JP2015107899A - 結晶成長促進剤及びそれを用いたカルコゲナイド化合物の製造方法 - Google Patents

結晶成長促進剤及びそれを用いたカルコゲナイド化合物の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】カルコゲナイド化合物の結晶成長に有効な結晶成長促進剤を提供すること。【解決手段】カルコゲナイド化合物は、硫黄、セレンから選択されるカルコゲン元素と、銅、インジウム、ガリウムから選択される金属元素の内のいずれか1種以上の元素とを含有し、結晶成長促進剤は、カルコゲナイド化合物を構成する元素を少なくとも1つを含有し、かつ、揮発性を有する。【選択図】なし

Description

本発明は、結晶成長促進剤及びそれを用いたカルコゲナイド化合物の製造方法に関し、より詳細には、硫黄及び/又はセレンから選択されるカルコゲナイド化合物の結晶成長促進剤及びそれを用いたカルコゲナイド化合物の製造方法に関する。
従来から硫黄及び/又はセレンを含有するカルコゲナイド化合物は、その優れた光物性や半導体物性のため、蛍光体や太陽電池に代表される光電変換素子の分野で広く利用されている。このような、優れた光物性や半導体特性を得るためには、カルコゲナイド化合物結晶中における電子の移動が重要であるため、高い結晶性や用途に応じた適切な結晶サイズが必要になる。
無機材料の結晶性向上や結晶サイズの制御のために、合成時の焼成温度で融解する融剤(フラックス)が用いられ、例えば、特許文献1には、臭化カリウム、塩化カリウムから選択されるアルカリ金属化合物を融剤として用い、ユーロピウム賦活アルカリ土類硫化物蛍光体を製造する方法が開示されている。
また、例えば、特許文献2には、セシウム、ルビジウム、バリウム及びランタンを融剤として含有する第四級カルコゲナイド化合物の製造方法が開示されている。
しかしながら、これらは、融解状態での反応場として融剤を用いる一般的な手法であり、結晶成長が十分に起こらない場合や、結晶成長を促すためには高温で長時間の焼成を必要とするなど生産性が劣る場合があった。
また、例えば、特許文献3には、カルコゲナイド化合物が広く利用される、CIGS太陽電池の光吸収層材料の1種であるCuInSeの単結晶を合成する際に、CuSeやSeの溶融状態を利用してCuInSeの結晶成長を促進する技術が開示されている。
また、例えば、特許文献4には、その結晶成長を促進する技術を、真空蒸着を用いた製法に応用した例として、インジウムとガリウムとセレンとを含む層上に、銅とセレンとを含む層を蒸着し、銅とセレンを含む層を加熱溶融して拡散させてCIGS膜を製造する方法が開示されている。この方法は、不純物を含有させない点において優れた技術であるが、単に融解状態を用いているため、結晶成長が十分に起こらない場合があった。
また、例えば、特許文献5には、リチウム化合物やカリウム化合物を用いてCIGS膜中のCIGSの結晶成長を促進する技術が開示されているが、結晶成長が十分でなく、生産性が劣る場合があった。
さらに、例えば、特許文献6には、各種複合材料だけでなく、光センサや太陽電池などの高効率光電変換材料、発光素子などの半導体素子に利用することのできる金属カルコゲナイド化合物超格子の製造方法が開示されている。
一方、フラックスを用いて酸化物を合成する技術については、例えば、特許文献7にはフラックスを用いてコバルト酸リチウムを合成する技術が開示され、特許文献8には、フラックスを用いて基材上に酸化物ナノ無機結晶を形成した積層体が開示されている。
特開2013−151611号公報 特表2013−512174号公報 特表2002−519273号公報 特開2013−058540号公報 特開平11−274534号公報 特開平07−133200号公報 特開2013−028517号公報 特開2013−121914号公報
しかしながら、上述したように、蛍光体や太陽電池に代表される光電変換素子の分野で広く利用されている硫黄及び/又はセレンを含有するカルコゲナイド化合物は知られているものの、本発明のような結晶成長促進剤及びそれを用いたカルコゲナイド化合物の製造方法については何ら開示されていない。
本発明は、このような問題に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、カルコゲナイド化合物の結晶成長に供される結晶成長促進剤及びそれを用いたカルコゲナイド化合物の製造方法を提供することにある。
本発明は、このような目的を達成するためになされたもので、請求項1に記載の発明は、カルコゲナイド化合物の結晶成長に供される無機材料の結晶成長促進剤であって、前記カルコゲナイド化合物は、硫黄、セレンから選択されるカルコゲン元素と、銅、インジウム、ガリウムから選択される金属元素の内のいずれか1種以上の元素とを含有し、前記結晶成長促進剤は、前記カルコゲナイド化合物を構成する元素を少なくとも1つを含有し、かつ、揮発性を有することを特徴とする。
また、請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、前記結晶成長促進剤が含有する前記カルコゲナイド化合物を構成する元素が、インジウム、ガリウムの元素の内のいずれか1種以上であることを特徴とする。
