以下、本発明の実施形態を、図面を参照して詳細に説明する。なお、以下の説明においては便宜上、図示の状態を基準に各構造の位置関係を上下と表現することがある。
[第1実施形態]
図1は、第1実施形態に係る制御弁の構成を示す断面図である。
制御弁1は、自動車用空調装置の冷凍サイクルに設置される図示しない可変容量圧縮機(単に「圧縮機」という)の吐出容量を制御する電磁弁として構成されている。この圧縮機は、冷凍サイクルを流れる冷媒を圧縮して高温・高圧のガス冷媒にして吐出する。そのガス冷媒は凝縮器(外部熱交換器)にて凝縮され、さらに膨張装置により断熱膨張されて低温・低圧の霧状の冷媒となる。この低温・低圧の冷媒が蒸発器にて蒸発し、その蒸発潜熱により車室内空気を冷却する。蒸発器で蒸発された冷媒は、再び圧縮機へと戻されて冷凍サイクルを循環する。圧縮機は、自動車のエンジンによって回転駆動される回転軸を有し、その回転軸に取り付けられた揺動板に圧縮用のピストンが連結されている。その揺動板の角度を変化させてピストンのストロークを変えることにより、冷媒の吐出量が調整される。制御弁1は、その圧縮機の吐出室からクランク室へ導入する冷媒流量を制御することで揺動板の角度、ひいてはその圧縮機の吐出容量を変化させる。
制御弁1は、圧縮機の吸入圧力Ps(「被感知圧力」に該当する)を設定圧力に保つように、吐出室からクランク室に導入する冷媒流量を制御するいわゆるPs感知弁として構成されている。制御弁1は、弁本体2とソレノイド3とを一体に組み付けて構成される。弁本体2は、圧縮機の運転時に吐出冷媒の一部をクランク室へ導入するための冷媒通路を開閉する主弁と、圧縮機の起動時にクランク室の冷媒を吸入室へ逃がすいわゆるブリード弁として機能する副弁とを含む。ソレノイド3は、主弁を開閉方向に駆動してその開度を調整し、クランク室へ導入する冷媒流量を制御する。弁本体2は、段付円筒状のボディ5、ボディ5内に設けられた主弁および副弁、主弁の開度を調整するためにソレノイド力に対抗する力を発生するパワーエレメント6等を備えている。パワーエレメント6は、「感圧部」として機能する。
ボディ5の上端開口部にはポート12が設けられ、側部にはポート14が設けられている。ボディ5の下端開口部は、ソレノイド3のコア42(後述する)に設けられたポート16に連通する。ポート12はクランク室に連通する「クランク室連通ポート」として機能し、ポート14は吐出室に連通する「吐出室連通ポート」として機能し、ポート16は吸入室に連通する「吸入室連通ポート」として機能する。また、ボディ5内には、ポート12とポート14とを連通させる主通路と、ポート12とポート16とを連通させる副通路とが形成されている。主通路には主弁が設けられ、副通路には副弁が設けられている。主通路を構成するボディ5の一部には弁孔18(主弁孔)が設けられ、その下端開口部のテーパ面に弁座20(主弁座)が形成されている。
ポート14は、吐出室から吐出圧力Pdの冷媒を導入する「導入ポート」として機能する。ポート12は、圧縮機の定常動作時に主弁を経由したクランク圧力Pcの冷媒をクランク室へ向けて導出する「導出ポート」として機能する一方、圧縮機の起動時にはクランク室から排出されたクランク圧力Pcの冷媒を導入する「導入ポート」として機能する。このとき導入された冷媒は、副弁に導かれる。すなわち、ポート12は、クランク圧力Pcの冷媒を導入または導出する「導入出ポート」として機能する。ポート16は、圧縮機の定常動作時に吸入圧力Psの冷媒を導入する「導入ポート」として機能する一方、圧縮機の起動時には副弁を経由した吸入圧力Psの冷媒を吸入室へ向けて導出する「導出ポート」として機能する。すなわち、ポート16は、吸入圧力Psの冷媒を導入または導出する「導入出ポート」として機能する。
ボディ5の上端部の隔壁の中央には取付孔22が軸線方向に設けられ、その取付孔22の周囲には、複数の連通孔23が設けられている。取付孔22には、段付円柱状の支持部材27がその上端を支持されるように圧入されている。支持部材27は、ボディ5の内方で軸線方向下方に延在し、パワーエレメント6の上端部を上方から支持している。連通孔23は、ポート12と弁孔18とを連通させる。
弁孔18のポート12とは反対側には弁室24(「中間圧力室」として機能する)が設けられている。弁室24は、環状の空間からなり、ポート14と半径方向に連通している。弁室24の弁孔18とは反対側には、弁孔18と同軸状にガイド孔26が形成されている。ガイド孔26の弁室24とは反対側には作動室28が形成され、ポート16と連通している。
ポート14には環状のストレーナ15が取り付けられている。ストレーナ15は、ボディ5の内部へのごみ等の侵入を抑制するためのフィルタを含む。一方、ポート12には有底円筒状のストレーナ13が取り付けられている。ストレーナ13は、ボディ5の内部へのごみ等の侵入を抑制するためのフィルタを含む。
ボディ5には、段付円筒状の弁駆動体30が設けられている。弁駆動体30は、軸線方向に延びる内部通路35を有する。この内部通路35は、弁孔18および取付孔22を介してポート12と連通する。弁駆動体30は、段付円筒状の第1部材31と、有底段付円筒状の第2部材32とを軸線方向に接合して構成される。第1部材31は、その上部が縮径され、下部が第2部材32の上部に圧入されている。第1部材31の先端部には弁体33(主弁体)が一体に設けられている。弁体33は、弁座20に着脱して主弁を開閉し、吐出室からクランク室へ流れる冷媒流量を調整する。なお、本実施形態では、弁体33が弁座20に着座または離脱して主弁を開閉する構成を採用しているが、主弁体が主弁孔に挿抜されるスプール弁の態様を採用してもよい。
