JP2015112781A - 機能転写体及び機能層の転写方法 - Google Patents

機能転写体及び機能層の転写方法 Download PDF

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Abstract

【課題】被処理体上に高精度に疎水性機能を付与することが可能な機能転写体及び機能層の転写方法を提供すること。
【解決手段】本発明の機能転写体(14)は、表面に凹凸構造(ナノ構造)(11)を具備するキャリア(10)と、凹凸構造上に設けられた少なくとも1以上の機能層(12)と、を具備し、凹凸構造の平均ピッチは1nm以上1500nm以下であり、機能層(11)の露出する面側の表面粗さ(Ra)と、凹凸構造の凸部頂部位置と機能層の露出する表面との距離(lor)と、の比率(Ra/lor)が1.2以下であり、機能層(11)の凹凸構造側に位置する表層に対するフッ素元素濃度Efが、20atm%以上80atm%以下であることを特徴とする。
【選択図】図1

Description

本発明は、被処理体に疎水機能を付与するために使用する機能転写体及び機能層の転写方法に関する。
雨、塩水、霧、氷、或いは雪が、装置や機器、移動体等の表面に付着することで多くの問題が生じており、付着が課題とされている。例えば、通信用アンテナの場合であって、着水により水の被膜が形成された場合、水の被膜の厚みが約0.1mmとすると、5.3GHz、9GHz、12GHzの周波数ごとに、約1dB、約2〜3dB、約3〜4dBの減衰があると言われている。また、着雪・着氷の場合も類似の問題が発生すると共に、雪や氷の重さによるアンテナの破壊が問題になる。その他にも、雪や氷を取り除く作業の負荷が大きいことも課題である。同様に、風力発電のプロペラに対する着氷・着雪も問題である。また、雨に晒された太陽電池の表面は、雨滴の乾燥とともに、埃等の異物が付着し、発電効率を低下させる。雪が降り積もれば、太陽光線を遮り、発電効率は大きく下がる。自動車のフロントガラスや商業ビル等の窓ガラスに対して、着水や着雪があれば、水滴の乾燥する際に多くの異物が付着し、その清掃に係る負荷が大きくなる。また、飛行機に対する着氷は、燃費が悪くなるばかりでなく、重大な飛行機事故につながる可能性もあると言われている。また、自動車や飛行機に限らず、着雪や着氷により生じた雪・氷を除去するためにかかるコストは計り知れない。また、送電線のコロナ騒音の原因は、送電線に対する着水の仕方と言われており、この改善が急務となっている。その他にも、より一般消費者に身近な場合にも問題はある。例えば、風呂場にて足を滑らせて転倒し怪我をするといった情報が流れる場合があるが、これの一つの原因は、風呂場の床に水が残っているためである。また、シンク周りに水滴が残ることで、細菌の繁殖が進行したり、水垢が溜まる傾向にある。
上記例示した課題に対する好適な解決策は、着水や着雪の程度を減少させることと、着水、着雪、或いは着氷した場合に、それらを取り除く負荷を減少させることである。このような観点から、撥水、撥油、或いは滑落といった学問が注目を浴び、多くの研究がなされている。そして、着水や着雪に対する対策として、高機能な疎水性表面が有効であると報告されている。ここで、高機能な疎水性表面とは、化学的な疎水性因子だけではなく、化学的因子に更に、物理的な構造因子を加えることで初めて発現可能である。このような、高機能な疎水性表面を作製する方法としては、被処理体の表面を直接加工し、その後表面処理する方法と、被処理体上に別途、機能層を付与する方法が提案されている。以下に、被処理体の別途機能層を付与する方法と、被処理体を加工する方法の例を挙げる。
特許文献1には、被処理体を加工するための光硬化性ナノインプリントの手法が開示されている。すなわち、光硬化性樹脂を液体の機能原料として使用し、被処理体上に被処理体を加工するための機能層を付与している。特許文献1においては、被処理体上に所定の光硬化性樹脂を塗布し、続いてモールドの凹凸構造を該光硬化性樹脂膜に貼合及び5MPa〜100MPaの圧力にて押圧する。その後、光硬化性樹脂を硬化させ、最後にモールドを除去することで、被処理体を加工するための機能層を付与した被処理体が得られることが記載されている。ここで、転写付与された機能原料に対して疎水性の機能を付与できれば、高機能な疎水性表面を被処理体上に形成出来ることになる。また、被処理体を加工し、その後表面処理を施すことでも、高機能な疎水性表面が得られる可能性がある。
また、特許文献2には、特許文献1とは異なる手法を採用し、被処理体を加工するための手法が開示されている。特許文献2においては、被加工膜(被処理体)上にインプリント材料を塗布し、続いてテンプレートの凹凸構造を貼合する。その後、インプリント材料を硬化させ、テンプレートを除去することで、被加工膜上に凹凸構造を転写する。続いて、転写形成された凹凸構造の凹部内にマスクを充填し、インプリント材料を加工する。最後に、残ったインプリント材料をマスクに見立て被加工膜を加工している。すなわち、インプリント材料を液体の機能原料として使用し、被処理体(被加工膜)上に被処理体を加工するための機能層を付与している。特許文献2においては、被処理体上に所定のインプリント材料を塗布し、凹凸構造を表面に具備したテンプレートの該凹凸構造を貼合している。ここで、転写付与された機能原料に対して疎水性の機能を付与できれば、高機能な疎水性表面を被処理体上に形成出来ることになる。また、被処理体を加工し、その後表面処理を施すことでも、高機能な疎水性表面が得られる可能性がある。
国際公開第2009/110162号パンフレット 特開2011−165855号公報
被処理体の用途に応じて、機能層の転写方法は2つ考えられる。まず、被処理体に対して別途機能層を転写付与することである。次に、転写付与された機能層を、被処理体の加工マスクとして機能させ、該加工マスクの精度を反映させ、被処理体を加工することである。いずれの場合であっても、被処理体上に転写付与される機能層の精度、すなわち、構造精度と膜厚精度を高くすることが要求される。上記例示したいずれの手法においても、機能を付与する被処理体と、凹凸構造を具備するモールドの凹凸構造面と、の間に液状の機能原料(硬化性樹脂等)を狭持し、続いて機能原料を硬化させる。最後にモールドを除去することにより被処理体上に機能層を付与している。換言すれば、被処理体に機能を付与する場合において、機能層の構造及び膜厚の精度を制御する操作を経る。このため、以下に示すような問題点が存在する。
(1)被処理体に機能原料を成膜する場合、被処理体が大きくなるほど、そして被処理体の表面の平坦性が低下するほど、成膜される機能原料膜の膜厚均等性は減少する。更に、被処理体表面の欠陥や傷、そしてサブミクロンの異物管理は非常に困難であり、これらの不陸が存在すると、該不陸部位において機能原料膜は分裂し、塗工不良を生じる。更に、液状の機能原料を被処理体上に成膜した後にモールドの凹凸構造面を貼合する操作は、機能原料膜全体の流動による膜厚分布を大きくする。このような機能原料膜の分裂は、被処理体上に形成される機能層の欠陥へと繋がるため、機能を発揮しない部位(機能不全部位)を生じることとなる。また、機能原料膜の膜厚分布は、被処理体上に形成される機能層の膜厚分布へとつながるため、発揮される機能のバラつきを生じる。更に、被処理体に対し機能原料を塗工する場合、精度高く塗工する装置の大きさに制限があり、精度高く大面積に液体の機能原料膜を成膜するためには、過大な設備を設計する必要が生じる。
一方で、モールドの凹凸構造に液体の機能原料を塗工した後に、被処理体に貼合する場合も、液状の機能原料膜全体の流動が生じ機能原料膜の膜厚分布が大きくなる。特に、大面積な被処理体や表面平坦性の低い被処理体に対し該操作を行う場合、貼合時の圧力制御が困難となり、機能原料膜の膜厚分布は更に大きくなる。更に、不陸が存在し、機能原料膜厚が該不陸の大きさよりも薄い場合、該不陸部位において液状の機能原料膜は流動分裂し、エアボイドを生じる。エアボイドのサイズは、該不陸の径よりも大きくなる。このような機能原料膜の膜厚分布により、発揮される機能のバラつきを生じる。また、エアボイドにより機能不全部位を生じることとなる。更に、モールドの凹凸構造上への機能原料の塗工性を向上させればさせるほど、換言すれば、モールドと機能原料との親和性を向上させるほど、機能原料とモールドとの接着強度が大きくなるため、被処理体への機能転写精度が低下する。逆に、機能原料とモールドと、の接着強度を小さくするほど、塗工性が低下するという問題が存在する。
(2)被処理体に対し液体の機能原料を成膜し、続いてモールドの凹凸構造面を貼合し、最後にモールドを除去することで、被処理体上に機能を付与する場合、モールドの凹凸構造内部への機能原料の流動充填及び機能原料の被処理体に対する濡れ性が、機能転写精度に対して大きく影響する。該流動充填は、主に、モールドと機能原料との界面自由エネルギ、機能原料と被処理体との界面自由エネルギ、機能原料の粘度、そして貼合時の押圧力の影響を受ける。これらの因子を制御することにより、機能原料をモールドの凹凸構造に充填することが可能となる。すなわち、モールドや被処理体の素材を限定した場合、使用可能な機能原料の範囲は限定される。また、モールドや機能原料の素材を限定した場合は、使用可能な被処理体の範囲が限定される。これらの課題を解決するにあたり、機能原料中に界面活性剤やレベリング材を添加する方法が提案されているが、これらの添加物は、機能原料に対する不純物であるため、機能の低下を引き起こす場合がある。
また、特許文献1に例示されるように被処理体上に転写付与した機能層を加工マスクとして使用し、被処理体を加工する場合、被処理体上に転写付与された機能層の残膜、すなわち、機能層のナノ構造の凹部底部下に位置する部位を除去する必要がある。ここで、機能層の精度を高精度に反映させ被処理体を加工するためには、残膜の厚みを薄く、且つ凹凸構造の高さを高くする必要がある。残膜の厚みを薄くするためには、機能原料の粘度を低下させることや、モールドの押圧力を強くする必要があるが、残膜の厚みがナノオーダに薄くなるほど、機能原料膜の弾性率は、ナノオーダ特有の効果により増加し、そのため、モールドを破損しない程度の押圧力範囲においては、残膜厚を薄く均等にすることには限界が生じる。一方、残膜厚を薄くするほど、残膜の分布は見かけ上大きくなるため、モールド除去時に機能層に加わる応力の均等性が低下し、機能層が破壊されたり、機能原料と被処理体界面に集中した剥離応力により、機能層がモールド側に付着したりする場合がある。更に、モールドの凹凸構造深さを深くするほど、機能原料の流動充填性が低下し、また、モールド除去時の機能層への応力の絶対値が大きくなるため転写不良が生じることが多い。
なお、特許文献2に例示される手法においては残膜厚をある程度大きくすることができる。これは、機能層を転写付与した後に、機能層のナノ構造の凹部内部にマスクを充填し加工するためである。この場合、残膜厚の均等性が加工精度を決定する。すなわち、上記説明したように、残膜厚の分布は、加工マスクの分布を生み、これにより加工される被処理体のナノ構造に分布を生じる。
上記説明したように、機能を付与する被処理体と凹凸構造を具備するモールドの凹凸構造面との間に液状の機能原料を狭持し、最後にモールドを除去することにより被処理体上に機能を付与することで、被処理体上に付与される機能層の膜厚分布が大きくなり機能にバラつきが生じる。また、塗工不良や転写不良に起因する欠陥により、機能不全部位が形成されることとなる。更に、被処理体に対し液体の機能原料を成膜する場合、成膜性を向上させるために、過剰な機能原料を使用するため、環境適合性が低下する。また、機能層の膜厚分布を小さくするための設備は、過大であり現実的ではない。
本発明は、上記説明した問題点に鑑みてなされたものであり、被処理体上に高精度に疎水性機能を付与することが可能な機能転写体及び機能層の転写方法を提供することを目的とする。
本発明の機能転写体は、表面に凹凸構造を具備するキャリアと、前記凹凸構造上に設けられた少なくとも1以上の機能層と、を具備し、前記凹凸構造の平均ピッチは1nm以上1500nm以下であり、前記機能層の露出する面側の表面粗さ(Ra)と、前記凹凸構造の凸部頂部位置と前記機能層の露出する表面との距離(lor)と、の比率(Ra/lor)が1.2以下であり、前記機能層の前記凹凸構造側に位置する表層に対するフッ素元素濃度Efが、20atm%以上80atm%以下であることを特徴とする。
この構成によれば、キャリアの凹凸構造の精度及び機能層の膜厚精度を反映させて、被処理体上に機能層を転写付与することができる。すなわち、所望の形状、大きさ、或いは材質を有する被処理体の、所定位置或いは全面に、被処理体の使用に好適な場所において、精度高くナノ構造を具備する機能層を転写付与することができる。そして、このナノ構造は、疎水機能を発現することから、着水、着氷、或いは着雪を抑制したり、又は、付着した水、雪、氷を除去しやすくなる。
本発明の機能転写体においては、前記表面粗さ(Ra)は、2nm以上300nm以下であることが好ましい。
この構成によれば、前記効果に加えて、機能転写体を製造する際の工業性が大きく向上する。
本発明の機能転写体は、表面に凹凸構造を具備するキャリアと、前記凹凸構造上に設けられた少なくとも1以上の機能層と、を具備し、前記凹凸構造の平均ピッチは1nm以上1500nm以下であり、前記凹凸構造の凹部に空間が存在し、前記機能層の前記凹凸構造側に位置する表層に対するフッ素元素濃度Efが、20atm%以上80atm%以下であることを特徴とする。
この構成によれば、キャリアの凹凸構造の精度及び機能層の膜厚精度を反映させて、被処理体上に機能層を転写付与することができると共に、機能転写体を製造する際の不良率が低減する。すなわち、所望の形状、大きさ又は材質を有する被処理体の、所定位置又は全面に、被処理体の使用に好適な場所において、精度高くナノ構造を具備する機能層を転写付与することができる。
本発明の機能転写体においては、前記機能転写体の前記キャリアとは反対側の露出面が温度20℃で、且つ、遮光下にて非液体状態であることが好ましい。
この構成によれば、機能転写体の物理的安定性が向上するため、被処理体の使用に好適な場所まで機能転写体を搬送した場合であっても、機能転写体の機能層の精度を保持することができる。
この場合において、20℃超300℃以下の温度範囲の中で、機能転写体のキャリアとは反対側の露出面がタック性を示すか、又は、該露出面のタック性が増加することが好ましい。
この構成によれば、機能転写体を被処理体に貼り合わせる際の、機能層と被処理体との接着性を保持すると共に、機能転写体の物理的安定性が向上するため、被処理体の使用に好適な場所まで機能転写体を搬送した場合であっても、機能転写体の機能層の精度を反映さえ、被処理体上に機能層を転写付与することができる。
本発明の機能転写体においては、前記機能層は、極性基を含む樹脂を含有することが好ましい。
この構成によれば、特に被処理体と機能層と、の界面接着強度を大きくできるため、機能層の転写付与精度が向上する。
本発明の機能転写体においては、前記極性基は、エポキシ基、水酸基、アクリロイル基、メタクリロイル基、ビニル基、カルボキシル基及びカルボニル基からなる群より選ばれる少なくとも1以上の極性基を含むことが好ましい。
この構成によれば、被処理体と機能層との界面接着強度を大きくすると共に、機能層とキャリアと、の界面接着力を小さくできるため、機能層の転写付与精度が向上する。
本発明の機能転写体においては、前記機能層は、光硬化性物質を含むことが好ましい。
この構成によれば、特に、機能層とキャリアとの界面接着力を小さくできるため、機能層の転写付与精度が向上する。
本発明の機能転写体においては、前記比率(Ra/lor)が、0.75以下であることが好ましい。
この構成によれば、機能層と被処理体との接着面積及び接着力が大きくなると共に、機能層の破壊を抑制できるため、転写性が向上する。
本発明の機能転写体においては、前記凹凸構造の平均アスペクト(A)は、0.1以上5.0以下であることが好ましい。
この構成によれば、被処理体に転写付与される機能層のナノ構造の欠陥を抑制できる。
本発明の機能転写体においては、前記比率(Ra/lor)が、0.25以下であることが好ましい。
この構成によれば、機能層と被処理体との接着面積及び接着力がより大きくなると共に、機能層の破壊を抑制できるため、転写性が向上する。
本発明の機能転写体においては、前記キャリアは、表面の一部又は全面に凹凸構造Aを具備し、前記凹凸構造Aは、凸部頂部幅(Mcv)と凹部開口幅(Mcc)との比率(Mcv/Mcc)と、前記凹凸構造Aの単位面積(Scm)の領域下に存在する開口部面積(Sh)と前記単位面積(Scm)との比率(Sh/Scm)と、が下記式(1)を満たし、前記比率(Sh/Scm)は下記式(2)を満たし、前記比率(Mcv/Mcc)は下記式(3)を満たし、且つ、前記凹凸構造Aの平均アスペクト(A)は下記式(4)を満たすことが好ましい。
式(1)
Figure 2015112781
式(2)
0.23<(Sh/Scm)≦0.99
式(3)
0.01≦(Mcv/Mcc)<1.0
式(4)
0.1≦A≦5
この構成によれば、キャリアの凹凸構造に対する機能層の配置精度が向上すると共に、キャリアを機能層より除去する際の機能層の破壊を抑制できることから、被処理体に対する機能層の転写精度が向上する。
本発明の機能転写体においては、前記凹凸構造は、フッ素元素、メチル基及びシロキサン結合からなる群から選ばれる少なくとも1以上の要素を含有することが好ましい。
この構成によれば、キャリアと機能層との接着力を小さくすることができるため、転写精度が向上する。
本発明の機能転写体においては、前記凹凸構造の前記機能層面側の表層フッ素元素濃度(Es)と前記凹凸構造の平均フッ素元素濃度(Eb)との比率(Es/Eb)は、1超30000以下であることが好ましい。
この構成によれば、機能転写体に対する機能層の配置精度が向上すると共に、被処理体に対する機能層の転写性が向上する。更には、キャリアの繰り返し使用性が向上する。
本発明の機能転写体においては、前記キャリアがフィルム状であり、且つ、前記キャリアの幅が3インチ以上であることが好ましい。
この構成によれば、被処理体に対し、シームレスな機能層を転写付与することができる。
本発明の機能層の転写方法は、上記記載の機能転写体の機能層を被処理体の一主面上に直接当接させる工程と、前記キャリアを前記機能層から除去する工程と、をこの順に含むことを特徴とする。
この構成によれば、別途接着剤を使用することなく、被処理体に機能層を付与することができるため、機能層の効果が最大限に発現される。
本発明によれば、機能転写体を用いて最適な場所で被処理体に機能を付与することにより、被処理体上に高精度に疎水機能を高効率で付与することができる。
本実施の形態に係る機能転写体を用いた被処理体への機能付与方法の各工程を示す断面模式図である。 本実施の形態に係る機能転写体を用いた被処理体への機能付与方法の各工程を示す断面模式図である。 本実施の形態に係る機能転写体を示す断面模式図である。 本実施の形態に係る機能転写体におけるキャリアの平均ピッチと剥離エネルギとの関係を示すグラフである。 本実施の形態に係る機能転写体のキャリアの凹凸構造Aの第1〜第4の条件を説明するためのグラフである。 本実施の形態に係る機能転写体のキャリアの凹凸構造Aの第1〜第4の条件を説明するためのグラフである。 本実施の形態に係る機能転写体のキャリアの凹凸構造Aの第1〜第4の条件を説明するためのグラフである。 本実施の形態に係る機能転写体のキャリアの凹凸構造Aの第1〜第4の条件を説明するためのグラフである。 本実施の形態に係る機能転写体のキャリアの凹凸構造Aの第1〜第4の条件を説明するためのグラフである。 本実施の形態に係る機能転写体のキャリアの凹凸構造Aの第1〜第4の条件を説明するためのグラフである。 本実施の形態に係る機能転写体を示す断面模式図である。 本実施の形態に係る機能転写体を示す断面模式図である。 本実施の形態に係る機能転写体における機能層のキャリアのナノ構造に対する配置例を示す断面模式図である。 本実施の形態に係る機能転写体における機能層のキャリアのナノ構造に対する配置例を示す断面模式図である。 本実施の形態に係る被処理体を示す断面模式図である。 本実施の形態に係る積層体を示す平面模式図である。 本実施の形態に係る被処理体を示す斜視模式図である。 本実施の形態に係る積層体を示す斜視模式図である。 実施例5の評価結果を示すグラフである。 太陽電池の断面模式図である。
まず、本発明の概要について説明する。本発明の機能転写体は、表面に凹凸構造を具備するキャリアと、前記凹凸構造上に設けられた少なくとも1以上の機能層と、を具備し、前記凹凸構造の平均ピッチは1nm以上1500nm以下であり、前記機能層の露出する面側の表面粗さ(Ra)と、前記凹凸構造の凸部頂部位置と前記機能層の露出する表面との距離(lor)と、の比率(Ra/lor)が1.2以下であり、前記機能層の前記凹凸構造側に位置する表層に対するフッ素元素濃度Efが、20atm%以上80atm%以下であることを特徴とする。
この構成によれば、キャリアの凹凸構造の精度及び機能層の膜厚精度を反映させて、被処理体上に機能層を転写付与することができる。すなわち、所望の形状、大きさ、或いは材質を有する被処理体の、所定位置或いは全面に、被処理体の使用に好適な場所において、精度高くナノ構造を具備する機能層を転写付与することができる。そして、このナノ構造は、疎水機能を発現することから、着水、着氷、或いは着雪を抑制したり、又は、付着した水、雪、氷を除去しやすくなる。
本発明の機能転写体は、表面に凹凸構造を具備するキャリアと、前記凹凸構造上に設けられた少なくとも1以上の機能層と、を具備し、前記凹凸構造の平均ピッチは1nm以上1500nm以下であり、前記凹凸構造の凹部に空間が存在し、前記機能層の前記凹凸構造側に位置する表層に対するフッ素元素濃度Efが、20atm%以上80atm%以下であることを特徴とする。
この構成によれば、キャリアの凹凸構造の精度及び機能層の膜厚精度を反映させて、被処理体上に機能層を転写付与することができると共に、機能転写体を製造する際の不良率が低減する。すなわち、所望の形状、大きさ又は材質を有する被処理体の、所定位置又は全面に、被処理体の使用に好適な場所において、精度高くナノ構造を具備する機能層を転写付与することができる。
本発明の機能層の転写方法は、上記記載の機能転写体の機能層を被処理体の一主面上に直接当接させる工程と、前記キャリアを前記機能層から除去する工程と、をこの順に含むことを特徴とする。
この構成によれば、別途接着剤を使用することなく、被処理体に機能層を付与することができるため、機能層の効果が最大限に発現される。
<機能転写体の概要>
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して具体的に説明する。
図1及び図2は、本実施の形態に係る機能転写体を用いた被処理体への機能付与方法の各工程を示す断面模式図である。
まず、図1Aに示すように、キャリア10は、その主面上に凹凸構造11が形成されている。凹凸構造11は、複数の凹部11aと凸部11bで構成されている。特に、凹凸構造11の平均ピッチは1nm以上1500nm以下である。以下、凹凸構造11をナノ構造11とも呼ぶ。キャリア10は、例えば、フィルム状又はシート状である。
次に、図1Bに示すように、キャリア10のナノ構造11の表面上に、機能層12を設ける。機能層12の配置や機能層12の層数はこれに限定されない。更に、図1Cに示すように、機能層12の上側には、保護層13を設けることができる。保護層13は、機能層12を保護するものであり、必須ではない。以下、キャリア10及び機能層12を有する積層体を、機能転写体14と呼ぶ。
次に、図2Aに示すような被処理体20を用意する。次いで、図2Bに示すように、被処理体20の主面上に、保護層13を取り除いた後の機能転写体14の、機能層12の露出面を直接当接させる。次に、図2Cに示すように、キャリア10を、機能層12から除去する。この結果、機能層12及び被処理体20からなる積層体21が得られる。積層体21はその用途により、積層体21の状態にて使用することも、積層体21の機能層12を被処理体20の加工マスクとして機能させ、被処理体20を加工したのちに使用することもできる。ここで、機能層12を被処理体20に精度高く転写付与する骨子は、機能層12と被処理体20との接着強度を向上させることと、キャリア10を取り除く際の機能層12の破壊を抑制することである。なお、以下の説明においては、積層体21の機能層12を機能層S12、積層体21の機能層12のナノ構造11をナノ構造S11と、表記することがある。
なお、上述した当接と除去との間において、例えば、積層体21に対してエネルギ線を照射して機能層12を安定化させる。また、例えば、当接時に加える熱により、機能層12を安定化させる。或いは、例えば、積層体21に対してエネルギ線を照射した後に、積層体21を加熱し、機能層12を安定化させる。また、エネルギ線を照射する際に、エネルギ線に対する遮光マスクを設けることで、パターニングされた機能層12を具備する積層体21を得ることができる。
本実施の形態では、図1A〜図1Cに示すキャリア10から機能転写体14を得るところまでを一つのライン(以下、第1のラインという)で行う。それ以降の、図2A〜図2Cまでを別のライン(以下、第2のラインという)で行う。より好ましい態様においては、第1のラインと、第2のラインとは、別の施設で行われる。このため、機能転写体14は、例えば、キャリア10がフィルム状であり、可とう性を有する場合に、機能転写体14を巻物状(ロール状)の機能転写フィルムロールにして保管又は運搬される。
更に好ましい態様においては、第1のラインは、機能転写体14のサプライヤのラインであり、第2のラインは、機能転写体14のユーザのラインである。このように、サプライヤにおいて機能転写体14を予め量産し、ユーザに提供することで、次のような利点がある。
(1)機能転写体14を構成するキャリア10のナノ構造11の精度及び機能層12の厚み精度を反映させ、被処理体20に機能を付与し、積層体21を製造できる。すなわち、サプライヤのラインにおいて、予めナノ構造11の形状及び配列、そして機能層12の厚みといった精度を決定することが可能となる。そして、ユーザのラインにおいては、煩雑なプロセスや装置を使用することなく、予め決定されている機能層12の精度を、被処理体20の全面或いは被処理体20の所定範囲内にのみ、高精度に機能を付与することができる。
(2)機能付与された被処理体20を使用するのに最適な場所において機能転写体14を使用し積層体21を製造できる。すなわち、積層体21の使用に最適なユーザのラインにおいて、機能転写体14を使用し、被処理体20に機能を付与することができる。よって、ユーザのラインにおける積層体21を使用するまでの移動距離を短く、且つプロセスを簡素化できることから、積層体21の機能層12に対する異物の付着や機能層S12の破損を抑制できる。これにより、例えば被処理体面内において安定的な機能を有するデバイスを製造できる。
上記説明したように、機能転写体14は、キャリア10及びキャリア10のナノ構造11上に設けられた機能層12から構成される積層体である。すなわち、積層体21の機能精度を支配するナノ構造の精度(ナノ構造の形状、配列等)及び機能層の厚み精度を、機能転写体14のキャリア10のナノ構造11の精度及び機能転写体14の機能層12の厚み精度にて予め決定し担保することが可能となる。更に、第1のラインを機能転写体14のサプライヤのラインに、第2のラインを機能転写体14のユーザのラインにすることで、被処理体20への機能付与に最適な、そして、積層体21を使用するのに最適な環境にて、積層体21を得ることができる。このため、積層体21及び積層体21を使用したデバイス組み立ての精度(歩留り)及びスループットを向上させることができる。
図3を用いて本実施の形態に係る機能転写体14についてより詳細に説明する。図3は、本実施の形態に係る機能転写体を示す断面模式図である。図3に示すように、機能転写体14は、キャリア10を具備する。キャリア10は、その表面にナノ構造11を具備する。ナノ構造11とは、図1Aを参照して説明した凹凸構造11であって、その凹凸の平均ピッチが1nm以上1500nm以下のものである。ナノ構造11の表面上には、機能層12が設けられる。機能層12のナノ構造11に対する配置は、積層体21の用途により決定されるため、特に限定されない。また、機能層12の露出する面側に保護層13を設けることができる。更に、キャリア10のナノ構造11とは反対側の面上に支持基材15を設けることができる。以下の説明においては、特に断りのない限り、ナノ構造11のみによりキャリア10が構成されている場合も、ナノ構造11と支持基材15によりキャリア10が構成される場合も、単にキャリア10として表現する。
<機能転写体の必須要件(A)〜(E)>
上述の本実施の形態に係る機能転写体14は、以下のいずれかの機能転写体である。第1に、機能転写体(以下、第1の機能転写体ともいう)は、
(A)表面にナノ構造11を具備するキャリア10のナノ構造11上に少なくとも1以上の機能層12を予め備え、
(B)ナノ構造11の平均ピッチは1nm以上1500nm以下であり、
(C)機能層12の露出する面側の表面粗さ(Ra)と、ナノ構造11の凸部頂部位置と機能層12の露出する表面との距離(lor)と、の比率(Ra/lor)が1.2以下であり(図3参照)、
(D)機能層の凹凸構造側に位置する表層に対するフッ素元素濃度Efが、20atm%以上80atm%以下であることを特徴とする。
第2に、機能転写体(以下、第2の機能転写体ともいう)は、
(A)表面にナノ構造11を具備するキャリア10のナノ構造11上に少なくとも1以上の機能層12を予め備え、
(B)ナノ構造11の平均ピッチは1nm以上1500nm以下であり、
(D)機能層の凹凸構造側に位置する表層に対するフッ素元素濃度Efが、20atm%以上80atm%以下であり、
(E)ナノ構造11の凹部11aに空間が存在することを特徴とする。
これらの要件(A),(B),(C)及び(D)或いは、(A),(B),(D),及び(E)を同時に満たす部分を含むことにより、以下のような効果を奏する。機能転写体14を使用することで、所望の被処理体20の一部或いは全面に、高精度な機能層12を転写付与することができるため、積層体21の機能層S12は効果的にナノ構造特有の機能を発現する。そして、このナノ構造の表層のフッ素元素濃度が所定の範囲内にあることにより、物理的因子と化学的因子と、が組み合わさって、強い疎水性機能が発現される。この転写は、積層体21を使用するのに最適な場所にて行うことができる。ここで、このような効果を奏する骨子は、機能転写体14の機能層12のナノ構造11に対する配置精度及び厚み精度を高くすること、機能層12と被処理体20との接着強度を向上させること、そしてキャリア10を取り除く際の機能層12の破壊を抑制することである。なお、ナノ構造の「表層」とは、図1B、図1Cに示す機能転写体14であれば、機能層12のナノ構造11と対向する対向面側での厚みを持った層を意味し、図2Cに示す積層体21であれば、機能層12の表面側に位置する凸部の少なくとも一部領域を指す。
(I)上記(A)に示したように、キャリア10のナノ構造11上に予め機能層12が設けられることにより、ナノ構造11に対する機能層12の配置精度及び厚み精度が向上する。ここで、配置精度とは、ナノ構造11の形状或いは配列の精度を反映するように、機能層12がナノ構造11上に設けられることである。このため、詳しくは以下の<機能層の配置>にて説明するが、キャリア10のナノ構造11の凹部11aの底部付近、凸部11bの頂部上、又は、凹部11aの側面部にのみ機能層12を配置することも、ナノ構造11の凹部11a及び凸部11b上に被膜を形成するように機能層12を配置することも、ナノ構造11を充填し平坦化するように機能層12を配置することもできる。機能層12のナノ構造11に対する配置例によらず、機能層12をナノ構造11上に予め設けることで、機能層12の配置精度及び厚み精度を向上できる。すなわち、被処理体20上に転写される機能層12は、キャリア10のナノ構造11に対応した配列や形状を有するナノ構造を具備する。すなわち、積層体21の機能層S12の厚み精度及びナノ構造S11の精度を、機能転写体14として予め決定し担保することができる。よって、被処理体20にナノ構造特有の機能を精度高く付与することができる。
機能転写体14において、キャリア10のナノ構造11の凹部11aを充填するように機能層12を設ける場合を例にとり、機能層12を予め設けることの効果をより具体的に説明する。例えば、光ナノインプリント法であれば、モールドのナノ構造と被処理体とを液状の光硬化性樹脂(機能原料)を介して狭持し、その状態にて光硬化性樹脂を硬化させる。ここで、ナノ構造特有の機能を効果的に発現させるために、光硬化性樹脂の膜厚を薄くする場合もある。光硬化性樹脂の膜厚をサブミクロンオーダに薄くしていくと、光硬化性樹脂は、粘度や弾性率がバルク原料にて測定される値よりも大きな粘性流体として振る舞うため、モールドのナノ構造内部への充填性が低下し、充填不良を招く。すなわち、モールドのナノ構造の凹部内部にナノバブルを生成することがある。例えば、平均ピッチが300nmのナノ構造を具備するフッ素樹脂より構成されるキャリアを作製し、石英から成る被処理体上に光硬化性樹脂を膜厚がそれぞれ200nm、300nm、400nm、そして1500nmになるように成膜し、キャリアを、ラミネートロールを使用して貼り合わせた。続いて、光硬化性樹脂を、バルク体の硬化には十分な、100mW/cmの紫外光を2000mJ/cmの積算光量になるまで照射し硬化させ、キャリアを除去した。得られた光硬化性樹脂/石英からなる積層体のナノ構造面は、光硬化性樹脂の膜厚が1500nmの場合を除き白濁しており、原子間力顕微鏡観察から、ナノ構造の高さが低い部分や、破壊されている箇所が確認された。このように、キャリアのナノ構造の精度の反映性が低下する。更には、環境雰囲気を巻き込むため、充填不良部位の光硬化性樹脂の反応率が低下する傾向にある。また、光硬化性樹脂が溶剤を含む場合、光硬化性樹脂の反応率が低下する。反応率が低下することで、物理的強度が低下することから、キャリアを除去する際の光硬化性樹脂のナノ構造の破壊が生じる。
一方、本実施の形態においては、キャリア10のナノ構造11上に予め機能層12を設けているので、機能原料の物性変化を経ることなく塗工することが可能となるため、ナノ構造11内部への充填性が向上する。更に、機能原料を溶剤に溶解させ使用することも容易となる。溶剤を使用できることは、機能層12に対する不純物の添加を行わずに、塗工液とキャリア10のナノ構造11との界面における界面自由エネルギを調整できること、及び粘度を低下できることを意味する。これは、機能原料のキャリア10のナノ構造11に対する濡れ性を向上できることを意味し、そのため充填性が向上する。すなわち、機能層12のキャリア10のナノ構造11に対する配置精度及び膜厚精度を向上させることができるため、被処理体20上に精度の高いナノ構造を転写付与することが可能となる。
(II)また、上記(B)で示したように、ナノ構造11の平均ピッチが所定の範囲を満たすことにより、ナノ構造特有の機能を発揮すると共に、該機能を被処理体20上に精度高く転写形成することが可能となる。特に、キャリア10を取り除く際の機能層12の破壊を抑制することができる。
特に、上記(B)で示したナノ構造11の平均ピッチの下限値である1nmは、機能転写体14を製造する際の工業性から判断した。また、機能層12の配置精度を向上する観点からは、平均ピッチは10nm以上であることが好ましく、配置精度を担保し転写精度をより向上させる観点から、平均ピッチは30nm以上であることがより好ましく、強い疎水性機能のうち、特に物理的因子の効果をより強める観点から、50nm以上であることが最も好ましい。一方で、ナノ構造11の平均ピッチの上限値である1500nmは、一般的にナノ構造特有の機能を発現する範囲において、積層体21を得る際の、剥離エネルギ、及び機能層S12のナノ構造S11の欠陥率より判断した。平均ピッチの上限値について、より詳細に説明する。図4は、キャリアの平均ピッチと剥離エネルギとの関係を示すグラフである。図4は、キャリア10を機能層12より剥離除去する際の、機能層12の凸部に加わる剥離エネルギを計算した結果を示す。なお、計算に使用したモデルと計算仮定は以下の通りである。
・計算モデル
キャリア10のナノ構造11は複数の凹部11aを有し、これらの凹部11aが正六方配列をしている。凹部11aは、開口部の径が平均ピッチの0.9倍であり、開口部の深さ/開口部の径にて表現されるアスペクトが0.9である。また、凹部11aの形状は、円錐状とした。機能転写体14のナノ構造11のある領域の幅は250mmとし、0.01Nの力で剥離角10°にて剥離する。剥離エネルギは、キャリア10を剥離除去する際に解放されるギブスの自由エネルギとして[erg/cm]にて算出し、ナノ構造11の凹部11aの形状と密度を乗ずることで[J]へと変換した。
図4の横軸は、平均ピッチであり、ディメンジョンはナノメートルである。また、縦軸は、剥離エネルギであり、平均ピッチが12,000nmの場合を1として規格化した。図4より、平均ピッチが大きくなると、剥離エネルギが指数的に大きくなることがわかる。すなわち、キャリア10を剥離し積層体21を得る際の、機能層12のナノ構造11に加わる剥離力が、平均ピッチの増加に伴い、指数的に増加することを意味している。次に、実験より機能層12の弾性率をパラメータにし、キャリア10を剥離除去する際に生じる機能層12のナノ構造11の破壊を観察した。この時、機能層12を構成する物質の弾性率から、剥離エネルギによる弾性変形率は計算できる。この計算による変形率と、実験によるナノ構造11の破損する剥離力と、を照らし合わせ、機能転写体14が許容すべき剥離エネルギの上限値を算出したところ、図4の規格化後の数値で0.03程度であった。これは、平均ピッチに換算すると約2000nmである。理論の実験値に対するフィッティングズレは±10%程度であったことから、上限値を1500nmとして決定した。特に、機能層12の転写性を担保しつつ転写付与速度を向上させる点から、平均ピッチは1200nm以下であることがより好ましい。
これらの上限値と下限値にて限定される平均ピッチの範囲を満たすことで、被処理体20の所定範囲或いは全面に対し、ナノ構造特有の機能を発現する機能層12を精度高く付与することが可能となる。更に、このナノ構造S11の表層のフッ素元素濃度は所定の範囲内である。このため、化学的因子と物理的因子とが相乗して、強い疎水性機能を発現する。よって、着水、着氷、或いは着雪を抑制したり、又は、付着した水、雪、氷を除去しやすくなる。なお、平均ピッチの範囲のより好ましい範囲は、積層体21の用途に応じ、ターゲットとなる状態から適宜選択できる。この状態とは、水、雪、或いは氷が付着する瞬間をターゲットとするか、又は、付着した水、雪又は氷をターゲットとするかのみならず、水であれば、付着する瞬間の大きさをも含む。そして、積層体21を使用する環境も、平均ピッチを選択する重要な因子となる。
(III)また、上記(C)で示したように、機能層12の露出する面側の表面粗さ(Ra)と、ナノ構造11の凸部頂部位置と機能層12の露出する表面との距離(lor)と、の比率(Ra/lor)が1.2以下であることで機能層S12の転写率及び転写精度が向上する。この比率(Ra/lor)の上限値は、機能転写体14と被処理体20との接着強度及び、積層体21の機能層S12のナノ構造S11の転写精度から判断した。より具体的には、比率(Ra/lor)が1.2以下であることにより、まず、機能層12の表層の流動性が大きくなり、機能層12の膜厚精度を担保した状態にて、被処理体20と機能層12との接着面積を大きくし、接着強度を増加させることができる。次に、キャリア10を機能層12より剥離除去する際の、機能層S12のナノ構造S11に加わる剥離応力の均等性を向上させることができる。すなわち、集中応力を抑制できるため、機能層12の凝集破壊に代表される破壊を抑制できる。
比率(Ra/lor)の効果をより詳細に説明する。機能転写体14における機能層12の転写の骨子は、機能層12の膜厚精度を担保した状態において、(α)機能層12と被処理体20との界面接着強度を強くすること、及び、(β)キャリア10を除去する際の機能層12の破損を抑制すること、である。(α)機能層12と被処理体20との界面接着強度を向上させるためには、機能層12の表面と被処理体20との接着面積を大きくする必要がある。すなわち、機能層12と被処理体20との間に空気等の貼合時の雰囲気が閉じ込められることを抑制する必要がある。一方で、(β)キャリア10を剥離除去する際の機能層12の破損を抑制するためには、機能層12に対して加わる剥離応力を均等化する必要がある。ここで、接着面積が小さく、部分的に被処理体20と機能層12とが接着している場合、キャリア10を剥離する際の応力は、接着部と非接着部とでは異なる。換言すれば、剥離応力に集中点が発生し、機能層12の被処理体20からの離脱や機能層12の破壊が発生する。以上から、機能転写体14の機能層12の配置例によらず、機能層12と被処理体20との接着面積を良好に大きくすることが本質であると判断した。
ここで、現実的に、被処理体20及び機能転写体14の機能層12の露出する表面の粗さを、共に限りなく0にし、接着面積を大きくすることは困難である。すなわち、該接着面積を大きくするためには、機能層12と被処理体20との表面粗さから計算される真実接触面積Arを大きくする必要がある。ここで、真実接触面積Arは、被処理体20の表面粗さと機能転写体14の機能層12側の表面粗さにより決定される。すなわち、粗面間同士の接触を考慮する必要がある。ここで、等価半径rを(1/r)=(1/rf)+(1/rt)として定義し、等価ヤング率Eを(1/E)=(1/2)・{[(1−νf)/Ef]+[(1−νt)/Et]}として定義することで、粗面間同士の接触問題を、平面と粗面との間の接触問題へと簡素化できる。なお、rfは機能転写体14の機能層12面側の表面粗さの元となる微小突起を仮定した場合の、該微小突起の半径である。rtは、被処理体20の表面粗さの元となる微小突起を仮定した場合の、該微小突起の半径である。Ef、νf及びEt、νtは、それぞれ機能層12及び被処理体20のヤング率とポアソン比である。また、表面粗さは一般的に正規分布に従うことから、表面粗さの確率密度関数f(ξ)が(1/σ)・exp(−ξ/σ)に比例する、と仮定することができる。以上の仮定より、機能転写体14の機能層12の表面側と被処理体20との真実接触面積Arは、Ar∝(1/E)・(r/σ)1/2・Ncとして算出される。なお、σは二面間の合成自乗平均平方根粗さ、Ncは垂直荷重の期待値である。なお、本明細書においては、機能転写体14の機能層12側の表面粗さのばらつき、すなわち標準偏差の影響を限りなく小さくするために、表面粗さとして、算術平均粗さであるRaを採用している。ここで、ヤング率が1MPaのPDMS(ポリジメチルシロキサン)を機能層12に使用し、キャリア10のナノ構造11が平坦化されるように配置した。この状態で、キャリア10のナノ構造11の凸部頂部位置と機能層12の表面との距離である距離(lor)を変化させた。なお、機能層12の表面側の表面粗さ(Ra)のサンプル間のばらつきは、Raとして28nm〜33nmであった。被処理体20としては、表面粗さ(Ra)が1nm以下である4インチφのc面サファイアを使用した。上記真実接触面積Arは、機能転写体14の構成が同じであり、被処理体20が同じである場合、機能転写体14を被処理体20に貼り合わせる際の圧力といった条件を一定にすれば、距離(lor)によらず一定になるはずである。真実接触面積Arは実測ができないため、機能転写体14を被処理体20に貼り合わせた後に、機能転写体14を被処理体20の主面内方向に引きずり、その際の力Fを評価した。すなわち、既に説明したように、一般的には距離(lor)によらず、真実接触面積Arは一定の値となることから、該測定される力Fも一定となるはずである。ところが、距離(lor)を小さくしていき、比率(Ra/lor)が1.2を超えたあたりから急激に力Fが小さくなることが確認された。これは、比率(Ra/lor)が大きくなることで、真実接触面積Arが減少しているためと推定される。メカニズムは定かではないが、このような現象の生じる理由は、比率(Ra/lor)が大きくなる場合、機能層12の表層の流動性がナノオーダ特有の効果により束縛され、機能層12と被処理体20との界面の不陸を流動吸収することができないためと考えられる。