また、請求項3に記載の発明は、カルコゲナイド化合物の結晶成長に供される無機材料の結晶成長促進剤用いたカルコゲナイド化合物の製造方法であって、前記カルコゲナイド化合物を構成する元素を1種以上の化合物にすべて含むカルコゲナイド化合物原料と、前記カルコゲナイド化合物を構成する元素を少なくとも1つ含有し、かつ、揮発性を有する前記結晶成長促進剤とを接触させて加熱することを特徴とする。
また、請求項4に記載の発明は、請求項3に記載の発明において、前記加熱温度が、前記結晶成長促進剤の揮発温度以上であることを特徴とする。
また、請求項5に記載の発明は、請求項3又は4に記載の発明において、基板上に少なくとも前記カルコゲナイド化合物に転換する第1の原料を付着し、前記基板上に少なくとも前記カルコゲナイド化合物に転換する第2の原料と、該カルコゲナイド化合物を構成する元素を少なくとも1つ含有し、かつ、揮発性を有する前記結晶成長促進剤を付着させて加熱することを特徴とする。
本発明によれば、硫黄、セレンから選択されるカルコゲン元素と、銅、インジウム、ガリウムから選択される金属元素の内のいずれか1種以上の元素を含有するカルコゲナイド化合物の、このカルコゲナイド化合物を構成する元素を少なくとも1つ含有し、かつ、揮発性を有する結晶成長促進剤を用いることで結晶成長を促進し、高結晶性の結晶面の発達した結晶を得ることができる。
以下、本発明の実施の形態について説明する。
本発明者らは、上述した課題を解決するために鋭意検討した結果、硫黄、セレンから選択されるカルコゲン元素と、銅、インジウム、ガリウムから選択される金属元素の内のいずれか1種以上の元素を含有するカルコゲナイド化合物の結晶成長に、このカルコゲナイド化合物を構成する元素を少なくとも1つ含有し、かつ、揮発性を有する結晶成長促進剤が高い効果を示すこと、また、結晶成長促進剤の揮発温度以上に加熱することで、結晶成長の優れたカルコゲナイド化合物を製造できることを見出して本発明に至った。
本発明の結晶成長促進剤は、カルコゲナイド化合物の結晶成長に供される無機材料の結晶成長促進剤である。カルコゲナイド化合物は、硫黄、セレンから選択されるカルコゲン元素と、銅、インジウム、ガリウムから選択される金属元素の内のいずれか1種以上の元素とを含有し、結晶成長促進剤は、カルコゲナイド化合物を構成する元素を少なくとも1つを含有し、かつ、揮発性を有する。
また、結晶成長促進剤が含有するカルコゲナイド化合物を構成する元素が、インジウム、ガリウムの元素の内のいずれか1種以上である。
また、本発明の結晶成長促進剤を用いたカルコゲナイド化合物の製造方法は、カルコゲナイド化合物の結晶成長に供される無機材料の結晶成長促進剤を用いたカルコゲナイド化合物の製造方法である。カルコゲナイド化合物を構成する元素を1種以上の化合物にすべて含むカルコゲナイド化合物原料と、カルコゲナイド化合物を構成する元素を少なくとも1つ含有し、かつ、揮発性を有する前記結晶成長促進剤とを接触させて加熱する。
また、加熱温度が、結晶成長促進剤の揮発温度以上である。
また、基板上に少なくともカルコゲナイド化合物に転換する第1の原料を付着し、基板上に少なくともカルコゲナイド化合物に転換する第2の原料と、このカルコゲナイド化合物を構成する元素を少なくとも1つ含有し、かつ、揮発性を有する結晶成長促進剤を付着させて加熱する。
つまり、本発明の結晶成長促進剤は、硫黄、セレンから選択されるカルコゲン元素と、銅、インジウム、ガリウムから選択される金属元素の内のいずれか1種以上の元素を含有するカルコゲナイド化合物の結晶成長に供される。
そこで、まず、カルコゲナイド化合物について以下に説明する。
本発明において、カルコゲナイド化合物は、硫黄、セレンから選択されるカルコゲン元素と、銅、インジウム、ガリウムから選択される金属元素の内のいずれか1種以上の元素を含有するカルコゲナイド化合物であれば特に限定されないが、例えば、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、亜鉛、カドミウム、鉄、ニッケル、モリブデン、銅、銀、アルミニウム、ガリウム、インジウム、錫、鉛、アンチモン、ビスマスなどの金属の硫化物、セレン化物、テルル化物及び、これらの混晶化合物などが例示できる。
具体的には、MgS、CaS、SrS、ZnS、CdS、FeS、Fe、FeS、NiS、MoS、MoS、CuS、CuS、AgS、AlS、Ga、In、SnS、SnS、PbS、Sb、Biなどの金属硫化物類、MgSe、CaSe、SrSe、ZnSe、CdSe、FeSe、FeSe、FeSe、NiSe、MoSe、MoSe、CuSe、CuSe、AgSe、AlSe、GaSe、InSe、SnSe、SnSe、PbSe、SbSe、BiSeなどの金属セレン化物類、CuTe,CuTe、InTe,GaTeといった銅、インジウム、ガリウムから選択される金属元素を含有する金属テルル化物や、例えば、(Ca(1−x),Sr)S(0<x<1)のように金属元素の一部が置換された混晶化合物類、Zn(S(1−x),Se)(0<x<1)のようにカルコゲン元素の一部が置換された混晶化合物類、CuInS、CuGaS、AgSnS、AgSn、CuInSe、CuGaSe、AgSnSe、AgSnSeなどの三元系カルコゲナイド化合物類、Cu(In(1−x),Ga)S(0<x<1)やCu(In(1−x),Ga)(S(1−y),Se(0<x,y<1)の如くの三元系カルコゲナイド化合物類の一部元素が置換された混晶化合物類、CuZnSnS、CuZnGeS、AgZnSnS、AgFeSnS、CuZnSnSe、CuZnGeSe、AgZnSnSe、AgFeSnSeなどの四元系カルコゲナイド化合物類、(Cu(1−x),Ag)ZnSnS(0<x<1)、CuZnSn(S(1−x),Se(0<x<1)、(Cu(1−x),Ag)ZnSn(S(1−y),Se(0<x,y<1)の如くの四元系カルコゲナイド化合物類の一部元素が置換された混晶化合物類等が例示できる。
