以下、本発明に係る油圧制御バルブを内燃機関のバルブタイミング制御装置に適用した実施形態を図面に基づいて説明する。
前記バルブタイミング制御装置は、図1〜図4に示すように、機関のクランクシャフトによりタイミングチェーンを介して回転駆動される駆動回転体であるスプロケット1と、機関前後方向に沿って配置されて、前記スプロケット1に対して相対回転可能に設けられた吸気側のカムシャフト2と、前記スプロケット1とカムシャフト2との間に配置されて、該両者1,2の相対回動位相を変換する位相変更機構3と、該位相変更機構3を最進角位相と最遅角位相の間の中間位相位置でロックさせるロック機構である位置保持機構4と、前記位相変更機構3と位置保持機構4をそれぞれ別個独立に作動させる油圧回路5と、を備えている。
前記スプロケット1は、ほぼ肉厚円板状に形成されて、外周に前記タイミングチェーンが巻回された歯車部1aを有していると共に、後述するハウジングの後端開口を閉塞するリアカバーとして構成され、中央には前記カムシャフト2の一端部2aが回転自在に支持される支持孔6が貫通形成されている。
前記カムシャフト2は、シリンダヘッド01に複数のカム軸受02を介して回転自在に支持され、外周面には図外の機関弁である吸気弁を開作動させる複数の回転カムが軸方向の位置に一体に固定されていると共に、一端部2aの内部軸心方向に後述するカムボルト8が螺着されるボルト孔2bが形成されている。このボルト孔2bは、一端部2aの先端側から内部軸線方向に沿って穿設されていると共に、先端側から内底部に向かって段差縮径状に形成されている。また、このボルト孔2bの軸方向のほぼ中央域には、前記カムボルト8の軸部外周に形成された雄ねじ部8aが螺着する雌ねじ部2cが形成されている。
前記位相変更機構3は、図1及び図2に示すように、前記スプロケット1に軸方向から一体的に設けられたハウジング7と、前記カムシャフト2の一端部2aにカムボルト8を介して軸方向から固定され、前記ハウジング7内に回転自在に収容された従動回転体であるベーンロータ9と、前記ハウジング7の内部作動室に形成されて、該ハウジング7の内周面に突設された4つのシュー10と前記ベーンロータ9とによって隔成されたそれぞれ4つの遅角油圧室11及び進角油圧室12と、を備えている。
前記ハウジング7は、焼結金属によって一体に形成された円筒状のハウジング本体7aと、プレス成形によって形成され、前記ハウジング本体7aの前端開口を閉塞するフロントカバー13と、後端開口を閉塞する前記スプロケット1と、から構成されている。前記ハウジング本体7aとフロントカバー13及びスプロケット1とは、前記各シュー10の各ボルト挿通孔10aを貫通する4本のボルト14によって共締め固定されている。前記フロントカバー13は、中央に比較的大径な挿通孔13aが貫通形成されていると共に、該挿通孔13aの外周側内周面で各油圧室11,12内をシールするようになっている。
前記ベーンロータ9は、金属材によって一体に形成され、前記カムシャフト2の一端部2aにカムボルト8によって固定されたロータ部15と、該ロータ部15の外周面に円周方向のほぼ90°等間隔位置に放射状に突設された4つのベーン16a〜16dとから構成されている。
前記ロータ部15は、比較的大径な円筒状に形成され、中央の内部軸方向に前記カムシャフト2の雌ねじ孔2cと連続するボルト挿通孔15aが貫通形成されていると共に、後端面のカムシャフト2の一端部2a先端面が当接している。
一方、前記各ベーン16a〜16dは、その突出長さが比較的短く形成されて、それぞれが各シュー10の間に配置されていると共に、円周方向の巾がほぼ同一に設定されて厚肉なプレート状に形成されている。前記各ベーン16a〜16dの外周面と各シュー10の先端には、それぞれハウジング本体7aの内周面とロータ部15の外周面との間をシールするシール部材17a、17bがそれぞれ設けられている。
また、前記ベーンロータ9は、図3に示すように、遅角側へ相対回転すると第1ベーン16aの一側面16eが対向する前記一つのシュー10の対向側面に形成された突起面10bに当接して最大遅角側の回転位置が規制され、図4に示すように、進角側へ相対回転すると第1ベーン16aの他側面16fが対向する他のシュー10の突起面10cに当接して最大進角側の回転位置が規制されるようになっている。
このとき、他のベーン16b〜16dは、両側面が円周方向から対向する各シュー10の対向面に当接せずに離間状態にある。したがって、ベーンロータ9とシュー10との当接精度が向上すると共に、後述する各油圧室11,12への油圧の供給速度が速くなってベーンロータ9の正逆回転応答性が高くなる。
前記各ベーン16a〜16dの正逆回転方向の両側面と各シュー10の両側面との間に、前述した各遅角油圧室11と各進角油圧室12が隔成されており、各遅角油圧室11と各進角油圧室12とは、前記ロータ部15の内部にほぼ放射状に形成された第1連通孔11aと第2連通孔12aを介して後述する油圧回路5にそれぞれに連通している。
前記位置保持機構4は、ハウジング7に対してベーンロータ9を最遅角側の回転位置(図3の位置)と最進角側の回転位置(図4の位置)との間の中間回転位相位置(図2の位置)に保持するものである。
すなわち、図1、図5〜図10に示すように、前記スプロケット1の内周側の所定位置に圧入固定されたロック穴構成部1a、1bと(図1のみに記載)、該ロック穴構成部1a、1bに形成された第1、第2ロック穴24,25と、前記ベーンロータ9のロータ部15の内部周方向の2箇所に設けられて、前記各ロック穴24,25にそれぞれ係脱する2つのロック部材である第1、第2ロックピン26,27と、該各ロックピン26,27の前記各ロック穴24,25に対する係合を解除させるロック通路28と、から主として構成されている。
