JP2015115143A - 照明制御システム - Google Patents

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達男 増田
聡 杉野
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聡 杉野
山本 泰子
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泰子 山本
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Abstract

【課題】検出対象の物体をより確実に検出して光源部を制御できるようにした照明制御システムを提供する。
【解決手段】センサ2は、照明空間に電波を送信する送信部の機能と、物体で反射された反射波を受信する受信部の機能を備える。周波数分析部5は、センサ2が受信した信号から物体の動きに対応するセンサ信号を作成し、互いに周波数帯域が異なる複数のフィルタバンクの各々にセンサ信号を入力し、各フィルタバンクから出力信号を抽出する。認識処理部7は、各フィルタバンクから抽出した出力信号の周波数分布に基づいて物体を識別する。センサモジュール1は、一方向に長い照明空間の長手方向における一端側に、照明空間の長手方向における他端側に向かってセンサ2から電波を送信させるように配置される。認識処理部7が照明空間を移動する物体を識別すると、制御部10が、認識処理部7の識別結果に応じて光源部10の動作を制御する。
【選択図】図1

Description

本発明は、照明制御システムに関し、より詳細には、照明空間における物体の検出結果に応じて光源部を制御する照明制御システムに関する。
従来、照明空間の熱画像を撮像するセンサ部と、センサ部が撮像した画像データから人の存在分布を判定する判定部と、判定部によって判定された人の存在分布に基づいて光源部を制御する点灯制御部を備えた照明制御システムがあった(例えば特許文献1参照)。
特開2012−216356号公報
特許文献1の照明制御システムでは、センサ部が照明空間の熱画像を撮像しているため、照明空間に検知対象ではない発熱体があったり、夏期などで照明空間の温度が高かったりすると、検知対象の人を検出しにくくなるという問題があった。
本発明は上記課題に鑑みて為され、検出対象の物体をより確実に検出して光源部を制御できるようにした照明制御システムを提供することを目的とする。
本発明の照明制御システムは、一方向に長い照明空間を照明する光源部と、前記照明空間における物体の存否を検出する検出部と、前記検出部による物体の検出結果に基づいて、前記光源部を制御する制御部とを備える。前記検出部は、送信部と、受信部と、周波数分析部と、識別部とを備える。前記送信部は前記照明空間に電波を送信する。前記受信部は電波の送信範囲内にある物体で反射された反射波を受信する。前記周波数分析部は、前記受信部が受信した信号から前記物体の動きに対応するセンサ信号を作成して、互いに周波数帯域が異なる複数のフィルタバンクの各々に前記センサ信号を入力し、複数の前記フィルタバンクの各々から出力信号を抽出する。前記識別部は、複数の前記フィルタバンクの各々から抽出した出力信号の周波数分布の特徴、及び、複数の前記フィルタバンクの各々から抽出した出力信号に含まれる検出対象物による信号成分と前記検出対象物以外による信号成分との成分比の少なくとも何れか一方に基づいて、前記照明空間を移動する前記物体を識別する。前記検出部は、前記照明空間の長手方向における一端側に、前記照明空間の長手方向における他端側に向かって前記送信部から電波を送信させるように配置される。前記識別部が前記照明空間を移動する前記物体を識別すると、前記制御部が、前記識別部の識別結果に応じて前記光源部の動作を制御するように構成されたことを特徴とする。
この照明制御システムにおいて、以下の構成を備えることも好ましい。複数の前記フィルタバンクの各々から抽出される出力信号の強度を規格化して出力する規格化処理部を前記検出部が備える。前記識別部が、複数の前記フィルタバンクの各々から抽出される出力信号の強度を前記規格化処理部が規格化した信号の周波数分布の特徴、及び、前記規格化処理部が規格化した信号に含まれる検出対象物による信号成分と前記検出対象物以外による信号成分との成分比の少なくとも何れか一方に基づいて、前記照明空間を移動する前記物体を識別するように構成される。
この照明制御システムにおいて、前記照明空間を囲うように前記送信部からの電波の送信方向に沿って設けられた壁に、前記照明空間と反対側に開くように設けられた扉が開閉する動きを、前記識別部が識別するように構成されることも好ましい。
この照明制御システムにおいて、前記検出部は、前記検出部から前記識別部が識別した物体までの距離を測定する測距部を備えることも好ましい。前記制御部は、前記識別部の識別結果と前記測距部の測定結果とに基づいて、前記光源部の動作を制御するように構成される。
本発明によれば、送信部が、照明空間の長手方向における一端側から他端側に向かって電波を送信し、物体による反射波を受信部が受信しているので、熱の外乱による影響を受けにくく、照明空間にある検知対象物をより確実に検出できる。また、周波数分析部は、受信部が受信した信号を複数のフィルタバンクの各々に入力し、識別部は、複数のフィルタバンクの各々から抽出した出力信号の周波数分布及び成分比のうち少なくとも何れか一方に基づいて物体を識別している。したがって、識別部は、検知対象の物体による反射波の周波数分布を、周波数分布の特徴が異なる物体を弁別して認識するか、もしくは、検知対象物による信号成分と検知対象物以外による信号成分との成分比に基づいて物体を認識することができるから、誤検出が低減する。
