合には必然的に生じるものであるといえる。このことからすれば、できるだけ多くのチャンネル間で、できるだけ適切な到達時間差が設定できるようになれば、本実施の形態のヘッドフォン音響再生システムにより再生されるサラウンド音声は、より臨場感の豊かな良質なものとすることができるといえる。
このためには、例えば、しかるべきチャンネルの音声のドライブユニットに対応する信号系において、チャンネル間到達時間差を設定するための遅延器を設け、この遅延器に対して、予め求めたチャンネル間到達時間差に応じた所要の遅延時間を設定することが考えられる。
しかし、これまでに述べてきたように、遅延器12の省略により得られる低コスト化、音声信号処理回路系の簡易化などの効果が得られることを考慮すれば、遅延器を付加することなく、チャンネル間到達時間差が設定できるようにすることが好ましい。
そこで、本実施の形態としては、以下に述べるようにして、ヘッドフォン装置に対してチャンネル間到達時間差を設定する。
図13(a)には、ITU勧告(ITU-R BS.775-1)に基づいた、聴取位置(リスニングポジションLtp)と5.1chサラウンドでの各チャンネルの音源位置との関係が示されている。ただし、LFEchについては、その音声の定位感が希薄であることから、ここでの図示は省略している。
ここでは、Cchの音源位置に対するLFch、RFchの各音源位置の見開き角度(距離DS-Cを示す直線と距離DS-LF、DS-RFを示す直線の各々とが成す角度)は30°であり、Cchの音源位置に対するLSch、RSchの各音源位置の見開き角度(距離DS-Cを示す直線と距離DS-LS、DS-RSを示す直線の各々とが成す角度)は120°であるものと規定している。
通常、リスニングポジションLtpに居るとされる聴取者と、各チャンネル(Cch、LFch、RFch、LSch、RSch)の音源(スピーカ)との距離(音源距離)は、図13(a)において破線で示す、DS-C、DS-LF、DS-RF、DS-LS、DS-RSによりそれぞれ表すようにされる。ここで、これらの音源距離DS-C、DS-LF、DS-RF、DS-LS、DS-RSは、各チャンネルからの直接音がリスニングポジションLtpに到達してくるまでの距離としてみることができる。また、リスニングポジションLtpから各チャンネルの音源までの距離は等しいことから、これらの音源距離DS-C、DS-LF、DS-RF、DS-LS、DS-RSの長さは同じとなる。
しかし、人の耳は頭部の左右の横側に在ることから、現実においては、リスニングポジションLptに居るとする聴取者の左耳と右耳とは、リスニングポジションLtpとなる中心点から物理的に或る距離だけ離れて位置することになる。これは、各チャンネルの音源から発せられた音声が現実にリスニングポジションLtpに居る聴取者の耳に到達するのにあたっては、その到達位置が、中心点であるリスニングポジションLtpから、頭部の中心から耳までの長さ分、左右の方向にずれることを意味する。
そこで、図13(a)においては、右耳に対応して各チャンネルの音源から発せられた音が到達してくる位置として、音声到達点Apを設定することとした。なお、この場合には、外耳の入り口に対応する耳の穴を円形形状として捉えたときの、その中心付近の位置を音声到達点Apとして設定している。これは、例えば外耳道から鼓膜までの経路については、各ドライブユニットからの音が共通に通過することになるので差分は生じないとの想定に基づいたものである。
そして、上記のようにして音声到達点Apを設定したとすると、各チャンネル(Cch、LFch、RFch、LSch、RSch)の音源から直接音が音声到達点Apに到達してくる距離(音源距離)DS-Cr、DS-LFr、DS-RFr、DS-LSr、DS-RSrは、同じ長さには成らずに、リスニングポジションLtpとなる中心点から右側にずれた距離に応じて、それぞれが異なる長さとなる。
図13(b)は、図13(a)に示される音源距離DS-Cr、DS-LFr、DS-RFr、DS-LSr、DS-RSrとしての直線を並べて比較したものである。この図からも分かるように、音源距離DS-Cr、DS-LFr、DS-RFr、DS-LSr、DS-RSrの間での長さの大小関係については、
DS-RSr<DS-RFr<DS-Cr<DS-LFr<DS-RFr<DS-LSr
となる。
なお、図13においては、中心点であるリスニングポジションLtpから各チャンネルまでの音源の距離を1600m、リスニングポジションLtpから右に100mmの距離を経た位置を音声到達点Apとして設定している。すると、音源距離DS-Cr、DS-LFr、DS-RFr、DS-LSr、DS-RSrの実際の長さは、それぞれ、
DS-Cr=1597mm
DS-LFr=1638mm
DS-RFr=1554mm
DS-LSr=1676mm
DS-RSr=1510mm
となる。
また、この場合において、最も短くなる音源距離DS-RSrを基準(+0mm)とすると、音源距離DS-Cr、DS-LFr、DS-RFr、DS-LSr、DS-RSr間の差(チャンネル間距離差)は、
DS-Cr=+87mm
DS-LFr=+128mm
DS-RFr=+44mm
DS-LSr=+166mm
DS-RSr=+0mmmm
のようにして表される。
また、自明なことなので図示してはいないが、左耳対応の音声到達点の位置、及び、この左耳対応の音声到達点と各チャンネルの音源との距離の関係については、上記図13に示した、右耳対応の音声到達点Apと、上記の音源距離に対して左右対称となる。
