以下、本発明の実施形態を、図面を参照して詳細に説明する。なお、以下の説明においては便宜上、図示の状態を基準に各構造の位置関係を表現することがある。また、以下の実施形態およびその変形例について、ほぼ同一の構成要素については同一の符号を付し、その説明を適宜省略する。
[第1実施形態]
図1は、第1実施形態に係る制御弁の構成を示す断面図である。
制御弁1は、自動車用空調装置の冷凍サイクルに設置される可変容量圧縮機(単に「圧縮機」という)の吐出容量を制御する。この圧縮機は、冷凍サイクルを流れる冷媒を圧縮して高温・高圧のガス冷媒にして吐出する。そのガス冷媒は凝縮器(外部熱交換器)にて凝縮され、さらに膨張装置により断熱膨張されて低温・低圧の霧状の冷媒となる。この低温・低圧の冷媒が蒸発器にて蒸発し、その蒸発潜熱により車室内空気を冷却する。蒸発器で蒸発された冷媒は、再び圧縮機へと戻されて冷凍サイクルを循環する。
圧縮機は、自動車のエンジンによって回転駆動される回転軸を有し、その回転軸に取り付けられた斜板に圧縮用のピストンが連結されている。その斜板の角度を変化させてピストンのストロークを変えることにより、冷媒の吐出量が調整される。制御弁1は、その圧縮機の吐出室から制御室へ導入する冷媒流量、および制御室から吸入室へ導出する冷媒流量に応じて斜板の角度、ひいてはその圧縮機の吐出容量を変化させる。なお、本実施形態の制御室はクランク室からなるが、変形例においてはクランク室内又はクランク室外に別途設けられた圧力室であってもよい。
制御弁1は、圧縮機の吸入圧力Psを設定圧力に保つように、吐出室から制御室に導入する冷媒流量を制御するいわゆるPs感知弁として構成されている。制御弁1は、弁本体2とソレノイド3とを軸線方向に組み付けて構成される。弁本体2は、主弁7および副弁8を含む。主弁7は、圧縮機の運転時に開度が調整され、吐出冷媒の一部を制御室へ導く。副弁8は、圧縮機の起動時に全開状態となり、制御室の冷媒を吸入室へ逃がすいわゆるブリード弁として機能する。本実施形態では、副弁8が「第1弁」に対応し、「抽気弁」として機能する。また、主弁7が「第2弁」に対応し、「給気弁」として機能する。
ソレノイド3は、主弁7の閉弁方向かつ副弁8の開弁方向の駆動力を発生する。その駆動力は、供給電流値に応じた大きさで得られる。弁本体2は、段付円筒状のボディ5を有し、そのボディ5内に主弁7,副弁8およびパワーエレメント6を収容する。パワーエレメント6は「感圧部」として機能し、吸入圧力Psの大きさに応じたソレノイド3への対抗力を発生する。
ボディ5には、その上端側からポート12,14,16が設けられている。ポート12は、圧縮機の吸入室に連通する。ポート14は、圧縮機の制御室に連通する。ポート16は、圧縮機の吐出室に連通する。本実施形態では、ポート14が「第1ポート」、ポート12が「第2ポート」、ポート16が「第3ポート」としてそれぞれ機能する。ボディ5の上端開口部を閉じるように端部材13が固定されている。
ボディ5内には、ポート16とポート14とを連通させる主通路と、ポート14とポート12とを連通させる副通路とが形成されている。主通路には主弁7が設けられ、副通路には副弁8が設けられる。すなわち、制御弁1は、一端側からパワーエレメント6、副弁8、主弁7、ソレノイド3が順に配置される構成を有する。主通路には主弁孔20と主弁座22が設けられる。副通路には副弁座34が設けられる。
ポート12は、ボディ5の上部に区画された作動室23と吸入室とを連通させる。パワーエレメント6は、作動室23に配置されている。ポート16は、吐出室から吐出圧力Pdの冷媒を導入する。ポート16と主弁孔20との間には主弁室24が設けられ、主弁7が配置されている。主弁孔20の下端開口部に主弁座22が形成されている。ポート14は、圧縮機の定常動作時に主弁7を経由して制御圧力Pcとなった冷媒を制御室へ向けて導出する一方、圧縮機の起動時には制御室から排出された制御圧力Pcの冷媒を導入する。ポート14と主弁孔20との間には副弁室26が設けられ、副弁8が配置されている。ポート12は、圧縮機の起動時に副弁8を経由して吸入圧力Psとなった冷媒を吸入室へ向けて導出する。本実施形態では、副弁室26が「第1弁室(第1室)」、作動室23が「第2室」、主弁室24が「第2弁室」としてそれぞれ機能する。
