JP2015113332A - 生薬粉体 - Google Patents

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正裕 梅原
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Abstract

【課題】ボウフウ及びセンキュウが本来有する薬能を十分に発揮させ、抗菌作用に優れたボウフウ又はセンキュウを含む生薬粉体、及び該生薬粉体の製造方法を提供する。
【解決手段】[1]下記式(1)で求められる結晶化度が20%以下であるボウフウ又はセンキュウを含む生薬粉体、及び[2]ボウフウ又はセンキュウを含有する原料を、振動ミル又は媒体撹拌式ミルで乾式粉砕する、前記生薬粉体の製造方法である。
結晶化度(%)=〔(I22.6−I18.5)/I22.6〕×100 (1)
〔式中、I22.6は、X線回折における結晶の格子面(002面)(回折角2θ=22.6°)の回折強度を示し、I18.5は、アモルファス部(回折角2θ=18.5°)の回折強度を示す。〕
【選択図】なし

Description

本発明は、低結晶性のボウフウ又はセンキュウを含む生薬粉体、及び該生薬粉体の製造方法に関する。
生薬は、医薬品、健康食品、医薬部外品、化粧品等の用途として注目されている。生薬を利用する場合、生薬を粉砕する等の操作を行うが、生薬は水分や油分等を含むため、粉砕機にかけて微粉状に粉砕しようとしても、粉砕機に粘りつき、粉砕しにくい。
そこで、生薬等の粉砕方法として、種々の方法が検討されている。
例えば、特許文献1には、粉砕装置と生薬供給装置を使用した生薬凍結粉砕方法であって、生薬供給装置で生薬を粉砕装置に供給中に、複数箇所で液体窒素を供給して生薬を凍結し、凍結した生薬を粉砕装置で粉砕する生薬凍結粉砕方法が開示されている。
特許文献2には、水分率5重量%以下、最大粒子径5000μm以下の茶等の天然物を、有機媒体中で、超微粉砕機による1段粉砕で最大粒子径30μm以下に粉砕する超微粉砕天然物の製法が開示されている。
特開2004−130308号公報 特開2003−144949号公報
生薬であるボウフウ(防風:Saposhnikovia divaricata)、センキュウ(川きゅう:Cnidium officinale Makino)には、真菌、細菌に対する抗菌作用があることが知られている。しかしながら、ボウフウやセンキュウをそのまま利用しても、それらの抗菌作用は十分ではない。
また、特許文献1及び2に記載の方法でボウフウやセンキュウを粉砕しても、得られた粉砕物の抗菌作用が十分とはいえない。
本発明は、ボウフウ及びセンキュウが本来有する薬効を十分に発揮させ、抗菌作用に優れたボウフウ又はセンキュウを含む生薬粉体、及び該生薬粉体の製造方法を提供することを課題とする。
本発明者らは、ボウフウ、センキュウを特定の条件下で粉砕処理し、それらの結晶性を低下させることにより、前記課題を解決できることを見出した。
すなわち、本発明は、次の[1]及び[2]を提供する。
[1]下記式(1)で求められる結晶化度が20%以下であるボウフウ又はセンキュウを含む生薬粉体。
結晶化度(%)=〔(I22.6−I18.5)/I22.6〕×100 (1)
〔式中、I22.6は、X線回折における結晶の格子面(002面)(回折角2θ=22.6°)の回折強度を示し、I18.5は、アモルファス部(回折角2θ=18.5°)の回折強度を示す。〕
[2]含水量が20質量%以下のボウフウ又はセンキュウを、振動ミル又は媒体撹拌式ミルで乾式粉砕する、前記[1]に記載の生薬粉体の製造方法。
本発明によれば、ボウフウ及びセンキュウが本来有する薬能を十分に発揮させ、抗菌作用に優れたボウフウ又はセンキュウを含む生薬粉体、及び該生薬粉体の効率的な製造方法を提供することができる。