次に、機能転写体14のPDMSからなる機能層12の表面に粘着テープを貼り合わせ、キャリア10とPDMSと、を分離した。分離されたPDMSを光学顕微鏡と走査型電子顕微鏡にて観察した。比率(Ra/lor)がやはり1.2を超えたあたりから、機能層のナノ構造S11の破壊が特に多く観察されるようになった。これは、比率(Ra/lor)が大きい場合、キャリア10を剥離除去する際の、キャリア10のナノ構造11より加えられる機能層12に対する応力を考えた時に、該応力が局所的に集中する点が多く発生するために、機能層12が凝集破壊するためと推定される。
以上から、比率(Ra/lor)が1.2以下であることで、機能層12の表層の流動性を良好に保てることから、機能層12の膜厚精度を担保できる。この状態において、(α)機能層12と被処理体20との界面接着強度を強くすることができると共に、(β)キャリア10を除去する際の機能層12の破損を抑制することができる。このため、機能転写体14として機能層12の精度を予め決定し、この精度を反映した機能層S12を具備する積層体21を得ることができる。
特に、キャリア10の剥離速度を向上させることで増加する剥離応力(剥離時の力積)に対する機能層12の耐性を向上させ、転写精度をより向上させる観点から、比率(Ra/lor)は0.75以下であることが好ましい。また、機能層12の表層の流動性の束縛を良好に開放し、速度の大きな当接の場合であっても、機能層12と被処理体20との接着性を向上させる点から、比率(Ra/lor)は0.55以下であることが好ましい。更に、機能層12を転写付与する際の欠陥率をより低下させると共に、被処理体20の大きさや外形に対する影響を限りなく小さくする観点から比率(Ra/lor)は、0.30以下であることがより好ましい。特に、被処理体20と機能層12との接着する面積、そして接着力が安定化し、機能層12の転写性が大きく安定化する観点から、比率(Ra/lor)は0.25以下であることがより好ましく、0.10以下であることが最も好ましい。
なお、比率(Ra/lor)の下限値は、機能転写体14の量産性及び制御性の点から、0.002以上であることが好ましい。
機能層12側の表面粗さ(Ra)の絶対値は、真実接触面積Arを大きくし、機能層12と被処理体20との接着面積を大きくし、接着強度を向上させると共に、機能転写体14の機能層12側の表面粗さ(Ra)の制御性を工業的にも大きくする観点から、500nm以下であることが好ましく、300nm以下であることがより好ましい。また、真実接触面積Arを容易に大きくし、距離(lor)のマージンを大きくする観点から、表面粗さ(Ra)は150nm以下であることが好ましく、100nm以下であることがより好ましい。更に、表面粗さ(Ra)が50nm以下である場合、機能転写体14を被処理体20に当接する速度を大きくすることができるため好ましく、30nm以下であることが最も好ましい。なお、下限値は工業性の観点から1nm以上であることが好ましく、2nm以上であることが最も好ましい。なお、表面粗さ(Ra)及び、距離(lor)の定義及び測定方法については後述する。
上記説明した原理から、機能転写体14と被処理体20との関係を示すこともできる。すなわち、上記原理は、2つの対象が重なり合う時の真実接触面積Arを基礎にしていることから、比率(Ra/lor)は機能転写体14のみならず、機能転写体14と被処理体20との関係に拡張することもできる。換言すれば、機能転写体14の機能層12面側の表面粗さを(Raf)、そして被処理体20の表面粗さを(Rat)とした時に、合成自乗平均平方根粗さ(Ra´)を(Raf+Rat1/2として定義すれば、比率(Ra´/lor)が上記説明した比率(Ra/lor)の範囲を満たすことで、転写精度を高く保つことができる。なお、被処理体20の表面粗さ(Rat)は、機能転写体14の機能層12面側の表面粗さを(Raf)と同様の手法により測定される。
(IV)また、上記(D)で示したように、機能層のキャリアの凹凸構造側に位置する表層のフッ素元素濃度、換言すれば、積層体21のナノ構造S11の表層に含まれるフッ素元素の含有率は、20atm%以上80atm%以下である。このフッ素元素濃度は、以下の手順に従い測定されたものと定義する。
(キャリアの凹凸構造側に位置する機能層表層のフッ素元素濃度の測定方法)
1.単結晶サファイア基板を、ホットプレート上に配置し、単結晶サファイア基板の主面の温度が115℃〜125℃の範囲になるように加温する。単結晶サファイア基板は、下記仕様のものを使用する。
・面方位:c面(0001)、θ1:0°±0.2°、θ2:0°±0.2°
・サイズ:φ50mm、t0.37±0.05mm
・仕上げ:両面鏡面仕上げ(Ra≦1nm)
・TIR≦10μm、BOW≦0±10μm
2.機能転写体14にカバーフィルムのある場合は、取り除く。
3.機能転写体14の機能層12の露出する面を、1.の単結晶サファイア基板に対して貼り合わせる。この時、貼り合わせは、ラミネートロールを使用して行う。ラミネート条件は、ラミネートロールの表面温度が110℃〜118℃の範囲にあること、単結晶サファイア基板の直径部分に加わる線圧が7kN/m〜9kN/mの範囲内にあること、そしてラミネート速度が10mm/秒であることである。また、ラミネートロールは、その表面をタイプAのデュロメータにて測定した際のゴム硬度が28〜32であるものを使用する。なお、ラミネートロールを使用する以上当然であるが、機能転写体14と単結晶サファイア基板と、の界面への空気の巻き込みを抑制するために、ラミネートロールにより機能転写体14が単結晶サファイア基板に徐々に貼り合わせられるようにする。
4.単結晶サファイア基板側より紫外線を照射する。紫外線は、波長365nmのUV−LED光源より照射する。照射する紫外線の照度は80mW/cm、そして照射時間は25秒である。
5.4.の紫外線照射後、30秒以内に、機能転写体14及び単結晶サファイア基板から成る積層体を加温する。加温は、120℃〜125℃に加温された2枚の平板にて挟み込み行う。加温時間は、30秒である。
6.機能転写体14及び単結晶サファイア基板から成る積層体を冷却する。冷却は、エアブローにより行い、機能転写体14の機能層12とは反対側の面の温度及び、単結晶サファイア基板の温度が共に30℃以下になるまで行う。
7.機能転写体14のキャリア10を、機能層S12より剥離する。剥離は、単結晶サファイア基板の一端部より、他の端部に向けて徐々に剥離する。剥離速度は、10mm/秒〜25mm/秒である。
8.得られた機能層S12及び単結晶サファイア基板からなる積層体に対して、フッ素元素濃度を測定する。なお、工程7.の後に、サファイア基板上に機能層S12が良好に転写されない場合については、工程3.における貼り合わせの前に、サファイア基板の主面に対して接着剤を塗布すればよい。なお、接着剤は、紫外線硬化性のものを使用する。例えば、ダイキン工業社製のオプトダイン(登録商標)UVのUV−3200或いは、HENKEL社製のLOCTITE(登録商標)を使用できる。
9.測定は、機能層S12の転写されたサファイア基板において、機能層S12のナノ構造S11面側に対して行う。方法は、X線電子分光法(XPS法)である。使用するスロット型マスクは、1mm×2mmとする。XPS法の条件は下記の通りである。測定結果から、フッ素元素の濃度を[atm%]として算出し、これを、キャリアの凹凸構造側に位置する機能層表層のフッ素元素濃度として定義する。
使用機器 ;サーモフィッシャーESCALAB250
励起源 ;mono.AlKα 15kV×10mA
分析サイズ;約1mm(形状は楕円)
取込領域
Survey scan;0〜1, 100eV
Narrow scan;F 1s,C 1s,O 1s,N 1s
Pass energy
Survey scan; 100eV
Narrow scan; 20eV
上記の通り定義される機能転写体における、キャリアの凹凸構造側に位置する機能層表層のフッ素元素濃度を、本明細書では、フッ素元素濃度Efと記載する。フッ素元素濃度Efは、機能層S12のナノ構造S11の表層フッ素元素濃度でもある。ここで、強い疎水性機能を発現するための化学的因子としては、ナノ構造S11の表層を考慮すればよい。換言すれば、ナノ構造S11の表面のみが疎水性であるのではなく、表層が疎水性である必要がある。また、機能層S12全体が疎水性の物質により構成されなくともよい。重要なのは、少なくともナノ構造S11の表層である。ここで、強い疎水性機能を発現するための表層は、ナノ構造S11の内部の状態がナノ構造S11の表面に対して影響する状態を考慮して、ナノ構造S11の表面からの深さとして計算可能であり、約5nmとして導出できる。即ち、少なくとも考えるべき表層の厚みは、数nmである。上記XPS法においては、X線の浸入長が数nmから十数nmであり、ナノ構造S11の表層の物性を把握するのに適している。
フッ素元素濃度Efが、上記範囲を満たすことにより、既に説明した要件(A)〜(C)により精度高く転写付与されたナノ構造S11に、化学的な疎水性機能を付与することが出来る。これにより、ナノ構造S11という物理的因子と、フッ素元素濃度Efという化学的因子が組み合わさることとなり、強い疎水性機能を発現することが可能となる。そして、繰り返しになるが、着水、着氷、或いは着雪を抑制したり、又は、付着した水、雪、氷を除去しやすくなる効果を奏する。フッ素元素濃度Efは、積層体21を使用する用途により適宜最適値が存在するため、特には限定されないが、物理的な因子、換言すればナノ構造の選択肢を広げる観点から、25atm%以上であることが好ましい。ここで、ナノ構造の選択肢を広げることの効果は、疎水性機能のみならず、例えば、光学的な有効媒質近似機能や光回折機能を別途更に選択できることを意味することである。特に、付着してしまった水膜の除去、着雪或いは着氷の抑制に対する効果が強まる傾向にあることから、フッ素元素濃度Efは、30atm%以上であることがより好ましく、35atm%以上であることが最も好ましい。一方で、ナノ構造S11の物理的な強さを向上させる観点から、フッ素元素濃度Efは、75atm%以下であることが好ましい。そして、上記説明した(Ra/lor)の効果における、機能層表層の流動性の促進をより促し、転写性をより良好に保つ観点から、70atm%以下であることが最も好ましい。
また、上記(E)で示したように、ナノ構造11の凹部11aに空間が存在することで、機能転写体を製造する際の欠損率が低減する。機能転写体は、既に説明してきたように、多くの用途に展開が可能な技術であることから、製造量が大きくなることが容易に想定される。即ち、少しの欠損率であっても、発生する不良品(部位)は大きくなる。このことから、欠損率を低減できることは、工業的な理由のみならず、環境面に対しても優位である。
ここで、凹部11aに空間が存在するとは、凹部11aの内部が機能層12で完全に充填されておらず、ナノ構造11の上に機能層12を設けた後であっても、凹部11aの内部に、例えば、空気のような気体が存在する空隙が残っていることを意味している。
例えば、「凹部11aに空間が存在する」状態には、以下のような場合が含まれる。
(i)凹部11aに機能層12が存在せず、凸部11bの頂部にのみ存在する(図13B参照)。
(ii)凹部11aの内部の一部にのみ機能層12が充填されており、上部に充填残りがある(図13A参照)。
(iii)凹部11aの内部全体に機能層12が充填されているが、機能層12と、凹部11aを規定するキャリア10の表面と、の間に隙間がある。
(iv)凹部11aの内部全体に機能層12充填された状態(図13E等参照)であるが、機能層12の内部に空間が存在する。
(iv−1)機能層12の内部にエアボイドのようなものが点在する。
(iv−2)機能層12が複数の層からなり、ある層と他の層との間に隙間がある。
(v)凹部11aを規定するキャリア10の側面部にのみ機能層12を配置する。
(vi)凹部11a及び凸部11bの両方を含むナノ構造11の表面に皮膜として機能層12を形成する。
上記(i)又は(ii)の場合、機能層S12は、被処理体の主面内において、網目状構造を形成することも、又は、互いに離型したドット状体として機能層S12を構成することも出来る。即ち、被処理体20に露出する面を残すことが出来る。
上記(iii)又は(iv)の場合、キャリア10のナノ構造の形状や配列以上の情報を機能に付加させることが出来る。更に具体的に説明すると、例えば、キャリア10のナノ構造11の凸部頂部上にのみ機能層12を設けた場合、ナノ構造11の凸部頂部の平面情報を被処理体20に転写付与できる。また、例えば、キャリア10のナノ構造11の凹部11aに空間を設け且つナノ構造11を平坦化するように、機能層12を設けた場合、ナノ構造11の配列情報を被処理体20に転写付与すると共に、転写される機能層S12のナノ構造S11の高さ情報を任意の範囲で調整することができる。また、例えば、キャリア10のナノ構造11を被覆するような第1の機能層を設け、第2の機能層を第1の機能層が平坦化するように且つ第1の機能層の凹部に空間があるように配置した場合、キャリア10のナノ構造11の配列情報及び形状情報を被処理体20に転写付与すると共に、機能層S12のナノ構造S11の内部に空間を設けることができる。これにより、例えば、キャリア10のナノ構造11以上に大きな空隙率を造り、疎水性機能を物理的因子からより高めることが出来る。
以上説明したように、第1の機能転写体は、上記要件(A),(B),(C)及び(D)を同時に満たす部分を含む。これにより、所望の形状、大きさ、或いは材質を有する被処理体20の、所定位置或いは全面に、被処理体20の使用に好適な場所において、精度高く疎水性機能を発現する機能層S12を転写付与する、すなわち積層体21を得ることができる。そして、この機能層12は、化学的及び物理的因子が組み合わさっており、強い疎水性機能を発現できる。よって、着水、着氷、或いは着雪を抑制したり、又は、付着した水、雪、氷を除去しやすくなる効果を奏する。
また、第2の機能転写体は、上記要件(A),(B),(D),及び(E)を同時に満たす部分を含む。これにより、第1の機能転写体の効果に加え、機能転写体製造時の欠損率が低下し、環境対応性が向上する。
<機能転写体のより好ましい要件(F),(G),(H)>
更に、上述した第1の機能転写体及び第2の機能転写体においては、下記要件(F)を更に同時に満たすことで、機能層12の転写性がより向上すると共に、機能転写体14を輸送する場合やロールアップした場合であっても、キャリア10のナノ構造11上に設けられた機能層12の精度を保持することが可能となる。
(F)機能転写体14のキャリア10とは反対側の露出面が温度20℃で、且つ、遮光下にて非液体状態である。
要件(F)を満たすことで、安定な機能転写体14を得ることができる。ここで「安定」とは、例えば、機能転写体14を第1のラインにおいてロールアップした場合や、第1のラインから第2のラインへと輸送した場合に、機能転写体14の機能層12の膜厚分布が劇的に悪化しないことを意味する。すなわち、機能層12の膜厚分布による機能低下を生じづらくなる。すなわち、機能転写体14を第1のラインから第2のラインへと、輸送した場合であっても、輸送時の衝撃や使用時の取り扱いによる機能層12の配置精度及び膜厚精度を維持することができるため、積層体21の使用に最適な場所において、高精度な機能層S12を被処理体20に転写付与することが可能となる。更に、被処理体20の形状が曲面を含む場合や、被処理体20の所定位置にのみ機能層12を転写付与する際の精度も向上する。これは、液体の機能層を使用した場合の、機能層12の流動による膜厚変動の観点から考えて、非常に有益である。
また、例えば、加温やエネルギ線の照射により非液体状態の機能層12の表層がより流動性を帯びることで、機能層12全体の膜厚変動を抑制しつつ、被処理体20への接着面積を容易に大きくし、被処理体20への接着強度より強くすることが可能となる。キャリア10を除去する前の段階において、加温、冷却又はエネルギ線を照射することにより、流動性を帯びた機能層12表面又は全体を硬化或いは固化させることで、該接着性は固定化されると共に、機能層12が形状を保持するため、この状態にてキャリア10を除去することで、被処理体20上に機能層S12を精度高く転写形成することができる。また、例えば、機能層12の表面又は全体がゲル状の場合、被処理体20に対し機能転写体14を貼合した後に、加温やエネルギ線照射により機能層12を硬化又は固化させることで、被処理体20との接着性を固定化し、且つ機能層12の形状を保持することができる。この状態にて、キャリア10を除去することで、被処理体20上に精度高く機能層S12を付与することができる。また、例えば、機能層12の表面又は全体が粘着状体の場合、被処理体20に貼合した後に、必要であれば加温やエネルギ線を照射し、キャリア10を除去することで、被処理体20上に機能層S12を精度高く付与することができる。なお、非液体状態については後述する。
更に、下記要件(G)をも同時に満たすことにより、機能転写体14を被処理体20に貼り合わせる際の、機能層12と被処理体20との接着性を保持すると共に、機能転写体14の物理的安定性が向上するため、積層体21の使用に好適な場所まで機能転写体14を搬送した場合であっても、機能転写体14の機能層12の精度を反映させ、被処理体20に機能層S12を転写付与することができる。
(G)機能転写体14のキャリア10とは反対側の露出面が温度20℃で、且つ、遮光下にて非液体状態であると共に、20℃超300℃以下の温度範囲の中でタック性を示すか、又は、タック性が増加する。
この場合、機能転写体14の機能層12は未使用時においては、その表面が非液体状態であることから、機能層12のナノ構造11に対する配置精度及び膜厚精度は保持される。ここで、機能転写体14を被処理体20に直接当接する際に、所定の温度を加えることで、機能層12の表面はタック性、すなわち粘着性を発現するか、或いは、その粘着性が増加する。すなわち、機能層12のナノ構造11に対する配置精度は保持されると共に、機能層12全体の流動性を抑制しつつ、上記要件(C)にて説明した、機能層12と被処理体20の界面の流動性を向上させることができるため、機能層12と被処理体20との接着面積を大きくし、接着強度を向上させることができる。よって、被処理体20に対する機能層S12の転写性が向上する。
また、本実施の形態に係る機能転写体14を用いた被処理体20への機能付与方法、すなわち機能層12の転写方法は、図2Bに示すように、(H)機能層12を被処理体20の一主面上に直接当接させ、その後、キャリア10を機能層12から除去することを特徴とする。
要件(H)を満たすことにより、以下のような効果を奏する。機能転写体14の機能層12を、被処理体20の一主面上に直接当接する工程を含むことで、機能層12を被処理体20に転写する際に機能を有さない接着剤といった不純物の使用を避けることができる。接着剤を使用する場合、接着剤と機能層12及び接着剤と被処理体20の接着力を高め、且つ、接着剤とキャリア10の接着力を低くする必要がある。このため、最適な接着剤がない場合、キャリア10及び機能層12の物性を変化させる必要が生じ、所望の機能物性が得られないことがある。また、接着剤を使用し機能転写体14を被処理体20に貼合する際の、接着剤の膜厚分布やエアボイドの発生は、積層体21の機能層S12の表面位置分布及び機能不全部位の発生へと直結するため、機能低下を引き起こす。すなわち、上記要件(H)で示したように、機能転写体14の機能層12を、被処理体20の一主面上に直接当接する工程を含むことで、機能層12が有する機能を、被処理体20上に直接転写形成することが可能となり、積層体21の機能が向上する。
上述のように、機能転写体14の機能層12を被処理体20の一主面上に直接当接する工程を経ることで、被処理体20に対し機能層12を転写形成する場合、機能層12と被処理体20と、の接着強度を高めると共に、キャリア10を取り除く際の機能層12のナノ構造の破壊を抑制する必要がある。これらは、既に説明した比率(Ra/lor)により担保される。すなわち、比率(Ra/lor)が所定の値以下であることにより、機能層12と被処理体20と、の界面接着強度を向上させると共に、機能層12の破損を抑制できる。よって、転写精度が向上する。
以上説明したように、本実施の形態に係る機能転写体14は、上記要件(A),(B),(C)及び(D)、又は、上記要件(A),(B),(D)及び(E)を同時に満たす機能転写体14である。また、より好ましい態様は、上記要件(A),(B),(C),(D)及び(F)、又は要件(A),(B),(C),(D),(F)及び(G)を同時に満たす機能転写体14、又は、上記要件(A),(B),(D),(E)及び(F)、又は、要件(A),(B),(D)、(E),(F)及び(G)を同時に満たす機能転写体14である。このような機能転写体14であることで、精度の高い機能層12を、所望の被処理体20の所定位置或いは全面に、積層体21の使用に好適な場所にて、転写付与することができる。このような効果が発現される理由は、既に説明した比率(Ra/lor)及び平均ピッチの範囲を満たすことによる、機能層12の表層の流動性の束縛を開放することに伴う接着面積の増大と、キャリア10の剥離除去時の機能層12に加わる応力の均等化に伴う機能層12の破壊の抑制ができるためである。更に、要件(F)或いは(G)を満たすことで、機能層12の精度の維持性が向上するため、第1のラインから第2のラインへと搬送した場合であっても、機能の精度を維持することができる。
<表面粗さ(Ra)、距離(lor)及び平均ピッチの定義及び測定方法>
次に機能転写体14の定義に使用した表面粗さ(Ra)、距離(lor)及び平均ピッチの定義と測定方法について説明する。なお、以下に説明する表面粗さ(Ra)、距離(lor)、そして平均ピッチの測定においては、表面粗さ(Ra)をまず測定し、次に距離(lor)を測定し、最後に平均ピッチを測定する。
・表面粗さ(Ra)
表面粗さ(Ra)は、機能転写体14の機能層12側の算術平均粗さであり、本明細書においては、そのディメンジョンはナノメートルである。すなわち、機能層12がキャリア10のナノ構造11を完全に充填していない場合であっても、定義される値である。表面粗さ(Ra)は、原子間力顕微鏡(Atomic Force Microscope/AFM)を使用し測定された値として定義する。特に本明細書においては、下記装置及び下記条件にて測定した場合の表面粗さを採用する。
・株式会社キーエンス社製 Nanoscale Hybrid Microscope VN−8000
・測定範囲: 200μm(比率1:1)
・サンプリング周波数: 0.51Hz
なお、表面粗さ(Ra)は、機能転写体14に保護層13のある場合は、保護層13を剥離した後の機能層12の露出する表面側に対して測定される。
また、機能層12側の表面に異物が付着していた場合であって、該異物ごとAFMにより走査した場合、表面粗さ(Ra)は大きくなる。このため、測定する環境は、クラス1000以下のクリーンルームである。また、上記装置VN−8000は光学顕微鏡を付帯している。このため、光学顕微鏡観察により異物や傷の観察された場合、該異物や傷を避けるようにプローブの下降位置を設定する。また、測定前にはイオナイザ等による除電環境下におけるエアブロー洗浄をする。更に、静電気による走査プローブの跳ね上がりを抑制するために、測定環境の湿度は、40%〜50%の範囲である。
・距離(lor)
ナノ構造11の凸部頂部位置と機能層12の露出する表面位置との距離(lor)は、走査型電子顕微鏡(Scanning Electron Microscope/SEM)により測定される。SEMによる観察は、機能転写体の断面に対して行う。SEMを使用した測定においては、ナノ構造11の複数の凸部11b又は複数の凹部11aが、観察像内に鮮明に10以上20以下観察される倍率にて測定し、同観察像より距離(lor)を求める。測定対象となるサンプルは、上記表面粗さ(Ra)を求めるために、AFM測定にて使用したサンプルと略同じ位置を測定する。なお、SEMとしては、日立超高分解能電界放出形走査電子顕微鏡SU8010(株式会社日立ハイテクノロジーズ社製)を使用する。また、測定における加速電圧は、サンプルへのチャージアップやサンプルの焼けから適宜一般的に設定できるが1.0kVが推奨である。
また、20μm間隔毎に撮像を行い、5つの観察像を得る。各観察像に対してまず、ナノ構造11の凸部頂部位置を決定し、次に、距離(lor)を任意に5つ測定する。すなわち、計25点の距離(lor)をデータとして得る。この計25点の距離(lor)の相加平均値を本明細書の距離(lor)と定義する。ナノ構造11の凸部頂部位置は、撮像内に観察される全ての凸部11bの頂部の頂点の平均位置として決定される。また、距離(lor)は、凸部頂部位置と機能層12の露出する表面との最短距離の相加平均値であり、既に説明したように最終的に25点の相加平均値として計算される。以上から、距離(lor)は、例えば、機能層12がナノ構造11の凹部11aを完全に充填している場合のみならず、ナノ構造11の凸部11b頂部上にのみ機能層12が配置される場合や、ナノ構造11の凹部11a内にのみ機能層が配置される場合に対しても定義できる値である。なお、走査型電子顕微鏡により観察される像に関し、機能層とキャリアと、の明暗の差が低く、距離(lor)を正確に読み取れない場合がある。このような場合においては、上記観察手法において、使用する装置を、透過型電子顕微鏡(TEM)にすればよい。
・平均ピッチ
ナノ構造11の平均ピッチは、上記距離(lor)の測定に使用したSEMを使用し測定される。SEMによる観察は、機能転写体14のキャリア10のナノ構造11の表面に対して行う。このため、ナノ構造11の平均ピッチの測定は、機能層12を除去しナノ構造11を露出させたキャリア10か、或いは、機能転写体14を製造する前のキャリア10に対して行う。機能層12の除去は、機能層12を被処理体20に転写すること、或いは機能層12のみを溶解により除去することで行う。SEMを使用した測定においては、ナノ構造11の複数の凸部11b又は複数の凹部11aが、SEMの観察像内に鮮明に100以上200以下観察される倍率にて測定し、同観察像より平均ピッチを求める。測定対象となるサンプルは、上記表面粗さ(Ra)を求めるために、AFM測定にて使用したサンプルと略同じ位置を測定する。なお、SEMとしては、日立超高分解能電界放出形走査電子顕微鏡SU8010(株式会社日立ハイテクノロジーズ社製)を使用する。また、測定における加速電圧は、サンプルへのチャージアップやサンプルの焼けから適宜一般的に設定できるが1.0kVが推奨である。
また、20μm間隔毎に撮像を行い、5つの観察像を得る。各観察像に対してピッチを任意に10ずつ測定する。すなわち、計50点のピッチをデータとして得る。この計50点のピッチの相加平均値を本明細書の平均ピッチと定義する。ピッチとは、撮像内に複数の独立した凸部11bが観察される場合は、凸部11bの頂部の中央部同士の最短距離として定義する。一方で、撮像内に複数の独立した凹部11aが観察される場合は、凹部11aの開口部の中央部同士の最短距離として定義する。換言すれば、キャリア10のナノ構造11がドット状であれば、最近接するドット間の凸部頂部の中央部同士の距離がピッチであり、ホール状であれば、最近接するホール間の凹部開口部の中央部同士の距離がピッチであり、ラインアンドスペース状であれば、最近接するラインの凸部頂部の中央部同士の距離がピッチである。なお、ラインアンドスペース状の場合、ラインの幅方向の中央部が頂部中央部である。なお、格子状のようにライン或いはスペースとドット状凸部或いはホール状凹部が混在している場合、ドット状凸部或いはホール状凹部に対してピッチを測定する。
<平均アスペクト(A)>
次に、キャリア10のナノ構造11の立体方向の好ましい範囲について、平均アスペクトに注目して説明する。平均アスペクト(A)とは、キャリア10のナノ構造11の凸部底部の平均径を平均高さにて除した値、或いは、凹部開口部の平均径を平均深さにて除した値である。凸部底部の平均径或いは凹部開口部の平均径は、平均ピッチを求める際の観察から同時に計測する。一方で、平均高さ或いは平均深さは、距離(lor)を求める際の観察から同時に計測する。
凸部底部の径は、平均ピッチを求める際の観察像に観察される、複数の独立した凸部11bの輪郭に対する外接円の直径として定義する。ここで、平均ピッチと同様に50点の計測データを採取し、これらの相加平均値を本明細書の凸部底部の平均径とする。一方で、凹部開口部の径は、平均ピッチを求める際の観察像に観察される、複数の独立した凹部11aの開口部の内接円の直径として定義する。ここで、平均ピッチと同様に50点の計測データを採取し、これらの相加平均値を本明細書の凹部開口部の平均径とする。なお、ラインアンドスペースの場合は、ラインの幅が上記凸部底部の径に相当し、スペースが上記凹部開口部の径に相当する。また、格子状のように、ライン或いはスペースとドット状凸部或いはホール状凹部が混在している場合、ドット状凸部或いはホール状凹部に対して凸部底部の或いは凹部開口部の径を測定する。
高さは、距離(lor)を求める際の観察像に観察される、複数の独立した凸部11bの高さとして定義する。ここで、距離(lor)と同様に25点の計測データを採取し、これらの相加平均値を本明細書の平均高さとする。一方で、深さは、距離(lor)を求める際の観察像に観察される、複数の独立した凹部11aの深さとして定義する。ここで、距離(lor)と同様に25点の計測データを採取し、これらの相加平均値を本明細書の平均深さとする。なお、ラインアンドスペースの場合は、ラインが上記凸部に相当し、スペースが上記凹部に相当する。また、格子状のように、ライン或いはスペースとドット状凸部或いはホール状凹部が混在している場合、ドット状凸部或いはホール状凹部に対して高さ或いは深さを測定する。
平均アスペクト(A)は、凸部底部の平均径/平均高さ、或いは、凹部開口部の平均径/平均深さである。平均アスペクト(A)は、キャリア10を機能層12より剥離除去する際の、機能層12に加わる剥離エネルギ、より具体的には剥離エネルギを構成する一要素であるモーメントエネルギに影響を与える。特に、剥離速度を大きくした場合、積層体21の機能層S12の凸部に加わる力積が大きくなることから、このモーメントエネルギは大きくなる。剥離エネルギの上限値は、平均ピッチの上限値を決定する際に、理論と実験の対応をはかり求めている。ここで、現実的に有効な剥離速度の上限値を5m/min.として、剥離エネルギの上限値に達する時の平均アスペクト(A)を算出した。この点から、被処理体20に転写付与される機能層S12の凸部の破損を抑制するために、平均アスペクト(A)は5以下が好ましいことがわかった。また、キャリア10を剥離除去する際の加速度による力を加味した場合、平均アスペクト(A)は3.5以下であることが好ましい。特に、被処理体20の形状が平板状だけでなく、レンズ状や円柱、円錐状といった場合であっても、剥離速度を大きくした場合であっても転写精度を向上させるために、アスペクトは2.5以下であることが好ましい。なお、下限値は、機能層12の配置精度を向上させる観点から0.1以上である。特に、疎水性機能に関し、物理的因子の項を大きくする、より具体的には、ナノ構造の空隙率を向上させる観点から、0.3以上であることがより好ましく、0.5以上であることが最も好ましい。
<機能転写体に含まれる必須要件を満たす領域>
本実施の形態に係る機能転写体14は、要件(A),(B),(C),及び(D)或いは要件(A),(B),(D),及び(E)を同時に満たす部位を含めばよい。既に説明した定義に沿い、各要件を求めた時に、要件(A),(B),(C),及び(D)或いは要件(A),(B),(D),及び(E)を同時に満たす部位が含まれれば、本実施の形態に係る機能転写体14である。すなわち、上記要件を満たさない部分が散在していても、上記要件をみたす部分が局所的に設けられていてもよい。上記要件を満たす部分と満たさない部分との配置関係は特に限定されず、一方が他方に挟まれていても、一方が他方に囲まれていても、或いは、互いに周期的に配置されてもよい。
<キャリアの凹凸構造の配列>
次に、キャリア10のナノ構造11のより好ましい範囲について、機能層12の配置精度と転写性の観点から説明する。キャリア10のナノ構造11の配列は、既に説明した平均ピッチを満たせば特に限定されず、例えば、非回転対象な配列或いは回転対象な配列を採用できる。非回転対象な配列とは、規則性の低い配列や、規則性の高い集合が散在している配列である。回転対象な配列としては、例えば2回対象であれば、互いに平行なラインが複数配置される配列(ラインアンドスペース配列)、正四方配列や正六方配列を一軸方向に延伸した配列、正四方配列や正六方配列を一軸方向に周期的に(例えば、サイン波に乗じて)変調を加えた配列、複数のラインの間隔が周期的に(例えば、サイン波に乗じて)変調された配列、正四方配列や正六方配列を互いに垂直な二軸方向にそれぞれの軸方向に異なる延伸倍率にて延伸した配列、正四方配列や正六方配列を互いに垂直な二軸方向にそれぞれの軸方向に異なる変調周期にて変調した配列等が挙げられる。また、4回以上の対称性を有する配列としては、正四方配列や正六方配列、正四方配列や正六方配列を互いに垂直な二軸方向に同様の周期にて(例えばサイン波に乗じて)変調した配列、正四方配列や正六方配列をある軸に対して60°刻みの軸方向に同様の周期にて(例えばサイン波に乗じて)変調した配列等が挙げられる。なお、上記変調とは、ナノ構造11のピッチが一定ではなく、所定の周期にて変化することを意味する。すなわち、ある周期にてナノ構造11のピッチが増減を繰り返すような配列である。上記変調のあるナノ構造を有するキャリア10を使用することで、被処理体20に転写付与されたナノ構造S11の発現する疎水機能を増強させたり、又、更なるナノ構造特有の機能を追加することが出来る。変調のあることで、疎水性の機能は増加する。これは、ナノスケールの疎水性論の他に、ナノスケールの集合したオーダでの疎水性論も加わるためである。実体としては異なるが、フラクタルによる撥水・撥油の思想に近いものである。また、例えば、ナノ構造S11の平均ピッチが10nm〜300nm程度であり、ナノ構造S11が六方配列する複数のドット状体から構成される場合、積層体21は、疎水性機能のみならず、低反射体としても機能する。ここに、上記例示した変調が加わることで、低反射体としての透明性は維持しつつ、光回折性を付加することが可能となる
特に、以下に説明する凹凸構造Aを含むことで、機能層12の配置精度と転写性が共により向上する。このため、積層体21の機能層S12の精度が飛躍的に向上する。
既に説明したように、積層体21の機能層S12の精度を向上させるためには、機能転写体14における機能層12の配置精度を向上させると共に、機能層12と被処理体20との接着強度を向上させ、且つ、キャリア10を除去する際の機能層S12の破壊を抑制する必要がある。ここで、既に説明した平均ピッチ及び比率(Ra/lor)を満たすことで、機能層12の精度の維持を向上させ、前述した接着強度と機能層の破壊を抑制できる。以下に説明する凹凸構造Aをナノ構造11が含むことで、機能層12の配置精度をより向上させると共に、キャリア10を除去する際の機能層S12の破壊をより抑制することができる。
<凹凸構造A>
以下、凹凸構造Aを含むナノ構造11について説明する。凹凸構造Aは、下記式(1)〜式(4)を同時に満たす凹凸構造である。
・機能層の配置からみた場合
機能転写体14を製造する際には、キャリア10のナノ構造11に対して機能層12を配置する工程を必ず経る。ここで、機能層12の配置方法は、蒸着やスパッタに代表されるドライプロセス、及び、機能層12の塗工液(以下、機能塗工液、という)を使用するウェットプロセスのいずれも採用できる。特に、機能層12の配置精度と配置多様性の点から、ウェットプロセスを含むことが好ましい。ここで、ウェットプロセスは、機能塗工液にキャリア10を浸漬させる方法と、機能塗工液をキャリア10に塗工する方法が挙げられる。特に、機能層12の配置精度、配置の多様性、そして工業性の点から機能塗工液を塗工する方法を含むことが好ましい。
下記式(1)〜式(4)を同時に満たすことで、機能塗工液の流れの均等性が向上するため、機能層12の配置精度が向上する。より具体的に説明する。機能塗工液をナノ構造11に塗工し、機能層12をナノ構造11に対して精度高く配置する骨子は、マクロに観た塗工性を向上させることと、ミクロに観た塗工性を向上させることである。ここで、マクロに観た塗工性とは、ナノ構造11の凸部11b及び凹部11aが数百以上の集合をなす状態として塗工現象を論じることである。換言すれば、機能塗工液は、ナノ構造11の集合による表面自由エネルギを認識する状態である。一方で、ミクロに観た塗工性とは、ナノ構造11の凸部11b及び凹部11aが1つから数十集まった状態として塗工現象を論じることである。換言すれば、機能塗工液は、ナノ構造11を構成する1つの凸部11b或いは1つの凹部11aを認識する状態である。
マクロに観た塗工性を向上させるためには、機能塗工液よりみた、ナノ構造11の集合により作られる表面自由エネルギの均等性を向上させる必要がある。下記式(1)は、ナノ構造11の配列、特に対称性を制限する式である。より具体的には、機能塗工液からみたナノ構造11の配列の一次元情報を表すのが比率(Mcv/Mcc)であり、二次元情報を表すのが比率(Sh/Scm)である。すなわち、機能塗工液からみた一次元情報の広がりが二次元情報であり、この一次元情報と二次元情報が所定の関係を満たす、すなわち配列の限定されることを意味している。式(1)を満たすことで、ナノ構造11の対称性が向上し、機能塗工液からみたナノ構造11の表面自由エネルギの均等性が向上する。
ミクロに観た塗工性を向上させるためには、ナノ構造11の1つの凸部11bと凹部11aに対する機能塗工液の塗工性を向上させる必要がある。下記式(2)〜式(4)を同時に満たすことで、ナノ構造11の凸部11bの頂部の外縁部(以下、凸部頂部外縁部ともいう)において機能塗工液の流れが乱れることを抑制できる。より具体的には、機能塗工液とナノ構造11との界面自由エネルギ、機能塗工液の粘度、及びナノ構造11の凸部頂部外縁部における機能塗工液の流動性により、ミクロな塗工性が決定される。ここで、機能層12のナノ構造11に対する配置は、機能塗工液とナノ構造11との界面自由エネルギ、及び機能塗工液の粘度により制御できる。すなわち、該界面自由エネルギと該粘度とが任意の範囲で変わった場合であっても、ナノ構造11の凸部頂部外縁部における機能塗工液の流動性を向上させることができる。式(2)〜(4)を同時に満たすことで、特に、ナノ構造11の凸部頂部外縁部における機能塗工液に対するアンカー効果やピン止め効果を効果的に抑制することができるため、該流動性が担保され、機能層12の配置精度が向上する。
以上より、下記式(1)〜式(4)を同時に満たすことで、マクロに観た塗工性とミクロに観た塗工性の双方を同時に向上できるため、機能塗工液の成膜性が向上し、機能層12のナノ構造11に対する配置精度及び膜厚精度が向上する。
・転写性からみた場合
積層体21を得るためには、キャリア10を機能層12より除去する必要がある。このキャリア10の除去は、キャリア10の溶解除去や剥離除去を採用できる。特に、所望の被処理体20に対して、積層体21の使用に最適な場所において、機能転写体14を使用できる、という効果を高める点から、キャリア10を剥離除去する方法が好ましい。ここで、キャリア10を機能層12より剥離する、という物理現象を経ることから、必ず、機能層12に対する剥離応力が働く。すなわち、この剥離応力により機能層12が破壊されることを抑制する必要がある。機能層12の破壊は、機能層12のナノ構造11が破壊される局所的破壊、機能層12の膜が破壊される全体破壊、そして機能層12と被処理体20の界面が破壊される界面剥離がある。ここで、既に説明した比率(Ra/lor)による効果により、真実接触面積が大きくなることから、機能層12に対する剥離応力を均等化することができるため、局所的破壊、全体破壊、及び界面剥離を抑制できる。以下に説明する式(1)〜式(4)を同時に満たすことで、局所的破壊と全体破壊をより効果的に抑制できる。なお、これらの破壊は機能層12の凝集破壊であることが多いため、以下の説明においては凝集破壊という文言を代表して使用する。
キャリア10を機能層12より剥離する際に生じる機能層12の凝集破壊を抑制するためには、機能層12に加わる剥離応力の絶対値を小さくすることと、機能層12に加わる剥離応力を均等化することが重要である。下記式(2)〜式(4)を同時に満たすことで、剥離応力の絶対値を小さくすることができる。これは、キャリア10のナノ構造11の凸部頂部外縁部より機能層12に加えられる応力を低減できるためである。一方で、下記式(1)を満たすことで、機能層12に対する剥離応力の均等性を向上させることができる。すなわち、局所的にみた集中応力を抑制できる。これは、下記式(1)を満たすナノ構造11の配列は、その表面自由エネルギの均等性が高い配列であることから、キャリア10を剥離する際に機能層12に加わる応力も均等化するためである。
・凹凸構造A
以上から、下記式(1)〜式(4)を同時に満たす凹凸構造Aをキャリア10が含むことで、機能層12に加わる剥離応力の絶対値を小さくすると共に、機能層12に加わる剥離応力を均等化することができ、転写性が向上する。
よって、下記式(1)〜式(4)を同時に満たすことで、機能層12のナノ構造11に対する配置精度及び膜厚精度が向上すると共に、機能層12の被処理体20に対する転写性を向上させることができる。
式(1)
Figure 2015112781
式(2)
0.23<(Sh/Scm)≦0.99
式(3)
0.01≦(Mcv/Mcc)<1.0
式(4)
0.1≦平均アスペクト(A)≦5
図5は、上記式(1)〜式(4)にて制限されるキャリア10の凹凸構造Aの第1〜第4の条件を説明するためのグラフである。図5中、横軸に比率(Sh/Scm)を、縦軸に比率(Mcv/Mcc)をとっている。図5に示す曲線aは、(Mcv/Mcc)=√(1.1/(Sh/Scm))−1、曲線bは、(Mcv/Mcc)=√(0.5/(Sh/Scm))−1である。すなわち、曲線b以上曲線a以下の領域が式(1)である。また、直線cは、(Sh/Scm)=0.23であり、直線dは(Sh/Scm)=0.99である。すなわち、横軸方向に直線c超直線d以下の領域が式(2)である。また、直線fは、(Mcv/Mcc)=1.0であり、直線gは、(Mcv/Mcc)=0.01である。すなわち、直線f未満直線g以上の領域が式(3)である。よって、図5中斜線領域eにて示される領域、且つ、上記式(4)を満たす凹凸構造Aを一部又は全面に具備するキャリア10を使用した機能転写体14が、本発明に係る機能転写体14のより好ましい範囲である。