前記第1ロック穴24は、図2〜図4に示すように、スプロケット1の円周方向に延びた円弧長穴状に形成されていると共に、スプロケット1の内側面1cの前記ベーンロータ9の最遅角側の回転位置よりも進角側に寄った中間位置に形成されている。また、この第1ロック穴24は、その底面が遅角側から進角側に亘って順次低くなる3段の階段状に形成されて、これが第1ロック案内溝になっている。
つまり、第1ロック案内溝は、図5〜図10に示すように、スプロケット1の内側面1cを最上段として、これより一段ずつ低くなる第1底面24a、第2底面24b、第3底面24cと順次低くなる階段状に形成され、遅角側の各内側面は垂直に立ち上がった壁面になっていると共に、第3底面24cの進角側の内側縁24dも垂直に立ち上がった壁面になっている。したがって、前記各底面24a〜24cに順次係合した第1ロックピン26は、ロータ部15を介して先端部26aがスプロケット1の内側面1cから各底面24a〜24cを進角方向へ段階的に下降移動すると、各段差面によって反対方向への移動、つまり、遅角方向への移動が規制される。よって、各底面24a〜24cが一方向クラッチ(ラチェット)として機能するようになっている。
前記第1ロックピン26は、先端部26aの側縁が前記第3底面24cから立ち上がった前記内側縁24dに当接した時点でそれ以上の進角方向への移動が規制されるようになっている(図5、図6参照)。
前記第2ロック穴25は、図2〜図4に示すように、第2ロックピン27の小径な先端部27aの外径よりも十分に大径な円形状に形成されて、係入した第2ロックピン27の先端部27aが円周方向へ僅かに移動可能になっている。また、第2ロック穴25は、スプロケット1の内側面1cの前記ベーンロータ9の最遅角側の回転位置よりも進角側に寄った中間位置に形成されている。また、この第2ロック穴25は、底面25aの深さは第1ロック穴の第3底面24cとほぼ同じ深さに設定されている。したがって、第2ロックピン27は、ロータ部15の進角方向の回転に伴って先端部27aが前記第2ロック穴25に係入して底面25aに当接すると、前記第1ロックピン26と共に反対方向への移動、つまり、ベーンロータ9の最遅角方向への移動を規制するようになっている。
つまり、前記第2ロックピン27は、先端部27aの側縁がロック穴25の周方向内側縁25bに当接した時点でベーンロータ9の遅角方向への移動を規制するようになっている。
そして、第1、第2ロック穴24,25の相対的な形成位置の関係は、第1ロックピン26が第1ロック穴24の第1底面24aに係入している段階では、第2ロックピン27は先端部27aがスプロケット1の内側面1cに当接している。
その後、第1ロックピン26が第1ロック穴24の第2底面24bに係入した時点でも、第2ロックピン27の先端部27aはスプロケット1の内側面1cに当接している状態になっている。
その後、第1ロックピン26の先端部が第3底面24cに係入し、そのまま進角側へ移動して内側縁24dに当接すると、図5、図6に示すように、初めて第2ロックピン27の先端部27aが第2ロック穴25に係入すると共に、該第2ロック穴25の内側縁25bに当接して、両ロックピン26,27でベーンロータ9を挟持する形でロックする。
要するに、ベーンロータ9が所定の遅角側位置から進角側位置まで相対回転するにしたがって前記第1ロックピン26が第1底面24a〜第3底面24cに順次段階的に当接係合し、この第3底面24cに係入しながら進角側に移動して内側縁24dに当接した時点で、第2ロックピン27が第2ロック穴25に係入して内側縁25bに当接する。これによって、ベーンロータ9は、全体として3段階のラチェット作用によって遅角方向への回転を規制されながら進角方向へ相対回転して、最終的に最遅角位相と最進角位相との間の中間位相位置に保持されるようになっている。
前記第1ロックピン26は、図1、図5などに示すように、ロータ部15の内部軸方向に貫通形成された第1ピン孔31a内に摺動自在に配置され、外径が段差径状に形成されて、小径の前記先端部26aと、該先端部26aより後部側に位置する中空状の大径部26bと、先端部26aと大径部26bとの間の段差受圧面26cと、によって一体に形成されている。前記先端部26aは、先端面が前記第1ロック穴24の各底面24a〜24cに密着状態に当接可能な平坦面状に形成されている。
また、この第1ロックピン26は、大径部26bの後端側から内部軸方向に形成された凹溝底面とフロントカバー13の内面との間に弾装された付勢部材である第1スプリング29のばね力によって第1ロック穴24に係合する方向へ付勢されている。
また、この第1ロックピン26は、図5〜図10に示すように、前記段差受圧面26cに前記ロータ部15内に形成された第1解除用受圧室32から油圧が作用するようになっている。この油圧によって、第1ロックピン26が前記第1スプリング29のばね力に抗して後退移動してロック穴24との係合が解除されるようになっている。
前記第2ロックピン27は、ロータ部15の内部軸方向に貫通形成された第2ピン孔31b内に摺動自在に配置され、第1ロックピン26と同じく、外径が段差径状に形成されて、小径の先端部27aと、該先端部27aの後側に位置する中空状の大径部27bと、先端部27aと大径部27bとの間に形成された段差受圧面27cと、によって一体に形成されている。前記先端部27aは、先端面が前記第2ロック穴25の底面25aに密着状態に当接可能な平坦面状に形成されている。
また、この第2ロックピン27は、大径部27bの後端側から内部軸方向に形成された凹溝底面とフロントカバー13の内面との間に弾装された付勢部材である第2スプリング30のばね力によって第2ロック穴25に係合する方向へ付勢されている。