第2部材32は、下半部が縮径され、その底部に複数の円孔からなる弁孔34(副弁孔)が設けられている。第2部材32における弁孔34の周囲に弁座36(副弁座)が形成されている。弁駆動体30の内方には、パワーエレメント6と弁体38(副弁体)とが上下に同軸状に配設されている。弁体38は有底円筒状をなし、弁座36に着脱して副弁を開閉し、クランク室から吸入室への冷媒のリリーフを許容又は遮断する。パワーエレメント6は、ベローズ8を含み、そのベローズ8の変位によりソレノイド力に対抗する力を弁体38を介して弁駆動体30ひいては弁体33に付与する。
弁体38とパワーエレメント6との間には、両者を離間させる方向に付勢するスプリング39(「付勢部材」として機能する)が介装されている。また、弁駆動体30とソレノイド3(コア42)との間には、弁駆動体30を主弁の閉弁方向に付勢するスプリング40(「付勢部材」として機能する)が介装されている。
一方、ソレノイド3は、段付円筒状のコア42と、コア42の下端開口部を封止するように組み付けられた有底円筒状のスリーブ44と、スリーブ44に収容されてコア42と軸線方向に対向配置された円筒状のプランジャ46と、コア42およびスリーブ44に外挿された円筒状のボビン48と、ボビン48に巻回され、通電により磁気回路を生成する電磁コイル50と、電磁コイル50を外方から覆うように設けられ、ヨークとしても機能する円筒状のケース52と、ケース52の下端開口部を封止するように設けられた端部材54とを備える。なお、本実施形態においては、ボディ5、コア42、ケース52および端部材54が制御弁1全体のボディを形成している。
弁本体2とソレノイド3とは、ボディ5の下端部がコア42の上端開口部に圧入されることにより固定されている。コア42は、その上半部が拡径されており、ボディ5との間に吸入圧力Psを満たすための作動室28を形成する。ポート16は、コア42とボディ5との接合部近傍に設けられている。一方、コア42の中央を軸線方向に貫通するように、長尺状の作動ロッド58が挿通されている。
作動ロッド58の下端部がプランジャ46の上半部に遊嵌され、作動ロッド58とプランジャ46とが同軸状に接続されている。プランジャ46とスリーブ44との間には、スプリング64(「付勢部材」として機能する)が介装されている。スプリング64がプランジャ46を上方に向けて付勢することにより、プランジャ46と作動ロッド58とが一体に保持されている。
作動ロッド58には、リング状の係合部材59(「係合部」として機能する)が嵌着されている。作動ロッド58は、係合部材59を介して弁駆動体30と作動連結可能であり、弁体38を介してパワーエレメント6と作動連結可能とされている。作動ロッド58は、コア42とプランジャ46との吸引力であるソレノイド力を、係合部材59を介して弁駆動体30ひいては弁体33に適宜伝達する。
一方、作動ロッド58には、パワーエレメント6の伸縮作動による駆動力(「感圧駆動力」ともいう)が弁体38を介して伝達され、ソレノイド力と対抗するように負荷される。すなわち、主弁の制御状態においては、ソレノイド力と感圧駆動力とにより調整された力が弁体33に作用し、主弁の開度を適切に制御する。主弁の閉時には、ソレノイド力の大きさに応じて作動ロッド58が弁駆動体30に対して相対変位し、弁体38を押し上げて副弁を開弁させる。それによりブリード機能を発揮させる。
コア42の上端部にはリング状の軸支部材60が圧入されており、作動ロッド58は、その軸支部材60によって軸線方向に摺動可能に支持されている。軸支部材60の外周面の所定箇所には、軸線に平行な連通溝が形成されている。このため、主弁の制御時には、作動室28の吸入圧力Psが、その連通溝、作動ロッド58とコア42との間隙により形成される連通路62を通ってスリーブ44の内部にも導かれる。
連通路62は、スリーブ44内をオイルダンパ室とするためのオリフィスとして機能する。すなわち、本実施形態では、制御弁1の製造工程において、圧縮機の潤滑用として冷媒に含まれるオイルと同種のオイルを予めスリーブ44内に入れておく。本実施形態では、軸支部材60に設けられた連通溝が、スリーブ44へのオイルの出入りに対して抵抗となる絞り通路として機能する。このような構成により、スリーブ44をオイルダンパ室として機能させることができ、そのスリーブ44に配置されたプランジャ46の微小振動などが抑制される。その結果、そのような微小振動による騒音の発生が防止または抑制される。なお、変形例においては、連通路62が、スリーブ44へのオイルの出入りに対して抵抗となる絞り通路として機能するようにしてもよい。すなわち、軸支部材60に設けられた連通溝および連通路62の少なくとも一方が、絞り通路として機能するようにすればよい。なお、スプリング39は、弁体38および作動ロッド58を介してプランジャ46をコア42から離間させる方向に付勢するオフばねとして機能する。
スリーブ44は非磁性材料からなる。プランジャ46の側面には軸線に平行な複数の連通溝が設けられ、プランジャ46の下端面には半径方向に延びて内外を連通する複数の連通溝が設けられている(いずれも同図には表れていない)。このような構成により、吸入圧力Ps又はクランク圧力Pcがプランジャ46とスリーブ44との間隙を通って背圧室70にも導かれるようになっている。
ボビン48からは電磁コイル50につながる一対の接続端子72が延出し、それぞれ端部材54を貫通して外部に引き出されている。同図には説明の便宜上、その一対の片方のみが表示されている。端部材54は、ケース52に内包されるソレノイド3内の構造物全体を下方から封止するように取り付けられている。端部材54は、耐食性を有する樹脂材のモールド成形(射出成形)により形成され、その樹脂材がケース52と電磁コイル50との間隙にも満たされている。このように樹脂材がケース52と電磁コイル50との間隙に樹脂材を満たすことで、電磁コイル50で発生した熱をケース52に伝達しやすくし、その放熱性能を高めている。端部材54からは接続端子72の先端部が引き出されており、図示しない外部電源に接続される。
