JP2015117400A - 炭素膜の形成装置、炭素膜の形成方法、及び、磁気記録媒体の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】基板の広範囲において均一な厚みを有する、高硬度で緻密な炭素膜を形成することができる炭素膜の形成装置を提供する。
【解決手段】本発明の炭素膜の形成装置10は、減圧可能な成膜室101と、成膜室101内で基板Dを保持可能なホルダ102と、成膜室101内に炭素を含む原料の気体Gを導入する導入管103と、ホルダ102に保持される基板Dに向けてイオンビームを照射するイオン源104と、イオン源104とホルダ102との間のイオンの加速領域に、イオン源104の中心とホルダ102に保持されたときの基板Dの中心にあたる位置D0とを結ぶ中心軸Cを囲むように配置された筒状の電極112と、を備える。
【選択図】図1
【解決手段】本発明の炭素膜の形成装置10は、減圧可能な成膜室101と、成膜室101内で基板Dを保持可能なホルダ102と、成膜室101内に炭素を含む原料の気体Gを導入する導入管103と、ホルダ102に保持される基板Dに向けてイオンビームを照射するイオン源104と、イオン源104とホルダ102との間のイオンの加速領域に、イオン源104の中心とホルダ102に保持されたときの基板Dの中心にあたる位置D0とを結ぶ中心軸Cを囲むように配置された筒状の電極112と、を備える。
【選択図】図1
Description
本発明は、炭素膜の形成装置、炭素膜の形成方法、及び、磁気記録媒体の製造方法に関する。
近年、ハードディスクドライブ(HDD)等に用いられる磁気記録媒体の分野では、記録密度の向上が著しく、最近では記録密度が1年間で1.5倍程度と、驚異的な速度で伸び続けている。このような記録密度の向上を支える技術は多岐にわたるが、キーテクノロジーの一つとして、磁気ヘッドと磁気記録媒体との間における摺動特性の制御技術を挙げることができる。
例えば、ウインチェスター様式と呼ばれる、磁気ヘッドの起動から停止までの基本動作を磁気記録媒体に対して接触摺動−浮上−接触摺動としたCSS(接触起動停止)方式がハードディスクドライブの主流となって以来、磁気記録媒体上での磁気ヘッドの接触摺動は避けることのできないものとなっている。
このため、磁気ヘッドと磁気記録媒体との間のトライボロジーに関する問題は、宿命的な技術課題となって現在に至っており、磁気記録媒体の磁性膜上に積層される保護膜を改善する努力が営々と続けられていると共に、この媒体表面における耐摩耗性及び耐摺動性が、磁気記録媒体の信頼性向上の大きな柱となっている。
磁気記録媒体の保護膜としては、様々な材質からなるものが提案されているが、成膜性や耐久性等の総合的な見地から、主に炭素膜が採用されている。また、この炭素膜の硬度、密度、動摩擦係数等は、磁気記録媒体のCSS特性、あるいは耐コロージョン特性に如実に反映されるため、非常に重要である。
一方、磁気記録媒体の記録密度の向上を図るためには、磁気ヘッドの飛行高さ(フライングハイト)の低減、媒体回転数の増加等を行うことが好ましい。したがって、磁気記録媒体の表面に形成される保護膜には、磁気ヘッドの偶発的な接触等に対応するため、より高い摺動耐久性や平坦性が要求されるようになってきている。加えて、磁気記録媒体と磁気ヘッドとのスペーシングロスを低減して記録密度を高めるためには、保護膜の厚さをできるだけ薄く、例えば30Å以下の膜厚にすることが要求されるようになってきており、平滑性は勿論のこと、薄く、緻密で且つ強靭な保護膜が強く求められている。
また、上述した磁気記録媒体の保護膜に用いられる炭素膜は、スパッタリング法やCVD法、イオンビーム蒸着法等によって形成される。このうち、スパッタリング法で形成した炭素膜は、例えば100Å以下の膜厚とした場合に、その耐久性が不十分となることがある。一方、CVD法で形成した炭素膜は、その表面の平滑性が低く、膜厚を薄くした場合に、磁気記録媒体の表面の被覆率が低下して、磁気記録媒体のコロージョンが発生する場合がある。一方、イオンビーム蒸着法は、上述したスパッタリング法やCVD法に比べて、高硬度で平滑性が高く、緻密な炭素膜を形成することが可能である。
イオンビーム蒸着法による炭素膜の形成方法としては、例えば、真空雰囲気下の成膜室内で、加熱されたフィラメント状カソードとアノードとの間の放電により成膜原料ガスをプラズマ状態とし、これをマイナス電位の基板表面に加速衝突させることにより、硬度の高い炭素膜を安定して成膜する方法が提案されている(特許文献1参照)。
ところで、磁気記録媒体の記録密度を更に向上させるためには、上述した炭素膜を今まで以上に薄膜化することが求められる。しかしながら、磁気記録媒体の耐摩耗性や耐コロージョン性を確保するためには、磁気記録媒体の表面に形成された炭素膜の最も薄い部分を基準に膜厚の管理を行う必要がある。このため、磁気記録媒体の表面に形成された炭素膜が面内で膜厚分布を有すると、炭素膜の薄膜化が難しくなる。特に、特許文献1に記載された方法では、炭素ガスの励起源であるフィラメントの形状が横又は縦方向に長さを有しているため、基板表面に析出する炭素膜にフィラメントの形状に依存する膜厚分布が生じることになる。
本発明は、かかる事情に鑑みてなされたものであり、基板の広範囲において均一な厚みを有する、高硬度で緻密な炭素膜を形成することができる炭素膜の形成装置を提供することを目的とする。
また、本発明は、基板の広範囲において均一な厚みを有する、高硬度で緻密な炭素膜を形成することができる炭素膜の形成方法を提供することを目的とする。
また、本発明は、基板の広範囲において均一な厚みを有する、高硬度で緻密な炭素膜を磁気記録媒体の保護層に用いることによって、耐摩耗性、耐コロージョン性に優れた磁気記録媒体を得ることを可能とした磁気記録媒体の製造方法を提供することを目的とする。
また、本発明は、基板の広範囲において均一な厚みを有する、高硬度で緻密な炭素膜を形成することができる炭素膜の形成方法を提供することを目的とする。
また、本発明は、基板の広範囲において均一な厚みを有する、高硬度で緻密な炭素膜を磁気記録媒体の保護層に用いることによって、耐摩耗性、耐コロージョン性に優れた磁気記録媒体を得ることを可能とした磁気記録媒体の製造方法を提供することを目的とする。
上記の目的を達成するために、本発明は以下の構成を採用した。
(1)減圧可能な成膜室と、前記成膜室内で基板を保持可能なホルダと、前記成膜室内に炭素を含む原料の気体を導入する導入管と、前記ホルダに保持される前記基板に向けてイオンビームを照射するイオン源と、前記イオン源と前記ホルダとの間のイオンの加速領域に、前記イオン源の中心と前記ホルダに保持されたときの前記基板の中心にあたる位置とを結ぶ中心軸を囲むように配置された筒状の電極と、を備えることを特徴とする炭素膜の形成装置。
(2)前記筒状の電極が円筒状であることを特徴とする(1)に記載の炭素膜の形成装置。