また、この第2ロックピン27は、前記段差受圧面27cに前記ロータ部15内に形成された第2解除用受圧室33から油圧が作用するようになっている。この油圧によって、第2ロックピン27が前記第2スプリング30のばね力に抗して後退移動して第2ロック穴25との係合が解除されるようになっている。
なお、前記第1、第2ピン孔31a、31bの後端側は、各ロックピン26,27の良好な摺動性を確保するために図外の呼吸孔を介して大気に連通している。
前記油圧回路5は、図1及び図5〜図10に示すように、前記各遅角油圧室11に対して第1連通路11aを介して油圧を給排する遅角通路18と、各進角油圧室12に対して第2連通路12aを介して油圧を給排する進角通路19と、前記各第1、第2解除用受圧室32,33に対してそれぞれ油圧を供給、排出するロック通路28と、前記各通路18,19に作動油を選択的に供給すると共に、ロック通路28に作動油を供給する流体圧供給源であるオイルポンプ20と、機関運転状態に応じて前記遅角通路18と進角通路19の流路を切り換えると共に、前記ロック通路28に対する作動油の給排を切り換える油圧制御バルブである単一の電磁切換弁21と、を備えている。
前記遅角通路18と進角通路19とは、それぞれの一端部が前記電磁切換弁21の後述する各ポートに接続されている一方、他端側が前記電磁切換弁21の内部に形成された遅角、進角通路孔18a、19aと前記第1,第2連通路11a、12aとを介して前記各遅角油圧室11と各進角油圧室12にそれぞれ連通している。
前記ロック通路28は、図1、図5に示すように、前記電磁切換弁21の内部軸方向に形成されて、一端部が前記オイルポンプ20の吐出通路20aとドレン通路22に連通していると共に、他端部がカムシャフト一端部2aと前記ロータ部15の結合部に形成された環状のグルーブ溝41や径方向の油孔42などを介して前記前記第1、第2解除用受圧室32,33にそれぞれ連通している。
前記オイルポンプ20は、機関のクランクシャフトによって回転駆動するトロコイドポンプなどの一般的なものであって、アウター、インナーロータの回転によってオイルパン23内から吸入通路20bを介して吸入された作動油が吐出通路20aを介して吐出されて、その一部がメインオイルギャラリーM/Gから内燃機関の各摺動部などに供給されると共に、他が前記電磁切換弁21側に供給されるようになっている。なお、吐出通路20aの下流側には、図外の濾過フィルタが設けられていると共に、該吐出通路20aから吐出された過剰な作動油を、ドレン通路22を介してオイルパン23に戻して適正な流量に制御する図外の流量制御弁が設けられている。
前記電磁切換弁21は、図1及び図11、図14などに示すように、4ポート6位置の比例型弁であって、前記カムボルト8によって構成された有底円筒状のバルブボディ50と、該バルブボディ50の内部軸方向に挿通配置された有底円筒状のスリーブ51と、該スリーブ51の内部に軸方向へ摺動自在に設けられたスプール弁体52と、前記スリーブ51の内底面とスプール弁体52の先端部との間に弾装されて、該スプール弁体52を、図1中、左方向へ付勢する付勢部材であるバルブスプリング53と、前記バルブボディ50の外側一端部に設けられて、前記スプール弁体52をバルブスプリング53のばね力に抗して図中右方向へ移動させるソレノイド部54と、から主として構成されている。
前記バルブボディ50は、断面ほぼ円錐状に形成された先端部50aの底壁中央に導入ポート50bが軸方向に沿って貫通形成されていると共に、周壁に複数のポートが径方向に沿って貫通形成されている。
前記導入ポート50bは、前記先端部50a外面と前記カムシャフト2のボルト孔2b先端部との間に形成された油室40に連通しており、この油室40は、前記オイルポンプ20の吐出通路20aの下流端に接続されている。
前記バルブボディ50の周壁には、軸方向の基端部側に形成されて、前記各連通路11a、12aにそれぞれ連通する前記一対の通路孔18a、19aと、軸方向のほぼ中央位置に配置形成されて、前記グルーブ溝41と前記ロック通路28を連通させるロックポート50cが径方向へ貫通形成されている。
また、バルブボディ50の基端部側、つまりカムボルト8の頭部8a側の後端開口壁50dの内周には、後述する固定部材69が圧入される円環状の保持溝50eが形成されている。
前記スリーブ51は、図1、図11〜図14に示すように、外周面の外径が前記バルブボディ50の内周面の内径より僅かに小さく形成されて、前記両内外周面間がシールされている。また、周壁の外周面には、複数の通路溝55a〜55hが軸方向に沿って形成されていると共に、該各通路溝55a〜55hに対応した位置に複数の油孔56a〜56iが径方向に沿って貫通形成されている。
すなわち、スリーブ51は、図1、図11〜図13に示すように、周壁の外周面に先端側から軸方向に沿って形成され、前記油室40に連通する供給通路溝55aと、前記バルブボディ50の遅角、進角側の通路孔18a、19aにそれぞれ対応した位置に形成された遅角側通路溝55b及び進角側通路溝55cと、前記ロック通路28を形成するロック通路溝55dと、前記ロックポート50cや各通路孔18a、19aに適宜連通して作動油を外部に排出する第1ドレン通路溝55eと、前記ロックポート50cに適宜連通して前記吐出通路20aから吐出された作動油を前記各受圧室32、33に供給する供給通路溝55fと、前記各通路孔18a、19aに適宜連通して各油圧室11,12の作動油を排出する第2ドレン通路溝55gと、前記油室40に連通する供給通路溝55hと、を有している。
