JP2015111689A - 圧電材料の製造方法、圧電素子、液体噴射ヘッド、液体噴射装置、超音波センサー、圧電モーター及び発電装置 - Google Patents

圧電材料の製造方法、圧電素子、液体噴射ヘッド、液体噴射装置、超音波センサー、圧電モーター及び発電装置 Download PDF

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Abstract

【課題】環境負荷を低減し、広い使用環境温度範囲で圧電特性、誘電特性が高く、また、キュリー温度が高い圧電材料、並びにこれを用いた圧電素子、液体噴射ヘッド、液体噴射装置、超音波センサー、圧電モーター及び発電装置を提供する。
【解決手段】単独組成では菱面体晶であり且つキュリー温度がTc1であるペロブスカイト型構造を有する複合酸化物からなる第1成分と、単独組成では菱面体晶以外の結晶であり且つキュリー温度がTc2であるペロブスカイト型構造を有する複合酸化物からなる第2成分と、単独組成では菱面体晶であるが第1成分とは異なり且つキュリー温度がTc3であるペロブスカイト型構造を有する複合酸化物からなる第3成分とを含有し、Tc2はTc1より高く、Tc3はTc2以上であり、(0.1×Tc1+0.9×Tc2)の値が280℃以下である。
【選択図】図1

Description

本発明は、アクチュエーター、超音波発振機等の超音波デバイス、超音波モーター、圧力センサー、IRセンサー等の焦電素子等他の装置に搭載される圧電素子などに用いられる圧電材料、それを用いた圧電素子、液体噴射ヘッド、液体噴射装置、超音波センサー、圧電モーター及び発電装置に関する。
従来、アクチュエーター、超音波発振機等の超音波デバイス、超音波モーター、圧力センサー、IRセンサー等の焦電素子等他の装置に搭載される圧電素子などを構成する圧電体層(圧電セラミックス)として用いられる圧電材料には高い圧電特性が求められており、代表例として、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)が挙げられる。
しかしながら、環境問題の観点から、鉛の含有量を抑えた圧電材料が求められている。このような非鉛系圧電材料としては、KNa(1−x)NbO、(Ba,Na)TiOなどアルカリ金属を含む圧電材料、BiFeO−BaTiOなどの圧電材料がある。
このような圧電材料としては、組成相境界(MPB:Morphotoropic Phase Boundary)付近の組成を使用することにより、大きな圧電特性が得られることが知られている。しかしながら、横軸に組成を縦軸に温度を採った相図において、PZTはMPBラインが温度軸に対してほぼ平行に位置する、または組成軸に対して垂直に位置しているのが、非鉛系圧電材料では、一般的には、そのMPBラインが温度軸に対して傾斜している(例えば、特許文献1の図1など参照)。このようにMPBラインが傾斜している場合、要求特性に応じて特定の温度例えば室温でMPB上に位置する組成を選んでも、使用環境温度が変化すれば組成−温度状態図上でMPBから離れることから、使用環境温度の変化や使用中の発熱等に起因して素子の圧電特性、誘電特性が低下する温度領域が存在するという問題がある。
よって、上述した相図においてMPBラインができるだけ立って、常温付近で圧電特性、誘電特性が大きく、また、できるだけ高い温度でも使用できるという要望から、一般的には圧電特性とは反比例の関係にあるキュリー温度(Tc)ができるだけ高い圧電材料が求められている。
そこで、異なる組成の圧電材料を複数積層して温度依存性の改善を行う技術が提案されているが(特許文献2、3など参照)、異なる複数の圧電材料を用いなければならないという問題がある。
特開2009−215111号公報 特開2003−277143号公報 特開2011−181764号公報
上述したように、現在、PZTに匹敵する非鉛系圧電材料は存在せず、広い使用環境温度範囲で圧電特性、誘電特性が高く、また、キュリー温度が高い非鉛系圧電材料の出現が熱望されている。
なお、このような問題は、インクジェット式記録ヘッドだけではなく、勿論、インク以外の液滴を吐出する他の液体噴射ヘッドにおいても同様に存在し、また、液体噴射ヘッド以外に用いられる圧電素子においても同様に存在する。
本発明はこのような事情に鑑み、環境負荷を低減し、広い使用環境温度範囲で圧電特性、誘電特性が高く、また、キュリー温度が高い圧電材料、並びにこれを用いた圧電素子、液体噴射ヘッド、液体噴射装置、超音波センサー、圧電モーター及び発電装置を提供することを目的とする。
上記課題を解決する本発明の態様は、単独組成では結晶系が菱面体晶であり且つキュリー温度がTc1であるペロブスカイト型構造を有する複合酸化物からなる第1成分と、単独組成では菱面体晶以外の結晶であり且つキュリー温度がTc2であるペロブスカイト型構造を有する複合酸化物からなる第2成分と、単独組成では菱面体晶であるが前記第1成分とは異なり且つキュリー温度がTc3であるペロブスカイト型構造を有する複合酸化物からなる第3成分とを含有し、前記Tc2は前記Tc1より高く、前記Tc3は前記Tc2以上であり、(0.1×Tc1+0.9×Tc2)の値が280℃以下であることを特徴とする圧電材料にある。
かかる態様では、鉛を含有していないため環境負荷を低減することができ、広い使用環境温度範囲で圧電特性、誘電特性が高く、また、キュリー温度が高い圧電材料となる。
ここで、横軸に前記第1成分の前記第1成分と前記第2成分の合計に対する割合(第1成分/(第1成分+第2成分))を、縦軸に温度を採った相図におけるMPBライン近傍の組成を有し、当該組成のキュリー温度Tc4が280℃以上であることが好ましい。これによれば、各成分を選定することにより、広い組成範囲で、使用環境温度範囲で圧電特性、誘電特性が高く、また、キュリー温度が高い圧電材料が実現できる。
また、(第1成分+第3成分)の(第1成分+第2成分+第3成分)に対するモル比率が0.1以上0.9以下であることが好ましい。これによれば、各成分を選定することにより、広い組成範囲で、使用環境温度範囲で圧電特性、誘電特性が高く、また、キュリー温度が高い圧電材料が実現できる。
また、第3成分の(第1成分+第3成分)に対するモル比率が0.05から0.49であることが好ましい。これによれば、各成分を選定することにより、広い組成範囲において、使用環境温度範囲で圧電特性、誘電特性が高く、また、キュリー温度が高い圧電材料が実現できる。
また、前記第1成分がBa(XTi)O(Xは、Zr、Sn及びHfから選択される少なくとも1種)であり、前記第2成分がSr及びTiの少なくとも1種を添加した(K,Na)NbOであり、前記第3成分がBi(Fe,Mn)Oであることが好ましい。これによれば、より確実に、広い使用環境温度範囲で圧電特性、誘電特性が高く、また、キュリー温度が高い圧電材料が実現できる。
また、前記第1成分がBa(Zr,Ti)Oであり、前記第2成分がSr及びTiの少なくとも1種を添加した(K,Na)NbOであり、前記第3成分がBi(Fe,Mn)Oであることが好ましい。これによれば、より確実に、広い使用環境温度範囲で圧電特性、誘電特性が高く、また、キュリー温度が高い圧電材料が実現できる。