実施例1で得られたボウフウのX線回折チャートである。 比較例1で得られたボウフウのX線回折チャートである。
[ボウフウ又はセンキュウを含む生薬粉体]
本発明の生薬粉体は、下記式(1)で求められる結晶化度が20%以下であるボウフウ又はセンキュウを含む生薬粉体である。
結晶化度(%)=〔(I22.6−I18.5)/I22.6〕×100 (1)
〔式中、I22.6は、X線回折における結晶の格子面(002面)(回折角2θ=22.6°)の回折強度を示し、I18.5は、アモルファス部(回折角2θ=18.5°)の回折強度を示す。〕
ボウフウ(防風:Saposhnikovia divaricata)は、セリ科の多年草の一種であり、その根及び根茎から得られる生薬であり、日本薬局方に収録されている。ボウフウには、抗菌作用、解熱作用、消炎鎮痛作用、血圧降下作用、胃粘膜を守る作用、関節炎を抑制する作用等がある。なお、エゾボウフウ、イブキボウフウ、カワラボウフウ、ボタンボウフウ、ハマボウフウ、アメリカボウフウと、本願で用いるボウフウとは異なるものである。
センキュウ(川きゅう:Cnidium officinale Makino)は、セリ科の多年草の一種であり、その根茎から得られる生薬である。センキュウには、抗菌作用、鎮静、鎮痛、補血、末梢血管拡張、強壮等の作用がある。
本発明の生薬粉体の薬効、特に抗真菌・抗菌作用(以下、単に「抗菌作用」ともいう)が優れているのは、本発明に用いられるボウフウ又はセンキュウがメカノケミカル法により乾式粉砕された結果、その結晶化度が低下し、該ボウフウ又はセンキュウの細胞壁が部分的かつ効果的に崩壊されていることから、ボウフウ又はセンキュウの細胞内部から当該薬効成分が流出し易くなっているのではないかと考えられる。
<ボウフウ>
本発明の生薬粉体中のボウフウの結晶化度は、抗菌作用の観点から、前記式(1)で求められる結晶化度が20%以下であり、好ましくは18%以下、より好ましくは10%以下、更に好ましくは5%以下であり、0%であってもよい。なお、前記式(1)で定義された結晶化度では計算上マイナスの値になる場合があるが、マイナスの値の場合は、結晶化度を0%とする。
生薬粉体中のボウフウの平均粒径は、生産性の観点から、好ましくは1μm以上、より好ましくは5μm以上、更に好ましくは10μm以上、より更に好ましくは12μm以上であり、そして、抗菌作用及び化粧品に用いられた際の製剤化の容易性の観点から、好ましくは800μm以下、より好ましくは600μm以下、より更に好ましくは300μm以下、より更に好ましくは200μm以下、より更に好ましくは100μm以下、より更に好ましくは80μm以下である。
生薬粉体中のボウフウの含水量は、特に制限はないが、生薬として利用し易くする観点から、好ましくは20質量%以下、より好ましくは15質量%以下、更に好ましくは10質量%以下、より更に好ましくは7質量%以下、より更に好ましくは5質量%以下であり、そして、生産性の観点から、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.5質量%以上、更に好ましくは1.0質量%以上、更に好ましくは1.5質量%以上であってもよい。
<センキュウ>
本発明の生薬粉体中のセンキュウの結晶化度は、抗菌作用の観点から、前記式(1)で求められる結晶化度が20%以下であり、好ましくは18%以下、より好ましくは10%以下、更に好ましくは5%以下であり、0%であってもよい。なお、計算式(1)で定義された結晶化度では計算上マイナスの値になる場合があるが、マイナスの値の場合は、結晶化度を0%とする。
