JP2015110194A - 選択透過膜及びその製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】選択透過膜の膜厚を小さくしながら、実用に耐え得る強度を確保する。【解決手段】基板(例えば、支持体14)に充填剤層20を形成する。この充填剤層20に、モノマーを含んだ溶液22を浸透させる。さらに、充填剤層20に浸透したモノマーを、例えば、電子線照射によって重合させ、親水性ポリマーとする。溶液22が水溶液である場合、親水性ポリマーはハイドロゲルとして得られる。以上のようにして、親水性ポリマーないしハイドロゲルに充填剤18が分散した選択透過膜10が得られる。【選択図】図3

Description

本発明は、ハイドロゲルを形成する親水性ポリマーを含む選択透過膜及びその製造方法に関する。
選択透過膜は、ある種の物質が透過することが可能である一方、別の物質が透過し得ない膜として周知であり、特に、生体親和性を有する選択透過膜は、医療分野等に用いられている。例えば、人工膵臓移植においては、グルコースとインスリンに対して高い透過性を示し、且つ免疫細胞に対しては透過を制限(カットオフ)する、いわゆる免疫隔離膜として採用されており、人工膵臓が移植された患者に免疫反応が起こることを防止する役割を担う。この他、生体留置型センサの1種である連続血糖センサには、血糖応答速度を向上させるべくグルコースを容易に透過させる一方、ノイズの原因となるタンパク質をカットオフする選択透過膜が採用されている。
この種の選択透過膜は、一般的に、水分を含んだ親水性ポリマー、すなわち、ハイドロゲルからなる。なお、親水性ポリマーの公知例としては、ポリ(2−ヒドロキシエチルメタクリレート)、(2−ヒドロキシエチルメタクリレート)−メタクリル酸メチル共重合体、アルギン酸−ポリ(L−リジン)−アルギン酸イオン錯体、アルギン酸−バリウム架橋体、アガロース、アガロース−ポリスチレンスルホン酸相溶体、ポリビニルアルコール、アクリロニトリル−塩化ビニル共重合体、ポリスルホン、セルロースエステル、アルギネート/ポリ(L−リジン)等が挙げられる。
ところで、選択透過膜における物質の透過速度は、膜厚に依存して変化する。すなわち、フィックの法則から、膜厚が大きくなるほど透過速度が小さくなる。従って、透過速度の観点からは、膜厚は可及的に小さいことが望ましい。
しかしながら、ハイドロゲルからなる15μm以下の薄膜で実用に耐え得るものは、これまでのところ得られていない。この理由は、薄膜とするためには、親水性ポリマーを得るためのモノマーの量を極めて少なくし、この極少量のモノマーに対して電子線又はプラズマを照射することになるが、極少量のモノマーは即座に乾燥ないし揮発してしまうため、照射を行って重合させることができないからである。また、仮にハイドロゲルからなる薄膜が得られたとしても、そのような薄膜は強度が十分ではないので、破損が生じ易いからである。
特許文献1に記載されるように、ポリマー(ゼラチン)薄膜を補強材によって支持して医療用フィルムとすることも行われている。しかしながら、特許文献1記載の技術は、十分な強度を示す医療用フィルムを提供することに主眼をおくものであり、膜厚が数μm程度であるポリマー薄膜を得ることについての提案は何らなされていない。なお、該特許文献1の記載によれば、ポリマー薄膜の膜厚、及び補強材の厚みは、それぞれ、20〜2000μm、10〜500μmに設定される。
特開2004−209228号公報
以上のように、膜厚が数μm程度と小さいながらも、支持体に支持されていない状態で(すなわち、単体で)、実用に耐え得る強度を示す選択透過膜は未だに得られていない。
本発明は上記した問題を解決するためになされたもので、膜厚が十分に小さいために透過速度が大きく、且つ、そうでありながらも十分な強度を示す選択透過膜及びその製造方法を提供することを目的とする。
前記の目的を達成するために、本発明は、ハイドロゲルを形成する親水性ポリマーを含む選択透過膜であって、
前記親水性ポリマー中に充填剤を含み、且つ厚みが20μm未満であることを特徴とする。なお、親水性ポリマーは、水分を含んでゲル化したハイドロゲルであってもよい。
後述するように、この選択透過膜を得るに際しては、基本的に、充填剤を特定の形状の面に塗布して溶媒を揮散除去し、一定の厚みの充填剤だけでなる多孔質層を形成した上で、充填剤が溶解しない溶媒に溶解したモノマーを前記多孔質層に含浸させてモノマーを重合する。なお、特定の形状の面は、ポリエチレンの単なる平面フィルムであってもよいし、ポリエチレン微多孔膜内のポリエチレン構造物表面でもよい。さらには、数μmの円柱形の有底穴が形成された多孔質のフィルムであってもよい。この場合、多孔質のフィルムは、少なくとも、モノマー溶液を含浸させたときに該モノマー溶液が流失しない程度の保持力が必要である。
一方、充填剤は、少なくとも、モノマーを溶解する溶媒に容易に分散しないものである必要がある。
このような充填剤の好適な一例としては、塗料に含まれる顔料が挙げられ、具体的な顔料としては、二酸化チタン、アルミナ等の金属酸化物の微粒子、炭素、金属の珪酸塩等が例示されるが、特にこれに限定されるものではない。例えば、顔料として用いられることはほとんどないものの、水に溶解し難い硫酸バリウムや二酸化珪素(硝子)等の無機微粒子を採用するようにしてもよい。さらに、モノマーを溶解する溶媒が、例えば、水である場合には、水に溶解しない有機物の粒子を用いることもできる。具体例としては、ポリスチレンの微粒子が挙げられる。樹脂粒子は、電子線で破壊されたり、架橋されたり等の修飾を受けるが、特に差し支えなく利用することが可能である。