本実施形態の照明制御システムの概略的なブロック図である。 (a)〜(c)は本実施形態の照明制御システムによる規格化処理を説明する説明図である。 (a)〜(c)は本実施形態の照明制御システムによる平均化処理を説明する説明図である。 (a)〜(c)は本実施形態の照明制御システムによる背景信号の除去処理を説明する説明図である。 本実施形態の照明制御システムによる背景信号の除去処理を説明する説明図である。 (a)(b)は本実施形態の照明制御システムによる背景信号の除去処理を説明する説明図である。 本実施形態の照明制御システムによる背景信号の除去機能を実現する適応フィルタのブロック図である。 (a)〜(c)は本実施形態の照明制御システムによる識別処理を説明する説明図である。 本実施形態の照明制御システムの全体構成を説明する説明図である。 本実施形態の照明制御システムの全体構成を説明する説明図である。 本実施形態の照明制御システムの動作を説明し、(a)はセンサ信号の波形図、(b)は識別結果の波形図である。 本実施形態の照明制御システムの動作を説明し、(a)はセンサ信号の波形図、(b)は識別結果の波形図である。 本実施形態の照明制御システムの動作を説明し、(a)はセンサ信号の波形図、(b)は識別結果の波形図である。 本実施形態の照明制御システムの全体構成を説明する説明図である。 本実施形態の照明制御システムによる識別処理の説明図である。 本実施形態の照明制御システムによる識別処理の他の説明図である。
本発明に係る照明制御システムの実施形態を図1〜図16に基づいて説明する。
図1は照明制御システムの概略的なブロック図である。この照明制御システムは、センサモジュール1と、制御部10と、複数台の光源部21,22,23,…を備える。
この照明制御システムは、図9及び図10に示すように、一方向に長い照明空間、例えば建物内の廊下100の天井102に設置された複数台(図9では例えば3台)の光源部21,22,23の動作を制御するために用いられる。図9に示す例では、廊下100は直線状に伸びており、廊下100の壁103には、部屋などに通じる扉111,112,13が設けられている。
センサモジュール1は、照明空間である廊下100の長手方向における一端側(図9の例では廊下100の左端)に設置され、廊下100内で人200の動きや扉111,112,113の開閉を検出し、信号線を介して制御部10に検出結果を出力する。
制御部10と複数台の光源部21,22,23,…とは信号線を介して接続され、制御部10および光源部21,22,23,…はそれぞれ通信機能を有している。
制御部10は、センサモジュール1から入力される対象物(例えば人200や扉111,112,113など)の検出結果に基づいて、信号線を介して接続された光源部21,22,23,…に、その動作を制御するための制御信号を出力する。なお、制御部10による光源部21,22,23,…の制御動作については後述する。
光源部21,22,23は、それぞれ、例えば蛍光ランプ或いは発光ダイオードのような光源と、制御部10から入力される制御信号に基づいて光源を点灯、調光、又は消灯させる点灯回路とを備える。複数台の光源部21,22,23は、廊下100の天井102に、廊下100の長手方向において、ほぼ一定の間隔を開けて設置されている。
尚、制御部10とセンサモジュール1との間の通信、制御部10と光源部21,22,23…との間の通信は有線通信に限定されず、無線通信でもよい。
次にセンサモジュール1について説明する。センサモジュール1は、図1に示すように、センサ2と、周波数分析部5と、認識処理部7とを備える。なお、センサモジュール1は、A/D変換部3と、規格化処理部6と、第1平均化処理部8aと、第2平均化処理部8bとをさらに備えてもよい。ここにおいて、周波数分析部5と規格化処理部6と認識処理部7と第1平均化処理部8aと第2平均化処理部8bとは、例えばマイクロコンピュータが組み込みのプログラムを実行することにより、演算処理部4の演算機能で実現されている。
センサ2は、検知領域である廊下100に所定の周波数帯域の電波を送信する送信部の機能と、電波の送信範囲内にある物体で反射された反射波を受信する受信部の機能を有する。またセンサ2は、送信部から送信した電波と、受信部が受信した電波とを混合することによって、対象の物体の移動速度に応じて発生するドップラ周波数のセンサ信号を出力するミキサを備えている。電波を反射した物体が検知領域を移動している場合は、ドップラ効果によって反射波の周波数がシフトする。したがって、センサ2から出力されるセンサ信号は、物体の動きに対応する時間軸信号となる。なお、センサ2は、例えば、周波数が約24GHzのミリ波帯の電波を送信するセンサであるが、センサ2は、ミリ波帯の電波を送信するものに限定されず、マイクロ波を送信するものでもよい。
A/D変換部3は、センサ2から出力されるセンサ信号(アナログ値)をディジタル値にA/D変換し、ディジタル値に変換したセンサ信号を周波数分析部5に出力する。なお、A/D変換部3の前段に増幅器(図示せず)が設けられ、センサ2から出力されるセンサ信号を増幅器で増幅した後、A/D変換部3でディジタル値に変換してもよい。
周波数分析部5は、A/D変換部3から入力されるセンサ信号を離散コサイン変換(Discrete Cosine Transform:DCT)することで周波数領域の信号に変換する機能を有している。また、周波数分析部5は、図2(a)に示すように、検知対象の周波数範囲を複数に区分して設定された複数の周波数領域のそれぞれを通過周波数帯域とする複数(例えば16個)のフィルタバンク5aを備えている。複数のフィルタバンク5aの各々は、複数(図示例では5個)の周波数ビン(frequency bin)5bを有している。周波数分析部5は、DCTにより周波数領域の信号に変換したセンサ信号を、複数のフィルタバンク5aの各々に入力し、複数のフィルタバンクの各々から出力信号を抽出する。
ここで、DCTを利用したフィルタバンク5aの周波数ビン5bは、DCTビンとも呼ばれる。各々のフィルタバンク5aは、周波数ビン5bの幅(図2(a)中のΔf)により分解能が決まる。各々のフィルタバンク5aにおいて周波数ビン5bの数は5個に限定されず、5個以外の複数でもよいし、1個でもよい。また、周波数分析部5において、A/D変換部3から出力されるセンサ信号を周波数領域の信号に変換する直交変換はDCTに限らず、例えば、高速フーリエ変換(Fast Fourier Transformation:FFT)でもよい。FFTを利用したフィルタバンク5aの周波数ビン5bは、FFTビンとも呼ばれる。また、A/D変換部3から出力されるセンサ信号を周波数領域の信号に変換する直交変換は、ウェーブレット変換(Wavelet Transform:WT)でもよい。