ここで、上記の音源距離DS-Cr、DS-LFr、DS-RFr、DS-LSr、DS-RSr間の差(チャンネル間距離差)は、各チャンネルの音源からの直接音についての到達時間差、即ちチャンネル間到達時間差に対応するものとなる。
このことは、ハウジング部内における各チャンネル対応のドライブユニットから耳までの各距離について、例えば、上記図13に示される音源距離DS-Cr、DS-LFr、DS-RFr、DS-LSr、DS-RSr間での距離差に準じた長短差が与えられるようにして上記各ドライブユニットを配置すれば、その結果として、チャンネル間到達時間差を設定できる、ということを意味している。
そこで、本願発明者は、この点に着目して、ハウジング部(1R、1L)におけるドライブユニットの配置についての検討を行った。この検討を行った結果の所産として得られた、本実施の形態としてのドライブユニット配置の代表的な例について、以下、説明を行っていく。
なお、本実施の形態では、上記図13において設定したリスニング環境(聴取環境)を目標たる環境として想定し、これに基づいたドライブユニット配置の設定を行うこととしている。また、LFEchについては定位感であるとか他のチャンネルとの到達時間差による聴こえ方の違いなどが希薄であることから、LFEchのドライブユニットの配置位置設定については自由度が高い。このために、以降の説明では、LFEch以外のチャンネルに対応するドライブユニット配置について言及する。
また、以降のドライブユニット配置の説明は、図13に対応して、右ハウジング部1R内のドライブユニットSPu−f(LF)、SPu−C(R)、SPu−RF、SPu−RS、SPu−f(LS)の配置を示した図に基づいて行うが、左ハウジング部1Lについても、右ハウジング部1R側に対して左右対称となるようにして、ドライブユニットSPu−f(RF)、SPu−C(L)、SPu−LF、SPu−LS、SPu−f(RF)を配置するものである。
図14は、本実施の形態としてのドライブユニット配置の第1例を示している。図14(a)は、右ハウジング部1R側におけるドライブユニット配置を平面方向からみた図であり、図14(b)は、ドライブユニット配置を、右ハウジング部1Rのハウジング部2Rの内側からみた斜視図である。
なお、この図においては、ドライブユニットの配置は、図9に示したように、水平仮想線H上にドライブユニットSPu−f(LF)、SPu−C(R)、SPu−RF、SPu−RS、SPu−f(LS)を配置し、ドライブユニットSPu−LFE(R)を水平仮想線Hよりも下側に配置する例を基にしている。この点については、第2例以降のドライブユニット配置においても同様である。
また、図14(a)及び後述する図15(a)、図16(a)においては、ドライブユニットの配置位置の相違が視覚的に分かりやすくなるように、右ハウジング部1Rに対して、所定の半径サイズの円周Oと、この円周Oの直径となる直線Lとを破線により示している。
図14(a)(b)に示されるように、この場合には、お椀型の曲面形状を有するハウジング内壁部4Rの面において、ドライブユニットSPu−f(LF)、SPu−C(R)、SPu−RF、SPu−RS、SPu−f(LS)の振動板(開口部)のカバー部分(振動板カバーcvr)が表出するようにして取り付けられる。この際、各ドライブユニットは、その音軸が、右耳における所定位置に対応して設定した音声到達点Apの方に向くようにして取付の向きが調整される。
なお、前後方向に沿ったドライブユニットの配置位置関係は、これまでに図8以降により述べてきたものと同様である。つまり、右ハウジング部1Rの前から後にかけて、ドライブユニットSPu−f(LF)、SPu−C(R)、SPu−RF、SPu−RS、SPu−f(LS)の順となる。このドライブユニットの配置位置関係は、例えばITU勧告(ITU-R BS.775-1)に示される音源(スピーカ)の配置位置関係を反映したものであるため、本実施の形態におけるドライブユニットの配列パターンに関して基本的なものとなる。
そのうえで、第1例としては、例えばドライブユニットSPu−RFを、直線Lに対して図示するような関係となる位置に配置したうえで、残るドライブユニットSPu−f(LF)、SPu−C(R)、SPu−RS、SPu−f(LS)について、円周Oの曲線に沿う方向(前後方向)における位置を調整して設定した。例えば、先に図8、図9などに示したドライブユニットの配置は、前後方向(水平仮想線H)に沿ってほぼ等間隔で位置するような態様となっていたが、図14には、ドライブユニットSPu−RFに対して、ドライブユニットSPu−RS、SPu−f(LS)の組が、相応に離れて後方に位置しているような態様となっている。
例えばこのようなドライブユニットの位置設定により、ドライブユニットSPu−f(LF)、SPu−C(R)、SPu−RF、SPu−RS、SPu−f(LS)のそれぞれから右耳の音声到達点Apに至るまでの距離(ユニット距離)Dflf、Dcr、Drf、Drs、Dflsについて、図13の音源距離DS-Cr、DS-LFr、DS-RFr、DS-LSr、DS-RSrの間での距離差に準じた関係を得ようとするものである。
確認のために述べておくと、ユニット距離Dflf、Dcr、Drf、Drs、Dflsは、図13における音源距離DS-LFr、DS-Cr、DS-RFr、DS-RSr、DS-LSrにそれぞれ対応する。