特に、機能塗工液よりみたナノ構造11の集合により作られる表面自由エネルギの均等性を向上させ、マクロに観た塗工性を向上させる観点から、比率(Mcv/Mcc)は、√(0.6/(Sh/Scm))−1以上であることが好ましく、√(0.7/(Sh/Scm))−1以上であることがより好ましく、√(0.76/(Sh/Scm))−1以上であることが更に好ましく、√(0.78/(Sh/Scm))−1以上であることが最も好ましい。すなわち、図6に示す曲線b1以上,b2以上,b3以上,b4以上及びb5以上の順により好ましい。これは、曲線b1,b2,b3,b4及びb5の順に、ナノ構造11の配列の対称性が向上するためである。図6は、横軸に比率(Sh/Scm)を、縦軸に比率(Mcv/Mcc)をとったグラフである。(Mcv/Mcc)=√(α/(Sh/Scm))−1と記載した場合に、図6に示す曲線b1はα=0.5を、曲線b2はα=0.6を、曲線b3はα=0.7を、曲線b4はα=0.76を、曲線b5はα=0.78を示す。
また、曲線a、直線c、直線d、直線f、及び直線gは図5のそれと同様である。すなわち、縦軸方向に曲線a以下の領域であり、横軸方向に直線c超且つ直線d以下であり、縦軸方向に直線f未満且つ直線g以上であり、且つ、縦軸方向に曲線b1以上,b2以上,b3以上,b4以上又はb5以上の領域が本発明に係るキャリア10のより好ましい凹凸構造Aである。特に、(Mcv/Mcc)=√(α/(Sh/Scm))−1と記載した場合のαが大きくなる程、換言すれば曲線bがb1から順番にb5へと上方へシフトする程、曲線a以下、直線c超且つ直線d以下、直線f未満且つ直線g以上、及び曲線b以上の領域は狭まり、このより狭くなる領域を満たす凹凸構造Aであるほど、機能塗工液からみたナノ構造11の表面自由エネルギの均等性が向上するため、機能塗工液の膜厚の均等性が向上する。
また、機能層12に対する剥離応力の均等性を向上させ、機能層12の凝集破壊をより効果的に抑制する観点から、比率(Mcv/Mcc)は、√(1.0/(Sh/Scm))−1以下を満たすことが好ましく、√(0.95/(Sh/Scm))−1以下を満たすことが好ましく、√(0.93/(Sh/Scm))−1以下を満たすことがより好ましく、√(0.91/(Sh/Scm))−1以下を満たすことが最も好ましい。すなわち、図7に示す曲線a1以下,a2以下,a3以下,a4以下及びa5以下の順に好ましい。これは、曲線a1,a2,a3,a4及びa5の順に、ナノ構造11と機能層12と、の界面自由エネルギの均等性が向上するためである。図7は、横軸に比率(Sh/Scm)を、縦軸に比率(Mcv/Mcc)をとったグラフである。(Mcv/Mcc)=√(α/(Sh/Scm))−1と記載した場合に、図7に示す曲線a1はα=1.1を、曲線a2はα=1.0を、曲線a3はα=0.95を、曲線a4はα=0.93を、曲線a5はα=0.91を示す。
また、曲線b、直線c、直線d、直線f、及び直線gは図5のそれと同様である。すなわち、縦軸方向に直線b以上の領域であり、横軸方向に直線c超且つ直線d以下であり、縦軸方向に直線f未満且つ直線g以上の領域であり、且つ、縦軸方向に直線a1以下,a2以下,a3以下,a4以下,又はa5以下の領域が本発明に係るより好ましい凹凸構造Aである。特に、(Mcv/Mcc)=√(α/(Sh/Scm))−1と記載した場合のαが小さくなる程、換言すれば曲線aがa1から順番にa5へと下方へシフトする程、曲線b以上、直線c超且つ直線d以下、直線f未満且つ直線g以上、及び曲線a以上の領域は狭まり、このより狭くなる領域を満たす凹凸構造Aであるほど、ナノ構造11と機能層12と、の界面自由エネルギの均等性が向上することから、キャリア10を剥離する際に生じる機能層12への応力を均等化することができる。すなわち、機能層12の凝集破壊をより効果的に抑制できる。
以上説明したように、本実施の形態に係るキャリア10においては、凹凸構造Aは、機能層12のキャリア10に対する塗工性を向上させ、機能層12の配置精度及び厚み精度を向上させると共に、キャリア10を除去する際の機能層12の凝集破壊をより効果的に抑制する観点から、下記式(5)を満たすことが好ましい。
式(5)
Figure 2015112781
更に、下記式(6)を満たすことで、上記効果をよりいっそう発現できると共に、機能層12をキャリア10のナノ構造11上に成膜する際の、成膜速度を向上した場合であっても、安定的に機能層12を精度高くナノ構造11に対して配置できる。更に、キャリア10を剥離する際の速度を向上させた場合であっても、機能層12に対する剥離応力の集中を抑制できるため、転写性を良好に保つことができる。
式(6)
Figure 2015112781
ナノ構造11の凸部頂部外縁部における機能塗工液の流れの整流性を向上させ、ミクロに観た塗工性をいっそう向上させる観点から、比率(Sh/Scm)は、0.4以上であることが好ましい。特に、機能塗工液の塗工速度を大きくした場合であっても、局所的な機能塗工液の流れの乱れを抑制する観点から、0.45以上であることがより好ましく、0.6以上であると最も好ましい。更に、キャリア10を機能層12より剥離する際の、キャリア10のナノ構造11の凸部頂部外縁部より機能層12に加えられる応力を低減し、機能層12に加わる剥離応力の絶対値を小さくする観点から、比率(Sh/Scm)は0.6以上、より好ましくは0.65以上の範囲を満たすことが好ましい。更に、キャリア10のナノ構造11の表面自由エネルギが非常に小さい、例えば、キャリア10のナノ構造がフッ素やメチル基を含むような場合であっても、機能塗工液のミクロな塗工性を向上させ、マクロな塗工性を担保する点から、比率(Sh/Scm)は0.7以上であることが望ましい。特に、このような場合であっても、塗工速度を大きくできる観点から、(Sh/Scm)は、0.75以上であることがより好ましく、0.8以上であることが更に好ましい。
すなわち、図8に示す直線c1以上,c2以上,c3以上,c4以上,c5以上,c6以上及びc7以上の順により好ましい。これは、直線c1,c2,c3,c4,c5,c6及びc7の順に、ナノ構造11の凸部頂部外縁部における機能塗工液に対するアンカーやピン止め効果が抑制されると共に、ナノ構造11の凸部頂部上に位置する機能塗工液よりもナノ構造11の凹部内部に位置する機能塗工液の方が、エネルギ的に安定化するためである。図8は、横軸に比率(Sh/Scm)を、縦軸に比率(Mcv/Mcc)をとったグラフである。(Sh/Scm)=Yと記載すれば、図8に示す直線c1,c2,c3,c4,c5,c6及びc7は、それぞれYが0.23,0.4,0.45,0.6,0.65,0.7,及び0.8の場合を示す。また、曲線a4及び曲線b4は、(Mcv/Mcc)=√(α/(Sh/Scm))−1と記載した場合のαが、それぞれ0.93と0.76の場合である。
また、直線d、直線f、及び直線gは、図5のそれと同様である。すなわち、縦軸方向に曲線a4以下曲線b4以上の領域であり、横軸方向に直線d以下であり、縦軸方向に直線f未満且つ直線g以上であり、且つ、横軸方向に直線c1超,c2以上,c3以上,c4以上,c5以上,c6以上又はc7以上の領域が本発明に係るより好ましい凹凸構造Aである。特に、比率(Sh/Scm)が大きくなる程、換言すれば直線cがc1から順番にc7へと右方へシフトする程、該領域は狭まり、このより狭くなる領域を満たす凹凸構造Aであるほど、ミクロに観た塗工性がより向上し機能層12の配置及び厚み精度が向上すると共に、キャリア10を剥離する際の機能層12に加わる剥離応力の絶対値を減少させ、転写性を向上させることができる。なお、図8においては、(Mcv/Mcc)=√(α/(Sh/Scm))−1と記載した場合のαが0.93と0.76の曲線a4及びb4を図示したが、これらの曲線a及びbは、上記説明した式(1)及び式(1)内のより好ましい範囲を採用することができる。
また、比率(Sh/Scm)は、0.95以下であることが好ましい。0.95以下であることにより、キャリア10のナノ構造11の力学的強度を向上できるため、機能転写体14の製造時及び機能転写体14の使用時の、キャリア10のナノ構造11の破損を抑制することができると共に、キャリア10を再利用する際の、再利用回数が大きくなるため好ましい。
比率(Mcv/Mcc)が、0.02以上を満たすことで、機能層12の物理的安定性が向上する。このため、機能転写体14を第1のラインから第2のラインへと搬送した場合であっても、機能層12の精度を維持することができる。
また、比率(Mcv/Mcc)が、0.85以下を満たすことで、機能塗工液に対するアンカーやピン止め効果を抑制できることから、ミクロな塗工性が向上し、機能層12の配置精度及び膜厚精度が向上する。同様の効果から、比率(Mcv/Mcc)は、0.65以下を満たすことがより好ましく、0.50以下を満たすことが最も好ましい。
また、キャリア10のナノ構造の表面自由エネルギが非常に低い場合、例えば、フッ素やメチル基を含む場合であっても、ミクロな塗工性を担保しマクロな塗工性を向上させる観点から、(Mcv/Mcc)≦0.42を満たすことが好ましい。
以上の効果をよりいっそう発現すると共に、キャリア10の剥離速度を大きくした場合であっても、機能層12の転写性を良好に保つために、(Mcv/Mcc)≦0.35であることが好ましく、(Mcv/Mcc)≦0.28であることがより好ましい。また、被処理体20の外形が平面から曲面へと変化するような場合であっても、機能層12に加わる応力の集中を抑制し、機能層12の破壊を抑制する観点から、(Mcv/Mcc)≦0.18であることが好ましく、(Mcv/Mcc)≦0.14であることがより好ましく、(Mcv/Mcc)≦0.10であることが特に好ましい。
上記説明した所定の範囲を満たす凹凸構造Aを含むキャリア10を使用することで、機能層12のナノ構造11に対する配置精度及び膜厚精度が向上することから、精度の高い機能転写体14を製造できると共に、機能層12の安定性が向上する。更に、被処理体20に機能層12を転写付与する際の転写性を向上できると共に、転写速度を大きくすることができる。
上記説明した効果を効果的に発揮する凹凸構造Aの範囲を図9及び図10に示した。図9に示す領域eは、(Mcv/Mcc)≧√(0.76/(Sh/Scm))−1(曲線b4以上)、(Mcv/Mcc)≦√(0.93/(Sh/Scm))−1(曲線a4以下)、(Mcv/Mcc)≧0.01(直線g以上)、(Mcv/Mcc)≦0.50(直線f以下)、(Sh/Scm)≧0.40(横軸方向に直線c2以上)、且つ(Sh/Scm)≦0.95以下(横軸方向に直線d以下)を同時に満たす領域である。図10に示す領域eは、(Mcv/Mcc)≧√(0.76/(Sh/Scm))−1(曲線b4以上)、(Mcv/Mcc)≦√(0.93/(Sh/Scm))−1(曲線a4以下)、(Mcv/Mcc)≧0.01(直線g以上)、(Mcv/Mcc)≦0.28(直線f以下)、(Sh/Scm)≧0.60(横軸方向に直線c4以上)、且つ(Sh/Scm)≦0.95以下(横軸方向に直線d以下)を同時に満たす領域である。
また凹凸構造Aにおいては、凹部開口幅(Mcc)と凸部頂部幅(Mcv)との和(Mcc+Mcv)は、平均ピッチの3倍以下であることが好ましい。この範囲を満たすことにより、ナノ構造11の凸部11bの頂部の外縁部における機能塗工液の流れの乱れを小さくできる。このため、機能層12の成膜性と膜厚精度が向上する。更に、キャリア10を機能層12より剥離する際の、キャリア10のナノ構造11の凸部頂部外縁部より加えられる機能層12の凸部底部外縁部への応力の分布が小さくなる。換言すれば、積層体21のナノ構造S11の凸部底部外縁部において応力の極度に集中するポイントが発生することを抑制できる。このため機能層12の凝集破壊をより効果的に抑制できる。上記効果をより発揮する観点から、和(Mcc+Mcv)は平均ピッチの2√2倍以下であることがより好ましく、1.2倍以下であることがより好ましく、1倍以下であることが最も好ましい。
・記号(Mcc)
上記使用した記号(Mcc)は、キャリア10におけるナノ構造11の凹部11aの開口幅と定義する。なお、記号(Mcc)は、既に説明した平均ピッチと同様のサンプルから同じ解析手法により、測定され、同様の平均点数より定義される。
まず、キャリア10のナノ構造11がホール構造の場合、すなわち隣接する凹部が連続する凸部により隔てられる場合について説明する。ナノ構造11の開口部の形状がn角形(n≧3)の場合、ナノ構造11の開口部はn個の辺により構成される。この時、n個の辺の中で最も長い辺の長さを凹部開口幅(Mcc)として定義する。なお、n角形は正n角形であっても、非正n角形であってもよい。例えば、4角形を代表させると、正4角形(正方形)、長方形、平行四辺形、台形、又は、これらの4角形の対向する辺の1組以上が非平行な形状が挙げられる。一方、ナノ構造11が、凹部開口部が非n角形の場合、凹部開口部の外縁部の所定の一点から他の一点までの距離が最長となる時の長さを、凹部開口幅(Mcc)として定義する。ここで、非n角形は、角のない構造、例えば、円、楕円、上記説明したn角形の角が丸みを帯びた形状、又は丸みを帯びた角を含む上記説明したn角形(n≧3)である。
なお、上記説明したホールの形状がn角形のホールと、非n角形のホールを混在させて設けることができる。
次に、キャリア10のナノ構造11がドット構造、すなわち隣接する凸部が連続する凹部により隔てられる場合について説明する。複数の凸部から任意に1つの凸部(A)を選択し、この凸部(A)の外縁部の一点と、凸部(A)の周囲を囲む他の凸部(B)の外縁部との距離が最短になる時の、該距離を凹部開口幅(Mcc)として定義する。なお、キャリア10をナノ構造11の表面から観察した際の凸部の輪郭形状は、上記説明したナノ構造11がホール構造の場合の、ホールの形状を採用できる。
ラインアンドスペース構造の場合、隣り合う凸状ライン間の最短距離を凹部開口幅(Mcc)とする。
なお、上記説明したホール構造とラインアンドスペース構造、或いはドット構造とラインアンドスペース構造と、は混在して設けることができる。
・記号Mcv
記号(Mcv)は、キャリア10におけるナノ構造11の凸部11bの頂部幅と定義する。なお、記号(Mcv)は、既に説明した平均ピッチと同様のサンプルから同じ解析手法により、測定され、同様の平均点数より定義される。
キャリア10のナノ構造11がホール構造の場合、すなわち隣接する凹部が連続する凸部により隔てられる場合について説明する。複数の凹部から任意に1つの凹部(A)を選択し、この凹部(A)の外縁部の一点と、凹部(A)の周囲を囲む他の凹部(B)の外縁部との距離が最短になる時の該距離を凸部頂部幅(Mcv)として定義する。
次に、キャリア10のナノ構造11がドット構造の場合、すなわち隣接する凸部が連続する凹部により隔てられる場合について説明する。凸部11bの形状がn角形(n≧3)の場合、ナノ構造11の凸部11bはn個の辺により構成される。この時、n個の辺の中で最も長い辺の長さを凸部頂部幅(Mcv)として定義する。なお、n角形は正n角形であっても、非正n角形であってもよい。例えば、4角形を代表させると、正4角形(正方形)、長方形、平行四辺形、台形、又は、これらの4角形の対向する辺の1組以上が非平行な形状が挙げられる。一方、ナノ構造11の凸部11bが非n角形の場合、ナノ構造11の凸部11bの頂部の外縁部の所定の一点Aから他の一点Bまでの距離が最長となる時の長さを、凸部頂部幅(lcc)として定義する。ここで、非n角形は、角のない構造、例えば、円、楕円、上記説明したn角形の角が丸みを帯びた形状、又は丸みを帯びた角を含む上記説明したn角形(n≧3)である。
ラインアンドスペース構造の場合、凸ライン幅を凸部頂部幅(Mcv)と定義する。
・比率(Sh/Scm)
記号(Scm)は、単位面積である。単位面積とは、ナノ構造11の一主面に平行な面内におけるナノ構造11の上部に配置され、且つ、ナノ構造11の一主面と平行な面の面積である。単位面積(Scm)の大きさは、平均ピッチの10倍角の正方形の領域として定義する。なお、記号(Scm)は、既に説明した平均ピッチと同様のサンプルの、平均ピッチを求める際の解析手法により撮像される画像内に設定される。
比率(Sh/Scm)は、キャリア10におけるナノ構造11の開口率である。キャリア10のナノ構造11がホール構造の場合は、ナノ構造11の主面と平行な面内において、ナノ構造11上の単位面積(Scm)下に含まれる、凹部11aの開口部面積の和(Sh)の比率が開口率である。例えば、単位面積(Scm)内に凹部11aがN個含まれているとする。このN個の凹部11aの開口部面積(Sh1〜ShN)の和がShとして与えられ、開口率は、(Sh/Scm)で与えられる。一方で、ナノ構造11がドット状の場合は、ナノ構造11の主面と平行な面内において、ナノ構造11上の単位面積(Scm)下に含まれる、凹部11aの開口部面積が開口率である。例えば、単位面積(Scm)内に凸部11bがM個含まれているとする。このM個の凸部11bの頂部面積(Sh’1〜Sh’M)の和がSh’として与えられ、開口部の面積ShはScm−Sh’として与えられ、開口率は、(Sh/Scm)で与えられる。開口率を100倍すればパーセントとして表記できる。
なお、式(4)の平均アスペクト(A)については、既に説明した通りである。
・機能転写体に含まれる凹凸構造Aを満たす領域
本実施の形態に係る機能転写体14は、上記式(1)〜式(4)を同時に満たす凹凸構造Aを含むことが好ましい。既に説明した定義に沿い、キャリア10のナノ構造11に対する式(1)〜式(4)を求めた時に、式(1)〜式(4)を同時に満たす部位が含まれれば、本発明のより好ましい機能転写体14である。すなわち、式(1)〜式(4)を満たさない部分が散在していても、式(1)〜式(4)をみたす部分が局所的に設けられていてもよい。式(1)〜式(4)を満たす部分と満たさない部分と、の配置関係は特に限定されず、一方が他方に挟まれていても、一方が他方に囲まれていても、或いは、互いに周期的に配置されてもよい。
以上、ナノ構造11が有する凹凸構造Aについて説明した。
<機能層>
次に、機能転写体14の機能層12の組成について説明する。機能転写体14においては、既に説明したように、機能層12の組成によらず、機能層12の配置精度を向上させ、機能層12と被処理体20と、の接着強度を高め、そして機能層12の凝集破壊を抑制できるため、高精度な機能層12を被処理体20に転写付与し、積層体21を得ることができる。そして、この積層体21におけるナノ構造S11は、所定のフッ素元素濃度Efを満たすことから、表層は化学的に疎水性となる。そして、この化学的因子にナノ構造S11という物理的因子が相乗することで、強い疎水性を発現可能である。これにより、着水、着氷、或いは着雪を抑制したり、又は、付着した水、雪、氷を除去しやすくなる効果を奏する。
上述したように、目的とする効果を発現可能にする強い疎水性は、物理的因子と化学的因子と、の組み合わせにより初めて発現可能となる。ここで、本明細書にいう強い疎水性とは、用途に適した効果を発現する程度として定義されるが、概ね、接触角により表現することが出来る。以下に説明する手順にて、純水に対する接触角を測定した際の、接触角が85度以上の状態を強い疎水性として定義する。これは、85度以上であることで、着水の抑制に対する効果が高まるためである。そして、90度以上であれば、着水した水膜を除くことが容易となるため好ましい。また、110度以上であれば、着水する水滴が、ナノ構造S11に接触する時間を短くすることが出来るため好ましい。特に、125度以上であることで、前述した時間をより短くし、これにより着氷と着雪に対する効果が強まるためより好ましい。更に、135度以上であれば、ナノ構造S11内部に蓄えられる外気の保持力が強まり、付着した水膜及び雪を取り除く際の効果が強まる。また、145度以上であることで、付着した氷を取り除く効果が強まるため好ましい。なお、最も好ましくは、155度以上である。なお、上限値については特に限定されないが、180度未満であることで、機能層12のキャリア10に対する成膜性が向上するため好ましく、178度以下であることがより好ましい。
(接触角の測定方法)
1.上記説明した、(キャリアの凹凸構造側に位置する機能層表層のフッ素元素濃度の測定方法)の手順1.〜手順7.を行い、機能層S12の添着した単結晶サファイア基板を得る。
2.機能層S12の添着した単結晶サファイア基板の機能層S12側に対して、下記の通り接触角を測定する。
・水平状態(傾斜角0°)に配置した単結晶サファイア基板の機能層S12上にプローブ液を配置し、Θ/2法により計測する。
・装置:株式会社ニック社製、濡れ性評価装置(接触角計):LSE−B100W。
・シリンジ:ガラスシリンジ。
・ディスペンサ:オートディスペンサ。
・プローブ液吐出量:2.5μl±0.5μl。
・測定環境:温度21℃〜25℃、湿度35%〜49%。
・プローブ液:イオン交換水。
・プローブ液被着方法:吐出プローブ液滴の半分程度までモールドを押し込む。
・測定時間:0秒〜10.1秒の間を1秒間隔にて測定し、1.1秒時の接触角値を使用。
・プローブ液を吐出する針:協和界面化学株式会社製のテフロン(登録商標)コート針22G。
また、転落角という視点に立てば、着水した水滴がナノ構造S11に接触する時間を短縮する観点から、90度未満であることが好ましく、60度未満であることがより好ましい。そして、30度以下であれば、前述した時間が短くなることによる着氷に対する効果がより強まるため好ましい。また、20度以下であれば、付着した水及び雪を取り除く際の効果が強まり、10度以下であれば付着した氷を取り除く際の効果が強まる。なお、最も好ましくは5度以下である。なお、転落角は上記説明した接触角測定において、プローブ液を配置した後に、単結晶サファイア基板を配置した土台に傾斜を付けていき、プローブ液が転落し始める角度として定義する。
上記説明した強い疎水性を発現する観点から、キャリアの凹凸構造側に位置する機能層表面の自由エネルギは、3erg/cm以上18erg/cm以下であることが好ましい。これは、表面の議論である。即ち、所定の表層フッ素元素濃度Efを満たす機能層12により、機能層S12のナノ構造S11の表面のエネルギが決定される。これは、表面より内部に位置する部位の状態も、表面に影響することと同義である。即ち、表層の情報がフッ素元素濃度Efであり、更なる強い疎水性を発現する観点から、表面の情報を更に規定出来る。特に、3erg/cm以上15erg/cm以下であることが最も好ましい。
なお、上記表面自由エネルギは、以下の定義に従い測定された自由エネルギである。3つのプローブ液を使用し計測された接触角より、Kitazaki−Hataの理論から計算され算出された分散成分(d)、極性成分(p)及び水素結合性成分(h)の和である。接触角は、上記説明した接触角の測定方法に従い、プローブ液のみが変わる。プローブ液は、1ブロモナフタレン、ジヨードメタン、及びホルムアミドである。接触角測定により計測された接触角をθr及びナノ構造S11の表面積倍率をRfとした時に、θ=acos(cosθr/Rf)として計算される値を校正後の接触角とする。この校正した接触角を使用して、Kitazaki−Hataの理論から、表面自由エネルギを導出する。なお、表面積倍増率(Rf)とは、単位面積がナノ構造11の形成により何倍に増加したかを表す指標であり、一般的にラフネスファクタと称される値である。なお、上記3種類のプローブ液を使用して測定及び計算された校正後の接触角Θを使用して、表面自由エネルギを算出することができない場合、エチレングリコール、nヘキサデカン、及び水へと順次、測定するプローブ液の種類を増やし、Kitazaki−Hataの理論へと導入するプローブ液の組み合わせを変更する。
機能層12の組成は、既に説明した機能層のフッ素元素濃度の範囲を満たせば、特に限定されず、積層体21の用途に適した組成を適宜選択することができる。例えば、有機物、無機物或いは有機無機複合体であってもよい。また、モノマ、オリゴマ、或いはポリマのみから構成されても、これらを複数含んでもよい。このため、例えば、有機粒子、有機フィラー、無機粒子、無機フィラー、有機無機ハイブリッド粒子、有機無機ハイブリッドフィラー、ゾルゲル反応を誘発する分子、有機ポリマ、有機オリゴマ、無機ポリマ、無機オリゴマ、有機無機ハイブリッドポリマ、有機無機ハイブリッドオリゴマ、重合性樹脂、重合性モノマ、金属アルコキシド、金属アルコラート、金属キレート化合物、ハロゲン化シラン、スピンオングラス、金属、及び、金属酸化物を使用することができる。
機能層のフッ素元素濃度Efを所定の範囲にするためには、大きく3つの方法がある。第一に、キャリアのナノ構造11に対して、フッ素成分をコーティングし、その次に、第2の機能層を成膜する方法がある。第二に、キャリアのナノ構造11に対して、フッ素成分を含む機能層を成膜する方法がある。第三に、キャリアのナノ構造11に対して機能層を成膜した後に、フッ素成分を機能層にドーピングする方法がある。いずれの方法であっても、例えば、以下に記載の材料を使用することで、機能層のフッ素元素濃度Efを調整することが出来る。なお、効果的にフッ素元素濃度Efを高めるために、キャリアのナノ構造11は、以下に説明するフッ素元素濃度(Es)及び/又は自由エネルギを満たすことが望ましい。
ポリフルオロアルキレンやペルフルオロ(ポリオキシアルキレン)鎖、パーフルオロポリエーテル鎖、直鎖状ペルフルオロアルキレン基、炭素原子−炭素原子間にエーテル性酸素原子が挿入され且つトリフルオロメチル基を側鎖に有するペルフルオロオキシアルキレン基、トリフルオロメチル基を分子側鎖又は分子構造末端に有する直鎖状のポリフルオロアルキレン鎖、或いは直鎖状のペルフルオロ(ポリオキシアルキレン)鎖等を具備するモノマや樹脂を使用できる。特に、表層フッ素元素濃度Efの調整度合を向上させる観点から、ポリフルオロアルキレン鎖は、炭素数2〜炭素数24のポリフルオロアルキレン基であることが好ましい。また、ペルフルオロ(ポリオキシアルキレン)鎖は、(CFCFO)単位、(CFCF(CF)O)単位、(CFCFCFO)単位及び(CFO)単位からなる群から選ばれた1種以上のペルフルオロ(オキシアルキレン)単位からなることが好ましく、(CFCFO)単位、(CFCF(CF)O)単位、又は(CFCFCFO)単位からなることがより好ましい。ペルフルオロ(ポリオキシアルキレン)鎖は、ナノ構造S11の物性(耐熱性、耐酸性等)が優れることから、(CFCFO)単位からなることが特に好ましい。ペルフルオロ(オキシアルキレン)単位の数は、ナノ構造S11の表面自由エネルギの低減と硬度の向上の観点から、2〜200の整数が好ましく、2〜50の整数がより好ましい。
フッッ素含有ポリウレタン、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、テトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、テトラフルオロエチレン・エチレン共重合体(ETFE)、ポリビニリデンフルオライド(PVDF)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、フッ素含有アクリル樹脂などを使用することも出来る。
ETFEとしては、テトラフルオロエチレン(以下、TFEと記す)に基づく繰り返し単位とエチレン(以下、Eと記す)に基づく繰り返し単位とのモル比率(TFE/E)が、70/30〜30/70のものが好ましく、65/35〜40/60のものがより好ましい。
また、ETFEは、他のコモノマーに基づく繰り返し単位を含むことが出来る。他のコモノマーとしては、例えば、CF=CFClに代表さえるTFEを除いたフルオロエチレン類、CF=CFCFやCF=CHCFに代表されるフルオロプロピレン類、CFCFCFCFCH=CHやCFCFCFCFCF=CHに代表される炭素数が2〜12のパーフルオロアルキル基を有するフルオロエチレン類、Rf(OCFXCF)kOCF=CF(ただし、Rfは炭素数1〜6のパーフルオロアルキル基であり、Xはフッ素原子またはトリフルオロメチル基であり、kは0〜5の整数である)に代表されるパーフルオロビニルエーテル類、Eを除いたオレフィン類、プロピレンに代表されるC3オレフィン、及び、ブチレンやイソブチレンに代表されるC4オレフィン等が挙げられる。中でも、CFCFCFCFCH=CHが特に好ましい。また、上記他のコモノマーに基づく繰り返し単位の割合は、ETFEを構成する全繰り返し単位(100モル%)のうち、30モル%以下が好ましく、0.1〜15モル%がより好ましく、0.2〜10モル%が特に好ましい。
また、含フッ素環状重合体を含むことが出来る。ここで、含フッ素環状重合体とは、主鎖に含フッ素脂肪族環を有する含フッ素重合体であり、含フッ素脂肪族環を構成する炭素原子の1個以上が該含フッ素重合体の主鎖を構成する炭素原子であるものと定義する。含フッ素脂肪族環を構成する原子としては、炭素原子以外に酸素原子、窒素原子等を含んでもよい。含フッ素脂肪族環としては、1個〜2個の酸素原子を有する含フッ素脂肪族環が好ましい。含フッ素脂肪族環を構成する原子の数は4個〜7個が好ましい。主鎖を構成する炭素原子は、含フッ素環状重合体が環状単量体を重合させて得た重合体である場合には、該含フッ素重合体を構成する単量体の重合性二重結合の2個の炭素原子に由来する。また、ジエン系単量体を環化重合させて得た重合体である場合には、2個の重合性二重結合の4個の炭素原子に由来する。重合性二重結合としては、ビニル基、アリル基、アクリロイル基、メタクリロイル基が好ましい。
含フッ素環状重合体としては、環状単量体の単独重合体または共重合体、ジエン系単量体を環化重合させた単独重合体または共重合体等が挙げられる。環状単量体とは、含フッ素脂肪族環を有し、かつ含フッ素脂肪族環を構成する炭素原子−炭素原子間に重合性二重結合を有する単量体、または、含フッ素脂肪族環を有し、かつ含フッ素脂肪族環を構成する炭素原子と含フッ素脂肪族環外の炭素原子との間に重合性二重結合を有する単量体である。ジエン系単量体とは、2個の重合性二重結合を有する単量体である。
環状単量体およびジエン系単量体は、フッ素原子を有する単量体であり、炭素原子に結合した水素原子と炭素原子に結合したフッ素原子の合計数に対する炭素原子に結合したフッ素原子の数の割合が80%以上の単量体が好ましく、パーフルオロ単量体(該割合が100%の単量体)がより好ましい。環状単量体およびジエン系単量体は、パーフルオロ単量体のフッ素原子の一部(1個〜4個が好ましい)が塩素原子に置換された単量体(以下、パーハロポリフルオロ単量体)であってもよい。環状単量体およびジエン系単量体と共重合させる単量体も、パーフルオロ単量体またはパーハロポリフルオロ単量体が好ましい。環状単量体と共重合させる単量体としては、例えば、CF=CF、CF=CFCl、CF=CFOCF等が挙げられる。また、ジエン系単量体としては、CF=CF−Q−CF=CF(Qは、エーテル性酸素原子を有していてもよい炭素数1〜3のパーフルオロアルキレン基である。Qがエーテル性酸素原子を有するパーフルオロアルキレン基である場合、該パーフルオロアルキレン基におけるエーテル性酸素原子は、該基の一方の末端に存在していてもよく、該基の両末端に存在していてもよく、該基の炭素原子間に存在していてもよい。環化重合性の点から、該基の一方の末端に存在していることが好ましい)が挙げられる。ジエン系単量体の具体例としては、CF=CFOCFCF=CF、CF=CFOCF(CF)CF=CF、CF=CFOCFCFCF=CF、CF=CFOCFCF(CF)CF=CF、CF=CFOCF(CF)CFCF=CF、CF=CFOCFOCF=CF、CF=CFOC(CFOCF=CF、CF=CFCFCF=CF、CF=CFCFCFCF=CF等が挙げられる。
また、フッ素元素濃度Efを調整するために、ノアソルブ GS BP85(グリーン・ノア株式会社製)、ゼオローラ(登録商標)H(日本ゼオン株式会社製)、ゾニール(登録商標)TCコート(デュポン社製)、旭硝子社製「サイトップ(登録商標)」(例えば、CTL−107M、CTL−107A)、「アサヒクリン(登録商標)」(例えば、AE−3000、AE−3100E、AK−225、AC−6000、AC−2000)、ノベック(登録商標)EGC−1720(住友スリーエム社製)、ダイキン工業社製「オプツール(登録商標)」(例えば、DSX、DAC、AES)、「デュラサーフ(登録商標)」(例えば、HD−2101Z,HD−2100,HD−1101Z)、「エフトーン(登録商標)」(例えば、AT−100)、「ゼッフル(登録商標)」(例えば、GH−701)、「ユニダイン(登録商標)」、「ダイフリー(登録商標)」、「オプトエース(登録商標)」、ネオス社製「フタージェント(登録商標)」(例えば、Mシリーズ:フタージェント(登録商標)251、フタージェント(登録商標)215M、フタージェント(登録商標)250、FTX−245M、FTX−290M;Sシリーズ:FTX−207S、FTX−211S、FTX−220S、FTX−230S;Fシリーズ:FTX−209F、FTX−213F、フタージェント(登録商標)222F、FTX−233F、フタージェント(登録商標)245F;Gシリーズ:フタージェント(登録商標)208G、FTX−218G、FTX−230G、FTS−240G;オリゴマーシリーズ:フタージェント(登録商標)730FM、フタージェント(登録商標)730LM;フタージェント(登録商標)Pシリーズ;フタージェント(登録商標)710FL;FTX−710HL、等)、DIC社製「メガファック(登録商標)」(例えば、F−114、F−410、F−493、F−494、F−443、F−444、F−445、F−470、F−471、F−474、F−475、F−477、F−479、F−480SF、F−482、F−483、F−489、F−172D、F−178K、F−178RM、MCF−350SF、等)、フロロテクノロジー社製「フロロサーフ(登録商標)」等を使用出来る。
また、フッ素含有シランカップリング材を含むことが出来る。フッ素含有シランカップリング剤としては、例えば、一般式FC−(CF−(CH−Si(O−R)(ただし、nは1〜11の整数であり、mは1〜4の整数であり、そしてRは炭素数1〜3のアルキル基である。)で表される化合物であることができ、ポリフルオロアルキレン鎖及び/又はペルフルオロ(ポリオキシアルキレン)鎖を含んでいてもよい。直鎖状ペルフルオロアルキレン基、又は炭素原子−炭素原子間にエーテル性酸素原子が挿入され、且つ、トリフルオロメチル基を側鎖に有するペルフルオロオキシアルキレン基がさらに好ましい。また、トリフルオロメチル基を分子側鎖又は分子構造末端に有する直鎖状のポリフルオロアルキレン鎖及び/又は直鎖状のペルフルオロ(ポリオキシアルキレン)鎖が特に好ましい。ポリフルオロアルキレン鎖は、炭素数2〜炭素数24のポリフルオロアルキレン基が好ましい。ペルフルオロ(ポリオキシアルキレン)鎖は、(CFCFO)単位、(CFCF(CF)O)単位、(CFCFCFO)単位、及び(CFO)単位からなる群から選ばれる少なくとも1種類以上のペルフルオロ(オキシアルキレン)単位から構成されることが好ましく、(CFCFO)単位、(CFCF(CF)O)単位、又は(CFCFCFO)単位から構成されることがより好ましい。ペルフルオロ(ポリオキシアルキレン)鎖は、表面への偏析性が優れるという観点から、(CFCFO)単位から構成されることが特に好ましい。
機能転写体14の機能層12に適用可能な金属元素は、積層体21の用途により適宜選択することができる。特にマンガン(Mn)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、ルビジウム(Rb)、ニオブ(Nb)、モリブデン(Mo)、テクネチウム(Tc)、ルテニウム(Ru)、パラジウム(Pd)、銀(Ag)、セシウム(Cs)、オスミウム(Os)、プラチナ(Pt)、金(Au)、カリウム(K)、リチウム(Li)、ナトリウム(Na)、バリウム(Ba)、カルシウム(Ca)、マグネシウム(Mg)、鉛(Pb)、ストロンチウム(Sr)、亜鉛(Zn)、アルミニウム(Al)、ホウ素(B)、ビスマス(Bi)、鉄(Fe)、ガリウム(Ga)、インジウム(In)、ランタン(La)、アンチモン(Sb)、バナジウム(V)、イットリウム(Y)、ゲルマニウム(Ge)、ハフニウム(Hf)、シリコン(Si)、スズ(Sn)、チタン(Ti)、ジルコニウム(Zr)、ニオブ(Nb)、タンタル(Ta)、及びタングステン(W)かなる群から選ばれた少なくとも1種以上であることが好ましい。これは、機能層12の配置精度、機能層12の物理的及び化学的安定性の観点から選定している。ナノ構造S11の脆弱性を克服し、より強固なナノ構造S11を実現する観点から、チタン(Ti)、ジルコニウム(Zr)、クロム(Cr)、亜鉛(Zn)、スズ(Sn)、ホウ素(B)、インジウム(In)、アルミニウム(Al)、シリコン(Si)、モリブデン(Mo)、タングステン(W)及びゲルマニウム(Ge)からなる群から選ばれた少なくとも1種であることが好ましい。特に、チタン(Ti)、ジルコニウム(Zr)、クロム(Cr)、シリコン(Si)又は亜鉛(Zn)であることが好ましく、チタン(Ti)、ジルコニウム(Zr)、シリコン(Si)又は亜鉛(Zn)であることが最も好ましい。また、風雨や太陽光線によるナノ構造S11の機能劣化をより効果的に抑制する観点から、チタン(Ti)、ジルコニウム(Zr)、亜鉛(Zn)、スズ(Sn)、ホウ素(B)、インジウム(In)、シリコン(Si)及びゲルマニウム(Ge)からなる群から選ばれた少なくとも1種であることが好ましい。
また、機能層12の、特に、物理的安定性を向上させる観点から、機能層12に含まれる金属元素は、少なくとも部分的にメタロキサン結合(―O−Me1−O−Me2−O−)を形成することが好ましい。メタロキサン結合を含むことで、無機物に柔軟性を付与することが可能となり、機能層S11の破損を効果的に抑制することができるためである。ここで、Me1及びMe2は共に金属元素であり、同一の金属元素であっても異なっていてもよい。Me1又はMe2としては、上記説明した金属元素を採用するこができる。例えば、単一金属元素の場合、―O−Ti−O−Ti−O−や、―O−Zr−O−Zr−O−、そして―O−Si−O−Si−O−が挙げられる。異種金属元素の場合、―O−Ti−O−Si−O−、―O−Zr−O−Si−O−、―O−Zn−O−Si−O−、―O−Ti−O−Zr−O−、―O−Ti−O−Zn−O−、―O−Ti−O−Si−O−Zn−O−等が挙げられる。なお、メタロキサン結合中の金属元素種は、3種類以上含まれてもよい。特に、2種類以上含まれる場合、転写精度の観点から、少なくともSiを含むことが好ましい。
更に、機能層12に無機粒子を含むことで、ナノ構造S11の物理的及び化学的強度を向上させることが出来る。無機粒子は原料の段階で、焼成が可能であり、物理的及び化学的に安定化することが可能となる。このため、機能層S12の耐環境性が向上する。更には、無機粒子と下記樹脂とを混在させ、樹脂と無機粒子間の水素結合や共有結合を形成することで、機能層12の転写性も同時に向上するため好ましい。なお、無機粒子は、無機フィラー、無機繊維、無機片を含む。また、ここでの無機とは、金属或いは金属酸化物のことである。また、無機粒子に含まれる金属元素種については、既に説明した金属元素種を採用できる。更に、無機粒子の表面を、例えば、上記説明したシランカップリング材により修飾すると共に、キャリアのナノ構造が以下に説明する表層フッ素元素濃度Es及び/又は自由エネルギを満たすことで、無機粒子をキャリアと機能層と、の界面へと移動させることが可能となる。即ち、被処理体20上の機能層S12のナノ構造S11は、その表面に無機粒子が多く存在する状態となり、フッ素元素濃度Efを満たすと共に、物理的硬度が増加する。
更に、機能層に粒子を含む場合、機能層S12に対して屈折率の勾配をつけることも可能となる。即ち、機能転写体の機能層12において、機能層12の露出する表面側に高濃度に粒子を含有させ、一方で、微細パタン11側の粒子濃度を低くすることで、屈折率の勾配を実現できる。これにより、被処理体20の屈折率が1.6〜2.5といった高屈折率の場合であっても、機能層S12と被処理体20と、の界面における屈折率差を小さくすることが出来る。
機能層12に含まれる金属元素は、Si元素濃度(CpSi)と、Si以外の金属元素の合計濃度(CpM1)と、の比率(CpM1/CpSi)が、0.02以上24未満であると、転写精度が向上するため好ましい。特に、転写精度と転写速度を向上させる観点から、0.05以上20以下であるとより好ましく、0.1以上15以下であると最も好ましい。なお、比率比率(CpM1/CpSi)を小さく設定することで、機能層12の屈折率を小さく、比率(CpM1/CpSi)を大きくすることで、機能層12の屈折率を大きくすることができる。即ち、該比率を調整することで、機能層S12と被処理体20と、の界面における光の全反射光量を調整することが出来る。
また、機能層12に導入する無機物においては、機能層12の配置精度と凝集を抑制する観点から、3重量%の機能塗工液に対する慣性半径が、5nm以下であることが好ましい。慣性半径は3nm以下が好ましく、1.5nm以下がより好ましく、1nm以下が最も好ましい。ここで慣性半径とは、波長0.154nmのX線を使用した小角X線散乱(SAXS)による測定より得られる測定結果に対し、Gunier(ギニエ)プロットを適用し計算される半径とする。また、溶剤としてはプロピレングリコールモノメチルエーテルを使用する。
積層体21の用途にもよるが、機能層12は、光学的に透明な媒体であることが好ましい。ここで、光学的に透明とは、消衰係数(屈折率の虚数部)が0の場合と定義する。複素屈折率をNとした時にN=n−ikと表現できる。ここで、iは虚数でありi2=-1を意味する。この時、nを屈折率(の実数部)、kを消衰係数(屈折率の虚数部)と称す。すなわち、k=0の媒質を光学的に透明な媒質として定義する。なお、kは光の媒質への吸収を表す指標であり、吸収係数αとα=4πk/λの関係を満たす。λは波長である。すなわち、k=0であれば吸収係数は0となり、光の吸収が生じない媒質となる。ここで、k=0の場合とは、kが0.01以下の場合と定義する。この範囲を満たすことで、光学的な透明性が向上するため好ましい。特に、機能層が多層である場合における多重反射を抑制する観点からk≦0.001であるとより好ましい。なお、kは小さい程好ましい。
特に、機能層12は、上記フッ素元素濃度Efの範囲を満たす範囲内において、樹脂を含むことが好ましい。機能層12が樹脂を含むことで、機能転写体14を被処理体20に当接する際の、機能層12の最外層の流動性が向上し、上記要件(C)の効果が促進されるため、被処理体20と機能層12との接触面積が大きくなり、これに伴い接着力が増大する。更に、上記要件(C)により、機能層12全体の流動性を抑制できる。すなわち、機能転写体14を被処理体20に当接する際に、機能層12の表層の流動性を発現させると共に、機能層12の全体の流動性を抑制できる。よって、機能転写体14として予め機能層12の精度を決定し、この精度を持った機能層12を被処理体20に対して転写することができる。機能層12に含まれる樹脂は、特に限定されないが、極性基を含む樹脂であることが好ましい。この場合、水素結合作用や静電気的相互作用を併用できるため、機能層12と被処理体20との接着強度が大きくなる。更には、水素結合作用、静電気的相互作用或いは重合等による体積収縮を利用できることから、ナノ構造11と機能層12との界面接着力を小さくすることができる。よって、転写性が向上する。特に、機能層12に含まれる樹脂は、機能層12の最外層に含まれることが好ましい。なお、機能層12を構成する材料及び機能層12の最外層の厚みについては、追って詳述する。