第1平均化処理部8aは、各々のフィルタバンク5aについて、フィルタバンク5aが備える複数の周波数ビン5bの信号の強度を周波数領域において平均化する機能を備える。第1平均化処理部8aは、演算処理部4の演算機能によって実現されており、例えば、平均値フィルタ、荷重平均フィルタ、メジアンフィルタ、荷重メジアンフィルタなどで実現される。ここで、時刻t(iは自然数)において、周波数の低い方から数えてj番目(jは自然数)のフィルタバンク5aについて、このフィルタバンク5aが備える複数の周波数ビン5bの信号強度を周波数領域において平均化した値をmjiと表記する。図2(a)及び図3(a)はある時刻tにおいて周波数分析部5から出力される信号を示し、周波数の低い方から数えて1番目のフィルタバンク5aが備える5個の周波数ビン5bの信号の強度がそれぞれs1,s2,s3,s4,s5であったとする。この場合、周波数の低い方から数えて1番目のフィルタバンク5aについて、フィルタバンク5aが備える周波数ビン5bの出力信号を第1平均化処理部8aが平均化した値m11は次式で表される。
11=(s1+s2+s3+s4+s5)/5
同様に、時刻tにおいて周波数の低い方から2番目のフィルタバンク5aの出力信号を平均処理した値はm21となり、周波数の低い方から3番目のフィルタバンク5aの出力信号を平均処理した値はm31となる。また、時刻tにおいて周波数の低い方から4番目のフィルタバンク5aの出力信号を平均処理した値はm41となり、周波数の低い方から5番目のフィルタバンク5aの出力信号を平均処理した値はm51となる。図2(b)及び図3(b)は、周波数の低い方から数えて1番目から5番目までのフィルタバンク5aの出力信号をそれぞれ平均処理した値m11,m21,m31,m41,m51の周波数分布を示している。
このように、第1平均化処理部8aは、複数の周波数ビン5bの信号の強度を周波数領域において平均化することで、雑音の影響を低減することができる。
第2平均化処理部8bは、第1平均化処理部8aが複数のフィルタバンク5aの各々について周波数ビン5bの信号の強度を周波数領域で平均化した信号を、さらに時間軸方向において平均化する機能を備える。第2平均化処理部8bは、例えば、平均値フィルタ、荷重平均フィルタ、メジアンフィルタ、荷重メジアンフィルタなどで実現される。第2平均化処理部8bが、時間軸方向の複数点(例えば、3点)での平均値を求める平均値フィルタにより実現した場合について説明する。周波数が低い方から数えてj番目(jは自然数)のフィルタバンク5aについての平均化処理を図3(c)に基づいて説明する。時刻t(xは2以上の自然数)において、フィルタバンク5aの出力を第1平均化処理部8aで平均化した値をmjxとすると、第2平均化処理部8bによって平均処理された信号の強度pjxは次式で表される。
jx=(mj(x−2)+mj(x−1)+mjx)/3
例えば、周波数の低い方から1番目のフィルタバンク5aについて、時刻t,t,tに第1平均化処理部8aが平均処理した値m20,m21,m22を、第2平均化処理部8bが平均処理した値p21は、p21=(m20+m21+m22)/3となる。
このように、周波数の低い方から数えてj番目のフィルタバンク5aの信号に対して第1平均化処理部8aが周波数領域で平均化処理を行い、さらに第2平均化処理部8bが時間軸方向において平均化処理を行った信号の強度はpjxと表される。複数のフィルタバンク5aの各々について、第2平均化処理部8bが平均処理した値pjxは規格化処理部6に入力され、規格化処理が行われる。なお、センサモジュール1は、周波数領域において平均化処理を行う第1平均化処理部8a、及び、時間軸方向において平均化処理を行う第2平均化処理部8bのうち、何れか一方のみを備えていてもよい。
規格化処理部6は、周波数分析部5が有する複数のフィルタバンク5aのうち、認識処理部7が認識処理に使用する所定個数のフィルタバンク5aについて規格化処理を行う。規格化処理部6は、認識処理に使用する所定個数のフィルタバンク5aを通過し、第1平均化処理部8a及び第2平均化処理部8bで平均化処理された信号の強度値の総和で、各フィルタバンク5aの平均処理後の出力信号の強度値を規格化する。例えばフィルタバンク5aの総数が16個であり、認識処理部7が認識処理に使用するフィルタバンク5aが、周波数の低い方から数えて1番目から5番目までの5個のみの場合を例に説明する。時刻t(iは自然数)に周波数の低い方からj番目(jは自然数)のフィルタバンク5aを通過し、平均化処理が行われた信号の強度値をpjiとすると、規格化処理部6は、次式を用いてk番目のフィルタバンク5aを通過した信号の規格化強度njiを求める。
ji=mji/(m1i+m2i+m3i+m4i+m5i
このように、規格化処理部6は、認識処理に使用する、周波数の低い方から数えて1番目から5番目までのフィルタバンク5aの出力信号の強度値の総和で、各フィルタバンク5aの出力信号の強度値を規格化している。図2(c)は、周波数の低い方から数えて1番目から5番目までのフィルタバンク5aの出力信号をそれぞれ規格化した値n11,n21,n31,n41,n51の周波数分布を示している。
本実施形態では、規格化処理部6が、複数のフィルタバンク5aのうち所定個数のフィルタバンク5aから出力され、平均化処理が行われた信号の強度の総和で、各フィルタバンク5aの信号の強度を規格化している。複数のフィルタバンク5aの出力は大きく変動する可能性があるが、規格化処理部6によって各フィルタバンク5aの出力を規格化しているので、信号の最大値が小さくなり、分解能を高めることができる。なお、規格化処理部6は、複数あるフィルタバンク5aの全てで抽出された信号の強度の総和で、各々のフィルタバンク5aで抽出された信号の強度を規格化した信号を出力してもよい。
なお、本実施形態のセンサモジュール1は、周波数分析部5から出力される信号の平均化処理を行う第1平均化処理部8a及び第2平均化処理部8bを備えているが、第1平均化処理部8a及び第2平均化処理部8bは必ずしも備えていなくてもよい。その場合、規格化処理部6は、周波数分析部5が備える複数のフィルタバンク5aから抽出した信号について規格化処理を行えばよい。
認識処理部7は、複数のフィルタバンク5aの各々から出力される信号を規格化処理部6が規格化した信号の周波数分布の特徴(例えば周波数分布の形状など)に基づいて、照明空間の廊下100を移動する物体を識別する。認識処理部7は、廊下100内で移動する物体を識別すると、物体の識別結果を制御部10に出力する。ここにおいて、認識処理部7による識別とは、分類、認識を含む概念である。