生体に接触させる選択透過膜の場合には、生体適合性の観点から、二酸化チタン、アルミナ、珪酸(硝子)、炭素(カーボンブラック)、ジルコニア等が好適である。
インクジェットインキに使われる顔料であれば、溶媒を乾燥させることで凝集させることは容易である。但し、ポリアクリル酸等のポリマーをバインダーに使う場合は、モノマー溶液を含浸させたときに、充填剤が再分散しないようにする必要があり、例えば、充填剤表面にカルボキシル基や硫酸基を接続したカーボンブラック水性インキが市販されているが、この場合、荷電を中和するアンモニアやグアニジン等、正荷電を有するイオンをモノマー溶液に添加しておくことにより、充填剤が再分散することを抑制することができる。
溶媒としては、水が最も好適である。この場合、温度を0℃近傍とするか、又は相対湿度を100%近傍とした上で、電子線を照射することが好ましい。
本発明においては、例えば、電子線照射によってモノマーを重合させる。このため、通常では困難な条件下でも重合が可能である。例えば、アクリルアミドや、ヒドロキシエチルアクリレート等は、一般的に、紫外線を照射したり、過酸化物を添加してラジカルを発生させたりすることで重合させている。従って、カーボンブラックのように光を透過させず、且つラジカルを吸収する充填剤を用いると、親水性ポリマーないしハイドロゲルとすることが非常に困難である。電子線重合によれば、このような場合においても、強力な電子線によって十分な量のラジカルが生成するので、ハイドロゲルを得ることができる。また、電子線の加速電圧と照射時間を変更することで、カーボンブラックを含んだ状態でハイドロゲルの厚みを制御することも可能である。
親水性ポリマーの好適な例としては、N−イソプロピルアクリルアミド、アクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、N−(3−ジメチルアミノプロピル)メタクリルアミド、N−(3−ジメチルアミノプロピル)アクリルアミド、メタクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル、N,Nジメチルメタクリルクリルアミド、アクリル酸、メタクリル酸メチル、2−メタクリロイロキシエチルホスホリルコリン、2−ヒドロキシエチルメタクリレートのいずれかの1種の重合体、又はこれらを含む2種以上の共重合体が挙げられる。
選択透過膜を多孔質膜からなる支持体に支持し、膜ユニットを構成するようにしてもよい。この場合、選択透過膜が支持体で支持されるので、強度が一層確保される。
支持体の好適な例としては、ポリケトン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリイミド、ポリテトラフルオロエチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリウレタン、アパタイト、炭素繊維、ステンレス、チタン、酸化ケイ素、窒化ケイ素、炭化ケイ素の群から選択される1種以上の素材が挙げられる。
また、本発明は、ハイドロゲルを形成する親水性ポリマーを含む選択透過膜の製造方法であって、
充填剤からなり、且つ厚みが20μm未満である充填剤層を基板上に形成する工程と、
前記充填剤層に、少なくともモノマーを含む溶液を浸透させる工程と、
前記充填剤層中の前記モノマーを重合させ、前記充填剤を内包した親水性ポリマーを得る工程、
を経ることにより、前記親水性ポリマー中に前記充填剤を含み、且つ厚みが20μm未満である選択透過膜を得ることを特徴とする。
このようにして、親水性ポリマー中に充填剤が凝集して均一に存在し、且つ厚みが20μm未満である選択透過膜を容易に得ることができる。
なお、溶液には、界面活性剤及び充填剤の凝集安定剤を混合することが望ましい。
モノマーを重合させるには、電子線を照射することが好ましい。この場合、電子線加速度を調節することにより、選択透過膜の膜厚を容易に制御することができるからである。
本発明によれば、充填剤を内包した親水性ポリマー(ハイドロゲルとなった状態を含む)で選択透過膜を構成するようにしている。充填剤層にモノマーを保持できるようになったことで、従来は作製が困難であった数μmの膜厚のゲルを作製することが可能となる。また、ゲルは、例えば、電子線重合の条件を変更することによって所望の膜厚とすることが自在である。さらに、保持担体に充填剤を充填させることにより、ゲル強度を向上させることができる。
膜厚が小さい選択透過膜では、物質の透過速度が大きい。このため、該選択透過膜を、例えば、センサに採用した場合、該センサの応答速度の減少度合いが最小に留められ、従来の大きな膜厚を持つ膜を搭載した場合に比して格段に応答が速くなる。