ポート14,16には、円筒状のフィルタ部材15,17がそれぞれ取り付けられている。フィルタ部材15,17は、ボディ5の内部への異物の侵入を抑制するためのメッシュを含む。主弁7の開弁時にはフィルタ部材17がポート16への異物の侵入を抑制し、副弁8の開弁時にはフィルタ部材15がポート14への異物の侵入を抑制する。
副弁室26と作動室23との間にはガイド孔25が設けられている。ボディ5の下部(主弁室24の主弁孔20とは反対側)にはガイド孔27が設けられている。ガイド孔27には、弁駆動体29が摺動可能に挿通されている。
弁駆動体29は段付円筒状をなし、その上部が縮径して主弁孔20を貫通しつつ内外を区画する区画部33となっている。区画部33は「延在部」として機能する。弁駆動体29に形成された段部が、主弁座22に着脱して主弁7を開閉する主弁体30となっている。主弁体30が主弁室24側から主弁座22に着脱することにより主弁7を開閉する。区画部33の上部が上方に向かってテーパ状に拡径し、その上端開口部に副弁座34が構成されている。副弁座34は、弁駆動体29と共に変位する可動弁座として機能する。なお、本実施形態では、弁駆動体29と主弁体30とを区別しているが、弁駆動体29を「主弁体」として捉えてもよい。弁駆動体29を「弁座部材」として捉えてもよい。
一方、ガイド孔25には、円筒状の弁作動体35が摺動可能に挿通されている。弁作動体35の下端部に副弁体36が一体に設けられている。弁作動体35を軸線方向に貫通するように複数の連通路37が設けられている。副弁体36と副弁座34とは軸線方向に対向配置されている。副弁体36が副弁室26にて副弁座34に着脱することにより副弁8を開閉する。なお、本実施形態では、弁作動体35と副弁体36とを区別しているが、弁作動体35を「副弁体」として捉えてもよい。
また、ボディ5の軸線に沿って長尺状の作動ロッド38が設けられている。作動ロッド38の上端部は、弁作動体35を貫通してパワーエレメント6に遊嵌されている。弁作動体35は、パワーエレメント6と作動連結可能に接続される。作動ロッド38の下端部は、ソレノイド3のプランジャ50に連結されている。作動ロッド38の上半部は弁駆動体29を貫通し、その上部が縮径されている。その縮径部には弁作動体35が外挿され、固定されている。その縮径部の先端がパワーエレメント6に嵌合している。
作動ロッド38の軸線方向中間部にはリング状のばね受け40が嵌着され、支持されている。弁駆動体29とばね受け40との間には、弁駆動体29を主弁7および副弁8の閉弁方向に付勢するスプリング42(「付勢部材」として機能する)が介装されている。主弁7の制御時には、スプリング42の弾性力によって弁駆動体29とばね受け40とが突っ張った状態となり、主弁体30と作動ロッド38とが一体に動作する。
パワーエレメント6は、吸入圧力Psを感知して変位するベローズ45を含み、そのベローズ45の変位によりソレノイド力に対抗する力を発生させる。この対抗力は、作動ロッド38および弁作動体35を介して主弁体30にも伝達される。副弁体36が副弁座34に着座して副弁8を閉じることにより、制御室から吸入室への冷媒のリリーフが遮断される。また、副弁体36が副弁座34から離間して副弁8を開くことにより、制御室から吸入室への冷媒のリリーフが許容される。
一方、ソレノイド3は、段付円筒状のコア46と、コア46の下端開口部を封止するように組み付けられた有底円筒状のスリーブ48と、スリーブ48に収容されてコア46と軸線方向に対向配置された段付円筒状のプランジャ50と、コア46およびスリーブ48に外挿された円筒状のボビン52と、ボビン52に巻回され、通電により磁気回路を生成する電磁コイル54と、電磁コイル54を外方から覆うように設けられる円筒状のケース56と、ケース56の下端開口部を封止するように設けられた端部材58と、ボビン52の下方にて端部材58に埋設された磁性材料からなるカラー60を備える。
弁本体2とソレノイド3とは、ボディ5の下端部がコア46の上端開口部に圧入されることにより固定されている。ボディ5とコア46との間に作動室28が形成されている。一方、コア46の中央を軸線方向に貫通するように、作動ロッド38が挿通されている。作動室28は、弁駆動体29および弁作動体35のそれぞれの内部通路を介して作動室23に連通する。このため、作動室28には作動室23の吸入圧力Psが導入される。この吸入圧力Psは、作動ロッド38とコア46との間隙により形成される連通路62を通ってスリーブ48の内部にも導かれる。