認識処理部7は、例えば、主成分分析(principal component analysis)によるパターン認識処理を行うことによって物体を識別する。この認識処理部7は、主成分分析を用いた認識アルゴリズムに従って動作する。このような認識処理部7を採用するには、あらかじめ、センサモジュール1の検知領域に検出対象の物体を含まない場合の学習サンプルデータ、検出対象の物体の異なった動きそれぞれに対応した学習サンプルデータを取得しておく。そして、これら複数の学習データに対して主成分分析を施すことで得られたデータを、センサモジュール1が備えるメモリ(図示せず)に記憶させておく。ここにおいて、メモリに記憶させておくデータは、パターン認識に利用するデータであり、物体の動きと射影ベクトル及び判別境界値(閾値)とを対応付けたカテゴリデータである。
ここでは、説明の便宜上、センサモジュール1の検知領域に検出対象の物体を含まない場合の学習サンプルデータに対応する規格化強度の周波数領域での分布が図8(a)のような分布であったとする。また、検出対象の物体を含む場合の学習サンプルデータに対応する規格化強度の周波数領域での分布が図8(b)に示すような分布であったとする。そして、図8(a)では、複数のフィルタバンク5aのそれぞれを通過した信号の規格化強度が、低周波側から順にn10、n20、n30、n40及びn50とする。図8(b)では、複数のフィルタバンク5aのそれぞれを通過した信号の規格化強度が、低周波側から順にn11、n21、n31、n41及びn51とする。そして、図8(a),(b)のいずれにおいても、低周波側の3つのフィルタバンク5aそれぞれを通過した信号の規格化強度の総和を変量r1とし、高周波側の2つのフィルタバンク5aそれぞれを通過した信号の規格化強度の総和を変量r2とする。要するに、図8(a)の例では、
r1=n10+n20+n30
r2=n40+n50
となる。また、図8(b)の例では、
r1=n11+n21+n31
r2=n41+n51
となる。
図8(c)は、2つの変量r1,r2を互いに直交する座標軸とした場合の2次元散布図と射影軸及び識別境界とをイメージ的に説明するために2次元で図示したものである。図8(c)では、破線で囲んだ領域内の各散布点(図8(c)中の“+”)の座標位置をμ0(r2,r1)、実線で囲んだ領域内の各散布点の座標位置をμ1(r2,r1)としている。主成分分析では、予め、センサモジュール1の検知領域に検出対象の物体を含まない場合の学習サンプルデータに対応するデータのグループGr0と、検知領域に検出対象の物体を含む場合の学習サンプルデータに対応するデータのグループGr1とを決める。そして、主成分分析では、図8(c)において破線、実線でそれぞれ囲んだ領域内の各散布点を射影軸上に射影したデータの分布(破線、実線で模式的に示す)の平均値の間隔が最大となり、且つ、分散(variance)が最大となる条件で射影軸を決める。これにより、主成分分析では、学習サンプルごとに射影ベクトルを求めることができる。
ところで、センサモジュール1は、認識処理部7による識別結果を制御部10に出力している。センサモジュール1は、認識処理部7により検知対象の物体が認識された場合は物体が検出されたことを示す出力信号(“1”)を出力し、検知対象の物体が認識されない場合には物体が非検出であることを示す出力信号(“0”)を出力する。
このように、静止物体で電波が反射された場合と、人のように移動する物体で電波が反射された場合とではセンサ信号の周波数分布の特徴が異なるので、認識処理部7は、周波数分布の特徴を比較することで、検出対象の物体の存否を識別することができる。なお、本実施形態の認識処理部7は、複数のフィルタバンク5aの各々から出力される信号を規格化した信号の周波数分布に基づいて物体を識別しているが、複数のフィルタバンク5aの各々から抽出した出力信号の大きさに基づいて、物体を識別してもよい。
次に、センサモジュール1の検出結果に応じて制御部10が光源部21,22,23,…を制御する動作について説明する。
図9及び図10は本実施形態の照明制御システムの使用状況を説明する説明図である。図9は照明空間を側方から見た側面図、図10は照明空間を上方から見た平面図である。センサモジュール1は、一方向に長い照明空間である廊下100において検出対象の物体の動きを検出する。このセンサモジュール1は、廊下100の長手方向における一端側であって、壁103の上部又は天井102に、廊下100の長手方向における他端側に向かってセンサ2から電波を送信させるように配置されている。また、廊下100の天井102には、複数台(図9では3台)の光源部21,22,23,…が、廊下100の長手方向において所定の間隔を開けて設置されている。また、廊下100を囲む壁103には、部屋(図示せず)に通じる扉111,112,113が、対応する部屋の位置に合わせて設けられている。
ここで、制御部10は、センサモジュール1からの検出信号に基づいて、各々の光源部21,22,23,…の動作(点灯、点滅、調光)を制御する。例えば、センサモジュール1が照明空間において対象物である人200を検知していない場合、制御部10は、光源部21,22,23,…を消灯させる。一方、センサモジュール1が照明空間において対象物である人200を検知すると、制御部10は、光源部21,22,23,…を点灯させている。制御部10は、照明空間に対象物である人が存在するか否かによって、光源部21,22,23,…を点灯又は消灯させているので、照明が不要な場合は消灯させることで省電力を実現できる。
センサモジュール1は、所定の検出周期が経過する度に、照明空間において対象物の存否を判別する処理を行っており、図11(a)はセンサ2から出力されるセンサ信号の波形図であり、図11(b)は認識処理部7の識別結果を示す図である。図11(a)(b)は、センサモジュール1が、廊下100の右端で人200が停止している状態の時刻T1で測定を開始し、時刻T2に人200が廊下100の左側に向かって移動した場合の測定結果を示している。人200が移動するまでの期間(時刻T1〜T2)では、センサ2の出力信号には暗雑音が計測されている。時刻T2以降に人200がセンサモジュール1に向かって歩き出すと、センサ2から出力されるセンサ信号の振幅は、人がセンサモジュール1に近づくにつれて徐々に大きくなっている。センサモジュール1では、センサ2から出力されるセンサ信号はA/D変換されて演算処理部4に入力される。演算処理部4の各部は上述した識別処理を行っており、人が移動を開始した直後に認識処理部7は人を検知し、検知状態を示す信号が制御部10に出力される。制御部10は、センサモジュール1から対象物を検知したことを示す検知信号が入力されると、光源部21,22,23,…に点灯制御信号を出力して、光源部21,22,23,…を点灯させる。なお、制御部10は、センサモジュール1から対象物を検知していないことを示す非検知信号が入力されると、光源部21,22,23,…に消灯制御信号を出力して、光源部21,22,23,…を消灯させている。
