JP2015121373A - ヒートパイプ - Google Patents

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Abstract

【課題】コンテナの周方向で均一に吸熱又は放熱を行うとともに作動液の吸熱部への還流量を増やすことで熱輸送性を向上させることが可能なヒートパイプを提供する。
【解決手段】断面が円形、楕円形または長円形のヒートパイプ11であって、第1ウィック25及び第2ウィック26内の空隙の大きさを、少なくとも吸熱部21と放熱部23とで変更した。断面が円形、楕円形または長円形のヒートパイプ11とすることで、ヒートパイプ11の周囲から均一に吸熱又は放熱される。また、少なくとも吸熱部21と放熱部23とで第1ウィック25及び第2ウィック26の空隙の大きさを変更することで、吸熱部21側と放熱部23側とで毛細管力と作動液の流動抵抗とが変更可能になる。
【選択図】図2

Description

本発明は、鉄道車両、自動車等の車両や、建設機械等向けの電源、電力変換装置等を冷却する熱輸送装置等に好適に使用されるヒートパイプに関する。
パソコン等の電子機器に搭載されるMPU(マイクロプロセッサ)冷却用の放熱機器(ヒートシンク)向けとして、ヒートパイプは、一般的に用いられてきている。
ヒートパイプは、放熱側に対して吸熱側に設けられる被冷却部品の位置は、被冷却部品が放熱側より上方に位置するトップヒートモードと、被冷却部品が放熱側より下方に位置するボトムヒートモードとに分けられる。トップヒートモードでは、重力に逆らってヒートパイプの作動液を還流させるため、通常はヒートパイプ内に設けられたウィックによる毛細管現象を利用し、ボトムヒートモードでは、重力によって作動液を吸熱側に還流させる。
ウィックを多孔質体粉末で形成したものは、ウィック内にできた空隙の大きさ(細孔半径)が相対的に小さくなるので、毛細管力が大きくなり、トップヒートモードでの熱輸送量が必要な場合に頻繁に使用されてきた。ただし、多孔質体ウィックでは、作動液の透過率が小さいために、作動液が吸熱側に移動する際の還流抵抗が大きくなる。
その対策として、平板型ヒートパイプにおいて、作動液の還流が必要な吸熱側に多孔質体ウィックを配置し、作動液の蒸気が凝縮する放熱側に、作動液の流動抵抗を抑えるために、流路断面積が大きく透過率の大きいメッシュ材からなるメッシュウィックを配置したものが提案されている(特許文献1参照)。
特許第4194276号公報
特許文献1では、コンテナが中空の平板状のヒートパイプであるため、吸熱部、放熱部では、コンテナの周方向で均一に吸熱又は放熱することが難しい。
本発明の目的は、コンテナの周方向でほぼ均一に吸熱又は放熱を行うとともに作動液の吸熱部への還流量を増やすことで熱輸送性を向上させることが可能なヒートパイプを提供することにある。
上述した課題を解決するため、本発明は、断面が円形、楕円形または長円形のヒートパイプであって、ウィック内の空隙の大きさを、少なくとも吸熱部と放熱部とで変更したことを特徴とする。
この構成によれば、ヒートパイプの断面を円形、楕円形または長円形(平行線を円弧でつないだ形状)とすることで、ヒートパイプの周囲からほぼ均一に吸熱又は放熱することができ、熱輸送を効率良く行うことができる。また、少なくとも吸熱部と放熱部とで空隙の大きさを変更することにより、ウィックにおける吸熱部と放熱部とで毛細管力と作動液の流動抵抗とを変更することができる。例えば、放熱部で作動液の流動抵抗を小さくすれば、作動液の放熱部から吸熱部への還流抵抗を低減することができる。また、吸熱部で毛細管力を大きくすれば、放熱部から吸熱部への作動液の還流を促進させることができる。以上より、ヒートパイプの断面形状及びウィックの空隙の大きさによって、ヒートパイプの熱輸送性を向上させることができる。
上記構成において、前記ウィックの空隙の大きさを、前記放熱部で相対的に大きくし、前記吸熱部で相対的に小さくしても良い。この構成によれば、ウィックにおける吸熱部の空隙の大きさを小さくすることで、吸熱部の毛細管力を向上させることができ、作動液の吸熱部への還流を促進して、液枯れによる熱輸送量の低下を防止することができる。更に、ウィックにおける放熱部の空隙の大きさを大きくすることで、放熱部の作動液の流動抵抗を小さくすることができ、作動液を吸熱部へスムーズに還流させることができる。
また、本発明は、断面が円形、楕円形または長円形のヒートパイプであって、ウィックの半径方向における、コンテナに接する外側部分と蒸気通路に面する内側部分とで空隙の大きさを変更したことを特徴とする。