コア46とプランジャ50との間には、両者を互いに離間させる方向に付勢するスプリング44(「付勢部材」として機能する)が介装されている。スプリング44は、ソレノイド3のオフ時に主弁7を全開させるいわゆるオフばねとして機能する。作動ロッド38は、弁作動体35およびプランジャ50のそれぞれに対して同軸状に接続されている。作動ロッド38は、その上部が弁作動体35に圧入され、下端部がプランジャ50の上部に圧入されている。これら作動ロッド38、弁作動体35およびプランジャ50は、主弁7の制御時において弁駆動体29と一体変位する「可動体」を構成する。
作動ロッド38は、コア46とプランジャ50との吸引力であるソレノイド力を、主弁体30および副弁体36に適宜伝達する。一方、作動ロッド38には、パワーエレメント6の伸縮作動による駆動力(「感圧駆動力」ともいう)がソレノイド力と対抗するように負荷される。すなわち、主弁7の制御状態においては、ソレノイド力と感圧駆動力とにより調整された力が主弁体30に作用し、主弁7の開度を適切に制御する。圧縮機の起動時には、ソレノイド力の大きさに応じて作動ロッド38がスプリング44の付勢力およびパワーエレメント6の付勢力に抗してボディ5に対して相対変位し、主弁7を閉じた後に副弁体36を押し上げて副弁8を開弁させる。また、主弁7の制御中であっても、吸入圧力Psが相当高まると、ベローズ45が収縮して作動ロッド38がボディ5に対して相対変位し、主弁7を閉じた後に副弁体36を押し上げて副弁8を開弁させる。それによりブリード機能を発揮させる。
スリーブ48は非磁性材料からなる。プランジャ50の側面には軸線に平行な連通溝66が設けられ、プランジャ50の下部には内外を連通する連通孔68が設けられている。このような構成により、図示のようにプランジャ50が下死点に位置しても、吸入圧力Psがプランジャ50とスリーブ48との間隙を通って背圧室70に導かれる。
ボビン52からは電磁コイル54につながる一対の接続端子72が延出し、それぞれ端部材58を貫通して外部に引き出されている。同図には説明の便宜上、その一対の片方のみが表示されている。端部材58は、ケース56に内包されるソレノイド3内の構造物全体を下方から封止するように取り付けられている。端部材58は、耐食性を有する樹脂材のモールド成形(射出成形)により形成され、その樹脂材がケース56と電磁コイル54との間隙にも介在している。このように樹脂材がケース56と電磁コイル54との間隙に樹脂材を介在させることで、電磁コイル54で発生した熱をケース56に伝達しやすくし、その放熱性能を高めている。端部材58からは接続端子72の先端部が引き出されており、図示しない外部電源に接続される。
図2は、図1の上半部に対応する部分拡大断面図である。
弁駆動体29のガイド孔27との摺動面には環状溝73が周設され、Oリング74(シールリング)が嵌着されている。それにより、両者の間隙を介した冷媒の流通が防止されている。作動ロッド38が副弁体36と一体に設けられているため、ソレノイド力を副弁体36に直接的に伝達できる。
弁駆動体29の上端部(副弁座34)と弁作動体35の下端部(副弁体36)とが互いのテーパ面で着脱するように構成されている。それにより、弁駆動体29は、上端部が調心される一方、下半部がガイド孔27に摺動可能に支持されることで、軸線方向に安定に駆動される。
副弁体36の下端部は、下方に向けて外径を小さくするテーパ形状とされている。本実施形態では、このテーパ面が、所定の曲率を有する球状面(曲面)となっており、テーパ状の副弁座34に対して線接触状態にて着座する。それにより、副弁8の閉弁時には、弁駆動体29と弁作動体35とが一体となって安定に駆動される。
弁作動体35は、その中央を軸線方向に貫通する挿通孔43を有する。挿通孔43の周囲に複数の連通路37が設けられている。各連通路37は、弁駆動体29の内部通路39と作動室23とを連通させる。連通路37は、副弁8の開弁時に副弁室26と作動室23とを連通させる。
ガイド孔25の内周面には、環状溝90が周設されている。環状溝90は、例えば中ぐり加工等により得ることができる。環状溝90は「凹部」として機能し、制御弁1の耐異物性能を向上させるが、その詳細については後述する。