ところで、本実施形態の照明制御システムにおいて、認識処理部7が、各フィルタバンク5aから抽出した信号を規格化処理部6が規格化した信号に含まれる検出対象物による信号成分と検出対象物以外による信号成分との成分比に基づいて物体を識別してもよい。
このような認識処理部7は、例えば、重回帰分析による認識処理を行うことによって物体を識別するようにすればよい。この場合、認識処理部7は、重回帰分析を用いた認識アルゴリズムに従って動作する。
このような認識処理部7を採用する場合、センサ2の検知領域内での検出対象物の異なった動きそれぞれに対応した学習データを予め取得し、これら複数の学習データに対し重回帰分析を施すことで得られたデータを演算処理部4のメモリ(図示せず)に記憶させる。重回帰分析によれば、図15に示すように、信号成分s1と信号成分s2と信号成分s3とが合成された合成波形Gsは、信号成分s1,s2,s3の種別、信号成分の数、各信号成分s1,s2,s3それぞれの強度が未知であっても、合成波形から各信号成分s1,s2,s3に分離推定することが可能である。図15中の〔S〕は、信号成分s1、s2、s3を行列要素とする行列を示し、〔S〕−1は〔S〕の逆行列を意味し、Iは規格化強度の成分比(係数)を意味している。ここにおいて、演算処理部4のメモリに記憶させておくデータは、認識処理に利用するデータであり、物体の動きと信号成分s1,s2,s3とを対応付けたデータである。
図16(a)は、横軸が時間、縦軸が規格化強度であり、検知領域内を検出対象物である人が2m/sの移動速度で10mだけ移動したときに、規格化処理部6から出力された規格化強度の時間軸上でのデータ(上述の合成波形Gsに対応する)をA1として示している。また、図16(a)には、重回帰分析によりデータA1から分離された信号成分A2,A3も示してある。ここにおいて、信号成分A2は、検出対象物である人の移動に起因した信号成分であり、信号成分A3は、検出対象物以外の外乱要素である可動物体(例えば空調装置のファン)の動きに起因した信号成分である。図16(b)は、認識処理部7の識別結果に応じて、センサモジュール1から制御部10に出力される出力信号を示す。認識処理部7は、検知対象物(例えば人)による信号成分A2と、検知対象物以外の物体による信号成分A3との成分比(A2/A3)に基づいて検知対象の物体を識別する。すなわち、認識処理部7は、A2>A3のときに検知対象の物体が存在すると識別して、制御部10に出力する出力信号を“1”とする。また認識処理部7は、A2≦A3のときに検知対象の物体が存在しないと識別して出力信号を“0”とする。図16(b)から、検知対象以外の物体(空調装置のファンなど)の動きに起因した誤検出を低減できることが確認された。
ここで、センサモジュール1では、上述の判定条件(A2>A3)を外部からの設定により可変とすることが好ましい。例えば、判定条件をA2>α×A3とし、係数αを外部からの設定により可変とすることが好ましい。これにより、センサモジュール1は、使用用途に応じて要求される失報率、誤報率を調整することが可能となる。
なお、認識処理部7では、複数のフィルタバンク5aの各々から抽出した出力信号について、検知対象物による信号成分と、検知対象物以外の物体による信号成分との成分比に基づいて検知対象の物体を識別してもよい。また、認識処理部7では、上述の周波数分布の特徴、及び、検出対象物による信号成分と検出対象部以外による信号成分との成分比の両方に基づいて検知対象の物体を識別してもよい。
以上説明したように、本実施形態の照明制御システムは、光源部21,22,23…と、検出部たるセンサモジュール1と、制御部10とを備える。光源部21,22,23,…は一方向に長い照明空間を照明する。センサモジュール1は照明空間における物体の存否を検出する。制御部10は、センサモジュール1による物体の検出結果に基づいて、光源部21,22,23,…を制御する。センサモジュール1は、送信部と、受信部と、周波数分析部5と、識別部たる認識処理部7とを備える。送信部としてのセンサ2は照明空間に電波を送信する。受信部としてのセンサ2は電波の送信範囲内にある物体で反射された反射波を受信する。周波数分析部5は、センサ2が受信した信号から物体の動きに対応するセンサ信号を作成して、互いに周波数帯域が異なる複数のフィルタバンク5aの各々にセンサ信号を入力し、複数のフィルタバンク5aの各々から出力信号を抽出する。認識処理部7は、複数のフィルタバンク5aの各々から抽出した出力信号の周波数分布の特徴、及び、複数のフィルタバンク5aの各々から抽出した出力信号に含まれる検出対象物による信号成分と前記検出対象物以外による信号成分との成分比の少なくとも何れか一方に基づいて、照明空間を移動する物体を識別する。このセンサモジュール1は、照明空間の長手方向における一端側に、照明空間の長手方向における他端側に向かってセンサ2から電波を送信させるように配置される。認識処理部7が照明空間を移動する物体を識別すると、制御部10が、認識処理部7の識別結果に応じて光源部21,22,23…の動作を制御する。
このように、センサ2として、熱の外乱による影響を受けにくい電波センサを用いており、照明空間の長手方向の一端側に設置され、長手方向の他端側に向かって電波を送信しているので、照明空間にある検知対象物をより確実に検出できる。また、周波数分析部5は、センサ2が受信した信号を複数のフィルタバンク5aの各々に入力し、認識処理部7は、複数のフィルタバンク5aの各々から抽出した出力信号の周波数分布及び成分比の少なくとも何れか一方に基づいて物体を識別している。したがって、認識処理部7は、検知対象の物体による反射波の周波数分布と、周波数分布の特徴が異なる物体を弁別して認識するか、もしくは、検知対象物による信号成分と検知対象物以外による信号成分との成分比に基づいて物体を認識することができるから、誤検出が低減する。