本実施の形態に係る選択透過膜を備える膜ユニットの概略全体斜視図である。 前記膜ユニットの分解斜視図である。 図3A〜図3Cは、選択透過膜(膜ユニット)を得るまでの過程を示す工程フロー図である。 図4A〜図4Dは、選択透過膜(膜ユニット)を得るまでの別の過程を示す工程フロー図である。 実施例1に従って得た薄膜における膜厚の測定箇所を示す平面図である。 実施例2に従って得た薄膜における光透過率(遮光率)の測定箇所を示す平面図である。 光透過率(遮光率)を測定するための概略構成を模式的に示す説明図である。 拡散試験装置の要部概略構成図である。 前記拡散試験装置におけるグルコース濃度の経時変化を示すグラフである。 前記拡散試験装置におけるアルブミン濃度の経時変化を示すグラフである。 評価装置の要部概略構成図である。 前記評価装置におけるタンパク質の透過率を、分子量との関係で示すグラフである。 実施例5に従って得た薄膜を埋め込んで3日間が経過したラットの埋め込み界面の顕微鏡写真である。 陰性対照を埋め込んで3日間が経過したラットの埋め込み界面の顕微鏡写真である。 実施例5に従って得た薄膜を埋め込んで7日間が経過したラットの埋め込み界面の顕微鏡写真である。 陰性対照を埋め込んで7日間が経過したラットの埋め込み界面の顕微鏡写真である。 実施例5に従って得た薄膜を埋め込んで28日間が経過したラットの埋め込み界面の顕微鏡写真である。 陰性対照を埋め込んで28日間が経過したラットの埋め込み界面の顕微鏡写真である。 実施例1に従って得られた膜と、比較例の膜との各々を、逆浸透水(RO水)中で超音波洗浄を行った際にRO水中に流失した粒径10μm未満の粒子の数を示すグラフである。
以下、本発明に係る選択透過膜及びその製造方法につき好適な実施の形態を挙げ、添付の図面を参照して詳細に説明する。
図1は、本実施の形態に係る選択透過膜10を備える膜ユニット12の概略全体斜視図であり、図2は、その分解斜視図である。この場合、選択透過膜10が支持体14に支持されることによって膜ユニット12が構成されている。
選択透過膜10は、マトリックス16中に充填剤18(いずれも図3参照)が分散することで構成される。マトリックス16は親水性ポリマーであり、充填剤18は粉体である。すなわち、該選択透過膜10は、粉体(充填剤18)を内包した親水性ポリマーからなる。マトリックス16は、凝集した充填剤18同士の間を充填するようにして存在する。このため、親水性ポリマーが水を吸収してハイドロゲルとなった場合には、充填剤18は、ハイドロゲルに保持される。すなわち、充填剤18が脱離することが回避される。
マトリックス16には、凝集安定剤が含まれていることが好ましい。この場合、充填剤18が一層脱離し難くなるからである。なお、凝集安定剤の好適な具体例としては、グアニジンやポリビニルピロリドン、ポリエチレンイミンのような正電荷を有する水溶性物質や、水に溶解可能な未架橋のポリアクリルアミドポリマー等が挙げられる。
充填剤18としては、マトリックス16である親水性ポリマーを形成するためのモノマーを保持し得る物質が選定される。そのような物質の好適な例としては、炭素(例えば、カーボンブラック)、硫酸バリウムや二酸化珪素(硝子)、二酸化チタン、アルミナ、珪酸(硝子)、ジルコニア等の無機微粒子や、ポリスチレンに代表される樹脂粒子のいずれかの粒子を挙げることができる。
一方、マトリックス16は、後述するように、充填剤18に浸透したモノマーが重合することで形成された親水性ポリマーからなる。特に、生体親和性を示すものであると、体内に設置される連続血糖センサ用の選択透過膜10等、医療用のものとして使用することが可能となるので好適である。
そのような親水性ポリマーの具体例としては、N−イソプロピルアクリルアミド、アクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、N−(3−ジメチルアミノプロピル)メタクリルアミド、N−(3−ジメチルアミノプロピル)アクリルアミド、メタクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル、N,Nジメチルメタクリルクリルアミド、アクリル酸、メタクリル酸メチル、2−メタクリロイロキシエチルホスホリルコリン、2−ヒドロキシエチルメタクリレートのいずれかの1種の重合体、又はこれらを含む2種以上の共重合体が挙げられる。
親水性ポリマーないしハイドロゲルは、微視的には三次元網目構造をなす。この網目の開口寸法を制御することにより、選択透過膜10を透過する物質が選択的となる。すなわち、例えば、網目の開口寸法が小さいときには、選択透過膜10を透過し得るのは、分子サイズ(分子量)が小さい物質のみである。従って、この場合、分子サイズ(分子量)が小さい物質のみを透過させ、その一方で、分子サイズ(分子量)が大きい物質を堰止する膜となる。
ここで、一般的な選択透過膜10では、その厚みは20μm以上である。しかしながら、フィックの法則から諒解されるように、選択透過膜10の厚みが大きくなるほど物質の透過速度が小さくなる。従って、例えば、選択透過膜10を連続血糖センサに採用した場合、該連続血糖センサの応答速度が遅くなる懸念がある。従って、本実施の形態では、選択透過膜10の厚みは20μm未満、好ましくは10μm以下、さらに好ましくは数μm程度に設定される。選択透過膜10の典型的な厚みは、およそ6〜7μmである。
上記したように、選択透過膜10は、充填剤18を内包したマトリックス16(親水性ポリマー)からなり、多孔質の支持体14(保持担体)を追加することができるため、厚みが小さな薄膜であっても、十分な強度が確保される。
すなわち、本実施の形態によれば、厚みが数μm程度と十分に小さいために物質を効率よく透過させることが可能であり、しかも、実用に十分な強度を示す選択透過膜10を構成することができる。
以上のように構成される選択透過膜10は、支持体14に支持されている。この支持体14は、気孔を含む多孔質体からなり、従って、液体及び気体は、該支持体14を透過することが可能である。なお、気孔径は特に限定されるものではないが、概ね1〜500μmの範囲内である。支持体14は、物質の流れの下流側に位置させてもよいし、上流側に位置させてもよい。また、多孔質の保持担体として、選択透過膜10の骨格として保持してもよい。