(3)減圧した成膜室内に炭素を含む原料の気体を導入し、この気体をイオン源においてイオン化し、このイオン化した気体を加速して基板の表面に照射することによって、ホルダに保持された基板の表面に炭素膜を形成する炭素膜の形成方法であって、前記イオン源と前記ホルダとの間のイオンの加速領域に、前記イオン源の中心と前記ホルダに保持されたときの前記基板の中心にあたる位置とを結ぶ中心軸を囲むように筒状の電極を配置して、前記イオン源のアノード電極に対し前記筒状の電極に正又は負の電圧を印加し、前記筒状の電極に対し前記ホルダに負の電圧を印加して、前記炭素膜の形成を行うことを特徴とする炭素膜の形成方法。
(4)前記筒状の電極に印加する電圧が負の電圧であり、その負の電圧が50〜200Vであることを特徴とする(3)に記載の炭素膜の形成方法。
(5)前記筒状の電極に印加する電圧が正の電圧であり、その正の電圧が50〜200Vであることを特徴とする請求項3に記載の炭素膜の形成方法。
(6)(3)〜(5)のいずれか一項に記載の炭素膜の形成方法を用いて、少なくとも磁性層が形成された非磁性基板の上に炭素膜を形成することを特徴とする磁気記録媒体の製造方法。
(1)減圧可能な成膜室と、前記成膜室内で基板を保持可能なホルダと、前記成膜室内に炭素を含む原料の気体を導入する導入管と、前記ホルダに保持される前記基板に向けてイオンビームを照射するイオン源と、前記イオン源と前記ホルダとの間のイオンの加速領域に、前記イオン源の中心と前記ホルダに保持されたときの前記基板の中心にあたる位置とを結ぶ中心軸を囲むように配置された筒状の電極と、を備えることを特徴とする炭素膜の形成装置。
(2)前記筒状の電極が円筒状であることを特徴とする(1)に記載の炭素膜の形成装置。
(3)減圧した成膜室内に炭素を含む原料の気体を導入し、この気体をイオン源においてイオン化し、このイオン化した気体を加速して基板の表面に照射することによって、ホルダに保持された基板の表面に炭素膜を形成する炭素膜の形成方法であって、前記イオン源と前記ホルダとの間のイオンの加速領域に、前記イオン源の中心と前記ホルダに保持されたときの前記基板の中心にあたる位置とを結ぶ中心軸を囲むように筒状の電極を配置して、前記イオン源のアノード電極に対し前記筒状の電極に正又は負の電圧を印加し、前記筒状の電極に対し前記ホルダに負の電圧を印加して、前記炭素膜の形成を行うことを特徴とする炭素膜の形成方法。
(4)前記筒状の電極に印加する電圧が負の電圧であり、その負の電圧が50〜200Vであることを特徴とする(3)に記載の炭素膜の形成方法。
(5)前記筒状の電極に印加する電圧が正の電圧であり、その正の電圧が50〜200Vであることを特徴とする請求項3に記載の炭素膜の形成方法。
(6)(3)〜(5)のいずれか一項に記載の炭素膜の形成方法を用いて、少なくとも磁性層が形成された非磁性基板の上に炭素膜を形成することを特徴とする磁気記録媒体の製造方法。
本発明によれば、基板の広範囲において均一な厚みを有する、高硬度で緻密な炭素膜を形成することができる炭素膜の形成装置を提供できる。
また、本発明によれば、基板の広範囲において均一な厚みを有する、高硬度で緻密な炭素膜を形成することができる炭素膜の形成方法を提供できる。
また、本発明によれば、基板の広範囲において均一な厚みを有する、高硬度で緻密な炭素膜を磁気記録媒体の保護層に用いることによって、耐摩耗性、耐コロージョン性に優れた磁気記録媒体を得ることを可能とした磁気記録媒体の製造方法を提供できる。
また、本発明によれば、基板の広範囲において均一な厚みを有する、高硬度で緻密な炭素膜を形成することができる炭素膜の形成方法を提供できる。
また、本発明によれば、基板の広範囲において均一な厚みを有する、高硬度で緻密な炭素膜を磁気記録媒体の保護層に用いることによって、耐摩耗性、耐コロージョン性に優れた磁気記録媒体を得ることを可能とした磁気記録媒体の製造方法を提供できる。
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、以下の説明で用いる図面は、特徴をわかりやすくするために便宜上特徴となる部分を拡大して示している場合があり、各構成要素の寸法比率などは実際と同じであるとは限らない。また、以下の説明において例示される材料、寸法等は一例であって、本発明はそれらに限定されるものではなく、その要旨を変更しない範囲で適宜変更して実施することが可能である。
〔炭素膜の形成装置〕
先ず、本発明を適用した炭素膜の形成装置について説明する。
図1は、本発明の一実施形態を適用した炭素膜の形成装置を模式的に示す概略構成図である。図1においては、ホルダ102に基板Dが保持された状態を示している。
図1に示す炭素膜の形成装置10は、イオンビーム蒸着法を用いた成膜装置であり、減圧可能な成膜室101と、成膜室101内で基板Dを保持可能なホルダ102と、成膜室101内に炭素を含む原料の気体Gを導入する導入管103と、ホルダ102に保持される基板Dに向けてイオンビームを照射するイオン源104と、イオン源104とホルダ102との間に、イオン源104の中心とホルダ102に保持されたときの基板Dの中心にあたる位置D0とを結ぶ中心軸Cを囲むように配置された筒状の電極112と、を備えて概略構成されている。
先ず、本発明を適用した炭素膜の形成装置について説明する。
図1は、本発明の一実施形態を適用した炭素膜の形成装置を模式的に示す概略構成図である。図1においては、ホルダ102に基板Dが保持された状態を示している。
図1に示す炭素膜の形成装置10は、イオンビーム蒸着法を用いた成膜装置であり、減圧可能な成膜室101と、成膜室101内で基板Dを保持可能なホルダ102と、成膜室101内に炭素を含む原料の気体Gを導入する導入管103と、ホルダ102に保持される基板Dに向けてイオンビームを照射するイオン源104と、イオン源104とホルダ102との間に、イオン源104の中心とホルダ102に保持されたときの基板Dの中心にあたる位置D0とを結ぶ中心軸Cを囲むように配置された筒状の電極112と、を備えて概略構成されている。
また、図1に示す炭素膜の形成装置は、カソード電極104を通電により加熱する第1の電源106と、カソード電極104aとアノード電極104bとの間で放電を生じさせる第2の電源107と、筒状の電極112に対し基板Dに負の電圧を与える第3の電源108と、アノード電極104bに対し筒状の電極112に正又は負の電圧を与える第4の電源111と、を備えている。なお、図1においては、第4の電源111は、アノード電極104bに対し筒状の電極112に負の電圧を与える例を示している。
図1に示すイオン源104は、フィラメント状のカソード電極104aと、カソード電極104aの周囲に配置されたアノード電極104bとを備えている。
また、図1に示す炭素膜の形成装置はさらに、成膜室101の側壁101aの外周囲に配置されて、イオン源104の中心とホルダ102に保持されたときの基板Dの中心にあたる位置D0とを結ぶ中心軸Cに対して回転駆動可能なマグネット109を備えている。