この構成によれば、ヒートパイプの断面を円形、楕円形または長円形とすることで、ヒートパイプの周囲から均一に吸熱又は放熱することができ、熱輸送を効率良く行うことができる。また、ウィックの半径方向における外側部分と内側部分とで空隙の大きさを変更したことにより、ウィックにおける外側部分と内側部分とで毛細管力及び作動液の流動抵抗を変更することができる。例えば、外側部分で作動液の流動抵抗を小さくすれば、作動液の放熱部から吸熱部への還流抵抗を低減することができる。また、内側部分で毛細管力を大きくすれば、作動液の放熱部から吸熱部への還流を促進させることができる。
上記構成において、前記ウィックの空隙の大きさを、前記ウィックの半径方向の外側部分で相対的に大きくし、前記ウィックの半径方向の内側部分で相対的に小さくしても良い。この構成によれば、ウィックにおける内側部分の空隙の大きさを小さくすることで、毛細管力を向上させることができ、作動液の吸熱部への還流を促進して、液枯れによる熱輸送量の低下を防止することができる。更に、ウィックにおける外側部分の空隙の大きさを大きくすることで、作動液の流動抵抗を小さくすることができ、作動液の吸熱部への還流抵抗が低減されて、作動液を吸熱部へスムーズに還流させることができる。
また、上記構成において、前記ウィックの前記吸熱部と前記放熱部とで、グルーブ、メッシュ、編組線、多孔質体等のウィック形態の中から互いに異なるものを設けても良い。この構成によれば、吸熱部に、グルーブ、メッシュ、編組線、多孔質体等のウィック形態の中から空隙の大きさが小さなウィック形態を選択し、放熱部に、上記のウィック形態の中から空隙の大きさが吸熱部よりも大きなウィック形態を選択することにより、吸熱部の毛細管力を向上させることができ、作動液の吸熱部への還流を促進して、液枯れによる熱輸送量の低下を防止することができる。更に、ウィックにおける放熱部の空隙の大きさを大きくすることで、放熱部の作動液の流動抵抗を小さくすることができ、作動液の吸熱部への還流抵抗を低減して、作動液を吸熱部へスムーズに還流させることができる。
また、上記構成において、前記多孔質体は、前記ウィックの前記吸熱部と前記放熱部とで、互いに異なる材料、形状、粒径の分布を有するようにしても良い。この構成によれば、ウィックの吸熱部と放熱部とで多孔質体の材料、形状、粒径の分布を異ならせることでウィックの空隙の大きさを容易に変更することができる。例えば、多孔質体を形成する粒子の形状を、放熱部で大きくし、吸熱部で小さくすることにより、より一層容易にウィックの空隙の大きさを変更することができる。
また、上記構成において、前記多孔質体の前記ウィックの厚さを、前記吸熱部で薄く、前記放熱部で厚くなるようにテーパ形状としても良い。この構成によれば、放熱部では、作動液の流路断面積を増やすことができ、作動液を吸熱部へスムーズに還流させることができる。また、吸熱部では、多孔質体の厚みが薄くなるため、熱源からの熱伝達率を向上させることができる。
本発明は、断面が円形、楕円形または長円形のヒートパイプであって、ウィック内の空隙の大きさを、少なくとも吸熱部と放熱部とで変更したので、ヒートパイプの断面を円形、楕円形または長円形とすることで、ヒートパイプの周囲から均一に吸熱又は放熱することができ、熱輸送を効率良く行うことができる。また、少なくとも吸熱部と放熱部とで空隙の大きさを変更することにより、ウィックにおける吸熱部と放熱部とで毛細管力と作動液の流動抵抗とを変更することができる。例えば、放熱部で作動液の流動抵抗を小さくすれば、作動液の放熱部から吸熱部への還流抵抗を低減することができる。また、吸熱部で毛細管力を大きくすれば、放熱部から吸熱部への作動液の還流を促進させることができる。以上より、ヒートパイプの断面形状及びウィックの空隙の大きさによって、ヒートパイプの熱輸送性を向上させることができる。
本発明の第1実施形態のヒートパイプを備えた熱輸送装置を示す斜視図である。 第1実施形態の熱輸送装置を示す縦断面図である。 第2実施形態のヒートパイプを備えた熱輸送装置を示す縦断面図である。 第3実施形態のヒートパイプを備えた熱輸送装置を示す縦断面図である。 図4のV−V線断面図である。 第4実施形態及び第5実施形態のヒートパイプを示す横断面図である。 第6実施形態のヒートパイプを備えた熱輸送装置を示す縦断面図である。 図7のVIII−VIII線断面図である。 第7実施形態のヒートパイプを備えた熱輸送装置を示す縦断面図である。
以下、図面を参照して本発明の一実施形態について説明する。
<第1実施形態>
図1は、本発明の第1実施形態のヒートパイプ11を備えた熱輸送装置10を示す斜視図である。