生薬粉体中のセンキュウの平均粒径は、生産性の観点から、好ましくは1μm以上、より好ましくは5μm以上、更に好ましくは10μm以上、より更に好ましくは12μm以上であり、そして、抗菌作用及び化粧品に用いられた際の製剤化の容易性の観点から、好ましくは800μm以下、より好ましくは600μm以下、更に好ましくは300μm以下、より更に好ましくは200μm以下、より更に好ましくは100μm以下、より更に好ましくは80μm以下、より更に好ましくは40μm以下である。
生薬粉体中のセンキュウの含水量は、特に制限はないが、生薬として利用し易くする観点から、好ましくは20質量%以下、より好ましくは15質量%以下、更に好ましくは10質量%以下、より更に好ましくは7質量%以下、より更に好ましくは5質量%以下であり、そして、生産性の観点から、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.5質量%以上、更に好ましくは1.0質量%以上、更に好ましくは1.5質量%以上であってもよい。
生薬粉体中のボウフウ又はセンキュウの含有量は、抗菌作用の観点から、各々、好ましくは80%以上、より好ましくは90%以上、更に好ましくは95%以上であり、実質100%であってもよい。
本発明の生薬粉体は、結晶化度が20%以下であるボウフウ又はセンキュウを含むが、必要に応じて、その他の生薬、服用性改善添加剤、生薬粉体に用いられる公知のその他の添加剤等を配合することができる。服用性改善添加剤としては、粉末状の還元麦芽糖水あめ、エリスリトール、スクラロース等が挙げられ、その他の添加剤としては、乳糖、デンプン、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、タルク、結晶セルロース、白糖、軽質無水ケイ酸等が挙げられる。
[生薬粉体の製造方法]
本発明の生薬粉体の製造方法は、ボウフウ又はセンキュウを含有する原料(以下、「生薬含有原料」ともいう)を、振動ミル又は媒体撹拌式ミルで乾式粉砕する方法である。
<生薬含有原料>
生薬含有原料であるボウフウの前記式(1)で求められる結晶化度は、通常21%以上であり、好ましくは23%以上、より好ましくは25%以上であっても生薬含有原料として用いることができ、そして、生産性の観点から、好ましくは30%以下、より好ましくは28%以下、更に好ましくは27%以下である。
生薬含有原料であるセンキュウの前記式(1)で求められる結晶化度は、通常21%以上であり、好ましくは22%以上であっても生薬含有原料として用いることができ、そして、生産性の観点から、好ましくは30%以下、より好ましくは28%以下、更に好ましくは27%以下、より更に好ましくは26%以下、更により好ましくは24%以下である。
生薬含有原料の含水量は、乾式粉砕の際に結晶性を低下させる操作を行う観点から、好ましくは20質量%以下、より好ましくは16質量%以下、更に好ましくは12質量%以下、より更に好ましくは10質量%以下であり、そして、生産性の観点から、好ましくは1質量%以上、より好ましくは2質量%以上、更に好ましくは3質量%以上、更に好ましくは4質量%以上であってもよい。
<乾式粉砕前の粗粉砕処理>
本発明方法においては、乾式粉砕前の前処理として、ボウフウ又はセンキュウの乾式粉砕を効率的に行い、結晶化度を効率的に低下させる観点から、生薬含有原料をチップ状に粗粉砕処理することが好ましい。
粗粉砕処理の方法としては、コーヒーミル等のようなブレンダー、シュレッダー、ロータリーカッター等の粗粉砕機を使用する方法が挙げられる。
粗粉砕処理で得られるチップ状の生薬含有原料の大きさは、粗粉砕処理の生産性を向上させる観点から、好ましくは0.5mm以上、より好ましくは1mm以上、更に好ましくは2mm以上であり、後述する乾式粉砕工程で結晶化度を効率的に低下させる観点から、好ましくは50mm以下、より好ましくは30mm以下、更に好ましくは15mm以下、より更に好ましくは10mm以下、より更に好ましくは7mm以下である。