また、機能層12が樹脂を含むことで、機能層12の硬度を減少させ、機能層S12の割れや欠けといった破損を抑制できる。更には、機能層12の配置安定性を向上させることもできる。すなわち、機能転写体14に対する機能層12のナノ構造11の精度及び膜厚精度が向上すると共に、機能転写体14を例えばロールアップして巻物状にした場合であっても、機能層12に対するクラックの発生を抑制できる。また、機能層12に樹脂を含むことで、キャリア10のナノ構造11に配置された機能層12の物理的安定性が向上することから、機能転写体14の搬送やハンドリングにより、機能層12の配置精度が低下することを抑制できる。更には、この様な樹脂を含むことで、機能層12の硬度が減少するため、要件(C)の比率(Ra/lor)にて説明した、機能層12の表層の流動性の束縛が解放されやすくなり、機能層12と被処理体20との真実接触面積を大きくし、接着強度を大きくする効果が大きくなる。本明細書における樹脂は、分子量が1000以上のオリゴマ又はポリマとして定義する。樹脂の構成としては、有機樹脂、無機樹脂又は、有機無機ハイブリッド樹脂が挙げられる。これらは1種のみ含んでも、複数含んでもよい。これらの樹脂は、公知一般のオリゴマ或いはポリマを採用できる。例えば、一般的に、フォトレジスト用樹脂、ナノインプリント用樹脂、接着剤用樹脂、粘着剤用樹脂、ドライフィルムレジスト用樹脂、エンプラ、封止材用樹脂、ゴム、プラスチック、繊維、医療用プラスチック、又は、医薬用樹脂を使用できる。また、天然高分子も使用できる。
樹脂の重量平均分子量は、機能層12の配置精度、既に説明した比率(Ra/lor)及び平均ピッチの効果をよりいっそう発現する観点から、1000〜1000000であることが好ましい。下限値の1000は、既に説明したように機能層12の硬度の減少と、機能層12の物理的安定性から決定された。一方で、上限値の1000000は、既に説明したように、機能転写体14のキャリア10のナノ構造11の平均ピッチは、その大きさに上限が設けられている。この範囲のナノ構造11に対する機能層12の配置精度から決定された。特に、機能層12の配置精度をより高める観点から、重量平均分子量は、500000以下であることが好ましく、100000であることがより好ましく、更に好ましくは60000である。
樹脂の分散度は概ね1〜6のものが用いられ、1〜4であることが好ましい。分散度は、重量平均分子量と数平均分子量の比(重量平均分子量)/(数平均分子量)である。なお、分子量は、日本分光社製ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)、(ポンプ:Gulliver、PU−1580型、カラム:昭和電工社製Shodex(登録商標)(KF−807、KF−806M、KF−806M、KF−802.5)4本直列、移動層溶剤:テトラヒドロフラン、ポリスチレン標準サンプルによる検量線使用)により重量平均分子量(ポリスチレン換算)として求められる。
特に、樹脂は少なくとも、機能層12の最外層に設けられることが好ましい。これにより、機能層12のナノ構造11側の層に樹脂を含まずとも、最外層に含まれれる樹脂により上記効果を奏することができるためである。すなわち、少なくとも機能層12の最外層に樹脂を含む場合、最外層以外の層は、樹脂以外の成分のみから構成されてもよい。特に、最外層に樹脂を含む場合、最外層において上記効果を発現する観点から、機能層12の最外層の膜厚は5nm以上であることが好ましい。これは、樹脂の絡み合いを効果的に発現させ、上記説明した流動性の向上と安定性の効果を発現するためである。特に、機能層12の最外層の膜厚が20nm以上であることで、機能層12の最外層の流動性の向上程度が大きくなり、機能層12と被処理体20との接着面積を容易に大きくすることができる。同様の観点から、機能層12の最外層の膜厚は50nm以上であることが最も好ましい。
特に、機能層12に含まれる樹脂は、極性基を有することが好ましい。この場合、機能層12内における分子間相互作用を強くすることができるため、機能層12とキャリア10のナノ構造11との密着力を小さくすることができる。更に、機能層12と被処理体20と、の界面に対する静電相互作用や水素結合作用等が強くなる傾向にあるため、機能層12と被処理体20との接着強度が向上する。以上から、極性基を含むことで、転写性を向上させることができる。極性基の種類は特に限定されないが、エポキシ基、水酸基、フェノール性水酸基、アクリロイル基、メタクリロイル基、ビニル基、カルボキシル基、カルボニル基、アミノ基、アリル基、ジオキタセン基、シアノ基、イソシアネート基、チオール基及びリン酸基からなる群の少なくとも1以上の極性基を含むことで、機能層12と被処理体20と、の界面に対する静電相互作用や水素結合作用等が強くなる傾向にあるため、転写性が向上する。特に、キャリア10のナノ構造11と機能層12との物理的接着力及び化学的接着力を共に低減する観点から、エポキシ基、水酸基、フェノール性水酸基、アクリロイル基、メタクリロイル基、ビニル基、カルボキシル基、カルボニル基、アミノ基及びイソシアネート基からなる群の少なくとも1以上の極性基を含むことが好ましい。更に、エポキシ基、水酸基、アクリロイル基、メタクリロイル基、ビニル基、カルボキシル基及びカルボニル基からなる群から選ばれる少なくとも1以上の極性基を含むと、光重合による体積収縮、熱重合による体積収縮、或いは水素結合による高密度化の1以上の現象を発現できるため、キャリア10のナノ構造11と機能層12と、の界面接着力がより低下し、転写性がいっそう向上するため好ましい。中でも、エポキシ基、水酸基、アクリロイル基、メタクリロイル基、ビニル基及びカルボキシル基からなる群の少なくとも1以上を含むことで、前記効果がより大きくなる。
樹脂が硬化性樹脂である場合、機能転写体14の機能層12の体積は、キャリア10を除去する際の機能層12の体積よりも小さくなる傾向がある。すなわち、キャリア10を機能層12より除去する段階において、キャリア10のナノ構造11と機能層12との界面に分子スケール以上の隙間を作ることができる。これは、ナノ構造11と機能層12との密着力を大きく低減することを意味するため、キャリア10の剥離速度を十分に大きくすることができる。硬化性樹脂は、熱、光、或いは、熱と光により硬化する樹脂である。例えば、熱硬化性樹脂であれば、フェノール樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、又はケイ素樹脂が挙げられる。また、例えば、光硬化性樹脂であれば、エポキシ基、アクリロイル基、メタクリロイル基、又は、ビニル基等を有する樹脂が挙げられる。なお、硬化性樹脂を含む場合、その硬化原理に見合った硬化開始剤を含むことが好ましい。光硬化性樹脂に対しては、光重合開始材を適用できる。光重合開始材としては、公知一般のラジカル重合開始剤、カチオン重合開始剤、又はアニオン重合開始剤を使用できる。これらは組み合わせて使用することもできる。熱重合樹脂に対しては、熱重合開始剤を適用できる。熱重合開始剤としては、公知一般の例えば、アゾ化合物を使用できる。なお、光硬化性樹脂に対して、熱重合開始剤を使用することもできる。なお、重合開始剤の他に、光増感材を添加することもできる。
特に、機能層12の体積収縮を効果的に発現させ、機能層12とナノ構造11との接着強度を弱める観点から、光硬化性樹脂を含むことが好ましい。
また、樹脂は、少なくとも1以上の繰り返し単位を含む樹脂を含むことが好ましい。更に、この繰り返し単位は、繰り返し単位を構成する全原子数をNa、繰り返し単位中の炭素原子数をNc、及び繰り返し単位中の酸素原子数をNoとした時の比率(Na/(Nc−No))である比率Kが5.5以下の繰り返し単位であることが好ましい。すなわち、繰り返し単位が3つある状態を代表させた場合、−(A)x−(B)y−(C)z−で表現される一般式において、A、B或いはCの少なくとも1以上の繰り返し単位は比率K≦5.5を満たす。このような範囲を満たす場合、樹脂の分子間の相互作用が強まる傾向にあるため、機能層12とナノ構造11との界面の分子スケールの隙間が大きくなると考えられる。すなわち、転写性が向上する。特に、樹脂の分子間相互作用と分子内相互作用を共に強め、該隙間をナノ構造11の表面に渡り形成させ、転写性を向上させる観点から、比率Kは、4.0以下を満たすことがより好ましく、3.5以下を満たすことが最も好ましい。特に比率Kが3.0以下である場合、樹脂内の炭素密度が大きくなるため、機能層12とキャリア10のナノ構造11と、の化学的作用を低減でき、機能層12とナノ構造11との密着力をより低下させることができる。
上記説明においては、−(A)x−(B)y−(C)z−で表記できる繰り返し単位が3つある状態を代表させたが、繰り返し単位の構成数は3に限らず、ホモポリマ或いはホモオリゴマである1の状態から、2或いは4以上の状態であってもよい。
また、繰り返し単位数が2以上の場合、少なくとも1以上の繰り返し単位は上記比率Kを満たす。この場合、比率Kを満たす繰り返し単位Gと比率Kを満たさない繰り返し単位Bと、の繰り返し数は以下の範囲を満たすことが好ましい。繰り返し単位Gの繰り返し数の合計値をα、繰り返し単位Bの繰り返し単位数の合計値をβとする。例えば、−(A)x−(B)y−において、繰り返し単位Aが上記比率Kを満たし、繰り返し単位Bが上記比率Kを満たさない場合、x=α、y=βである。また、例えば、−(A)x−(B)y−(C)z−において、繰り返し単位Aが上記説明した比率Kを満たし、繰り返し単位B及びCが上記説明した比率Kを満たさない場合、x=α、(y+z)=βである。なお、繰り返し単位の数が4以上の場合も同様である。
この時、α/β≧1を満たすことで、分子内相互作用の効果が大きくなり、転写性が向上するため好ましい。特に、α/β≧1.5を満たすことで、分子間相互作用も利用でき、転写性がより向上するため好ましく、α/βが2.3以上であることで、機能層12とナノ構造11と、の界面の化学的相互作用を抑制する効果が大きくなるため好ましい。前記効果をいっそう発揮する観点から、α/βが4以上であることがより好ましく、α/βが9以上であることが最も好ましい。
なお、α/βが80以上、より好ましくは90以上である場合、樹脂分子内のエネルギの均等性が向上することから、キャリア10を機能層12より除去する際の、凝集破壊に対する耐性が大きくなる。また、ホモポリマ或いはホモオリゴマの場合、α/βはβが0であることから無限に漸近する。また、繰り返し単位を2以上含む場合であって、全ての繰り返し単位が上記比率Kの範囲を満たす場合も、α/βはβが0であることから無限に漸近する。このようなα/βが無限に漸近する場合、樹脂分子内のエネルギの均等性が飛躍的に向上することから、キャリア10を機能層12より除去する際の、凝集破壊に対する耐性が飛躍的に向上するため、最も好ましい。
更に、繰り返し単位間の上記比率Kの差の最大値、すなわちΔKmaxは、3.5以下であることが好ましい。これにより、効果的に分子間相互作用を発現できる。特に、3.0以下であることで、分子内相互作用が大きくなる。2.5以下であれば、樹脂の安定性が向上し、機能層12とナノ構造11と、の界面の化学的作用を抑制する効果が高まる。更に、樹脂分子内のエネルギの均等化の向上に伴う機能層12の凝集破壊耐性の向上効果をより顕著にする観点から、2.0以下であることが好ましく、1.5以下であることがより好ましく、1.0以下であることが最も好ましい。
機能層12は、環状部位を有する材料を含むことが好ましい。環状部位を有する材料を含むことにより、環状部位同士のパッキングや配列により、機能層12の硬度の上昇や、機能層12の体積収縮を誘発する傾向にあるためである。すなわち、キャリア10を機能層12より除去する際の機能層12の凝集破壊の抑制や、キャリア10のナノ構造11と機能層12と、の密着力低減の効果がある。特に、環状部位が、炭素数30以下の環状部位であることで、本効果は大きくなる。更に、環状部位が4員環、5員環及び6員環からなる群から選ばれる少なくとも1以上の要素により構成されることで、パッキング性が良好となることから機能層12の持つ自由エネルギが低下する傾向にある。すなわち、キャリア10のナノ構造11と機能層12と、の化学的作用を低減できるため、転写性が向上する。ここで、環状部位は、上記説明した樹脂に含まれても、それ以外の成分、例えばモノマに含まれてもよい。特に、機能層12が樹脂及びモノマを含む場合、少なくとも樹脂に該環状部位を含むことが好ましい。環状部位としては、例えば、下記化学式群Aから選ばれる少なくとも1以上の環状部位が挙げられる。これらは、1種類のみを含んでも、2種類以上含まれてもよい。
化学式群A
Figure 2015112781
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Figure 2015112781
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本明細書においては、化学式中に表記される「*」は、「*」を介して他の元素に結合すると共に、「*」は酸素元素(O)、窒素元素(N)、硫黄元素(S)或いはフッ素元素(F)のいずれかである。また、結合手の不足している部分は、水素元素(H)、メチル基(CH)、或いは水酸基(OH)へと結合する。
例えば、上記環状部位を有する樹脂として、ポリスチレン、ポリp−ヒドロキシスチレン、ポリ9ビニルカルバゾール、カルバゾール骨格を有する樹脂、側鎖にカルバゾール骨格を有する樹脂、クレゾールノボラック骨格を有する樹脂、フェノールノボラック骨格を有する樹脂、ビスフェノールA骨格を有する樹脂、フルオレン骨格を有する樹脂、側鎖にアダマンタン骨格を有する樹脂、側鎖にアダマンチル骨格を有する樹脂、又は、側鎖にノルボルナン骨格を有する樹脂が挙げられる。
また、樹脂は、アルカリ可溶性樹脂であってもよい。アルカリ可溶性樹脂であることで、積層体21の機能層12を容易に現像し、パターニングすることができる。樹脂がアルカリ可溶性樹脂の場合、樹脂にカルボキシル基が含まれることが好ましい。カルボキシル基の量は、酸当量で100〜600が好ましく、より好ましくは300〜450である。酸当量とは、その中に1当量のカルボキシル基を有する線状重合体の質量を示す。なお、酸当量の測定は、平沼産業社製平沼自動滴定装置(COM−555)を使用し、0.1mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液を用いて電位差滴定法により行われる。
また、下記の2種類の単量体の中より、各々1種又はそれ以上の単量体を共重合させることにより得られる樹脂を使用することもできる。第1の単量体は、分子中に重合性不飽和基(例えば、アクリレート或いはメタクリレート)を1個有するカルボン酸又は酸無水物である。第2の単量体は、非酸性で、分子中に重合性不飽和基を1個有する化合物であり硬化膜の可撓性、耐ドライエッチング性等の種々の特性を保持するように選ばれる。第1の単量体及び第2の単量体の選定により、既に説明した極性基を任意に樹脂に含ませることができる。
特に、機能層12は、上記説明した樹脂の他に、モノマを含むことが好ましい。すなわち、樹脂及びモノマを含むことが好ましい。ここで、モノマは本明細書により定義される樹脂以外の物質且つ、固体微粒子や固体フィラー以外の物質として定義する。すなわち、有機物、無機物、有機無機複合体のいずれも採用できる。この場合、樹脂により運動性を阻害されたモノマが、機能転写体14を被処理体20に当接する際に、その運動性を開放され、機能層12の表層の流動性をより向上させることができる。このため、既に説明した比率(Ra/lor)の効果における、機能層12と被処理体20と、の接着面積の増加をより促進することができる。特に、樹脂及びモノマが、機能層12の最外層に含まれることで、前記効果はより顕著となる。樹脂とモノマとの組み合わせは、(樹脂/モノマ)と記載すれば、(有機物/有機物)、(有機物/無機物)、(無機物/無機物)、又は(無機物/有機物)のいずれであってもよい。例えば、(有機物/無機物)であれば、上記説明した樹脂要件を満たす有機樹脂に対して金属アルコキシドを加えることができる。(無機物/無機物)であれば、上記要件を満たす樹脂要件を満たす無機樹脂、例えば、金属ポリマや金属酸化物ポリマに対して、金属アルコキシドを加えることができる。また、例えば(無機物/有機物)であれば、上記要件を満たす樹脂要件を満たす無機樹脂、例えば、金属ポリマや金属酸化物ポリマに対して、有機モノマを加えることができる。なお、金属アルコキシドは単量体として使用しても、縮合した数量体、或いはオリゴマ体を使用してもよい。
特に、この場合、樹脂或いはモノマの少なくとも一方は硬化性物質であることが好ましく、少なくともモノマが硬化性物質であることが好ましい。硬化性物質は、上述の樹脂が硬化性樹脂である場合の説明において、硬化性樹脂の樹脂を物質に置き換えればよい。この場合、機能層12の収縮作用が大きくなるため、ナノ構造11と機能層12との界面接着強度が低下し、転写性が向上する。特に、樹脂及びモノマが共に硬化性物質であると、該効果はより大きくなる。なお、硬化性物質を含む場合、樹脂が硬化性樹脂である場合について上記説明したように、硬化開始剤を含むことが好ましい。
樹脂及びモノマを含む場合、モノマの粘度は25℃において概ね5cP以上5000cP以下であると好ましく、8cP以上2500cP以下であるとより好ましく、10cP以上1500cP以下であると最も好ましい。なお、ここでの粘度は、使用するモノマ全てを混合した時の混合物に対する粘度を意味する。また、機能層12と被処理体20との界面の接着強度の固定化及び機能層12の物理安定性向上の観点から、モノマの平均官能基数は、概ね1以上6以下が好ましく、1以上4以下が好ましく、1.5以上3以下が最も好ましい。
なお、モノマは、上記化学式群Aから選ばれる環状部位を含むモノマであると、環状部位による物理的安定性の効果と、ナノ構造11の表面との化学的相互作用の低減の効果が大きくなる傾向にあるため、転写性が向上する。
更に、機能層12に染料、顔料等の着色物質を含有させることもできる。着色物を含有することで、機能層12を被処理体20に転写形成した際に、ナノ構造11の大きさが可視光の波長より十分小さい場合にも、転写が良好に行われているかを、目視及び光学式検知手段により判断することができる。更に、キャリア10のナノ構造11上に成膜された機能層12の品質管理に、着色物質の吸収を利用することができる。着色物質は、機能層12のナノ構造11由来の機能に支障をきたさぬように適宜選定できる。また、ロイコ染料やフルオラン染料と、ハロゲン化合物と、の組み合わせに代表される発色系染料も使用できる。中でも、トリブロモメチルフェニルスルフォンとロイコ染料との組み合わせや、トリアジン化合物とロイコ染料との組み合わせが有用である。
更に、機能層12の安定性を向上させるために、酸化防止剤を含むことができる。ここで、酸化防止剤は光安定剤であることが好ましい。光安定剤は、ラジカル連鎖開始阻止剤、ラジカル捕捉剤、過酸化物分解剤に分類でき、いずれも採用できる。ラジカル連鎖開始阻止剤は、更に、重金属不活性化剤と紫外線吸収剤に分類でき、重金属不活性化剤には主にヒドラジド系とアミド系があり、紫外線吸収剤には主にベンゾトリアゾール系、ベンゾフェノン系、そしてトリアジン系がある。これらの中では紫外線吸収剤がより好ましい。紫外線吸収剤を含ませることにより、機能層12を光学的に安定化できるため、使用に好適な場所にて使用できる。また、ラジカル捕捉剤は、HALS及びフェノール系酸化防止剤に分類できる。これらの酸化防止材は公知一般のものを使用できる。
また、機能層12中に、必要に応じて可塑剤等の添加剤を含有させることもできる。そのような添加剤としては、例えば、ジエチルフタレート等のフタル酸エステル類やpートルエンスルホンアミド、ポリプロピレングリコール、ポリエチレングリコールモノアルキルエーテル等が挙げられる。
<要件(F)>
次に、機能転写体14が満たすことが好ましい要件(F)について詳細に説明する。要件(F)は、機能転写体14の機能層12側の露出面は、温度20℃で、且つ、遮光下にて非液体状態であることである。要件(F)を満たすことで、安定な機能転写体14を得ることができるためである。ここで、非液体状態とは、液体及び気体ではないこととして定義する。すなわち、本実施の形態に係る機能転写体14の機能層12側の表面は、気体のように無形体ではなく、液体のようにその形状を自ら保持できない状態ではないことを意味する。例えば、半固体状、ゲル状、粘着状又は固体状といった表現を使用することができる。特に、図11Aに示すように、機能転写体14を平面81に置いた状態から、図11Bに示すように、機能転写体14を平面81に対してその底面を含む平面82が60度をなすように、機能転写体14を傾けて10分間静置したときに、傾ける前後における機能層12の膜厚変動が実質的にない状態として定義することもできる。この時の測定点は傾ける前後において同様の位置(図11A、図11B中の矢印Aで示す点)とする。ここで、膜厚変動が実質的にないとは、測定機器が持つ誤差等の様々な測定状況に応じて生じる測定誤差をX%とした場合に、(X+5)%以内の膜厚変動であることを意味する。
機能転写体14の機能層側の露出面がこのような要件(F)を満たすことにより、機能転写体14の機能層12の精度の維持性が高くなる。この観点から、機能層12のうち、少なくとも最外層を構成する機能層は、半固体状、ゲル状、粘着状又は固体状となる物質を含むことが好ましい。そのため、機能層12は、上記説明した樹脂を含むことが好ましい。なお、最も好ましくは、機能転写体14の機能層12側の面のタック性が抑制されている状態である。
樹脂を含むことで、上述した非液体状態を好適に達成することができるため、機能転写体14の安定性が向上すると共に、機能層12の転写精度が向上する。これは、分子量が1000以上であることで、機能層12が該樹脂のみにより構成される場合は、分子鎖の絡み合いを利用して粘度を急激に大きく、すなわち非液体状態に近づけることができるためである。また、該樹脂の他に、分子量が1000未満のモノマやオリゴマを含む場合は、モノマやオリゴマの運動性を樹脂により阻害できる、すなわち非液体状態に近づけることができるためである。更に、樹脂及びモノマを含むことで、モノマの運動性を樹脂により阻害し、非液体状態を達成すると共に、機能転写体14を被処理体20に当接する際に、モノマの運動性を開放することができる。すなわち、機能層12の最外層の流動性が大きくなるため、機能層12と被処理体20との接着強度が大きくなる。更に、上記説明した硬化性物質を含むことで、機能層12の表面の流動により接着強度を増した機能層12と被処理体20との界面を、例えば、熱や光により固定化することができるため、転写速度と転写性が向上する。この硬化性は反応速度の観点から光硬化性であることが最も好ましい。なお、少なくとも樹脂に上記説明した環状部位が含まれることで、環状部位同士の分子的相互作用を利用できるため、非液体状態を容易に満たすことができる。
<要件(G)>
次に、機能転写体14が満たすことが好ましい要件(G)について詳細に説明する。要件(G)は、要件(F)且つ、20℃超300℃以下の温度範囲の中でタック性を示すか、又は、タック性が増加することである。これにより、要件(F)の効果に加え、機能転写体14を被処理体20に直接当接する際に、所定の温度を加えることで、機能層12の表面はタック性(粘着性)を発現、又はタック性が増加する。これにより、機能層12全体の流動性を抑制しつつ、機能層12と被処理体20との界面の流動性を向上させることができるため、機能層12と被処理体20との接着面積を大きくし、接着強度を向上させることができる。この観点から、機能層12は上記説明した樹脂を含むことが好ましい。これにより、例えば、樹脂の幹ポリマが、熱により運動を開始しタック性を発現することとなる。特に、上記説明した極性基を含む樹脂を含むことで、タック性を容易に発現すると共に、機能層12と被処理体20との界面に対する静電気的相互作用や水素結合的作用を良好に発現できるため、接着強度が大きくなる。
更に、樹脂及びモノマを含むことが好ましい。特に、樹脂の総量とモノマの総量とは、重量部にて25:75〜100:0であると、機能転写体14としてはタック性がない、或いは極めて小さい状態であり、機能転写体14を使用する際に初めてタック性を発現することができる。この観点から、40:60〜100:0がより好ましく、55:45〜100:0が最も好ましい。
また、要件(F)と同様に、硬化性物質を含むことで、界面の接着強度を固定化できるため、転写性と速度が向上する。この硬化性は反応速度の観点から光硬化性であることが最も好ましい。
なお、上記説明したように、モノマと樹脂とを混合する場合、樹脂は、一般的にバインダ樹脂と称される。また、バインダ樹脂及びモノマが共に硬化性物質、例えば光硬化性物質の場合、モノマは一般的にクロスリンカと称される。
なお、機能転写体14の機能層12の露出面は、要件(G)及び要件(F)にて説明したように非液体状態であることが好ましい。すなわち、機能層12が複数の層により構成される場合、キャリア10のナノ構造11から最も遠い位置に配置される機能層、すなわち機能層12の最外層が上記説明した非液体状態を満たすことが好ましい。換言すれば、ナノ構造11と機能層12の最外層との間に配置される他の層は、液体状や気体状であってもよい。これは、内部に位置する他の層の状態によらず、機能層12の最外層が上記説明した非液体状態を満たすことで、上記説明した効果を発現できるためである。なお、機能層12の層構成については追って詳述する。
<キャリア>
次に、キャリア10について説明する。既に説明したように、機能層12の物性値である比率(Ra/lor)及び、ナノ構造11の平均ピッチの範囲を同時に満たすことで、機能層12の表層の流動性が大きくなり、機能層12と被処理体20との接着面積が大きくなり、これに伴い接着強度が増加する。一方で、機能層S12へのキャリア10のナノ構造11より加わる剥離応力を均等化できることから、機能層S12の破壊を抑制できる。すなわち、機能転写体14を使用することで、高精度な機能層S12を被処理体20に転写付与し、積層体21を得ることができる。特に、以下に説明するキャリア10を使用することで、機能層12のキャリア10のナノ構造11に対する配置精度の向上や、キャリア10を除去する際の機能層12の破損の抑制といった効果が大きくなるため好ましい。
なお、以下の説明において、―A−B−のように化学組成を表現することがあるが、これは、元素Aと元素Bとの結合を説明するための表現であり、例えば、元素Aが結合手を3以上有する場合であっても、同表現を使用する。すなわち、−A−B−と表記することで、元素Aと元素Bが化学結合することを少なくとも表現しており、元素Aが元素B以外と化学結合を形成することも含んでいる。
キャリア10のナノ構造11を構成する材料は特に限定されず、既に<機能層>にて説明した機能層12を構成する材料を使用することができる。その他にも、例えば、シリコン、石英、ニッケル、クロム、サファイア、シリコンカーバイド、ダイヤモンド、ダイヤモンドライクカーボン又はフッ素含有ダイヤモンドライクカーボン等の無機材を使用することができる。
キャリア10のナノ構造11の表面の自由エネルギを減少させることが好ましい。すなわち、ナノ構造11と機能層12との物理的及び化学的接着力を低減することで、転写性を大きく向上させることができる。自由エネルギを低減させる手法としては、ナノ構造11に対して離型処理を行うか、自由エネルギの低い材質を選定するか、表面の自由エネルギを低下させる成分を仕込む手法等を採用できる。ナノ構造11に対する離型処理は、公知一般に知られる離型処理を採用でき、一般的な防汚剤、レべリング材、撥水剤或いは指紋付着防止剤等を使用できる。また、離型処理を行う前に、ナノ構造11の表面を金属や金属酸化物にて被覆してもよい。この場合、離型処理の均等性とナノ構造11の強度を向上させることができる。自由エネルギの低い材質としては、PTFEに代表されるフッ素含有樹脂やPDMSに代表されるシリコーン樹脂等を使用できる。表面の自由エネルギを低下させる成分を仕込む手法としては、偏析やブリードアウト等を利用することができる。例えば、フッ素成分やメチル基成分の偏析、シリコーン成分のブリードアウト等を利用できる。なお、表面の自由エネルギを低減させる成分を仕込む手法は、機能層12に対して行うこともできる。例えば、フッ素成分やシリコーン成分を機能層12に仕込むことで、フッ素成分の偏析やシリコーン成分のブリードアウトを利用することができるため、機能層12とナノ構造11との接着強度を大きく低減できる。
特に、機能層12の種類によらず、機能層12とキャリア10と、の密着力を低減する観点から、キャリア10のナノ構造11の表面の自由エネルギは、3erg/cm以上18erg/cm以下であることが好ましい。これは、機能層12の自由エネルギ、すなわち機能層12の材料を任意に変化させた場合であっても、機能層12とキャリア10と、が接することで変化するギブスの自由エネルギの変化から計算される密着性が、上記範囲内にてピークボトムを迎えるためである。特に、キャリア10を剥離除去する際の摩擦力を低減する観点から、3erg/cm以上15erg/cm以下であることが最も好ましい。また、偏析によりキャリア10のナノ構造11の表面自由エネルギを低減させる場合、キャリア10を転写法にて製造する際に使用するマスターモールド(鋳型)の表面自由エネルギは、3erg/cm以上18erg/cm以下であることが好ましい。この範囲を満たすことで、キャリア10の転写精度が向上すると共に、キャリア10のナノ構造11の表面自由エネルギを偏析により良好に低減できる。なお、キャリアの表面エネルギは、機能層の表面エネルギ測定と同様の方法にて、測定対象をキャリア10のナノ構造11側の面として測定する。
上記説明したフッ素成分は、ポリフルオロアルキレンやペルフルオロ(ポリオキシアルキレン)鎖、パーフルオロポリエーテル鎖、直鎖状ペルフルオロアルキレン基、炭素原子−炭素原子間にエーテル性酸素原子が挿入され且つトリフルオロメチル基を側鎖に有するペルフルオロオキシアルキレン基、トリフルオロメチル基を分子側鎖又は分子構造末端に有する直鎖状のポリフルオロアルキレン鎖、或いは直鎖状のペルフルオロ(ポリオキシアルキレン)鎖等を具備するモノマや樹脂により導入できる。特に、表面自由エネルギの低減効果を大きくする点から、ポリフルオロアルキレン鎖は、炭素数2〜炭素数24のポリフルオロアルキレン基であることが好ましい。
ペルフルオロ(ポリオキシアルキレン)鎖は、(CFCFO)単位、(CFCF(CF)O)単位、(CFCFCFO)単位及び(CFO)単位からなる群から選ばれた1種以上のペルフルオロ(オキシアルキレン)単位からなることが好ましく、(CFCFO)単位、(CFCF(CF)O)単位、又は(CFCFCFO)単位からなることがより好ましい。ペルフルオロ(ポリオキシアルキレン)鎖は、ナノ構造11の物性(耐熱性、耐酸性等)が優れることから、(CFCFO)単位からなることが特に好ましい。ペルフルオロ(オキシアルキレン)単位の数は、ナノ構造11の表面自由エネルギの低減と硬度の向上の観点から、2〜200の整数が好ましく、2〜50の整数がより好ましい。
なお、本明細書におけるナノ構造11の表面自由エネルギが低いとは、キャリア10のナノ構造11の表面に対する水滴の接触角が60度以上であることである。ナノ構造11の表面のエネルギの一つの指標は水滴の接触角である。
キャリア10のナノ構造11に対する水滴の接触角が60度以上180度未満であり、且つ、ナノ構造11の比率(Sh/Scm)が、0.45以上1未満であることが好ましい。まず、水滴の接触角が60度以上であることにより、キャリア10のナノ構造11の表面自由エネルギを小さくできる。すなわち、ナノ構造11と機能層12と、の接着強度が低くなるため、転写精度が向上する。同様の効果から、70度以上であるとより好ましく、80度以上であると最も好ましい。また、ナノ構造11の表面をより安定化させ、機能層12とナノ構造11と、の物理的接着力を低下させる他、化学的接着力も小さくする観点から、85度以上であると好ましく、90度以上であるとより好ましく、95度以上であると最も好ましい。なお、接触角は後述する上限値を満たす範囲において、大きい程好ましい。
一方、接触角が180度未満であることにより、キャリア10のナノ構造11に対する機能層12の配置精度が向上する。同様の効果から、160度以下であるとより好ましく、140度以下であると最も好ましい。また、キャリア10のナノ構造11の表面自由エネルギを適度な範囲に調整し、機能層12の配置精度と除去精度を両立する観点から、120度以下であることがより好ましい。
なお、上記水滴の接触角は、『基板ガラス表面のぬれ性試験方法』として、JIS R 3257(1999)に制定された接触角測定方法を採用し、接触角測定対象となる基材として、本実施の形態に係るキャリア10を使用し、キャリア10のナノ構造11の表面を測定するものとする。
また、本実施の形態に係る機能転写体14において、キャリア10のナノ構造11は、フッ素元素、メチル基、及びシロキサン結合の群から選ばれる少なくとも1以上の要素を含有することが好ましい。このような要素を含むことにより、キャリア10のナノ構造11と機能層12との物理的及び化学的接着力を小さくすることができる。すなわち、機能層12と被処理体20との接着力を、ナノ構造11と機能層12との接着力に比べ相対的に大きくすることが容易となる。
また、シロキサン結合を含む添加剤、フッ素を含む添加剤或いはメチル基を含む添加剤をナノ構造11の原料に添加し、キャリア10のナノ構造11の表面自由エネルギを減少させることもできる。添加量としては、ナノ構造の原料全体に対して、概ね0.1重量%以上30重量%以下であると、ナノ構造11の物理安定性が向上すると共に、機能層12への該添加剤の転写が抑制されるため好ましい。
シロキサン結合の導入は、一般式−[−Si−O−]−nにおいて、nが50以上の部位を含む樹脂であると表面自由エネルギの低下が促進されるため好ましい。特に、nが100以上であると好ましく、300以上であるとより好ましく、1000以上であると最も好ましい。このような樹脂は、公知一般のシリコーンを使用することができる。
また、ナノ構造11がフッ素含有樹脂より構成される場合、ナノ構造11を構成する樹脂全体に対するフッ素元素濃度が25atm%以上であると、ナノ構造11の表面の自由エネルギの低下が大きくなるため好ましく、35atm%以上であるとより好ましい。
本実施の形態に係る機能転写体14において、キャリア10のナノ構造11の機能層12面側の表層フッ素元素濃度(Es)とキャリア10の平均フッ素元素濃度(Eb)と、の比率(Es/Eb)は、1超30000以下であることが好ましい。なお、平均フッ素元素濃度(Eb)は、キャリア10が、支持基材15とナノ構造11より構成される場合は、ナノ構造11に対して測定される。
比率(Es/Eb)を1超にすることにより、キャリア10の支持基材15とナノ構造11との接着力を大きくすると共に、ナノ構造11の物理強度を向上させることができる。一方、該比率(Es/Eb)を30000以下とすることで、キャリア10のナノ構造11に対する機能層12の配置精度が向上すると共に、ナノ構造11表面の表面自由エネルギを効果的に減少させることができるため、機能層12とナノ構造11との接着力を低減できる。すなわち、比率(Es/Eb)が上記範囲を満たすことで、機能転写体14の物理的安定性が向上すると共に、転写精度を高めることができる。また、キャリア10の再利用性が向上する。
比率(Es/Eb)が3≦(Es/Eb)≦1500、10≦(Es/Eb)≦100の範囲となるにしたがって、機能層12の転写精度がより向上すると共に、キャリア10の再利用性が向上するため好ましい。なお、上記する最も広い範囲(1<(Es/Eb)≦30000)の中にあって、20≦(Es/Eb)≦200の範囲であれば、表層フッ素元素濃度(Es)が、平均フッ素濃度(Eb)より十分高くなり、キャリア10のナノ構造11の表面の自由エネルギが効果的に減少するので、機能層12と物理的及び化学的接着力が低下する。また、ナノ構造11と支持基材15との接着力が大きくなると共に、ナノ構造11内部のフッ素元素濃度の勾配が適度となることから、ナノ構造11の機械強度が大きくなる。これにより、支持基材15との密着性に優れ、機能層12との離型性に優れ、しかも、再利用性に優れるキャリア10を得ることができるので特に好ましい。この効果をより発現する観点から、順次、26≦(Es/Eb)≦189、30≦(Es/Eb)≦160、31≦(Es/Eb)≦155の順に好ましい。更に、46≦(Es/Eb)≦155であれば、キャリア10を複製する効果とキャリア10を再利用する効果がより大きくなるため好ましい。なお、上記(Es/Eb)の範囲を満たすナノ構造11においては、キャリア10のナノ構造11の表面自由エネルギは既に説明した3erg/cm以上18erg/cm以下の範囲を満たすことで、上記説明した機能層12との離型性、支持基材15との密着性、及び繰り返し使用性がより向上するため最も好ましい。
なお、キャリア10のナノ構造の表層とは、例えば、ナノ構造11の表面側からキャリア10の裏面(支持基材15面)側に向かって、略1%〜10%厚み方向に侵入した部分、又は厚み方向に2nm〜20nm侵入した部分を意味する。なお、表層フッ素元素濃度(Es)は、X線光電子分光法(XPS法)により定量できる。XPS法のX線の浸入長は数nmから十数nmと浅いため、Es値を定量する上で適している。また、キャリア10の平均フッ素濃度(Eb)は、仕込み量から計算することができる。又は、キャリア10の切片を、フラスコ燃焼法にて分解し、続いてイオンクロマトグラフ分析にかけることでも、キャリア10の平均フッ素元素濃度(Eb)を同定することができる。
このような比率(Es/Eb)を満たすキャリア10を構成するための原料としては、非フッ素含有の(メタ)アクリレート、フッ素含有(メタ)アクリレート及び光重合開始剤の混合物を使用することができる。これらの混合物を、表面自由エネルギの低いマスターモールド(鋳型)に接触させた状態で光硬化させると、キャリア10のナノ構造11の表層部のフッ素元素濃度(Es)を、キャリア10の平均フッ素元素濃度(Eb)より大きくでき、更にはキャリア10の平均フッ素元素濃度(Eb)をより小さくするように調整することができる。なお、上記表面自由エネルギの低いマスターモールド(鋳型)の表面自由エネルギは、既に説明した定義により測定した時の値が、3erg/cm以上18erg/cm以下であることが好ましい。この範囲を満たすことで、フッ素含有(メタ)アクリレートの偏析性が良好になり比率(Es/Eb)を容易に調整することができる。
なお、非フッ素含有(メタ)アクリレートは、公知一般の光重合性モノマや光重合性オリゴマを使用することができる。また、光重合開始剤についても同様に公知一般の光重合開始剤を使用できる。フッ素含有(メタ)アクリレートは、分子中にフッ素元素を含む光重合性(メタ)アクリレートであれば特に限定されないが、例えば、下記化学式(1)〜化学式(3)で示されるフッ素含有ウレタン(メタ)アクリレートであると、効果的に平均フッ素元素濃度(Eb)を低く且つ、表層フッ素元素濃度(Es)を高くできるため、より好ましい。このようなウレタン(メタ)アクリレートとしては、例えば、ダイキン工業社製の「オプツール(登録商標)DAC」を用いることができる。
Figure 2015112781
(化学式(1)中、R1は、下記化学式(2)を表し、R2は、下記化学式(3)を表す。)
Figure 2015112781
(化学式(2)中、nは、1以上6以下の整数である。)
Figure 2015112781
(化学式(3)中、Rは、H又はCHである。)
本実施の形態に係る機能転写体14に使用されるキャリア10のナノ構造11は弾性体であると、機能層12の転写精度がよりいっそう向上するため好ましい。これは、機能転写体14を使用する際の環境雰囲気の巻き込みを抑制できることと、キャリア10を除去する際の、機能層12に加わる剥離応力の絶対値を減少できることと、による。このような観点から、キャリア10のナノ構造11は、ABS樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、塩化ビニル樹脂、メタクリル樹脂、アクリル樹脂、フッ素含有アクリル樹脂、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリアセタール、ポリエステル、ポリフェニレンエーテル、ポリウレタン、フッ素含有ポリウレタン、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、テトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、テトラフルオロエチレン・エチレン共重合体(ETFE)、ポリビニリデンフルオライド(PVDF)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、クロロトリフルオエチレン・エチレン共重合体(ECTFE)、シリコーン樹脂又はポリジメチルシロキサン等の樹脂より構成されると好ましい。特に、光硬化性樹脂の硬化物より構成される場合、原料となる光硬化性樹脂の平均官能基数は6以下であると転写精度がいっそう向上するため好ましく、4以下であるとより好ましく、3以下であると最も好ましい。ナノ構造11の弾性率を減少させ、被処理体20に転写付与される機能層12の選択幅を拡大する観点から、2.5以下であると好ましく、1.5以下であるとより好ましい。
キャリア10のナノ構造11が弾性体である場合、ガラス転移温度Tgが100℃以下である弾性体であることが好ましく、公知市販のゴム板や樹脂板、フィルム等を使用することができるが、特に、60℃以下であることで、弾性変形の程度が大きくなることから、転写性が向上するため好ましい。最も好ましくは、同様の観点から30℃以下である。更に、該ガラス転移温度が30℃以下であることで、既に説明した比率(Ra/lor)の効果をより促進できるため好ましい。同様の観点から、該ガラス転移温度Tgは、0℃以下であることが好ましく、−20℃以下であることが最も好ましい。このようなTgの低い弾性体としては、例えば、シリコーンゴム、ニトリルゴム、フッ素ゴム、ポリイソプレン(天然ゴム)、ポリブタジエン、ポリ酢酸ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ナイロン6、ナイロン66、ポリエチレンテレフタレート、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン、ポリメタクリル酸メチル、及び、ポリスチレンが挙げられる。
また、キャリア10のナノ構造11は、溶剤或いは水に溶解する組成物により構成されると、キャリア10の除去を該組成物による溶解により実施可能となり、機能層12の転写精度が向上するため好ましい。