図2は、図1の上半部に対応する部分拡大断面図である。
ボディ5の軸線方向中間部には、弁孔18とガイド孔26とが同軸状に設けられている。支持部材27は、ボディ5の上端部に片持ち状に支持される態様で軸線方向下方に延在する。ボディ5の内径は、作動室28の位置で拡径されている。ボディ5の下部はやや縮径してガイド孔74を形成する。
弁駆動体30の第1部材31は、ガイド孔26に摺動可能に支持され、その上端部が弁体33を構成する。第1部材31の摺動面には、冷媒の流通を抑制するための複数の環状溝からなるラビリンスシール84が設けられている。第1部材31の下部の外周面には、摺動部86が環状に突設されている。第1部材31は、その摺動部86を介してガイド孔74に摺動可能に支持されている。すなわち、弁駆動体30は、その一端側がガイド孔26に摺動可能に支持され、他端側がガイド孔74に摺動可能に支持される態様で、ボディ5により2点支持されている。なお、弁駆動体30、弁体38およびパワーエレメント6を合わせたユニットとしての重心が、その2点の支持部の間に位置するように構成されている。
コア42の上面中央部には円ボス状の弁座88が突設されており、第2部材32の下端部がその弁座88着脱することにより、弁駆動体30の下端部を介した内外の連通状態が遮断又は開放される。すなわち、弁駆動体30の下端部とコア42の上端面とにより「遮断弁部」が構成される。第2部材32の底部は、作動ロッド58と適宜係合連結可能な「被係合部」として機能する。作動ロッド58は、第2部材32の底部中央に設けられた挿通孔および弁体38を貫通し、その上端部がパワーエレメント6を軸線方向にガイドしている。
弁体38は、パワーエレメント6と作動ロッド58との間に配設されている。弁体38は有底円筒状をなし、その底部中央に挿通孔91が形成され、挿通孔91の周囲には冷媒を通過させるための複数の連通孔93が形成されている。弁体38の上端部は、パワーエレメント6の下面に着脱し、弁駆動体30の内部通路35と弁体38の内部通路37との連通状態を遮断又は許容する。すなわち、弁体38の上端部とパワーエレメント6の下面とにより「開閉弁部」が構成される。
挿通孔91には、作動ロッド58の上端部が相対変位可能に挿通される。ソレノイド3がオンにされた主弁の制御状態においては、作動ロッド58の上部に設けられた係合部94(「第1係合部」として機能する)が弁体38の下面に係合する。また、スプリング39,40の付勢力により、弁駆動体30と弁体38とが互いに当接する方向に付勢される。それにより、作動ロッド58、弁体38および弁駆動体30が一体に変位することができる。
パワーエレメント6は、一対のベース部材97,98およびベローズ8を含んで構成される。ベース部材97,98は、金属材をプレス成形して有底円筒状に構成されており、その開口端部に半径方向外向きに延出するフランジ部100を有する。ベローズ8は、蛇腹状の本体の上端開口部がベース部材97のフランジ部100に気密に溶接され、下端開口部がベース部材98のフランジ部100に気密に溶接されている。それにより、ベース部材98の上下端が閉止されている。ベース部材97,98は、それぞれの本体がベローズ8の内方に延在し、互いの底部が近接配置されている。
ベース部材97の本体には、支持部材27の下端部が圧入されている。一方、ベース部材98の本体には、作動ロッド58の上端部が遊嵌されている。すなわち、作動ロッド58の係合部94よりも上部が縮径されており、その縮径部99が挿通孔91を貫通してベース部材98に部分的に挿通される。ただし、作動ロッド58の挿入量は、その縮径部99の基端である係合部94が弁体38の下面に係止されることにより規制される。なお、縮径部99の横断面はD形断面とされており、ベース部材98の内方の圧力を逃がせるように構成されている。作動ロッド58は、係合部94が弁体38に係止された状態でパワーエレメント6と一体に変位可能となっている。また、図示のように弁駆動体30と弁体38とが互いに押しつけられた状態においては、作動ロッド58が弁体38を介して弁駆動体30と一体に変位可能となる。
ベローズ8の内部は密閉された基準圧力室Sとなっている。ベース部材97とベース部材98との間には、ベローズ8を伸長方向に付勢するスプリング104が介装されている。基準圧力室Sは、本実施形態では真空状態とされている。ベローズ8は、弁駆動体30の内部のクランク圧力Pcと基準圧力室Sの基準圧力との差圧に応じて軸線方向(弁部の開閉方向)に伸長または収縮する。ただし、その差圧が大きくなってもベローズ8が所定量収縮すると、ベース部材97とベース部材98とが当接して係止されるため、その収縮は規制される。
なお、弁体38は、作動ロッド58の上端部を軸芯としてパワーエレメント6と作動ロッド58との間に支持されるが、パワーエレメント6および作動ロッド58のいずれにも固定されてはいない。
作動ロッド58における係合部94のやや下方には凹溝が周設され、リング状の係合部材59(「第2係合部」として機能する)が嵌着されている。このため、副弁の開弁後に作動ロッド58を弁駆動体30に対してさらに相対変位させると、係合部材59が弁駆動体30(第2部材32)の底部と係合する。それにより、ソレノイド力を弁駆動体30に直接伝達することができ、弁駆動体30を主弁の閉弁方向に押圧することができる。この構成は、万が一、弁駆動体30とガイド孔26との摺動部や、弁駆動体30とガイド孔74との摺動部への異物の噛み込みにより弁駆動体30がロックした場合に、それを解除するロック解除機構(連動機構、押圧機構)として機能する。
以上の構成において、弁体33と弁座20とにより主弁が構成され、その主弁の開度によって吐出室からクランク室へ導入される冷媒流量が調整される。また、弁体38と弁座36とにより副弁が構成され、その副弁の開閉によりクランク室から吸入室への冷媒の導出が許容または遮断される。すなわち、制御弁1は、主弁と副弁のいずれか一方を開弁させることにより冷媒の流れを切り替える三方弁としても機能する。