熱輸送装置10は、直線状で断面が円形のヒートパイプ11と、ヒートパイプ11の一端11A側に設けられた受熱板12と、他端11B側に設けられた放熱フィン13とを備える。受熱板12には、冷却対象部品としての発熱素子14が取付けられている。
熱輸送装置10は、鉄道車両、電気自動車(EV)、ハイブリッド自動車(HV)用の電源、電力変換装置に使用されるヒートシンクであり、外径が10mm以上の太径のヒートパイプ11が採用される。特に、上記のEV車及びHV車において、車両が登坂等する際に傾斜してヒートパイプ11の吸熱部が放熱部に対して上方に位置するトップヒートモードとなった場合でも、熱輸送装置10は、高い熱輸送性を有する。
ヒートパイプ11は、熱伝導性に優れた金属材料、例えば、アルミニウム、アルミニウム合金、銅等によって、内部が空洞状に構成されたコンテナ16を備え、コンテナ16内には作動液(不図示)が封入されている。コンテナ16は、直線状で空洞を有する円筒形で、円筒の一端11A及び他端11Bが塞がれた密閉容器である。
受熱板12は、アルミニウム等の金属板により形成され、ヒートパイプ11の一端11Aに、例えば、溶接、ろう付けや半田付け等の手段により取付けられている。
放熱フィン13は、アルミニウム等の金属板の両側縁をそれぞれ略平行に折り曲げて、断面略コ字状に形成された複数のフィン板を備える。これらフィン板は、ヒートパイプ11の延出方向に並べて配置され、各フィン板同士は半田付けによって一体に固定されている。
ヒートパイプ11の他端11Bは、放熱フィン13に形成された孔部を貫通して固定されている。
図2は、第1実施形態の熱輸送装置10を示す縦断面図である。
ヒートパイプ11は、一端から他端に順に設けられた吸熱部21、断熱部22及び放熱部23から構成されている。コンテナ16の内部には、作動液が封入されるとともに、コンテナ16の内壁面16Aには、封入された作動液を毛細管力によって移送する円筒状に形成された第1ウィック25及び第2ウィック26が設けられている。第1ウィック25及び第2ウィック26は、それぞれ円形断面のコンテナ16に対して同心状に配置されている。なお、符号27は、第1ウィック25及び第2ウィック26の半径方向内側に形成された蒸気通路である。
吸熱部21には第1ウィック25が配置され、断熱部22及び放熱部23には第2ウィック26が配置されている。第1ウィック25と第2ウィック26とは、吸熱部21と断熱部22との境界で接している。第1ウィック25は、例えば、相対的に粒度の細かい銅粉から焼結されてできた多孔質体であり、その内部にできている無数の微小な空隙の大きさが相対的に小さいので、大きな毛細管力が得られる。第2ウィック26は、例えば、相対的に粒度の粗い銅粉から焼結されて出来た多孔質体であり、その内部にできている無数の微小な空隙の大きさが相対的に大きいので、作動液の流動抵抗が低減され、大きな透過性が得られる。
吸熱部21において第1ウィック25内の空隙に飽和していた作動液が受熱板12を介して発熱素子14で加熱されて蒸発すると、その蒸気は、蒸気圧力差により放熱部23側へ移動することによって熱輸送を行い、放熱部23で再び冷却凝縮しながら放熱する。このとき、凝縮されてできた作動液は、放熱部23の第2ウィック26内の空隙に吸収され、毛細管力によって更に第2ウィック26内から第1ウィック25内に還流する。このようにして、吸熱部21から放熱部23へ継続的に熱移動が行われる。
吸熱部21で第1ウィック25の空隙の大きさを小さくしたことで、吸熱部21での毛細管力を向上させて作動液の吸熱部21への還流を促進させることができる。また、断熱部22及び放熱部23で第2ウィック26の空隙の大きさを大きくしたことで、断熱部22及び放熱部23で作動液の流動抵抗(還流抵抗)を小さくして(即ち、透過性を大きくして)作動液を吸熱部21へスムーズに還流させることができる。
このように、作動液の吸熱部21への還流を向上させることで、例えば、図示したようなヒートパイプ11が水平な状態から、吸熱部21側が放熱部23側よりも高くなるトップヒートモードとした場合においても、十分な熱輸送性を確保することができる。
<第2実施形態>
図3は、第2実施形態のヒートパイプ31を備えた熱輸送装置30を示す縦断面図である。図2に示した第1実施形態と同一構成については同一符号を付け、詳細説明は省略する。
熱輸送装置30は、直線状で断面が円形のヒートパイプ31と、ヒートパイプ31の一端31A側に設けられた受熱板12と、他端31B側に設けられた放熱フィン13とを備える。
ヒートパイプ31は、コンテナ16を備え、コンテナ16の内部には、作動液が封入されるとともに、コンテナ16の内壁面16Aには、封入された作動液を毛細管力によって移送するウィック33が設けられている。ウィック33は、筒状であり、コンテナ16に対して同心状に配置されている。なお、符号34は、ウィック33の半径方向内側に形成された蒸気通路である。