キャリア10がフレキシブルな場合、ナノ構造11を構成する材質は、光硬化性樹脂の硬化物、熱硬化性樹脂の硬化物或いは熱可塑性樹脂等を採用できる。一方、キャリア10が非フレキシブルな場合、ナノ構造11を構成する材質としては、金属や金属酸化物等を使用できる。例えば、シリコン、石英、ニッケル、クロム、サファイア、シリコンカーバイド、ダイヤモンド、ダイヤモンドライクカーボン或いはフッ素含有ダイヤモンドライクカーボン等の無機材を使用できる。また、非フレキシブルな場合、非フレキシブルな支持基材15の上に、樹脂より構成されるナノ構造11を形成することもできる。フレキシブル又は非フレキシブルいずれの場合においても、既に説明したように、ナノ構造11の表面の自由エネルギを低下させると好ましい。
キャリア10がフレキシブルである場合、連続的に大面積に機能層12を被処理体20へと転写付与することができる。この観点から、ナノ構造11を構成する原料は光硬化性樹脂組成物であると好ましく、特に、円筒状のマスターロール表面のナノ構造を連続的に光ナノインプリント法により転写形成すると好ましい。
<機能層の配置>
次に、機能層12のナノ構造11に対する配置例を説明する。以下、機能層12の配置を具体的に説明するが、本発明の機能転写体14の機能層12の配置はこれに限定されない。
機能層12は、多層機能層構造をとることができる。この場合、既に説明したように、機能層12の最外層、すなわち、キャリア10のナノ構造11から最も遠い位置の機能層は、非液体状態であることが好ましい。更に、機能層12の最外層は、被処理体20に対し接着性を発現すると共に、所望の機能を別途発現可能なこと、換言すれば、最外層は接着機能を発現すると共に、更に別の機能を発現することが好ましい。すなわち、最外層は、接着機能と以下に説明するナノ構造特有の機能或いは非ナノ構造域92(図12参照)の機能を発現できることが好ましい。これにより、被処理体20に転写付与される機能数が増加するため、積層体21のナノ構造特有の機能をより良好に発現させることができる。なお、詳しくは後述するが、機能層12の機能は、ナノ構造特有の機能と被処理体20の用途に応じた機能に分類できる。
機能層12が2層以上の多層機能層であり、機能層12の最外層が非液体状態であることで、機能層12の被処理体20に対する転写性を維持しつつ、積層体21の機能数が大きくなる。例えば、機能転写体14のキャリア10側から機能層A及び機能層Bがこの順に積層されている場合、機能層Aは、液体や気体であってもよい。液体としては例えば、溶剤、分散粒子を含む溶剤、蛍光体の分散した溶剤及びイオン液体を使用することができる。特にイオン液体の場合、蒸気圧が0に漸近するため、機能層Bを設ける際にドライプロセスを採用することもできる。特に、機能転写体14の機能層12の精度を被処理体20に転写付与する際の精度の観点から、機能層12が2層以上の多機能層で構成される場合、少なくとも半分以上の機能層12が非液体状態であると好ましく、8割以上の機能層12が非液体状態であるとより好ましく、全ての機能層12が非液体状態であると最も好ましい。
後述するように、2層以上の多機能層を形成する場合、全ての層がナノ構造特有の機能を発現する場合と、ナノ構造特有の機能を発現する層と被処理体20の用途に応じた機能を発現する層とが混在する場合と、がある。
図12に示すように、機能転写体14はキャリア10のナノ構造11上に機能層12を含むため、機能層12は、キャリア10のナノ構造11を含む領域(以下、ナノ構造域という)91と、ナノ構造11を含まない領域(以下、非ナノ構造域という)92に分類できる。積層体21の機能層S12の発現するナノ構造特有の機能は、ナノ構造域91によって決定される。すなわち、機能層12が単層である場合、機能層12は、ナノ構造特有の機能を発現すると共に、被処理体20との接着性を発現することとなる。機能層12がN層構造である場合、第1層〜第M層(M≦N、N≧2)がナノ構造域91に含まれ、第M層〜第N層(M≦N、N≧2)が非ナノ構造域92に含まれる形態をとることができる。ここで、M=Nの場合、全ての多層化された機能層12がナノ構造域91に含まれることとなる。非ナノ構造域92に含まれる層は、被処理体20の使用に適した機能を発現できることが好ましい。すなわち、機能層12が多層構造の場合、全ての機能層12がナノ構造域91に含まれる場合は、最外層はナノ構造特有の機能と被処理体20への接着性を発現し、非ナノ構造域92に含まれる機能層12が存在する場合は、最外層は被処理体20の使用に応じた機能と被処理体20への接着性を発現することが好ましい。
ここで、ナノ構造域91に含まれるとは、キャリア10のナノ構造11に応じた形状或いは配列を含むことと定義する。すなわち、非ナノ構造域92に含まれる機能層12が存在する場合、ナノ構造域91に含まれる機能層12によりキャリア10のナノ構造11は満たされ平坦化されている。以上のように、本実施の形態の機能転写体14においては、機能層12の最外層は、積層体21に応じた機能を発現すると共に、被処理体20への接着性も併せ持つことが好ましい。
ナノ構造特有の機能としては、まず、強い疎水性機能が挙げられる。そして、ナノ構造S11の配列や形状を制御することで、強い疎水性機能に対して、更に、例えば、光回折機能、有効媒質近似機能、光回折由来の光散乱機能、表面プラズモン機能、比表面積増加機能、準ポテンシャル設定機能、光閉じ込め機能、レナードジョーンズポテンシャルの強めあい機能、滑落機能、光抽出機能、フォトニック結晶機能、ナノ反応場機能、量子ドット機能、ナノ粒子機能及びメタマテリアル機能等を付加することが出来る。
非ナノ構造域92の機能層12の具備する機能としては、被処理体20の使用方法により適宜選定できるが、例えば、ガスバリア機能、水蒸気バリア機能、耐摩耗機能、防汚機能、疎水性機能、親油性機能、親水性機能、帯電防止機能、カラーフィルタ機能、カラーシフト機能、偏光修正機能、反射防止機能、光再指向機能、拡散機能、光学回転機能、バッファー機能、応力緩和機能、熱拡散機能、放熱機能、吸熱機能、高硬度機能、及び、着色機能が挙げられる。
次に、機能層12のキャリア10のナノ構造11に対する配置例について説明する。機能層12がナノ構造域91にのみ含まれる場合、図13A〜図13Iに示すように大きく9つの状態をとることができる。図13Aは、機能層12がキャリア10のナノ構造11の凹部11a内部のみに充填配置されていることを示している。図13Bは、機能層12がナノ構造11の凸部11bの頂部上にのみ積層配置されている場合を示している。図13Cは、機能層12がキャリア10のナノ構造11の凹部11a内部及び凸部11b頂部上に配置され、且つ、凹部11a内部の機能層12と凸部11b頂部上の機能層12とが離間している状態を示している。図13Dは、機能層12がキャリア10のナノ構造11の表面に被膜を形成するように被覆している場合を示している。図13Eは、機能層12がキャリア10のナノ構造11を充填し、平坦化している状態を示している。図13Fは、第1の機能層12aがキャリア10のナノ構造11の凹部11a内部にのみ充填配置され、第1の機能層12a及びキャリア10のナノ構造11を平坦化するように第2の機能層12bが更に設けられた状態を示している。図13Gは、第1の機能層12aがナノ構造11の凸部11bの頂部上にのみ積層配置され、第1の機能層12a及びキャリア10のナノ構造11を平坦化するように第2の機能層12bが更に設けられた状態を示している。図13Hは、第1の機能層12aがキャリア10のナノ構造11の凹部11a内部及び凸部11b頂部上に配置され、且つ、凹部11a内部の第1の機能層12aと凸部11b頂部上の第1の機能層12aとが離間しており、第1の機能層12a及びキャリア10のナノ構造11を平坦化するように第2の機能層12bが更に設けられた状態を示している。図13Iは、第1の機能層12aがキャリア10のナノ構造11の表面に被膜を形成するように被覆しており、この第1の機能層12aを平坦化するように第2の機能層12bが更に設けられた状態を示している。いずれの状態をとるかは、被処理体20の用途により適宜選定することができる。また、これらの状態は、キャリア10のナノ構造11の形状や配列の影響によらない。
図13においては、機能層12,12a,12bのそれぞれを単層のように描いているが、それぞれ多層機能層であってもよい。すなわち、上記説明したN層の多層機能層において、N層全てがナノ構造域91に含まれる状態である。
ナノ構造域91に含まれる機能層12と、非ナノ構造域92に含まれる機能層12と、を含む場合、図14A〜図14Eに示すように、大きく5つの状態をとることができる。図14A〜図14Dは、図13において説明した、第1の機能層12aを、第2の機能層12bによりナノ構造11が平坦化された場合に関し、第2の機能層12bの表面上に更に3つめの機能層12cを設けた状態を示している。すなわち、図14A〜図14Dにおいて、機能層12a及び12bは、図12に示したナノ構造域91に含まれ、且つ、ナノ構造特有の機能を発現する層として機能し、機能層12cは、図12に示した非ナノ構造域92に含まれるため、積層体21の使用に応じた更なる機能を発現することが好ましく、被処理体20との接着性も発現する層として機能する。図14Eは、図13において説明した、第1の機能層12aによりナノ構造11が平坦化された場合に関し、第1の機能層12aの表面上に更に2つめの機能層12cを設けた状態を示している。すなわち、図14Eにおいて、第1の機能層12aは、図12に示したナノ構造域91に含まれる、且つ、ナノ構造特有の機能を発現する層として機能し、機能層12cは、図12に示した非ナノ構造域92に含まれるため、積層体21の使用に応じた更なる機能を発現することが好ましく、被処理体20との接着性も発現する層として機能する。また、図14においては、機能層12a〜12cをそれぞれが単層のように描いているが、これらの層は多層機能層であってもよい。
機能層12の厚みは、積層体21の機能層S12の発現すべき機能により適宜選定できるが、機能転写体14の機能層12の転写精度の観点から、以下に示す厚み範囲を満たすと好ましい。機能層12の厚みは、ナノ構造域91に含まれる機能層12と非ナノ構造域92に含まれる機能層12とのバランスにより適宜設計できる。機能層12の厚みは、図14に示したように、機能層12が非ナノ構造域92に含まれる場合と、図13に示したように機能層12がナノ構造域91にのみ含まれる場合とでわけることができる。
・機能層が非ナノ構造域92に含まれる場合
既に説明した距離(lor)が以下の範囲を満たすことが好ましい。ここで、距離(lor)は、キャリア10のナノ構造11の凸部11bの凸部頂部位置と機能層12の露出する表面との最短距離頂であり、既に説明した測定方法により解析され求められる相加平均値である。距離(lor)は、上記説明した比率(Ra/lor)を満たす範囲内において、0nm超であると、機能層12の被処理体20への転写精度が向上するため好ましい。特に、機能層12の表面の分子スケールの破壊を抑制し、被処理体20と機能層12と、の接着強度を保つ観点から、5nm以上であることが好ましく、10nm以上であることがより好ましい。また、機能層12の流動性を向上させ、既に説明した比率(Ra/lor)の効果をより良好に発現する観点から、距離(lor)は、20nm以上であることがより好ましく、50nm以上であることが最も好ましい。また、機能転写体14を被処理体20に当接する際の、機能層12の流動による膜厚分布の悪化を抑制する観点から、距離(lor)は10000nm以下であることが好ましく、5000nm以下であるとより好ましい。機能転写体14の製造性を良好にすると共に、使用する機能層12の量を低下させる観点から、3000nm以下であるとより好ましく、1500nm以下であると最も好ましい。更に、1200nm以下であると、機能層12の膜厚変動に対する耐性がより向上するため好ましい。特に、機能層12の弾性率をバルクの弾性率よりも向上させ、当接時の膜厚変動をより効果的に抑える観点から、1000nm以下であると好ましく、800nm以下であるとより好ましく、600nm以下であると最も好ましい。
なお、ナノ構造域91(図12参照)に含まれる機能層12の厚みは、非ナノ構造域92に含まれる機能層12c(図14参照)により転写精度を担保しているため、ナノ構造特有の機能により適宜選択すればよい。
・機能層12がナノ構造域91にのみ含まれる場合
機能層12の配置状態により大きく2つに分類できる。1つめは、機能層12がキャリア10のナノ構造11を平坦化していない場合(以下、「タイプA」という)であり、図13A〜図13Dに例示した状態である。2つ目は、機能層12によりキャリア10のナノ構造11が平坦化されている場合(以下、「タイプB」という)であり、図13E〜図13Iに例示した状態である。
更に、タイプAの場合は大きく3つに分類できる。まず、図13Aに示した、キャリア10のナノ構造11の凹部11a内部にのみ機能層12が配置される場合(以下、「タイプA1」という)である。次に、図13Bに示したキャリア10のナノ構造11の凸部上部にのみ機能層12が設けられる場合、或いは、図13Cに示したキャリア10のナノ構造11の凸部上部及び凹部11a内部に機能層12が設けられ互いに離間している場合(以下、「タイプA2」という)である。最後に、図13Dに示したキャリア10のナノ構造11の表面を被覆するように機能層12が設けられる場合(以下、「タイプA3」という)である。
タイプAの場合(図13A〜図13D参照)、機能層12の厚み(H1)は、以下に説明する範囲を満たすことが好ましい。ここで、機能層12の厚み(H1)は、キャリア10のナノ構造11と機能層12との界面平均位置から、機能層12の露出する表面平均位置までの最短距離として定義する。
タイプA1の場合(図13A参照)、機能転写体14を被処理体20に対し当接する際に、貼合雰囲気を巻き込むことを抑制し、転写精度を高める観点から、ナノ構造11の高さをHnとした時に、機能層12の厚み(H1)は、0.1Hn以上1.2Hn以下であると好ましい。特に、機能層12の転写精度をより向上させる観点から、0.5Hn以上であると好ましく、0.75Hn以上であると好ましく0.85Hn以上であると最も好ましい。更に、機能層12の配置精度を向上させ、積層体21の精度を向上させる観点から、0.98Hn以下が好ましく、0.95Hn以下がより好ましく、0.9Hn以下が最も好ましい。
タイプA2の場合(図13B及び図13C参照)、機能転写体14の機能層12を被処理体20に対し当接する際の貼合性を向上させると共に、積層体21の機能層S12の破損を抑制する観点から、ナノ構造11の高さをHnとした時に、機能層12の厚み(H1)は、0.1Hn以上Hn以下であると好ましい。特に、機能層12の転写精度をより向上させる観点から、0.2Hn以上0.9Hn以下であると好ましく、0.25Hn以上0.85Hn以下であるとより好ましく、0.4Hn以上0.6Hn以下であると最も好ましい。
タイプA3の場合(図13D参照)、機能転写体14の機能層12を被処理体20に対し当接する際の貼合精度及び、転写精度の観点から、ナノ構造11の高さをHnとした時に、機能層12の厚み(H1)は、0.01Hn以上Hn以下であると好ましい。特に、機能層12の転写精度をより向上させる観点から、0.1Hn以上であると好ましく、0.15Hn以上であると好ましく0.2Hn以上であると最も好ましい。更に、機能層12の配置精度を向上させ、被処理体20上に設けられる機能層12の精度を向上させる観点から、0.9Hn以下が好ましく、0.75Hn以下がより好ましく、0.65Hn以下が最も好ましい。
図13E〜図13Iに例示されるタイプBは更に2つに分類することができる。まず、キャリア10のナノ構造11を平坦化するように設けられた機能層12を有する場合(図13E参照)及び、キャリア10のナノ構造11の凹部11a内部に配置された第1の機能層12aと、該第1の機能層12a及びナノ構造11を平坦化するように設けられた第2の機能層12bを有する場合(図13F参照)(以下、「タイプB1」という)である。次に、キャリア10のナノ構造11の凸部11b上に第1の機能層12aが設けられ、更にナノ構造11を平坦化するように設けられた第2の機能層12bを有する場合(以下、「タイプB2」という)であり、図13G〜図13Iに例示した状態である。
タイプB1の場合、厚み(H1)は、キャリア10のナノ構造11の凸部11bの頂部位置から機能層12の表面までの距離である。一方、タイプB2の場合、機能層12の厚み(H1)は、距離(lor)から、キャリア10のナノ構造11の凸部11b上に設けられた第1の機能層12aの厚みを減じた値として定義する。すなわち、タイプB2の場合、厚み(H1)は、キャリア10のナノ構造11の凸部11b上に設けられた第1の機能層12aの頂部位置から第2の機能層12bの表面までの距離である。厚み(H1)は、0nm超であると、機能層12の被処理体20への転写精度が向上するため好ましい。特に、機能層12の表面の分子スケールの破壊を抑制し、被処理体20と機能層12と、の接着強度を保つ観点から、5nm以上であることが好ましく、10nm以上であることがより好ましい。また、機能層12の流動性を向上させ、既に説明した比率(Ra/lor)の効果をより良好に発現する観点から、20nm以上であることがより好ましく、50nm以上であることが最も好ましい。また、機能転写体14を被処理体20に当接する際の、機能層12の流動による膜厚分布の悪化を抑制する観点から、距離(lor)は10000nm以下であることが好ましく、5000nm以下であるとより好ましい。機能転写体14の製造性を良好にすると共に、使用する機能層12の量を低下させる観点から、3000nm以下であるとより好ましく、1500nm以下であると最も好ましい。更に、1200nm以下であると、機能層12の膜厚変動に対する耐性がより向上するため好ましい。特に、機能層12の弾性率をバルクの弾性率よりも向上させ、当接時の膜厚変動をより効果的に抑える観点から、1000nm以下であると好ましく、800nm以下であるとより好ましく、600nm以下であると最も好ましい。
機能転写体14を使用することで、被処理体20の上に機能層S12を転写付与できる。そして、この機能層S12は強い疎水性機能を発現する。ここで、積層体21にパターニングされた光、特に紫外線を照射することで、紫外線の照射された部分の疎水性機能を減少、或いは消失させることが可能となる。即ち、積層体21において、疎水性機能を発現する部分をパターニングすることが可能となる。特に、機能層12の中に、水酸基、スルホン酸基、アミン基、アンモニウム基、アミド結合、ポリオキシエチレン単位、リン酸基、及び、カルボキシ基からなる群より選ばれる少なくとも1以上の化学構造群を付帯する樹脂、或いは、チタン(Ti)、亜鉛(Zn)、錫(Sn)、タングステン(W)、ビスマス(Bi)、鉄(Fe)又はシリコン(Si)からなる群から選ばれる少なくとも1以上の金属元素を金属種に有する金属酸化物の少なくともいずれか一方を含むことで、疎水性機能の低下は顕著となり、強い親水性を発現することが可能となる。換言すれば、積層体21において、強い疎水性を発現する領域と強い親水性を発現する領域と、をパターニング可能となる。これにより、例えば、水蒸気の捕集、霧の捕集、又は、ナノオーダ或いはマイクロオーダの流路等を実現できる。
<マスク転写体>
次に、機能転写体14を加工用マスクの転写体として使用する場合に関し、機能層12のより好ましい配置について説明する。機能転写体14を加工用マスクの転写体として使用することで、被処理体20の表面を加工することができる。すなわち、加工されたナノ構造を具備する被処理体20を使用して、上述した様々な用途を実現することができる。なお、以下、特に断りのない限り、既に説明した機能転写体14の層構造や使用方法、各種物性等を満たすものとする。
本実施の形態に係る機能転写体14を、被処理体20を加工するためのマスク機能を被処理体20上に転写形成する目的にて使用することにより、被処理体20の面内における加工精度を向上させることができる。これは、マスクとして機能する機能層S12の厚みやナノ構造S11の大きさ・配列といった要素を、機能転写体14のキャリア10のナノ構造11の精度及び機能層12の膜厚の精度にて予め決定し担保することができるためである。機能層12が2以上含まれる場合、少なくとも1以上の機能層12は被処理体20の加工用マスクとして機能し、少なくとも1以上の機能層は他の機能層を加工するためのマスクとして機能する。すなわち、機能転写体14を使用することで、被処理体20の表面に機能層12を転写付与できる。この機能層12が2以上の層より構成される場合、1以上の機能層を他の機能層の加工用マスクとして機能させ、他の機能層を例えばドライエッチングにより加工する。その後、機能層12を加工用マスクとして被処理体20を、例えばドライエッチング又はウェットエッチングにより加工することができる。一方で、機能層12が単層の機能層の場合、機能層12を加工用マスクとして、例えばドライエッチング又はウェットエッチングにより被処理体20を加工することができる。マスク転写体14としては、図13及び図14を参照し既に説明した機能転写体14を採用することができる。
<保護層>
次に、機能転写体14に設けられる保護層13について説明する。保護層13は、機能転写体14の使用や搬送環境等により、必要な場合に設ければよい。この場合、保護層13の役割は、機能層12の機能劣化の低減、機能層12の表面への異物の付着、そして機能層12に対する傷の生成を抑制することである。保護層13は、保護層13と機能層12の最外層との接着強度が、機能層12とキャリア10のナノ構造11との接着強度、及び、機能層12の各層の界面接着強度よりも小さければ特に限定されない。特に、保護層13の成分が機能層12へと付着し残存しないと好ましい。また、図13Aに示すように、キャリア10のナノ構造11の凹部11aの内部に機能層12が設けられ、機能層12の露出する面が、ナノ構造11の凸部11bの平均位置よりもナノ構造11の凹部11a側にある場合、保護層13を機能転写体14に貼り合わせた時に、ナノ構造11の凸部11bが保護層13と接し、機能層12は保護層13と接しない場合がある。このような場合、保護層13を除去した時に、保護層13の成分がキャリア10のナノ構造11に付着し残存しなければ特に限定されない。
保護層13の機能転写体14の機能層12面側の表面粗さをRaPと記載すれば、既に説明した距離(lor)とRaPとの比率(RaP/lor)は、既に説明した比率(Ra/lor)の1.5倍以下であることが好ましい。この範囲を満たすことで、保護層13の機能層12に対する貼合性を向上させ、連続的にロール・ツー・ロール法にて保護層13を設けることができると共に、機能層12の表面状態を良好に保つことができる。なお、比率(RaP/lor)のより好ましい範囲は、上述した比率(Ra/lor)のより好ましい範囲の1.5倍以下である。なお、表面粗さ(RaP)は、既に説明した機能層12側の表面粗さ(Ra)と同様の手法にて測定される値である。なお、保護層13を配置しない場合は、キャリア10のナノ構造11とは反対側の面の表面粗さが、上記表面粗さ(RaP)の範囲を満たすことが好ましい。なお、表面粗さ(RaP)は、既にした機能転写体14の機能層12側の表面粗さ(Ra)と同様の装置及び方法により測定される値である。
また、保護層に対する水の接触角Θpは、キャリアに対する水の接触角Θcよりも小さいことが好ましい。ここで、保護層に対する水の接触角は、上記説明したキャリアに対する水の接触角と同様に測定され、測定対象を保護層の機能層に接するべき面とする。ΘpがΘcよりも小さいことで、機能層12内部に存在するフッ素元素が、キャリアのナノ構造11側から、機能層12と保護層13との界面側に向けて、その濃度を減少させるように移動することが可能となる。即ち、機能層のフッ素元素濃度Efを良好に達成して、強い疎水性機能を発現すると共に、積層体21を製造する際の不良率を大きく低減できる。より具体的には、機能層12の、保護層13との界面近傍におけるフッ素元素濃度を低く保つことが可能となり、上記説明した(Ra/lor)の効果における、機能層表層の流動性がより促進される。これにより、機能層の表面と被処理体の表面と、の間に存在する微小な隙間を効果的に消失させることが可能となり、転写性が向上する。この観点から、Θc−Θpは、10度以上であることが好ましく、30度以上であることがより好ましく、60度以上であることが最も好ましい。
保護層13は、ASTM規格のD638に定められる引張強さが、15MPa〜90MPaの範囲にあることが好ましい。これにより、保護層13を機能層12に対して貼り合わせる際の、保護層13の破断を抑制できる。保護層13のラミネーション性の観点から、該引張強さは、20Mpa〜40Mpaであることがより好ましく、20Mpa〜30Mpaであることが最も好ましい。
保護層13は、ASTM規格のD638に定められる破断時伸びが10%〜1500%の範囲にあることが好ましい。これにより、保護層13を機能層12に対して貼り合わせる際の、皺を抑制することが出来る。皺の抑制と、保護層13のラミネーション性の観点から、該破断時伸びは、50%〜900%であることがより好ましく、90%〜800%であることが最も好ましい。
保護層13は、ASTM規格のD638に定められる引張弾性率が500MPa〜5000MPaの範囲にあることが好ましい。これにより、保護層13を機能層12に対して貼り合わせる際の、皺を抑制することが出来る。皺の抑制と、保護層13のラミネーション性の観点から、該引張弾性率は、750MPa〜2500MPaであることがより好ましく、900MPa〜1500MPaであることが最も好ましい。
保護層13は、ASTM規格のD638に定められる圧縮強さが10MPa〜150MPaの範囲にあることが好ましい。これにより、機能転写体14を巻き取る際の空気の同伴を抑制できる。巻取りをよりスムーズにする観点から、該圧縮強さは、15MPa〜60MPaであることがより好ましい。
保護層13は、ASTM規格のD638に定められる曲げ強さが150MPa以下であることが好ましい。これにより、機能転写体14を製造する際の、保護層13のパスラインの選択肢が大きくなる。特に、機能転写体14を製造する装置をコンパクトに仕上げる観点から、該曲げ強さは、100MPa以下であることがより好ましく、50MPa以下であることが最も好ましい。
保護層13は、ASTM規格のD696に定められる線膨張率が3×10−5/℃〜15×10−5/℃の範囲にあることが好ましい。これにより、機能転写体14を製造する際、使用する際、或いは搬送する際の温度変化に対する耐久性が向上する。本効果をよりいっそう発揮する観点から、該線膨張率は、4×10−5/℃〜9×10−5/℃であることがより好ましく、5×10−5/℃〜7×10−5/℃であることが最も好ましい。
保護層13は、ASTM規格のD570に定められる吸水率(24時間)が0.3重量%以下であることが好ましい。これにより、機能転写体14を製造する際の季節の影響を抑制できる。また、機能転写体14を輸送する際の湿度変化に対する耐性を向上させる観点から、該吸水率は0.2重量%以下であることがより好ましい。更に、機能層12と保護層13と、の強固な密着を抑制する観点から、該吸水率は、0.1重量%以下であることがより好ましく、0.01重量%以下であることが最も好ましい。
保護層13としての保護フィルムのJIS B 0601に従い測定される表面粗さは、小さい程好ましい。例えば、中心線平均粗さが0.003μm〜0.05μmであることが、機能層12の保護層13と接する面への過度なラフネスの転写を抑制できるため好ましく、0.005μm〜0.03μmであることが更に好ましい。また、保護層13の機能層12と接触しない面のJIS B 0601に従い測定される表面粗さが0.1μm〜0.8μm、及び最大高さが1μm〜5μmであると、保護層13を除去した後に、保護層13を巻き取り回収する際のハンドリング性が大きく向上する。前記効果をいっそう発揮する観点から、該表面粗さが0.15μm〜0.4μm、及び最大高さが1.5μm〜3.0μmであるとより好ましい。これらのJIS B 0601に従い測定される表面粗さ及び最大高さは、接触型表面粗さ計を用いて測定する。また、保護層13を配置しない場合は、キャリア10のナノ構造11とは反対側の面が、上記表面粗さ及び最大高さの範囲を満たすことが好ましい。
保護層13の機能層12に貼り合わせる面の表面自由エネルギと、機能層12の保護層13と接する面の表面自由エネルギと、の差の絶対値は、2erg/cm以上50erg/cm以下であることが好ましい。この範囲を満たすことで、保護層13と機能層12と、の密着性が良好となり、連続的に機能転写体14を製造し巻き取ることができると共に、機能転写体14の使用に際し保護層13を剥離した際の、機能層12の破損を抑制できる。本効果をより発揮する観点から、該表面自由エネルギの差の絶対値は、5erg/cm以上30erg/cmであることが最も好ましい。例えば、エチレン・酢酸ビニルコポリマ(EVA)、低密度ポリエチレン(LDPE)、二軸延伸ポリプロピレン又はポリカーボネートを採用できる。市販のものとして、例えば、東レフィルム加工株式会社製のトレテック(登録商標)シリーズ(7111、7412K6、7531、7721、7332、7121)、三菱エンジニアリングプラスチックス株式会社製のユーピロン(登録商標)シリーズ、又は、タマポリ株式会社製のGFシリーズが挙げられる。
保護層13に含まれる直径80μm以上のフィッシュアイが、500個/m以上存在していてもよい。これは、フィッシュアイの数が多い保護層(保護フィルム)13を使用した場合であっても、ナノ構造11と機能層12との界面への影響は殆どないと考えられるためである。また、機能層12に光硬化性物質が含まれる場合、保護層13を貼り合わせる際に発生する気泡を利用して、機能層12の寿命を伸ばすこともできると考えられるためである。
機能転写体14を被処理体20に貼合する際に生じるエアボイドの発生をより抑制するという観点から、保護層13(保護フィルム)中に含まれる直径が80μm以上のフィッシュアイは5個/m以下であると好ましい。保護層13の膜厚は、1μm〜100μmであると保護層13の貼合性、ロール・ツー・ロールとしてのウェブハンドリング性、及び環境負荷低減の観点から好ましく、5μm〜50μmであるとより好ましく、15μm〜50μmであると最も好ましい。市販のものとして、信越フィルム社製PP−タイプPT、東レ社製トレファン(登録商標)BO−2400、YR12タイプ、王子製紙(株)製アルファン(登録商標)MA−410、E−200C、王子製紙社製アルファン(登録商標)E200シリーズ等のポリプロピレンフィルム等、帝人(株)製PS−25等のPSシリーズ等のポリエチレンテレフタレートフィルム等が挙げられるがこれに限られたものではない。また、市販のフィルムをサンドブラスト加工することにより、簡単に製造することが可能である。
保護層13としては、具体的に、例えば、フェノール・フォルムアルデヒド樹脂(PF)、ユリアフォルムアルデヒド樹脂(UF)、メラミン・フォルムアルデヒド樹脂(MF)、エポキシ樹脂(EP)、不飽和ポリエステル樹脂(UP、シリコーン樹脂(SI)、ポリウレタン樹脂(PUR)、ポリビニルクロライド樹脂(PVC)、ポリエチレン樹脂(PE)、エチレン・酢酸ビニル共重合樹脂(EVA)、ポリプロピレン樹脂(PP)、ポリスチレン樹脂(PS)、アクリロ二トリル・ブタジエン・スチレン樹脂(ABS)、アクリロ二トリル・スチレン樹脂(AS)、ポリメチルメタクリレート樹脂(PMMA)、ポリオキシメチレン樹脂(POM)、ポリカーボネート樹脂(PC)、ポリエチレンテレフタレート樹脂(PET)、変性ポリフェニレンエーテル樹脂(m−PPE)、ポリブチレンテレフタレート樹脂(PBT)、超高分子量ポリエチレン樹脂(U−PE)、ポリエーテルエーテルケトン樹脂(PEEK)、ポリフェニレンサルファイド樹脂(PPS)、ポリサルフォン樹脂(PSF)、ポリエーテルサルフォン(PES)、ポリアリレート樹脂(PAR)、ポリアミドイミド樹脂(PAI)、ポリエーテルイミド樹脂(PEI)、ポリテトラフルオロエチレン樹脂(PTFE)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、エチレン−ビニルアルコール共重合樹脂(EVOH)、ポリイミド樹脂(PI)、ポリアミド樹脂(PA)、セルローストリアセテート樹脂(TAC)、ポリエチレンナフタレート樹脂(PEN)等を使用することができる。またこれらの樹脂の積層フィルムや、表面を親水処理或いは疎水処理を施したものも使用可能である。また、これらの樹脂の表面に、アルミニウム、酸化アルミニウム、クロム、酸化クロム、タングステン、酸化タングステン、銅、酸化銅、銀、酸化銀、酸化インジウムスズ等を成膜したものを使用することも出来る。EVA樹脂の場合、酢酸ビニル含有量は、0.1重量%以上50重量%以下であることが好ましい。これは、機能層12に対する接着性と剥離性を担保するためである。同様の効果から、1重量%以上30重量%以下であることがより好ましく、1.3重量%以上16重量%以下であることが最も好ましい。
<支持基材>
次に、キャリア10の支持基材15について説明する。支持基材15は必須ではない。特に、ナノ構造11を精度高く連続的に生産する観点から、支持基材15を使用することが好ましい。例えば、ナノ構造11を転写法により製造する場合、支持基材15を設けることが好ましい。支持基材15は、キャリア10の物理的強度を向上するものであればよく、フレキシブルなものから剛体まで使用できる。例えば、フレキシブルなものとしては樹脂フィルムや不織布を、剛体としては、石英、サファイア、シリコン、SUS、或いはニッケル等を使用できる。特に、支持基材15を設けることで、フレキシブルなキャリア10を、非フレキシブルな被処理体20に貼合する際の、エアボイドといった欠陥をいっそう抑制でき、被処理体20の面内における機能不全部位をより減少させることが可能となる。更に、支持基材15を設けることにより、機能転写体14をロール・ツー・ロール法にて連続的に製造することも可能となることから、環境対応性が向上する。また、支持基材15を配置しロール・ツー・ロール法を適用できることにより、機能層12のナノ構造11に対する配置精度、及び、機能層12の表面の面精度が向上する。これは、被処理体20に対し機能転写体14を貼合する際の貼合精度の向上に寄与し、そのため、被処理体20に対する機能層12の転写精度が向上する。
支持基材15の厚みは、150μm以下であることが好ましい。これにより、機能転写体14を被処理体20に貼り合わせる際の、機能転写体14の柔軟性が向上するため、機能転写体14の割れやエアボイドの抑制効果が大きくなる。特に、100μm以下であれば、貼り合わせ速度高く機能層12を被処理体20に転写付与できる。更に、65μm以下の場合、被処理体20の被処理面の曲率が大きくなった場合であっても、良好に機能転写体14を被処理体20に貼り合わせることができる。同様の効果から、50μm以下であることが最も好ましい。一方で下限値は、機能転写体14を製造する際のウェブハンドリング性の観点から、10μm以上であることが好ましく、25μm以上であることが最も好ましい。
特に、ナノ構造11と支持基材15と、の密着力を良好に高める観点から、支持基材15の表面自由エネルギとナノ構造11を構成する材料の原料の表面張力と、の差の絶対値は、30erg/cm以下であることが好ましく、15erg/cm以下であることが最も好ましい。
フレキシブルな機能転写体14に設けられる支持基材15は、屈曲性を有していれば特に限定されない。例えば、ガラスフィルムに代表される無機フィルム、無機フィルムと有機樹脂の積層フィルム、PETフィルム、TACフィルム、COPフィルム、PEフィルム、PPフィルム等の樹脂フィルムを採用することができる。
支持基材15のヘーズは、96%以下であると好ましい。96%以下であることにより、キャリア10のナノ構造11の精度が向上するためである。更に、80%以下であることにより、キャリア10のナノ構造11の、凹凸構造1つ1つよりも大きなスケールの斑を抑制できるため好ましい。同様の効果から、60%以下がより好ましく、50%以下が最も好ましい。また、30%以下であることにより、ナノ構造11と支持基材15との密着性を担保することが可能となる。特に、機能層12が光重合物質を含む場合、機能層12の転写精度とキャリア10の密着性の観点から、ヘーズは10%以下が好ましく、6%以下であるとより好ましく、1.5%以下であると最も好ましい。また、機能層12をパターニングしながら被処理体20上に転写付与する観点から、1.5%以下であると好ましい。ヘーズはJIS K 7105により規定されている。市販の濁度計(例えば、日本電色工業社製NDH−1001DP等)により容易に測定可能である。上記1.5%以下のヘーズ値を有する支持基材15としては、例えば、帝人社製高透明フィルムGSシリーズ、ダイアホイルヘキスト社製M−310シリーズ、デュポン社製マイラーDシリーズ等のポリエチレンテレフタレートフィルム等が挙げられる。
支持基材15として、二軸配向ポリエステルフィルムの一方の面に、微粒子を含有する樹脂層を積層してなる支持基材15を採用してもよい。キャリア10の製造性、そして機能転写体14の使用性の観点から、微粒子の平均粒径は0.01μm以上であると好ましい。機能層12をパターニングしながら被処理体20上に転写付与する観点から、微粒子の平均粒径は5.0μm以下であると好ましい。前記効果をいっそう発揮する観点から、0.02〜4.0μmであることがより好ましく、0.03〜3.0μmであることが特に好ましい。微粒子としては、例えば、シリカ、カオリン、タルク、アルミナ、リン酸カルシウム、二酸化チタン、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、フッ化カルシウム、フッ化リチウム、ゼオライト又は硫化モリブデンの無機粒子、架橋高分子粒子、シュウ酸カルシウム等の有機粒子等を挙げることができる。特に、透明性の観点から、シリカの粒子が好ましい。なお、微粒子はフィラーを含む。これらの微粒子は単独で使用しても、2種類以上を併用し使用してもよい。二軸配向ポリエステルフィルムに含有される微粒子の含有量は、支持基材15の透明性を保つという観点から、0ppm〜80ppmであることが好ましく、0ppm〜60ppmであることがより好ましく、0ppm〜40ppmであることが特に好ましい。前記二軸配向ポリエステルフィルムの厚みは、1μm〜100μmであることが好ましく、1μm〜50μmであることがより好ましい。これらの支持基材15としては、例えば、東洋紡績(株)製のA2100−16及びA4100−25が挙げられる。なお、上記二軸配向ポリエステルフィルムの一方の面に、微粒子を含有する樹脂層を積層してなる支持基材15を使用する場合は、微粒子を含有する樹脂層面上にキャリア10を形成すると、接着性や転写耐久性の観点から好ましい。
キャリア10としてフレキシブルなものを採用する場合、支持基材15もフレキシブルな材質となる。この場合、支持基材15は、ASTM規格のD638に定められる引張強さが、15MPa〜90MPaの範囲にあることが好ましい。これにより、機能転写体14を使用する際の、被処理体20に対する貼り合わせ精度が向上する。特に、ラミネートロールを使用した貼り合わせに関し、速度と精度を共に向上させる観点から、該引張強さは、20Mpa〜80Mpaであることがより好ましく、30Mpa〜80Mpaであることが最も好ましい。
フレキシブルな支持基材15は、ASTM規格のD638に定められる破断時伸びが10%〜1500%の範囲にあることが好ましい。これにより、機能転写体14を使用する際の、被処理体20に対する貼り合わせ精度が向上する。特に、ラミネートロールを使用した貼り合わせに関し、速度と精度を共に向上させる観点から、該破断時伸びは、150%〜500%であることがより好ましく、25%〜400%であることが最も好ましい。
フレキシブルな支持基材15は、ASTM規格のD638に定められる引張弾性率が500MPa〜5000MPaの範囲にあることが好ましい。これにより、機能転写体14の機能層12を被処理体20に対して貼り合わせる際の、皺を抑制することが出来る。同様の観点から、該引張弾性率は、1500MPa〜4900MPaであることがより好ましく、2300MPa〜4800MPaであることが最も好ましい。
フレキシブルな支持基材15は、ASTM規格のD638に定められる圧縮強さが10MPa〜150MPaの範囲にあることが好ましい。これにより、機能転写体14を巻き取る際の空気の同伴を抑制できる。巻取りをよりスムーズにする観点から、該圧縮強さは、50MPa〜115MPaであることがより好ましい。
フレキシブルな支持基材15は、ASTM規格のD638に定められる曲げ強さが50MPa以上200MPa以下であることが好ましい。これにより、機能転写体14を製造する際のパスラインの選択肢が大きくなる。特に、機能転写体14を製造する装置をコンパクトに仕上げる観点から、該曲げ強さは、60MPa以上160MPa以下であることがより好ましい。更に、積層体21を得る際のキャリア10の剥離性を良好にする観点から、65MPa以上125MPa以下であることが最も好ましい。
フレキシブルな支持基材15は、ASTM規格のD696に定められる線膨張率が3×10−5/℃〜15×10−5/℃の範囲にあることが好ましい。これにより、機能転写体14を製造する際、使用する際、或は搬送する際の温度変化に対する耐久性が向上する。本効果をよりいっそう発揮する観点から、該線膨張率は、4×10−5/℃〜9×10−5/℃であることがより好ましく、5×10−5/℃〜7×10−5/℃であることが最も好ましい。
フレキシブルな支持基材15は、ASTM規格のD570に定められる吸水率(24時間)が0.3重量%以下であることが好ましい。これにより、機能転写体14を製造する際の季節の影響を抑制できる。また、機能転写体14を輸送する際の湿度変化に対する耐性を向上させる観点から、該吸水率は0.25重量%以下であることがより好ましい。更に、機能層12と保護層106と、の強固な密着を抑制する観点から、該吸水率は、0.2重量%以下であることがより好ましく、0.1重量%以下であることが最も好ましい。
フレキシブルな支持基材15としては、具体的に、例えば、フェノール・フォルムアルデヒド樹脂(PF)、ユリアフォルムアルデヒド樹脂(UF)、メラミン・フォルムアルデヒド樹脂(MF)、エポキシ樹脂(EP)、不飽和ポリエステル樹脂(UP、シリコーン樹脂(SI)、ポリウレタン樹脂(PUR)、ポリビニルクロライド樹脂(PVC)、ポリエチレン樹脂(PE)、エチレン・酢酸ビニル共重合樹脂(EVA)、ポリプロピレン樹脂(PP)、ポリスチレン樹脂(PS)、アクリロ二トリル・ブタジエン・スチレン樹脂(ABS)、アクリロ二トリル・スチレン樹脂(AS)、ポリメチルメタクリレート樹脂(PMMA)、ポリオキシメチレン樹脂(POM)、ポリカーボネート樹脂(PC)、ポリエチレンテレフタレート樹脂(PET)、変性ポリフェニレンエーテル樹脂(m−PPE)、ポリブチレンテレフタレート樹脂(PBT)、超高分子量ポリエチレン樹脂(U−PE)、ポリエーテルエーテルケトン樹脂(PEEK)、ポリフェニレンサルファイド樹脂(PPS)、ポリサルフォン樹脂(PSF)、ポリエーテルサルフォン(PES)、ポリアリレート樹脂(PAR)、ポリアミドイミド樹脂(PAI)、ポリエーテルイミド樹脂(PEI)、ポリテトラフルオロエチレン樹脂(PTFE)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、エチレン−ビニルアルコール共重合樹脂(EVOH)、ポリイミド樹脂(PI)、ポリアミド樹脂(PA)、セルローストリアセテート樹脂(TAC)、ポリエチレンナフタレート樹脂(PEN)等を使用することができる。またこれらの樹脂の積層フィルムや、表面を親水処理或は疎水処理を施したものも使用可能である。また、これらの樹脂の表面に、アルミニウム、酸化アルミニウム、クロム、酸化クロム、タングステン、酸化タングステン、銅、酸化銅、銀、酸化銀、酸化インジウムスズ等を成膜したものを使用することも出来る。