また、前記第1成分がBa(Sn,Ti)Oであり、前記第2成分がLi、Sb及びTaの少なくとも1種を添加した(K,Na)NbOであり、前記第3成分がBi(Fe,Mn)Oであることが好ましい。これによれば、より確実に、広い使用環境温度範囲で圧電特性、誘電特性が高く、また、キュリー温度が高い圧電材料が実現できる。
また、前記第1成分がBa(Hf,Ti)Oであり、前記第2成分がLi、Sb及びTaの少なくとも1種を添加した(K,Na)NbOであり、前記第3成分がBi(Fe,Mn)Oであることが好ましい。これによれば、より確実に、広い使用環境温度範囲で圧電特性、誘電特性が高く、また、キュリー温度が高い圧電材料が実現できる。
本発明の他の態様は、上記態様の圧電材料からなる圧電体層と、前記圧電体層に設けられた電極と、を備えたことを特徴とする圧電素子にある。
これによれば、鉛を含有していないため環境負荷を低減することができ、広い使用環境温度範囲で優れた特性が維持できる圧電素子が実現できる。
また、本発明の他の態様は、ノズル開口に連通する圧力発生室と、圧電体層及び該圧電体層に設けられた電極を備えた圧電素子と、を具備し、前記圧電体層が上記態様の圧電材料からなることを特徴とする液体噴射ヘッドにある。
これによれば、鉛を含有していないため環境負荷を低減することができ、広い使用環境温度範囲で優れた特性が維持できる圧電素子を具備する液体噴射ヘッドが実現できる。
また、本発明の他の態様は、上記態様の液体噴射ヘッドを具備することを特徴とする液体噴射装置にある。
これによれば、鉛を含有していないため環境負荷を低減することができ、広い使用環境温度範囲で優れた特性が維持できる圧電素子を具備する液体噴射ヘッドを備えた液体噴射装置が実現できる。
また、本発明の他の態様は、上述した圧電素子を駆動することによって生じる変位を外部に伝える振動部と、発生した圧力波を外部に伝える整合層を備えたことを特徴とする超音波センサーにある。
これによれば、鉛を含有していないため環境負荷を低減することができ、広い使用環境温度範囲で優れた特性が維持できる圧電素子を具備する超音波センサーが実現できる。
また、本発明の他の態様は、上述した圧電素子を配した振動体と、接触する移動体とを少なくとも具備する圧電モーターにある。
これによれば、鉛を含有していないため環境負荷を低減することができ、広い使用環境温度範囲で優れた特性が維持できる圧電素子を具備する圧電モーターが実現できる。
また、本発明の他の態様は、上述した圧電素子により生じた電荷を上記電極から取り出す電極を備えたことを特徴とする発電装置にある。
これによれば、鉛を含有していないため環境負荷を低減することができ、広い使用環境温度範囲で優れた特性が維持できる圧電素子を具備する発電装置が実現できる。
本発明の圧電材料を説明する相図の一例を示す図。 本発明の圧電材料を説明する相図の一例を示す図。 本発明の圧電材料を説明する相図の一例を示す図。 実施形態1に係る記録ヘッドの概略構成を示す分解斜視図。 実施形態1に係る記録ヘッドの平面図。 実施形態1に係る記録ヘッドの断面図。 本発明の一実施形態に係る記録装置の概略構成を示す図。
以下、本発明を実施形態に基づいて詳細に説明する。
(圧電材料)
本発明の圧電材料は、単独組成では菱面体晶であり且つキュリー温度がTc1であるペロブスカイト型構造を有する複合酸化物からなる第1成分と、単独組成では菱面体晶以外の結晶であり且つキュリー温度がTc2であるペロブスカイト型構造を有する複合酸化物からなる第2成分と、単独組成では菱面体晶であるが前記第1成分とは異なり且つキュリー温度がTc3であるペロブスカイト型構造を有する複合酸化物からなる第3成分とを含有し、前記Tc2は前記Tc1より高く、前記Tc3は前記Tc2以上であり、(0.1×Tc1+0.9×Tc2)の値が280℃以下である。
本発明は、このような条件を満たす第1成分、第2成分、第3成分を固溶させた圧電材料とすることにより、横軸に前記第1成分及び前記第3成分と、前記第2成分との組成比を縦軸に温度を採った相図におけるMPBラインをほぼ垂直に立たせることができる。
ここで、横軸に前記第1成分の前記第1成分と前記第2成分の合計に対する割合(第1成分/(第1成分+第2成分))を、縦軸に温度を採った相図においては、菱面体晶となる第1成分のTc1と菱面体晶以外、例えば、正方晶の第2成分のTc2とを結ぶラインが傾斜し、MPBラインも傾斜する。また、(0.1×Tc1+0.9×Tc2)の値が280℃以下であるから、全体のTc4も280℃以下である。よって、このような組成では、キュリー温度Tc4がPZTに匹敵する280℃より低く、使用環境温度が変化すると、Tc4が低いことに由来する、圧電特性及び誘電特性の温度依存性が大きくなると言う特徴を示すことになる。
このような系に上述した条件を満たす、菱面体晶である第3成分を添加することにより、菱面体晶である第1成分及び第3成分の組成のTcが上昇し、これに伴って、横軸に前記第1成分の前記第1成分と前記第2成分との和に対する組成比を縦軸に温度を採った相図におけるMPBラインが垂直に近い立った状態となる。よって、好ましくは、MPBラインに沿った組成を使用することにより、当該組成のキュリー温度Tc4が280℃以上となり、使用環境温度が変化しても特性をほぼ一定に維持できる圧電材料が実現できる。
よって、本発明の圧電材料の組成は、上述した第1成分、第2成分及び第3成分を固溶した組成であり、横軸に前記第1成分と、前記第1成分と前記第2成分との和に対する割合(第1成分/(第1成分+第2成分))を、縦軸に温度を採った相図におけるMPBライン近傍の組成を有し、当該組成のキュリー温度Tc4が280℃以上となるものである。
ここで、MPBラインは異なる結晶系が作る境界であって、結晶系は、組成依存性を有し、誘電率、圧電定数、ヤング率は組成依存性を有する。よって、MPBラインを与える組成において、誘電率、圧電定数は極大値、ヤング率は極小値をとる。本発明においては、誘電率、圧電定数は、その特性が、ピーク値(MPBでの値)の70%以上の範囲内である組成領域を、ヤング率は、その特性が極小値の130%以内である組成領域を、MPB近傍の組成と定義する。
ここで、(第1成分+第3成分)の(第1成分+第2成分+第3成分)に対するモル比率が0.1以上0.9以下であることが好ましい。これは、第1成分、第2成分、第3成分を適宜選定することにより、広い組成範囲で、上述した効果を奏することができる。
また、第3成分の(第1成分+第3成分)に対するモル比率が0.05〜0.49であることが好ましい。かかる第3成分は、比較的キュリー温度Tcが低い第1成分と、キュリー温度が比較的高い第2成分との組合せに、添加されて有効に作用することにより、全体組成のキュリー温度Tc4を280℃以上に向上させ、且つMPBラインを垂直近くに立たせて使用環境温度が変化しても特性が大きく変化しない圧電材料を実現するものである。よって、組合せの組成によって添加量は変化するが、上述した範囲で添加すれば、有効な作用が発揮される。
本発明の圧電材料に適用できる第1成分、第2成分及び第3成分の例を以下に示す。
