本願発明の実施形態における画像形成装置の構成について、プリンターを一例として、図面を参照して説明する。図1は、本発明に係る画像形成装置の概略構成図である。
図1に示す画像形成装置Dは、トナー画像を担持し、反時計回りに回転駆動する円筒状の感光体(像担持体)1の周囲に、感光体1の表面を一様に帯電させる帯電ローラー2と、感光体1表面に光を照射して静電潜像を形成する露光装置3と、感光体1にトナーを供給し感光体1上の静電潜像を現像してトナー画像を形成する現像装置4と、現像装置4によって形成された感光体1上のトナー画像を記録紙Pに転写する転写ローラー6と、記録紙P上のトナー画像を定着させる定着装置7とを備えている。
また、画像形成装置Dは、装置下部に給紙部10を備えている。給紙部10は、記録紙Pを積載する記録紙トレイ11と、記録紙Pの搬送方向先端部を昇降させる昇降板12と、給紙ローラー13と、給紙ローラー13に対して接触位置と離間位置とに移動する記録紙分離部材14と、記録紙分離部材14を給紙ローラー13の方向に付勢する圧縮コイルばね15とを有する。昇降板12が上昇すると共に、記録紙分離部材14が給紙ローラー13と接触位置になると、給紙ローラー13によって最上の記録紙から順に1枚ずつ搬送路に引き出される。
画像形成装置Dは、給紙ローラー13と転写ローラー7との間の搬送路には、記録紙Pを検出するタイミングセンサー16を備えている。タイミングセンサー16は、光電センサーで構成されており、給紙ローラー13から搬送された記録紙Pの先端を検出する。すなわち、給紙ローラー13により給紙部10から記録紙Pが搬送路に繰り出されると、タイミングセンサー16が搬送路上の記録紙Pの先端を検出する。このタイミングセンサー16による記録紙Pの先端の検出をトリガとして、感光体1表面に露光装置3による静電潜像が形成される。
画像形成動作について説明する。まず、所定の周速度で回転する感光体1の外周面が帯電ローラー2によって一様に帯電される。次に、帯電された感光体1の表面に、例えばパーソナルコンピュータなどの外部装置から入力される画像データに基づいて露光装置3から光が照射されて感光体1に静電潜像が形成される。続いて、この静電潜像は、現像装置4から供給されるトナーによって可視像化される。このようにして感光体1の表面に形成されたトナー画像は感光体1の回転によって、感光体1と転写ローラー6とのニップ部(転写領域)に搬送される。転写ローラー6は、不図示の駆動モーターによって回転すると共に、圧縮コイルばね(不図示)によって感光体1に圧接している。また、転写ローラー6には、不図示の電圧印加手段によって転写バイアス電圧が印加される。
一方、記録紙トレイ11に積載された記録紙Pは、給紙ローラー13によって最上の記録紙から順に搬送路に引き出される。そして、タイミングセンサー16によって記録紙Pの先端位置が検知され、感光体1の回転タイミングに合わせて転写領域に搬送される。感光体1と転写ローラー6とのニップ部を記録紙Pが通過する際に、転写ローラー6に転写バイアス電圧が印加され、感光体1に形成されたトナー画像が記録紙Pに転写される。トナー画像が転写された記録紙Pは定着装置7に搬送される。
定着装置7は、記録紙Pの印字表面を加熱する加熱ローラー(定着ローラー)71と、加熱ローラー71に対向して記録紙Pを狭持して加圧する加圧ローラー72とで構成されている。この定着装置7において、記録紙Pは、加熱ローラー71及び加圧ローラー72により加熱・加圧されて記録紙P上のトナー画像は記録紙Pに溶融定着する。トナー画像が定着した記録紙Pは排紙ローラー対8によって排紙トレイ9に排出される。
画像形成装置Dでは、給紙ローラー13から、定着装置7における加熱ローラー71及び加圧ローラー72とのニップ部までの間の搬送路には搬送ローラー対を設けていない。これにより搬送路を短くし装置の小型化を図っている。また、画像形成装置Dでは、転写ローラー6の周速度を給紙ローラー13の周速度よりも速くしている。これにより、搬送路において記録紙Pが弛んでループ状になるのを防ぎ、搬送路を最小限の容積に抑えて装置のさらなる小型化を図っている。