<被処理体>
次に、被処理体20について説明する。既に説明したように、機能転写体14においては、比率(Ra/lor)とナノ構造11の平均ピッチとを所定の範囲にすることで、被処理体20と機能層12と、の接着強度を高め、且つキャリア10を除去する際の機能層12の破壊を抑制するため、被処理体20の材質や形状は特に限定されない。材質は有機物であっても無機物であってもよい。例えば、合成石英や溶融石英に代表される石英、無アルカリガラス、低アルカリガラス、ソーダライムガラスに代表されるガラスや、シリコン、ニッケル、サファイア、ダイヤモンド、金属アルミニウム、アモルファス酸化アルミニウム、多結晶酸化アルミニウム、単結晶酸化アルミニウム、酸化チタン、SUS、機能層にて例示した金属元素から構成される金属、機能層にて例示した金属元素を含む金属酸化物、酸化鉄、酸化銅、クロム、シリコンカーバイド、マイカ、酸化亜鉛、半導体基板(窒化物半導体基板等)、スピネル基板、ITOに代表される透明導電無機物、紙、合成合皮、皮、又は機能層にて例示した有機物等が挙げられる。形状としては、円盤状、平板状、n角柱状、n角錐状、レンズ状、球形状、フィルム状又はシート状等が挙げられる。なお、前記n角柱状又はn角錐状は、曲率半径が0超の角部を含むn角柱状又はn角錐状を含む。なお、被処理体20としてウェハ形状のものを使用する場合、その大きさは3インチφ以上であることが好ましい。これは、3インチφ以上であることで、被処理体20の淵部の影響が小さくなり、積層体21の機能の均等性が向上するためである。同様の観点から、4インチφ以上であることが最も好ましい。一方で、被処理体20として平板状基材を選択する場合、長辺の長さは、100mm以上であることが好ましい。これは、機能転写体14を使用することで、大面積への転写が容易となるためである。特に、250mm以上であることで、基材端部の影響を限りなく小さく出来るためより好ましい。なお、最も好ましくは、450mm以上である。
中でも、被処理体20の表面に対する水の接触角が110度以下の被処理体20を使用することで、既に説明した比率(Ra/lor)の効果が促進される傾向にあるため好ましい。同様の効果から、90度以下であることが好ましく、60度以下であることがより好ましく、45度以下であることが最も好ましい。また、被処理体20の表面の表面粗さ(Rat)は、既に説明した範囲を満たすことで、機能転写体14の使用性が向上するため好ましい。
<機能転写体の使用方法>
既に説明したように、機能転写体14は、被処理体20に対して機能転写体14の機能層12を転写するために使用する。特に、機能転写体14の機能層12を、被処理体20の一主面上に直接当接する工程と、キャリア10を除去する工程と、を少なくともこの順に含むことで、機能転写体14の機能層12の精度を、被処理体20に対して転写することができる。
更に、本発明の機能転写体14を用いた被処理体20への機能付与方法は、既に説明したように、機能転写体14の機能層12面側の表面粗さをRaf、そして被処理体20の表面粗さをRatとして、合成自乗平均平方根粗さRa´を(Raf+Rat1/2として定義した時に、比率(Ra´/lor)が上記説明した比率(Ra/lor)の範囲を満たすような転写方法であることが好ましい。これにより、積層体21の精度を向上させると共に、積層体21を得る際の速度が向上する。
また、機能層12の表面と被処理体20と、の密着力を良好に高める観点から、被処理体20の表面自由エネルギと機能層12の表面の表面自由エネルギと、の差の絶対値は、30erg/cm以下であることが好ましく、15erg/cm以下であることが最も好ましい。
キャリア10又は被処理体20の少なくともいずれか一方がフレキシブルであることが好ましい。キャリア10がフレキシブルな場合、機能転写体14を、被処理体20に対して、それがフレキシブルか否かに関わらず、ラミネートロールを使用して貼合することが可能となり、キャリア10を剥離ロールや剥離エッジを使用して被処理体20より剥離することが可能となる。一方、被処理体20がフレキシブルな場合、被処理体20を、機能転写体14に対し、それがフレキシブルか否かに関わらず、ラミネートロールを使用して貼合することが可能となり、被処理体20を剥離ロールや剥離エッジを使用してキャリア10より剥離することが可能となる。すなわち、キャリア10又は被処理体20の少なくともいずれか一方がフレキシブルであることで、面としてではなく線として当接し、線として除去することが可能となる。これにより、当接時の際に生じるエアボイドの生成を抑制すると共に、キャリア10を機能層12より除去する際の剥離力の絶対値を大きく減少させ、機能層S12の破壊を抑制することができるため、積層体21の機能不全部位を大きく減少させることができる。更には、貼合操作及び除去操作が容易となることから、機能転写体14の使用に際し装置を使用する場合は、該装置の過大化や煩雑化を抑制できる。
(1)機能転写体の機能層を被処理体に直接当接する工程(貼合工程)
本工程は、機能転写体14の機能層12を被処理体20に対し貼合する工程を意味する。既に説明したように、比率(Ra/lor)による機能層12の表層の流動現象を利用することで、被処理体20と機能層12との接着面積を大きくし、これにより大きな接着強度を担保することが機能転写体14の特徴である。この観点から、貼合方法は特に限定されないが、貼合時のエアボイドを抑制するような貼合方法や貼合状態を採用すると好ましい。
1−1:貼合時の環境雰囲気
真空又は減圧下にて貼合を行うことで、エアボイドの抑制効果が向上する。また、窒素(N)ガスやアルゴン(Ar)ガスに代表される不活性ガスを使用し貼合を行うこともできる。また、ペンタフルオロプロパンや二酸化炭素に代表される圧縮性気体を使用し貼合を行ってもよい。圧縮性気体は加わる圧縮力に応じ、気体から液体へと状態が変化する材料である。すなわち、圧縮性気体を使用することで、貼合時に加わる圧力が所定値を超えた場合、エアボイドを形成する予定だった部位の圧縮性気体は液化する。気体から液体への変化は急激な体積収縮を意味するため、エアボイドが見かけ上消失することとなる。以上から、圧縮性気体を使用する場合、圧縮性気体の液化圧力以上の貼合圧力をもって貼合すると好ましい。また、貼合は、被処理体20の表面、又は、機能転写体14の機能層面にパーティクルが付着するのを抑制するために、除電環境下にて行うと好ましい。また、貼合後に加熱しながら加圧を行うことで、発生したエアボイドを小さくすることができる。
1−2:機能転写体の機能層表面のクリーニング
何らかの理由で機能転写体14の機能層12表面に異物が付着した場合、この異物の大きさが機能層12の体積と同等程度以上になることで、異物由来のエアボイドを生じる。特に、異物の大きさよりも十分に大きなエアボイドを生じるため、異物の数に重みを付けた割合にてエアボイドが生じることとなる。以上から、機能転写体14の機能層12表面及び被処理体20の被処理面を、貼合操作前にクリーニングすると好ましい。クリーニング方法は、機能層12が劣化しない範囲内にて適宜選択でき、例えば、エアブロー、洗浄、UV−O処理、コロナ処理又はエキシマ処理を採用できる。
1−3:貼合方法
・キャリア10又は被処理体20のいずれか一方がフレキシブルな場合
以下の説明においては、キャリア10又は被処理体20のいずれか一方がフレキシブルであり、他方が非フレキシブルである場合を説明する。フレキシブルな方をフレキシブル体と、非フレキシブルな方を非フレキシブル体と表記する。フレキシブル体を、非フレキシブル体に対し、ラミネートロールを使用し貼合するとエアボイドの発生をより抑制できるため好ましい。例えば、フレキシブル体の非フレキシブル体に当接する面とは反対の面上にラミネートロールが配置され、フレキシブル体と非フレキシブル体とが貼合される。また、ラミネートロールは少なくともフレキシブル体の非フレキシブル体に当接する面とは反対側の面上に配置されればよく、その数や上下配置は限定されない。
また、非フレキシブル体の表面が曲率を有する場合、上記説明したラミネートロールを使用した貼合方法の他に、フレキシブル体の非フレキシブル体に当接する面とは反対側の面に空気、ガス、粒子含有空気又は粒子含有ガスを吹き付ける方法を採用することもできる。この場合、非フレキシブル体の表面の曲率に対して、フレキシブル体の追従性が良好になることから、貼合性を向上させることができる。なお、非フレキシブル体の表面が曲率を有する場合、フレキシブル体の総厚みは200μm以下であると追従性がより良好になるため好ましい。この観点から、特に100μm以下であることが好ましく、50μm以下であることが最も好ましい。
・キャリア10及び被処理体20がフレキシブルな場合
この場合、機能転写体14を被処理体20に対し、ラミネートロールを使用して貼合するとエアボイドの発生をより抑制できるため好ましい。例えば、2組のラミネートロールの間に機能転写体14及び被処理体20を、機能転写体14の機能層12と被処理体20が当接するように配置し貼合される。なお、ラミネートロールは少なくとも機能転写体14のキャリア10面側及び被処理体20上に配置されればよく、その数や配置は限定されない。
以上説明した貼合方法においては、機能転写体14の物性及び被処理体20の物性に応じ各種条件を適宜選定できる。この条件は、当業者間において適宜容易に設計できる。例えば、ラミネートロールを加温する場合、その温度としては、40℃以上300℃以下であり、60℃以上200℃以下であるとより好ましい。これは、機能転写体14のキャリア10或いはナノ構造11の温度による過剰な変形を抑制するためである。
また、ラミネータとしては、1組のラミネートロールを用いる1段式ラミネータ、2組以上のラミネートロールを用いる多段式ラミネータ、又は、ラミネートする部分を容器で密閉した上で真空ポンプにて減圧或いは真空にする真空ラミネータ等を使用できる。
(2)キャリア10を除去する工程(除去工程)
本工程は、機能転写体14の機能層12と被処理体20とを貼合した後に行う工程であり、キャリア10を除去することで、被処理体20上に機能層12が転写されることとなる。除去方法は、特に限定されず、キャリア10を溶解させる方法やキャリア10を剥離する方法を採用できる。キャリア10を剥離する際は、剥離時に加わるナノ構造11への応力集中や、機能層12と被処理体20との界面に加わる応力を緩和する観点から、以下の剥離除去方法を採用することができる。
・キャリア10又は被処理体20のいずれか一方がフレキシブルな場合
この場合、非フレキシブル体に貼合されたフレキシブル体を、剥離ロールや剥離エッジを使用して剥離すると、機能層12に加わる剥離応力及び、機能層12と被処理体20との界面に加わる応力を小さくすることができるため好ましい。例えば、フレキシブル体の非フレキシブル体に当接した面とは反対の面上に剥離ロールや剥離エッジが配置され、フレキシブル体が剥離され、積層体21が得られる。なお、剥離ロールは、少なくともフレキシブル体の非フレキシブル体に当接した面とは反対の面上に配置されればよく、その数や配置は限定されない。
・キャリア10及び被処理体20がフレキシブルな場合
この場合、機能転写体14と被処理体20が貼合された積層体に対し、剥離ロールや剥離エッジを使用し剥離すると、機能層12に加わる剥離応力、及び、機能層12と被処理体20との界面に加わる応力を小さくすることができるため好ましい。例えば、機能転写体14と被処理体20とから構成される積層体の、被処理体20の表面上及びキャリア10の表面上に2組の剥離ロールが配置され、被処理体20及び機能層12が互いに引き剥がされる。なお、剥離ロールは、少なくとも機能転写体14のキャリア10面側及び被処理体20上に配置されればよく、その数や配置は限定されない。
以上説明した剥離方法においては、機能転写体14及び被処理体20の物性に応じて各種条件を適宜選定できる。例えば、機能層12にガラス転移温度Tgのある場合は、キャリア10を除去する前の機能層12の温度は、0.8Tg以下であるとナノ構造S11の形状安定性が向上するため好ましい。同様の理由から、0.65Tg以下がより好ましく、0.35Tg以下が最も好ましい。
また、剥離ロールには、1組の剥離ロールを用いても、2組以上の剥離ロールを用いてもよい。
(3)貼合工程と除去工程との間の他の工程
機能層12の物性によっては、機能転写体14と被処理体20とを貼合した後に、処理工程を経、その後、キャリア10を除去する工程を経ることで、機能層12の被処理体20に対する転写精度が向上する。特に、機能層12が硬化性物質を含む場合、該硬化性物質を硬化させ安定化させることで、転写性が向上する。
処理工程としては、加熱処理、エネルギ線照射処理又は冷却処理等が挙げられる。例えば、加熱やエネルギ線の照射により機能層12が硬化する場合、機能層12のナノ構造11の形状安定性が向上し、且つ被処理体20と機能層12との界面密着性を固定化できるため、機能層12の転写精度が向上する。また、例えば、加熱により機能層12が収縮する場合、キャリア10のナノ構造11と機能層12との界面接着力が低下するため、転写精度が向上する。また、例えば、冷却により機能層12の硬さ(弾性率や硬度等)が向上する場合、冷却処理を加えることでナノ構造11の形状安定性が向上し、剥離時に加わる機能層12のナノ構造11への応力に対する耐性が向上する。これらの処理は、併用することもできる。また、これらの処理の処理条件は機能層12の物性に応じ適宜選定できるため、特に限定されない。例えば、加熱処理であれば、その加熱温度は、被処理体20の温度として30℃以上350℃以下であると好ましく、60℃以上200℃以下であることがより好ましい。例えば、冷却処理であれば、その冷却温度は、被処理体20の温度としてマイナス(−)20℃以上150℃以下であると好ましく、0℃以上120℃以下であることがより好ましい。例えば、エネルギ線照射処理であれば、機能層12に対応したエネルギ線波長の積算光量として500mJ/cm〜5000mJ/cmの範囲であると好ましい。なお、機能層12がエネルギ線により反応し硬化する場合、エネルギ線を照射する際に、エネルギ線に対する遮光マスクを設けることで、パターニングされた機能層S12を具備する積層体21を製造できる。
また、機能転写体14と被処理体20とを貼合した後に、機能転写体14を被処理体20から除去せずに切り抜くことができる。例えば、機能転写体14が連続的な長尺フィルム状の場合、機能転写体14を被処理体20に貼合した後に、面内の大きさが被処理体20よりも大きい範囲において、被処理体20の外径よりも外側を切り抜くことができる。このような操作を行うことにより、被処理体20上に転写付与される機能層12を、キャリア10により保護できる。この状態を第1のラインにて作製し、第2のラインへと搬送することもできる。このような状態を経ることで、機能層12のナノ構造11を物理的にも化学的にも保護できるため好ましい。
(4)除去工程後の他の工程
機能層12の物性によっては、キャリア10を除去した後に、積層体21の機能層12に処理を加えることで、機能層12の機能をいっそう発揮することができる。処理としては、加熱処理、エネルギ線照射処理又は冷却処理等が挙げられる。例えば、加熱やエネルギ線の照射に対し機能層12が反応性の場合、機能層12の物理的形状安定性や化学的安定性が向上するため、被処理体20上の機能層12の機能安定性が向上する。これらの処理の処理条件は機能層12の物性に応じ適宜選定できるため、特に限定されない。例えば、加熱処理であれば、加熱温度は、被処理体20の温度として60℃以上300℃以下であると好ましく、60℃以上200℃以下であることがより好ましい。例えば、エネルギ線照射処理であれば、機能層12に対応したエネルギ線波長の積算光量として500mJ/cm〜5000mJ/cmの範囲であると好ましい。
以上説明したように、本実施の形態に係る機能転写体14を使用することで、容易に、高効率な機能を発揮する機能層12を面内に具備した積層体21を、積層体21の使用に好適な場所にて得ることができる。特に、機能転写体14がフレキシブルである場合、機能転写体14を裁断しその形状を変えることができる。このため、被処理体20の全面に対する機能層12の転写付与の他、被処理体20の所定部位にのみ機能層12を転写付与することができる。
また、例えば、図15Aに示すように、被処理体20が、厚み方向の断面が長方形であり表面が円形の円盤や、図15Bに示すように、厚み方向の断面が上に凸の曲率を有する表面が円形のレンズ状であっても良い。また、図示しないが、厚み方向の段目が下に凸の曲率を有する表面が円形のレンズ状であってもよい。これらの場合、機能転写体14がフレキシブルであることにより、図16に示す積層体21のように、被処理体20の全面又は所定部位にのみ機能層12を転写付与することができる。図16Aは機能層12を被処理体20の全面に転写形成した積層体21を示している。図16Bから図16Dは機能層12を被処理体20の所定部位にのみ転写形成した積層体21を示している。
また、被処理体20が、図17Aに示すような円柱状体や、図17Bに示すような円錐状体であっても良い。これらの場合にも、機能転写体14がフレキシブルであることにより、図18に示すように、被処理体20の全面又は所定部位に機能層12を付与することができる。図18Aは、円柱状の被処理体20の側面、上面及び底面すべてに機能層12を付与した積層体21を、図18Bは、円柱状の被処理体20の側面の一部にのみ機能層12を付与した積層体21を、図18Cは、円錐状の被処理体20の側面全面に機能層12を付与した積層体21を、図18Dは、円錐状の被処理体20の側面の一部に機能層12を付与した積層体21を示している。
<製造方法>
次に、機能転写体14の製造方法について説明する。機能転写体14は、キャリア10を製造し、キャリア10に対して機能層12を配置することで製造される。
(キャリアの製造)
キャリア10は、支持基材15の表面、又は、支持基材15に成膜し設けられた被加工層の表面を、転写法、フォトリソグラフィ法、熱リソグラフィ法、電子線描画法、干渉露光法、ナノ粒子をマスクとしたリソグラフィ法、又は、自己組織化構造をマスクとしたリソグラフィ法等により加工することで製造することができる。また、支持基材15の表面にマクロ相分離、ミクロ相分離、交互積層法、ナノ粒子の自己配列法、又は、ナノ粒子を有機バインダにより配列させる方法等によりナノ構造11を設けて製造されてもよい。また、ナノ構造を表面に具備したマスターモールドに対して、溶融した樹脂や金属を流し込み、冷却した後に剥がし取ることで製造することもできる。中でもナノ構造11の精度及び製造速度の観点から、転写法を採用すると好ましい。転写法とは、一般的にナノインプリント法と称される方法であり、光ナノインプリント法、熱硬化性樹脂を使用した熱ナノインプリント法、熱可塑性樹脂を使用した熱ナノインプリント法又は室温ナノインプリント法等があり、いずれも採用できるが、特に、ナノ構造11の精度及び製造速度の観点から、光ナノインプリント法を採用することが好ましい。この場合、ナノ構造11の鋳型となるマスターモールドは円筒状マスターモールドであることが、最も好ましい。
(機能層の成膜)
機能層12のキャリア10のナノ構造11に対する成膜方法は、ドライプロセス及びウェットプロセスに分類できる。なお、機能層12を複数成膜する、すなわち多層機能層の構成をとる場合、ドライプロセス及びウェットプロセスを各層に対して任意に選択することができる。ドライプロセスとしては、例えば蒸着法やスパッタ法を採用できる。この時、蒸着やスパッタのナノ構造11に対する角度を変えることで、機能層12の配置箇所を制御することもできる。ウェットプロセスとしては、例えば、機能層12の原料を、水又は有機溶剤にて希釈した塗工液、すなわち機能塗工液をナノ構造11に対して塗工し、その後、余剰な溶剤を除去する方法を採用できる。その他にも、機能層12の原料を希釈せずに直接塗工する方法や、機能塗工液又は機能層12の原料を塗工した後に、余剰な塗工液を、気流や物理的切片により除去する方法を採用することもできる。
機能層12の配置精度と生産性の観点から、少なくとも、ウェットプロセスである、機能塗工液をナノ構造11に対して塗工し、その後、余剰な溶剤を除去する方法を採用することが好ましい。塗工方法は特に限定されないが、ダイコート法、ドクターブレード法、マイクログラビア法、バーコート法、ローラーコート法、噴霧コート法、エアナイフコート法、グラビアコート法、フローコート法、カーテンコート法、又は、インクジェット法、ディップコート法等が挙げられる。
また、機能層12の配置に際しては、ナノ構造11に対して、非接触式の方法を採用することが好ましい。これは、ナノ構造11に対する傷を抑制し、機能層12の精度をより高めるためである。
以下、本発明の効果を確認するために行った実施例について説明する。
(実施例1)
実施例1においては、まず、機能転写体の機能層の露出する面側の表面粗さ(Ra)と、機能転写体のキャリアのナノ構造の凸部頂部位置と機能層の露出する表面との距離(lor)と、の比率(Ra/lor)の転写性への影響を調査した。更に、機能転写体の機能層の層構成、すなわち機能層のキャリアのナノ構造に対する配置が、比率(Ra/lor)の効果に影響を与えるか否かを調査した。
(a)円筒状マスターモールドの作製
円筒状マスターモールドの基材には円筒状の石英ガラスを用い、半導体レーザを用いた直接描画リソグラフィ法によりナノ構造を石英ガラス表面に形成した。まず石英ガラス表面を十二分に洗浄し、パーティクルを除去した。続いて、石英ガラス表面上にスパッタリング法によりレジスト層を成膜した。スパッタリング法は、ターゲット(レジスト層)として、φ3インチのCuO(8atm%Si含有)を用いて、RF100Wの電力で実施し、20nmのレジスト層を成膜した。続いて、石英ガラスを回転させながら、波長405nmnの半導体レーザを用い一度露光を行った。次に、一度露光されたレジスト層に対して、波長405nmn半導体レーザを用いて、露光を行った。この時の露光パタンにより、ナノ構造の配列を制御した。次に、露光後のレジスト層を現像した。現像は、0.03wt%のグリシン水溶液を用いて、240秒間処理とした。次に、現像したレジスト層をマスクとし、ドライエッチングによるエッチング層(石英ガラス)のエッチングを行った。ドライエッチングは、エッチングガスとしてSFを用い、処理ガス圧1Pa、処理電力300Wの条件で実施した。処理時間を変化させることで、ナノ構造の開口部の大きさ及びナノ構造の深さを調整した。次に、表面にナノ構造が付与された石英ガラスから、レジスト層残渣のみを、pH1の塩酸を用い除去し、円筒状マスターモールドを得た。除去時間は6分間とした。
得られた円筒状マスターモールドのナノ構造面をエキシマ洗浄した。続いて、フッ素系表面処理剤(デュラサーフ(登録商標)HD−1101Z、ダイキン化学工業社製)を塗布し、室温で24時間静置、固定化した。その後、再度、エキシマ洗浄を行った。続いて、フッ素系表面処理剤(デュラサーフ(登録商標)HD−1101Z、ダイキン化学工業社製)を塗布し、室温で24時間静置、固定化した。最後に、洗浄剤(デュラサーフ(登録商標)HD−ZV、ダイキン化学工業社製)で3回洗浄し、離型処理を実施した。
(b)キャリアの作製
作製した円筒状マスターモールドを鋳型とし、光ナノインプリント法を適用し、連続的にキャリアを作製した。キャリアを構成する原料としては、以下の材料1を使用した。
材料1…フッ素含有ウレタン(メタ)アクリレート(OPTOOL(登録商標)DAC HP(ダイキン工業社製)):トリメチロールプロパン(EO変性)トリアクリレート(M350(東亞合成社製)):4官能アクリレート:2−(ジメチルアミノ)−2−[(4−メチルフェニル)メチル)−1−[4−(4−モルホリニル)フェニル]−1−ブタノン(Irgacure(登録商標)379EG(BASF社製)):2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン(Irgacure(登録商標)651(BASF社製))=17.5g:10g:90g:3.0g:4.5gにて混合した材料。なお、上記4官能アクリレートは、グリセンリンの2量体構造を有する4官能アクリレートであり、共栄社化学株式会社製のライトアクリレートDGE−4Aを使用した。
PETフィルムA−4100(東洋紡社製:幅300mm、厚さ100μm)の易接着面にマイクログラビアコーティング(廉井精機社製)により、塗布膜厚3μmになるように材料1を塗布した。次いで、円筒状マスターモールドに対し、材料1が塗布されたPETフィルムをニップロール(0.1MPa)で押し付け、大気下、温度25℃、湿度60%で、ランプ中心下での積算露光量が1500mJ/cmとなるように、フュージョンUVシステムズ・ジャパン株式会社製UV露光装置(Hバルブ)を用いて紫外線を照射し、連続的に光硬化を実施し、表面にナノ構造が転写されたキャリアG1(長さ200m、幅300mm)を得た。
次に、キャリアG1をテンプレートとして見立て、光ナノインプリント法を適用し連続的に、キャリアG2を作製した。すなわち、キャリアG2のナノ構造は円筒状マスターモールドのナノ構造と同様である。
PETフィルムA−4100(東洋紡社製:幅300mm、厚さ100μm)の易接着面にマイクログラビアコーティング(廉井精機社製)により、下記材料2を塗布膜厚6μmになるように塗布した。次いで、キャリアG1のナノ構造面に対し、材料2が塗布されたPETフィルムをニップロール(0.1MPa)で押し付け、大気下、温度25℃、湿度60%で、ランプ中心下での積算露光量が1200mJ/cmとなるように、フュージョンUVシステムズ・ジャパン株式会社製UV露光装置(Hバルブ)を用いて紫外線を照射し、連続的に光硬化を実施し、表面にナノ構造が転写されたキャリアG2(長さ200m、幅300mm)を複数得た。
材料2…材料1のフッ素含有ウレタン(メタ)アクリレートの分量を、1.5g〜20.0gの範囲内で調整した材料。このフッ素含有ウレタン(メタ)アクリレートの分量を調整することで、キャリアG2の表面自由エネルギを調整した。より具体的には、キャリアG2の水に対する接触角、及び機能層を塗工する際に使用する溶剤の1つであるプロピレングリコールモノメチルエーテルに対する接触角を調整した。
走査型電子顕微鏡(以下、SEMという)により観察したキャリアG2のナノ構造の詳細を、作製した機能転写体の種類と合わせて表1に記載した。SEM観察は、日立超高分解能電界放出形走査電子顕微鏡SU8010(株式会社日立ハイテクノロジーズ社製)を使用し、1.0kVの加速電圧にて行った。なお、以下の実施例にて表記するSEMは全て、本装置である。
キャリアG2の表層フッ素元素濃度(Es)と平均フッ素元素濃度(Eb)を、下記装置を使用して測定し、比率(Es/Eb)を算出した。なお、以下の実施例にて表記する比率(Es/Eb)は全て、実施例1と同様に測定し、算出された値である。
・表層フッ素元素濃度(Es)
キャリアG2を約2mm四方の小片として切り出し、1mm×2mmのスロット型のマスクを被せて下記条件でX線電子分光法(XPS法)を用い測定に供した。
XPS測定条件
使用機器 ;サーモフィッシャーESCALAB250
励起源 ;mono.AlKα 15kV×10mA
分析サイズ;約1mm(形状は楕円)
取込領域
Survey scan;0〜1, 100eV
Narrow scan;F 1s,C 1s,O 1s,N 1s
Pass energy
Survey scan; 100eV
Narrow scan; 20eV
・平均フッ素元素濃度(Eb)
平均フッ素元素濃度(Eb)は、仕込み量と下記実測方法とで相関がとれたため、仕込み量から計算した値を採用した。実測は、キャリアG2のナノ構造を支持基材から物理的に剥離した切片を、フラスコ燃焼法にて分解し、続いてイオンクロマトグラフ分析にかけることで行った。
(c)機能転写体の作製
機能転写体としては、以下の機能転写体A1〜機能転写体A5の5種類を作製し、各機能転写体に対して、距離(lor)と機能層の露出する面側の表面粗さ(Ra)をパラメータに設定し、比率(Ra/lor)を調整した。
・機能転写体A1〜A5の作製
作製したキャリアG2のナノ構造面上に少なくとも1以上の機能層を成膜することで、機能転写体A1〜A5を作製した。作製した機能転写体A1〜A5における、キャリアG2と機能層との関係、及びキャリアG2の物性を表1に記載した。なお、表1中の用語は、以下の意味である。なお、キャリアG2の比率(Es/Eb)は、機能転写体A1〜機能転写体A5の順に、72.1,51,47,159及び712であった。
・機能転写体…機能転写体A1〜A5のいずれか。
・状態…図13に例示した断面模式図との対応。
・平均ピッチ…キャリアG2のナノ構造の平均ピッチであり、ディメンジョンはナノメートル。
・平均開口径…キャリアG2のナノ構造の平均開口径であり、ディメンジョンはナノメートル。
・Mcv…キャリアG2のナノ構造の凸部頂部幅であり、ディメンジョンはナノメートル。
・Mcc…キャリアG2のナノ構造の凹部開口幅であり、ディメンジョンはナノメートル。
・Sh/Scm…キャリアG2のナノ構造の開口率であり、無次元値。
・Mcv/Mcc…上記McvとMccと、の比率であり無次元値。
・ΘHO…キャリアG2のナノ構造面側に対する水滴の接触角であり、ディメンジョンは度。
・Θpgme…キャリアG2のナノ構造面側に対するプロピレングリコールモノメチルエーテルの接触角であり、ディメンジョンは度。プロピレングリコールモノメチルエーテルは、機能層をキャリアG2のナノ構造面に塗工する際に使用した溶剤の1つである。なお、Θpgmeの測定方法は以下に記載した。
・Θpgmeの測定方法
Θpgmeは以下の装置及び条件にて測定した。なお、記載していない部分については、『基板ガラス表面のぬれ性試験方法』として、JIS R 3257(1999)に制定された接触角測定方法に準拠して行った。
・装置:株式会社ニック社製、塗れ性評価装置(接触角計):LSE−B100W
・概要:Θpgmeは、水平状態(傾斜角0°)のキャリアG2の、ナノ構造の上に付着させたプローブ液に対して、Θ/2法により計測される値であり、10点測定の平均値である。
・シリンジ:ガラスシリンジ
・プローブ液を吐出する針:協和界面化学株式会社製のテフロン(登録商標)コート針22G
・プローブ液吐出量:2.2μl±0.5μl
・プローブ液: プロピレングリコールモノメチルエーテル
・測定環境:温度21℃〜25℃、湿度35%〜49%
・測定対象:キャリアG2のナノ構造面
・プローブ液被着方法:吐出プローブ液滴の半分程度までキャリアのナノ構造を押し込む。
・測定時間:プローブ液が被着した時を0秒として、1.1秒時の接触角値を使用。
Figure 2015112781
(機能転写体A1)
機能転写体A1は、キャリアG2のナノ構造が平坦化するように、1層の機能層を設けた場合である。キャリアG2のナノ構造面上に、下記組成物A−1を塗工した。なお、塗工方法は、バーコート法を採用した。バーコート法にて塗工する際に、組成物A−1をプロピレングリコールモノメチルエーテル、アセトン及び2−プロパノールの混合溶剤にて希釈した。希釈濃度は5.2重量%〜20重量%の間で変化させ、速度50mm/sec.にて塗工した。すなわち、希釈濃度により機能層の膜厚に相当する距離(lor)を制御した。塗工後、105℃の乾燥炉の中で15分間静置した。乾燥炉から取り出した後の機能層は非液体状態であることを確認した。また、表面は微粘着性を示した。温度20℃で、且つ、遮光下にて非液体状態であることが確認された。また、温度を65℃まで徐々に上げたところ、タック性が増加することを確認した。続いて、機能層の表面に保護層をラミネータにて貼り合わせた。保護層としては、コロナ処理を施したPETフィルム、コロナ処理を施したCOPフィルム又はキャリアG1を使用した。但し、保護層として使用したキャリアG1は、下記材料3を使用して製造したキャリアG1である。キャリアG1としては、キャリアG1のナノ構造の平均ピッチが、200nm、300nm、460nm、700nm、900nm又は、1200nmのものを使用した。すなわち、保護層表面の物理的性状を、機能層に転写することで、機能層表面の表面粗さ(Ra)を制御した。
・材料3
4ヒドロキシブチルアクリレート(日本化成社製 4HBA):ポリエチレングリコールヂアクリレート:4官能アクリレート:2−(ジメチルアミノ)−2−[(4−メチルフェニル)メチル)−1−[4−(4−モルホリニル)フェニル]−1−ブタノン(Irgacure(登録商標)379EG(BASF社製)):2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン(Irgacure(登録商標)651(BASF社製))=22g:33g:45g:5.5g:2.0gにて混合した材料。なお、4官能アクリレートは、グリセンリンの2量体構造を有する4官能アクリレートであり、共栄社化学株式会社製のライトアクリレートDGE−4Aを使用した。また、ポリエチレングリコールヂアクリレートは、平均分子量が462、且つ25℃における粘度が35mPa・sのポリエチレングリコールヂアクリレート(日立化成社製、FANCRYL FA−240M)を使用した。
・組成物A−1
エポキシ変性シリコーン:フュームドシリカ:オルトけい酸テトラエチル(東京化成工業社製 T0100):1H,1H,2H,2H−Perfluoro−octanol(Alfa Aesar社製):3アクリロキシプロピルトリメトキシシラン(信越シリコーン社製、KBM−5103):トリメチロールプロパンEO変性トリアクリレート(東亞合成社製 アロニックス(登録商標)M350)クレゾールノボラック系エポキシアクリレートオリゴマー:光重合性パーフルオロポリエーテル(ダイキン工業社製 Optool(登録商標)DAC HP):光酸発生剤(みどり化学社製 製品名DTS−102):2−(ジメチルアミノ)−2−[(4−メチルフェニル)メチル)−1−[4−(4−モルホリニル)フェニル]−1−ブタノン(Irgacure(登録商標)379EG(BASF社製)):2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン(Irgacure(登録商標)651(BASF社製))=10.0g:18.0g:16.8g:8.4g:16.8g:10.0g:30.0g:11.2g:0.3g:0.8g:1.4gにて混合した材料。
エポキシ変性シリコーンとしては、25℃における屈折率が1.407であり、官能基当量が3500g/molのシリコーン(信越シリコーン社製 KF−1001)を使用した。
フュームドシリカとしては、BET法における比表面積が約190m/gであり、pHが4.0〜5.5、そして炭素含有量が0.9〜1.8wt%の酸化ケイ素(日本アエロジル社製 AEROSIL(登録商標)R816)を使用した。
クレゾールノボラック系エポキシアクリレートとしては、アクリレート変性率は略100%で、下記部位(A)を繰り返し単位としており、繰り返し単位数nが0〜6まで含まれるホモオリゴマを使用した。平均分子量は約1200である。なお、繰り返しは、CHのフッ素元素に結合する「*」及び6員環に結合する「*」にて繰り返される。
作製した機能転写体A1の機能層に対するフッ素元素濃度Efを測定した。測定手順は以下の通りであり、以下に説明する他の機能転写体及び他の実施例においても、同様の手法にてフッ素元素濃度Efを測定した。
1.単結晶サファイア基板を、ホットプレート上に配置し、単結晶サファイア基板の主面の温度が115℃〜125℃の範囲になるように加温した。単結晶サファイア基板は、下記仕様のもの(京セラ社製)を使用した。
・面方位:c面(0001)、θ1:0°±0.2°、θ2:0°±0.2°
・サイズ:φ50mm、t0.37±0.05mm
・仕上げ:両面鏡面仕上げ(Ra≦1nm)
・TIR≦10μm、BOW≦0±10μm
2.機能転写体よりカバーフィルムを剥離除去した。
3.機能転写体の機能層の露出する面を、1.の単結晶サファイア基板に対して貼り合わせた。この時、貼り合わせは、ラミネートロールを使用して行った。ラミネート条件は以下の通りとした。ラミネートロールの表面温度は110℃〜118℃であり、単結晶サファイア基板の直径部分に加わる線圧が7kN/m〜9kN/mであった。ラミネート速度は10mm/秒であった。ラミネートロールの表面に対するゴム硬度は、30(タイプAのデュロメータにて測定)であった。なお、機能転写体と単結晶サファイア基板との界面への空気の巻き込みを抑制するために、ラミネートロールにより機能転写体が単結晶サファイア基板に徐々に貼り合わせられるようにした。
4.単結晶サファイア基板側より紫外線を照射した。紫外線は、波長365nmのUV−LED光源より照射した。照射する紫外線の照度は80mW/cm、そして照射時間は25秒とした。
5.4.の紫外線照射後、30秒以内に、機能転写体及び単結晶サファイア基板から成る積層体を加温した。加温は、120℃〜125℃に加温された2枚の平板にて挟み込み行った。加温時間は、30秒とした。
6.機能転写体14及び単結晶サファイア基板から成る積層体を冷却した。冷却は、エアブローにより行い、機能転写体の機能層とは反対側の面の温度及び、単結晶サファイア基板の温度が共に30℃以下になるまで行った。
7.機能転写体のキャリアを、機能層より剥離した。キャリアを、単結晶サファイア基板の一端部より、他の端部に向けて徐々に剥離した。剥離速度は、10mm/秒とした。
8.得られた機能層S12及び単結晶サファイア基板からなる積層体に対して、X線電子分光法を使用し、フッ素元素濃度を測定した。測定は、機能層の転写されたサファイア基板において、機能層のナノ構造面側に対して行った。スロット型マスクは、1mm×2mmとした。XPS法の条件は下記の通りとした。
使用機器 ;サーモフィッシャーESCALAB250
励起源 ;mono.AlKα 15kV×10mA
分析サイズ;約1mm(形状は楕円)
取込領域
Survey scan;0〜1, 100eV
Narrow scan;F 1s,C 1s,O 1s,N 1s
Pass energy
Survey scan; 100eV
Narrow scan; 20eV
機能転写体A1のフッ素元素濃度Efは、26atm%〜28atm%であった。
Figure 2015112781
(機能転写体A2)
機能転写体A2は、キャリアG2のナノ構造の凹部内部に第1の機能層が設けられ、第1の機能層及びキャリアのナノ構造を平坦化するように第2の機能層を設けた場合である。まず、キャリアG2のナノ構造面上に、下記組成物A−2を塗工した。なお、塗工方法は、バーコート法を採用した。バーコート法にて塗工する際に、組成物A−2をプロピレングリコールモノメチルエーテル及びアセトンの混合溶剤にて希釈した。希釈濃度は7.1重量%とし、速度10mm/sec.にて塗工した。なお、塗工環境としては、相対湿度40%〜48%、温度21℃〜26℃の環境とした。塗工後、125℃の乾燥炉の中で10分間静置した。第1の機能層のキャリアG2に対する配置をSEM及び透過型電子顕微鏡(TEM、以下同様)にて確認した。第1の機能層はキャリアG2のナノ構造の凹部内部に充填配置されていた。充填量は、第1の機能層の厚みとして約280nmであった。なお、キャリアG2のナノ構造の深さは320nmであった。
次に、第2の機能層を、第1の機能層及びキャリアG2のナノ構造が平坦化するように成膜した。第2の機能層として、上記組成物A−1を採用し、機能転写体A1と同様の方法にて塗工した。なお、バーコート法の塗工速度は25mm/sec.とした。第2の機能層の膜厚に相当する距離(lor)は、機能転写体A1と同様に希釈濃度により制御した。また、機能転写体A1と同様に、乾燥炉から取り出した後の第2の機能層は非液体状態であった。また、その表面は微粘着性であった。すなわち、温度20℃で、且つ、遮光下にて非液体状態であることが確認された。また、温度を65℃まで徐々に上げたところ、タック性が増加することを確認した。機能転写体A1と同様にして、第2の機能層の表面に保護層をラミネータにて貼り合わせ、第2の機能層表面の表面粗さ(Ra)を制御した。機能転写体A1と同様に機能層に対するフッ素元素濃度を測定したところ、36atm%−39atm%であった。
・組成物A−2
フュームドシリカ:オルトケイ酸テトラエチル(東京化成工業社製 T0100):1H,1H,2H,2H−Perfluoro−octanol(Alfa Aesar社製):トリエトキシ−1H,1H,2H,2H−トリデカフルオロ−n−オクチルシラン(東京化成工業社製 T1770):3アクリロキシプロピルトリメトキシシラン(信越シリコーン社製、KBM−5103):光重合性パーフルオロポリエーテル(ダイキン工業社製 Optool(登録商標)DAC HP):光酸発生剤(みどり化学社製 製品名DTS―102):2−(ジメチルアミノ)−2−[(4−メチルフェニル)メチル)−1−[4−(4−モルホリニル)フェニル]−1−ブタノン(Irgacure(登録商標)379EG(BASF社製)):2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン(Irgacure(登録商標)651(BASF社製))=10.0g:2.00g:0.46g:0.30g:2.00g:1.00g:0.07g:0.11g:0.05gにて混合した材料。
なお、フュームドシリカとしては、BET法による比表面積が約260m/g、pHが5.5〜7.5、フッ素元素濃度Efが2atm%〜3atm%の疎水性フュームドシリカ(日本アエロジル社製 AEROSIL(登録商標)R 812)を、以下のように処理してから使用した。まず、フュームドシリカを、水酸化カリウムを3重量%に溶解させた2−プロパノール溶液中に加え、その後、60℃の加温下にて超音波にて30分間処理した。続いて、遠心分離によりフュームドシリカを分離し、2−プロパノールにて洗浄する操作を3回繰り返した。その後、115℃、且つ真空下にて20分乾燥させた。続いて、パーフルオロポリエーテル修飾シラン含有液(ダイキン工業社製 オプツール(登録商標)DAX)中に、上記フュームドシリカを加え、30分間撹拌した。その後遠心分離により、フュームドシリカを単利する操作と洗浄する操作と、を3回繰り返した。最後の、150℃のオーブンにて25分間乾燥させて、処理を完了した。
(機能転写体A3)
機能転写体A3は、キャリアG2のナノ構造の凸部頂部上に第1の機能層が設けられ、第1の機能層及びキャリアのナノ構造を平坦化するように第2の機能層を設けた場合である。まず、第1の機能層としては、上記組成物A−2を選定した。上記組成物A−2を、プロピレングリコールモノメチルエーテルにて25重量%に希釈し、ポリエチレンテレフタレートフィルム上に、バーコート法により塗工した。塗工後、24℃の環境下にて2分間静置した。なお、塗工環境としては、相対湿度40%〜48%、温度21℃〜26℃の環境とした。