なお、ここでの「ユニット距離Dflf、Dcr、Drf、Drs、Dflsについての、図13の音源距離DS-Cr、DS-LFr、DS-RFr、DS-LSr、DS-RSrの間での距離差に準じた関係」とは、ユニット距離Dflf、Dcr、Drf、Drs、Dflsの間での長さの比について、音源距離DS-Cr、DS-LFr、DS-RFr、DS-LSr、DS-RSrの間での長さの比と同じくするような厳密なものをはじめ、これより緩やかなものとして、例えばユニット距離Dflf、Dcr、Drf、Drs、Dflsの長さについての大小関係を、音源距離DS-Cr、DS-LFr、DS-RFr、DS-LSr、DS-RSrの大小関係と同じくすることも含まれる。
さらには、ユニット距離Dflf、Dcr、Drf、Drs、Dflsのうちで、所定の2以上のユニット距離の間での大小関係を、図13において対応する音源距離の大小関係と同じくすることも含まれる。
本願発明者は、全ての5つのユニット距離Dflf、Dcr、Drf、Drs、Dflsの間で、音源距離DS-Cr、DS-LFr、DS-RFr、DS-LSr、DS-RSrと同じ大小関係を保たなくとも、ユニット距離Dflf、Dcr、Drf、Drs、Dflsのうちで、特定のものの間での大小関係を保ちさえすれば、実用上充分な音響再生性能が得られることを確認している。
より具体的には、右側ハウジング部1Rについてであれば、リスニングポジションLtpよりも前方(フロント)に音源が位置するチャンネル(LFch、Cch、RFch)に対応するドライブユニットSPu−f(LF)、SPu−C(R)、SPu−RFに対応するユニット距離Dflf、Dcr、Drfについて、少なくとも、これらのユニット距離が対応する音源距離DS-Cr、DS-LFr、DS-RFr間と同じ大小関係を与えるようにする。すると、たとえ残る後方のチャンネル(Rsch、LSch)に対応するドライブユニットのユニット距離Drs、Dflsとを含めた大小関係が、音源距離のそれから若干外れているとしても、充分に鑑賞に耐えるだけの良好な音響感が得られることが確認された。
例えば、現実においては、限られたスペースのハウジング内壁部4Rに対して、マルチチャンネルを成すチャンネルごとに個別に対応して複数のドライブユニットを取り付けようとすると、何らかの制約がでてくる可能性がある。そのうえで、音源距離に準じたユニット距離を得ようとすれば、さらに制約が厳しくなる。しかし、上記のようにして、全てのドライブユニットのうち、特定のドライブユニットに対応するユニット距離についてのみ、音源距離に準ずるようにして設定すればよい、ということになれば、上記の制約が緩やかになる。
例えば、第1例として製造する実際のヘッドフォン装置にあっても、ドライブユニットSPu−f(LF)、SPu−C(R)、SPu−RF、SPu−RS、SPu−f(LS)の位置調整により、ユニット距離Dflf、Dcr、Drf、Drs、Dflsについて、音源距離DS-Cr、DS-LFr、DS-RFr、DS-LSr、DS-RSrと同程度の長さの比を設定できる。また、より緩やかに、ユニット距離Dflf、Dcr、Drf、Drs、Dflsの大小関係を、音源距離DS-Cr、DS-LFr、DS-RFr、DS-LSr、DS-RSrと同じになるようにして保つことができる。さらに、ユニット距離Dflf、Dcr、Drf、Drs、Dflsのうちの特定のものの大小関係を、音源距離DS-Cr、DS-LFr、DS-RFr、DS-LSr、DS-RSrのうちで対応するものと同じくするようにして設定することもできる。
いずれにせよ、このようにして、ドライブユニットSPu−f(LF)、SPu−C(R)、SPu−RF、SPu−RS、SPu−f(LS)の位置調整を行った右ハウジング部1Rと、これに対応したドライブユニットSPu−f(RF)、SPu−C(L)、SPu−LF、SPu−LS、SPu−f(RS)の位置調整を行った左ハウジング部1Lとを有するヘッドフォン装置によっては、図13に準じて設定されたチャンネル間到達距離差に応じたチャンネル間での音声の到達時間差が与えられることになる。このようにして構成したハウジング部(1R、1L)を備えるヘッドフォン装置によっては、例えば、これら左右の各ドライブユニットについて、チャンネル間到達距離差を考慮することなく、単に前後方向に沿って適当に配置したとする場合と比較して、より良好なサラウンド再生音を聴くことができる。
図15は、ドライブユニット配置の第2例を示している。この図において図13と同一とされる部分については同一符号を付して説明を省略する。
本願発明者は、右ハウジング部1Rのほうを例にとると、リスニングポジションLtpよりも前方(フロント)に位置するチャンネル(LFch、Cch、RFch)の音源に対応するドライブユニットSPu−f(LF)、SPu−C(R)、SPu−RFに対応するユニット距離Dflf、Dcr、Drfについては、対応する音源距離DS-Cr、DS-LFr、DS-RFr間と同じ大小関係を維持したうえで、その距離差を大きく取ったほうが、サラウンド音響効果としてより良い聴感が得られることを確認した。
また、サラウンド副音声のドライブユニットSPu−f(LS)のユニット距離Dflsについては、相応に長く設定することで、後方からのサラウンド音声が強調される音場になることを避けられることを確認した。
そこで、第2例にあっては、先ず、お椀上の曲面形状を有するハウジング内壁部4RにおいてドライブユニットSPu−RFを配置する部分に、所定の高さの凸部5を形成し、振動板カバー部が表出するようにしてドライブユニットSPu−RFを取り付けることとした。
また、ドライブユニットSPu−f(LF)を配置する部分には、所定の深さの凹部6aを形成し、ここに、図示するように、その振動板カバー部が見えるようにしてドライブユニットSPu−f(LF)を埋め込むこととした。