例えば、第1成分がBa(XTi)O(Xは、Zr、Sn及びHfから選択される少なくとも1種)であり、第2成分がSr及びTiの少なくとも1種を添加した(K,Na)NbOであり、第3成分がBi(Fe,Mn)Oである。
また、第1成分がBa(Sn,Ti)Oであり、第2成分がLi、Sb及びTaの少なくとも1種を添加した(K,Na)NbOであり、第3成分がBi(Fe,Mn)Oである。
また、第1成分がBa(Hf,Ti)Oであり、第2成分がLi、Sb及びTaの少なくとも1種を添加した(K,Na)NbOであり、第3成分がBi(Fe,Mn)Oである。
以下、具体例を挙げて、さらに詳細に説明する。
図1には、第1成分がBa(Zr,Ti)Oであり、第2成分がSrを添加した(K,Na)NbOである場合の横軸に前記第1成分の前記第1成分と前記第2成分の合計に対する割合(第1成分/(第1成分+第2成分))を、縦軸に温度を採った相図を示す。この場合、第1成分であるBa(Zr,Ti)Oのキュリー温度Tcが70℃、第2成分であるSrを添加した(K,Na)NbOのキュリー温度が277℃であり、MPBラインm1は、Ba(Zr,Ti)Oの組成比が0.75〜0.55に亘る範囲で傾斜している。このような系に、第3成分であるBi(Fe,Mn)O(キュリー温度Tc3=850℃)を、第1成分と第3成分との合計に対して0.30の割合で混合すると、第1成分及び第3成分の組成のキュリー温度は300℃となる。第1成分の第1成分と第2成分の合計に対する割合(第1成分/(第1成分+第2成分))を横軸とした相図におけるMPBラインM1は、垂直に近く立って、第1成分が0.55〜0.70の範囲に移行するだけである。これにより、広い使用環境温度範囲で圧電特性、誘電特性が高く、また、キュリー温度が高い圧電材料が実現できる。ここで、相図は菱面体晶で構成される組成範囲(図ではRと表示)と正方晶(図ではTと表示)または斜方晶(図ではOと表示)と立方晶(図ではCと表示)で構成されている。
ここで、第1成分及び第2成分のみで構成した圧電体の、室温におけるMPB組成の圧電特性は、d33は150pC/Nであり、ヤング率が85GPa程度であるのに対し、第3成分を添加した場合の室温におけるMPB組成の特性は、d33は250pC/Nであり、ヤング率は65GPaである。よって、このような圧電材料を用いた圧電素子、特にアクチュエーターを構成した場合、大きな変位を得られることが容易に予想できる。
因みに、アクチュエーターとして用いる場合、圧電特性d33の好ましい範囲は、100〜300pC/Nであり、より好ましい範囲は150〜300pC/Nである。また、この場合において、ヤング率の好ましい範囲は、30〜80GPaであり、キュリー温度Tcの好ましい範囲は、70〜350℃、より好ましい範囲は100〜300℃)である。また、比誘電率の好ましい範囲は、2000以下、より好ましい範囲は100〜1000である。
また、センサーとして用いる場合は、e定数の好ましい範囲は、3〜15C/m、より好ましい範囲は5〜15C/mである。また、この場合において、ヤング率の好ましい範囲は、70〜150GPa、より好ましい範囲は80〜130GPaである。また、キュリー温度Tcの好ましい範囲は100〜350℃であり、より好ましい範囲は120〜300℃である。また、比誘電率の好ましい範囲は2000以下であり、より好ましい範囲は100〜800である。
図2には、第1成分がBa(Sn,Ti)Oであり、第2成分がLiを添加した(K,Na)NbOである場合の横軸に前記第1成分の前記第1成分と前記第2成分の合計に対する割合(第1成分/(第1成分+第2成分))を、縦軸に温度を採った相図を示す。この場合、第1成分であるBa(Sn,Ti)Oのキュリー温度Tcが50℃、第2成分であるLiを添加した(K,Na)NbOのキュリー温度が270℃であり、MPBラインm2は、Ba(Sn,Ti)Oの組成比が0.67〜0.40に亘る範囲で傾斜している。このような系に、第3成分であるBi(Fe,Mn)O(キュリー温度Tc3=850℃)を、第1成分と第3成分との合計に対して0.35の割合で混合すると、第1成分及び第3成分の組成のキュリー温度は343℃となる。第1成分の第1成分と第2成分の合計に対する割合を横軸とした相図におけるMPBラインM2は、垂直に近く立って、第1成分が0.57〜0.60の範囲に移行するだけである。これにより、広い使用環境温度範囲で圧電特性、誘電特性が高く、また、キュリー温度が高い圧電材料が実現できる。
ここで、第1成分及び第2成分のみで構成した圧電体の、室温におけるMPB組成の圧電特性は、d33は110pC/Nであり、ヤング率が100GPa程度であるのに対し、第3成分を添加した場合の室温におけるMPB組成の圧電特性は、d33は270pC/Nであり、ヤング率は62GPaである。よって、このような圧電材料を用いた圧電素子、特にアクチュエーターを構成した場合、大きな変位を得られることが容易に予想できる。
図3には、第1成分がBa(Hf,Ti)Oであり、第2成分がLiを添加した(K,Na)NbOである場合の横軸に前記第1成分の前記第1成分と前記第2成分の合計に対する割合(第1成分/(第1成分+第2成分))を、縦軸に温度を採った相図を示す。この場合、第1成分であるBa(Hf,Ti)Oのキュリー温度Tcが25℃、第2成分であるLiを添加した(K,Na)NbOのキュリー温度が270℃であり、MPBラインm3は、Ba(Hf,Ti)Oの組成比が0.59〜0.32に亘る範囲で傾斜している。このような系に、第3成分であるBi(Fe,Mn)O(キュリー温度Tc3=850℃)を、第1成分と第3成分との合計に対して0.40の割合で混合すると、第1成分及び第3成分の組成のキュリー温度は382℃となる。第1成分の第1成分と第2成分の合計に対する割合を横軸とした相図におけるMPBラインM3は、垂直に近く立って、第1成分が0.45〜0.50の範囲に移行するだけである。これにより、広い使用環境温度範囲で圧電特性、誘電特性が高く、また、キュリー温度が高い圧電材料が実現できる。
ここで、第1成分及び第2成分のみで構成した圧電体の、室温におけるMPB組成の圧電特性は、d33は200pC/Nであり、ヤング率が75GPa程度であるのに対し、第3成分を添加した場合の室温におけるMPB組成の圧電特性は、d33は300pC/Nであり、ヤング率は60GPaである。よって、このような圧電材料を用いた圧電素子、特にアクチュエーターを構成した場合、大きな変位を得られることが容易に予想できる。
(圧電素子、液体噴射ヘッド)
図4は、本発明の一実施形態に係る圧電素子を具備する液体噴射ヘッドの一例であるインクジェット式記録ヘッドの概略構成を示す分解斜視図であり、図5は、図4の平面図であり、図6は図5のA−A’線断面図である。図4〜図6に示すように、本実施形態の流路形成基板10は、シリコン単結晶基板からなり、その一方の面には二酸化シリコンからなる弾性膜50が形成されている。