画像形成装置Dは、記録紙Pの給紙を開始すると、昇降板12を上方に移動させて、昇降板12上に積載された記録紙Pを給紙ローラー13に当接させると同時に、記録紙分離部材14を離間位置から接触位置に変位させる。昇降板12の上方移動のための揺動動作に合わせて、給紙ローラー13の駆動軸17(図2参照)を回転させるものの、給紙ローラー13は停止状態となる。そして、昇降板12の揺動開始後に所定時間が経過すると、給紙ローラー13が回転を開始して、昇降板12に積載された最上の記録紙Pを給紙ローラー13が搬送路に引き出す。これにより、給紙ローラー13と記録紙分離部材14とが記録紙Pを挟持して、転写ローラー6に向かって搬送する。
その後、記録紙Pは、給紙ローラー13と記録紙分離部材14との間と、感光体1と転写ローラー6との間の両方に挟持された状態が生じる。このとき、記録紙Pは、周速度の速い感光体1と転写ローラー6との搬送力によって、給紙ローラー13と記録紙分離部材14との間から引き抜かれる。そして、感光体1及び転写ローラー6が記録紙Pを狭持して、感光体1のトナー画像を記録紙Pに転写すると同時に、定着装置7に向かって搬送する。
記録紙Pの先端が定着装置7に到達すると、記録紙Pの先端が加熱ローラー71と加圧ローラー72とのニップ部に挟持される。記録紙Pは、給紙ローラー13と記録紙分離部材14との間と、感光体1と転写ローラー6との間と、加熱ローラー71と加圧ローラー72との間の全てで挟持された状態が生じる。このとき、記録紙分離部材14を接触位置から離間位置に移動させるとともに、給紙ローラー13を空転させる。これにより、感光体1、転写ローラー6、加熱ローラー71、及び加圧ローラー72それぞれの回動駆動負荷の上昇を抑えられるため、記録紙Pが安定して搬送されることとなる。従って、記録紙Pの搬送速度の変化に基づく、記録紙Pへの転写トナー画像の乱れを防止できる。
以下、記録紙分離部材14を接触位置から離間位置に移動させる機構及び給紙ローラー13を空転させる機構について詳述する。図2及び図3に、給紙部10の部分斜視図を示す。記録紙Pの搬送方向先端部を積載する昇降板12は、図2の矢印A方向から見て左右両側にある軸121a及び軸121bによって給紙ローラー13側が昇降自在に支持されている。また、昇降板12は、図3で示すように、圧縮コイルばね124によって給紙ローラー13の方向へ常に付勢されている。
また、昇降板12の左右側部には突出部122a,122bが形成されている。そして、ハウジングに回転自在に設けられたカムギア24a,24bのそれぞれの内側面にはカム突起241a,241bが形成されている。カムギア24a,24bが回転して、カム突起241a,241bが昇降板12の突出部122a,122bに当接し、突出部122a,122bを押し下げることによって、昇降板12は、圧縮コイルばね124の付勢力に抗して押し下げられる。図4に、このときの状態を示す垂直断面図を示す。そして、カムギア24a,24bが回転してカム突起241a,241bと突出部122a,122bとの係合状態が解消されると、昇降板12は、圧縮コイルばね124の付勢力によって上方に移動し、給紙ローラー13と圧接した状態となる。図5に、このときの状態を示す垂直断面図を示す。
図6に示すように、給紙ローラー13に圧接し、記録紙Pを一枚ずつ搬送路に送り出す記録紙分離部材14は、給紙ローラー13と接触して記録紙Pを挟み込むフリクションパッド141とそれを保持するホルダー142とを有し、圧縮コイルばね15によって給紙ローラー13の方向に常に付勢されている。そして、ホルダー142に形成された突起142aが、レバー保持部18aを支点として揺動する略L字状のレバー18に当接している。また、レバー18の自由端側は、昇降板12の先端位置にあるレバー当接部123(図5に図示)の下方に位置している。