本実施形態においては、弁駆動体30の主弁における有効受圧径A(シール部径)、弁駆動体30の摺動部における有効受圧径B(シール部径)、ベローズ8の有効受圧径C、弁体38の副弁における有効受圧径D(シール部径)、弁駆動体30の遮断弁部における有効受圧径E(シール部径)、および弁体38の開閉弁部における有効受圧径F(シール部径)が等しく設定されている。このため、弁駆動体30とパワーエレメント6とが作動連結した状態においては、弁体33に作用する吐出圧力Pdおよびクランク圧力Pcの影響がキャンセルされる。パワーエレメント6は、その有効受圧面積に吸入圧力Psのみを受けることになる。その結果、主弁の制御状態において、弁体33は、作動室28にて受ける吸入圧力Psに基づいて開閉動作することになる。つまり、制御弁1は、いわゆるPs感知弁として機能する。
本実施形態では、スプリング39,64の付勢力により、作動ロッド58の係合部94と弁体38とが常に当接する状態が維持される。一方、ソレノイド3がオフにされた副弁の閉弁状態において、作動ロッド58の係合部材59と弁駆動体30の底面との間隔が所定値Lとなるように機構の形状および大きさが設定されている。制御弁1の起動時においては、ソレノイド3への通電により主弁の閉弁方向かつ副弁の開弁方向のソレノイド力を弁体38に伝達することができる。これにより、弁体33を弁座20に着座させて主弁を閉じ、さらに弁体38を弁座36からリフトさせて副弁を開くことができる。すなわち、制御弁1は、ソレノイド3の駆動力を用いて副弁を強制的に開弁させるための「強制開弁機構」を有する。
以上のような構成において、制御弁1の安定した制御状態においては、作動室28内の吸入圧力Psが所定の設定圧力Psetとなるよう主弁が自律的に動作する。この設定圧力Psetは、基本的にはスプリング39,40,64,104のばね荷重およびベローズ8の荷重によって予め調整され、蒸発器内の温度と吸入圧力Psとの関係から、蒸発器の凍結を防止できる圧力値として設定されている。設定圧力Psetは、ソレノイド3への供給電流(設定電流)を変えることにより変化させることができる。本実施形態では、制御弁1の組み付けが概ね完了した状態で支持部材27の圧入量を再調整することで、スプリングの設定荷重を微調整することができ、設定圧力Psetを正確に調整することができる。
次に、制御弁1の動作について説明する。
制御弁1においてソレノイド3が非通電のとき、つまり空調装置が動作していないときには、コア42とプランジャ46との間に吸引力が作用しない。このため、スプリング39の付勢力により弁体38が下方に変位し、弁駆動体30を下方に押圧する。その結果、弁体33が弁座20から離間して主弁が全開状態となる。このとき、弁体38が弁座36に着座して副弁が閉弁状態となり、弁駆動体30の下端部が弁座88に着座して遮断弁部が閉弁状態となる。このため、圧縮機の吐出室からポート14に導入された冷媒は、全開状態の主弁を通過し、ポート12からクランク室へと流れることになる。一方、クランク圧力Pcのリリーフは遮断される。したがって、クランク圧力Pcが高くなり、圧縮機は最小容量運転を行うようになる。このとき、パワーエレメント6は実質的に機能しない。
一方、スプリング39の付勢力により弁体38がパワーエレメント6から離間し、弁体38の内部通路37が開放される。すなわち、遮断弁部が閉じられた状態で開閉弁部が開かれる。その結果、弁駆動体30の内部通路35および弁体38の内部通路37にクランク圧力Pcが満たされ、弁駆動体30および弁体38に作用する冷媒圧力の影響がキャンセルされる。各弁体に差圧(Pc−Ps)が作用しないため、次にソレノイド3へ通電したときには弁駆動体30ひいては弁体33を小さなソレノイド力で閉弁方向に駆動することができる。
一方、空調装置の起動時など、ソレノイド3に制御電流が供給されると、ソレノイド力により作動ロッド58が駆動される。このソレノイド力は、作動ロッド58および弁体38を介して弁駆動体30ひいては弁体33にも伝達される。その結果、弁体33が弁座20に着座して主弁を閉じ、その主弁の閉弁とともに弁体38が弁座36から離間して副弁を開弁させる。ただし、係合部材59が弁駆動体30に係止されることにより作動ロッド58の変位が規制されるため、弁体38のリフト量(つまり副弁の開度)は、上記所定値Lに一致する。なお、起動時は通常、吸入圧力Psおよびクランク圧力Pcが比較的高いため、ベローズ8が縮小状態を維持し、副弁の開弁状態が維持される。
すなわち、ソレノイド3に起動電流が供給されると、主弁が閉じてクランク室への吐出冷媒の導入を規制すると同時に副弁が直ちに開いてクランク室内の冷媒を吸入室に速やかにリリーフさせる。その結果、圧縮機を速やかに起動させることができる。また、例えば車両が低温環境下におかれた場合のように、吸入圧力Psが低く、ベローズ8が伸長した状態においても、ソレノイド3に大きな電流を供給することで副弁を開弁させることができ、圧縮機を速やかに起動させることができる。
そして、ソレノイド3に供給される電流値が所定値に設定された制御状態にあるときには、吸入圧力Psおよびクランク圧力Pcが比較的低いためにベローズ8が伸長し、弁体38が弁座36に着座して副弁を閉弁させる。一方、そのように副弁が閉じられた状態で弁体33が動作して主弁の開度を調整する。このとき、弁体33は、スプリング39,64,104による開弁方向の力と、スプリング40による閉弁方向の力と、ソレノイド3による閉弁方向のソレノイド力と、吸入圧力Psに応じて動作するパワーエレメント6によるソレノイド力に対抗する力とがバランスした弁リフト位置にて停止する。