なお、蛍光体における賦活剤(発光中心)や、半導体におけるドーパント類などの成分を含有するカルコゲナイド化合物や、Cu含有のp型半導体におけるCuの欠損に代表される組成比が化学量論からずれたカルコゲナイド化合物も本発明のカルコゲナイド化合物に含まれる。
本発明の、結晶成長促進剤は、カルコゲナイド化合物の結晶成長を促進し、結晶性を向上し、結晶面の発達した高品質の結晶を形成する機能を有する。そのため、結晶粒内の結晶性や結晶接合面の接合状態といった結晶品質を求められる、光機能や電子機能を有するカルコゲナイド化合物の結晶成長に供されるとその効果が顕著に現れる。
とりわけ、光電変換素子のpn接合を担う半導体のような電子が流れる電子機能を有するカルコゲナイド化合物に対しては、結晶品質が高くなることで特性が大幅に改善されるため効果的であり、具体的には、CdS、FeS、CuS、CuS、SnS、ZnS、ZnSe、CdSe、CuSe,CuSe、InSe、CuInS、CuGaS、AgSnS、AgSn、CuInSe、CuGaSe、AgSnSe、AgSnSe、CuZnSnS、CuZnGeS、AgZnSnS、AgFeSnS、CuZnSnSe、CuZnGeSe、AgZnSnSe、AgFeSnSeなどのカルコゲナイド化合物やこれらの混晶化合物といった硫黄及び/又はセレンをカルコゲン元素として含有するカルコゲナイド化合物に有効に作用する。
更に、太陽電池に代表される受光素子に用いる場合は、CuS、CuS、CuSe、CuSe、CuInS、CuGaS、CuInSe、CuGaSe、CuZnSnS、CuZnGeS、CuZnSnSe、CuZnGeSe並びにこれらの混晶化合物といったCuを含有するp型半導体に有効に作用する。即ち、銅を含有するカルコゲナイド化合物は、銅とカルコゲン元素の軌道の混成によってp型半導体になりやすく、このような銅を含有するp型半導体では、電子遷移によって発生したキャリアの拡散がn型半導体に比べて遅いため、カルコゲナイド化合物の結晶品質がより重要になるためである。従って、本発明のカルコゲナイド化合物が、銅を金属元素として含有し、かつ、硫黄及び又はセレンをカルコゲン元素として含有するカルコゲナイド化合物である場合、本発明の結晶成長促進剤を用いた結晶成長の効果が、実用上大きな効果をもたらし、好ましい。
とりわけ、太陽電池に代表される受光素子の分野において、高いエネルギー変換効率を実現でき、高い結晶品質が求められる、CuInS、CuGaS、CuInSe、CuGaSe並びにこれらの混晶化合物といったインジウム及び/又はガリウムを含有する化合物の場合に、本発明の結晶成長促進剤は優れた効果を示す。即ち、本発明のカルコゲナイド化合物が、銅に加えて、インジウム及び/又はガリウムから選択される元素を金属元素として含有し、かつ、硫黄及び又はセレンをカルコゲン元素として含有するカルコゲナイド化合物である場合、本発明の結晶成長促進剤を用いた結晶成長の効果が、実用上、更に大きくなるので、より好ましい。
また、上述のCuInS、CuGaS、CuInSe、CuGaSe並びにこれらの混晶化合物は、同類のカルコパイライト型の結晶構造を有し、本発明の結晶成長促進剤による結晶成長の促進が似通った効果を示しやすい。
このような、インジウム及び又はガリウムを含有するカルコゲナイド化合物に対しては、後述のように、インジウムやガリウムを含有する結晶成長促進剤が好ましく用いられるが、インジウムやガリウムを含有する結晶成長促進剤には、低温での揮発性を有する化合物が多くあるために、結晶成長の温度に代表される製造条件の選択肢が増える。そのため、本発明の結晶成長促進剤との組合せとして、インジウム及びガリウムを含有するカルコゲナイド化合物は好ましく用いられる。
次に、本発明の結晶成長促進剤について以下に説明する。
本発明の結晶成長促進剤は、上述したように、カルコゲナイド化合物を構成する元素を少なくとも1つ含有し、かつ、揮発性を有する無機化合物であることが必要である。
本発明において、カルコゲナイド化合物を構成する元素を少なくとも1つ含有するとは、例えば、カルコゲナイド化合物が、金属硫化物の場合は、金属硫化物の金属や硫黄を含有する化合物であり、カルコゲナイド化合物が、前述の如くの混晶化合物の場合は、その化合物を構成する金属元素やカルコゲン元素を含有する化合物である。
そのような金属元素を含有する化合物とは、その金属単体、その金属の合金などの金属類、その金属のフッ化物、塩化物、臭化物、ヨウ化物などの金属ハロゲン化物、酸化物、硫化物、セレン化物、テルル化物などの、16族元素との化合物類、窒化物、リン化物、砒化物、アンチモン化物などの15族元素との化合物類、炭化物、珪化物などの14族元素との化合物類、硝酸塩、亜硝酸塩、硫酸塩、亜硫酸塩、チオ硫酸塩、リン酸塩、炭酸塩、チオシアン酸塩、シアン化物などの金属塩類などが例示できる。