また、この場合のドライブユニットSPu−C(R)については、顕著な凸部あるいは凹部を特に設けることなく、ハウジング内壁部4Rの壁面に沿う高さに振動板カバー部が表出するようにして取り付けられる。
さらに、ドライブユニットSPu−f(LS)の配置位置についても、所定の深さの凹部6bを形成し、ここに、振動板カバー部が見えるようにしてドライブユニットSPu−f(LS)を埋め込むこととしている。
なお、図15において、前後方向におけるSPu−f(LF)、SPu−C(R)、SPu−RF、SPu−RS、SPu−f(LS)の間隔については、第1例と同様であるものとしてみてよいが、必要に応じて第1例と異なる間隔を設定してもよい。
このようにしてドライブユニット間での異なる取り付け高を設定したことにより、先ず、ドライブユニットSPu−RFは、ハウジング内壁部4Rの壁面と同じ高さに位置する状態よりも音声到達点Apに近づくことになる一方で、ドライブユニットSPu−f(LF)は、ハウジング内壁部4Rの壁面と同じ高さに位置する状態よりも音声到達点Apからより遠ざかることになる。これにより、フロント音源に対応した3つのドライブユニットSPu−f(LF)、SPu−C(R)、SPu−RFに対応するユニット距離Dflf、Dcr、Drfについては、これらに対応する音源距離DS-Cr、DS-LFr、DS-RFr間と同じ大小関係を維持したうえで、一定以上に拡大した距離差が得られることとなり、上記した聴感上でのサラウンド音響の向上効果が得られることとなった。
また、ドライブユニットSPu−f(LS)が、より奥側に位置することとなって、ユニット距離Dflsを長くすることができたために、後方からのサラウンド音声が強調されることなく、バランスの向上された音場も得られることとなった。
ところで、ドライブユニット配置の第1例にあっては、ドライブユニットが取り付けられるハウジング内壁部4Rは、お椀形状の曲面となっている。また、第2例においても、ドライブユニットが取り付けられる部分に関しては、凹部若しくは凸部を形成している箇所があるものの、基本的には、第1例と同じくお椀形状の曲面、即ちパラボラ形状である。このために、第1例、第2例によるヘッドフォン装置を頭部に装着した状態では、ハウジング内壁部4Rのパラボラ形状がちょうど耳穴方向に対して集中的に音を反射させてしまうような環境が形成される。
すると、例えば、実際に各ドライブユニットから音を出した場合には、ハウジング内壁部4Rと頭部との間で形成された空間内にて反射を繰り返し、最終的には耳穴方向に集中して到達するような現象を生じる可能性がある。このような現象が生じると、例えば不必要な残響の発生が増加して、聴感上では不自然な残響を感じるようになることがある。
特に本実施の形態のようにして、1つのハウジング部に比較的多数のドライブユニットを前後方向にそってほぼ並べるようにして設ける場合には、全てのドライブユニットを取り付けられるだけの面積を確保する必要上、ハウジング内壁部4Rの面積も多めに取る傾向になるが、これにより、ハウジング内壁部4Rにより形成される空間の容積も大きくなる。このことは、上記した不必要な残響の発生を生じやすくする要因となる。
そこで、上記の残響に関する対策として、図16に、ドライブユニット配置の第3例の態様を示す。なお、この図において図14、図15と同一部分には同一符号を付して説明を省略する。
第3例では、図16(a)(b)に示されるようにして、ハウジング内壁部4Rについて、全体的には凹多面体としてみることのできる形状で形成することとした。ドライブユニットSPu−f(LF)、SPu−C(R)、SPu−RF、SPu−RS、SPu−f(LS)は、凹多面体形状のハウジング内壁部4Rにおける所定の1つの面(あるいは複数の面にまたがってもよい)に対して取り付けるが、このときに、ドライブユニットが取り付けられるべきそれぞれの面は、図16(a)からも理解されるように、ドライブユニットSPu−f(LF)、SPu−C(R)、SPu−RF、SPu−RS、SPu−f(LS)の音軸のそれぞれが音声到達点Apの方に向くようにされたうえで、ユニット距離Dflf、Dcr、Drf、Drs、Dflsとして所要の長さが得られるようにして、その面の傾きであるとか位置を決めるようにする。ちなみに、第3例の実際として、ユニット距離Dflf、Dcr、Drf、Drs、Dflsは、第2例と同様の大小関係と、同程度の距離差が得られるようにした。
ちなみに、この第3例では、ハウジング内壁部4Rの多面体構造においてドライブユニットが取り付けられる面部の位置や向きを調整することで、各ユニット距離、及び音声到達点Apに対する各ドライブユニットの向きを容易に設定することができる。
このようにしてハウジング内壁部4Rについて多面体構造とすることで、ドライブユニットから発せられた音(音波)は、ハウジング内壁部4Rの空間内でランダムな方向に反射する(乱反射する)ことになり、ハウジング内壁部4Rがパラボラ形状の場合のようにして、耳穴位置に集中して反射してくるような現象を避けられる。これにより、不必要な残響の発生は大幅に抑制され、不自然な残響感も生じないようにすることができる。
また、第3例を基として音を乱反射するように構成した2つの例を、ドライブユニット配置の第4例、第5例として、図17、図18に示す。なお、図17、図18において、図16と同一部分については同一符号を付して説明を省略する。
先ず、第4例である図18としては、図16に示した態様のハウジング内壁部4Rの面に対して、柱状体集合部材7を取り付けることとした。この柱状体集合部材7は、例えば所定の四角形状サイズの角柱を適当な長さに切断したものを、適当な数だけ集めて側面部にて相互に結合させて形成している。このために、柱状体集合部材7は、それぞれが異なる全体形状とサイズとなる。そして、この柱状体集合部材7を、凹多面体形状のハウジング内壁部4Rの面に対して、適当に取り付け固定するものである。