図4に示したように、昇降板12が、圧縮コイルばね124の付勢力に抗して押し下げられると、レバー18の自由端側が昇降板12のレバー当接部123によって押し下げられて、レバー18はレバー保持部18aを支点として下方向へ移動する。レバー18が下方に移動することによって、レバー18に当接しているホルダー142の突起142aが下方に押し下げられ、記録紙分離部材14は下方に移動する。これによって、記録紙分離部材14は、給紙ローラー13から離れた離間位置となる。一方、図5に示したように、昇降板12が、圧縮コイルばね124の付勢力によって上方に移動すると、レバー18は通常状態に戻り、記録紙分離部材14は圧縮コイルばね15によって給紙ローラー13に圧接する。このように、記録紙分離部材14は、昇降板の昇降に連動して給紙ローラー13に対して接触位置と離間位置とに移動する。
次に、カムギア24a,24b及び給紙ローラー13の回転駆動機構について説明する。図2及び図3に示すように、給紙ローラー13は駆動軸17に取り付けられており、駆動軸17の両端に取り付けられた連結ギア25a,25bは、カムギア24a,24bと歯合している。図7に、図2の矢印B方向から見た斜視図を示す。なお、図7ではギア列を保持する本体の基板を省略している。
図7に示すように、ラチェット欠歯ギア22と欠歯ギア23、カムギア24aとが同軸上に取り付けられている。そして、ラチェット欠歯ギア22と欠歯ギア23とは、モーターからの回転駆動を伝達する駆動ギア21と歯合し、カムギア24aは、連結ギア25aと歯合している。ラチェット欠歯ギア22の側面には、回転方向に向かって段差を設けた段部222が形成されている。段部222には、ソレノイド40によって軸31を中心として揺動するレバー30の係止部32が係合する。
図8に、図7に示すギア列の正面図を示す。軸31を中心として揺動可能なレバー30は、係止部32と作用部33とを有する。作用部33は、ソレノイド40の作動桿41と連結している。ソレノイド40に通電がなされると、圧縮コイルばね42の付勢力に抗して作動桿41が上方に移動し、レバー30は軸31を中心として反時計回りに回転する。これにより、段部222と係止部32との係合が解除され、ラチェット欠歯ギア22は回転可能状態となる。その後、ソレノイド40が非通電状態になると、圧縮コイルばね42の付勢力によって作動桿41が下方に移動し、レバー30は軸31を中心として時計回りに回転し、係止部32がラチェット欠歯ギア22の軸部に摺接する。そして、ラチェット欠歯ギア22が1回転したところで係止部32と段部222とが再び係合し、ラチェット欠歯ギア22の回転が止められる。なお、係止部32と段部222とが係合している状態のとき、ラチェット欠歯ギア22の欠歯部221が駆動ギア21との噛み合い位置にあり、駆動ギア21から回転駆動力はラチェット欠歯ギア22には伝達されない。
図9に、ラチェット欠歯ギア22、欠歯ギア23、カムギア24aの組立斜視図を示す。カムギア24aは、第1連結軸242によって欠歯ギア23と連結され、欠歯ギア23と一体で回転する。欠歯ギア23には欠歯部231が形成されており、この部分では駆動ギア21からの回転駆動力は伝達されない。ラチェット欠歯ギア22は、第2連結軸234によって欠歯ギア23と連結されているが、欠歯ギア23に対して一定の角度範囲で自由に回動することができる。すなわち、欠歯ギア23の側面に周方向に所定長さ形成された溝部233(図10に図示)に、ラチェット欠歯ギア22の側面に形成された突起223が係入し、溝部233(図10に図示)の端部壁と突起223との間には圧縮コイルばね26が介装されている。ラチェット欠歯ギア22にも欠歯部221が形成されており、この部分では駆動ギア21からの回転駆動力は伝達されない。
図10〜図15によって、このような構造のギア駆動機構の動作説明をする。なお、図10〜図15それぞれにおける(a),(b),(c)は、ラチェット欠歯ギア22、欠歯ギア23、カムギア24bの同時期の動きを示している。また、ラチェット欠歯ギア22、欠歯ギア23、カムギア24a(24b)、及び突出部122a(122b)が、昇降板揺動機構を構成している。