そして、たとえば冷凍負荷が大きくなり吸入圧力Psが設定圧力Psetよりも高くなると、ベローズ8が縮小するため、弁体33が相対的に上方(閉弁方向)へ変位する。その結果、主弁の弁開度が小さくなり、圧縮機は吐出容量を増やすよう動作する。その結果、吸入圧力Psが低下する方向に変化する。逆に、冷凍負荷が小さくなって吸入圧力Psが設定圧力Psetよりも低くなると、ベローズ8が伸長する。その結果、パワーエレメント6による付勢力がソレノイド力に対抗する方向に作用する。この結果、弁体33への閉弁方向の力が低減されて主弁の弁開度が大きくなり、圧縮機は吐出容量を減らすよう動作する。その結果、吸入圧力Psが設定圧力Psetに維持される。
このような定常制御が行われている間にエンジンの負荷が大きくなり、空調装置への負荷を低減させたい場合、制御弁1においてソレノイド3がオンからオフに切り替えられる。そうすると、コア42とプランジャ46との間に吸引力が作用しなくなるため、ベローズ8が伸長し、スプリング39の付勢力により弁体33が弁座20から離間し、主弁が全開状態となる。このとき、弁体38は弁座36に着座しているため、副弁は閉弁状態となる。このとき、圧縮機の吐出室からポート14に導入された吐出圧力Pdの冷媒は、全開状態の主弁を通過し、ポート12からクランク室へと流れることになる。したがって、クランク圧力Pcが高くなり、圧縮機は最小容量運転を行うようになる。
次に、本実施形態における異物排出促進構造について説明する。
本実施形態では、ポート14から導入された冷媒に異物が含まれる場合に、その異物が弁駆動体30とガイド孔26との間隙に侵入することを効果的に抑制するとともに、その異物を主通路に沿って排出可能な異物排出促進構造が設けられる。以下、その詳細について説明する。図3は、異物排出促進構造およびその作用効果を表す図である。(A)は図2のG部拡大図である。(B)は本実施形態の異物排出促進効果を示し、(C)は比較例の異物排出構造およびその作用を示す。なお、図3(A)においては便宜上、ポート14と弁室24との境界を破線にて示している。
図3(A)に示すように、本実施形態では、弁室24に位置する弁駆動体30の外周面に所定深さの凹部110が周設されている。この凹部110は、ポート14から侵入した異物を受け止めるための「段差部」として機能する。凹部110は、弁駆動体30の軸線に平行な底面112を有する。底面112の一端側(ガイド孔26側)の壁面114は、底面112に対して直角をなし、底面112の他端側(弁孔18側)の壁面116は、底面112に対して鈍角(約150度)をなすように形成されている。壁面114は、弁孔18側に対面し、ポート14よりもガイド孔26側に位置する。壁面116は、弁孔18側に向けて外径が徐々に大きくなるテーパ面とされている。
一方、弁座20は、弁孔18側に向けて徐々に内径が小さくなるテーパ面とされており、弁体33の周縁部が線接触態様で着座して主弁(弁部)を閉じる。壁面116のテーパ面に沿う仮想の延長線(二点鎖線参照)が、弁体33の着脱部からずれるように、テーパ面の角度および位置が設定されている。すなわち、図示のように、壁面116の延長線と弁座20との交点aが、弁座20における弁体33の着脱点bとずれるように構成されている。これにより、壁面116に沿って流れる異物が、弁体33の着脱部に直接衝突し難くなっている。
また、弁室24の一端側(ガイド孔26側)の壁面118が、凹部110よりもガイド孔26側に位置するように構成されている。すなわち、凹部110の壁面114が、弁室24の壁面118とポート14との間に位置するように構成されている。これにより、ポート14から侵入した異物を凹部110によりキャッチし易くしている。すなわち、ポート14から異物が侵入する場合、その異物は、ある程度の質量を有するため、ポート14に沿ってほぼ直進すると考えられる。この直進してきた異物を凹部110により受け止め、壁面114により堰き止めることで、弁駆動体30とガイド孔26との間隙に向かい難くするものである。特に、壁面114をポート14よりもガイド孔26側に位置させることで凹部110をガイド孔26寄りに構成し、異物が直進方向から逸れても凹部110にてキャッチできるようにされている。また、壁面118を壁面114よりもガイド孔26側に位置させることで凹部110とガイド孔26との距離を確保し、異物が弁駆動体30とガイド孔26との間隙に到達し難い構成とされている。
このような構成により、図3(B)に示すように、ポート14から侵入した異物Wのほとんどは、主通路に沿って弁孔18に直接導かれるか(点線参照)、凹部110に当たった後、その底面112に沿って弁孔18に導かれるか(一点鎖線参照)、あるいは凹部110にキャッチされた後に弁孔18に導かれるようになる(二点鎖線参照)。すなわち、弁駆動体30の外周面に凹部110を設けたことにより、異物Wが弁駆動体30とガイド孔26との摺動部に直接導かれることが抑制される。凹部110にキャッチされた異物Wは、主弁(弁部)の前後差圧による吸引力によって弁孔18側に排出されるようになる。
これに対し、図3(C)に示す比較例では、弁駆動体130に異物Wをキャッチする段差部が設けられていないため、ポート14から侵入した異物Wの一部が弁駆動体130とガイド孔26との摺動部に導かれ易くなる。その結果、異物Wがその摺動部に噛み込んで弁駆動体130ひいては弁体33の円滑な作動を阻害し易くなる。言い換えれば、本実施形態によれば、このような問題を解決することが可能となる。
なお、弁室24の壁面118が、凹部110よりもガイド孔26側に位置することにより、ソレノイド力によって異物を排除し易い構成となっている。すなわち、仮に弁駆動体30とガイド孔26との摺動部に異物Wが介在したとしても、ソレノイド3に通電することで(又はソレノイド3への通電量を増加させることで)、作動ロッド58がガイド孔26に対して異物Wを排出する方向に作動する。このため、万が一、異物Wによるロックが生じた場合には、ソレノイド力をロック解除に有効に利用することができる。