このような構造では、ドライブユニットから発せられた音の乱反射が、柱状体集合部材7により、さらに細かく、また、促進されるものとなり、不必要な残響の発生について、より顕著な抑制効果が期待できることになる。
なお、柱状体集合部材7の材料には樹脂を用いることができる。
また、第5例である図18としては、上記柱状体集合部材7に代えて、破片部材8を取り付けることとしている。
この破片部材8は、例えば樹脂や石などを適当に砕いて形成したもので、これを、凹多面体のハウジング内壁部4Rの面に対して適当に配置して取り付け固定するようにしている。
このようにしても、第4例と同様に、ドライブユニットから発せられた音の乱反射が、破片部材8により、さらに細かく、また、促進され、不必要な残響のより有効な抑制が期待できる。
なお、柱状体集合部材7については樹脂を、また、破片部材8については樹脂若しくは石を用いることができると述べたが、これ以外の材質のものが用いられてもよい。ただし、吸音効果の高い材質を用いると、必要な残響までが抑制されてしまうことになって好ましくないことを本願発明者は確認している。従って、柱状体集合部材7及び破片部材8については、必要な残響は残せる程度に、音の吸音率が一定以下(反射率が一定以上)の材質を採用することが好ましい。また、この観点からすると、これまでの第1例〜第5例において用いられるハウジング内壁部4R自体についても、音の吸音率が一定以下の材質、例えば樹脂などを採用することが適切となる。
また、例えば、図14、図15に示したような曲面形状のハウジング内壁部4Rに対して、図17、図18に示したような音を乱反射させる部材を設けるような構造とすることも考えられる。さらに、ハウジング内壁部において音を乱反射させる形状、構造は、例えば図16〜図18により説明したもの以外にも、多様に考えることができる。
また、例えば上記図17、図18に示したような音を乱反射させる部材は、その部材としての部品を、ハウジング内壁部の面に対して後から適宜取り付けるようにして設けてもよいが、ハウジング内壁部と音を乱反射させる部材に相当する部位とを一体成型するようにしてもよい。このような一体成型は、例えば材料に樹脂を採用した場合には容易に実現できる。そして、このような一体成型によりハウジング内壁部と音を乱反射させる部材とを形成することによっては、製造工程の簡易化と、製造コストの削減を図ることができる。
図19(a)(b)(c)は、それぞれ、本実施の形態のドライブユニット配置の第1例、第3例、第4例に対応してそれぞれ製作した右側ハウジング部1Rにおける、残響特性を示している。図19(a)(b)(c)においては、縦軸が残響音のレベルで、横軸が時間となっている。
ここでの残響特性は、例えば、人間の右耳に対して右側ハウジング部1Rが宛てられているのと同等の環境の下で、残響音を右耳に対応する音声到達点Apにて観測したものである。また、ここで観測した残響音は、ドライブユニットSPu−RFから発せられた音についてのものとなっている。残るドライブユニットから発せられる音についてもほぼ同等の特性が得られる。
先ず、第1例に対応する図19(a)と第3例に対応する図19(b)とを比較してみると、残響音レベルは、約60msec以降の時間において、概ね10db程度低減されているとみてとれるが、これは、聴感上不要な残響音が抑制されていることを示す。
さらに、第3例に対応する図19(b)と、第4例に対応する図19(c)とを比較してみると、約260msec以降の時間において、図19(b)では、10dBを若干越えているのが、図19(c)では、ほぼ10dB以内に収まっているまでに抑制されていることが示されている。例えばこの260msec付近以降の時間における残響音レベルの減少は、聴感上で違和感のある残響を抑制するのに大きく寄与する。なお、図18に示した第5例についても、図19(c)と同等の特性が得られている。
このようにして、実際の測定によっても、第3例を基とする構成では、不要な残響が弱められることが確認できている。また、このようにして音が乱反射することによっては、例えば、特定の周波数の音のみが強調されて聴こえるような現象も抑制することができる。
また、同一面上にドライブユニットを配置する場合、隣接するドライブユニットが生成する音波の粗密による圧力変動を受けて混変調を生じ、これによって音が劣化する可能性があるとも考えられる。しかし、本実施の形態のドライブユニット配置の第3例を基とする構成では、多面体構造においてそれぞれ異なる面にドライブユニットを配置することができるので、上記のような混変調は生じにくくなる。
なお、これまでに図14〜図18により示したドライブユニット配置の例においては、図13にて説明したようにして規定したモデルを理想のリスニング環境としたことを前提としているが、これ以外のモデルを理想のリスニング環境としても構わない。
また、これまでにおいては、図7の信号系の構成を簡易化していくことを前提として説明してきたが、本願においては、その逆に、非常に忠実な音場が再現されるようにすることを目的として信号系を構成することも妨げられるものではない。
この場合には、例えば、図7において破線により示されているフィルタ11、遅延器12を実際に設けることとして、しかるべき通過帯域特性、遅延時間を設定し、主音声成分と副音声成分間の厳密な信号特性差が与えられるように、つまり、相応に正確な伝達関数が畳み込まれるようにして信号系を構成するようにされる。このときには、例えばフィルタ11についてもデジタルフィルタを用いることとすれば、精度が高くなる。