作動ロッド38の上部は、挿通孔43を貫通してパワーエレメント6まで延在している。弁作動体35は、作動ロッド38における縮径部の基端である段部79に係止されることにより、作動ロッド38に対する位置決めがなされている。なお、作動ロッド38は、副弁体36が副弁座34に着座した図示の状態においては、ばね受け40の上面が弁駆動体29の下面から少なくとも所定間隔Lをあけて離間するように、段部79の位置が設定されている。所定間隔Lは、いわゆる「遊び」として機能する。
ソレノイド力を大きくすると、作動ロッド38を主弁体30(弁駆動体29)に対して相対変位させて弁作動体35を押し上げることもできる。それにより、副弁体36と副弁座34とを離間させて副弁8を開くことができる。また、ばね受け40と弁駆動体29とを係合(当接)させた状態でソレノイド力を主弁体30に直接的に伝達でき、主弁体30を主弁7の閉弁方向に大きな力で押圧できる。この構成は、弁駆動体29とガイド孔27との摺動部への異物の噛み込みにより主弁体30の作動がロックした場合に、それを解除するロック解除機構として機能する。
主弁室24は、ボディ5と同軸状に設けられ、主弁孔20よりも大径の圧力室として構成される。このため、主弁7とポート16との間には比較的大きな空間が形成され、主弁7を開弁させたときに主通路を流れる冷媒の流量を十分に確保できる。同様に、副弁室26もボディ5と同軸状に設けられ、主弁孔20よりも大径の圧力室として構成される。このため、副弁8とポート14との間にも比較的大きな空間が形成される。そして図示のように、弁駆動体29の上端と副弁体36の下端との着脱部が、副弁室26の中央部に位置するように設定されている。つまり、副弁座34が常に副弁室26に位置するよう主弁体30の可動範囲が設定され、副弁室26にて副弁8が開閉される。このため、副弁8を開弁させたときに副通路を流れる冷媒の流量を十分に確保できる。つまり、ブリード機能を効果的に発揮できる。
パワーエレメント6は、ベローズ45の上端開口部を第1ストッパ82により閉止し、下端開口部を第2ストッパ84により閉止して構成されている。ベローズ45は「感圧部材」として機能する。第1ストッパ82は、端部材13と一体成形されている。第2ストッパ84は、金属材をプレス成形して有底円筒状に構成されており、その下端開口部に半径方向外向きに延出するフランジ部86を有する。ベローズ45は、蛇腹状の本体の上端部が端部材13の下面に気密に溶接され、その本体の下端開口部がフランジ部86の上面に気密に溶接されている。ベローズ45の内部は密閉された基準圧力室Sとなっている。ベローズ45の内方にはスプリング88が配設されている。スプリング88は、端部材13とフランジ部86との間に介装され、ベローズ45を伸長方向に付勢する。基準圧力室Sは、本実施形態では真空状態とされている。
端部材13は、パワーエレメント6の固定端となっている。端部材13のボディ5への圧入量を調整することにより、パワーエレメント6の設定荷重(スプリング88の設定荷重)を調整できる。なお、第1ストッパ82の中央部がベローズ45の内方に向けて下方に延在し、第2ストッパ84の中央部がベローズ45の内方に向けて上方に延在し、それらがベローズ45の軸芯を形成している。ベローズ45は、作動室23の吸入圧力Psと基準圧力室Sの基準圧力との差圧に応じて軸線方向(主弁および副弁の開閉方向)に伸長または収縮する。その差圧が小さくなってベローズ45が伸長するに応じて、弁駆動体29に主弁7の開弁方向かつ副弁8の閉弁方向の駆動力が付与される。その差圧が大きくなっても、ベローズ45が所定量収縮すると、第2ストッパ84が第1ストッパ82に当接して係止されるため、その収縮は規制される。
本実施形態においては、ベローズ45の有効受圧径Aと、主弁体30の主弁7における有効受圧径B(シール部径)と、弁駆動体29の摺動部径Cと、弁作動体35の摺動部径Dとが等しく設定されている。なお、ここでいう「等しい」とは、完全に等しい概念はもちろん、ほぼ等しい(実質的に等しい)概念を含むとみなしてよい。このため、弁駆動体29とパワーエレメント6とが作動連結した状態においては、主弁体30と副弁体36との結合体に作用する吐出圧力Pd,制御圧力Pcおよび吸入圧力Psの影響がキャンセルされる。その結果、主弁7の制御状態において、主弁体30は、パワーエレメント6が作動室23にて受ける吸入圧力Psに基づいて開閉動作することになる。つまり、制御弁1は、いわゆるPs感知弁として機能する。