流路形成基板10には、複数の圧力発生室12がその幅方向に並設されている。また、流路形成基板10の圧力発生室12の長手方向外側の領域には連通部13が形成され、連通部13と各圧力発生室12とが、各圧力発生室12毎に設けられたインク供給路14及び連通路15を介して連通されている。連通部13は、後述する保護基板30のマニホールド部31と連通して各圧力発生室12の共通のインク室となるマニホールド100の一部を構成する。インク供給路14は、圧力発生室12よりも狭い幅で形成されており、連通部13から圧力発生室12に流入するインクの流路抵抗を一定に保持している。なお、本実施形態では、流路の幅を片側から絞ることでインク供給路14を形成したが、流路の幅を両側から絞ることでインク供給路を形成してもよい。また、流路の幅を絞るのではなく、厚さ方向から絞ることでインク供給路を形成してもよい。本実施形態では、流路形成基板10には、圧力発生室12、連通部13、インク供給路14及び連通路15からなる液体流路が設けられていることになる。
また、流路形成基板10の開口面側には、各圧力発生室12のインク供給路14とは反対側の端部近傍に連通するノズル開口21が穿設されたノズルプレート20が、接着剤や熱溶着フィルム等によって固着されている。なお、ノズルプレート20は、例えば、ガラスセラミックス、シリコン単結晶基板、ステンレス鋼等からなる。
一方、このような流路形成基板10の開口面とは反対側には、上述したように弾性膜50が形成され、この弾性膜50上には、酸化チタン等からなり、弾性膜50等の第1電極60の下地との密着性を向上させるための密着層56が設けられている。なお、弾性膜50と密着層56との間に、必要に応じて酸化ジルコニウム等からなる絶縁体膜が形成されていてもよい。
さらに、この密着層56上には、第1電極60と、厚さが2μm以下、好ましくは0.3〜1.5μmの薄膜である圧電体層70と、第2電極80とが、積層形成されて、圧電素子300を構成している。ここで、圧電素子300は、第1電極60、圧電体層70及び第2電極80を含む部分をいう。一般的には、圧電素子300の何れか一方の電極を共通電極とし、他方の電極及び圧電体層70を各圧力発生室12毎にパターニングして構成する。本実施形態では、第1電極60を圧電素子300の共通電極とし、第2電極80を圧電素子300の個別電極としているが、駆動回路や配線の都合でこれを逆にしても支障はない。また、ここでは、圧電素子300と当該圧電素子300の駆動により変位が生じる振動板とを合わせてアクチュエーター装置と称する。なお、上述した例では、弾性膜50、密着層56、第1電極60及び必要に応じて設ける絶縁体膜が振動板として作用するが、勿論これに限定されるものではなく、例えば、弾性膜50や密着層56を設けなくてもよい。また、圧電素子300自体が実質的に振動板を兼ねるようにしてもよい。
本実施形態においては、圧電体層70は、上述した本発明の圧電材料からなる。かかる圧電材料は、広い使用環境温度範囲で圧電特性、誘電特性が高く、また、キュリー温度が高いので、広い使用環境温度で優れた変位特性を示す圧電素子が実現できる。また、圧電材料が鉛を含有していないため、環境への負荷を低減できる。
このような圧電素子300の個別電極である各第2電極80には、インク供給路14側の端部近傍から引き出され、密着層56上にまで延設される、例えば、金(Au)等からなるリード電極90が接続されている。
このような圧電素子300が形成された流路形成基板10上、すなわち、第1電極60、密着層56及びリード電極90上には、マニホールド100の少なくとも一部を構成するマニホールド部31を有する保護基板30が接着剤35を介して接合されている。このマニホールド部31は、本実施形態では、保護基板30を厚さ方向に貫通して圧力発生室12の幅方向に亘って形成されており、上述のように流路形成基板10の連通部13と連通されて各圧力発生室12の共通のインク室となるマニホールド100を構成している。また、流路形成基板10の連通部13を圧力発生室12毎に複数に分割して、マニホールド部31のみをマニホールドとしてもよい。さらに、例えば、流路形成基板10に圧力発生室12のみを設け、流路形成基板10と保護基板30との間に介在する部材(例えば、弾性膜50、密着層56等)にマニホールド100と各圧力発生室12とを連通するインク供給路14を設けるようにしてもよい。
また、保護基板30の圧電素子300に対向する領域には、圧電素子300の運動を阻害しない程度の空間を有する圧電素子保持部32が設けられている。圧電素子保持部32は、圧電素子300の運動を阻害しない程度の空間を有していればよく、当該空間は密封されていても、密封されていなくてもよい。
このような保護基板30としては、流路形成基板10の熱膨張率と略同一の材料、例えば、ガラス、セラミック材料等を用いることが好ましく、本実施形態では、流路形成基板10と同一材料のシリコン単結晶基板を用いて形成した。
また、保護基板30には、保護基板30を厚さ方向に貫通する貫通孔33が設けられている。そして、各圧電素子300から引き出されたリード電極90の端部近傍は、貫通孔33内に露出するように設けられている。
また、保護基板30上には、並設された圧電素子300を駆動するための駆動回路120が固定されている。この駆動回路120としては、例えば、回路基板や半導体集積回路(IC)等を用いることができる。そして、駆動回路120とリード電極90とは、ボンディングワイヤー等の導電性ワイヤーからなる接続配線121を介して電気的に接続されている。
また、このような保護基板30上には、封止膜41及び固定板42とからなるコンプライアンス基板40が接合されている。ここで、封止膜41は、剛性が低く可撓性を有する材料からなり、この封止膜41によってマニホールド部31の一方面が封止されている。また、固定板42は、比較的硬質の材料で形成されている。この固定板42のマニホールド100に対向する領域は、厚さ方向に完全に除去された開口部43となっているため、マニホールド100の一方面は可撓性を有する封止膜41のみで封止されている。
このような本実施形態のインクジェット式記録ヘッドIでは、図示しない外部のインク供給手段と接続したインク導入口からインクを取り込み、マニホールド100からノズル開口21に至るまで内部をインクで満たした後、駆動回路120からの記録信号に従い、圧力発生室12に対応するそれぞれの第1電極60と第2電極80との間に電圧を印加し、弾性膜50、密着層56、第1電極60及び圧電体層70をたわみ変形させることにより、各圧力発生室12内の圧力が高まりノズル開口21からインク滴が吐出する。
次に、本実施形態のインクジェット式記録ヘッドの圧電素子の製造方法の一例について説明する。
まず、シリコンウェハーである流路形成基板用ウェハーの表面に弾性膜50を構成する二酸化シリコン(SiO)等からなる二酸化シリコン膜を熱酸化等で形成する。次いで、弾性膜50(二酸化シリコン膜)上に、酸化チタン等からなる密着層56を、反応性スパッター法や熱酸化等で形成する。
次に、密着層56上に第1電極60を形成する。具体的には、密着層56上に白金、イリジウム、酸化イリジウム又はこれらの積層構造等からなる第1電極60を形成する。なお、密着層56及び第1電極60は、例えば、スパッタリング法や蒸着法により形成することができる。