ウィック33は、その内周面33Aがテーパ形状に形成され、ウィック33の厚さは、吸熱部21側が薄く、放熱部23側が厚く、吸熱部21から放熱部23にいくにつれて次第に厚くなっている。詳しくは、吸熱部21におけるウィック33の最小厚さはT1であり、放熱部23におけるウィック33の最大厚さはT2である(T1<T2)。
ウィック33は、例えば、銅粉から焼結されてできた多孔質体であり、内側にできている空隙は、全体においてほぼ一様に分布している。
このように、ウィック33の厚さを、吸熱部21側では薄く、放熱部23側では厚くすることで、作動液の流路断面積を増やし、放熱部23側での作動液の還流抵抗を低減して作動液を吸熱部21へスムーズに還流させることができる。また、吸熱部21側でウィックを薄くすることで、発熱素子14からヒートパイプ31への熱伝達率を向上させることができる。
<第3実施形態>
図4は、第3実施形態のヒートパイプ41を備えた熱輸送装置40を示す縦断面図である。図2に示した第1実施形態と同一構成については同一符号を付け、詳細説明は省略する。
熱輸送装置40は、直線状で断面が円形のヒートパイプ41と、ヒートパイプ41の一端41A側に設けられた受熱板12と、他端41B側に設けられた放熱フィン13とを備える。
ヒートパイプ41は、コンテナ16を備える。コンテナ16の内部には、封入された作動液を毛細管力によって移送する第1ウィック43及び第2ウィック44が設けられている。詳しくは、コンテナ16の内壁面16Aに第1ウィック43が設けられ、第1ウィック43の内周面43Aに第2ウィック44が設けられている。第1ウィック43及び第2ウィック44は、ウィック45を構成している。なお、符号46は第2ウィック44の半径方向内側に形成された蒸気通路である。
第1ウィック43は、その内周面43Aがテーパ形状に形成され、第1ウィック43の厚さは、吸熱部21側が薄く、放熱部23側が厚く、吸熱部21から放熱部23にいくにつれて次第に厚くなっている。詳しくは、吸熱部21における第1ウィック43の最小厚さはT3であり、放熱部23における第1ウィック43の最大厚さはT4である(T3<T4)。
第1ウィック43は、例えば、粒度が粗い銅粉から焼結されてできた多孔質体であり、内側にできている空隙は、全体においてほぼ一様に分布し、その空隙の大きさが相対的に大きいので、作動液の流動抵抗が小さくなる。
第2ウィック44は、その内周面44A及び外周面44Bがテーパ形状に形成され、第2ウィック44の厚さは、吸熱部21側が薄く、放熱部23側が厚く、吸熱部21から放熱部23にいくにつれて次第に厚くなっている。詳しくは、吸熱部21における第2ウィック44の最小厚さはT5であり、放熱部23における第2ウィック44の最大厚さはT6である(T5<T6)。
第2ウィック44は、例えば、粒度が細かい銅粉から焼結されてできた多孔質体であり、内側にできている空隙は、全体においてほぼ一様に分布し、その空隙の大きさが相対的に小さいので、大きな毛細管力が得られる。
このように、第1ウィック43及び第2ウィック44の厚さを放熱部23側で厚くすることで、放熱部23側での作動液の還流抵抗を低減して作動液を吸熱部21へスムーズに還流させることができる。また、吸熱部21側でウィックを薄くすることで、発熱素子14からヒートパイプ31への熱伝達率を向上させることができる。
図5は、図4のV−V線断面図である。
コンテナ16の外径Dは、例えば、10〜20mmである。
ヒートパイプ41は、ドーナツ型のウィック45を備える。第1ウィック43及び第2ウィック44は、コンテナ16に対してそれぞれ同心状に配置され、第1ウィック43及び第2ウィック44の厚さは、周方向で一定である。ウィック45の半径方向の外側部分は、粒度の粗い銅粉から形成された多孔質体からなる第1ウィック43であり、ウィック45の半径方向の内側部分は、粒度の細かい銅粉から形成された多孔質体からなる第2ウィック44である。
このように、ウィック45における内側部分の空隙の大きさを小さくすることで、毛細管力を向上させて作動液の吸熱部21への還流を促進させることができる。また、ウィック45における外側部分の空隙の大きさを大きくすることで、作動液の還流抵抗を低減し、作動液を吸熱部21へスムーズに還流させることができる。
また、コンテナ16と、第1ウィック43と、第2ウィック44とを同心状に配置することで、図4に示した発熱素子14から吸熱部21への熱の受け取りと、放熱部23から放熱フィン13への熱の受け渡しをヒートパイプ41の周方向において均等に行うことができ、ヒートパイプ41による熱輸送をより効率的に行うことができる。