成膜室の側壁は円筒状であることが好ましいが、円筒状には限定されない。マグネットは、側壁が円筒状である場合には円筒状であることが好ましいが、複数の直方体状の磁石(マグネット)によって側壁を囲むように配置された構成としてもよい。
成膜室の側壁は円筒状であることが好ましいが、円筒状には限定されない。マグネットは、側壁が円筒状である場合には円筒状であることが好ましいが、複数の直方体状の磁石(マグネット)によって側壁を囲むように配置された構成としてもよい。
筒状の電極112は、基板Dが円板状である場合には円筒状であることが好ましいが、円筒状には限定されない。筒状の電極の中心軸は、イオン源104の中心とホルダ102に保持されたときの基板Dの中心にあたる位置D0とを結ぶ中心軸Cに一致していることが好ましい。ここで、筒状の電極の中心軸とは、筒状の電極が中心軸Cの方向から見て回転対称性を有する場合にはその回転対称軸を指す。
成膜室101は、チャンバ壁101aによって気密に構成されると共に、真空ポンプ(図示せず)に接続された排気管110を通じて内部を減圧排気することが可能となっている。
第1の電源106は、カソード電極104aに接続された交流電源であり、炭素膜の成膜時にカソード電極104aに電力を供給する。また、第1の電源106には、交流電源に限らず、直流電源を用いてもよい。
第2の電源107は、−電極側がカソード電極104aに、+電極側がアノード電極104bに接続された直流電源であり、炭素膜の成膜時にカソード電極104aとアノード電極104bとの間で放電を生じさせる。
第3の電源108は、+電極側が筒状の電極112に、−電極側が基板Dに接続された直流電源であり、炭素膜の成膜時にイオン源104に対しホルダ102に保持された基板Dに負の電圧を付与する。
図1に示す例では、基板Dには、第3の電源108及び第4の電源111によって、アノード電極104bに対し負電圧が印加されるようになっている。
図1に示す例では、基板Dには、第3の電源108及び第4の電源111によって、アノード電極104bに対し負電圧が印加されるようになっている。
第4の電源111は、図1に示す例では+電極側がアノード電極104bに、−電極側が筒状の電極112に接続された直流電源であるが、+電極側が筒状の電極112に、−電極側がアノード電極104bに接続された直流電源であってもよく、炭素膜の成膜時にアノード電極104bに対し筒状の電極112に正又は負の電圧を付与する。
マグネット109は、永久磁石又は電磁石からなり、チャンバ壁101aの周囲に配置されると共に、駆動モータ(図示せず)により周方向に回転駆動することが可能となっている。また、マグネット109として永久磁石を用いる場合には、強い磁場を発生させることができる焼結磁石を用いることが好ましい。
ここで、マグネット109の回転とは、マグネット109を360°の角度を超えて一方向に連続回転させることに加え、360°未満の角度で、往復回転(揺動)させる場合も含む。例えば、マグネット109として、回転の中心軸に対して等間隔で平行に複数の棒磁石を配置した場合、その棒磁石の最短の間隔が中心軸に対してX°を為す場合、往復回転(揺動)させる角度範囲をX°とすれば、成膜室101内で発生する磁界を均一なものとすることが可能である。また、電磁石を用いる場合は、電力を供給する必要があるため、180°以上360°未満の角度で往復回転させることが好ましい。
なお、本発明では、基板Dのサイズにもよるが、外径3.5インチの円盤状の基板に炭素膜を成膜する場合、第1の電源106については、電圧を10〜100Vの範囲、電流を直流又は交流で5〜50Aの範囲に設定することが好ましく、第2の電源107については、電圧を50〜300Vの範囲、電流を10〜5000mAの範囲に設定することが好ましい。第3の電源108については、電圧を50〜500Vの範囲、電流を50〜200mAの範囲に設定することが好ましい。
第4の電源111については、電圧を30〜400Vの範囲に設定することが好ましく、高い電流安定性のためには電圧を50〜200Vの範囲に設定することがより好ましい。また、膜厚分布のばらつきをより小さくするためには100〜180Vの範囲に設定することがより好ましい。
マグネット109の回転数については、例えば20〜200rpmの範囲に設定することが好ましい。
第4の電源111については、電圧を30〜400Vの範囲に設定することが好ましく、高い電流安定性のためには電圧を50〜200Vの範囲に設定することがより好ましい。また、膜厚分布のばらつきをより小さくするためには100〜180Vの範囲に設定することがより好ましい。
マグネット109の回転数については、例えば20〜200rpmの範囲に設定することが好ましい。
以上のような構造を有する炭素膜の形成装置を用いて、基板Dの表面に炭素膜を形成する際は、排気管110を通じて減圧された成膜室101の内部に、導入管103を通じて炭素を含む原料の気体Gを導入する。この原料の気体Gは、第1の電源106からの電力の供給により加熱されたカソード電極104aの熱プラズマと、第2の電源107に接続されたカソード電極104aとアノード電極104bとの間で放電により発生したプラズマとによって励起分解されてイオン化した気体(炭素イオン)となる。そして、このプラズマ中で励起された炭素イオンは、第3の電源108及び第4の電源111によりマイナス電位とされた基板Dに向かって加速しながら、この基板Dの表面に衝突することになる。
ここで、本実施形態を適用した炭素膜の形成装置では、筒状の電極112によって、原料の気体Gをイオン化した気体を加速する領域(イオンの加速領域)において、イオンビームの進行方向に直交する方向の拡がりに影響する電場を印加することができる。
本実施形態を適用した炭素膜の形成装置では、炭素イオンを基板Dの表面に加速照射するときに、アノード電極104bに対し筒状の電極112に負の電圧を印加することによって、この基板Dの表面に向かって加速照射される炭素イオンビームは筒状の電極112に引き寄せされ、筒状の電極112の印加がない場合よりも炭素イオンビームの拡がりが大きくなる。筒状の電極112に印加する電圧の大きさにより、炭素イオンビームの拡がりを調整できる。炭素イオンビームの拡がりを調整することにより、筒状の電極112の印加がない場合よりも基板の周縁部へも十分な炭素イオンが入射するようにできる。筒状の電極112に印加する電圧の大きさを調整して、炭素膜の膜厚分布を均一化して、基板D表面の周縁部の炭素膜の膜厚分布がより均一な基板を作製することができる。
一方、炭素イオンを基板Dの表面に加速照射するときに、アノード電極104bに対し筒状の電極112に正の電圧を印加することによって、この基板Dの表面に向かって加速照射される炭素イオンビームは筒状の電極112の中心軸側に力を受けて収束し、筒状の電極112の印加がない場合よりも炭素イオンビームの拡がりは小さくなる。この場合、より小径の基板において、炭素膜の膜厚分布を均一化して、基板D表面の周縁部の炭素膜の膜厚分布がより均一な基板を作製することができる。