本実施形態ではこのように、径B,C,Dを等しくするとともに、弁体(主弁体30および副弁体36)の内部通路を上下に貫通させることで、弁体に作用する圧力(Pd,Pc,Ps)の影響をキャンセルできる。つまり、弁作動体35,弁駆動体29,作動ロッド38およびプランジャ50の結合体の前後(図では上下)の圧力を同じ圧力(吸入圧力Ps)とすることができ、それにより圧力キャンセルが実現される。これにより、ベローズ45の径に依存することなく各弁体の径を設定することもでき、設計自由度が高い。変形例においては、径B,C,Dを等しくする一方、有効受圧径Aをこれらと異ならせてもよい。すなわち、ベローズ45の有効受圧径Aを、径B,C,Dより小さくしてもよいし、径B,C,Dより大きくしてもよい。
一方、本実施形態では、副弁体36の副弁8におけるシール部径Eが、主弁体30の主弁7における有効受圧径Bよりも小さくされ、制御圧力Pcと吸入圧力Psとの差圧(Pc−Ps)が弁駆動体29に対して副弁8の開弁方向に作用する。このような受圧構造とスプリング42による付勢構造とが、差圧(Pc−Ps)が設定差圧ΔPset以上となったときに副弁8を開弁させる「差圧開弁機構」を実現している。
次に、制御弁の動作について説明する。
本実施形態では、ソレノイド3への通電制御にPWM(Pulse Width Modulation )方式が採用される。このPWM制御は、所定のデューティ比に設定した400Hz程度のパルス電流を供給して制御を行うものであり、図示しない制御部により実行される。この制御部は、指定したデューティ比のパルス信号を出力するPWM出力部を有するが、その構成自体には公知のものが採用されるため、詳細な説明を省略する。
図3は、制御弁の動作を表す図である。既に説明した図2は、最小容量運転時における制御弁の状態を示している。図3は、最大容量運転時(空調装置の起動時等)にブリード機能が発揮されたときの状態を示している。以下では図1に基づき、適宜図2,図3を参照しつつ説明する。
制御弁1においてソレノイド3が非通電(オフ)のとき、つまり空調装置が動作していないときには、コア46とプランジャ50との間に吸引力が作用しない。一方、スプリング44の付勢力が、プランジャ50、作動ロッド38および弁作動体35を介して弁駆動体29に伝達される。その結果、図2に示すように、主弁体30が主弁座22から離間して主弁7が全開状態となる。このとき、副弁8は閉弁状態を維持する。
一方、空調装置の起動時など、ソレノイド3に制御電流(起動電流)が供給されると、コア46がプランジャ50を吸引する。このため、作動ロッド38が押し上げられる。このとき、スプリング44の付勢力により弁駆動体29が押し上げられ、図3に示すように、主弁体30が主弁座22に着座して主弁7を閉じる。一方、作動ロッド38が弁駆動体29に対して相対変位しつつさらに押し上げられ、作動ロッド38が弁作動体35を押し上げる。その結果、副弁体36が副弁座34から離間して副弁8を開く。それにより、制御室から吸入室へ所定流量の冷媒のリリーフがなされて制御圧力Pcが低下し、圧縮機は最大容量運転を行う。つまり、ブリード機能が発揮され、圧縮機が速やかに起動する。
こうして吸入圧力Psが十分に低くなると、パワーエレメント6が伸長して副弁8を閉じる。このとき、ソレノイド3に供給される制御電流を空調の設定温度に応じて小さくすると、弁駆動体29とパワーエレメント6とが一体となって作動し、主弁7が所定の開度に設定される。
ソレノイド3に供給される電流値が主弁7の制御電流値範囲にあるときには、吸入圧力Psが供給電流値により設定された設定圧力Psetとなるよう主弁7の開度が自律的に調整される。この主弁7の制御状態においては、副弁体36が副弁座34に着座し、副弁8は閉弁状態を維持する。主弁体30は、スプリング44による開弁方向の力と、閉弁方向のソレノイド力と、吸入圧力Psに応じたパワーエレメント6による開弁方向の力とがバランスした弁リフト位置にて停止する。
このとき、冷凍負荷が大きくなり吸入圧力Psが設定圧力Psetよりも高くなると、ベローズ45が縮小するため、主弁体30が相対的に上方(閉弁方向)へ変位する。その結果、主弁7の弁開度が小さくなり、圧縮機は吐出容量を増やすよう動作する。その結果、吸入圧力Psが低下する方向に変化する。逆に、冷凍負荷が小さくなって吸入圧力Psが設定圧力Psetよりも低くなると、ベローズ45が伸長する。その結果、パワーエレメント6が主弁体30を開弁方向に付勢して主弁7の弁開度が大きくなり、圧縮機は吐出容量を減らすよう動作する。その結果、吸入圧力Psが設定圧力Psetに維持される。