粗粉砕処理においては、後述する乾式粉砕時において結晶化度をより効率的に低下させるために、必要により、更に押出機で処理し、生薬含有原料の嵩密度を適度な範囲に調整することもできる。押出機としては、単軸、二軸のどちらの形式でもよいが、搬送能力を高める等の観点から、二軸押出機が好ましい。二軸押出機としては、シリンダの内部に2本のスクリューが回転自在に挿入された押出機であり、従来から公知のものが使用できる。2本のスクリューの回転方向は、同一でも逆方向でもよいが、搬送能力を高める観点から、同一方向の回転が好ましい。
<乾式粉砕>
本発明方法においては、粉砕機として、振動ミル又は媒体撹拌式ミルを用いて乾式粉砕することで、生薬含有原料の結晶化度を効果的に低減させる。
乾式粉砕とは、前述の生薬含有原料を、水や有機溶媒を、本質的に添加することなく、粉砕することである。
(振動ミル)
本発明で用いられる振動ミルの市販品としては、中央化工機株式会社製の振動ミル、ユーラステクノ株式会社製のバイブロミル、株式会社吉田製作所製の小型振動ロッドミル1045型、ドイツのフリッチュ社製の振動カップミルP−9型、日陶科学株式会社製の小型振動ミルNB−O型等が挙げられる。
振動ミルを使用する場合、媒体としてロッド又はボールを振動ミル内に充填して、処理することが好ましい。
(媒体撹拌式ミル)
媒体撹拌式ミルとしては、タワーミル等の塔型粉砕機;アトライター、アクアマイザー、サンドグラインダー等の撹拌槽型粉砕機;ビスコミル、パールミル等の流通槽型粉砕機;流通管型粉砕機;コボールミル等のアニュラー型粉砕機;連続式のダイナミック型粉砕機等が挙げられる。これらの中では、粉砕効率が高く、粉砕により抗菌作用を高める観点から、撹拌槽型粉砕機が好ましい。
媒体攪拌式ミルを用いる場合の攪拌翼の先端の周速は、粉砕により抗菌作用を高める観点から、好ましくは0.5m/s以上、より好ましくは1m/s以上、更に好ましくは3m/s以上であり、そして、好ましくは20m/s以下、より好ましくは15m/s以下である。
粉砕機の種類は「化学工学の進歩 第30集 微粒子制御」(社団法人 化学工学会東海支部編、1996年10月10日発行、槇書店)を参照することができる。
振動ミル又は媒体撹拌式ミルの処理方法としては、バッチ式、連続式のどちらでもよい。
(媒体の形状)
振動ミル又は媒体撹拌式ミルに充填する媒体の形状としては、ロッド又はボールが好ましい。媒体の材質としては、特に制限がなく、例えば、鉄、ステンレス、アルミナ、ジルコニア、炭化珪素、窒化珪素、ガラス等が挙げられる。
本発明における乾式粉砕においては、ロッドを充填した振動ミルがより好ましい。
(媒体:ロッド)
ロッドとは、棒状の媒体であり、ロッドの断面が四角形、六角形等の多角形、円形、楕円形等のものを用いることができる。
媒体がロッドの場合、ロッドの外径は、粉砕により抗菌作用を高める観点から、好ましくは0.5mm以上、より好ましくは1mm以上、更に好ましくは5mm以上であり、そして、好ましくは200mm以下、より好ましくは100mm以下、更に好ましくは50mm以下である。
ロッドの長さは、粉砕機の容器の長さよりも短いものであれば特に限定されない。ロッドの大きさが上記の範囲であれば、所望の粉砕力が得られるため、生薬含有原料を効率的に非晶化させることができる。
ロッドの充填率は、振動ミルの機種により好適な範囲が異なるが、粉砕により抗菌作用を高める観点から、好ましくは10%以上、より好ましくは15%以上であり、更に好ましくは30%以上であり、そして、好ましくは97%以下、より好ましくは90%以下、更に好ましくは80%以下である。充填率がこの範囲内であれば、媒体の動きを妨げずに、生薬含有原料を粉砕効率を向上させることができる。ここで、充填率とは、振動ミルの容積に対するロッドのみかけの体積をいう。
(媒体:ボール)