本発明の炭素膜の形成装置を用いて炭素膜を形成する際には、チャンバ壁101aの周囲に配置されたマグネット109によって、原料の気体Gをイオン化する領域又はイオン化した気体(イオンビーム)を加速する領域(以下、励起空間という。)において磁場を印加してもよい。
炭素イオンを基板Dの表面に加速照射するときに、外部から磁場を印加することによって、この基板Dの表面に向かって加速照射される炭素イオンのイオン密度を高めることができる。これにより、励起空間内のイオン密度が高められると、この励起空間内の励起力が高められ、より高いエネルギー状態となった炭素イオンを基板Dの表面に加速照射することができ、その結果、基板Dの表面に硬度が高く緻密性の高い炭素膜を成膜することが可能となる。
炭素イオンを基板Dの表面に加速照射するときに、外部から磁場を印加することによって、この基板Dの表面に向かって加速照射される炭素イオンのイオン密度を高めることができる。これにより、励起空間内のイオン密度が高められると、この励起空間内の励起力が高められ、より高いエネルギー状態となった炭素イオンを基板Dの表面に加速照射することができ、その結果、基板Dの表面に硬度が高く緻密性の高い炭素膜を成膜することが可能となる。
さらに、励起空間の周囲に配置されたマグネット109を周方向に回転させることによって、この励起空間に印加される磁場の分布を均一なものとし、この励起空間中の炭素イオンの分布を均一化して基板Dの表面に照射することができる。したがって、基板Dの表面に形成される炭素膜の膜厚分布も安定化させることが可能である。
マグネット109が印加する磁場とその磁力線の方向については、例えば図2(a)〜(c)に示すような構成を採用することができる。
すなわち、図2(a)に示す構成(図1に示す場合と同様な構成)では、成膜室101のチャンバ壁101aの周囲に、S極が基板D側、N極がカソード電極104a側となるようにマグネット109が配置されている。この構成の場合、マグネット109によって生ずる磁力線Mは、成膜室101の中央付近においては、イオンビームBの加速方向とほぼ平行となる。成膜室101内の磁力線Mの方向をこのような方向に設定することにより、励起空間における炭素イオンを、その磁気モーメントにより成膜室101内の中央付近に集中させ、この励起空間内のイオン密度を効率良く高めることが可能である。
一方、図2(b)に示す構成では、成膜室101のチャンバ壁101aの周囲に、S極がカソード電極104a側、N極が基板D側となるようにマグネット109が配置されている。一方、図2(c)に示す構成では、成膜室101のチャンバ壁101aの周囲に、N極とS極との向きを内周側と外周側とで交互に入れ替えた複数のマグネット109が配置されている。いずれの場合も、マグネット109によって生ずる磁力線Mは、成膜室101の中央付近においては、イオンビームBの加速方向とほぼ平行となり、これにより励起空間内のイオン密度を効率良く高めることが可能である。
また、強い磁場を発生させるために焼結磁石が好適に用いられるが、マグネット109に焼結磁石を用いた場合、1つの大きなマグネット109を製造することが困難なために、マグネット109をチャンバ壁101aの周囲に複数並べて配置することが行われている。この場合、これらチャンバ壁101aの周囲に配置された複数のマグネット109によって発生する磁場は、励起空間内において必ずしも一定(対称形)なものとはならない。そこで、本発明では、チャンバ壁101aの周囲に配置された複数のマグネット109を周方向に回転させることで、励起空間内での磁場分布を均一なものとしている。
さらに、マグネット109を電磁石によって構成する場合も、電磁石は磁心へのコイルの巻き方によって発生する磁界に分布が生ずるため、このような電磁石で構成されたマグネット109を周方向に回転させることで、励起空間内での磁場分布を均一なものとすることが可能である。
なお、図1に示す炭素膜の形成装置では、基板Dの片面にのみ炭素膜を成膜する構成となっているが、基板Dの両面に炭素膜を成膜する構成とすることも可能である。この場合、基板Dの片面にのみ炭素膜を成膜する場合と同様の装置構成を、成膜室101内の基板Dを挟んだ両側に配置すればよい。
〔炭素膜の形成方法〕
本発明の一実施形態に係る炭素膜の形成方法は、減圧した成膜室内に炭素を含む原料の気体を導入し、この気体をイオン源においてイオン化し、このイオン化した気体を加速して基板の表面に照射することによって、ホルダに保持された基板の表面に炭素膜を形成する炭素膜の形成方法であって、イオン源とホルダとの間に、イオン源の中心とホルダに保持されたときの前記基板の中心にあたる位置とを結ぶ中心軸を囲むように筒状の電極を配置して、イオン源のアノード電極に対し筒状の電極に正又は負の電圧を印加し、筒状の電極に対しホルダに負の電圧を印加して、炭素膜の形成を行うことを特徴とするものである。
以下の説明において、構成要素に続く符号は図面に記載の符号に相当する。
本発明の一実施形態に係る炭素膜の形成方法は、減圧した成膜室内に炭素を含む原料の気体を導入し、この気体をイオン源においてイオン化し、このイオン化した気体を加速して基板の表面に照射することによって、ホルダに保持された基板の表面に炭素膜を形成する炭素膜の形成方法であって、イオン源とホルダとの間に、イオン源の中心とホルダに保持されたときの前記基板の中心にあたる位置とを結ぶ中心軸を囲むように筒状の電極を配置して、イオン源のアノード電極に対し筒状の電極に正又は負の電圧を印加し、筒状の電極に対しホルダに負の電圧を印加して、炭素膜の形成を行うことを特徴とするものである。
以下の説明において、構成要素に続く符号は図面に記載の符号に相当する。
本発明を適用した炭素膜の形成方法では、炭素を含む原料の気体Gとして、例えば炭化水素を含むものを用いることができる。炭化水素としては、低級飽和炭化水素、低級不飽和炭化水素、低級環式炭化水素のうち何れか1種又は2種以上の低炭素炭化水素を用いることが好ましい。なお、ここでいう低級とは、炭素数が1〜10の場合を指す。
このうち、低級飽和炭化水素としては、メタン、エタン、プロパン、ブタン、オクタン等を用いることができる。一方、低級不飽和炭化水素としては、イソプレン、エチレン、プロピレン、ブチレン、ブタジエン等を用いることができる。一方、低級環式炭化水素としては、ベンゼン、トルエン、キシレン、スチレン、ナフタレン、シクロヘキサン、シクロヘキサジエン等を用いることができる。
本発明において、低級炭化水素を用いることが好ましいとしたのは、炭化水素の炭素数が上記範囲を越えると、導入管103から気体として供給することが困難となることに加え、放電時の炭化水素の分解が進行しににくくなり、炭素膜が強度に劣る高分子成分を多く含むものとなるためである。
さらに、本発明では、成膜室101内でのプラズマの発生を誘発するため、炭素を含む原料の気体Gに、不活性ガスや水素ガスなどを含有させた混合ガス等を用いても良い。この混合ガスにおける炭化水素と不活性ガス等との混合割合は、炭化水素:不活性ガスを2:1〜1:100(体積比)の範囲に設定することが好ましい。