支持体14は、選択透過膜10を支持して補強するためのものであるが、厚みが過度に大きい場合、細孔の寸法との兼ね合いもあるが、選択透過膜10を通過した物質、又は選択透過膜10に通過させるべき物質が透過することが容易でなくなる懸念がある。従って、支持体14の厚みは、1〜10μmの範囲内とすることが好適である。
支持体14の素材は、水に不溶であり、且つ生体に対して不活性であるものが好ましい。このような素材の好適な例としては、ポリケトン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリイミド、ポリテトラフルオロエチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリウレタン、アパタイト、炭素繊維、ステンレス、チタン、酸化ケイ素、窒化ケイ素、炭化ケイ素の群から選択される1種以上の素材が挙げられる。
このような構成の膜ユニット12において、充填剤18及びマトリックス16の素材を変更したり、親水性ポリマーに修飾基を付加したりすることにより、選択透過膜10を様々な用途に供することが可能となる。
例えば、親水性ポリマーから、低分子のグルコース及びインスリンのみが透過し得るような組成のハイドロゲルを形成したときには、ランゲルハンス氏島(いわゆるラ氏島)移植を行う際の免疫隔離膜として使用することが可能である。
また、ハイドロゲルの表面をアルブミン等で修飾することにより、火傷や傷を修復するため、又は美容目的用の皮膚組織再生補助シートとすることもできる。
さらに、充填剤18が酸化チタンやカーボンブラック等である場合、光学系センサ用の遮光膜として使用することができる。
さらにまた、充填剤18が硫酸バリウム、ポジトロン粒子であるときには、この選択透過膜10を生体内に移植した場合、CTスキャンや陽電子放射断層撮影(PET)を行うことにより、移植後の観察が容易となる。
その他、ハイドロゲルがポリN−イソプロピルアクリルアミドであると、選択透過膜10を生体内の患部に移植したときには、pH変化や熱変化が起こることで、その患部で薬剤徐放を行うことが可能となる。
そして、脳用の人工硬膜の癒着防止膜として採用することも可能であるし、場合によっては、ハイドロゲルによって過酸化物を除去したり、失活させたりすることができるようにもなる。
この選択透過膜10を含む膜ユニット12は、以下のようにして作製することができる。
はじめに、図3Aに示すように、支持体14に充填剤層20を形成する。なお、この形成に先んじて、支持体14に親水化処理を施すようにしてもよい。例えば、支持体14がポリエチレン多孔質体であり、且つ後述するモノマーを溶解した溶媒が水であるときには、電子線照射を行うことによってポリエチレンを親水化することで、溶媒を含浸し易くすることが可能である。支持体14は、台座のような形状であってもよく、多孔体でその隙間に充填剤18を充填するものであってもよい。
充填剤層20を形成するためには、例えば、支持体14の上端面に、上記したような粒子(充填剤18)を含んだ分散液、又は溶解した溶液を塗布すればよい。塗布手法としては、スピンコーティング等の公知の手法を適用することができる。
この場合、回転する支持体14上で分散液(又は溶液)が拡散するとともに、拡散した分散液(又は溶液)から分散媒(又は溶媒)が揮散除去される(乾燥する)ので、厚みが小さいながらも略均等な充填剤層20を効率よく形成することができるという利点がある。なお、分散液(又は溶液)及び支持体14の回転数は、乾燥物である充填剤層20が20μm未満、好ましくは数μm、一層好ましくは6〜7μmとなるような条件に設定される。
以上とは別に、少なくともモノマーを含む溶液22を調製する。溶液22には、重合開始剤や、充填剤18が凝集することを容易にする凝集安定剤、さらには、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)、エステルエーテル型であるTween等の界面活性剤を添加するようにしてもよい。なお、本実施の形態において使用するモノマーは、電子線照射によってラジカル重合を起こした結果、親水性ポリマーとなるものであり、その具体例は、上記の通りである。
この溶液22を、図3Bに示すように、滴下ないしスプレー塗布する等して充填剤層20に供給する。充填剤層20が乾燥物であるので、溶液22は、充填剤層20に容易に浸透する。
次に、充填剤18に浸透した溶液22中のモノマーを重合させる。本実施の形態では、このために、図3Cに示すように電子線を照射する。
電子線によって、ラジカルとして二次電子が発生する。その結果、ラジカル重合が起こり、モノマーが重合して親水性ポリマーとなる。
この手法では、電子線加速度を調節することによって親水性ポリマーの膜厚を制御することができる。すなわち、所定の電子線加速度を付与することにより、親水性ポリマーの膜厚を、充填剤層20の厚み以上の厚みに設定することができる。その結果、厚みが20μm未満、好ましくは6〜7μmである選択透過膜10が支持体14上に得られるに至る。
なお、モノマーを含む溶液22が水溶液である場合には、親水性ポリマーは、水分を含んだものとして形成される。すなわち、この場合、マトリックス16はハイドロゲルである。
このようにして得られた選択透過膜10においては、マトリックス16である親水性ポリマーないしハイドロゲルは、充填剤18間を充填するようにして存在する。さらに、支持体14による補強も相俟って、選択透過膜10は、膜厚が小さいながらも強度に優れ、しかも、親水性ポリマーないしハイドロゲル、さらには充填剤18が脱落し難いものとなる。