前記各供給通路溝55a、55f、55hに対応した位置にそれぞれ径方向に貫通形成された油孔56a〜56eと、遅角側連通溝55b及び進角側連通溝55cに対応した位置に径方向に沿って貫通形成された油孔56b、56d及び56cと、第1ドレン通路溝55eに対応した位置に径方向に貫通形成された油孔56f〜56hと、ロック通路溝55dに対応した位置に形成された油孔56iを有している。
前記スリーブ51の先端底壁51aには、外面中央位置に小径円柱状の突起部51bが一体に形成されていると共に、前記吐出通路20aから供給された作動油の逆流を規制するチェック弁57が取付け固定されている。
前記チェック弁57は、図14にも示すようにほぼ円筒状のボディ部57aと、該ボディ部57aの内部に軸方向へ移動可能なボール弁体57bとを備えている。前記ボディ部57aは、先端側に前記バルブボディ50の導入ポート50bと連通する開口孔57cが形成されていると共に、該開口孔57cにはフィルタ部材58が取り付けられている。また、ボディ部57aの周壁には、複数の油孔57dが径方向に沿って貫通形成されており、この各油孔57dは、前記バルブボディ50の内周面とスリーブ51の外周面との間に形成された通路部59とボディ部57aの内部とを連通するようになっている。
前記ボール弁体57bは、コイルばね57eによって前記開口孔57cの内端孔縁に着座して該開口孔57cを閉塞する方向に付勢されていると共に、前記導入ポート50bに作用する所定以上の油圧によってコイルばね57eのばね力に抗して後退移動して前記突起部51bに当接しつつ開口孔57cと各油孔57dを連通するようになっている。
また、前記ボディ部57aは、先端部の外周に後述する弾性部材であるシール部材68を保持する環状の保持凹部57fが形成されている。
前記フィルタ部材58は、ほぼカップ状に形成されて、前端壁58aがメッシュ状に形成されていると共に、後端側の固定用フランジ58bが前記ボディ部57aの先端にかしめ固定されている。
前記スプール弁体52は、図1及び図11、図15A、Bに示すように、有底中空状の内部が作動油を通流させる内部通路孔60として構成されていると共に、該内部通路孔60の軸方向の前後端が円柱状の先端部52aと円柱状の栓体61とによって閉止されている。
また、このスプール弁体52は、外周面両端側に該スプール弁体52をスリーブ51の内周面に摺動案内する円筒状の2つのガイド部62a、62bが形成されていると共に、該両ガイド部62a、62bの間の外周面に6つのランド部63a〜63fが軸方向へ所定間隔をもって一体に形成されている。
前記ランド部63bの側部に、前記供給通路溝55aと内部通路孔60とを適宜連通させる連通孔64aが径方向に貫通形成されている。また、前記ランド部63cとランド部63dとの間に、前記油孔56b(遅角通路孔18a)と内部通路孔60とを適宜連通させる連通孔64bが同じく径方向へ貫通形成されている。さらに、前記ランド部63e、63fとの間に、前記油孔56c(進角通路孔19a)と内部通路孔60を適宜連通させる連通孔64cが径方向へ貫通形成されている。
また、前記スプール弁体52のランド部63aとランド部63bとの間には、ロック通路溝55dに連通する油孔56iと連通する連通孔64dが貫通形成されている。なお、前記各連通孔64a〜64dの外周側には、それぞれ円環状のグルーブ溝が形成されている。
前記バルブスプリング53は、一端がバルブボディ50の基端部側に形成された段差面に軸方向から弾接している一方、他端が前記スプール弁体52の先端部52aに軸方向から弾接して、スプール弁体52をソレノイド部54方向(図1中左方向)に付勢している。
また、スプール弁体52の前記第1ガイド部62aとランド部63aとの間、及び第2ガイド部62bとランド部63fとの間には、それぞれ環状溝65a、65bが形成されていると共に、連通路64b、64cの間の外周には別異の環状溝65cが形成されている。前記スプール弁体52の先端部52aとスリーブ51の先端底壁51aとの間(バルブスプリング53の収容室)には、作動油を通流させる油室66が形成されている。
そして、前記スリーブ51は、図1、図14、図15に示すように、軸方向位置が先端底壁51aに固定された前記チェック弁57を介して弾性部材である前記シール部材68と固定部材69によって位置決め固定されている。
すなわち、前記シール部材68は、合成ゴム材によって円環状に形成され、前記チェック弁57のボディ部57a先端に形成された前記保持凹部57fに保持されつつバルブボディ50の先端部50aの傾斜状内面に当接して前記スリーブ51の軸方向位置を弾性的に位置決めしている。また、このシール部材68は、前記導入ポート50bからフィルタ部材58方向へ流入した作動油がチェック弁57の外周方向へ流入するのを阻止するようになっている。
前記固定部材69は、円盤状の金属板を円環状に形成してなり、中央に前記栓体61が遊嵌状態に挿入された排出用孔69aが貫通形成されていると共に、外周部が前記バルブボディ50の前記保持溝50eに軸方向から圧入固定されている。このように、固定部材69を軸方向へ圧入することによって、前記スリーブ51が前記シール部材68の弾性力を受けながら軸方向へ押圧されて、前記シール部材68と協働して前記スリーブ51をバルブボディ50に対して位置決め固定するようになっている。
前記排出用孔69aは、図11に示すように、円形の中央部69bを中心として径方向へ延びた長穴状に形成されて、例えば図15に示すように、固定部材69の内面に後述するスプール弁体52の後端面が当接しても両側部の円弧状開口部69c、69cが常時開成された状態になっている。