振動ミル又は媒体撹拌式ミル処理において、媒体がボールである場合には、粉砕により抗菌作用を高める観点から、ボールの外径は、好ましくは0.1mm以上、より好ましくは0.5mm以上、更に好ましくは1mm以上であり、好ましくは100mm以下、より好ましくは50mm以下、更に好ましくは20mm以下である。
ボールの充填率は、粉砕機の機種により好適な充填率が異なるが、粉砕により抗菌作用を高める観点から、好ましくは5%以上、より好ましくは8%以上であり、そして、好ましくは90%以下、より好ましくは70%以下、更に好ましくは30%以下である。ここで、充填率とは、ミルの容積に対するボールのみかけの体積をいう。
(処理時間、温度)
振動ミル又は媒体撹拌式ミルの処理時間は、粉砕機の種類、媒体の種類、大きさ及び充填率等により一概に決定できないが、生薬含有原料の結晶化度を効率よく低下させ、粉砕により抗菌作用を高める観点から、好ましくは0.01時間以上、より好ましくは0.05時間以上、更に好ましくは0.1時間以上であり、生産コストの観点から、好ましくは30時間以下、より好ましくは20時間以下、更に好ましくは10時間以下、より更に好ましくは4時間以下である。
処理温度は特に制限がないが、粉砕時の熱による粉砕物の劣化を防ぐ観点から、好ましくは200℃以下、より好ましくは150℃以下、更に好ましくは100℃以下であり、生産性の観点から、好ましくは5℃以上、より好ましくは10℃以上、更に好ましくは30℃以上である。
本発明における乾式粉砕処理では、抗菌作用の観点から、生薬含有原料中のボウフウ又はセンキュウの前記式(1)で求められる結晶化度を、好ましくは5%以上、より好ましくは8%以上、更に好ましくは10%以上、より更に好ましくは15%以上、より更に好ましくは20%以上低下させ、生薬粉体を得ることが好ましい。このように生薬含有原料中のボウフウ又はセンキュウの結晶化度を低下させることにより、ボウフウ又はセンキュウの細胞壁が効果的に破壊されることで、細胞内部からそれらの薬効成分(抗真菌・抗菌成分)が抽出され易くなる。なお、結晶の低下度の上限は、ボウフウ又はセンキュウの結晶性が0%になるまでであり、原料のボウフウ又はセンキュウの結晶性により依存するが、好ましくは30%以下である。
本発明の乾式粉砕処理の製造方法で得られる、生薬含有粉体中の、ボウフウ又はセンキュウの結晶化度、平均粒径、含水量は、前述のとおりであり、好ましい範囲も同じである。
[化粧料]
本発明の生薬粉体は、化粧料の一成分として配合することができる。
本発明の生薬粉体を配合できる化粧料は、皮膚用又は毛髪用に用いられるものであり、医薬部外品、外用医薬品等を包含する。化粧料中の生薬粉体の含有量は、形態により異なるが、通常、マラセチア属菌等に対する抗菌性能を発揮させる観点から、好ましくは0.001%以上、より好ましくは0.01%以上、更に好ましくは0.1%以上であり、コスト及び化粧料の安定性等の観点から、好ましくは10%以下、より好ましくは5%以下、更に好ましくは3%以下、より更に好ましくは1%以下である。
生薬粉体を配合した化粧料には、本発明の目的を損なわない範囲において、ボウフウ又はセンキュウの他に、通常、化粧品、医薬部外品、医薬品等に用いられる各種の成分を必要に応じて適宜配合することができる。このような任意成分としては、例えば精製水、エタノール、界面活性剤、油剤、ビタミン類、シリコーン類、フッ素系油剤、紫外線防御剤、酸化防止剤、保湿剤、粉体、油ゲル化剤、被膜形成剤、柔軟剤、pH調整剤、粘度調整剤、湿潤剤等が挙げられる。
上記の化粧料は、常法により製造することができる。また、その剤型も目的に応じて任意に選択することができる。例えば、クリーム状、軟膏状、乳液状、ローション状、溶液状、ゲル状、パック状、パウダー状、スティック状等とすることができる。より具体的には、水/油型乳化化粧料、油/水型乳化化粧料、クリーム、化粧乳液、化粧水、油性化粧料、パック剤、口紅、ファンデーション、毛髪洗浄剤、皮膚洗浄剤、ヘアートニック、整髪剤、養毛剤、育毛剤等の化粧料とすることができる。