<第4実施形態、第5実施形態>
図6は、第4実施形態及び第5実施形態のヒートパイプ51,61を示す横断面図であり、図6(A)は第4実施形態のヒートパイプ51を示す横断面図、図6(B)は第5実施形態のヒートパイプ61を示す横断面図ある。
図6(A)に示すように、ヒートパイプ51は、断面が楕円形で、コンテナ52の内部に第1ウィック53及び第2ウィック54が設けられている。詳しくは、楕円筒状のコンテナ52の内壁面52Aに第1ウィック53が設けられ、第1ウィック53の内周面53Aに第2ウィック54が設けられている。
コンテナ52に対して第1ウィック53及び第2ウィック54は同心状に配置され、第1ウィック53及び第2ウィック54の厚さは、周方向で一定である。第1ウィック53及び第2ウィック54の厚さは、ヒートパイプ51の長手方向で変化している。即ち、図4に示した第3実施形態の第1ウィック43及び第2ウィック44と同様に、吸熱部21側で薄く、放熱部23側で厚くなるように徐々に厚さが変化している。なお、符号56は第2ウィック54の半径方向内側に形成された蒸気通路である。
コンテナ52の長径をDL1、短径をDS1とすると、DL1=10〜20mm、DS1=5〜15mmである。また、ヒートパイプ51の周囲からほぼ均一に吸熱又は放熱する観点から、長径DL1は、短径DS1の2倍以下であることが好ましい。
図6(B)に示すように、ヒートパイプ61は、断面が扁平な長円形で、コンテナ62の内部に第1ウィック63及び第2ウィック64が設けられている。詳しくは、長円筒状のコンテナ62の内壁面62Aに第1ウィック63が設けられ、第1ウィック63の内周面63Aに第2ウィック64が設けられている。コンテナ62に対して第1ウィック63及び第2ウィック64は同心状に配置され、第1ウィック63及び第2ウィック64の厚さは、周方向で一定である。
第1ウィック63及び第2ウィック64の厚さは、ヒートパイプ61の長手方向で変化している。即ち、図4に示した第3実施形態の第1ウィック43及び第2ウィック44と同様に、吸熱部21側で薄く、放熱部23側で厚くなるように徐々に厚さが変化している。なお、符号66は第2ウィック54の半径方向内側に形成された蒸気通路である。
コンテナ62の長径をDL2、短径をDS2とすると、DS1=10〜50mm、DS1=5〜30mmである。また、ヒートパイプ61の周囲からほぼ均一に吸熱又は放熱する観点から、長径DL2は、短径DS2の2倍以下であることが好ましい。
以上の図6(A),(B)に示したヒートパイプ51,61を断面楕円形、断面長円形としたが、この実施形態を除く第1実施形態から第7実施形態においても、ヒートパイプを断面楕円形又は断面長円形として良い。
<第6実施形態>
図7は、第6実施形態のヒートパイプ71を備えた熱輸送装置70を示す縦断面図、図8は、図7のVIII−VIII線断面図である。図2に示した第1実施形態と同一構成については同一符号を付け、詳細説明は省略する。
図7に示すように、熱輸送装置70は、直線状で断面が円形のヒートパイプ71と、ヒートパイプ71の一端71A側に設けられた受熱板12と、他端71B側に設けられた放熱フィン13とを備える。
ヒートパイプ71は、コンテナ16を備える。コンテナ16の内部には、作動液が封入されるとともに、コンテナ16の内壁面16Aに、封入された作動液を毛細管力によって移送する第1ウィック73及び第2ウィック74が設けられている。なお、符号76は、第1ウィック53及び第2ウィック54の半径方向内側に形成された蒸気通路である。
吸熱部21には第1ウィック73が配置され、断熱部22及び放熱部23には第2ウィック74が配置されている。第1ウィック73と第2ウィック74とは、吸熱部21と断熱部22との境界で接している。
第1ウィック73は、例えば、相対的に粒度の細かい銅粉から焼結されてできた多孔質体であり、その空隙の大きさが相対的に小さいので、大きな毛細管力が得られる。
図7及び図8に示すように、コンテナ16に対して第1ウィック73及び第2ウィック74は同心状に配置され、第1ウィック73及び第2ウィック74の厚さが、周方向で一定である。
第2ウィック74は、その内周面74Aに、コンテナ16の長手方向に延びる複数の溝部74Bを備えたグルーブウィックとして構成されている。溝部74Bは、第1ウィック73内にできた空隙の大きさに比べて大きな空隙を有し、相対的に作動液の流動抵抗が小さく透過性が高くなっている。上記した空隙の大きさとは、各溝部74Bの断面積である。