前記ソレノイド部54は、図1に示すように、チェーンカバー70にブラケット71を介してボルト72によって固定されたソレノイドケーシング73と、該ソレノイドケーシング73の内部に収容保持されて、電子コントローラ37から制御電流が出力される電磁コイル75と、該電磁コイル75の内周側に固定された有底筒状の固定ヨーク76と、該固定ヨーク76の内部に軸方向へ摺動自在に設けられた可動プランジャ77と、該可動プランジャ77の先端部に一体に形成されて、先端部78aが前記バルブスプリング53のばね力に抗して前記スプール弁体52の栓体61を図1中、右方向へ押圧する駆動ロッド78とから主として構成されている。また、前記ソレノイドケーシング73は、シールリング74によって前記チェーンカバー70の保持孔70a内に保持されていると共に、後端側には、電子コントローラ37に電気的に接続される端子80aを有する合成樹脂製のコネクタ80が取り付けられている。
このソレノイド部54は、図15〜図20に示すように、電子コントローラ37の制御電流と前記バルブスプリング53との相対的な圧力によって、前記スプール弁体52を前後方向の6つのポジジョンに移動させて、スリーブ51の各油孔56a〜56eと前記各連通孔64a〜64dのいずれかと連通させるようになっている。
前記電子コントローラ37は、内部のコンピュータが図外のクランク角センサ(機関回転数検出)やエアーフローメータ、機関水温センサ、機関温度センサ、スロットルバルブ開度センサおよびカムシャフト2の現在の回転位相を検出するカム角センサなどの各種センサ類からの情報信号を入力して現在の機関運転状態を検出すると共に、前述したように、前記電磁切換弁21の電磁コイル75に制御パルス電流を出力して前記スプール弁体52の移動位置を制御して、前記各ポートを選択的に切換制御するようになっている。
〔スプール弁体のポジション制御〕
すなわち、以下において、図21に示すスプール弁体52のストローク量と各油圧室11,12や各ロック解除受圧室32,33(ロック通路28)への作動油の給排の関係を示す表を参照しながら、図15A、B〜図20A、Bに基づいて前記スプール弁体52のポジション制御を具体的に説明する。
まず、電子コントローラ37から電磁ソレノイド54に通電されない場合、つまり、スプール弁体52が、図15A,Bに示すように、バルブスプリング53のばね力によって最大左方向に位置している場合(第1ポジジョン)は、前記油孔56aと連通孔64aが連通すると共に、連通孔64bと油孔56b、連通孔64cと油孔56cがそれぞれ連通している。
したがって、オイルポンプ20の吐出通路20aから導入ポート50bを通ってフィルタ部材58を通過した作動油が、矢印で示すように、ボール弁体57bを押し開いて前記油孔57dから供給通路溝55a、油孔56a、連通路64a、内部通路孔60、連通路64b、64c、油孔56b、56c、遅角通路孔18a、進角通路孔19aなどを通って、各遅角油圧室11と各進角油圧室12に供給される。同時に、同図Bに示すように各受圧室32、33に供給されていた作動油が、前記油孔42からロックポート50c及びロック通路溝55dに流入して油孔56iから油室66に一旦流入し、ここから同図Aに示すように、別異の油孔56fからドレン通路溝55eを通って固定部材69の排出用孔69aの両側開口部69c、69cからドレン通路22を介してオイルパン23内に排出される。
次に、スプール弁体52が、図16A,Bに示すように、ソレノイド部54への通電によりバルブスプリング53のばね力に抗して僅かに右方向へ移動した場合(第6ポジション)は、図15Aと同じく、吐出通路20aから供給された作動油は、矢印で示すように、複数の油孔57d、供給通路溝55a、油孔56a、連通路64a、内部通路孔60、連通路64b、64c、油孔56b、56c、遅角通路孔18a、進角通路孔19aなどを通って、各遅角油圧室11と各進角油圧室12に供給された状態が継続する。
一方、前記連通孔64aに流入した作動油の一部が図16Bに示すように、内部通路孔60、連通路64d、油孔56i、ロック通路溝55dを通ってロックポート50c、油孔42を経て各受圧室32,33に供給され、これによって、各ロックピン26,27のロックが解除される。
スプール弁体52が、図17A、Bに示すように、ソレノイド部54へのより大きな通電によってさらに僅かに右方向へ移動した場合(第2ポジション)は、図17Aの矢印で示すように、油孔56bと環状溝65cが連通すると共に、該環状溝65cと油孔56g及びドレン通路溝55eが連通され、また、前記連通孔64cと油孔56cは連通状態を維持している。これによって、各遅角油圧室11の作動油が排出されると共に、各進角油圧室12へ作動油が供給された状態を維持されている。
一方、図17Bに示すように、前記油孔56aと連通孔64aが連通状態を維持していると共に、連通路64dと油孔56i、ロック通路溝55dも連通状態を維持していることから、各受圧室32,33に油圧が供給されて、各ロックピン26,27のロック状態が解除された状態が継続されている。
スプール弁体52が、図18A,Bに示すように、さらに僅かに右方向へ移動した場合(第4ポジション)は、Aに示すように、前記油孔64aは開成されているものの、連通孔64b、64cがスリーブ51の内周面によって閉止される。したがって、前記吐出通路20aから遅角、進角の両油圧室11,12への作動油の供給が停止される。
一方、同図Bに示すように、前記油孔56aと連通孔64aが連通状態を維持していると共に、連通孔64dと油孔56i、ロック通路溝55dも連通状態を維持していることから、作動油は矢印で示すように流動して各受圧室32,33に油圧が供給され、各ロックピン26,27のロック状態が解除された状態が継続されている。