また、図13〜図19により説明したドライブユニット配置に関する実施の形態も、例えば図7の信号系の構成において破線で示すフィルタ11,遅延器12を省略したうえで、適切なチャンネル間到達時間差を生じさせるための構成ではあるが、上記のようにして破線で示されているフィルタ11、遅延器12を省略しない構成と併用することも可能である。
このようにしてドライブユニット配置に関する実施の形態と、フィルタ11、遅延器12を省略しない構成とを併用する場合には、例えば、さらに厳密に所要のチャンネル間到達時間差を設定できるようにして、遅延器12の遅延時間を調整するという構成を採ることができる。
また、図7においては、基準となるLFch、RFchの主音声成分の信号系には、フィルタ、遅延器を設けていない。これも先に説明したように、LFch、RFchについては、例えばヘッドフォン装置(ハウジング部)が本来持つとされる音響特性を利用して、必要とされる信号特性を簡易に得ようとしているものである。しかしながら、厳密には、例えば図5にも示されているように、LFch、RFchの主音声成分についても、その音源位置に応じた伝達関数が存在するものであり、本来はこの伝達関数が忠実に畳み込まれることで、その音源の定位感が良好になる。このことからすれば、LFch、RFchの主音声成分の信号系についても、フィルタ(及び遅延器)を備えてしかるべき信号特性が得られるようにしてよいものである。この場合、LSch、RFchの主音声成分以外の他の出力チャンネルに対応する音については、上記のようにしてフィルタ(及び遅延器)を経由することで与えられることとなるLFch、RFchの主音声成分の信号特性を基準として、その信号特性差が得られるようにすればよいことになる。
また、本実施の形態のヘッドフォン音響再生システムとしては、実際に聴取者が頭部に装着して使用するヘッドフォン装置と、例えば図7などに示される信号系に対応する信号処理回路部とを備えて構成されるべきものとなる。このヘッドフォン装置と信号処理回路部とについての実際の構成の組み合わせとしては、例えば1つには、ヘッドフォン装置と、信号処理回路部を備える信号処理装置部とを別体としたシステム構成とすることが考えられる。この場合、信号処理装置部からヘッドフォン装置に対する音声信号の伝送は、例えば、有線により行われるようにしてもよいし、赤外線、電波などによる所定の無線送受信方式を採用して無線により行われるようにしてもよい。
また、もう1つの構成としては、ヘッドフォン装置本体を構成するハウジング部やヘッドバンド部などの所定部位に対して、信号処理回路部を内蔵させて一体化する構成も考えられる。
また、ここで、これまでに述べてきた本実施の形態のヘッドフォン装置に採用できる外形についての態様例を、図27に示す。
この図に示しているヘッドフォン装置100は、いわゆるオーバーヘッドバンド式といわれる形態のもので、ヘッドバンド2の両側に、それぞれ、右ハウジング部1R、左ハウジング部1Lが取り付けられている。また、右ハウジング部1R、左ハウジング部1Lの内側の縁部に対応しては、耳当てなどともいわれるクッション材を用いたイヤーパッド3R、3Lがそれぞれ取り付けられる。
ユーザは、ヘッドバンド2を頭部に掛け、この状態で、右ハウジング部3R、左ハウジング部3Lのイヤーパッド3R、3Lのそれぞれが、右、左の耳に当たるようにして、ヘッドフォン装置100を装着する。
ところで、ヘッドフォン装置単体として、マルチチャンネルに対応して独立したドライブユニットをハウジング部に備えた構成のものが既に知られている。このヘッドフォン装置の構成を図28、及び図29により示す。このヘッドフォン装置も、音声ソースとしては、5.1chサラウンドに対応しようとするものである。
これらの図に示すヘッドフォン装置は、先ず、図28に示されるように、左ハウジング部1Lにおいて、前方の位置にLFchに対応するドライブユニットSPu−LFを配置し、この後方上側の位置にCchに対応するドライブユニットSPu−Cを配置し、さらに、この後方下側の位置にLSchに対応するドライブユニットSPu−LSを配置し、下側に対してLFEchに対応するドライブユニットSPu−LFEを配置している。
また、右ハウジング部1Rにおいては、前方の位置にRFchに対応するドライブユニットSPu−RFを配置し、この後方上側の位置にCchに対応するドライブユニットSPu−Cを配置し、さらに、この後方下側の位置にLSchに対応するドライブユニットSPu−RSを配置し、下側に対してLFEchに対応するドライブユニットSPu−LFEを配置している。
そのうえで、図29に示すようにして、ドライブユニットSPu−LF、SPu−RFに対しては、それぞれLFch、RFchの音声信号を直接的に入力させ、左右のドライブユニットSPu−Cには、同じCchの音声信号を分岐させたものを直接的に入力させ、ドライブユニットSPu−LS、SPu−RSに対しては、それぞれ、LSch、RSchの音声信号を直接的に入力させることとしている。また、左右のドライブユニットSPu−LFEに対しては、LFEchの音声信号を直接的に入力しているものである。
つまり、図28、図29に示されるヘッドフォン装置では、さしあたり、5.1chサラウンドのチャンネルの音源位置に応じて、LFch、LSchと、RFch、RSchとについては、左ハウジング部と右ハウジング部に振り分けてドライブユニットを設けることとしたうえで、Cchについては、頭部中央に定位させる必要性から左右のハウジング部にドライブユニットを設け、LFEchについても、偏った定位感が生じないようにするために左右のハウジング部にドライブユニットを設けるものである。そのうえで、各ドライブユニットに対しては、例えば5.1chサラウンドの音声ソースに対応する各チャンネルの音声信号を、特にフィルタ処理や遅延処理を施すことなく、直接的に入力させるようにしている。