(変形例)
図4〜図7は、変形例に係る制御弁の異物排出促進構造を表す部分拡大断面図である。各変形例の制御弁は、弁駆動体に形成される段差部の構成が上記実施形態と異なる。このため、以下では上記実施形態との相異点を中心に説明する。なお、各図において上記実施形態とほぼ同様の構成部分については同一の符号を付している。各図においては便宜上、ポートと弁室との境界を破線にて示している。
図4(A)に示す変形例においては、弁駆動体230において、凹部210の弁孔18側の壁面216がテーパ面ではなく、底面112に対して直角をなす。このような構成であっても、ポート14から侵入した異物が凹部210によってキャッチされて減速され、弁孔18側に排出される。このため、異物の排出促進効果を得ることができる。ただし、上記実施形態のようにテーパ面とされるほうが、その排出促進効果が高いことは言うまでもない。
図4(B)に示す変形例においては、弁駆動体330の先端部に設けられた段差部310が弁孔18側の壁面を有しておらず、一端側(ガイド孔26側)の壁面118のみが設けられている。このような構成であっても、ポート14から侵入した異物のうちガイド孔26側へ向かうものを壁面118により堰き止めることができ、底面312に沿って弁孔18側へ導くことができる。このため、異物の排出促進効果を得ることができる。ただし、この構成では、弁駆動体330の弁部における有効受圧径と、弁駆動体330の摺動部における有効受圧径との間に差ができてしまう。このため、圧力キャンセル機能が重視される場合には上記実施形態の構成のほうが好ましい。
図5(A)に示す変形例においては、弁駆動体430において、弁孔18側の壁面116とガイド孔26側の壁面114とが直接接続されたような断面レの字状の凹部410が形成されている。このような構成であっても、ポート14から侵入した異物が凹部410によってキャッチされて減速され、壁面116のテーパ面によって弁孔18側に導かれる。このため、異物の排出促進効果を得ることができる。ただし、凹部410の容積が小さいため、異物をキャッチできる容量が小さい。このため、冷媒に含まれる異物の量が多く見込まれる場合には、上記実施形態の構成のほうが好ましい。
図5(B)に示す変形例においては、弁駆動体530に形成される凹部510が、図5(A)の凹部410を軸線方向に反転させたような形状を有する。すなわち、弁孔18側の壁面516が軸線に対して直角をなし、ガイド孔26側の壁面514がテーパ面となっている。このような構成であっても、ポート14から侵入した異物が凹部510によってキャッチされて減速され、主弁の前後差圧により弁孔18側に導かれる。このため、異物の排出促進効果を得ることができる。ただし、壁面514のテーパ面が異物をガイド孔26側に導き易い形状となっているため、図5(A)の凹部410よりも排出促進機能が劣ると考えられる。
図6(A)に示す変形例においては、弁駆動体630において、凹部610のガイド孔26側の壁面614が底面112に対して直角ではなく、やや鋭角をなす。壁面614は、全体としてポート14よりもガイド孔26側に位置するが、その先端がポート14の開口端のほぼ延長上に位置している。このような構成であっても、ポート14から侵入した異物が凹部610によってキャッチされて減速され、壁面116のテーパ面に沿って弁孔18側に排出される。
また、弁室624のポート14よりもガイド孔26側に位置する部分が小径化され、その小径部625の内周面と弁駆動体630の外周面との間隙が小さくされている。弁室624の一端側(ガイド孔26側)の壁面618が、凹部610よりもガイド孔26側に位置するが、その面積は小さい。これにより、ポート14に沿って侵入する異物がその間隙を越えて凹部610に導かれ易くし、弁駆動体630とガイド孔26との摺動部に導かれ難くしている。このような構成により、全体として異物の排出促進効果が高められるようにしている。
図6(B)に示す変形例においては、ポート714の内方を段差形状としている。すなわち、ポート714の内方にその下半部を遮断するように隔壁715を設けることで、ポート714に導入された冷媒の流れを上方、つまり弁孔18側に向けるようにしている。このような構成により、異物を弁孔18へ直接導くことが容易となる。
図7に示す変形例では、弁駆動体830の段差部が2つの部材を組み付けることにより形成されている。なお、図7(B)は図7(A)のH部拡大図である。すなわち、図7(A)に示すように、弁駆動体830を構成する第1部材831が、段付円筒状の本体832の上端部に円筒状の弁形成部材834を圧入することにより構成されている。弁形成部材834は、その下半部が本体832の上端部に内挿されるように組み付けられている。
図7(B)に示すように、本体832と弁形成部材834とにより、凹部810の一端側(ガイド孔26側)に、軸線方向上方(弁孔18側)に開口する凹部820が形成されるようになり、異物を捕捉し易い構造となっている。この構造は、図6に示す構造と近似するが、2つの部材で構成することにより加工がより容易となっている。すなわち、図6に示したように壁面614を底面112に対して鋭角とする加工を行う場合、特殊な形状の工具を使用する必要がある。この点、図7に示したように本体832と弁形成部材834とを別々に加工して組み付ける構造であれば、通常の工具を用いて加工することができるといったメリットがある。
[第2実施形態]
図8は、第2実施形態に係る制御弁の構成を示す断面図である。なお、同図において第1実施形態とほぼ同様の構成部分については同一の符号を付している。
制御弁201は、弁本体202とソレノイド203とを一体に組み付けて構成される。弁本体202は、段付円筒状のボディ205、ボディ205の内部に設けられた弁部等を備えている。ボディ205には、その上端側からポート12(クランク室連通ポート)、ポート14(吐出室連通ポート)、ポート16(吸入室連通ポート)が設けられている。