スプール弁体52が、図19A,Bに示すように、電子コントローラ37から出力された制御電流によって、さらに僅かに右方向へ移動した場合(第3ポジション)は、前記連通孔64bと油孔56dが連通すると共に、油孔56hと環状溝65b及び油孔56cが互いに連通する。これにより、前記各遅角油圧室11に吐出通路20aから作動油が供給されるが、各進角油圧室12内の作動油が矢印に示すように外部に排出される。
一方、同図Bに示すように、前記油孔56aと連通孔64aが連通状態を維持していると共に、連通孔64dと油孔56i、ロック通路溝55dも連通状態を維持していることから、作動油は矢印で示すように流動して各受圧室32,33に油圧が供給され、各ロックピン26,27のロック状態が解除された状態が継続されている。
また、スプール弁体52が、図20A,Bに示すように、電子ソレノイド54への最大の通電量によって最大右方向へ移動した場合(第5ポジション)は、前記油孔56hと環状溝65b及び油孔56cが互いに連通する状態が維持されていることから、各進角油圧室12内の作動油が排出され、同時に油孔56dと連通孔64bが連通すると共に、連通孔64cと油孔56gが連通する。このため、前記各遅角油圧室11内の作動油も外部に排出される。
一方、同図Bに示すように、前記連通孔64dの外周側のグルーブ溝と油孔56i及び環状溝65aが連通することから、前記各受圧室32,33の作動油は、矢印で示すように、一旦、前記油室66に流入した後、同図Aに示すように、油室66から油孔56f、ドレン通路溝55eを通って前記各遅角、進角油圧室11,12内の作動油と一緒に前記排出用孔69aから外部に排出される。
このように、機関運転状態に応じて、前記スプール弁体52の軸方向の移動位置を変更することによって、各ポートを選択的に切り換えてタイミングスプロケット1に対するベーンロータ9の相対回転角度を変化させると共に、両ロックピン26,27のロック穴24,25へのロックとロック解除を選択的に行ってベーンロータ9の自由な回転の許容と自由な回転を規制するようになっている。
〔本実施形態の作動〕
以下、本実施形態のバルブタイミング制御装置の具体的な作動を説明する。
まず、車両の通常走行後にイグニッションスイッチをオフ操作して機関を停止した場合には、ソレノイド部54への通電も遮断されることから、スプール弁体52は、バルブスプリング53のばね力で、図15A,Bに示す最大左方向の位置に移動する(第1ポジション)。これによって、前述した作動によって、吐出通路20aに対して遅角通路18及び進角通路19の両方を連通させると共に、ロック通路28とドレン通路22を連通させる。
また、オイルポンプ20の駆動も停止されることから、いずれかの油圧室11,12や各受圧室32,33への作動油の供給が停止される。
そして、この機関停止前のアイドリング回転時には、各遅角油圧室11に作動油圧が供給されてベーンロータ9が遅角側の回転位置になっている状態で、イグニッションスイッチがオフ操作されると、機関の停止直前にカムシャフト2に作用する正負の交番トルクが発生する。特に、負のトルクによってベーンロータ9が遅角側から進角側へ回転して中間位相位置になると、第1ロックピン26と第2ロックピン27が、各スプリング29、30のばね力で進出移動して各先端部26a、27aが対応する第1、第2ロック穴24、25に係合する。これによって、ベーンロータ9は、図2に示す最進角と最遅角の間の中間位相位置に保持される。
すなわち、前記カムシャフト2に作用する負の交番トルクによってベーンロータ9が僅かに進角側に回転して前記第1ロックピン26の先端部26aが第1ロック穴24の第1底面24aに当接係合する。この時点で、ベーンロータ9に正の交番トルクが作用して遅角側へ回転しようとするが、第1ロックピン26の先端部26aの側縁が第1底面24aの立ち上がり段差面に当接して遅角側への回転が規制される。
その後、負のトルクにしたがってベーンロータ9が進角側へ回転するに伴い第1ロックピン26が、順次階段を下りるように移動して第2底面24b、第3底面24cに当接係合する共に、第3底面24c上を進角方向へラチェット作用を受けながら移動する。これと共に、第2ロックピン27の先端部27aが、第2ロック穴25の底面25aに当接係合して最終的に周方向内側縁25b位置で係合保持される。
つまり、この時点での第1ロックピン26は、図5に示すように、先端部26aの側縁が第3底面24cから立ち上がった進角方向(遅角油圧室11側)の前記内側縁24dに当接して保持される一方、第2ロックピン27は、先端部27aの側縁が進角油圧室12側の前記内側縁25bに当接してそれぞれが安定的に保持される。
その後、機関を始動するために、イグニッションスイッチをオン操作すると、その直後の初爆(クランキング開始)によってオイルポンプ20が駆動し、その吐出油圧が、図15Aに示すように、遅角通路18(遅角側通路溝55b)と進角通路19(進角側通路溝55c)、及び遅角通路孔18a、進角通路孔19aを介して各遅角油圧室11と各進角油圧室12にそれぞれ供給される。一方、前記ロック通路28とドレン通路22は連通された状態になっていることから、各ロックピン26,27は、図6に示すように、各スプリング29,30のばね力によって各ロック穴24,25に係合した状態を維持している。
また、前記電磁切換弁21は、油圧などの情報信号を入力して現在の機関運転状態を検出して電子コントローラ37によって制御されているため、オイルポンプ20の吐出油圧の不安定なアイドリング運転時は各ロックピン26,27の係合状態を維持する。