本発明は、上記した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲で種々の変形が可能である。
例えば、この実施の形態では、選択透過膜10を支持体14に支持するようにしているが、選択透過膜10を支持体14から分離し(図2参照)、単体で用いるようにしてもよい。この場合、充填剤層20を形成する際に支持体14を用いる必要は特にない。例えば、図3A〜図3Cに示す工程において、支持体14に代替してステンレス製基板を採用し、このステンレス製基板上で選択透過膜10を作製した後、選択透過膜10をステンレス製基板から分離するようにしてもよい。
また、図4A〜図4Dに示すようにして、選択透過膜10を形成するようにしてもよい。
この場合、先ず、図4Aに示すように、充填剤18を含む分散液24を貯留した第1容器26に、支持体14を浸漬する。その後、支持体14を引き上げ、例えば、スピンコート装置を用い、支持体14を回転させることで分散液24を乾燥して、図4Bに示すように、充填剤層20を形成する。この場合、スピンコーティングと同様に、厚みが小さく且つ全体にわたって略均等な充填剤層20を得ることができる。支持体14は充填剤が網目構造に入り込むことができる多孔体がよい。
次に、図4Cに示すように、モノマーを含む溶液22を貯留した28に、充填剤層20が形成された支持体14を浸漬する。これにより、充填剤層20に溶液22(モノマー)が浸透する。
次に、支持体14を引き上げた後、上記と同様に、モノマーが浸透した充填剤層20に対して電子線を照射する。又は、支持体14の片面のみを溶液22に接触させるとともに、該支持体14を溶液22の液面に浮遊させた状態で電子線を照射してもよい。その結果、モノマーのラジカル重合が起こり、重合体である親水性ポリマーが生成して、選択透過膜10が得られるに至る。勿論、溶液22が水溶液であるときには、親水性ポリマーはハイドロゲルである。
さらに、図3A〜図3C又は図4A〜図4Dに示すいずれの場合においても、電子線に代替してプラズマを照射するようにしてもよい。
そして、支持体14に代替し、基板としてセンサ担体を用いて選択透過膜10を形成することにより、該選択透過膜10を具備するセンサを作製することができる。
厚み9μm、空隙率81%、ガーレー5秒/100ccのポリエチレン多孔質体(DSMソルテック社製。商品名:「ソルポア」)を、厚み1mm、外径50mm、内径39mmの硬質ポリエチレン製の固定用リングに熱癒着で貼付した。次に、Min−EB(ウシオ電機社製の電子線照射装置)を用い、大気中にて、60keV、0.3mA、電子管窓までの距離2cmの条件下で電子線を5秒間照射し、ポリエチレン多孔質体の表面を親水化させた。
次に、界面活性剤であるTween80を2wt%、カルボキシル基が修飾されたカーボンブラック(米国キャボット社製。商品名:「CABOJET200」)を20wt%含む水溶液を調製し、該水溶液の液面に、表面を親水化した前記ポリエチレン多孔質体の片面が接触するようにして浮遊させた。
数分が経過した後、水溶液がポリエチレン多孔質体に含浸し、該ポリエチレン多孔質体の片面が黒色を呈した。なお、水溶液に接触していない上面に、該水溶液が到達すること、換言すれば、水溶液がポリエチレン多孔質体の厚み方向に浸透することはなかった。
次に、ポリエチレン多孔質体を水溶液から取り出し、スピーンコータで2000rpm、1分間回転させ、これにより余分な液を分離した。その後、さらに30分程大気中に放置し、溶媒である水を完全に乾燥させて消失させた。これにより、カーボンブラックをポリエチレン多孔質体中に均一に凝集させることができた。
次に、カーボンブラックを内包したポリエチレン多孔質体を、モノマーのアクリルアミド15wt%、架橋剤のN,N−メチレンビスアクリルアミド0.3wt%、充填剤凝集剤のポリアクリルアミド(分子量=1500)を含むモノマー水溶液の液面に、ポリエチレン多孔質体の残余の片面(カーボンブラックの水溶液に接触していない面)をモノマー水溶液に接触するように浮遊させた。数秒の経過後、モノマー水溶液がポリエチレン多孔質体の全体に浸透したことが確認された。
この状態で、窒素パージを行いながら、60keV、0.3mA、電子管までの距離2cmの条件下で、電子線を1秒間照射した。さらに、得られた膜を水中で撹拌しながら洗浄を数回行った。
以上のようにして、図5に示す直径50mmの円盤形状の薄膜30を複数個得た。
この薄膜30に、50mM、pH=7.4のリン酸バッファを含浸させた。次に、この薄膜30を、キーエンス社製の高精度接触式センサであるGT2−H12Kの基台に密着させ、さらに、薄膜30上に外径50mm、内径38mm、厚み8mmの真鍮製リングを載置して、該薄膜30の反りを抑えた。
そして、直径7mmの円柱形状プローブOP−77679を薄膜30の中心Oに接触させ、30秒が経過したときの値を記録した。この値は、基台の上端面からOP−77679までの離間距離に対応する。勿論、基台の上端面にOP−77679が接触したときの値を0として構成しているので、前記離間距離は、結局、薄膜30の厚みを表す。
また、直径上に位置し、且つ中心Oから7mm離間したA点〜D点についても同様にして、OP−77679が接触してから30秒が経過したときの値を記録した。ここで、A点とC点は同一の直径上に位置し、互いに180°離間している。B点とD点の位置関係も同様である。また、A点(又はC点)と、B点及びD点とは、90°離間した位置関係にある。すなわち、A点及びC点を含む直径と、B点及びD点を含む直径とは直交している。