ボディ205の軸線に沿って、弁孔18とガイド孔226とが同軸状に設けられている。弁孔18の上端開口端部に弁座20(主弁座)が形成されている。そして、ボディ205を軸線方向に貫通するように長尺状の弁駆動体250が配設されている。
弁駆動体250は、段付円柱状をなし、ガイド孔226に摺動可能に支持され、その上端部が弁孔18を貫通し、その先端部に弁体33(主弁体)が一体に設けられている。弁体33は、ポート12側から弁座20に着脱して主弁(弁部)を開閉する。弁駆動体250には、軸線方向に貫通する内部通路35が設けられている。弁駆動体250の下端部が弁体38(副弁体)を形成している。
ボディ205の上端開口部にはばね受け234が螺着されており、そのばね受け234と弁駆動体250との間には、弁体33を主弁の閉弁方向に付勢するスプリング236(「付勢部材」として機能する)が介装されている。スプリング236の荷重は、ばね受け234のボディ205への螺入量により調整可能となっている。
弁本体202とソレノイド203とは、磁性材料からなる筒状の接続部材238を介して接続されている。すなわち、ボディ205の下端部が接続部材238の上端部に圧入され、ソレノイド203のケース52の上端部が接続部材238の下端部に圧入されている。そして、ボディ205の下端側部にポート16が設けられ、弁本体202とソレノイド203とに囲まれる空間に作動室28が形成されている。
一方、ソレノイド203は、ケース52と、ケース52内に挿通された円筒状のスリーブ244と、スリーブ244の下端部に固定されたコア242と、コア242と軸線方向に対向配置されたプランジャ246と、ボビン48と、電磁コイル50と、ケース52の下端開口部を封止するように設けられた端部材254とを備える。なお、本実施形態においては、ボディ205、コア242、ケース52および端部材254が制御弁201全体のボディを形成している。
プランジャ246は、薄膜状のダイヤフラム265を挟んで分割された2つのプランジャからなり、その一方である第1プランジャ266がスリーブ244の内部に配置され、他方の第2プランジャ268がボディ205と接続部材238とにより囲まれる空間に配置されている。ダイヤフラム265は、スリーブ244の上端開口部を封止し、スリーブ244の内方に基準圧力室を形成する。本実施形態において、この基準圧力室には大気が満たされるが、真空状態としてもよい。ダイヤフラム265は、可撓性を有する感圧部材であり、ポリイミドフィルムを複数枚重ねて構成されている。ダイヤフラム265は、基準圧力室とは反対側面にて吸入圧力Psを感知し、その外周縁部を支点として変位することにより、プランジャ246に対して開弁方向または閉弁方向の駆動力を付与する。なお、変形例においては、ダイヤフラム265として金属ダイヤフラムを採用してもよい。
第2プランジャ268の上面中央には凹部270が形成され、その中央のフラットな面に弁駆動体250の下端面が接離可能に支持されている。すなわち、第2プランジャ268の上面中央が弁座36(副弁座)を形成しており、弁体38が弁座36に着脱して副弁を開閉する。第2プランジャ268の側部には、凹部270の内外を連通させる連通孔271が設けられている。
また、第2プランジャ268の上端部には、半径方向外向きに延びるフランジ部272が設けられており、そのフランジ部272の下面を接続部材238の上面と対応させるようにしている。これにより、ソレノイド203の通電時にフランジ部272と接続部材238との間に軸線方向の吸引力を発生させ、弁体38が閉弁方向に迅速に移動できるようにしている。第2プランジャ268は、接続部材238内に形成された段差部との間に介装されたスプリング274(「付勢部材」に該当する)によって上方へ付勢されている。このスプリング274は、弁体38を付勢するスプリング236よりも大きなばね力を有する。
スリーブ244の上端開口部には半径方向外向きに延出するフランジ部276が設けられ、接続部材238とフランジ部276との間にダイヤフラム265の外周縁部を挟むようにしてダイヤフラム265を固定している。接続部材238の下端部には、ダイヤフラム265およびフランジ部276を間に挟むようにして環状のプレート278が圧入されている。すなわち、スリーブ244は、プレート278の圧入により接続部材238ひいてはボディ205に対して固定されている。接続部材238の下端面とダイヤフラム265との間にはシール用のOリング280が介装されている。
スリーブ244とコア242とは、圧入および加締めにより軸線方向に接合されている。スリーブ244の内方には、第1プランジャ266が軸線方向に進退自在に配置されている。第1プランジャ266は、コア242の中心を軸線方向に延びるシャフト258の一端に圧入されている。シャフト258は、その一端部の軸線方向位置が第1プランジャ266におけるスリーブ244との摺動部267の軸線方向位置と重なるように位置決めされている。
シャフト258の他端は、コア242の下端部に螺合された軸受部材290によって支持されている。シャフト258の途中には止輪292が嵌合され、その止輪292によって上方への移動が規制されるようにばね受け294が設けられている。ばね受け294と軸受部材290との間には、第1プランジャ266をシャフト258を介してコア242から離れる方向へ付勢するスプリング275が介装されている。このスプリング275の荷重は、軸受部材290のコア242への螺入量を変えることによって調整することができる。
次に、制御弁201の動作について説明する。