次いで、第1電極60上に、圧電体層70を積層する。圧電体層70の製造方法は特に限定されないが、例えば、有機金属化合物を溶媒に溶解・分散した溶液を塗布乾燥し、さらに高温で焼成することで金属酸化物からなる圧電体層70を得る、MOD(Metal−Organic Decomposition)法やゾル−ゲル法等の化学溶液法を用いて圧電体層70を形成できる。圧電体層70は、その他、レーザアブレーション法、スパッタリング法、パルス・レーザー・デポジション法(PLD法)、CVD法、エアロゾル・デポジション法などでもよい。
圧電体層70を例えば、化学塗布法で形成する場合、出発原料として、所望の元素を含む2−エチルへキサン酸塩、酢酸塩等を用いる。例えば、2−エチルヘキサン酸ビスマス、2−エチルヘキサン酸バリウム、2−エチルヘキサン酸鉄、2−エチルヘキサン酸チタンなどである。それぞれのn−オクタン溶液を混合し、化学量論比と一致するように金属元素のモル比を調整して、前駆体溶液を作成する。次いで、前記前駆体溶液を、先に作製した下部電極上に滴下し、500rpmで6秒間回転後、3000rpmで基板を20秒回転させてスピンコート法により圧電体膜を形成する。次に、ホットプレート上に基板を載せ、180℃で2分間乾燥する。次いで、ホットプレート上に基板を載せ、350℃で2分間脱脂を行う。この溶液塗布〜脱脂工程を2回繰り返した後に、酸素雰囲気中で、RTA装置で、750℃で5分間焼成を行う。次いで、上記の工程を5回繰り返し、計10回の塗布により圧電体層70を形成することができる。
このように圧電体層70を形成した後は、圧電体層70上に白金等からなる第2電極80をスパッタリング法等で形成し、各圧力発生室12に対向する領域に圧電体層70及び第2電極80を同時にパターニングして、第1電極60と圧電体層70と第2電極80からなる圧電素子300を形成する。なお、圧電体層70と第2電極80とのパターニングでは、所定形状に形成したレジスト(図示なし)を介してドライエッチングすることにより一括して行うことができる。その後、必要に応じて、600℃〜800℃の温度域でポストアニールを行ってもよい。これにより、圧電体層70と第1電極60や第2電極80との良好な界面を形成することができ、かつ、圧電体層70の結晶性を改善することができる。
次に、流路形成基板用ウェハーの全面に亘って、例えば、金(Au)等からなるリード電極90を形成後、例えば、レジスト等からなるマスクパターンを介して各圧電素子300毎にパターニングする。
次に、流路形成基板用ウェハーの圧電素子300側に、シリコンウェハーであり複数の保護基板30となる保護基板用ウェハーを接着剤35を介して接合した後に、流路形成基板用ウェハーを所定の厚さに薄くする。
次に、流路形成基板用ウェハー上に、マスク膜を新たに形成し、所定形状にパターニングする。
そして、流路形成基板用ウェハーをマスク膜を介してKOH等のアルカリ溶液を用いた異方性エッチング(ウェットエッチング)することにより、圧電素子300に対応する圧力発生室12、連通部13、インク供給路14及び連通路15等を形成する。
その後は、流路形成基板用ウェハー及び保護基板用ウェハーの外周縁部の不要部分を、例えば、ダイシング等により切断することによって除去する。そして、流路形成基板用ウェハーの保護基板用ウェハーとは反対側の面のマスク膜を除去した後にノズル開口21が穿設されたノズルプレート20を接合すると共に、保護基板用ウェハーにコンプライアンス基板40を接合し、流路形成基板用ウェハー等を図1に示すような一つのチップサイズの流路形成基板10等に分割することによって、本実施形態のインクジェット式記録ヘッドIとする。
(実施例1)
第1成分としてBa(Zr0.3,Ti0.7)O3、第2成分としてSrを添加した(K0.5,Na0.5)NbO、第3成分としてBi(Fe0.95,Mn0.05)Oを選定し、三者のモル比を0.36:0.44:0.20となる組成の圧電材料を以下の通り形成した。
出発原料として、2−エチルへキサン酸バリウム、2−エチルへキサン酸ジルコニウム、2−エチルへキサン酸チタン、2−エチルへキサン酸カリウム、2−エチルへキサン酸ナトリウム、2−エチルへキサン酸ニオブ、2−エチルへキサン酸ビスマス、2−エチルへキサン酸鉄、2−エチルへキサン酸マンガン、2−エチルへキサン酸ストロンチウムをそれぞれのn−オクタン溶液に上記組成の化学量論比一致するように金属元素のモル比を調整して混合し、前駆体溶液を作製した。
このような前駆体溶液を、先に作製した下部電極上に滴下し、500rpmで6秒間回転後、3000rpmで基板を20秒回転させてスピンコート法により圧電体膜を形成した。次に、ホットプレート上に基板を載せ、180℃で2分間乾燥した。次いで、ホットプレート上に基板を載せ、350℃で2分間脱脂を行った。この溶液塗布〜脱脂工程を2回繰り返した後に、酸素雰囲気中で、RTA装置で、750℃で5分間焼成を行った。次いで、上記の工程を5回繰り返し、計10回の塗布により圧電体層を形成した。
このような圧電体層を用いた圧電素子を用いて上述した構造のヘッドを構成した。かかる圧電素子のd33は250pC/Nであり、ヤング率は65GPaである。これに対し、第3成分を添加しない場合には、d33は150pC/Nであり、ヤング率が85GPa程度である。よって、このような圧電材料を用いた圧電素子、特にアクチュエーターを構成した場合、大きな変位を得られることが容易に予想できる。
図1から明らかな様に、キュリー温度は184℃から第3成分を加えることで293℃に上昇した。この293℃と言う値は、所謂ハード材料と言われるPZT系のキュリー温度の値と同等である。従来は高いキュリー温度と高い圧電特性は両立しないと言われてきたが、本発明によって、Pb系並の高いキュリー温度と高い圧電特性を両立することが出来た。環境温度がキュリー温度付近にある時、圧電特性、誘電特性の温度依存性が急激に高まり、環境温度がキュリー温度付近から低温側へ移行するにつれて、圧電特性及び誘電特性の温度依存性は緩やかになるのが一般的である。従って、室温付近に駆動環境温度を有する装置一般にとっては、高いキュリー温度を有する圧電材料は、安定した特性を保障することになるので好都合である。
(実施例2)
第1成分としてBa(Sn0.3,Ti0.7)O、第2成分としてLiを添加した(K0.5,Na0.5)NbO、第3成分としてBi(Fe0.95,Mn0.05)Oを選定し、三者のモル比を0.43:0.37:0.23となる組成の圧電材料を以下の通り形成した。
出発原料として、2−エチルへキサン酸バリウム、2−エチルへキサン酸スズ、2−エチルへキサン酸チタン、2−エチルへキサン酸カリウム、2−エチルへキサン酸ナトリウム、2−エチルへキサン酸ニオブ、2−エチルへキサン酸ビスマス、2−エチルへキサン酸鉄、2−エチルへキサン酸マンガン、2−エチルへキサン酸リチウムをそれぞれのn−オクタン溶液に上記組成の化学量論比一致するように金属元素のモル比を調整して混合し、前駆体溶液を作製した。
このような前駆体溶液を、先に作製した下部電極上に滴下し、500rpmで6秒間回転後、3000rpmで基板を20秒回転させてスピンコート法により圧電体膜を形成した。次に、ホットプレート上に基板を載せ、180℃で2分間乾燥した。次いで、ホットプレート上に基板を載せ、350℃で2分間脱脂を行った。この溶液塗布〜脱脂工程を2回繰り返した後に、酸素雰囲気中で、RTA装置で、750℃で5分間焼成を行った。次いで、上記の工程を5回繰り返し、計10回の塗布により圧電体層を形成した。