複数個のサンプルについて上記の測定を繰り返したところ、最小値は5.8μm、最大値は7μmであり、平均値は6.3μmであった。
このことから、上記のようにして得られた薄膜30の膜厚が極めて小さいことが分かる。
実施例1に準拠した操作を行い、図6に示す直径39mmの円盤形状の薄膜32を得た。
この薄膜32に、50mM、pH=7.4のリン酸バッファを含浸させた。次に、この薄膜32を直径52mmのシャーレに収容し、蓋をしない状態で、浜松ホトニクス社製のフォトアンプセンサC9329の台座にセットした。これにより、図7に示すように、フォトダイオード34と紫外線LEDランプ36との間に薄膜32を位置させた。なお、図7においては、フォトダイオード34、薄膜32及び紫外線LEDランプ36を示すに留め、台座やシャーレ等は示していない。
十分に遮光した状態で紫外線LEDランプ36を発光させるとともに、前記台座のXYステージの作用下に薄膜32を変位させた。これにより、図6中にO’で示す中心と、その周囲のA’点〜D’点に光を照射し、光が透過しているか否かをフォトダイオード34で調べた。
ここで、A’点とC’点は同一の直径上に位置し、互いに180°離間している。B’点とD’点の位置関係も同様である。また、A’点(又はC’点)と、B’点及びD’点とは、90°離間した位置関係にある。すなわち、A’点及びC’点を含む直径と、B’点及びD’点を含む直径とは直交している。さらに、A’点〜D’点の互いの離間距離は、10mmである。
各点につき、1回の測定を0.5秒として10回測定し、平均値を求めた。この平均値からバックグラウンド値を差し引いた上で、光透過率を求めた。その結果、光透過率は10−5%以下であった。すなわち、薄膜32は、100000分の1以下に減光し得るという十分な遮光性を示した。
実施例1、2に準拠した操作を行い、円盤形状の薄膜40(図8参照)を得た。
次に、図8に示す拡散試験装置42を組み立てた。この拡散試験装置42につき若干説明すると、該拡散試験装置42は、第1ベッセル44と第2ベッセル46を有し、これら第1ベッセル44及び第2ベッセル46が恒温槽48に収容されて構成される。
第1ベッセル44の第1フランジ部50と、第2ベッセル46の第2フランジ部52は互いに対向し、且つ両者の間には、第1スペーサ54、薄膜40、第2スペーサ56が介装される。第1フランジ部50と第2フランジ部52は、この状態で、図示しないクリップ等によって離間しないように把持される。すなわち、第1スペーサ54、薄膜40、第2スペーサ56は、第1フランジ部50と第2フランジ部52に挟持される。このため、第1ベッセル44の室内と、第2ベッセル46の室内とが薄膜40によって離隔される。
以上の構成において、第1ベッセル44にグルコースとバッファ液の混合液を収容するとともに、第2ベッセル46に、バッファ液のみを収容した。混合液又はバッファ液は、図示しない撹拌子によって撹拌した。また、恒温槽48には、37℃の恒温水58を循環流通させた。
この状態を保ち、所定時間が経過する毎に第2ベッセル46からバッファ液を採取し、グルコローダにてグルコースの濃度を測定した。
グルコース濃度が1143mg/デシリットルであるHEPESバッファ液(HEPES;20mM、NaCl;150mM、CaCl;0.2mM、MgCl:2mM、pH=7.41)との混合液を第1ベッセル44に収容し、且つHEPESバッファ液のみを第2ベッセル46に収容したときの第2ベッセル46におけるグルコース濃度の経時変化を図9に示す。
この図9と、混合液及びHEPESバッファ液の体積等に基づき、拡散係数を算出したところ、3.4±2.1×10−7cm/秒であった。
また、アルブミン濃度が50mg/ミリリットルであるHEPESバッファ液との混合液を第1ベッセル44に収容し、且つHEPESバッファ液のみを第2ベッセル46に収容したときの第2ベッセル46におけるアルブミン濃度の経時変化を図10に示す。なお、アルブミン濃度は、紫外線吸光分析によって透過率として求めた。
この図10と、混合液及びHEPESバッファ液の体積等に基づき、拡散係数を算出したところ、4.6±2.0×10−10cm/秒であった。この値は、拡散試験を1週間継続したとしても、アルブミンは4%程度しか透過しないことを表す。
以上の結果から、この薄膜40が、グルコースを比較的容易に透過させるものである一方で、アルブミンを堰止することが分かる。なお、同一の時間であれば、グルコースの透過量は、アルブミンの約1000倍である。すなわち、この薄膜40は、選択透過性を有する。
実施例1〜3に準拠した操作を行い、円盤形状の薄膜60(図11参照)を複数個得た。
次に、図11に示す評価装置62を組み立てた。この評価装置62は、第1挟持ブロック64及び第2挟持ブロック66と、これら第1挟持ブロック64と第2挟持ブロック66の間に介装されて挟持される内方ブロック68とを有する。
第1挟持ブロック64には、水平方向に沿って延在する5個の第1有底穴70a〜70eが形成される。各第1有底穴70a〜70eには、鉛直方向に沿って延在する第1細孔72a〜72eが連通する。
また、内方ブロック68、第2挟持ブロック66には、それぞれ、前記第1有底穴70a〜70eに対応する位置に、貫通孔74a〜74e、第2有底穴76a〜76eが形成される。さらに、貫通孔74a〜74eには第2細孔78a〜78eが連通し、第2有底穴76a〜76eには第3細孔80a〜80eが連通する。第2細孔78a〜78e及び第3細孔80a〜80eも、鉛直方向に沿って延在する。