本発明を適用した炭素膜の形成方法では、イオン源とホルダとの間にイオン源の中心とホルダに保持されたときの基板の中心にあたる位置とを結ぶ中心軸を囲むように筒状の電極が配置された成膜装置を用いて、減圧された成膜室101内に炭素を含む原料の気体Gを導入し、この原料の気体Gを通電により加熱されたフィラメント状のカソード電極104aと、その周囲に設けられたアノード電極104bとの間で放電によりイオン化し、このイオン化した気体を基板Dの表面に加速照射するときに、イオン源のアノード電極に対し筒状の電極に正又は負の電圧を印加し、筒状の電極に対しホルダに負の電圧を印加して、それらの電圧の大きさを、イオンビームの拡がりが基板の大きさに合うように調整して、従来よりも均一な膜厚を有する炭素膜を形成することが可能である。
本発明を適用した炭素膜の形成方法では、炭素イオンを基板の表面に加速照射するときに、アノード電極に対し筒状の電極に負の電圧を印加することによって、この基板の表面に向かって加速照射される炭素イオンビームは筒状の電極に引き寄せされ、筒状の電極の印加がない場合よりも炭素イオンビームの拡がりは大きくなる。筒状の電極に印加する電圧の大きさにより、炭素イオンビームの拡がりを調整できる。炭素イオンビームの拡がりを調整することにより、筒状の電極の印加がない場合よりも基板の周縁部へも十分な炭素イオンが入射するようにできる。筒状の電極に印加する電圧の大きさを調整して、炭素膜の膜厚分布を均一化して、基板表面の周縁部の炭素膜の膜厚分布がより均一な基板を作製することができる。
一方、炭素イオンを基板の表面に加速照射するときに、アノード電極に対し筒状の電極に正の電圧を印加することによって、この基板の表面に向かって加速照射される炭素イオンビームは筒状の電極の中心軸側に力を受けて収束し、筒状の電極の印加がない場合よりも炭素イオンビームの拡がりは小さくなる。この場合、より小径の基板において、炭素膜の膜厚分布を均一化して、基板D表面の周縁部の炭素膜の膜厚分布がより均一な基板を作製することができる。
本発明を適用した炭素膜の成膜方法では、チャンバ壁101aの周囲に配置されたマグネット109によって、原料の気体Gをイオン化する領域又はイオン化した気体(イオンビーム)を加速する領域(以下、励起空間という。)において磁場を印加してもよい。
炭素イオンを基板Dの表面に加速照射するときに、外部から磁場を印加することによって、この基板Dの表面に向かって加速照射される炭素イオンのイオン密度を高めることができる。これにより、励起空間内のイオン密度が高められると、この励起空間内の励起力が高められ、より高いエネルギー状態となった炭素イオンを基板Dの表面に加速照射することができ、その結果、基板Dの表面に硬度が高く緻密性の高い炭素膜を成膜することが可能となる。
炭素イオンを基板Dの表面に加速照射するときに、外部から磁場を印加することによって、この基板Dの表面に向かって加速照射される炭素イオンのイオン密度を高めることができる。これにより、励起空間内のイオン密度が高められると、この励起空間内の励起力が高められ、より高いエネルギー状態となった炭素イオンを基板Dの表面に加速照射することができ、その結果、基板Dの表面に硬度が高く緻密性の高い炭素膜を成膜することが可能となる。
さらに、励起空間の周囲に配置されたマグネット109を周方向に回転させることによって、この励起空間に印加される磁場の分布を均一なものとし、この励起空間中の炭素イオンの分布を均一化して基板Dの表面に照射することができる。したがって、基板Dの表面に形成される炭素膜の膜厚分布も安定化させることが可能である。
(磁気記録媒体の製造方法)
次に、本発明を適用した磁気記録媒体の製造方法について説明する。
本実施形態では、複数の成膜室の間で成膜対象となる基板を順次搬送させながら成膜処理を行うインライン式成膜装置を用いて、ハードディスク装置に搭載される磁気記録媒体を製造する場合を例に挙げて説明する。
次に、本発明を適用した磁気記録媒体の製造方法について説明する。
本実施形態では、複数の成膜室の間で成膜対象となる基板を順次搬送させながら成膜処理を行うインライン式成膜装置を用いて、ハードディスク装置に搭載される磁気記録媒体を製造する場合を例に挙げて説明する。
(磁気記録媒体)
本発明を適用して製造される磁気記録媒体は、例えば図3に示すように、非磁性基板80の両面に、軟磁性層81、中間層82、記録磁性層83及び保護層84が順次積層された構造を有し、更に最表面に潤滑膜85が形成されてなる。また、軟磁性層81、中間層82及び記録磁性層83によって磁性層810が構成されている。
本発明を適用して製造される磁気記録媒体は、例えば図3に示すように、非磁性基板80の両面に、軟磁性層81、中間層82、記録磁性層83及び保護層84が順次積層された構造を有し、更に最表面に潤滑膜85が形成されてなる。また、軟磁性層81、中間層82及び記録磁性層83によって磁性層810が構成されている。
そして、この磁気記録媒体では、保護層84として、上記本発明を適用した炭素膜の形成方法を用いて、高硬度で緻密な炭素膜が均一な厚みで形成されている。この場合、磁気記録媒体では、炭素膜の膜厚を薄くすることが可能であり、具体的には炭素膜の膜厚を2nm程度以下とすることが可能である。
したがって、本発明では、このような磁気記録媒体と磁気ヘッドとの距離を狭く設定することが可能となり、その結果、この磁気記録媒体の記録密度を高めると共に、この磁気記録媒体の耐コロージョン性を高めることが可能である。
以下、上記磁気記録媒体の保護層84以外の各層について説明する。
非磁性基板80としては、Alを主成分とした例えばAl−Mg合金等のAl合金基板や、通常のソーダガラス、アルミノシリケート系ガラス、結晶化ガラス類、シリコン、チタン、セラミックス、各種樹脂からなる基板など、非磁性基板であれば任意のものを用いることができる。
非磁性基板80としては、Alを主成分とした例えばAl−Mg合金等のAl合金基板や、通常のソーダガラス、アルミノシリケート系ガラス、結晶化ガラス類、シリコン、チタン、セラミックス、各種樹脂からなる基板など、非磁性基板であれば任意のものを用いることができる。
その中でも、Al合金基板や、結晶化ガラス等のガラス製基板、シリコン基板を用いることが好ましく、また、これら基板の平均表面粗さ(Ra)は、1nm以下であることが好ましく、さらに好ましくは0.5nm以下であり、その中でも特に0.1nm以下であることが好ましい。