また、本実施形態の照明制御システムにおいて、複数のフィルタバンク5aの各々から抽出される出力信号の強度を規格化して出力する規格化処理部6を、検出部たるセンサモジュール1が備えてもよい。この場合、識別部たる認識処理部7は、複数のフィルタバンク5aの各々から抽出される出力信号の強度を規格化処理部6が規格化した信号の周波数分布の特徴、及び、規格化処理部6が規格化した信号に含まれる検出対象物による信号成分と検出対象物以外による信号成分との成分比の少なくとも何れか一方に基づいて、照明空間を移動する物体を識別する。フィルタバンク5aの出力信号の大きさがばらついたとしても、認識処理部7は、規格化処理部6で規格化された信号の周波数分布及び成分比の少なくとも何れか一方に基づいて物体を識別しているので、認識処理部7に入力される信号の最大値が小さくなり、分解能を高めることができる。
ところで、本実施形態の照明制御システムでは、センサモジュール1として電波式のセンサ2を用いている。このセンサ2は、照明空間にいる人200のような物体で反射された電波だけではなく、照明空間を囲む廊下100の床101、天井102、壁103で反射された電波を受信する。ここで、照明空間にいる人200が移動すると、人200の移動によってセンサ信号の周波数分布の特徴が変化するので、センサ信号の周波数分布を分析した結果と、予め求めておいた、人が移動した場合の周波数分布の特徴とに基づいて人200の識別を行う。同様に、扉111,112,113の何れかが開閉されると、それによってセンサ2で受信する電波の状況が変化するため、認識処理部7は、センサ信号の周波数分布の特徴と、予め求めておいた、扉の開閉によるセンサ信号の周波数分布の特徴とを比較する。これにより、部屋にいる人が廊下100に出るために扉111,112,113の何れかを開閉すると、扉の開閉によってセンサ信号の周波数分布の特徴が変化するので、扉の開閉を検知することで、廊下100に人が出てくることを事前に検知できる。
図12(a)は左側の扉111が開閉された場合のセンサ信号の測定結果であり、図13(a)は中央の扉112が開閉された場合のセンサ信号の測定結果である。何れの測定結果においても扉111,112が開閉されることによって、センサ信号の振幅が変化しており、図12(b)及び図13(b)に示すように認識処理部7の識別結果が非検知状態から検知状態に切り替わっている。
このように、本実施形態において、照明空間を囲うようにセンサ2(送信部)からの電波の送信方向に沿って設けられた壁103に、照明空間と反対側に開くように設けられた扉111〜113が開閉する動きを、認識処理部7が識別することも好ましい。
熱画像センサで照明空間を撮像した画像から対象物を検出する場合、扉111〜113の向こう側にある空間と廊下100の温度が同じであれば、扉111〜113が開けられても熱画像に変化が発生せず、扉111〜113の開閉を検知できない可能性がある。それに対し、本実施形態ではセンサ2が電波センサであり、センサ2は人などの移動物体による反射波だけでなく、照明空間を囲う壁103や扉111〜113で反射された電波を受信するので、扉111〜113の開閉で反射波が変化した場合も検出が可能である。また、扉111〜113が照明空間と反対側に開く場合(内開きの場合)、認識処理部7は扉111〜113が開けられることを検知するので、人が照明空間に入る前に人が入ってくることを検知して、光源部21,22,23の動作を制御することができる。よって、廊下100に出るために人が扉111〜113を開けると、この扉111〜113の動きをセンサモジュール1が検知し、制御部10が光源部21,22,23を点灯させるので、廊下100に出る前に光源部21,22,23を点灯させることができる。
ところで、演算処理部4が、センサモジュール1から認識処理部7が識別した物体までの距離を測定する測距部の機能を備えていてもよい。レーダによる測距方式としてはFM−CW(Frequency Modulated Continuous Wave)方式や2周波CW(Continuous Wave)方式のような周知の方式がある。本実施形態のセンサモジュール1では、このような測距方式と、移動物体を検出するドップラー方式の電波センサを組み合わせることで、演算処理部4が、センサモジュール1から認識処理部7が識別した物体までの距離を求めることができる。なお、センサモジュール1が採用した、センサ2のセンサ信号から対象物までの距離を測定する測距方式(FM−CW方式、2周波CW方式)については従来周知であるから、その説明は省略する。
この場合の照明制御システムの動作を図14に基づいて説明する。図14の例では、照明空間である廊下100の天井102に5台の光源部21,22,23,24,25が設置されており、制御部10には、センサモジュール1の設置位置と、制御対象である光源部21〜25の設置位置とが予め登録されている。
センサモジュール1は、認識処理部7が照明空間において対象物を検出すると、対象物を検出したという信号と、センサモジュール1から対象物までの距離の情報とを制御部10に出力する。制御部10に、センサモジュール1から人200の検出信号と、センサモジュール1から人200までの距離の測定結果とが入力されると、人200の位置の近傍にある光源部(図14の例では光源部22,23)に点灯制御信号を出力する。光源部22,23は、制御部10から点灯制御信号を受信すると、光源を点灯させており、人200の近くにある光源部22,23のみが点灯し、他の光源部21,24,25は消灯しているから、省電力を実現できる。
また、センサモジュール1は、検出した対象物までの距離の時間的変化やドップラー効果を利用して、対象物が移動する方向を検出することができる。センサモジュール1は、対象物を検出すると、この対象物の検出情報と、センサモジュール1から対象物までの距離の情報と、対象物の移動方向の情報とを制御部10に出力してもよい。制御部10は、センサモジュール1から入力された情報をもとに、人200の近傍にある光源部と、これから人200が移動する方向にある光源部を点灯させてもよい。また、制御部10は、人200が通り過ぎて遠ざかっていく光源部を消灯させることもできる。
また、制御部10は、センサモジュール1から対象物(例えば人200)までの距離の情報と、この対象物の移動方向の情報をもとに、対象物が光源部に近づくにつれて光源部の光出力を徐々に明るくするように、各光源部の光出力を制御してもよい。また、制御部10は、対象物が光源部から遠ざかるにつれて光源部の光出力を徐々に暗くするように、各光源部の光出力を制御してもよい。