このような圧電体層を用いた圧電素子を用いて上述した構造のヘッドを構成した。かかる圧電素子のd33は270pC/Nであり、ヤング率は62GPaである。これに対し、第3成分を添加しない場合には、d33は110pC/Nであり、ヤング率が100GPa程度である。よって、このような圧電材料を用いた圧電素子、特にアクチュエーターを構成した場合、大きな変位を得られることが容易に予想できる。
図2から明らかな様に、キュリー温度は138℃から第3成分を加えることで314℃に上昇した。
(実施例3)
第1成分としてBa(Hf0.2,Ti0.8)O、第2成分としてLiを添加した(K0.5,Na0.5)NbO、第3成分としてBi(Fe,Mn)Oを選定し、三者のモル比を0.36:0.40:0.24となる組成の圧電材料を以下の通り形成した。
出発原料として、2−エチルへキサン酸バリウム、2−エチルへキサン酸ハフニウム、2−エチルへキサン酸チタン、2−エチルへキサン酸カリウム、2−エチルへキサン酸ナトリウム、2−エチルへキサン酸ニオブ、2−エチルへキサン酸ビスマス、2−エチルへキサン酸鉄、2−エチルへキサン酸マンガン、2−エチルへキサン酸リチウムをそれぞれのn−オクタン溶液に上記組成の化学量論比一致するように金属元素のモル比を調整して混合し、前駆体溶液を作製した。
このような前駆体溶液を、先に作製した下部電極上に滴下し、500rpmで6秒間回転後、3000rpmで基板を20秒回転させてスピンコート法により圧電体膜を形成した。次に、ホットプレート上に基板を載せ、180℃で2分間乾燥した。次いで、ホットプレート上に基板を載せ、350℃で2分間脱脂を行った。この溶液塗布〜脱脂工程を2回繰り返した後に、酸素雰囲気中で、RTA装置で、750℃で5分間焼成を行った。次いで、上記の工程を5回繰り返し、計10回の塗布により圧電体層を形成した。
このような圧電体層を用いた圧電素子を用いて上述した構造のヘッドを構成した。かかる圧電素子のd33は300pC/Nであり、ヤング率は60GPaである。これに対し、第3成分を添加しない場合には、d33は200pC/Nであり、ヤング率が75GPa程度である。よって、このような圧電材料を用いた圧電素子、特にアクチュエーターを構成した場合、大きな変位を得られることが容易に予想できる。
ここで、第1成分及び第2成分のみで構成した圧電体の、室温におけるMPB組成の特性は、d33は200pC/Nであり、ヤング率が75GPa程度であるのに対し、第3成分を添加した場合の室温におけるMPB組成の特性は、d33は300pC/Nであり、ヤング率は60GPaである。よって、このような圧電材料を用いた圧電素子、特にアクチュエーターを構成した場合、大きな変位を得られることが容易に予想できる。
図3から明らかな様に、キュリー温度は99℃から第3成分を加えることで348℃に上昇した。
(圧電材料に関する他の実施形態)
以上、本発明の圧電材料に関する一実施形態を説明したが、本発明の圧電材料の基本的構成は上述したものに限定されるものではない。
表1はペロブスカイト型結晶(ABO:AとBは金属元素)を構成する組成(AサイトとBサイト)とその結晶系及びそのキュリー温度Tcを記載したものである。MPBは異なる結晶系の組合せで形成することができるので、以下の組合せでも圧電性能の向上とキュリー温度Tcの向上とを獲得することが出来る。
I 正方晶系と斜方晶系
II 正方晶系と単斜晶系
III 斜方晶系と単斜晶系
従って、表1の中から異なる結晶系の組み合わせが実現できる様、任意に選択することが出来る。その際、Tc1、Tc2、Tc3は添加剤とその添加量を調整することで、請求項の範囲に収めることが出来る。添加剤として適当な元素で、表1に記載した元素以外の元素を以下に列挙する。
Mn、Ge、Si、B、Cu、Ag。
(他の実施形態)
以上、本発明の一実施形態を説明したが、本発明の基本的構成は上述したものに限定されるものではない。例えば、上述した実施形態では、流路形成基板10として、シリコン単結晶基板を例示したが、特にこれに限定されず、例えば、SOI基板、ガラス等の材料を用いるようにしてもよい。
さらに、上述した実施形態では、基板(流路形成基板10)上に第1電極60、圧電体層70及び第2電極80を順次積層した圧電素子300を例示したが、特にこれに限定されず、例えば、圧電材料と電極形成材料とを交互に積層させて軸方向に伸縮させる縦振動型の圧電素子にも本発明を適用することができる。
圧電体層は、上述したような薄膜ではなく、バルクとしてもよい。バルクで形成する場合は、出発原料として、炭酸塩または酸化物を使用する。例えば、KCO、NaCO、およびNbなどである。これらの出発原料を、化学量論比と一致するように秤取して、ボールミルを用いてエタノール中で湿式混合する。得られた混合物を乾燥した後、700℃で3h仮焼する。これら仮焼粉にバインダとしてPVAを適量加えて乳鉢を用いて粉砕混合し、150メッシュのふるいを通して粒度調整を行い、得られた粉体を一軸プレス装置で円板状のペレットに成形する。次に、成型したペレットと仮焼粉の残りをるつぼに入れ1100℃で3h焼成し、円板状の酸化物を得る。次いで、得られた円板状酸化物の両面を研磨して表面を整え、これに銀ペーストを塗布焼付けして銀電極を具備する圧電体を得ることができる。なお、このようなバルクの製造においては、出発原料として、炭酸バリウム、酸化チタン、酸化ビスマス、酸化スズ、酸化鉄、酸化ジルコニウム、酸化ランタン、炭酸リチウムなどを挙げることができる。
また、これら実施形態のインクジェット式記録ヘッドは、インクカートリッジ等と連通するインク流路を具備する記録ヘッドユニットの一部を構成して、インクジェット式記録装置に搭載される。図7は、そのインクジェット式記録装置の一例を示す概略図である。
図7に示すように、インクジェット式記録ヘッドIを有する記録ヘッドユニット1A及び1Bは、インク供給手段を構成するカートリッジ2A及び2Bが着脱可能に設けられ、この記録ヘッドユニット1A及び1Bを搭載したキャリッジ3は、装置本体4に取り付けられたキャリッジ軸5に軸方向移動自在に設けられている。この記録ヘッドユニット1A及び1Bは、例えば、それぞれブラックインク組成物及びカラーインク組成物を吐出するものとしている。
そして、駆動モーター6の駆動力が図示しない複数の歯車およびタイミングベルト7を介してキャリッジ3に伝達されることで、記録ヘッドユニット1A及び1Bを搭載したキャリッジ3はキャリッジ軸5に沿って移動される。一方、装置本体4には搬送手段としての搬送ローラー8が設けられており、紙等の記録媒体である記録シートSが搬送ローラー8により搬送されるようになっている。なお、記録シートSを搬送する搬送手段は、搬送ローラーに限られずベルトやドラム等であってもよい。
図7に示す例では、インクジェット式記録ヘッドユニット1A、1Bは、それぞれ1つのインクジェット式記録ヘッドIを有するものとしたが、特にこれに限定されず、例えば、1つのインクジェット式記録ヘッドユニット1A又は1Bが2以上のインクジェット式記録ヘッドを有するようにしてもよい。