図10は、ギア駆動機構が待機状態のときの図である。同図(a)に示すように、ラチェット欠歯ギア22は、レバー30の係止部32と段部222とが係合して回転が止められている。また、ラチェット欠歯ギア22は、欠歯部221が駆動ギア21と対向する位置にあり、駆動ギア21からの回転駆動は伝達されていない。同図(b)に示すように、欠歯ギア23も、欠歯部231が駆動ギア21と対向する位置にあり、駆動ギア21から回転駆動は欠歯ギア23にも伝達されない。この状態のとき、圧縮コイルばね26は、溝部233の端部壁と突起223との間で圧縮された状態にある。同図(c)に示すように、カムギア24bは、カム突起241bが昇降板12の突出部122bと係合した位置にあり、昇降板12は下方に押し下げられた状態にある。この状態のとき、図4に示したように、記録紙分離部材14は給紙ローラー13から離間した位置にある。
次に、図11(a)に示すように、ソレノイド40に通電されてレバー30の係止部32と段部222との係合が解除されると、ラチェット欠歯ギア22は回転可能となる。一方、同図(b)に示すように、欠歯ギア23は未だ回転できない状態にあるので、圧縮コイルばね26によって、ラチェット欠歯ギア23は反時計回りに回転し、ラチェット欠歯バネ23の歯部が駆動ギア21と歯合するようになる。このとき、欠歯ギア23及びカムギア24bは、図11(b)、(c)に示す待機状態のままである。
図12(a)に示すように、駆動ギア21からの回転駆動がラチェット欠歯ギア22に伝達され、ラチェット欠歯ギア22が回転して、突起223が欠歯ギア23の側面突起232と当接すると、同図(b)に示すように欠歯ギア23も回転を始める。また、欠歯ギア23の回転によってカムギア24aも回転する。そして、カムギア24aと歯合する連結ギア25aが回転し、これにより、連結ギア25aが取り付けられた駆動軸17と、連結軸17の他方端に取り付けられた連結ギア25bが回転し、同図(c)に示すように、連結ギア25bと歯合するカムギア24bが回転する。このとき、給紙ローラー13の駆動軸17も回転を始める。
これにより、図13(c)に示すように、カムギア24a,24bのカム突起241a,241bと、昇降板12の突出部122a,122bとの係合が解除されるので、昇降板12は圧縮コイルばね124の付勢力によって上方に移動し、昇降板12上に積載されている記録紙Pが給紙ローラー13に圧接するようになる。また、同時に、レバー18によって押し下げられていた記録紙分離部材14も、圧縮コイルばね15の付勢力によって給紙ローラー13と圧接する接触位置となる(図5を参照)。そして、給紙ローラー13は、後述するように、所定時間、駆動軸17のみを空転させた後、給紙ローラー13本体が回転することにより、記録紙Pの給紙を開始する。なお、ソレノイド40は、レバー30の係止部32と段部222との係合が解除された後、非通電状態に戻り、図13(a)に示すように、レバー30の係止部32はラチェット欠歯ギア22の軸と摺接する位置に戻る。
図14(a)に示すように、ラチェット欠歯ギア22がさらに回転し、ラチェット欠歯ギア22の欠歯部221が駆動ギア21と対向する位置に至ると、ラチェット欠歯ギア22は駆動ギア21からの回転駆動力を伝達されなくなる。このとき、同図(b)に示すように、欠歯ギア23は駆動ギア21とまだ歯合しており回転を続けているため、圧縮コイルばね26の弾性力でラチェット欠歯ギア22はさらに少し回転し、レバー30の係止部32と段部222との係合し、ラチェット欠歯ギア22の回転が完全に停止する。また、同図(c)に示すように、カムギア24a,24bのカム突起241a,241bは、昇降板12の突出部122a,122bの傾斜面と接触し、昇降板12は徐々に下方に押し下げられる。また同時に、昇降板が下方に押し下げられると、図4に示したように、記録紙分離部材14もレバー18によって給紙ローラー13から離れる方向(下方)に押し下げられる。これにより、給紙ローラー13の回転による記録紙Pの給紙は停止する。