なお、図11における参照符号82はボルト孔を表す。各ボルト孔82にボルト84が通され、さらに、該ボルト84にナット86が螺合されることにより、第1挟持ブロック64、内方ブロック68及び第2挟持ブロック66が連結される。これに伴って第1有底穴70a〜70e、貫通孔74a〜74e及び第2有底穴76a〜76eが連なる。
以上の構成において、薄膜60を貫通孔74a〜74eに配置し、第1有底穴70a〜70eと第2有底穴76a〜76eを薄膜60によって離隔した。
そして、第1有底穴70a〜70eの各々に、アルブミン、カタロース、リゾチーム、デキストラン又はウラニンのいずれか1種とHEPESバッファ液との混合液を、第1細孔72a〜72eを介して導入した。また、第3細孔80a〜80eを介して、第2有底穴76a〜76eの各々にHEPESバッファ液のみを導入した。
37℃で65時間放置し、第2有底穴76a〜76e内のHEPESバッファ液を採取して上記のタンパク質の濃度を測定した。なお、アルブミン、カタロース、リゾチームの濃度は紫外光吸収分析にて求め、デキストラン及びウラニンの濃度は、励起した際の蛍光を測定して求めた。この濃度に基づき、濃度が平衡に達した際を透過率100%として、各々の透過率を求めた。結果を、分子量の対数との関係で図12に示す。なお、透過率が100%を超えているものは、液の蒸発と誤差によると推察される。
図12から、この薄膜60が、分子量が約10以下である分子を透過させる一方、分子量が約10以上の分子を堰止し得る(カットオフする)ものであることが明らかである。
実施例1〜4に準拠した操作を行い、薄膜を得た。この薄膜を、直径10mm、厚み1mmのポリエチレンディスクに巻回し、埋め込みサンプルを得た。
この埋め込みサンプルを、16匹のラットの背部の皮下に埋め込んで皮下埋め込み試験を行った。なお、試験期間中は、固形飼料CRF−1と、上水道の水質基準を満たす飲料水を自由摂取させた。
3日間経過した後の埋め込み界面の顕微鏡写真を図13に示すとともに、3日間経過した後の陰性対照の埋め込み界面の顕微鏡写真を図14に示す。また、図15及び図16は、それぞれ、7日間経過した後の埋め込み界面、陰性対照の埋め込み界面の顕微鏡写真である。さらに、図17及び図18は、28日間経過した後の埋め込み界面、陰性対照の埋め込み界面の顕微鏡写真である。
薄膜の埋め込み界面(図13、図15及び図17)と、陰性対照の埋め込み界面(図14、図16及び図18)とを対比するとともに、炎症系細胞の種類や出現の頻度、及び出血や異物の破片等を調べると、同程度であると認められる。すなわち、上記の薄膜は、陰性対照と同程度の生体適合性を示す。
比較のため、充填剤をモノマー水溶液に含ませるとともに、この状態でモノマーの重合を試みた。
具体的には、実施例1と同一のポリエチレン多孔質体(ソルポア)に対し、上記と同様にして親水化処理を施した。
その一方で、モノマーのアクリルアミドを15wt%、架橋剤のN,N−メチレンビスアクリルアミドを0.3wt%、カーボンブラックのCABOJET200を10wt%、界面活性剤のTween80を1%含むモノマー水溶液の液面に、前記ポリエチレン多孔質体の片面を接触させた状態で浮遊させた。数分が経過した後、ポリエチレン多孔質体の全体にモノマー水溶液が浸透したことを確認した。
この状態で、窒素パージを行いながら、60keV、0.3mA、電子管までの距離2cmの条件下で電子線照射を行った。この場合、照射時間を20秒に設定した。得られた膜は、水中で撹拌しながら洗浄を数回行った。以上のようにして得られた膜を、比較例とする。なお、実施例1と同様にして該膜の厚みを測定したところ、62μmであった。
この比較例の膜と、実施例1に従って得られた厚み12μmの膜につき、超音波洗浄に対する耐久性を評価した。すなわち、各々の膜から直径35mmの円盤形状をなす評価サンプルを切り出し、該評価サンプルを、逆浸透膜で得られた純水(RO水)50mlに浸漬して超音波洗浄を10分間行った。その後、RO水から10mlをサンプリングし、粒子カウンタによって、10mlのRO水中に存在する直径10μm未満の粒子数を測定した。結果を、図19に示す。この図19から、実施例1の膜の方が、比較例の膜に比して、RO水中に流出した粒子(デブリス)の数が少ないことが分かる。
また、比較例の膜が、1回目の超音波洗浄時に破損が生じた(穿孔が発生した)のに対し、実施例1の膜は、2回目の超音波洗浄を終了しても破損が生じていなかった。
以上の結果から、実施例1の膜が、厚みが著しく小さいにも関わらず、比較例の膜よりも保持能力に優れ、且つ耐久性に優れるものであることが明らかである。この理由は、以下の通りであると推察される。
すなわち、カーボンブラックには、ラジカルを捕捉する性質がある。比較例においては、カーボンブラックが分散したモノマー水溶液に対して電子線を照射しているが、この場合、生成したラジカルがカーボンブラックによって短時間で消費されて消失する。このため、電子線の照射時間を20秒と実施例1に比して著しく長くしても、モノマーが十分に重合し得ない。その結果、超音波洗浄に対して十分な耐性を示し得ず、デブリスも多くなる。
これに対し、実施例1では、ポリエチレン多孔質体内にカーボンブラックを凝集させた後、モノマー溶液を含浸させて重合を行うようにしているので、カーボンブラックによるラジカル消費の影響が少なくなる。従って、モノマーの重合度が高くなり、その結果、超音波洗浄を2回行っても破損が生じない程度の強度を示すゲルとなっていると考えられる。