続いて、例えば機関低回転低負荷域や高回転高負荷域に移行する直前には、電子コントローラ37から電磁コイル75に制御電流が出力されて、スプール弁体52が、図16A,Bに示すように、バルブスプリング53のばね力に抗して僅かに右方向へ移動する(第6ポジション)。これによって、内部通路孔60を介して吐出通路20aとロック通路28が連通すると共に、吐出通路20aに対する遅角通路18と進角通路19との連通が維持される。
したがって、ロック通路28を介して各受圧室32,33に作動油(油圧)が供給されるので、各ロックピン26,27は、図7に示すように、各スプリング29,30のばね力に抗して後退移動して先端部26a、27aが各ロック穴24,25から抜け出してそれぞれの係合が解除される。したがって、ベーンロータ9の自由な正逆回転が許容されると共に、両油圧室11,12に作動油が供給される。
ここで、前記いずれか一方の油圧室11,12のみに油圧を供給した場合は、ベーンロータ9がいずれか一方に回転しようとして、ロータ部15内の第1、第2ピン孔31a、31bと第1,第2ロック穴24,25との間に発生した剪断力を第1、第2ロックピン26,27が受けていわゆる食い込み現象が発生して、速やかな係合解除ができないおそれがある。
また、両油圧室11,12のいずれにも油圧が供給されない場合は、前記交番トルクによってベーンロータ9がばたついてハウジング7のシュー10との衝突打音が発生するおそれがある。
これに対して本実施形態では、両方の油圧室11,12に油圧を供給していることから、前記ロックピン26.27のロック穴24,25への食い込み現象やばたつき等を十分に抑制できる。
そして、その後、例えば機関低回転低負荷域に移行した場合は、電磁切換弁21にさらに大きな制御電流が出力されて、スプール弁体52が、図19A,Bに示すように、バルブスプリング53のばね力に抗してさらに右側に移動し(第3ポジション)、吐出通路20aとロック通路28及び遅角通路18の連通状態を維持すると共に、進角通路19とドレン通路22を連通させる。
これによって、各ロックピン25,26は、図8に示すように各ロック穴24,25から抜け出た状態が維持される一方、図3に示すように、進角油圧室12の油圧が排出されて低圧になる一方、遅角油圧室11が高圧になっていることから、ベーンロータ9をハウジング7に対して最遅角側に回転させる。
よって、バルブオーバーラップが小さくなって筒内の残留ガスが減少して燃焼効率が向上し、機関回転の安定化と燃費の向上が図れる。
その後、例えば機関高回転高負荷域に移行した場合は、電磁切換弁21に小さな制御電流が供給されて、スプール弁体52が、図17A,Bに示すように、左方向へ移動する(第2ポジション)。これによって、遅角通路18とドレン通路22が連通されると共に、吐出通路20aに対してロック通路28が連通状態を維持されていると共に、進角通路19が連通する。
したがって、図9に示すように、各ロックピン26,27の係合が解除された状態になっていると共に、遅角油圧室11が低圧になる一方、進角油圧室12が高圧になる。このため、ベーンロータ9は、図4に示すように、ハウジング11に対して最進角側に回転する。これにより、カムシャフト2は、スプロケット1に対して最進角の相対回転位相に変換される。
これによって、吸気弁と排気弁のバルブオーバーラップが大きくなって、吸気充填効率が高くなって機関の出力トルクの向上が図れる。
また、前記機関低回転低負荷域や高回転高負荷域からアイドリング運転に移行した場合は、電子コントローラ37から電磁切換弁21への制御電流の通電が遮断されて、スプール弁体52が、図15A,Bに示すように、バルブスプリング53のばね力によって最大左方向に移動して(第1ポジション)、ロック通路28とドレン通路22を連通させると共に、吐出通路22aが遅角通路18と進角通路19の両方に連通させる。これによって、両油圧室11,12には、図6に示すように、ほぼ均一圧の油圧が作用する。
このため、ベーンロータ9は、たとえ遅角側位置にあった場合でもカムシャフト2に作用する前記交番トルクによって進角側に回転する。これによって、第1ロックピン26と第2ロックピン27が、各スプリング29、30のばね力で進出移動して、前述した階段状のロック穴24,25にラチェット作用を得ながら係合する。このため、ベーンロータ9は、図2に示す最進角と最遅角の間の中間位相位置にロック保持される。
また、機関を停止する際も、前述したように、イグニッションスイッチをオフ操作すると、各ロックピン26,27は各ロック穴24,25から抜け出すことなく係合状態を維持する。
さらに、所定の運転域が継続されている場合は、電磁切換弁21に通電されて、スプール弁体52が図18A,Bに示す軸方向のほぼ中央位置に移動する(第4ポジション)と、前記連通孔64b、64cが閉止されて、吐出通路20aやドレン通路22に対する前記遅角通路18と進角通路19の連通が遮断されると共に、吐出通路20aとロック通路28が連通される。
これによって、各遅角油圧室11と各進角油圧室12の内部にそれぞれ作動油が保持された状態になると共に、各ロックピン26,27が、図10に示すように、各ロック穴24,25から抜け出してロック解除状態が維持される。
したがって、ベーンロータ9が所望の回転位置に保持されて、カムシャフト2もハウジング7に対して所望の相対回転位置に保持されることから、吸気弁の所定のバルブタイミングに保持される。
このように、機関の運転状態に応じて、電子コントローラ37が電磁切換弁21に所定の通電量で通電、あるいは通電を遮断して前記スプール弁体52の軸方向の移動を制御して、前記第1ポジション〜第4ポジション、第6ポジションの位置に制御する。これによって、前記位相変換機構と3と位置保持機構4を制御してスプロケット1に対するカムシャフト2の最適相対回転位置に制御することから、バルブタイミングの制御精度の向上が図れる。