このような構成の場合、5.1chサラウンドを成す各チャンネルの音声が、それぞれ独立した異なるドライブユニットから出力されることにはなる。しかしながら、各ドライブユニットからは、対応するチャンネルの原音声信号の音が発せられるのみであって、本実施の形態のようにして、1チャンネルごとについてしかるべき信号特性の関係が与えられた主音声と副音声の成分とが両耳で聴きとることができるようにはなっていない。また、定位感を与えるべきLFEch以外に対応するドライブユニットについての前後方向に沿った配列をみても、例えば図28においてドライブユニットSPu−LFの位置を基準として設定した仮想線Hに対する他のドライブユニットの配置は特に規則性が見られず適当なものとなっている。また、以上のことから、本実施の形態でいうチャンネル間到達距離差(即ち、チャンネル間到達時間差)を考慮したドライブユニットの配置も得られるものではない、ということがいえる。
このようなことから、図28、図29のヘッドフォン装置では、各チャンネルの音を或る程度明確に聞き分けることはできるものの、本実施の形態のようにして、5.1chサラウンドとしてのしかるべき音像定位感を得ることは非常に困難である、ということがいえる。
なお、実施の形態としては、5.1chサラウンドに対応する構成を例に挙げているが、例えば7.1chサラウンドなど、他の方式のマルチチャンネル構成にも適用が可能とされる。
本願発明の実施の形態としてのヘッドフォン音響再生システムに対応する基本の音響モデルを示す図である。 図1の音響モデルにおける各音源の音成分に対応する測定位置の設定例を示す図である。 図1に対応するヘッドフォン音響再生システムについての音声信号処理系の構成例を示す図である。 図3の構成に対応するヘッドフォン装置におけるドライブユニットの配置態様例を示す図である。 実施の形態のヘッドフォン音響再生システムに対応する5.1chサラウンドの音響モデルを示す図である。 図5の音響モデルにおける各音源の音成分に対応する測定位置の設定例を示す図である。 5.1chサラウンド方式に対応した、実施の形態のヘッドフォン音響再生システムの音声信号処理系の構成例を示す図である。 5.1chサラウンド方式に対応した、実施の形態のヘッドフォン装置におけるドライブユニットの配置態様例を、平面方向より模式的に示す図である。 5.1chサラウンド方式に対応した、実施の形態のヘッドフォン装置におけるドライブユニットの配置態様例を、側面方向より模式的に示す図である。 5.1chサラウンド方式に対応した、実施の形態のヘッドフォン装置におけるドライブユニットについての他の配置態様例を、側面方向より模式的に示す図である。 実施の形態のヘッドフォン音響再生システムの音声信号処理系において備えられるフィルタの構成例を示す回路図である。 図11に示すフィルタの特性例を示す図である。 実施の形態におけるドライブユニット配置の設定にあたって前提となる、リスニング環境のモデルを例示した図である。 実施の形態のドライブユニット配置の第1例としての構成例を示す図である。 実施の形態のドライブユニット配置の第2例としての構成例を示す図である。 実施の形態のドライブユニット配置の第3例としての構成例を示す図である。 実施の形態のドライブユニット配置の第4例としての構成例を示す図である。 実施の形態のドライブユニット配置の第5例としての構成例を示す図である。 実施の形態のドライブユニット配置の第1例、第3例、第4例によるハウジング部の残響特性を比較して示す図である。 一音源を聴き取る場合の音響モデル例を示す図である。 図20の音響モデルにおける主音声成分と副音声成分の信号特性差を示す図である。 二音源を聴き取る場合の音響モデル例を示す図である。 図22に示す音響モデルに対応したヘッドフォン音響再生システムの音声信号処理系の構成例を示す図である。 図23に対応するヘッドフォン装置におけるドライブユニットの配置態様例を、平面方向より模式的に示す図である。 5.1chサラウンドの一般的な音響モデルを示す図である。 図25に示す音響モデルに対応したヘッドフォン音響再生システムの音声信号処理系の構成例を示す図である。 実施の形態のヘッドフォン装置の外形についての態様例を示す斜視図である。 マルチチャンネル構成に対応するヘッドフォン装置におけるドライブユニットの配置態様例を平面方向より示す図である。 マルチチャンネル構成に対応するヘッドフォン装置におけるドライブユニットの配置態様例を側面方向より示す図である。
符号の説明
100 ヘッドフォン装置、1L 左ハウジング部、1R 右ハウジング部、3R イヤーパッド(右ハウジング部側)、4R ハウジング内壁部(右ハウジング部側)、5 凹部、6(6a・6b) 凸部、7 柱状体集合部材、8 破片部材、11(11−LS、11−RS、11−f(RS)、11−f(LS)、11−C、11−f(LF)、11−f(RF)) フィルタ、12(12−(RF)、12−f(RS)、12−(LF)、12−f(LS)) 遅延器、SPu−f(RF)、SPu−C(L)、SPu−LF、SPu−LS、SPu−f(RS)、SPu−LFE(L)、SPu−f(LF)、SPu−C(R)、SPu−RF、SPu−RS、SPu−f(LS)、SPu−LFE(R)、SPu−f(RS)LFE(L)、SPu−f(LS)LFE(L)、SPu−f(RF)C、SPu−f(LF)C ドライブユニット