次に、ポリエチレンテレフタレートフィルム上の組成物A−2に対して、キャリアG2のナノ構造面を貼り合わせ、その後、キャリアG2を剥離した。ここで、貼り合わせる際の温度を10℃とし、貼り合わせた状態にて60℃まで加温した。第1の機能層のキャリアG2に対する配置をSEM及びTEMにて確認した。第1の機能層はキャリアG2のナノ構造の凸部頂部上に配置されていた。第1の機能層の厚みとして約200nmであった。なお、キャリアG2のナノ構造の深さは320nmであった。また、キャリアG2のナノ構造の凹部底部には第1の機能層は配置されていなかった。次に、第2の機能層を、第1の機能層及びキャリアG2のナノ構造が平坦化するように成膜した。第2の機能層として、上記組成物A−1を採用し、機能転写体A1と同様の方法にて塗工した。なお、バーコート法の塗工速度は10mm/sec.とした。第2の機能層の膜厚に相当する距離(lor)は、機能転写体A1と同様に希釈濃度により制御した。また、機能転写体A1と同様に、機能層は非液体状態であると共に、微粘着性を帯びていることが確認された。すなわち、温度20℃で、且つ、遮光下にて非液体状態であることが確認された。また、温度を65℃まで徐々に上げたところ、タック性が増加することが確認できた。また、機能転写体A1と同様にして、第2の機能層の表面に保護層をラミネータにて貼り合わせ、第2の機能層表面の表面粗さ(Ra)を制御した。機能転写体A1と同様に機能層に対するフッ素元素濃度Efを測定したところ、32atm%−35atm%であった。
(機能転写体A4)
機能転写体A4は、キャリアG2のナノ構造の凹部内部及び凸部頂部上に互いに隔離された第1の機能層が設けられ、第1の機能層及びキャリアのナノ構造を平坦化するように第2の機能層を設けた場合である。まず、キャリアG2のナノ構造面上に、上記組成物A−2を、機能転写体A2と同様にして塗工した。なお、塗工環境としては、相対湿度40%〜48%、温度21℃〜26℃の環境とした。塗工後、125℃の乾燥炉の中で10分間静置した。第1の機能層のキャリアG2に対する配置をSEM及びTEMにて確認した。第1の機能層はキャリアG2のナノ構造の凹部内部に充填配置され、且つ、凸部頂部上に配置されていた。また、凹部内部の第1の機能層と、凸部頂部上の第1の機能層と、は互いに離間していた。凹部内部に対する充填量は、第1の機能層の厚みとして約260nmであった。凸部頂部上に配置された第1の機能層の厚みは、約50nm程度であった。また、凸部頂部上に配置された第1の機能層は、キャリアG2のナノ構造の凸部頂部上に均等な膜を形成するのではなく、凸部頂部上に複数のナノ粒子を形成し配置されていた。なお、キャリアG2のナノ構造の深さは320nmであった。
次に、第2の機能層を、第1の機能層及びキャリアG2のナノ構造が平坦化するように成膜した。第2の機能層として、上記組成物A−1を採用し、機能転写体A1と同様の方法にて塗工した。なお、バーコート法の塗工速度は25mm/sec.とした。第2の機能層の膜厚に相当する距離(lor)は、機能転写体A1と同様に希釈濃度により制御した。また、機能転写体A1と同様に、乾燥炉から取り出した後の第2の機能層の表面は微粘着性を示していた。すなわち、温度20℃で、且つ、遮光下にて非液体状態であることが確認された。また、温度を65℃まで、徐々に上げたところ、タック性が増加することが確認できた。また、機能転写体A1と同様にして、第2の機能層の表面に保護層をラミネータにて貼り合わせ、第2の機能層表面の表面粗さ(Ra)を制御した。機能転写体A1と同様に機能層に対するフッ素元素濃度Efを測定したところ、37atm%〜40atm%であった。
(機能転写体A5)
機能転写体A5は、キャリアG2のナノ構造の表面を被覆するように第1の機能層が設けられ、第1の機能層を平坦化するように第2の機能層を設けた場合である。まず、キャリアG2のナノ構造面上に、上記組成物A−2を、機能転写体A2と同様にして塗工した。なお、塗工環境としては、相対湿度40%〜48%、温度21℃〜26℃の環境とした。塗工後、125℃の乾燥炉の中で10分間静置した。第1の機能層のキャリアG2に対する配置をSEM及びTEMにて確認した。第1の機能層はキャリアG2のナノ構造を被覆するように配置されていた。また、キャリアG2の凹部付近の第1の機能層の膜厚は、キャリアG2のナノ構造の凸部近傍の第1の機能層の膜厚よりも厚く成膜されていた。より具体的には、キャリアG2のナノ構造の凹部底部を基準とした際の第1の機能層の膜厚は約220nmであり、キャリアG2のナノ構造の凸部頂部を基準とした第1の機能層の膜厚は約80nmであった。なお、キャリアG2のナノ構造の深さは320nmであった。
次に、第2の機能層を、第1の機能層及びキャリアG2のナノ構造が平坦化するように成膜した。第2の機能層として、上記組成物A−1を採用し、機能転写体A1と同様の方法にて塗工した。なお、バーコート法の塗工速度は25mm/sec.とした。第2の機能層の膜厚に相当する距離(lor)は、機能転写体A1と同様に希釈濃度により制御した。また、機能転写体A1と同様に、乾燥炉から取り出した後の第2の機能層の表面は微粘着性を示した。すなわち、温度20℃で、且つ、遮光下にて非液体状態であることが確認された。また、温度を65℃まで徐々に上げたところ、タック性が増加することが確認できた。また、機能転写体A1と同様にして、第2の機能層の表面に保護層をラミネータにて貼り合わせ、第2の機能層表面の表面粗さ(Ra)を制御した。機能転写体A1と同様に機能層に対するフッ素元素濃度Efを測定したところ、37atm%〜40atm%であった。
上記作製した機能転写体に対して下記解析を行い、比率(Ra/lor)を求めた。なお、以下の実施例においても、本実施例と同様の測定方法で、比率(Ra/lor)を求めた。機能層の露出する表面側の表面粗さを測定するために、AFMを使用した。AFMは、株式会社キーエンス社製のNanoscale Hybrid Microscope VN−8000を使用し、測定範囲を200μm(比率1:1)に設定し、サンプリング周波数0.51Hzにて走査し測定した。AFMの観察は、湿度が40%〜50%のクラス1000のクリーンルームで行い、上記装置VN−8000に付帯される光学顕微鏡により異物の観察された箇所を避けて行った。また、サンプル測定前に、サンプルをイオナイザにより除電し、更にエアブローにて洗浄した。また、距離(lor)は、AFMにて使用したサンプルと略同じ位置の断面を、上記SEMを使用し、加速電圧1.0kVにて解析し測定した。距離(lor)を求めるに当たり、20μm間隔毎に撮像を行い、5つの観察像を得た。各観察像から、距離(lor)を任意に5つ測定し、計25点の距離(lor)の相加平均値を距離(lor)とした。また、観察倍率は、鮮明に観察されるキャリアG2のナノ構造の複数の凹部が10個〜20個、観察像内に収まる倍率とした。
・機能転写体の評価
機能転写体A1〜A5の機能層の転写精度を評価した。被処理体として4インチφの石英ガラスを使用した。まず、被処理体の被処理面をUV−O処理し、続いて、除電下にてエアブローを行い、パーティクルを取り除いた。クリーニングした被処理体を125℃のホットプレート上に配置し、この状態にて機能転写体A1〜A5をラミネーションした。機能転写体の貼り合わせられた被処理体に対して、機能転写体側より高圧水銀灯光源を用いてUV光を照射した。UV光の積算光量は1800mJ/cmになるように調整した。続いて、機能転写体が貼り合わせられた被処理体を130℃のホットプレート上に30秒間置き、その後15秒間エアブローを行い冷却した。冷却後、キャリアG2を剥離除去した。
まず、剥離性に関する予備試験を行った。予備試験としては、機能転写体A1〜A5に対し、窒素置換環境下にて紫外線を照射し、その後、機能転写体A1〜A5を、共に120℃に加熱した2枚の平板にて30秒間挟み込み、機能層を硬化させた。紫外線は、照度が95mW/cmであり、波長365nmのUV−LED光源を使用し、積算光量が1900mJ/cmになるようにした。続いて、機能層の表面に粘着テープを貼り合わせた。最後に、粘着テープを剥離除去し、機能層とキャリアG2とが分離するかを確認した。結果はいずれの機能転写体A1〜A5においても、機能層はキャリアG2より分離可能であることが確認された。
まず、機能層と被処理体の密着力を評価した。機能層を被処理体に対して良好に転写付与するためには、機能層と被処理体との真実接触面積を大きくし、これにより接着強度を増大させることが重要であるためである。冷却した後の機能転写体/被処理体から、キャリアG2を10mm/sec.の速度にて剥離する際の剥離強度を測定した。ここで、予備検討より、機能層とキャリアG2と、は容易に分離可能であることが確認されている。すなわち、測定される剥離強度の支配因子は、機能層と被処理体との界面接着力である。更に、機能転写体A1〜機能転写体A5の機能層の最外層は全て同じ組成物である。すなわち、剥離強度に差が出たのならば、それは、真実接触面積が変化したためと考えることができる。
機能転写体A1〜機能転写体A5のそれぞれに対して、剥離強度を測定したところ、比率(Ra/lor)が大きいほど、剥離強度が小さいことが確認された。この点から、比率(Ra/lor)が2.00の時を1として規格化した。まず、機能転写体A1〜A5によらず、機能層と被処理体と、の接着力、すなわち剥離強度は、比率(Ra/lor)が小さい程大きくなる。すなわち、比率(Ra/lor)と剥離強度との関係は、機能転写体を構成する機能層の最外層により支配されることがわかった。次に、比率(Ra/lor)が1.2を臨界点として剥離強度が立ち上がっていた。これは、比率(Ra/lor)が1.2を境に、機能転写体を被処理体に貼り合わせる際の、機能層の最外層の流動性が向上し、機能層と被処理体と、の真実接触面積が大きくなったためと推定される。また、比率(Ra/lor)が1.2超の場合、被処理体に転写付与された機能層において、機能層の凝集破壊が観察される部分があった。これは、キャリアG2を除去する際の剥離応力に対する機能層の耐性が低下、或いは剥離応力の均等性が低下し、剥離応力の集中点が発生したために生じたと考えられる。以上から、比率(Ra/lor)が1.2以下であることで、機能転写体の機能層と被処理体との接着強度が向上すると共に、キャリアG2を剥離する際の機能層の凝集破壊を抑制できることがわかった。
次に、転写性についてより詳細に評価を行った。まず、機能転写体/被処理体より、キャリアG2を剥離する際の剥離速度をパラメータとした。ここで、キャリアG2を剥離した後の被処理体において、機能層の転写割合が10%以下にまで減少する際の剥離速度Vmを記録した。すなわち、この剥離速度Vmが大きい程、機能転写体を使用して、被処理体に機能層を転写付与する際の速度を向上させることができることから、機能転写体の利便性が向上する。また、機能層の付与された箇所から任意に10点の測定箇所を選び取り、選び取った部分に対してAFM観察を行い、キャリアG2のナノ構造が転写付与されているかを判断した。より具体的には、ある1点の測定箇所に対して100点の凸部を観察した。すなわち、合計で1000点の凸部を観察し、これら1000点の凸部の中に含まれる欠陥を測定した。これらの測定から、評価指標を作製した。なお、剥離速度Vmは、上記検討から比率(Ra/lor)=1.2の場合を1として規格化し、剥離速度Vm比として記載した。
・評価指標
◎+…剥離速度Vm比が4.5以上、且つ欠陥率が、0.5%以下。
◎…剥離速度Vm比が4.5以上、且つ欠陥率が、0.5%超1%以下。
〇+…剥離速度Vm比が4.3以上4.5未満、且つ欠陥率が1%以下。
〇…剥離速度Vm比が3.8以上4.3未満、且つ欠陥率が1.5%以下。
△+…剥離速度Vm比が2.2以上4.3未満、且つ欠陥率が2.5%以下。
△…剥離速度Vm比が1.0以上2.2未満、且つ欠陥率が5%以下。
×…比率(Ra/lor)が1.2超の場合。
機能転写体A1に対する結果を表2に、機能転写体A2に対する結果を表3に、機能転写体A3に対する結果を表4に、機能転写体A4に対する結果を表5に、機能転写体A5に対する結果を表6に、それぞれ記載した。また、各表2〜表6は、縦軸がAFMにより測定された機能層面側の表面粗さ(Ra)であり、横軸がSEM観察より計測した距離(lor)である。また、表2〜表6には、比率(Ra/lor)と上記評価結果を「/」を介して同時に表記した。なお、「−」は評価を行っていないことを意味する。
Figure 2015112781
Figure 2015112781
Figure 2015112781
Figure 2015112781
Figure 2015112781
表2〜表6の結果より以下のことがわかる。まず機能転写体A1〜機能転写体A5の種類によらず、比率(Ra/lor)により評価結果を篩い分けることができることがわかる。すなわち、機能転写体における、機能層の数、機能層の配置、及び機能層のフッ素元素濃度によらず、機能転写体を構成する機能層の物性値である比率(Ra/lor)により、転写性を制御できる。より具体的には、比率(Ra/lor)が1.150と1.45と、の間で大きな変化があり、比率が大きい程、剥離速度Vmの向上率が低く、且つ、転写による欠陥率が大きくなっている。これは、大きな比率(Ra/lor)の場合、キャリアG2の剥離速度を向上させることで増加する剥離集中応力により機能層の凝集破壊、特に、キャリアG2のナノ構造の凹部開口部近傍における凝集破壊を促進させたためである。次に、比率(Ra/lor)が1.150と0.750と、の間にて大きな変化があり、比率が小さくなる程、剥離速度Vmが大きく向上すると共に、転写時の欠陥率が低下する。これは、比率(Ra/lor)が小さくなることは、機能層の膜厚に相当する距離(lor)からみた、機能層表面側の粗さRaが小さくなることを意味するためである。すなわち、比率(Ra/lor)が小さくなることで、換言すれば、粗さRaが小さくなる或いは距離(lor)が大きくなることで、機能転写体の機能層の表層の流動性が向上するため、転写速度が大きくなる。更に、該流動性の向上により既に説明したように機能層と被処理体と、の真実接触面積が大きくなり、これに伴い接着強度が増加するため、キャリアG2を剥離する際の機能層に加わる被処理体側から加わる応力の斑を低減でき、これにより転写精度が向上したと考えられる。この観点から、比率(Ra/lor)は1.2以下であることが好ましく、0.75以下であることがより好ましいことがわかる。また、比率(Ra/lor)が0.407以下になることで、転写速度がより大きくなると共に、転写精度が向上することがわかる。これは、機能転写体を被処理体に貼り合わせる際の、機能層表層の流動性が大きくなり、機能層と被処理体との界面の不陸に対する吸収効果が大きくなったためと考えられる。より具体的には、機能層表層の流動性が向上することで、速度の大きな貼合であっても、機能層と被処理体との真実接触面積が大きくなる。これにより、機能層と被処理体との接着力が大きくなる。これにより、キャリアG2を除去する際に加わる機能層に対する被処理体側から加わる応力の斑を小さくできるため、キャリアG2の凹部開口部近傍における機能層の凝集破壊を抑制でき、転写精度が向上する。この観点から、比率(Ra/lor)は0.55以下程度が好ましいことがわかる。更に、比率(Ra/lor)が0.290以下になることで、剥離速度Vm比が4.3以上4.5未満と大きくなり、飽和しかかっている。更に、欠陥率が1%以下と非常に小さくなっている。これは、既に説明してきた原理が発現しやすい範囲に入ったためと考えられる。更に、被処理体の大きさを8インチφ以上に大きくした場合や、被処理体を割れない程度に湾曲させた場合であっても略同様の結果が得られた。これは、機能層表層の流動による機能層と被処理体の界面不陸を吸収する効果がより向上したためと考えられる。この観点から、比率(Ra/lor)は、0.30以下であることがより好ましい。特に、比率(Ra/lor)が0.233以下であることにより、特に欠陥率がより減少することがわかる。これは、被処理体と機能層との真実接触面積そして接着力がほぼ飽和したことから、キャリアG2を剥離する際の機能層に対する応力の斑が低減したためと推定される。更に、比率(Ra/lor)が0.100以下であることで、剥離速度Vmが高い場合であっても、欠陥理を0.5%以下に小さくできることがわかった。以上から、比率(Ra/lor)は、0.25以下であることがより好ましく、最も好ましくは0.10以下であることがわかった。
一方で、別途機能層側の表面粗さ(Ra)の最低値を調査した。上記説明した機能転写体A1〜A5の作製において、保護層の代わりにフッ素系シランカップリング材にて単層表面処理をしたシリコンウェハを使用し、真空下にて機能層に貼り合わせた。この時、40℃に加温した状態にて貼り合わせを行った。また、24℃まで冷却し除去した。このようにして、表面粗さ(Ra)を非常に小さくしたサンプルを作製した。ここで、表面粗さ(Ra)は、2nm程度まで減少させることができた。すなわち比率(Ra/lor)としては、最少の値で0.002を検討した。このような表面粗さ(Ra)及び比率(Ra/lor)が非常に小さな機能転写体を使用した場合であっても、上記説明した欠陥率及び剥離速度Vmの傾向は確認された。よって、比率(Ra/lor)の最小値は0.002以上であることが好ましいことがわかった。
また、機能層側の表面粗さ(Ra)の絶対値は、実施例1においては、保護層の表面粗さにて制御した。特に、実施例1においては、最大で242nmのRaまで制御できた。また、保護層としてキャリアG1を使用した場合に、キャリアG1のナノ構造のアスペクトを5.5にした場合、表面粗さ(Ra)は500nm程度まで向上することがわかったが、一方で、保護層を機能転写体より除去する際に、保護層のナノ構造が破壊される部分のあることが判明した。この観点から、機能層側の表面粗さ(Ra)を、制御性高く、且つ製造性高く制御する観点から、機能層側の表面粗さ(Ra)は500nm以下であることが好ましく、300nm以下であることがより好ましいことがわかった。
また、石英基板上に転写された機能層に対して、水滴の接触角を測定したところ、機能転写体A1から機能転写体A5の順番に、133度、145度、138度、147度、そして148度として計測できた。また、転落角を測定したところ、機能転写体A1から機能転写体A5の順番に、30度、10度、20度、5度、そして5度であった。なお、5度の場合は、5度以下にて転がり始めていることを観察した。以上のように、機能転写体を使用すると共に、機能層のフッ素元素濃度Efを所定の範囲にすることで、高性能な疎水性機能が発現することも確認できた。なお、機能転写体A1〜A5を使用し作製された、機能層付の被処理体は、透明度が向上していることが確認された。これは、機能層のナノ構造の平均ピッチが小さく、且つ高さが高いため、良好な有効媒質近似による屈折率分布が形成されて、光の反射率が大きく低下したためと考えることが出来る。
(実施例2)
実施例1より、機能転写体の構成及び機能層のフッ素元素濃度Efによらず、比率(Ra/lor)によって転写性を担保できることがわかった。実施例2においては、機能転写体の機能層の最外層の物性と、被処理体の種類の与える転写性への影響と、を調査した。ここでは、実施例1より、機能転写体における機能層の配置は転写性に影響しないことがわかっているため、実施例1の機能転写体A5を代表し、使用した。
実施例1の機能転写体A5と同様の手法で機能転写体Bを作製した。なお、キャリアG2のナノ構造は、平均ピッチが500nm、平均開口径が480nm、凹部深さが900nm、凹部形状が斜辺に膨らみを有した円錐形状、凹部配列は六方配列のものを使用した。但し、第2の機能層として、以下の組成物B−1〜B−21をそれぞれ使用した。また、各組成物B−1〜B−21は、プロピレングリコールモノメチルエーテル、シクロヘキサンノン、アセトン、2−プロパノール、N−メチルピロリドン、テトラヒドロフラン、シクロヘキサン又はトルエンのいずれか或いは混合溶剤に対して溶解させた。特に、親水性溶剤に溶解させることを優先に検討し、親水性溶剤に溶解しなかった場合に、疎水性溶剤を検討した。また、各組成物の有する極性基を表7及び表8に記載した。なお、表7及び表8においては、〇印のある極性基を含むことを意味する。すなわち、何も記載のない空欄は、その極性基を含まないことを意味している。また、表7及び表8に記載の極性基には、重合開始剤の具備する極性基は記載していない。
Figure 2015112781
Figure 2015112781
・組成物B−1
下記の繰り返し単位(a)と繰り返し単位(b)とから構成される共重合ポリマである。分子量は2900である。繰り返し単位bの繰り返し数Nbと繰り返し単位aの繰り返し数Naと、の比率(Nb/Na)は0.25である。機能転写体B1の作製後に、実施例1と同様にフッ素元素濃度Efを測定したところ、35atm%−37atm%であった。また、水滴に対する接触角と転落角は、それぞれ、165度及び5度であった。
Figure 2015112781
・組成物B−2
下記の繰り返し単位(c)を含むクレゾールノボラック系エポキシアクリレートであり、アクリレート置換率は略100%である。繰り返し単位数nが0〜6まで含まれるホモオリゴマである。平均分子量は約1200である。なお、繰り返しは、CHの炭素元素に結合する「*」及び6員環に結合する「*」にて繰り返される。また、光重合開始剤として、αアミノアルキルフェノン系の2−(ジメチルアミノ)−2−[(4−メチルフェニル)メチル]−1−[4−(4−モルホリニル)フェニル]−1−ブタノン(Irgacure(登録商標)379EG、BASF社製)を3.17重量%添加した。また、Pentaerythritol tetrakis(3−mercaptobutylate)(昭和電工株式会社製 カレンズ(登録商標)MT PE−1)を、1重量%添加した。機能転写体B2の作製後に、実施例1と同様にフッ素元素濃度Efを測定したところ、35atm%−37atm%であった。また、水滴に対する接触角と転落角は、それぞれ、163度及び5度であった。
Figure 2015112781
・組成物B−3
上記繰り返し単位(a)と下記繰り返し単位(d)と、から構成される共重合ポリマである。平均分子量は5500であり、繰り返し単位(a)の繰り返し数Naと繰り返し単位(d)の繰り返し数Ndとの比率(Na/Nd)は1.5である。なお、光重合開始剤として、オキシムエステル系のエタノン,1−[9−エチル−6−(2−メチルベンゾイル)−9H−カルバゾール−3−イル]−,1−(0−アセチルオキシム)(Irgacure(登録商標)OXE02、BASF社製)を4.2重量%添加した。機能転写体B3作製後に、実施例1と同様にフッ素元素濃度Efを測定したところ、34atm%−37atm%であった。また、水滴に対する接触角と転落角は、それぞれ、169度及び5度であった。
Figure 2015112781
・組成物B−4
クレゾールノボラック系エポキシメタアクリレートであり、メタアクリレート変性率は約50%のホモポリマである。分子量は約3000である。光重合開始剤として、α−ヒドロキシアルキルフェノン系の1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン(Irgacure(登録商標)184、BASF社製)と、α−アミノアルキルフェノン系の、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1(Irgacure(登録商標)369、BASF社製)を選定し、Irgacure(登録商標)184:Irgacure(登録商標)369=2.75:1の比率にて混合し、3.18重量%添加した。機能転写体B4の作製後に、実施例1と同様にフッ素元素濃度Efを測定したところ、35atm%−37atm%であった。また、水滴に対する接触角と転落角は、それぞれ、161度及び5度であった。
・組成物B−5
フェノールノボラック系エポキシメタアクリレートであり、メタアクリレート変性率は約50%のホモポリマである。分子量は約3000である。光重合開始剤として、α−ヒドロキシアルキルフェノン系の1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン(Irgacure(登録商標)184、BASF社製)と、α−アミノアルキルフェノン系の、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1(Irgacure(登録商標)369、BASF社製)を選定し、Irgacure(登録商標)184:Irgacure(登録商標)369=2.75:1の比率にて混合し、3.18重量%添加した。機能転写体B5の作製後に、実施例1と同様にフッ素元素濃度Efを測定したところ、36atm%−38atm%であった。また、水滴に対する接触角と転落角は、それぞれ、160度及び10度であった。
・組成物B−6
下記繰り返し単位(e)を有するポリエチレングリコールであり、分子量は約40000である。なお、末端は水酸基である。機能転写体B6の作製後に、実施例1と同様にフッ素元素濃度Efを測定したところ、35atm%−37atm%であった。また、水滴に対する接触角と転落角は、それぞれ、149度及び15度であった。
(繰り返し単位(e))
−(CH−CH−O)
・組成物B−7
上記繰り返し単位(a)と下記繰り返し単位(f)と、から構成されるアミノエチル化共重合アクリルポリマである。平均分子量は約20000であり、繰り返し単位(a)の繰り返し数Naと繰り返し単位(f)の繰り返し数Nfとの比率(Na/Nf)は0.67である。機能転写体B7の作製後に、実施例1と同様にフッ素元素濃度Efを測定したところ、34atm%−36atm%であった。また、水滴に対する接触角と転落角は、それぞれ、146度及び15度であった。
Figure 2015112781
・組成物B−8
組成物B−1に記載の共重合ポリマに対して、モノマであるトリシクロデカンジメタノールジアクリレート及びトリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリアクリレートを混合した材料である。なお、ポリマの総重量とモノマの総重量との比は、5.5:4.5とした。また、モノマ総重量に対して5.5重量%の光重合開始剤を添加した。光重合開始剤として、α−ヒドロキシアルキルフェノン系の1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン(Irgacure(登録商標)184、BASF社製)と、α−アミノアルキルフェノン系の2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1(Irgacure(登録商標)369、BASF社製)を選定し、Irgacure(登録商標)184:Irgacure(登録商標)369=2.75:1の比率にて混合した。また、Pentaerythritol tetrakis(3−mercaptobutylate)(昭和電工株式会社製 カレンズ(登録商標)MT PE−1)を、2重量%添加した。機能転写体B8の作製後に、実施例1と同様にフッ素元素濃度Efを測定したところ、35atm%−37atm%であった。また、水滴に対する接触角と転落角は、それぞれ、165度及び5度であった。
・組成物B−9
組成物B−2に記載のクレゾールノボラック系エポキシアクリレートに、モノマであるトリシクロデカンジメタノールジアクリレート及びトリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリアクリレートを混合した材料である。なお、ポリマの総重量とモノマの総重量との比は、7.9:2.1とした。また、オリゴマ及びモノマ総重量に対して5.5重量%の光重合開始剤を添加した。光重合開始剤は、αアミノアルキルフェノン系の2−(ジメチルアミノ)−2−[(4−メチルフェニル)メチル]−1−[4−(4−モルホリニル)フェニル]−1−ブタノン(Irgacure(登録商標)379 EG、BASF社製)を選定した。機能転写体B9の作製後に、実施例1と同様にフッ素元素濃度Efを測定したところ、36atm%−38atm%であった。また、水滴に対する接触角と転落角は、それぞれ、166度及び5度であった。
・組成物B−10
組成物B−3に記載の共重合ポリマに、モノマであるトリシクロデカンジメタノールジアクリレート及びトリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリアクリレートを混合した材料である。なお、ポリマの総重量とモノマの総重量との比は、4.2:5.8とした。また、ポリマとモノマの総重量に対して5.5重量%の光重合開始剤を添加した。光重合開始剤は、オキシムエステル系の、エタノン,1−[9−エチル−6−(2−メチルベンゾイル)−9H−カルバゾール−3−イル]−,1−(0−アセチルオキシム)(Irgacure(登録商標)OXE 02、BASF社製)を選定した。機能転写体B10の作製後に、実施例1と同様にフッ素元素濃度Efを測定したところ、35atm%−37atm%であった。また、水滴に対する接触角と転落角は、それぞれ、144度及び20度であった。
・組成物B−11
組成物B−7に記載のアミノエチル化共重合アクリルポリマに、モノマである2−エチルヘキシルEO変性アクリレート及びトリメチロールプロパントリアクリレートを混合した材料である。なお、ポリマの総重量とモノマの総重量との比は、4.0:6.0とした。また、モノマ総重量に対して5.5重量%の光重合開始剤を添加した。光重合開始剤は、α−ヒドロキシアルキルフェノン系の1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン(Irgacure(登録商標)184、BASF社製)と、α−アミノアルキルフェノン系の、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1(Irgacure(登録商標)369、BASF社製)を選定し、Irgacure(登録商標)184:Irgacure(登録商標)369=2.75:1の比率にて混合した。また、Pentaerythritol tetrakis(3−mercaptobutylate)(昭和電工株式会社製 カレンズ(登録商標)MT PE−1)を、5重量%添加した。機能転写体B11の作製後に、実施例1と同様にフッ素元素濃度Efを測定したところ、34atm%−37atm%であった。また、水滴に対する接触角と転落角は、それぞれ、149度及び10度であった。
・組成物B−12
組成物B−5に記載のフェノールノボラック系エポキシメタアクリレートに、モノマであるトリシクロデカンジメタノールジアクリレート及びトリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリアクリレートを混合した材料である。なお、ポリマの総重量とモノマの総重量との比は、8.2:1.8とした。また、ポリマ及びモノマの総重量に対して5.5重量%の光重合開始剤を添加した。光重合開始剤は、α−ヒドロキシアルキルフェノン系の1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン(Irgacure(登録商標)184、BASF社製)と、α−アミノアルキルフェノン系の2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1(Irgacure(登録商標)369、BASF社製)を選定し、Irgacure(登録商標)184:Irgacure(登録商標)369=2.75:1の比率にて混合した。機能転写体B12の作製後に、実施例1と同様にフッ素元素濃度Efを測定したところ、35atm%−37atm%であった。また、水滴に対する接触角と転落角は、それぞれ、165度及び5度であった。
・組成物B−13
組成物B−6に記載のポリエチレングリコールに、モノマであるトリシクロデカンジメタノールジアクリレート及びトリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリアクリレートを混合した材料である。なお、ポリマの総重量とモノマの総重量と比は、5.5:4.5とした。また、モノマ総重量に対して5.5重量%の光重合開始剤を添加した。光重合開始剤は、α−ヒドロキシアルキルフェノン系の1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン(Irgacure(登録商標)184、BASF社製)とα−アミノアルキルフェノン系の2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1(Irgacure(登録商標)369、BASF社製)を選定し、Irgacure(登録商標)184:Irgacure(登録商標)369=2.75:1の比率にて混合した。機能転写体B13の作製後に、実施例1と同様にフッ素元素濃度Efを測定したところ、35atm%−37atm%であった。また、水滴に対する接触角と転落角は、それぞれ、166度及び5度であった。
・組成物B−14
組成物B−7に記載のアミノエチル化共重合アクリルポリマに、モノマであるトリシクロデカンジメタノールジアクリレート及びトリメチロールプロパンEO変性トリアクリレートを混合した材料である。なお、ポリマの総重量とモノマの総重量と比は、6.7:2.3とした。また、モノマ総重量に対して5.5重量%の光重合開始剤を添加した。光重合開始剤は、オキシムエステル系の、エタノン,1−[9−エチル−6−(2−メチルベンゾイル)−9H−カルバゾール−3−イル]−,1−(0−アセチルオキシム) (Irgacure(登録商標)OXE 02、BASF社製)を選定した。機能転写体B14の作製後に、実施例1と同様にフッ素元素濃度Efを測定したところ、38atm%−39atm%であった。また、水滴に対する接触角と転落角は、それぞれ、160度及び5度であった。
・組成物B−15
50℃における粘度が約3000mPa・sのフェニルグリシジルエーテルアクリレートと、25℃における粘度が約25000mPa・sのペンタエリスリトールトリアクリレートヘキサメチレンジイソシアネートウレタンプレポリマーと、を重量比にて75:25にて混合した材料に、5.5重量%の光重合開始剤を添加した。光重合開始剤は、αアミノアルキルフェノン系の、2−(ジメチルアミノ)−2−[(4−メチルフェニル)メチル]−1−[4−(4−モルホリニル)フェニル]−1−ブタノン(Irgacure(登録商標)379 EG、BASF社製)を選定した。また、Pentaerythritol tetrakis(3−mercaptobutylate)(昭和電工株式会社製 カレンズ(登録商標)MT PE−1)を、4重量%添加した。機能転写体B15の作製後に、実施例1と同様にフッ素元素濃度Efを測定したところ、36atm%−37atm%であった。また、水滴に対する接触角と転落角は、それぞれ、161度及び5度であった。
・組成物B−16
下記繰り返し単位(g)を有するチタンポリマ、側鎖フェニル変性シリコーン(信越シリコーン社製 SH710)、チタニウムテトラブトキシド、3アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、及び3−グリシジルオキシプロピルトリメトキシシランを混合した材料であり、混合比率は、1:1.3:1.5:0.42:0.42とした。また、3アクリロキシプロピルトリメトキシシランに対して5.5重量%の光重合開始剤を添加した。光重合開始剤は、αアミノアルキルフェノン系の2−(ジメチルアミノ)−2−[(4−メチルフェニル)メチル]−1−[4−(4−モルホリニル)フェニル]−1−ブタノン(Irgacure(登録商標)379 EG、BASF社製)を選定した。また、Pentaerythritol tetrakis(3−mercaptobutylate)(昭和電工株式会社製 カレンズ(登録商標)MT PE−1)を、2重量%添加した。機能転写体B16の作製後に、実施例1と同様にフッ素元素濃度Efを測定したところ、34atm%−36atm%であった。また、水滴に対する接触角と転落角は、それぞれ、140度及び25度であった。
Figure 2015112781
・組成物B−17
分子量が40000のポリジメチルシロキサン、側鎖フェニル変性シリコーン(信越シリコーン社製 SH710)、チタニウムテトラブトキシド、3アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、及び3−グリシジルオキシプロピルトリメトキシシランを混合した材料であり、混合比率は、1:1.3:1.5:0.42:0.42とした。また、3アクリロキシプロピルトリメトキシシランに対して5.5重量%の光重合開始剤を添加した。光重合開始剤は、αアミノアルキルフェノン系の、2−(ジメチルアミノ)−2−[(4−メチルフェニル)メチル]−1−[4−(4−モルホリニル)フェニル]−1−ブタノン(Irgacure(登録商標)379 EG、BASF社製)を選定した。また、Pentaerythritol tetrakis(3−mercaptobutylate)(昭和電工株式会社製 カレンズ(登録商標)MT PE−1)を、5重量%添加した。機能転写体B17の作製後に、実施例1と同様にフッ素元素濃度Efを測定したところ、36atm%−39atm%であった。また、水滴に対する接触角と転落角は、それぞれ、149度及び5度であった。
・組成物B−18
組成物B−16に記載したチタンポリマである。縮合促進剤として、光酸発生剤(みどり化学社製 製品名DTS−102)をチタンポリマ100重量部に対して、0.55重量部添加した。又、光に対する反応性を高めるために、光重合開始剤として、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン(Irgacure(登録商標)184、BASF社製)をチタンポリマ100重量部に対して、2重量%添加した。また、Pentaerythritol tetrakis(3−mercaptobutylate)(昭和電工株式会社製 カレンズ(登録商標)MT PE−1)を、10重量%添加した。機能転写体B18の作製後に、実施例1と同様にフッ素元素濃度Efを測定したところ、36atm%−39atm%であった。また、水滴に対する接触角と転落角は、それぞれ、142度及び25度であった。
・組成物B−19
分子量が約40000のポリジメチルシロキサンであり、組成物B−17にて使用したものと同様のものである。未反応物に対する反応促進剤として、光酸発生剤(みどり化学社製 製品名DTS−102)を0.6重量%、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン(Irgacure(登録商標)184、BASF社製)を2.5重量%、Pentaerythritol tetrakis(3−mercaptobutylate)(昭和電工株式会社製 カレンズ(登録商標)MT PE−1)を10重量%添加した。機能転写体B19の作製後に、実施例19と同様にフッ素元素濃度Efを測定したところ、35atm%−37atm%であった。また、水滴に対する接触角と転落角は、それぞれ、147度及び10度であった。
・組成物B−20
分子量が5800のポリイソプレンである。機能転写体B20の作製後に、実施例1と同様にフッ素元素濃度Efを測定したところ、35atm%−37atm%であった。また、水滴に対する接触角と転落角は、それぞれ、149度及び15度であった。
・組成物B−21
分子量が56,000のポリスチレンである。未反応物に対する反応促進剤として、光酸発生剤(みどり化学社製 製品名DTS−102)を0.6重量%、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン(Irgacure(登録商標)184、BASF社製)を2.5重量%、Pentaerythritol tetrakis(3−mercaptobutylate)(昭和電工株式会社製 カレンズ(登録商標)MT PE−1)を10重量%添加した。機能転写体B21の作製後に、実施例1と同様にフッ素元素濃度Efを測定したところ、35atm%−37atm%であった。また、水滴に対する接触角と転落角は、それぞれ、168度及び5度であった。
上記実施例1の機能転写体A5と同様に第1の機能層及び第2の機能層を成膜した。乾燥炉から取り出した後の機能層は、タック性のない非液体状態であった。また、組成物B−1から組成物B−15については、温度を徐々に上げたところ、60℃〜80℃近辺からタック性が発現するか、又は、タック性が増加することが確認できた。
実施例1の機能転写体A1と同様の操作を行い、被処理体に対して機能層を転写した。但し、被処理体に貼り合わせる際の温度を95℃〜145℃の範囲に変更した。ここで、被処理体としては以下の被処理体T−1〜T−15を使用した。
・被処理体T−1… 石英ガラス。
・被処理体T−2… シリコンウェハ。
・被処理体T−3… シリコンカーバイド(SiC)。
・被処理体T−4… 窒化ガリウム。
・被処理体T−5… 金。但し、石英ガラスの表面に金を蒸着し成膜したもの。
・被処理体T−6… 銀。但し、石英ガラスの表面に銀を蒸着し成膜したもの。
・被処理体T−7… 酸化インジウムスズ(ITO)。
・被処理体T−8… ポリエチレンテレフタレート(PET)。
・被処理体T―9… 合成皮革(表皮表層はポリウレタンフィルム)。
・被処理体T−10… メチルトリメトキシシラン及びテトラエトキシシランを1:99のモル比にて混合した材料により表面処理を施した石英ガラス。水滴に対する接触角は、41度。なお、表面処理は以下のように行った。まず、無水トルエン溶剤の中に石英ガラスを浸漬し、105℃〜110℃の温度にて30分間加温した。次に、無水トルエンに上記比率のメチルトリメトキシシラン及びテトラエトキシシランを10重量%の濃度にて溶解させた。上記メチルトリメトキシシラン及びテトラエトキシシランの溶解した無水トルエン溶剤の中に、浸漬加温処理を施した石英ガラスを浸漬した。この時、24℃にて8時間保持した。その後、石英ガラスを取り出し、無水トルエンにて十分に洗浄した後に、アセトンにて洗浄し、最後にエタノールにて洗浄した。洗浄後、120度にて15分間乾燥させ、処理を完了した。
・被処理体T−11… メチルトリメトキシシラン及びテトラエトキシシランを10:90のモル比にて混合した材料により表面処理を施した石英ガラス。水滴に対する接触角は、71度。なお、表面処理は被処理体T−10と同様に行った。
・被処理体T−12… メチルトリメトキシシラン及びテトラエトキシシランを25:75のモル比にて混合した材料により表面処理を施した石英ガラス。水滴に対する接触角は、88度。なお、表面処理は被処理体T−10と同様に行った。
・被処理体T−13… メチルトリメトキシシラン及びテトラエトキシシランを50:50のモル比にて混合した材料により表面処理を施した石英ガラス。水滴に対する接触角は、94度。なお、表面処理は被処理体T−10と同様に行った。
・被処理体T−14… メチルトリメトキシシラン及びテトラエトキシシランを65:35のモル比にて混合した材料により表面処理を施した石英ガラス。水滴に対する接触角は、101度。なお、表面処理は被処理体T−10と同様に行った。
・被処理体T−15… メチルトリメトキシシラン及びテトラエトキシシランを92:8のモル比にて混合した材料により表面処理を施した石英ガラス。水滴に対する接触角は、109度。なお、表面処理は被処理体T−10と同様に行った。