また、カルコゲン元素を含有する化合物とは、硫黄、セレン、テルルから選択される元素を1種以上含有する金属硫化物、金属セレン化物、金属テルル化物やそれらの混晶化合物類や、金属酸硫化物、金属酸セレン化物といった、硫化物やセレン化物の一部の元素が、他の元素に置き換わった化合物類である。
このような、本発明のカルコゲナイド化合物を構成する元素を少なくとも1つ含有する化合物を結晶成長促進剤として用いることにより、本発明のカルコゲナイド化合物やカルコゲナイド化合物原料との親和性が高まり、結晶成長がより促進される。
なお、本発明の結晶成長促進剤は、本発明のカルコゲナイド化合物と同一の化合物であったり、本発明のカルコゲナイド化合物原料であったりすることも可能であり、このような場合は、カルコゲナイド化合物と結晶成長促進剤の親和性が高いので結晶成長がより高まる利点を有する。
一方、本発明の結晶成長促進剤は、後述するように、揮発性を有するため、結晶成長促進剤がカルコゲナイド化合物やカルコゲナイド化合物原料と同一の場合には、カルコゲナイド化合物の収率が下がったり、反応制御が困難になったりして好ましくない場合がある。このような場合は、結晶成長促進剤として混晶化合物を用いるなどして、融解特性や揮発性を調整して使用することも可能である。
本発明において、揮発性を有するとは、昇華又は沸騰によって揮発することを言う。
本発明の結晶成長促進剤が、昇華や沸騰による揮発性を有することによって、本発明のカルコゲナイド化合物の結晶成長が促進される。
なお、昇華点や沸点は、多くの場合、化合物の性状として知られているが、熱重量測定法などによって実測した値を用いることも可能である。とりわけ、後述のように本発明の結晶成長促進剤は他の化合物と混合して使用することが可能であり、その結果、揮発温度が単体の場合と異なる温度になることがあり、このような場合は、熱重量測定法によって求めた揮発温度を用いる必要がある。
また、揮発温度(昇華点や沸点)は、圧力によって変化する場合があり、本発明のカルコゲナイドの結晶成長を行う圧力条件で熱重量測定を行って揮発温度を測定することが望ましいが、装置の制約などによって困難な場合がある。そのような場合は、実際に本発明のカルコゲナイドの結晶成長を行った際の、総重量の変化によってその結晶成長が揮発温度以上で行われたことを確認することも可能である。また、揮発成分の分析が可能な場合は、揮発成分の分析を行うことによって、結晶成長促進剤が揮発していることを確認することも可能である。
本発明の揮発性を有する結晶成長促進剤の揮発温度は特に限定されず、カルコゲナイド化合物の組成、構造、使用目的に応じた粒子サイズ、製造条件などによって適宜選択されるが、常温において揮発性を有すると使用環境に制約が発生して生産性が劣る場合があるので、好ましくは50℃以上であり、より好ましくは100℃以上である。また、一般に低温下での化合物の結晶成長は遅い傾向があり、結晶性が不足する場合が多いので、後述するように、より高い温度でカルコゲナイド化合物を製造する場合が多い。そのため、更に好ましい、揮発温度は、200℃以上である。揮発温度の上限に関しても、特に制約は無いが、1700℃より高温になると、使用可能な装置に制約が発生して生産性が劣る場合があるので、好ましくは1700℃以下、より好ましくは1500℃以下であり、更に好ましくは1200℃以下、最も好ましくは1000℃以下である。また、後述の好ましい製造方法である基板上で本発明の結晶成長促進剤を使用する場合や、そのような製造形態を意図して結晶成長促進剤を選択する場合は、基板の耐熱温度が上限になり、例えば石英ガラスの基板を用いる場合は、1000℃以下が好ましく、ソーダライムガラスの基板を用いる場合は600℃以下が好ましく、ポリイミド基板を用いる場合は、450℃以下が好ましい。
本発明の結晶成長促進剤は、上述したように、本発明のカルコゲナイド化合物を構成する元素を少なくとも1つ含有し、かつ、揮発性を有する無機化合物であるが、これらを組み合わせたり、他の化合物と混合して用いることも可能である。
このような本発明の結晶成長促進剤と混合して用いられる化合物としては、本発明の結晶成長促進剤と共晶点を有する化合物が好ましい。即ち、結晶成長促進剤と共晶点を有する化合物を使用することによって、低い温度で結晶成長促進剤と、結晶成長促進剤と共晶点を有する化合物の混合物は融解して融液状態となるため、物質の拡散等が促進され、カルコゲナイド化合物の結晶成長が促進されるためである。とりわけ、本発明のカルコゲナイド化合物が複数の化合物から製造される場合に、この融液状態での反応促進が顕著になるため、本発明の結晶成長促進剤とともに、結晶成長促進剤と共晶点を有する化合物を組み合わせて好ましく用いられる。
本発明の結晶成長促進剤とともに、共晶点を有する化合物を用いる場合の融解温度(融点)は特に限定されず、結晶成長を促進したいカルコゲナイド化合物やカルコゲナイド化合物原料の種類に応じて適宜選択できるが、常温において融解すると秤量が困難になるなど生産性が劣る場合があるので、好ましくは40℃以上であり、より好ましくは80℃以上である。上限に関しては特に制約されないが、本発明の結晶成長促進剤の揮発温度以下でないと融液状態による反応促進の効果が劣るので、結晶成長促進剤の揮発温度以下が好ましい。