上記の化粧料は、使用時の利便性の観点から、パウダー状、液体状、ペースト状又はクリーム状とすることが好ましく、液体状とすることがより好ましい。pHは、好ましくは4〜10、より好ましくは4.5〜7とすると、皮膚への刺激が少なく好ましい。
ボウフウ又はセンキュウの結晶化度、水分量、平均粒径の測定、X線回折測定、抗菌試験は、以下の方法で行った。
(1)結晶化度の算出
結晶化度は、サンプルのX線回折強度を、株式会社リガク製の「Rigaku RINT2500VC X-RAY diffractometer」を用いて、X線源:Cu/Kα−radiation、管電圧:40kV、管電流:120mA、測定範囲:回折角:5〜40°、X線スキャンスピード:10°/minの条件で測定し、前記式(1)により算出した。
測定用サンプルは、面積320mm2×厚さ1mmのペレットを圧縮して作製した。
(2)水分量の測定
水分含量は、赤外線水分計(株式会社ケット科学研究所製、「FD−610」)を使用し、120℃にて測定を行った。
(3)平均粒径の測定
平均粒径は、レーザ回折/散乱式粒度分布測定装置「LA−920」(株式会社堀場製作所製)を用いて測定した。サンプルは試料測定前に超音波で1分間処理し、測定時の分散媒体として水を用い、体積基準のメジアン径を、温度25℃で測定した。
(4)X線回折測定
X線回折は、X線回折装置〔株式会社リガク製「Rigaku RINT 2500VC X-RAY diffractometer」〕を用いて、X線源:Cu/Kα−radiation、管電圧:40kv、管電流:120mA、測定範囲:回折角2θ=5〜30°、X線のスキャンスピード:10°/minの条件で測定した。
(5)抗菌試験
(i)菌体懸濁液の調製
試験菌株として、マラセチア菌Malassezia globosa CBS7874株を使用した。
当該株を、表1に示すModified Leeming-Notman寒天培地で静置培養(32℃、7日間)して菌体を得た。その後、白金耳を用いて、YMT培地(0.5%のTween 60(関東化学株式会社製)を添加したYMT培地(Difco社製))に移植し、分散したものを菌体懸濁液として抗菌活性の測定に供した。
Figure 2015113332
(ii)抗菌活性の測定
抗菌活性は、ルシフェラーゼ(発光酵素)を利用してATP(アデノシン三リン酸)量を定量するための市販キット(BacTiter-GloTM Microbial Cell Viability Assay, Promega社製)を用いて測定した。
具体的には、上記(i)で調製したマラセチア菌体懸濁液5mLと表2及び表3に記載の生薬を375mg(終濃度7.5wt.%)添加し、振盪培養(32℃、24時間)を行った。その後、この培養液から100μLをサンプリングし、BacTiter-GloTM試薬100μLを添加し、マイクロプレートリーダー(infinite200、TECAN社製)を用いて発光強度を測定し、その量により抗菌活性を評価した。
なお、マラセチア菌添加直後の培養前の発光強度は、ボウフウの場合は5602、センキュウの場合は7542であった。培養後に、発光強度が、増大することは菌量が増大していることを意味する。
実施例1
生薬含有原料として、ボウフウ(SB−2152;親和物産株式会社製、結晶化度26%、水分含量9.6質量%)を用意し、これを鋏で小さく切断後(大きさ:約1cm×1cm)、ブレンダー(粉砕器:R−8型 日本理化学器械株式会社製)を用いて、8000rpm、1分間処理を行い粗粉砕物を得た。