次いで、図15(b)に示すように、欠歯ギア23の欠歯部231が駆動ギア21と対向する位置になると、欠歯ギア23は駆動ギア21から回転駆動力を伝達されなくなる。そして、同図(c)に示すように、カムギア24a,24bのカム突起241a,241bが突出部122a,122bと係合して、昇降板12は押し下げられた状態となり、図4に示したように、記録紙分離部材14はレバー18によって給紙ローラー13から離れた離間位置となる。このとき、圧縮コイルばね124の弾性力が、突出部122a、122bを介してカム突起241a、241bが伝わり、カムギア24a、24bが若干回転してカム突起241a,241bと突出部122a,122bとは定位置で係合し、図10に示す待機状態に戻る。
以上のように、ラチェット欠歯ギア22、欠歯ギア23、カムギア24a,24bが1回転するごとに、記録紙Pが記録紙トレイ11から引き出され、感光体1と転写ローラー6とのニップ部に搬送される。すなわち、搬送された記録紙Pの先端が加熱ローラー71と加圧ローラー72とのニップ部で挟持された時、昇降板12が押し下げられた状態となり、記録紙分離部材14が給紙ローラー13から離れた離間位置になる。従って、記録紙Pの先端が定着装置7に到達したときに、記録紙P2の後端側が給紙ローラー13に係っていたとしても、給紙ローラー13が転写ローラー6や定着装置7における回転駆動の負荷となることが回避される。
次に、給紙ローラー13を空転させる機構について説明する。上述したように、給紙ローラー13は、連結ギア25a,25bを介してカムギア24a,24bと連動する駆動軸17に対して、所定区間だけ空転可能に構成されている。図16に、空転可能機構の一例を示す斜視図を示す。
円筒状で、内周面に軸方向と平行な複数本の突条51aが形成され、外周面の軸方向端部に周方向長さd1の凸部51bが形成された固定具51が、断面が略コ字状の駆動軸17に固定される。そして、この固定具51に給紙ローラー13が回転自在に外嵌されている。給紙ローラー13は、円筒状の基部131と、基部131の外周に形成された弾性層132とを有する。基部131の軸方向端部には、周方向の長さLの切り欠き部131aが形成されている。
切り欠き部131aの周方向長さLは、凸部51bの周方向長さd1よりも長く、固定具51の凸部51bが切り欠き部131a内に位置するように、給紙ローラー13は固定具51に取り付けられる。切り欠き部131aの周方向長さLと凸部51bの周方向長さd1との差が、給紙ローラー13又は駆動軸17が空転可能な長さd2となる。すなわち、凸部51bが切り欠き部131aの側壁131bと当接するまで、駆動軸17が空転する一方で、切り欠き部131aの側壁131cが凸部51bと当接するまで、給紙ローラー13が空転する。なお、給紙ローラー13が給紙動作を行うとき、給紙ローラー13は、図16の矢印方向に回転する。
給紙ローラー13の給紙動作について、図17〜図23を参照して、以下に説明する。図17〜図22はそれぞれ、画像形成装置Dの各部の動作を説明する概略断面図である。図17が、給紙動作開始時の状態を示し、図18及び図19が、最大積載枚数の記録紙Pを積載したときの状態を示し、図20が、1枚の記録紙Pを積載したときの状態を示し、図21が、記録紙Pが転写ローラー6に到達したときの状態を示し、図22が、記録紙Pが定着装置7に到達したときの状態を示す。図23は、記録紙Pを搬送する際の各部の動作を示すタイミングチャートである。
図17に示すように、給紙動作の開始直後は、カムギア24a(24b)のカム突起241a(241b)が昇降板12の突出部122a(122b)における段差部219で係合しており、昇降板12は下方に押し下げられた状態にあり、記録紙分離部材14が給紙ローラー13から離間している。このとき、給紙ローラー13は、駆動軸17と連結する固定具51の凸部51bが基部131の切り欠き部131aにおける側壁131cに当接した状態となっている。
その後、駆動ギア21からの回転駆動がカムギア24aに伝達されるため、カムギア24aは、カム突起241aと突出部122aとの係合を解除する方向へ回転する。また、カムギア24aの回転動力が駆動軸17に一端に取り付けた連結ギア25aに伝達されるため、駆動軸17が、カムギア24aの回転に同期して回転を開始する。このとき、給紙ローラー13では、駆動軸17と連結した固定具51が回転するものの、凸部51bが切り欠き部131aにおける側壁131bと接触していないため、給紙ローラー13は回転せずに、駆動軸17のみが空転する。