本発明の結晶成長促進剤と、共晶点を有する化合物の混合比は特に限定されず、目的に応じて適宜選択できる。即ち、共晶点を有する2種以上の化合物を混合した場合、それらの化合物の組合せによって特定の比率で共晶点が得られ、融解温度が最も下がるが、このような組合せの材料では、混合比に応じた液相線があるのが一般的であり、共晶点からずれた混合比でも融解温度の低下が観測されるためである。
次に、本発明のカルコゲナイド化合物と結晶成長促進剤の関係について、本発明において好ましいカルコゲナイド化合物である、インジウム及び/又はガリウムを含有する化合物である場合の例として、Cu(In(1−x),Ga)(S(1−y),Se(0<x,y<1)の場合を用いて説明する。
本発明のカルコゲナイド化合物と結晶成長促進剤は、上述したように、少なくとも1つの同一の元素を有している。従って、カルコゲナイド化合物がCu(In(1−x),Ga)(S(1−y),Se(0<x,y<1)の場合は、本発明においては、結晶成長促進剤は、銅、インジウム、ガリウム、硫黄、セレンから選択される1つの元素を少なくとも含有することが必要である。具体的には、銅、インジウム、ガリウム、硫黄、セレンの単体、臭化銅、ヨウ化銅などのハロゲン化銅、塩化インジウム、臭化インジウム、ヨウ化インジウムなどのハロゲン化インジウム、塩化ガリウム、臭化ガリウム、ヨウ化ガリウムなどのハロゲン化ガリウム、硫化亜鉛や硫化モリブデンといった揮発性を有する化合物が結晶成長促進剤として例示できる。
これらの中で、インジウム及び/又はガリウムを含有する結晶成長促進剤は、Cu(In(1−x),Ga)(S(1−y),Se(0<x,y<1)に代表されるインジウム及び/又はガリウムを含有する化合物との親和性が高く、結晶成長の促進効果が高いため好ましく、更に、上述したような好ましい揮発温度の観点から、塩化インジウム、臭化インジウム、ヨウ化インジウムなどのハロゲン化インジウム、塩化ガリウム、臭化ガリウム、ヨウ化ガリウムなどのハロゲン化ガリウムのような、インジウム及び/又はガリウムを含有するハロゲン化物は好ましい。
このように、本発明の結晶成長促進剤が含有する本発明のカルコゲナイド化合物を構成する元素が、インジウム、ガリウムの元素の内、いずれか1種以上である場合が、本発明の結晶成長促進剤が効果的に機能し、更に、本発明のカルコゲナイド化合物が優れた機能を発揮するので好ましい。
また、上述したように、本発明の結晶成長促進剤は、共晶点を有する他の化合物と組み合わせて好ましく用いられる。本発明の結晶成長促進剤と共晶点を有する化合物は、共晶点があればその組合せは特に限定されないが、共晶点を有する化合物類は、陰イオンを共有する場合に共晶温度の低下が観測されやすく、塩化インジウムや塩化ガリウムに対しては、塩化物類、臭化インジウムや臭化ガリウムに対しては臭化物類、ヨウ化インジウムやヨウ化ガリウムに対してはヨウ化物類が好ましく用いられる。
具体的には、塩化インジウムに対しては、塩化ナトリウム、塩化燐、塩化銀、塩化カリウム、塩化バリウム、塩化錫などの各種塩化物、臭化インジウムに対しては、臭化カリウム、臭化リチウム、臭化アンモニウム、臭化アルミニウムなどの各種臭化物、ヨウ化インジウムに対しては、ヨウ化銀、ヨウ化セシウム、ヨウ化カリウム、ヨウ化アルミニウム、ヨウ化アンチモン、ヨウ化ビスマスなどのヨウ化物類が例示でき、塩化ガリウムに対しては、塩化リチウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化セシウム、塩化アンチモンなどの各種塩化物類、臭化ガリウムに対しては、臭化銅、臭化ナトリウム、臭化ビスマス、臭化アンチモンなどの各種臭化物類、ヨウ化ガリウムに対しては、ヨウ化銀、ヨウ化セシウム、ヨウ化カリウム、ヨウ化ナトリウム、ヨウ化亜鉛、ヨウ化アンチモンなどの各種ヨウ化物類が例示できる。
これらの中で、カルコゲナイド化合物がCu(In(1−x),Ga)(S(1−y),Se(0<x,y<1)の場合は、第1族元素であるアルカリ金属や第5族元素がドーパントして機能するため、リチウムのハロゲン化物、ナトリウムのハロゲン化物、カリウムのハロゲン化物、ルビジウムのハロゲン化物、セシウムのハロゲン化物といったアルカリ金属ハロゲン化物類、アンチモンのハロゲン化物、ビスマスのハロゲン化物といった、第15族元素のハロゲン化物は好ましく用いられる。とりわけ、アルカリ金属ハロゲン化物は、取り扱いが容易なために工業生産性に優れ、本発明の結晶成長促進剤と共晶点を有する化合物として好ましく選択される。
次に、本発明の結晶成長促進剤を用いた、カルコゲナイド化合物の製造方法について説明する。
本発明の結晶成長促進剤は、カルコゲナイド化合物の結晶成長に有効なので、カルコゲナイド化合物、或いは、その製造に必要な原料、即ち1種以上の化合物に、カルコゲナイド化合物を構成する元素をすべて含むカルコゲナイド化合物原料と結晶成長促進剤を接触させて加熱することによって、カルコゲナイド化合物の結晶成長を促進する。
加熱温度は特に限定されず、本発明の結晶成長促進剤の揮発温度以下であっても、本発明の結晶成長促進剤は、カルコゲナイド化合物との共通する元素を有し、親和性が高いので結晶成長促進効果を有するが、好ましくは、結晶成長促進剤の揮発温度以上で加熱されることが好ましい。上限については特に限定されないが、本発明のカルコゲナイド化合物の分解温度以下の温度が好ましい。