得られた粗粉砕物(大きさ:約2mm×5mm)のボウフウ80gを振動ミル(中央化工機株式会社製、「MB−1」、容器全容量3.5L)に投入し、ロッド(断面形状:円形、直径:30mm、長さ:218mm、材質:ステンレス製)13本を振動ミルに充填(充填率60%)して、振幅8mm、回転数1200cpmの条件で6時間処理を行った。得られたボウフウの結晶化度は0%、平均粒径は25μmであり、その温度は、粉砕処理に伴う発熱により85℃であった。粉砕処理終了後、振動ミル内の壁面や底部にボウフウの固着物等はみられなかった。結果を表2に示す。また、得られたボウフウのX線回折チャートを図1に示す。
実施例2〜5
生薬含有原料として、実施例1で用いたと同じボウフウ(SB−2152)を用いて、ボウフウの水分量及び振動ミルの処理時間を表2に示す条件とした以外は、実施例1と同様にしてボウフウの粉体を得た。粉砕処理終了後、振動ミル内の壁面や底部にボウフウの固着物等はみられなかった。結果を表2に示す。
なお、原料粉体中の水分量の調整は、乾燥又は水の添加により調整した。
実施例6
実施例1で用いたと同じボウフウ(SB−2152)を、ブレンダー(粉砕器:R−8型、日本理化学器械株式会社製)によって、粗粉砕を行った後、バッチ式媒体撹拌式ミル(サンドグラインダー:6TSG−1/4型(五十嵐機械製造株式会社製):容量容器800mL、5mmΦジルコニアボールを360g、充填率12%、撹拌翼径70mm)を用いて、撹拌回転数2000rpm、撹拌翼先端速度7.3m/sで、1時間処理した以外は、実施例1と同様にしてボウフウの粉体を得た。
粉砕終了後、媒体撹拌式ミル内の壁面や底部にボウフウの固着物はみられなかった。結果を表2に示す。
実施例7
実施例1で用いたボウフウをセンキュウ(SB−2271;親和物産株式会社製、結晶化度23%、水分含量9.3質量%)に替えたこと以外は、実施例1と同様にしてセンキュウの粉体を得た。
粉砕処理終了後、振動ミル内の壁面や底部にセンキュウの固着物等はみられなかった。結果を表2に示す。
実施例8〜9
実施例7で用いたと同じセンキュウを用いて、振動ミルの処理時間を表2に示す時間としたこと以外は、実施例7と同様にしてセンキュウの粉体を得た。
粉砕処理終了後、振動ミル内の壁面や底部にセンキュウの固着物等はみられなかった。結果を表2に示す。
実施例10
実施例6で用いたボウフウを、実施例7で用いたセンキュウに替えた以外は、実施例6と同様にしてセンキュウの粉体を得た。
粉砕処理終了後、媒体撹拌式ミル内の壁面や底部にセンキュウの固着物等はみられなかった。結果を表2に示す。
比較例1〜3
実施例1で用いたボウフウ(SB−2152)を、実施例1で用いたブレンダー(粉砕器:R−8型)で、8000rpm、30秒間処理して粗粉砕物を得た。結果を表3に示す。なお、原料ボウフウ中の水分量の調整は、乾燥又は水の添加により行った。結果を表3に示す。また、比較例1で得られたボウフウのX線回折チャートを図2に示す。
比較例4
実施例1でブレンダーで処理して得られた粗粉砕物20gを、フラスコに入れた後、液体窒素を200mLを添加してセンキュウを凍結した。その後、凍結させたセンキュウを室温、真空で乾燥した。さらに、乾燥物10gを前記ブレンダーを用いて、8000rpm、1分間粉砕処理を行った。
得られた粉砕物を目開きが250μmの篩を用いて粗大粒子を除去して粉砕物を得た。結果を表3に示す。
比較例5
実施例1でブレンダーで処理して得られた粗粉砕物5gを、アルミナ製の乳鉢(CW−2型、アズワン株式会社製)で1分間粉砕処理を行った。その後、粉砕物を目開きが250μmの篩を用いて粗大粒子を除去して粉砕物を得た。結果を表3に示す。
比較例6