なお、上述した実施形態では、液体噴射ヘッドの一例としてインクジェット式記録ヘッドを挙げて説明したが、本発明は広く液体噴射ヘッド全般を対象としたものであり、インク以外の液体を噴射する液体噴射ヘッドにも勿論適用することができる。その他の液体噴射ヘッドとしては、例えば、プリンター等の画像記録装置に用いられる各種の記録ヘッド、液晶ディスプレイ等のカラーフィルターの製造に用いられる色材噴射ヘッド、有機ELディスプレイ、FED(電界放出ディスプレイ)等の電極形成に用いられる電極材料噴射ヘッド、バイオchip製造に用いられる生体有機物噴射ヘッド等が挙げられる。
(超音波センサー及び圧電モーター)
本発明の圧電素子は、良好な絶縁性及び圧電特性を示すため、上述したように、インクジェット式記録ヘッドに代表される液体噴射ヘッドの圧電素子に適用することができるものであるが、これに限定されるものではない。本発明に係る圧電素子は、優れた変位特性を示すことから、インクジェット式記録ヘッドに代表される液体噴射ヘッドに限られず、液体噴射装置、超音波センサー、圧電モーター、超音波モーター、圧電トランス、振動式ダスト除去装置、圧力−電気変換機、超音波発信機、圧力センサー、加速度センサーなどに搭載して好適に用いることができる。
(発電装置)
また、本発明に係る圧電素子は、良好なエネルギー−電気変換能力を示すことから、発電装置に搭載して好適に用いることができる。発電装置としては、圧力−電気変換効果を使用した発電装置、光による電子励起(光起電力)を使用した発電装置、熱による電子励起(熱起電力)を使用した発電装置、振動を利用した発電装置などが挙げられる。
なお、本発明に係る圧電素子は、赤外線検出器、テラヘルツ検出器、温度センサー、感熱センサーなどの焦電デバイスや強誘電体メモリーなどの強誘電体素子にも好適に用いることができる。
I インクジェット式記録ヘッド(液体噴射ヘッド)、 10 流路形成基板、 12 圧力発生室、 13 連通部、 14 インク供給路、 20 ノズルプレート、 21 ノズル開口、 30 保護基板、 31 マニホールド部、 32 圧電素子保持部、 40 コンプライアンス基板、 50 弾性膜、 60 第1電極、 70 圧電体層、 80 第2電極、 90 リード電極、 100 マニホールド、 120 駆動回路、 300 圧電素子
本発明は、アクチュエーター、超音波発振機等の超音波デバイス、超音波モーター、圧力センサー、IRセンサー等の焦電素子等他の装置に搭載される圧電素子などに用いられる圧電材料の製造方法、それを用いた圧電素子、液体噴射ヘッド、液体噴射装置、超音波センサー、圧電モーター及び発電装置に関する。
本発明はこのような事情に鑑み、環境負荷を低減し、広い使用環境温度範囲で圧電特性、誘電特性が高く、また、キュリー温度が高い圧電材料の製造方法、並びにこれを用いた圧電素子、液体噴射ヘッド、液体噴射装置、超音波センサー、圧電モーター及び発電装置を提供することを目的とする。
上記課題を解決する本発明の態様は、単独組成では菱面体晶であり且つキュリー温度がTc1であるペロブスカイト型構造を有する複合酸化物からなる非鉛系圧電材料である第1成分と、単独組成では菱面晶以外の結晶であり且つキュリー温度がTc2であるペロブスカイト型構造を有する複合酸化物からなる非鉛系圧電材料である第2成分と、単独組成では菱面体晶であるが前記第1成分とは異なり且つキュリー温度がTc3であるペロブスカイト型構造を有する複合酸化物からなる非鉛系圧電材料である第3成分とであって、前記Tc2は前記Tc1より高く、前記Tc3は前記Tc2以上であり、(0.1×Tc1+0.9×Tc2)の値が280℃以下である前記第1成分、前記第2成分及び前記第3成分を選定し、横軸に前記第2成分の、前記第1成分と前記第2成分と前記第3成分との合計に対する割合(第2成分/(第1成分+第2成分+第3成分))を、縦軸に温度を採った相図におけるMPBライン近傍の組成を決定し、該組成を有し、キュリー温度Tc4が280℃以上である非鉛系圧電材料を製造することを特徴とする圧電材料の製造方法にある。
かかる態様では、鉛を含有していないため環境負荷を低減することができ、広い使用環境温度範囲で圧電特性、誘電特性が高く、また、キュリー温度が高い圧電材料となる。
また、各成分を選定することにより、広い組成範囲で、使用環境温度範囲で圧電特性、誘電特性が高く、また、キュリー温度が高い圧電材料が製造できる。
ここで、前記第1成分、前記第2成分、及び前記第3成分が、K Na (1−x) NbO 、(Ba,Na)TiO 、BiFeO 、及びBaTiO からなる群から選択されることが好ましい。これによれば、各成分を選定することにより、広い組成範囲で、使用環境温度範囲で圧電特性、誘電特性が高く、また、キュリー温度が高い圧電材料が製造できる。
本発明の他の態様は、上記態様の圧電材料の製造方法で製造された圧電材料からなる圧電体層と、前記圧電体層に設けられた電極と、を備えたことを特徴とする圧電素子にある。
これによれば、鉛を含有していないため環境負荷を低減することができ、広い使用環境温度範囲で優れた特性が維持できる圧電素子が実現できる。
また、本発明の他の態様は、ノズル開口に連通する圧力発生室と、圧電体層及び該圧電体層に設けられた電極を備えた圧電素子と、を具備し、前記圧電体層が上記態様の圧電材料の製造方法で製造された圧電材料からなることを特徴とする液体噴射ヘッドにある。

これによれば、鉛を含有していないため環境負荷を低減することができ、広い使用環境温度範囲で優れた特性が維持できる圧電素子を具備する液体噴射ヘッドが実現できる。
ここで、横軸に前記第2成分の、前記第1成分と前記第2成分の合計に対する割合(第2成分/(第1成分+第2成分))を、縦軸に温度を採った相図においては、菱面体晶となる第1成分のTc1と菱面体晶以外、例えば、正方晶の第2成分のTc2とを結ぶラインが傾斜し、MPBラインも傾斜する。また、(0.1×Tc1+0.9×Tc2)の値が280℃以下であるから、全体のTcも280℃以下である。よって、このような組成では、キュリー温度TcがPZTに匹敵する280℃より低く、使用環境温度が変化すると、Tc4が低いことに由来する、圧電特性及び誘電特性の温度依存性が大きくなると言う特徴を示すことになる。
このような系に上述した条件を満たす、菱面体晶である第3成分を添加することにより、菱面体晶である第1成分及び第3成分の組成のTcが上昇し、これに伴って、横軸に前記第2成分の、前記第1成分と前記第2成分と前記第3成分との和に対する組成比を縦軸に温度を採った相図におけるMPBラインが垂直に近い立った状態となる。よって、好ましくは、MPBラインに沿った組成を使用することにより、当該組成のキュリー温度Tc4が280℃以上となり、使用環境温度が変化しても特性をほぼ一定に維持できる圧電材料が実現できる。
よって、本発明の圧電材料の組成は、上述した第1成分、第2成分及び第3成分を固溶した組成であり、横軸に前記第2成分の、前記第1成分と前記第2成分と前記第3成分との和に対する割合(第2成分/(第1成分+第2成分+第3成分))を、縦軸に温度を採った相図におけるMPBライン近傍の組成を有し、当該組成のキュリー温度Tc4が280℃以上となるものである。