以上の結果から、カーボンブラックのようなラジカル捕捉能力のある充填剤を使ってハイドロゲル膜を作製する際は、従来技術から想到し得る方法、すなわち、充填剤をモノマー水溶液に含ませるとともに、この状態でモノマーを重合をする方法では、厚みが10μm程度と小さいながらも十分な強度を示す薄膜を得ることは困難であるが、上記したように充填剤(例えば、カーボンブラック)を多孔質体内に一旦凝集させた後、該多孔質体にモノマー溶液を含浸させてモノマーを重合する方法によれば、薄膜でありながらも強度に優れた膜を作製できることが分かる。
10…選択透過膜 12…膜ユニット
14…支持体 16…マトリックス
18…充填剤 20…充填剤層
22…溶液 24…分散液
30、32、40、60…薄膜 34…フォトダイオード
36…紫外線LEDランプ 42…拡散試験装置
44、46…ベッセル 48…恒温槽
62…評価装置 64、66…挟持ブロック
68…内方ブロック 70a〜70e、76a〜76e…有底穴
74a〜74e…貫通孔

Claims (12)

  1. ハイドロゲルを形成する親水性ポリマーを含む選択透過膜であって、
    前記親水性ポリマー中に充填剤を含み、且つ厚みが20μm未満であることを特徴とする選択透過膜。
  2. 請求項1記載の膜において、前記充填剤が炭素、硫酸バリウム、二酸化珪素、二酸化チタン、アルミナ、珪酸、ジルコニア、ポリスチレンのいずれかの粒子であることを特徴とする選択透過膜。
  3. 請求項1又は2記載の膜において、前記親水性ポリマーが、N−イソプロピルアクリルアミド、アクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、N−(3−ジメチルアミノプロピル)メタクリルアミド、N−(3−ジメチルアミノプロピル)アクリルアミド、メタクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル、N,N−ジメチルメタクリルクリルアミド、アクリル酸、メタクリル酸メチル、2−メタクリロイロキシエチルホスホリルコリン、2−ヒドロキシエチルメタクリレートのいずれかの1種の重合体、又はこれらを含む2種以上の共重合体であることを特徴とする選択透過膜。
  4. 請求項1〜3のいずれか1項に記載の膜において、多孔質膜からなる支持体に支持されたことを特徴とする選択透過膜。
  5. 請求項4記載の膜において、前記支持体が、ポリケトン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリイミド、ポリテトラフルオロエチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリウレタン、アパタイト、炭素繊維、ステンレス、チタン、酸化ケイ素、窒化ケイ素、炭化ケイ素の群から選択される1種以上の素材からなることを特徴とする選択透過膜。
  6. ハイドロゲルを形成する親水性ポリマーを含む選択透過膜の製造方法であって、
    充填剤からなり、且つ厚みが20μm未満である充填剤層を基板上に形成する工程と、
    前記充填剤層に、少なくともモノマーを含む溶液を浸透させる工程と、
    前記充填剤層中の前記モノマーを重合させ、前記充填剤を内包した親水性ポリマーを得る工程、
    を経ることにより、前記親水性ポリマー中に前記充填剤を含み、且つ厚みが20μm未満である選択透過膜を得ることを特徴とする選択透過膜の製造方法。
  7. 請求項6記載の製造方法において、前記溶液に、界面活性剤及び前記充填剤の凝集安定剤を混合することを特徴とする選択透過膜の製造方法。
  8. 請求項6又は7記載の製造方法において、前記充填剤として、炭素、硫酸バリウム、二酸化珪素、二酸化チタン、アルミナ、珪酸、ジルコニア、ポリスチレンのいずれかの粒子を用いることを特徴とする選択透過膜の製造方法。
  9. 請求項6〜8のいずれか1項に記載の製造方法において、前記親水性ポリマーとして、N−イソプロピルアクリルアミド、アクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、N−(3−ジメチルアミノプロピル)メタクリルアミド、N−(3−ジメチルアミノプロピル)アクリルアミド、メタクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル、N,Nジメチルメタクリルクリルアミド、アクリル酸、メタクリル酸メチル、2−メタクリロイロキシエチルホスホリルコリン、2−ヒドロキシエチルメタクリレートのいずれかの1種の重合体、又はこれらを含む2種以上の共重合体を用いることを特徴とする選択透過膜の製造方法。
  10. 請求項6〜9のいずれか1項に記載の製造方法において、前記基板として多孔質膜からなる支持体を用い、前記支持体に支持された状態の選択透過膜を得ることを特徴とする選択透過膜の製造方法。
  11. 請求項10記載の製造方法において、前記支持体として、ポリケトン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリイミド、ポリテトラフルオロエチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリウレタン、アパタイト、炭素繊維、ステンレス、チタン、酸化ケイ素、窒化ケイ素、炭化ケイ素の群から選択される1種以上の素材を用いることを特徴とする選択透過膜の製造方法。
  12. 請求項6〜11のいずれか1項に記載の製造方法において、前記モノマーを電子線照射によって重合させることを特徴とする選択透過膜の製造方法。
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