磁性層810は、面内磁気記録媒体用の面内磁性層でも、垂直磁気記録媒体用の垂直磁性層でもかまわないが、より高い記録密度を実現するためには垂直磁性層が好ましい。また、磁性層810は、主としてCoを主成分とする合金から形成するのが好ましい。例えば、垂直磁気記録媒体用の磁性層810としては、例えば軟磁性のFeCo合金(FeCoB、FeCoSiB、FeCoZr、FeCoZrB、FeCoZrBCuなど)、FeTa合金(FeTaN、FeTaCなど)、Co合金(CoTaZr、CoZrNB、CoBなど)等からなる軟磁性層81と、Ru等からなる中間層82と、60Co−15Cr−15Pt合金や70Co−5Cr−15Pt−10SiO2合金からなる記録磁性層83とを積層したものを利用できる。また、軟磁性層81と中間層82との間にPt、Pd、NiCr、NiFeCrなどからなる配向制御膜を積層してもよい。一方、面内磁気記録媒体用の磁性層810としては、非磁性のCrMo下地層と強磁性のCoCrPtTa磁性層とを積層したものを利用できる。
磁性層810の全体の厚さは、3nm以上20nm以下、好ましくは5nm以上15nm以下とし、磁性層810は使用する磁性合金の種類と積層構造に合わせて、十分なヘッド出入力が得られるように形成すればよい。磁性層810の膜厚は、再生の際に一定以上の出力を得るにはある程度以上の磁性層の膜厚が必要であり、一方で記録再生特性を表す諸パラメーターは出力の上昇とともに劣化するのが通例であるため、最適な膜厚に設定する必要がある。
潤滑膜85に用いる潤滑剤としては、パーフルオロエーテル(PFPE)等の弗化系液体潤滑剤、脂肪酸等の固体潤滑剤を用いることができ。通常は1〜4nmの厚さで潤滑層85を形成する。潤滑剤の塗布方法としては、ディッピング法やスピンコート法など従来公知の方法を使用すればよい。
また、本発明を適用して製造される他の磁気記録媒体としては、例えば図4に示すように、上記記録磁性層83に形成された磁気記録パターン83aが非磁性領域83bによって分離されてなる、いわゆるディスクリート型の磁気記録媒体であってもよい。
また、ディスクリート型の磁気記録媒体については、磁気記録パターン83aが1ビットごとに一定の規則性をもって配置された、いわゆるパターンドメディアや、磁気記録パターン83aがトラック状に配置されたメディア、その他、磁気記録パターン83aがサーボ信号パターン等を含んでいてもよい。
このようなディスクリート型の磁気記録媒体は、記録磁性層83の表面にマスク層を設け、このマスク層に覆われていない箇所を反応性プラズマ処理やイオン照射処理等に曝すことによって記録磁性層83の一部を磁性体から非磁性体に改質し、非磁性領域83bを形成することにより得られる。
(磁気記録再生装置)
また、上記磁気記録媒体を用いた磁気記録再生装置としては、例えば図5に示すようなハードディスク装置を挙げることができる。このハードディスク装置は、上記磁気記録媒体である磁気ディスク96と、磁気ディスク96を回転駆動させる媒体駆動部97と、磁気ディスク96に情報を記録再生する磁気ヘッド98と、ヘッド駆動部99と、記録再生信号処理系100とを備えている。そして、磁気再生信号処理系100は、入力されたデータを処理して記録信号を磁気ヘッド98に送り、磁気ヘッド98からの再生信号を処理してデータを出力する。
また、上記磁気記録媒体を用いた磁気記録再生装置としては、例えば図5に示すようなハードディスク装置を挙げることができる。このハードディスク装置は、上記磁気記録媒体である磁気ディスク96と、磁気ディスク96を回転駆動させる媒体駆動部97と、磁気ディスク96に情報を記録再生する磁気ヘッド98と、ヘッド駆動部99と、記録再生信号処理系100とを備えている。そして、磁気再生信号処理系100は、入力されたデータを処理して記録信号を磁気ヘッド98に送り、磁気ヘッド98からの再生信号を処理してデータを出力する。
(インライン式成膜装置)
上記磁気記録媒体を製造する際は、例えば図6に示すような本発明を適用したインライン式成膜装置(磁気記録媒体の製造装置)を用いて、成膜対象となる非磁性基板80の両面に、少なくとも軟磁性層81、中間層82及び記録磁性層83からなる磁性層810と、保護層84とを順次積層することによって、保護層84として高硬度で緻密な炭素膜を備えた上記磁気記録媒体を安定して製造することができる。
上記磁気記録媒体を製造する際は、例えば図6に示すような本発明を適用したインライン式成膜装置(磁気記録媒体の製造装置)を用いて、成膜対象となる非磁性基板80の両面に、少なくとも軟磁性層81、中間層82及び記録磁性層83からなる磁性層810と、保護層84とを順次積層することによって、保護層84として高硬度で緻密な炭素膜を備えた上記磁気記録媒体を安定して製造することができる。
具体的に、本発明を適用したインライン式成膜装置は、ロボット台1と、ロボット台1上に截置された基板カセット移載ロボット3と、ロボット台1に隣接する基板供給ロボット室2と、基板供給ロボット室2内に配置された基板供給ロボット34と、基板供給ロボット室2に隣接する基板取り付け室52と、キャリア25を回転させるコーナー室4、7、14、17と、各コーナー室4、7、14、17の間に配置された処理チャンバ5、6、8〜13、15、16、18〜21と、処理チャンバ20に隣接して配置された基板取り外し室54と、基板取り付け室52が一緒になったチャンバ3Aと、基板取り外し室54に隣接して配置された基板取り外しロボット室22と、基板取り外しロボット室22内に設置された基板取り外しロボット49と、これら各室の間で搬送される複数のキャリア25とを有して概略構成されている。
また、各室2、52、4〜21、54、3Aは、隣接する2つの壁部にそれぞれ接続されており、これら各室2、52、4〜21、54、3Aの接続部には、ゲートバルブ55〜71が設けられ、これらゲートバルブ55〜72が閉状態のとき、各室内は、それぞれ独立の密閉空間となる。
また、各室2、52、4〜21、54、3Aには、それぞれ真空ポンプ(図示せず)が接続されており、これらの真空ポンプの動作によって減圧状態となされた各室内に、搬送機構(図示せず)によりキャリア25を順次搬送させながら、各室内において、キャリア25に装着された非磁性基板80の両面に、上述した軟磁性層81、中間層82及び記録磁性層83、及び保護層84を順次成膜することによって、最終的に図3に示す磁気記録媒体が得られるように構成されている。また、各コーナー室4、7、14、17は、キャリア25の移動方向を変更する室であり、その内部にキャリア25を回転させて次の成膜室に移動させる機構が設けられている。
基板カセット移載ロボット3は、成膜前の非磁性基板80が収納されたカセットから、基板取り付け室2に非磁性基板80を供給するとともに、基板取り外し室22で取り外された成膜後の非磁性基板80(磁気記録媒体)を取り出す。この基板取り付け・取り外し室2、22の一側壁には、外部に開放された開口と、この開口を開閉する51、55が設けられている。
基板取り付け室52の内部では、基板供給ロボット34を用いて成膜前の非磁性基板80がキャリア25に装着される。一方、基板取り外し室54の内部では、基板取り外しロボット49を用いて、キャリア25に装着された成膜後の非磁性基板80(磁気記録媒体)が取り外される。基板取り外し室54から搬送されたキャリア25を基板取り付け室52へと搬送させる。