制御弁201において、ソレノイド203が非通電のときには、コア242とプランジャ246との間に吸引力が作用しない。また、吸入圧力Psが高いため、ダイヤフラム265に当接した第1プランジャ266は、スプリング275の荷重に抗して下方へ変位する。一方、第2プランジャ268は、スプリング274によって第1プランジャ266から離れるよう上方へ付勢されているため、弁駆動体250を介して弁体33をその全開位置に付勢する。このとき、弁駆動体250と第2プランジャ268との当接状態、つまり副弁の閉弁状態は維持される。圧縮機の吐出室からポート14に導入された吐出圧力Pdの冷媒は、全開状態の弁部を通過し、ポート12からクランク室へと流れることになる。したがって、クランク圧力Pcが上昇し、圧縮機は最小容量運転を行う。
一方、自動車用空調装置が起動されたときのように、ソレノイド203に制御電流が供給されると、第1プランジャ266がダイヤフラム265を介してスプリング274の付勢力に抗して第2プランジャ268を吸引する。このため、第2プランジャ268がダイヤフラム265に当接して下方へ移動し、これに伴って、弁体33がスプリング236により押し下げられて弁座20に着座し、主弁が閉弁状態となる。このとき、弁駆動体250が、第2プランジャ268から離間した状態となる。すなわち、副弁が開弁してブリード機能が発揮される。
こうして吸入室の吸入圧力Psが十分に低くなると、ダイヤフラム265がその吸入圧力Psを感知して上方へ変位し、第2プランジャ268が弁駆動体250に当接する。このとき、ソレノイド203に供給される制御電流を空調の設定温度に応じて小さくすると、第2プランジャ268および第1プランジャ266は吸着状態のまま一体となって、吸入圧力Psによる力と、スプリング236,274,275の合力と、ソレノイド203の吸引力とがバランスする位置まで上方へ移動する。これにより、弁体33が第2プランジャ268により押し上げられ、弁座20から離れて所定の開度に設定される。したがって、吐出圧力Pdの冷媒が開度に応じた流量に制御されてクランク室に導入され、圧縮機は、制御電流に対応した容量の運転に移行するようになる。
ソレノイド3の電磁コイル50に供給される制御電流が一定の場合、ダイヤフラム265が吸入圧力Psを感知して弁開度を制御する。例えば冷凍負荷が大きくなって吸入圧力Psが高くなった場合には、弁体38が弁駆動体250,第2プランジャ268,ダイヤフラム265及び第1プランジャ266と一体となって下方へ変位するので、弁開度が小さくなり、圧縮機は、吐出容量を増やすよう動作する。その結果、吸入圧力Psが低下して設定圧力に近づくようになる。逆に、冷凍負荷が小さくなって吸入圧力Psが低くなった場合は、弁体38が上方へ変位して弁開度を大きくするので、圧縮機は、吐出容量を減らすよう動作する。その結果、吸入圧力Psが上昇して設定圧力に近づくようになる。このようにして、制御弁201は、吸入圧力Psがソレノイド203によって設定された設定圧力Psetになるよう圧縮機の吐出容量を制御する。
次に、本実施形態における異物排出促進構造について説明する。
図9は、異物排出促進構造を表す図であり、図8のI部拡大図である。本実施形態においても、弁駆動体250の外周面に段差部910が設けられている。この段差部910は、弁駆動体250の上部の縮径部を構成する。本実施形態では弁体33が弁孔18に対してポート14の反対側に配置されるため、段差部910は、弁室ではなく、ポート14と弁孔18との間の中間圧力室924に設けられる。
中間圧力室924の一端側(ガイド孔26側)の壁面918が、段差部910よりもガイド孔26側に位置するように構成されている。すなわち、段差部910の壁面114が、中間圧力室924の壁面918とポート14との間に位置するように構成されている。これにより、ポート14から侵入した異物を段差部910によりキャッチし、弁孔18への排出を促進している。壁面114の外周端縁はエッジ形状となっており、異物が侵入し難い構成とされている。
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は特定の実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術思想の範囲内で種々の変形が可能であることはいうまでもない。
上記実施形態では、弁駆動体の外周の一部を小径にすることにより段差部を形成する例を示した。変形例においては、弁駆動体の外周に一部に半径方向外向きに突出する凸部を設け、その弁駆動体の凸部よりも弁孔側の外周面と、凸部の弁孔側の壁面とにより形成sれる段差部により異物をキャッチできる構成としてもよい。
上記実施形態では、弁駆動体として中空構造の駆動体を例示した。変形例においては、弁駆動体を中実構造としてもよい。例えば、ブリード機能とは無関係の中実のシャフトを弁駆動体として、その外周面に段差部(凹部)を設けるようにしてもよい。ブリード機能を有しない制御弁に対して上記異物排出促進構造を適用してもよい。
上記実施形態では、ソレノイドをアクチュエータとする電磁弁に異物排出促進構造を適用する例を示した。変形例においては、ステッピングモータ等の電動機をアクチュエータとする制御弁に対して同様の異物排出促進構造を適用してもよい。また、上記実施形態では、可変容量圧縮機用制御弁に異物排出促進構造を適用する例を示した。変形例においては、冷凍サイクルに設けられる他の制御弁に適用してもよい。あるいは、冷凍サイクルに限らず、流体の流れを制御する他の制御弁に適用してもよい。
なお、本発明は上記実施形態や変形例に限定されるものではなく、要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化することができる。上記実施形態や変形例に開示されている複数の構成要素を適宜組み合わせることにより種々の発明を形成してもよい。また、上記実施形態や変形例に示される全構成要素からいくつかの構成要素を削除してもよい。