Claims (11)

  1. 左右の各耳ごとに対応して、所定のチャンネル構成を成す複数のチャンネルごとに対応する複数のドライブユニットを備え、
    1つの耳に対応する上記複数のドライブユニットについて、
    上記所定のチャンネル構成に対応して予め規定した聴取環境における、各チャンネルの音源位置から上記1つの耳に対応して設定した音声到達点までの距離を音源距離とし、また、複数のドライブユニットのそれぞれから上記1つの耳に対応して設定した音声到達点までの距離をユニット距離としたうえで、各チャンネルに対応するユニット距離について、同じチャンネルに対応する音源距離の間での距離差に準じた関係が得られるようにして、上記複数のドライブユニットを配置している、
    ことを特徴とするヘッドフォン装置。
  2. 各チャンネルに対応するユニット距離についての、同じチャンネルに対応する音源距離の間での距離差に準じた関係として、上記所定のチャンネル構成を成すチャンネルのうちで、少なくとも、上記聴取環境のリスニングポジションより前方に位置するとされるチャンネルに対応するユニット距離の間での距離の大小関係が、同じチャンネルに対応する音源距離の間での距離の大小関係と同じになる関係が得られるようにして、上記複数のドライブユニットを配置している、
    ことを特徴とする請求項1に記載のヘッドフォン装置。
  3. 片側の耳に対応して上記複数のドライブユニットが備えられるハウジング部において上記ドライブユニットの取り付け部位となるハウジング内壁部について、上記ドライブユニットから放出された音が乱反射するようにして形成する、
    ことを特徴とする請求項2に記載のヘッドフォン装置。
  4. 上記ハウジング内壁部を多面体形状により形成している、
    ことを特徴とする請求項3に記載のヘッドフォン装置。
  5. 上記内壁部の多面体形状を形成する面に対して音波を乱反射させるための部材を配置する、
    ことを特徴とする請求項4に記載のヘッドフォン装置。
  6. 上記内壁部の多面体形状を形成する面に対して音波を乱反射させるための部材を配置する、
    ことを特徴とする請求項1に記載のヘッドフォン装置。
  7. ヘッドフォン装置と音声信号処理装置とから成り、
    上記ヘッドフォン装置は、
    左右の各耳ごとに対応して、所定のチャンネル構成を成す複数のチャンネルごとに対応する複数のドライブユニットを備え、
    1つの耳に対応する上記複数のドライブユニットについて、
    上記所定のチャンネル構成に対応して予め規定した聴取環境における、各チャンネルの音源位置から上記1つの耳に対応して設定した音声到達点までの距離を音源距離とし、また、複数のドライブユニットのそれぞれから上記1つの耳に対応して設定した音声到達点までの距離をユニット距離としたうえで、各チャンネルに対応するユニット距離の長さについて、各チャンネルに対応する音源距離に準じた距離差の関係が得られるようにして、上記複数のドライブユニットを配置して構成され、
    上記音声信号処理装置は、
    上記所定のチャンネル構成に対応する音声ソースに対応する各チャンネルの音声信号が、それぞれ、上記ヘッドフォン装置の左右の各耳に対応して備えられる、対応するチャンネルのドライブユニットから音として発せられるようにして音声信号処理を行うようにされている、
    ことを特徴とするヘッドフォン音響再生システム。
  8. 上記音声信号処理装置は、
    左耳に対応する所定のチャンネルに対応するドライブユニットにより音として発せられるべき左対応音声信号と、右耳に対応する同じ所定のチャンネルに対応するドライブユニットにより音として発せられるべき右対応音声信号とについて、上記聴取環境における上記所定のチャンネルに対応する音源位置から左耳に対応する音声到達点に到達してきたとする音と、同じ所定のチャンネルに対応する音源位置から右耳に対応する音声到達点に到達してきたとする音との特性差に基づいた信号特性差を与えるために、
    上記左対応音声信号が通過するアナログフィルタと、上記右対応音声信号が通過するアナログフィルタとを備える、
    ことを特徴とする請求項7に記載のヘッドフォン音響再生システム。
  9. 上記音声信号処理装置は、
    左耳に対応する所定のチャンネルに対応するドライブユニットにより音として発せられるべき左対応音声信号と、右耳に対応する同じ所定のチャンネルに対応するドライブユニットにより音として発せられるべき右対応音声信号とについて、上記聴取環境における上記所定のチャンネルに対応する音源位置から左耳に対応する音声到達点に到達してきたとする音と、同じ所定のチャンネルに対応する音源位置から右耳に対応する音声到達点に到達してきたとする音との特性差に基づいた信号特性差を与えられるようにして信号処理を行う信号特性付与手段を備えて構成される、
    ことを特徴とする請求項7に記載のヘッドフォン音響再生システム。
  10. 上記信号特性付与手段は、
    上記左対応音声信号が通過するフィルタ、遅延器、及び上記右対応音声信号が通過するフィルタ、遅延器のうちの少なくとも1つを備えて成る、
    ことを特徴とする請求項9に記載のヘッドフォン音響再生システム。
  11. 上記フィルタをアナログ回路により形成する、
    ことを特徴とする請求項10に記載のヘッドフォン音響再生システム。
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