本発明においてカルコゲナイド化合物原料と結晶成長促進剤の比率は特に限定されないが、カルコゲナイド化合物のモル分率が小さいと結晶成長に供される結晶成長促進剤の廃棄物が増えたり、結晶成長促進剤の洗浄が煩雑になるなどして生産性が低下する場合があるので、5%以上、より好ましくは10%以上、さらに好ましくは20%以上である。上限に関しては、結晶成長促進剤の割合が小さいと、結晶成長促進効果が小さくなる場合があるため、カルコゲナイド化合物のモル分率は、好ましくは98%以下、より好ましくは95%以下、更に好ましくは90%以下である。
なお、カルコゲナイド化合物原料が2種以上の化合物で構成される場合、即ちカルコゲナイド化合物をその原料から製造する場合は、製造しようとするカルコゲナイド化合物のモル分率を用いて同様に計算し、カルコゲナイド化合物と結晶成長促進剤の比率を求める。
本発明において、結晶成長促進剤とカルコゲナイド化合物原料の混合法は、特に限定されず、結晶成長促進剤とカルコゲナイド化合物原料が接触して存在すればよい。具体的には、坩堝に代表される1つの容器の中に一緒に存在させたり、あるいは、基板上に一緒に存在させたりする方法が例示できる。
坩堝(るつぼ;crucible、melting pot)に代表される容器中で接触させる場合は、結晶成長促進剤とカルコゲナイド化合物原料を重ねて投入してもよいし、予め混合して投入してもよいが、予め混合して投入して接触させる方が、結晶成長促進剤とカルコゲナイド化合物原料の接触面積が増大し、結晶成長促進効果が向上するので好ましい。予め混合する方法は特に限定されないが、乳鉢に代表される粉砕しながら混合する方法が、同様の理由で好ましい。また、混合前に、ボールミル、ビーズミル、ジェットミルなどの粉砕機で予め結晶成長促進剤やカルコゲナイド化合物原料を粉砕しておくと、接触面積が増大し、結晶成長促進効果が向上するので好ましい。
本発明の結晶成長促進剤は、本発明のカルコゲナイド化合物をその原料から製造する場合、即ち、本発明の結晶成長促進剤と2種以上の化合物に、本発明のカルコゲナイド化合物を構成する元素をすべて含むカルコゲナイド化合物原料を接触させて本発明のカルコゲナイド化合物を製造する場合にも好ましく用いられる。とりわけ、本発明の結晶成長促進剤が、融解後に揮発する場合は、融解状態で2種以上のカルコゲナイド化合物の原料間の反応が進行し好ましい。更に、先述のように共晶点を有する化合物と組み合わせて用いる場合、融解状態が低温で得られるので、低温領域から反応が進行するため好ましい。
本発明のカルコゲナイド化合物の製造に供される2種以上の化合物に、本発明のカルコゲナイド化合物を構成する元素をすべて含むカルコゲナイド化合物原料としては、特に限定されず、複数種の材料が反応して、目的の化合物が形成されればよい。具体的には、カルコゲナイド化合物を複数種反応させる方法、少なくとも1種のカルコゲナイド化合物と、金属元素を含有する化合物のところで例示した、金属、金属塩類等に硫黄及び/又はセレンから選択されるカルコゲン元素を加えて反応させる方法、2種の上記金属、金属塩類等に硫黄及び/又はセレンから選択されるカルコゲン元素を加えて反応させる方法などが例示できる。また、硫黄及び/又はセレンの供給方法は、それぞれの単体を用いてもよいし、硫化水素やセレン化水素といったガス状の物質を用いても構わないが、それぞれの単体を用いる方が、簡便で生産性に優れるので好ましい。
このような反応は、上述したように、容器の中で行ってもよいし、基板上で行ってもよいが、本発明のカルコゲナイド化合物の薄膜を形成する場合は、基板上で行うのが好ましい。即ち、基板上で反応を行うことによって、容易に緻密な膜を形成できるためである。また、基板上で反応をする場合、基板の耐熱温度が加熱の上限になるが、本発明の結晶成長促進剤を用いてカルコゲナイド化合物を製造する場合、結晶成長促進剤を用いずに加熱する場合に比べて、低温で結晶成長が進むので、結晶性や粒子サイズの優れたカルコゲナイド化合物膜が形成されるためである。
このように、基板上で反応を進行させる場合、本発明のカルコゲナイド化合物原料と本発明の結晶成長促進剤を混合して基板上に付着させて反応させてもよいし、積層して付着させて反応させてもよい。また、本発明のカルコゲナイド化合物原料の1つの成分を予め基板上に付着し、その表面に少なくとも他の1つのカルコゲナイド化合物の原料と結晶成長促進剤を付着させて反応させることも可能であり、均一な膜を製造する場合には、この方法が好ましく用いられる。
また、基板上に本発明のカルコゲナイド化合物や結晶成長促進剤を付着させる方法は特に限定されず、バーコーターやブレードコーターといったコーティング装置を用いて塗布する方法や、スパッタリング法や真空蒸着法といった真空成膜法を用いて成膜する方法が例示でき、これらを組み合わせて使用することも可能である。