転写性の試験を行った、機能層の組成物B−1〜B−21と被処理体T−1〜T−15との組み合わせ、及び、評価結果を表9に記載した。評価指標は以下の通りである。まず、機能転写体Bを実施例1と同様に解析し、比率(Ra/lor)を算出した。ここでは、機能転写体Bに対する値であることから比率Bと表現する。次に、算出した比率Bを、実施例1の機能転写体A1の転写性検討結果と照らし合わせた。すなわち、比率Bと同じ、又は、最も近い機能転写体A1の比率(Ra/lor)に対する転写性評価結果を確認した。機能転写体Bにおいても、実施例1の機能転写体A1と同様に転写性を評価し、評価結果が実施例1の「△」、すなわち、剥離速度Vm比が1.0以上2.2未満、且つ欠陥率が5%以下になった場合を「×」、評価結果が下がったものの該「△」評価までは下がらなかった場合を「▲」、評価結果が同様或いは向上した場合を「●」として記載した。また、表9中、何も記載していない欄は、評価を行っていないことを意味する。
Figure 2015112781
表9より以下のことがわかる。まず極性基を機能層に含むことで、転写性が良好に保たれる。一方で、極性基を含まない場合であっても、剥離速度Vm比が1.0以上2.2未満、且つ、欠陥率が5%以下になるケースはない。更に、これらの結果は、被処理体の材質や表面物性によらない。すなわち、比率(Ra/lor)を満たすことで、特に、機能層に極性基を含む場合に、転写性が良好となることがわかった。これは、転写性において特に重要な因子は、機能層と被処理体との接着強度を大きくすることと、機能層の破壊を抑制することである。ここで、機能層と被処理体の接着強度は、前述してきた比率(Ra/lor)による真実接触面積の増加により担保しているが、機能層が極性基を含むことで、機能層と被処理体との単位面積当たりの接着強度が向上するためである。これは、極性基を含むことで生じる、静電気的な相互作用や水素結合作用が働くためと考えられる。また、極性基として、エポキシ基、水酸基、アクリロイル基、メタクリロイル基、ビニル基、カルボキシル基、イソシアネート基又はカルボニル基の少なくとも1以上を含むと、キャリアG2と機能層との密着力が小さくなることもわかった。これは、転写精度を向上させることにつながるため有用である。これは、これらの極性基を含む場合、光重合による収縮、熱重合による収縮、水素結合による高密度化の1以上の現象を発現できるため、キャリアG2と機能層との界面接着力が低下したためと推定される。中でも、エポキシ基、水酸基、アクリロイル基、メタクリロイル基、ビニル基、又は、カルボキシル基の少なくとも1以上を含むことで、前記効果が大きくなることが確認された。
また、機能転写体を被処理体に貼り合わせる際の、異物の影響を別途調査したところ、組成物B−1〜組成物B−15を使用した場合、異物の影響を受けづらいことがわかった。より具体的には、被処理体の表面に恣意的に異物としてタンパク質を付着させ、この状態で機能転写体の貼り合わせを行った。この結果、組成物B−1〜組成物B−15を使用した場合は、異物の直径をφとした場合に、貼り合わせにより該異物にて発生した気泡の大きさは5φ以下であったが、他の組成物を使用した場合は、発生した気泡は8φ以上であった。組成物B−1〜組成物B−15は、温度を徐々に上げたところ、60℃〜80℃近辺からタック性が発現或いは増加することが確認できている。すなわち、このような条件を満たすことで、機能転写体を被処理体に貼り合わせる際に、機能層の表層の流動性が大きくなることから、異物周辺における機能層の流動も向上し、異物という不陸を吸収する効果が大きくなったためと考えられる。以上から、機能転写体の機能層は、温度20℃で、且つ、遮光下にて非液体状態であると共に、加温することで、タック性が発現することが好ましいとわかった。なお、機能層の材料の選択性や工業製の観点から、タック性を発現する最低の温度は300℃程度である。すなわち、温度20℃で、且つ、遮光下にて非液体状態であると共に、温度20℃超から300℃以下の範囲にてタック性を発現することが好ましい。
また、別の検討から、第1の機能層がキャリアのナノ構造を平坦化し、更に第1の機能層上に第2の機能層が設けられる図14Eに示す機能転写体を作製した。なお、機能層のフッ素元素濃度Efは、37atm%〜40atm%であった。ここで、第1の機能層として組成物B−18から組成物B−21のいずれかを使用し、第2の機能層に組成物B−1から組成物B−3を使用した。この場合、上記評価指標を使用すると「●」であった。すなわち、機能転写体においては、機能層の最外層に極性基が含まれていれば、転写性がより向上することがわかった。また、最外層に極性基を含む場合において、機能層の最外層の膜厚を調査したところ、5nm程度から転写性が向上しはじめ、20nm〜30nmにて急激に転写性が良好となり、50nm以上においては安定に転写ができることが確認された。よって、機能転写体の最外層は、極性基を含むと共に、膜厚が5nm以上であることが好ましく、20nm以上であることがよりこの好ましく、50nm以上であることが最も好ましいことがわかった。
(実施例3)
実施例3においては、キャリアの物性と機能層の物性の関係の与える転写精度への影響を調査した。実施例1及び実施例2より、比率(Ra/lor)が所定の範囲であることで、機能層の組成と被処理体の組成によらず、転写性を良好に保つことが可能であること、また、転写性という観点に立つと、機能層のフッ素元素濃度によらないこともわかっている。さらには、機能層の最外層に極性基を含むことで転写性がより良好に保てることがわかっている。このため、実施例3においては、実施例1の機能転写体A5の形態を代表させ、キャリアのみを下記キャリアC−1〜C−8に適宜変更し、機能転写体Cを作製し検討した。即ち、キャリアの物性をパラメータにして変化させた。また、転写対象となる被処理体には、表面物性の大きく異なる被処理体T−2、T−8、T−9、及びT−13を使用した。なお、キャリアG2のナノ構造としては、平均ピッチが900nm、平均開口径が800nm、凹部の深さが1500nm、凹部の配列は正六方配列のものを使用した。
検討に使用したキャリアは、以下のキャリアC−1〜C−8である。
・キャリアC−1…実施例1に記載のキャリアG2であり、フッ素含有ウレタン(メタ)アクリレート(OPTOOL(登録商標)DAC HP(ダイキン工業社製))を2重量部の添加量にしたものである。水滴の接触角は94度である。比率(Es/Eb)は、115であった。また、機能転写体C1の作製後に、実施例1と同様にフッ素元素濃度Efを測定したところ、30atm%−32atm%であった。また、水滴に対する接触角と転落角は、それぞれ、134度及び35度であった。
・キャリアC−2…実施例1に記載のキャリアG2であり、フッ素含有ウレタン(メタ)アクリレート(OPTOOL(登録商標)DAC HP(ダイキン工業社製))を5重量部の添加量にしたものである。水滴の接触角は98度である。比率(Es/Eb)は、68であった。また、機能転写体C2の作製後に、実施例1と同様にフッ素元素濃度Efを測定したところ、31atm%−33atm%であった。また、水滴に対する接触角と転落角は、それぞれ、139度及び15度であった。
・キャリアC−3…実施例1に記載のキャリアG2であり、フッ素含有ウレタン(メタ)アクリレート(OPTOOL(登録商標)DAC HP(ダイキン工業社製))を10重量部の添加量にしたものである。水滴の接触角は111度である。比率(Es/Eb)は、54であった。また、機能転写体C3の作製後に、実施例1と同様にフッ素元素濃度Efを測定したところ、35atm%−37atm%であった。また、水滴に対する接触角と転落角は、それぞれ、156度及び5度であった。
・キャリアC−4…実施例1に記載のキャリアG2であり、フッ素含有ウレタン(メタ)アクリレート(OPTOOL(登録商標)DAC HP(ダイキン工業社製))を15重量部の添加量にしたものである。水滴の接触角は121度である。比率(Es/Eb)は、48であった。また、機能転写体C4の作製後に、実施例1と同様にフッ素元素濃度Efを測定したところ、37atm%−39atm%であった。また、水滴に対する接触角と転落角は、それぞれ、166度及び5度であった。
・キャリアC−5…ポリジメチルシロキサンである。また、機能転写体C5の作製後に、実施例1と同様にフッ素元素濃度Efを測定したところ、26atm%−28atm%であった。また、水滴に対する接触角と転落角は、それぞれ、125度及び40度であった。
・キャリアC−6…実施例1に記載のキャリアG2の表面に対して、SiOを10nm、Crを10nm成膜し、表面処理剤(デュラサーフ(登録商標)HD−1101Z、ダイキン化学工業社製)にて処理したものである。また、機能転写体C6の作製後に、実施例1と同様にフッ素元素濃度Efを測定したところ、36atm%−38atm%であった。また、水滴に対する接触角と転落角は、それぞれ、165度及び5度であった。
・キャリアC−7…トリメチロールプロパントリアクリレート:トリメチロールプロパンEO変性トリアクリレート:シリコーンジアクリレート(EBECRYL(登録商標)350(ダイセルサイテック社製)):1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(Irgacure(登録商標)184(BASF社製)):2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1(Irgacure(登録商標)369(BASF社製))=20g:80g:1.5g:5.5g:2.0gで混合したものの硬化物である。また、機能転写体C7の作製後に、実施例1と同様にフッ素元素濃度Efを測定したところ、20atm%−21atm%であった。また、水滴に対する接触角と転落角は、それぞれ、122度及び65度であった。
・キャリアC−8…シリコンからなる凹凸構造上にダイヤモンドライクカーボン(DLC)を成膜したものである。なお、DLCはイオン化蒸着法により成膜した。また、機能転写体C8の作製後に、実施例1と同様にフッ素元素濃度Efを測定したところ、20atm%−21atm%であった。また、水滴に対する接触角と転落角は、それぞれ、123度及び65度であった。
キャリアC−1〜C−8のうち、キャリアC−1〜C−4、C−6,及びC−7については、実施例1のキャリアG2と同様の製法にて製造した。また、キャリアC−5は、平板状の石英を実施例1の円筒状マスターモールドの製造原理と同様の原理を適用して加工した平板状マスターモールドに対して、ポリジメチルシロキサンを成膜し、剥離することで作製した。キャリアC−8については、平板状のシリコン(Si)ウェハを実施例1の円筒状マスターモールドの製造原理と同様の原理を適用して加工し、続いて、ナノ構造面上にダイヤモンドライクカーボンを成膜することで製造した。
転写性の試験を行った、被処理体T−2、T−8、T−9、及びT−13をそれぞれ使用し、キャリアを上記キャリアC−1〜C−8として試験した。すなわち、32個の組み合わせについて評価した。評価指標は以下の通りである。まず、機能転写体Cを実施例1と同様に解析し、比率(Ra/lor)を算出した。ここでは、機能転写体Cに対する値であることから比率Cと表現する。次に、算出した比率Cを、実施例1の機能転写体A1の転写性検討結果と照らし合わせた。すなわち、比率Cと同じ、或いは最も近い機能転写体A1の比率(Ra/lor)に対する転写性評価結果を確認した。機能転写体Cにおいても、実施例1の機能転写体A1と同様に転写性を評価し、評価結果が実施例1の「△」、すなわち、剥離速度Vm比が1.0以上2.2未満、且つ欠陥率が5%以下になった場合を「×」、評価結果が下がったものの該「△」評価までは下がらなかった場合を「▲」、評価結果が同様或いは向上した場合を「●」として記載した。結果を表10に記載した。
Figure 2015112781
表10より以下のことがわかる。被処理体T−8はポリエチレンテレフタレートであり、被処理体T−2はサファイアである。すなわち、被処理体T−8は、有機物から構成されると共に、疎水性の強い表面を有する。一方、被処理体T−2は無機物から構成されると共に、親水性の強い表面を有する。また、被処理体T−9は合成合皮であり、有機物から構成されると共に、被処理体T−8と比較すると親水性の強い表面を有する。また、被処理体T−13は、石英上に部分的にメチル基を修飾したものであり、無機物から構成されると共に、被処理体T−2と比べると疎水性の強い表面を有する。すなわち、被処理体としては無機物或いは有機物、そして親水性の強い表面か疎水性の強い表面かの4つを試験したこととなる。
キャリアC−1〜C−4は、全てフッ素含有樹脂であるが、ナノ構造表面に偏析しているフッ素の濃度が異なるため、水滴に対する接触角が異なっている。すなわち、疎水性強度が異なる表面を有する。一方で、キャリアC−5はポリジメチルシロキサンである。すなわち、無機ポリマから構成され、表面にはメチル基が多数存在する。また、キャリアC−6は、有機物からなるキャリアのナノ構造上に無機物のコーティング膜が存在する。このため、ナノ構造の硬度が大きく向上している。キャリアC−7は、アクリル樹脂の硬化体であり、フッ素を含有しない組成物である。最後に、キャリアC−8は、ダイヤモンドライクカーボンにより表面が構成される。結果はキャリアC−1〜C−8と被処理体T−2、T−8、T−9そしてT−13の組み合わせによらず、転写性が良好に保たれていることがわかる。すなわち、既に説明してきたように、比率(Ra/lor)が所定の範囲を満たすことで、機能転写体を被処理体に貼り合わせる際の機能層の最外層の流動性が向上し、機能層と被処理体との真実接触面積が増加し、これに伴い、機能層と被処理体との接着強度が向上する。更に、キャリアを剥離する際の機能層の凝集破壊に代表される破壊を、剥離応力を均等化することで抑制できることから、転写性を高く保つことができる。
なお、機能層とキャリアとの密着力をより詳細に検討したところ、キャリアC−1〜C−7を使用した場合、密着力が低いことがわかった。これは、転写精度の向上を維持する面で重要である。すなわち、キャリアは、フッ素元素、メチル基或いはシロキサン結合のいずれか1以上を含むことが好ましいことが判明した。
(実施例4)
実施例4においては、キャリアのナノ構造の平均ピッチ及び平均アスペクトの与える転写精度への影響を調査した。実施例1〜実施例3より、機能転写体の機能層の物性値である比率(Ra/lor)を制御することで、機能転写体における機能層の配置、被処理体の材質、キャリアの材質、そして機能層の材質によらず転写性を向上させることが可能であり、被処理体にナノ構造を付与できることがわかっている。このため、機能転写体としては、実施例1に記載の機能転写体A5を使用し、キャリアG2のナノ構造のみを変化させた。ナノ構造のパラメータは、平均ピッチと平均アスペクトとした。このように、キャリアのナノ構造をパラメータとした際の、転写精度への影響を調査した。なお、被処理体としては被処理体T−2を使用した。
キャリアG2のナノ構造の平均ピッチは、円筒状マスターモールドを製造する際の半導体レーザのパルス照射間隔を変化させることで制御した。また、アスペクトは、半導体レーザのパルス強度とドライエッチング時間により制御した。なお、1つの円筒状マスターモールドを7つのゾーンに分割し、各ゾーンに対してナノ構造を変化させた。すなわち円筒状マスターモールドは7種類のナノ構造領域を含む。このため、円筒状マスターモールドより製造されるキャリアG2は、キャリアG2の幅方向に7分割されたナノ構造領域を具備する。このため、機能転写体を使用する際には、該当するナノ構造の部分のみを切り出して使用した。なお、実施例1と同様にキャリアG2及び機能転写体を製造した。実施例4においては、平均ピッチとアスペクトごとにキャリアD−1〜D−14まで作製した。
製造したキャリアG2を、SEMを使用し解析した。結果を表11及び表12に記載した。なお、表11及び表12に記載の、Es、CA及びSAは、それぞれ、実施例1と同様に測定した、フッ素元素濃度Es、水に対する接触角、及び水に対する転落角である。表11は、キャリアG2のナノ構造の平均ピッチがパラメータになるように整理したものであり、表12はキャリアG2のナノ構造のアスペクトがパラメータになるように整理した場合である。また、表11及び表12に記載の用語の意味は、表7及び表8のそれと同様である。平均アスペクトは、平均深さを平均開口径にて除すことで算出した。比率(Es/Eb)は、45〜51であった。
Figure 2015112781
Figure 2015112781
実施例1の機能転写体A5と同様にして、被処理体T−2に機能層を転写付与した。機能層付被処理体に対して、AFM及びSEMを用いて解析を行った。この時、観察された複数の凸部の形状と、キャリアD−1〜D−14の複数の凹部の形状と、の対応関係から転写精度を判断した。ここで、キャリアD−1〜D−14の凹部の深さと、被処理体に転写付与された機能層の凸部の高さと、の差が、3%未満の場合を◎、3%以上5%未満の場合を〇とした。また、凸部の欠落した部分が、凸部1000個に対して5個以上20個未満存在した場合を△、20個以上存在した場合を×として評価した。結果は、表11及び表12に合わせて記載した。
表11より以下のことがわかる。平均ピッチが2500nmの場合、機能転写体の凸部が破損した割合が増加した。これにより、機能層の表層のフッ素元素濃度Esが低下し、また、ナノ構造に対する水滴のピン止め効果が大きくなったために、接触角の低下と転落角の増加が観察されたと考えることが出来る。これは、キャリアD−8のナノ構造の凹部内面の面積が増加し、キャリアD−8を除去する際に加わる機能層への摩擦力が増加したためと考えられる。実際、キャリアと機能層と、の密着力を測定すると、キャリアD−1からキャリアD−8へと向かうに従い、密着力が増加することが確認された。キャリアD−8を使用した際の、機能層の凸部の欠損は凸部1000個中25個であった。すなわち、2.5%である。機能層の凸部の欠損率が2.5%であることは、機能転写体の用途によっては問題なく、用途によっては影響を与える。この観点から、あらゆる機能に対応することを考慮すると、キャリアのナノ構造の平均ピッチは2500nm未満であることが好ましい。特に、欠損率が急激に低下することから、平均ピッチは1500nm以下であることがより好ましく、平均ピッチは1200nm以下であることが最も好ましいことがわかった。なお、下限値は特に限定されない。工業製の観点からは1nm以上であることが好ましい。また、キャリアのナノ構造の精度を向上させることを考えると、30nm以上であることがより好ましく、50nm以上であることが最も好ましいことがわかった。
表12よりアスペクトが大きくなると、転写精度が減少することがわかる。これは、アスペクトが増加することで、キャリアを除去する際に機能層に加わるモーメントエネルギが大きくなるためである。表12より得られたデータを使用して理論計算結果にフィッティングを行ったところ、機能層の凸部が多く破損し評価が×になる点は、アスペクトが5程度と推測された。この観点から、アスペクトは5以下であることが好ましいことがわかった。また、キャリアを除去する際の加速度による力を加味した場合、アスペクトは3.5以下であることが好ましいことがわかった。これは、キャリアを剥離する際の速度を向上できることから、工業的に重要な観点である。特に、被処理体の形状が平板状だけでなく、レンズ状、円柱又は円錐状といった場合であっても、剥離速度を大きくした場合であっても転写精度を向上させるためには、アスペクトは2.5以下であることが好ましいことがわかった。また、表12よりアスペクトが1.6未満であることで、転写精度が大きく向上していることがわかる。これは、機能層のキャリアのナノ構造への充填性が向上することと、剥離時の力が大きく減少することによる。よって、キャリアのナノ構造のアスペクトは1.5以下であることが最も好ましい。なお、下限値は特に限定されないが、工業的な生産性及び製造上の精度の観点から、0.3以上であることが好ましく、0.5以上であることが最も好ましい。
転写付与される疎水機能について説明する。疎水機能は、物理的な構造因子と化学的な表面物性により決定される。即ち、例えば、使用する機能層の材料のみを最適化した場合であっても、その表面が平坦な場合、接触角は120度未満に限定される。逆に、化学的性質と物理的性質と、を相乗させることで、強い疎水性機能を発現可能であり、接触角を大きくすることが出来る。更には、転落角を小さくすることも出来る。どの程度の接触角とどの程度の転落角が必要かは、用途により異なるため、接触角及び転落角の絶対値に対して好適な範囲を限定することは困難である。しかしながら、化学的性質と物理的性質と、を兼ね備えることで発現する強い疎水性機能と考えるのであれば、接触角としては120度以上を満たす必要がある。表11及び表12より、いずれの場合でも接触角120度を優に超えていることがわかる。一方で、使用した材料の平坦な膜を形成し接触角を測定した場合、108度〜110度であった。即ち、使用した材料を、対象にコーティングするのみでは発現しないような強い疎水性機能を被処理体に付与できていることがわかる。他の実施例の結果も含めると、この疎水性の程度を接触角で表現した場合、機能層のフッ素元素濃度Efは、20atm%−21atm%以上あれば、効果的に強い疎水性を付与できることがわかった。なお、物理的な因子については、表11及び表12に記載の通りであり、ラフネスファクタを大きくし、空隙率を大きくすることが重要である。また、別の検討から、構造の上に構造のあるような形状や、逆テーパ形状を作ることで、キャシーバクスターモードの安定性が格段に向上することから、転落角をより小さくすることが可能なことも確認された。
(実施例5)
実施例5においては、キャリアのナノ構造の配列の与える機能層の成膜性への影響と、転写精度への影響を調査した。実施例1〜実施例4より、機能転写体の機能層の物性値である比率(Ra/lor)を制御することで、機能転写体における機能層の配置、被処理体の材質、キャリアの材質、そして機能層の材質によらず転写率を向上させることが可能であり、被処理体に良好にナノ構造特有の機能を付与できることがわかっている。また、機能転写体のキャリアのナノ構造の平均ピッチは1500nm以下であり且つアスペクトが5以下であることで転写精度が向上することがわかっている。また、ナノ構造特有の機能は、ナノ構造の形状や配列に大きく影響されることもわかった。以上から、ナノ構造特有の機能を制御性高く発現するためには、キャリアに対する機能層の配置の制御性を向上させると共に、転写性を向上させることが重要と考えられる。実施例5の目的は、機能層の成膜性と転写精度に与えるキャリアのナノ構造の配列の影響を調べることである。特に、成膜性を詳しく解析するため、機能転写体としては、実施例1に記載の機能転写体A4を使用し、キャリアG2のナノ構造のみを変化させた。なお、比率(Es/Eb)は、45〜48であった。機能転写体A4は、キャリアG2のナノ構造の凹部内部及び凸部頂部上に互いに隔離された第1の機能層が設けられ、第1の機能層及びキャリアのナノ構造を平坦化するように第2の機能層を設けた機能転写体である。特に、第1の機能層において、キャリアのナノ構造の凹部内に配置される部分に注目することで成膜性を詳細に調査した。キャリアのナノ構造のパラメータは、ナノ構造の開口率(Sh/Scm)及び凸部頂部幅(Mcv)と凹部開口幅(Mcc)と、の比率(Mcv/Mcc)とした。これは、ナノ構造の配列は、平均開口率(Sh/Scm)と比率(Mcv/Mcc)にて表現できるためである。なお、被処理体としては被処理体T−2を使用した。
実施例1の機能転写体A4と同様に、第1の機能層及び第2の機能層を成膜した。なお、機能転写体のキャリアのナノ構造は、円筒状マスターモールドを製造する際の、半導体レーザの露光方法や露光パタン、そしてドライエッチングの時間により制御した。
実施例1の機能転写体A4と同様に、被処理体T−2上に機能転写体を貼り合わせ、キャリアを除去した。得られた第1の機能層/第2の機能層/被処理体からなる積層体を割断し、断面に対してEDXとSEM観察を行った。観察サンプルを5片用意し、各サンプルに対して10点の観察を行った。凸部が破損している割合、凸部頂部の第1の機能層の厚みの分布、及び第2の機能層の厚みの分布が0%以上15%以下の場合を良評価、それ以外の場合を悪評価とした。
結果を図19に記載した。図19は、実施例5の評価結果を示すグラフである。図19中、横軸がキャリアのナノ構造に対する比率(Sh/Scm)であり、縦軸がキャリアのナノ構造に対する比率(Mcv/Mcc)を示す。図19中の丸印及び三角印は、上記評価結果が良評価の場合であり、三角印よりも丸印が、破線よりも実線が、実線よりも塗りつぶしがより高評価であることを示している。また、図19中、バツ印は上記評価結果が悪評価だった場合を示している。なお、悪評価であっても、凸部が破損している割合、凸部頂部の第1の機能層の厚みの分布、或いは第2の機能層の厚みの分布は、18%〜26%の間に収まっていた。
<三角印>
・破線の三角印
…該分布が10%超15%以下の場合
・実線の三角印
…該分布が8%超10%以下の場合
<丸印>
・白抜き破線の丸印
…該分布が5%超8%以下の場合
・白抜き実線の丸印
…該分布が3%超5%以下の場合
・斜線を付した丸印
…該分布が0%以上3%以下の場合
曲線A1は(Mcv/Mcc)=√(1.1/(Sh/Scm))−1を、曲線A2は(Mcv/Mcc)=√(0.93/(Sh/Scm))−1を、曲線B1は(Mcv/Mcc)=√(0.5/(Sh/Scm))−1を、曲線B2は(Mcv/Mcc)=√(0.76/(Sh/Scm))−1を、直線C1は(Sh/Scm)=0.23を、直線C2は(Sh/Scm)=0.4を、直線C3は(Sh/Scm)=0.6を、直線D1は(Sh/Scm)=0.99を、直線F1はlcv/lcc=1を、そして直線G1はlcv/lcc=0.01を示している。
以上の結果より、上記式(1)、式(2)及び式(3)を同時に満たすことで、第1の機能層の厚み精度及び第2の機能層の厚み精度の高く機能層を転写付与できていることがわかる。これは、まず、キャリアのナノ構造上に塗工される第1の機能層の塗工液及び第2の機能層の塗工液の、キャリアのナノ構造よりも十分に大きなスケールでの均等性が向上するためと考えられる。なお、以下の説明においては、第1の機能層の塗工液及び第2の機能層の塗工液をそれぞれ、第1の塗工液及び機能塗工液と記載する。すなわち、キャリアのナノ構造1つ1つといったスケールでみた場合の該塗工液を、キャリアのナノ構造が数千から数万といったマクロなスケールで見て平均化した場合の、該塗工液内のエネルギ勾配を小さくできるため、塗工性が向上し、これにより第1の機能層の配置精度そして第2の機能層の膜厚精度が向上したためと考えられる。更に、上記範囲を満たす場合、キャリアを第1の機能層及び第2の機能層より除去する際の、第2の機能層のナノ構造の凸部の底部外縁部に加わる剥離応力を小さくできるため、転写性が向上したためと考えられる。
更に、上記式(5)、式(2)及び式(3)を同時に満たすことで、第1の機能層の厚み精度及び第2の機能層の厚み精度を高く転写形成できていることがわかる。これは、上記範囲を満たす場合、キャリアのナノ構造1つ1つといったスケールでみた場合の塗工液を、キャリアのナノ構造が数千から数万といったマクロなスケールで見て平均化した場合の、該塗工液内のエネルギ勾配を小さくできるためと考えられる。すなわち、キャリアのナノ構造上に塗工される塗工液の、キャリアのナノ構造よりも十分に大きなスケールでの均等性が向上し、塗工性が向上したためと考えられる。
更に、上記式(5)、0.4≦(Sh/Scm)≦0.99、及び、式(3)を同時に満たすことで、第1の機能層の厚み精度及び第2の機能層の厚み精度をより反映して転写が行われていることがわかる。これは、上記範囲を満たす場合、キャリアのナノ構造に塗工される塗工液において、ナノ構造の凹部上に位置する該塗工液のエネルギが不安定化し、このエネルギの不安定性を解消するために、キャリアのナノ構造の凹部内部へと該塗工液が流入しやすいためと考えられる。更に、キャリアを除去する際のキャリアのナノ構造の凸部の底部外縁部に加わる剥離応力が、モーメントエネルギが小さくなることから、抑制される。これにより転写精度が向上したためと推定される。更に、これらの効果は、上記式(5)、0.6≦(Sh/Scm)≦0.99、及び、式(3)を同時に満たすことで、より顕著になることがわかる。
なお、上記使用したキャリアのナノ構造は、互いに離間した凹部が連続した凸部により隔てられたホール構造であり、ホール開口部の面積がホール底部の面積に比べ大きいことが観察されている。
なお、キャリアの繰り返し転写性(耐久性)を確認したところ、Sh/Scm≦0.99以下の領域において、Sh/Scmが0.95、0.93、0.91と減少するにつれ、繰り返し転写性がより良好になることを確認した。ここでの繰り返し転写性とは、機能転写体A4を製造し使用済みとなった機能転写体A4を、溶剤にて洗浄し、使用済みキャリアを得、該使用済みのキャリアを使用して再び機能転写体A4を製造し、再度使用する、といった行為を繰り返すことを意味する。より詳細には、Sh/Scm=0.99の場合、繰り返し回数は3回であったが、Sh/Scmが0.95、0,93、0.91と減少するにつれ、繰り返し回数が5回、10回、15回と増加した。これは、キャリアのナノ構造の凹部を囲む凸部の物理強度が増加したためと推定される。以上から、Sh/Scmが0.95以下であることで、1つのキャリアで何度も機能転写体A4を製造できることがわかる。特に、Sh/Scmが0.93、更にはSh/Scmが0.91になることで、前記効果がより顕著になる。
(実施例6)
実施例1〜実施例5より、機能転写体においては、キャリアに対する機能層の配置状態、機能層の材料、キャリアの材質、機能層の材質、及び被処理体の材質によらず、比率(Ra/lor)を満たすことで、被処理体に対して機能層を良好に転写付与できることがわかった。これにより、被処理体上に所望のナノ構造を付与できることがわかった。また、機能層を被処理体に転写付与する際の精度を向上させる因子が判明した。実施例6においては、機能層のフッ素元素濃度の効果について考察する。
機能転写体としては実施例1の機能転写体A5の構成を採用した。ここで、第1の機能層の材料を下記組成物E−1〜E−8に変更することで、機能転写体E−1〜E−8を作製した。ここで、組成物E−1〜E−8を採用することで、フッ素元素濃度がパラメータになるようにした。なお、キャリアG2のナノ構造は、平均ピッチが900nm、平均開口径が860nm、凹部の深さが1600nm、凹部の形状は外側に膨らみを有した円錐形状、凹部の配列は六方配列のものを使用した。また、機能転写体E2〜E8は、実施例1の機能転写体A5と同様に製造した。機能転写体E1については、アセトン、イソプロパノール及びプロピレングリコールモノメチルエーテルに希釈したヘプタデカフルオロ−1,1,2,2−テトラヒドロデシル−1−トリメトキシシランを塗工したキャリアG2に対して、上記第1の機能層及び第2の機能層を実施例1の機能転写体A5と同様に塗工して作成した。なお、ヘプタデカフルオロ−1,1,2,2−テトラヒドロデシル−1−トリメトキシシランを塗工した後に、60度にて5分間乾燥させ、続いて、5重量%の水を含むアセトンとプロピレングリコールモノメチルエーテル液を更に塗工し、最後の、125℃で15分間乾燥させた。
組成物E−1からE−8には、下記原料を使用した。調合割合を表13に記載した。
(あ)フュームドシリカ:BET法による比表面積が約260m/g、pHが5.5〜7.5、フッ素元素濃度Efが2atm%〜3atm%の疎水性フュームドシリカ(日本アエロジル社製 AEROSIL(登録商標)R 812)を、以下のように処理してから使用した。まず、フュームドシリカを、水酸化カリウムを3重量%に溶解させた2−プロパノール溶液中に加え、その後、60℃の加温下にて超音波にて30分間処理した。続いて、遠心分離によりフュームドシリカを分離し、2−プロパノールにて洗浄する操作を3回繰り返した。その後、115℃、且つ真空下にて20分乾燥させた。続いて、パーフルオロポリエーテル修飾シラン含有液(ダイキン工業社製 オプツール(登録商標)DAX)中に、上記フュームドシリカを加え、30分間撹拌した。その後遠心分離により、フュームドシリカを単利する操作と洗浄する操作と、を3回繰り返した。最後、150℃のオーブンにて25分間乾燥させて、処理を完了した。
(い)オルトケイ酸テトラエチル(東京化成工業社製 T0100)
(う)1H,1H,2H,2H−PERFLUORO―OCTANOL(Alfa Aesar社製)
(え)ヘプタデカフルオロ−1,1,2,2−テトラヒドロデシルー1−トリメトキシシラン
(お)3アクリロキシプロピルトリメトキシシラン(信越シリコーン社製、KBM−5103)
(か)光重合性パーフルオロポリエーテル(ダイキン工業社製 Optool(登録商標)DAC HP)
(き)光酸発生剤(みどり化学社製 製品名DTS−102)
(く)2−(ジメチルアミノ)−2−[(4−メチルフェニル)メチル)−1−[4−(4−モルホリニル)フェニル]−1−ブタノン(Irgacure(登録商標)379EG(BASF社製))
(け)2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン(Irgacure(登録商標)651(BASF社製))
Figure 2015112781
被処理体として、シリコンウェハを選択した。実施例1と同様に被処理体にナノ構造を転写付与した。なお、キャリア除去後に、130℃にて3分加熱し、その後、湿度90%の環境に2分間静置し、最後に、250℃にて5分間加熱した。
まず、実施例1と同様に機能層のフッ素元素濃度Efを測定した。結果を表13に合わせて記載した。なお、表13中のEfが、フッ素元素濃度Efを意味する。表13より、使用する機能層の材料を適宜調整することで、フッ素元素濃度Efを任意に変えることが可能であることがわかる。実施例6においては、フッ素元素濃度Efを14atm%〜56atm%まで調整できた。次に、水に対する接触角と転落角を測定し、表13に合わせて結果を記載した。なお、表13中の、CAが接触角を、SAが転落角を意味する。表13より、フッ素元素濃度Efが大きい程、接触角が大きく、且つ転落角が小さいことがわかる。ここで、転落角(SA)の記載である「>90」は、被処理体を90度の傾けても水滴が付着したままだったことを、「<5」は、転落角が5度以下であり、着液と同時に動き出すことを意味する。注目すべきは、フッ素元素濃度Efが14atm%の場合、接触角が120度を超えていないことである。上述した通り、構造という物理的因子の無い状態での接触角は120度が限度である。裏を返せば、構造を付与しなくとも、精密に制御すれば120度弱の接触角は実現できる。この観点から、本明細書においては、接触角が120度を超えないものを効果なし、と考える。よって、フッ素元素濃度Efとしては、14atm%よりも大きい必要がある。また、転落角に注目すると、フッ素元素濃度Efが14atm%の場合、被処理体を90度に傾けても水滴が転がらないことがわかる。定性的な実験になるが、水滴の付着した被処理体を上下反転してもこの水滴は落下することがなかった。既に述べたように、水滴を液膜に変換する機能こそが、本明細書に掲げる課題の解決策である。水滴が落下しないことは、その形状を留めることである。よって、14atm%の場合、着水、着氷、或いは着雪を抑制したり、或いは、付着した水、雪、氷を除去しやすくなる効果は薄い。ゆえに、フッ素元素濃度Efは14atm%よりも大きい必要がある。なお、簡便な着氷に関する試験を、過冷却を利用して行ったところ、転落角が10度以下にて大きな効果があることが確認された。以上から、フッ素元素濃度Efとしては、27atm%以上であることがより好ましいと考えられた。また、形成した氷を除去する際の力を簡便に見積もったところ、転落角が5度以下にて力が大きく減少することがわかった。以上から、31atm%以上のフッ素元濃度Efがより好ましいことがわかった。
図20は、太陽電池の断面模式図である。まず、前面電極104は、アルミニウム、マグネシウム、或は銀等に代表される金属材料により構成される。これは、一種の材料から構成されても、数種の材料から構成されてもよい。厚さは10μm〜300μmである。背面電極103は、アルミニウム、マグネシウム、或は銀に代表される金属材料より構成される。ここで、これは、単一の材料により構成されても、複数種の材料により構成されてもよい。厚みは、10μm〜300μmである。p型半導体層102は、単結晶シリコン、多結晶シリコンなどのp型半導体材料からなる。厚さは20μm〜30μmである。n型半導体層101は、単結晶シリコン、多結晶シリコンなどのn型半導体材料である。例えば、適量の燐又はヒ素などを注入させて形成されたn型ドープシリコン層である。厚さは、10nm〜1mmである。p型半導体層102とn型半導体層101とでpn接合を形成するので、太陽エネルギを電気エネルギに変換できる。また、p型半導体層102とn型半導体層101との間に、図示しない真性半導体層を形成することもできる。真性半導体層を形成することで発電効率を高めることができる。透明導電体105は、前記n型半導体層101の表面に被覆して配置される。ITO、ZnO、NbドープTiO又はカーボンナノチューブを含む良好な導電性及び透明性を有する材料からなる。特に、n型半導体層101の表面全体を被覆するように配置される。ここで、太陽電池における発電効率を高めるためには、n型半導体層101に到達する太陽光の量を増加させる必要がある。図示した太陽電池の一般構成の場合、各界面における全反射が生じ、発電効率が減少する。そこで、透明導電体105の表面、n型半導体層101と透明導電体105との界面、p型半導体層102と背面電極103との界面等に凹凸を設けることで、n型半導体層101に到達する太陽光量を増加させ、発電効率を向上させることが可能となる。
なお、本発明は上記実施の形態に限定されず、種々変更して実施することが可能である。上記実施の形態において、添付図面に図示されている大きさや形状等については、これに限定されず、本発明の効果を発揮する範囲内で適宜変更することが可能である。
本発明は、被処理体に様々な機能を付与するのに適用することができ、例えば、微量物質検出センサ、ナノ反応場、反射防止表面、高効率な半導体発光素子、量子ドットデバイス、フォトニック結晶デバイス、光回折色を利用した装飾品、フォトニックバンドギャップを利用した装飾品、光導波路、ナノ回路、ナノ誘電体アンテナ、超撥水表面、超親水表面、高効率光触媒表面、水(水蒸気)捕集表面、防氷・防雪表面或いはマイナスの屈折率を有する表面、吸着剤、粘着剤の不要な粘着シート、燃料電池等に好適に適用することが可能である。
10 キャリア
11、S11 ナノ構造(凹凸構造)
12、S12 機能層
13 保護層
14 機能転写体(マスク転写体)
15 支持基材
20 被処理体
21 積層体
91 ナノ構造域
92 非ナノ構造域
101 n型半導体層
102 p型半導体層
103 背面電極
104 前面電極
105 透明導電体

Claims (16)

  1. 表面に凹凸構造を具備するキャリアと、前記凹凸構造上に設けられた少なくとも1以上の機能層と、を具備し、
    前記凹凸構造の平均ピッチは1nm以上1500nm以下であり、
    前記機能層の露出する面側の表面粗さ(Ra)と、前記凹凸構造の凸部頂部位置と前記機能層の露出する表面との距離(lor)と、の比率(Ra/lor)が1.2以下であり、
    前記機能層の前記凹凸構造側に位置する表層に対するフッ素元素濃度Efが、20atm%以上80atm%以下であることを特徴とする機能転写体。
  2. 前記表面粗さ(Ra)は、2nm以上300nm以下であることを特徴とする請求項1記載の機能転写体。
  3. 表面に凹凸構造を具備するキャリアと、前記凹凸構造上に設けられた少なくとも1以上の機能層と、を具備し、前記凹凸構造の平均ピッチは1nm以上1500nm以下であり、
    前記凹凸構造の凹部に空間が存在し、
    前記機能層の凹凸構造側に位置する表層に対するフッ素元素濃度Efが、20atm%以上80atm%以下であることを特徴とする機能転写体。
  4. 前記機能転写体の前記キャリアとは反対側の露出面が温度20℃で、且つ、遮光下にて非液体状態であることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載の機能転写体。
  5. 20℃超300℃以下の温度範囲の中で、前記機能転写体の前記キャリアとは反対側の露出面がタック性を示すか、又は、前記露出面のタック性が増加することを特徴とする請求項4記載の機能転写体。
  6. 前記機能層は、極性基を含む樹脂を含有することを特徴とする請求項1から請求項5のいずれかに記載の機能転写体。
  7. 前記極性基は、エポキシ基、水酸基、アクリロイル基、メタクリロイル基、ビニル基、カルボキシル基及びカルボニル基からなる群より選ばれる少なくとも1以上の極性基を含むことを特徴とする請求項6記載の機能転写体。
  8. 前記機能層は、光硬化性物質を含むことを特徴とする請求項6又は請求項7記載の機能転写体。
  9. 前記比率(Ra/lor)が、0.75以下であることを特徴とする請求項6から請求項8のいずれかに記載の機能転写体。
  10. 前記凹凸構造の平均アスペクト(A)が、0.1以上5.0以下であることを特徴とする請求項9記載の機能転写体。
  11. 前記比率(Ra/lor)が、0.25以下であることを特徴とする請求項10記載の機能転写体。
  12. 前記キャリアは、表面の一部又は全面に凹凸構造Aを具備し、
    前記凹凸構造Aは、凸部頂部幅(Mcv)と凹部開口幅(Mcc)との比率(Mcv/Mcc)と、前記凹凸構造Aの単位面積(Scm)の領域下に存在する開口部面積(Sh)と前記単位面積(Scm)との比率(Sh/Scm)と、が下記式(1)を満たし、
    前記比率(Sh/Scm)は下記式(2)を満たし、前記比率(Mcv/Mcc)は下記式(3)を満たし、且つ、前記凹凸構造Aの平均アスペクト(A)は下記式(4)を満たすことを特徴とする請求項1から請求項11のいずれかに記載の機能転写体。
    式(1)
    Figure 2015112781
    式(2)
    0.23<(Sh/Scm)≦0.99
    式(3)
    0.01≦(Mcv/Mcc)<1.0
    式(4)
    0.1≦A≦5
  13. 前記凹凸構造は、フッ素元素、メチル基及びシロキサン結合からなる群から選ばれる少なくとも1以上の要素を含有することを特徴とする請求項1から請求項12のいずれかに記載の機能転写体。
  14. 前記凹凸構造の前記機能層面側の表層フッ素元素濃度(Es)と前記凹凸構造の平均フッ素元素濃度(Eb)との比率(Es/Eb)は、1超30000以下であることを特徴とする請求項13記載の機能転写体。
  15. 前記キャリアがフィルム状であり、且つ、前記キャリアの幅が3インチ以上であることを特徴とする請求項1から請求項14のいずれかに記載の機能転写体。
  16. 請求項1から請求項15のいずれかに記載の前記機能転写体の前記機能層を被処理体の一主面上に直接当接させる工程と、前記キャリアを前記機能層から除去する工程と、をこの順に含むことを特徴とする機能層の転写方法。



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