カム突起241a(241b)による突出部122a(122b)における段差部219との係合が解除されると、カム突起241a(241b)は、突出部122a(122b)の頂部220を当接する。これにより、カムギア24a(24b)の回転に伴って、カム突起241a(241b)が上方に移動することで、カム突起241a(241b)と頂部220で当接している突出部122a(122b)が、圧縮コイルばね124の付勢力により上方に移動する。そのため、昇降板12は、突出部122a(122b)の上方への移動に伴って揺動し、昇降板12における給紙ローラー13側の端縁を上方へ移動させる。
図18に示すように、最大積載枚数の記録紙Pが昇降板12に積載されている場合、カム突起241a(241b)と突出部122a(122b)との係合が解除された直後に、昇降板12上で最上となる記録紙Pが給紙ローラー13に圧接する。すなわち、最大積載枚数の記録紙Pが昇降板12に積載されている場合、カムギア24a(24b)のカム突起241a(241b)が、給紙動作の開始直後の位置(図17参照)から角度θ1だけ回転したときに、昇降板12上の記録紙Pが給紙ローラー13に圧接する。
このとき、カムギア24a(24b)及び連結ギア25a(25b)それぞれの歯数をZ1,Z2とすると、駆動軸17のみが角度θ2(=θ1×Z1/Z2)だけ回転する。すなわち、給紙ローラー13において、固定具51の凸部51bが切り欠き部131aの側壁131cとの当接位置(図17参照)から角度θ2だけ回転した位置に移動する。なお、固定具51の凸部51bが移動可能な角度θ0(空転可能な長さd2に相当する角度)は、角度θ2より大きい。従って、図18に示すように、記録紙Pが給紙ローラー13に圧接したとしても、凸部51bが切り欠き部131aの側壁131bと当接していないので、給紙ローラー13は回転しない。
その後、カムギア24a(24b)と駆動軸17それぞれが回転することで、図19に示すように、駆動軸17と共に回転する固定具51の凸部51bが、基部131の切り欠き部131aの回転方向下流側の側面131bに当接する。このとき、カムギア24a(24b)が給紙動作の開始直後の位置(図17参照)から角度θ3(θ3>θ1)だけ回転するとともに、給紙ローラー13において、駆動軸17のみが角度θ4(=θ3×Z1/Z2)だけ空転している。
よって、駆動軸17からの回転駆動力は、固定具51の凸部51bと基部131の切り欠き部131aとの当接によって給紙ローラー13に伝達される。そのため、駆動軸17の回転に同期して給紙ローラー13が回転を開始することで、給紙ローラー13に圧接している最上の記録紙Pが搬送路に繰り出される。なお、記録紙分離部材14が圧縮コイルばね15によって給紙ローラー13との接触位置に移動しているため、記録紙Pが1枚だけ選択的に搬送路に搬送される。
一方、図20に示すように、1枚の記録紙Pが昇降板12に積載されている場合、カム突起241a(241b)と突出部122a(122b)との係合が解除されてから、カムギア24a(24b)が暫く回転した後に、昇降板12上の記録紙Pが給紙ローラー13に圧接する。すなわち、1枚の記録紙Pが昇降板12に積載されている場合、カムギア24a(24b)のカム突起241a(241b)が、給紙動作の開始直後の位置(図17参照)から角度θ3だけ回転したときに、昇降板12上の記録紙Pが給紙ローラー13に圧接する。
このとき、給紙ローラー13において、駆動軸17のみが角度θ4だけ空転して、駆動軸17と共に回転する固定具51の凸部51bが、基部131の切り欠き部131aの回転方向下流側の側面131bに当接する。よって、駆動軸17からの回転駆動力は、固定具51の凸部51bと基部131の切り欠き部131aとの当接によって給紙ローラー13に伝達され、給紙ローラー13に圧接した記録紙Pが搬送路に繰り出される。