実施例1でブレンダーで処理して得られた粗粉砕物12.8gとオリーブオイル(OLIVE OIL EXTRA VIRGIN、株式会社J−オイルミルズ製)128gとをアンカー翼で10分間撹拌し、調製した分散液を、バッチ式媒体撹拌式ミル(サンドグラインダー:6TSG−1/4型、五十嵐機械製造株式会社製、容量容器800mL、0.5mmΦジルコニアビーズを972g使用、撹拌翼径70mm)を用いて、撹拌回転数2000rpm、撹拌速度7.3m/s、処理時間6分間で湿式粉砕処理を行った。得られたボウフウの分散液はゲル化し、(粘度は3000mPas)ボウフウの大きさは1mm以上であった。結果を表3に示す。
比較例7
比較例1で用いたボウフウを、実施例7で用いたセンキュウ(SB−2271)に替えた以外は、比較例1と同様にしてセンキュウの粉体を得た。結果を表3に示す。
比較例8
比較例4で用いたボウフウをセンキュウ(SB−2271)に替えた以外は、比較例4と同様にしてセンキュウの粉体を得た。結果を表3に示す。
比較例9
比較例5で用いたボウフウをセンキュウ(SB−2271)に替えた以外は、比較例5と同様にしてセンキュウの粉体を得た。結果を表3に示す。
Figure 2015113332
Figure 2015113332
表2から、実施例1〜5では、ボウフウを振動ミルで処理し、結晶化度が4%以下になっているため、発光強度が殆ど変わらず(抗菌活性の測定における培養前の発光強度は5602)、抗菌作用が優れていることが分かる。
実施例6では、ボウフウを媒体撹拌ミルで乾式粉砕処理したが、この場合、結晶化度が16%であったが、抗菌作用が十分であった。
実施例7〜10で得られたセンキュウを使用した例でも、発光強度が小さく(抗菌活性の測定における培養前の発光強度は7542)、抗菌作用が優れていることが分かる。
即ち、本発明の生薬粉体は、培養後であっても菌が増殖せず、抗菌作用を有することが分かる。なお、実施例5、7、8では、培養前より発光強度が低下しているが、誤差範囲ではないかと考えられる。
一方、表3に示す比較例1〜3では、原料ボウフウを単にブレンダーで粗粉砕処理しているだけであり、ボウフウをの結晶化度が低下していないため、抗菌作用が劣っていた。
比較例4〜6での凍結粉砕、乳鉢での粉砕、湿式粉砕でも、結晶化度が20%以下になっていないため、得られたボウフウの抗菌作用が劣ることが分かる。
比較例7〜9で得られたセンキュウでも、比較例1〜6で得られたセンキュウと同様に、抗菌作用が劣っていた。

Claims (6)

  1. 下記式(1)で求められる結晶化度が20%以下であるボウフウ又はセンキュウを含む、生薬粉体。
    結晶化度(%)=〔(I22.6−I18.5)/I22.6〕×100 (1)
    〔式中、I22.6は、X線回折における結晶の格子面(002面)(回折角2θ=22.6°)の回折強度を示し、I18.5は、アモルファス部(回折角2θ=18.5°)の回折強度を示す。〕
  2. 含水量が20質量%以下である、請求項1に記載の生薬粉体。
  3. ボウフウ又はセンキュウの平均粒径が0.1〜800μmである、請求項1又は2に記載の生薬粉体。
  4. ボウフウ又はセンキュウを含有する原料を、振動ミル又は媒体撹拌式ミルで乾式粉砕する、請求項1〜3のいずれかに記載の生薬粉体の製造方法。
  5. 前記原料中のボウフウ又はセンキュウの結晶化度を5%以上低下させる、請求項4に記載の生薬粉体の製造方法。
  6. ロッド又はボールを充填した振動ミル又は媒体撹拌式ミルで乾式粉砕する、請求項4又は5に記載の生薬粉体の製造方法。
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伊藤美智穂、北山隆監修、原島広至著, 改訂第2版生薬単, JPN6017025256, 25 April 2012 (2012-04-25), JP, ISSN: 0003755359 *

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