以下、具体例を挙げて、さらに詳細に説明する。
図1には、第1成分がBa(Zr,Ti)Oであり、第2成分がSrを添加した(K,Na)NbOである場合の横軸に前記第2成分の、前記第1成分と前記第2成分の合計に対する割合(第2成分/(第1成分+第2成分))を、縦軸に温度を採った相図を示す。この場合、第1成分であるBa(Zr,Ti)Oのキュリー温度Tcが70℃、第2成分であるSrを添加した(K,Na)NbOのキュリー温度が277℃であり、MPBラインm1は、Ba(Zr,Ti)Oの組成比が0.75〜0.60に亘る範囲で傾斜している。このような系に、第3成分であるBi(Fe,Mn)O(キュリー温度Tc3=850℃)を、第1成分と第3成分との合計に対して0.30の割合で混合すると、第1成分及び第3成分の組成のキュリー温度は300℃となる。第2成分の、第1成分と第2成分と第3成分との合計に対する割合(第2成分/(第1成分+第2成分+第3成分))を横軸とした相図におけるMPBラインM1は、垂直に近く立って、第1成分が0.65〜0.70の範囲に移行するだけである。これにより、広い使用環境温度範囲で圧電特性、誘電特性が高く、また、キュリー温度が高い圧電材料が実現できる。ここで、相図は菱面体晶で構成される組成範囲(図ではRと表示)と正方晶(図ではTと表示)または斜方晶(図ではOと表示)と立方晶(図ではCと表示)で構成されている。
図2には、第1成分がBa(Sn,Ti)Oであり、第2成分がLiを添加した(K,Na)NbOである場合の横軸に前記第2成分の、前記第1成分と前記第2成分の合計に対する割合(第2成分/(第1成分+第2成分))を、縦軸に温度を採った相図を示す。この場合、第1成分であるBa(Sn,Ti)Oのキュリー温度Tcが50℃、第2成分であるLiを添加した(K,Na)NbOのキュリー温度が270℃であり、MPBラインm2は、Ba(Sn,Ti)Oの組成比が0.67〜0.40に亘る範囲で傾斜している。このような系に、第3成分であるBi(Fe,Mn)O(キュリー温度Tc3=850℃)を、第1成分と第3成分との合計に対して0.35の割合で混合すると、第1成分及び第3成分の組成のキュリー温度は343℃となる。第2成分の、第1成分と第2成分と第3成分との合計に対する割合を横軸とした相図におけるMPBラインM2は、垂直に近く立って、第1成分が0.57〜0.60の範囲に移行するだけである。これにより、広い使用環境温度範囲で圧電特性、誘電特性が高く、また、キュリー温度が高い圧電材料が実現できる。
図3には、第1成分がBa(Hf,Ti)Oであり、第2成分がLiを添加した(K,Na)NbOである場合の横軸に前記第2成分の、前記第1成分と前記第2成分の合計に対する割合(第2成分/(第1成分+第2成分))を、縦軸に温度を採った相図を示す。この場合、第1成分であるBa(Hf,Ti)Oのキュリー温度Tcが25℃、第2成分であるLiを添加した(K,Na)NbOのキュリー温度が270℃であり、MPBラインm3は、Ba(Hf,Ti)Oの組成比が0.59〜0.32に亘る範囲で傾斜している。このような系に、第3成分であるBi(Fe,Mn)O(キュリー温度Tc3=850℃)を、第1成分と第3成分との合計に対して0.40の割合で混合すると、第1成分及び第3成分の組成のキュリー温度は382℃となる。第2成分の、第1成分と第2成分と第3成分との合計に対する割合を横軸とした相図におけるMPBラインM3は、垂直に近く立って、第1成分が0.45〜0.50の範囲に移行するだけである。これにより、広い使用環境温度範囲で圧電特性、誘電特性が高く、また、キュリー温度が高い圧電材料が実現できる。

Claims (14)

  1. 単独組成では菱面体晶であり且つキュリー温度がTc1であるペロブスカイト型構造を有する複合酸化物からなる第1成分と、単独組成では菱面体晶以外の結晶であり且つキュリー温度がTc2であるペロブスカイト型構造を有する複合酸化物からなる第2成分と、単独組成では菱面体晶であるが前記第1成分とは異なり且つキュリー温度がTc3であるペロブスカイト型構造を有する複合酸化物からなる第3成分とを含有し、
    前記Tc2は前記Tc1より高く、前記Tc3は前記Tc2以上であり、(0.1×Tc1+0.9×Tc2)の値が280℃以下であることを特徴とする圧電材料。
  2. 横軸に前記第1成分の前記第1成分と前記第2成分の合計に対する割合(第1成分/(第1成分+第2成分))を、縦軸に温度を採った相図におけるMPBライン近傍の組成を有し、当該組成のキュリー温度Tc4が280℃以上であることを特徴とする請求項1に記載の圧電材料。
  3. (第1成分+第3成分)の(第1成分+第2成分+第3成分)に対するモル比率が0.1以上0.9以下であることを特徴とする請求項1又は2に記載の圧電材料。
  4. 第3成分の(第1成分+第3成分)に対するモル比率が0.05から0.49であることを特徴とする請求項1〜3の何れか一項に記載の圧電材料。
  5. 前記第1成分がBa(XTi)O(Xは、Zr、Sn及びHfから選択される少なくとも1種)であり、前記第2成分がSr及びTiの少なくとも1種を添加した(K,Na)NbOであり、前記第3成分がBi(Fe,Mn)Oであることを特徴とする請求項1〜4の何れか一項に記載の圧電材料。
  6. 前記第1成分がBa(Zr,Ti)Oであり、前記第2成分がSr及びTiの少なくとも1種を添加した(K,Na)NbOであり、前記第3成分がBi(Fe,Mn)Oであることを特徴とする求項1〜4の何れか一項に記載の圧電材料。
  7. 前記第1成分がBa(Sn,Ti)Oであり、前記第2成分がLi、Sb及びTaの少なくとも1種を添加した(K,Na)NbOであり、前記第3成分がBi(Fe,Mn)Oであることを特徴とする請求項1〜4の何れか一項に記載の圧電材料。
  8. 前記第1成分がBa(Hf,Ti)Oであり、前記第2成分がLi、Sb及びTaの少なくとも1種を添加した(K,Na)NbOであり、前記第3成分がBi(Fe,Mn)Oであることを特徴とする請求項1〜4の何れか一項に記載の圧電材料。
  9. 請求項1〜8の何れか一項の圧電材料からなる圧電体層と、前記圧電体層に設けられた電極と、を備えたことを特徴とする圧電素子。
  10. ノズル開口に連通する圧力発生室と、圧電体層及び該圧電体層に設けられた電極を備えた圧電素子と、を具備し、前記圧電体層が請求項1〜8の何れか一項の圧電材料からなることを特徴とする液体噴射ヘッド。
  11. 請求項10に記載する液体噴射ヘッドを具備することを特徴とする液体噴射装置。
  12. 請求項9に記載の圧電素子を駆動することによって生じる変位を外部に伝える振動部と、発生した圧力波を外部に伝える整合層を備えたことを特徴とする超音波センサー。
  13. 請求項9に記載の圧電素子を配した振動体と、接触する移動体とを少なくとも具備する圧電モータ−。
  14. 請求項9に記載の圧電素子により生じた電荷を上記電極から取り出す電極を備えたことを特徴とする発電装置。
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