上述のように、給紙動作の開始直後は、駆動軸17が給紙ローラー13に対して空転させることで、昇降板12に積載される記録紙Pの枚数にかかわらず、給紙ローラー13による記録紙Pの搬送路への引き出しタイミングを同一タイミングとできる。すなわち、給紙ローラー13による記録紙Pの搬送長さを一定とできるため、記録紙の搬送速度を安定化できる。そして、給紙動作を開始してから記録紙Pが転写ローラー6のニップ部に到達するまでの時間を一定時間とすることができ、転写ローラー6での画像転写タイミングを略一定とすることができる。
これにより、感光体1での転写画像の形成位置を略一定とできるため、感光体1及び転写ローラー6による転写部での印字精度を高精度に維持できる。なお、固定具51の凸部51bが移動可能な角度θ0は、角度θ4より大きい値とすることで、昇降板12に積載される記録紙Pの枚数にかかわらず、給紙ローラー13による記録紙Pの搬送路への引き出しタイミングを同一タイミングとできる。すなわち、駆動軸17のみを空転させる所定時間が、昇降板12に1枚の記録紙Pを積載したときに、給紙動作を開始してから記録紙Pを給紙ローラー13に圧接するまでの時間よりも長くなるように、固定具51の凸部51bが移動可能な角度θ0を設定する。
上述のようにして給紙ローラー13が昇降板12上の最上の記録紙P2を搬送路に引き出すと、記録紙検出センサー8が記録紙P2の先端を検出することで、感光体1に静電潜像が形成される。感光体1は、現像装置4により静電潜像に形成されたトナー画像を、転写ローラー6とのニップ領域に搬送し、給紙ローラー13により搬送される記録紙Pにトナー画像を転写させる。このとき、図21に示すように、トナー画像が転写される記録紙Pは、感光体1と転写ローラー6とにより狭持されると同時に、給紙ローラー13と記録紙分離部材14とにより狭持される。
その後、給紙ローラー13と感光体1及び転写ローラー6との回転駆動により、記録紙Pが定着装置7に向かって搬送される。記録紙Pの先端が加熱ローラー71及び加圧ローラー72のニップ部に到達すると、図22に示すように、記録紙Pの先端が加熱ローラー71と加圧ローラー72とによる狭持されると同時に、記録紙Pの中途部が感光体1と転写ローラー6とにより狭持される。一方で、図22に示すように、記録紙分離部材14が給紙ローラー13から離間することとなるため、記録紙Pの後端側は、給紙ローラー13と記録紙分離部材14とによる挟持が解除される。
このとき、カムギア24a(24b)の回転が停止すると同時に駆動軸17の回転も停止するため、転写ローラー6及び定着装置7が回転して記録紙P2を引き出すことで、給紙ローラー13が空転する。そのため、給紙ローラー13は、切り欠き部131aの側壁131cが凸部51bと当接するまで空転することとなり、次の記録紙P2の搬送に備えて、給紙ローラー13及び駆動軸17の関係が、図17に示すような初期状態となる。
なお、空転可能機構50における、固定具51の凸部51bと給紙ローラー13の切り欠き部131aと係合構造は、図16に例示した構成の他に、例えば、固定具51の外周面に軸方向に平行な凸部を設けると共に、給紙ローラー13の基部131の内周面に、軸方向に平行な凹部を設け、凹部の周方向の長さを凸部の周方向の長さよりも長くした係合構造としてもよい。また、前記実施形態では、昇降板12及び記録紙分離部材14の昇降を3枚のギアとカム機構を用いて1つの駆動源によって行っていたが、昇降板12と記録紙分離部材14の昇降をそれぞれ別の駆動源によって行うようにしてもよい。
更に、本願発明における画像形成装置として、コピー機能、スキャナー機能、プリンター機能、ファックス機能を有するMFP(Multifunction Peripheral)であっても構わないし、プリンター、コピー機、ファクシミリ等であっても構わない。その他、各部の構成は図示の実施形態に限定されるものではなく、本願発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変更が可能である。