さらに、機関がエンストなどで異常停止し、あるいは通常の機関停止した後に、再始動した場合において、通電された電磁切換弁21のスプール弁体52が、移動中に作動油に混入した金属粉などのコンタミを前記各ランド部63a〜63fの端縁と各油孔56a〜56iの孔縁との間などに噛み込んでロックし、流路の切り換えができなくなった場合には、以下の作動を行う。
すなわち、前記スプール弁体52の移動不能状態によって、ベーンロータ9の回転位相制御ができなくなることから、この異常状態をカムシャフト2の回転位置から検出した前記電子コントローラ37が、前記電磁切換弁21のソレノイド部54に最大の通電量の制御電流が出力される。これによって、スプール弁体52は、図20A,Bに示すように、右方向へ最大かつ強い力で移動して(第5ポジション)、前記コンタミを切断しつつ遅角通路18と進角通路19及びロック通路28の全てをドレン通路22に連通させる。これによって、各油圧室11,12や各受圧室32,33の作動油がオイルパン23に排出される。
このため、ベーンロータ9が、例えば中間回転位置よりも遅角側に位置していた場合でも、前述した負の交番トルクによって進角側へ回転して前記各ロックピン26,27が、図5に示すように、ラチェット式に速やかに移動して各ロック穴24,25に係合する。したがって、カムシャフト2は、最遅角と最進角の間の中間回転位相に保持される。
以上のように、本実施形態では、前記バルブボディ50に対するスリーブ51の固定を、従来のような焼き嵌めなどではなく、固定部材69とシール部材68を利用して位置決め固定するようにしたため、スリーブ51の熱的影響による変形を確実に抑制することが可能になる。この結果、スプール弁体の常時円滑な摺動性を確保することができる。
しかも、前記シール部材68が、弾性変形可能であることからスリーブ51の軸方向の安定した位置決めを行うことができる。
また、前記シール部材68は、位置決め機能の他に、前記チェック弁57のボディ部57a先端部の外面とバルブボディ50の先端部50aの内面との間をシールする機能を有するため、導入ポート50bに流入した吐出油(作動油)が、前記両者間にリークさせることなくフィルタ部材58方向のみに流入させることが可能になる。
さらに、本実施形態では、電磁切換弁21のバルブボディ50を、カムボルト8を利用したことから、バルブタイミング制御装置全体の小形化が図れる。
また、本実施形態では、前記各ロックピン26,27の各ロック穴24,25からの係合を解除する準備段階として、スプール弁体52を図15A,Bに示す第1ポジションの位置に制御して、前記第1、第2解除受圧室32,33内の作動油を排出すると同時に、各遅角油圧室11と各進角油圧室12の両方に作動油を供給することから、該両油圧室11,12のほぼ同一の相対油圧によってベーンロータ9のばたつきが抑制されると共に、一方向への回転も抑制できる。
続いて、スプール弁体52を第6ポジションに移動させることによって前記各受圧室32,33に作動油を供給すると、前記各油圧室11,12への先の作動油の供給によって、前記ロックピン26,27に対する剪断方向の力が作用しないので、ロック穴24、25からの係合解除をスムーズかつ容易に行うことができる。
また、本実施形態では、各油圧室11,12への油圧制御用とロック解除受圧室32,33への油圧制御用の2つの機能を単一の電磁切換弁21によって行うようにしたため、機関本体へのレイアウトの自由度が向上すると共に、コストの低減化が図れる。
さらに、前記位置保持機構4によってベーンロータ9を中間位相位置への保持性が向上すると共に、ロック穴24の階段状のロック案内溝の各底面24a〜24cによって第1ロックピン26は必ず各ロック穴24方向のみに案内移動されることから、かかる案内作用の確実性と安定性を担保できる。
また、前記各受圧室32,33に作用する油圧を、前記各油圧室11,12の油圧を用いるのではないことから、各油圧室11,12の油圧を用いる場合に比較して、前記各受圧室32,33に対する油圧の供給応答性が良好になり、各ロックピン26,27の後退移動の応答性が向上する。また、各油圧室11,12から各受圧室32,33間のシール機構が不要になる。
また、第1ロックピン26が第1ロック穴24に係合した場合は、先端部26aの側縁が最も深い第3底面24cの面積に大きな前記内側縁24dに当接することから、この点での耐久性の向上も図れる。
また、本実施形態では、位置保持機構4を、第1ロックピン26と第1〜第3底面24a〜24c、並びに第2ロックピン27と底面25aとの2つに分けて形成したことによって、各ロック穴24,25が形成される前記スプロケット1の肉厚を小さくすることができる。つまり、例えば、ロックピンを単一とし、階段状の各底面24a〜24cを連続的に形成する場合は、この階段状の高さを確保するために前記スプロケット本体5の肉厚を厚くしなければならないが、前述のように、2つに分けることによってスプロケット本体5の肉厚を小さくできるので、バルブタイミング制御装置の軸方向の長さを短くでき、レイアウトの自由度が向上する。
本発明は、前記実施形態の構成に限定されるものではなく、例えば前記バルブボディ50として、前記カムボルト8以外の通常のものを利用することもできる。
前記弾性部材として、一般的なOリングを用いることも可能であり、また、例えば皿ばねやコイルスプリングなどのばね部材を用いることも可能である。
また、前記固定部材としては、バルブボディ50の後端開口部の内周に嵌着固定されたスナップリングを用いることも可能であり、また、合成樹脂材の板状部材によって形成することも可能である。
さらに、バルブタイミング制御装置を吸気側ばかりか排気側に適用することも可能である。