このように、本実施形態の照明制御システムにおいて、センサモジュール1(検出部)は、認識処理部7(識別部)が識別した物体までの距離を測定する測距部を備えてもよい。制御部10は、認識処理部7の識別結果と、測距部たる演算処理部4の測定結果とに基づいて、光源部21〜25の動作を制御しており、例えば、物体の近くにある光源を点灯させるといった、きめ細かい制御が可能になる。
検知領域内に存在する検知対象以外の物体は、主に、移動体でない可動物であり、検知領域(照明領域)が建物内の廊下100などの場合には、空調のファンなどが考えられる。このような可動物の誤検出を低減するために、演算処理部4が、複数のフィルタバンク5aの各々から出力される信号に含まれている背景信号(つまり、雑音)を推定し、除去する背景信号除去機能を備えてもよい。
演算処理部4は、例えば、動作モードとして、背景信号を推定する第1モードと、認識処理を行う第2モードとがあり、タイマ(図示せず)により計時される所定時間(例えば30秒)ごとに第1モードと第2モードとが切り替わるようにすることが好ましい。ここにおいて、演算処理部4は、第1モードの期間に背景信号を推定し、第2モードの期間に背景信号を除去してから、認識処理部7で認識処理を行うことが好ましい。第1モードの時間と第2モードの時間とは、同じ時間(例えば30秒)に限らず、互いに異なる時間でもよい。
演算処理部4の背景信号除去機能は、例えば、フィルタバンク5aから出力される信号から背景信号を減算することで背景信号を除去してもよい。例えば、演算処理部4の背景信号除去機能は、複数のフィルタバンク5aの各々を通過した信号m1,m2,…(図4(b)参照)の強度から、第1モードで推定した背景信号の強度b1,b2,…(図4(a)参照)を減算する減算器で構成される。図4(c)は、同一のフィルタバンク5a同士で信号から背景信号を減算することで得られた信号の強度を示している。ここで、周波数の低い方からj番目(jは自然数)のフィルタバンク5aを通過した信号の強度をm、背景信号の強度をbとすると、背景信号を除去した信号の強度Lは次式で表される。
=m−b
演算処理部4の背景信号除去機能は、第1モードの期間において、複数のフィルタバンク5aの各々について得られた信号の強度を、各々のフィルタバンク5aの背景信号の強度と推定し、随時更新するようにしてもよい。また、演算処理部4の背景信号除去機能は、第1モードにおいて、複数のフィルタバンク5aの各々について得られた複数の信号の強度の平均値を、各々のフィルタバンク5aの背景信号の強度と推定してもよい。すなわち、演算処理部4の背景信号除去機能は、事前に得た各々のフィルタバンク5aの複数点の信号の時間軸上での平均値を背景信号としてもよい。これにより、演算処理部4の背景信号除去機能は、背景信号の推定精度を向上させることが可能となる。
また、演算処理部4の背景信号除去機能は、複数のフィルタバンク5aの各々について直前の信号を背景信号としてもよい。ここで、演算処理部4は、複数のフィルタバンク5aの各々から抽出した信号を規格化処理部6で規格化する前に、時間軸上の直前の信号を減算することで背景信号を除去してもよい。要するに、演算処理部4の背景信号除去機能は、複数のフィルタバンク5aの各々を通過した信号について、規格化処理の対象となる信号から時間軸上における1サンプル前の信号を減算することで背景信号を除去する機能を有してもよい。
図5は、時刻t1において規格化処理の対象となる複数のフィルタバンク5aの各々から抽出した信号と、その直前の時刻t0において規格化処理の対象となる複数のフィルタバンク5aの各々から抽出した信号を示している。図5の例では、周波数の低い方から数えて1番目から5番目までのフィルタバンク5aの信号を規格化処理の対象としている。時刻t1において周波数の低い方からk番目(kは1から5までの自然数)のフィルタバンク5aの信号をm(t1)、時刻t0において周波数の低い方からk番目のフィルタバンク5aの信号をm(t0)とすると、減算後の信号の強度Lは次式で表される。
=m(t1)−m(t0)
ところで、本実施形態の照明制御システムの使用環境によっては、あらかじめ比較的大きな背景信号(雑音)が含まれる周波数ビン5bが既知である場合がある。例えば、センサモジュール1の周辺に商用電源で駆動される機器が存在する場合、電源周波数(例えば60Hz)の逓倍の周波数(例えば60Hz、120Hz等)のような特定周波数を含む周波数ビン5bの信号には比較的大きな背景信号が含まれる可能性が高い。一方、検知対象の物体が検知領域内を移動しているときにセンサモジュール1から出力されるセンサ信号は、当該センサ信号の周波数(ドップラ周波数)が、センサモジュール1と物体の間の距離と、物体の移動速度とに応じて随時変化する。したがって、検知領域内を移動する検知対象の物体を検出する場合は、特定周波数のセンサ信号が定常的に発生することはない。
そこで、演算処理部4の背景信号除去機能は、複数のフィルタバンク5aのそれぞれが複数の周波数ビン5bを有している場合に、背景信号が定常的に含まれる周波数ビン5bを特定周波数ビン5bとし、この特定周波数ビン5bの信号を無効とする。この場合に、演算処理部4の背景信号除去機能は、特定周波数ビン5bに近接する2個の周波数ビン5bの信号の強度から推定した信号の強度で補完することによって背景信号を除去してもよい。図6(a)の例で左から3番目の周波数ビン5bが特定周波数ビン5bである場合、演算処理部4は、この特定周波数ビン5bの信号(信号の強度b)を無効にする。そして、演算処理部4は、図6(b)に示すように、この特定周波数ビン5bに近接する2個の周波数ビン5bの信号成分の強度b,bから推定した値で、特定周波数ビン5bの強度bを補完する。この補完処理にあたっては、演算処理部4は、特定周波数ビン5bに近接する2個の周波数ビン5bの信号の強度b,bの平均値、つまり、(b+b)/2を、特定周波数ビン5bの強度bとして補完する。要するに、フィルタバンク5a内で周波数の低い方からi番目の周波数ビン5bが特定周波数ビン5bである場合、演算処理部4は、特定周波数ビン5bの信号の強度bを次式を用いて補完する。
=(bi−1+bi+1)/2
これにより、演算処理部4は、定常的に発生する特定周波数の背景信号(雑音)の影響を短時間で低減することが可能となり、検知対象の物体の検知精度が向上する。