本発明において、本発明のカルコゲナイド化合物を基板上で製造する際に用いられる基板は特に限定されず、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリイミドなどの各種樹脂基板、ソーダライムガラス、無アルカリガラス、石英ガラスなどの各種ガラス基板、酸化亜鉛、サファイア、ジルコニウムなどの各種セラミックス基板、シリコン、ガリウム砒素などの各種半導体基板や、これらの基板上に、酸化シリコン、窒化シリコン、酸化アルミニウム、酸化ハフニウムなどの絶縁層を設置した基板や、金、銀、銅、白金、アルミニウム、鉄、チタン、モリブデン、タングステン、タンタル、ニオブ、ニッケルなどの各種金属層を設置した基板、アルミニウムをドープした酸化亜鉛(AZO)、ガリウムをドープした酸化亜鉛(GZO)、インジウムとガリウムをドープした酸化亜鉛(IGZO)、錫をドープした酸化インジウム(ITO)、フッ素をドープした酸化錫(FTO)、アンチモンをドープした酸化錫(ATO)、燐をドープした酸化錫(PTO)などの透明導電層を設置した基板など、本発明のカルコゲナイド化合物膜の用途に応じて適宜選択できる。
本発明のカルコゲナイド化合物を太陽電池に代表される受発光素子の光吸収/発光層として使用するときは、金属層や透明導電層を設置して導電性を付与した、各種樹脂基板や各種ガラス基板が好適に用いられる。
また、このような場合は、例えば、極性の異なる半導体層や、バッファ層、更には、基板と対極を為す電極層などを設置して、デバイス化して用いることも可能である。
そのような場合は、本発明の基板と対極を為す電極層のいずれか片方が光を透過する透明導電層であることが好ましい。また、極性の異なる半導体層やバッファ層は、CdS、ZnS、In、ZnO、(Zn,Mg(1−x))Oといった各種材料を、化学バス堆積法に代表される溶液法や、スパッタリング法、真空蒸着法といった真空成膜法を用いて設置できる。
以上のように、本発明の結晶成長促進剤を用いれば、硫黄及び/又はセレンを含有するカルコゲナイド化合物の結晶成長が促進される。その結果、高い結晶性を有したり、粒子サイズが大きな結晶が得られる。また、本発明の結晶成長促進剤を用いれば、結晶面の明確な高結晶性の粒子が得られることも特徴であり、電子物性を要求される、触媒や半導体の分野で優れた性能を発揮する。
また、本発明の結晶成長促進剤を用いれば、低温で結晶成長が促進されるので、本発明の好ましい製造方法である、基板上でカルコゲナイド化合物を製造する際には、樹脂基板やソーダライムガラス基板のような耐熱性が低い基板上でも優れたカルコゲナイド化合物の結晶を得ることができる。
以下、本発明を実施例、比較例を用いて具体的に説明するが、本発明はこれらの技術的範囲に限定されない。
本発明で用いられる測定法は、以下のとおりである。
<結晶構造>
粉末測定時は粉末を粉末試料ホルダーに詰めて固定し、基板測定時は、基板を粘土でホルダーに固定し、株式会社リガク製X線回折装置MiniFlexIIを用い、ターゲットとしてCuを用い、励起電圧30kV、励起電流15mAとし、操作軸は2θ/θとして測定した。検出器には、株式会社リガク製高速一次元検出器D/teX Ultraを用いた。
<結晶性>
結晶構造の測定と同様の測定を行い、CuInSの112面のピークの半値幅を評価した。
<粒子サイズ>
粉末をホルダーに導電性両面テープで固定し、走査型電子顕微鏡を用いて、電子顕微鏡写真を撮影し、10個の粒子のサイズを測定して平均化し平均粒径として求めた。粒子の形状が球状(写真では円状)でない場合は、最も長い部位と最も短い部位の平均をその粒子の粒径とした。
<融解温度、揮発温度の測定>
株式会社リガク製示差熱天秤Thermo plus EVO TG8120型を用い、白金製の容器に試料を投入して、高純度窒素雰囲気下、10℃/分の昇温速度で600℃まで加熱して測定した。
カルコゲナイド化合物の原料として、CuSを0.0992gとInを0.2032gを秤量し、結晶成長促進剤としてInClを0.5518g、InClと共晶点を有する化合物としてNaClを0.1458g秤量し、乳鉢を用いて15分間混合した。得られた混合粉を、白金製の坩堝に入れて、アルミナ製の横型管状炉内で、窒素雰囲気下、内温550℃で1時間焼成し、黒色の粉末Aを得た。粉末Aを水洗し、X回折装置を用いて構造解析を行ったところ、粉末AはCuInSであり、その112面に起因する回折線の半値幅は0.118degあることが確認された。
また、走査型電子顕微鏡を用いて粉末Aを観察したところ、粉末Aは、結晶面が明確に発達した、平均9.6ミクロンの結晶粒子であった。別に、この組成比で混合した結晶成長促進剤と共晶点を有する化合物の混合物を、熱重量・示唆熱分析装置を用いて、窒素雰囲気下で評価したところ、融解温度(融点)が272℃、結晶成長促進剤の揮発温度が510℃であった。
焼成温度を440℃に変更した以外は実施例1と同様にして、黒色の粉末Bを得た。粉末Bを実施例1と同様にして評価したところ、粉末BはCuInSであり、結晶面の発達が観測される平均1.8ミクロンの結晶粒子であった。また、CuInSの112面に起因する回折線の半値幅は0.135degであった。
カルコゲナイド化合物の原料として、CuSを0.0116gとInを0.0362gを秤量し、結晶成長促進剤としてInIを0.6116g、InIと共晶点を有する化合物としてKIを0.2365g秤量し、乳鉢を用いて15分間混合し、内温400℃で10時間焼成した以外は実施例1と同様にして、黒色の粉末Cを得た。粉末Cを実施例1と同様にして評価したところ、粉末CはCuInSであり、結晶面の発達が観測される平均0.45ミクロンの結晶粒子であった。また、CuInSの112面に起因する回折線の半値幅は0.246degであった。別に、この組成比で混合した結晶成長促進剤と共晶点を有する化合物の混合物を、実施例1と同様にして評価したところ、融解温度(融点)が100℃、結晶成長促進剤の揮発温度が336℃であった。