このように、吸熱部21に空隙の大きさが小さい第1ウィック73を設けたことで、吸熱部21での毛細管力を向上させて作動液の吸熱部21への還流を促進させることができる。また、断熱部22及び放熱部23にグルーブウィックである第2ウィック74を設けたことで、断熱部22及び放熱部23での作動液の流動抵抗を小さくして作動液を吸熱部21へスムーズに還流させることができる。
<第7実施形態>
図9は、第7実施形態のヒートパイプ81を備えた熱輸送装置80を示す縦断面図である。図2に示した第1実施形態と同一構成については同一符号を付け、詳細説明は省略する。
熱輸送装置80は、直線状で断面が円形のヒートパイプ81と、ヒートパイプ81の一端81A側に設けられた受熱板12と、他端81B側に設けられた放熱フィン13とを備える。
ヒートパイプ81は、コンテナ16を備える。コンテナ16の内部には、作動液が封入されるとともに、コンテナ16の内壁面16Aに、封入された作動液を毛細管力によって移送する第1ウィック73及び第2ウィック84が設けられている。
コンテナ16に対して第2ウィック84は同心状に配置され、第2ウィック84の厚さは、周方向で一定である。なお、符号86は、第1ウィック73及び第2ウィック84の半径方向内側に形成された蒸気通路である。
吸熱部21には第1ウィック73が配置され、断熱部22及び放熱部23には第2ウィック84が配置されている。第1ウィック73と第2ウィック84とは、吸熱部21と断熱部22との境界で接している。
第2ウィック84は、複数本の金属製線材を織る又は編んで形成されたメッシュ材からなるメッシュウィックで構成されている。メッシュ材では、各金属製線材間に比較的大きな空隙を有するため、作動液の流動抵抗が小さく透過性が高くなっている。上記した空隙の大きさとは、隣り合う金属製線材間の空間の大きさである。
このように、吸熱部21に空隙の大きさが小さい第1ウィック73を設けたことで、吸熱部21での毛細管力を向上させて作動液の吸熱部21への還流を促進させることができる。また、断熱部22及び放熱部23にメッシュウィックである第2ウィック84を設けたことで、断熱部22及び放熱部23での作動液の流動抵抗を小さくして作動液を吸熱部21へスムーズに還流させることができる。
また、第2ウィック84を、複数本の金属製線材を編んで帯状とした金属編組線からなる編組線ウィックで構成しても良い。金属編組線は、メッシュ材と同様に各金属製線材間に比較的大きな空隙を有するため、作動液の流動抵抗が小さく透過性が高くなっている。
以上に述べた各実施形態の実施例について次に詳細に説明する。
(実施例1)…図2参照
吸熱部に粒度の細かい銅粉からできた多孔質体のウィック、放熱部に粒度の粗い銅粉からできた多孔質体のウィックを設けた。
第1ウィック25は、平均粒径が40〜100μmの銅粉を焼結して形成された多孔質体である。第2ウィック26は、平均粒径100〜200μmの銅粉を焼結して形成された多孔質体である。第1ウィック25を形成する銅粉の平均粒径より、第2ウィック26を形成する銅粉の平均粒径を大きくした。このことで、第1ウィック25の空隙は、第2ウィック26の空隙より小さい状態となった。
(実施例2)…図3参照
吸熱部の多孔質体のウィック厚さを相対的に薄く、放熱部の多孔質体のウィック厚さを相対的に厚くした。
ウィック33は、平均粒径40〜200μmの銅粉を焼結して形成された多孔質体である。ここでは、ウィック33の最小厚さT1は2.0mm、最大厚さT2は4.0mmとした。
(実施例3)…図4参照
吸熱部の多孔質体のウィック厚さを相対的に薄く、放熱部の多孔質体のウィック厚さを相対的に厚くした。
第1ウィック43は、平均粒径が100〜200μmの銅粉を焼結して形成された多孔質体である。第2ウィック44は、平均粒径が40〜100μmの銅粉を焼結して形成された多孔質体である。第1ウィック43を形成する銅粉の平均粒径より、第2ウィック44を形成する銅粉の平均粒径を小さくした。第1ウィック43の最小厚さT3は1.0mm、最大厚さT4は2.0mmである。第2ウィック44の最小厚さT5は1.0mm、最大厚さT6は2.0mmである。
(実施例4)…図5参照
円筒ヒートパイプのドーナツ型ウィックにおいて、半径方向の外側部分に粒度の粗い銅粉からできた多孔質体のウィック、半径方向内側部分に粒度の細かい銅粉からできた多孔質体のウィックを設けた。
第1ウィック43は、平均粒径が100〜200μmの銅粉を焼結して形成された多孔質体である。第2ウィック44は、平均粒径が40〜100μmの銅粉を焼結して形成された多孔質体である。第1ウィック43を形成する銅粉の平均粒径より、第2ウィック44を形成する銅粉の平均粒径を小さくした。このことで、第1ウィック43の空隙は、第2ウィック44の空隙より大きい状態となった。