このような定常制御が行われている間にエンジンの負荷が大きくなり、空調装置への負荷を低減させたい場合、制御弁1においてソレノイド3がオンからオフに切り替えられる。そうすると、コア46とプランジャ50との間に吸引力が作用しなくなるため、スプリング44の付勢力により主弁体30が主弁座22から離間し、主弁7が全開状態となる。このとき、基本的に副弁体36は副弁座34に着座しているため、副弁8は閉弁状態となる。それにより、圧縮機の吐出室からポート16に導入された吐出圧力Pdの冷媒は、全開状態の主弁7を通過し、ポート14から制御室へと流れることになる。したがって、制御圧力Pcが高くなり、圧縮機は最小容量運転を行うようになる。
次に、本実施形態における耐異物構造の詳細について説明する。
図4は、耐異物構造を表す部分拡大断面図である。左段は図2のa部拡大図に対応し、ソレノイド3がオフにされて弁作動体35が下死点にある状態を示す。右段は図3のa部拡大図に対応し、ソレノイド3がオンにされて弁作動体35が上死点にある状態を示す。このため、図中のs1は、弁作動体35の最大ストロークを示す。
本実施形態では、図2に示したように、弁駆動体29とガイド孔27との間にはシールリング(Oリング74)を設けているが、弁作動体35とガイド孔25との間には設けていない。これは、ソレノイド3の駆動力に対する弁作動体35の摺動抵抗を極力抑えるためである。また、主弁室24と作動室28との間に生じる差圧(Pd−Ps)に比べ、副弁室26と作動室23との間に生じる差圧(Pc−Ps)が小さい。このため、弁駆動体29とガイド孔27との間のシールに比べ、弁作動体35とガイド孔25との間のシールの必要性が低いためでもある。
しかし、特にソレノイド3がオンからオフに切り替えられて主弁7が全開となるときには、差圧(Pc−Ps)といえども大きくなる。このため、冷媒中の異物が弁作動体35とガイド孔25との摺動部に侵入し、弁作動体35の円滑な動作を妨げる可能性がある。異物がその摺動部において固着すると、弁作動体35の作動をロックさせる懸念もある。
そこで本実施形態では、図4に示すように、ガイド孔25の内周面に比較的大きな環状溝90を設けている。ガイド孔25は、その環状溝90にそれぞれ隣接する上側面92と下側面94にて弁作動体35を摺動可能に支持する。すなわち、上側面92および下側面94が、弁作動体35と接触する「接触面」を構成する。上側面92が「第1接触面」、下側面94が「第2接触面」にそれぞれ対応する。
そして図示のように、各接触面の軸線方向長さl1,l2が、いずれも弁作動体35の最大ストロークs1よりも小さくなるように環状溝90が設けられている。このため、仮に弁作動体35とガイド孔25との摺動面に異物が侵入したとしても、弁作動体35が最大ストロークで動作することで、異物を接触面外に押し出すことが可能となる。すなわち、異物が接触面において固着しようとしてもこれを剥離し、環状溝90により形成される空間あるいは摺動部外に掻き出すことができる。その結果、制御弁1の耐異物性能を高めることができる。
[第2実施形態]
図5は、第2実施形態に係る制御弁の弁作動体周辺の部分拡大断面図である。図5(A)は弁作動体が下死点にある状態を示し、図5(B)は弁作動体が上死点にある状態を示す。図6は耐異物構造を表す部分拡大断面図である。左段は図5(A)のa部拡大図に対応し、右段は図5(B)のa部拡大図に対応する。以下、第1実施形態との相異点を中心に説明する。
図5(A)および(B)に示すように、ボディ205におけるガイド孔225の内周面に凹部は設けられていない。一方、弁作動体235の外周面に複数の環状溝290が設けられている。本実施形態では、弁作動体235の軸線方向に6つの環状溝290が等間隔で配設され、いわゆるラビリンス構造を構成している。各環状溝290が「凹部」として機能する。