ソーダライムガラス上にMoを1ミクロン成膜して基板とした。この基板上に、別に作製したCuSのペレットを蒸着源として、抵抗加熱法蒸着で、CuSを0.7ミクロンの厚みになるように蒸着した。このCuSを蒸着した基板を、カルコゲナイド化合物の原料として、CuSを0.2631gとInを0.5382g、結晶成長促進剤としてInClを0.1567g、InClと共晶点を有する化合物としてNaClを0.0414g秤量して乳鉢で混合した粉と共に白金製の坩堝に入れ、実施例1と同様にして焼成し、黒色の層Dが付着した基板を得た。この黒色の層を実施例1と同様にして評価したところ、この黒色層はCuInSであり、結晶面が明確な平均0.80ミクロンの結晶粒子が密に並んだ層であった。また、CuInSの112面に起因する回折線の半値幅は0.115degであった。
[比較例1]
結晶成長促進剤と結晶成長促進剤と共晶点を有する化合物とを添加しなかった以外は、実施例1と同様にして黒色の粉末Zを得た。粉末Zを実施例1と同様にして評価したところ、粉末ZはCuInSであり、平均0.63ミクロンの粒子であった。また、粉末Zでは結晶面が観察されなかった。また、CuInSの112面に起因する回折線の半値幅は0.143degであった。
[比較例2]
カルコゲナイド化合物の原料として、CuSを0.1366gとInを0.2797gを秤量し、結晶成長促進剤として加えた、InClとNaClに代えて、融剤として融点308℃のNaNOを0.5837g秤量し、乳鉢を用いて15分間混合した以外は実施例1と同様にして、灰色の粉末Yを得た。粉末Yを実施例1と同様にして評価したところ、粉末YはNaInOおよびInであり、CuInSは生成しなかった。また、粉末は結晶面の発達が乏しい平均0.32ミクロンの結晶粒子であった。
[比較例3]
カルコゲナイド化合物の原料として、CuSを0.2671gとInを0.5469gを秤量し、融剤としてLiClを0.0783gとNaClを0.0177gとKClを0.0901g秤量し、乳鉢を用いて15分間混合して混合粉を作製し、焼成温度を内温440℃とした以外は実施例1と同様にして、黒色の粉末Xを得た。粉末Xを実施例1と同様にして評価したところ、粉末XはCuInSであり、平均0.49ミクロンの粒子であった。また,粉末Xでは結晶面が観察されなかった。また、CuInSの112面に起因する回折線の半値幅は0.145degであった。別に、この組成比で混合した融剤を、熱重量・示唆熱分析装置を用いて、窒素雰囲気下で評価したところ、融解温度(融点)が355℃であったが、揮発性は観測されなかった。
[比較例4]
結晶成長促進剤と結晶成長促進剤と共晶点を有する化合物とを添加しなかった以外は実施例4と同様にして,赤褐色の粉末Wを得た。粉末Wを実施例1と同様にして評価したところ,粉末Wは部分的にCuInSに転換していたが、原料のInが多く残存し、CuInSの生成反応が十分に進行していないことが分かった。粉末Wは、平均0.49ミクロンの粒子であり、結晶面が観察されなかった。また、部分的に生成したCuInSの112面に起因する回折線の半値幅は0.300degであった。
なお、以下の表1に、各実施例と各比較例とを表にしてまとめてある。
Figure 2015107899
本発明の結晶成長促進剤は、カルコゲナイド化合物の結晶成長に有効であり、粒子サイズや結晶性を向上できる。

Claims (5)

  1. カルコゲナイド化合物の結晶成長に供される無機材料の結晶成長促進剤であって、
    前記カルコゲナイド化合物は、硫黄、セレンから選択されるカルコゲン元素と、銅、インジウム、ガリウムから選択される金属元素の内のいずれか1種以上の元素とを含有し、
    前記結晶成長促進剤は、前記カルコゲナイド化合物を構成する元素を少なくとも1つを含有し、かつ、揮発性を有することを特徴とする結晶成長促進剤。
  2. 前記結晶成長促進剤が含有する前記カルコゲナイド化合物を構成する元素が、インジウム、ガリウムの元素の内のいずれか1種以上であることを特徴とする請求項1に記載の結晶成長促進剤。
  3. カルコゲナイド化合物の結晶成長に供される無機材料の結晶成長促進剤を用いたカルコゲナイド化合物の製造方法であって、
    前記カルコゲナイド化合物を構成する元素を1種以上の化合物にすべて含むカルコゲナイド化合物原料と、前記カルコゲナイド化合物を構成する元素を少なくとも1つ含有し、かつ、揮発性を有する前記結晶成長促進剤とを接触させて加熱することを特徴とするカルコゲナイド化合物の製造方法。
  4. 前記加熱温度が、前記結晶成長促進剤の揮発温度以上であることを特徴とする請求項3に記載のカルコゲナイド化合物の製造方法。
  5. 基板上に少なくとも前記カルコゲナイド化合物に転換する第1の原料を付着し、前記基板上に少なくとも前記カルコゲナイド化合物に転換する第2の原料と、該カルコゲナイド化合物を構成する元素を少なくとも1つ含有し、かつ、揮発性を有する前記結晶成長促進剤を付着させて加熱することを特徴とする請求項3又は4に記載のカルコゲナイド化合物の製造方法。
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