(実施例5)…図7、図8参照
吸熱部に多孔質体のウィック、断熱部及び放熱部にグルーブウィックを設けた。
第1ウィック73は、平均粒径が40〜200μmの銅粉を焼結して形成された多孔質体である。第2ウィック74は、溝部74Bの断面、即ち空隙の大きさが200〜700μmのグルーブウィックである。このことで、第1ウィック73の空隙は、第2ウィック74の空隙より小さい状態となった。
(実施例6)…図9参照
吸熱部に多孔質体のウィック、断熱部及び放熱部にメッシュウィック又は編組線ウィックを設けた。
第2ウィック84の隣り合う金属製線材間の空間の大きさ、即ち空隙の大きさは、100〜200μmであり、かつ、第1ウィック73である多孔質体の空隙の大きさより大きい状態とした。
以上の図2に示したように、断面が円形、楕円形または長円形のヒートパイプ11であって、ウィックとしての第1ウィック25及び第2ウィック26内の空隙の大きさを、少なくとも吸熱部21と放熱部23とで変更した。
この構成によれば、ヒートパイプ11の断面を円形、楕円形または長円形とすることで、ヒートパイプ11の周囲からほぼ均一に吸熱又は放熱することができ、熱輸送を効率良く行うことができる。また、少なくとも吸熱部21と放熱部23とで第1ウィック25及び第2ウィック26の空隙の大きさを変更することにより、第1ウィック25及び第2ウィック26における吸熱部21と放熱部23とで毛細管力と作動液の流動抵抗とを変更することができる。
例えば、放熱部23で作動液の流動抵抗を小さくすれば、作動液の放熱部23から吸熱部21への還流抵抗を低減することができる。また、吸熱部21で毛細管力を大きくすれば、放熱部23から吸熱部21への作動液の還流を促進させることができる。以上より、ヒートパイプ11の断面形状及び第1ウィック25及び第2ウィック26の空隙の大きさによって、ヒートパイプ11の熱輸送性を向上させることができる。
また、第1ウィック25における吸熱部21の空隙の大きさを小さくすることで、吸熱部21の毛細管力を向上させることができ、作動液の吸熱部21への還流を促進して、液枯れによる熱輸送量の低下を防止することができる。更に、第2ウィック26における放熱部23の空隙の大きさを大きくすることで、放熱部23の作動液の流動抵抗を小さくすることができ、作動液を吸熱部21へスムーズに還流させることができる。
また、図5に示したように、断面が円形、楕円形または長円形のヒートパイプ41であって、ウィック45の半径方向における、コンテナ16に接する外側部分の第1ウィック43と蒸気通路46に面する内側部分の第2ウィック44とで空隙の大きさを変更したので、ヒートパイプ41の断面を円形、楕円形または長円形とすることで、ヒートパイプ41の周囲からほぼ均一に吸熱又は放熱することができ、熱輸送を効率良く行うことができる。
また、ウィック45の半径方向における外側部分と内側部分とで空隙の大きさを変更したことにより、ウィック45における外側部分と内側部分とで毛細管力及び作動液の流動抵抗を変更することができる。例えば、外側部分で作動液の流動抵抗を小さくすれば、作動液の放熱部23から吸熱部21への還流抵抗を低減することができる。また、内側部分で毛細管力を大きくすれば、作動液の放熱部23から吸熱部21への還流を促進させることができる。
また、ウィック45における内側部分の空隙の大きさを小さくすることで、毛細管力を向上させることができ、作動液の吸熱部21への還流を促進して、液枯れによる熱輸送量の低下を防止することができる。更に、ウィック45における外側部分の空隙の大きさを大きくすることで、作動液の流動抵抗を小さくすることができ、作動液の吸熱部21への還流抵抗が低減されて、作動液を吸熱部21へスムーズに還流させることができる。
また、図7及び図9に示したように、第1ウィック73及び第2ウィック74(又は第1ウィック73及び第2ウィック84)の吸熱部21と放熱部23とで、グルーブ、メッシュ、編組線、多孔質体等のウィック形態の中から互いに異なるものを設けたので、吸熱部21に、グルーブ、メッシュ、編組線、多孔質体等のウィック形態の中から空隙の大きさが小さなウィック形態である第1ウィック73の多孔質体を選択し、放熱部23に、上記のウィック形態の中から空隙の大きさが吸熱部21よりも大きなウィック形態である第2ウィック74のグルーブウィック(又は第2ウィック84のメッシュウィック)を選択する。これにより、吸熱部21の毛細管力を向上させることができ、作動液の吸熱部21への還流を促進して、液枯れによる熱輸送量の低下を防止することができ、また、第2ウィック74(又は第2ウィック84)における放熱部23の空隙の大きさを大きくすることで、放熱部23の作動液の流動抵抗を小さくすることができ、作動液の吸熱部21への還流抵抗を低減して、作動液を吸熱部21へスムーズに還流させることができる。