図6にも示すように、弁作動体235の外周面に小幅の環状溝290が小間隔で配設されている。それにより、隣接する環状溝290間に小幅の摺動面292が形成され、弁作動体235とガイド孔225との接触面が軸線方向に間欠的に形成される。隣接する環状溝290間の接触面の長さl21、および環状溝領域外の接触面の長さl22のいずれも、弁作動体235の最大ストロークs21より小さくなるように環状溝290が設けられている。このため、仮に弁作動体235とガイド孔225との摺動面に異物が侵入したとしても、これを接触面に留めることなく掻き出すことが可能となる。すなわち、本実施形態によっても制御弁の耐異物性能を高めることができる。
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明はその特定実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術思想の範囲内で種々の変形が可能であることはいうまでもない。
図7は、変形例に係る制御弁の弁作動体周辺の部分拡大断面図である。図7(A)は弁作動体が下死点にある状態を示し、図7(B)は弁作動体が上死点にある状態を示す。
本変形例では、弁作動体335の上端部に半径方向外向きに突出するフランジ状の遮蔽部340を有する。遮蔽部340は、ガイド孔25の内径よりも大きな外径を有する。遮蔽部340は、ソレノイド3がオフにされたときに作動室23の底部に着座し、弁作動体335とガイド孔25との隙間の開口端を閉じる。
本変形例によれば、ソレノイド3がオフにされるとき、つまり主弁7の全開時に差圧(Pc−Ps)が最大となるところ、弁作動体335とガイド孔25との隙間が遮断される。すなわち、摺動部への異物の侵入が最も懸念される状態において、それを防止又は抑制できる。なお、本変形例では、第1実施形態の構成に遮蔽部を適用した例を示したが、第2実施形態その他の構成に同様の遮蔽部を適用してもよい。
なお、本変形例においてガイド孔の凹部を省略しても耐異物性能向上効果は得られる。本変形例の制御弁を以下のように大きく捉えてもよい。この制御弁は、第1ポートと連通する第1室と、第2ポートと連通する第2室と、前記第1室と前記第2室との間に両者を軸線方向に離隔するように設けられたガイド孔とを有するボディと、前記ガイド孔を摺動可能に貫通する弁作動体と、前記弁作動体に軸線方向の駆動力を付与するためのソレノイドと、前記弁作動体に前記駆動力と対抗する付勢力を付与するための付勢部材と、を備える。前記弁作動体は、半径方向外向きに突出する遮蔽部を有する。前記遮蔽部は、前記ソレノイドがオフにされたときに前記弁作動体と前記ガイド孔との隙間の開口端を閉じる。
図8は、他の変形例に係る制御弁の弁作動体周辺の部分拡大断面図である。
本変形例では、副弁室26におけるガイド孔25の周囲に段差部350が設けられている。段差部350は、ボディ305における副弁室26の上面に形成された環状凹部からなる。
本変形例によれば、弁作動体335とガイド孔25との隙間の開口端近傍に段差部350を設けることで、異物を受け止めることができる。すなわち、ポート14から侵入した異物が摺動部に導かれることそのものを抑制できる。なお、本変形例では、第1実施形態の構成に対して段差部を適用した例を示したが、第2実施形態その他の構成に同様の段差部を適用してもよい。
なお、本変形例においてガイド孔の凹部を省略しても耐異物性能向上効果は得られる。本変形例の制御弁を以下のように大きく捉えてもよい。この制御弁は、流体を導入する第1ポートと、前記第1ポートと連通する第1室と、流体を導出する第2ポートと、前記第1ポートと連通する第2室と、前記第1室と前記第2室との間に両者を軸線方向に離隔するように設けられたガイド孔とを有するボディと、前記ガイド孔を摺動可能に貫通する弁作動体と、前記弁作動体に軸線方向の駆動力を付与するためのソレノイドと、前記弁作動体に前記駆動力と対抗する付勢力を付与するための付勢部材と、を備える。前記第1室におけるガイド孔の周囲に、前記第1ポートから侵入した異物を受けるための段差部が設けられている。
図9は、他の変形例に係る弁作動体およびその周辺の構造を表す図である。図9(A)は弁作動体周辺の部分拡大断面図である。図9(B)は弁作動体の平面図であり、図9(C)は弁作動体の側面図である。
本変形例では、第2実施形態の構成に対してさらに異物排出構造を設けている。すなわち、弁作動体435の外周面に環状溝290を縦断するように排出溝450が設けられている。2つの排出溝450が、弁作動体435において周方向に180度ずれた位置に設けられている。排出溝450の下端が最下段の環状溝290に連通し、排出溝450の上端は作動室23に開放されている。