また、演算処理部4が備える背景信号除去機能は、周波数領域(周波数軸上)において背景信号を濾波することで背景信号を除去する適応フィルタ(Adaptive filter)で実現されてもよい。
適応フィルタ(Adaptive filter using Discrete Cosine Transform)は、適応アルゴリズム(最適化アルゴリズム)に従って伝達関数(フィルタ係数)を自己適応させるフィルタである。適応フィルタはディジタルフィルタにより実現され、例えばDCTを用いた適応フィルタが好ましい。この場合、適応フィルタの適応アルゴリズムとしては、DCTのLMS(Least Mean Square)アルゴリズムを用いればよい。
また、適応フィルタは、FFTを用いた適応フィルタでもよい。この場合、適応フィルタの適応アルゴリズムとしては、FFTのLMSアルゴリズムを用いればよい。LMSアルゴリズムは、射影(Projection)アルゴリズムやRLS(Recursive Least Square)アルゴリズムに比べて演算量を低減できるという利点がある。また、DCTのLMSアルゴリズムは、実数の演算のみでよく、複素数の演算を必要とするFFTのLMSアルゴリズムに比べて演算量を低減できるという利点がある。
適応フィルタは、例えば、図7に示す構成を有している。この適応フィルタは、フィルタ係数が可変のフィルタ51と、減算器52と、適応処理部53とを備える。減算器52は、フィルタ51の出力信号と参照信号との誤差信号を出力する。適応処理部53は、適応アルゴリズムに従って入力信号と誤差信号とからフィルタ係数の補正係数を生成しフィルタ係数を更新させる。この適応フィルタは、フィルタ51の入力信号を熱雑音からなる背景信号とし、参照信号を所望の白色雑音の値とすれば、不要な背景信号を濾波することで背景信号を除去することが可能となる。
また、演算処理部4の背景信号除去機能は、適応フィルタの忘却係数(forgetting factor)を適宜設定しておくことによって、長時間の平均的な背景信号を周波数軸上で濾波した信号の周波数分布を抽出してもよい。忘却係数は、フィルタ係数を更新する演算の際に過去のデータ(フィルタ係数)の影響を現在のデータ(フィルタ係数)から過去にさかのぼるほど指数関数的に軽くし、現在のデータに近づくほど重くするためのものである。忘却係数は、1未満の正の値であり、例えば0.95〜0.99程度の範囲で適宜設定すればよい。
なお、センサモジュール1が備えるセンサ2は、一次元方向の情報(廊下100の長手方向と平行な方向における情報)だけではなく、二次元方向の情報或いは三次元方向の情報を検知するように構成されてもよい。センサ2が、1個の送信アンテナと、複数の受信アンテナとを備え、演算処理部4が、複数の受信アンテナでそれぞれ受信した信号による信号処理を行ったり、複数のセンサを連携させて動作させることで、二次元方向或いは三次元方向の情報を取得できる。この場合、対象物である人200が一次元方向(照明空間の長手方向)のみに移動する場合だけではなく、平面内での対象物の位置を検出した結果に基づいて光源部の動作を制御できる。
また、本実施形態では、センサモジュール1が対象物を検出した結果に基づいて、制御部10が、光源部の動作を制御しているが、状況に応じた情報を表示するデジタルサイネージの機能を備えてもよい。例えば、センサモジュール1から対象物の検出結果と、センサモジュール1から対象物までの距離の情報、移動方向の情報が入力されると、制御部10が、表示用のディスプレイ装置(図示せず)に人の注意を喚起して、人を誘導する情報を表示させてもよい。
1 センサモジュール(検出部)
2 センサ(送信部、受信部)
4 演算処理部(測距部)
5 周波数分析部
6 規格化処理部
7 認識処理部(識別部)
10 制御部
21,22,23 光源部

Claims (4)

  1. 一方向に長い照明空間を照明する光源部と、前記照明空間における物体の存否を検出する検出部と、前記検出部による物体の検出結果に基づいて、前記光源部を制御する制御部とを備え、
    前記検出部は、前記照明空間に電波を送信する送信部と、電波の送信範囲内にある物体で反射された反射波を受信する受信部と、前記受信部が受信した信号から前記物体の動きに対応するセンサ信号を作成して、互いに周波数帯域が異なる複数のフィルタバンクの各々に前記センサ信号を入力し、複数の前記フィルタバンクの各々から出力信号を抽出する周波数分析部と、複数の前記フィルタバンクの各々から抽出した出力信号の周波数分布の特徴、及び、複数の前記フィルタバンクの各々から抽出した出力信号に含まれる検出対象物による信号成分と前記検出対象物以外による信号成分との成分比の少なくとも何れか一方に基づいて、前記照明空間を移動する前記物体を識別する識別部とを備え、
    前記検出部は、前記照明空間の長手方向における一端側に、前記照明空間の長手方向における他端側に向かって前記送信部から電波を送信させるように配置されており、
    前記識別部が前記照明空間を移動する前記物体を識別すると、前記制御部が、前記識別部の識別結果に応じて前記光源部の動作を制御するように構成されたことを特徴とする照明制御システム。
  2. 複数の前記フィルタバンクの各々から抽出される出力信号の強度を規格化して出力する規格化処理部を前記検出部が備え、
    前記識別部が、複数の前記フィルタバンクの各々から抽出される出力信号の強度を前記規格化処理部が規格化した信号の周波数分布の特徴、及び、前記規格化処理部が規格化した信号に含まれる検出対象物による信号成分と前記検出対象物以外による信号成分との成分比の少なくとも何れか一方に基づいて、前記照明空間を移動する前記物体を識別するように構成されたことを特徴とする請求項1記載の照明制御システム。
  3. 前記照明空間を囲うように前記送信部からの電波の送信方向に沿って設けられた壁に、前記照明空間と反対側に開くように設けられた扉が開閉する動きを、前記識別部が識別するように構成されたことを特徴とする請求項1又は2の何れか1項に記載の照明制御システム。
  4. 前記検出部は、前記検出部から前記識別部が識別した物体までの距離を測定する測距部を備え、
    前記制御部は、前記識別部の識別結果と前記測距部の測定結果とに基づいて、前記光源部の動作を制御するように構成されたことを特徴とする請求項1乃至3の何れか1項に記載の照明制御システム。
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