また、図2に示したように、多孔質体は、第1ウィック25及び第2ウィック26の吸熱部21と放熱部23とで、互いに異なる材料、形状、粒径の分布、粒径の大きさのものを焼結して形成することができるので、第1ウィック25及び第2ウィック26の空隙の大きさを容易に変更することができる。例えば、多孔質体を形成する粒子の形状を、放熱部23で大きくし、吸熱部21で小さくすることにより、より一層容易に第1ウィック25及び第2ウィックの空隙の大きさを変更することができる。
また、図3に示したように、多孔質体のウィック33の厚さを、吸熱部21で薄く、放熱部23で厚くなるようにウィック33の内周面33A又は外周面をテーパ形状としたので、放熱部23では、作動液の流路断面積を増やすことができ、作動液を吸熱部21へスムーズに還流させることができる。また、吸熱部21では、多孔質体の厚さが薄くなるため、熱源からの熱伝達率を向上させることができる。
上述した実施形態は、あくまでも本発明の一態様を示すものであり、本発明の主旨を逸脱しない範囲で任意に変形及び応用が可能である。
例えば、上記実施形態において、図1、図2に示したように、ヒートパイプ11は、全体が断面円形であるが、これに限らず、少なくとも吸熱部21を断面円形としても良い。例えば、放熱部23の放熱フィン13が取付けられる部分は断面が扁平でも良い。
また、図2、図7及び図9に示した実施形態では、2つのウィックの厚さを同一としたが、これに限らず、2つのウィックの厚さを異ならせても良い。
また、図3に示したように、ウィック33の厚さを吸熱部21側から放熱部23側へ徐々に厚くなるように形成したが、これに限らず、ウィック33の内周面を階段状にして厚さを吸熱部21側から放熱部23側へ段階的に厚くなるようにしても良い。
また、図4では、厚さが吸熱部21側から放熱部23側へ次第に厚くなるウィックを2層設けたが、これに限らず、3層、4層・・・というように多層設けても良い。この場合も、半径方向内側のウィックほど空隙の大きさが小さくなるようにする。
本実施形態の熱輸送装置では、例えば、ヒートパイプのトップヒートモードとなる最大傾斜角度(車両の最大登坂角度に相当する。)が25°程度であっても所定の熱輸送量を確保することが可能である。
10,30,40,70,80 熱輸送装置
11,31,41,51,61,71,81 ヒートパイプ
16,52,62 コンテナ
21 吸熱部
23 放熱部
25,43,53,63,73 第1ウィック(ウィック)
26,44,54,64,74,84 第2ウィック(ウィック)
33,45 ウィック
46,56,66 蒸気通路
T1,T3,T5 ウィックの最小厚さ(ウィックの厚さ)
T2,T4,T6 ウィックの最大厚さ(ウィックの厚さ)

Claims (7)

  1. 断面が円形、楕円形または長円形のヒートパイプであって、
    ウィック内の空隙の大きさを、少なくとも吸熱部と放熱部とで変更したことを特徴とするヒートパイプ。
  2. 前記ウィックの空隙の大きさを、前記放熱部で相対的に大きくし、前記吸熱部で相対的に小さくしたことを特徴とする請求項1に記載のヒートパイプ。
  3. 断面が円形、楕円形または長円形のヒートパイプであって、
    ウィックの半径方向における、コンテナに接する外側部分と蒸気通路に面する内側部分とで空隙の大きさを変更したことを特徴とするヒートパイプ。
  4. 前記ウィックの空隙の大きさを、前記ウィックの半径方向の外側部分で相対的に大きくし、前記ウィックの半径方向の内側部分で相対的に小さくしたことを特徴とする請求項3に記載のヒートパイプ。
  5. 前記ウィックの前記吸熱部と前記放熱部とで、グルーブ、メッシュ、編組線、多孔質体等のウィック形態の中から互いに異なるものを設けたことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載のヒートパイプ。
  6. 前記多孔質体は、前記ウィックの前記吸熱部と前記放熱部とで、互いに異なる材料、形状、粒径の分布を有することを特徴とする請求項5に記載のヒートパイプ。
  7. 前記多孔質体の前記ウィックの厚さを、前記吸熱部で薄く、前記放熱部で厚くなるようにテーパ形状としたことを特徴とする請求項5又は6に記載のヒートパイプ。
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