本変形例によれば、摺動面292,294(図6参照)により環状溝290に掻き出された異物を、排出溝450を介して作動室23へ排出し易くなる。なお、本変形例では、第2実施形態の構成に対して排出溝を適用した例を示したが、第1実施形態その他の構成に同様の排出溝を適用してもよい。また、排出溝の数は2つに限られず、適宜設定できる。排出溝を環状溝に対して90度以外の角度で交わらせてもよい。
上記第2実施形態では、弁作動体235に6つの環状溝290を設ける例を示したが、環状溝の数はこれに限らず適宜設定できる。また、複数の環状溝の幅を異ならせたり、隣接する環状溝の間隔を適宜異ならせてもよい。ただし、各接触面の軸線方向長さが、いずれも弁作動体の最大ストロークよりも小さくなるようにする。
なお、上記実施形態では、「最大ストローク」としてソレノイドがオフからオンにされたときの弁作動体のストロークを例示した。しかし、例えば外気温が低い場合など外部環境によっては、ソレノイドがオフからオンにされても弁作動体がフルストロークしない場合がある。このため、「最大ストローク」については、その定義が曖昧にならないよう仕様上のフルストロークとしてよい。
上記実施形態では、副弁室26と作動室23との間の摺動部、つまり弁作動体とガイド孔との間に耐異物構造(凹部)を設ける構成を例示した。変形例においては、主弁室24と作動室28との間の摺動部においてシールリングを省略し、耐異物構造(凹部)を設けてもよい。すなわち、弁駆動体29とガイド孔27との間に耐異物構造(凹部)を設けてもよい。その場合、弁駆動体を「弁作動体」と捉えることもできる。弁駆動体の外周面およびガイド孔の内周面の少なくとも一方に凹部が周設されることにより、弁駆動体とガイド孔との接触面が軸線方向に間欠的に形成される。各接触面の軸線方向の長さが、弁駆動体の最大ストロークよりも小さくなるように凹部が設けられる。凹部は、軸線方向に長い一つの環状溝にて構成してもよい。あるいは、複数の環状溝にて構成してもよい。
上記実施形態では、制御弁が主弁7と副弁8を備える構成を例示した。すなわち、ボディが、流体を導入する導入ポート(ポート16)と、流体を導入および導出する導入出ポート(ポート14)と、流体を導出する導出ポート(ポート12)を備える構成を示した。変形例においては、導入出ポートを有しない制御弁、つまり単一の弁部を有する制御弁に上記耐異物構造(凹部)を適用してもよい。
上記実施形態では、吐出室から制御室へ流れる冷媒の流量を制御するいわゆる入れ制御をメインとした構成を示したが、制御室から吸入室へ流れる冷媒の流量を制御するいわゆる抜き制御をメインとした構成としてもよい。抜き制御の制御弁は、圧縮機の吸入圧力Ps(「被感知圧力」に該当する)を設定圧力に保つように、制御室から吸入室へ抜き出す冷媒流量を調整するPs感知弁として構成される。あるいは、入れ制御および抜き制御の双方を適切に制御する構成としてもよい。
上記実施形態では、制御弁として、吸入圧力Psを直接感知して動作するいわゆるPs感知弁を例示した。すなわち、感圧部が感知する圧力(「被感知圧力」ともいう)を吸入圧力Psとした。変形例においては、被感知圧力として制御圧力Pcを感知して動作するいわゆるPc感知弁としてもよい。
上記実施形態では、付勢部材をスプリングとしたが、ゴム等その他の付勢部材を採用してもよい。
上記実施形態では、弁作動体が弁体として機能する構成を例示した。変形例においては、弁作動体そのものには弁機能を有しない構成としてもよい。例えば、弁作動体を作動ロッド(シャフト)として構成し、ガイド孔により摺動可能に支持する構成としてもよい。このような弁作動体と作動ロッドとの間に上記耐異物構造(凹部)を設けてもよい。
上記実施形態では述べなかったが、弁作動体をボディよりも低硬度の材質からなるものとしてもよい。それにより、弁作動体に外周面に付着した異物を凹部へ削ぎ落としたり、摺動部外に掻き出し易くなる。
なお、本発明は上記実施形態や変形例に限定されるものではなく、要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化することができる。上記実施形態や変形例に開示されている複数の構成要素を適宜組み合わせることにより種々の発明を形成してもよい。また、上記実施形態や変形例に示される全構成要素からいくつかの構成要素を削除してもよい。