処理チャンバ5、6、8〜13、15、16、18〜21のうち、処理チャンバ5、6、8〜13、15、16によって、上記磁性層810を形成するための複数の成膜室が構成されている。これら成膜室は、非磁性基板80の両面に、上述した軟磁性層81、中間層82及び記録磁性層83を形成する機構を備えている。
一方、処理チャンバ18〜20によって保護層84を形成するための成膜室が構成されている。これら成膜室は、図1に示すイオンビーム蒸着法を用いた成膜装置と同様の装置構成を備え、上記磁性層810が形成された非磁性基板80の表面に、保護層84として、上述した高硬度で緻密な炭素膜を形成する。
なお、処理チャンバは、図4に示す磁気記録媒体を製造する場合は、更に、マスク層をパターニングするパターニングチャンバや、記録磁性層83のうち、パターンニング後のマスク層によって覆われていない箇所に対し、反応性プラズマ処理又はイオン照射処理を行い、記録磁性層83の一部を磁性体から非磁性体に改質することによって、非磁性領域83bによって分離された磁気記録パターン83bを形成する改質チャンバ、マスク層を除去する除去チャンバを追加した構成とすればよい。
また、各処理チャンバ5、6、8〜13、15、16、18〜21には、処理用ガス供給管が設けられ、供給管には、図示しない制御機構によって開閉が制御されるバルブが設けられ、これらバルブ及びポンプ用ゲートバルブを開閉操作することにより、処理用ガス供給管からのガスの供給、チャンバ内の圧力およびガスの排出が制御される。
キャリア25は、図7及び図8に示すように、支持台26と、支持台26の上面に設けられた複数の基板装着部27とを有している。なお、本実施形態では、基板装着部27を2基搭載した構成のため、これら基板装着部27に装着される2枚の非磁性基板80を、それぞれ第1成膜用基板23及び第2成膜用基板24として扱うものとする。
基板装着部27は、第1及び第2成膜用基板23,24の厚さの1〜数倍程度の厚さを有する板体28に、これら成膜用基板23、24の外周より若干大径となされた円形状の貫通穴29が形成されて構成され、貫通穴29の周囲には、該貫通穴29の内側に向かって突出する複数の支持部材30が設けられている。この基板装着部27には、貫通穴29の内部に第1及び第2成膜用基板23、24が嵌め込まれ、その縁部に支持部材30が係合することによって、これら成膜用基板23、24が縦置き(基板23,24の主面が重力方向と平行となる状態)に保持される。すなわち、この基板装着部27は、キャリア25に装着された第1及び第2成膜用基板23、24の主面が支持台26の上面に対して略直交し、且つ、略同一面上となるように、支持台26の上面に並列して設けられている。
また、上述した処理チャンバ5、6、8〜13、15、16、18〜21には、キャリア25を挟んだ両側に2つの処理装置がある。この場合、例えば、図7中の実線で示す第1処理位置にキャリア25が停止した状態において、このキャリア25の左側の第1成膜用基板23に対して成膜処理等を行い、その後、キャリア25が図7中の破線で示す第2処理位置に移動し、この第2処理位置にキャリア25が停止した状態において、キャリア25の右側の第2成膜用基板24に対して成膜処理等を行うことができる。
なお、キャリア25を挟んだ両側に、それぞれ第1及び第2成膜用基板23、24に対向した4つの処理装置がある場合は、キャリア25の移動は不要となり、キャリア25に保持された第1及び第2成膜用基板23、24に対して同時に成膜処理等を行うことができる。
以下、実施例により本発明の効果をより明らかなものとする。なお、本発明は、以下の実施例に限定されるものではなく、その要旨を変更しない範囲で適宜変更して実施することができる。
(実施例1)
実施例1では、本発明の炭素膜の形成装置、炭素膜の形成方法、及び、本発明の磁気記録媒体の製造方法を用いて、磁気記録媒体のうち、炭素膜(保護膜)まで形成した基体を作製した。
先ず、非磁性基板としてNiPめっきが施されたアルミニウム基板を用意した。次に、図6に示すインライン式成膜装置を用いて、A5052アルミ合金製のキャリアに装着された非磁性基板の両面に、膜厚60nmのFeCoBからなる軟磁性層と、膜厚10nmのRuからなる中間層と、膜厚15nmの70Co−5Cr−15Pt−10SiO2合金からなる記録磁性層とを順次積層することによって磁性層を形成した。次に、キャリアに装着された非磁性基板を図1に示す成膜装置と同様の装置構成を備える処理チャンバに搬送し、この磁性層が形成された非磁性基板の両面に炭素膜からなる保護層を形成した。
実施例1では、本発明の炭素膜の形成装置、炭素膜の形成方法、及び、本発明の磁気記録媒体の製造方法を用いて、磁気記録媒体のうち、炭素膜(保護膜)まで形成した基体を作製した。
先ず、非磁性基板としてNiPめっきが施されたアルミニウム基板を用意した。次に、図6に示すインライン式成膜装置を用いて、A5052アルミ合金製のキャリアに装着された非磁性基板の両面に、膜厚60nmのFeCoBからなる軟磁性層と、膜厚10nmのRuからなる中間層と、膜厚15nmの70Co−5Cr−15Pt−10SiO2合金からなる記録磁性層とを順次積層することによって磁性層を形成した。次に、キャリアに装着された非磁性基板を図1に示す成膜装置と同様の装置構成を備える処理チャンバに搬送し、この磁性層が形成された非磁性基板の両面に炭素膜からなる保護層を形成した。
具体的に、処理チャンバは、外径が180mm、長さが250mmの円筒形状を有し、この処理チャンバを構成するチャンバ壁の材質はSUS304である。処理チャンバ内には、長さ約30mmのタンタルからなるコイル状のカソード電極と、カソード電極の周囲を囲む円筒状のアノード電極とが設けられている。アノード電極は、材質がSUS304であり、内径が140mm、長さが40mmである。また、カソード電極と非磁性基板との距離は160mmとした。さらに、チャンバ壁の周囲を囲む円筒状のマグネットを配置し、その中心にアノード電極が位置するようにした。マグネットは、内径が185mm、長さが40mmであり、その内側に、図2(a)に示すように、10mm角で長さ40mmのNdFe系の焼結棒磁石を等間隔で平行に20本配置すると共に、S極が基板側、N極がカソード電極側となるように、各焼結棒磁石を配置した。また、このマグネットのトータル磁力は50G(5mT)である。そして、炭素膜の成膜中は、このマグネットを100rpmで回転させた。筒状の電極は材質がSUS304であり、内径が140mm、長さが110mmである。筒状の電極はその中心軸が、イオン源の中心とホルダに保持されたときの基板の中心にあたる位置とを結ぶ中心軸と一致するように配置した。
原料ガスについては、ガス化したトルエンを用いた。そして、炭素膜の成膜条件については、ガス流量を2.9SCCM、反応圧力を0.2Paとし、カソード電力を225W(AC22.5V、10A)、カソード電極とアノード電極間の電圧を75V、電流を1650mA、アノード電極に対し筒状の電極の電圧を−75V、イオンの加速電圧を200V、180mA、成膜時間を1.5秒とした。
(実施例2)
実施例2では、アノード電極に対し筒状の電極の電圧を−150Vとした点以外は実施例1と同じ条件で基体を作製した。
実施例2では、アノード電極に対し筒状の電極の電圧を−150Vとした点以外は実施例1と同じ条件で基体を作製した。
(実施例3)
実施例3では、アノード電極に対し筒状の電極の電圧を−200Vとした点以外は実施例1と同じ条件で基体を作製した。
実施例3では、アノード電極に対し筒状の電極の電圧を−200Vとした点以外は実施例1と同じ条件で基体を作製した。
(比較例1)
比較例1で用いた炭素膜の形成装置は、筒状の電極を有さない点において実施例で用いた炭素膜の形成装置と異なる。従って、炭素膜の形成条件として、筒状の電極による電場ない点で実施例1と異なり、その他は、実施例1と同じ条件で基体を作製した。
比較例1で用いた炭素膜の形成装置は、筒状の電極を有さない点において実施例で用いた炭素膜の形成装置と異なる。従って、炭素膜の形成条件として、筒状の電極による電場ない点で実施例1と異なり、その他は、実施例1と同じ条件で基体を作製した。
(炭素膜の膜厚分布の評価)
図9に、実施例1〜3及び比較例1の基体について、半径方向の炭素膜の膜厚分布を示すグラフである。横軸は、基体の中心から半径方向の距離(以下「半径位置」という)を示すものであり、半径位置11mmは内周、半径位置31mmは外周の位置を示す。縦軸は各半径位置における膜厚を示す。
図9において、A、B、C、Dはそれぞれ、実施例1〜3及び比較例1の基体のそれぞれに対応する。
図9に、実施例1〜3及び比較例1の基体について、半径方向の炭素膜の膜厚分布を示すグラフである。横軸は、基体の中心から半径方向の距離(以下「半径位置」という)を示すものであり、半径位置11mmは内周、半径位置31mmは外周の位置を示す。縦軸は各半径位置における膜厚を示す。
図9において、A、B、C、Dはそれぞれ、実施例1〜3及び比較例1の基体のそれぞれに対応する。
図9に示すように、比較例1では、内周の膜厚が中央部(半径位置が21mm近傍)の膜厚に比べて非常に大きかった。具体的には、半径位置が21mmの位置における膜厚は1.9nmであるのに対して、半径位置が11mmのときには膜厚が2.35nmと、その差は0.4nm以上あった。この膜厚の差は21mmの位置における膜厚の20%以上に相当し、膜厚分布が非常に大きいことがわかる。
これに対して、実施例1〜3では、中央部の膜厚に対する内周の膜厚の差は小さくなっている。具体的には、実施例1では、半径位置が21mmの位置における膜厚は1.8nmであるのに対して、半径位置が11mmのときには膜厚が2.0nmと、その差は0.3nmであった。また、実施例2では、半径位置が21mmの位置における膜厚は1.65nmであるのに対して、半径位置が11mmのときには膜厚が1.8nmと、その差は0.15nmであった。また、実施例3では、半径位置が21mmの位置における膜厚は1.7nmであるのに対して、半径位置が11mmのときには膜厚が1.8nmと、その差は0.1nmであった。
以上の通り、実施例1〜3では、比較例1に比べて内周近傍の膜厚と中央部の膜厚との差が小さく、膜厚分布のばらつきが改善された。改善の程度は実施例2及び3の方が実施例1より大きかった。従って、アノード電極に対し筒状の電極の電圧は、−150V〜−200Vの方が−75Vよりも好ましい。
これに対して、実施例1〜3では、中央部の膜厚に対する内周の膜厚の差は小さくなっている。具体的には、実施例1では、半径位置が21mmの位置における膜厚は1.8nmであるのに対して、半径位置が11mmのときには膜厚が2.0nmと、その差は0.3nmであった。また、実施例2では、半径位置が21mmの位置における膜厚は1.65nmであるのに対して、半径位置が11mmのときには膜厚が1.8nmと、その差は0.15nmであった。また、実施例3では、半径位置が21mmの位置における膜厚は1.7nmであるのに対して、半径位置が11mmのときには膜厚が1.8nmと、その差は0.1nmであった。
以上の通り、実施例1〜3では、比較例1に比べて内周近傍の膜厚と中央部の膜厚との差が小さく、膜厚分布のばらつきが改善された。改善の程度は実施例2及び3の方が実施例1より大きかった。従って、アノード電極に対し筒状の電極の電圧は、−150V〜−200Vの方が−75Vよりも好ましい。
なお、実施例1〜3はいずれも比較例1に比べて膜厚が薄くなっていた。これは、筒状の電極による電場によって炭素イオンビームの拡がりが大きくなったことに起因するものと考えられる。膜厚は成膜時間を長くすることにより厚くすることができる。
本発明によれば、高硬度で緻密な炭素膜の厚みの均一性を向上可能な炭素膜の形成装置、炭素膜の形成方法、及び、磁気記録媒体の製造方法を提供できる。
10 炭素膜の形成装置
101 成膜室
102 ホルダ
103 導入管
104 イオン源
112 筒状の電極
D 基板
101 成膜室
102 ホルダ
103 導入管
104 イオン源
112 筒状の電極
D 基板
Claims (6)
- 減圧可能な成膜室と、
前記成膜室内で基板を保持可能なホルダと、
前記成膜室内に炭素を含む原料の気体を導入する導入管と、
前記ホルダに保持される前記基板に向けてイオンビームを照射するイオン源と、
前記イオン源と前記ホルダとの間のイオンの加速領域に、前記イオン源の中心と前記ホルダに保持されたときの前記基板の中心にあたる位置とを結ぶ中心軸を囲むように配置された筒状の電極と、を備えることを特徴とする炭素膜の形成装置。 - 前記筒状の電極が円筒状であることを特徴とする請求項1に記載の炭素膜の形成装置。
- 減圧した成膜室内に炭素を含む原料の気体を導入し、この気体をイオン源においてイオン化し、このイオン化した気体を加速して基板の表面に照射することによって、ホルダに保持された基板の表面に炭素膜を形成する炭素膜の形成方法であって、
前記イオン源と前記ホルダとの間のイオンの加速領域に、前記イオン源の中心と前記ホルダに保持されたときの前記基板の中心にあたる位置とを結ぶ中心軸を囲むように筒状の電極を配置して、前記イオン源のアノード電極に対し前記筒状の電極に正又は負の電圧を印加し、
前記筒状の電極に対し前記ホルダに負の電圧を印加して、
前記炭素膜の形成を行うことを特徴とする炭素膜の形成方法。 - 前記筒状の電極に印加する電圧が負の電圧であり、その負の電圧が50〜200Vであることを特徴とする請求項3に記載の炭素膜の形成方法。
- 前記筒状の電極に印加する電圧が正の電圧であり、その正の電圧が50〜200Vであることを特徴とする請求項3に記載の炭素膜の形成方法。
- 請求項3〜5のいずれか一項に記載の炭素膜の形成方法を用いて、少なくとも磁性層が形成された非磁性基板の上に炭素膜を形成することを特徴とする磁気記録媒体の製造方法。
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