JP2015201523A - 光電変換素子及びその製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】高いアルカリ金属原子ドーピング濃度でエネルギー変換効率や生産性に優れた光電変換素子及びその製造方法を提供すること。
【解決手段】本発明の光電変換素子は、導電性の第1の電極層1と、この第1の電極層1上に設けられ、硫黄及び/又はセレンから選択されるカルコゲン元素を含有する金属カルコゲナイド半導体を含む光吸収層2と、この光吸収層2上に設けられ、この光吸収層2と異なる極性の半導体を含むバッファ層3と、このバッファ層3上に設けられた第2の電極層4を備えている光電変換素子である。光吸収層2中のアルカリ金属原子の濃度が、4.0×1020atoms/cm以上、5.0×1021atoms/cm以下である。
【選択図】図1

Description

本発明は、光電変換素子及びその製造方法に関し、より詳細には、高いアルカリ金属原子ドーピング濃度でエネルギー変換効率や生産性に優れた光電変換素子及びその製造方法に関する。
近年、環境問題や資源問題を解決するため光エネルギーと電気エネルギーの変換を行う光電変換素子、とりわけ太陽電池の開発が盛んに行われている。太陽電池の分野では、従来、結晶性のシリコンを光吸収性の半導体として用いる手法が主流であったが、シリコンは光吸収特性に劣るため、膜厚を厚くすることが必要である。そのため、光吸収特性に優れた、CIGS(銅−インジウム、ガリウム−硫黄、セレン)系やCZTS(銅−亜鉛−錫−硫黄、セレン)系といった金属カルコゲナイド半導体を用いた太陽電池の開発が急速に進められている。
とりわけ、CIGS系の光吸収層を用いる場合に、ナトリウムに代表されるアルカリ金属を光吸収層にドーピングすることによって、エネルギー変換効率が向上することが知られている。例えば、非特許文献1には、ナトリウムが、典型例として0.1at%程度(即ち、概ね、5.0×1019程度)が基板として使用されるソーダライムガラスから供給されることが示され、更に、金属基板を用い、真空蒸着法を用いて、その4倍程度(即ち、2.0×1020程度)までフッ化ナトリウムを用いてドーピングした例が示されている。しかしながら、エネルギー変換効率の向上を実現するには至っていない。
また、例えば、特許文献1には、ソーダライムガラスからのナトリウムの拡散を適度に抑制する技術を用いて、性能向上を実現する技術が開示されている。
このように、ナトリウムの光吸収層へのドーピング濃度は、ソーダライムガラスからの拡散量より少ない領域に好適範囲が存在する。
ところで、このような化合物半導体薄膜型の光電変換素子やそれからなる太陽電池の光吸収層は、金属薄膜をスパッタリング法で成膜し、それに続いて硫化水素やセレン化水素の雰囲気で焼成されて製造されたり、構成金属元素を加熱基板上の同時に蒸着する方法で製造されたりするのが一般的であるが、生産性の向上などを目的として、溶液を塗布して光吸収層を作製する方法が種々提案されている(例えば、非特許文献2参照)。
このような溶液を塗布する方法では、結晶粒子の成長を実現することが重要であり、特許文献2には、予め製造した金属セレン化物の粒子を混合して基材上に塗布し、水素雰囲気で焼成した後改めてセレン含有溶液を塗布して水素雰囲気で焼成することによって結晶粒子の成長を促進する技術が開示されているが、工程が煩雑な上に粒子の成長が十分ではない。また、特許文献3には同様に予め製造したナノ粒子を基材上に塗布し、Se雰囲気で焼成する技術が開示されているが、柱状の結晶が得られ、高いエネルギー変換効率が実現されていない。
塗布法を用いて高いエネルギー変換効率を実現した例としては、非特許文献3にヒドラジンを溶媒として、金属セレン化物などの原料を用い、スピンコートを繰り返して光吸収層を製造する方法が開示されているが、ヒドラジンという爆発性を有し、かつ、熱分解によってホスゲンなどの危険性ガスを生じる、製造工程において安全対策が必要になり生産性が劣るという欠点を有していた。そのため、比較的安全な溶媒を用いる塗布法が検討され、非特許文献4には、エタノール等を溶媒として塗布し、セレン化する方法が開示されているが、硫化物より高性能が実現されやすいセレン化物を用いているにもかかわらず、ナトリウムを積極的にドーピングしていないためエネルギー変換効率が十分ではなく、また、塗布液の調製に数日間かかるため生産性が劣るという問題を有していた。このような状況の中、水を溶媒として加熱基板上にスプレー塗布し硫化する方法が非特許文献5に開示されているが、同様にナトリウムを積極的にドーピングしていないためエネルギー変換効率が不十分であった。
また、特許文献4には、n型とp型の同時ドーピングによってCuInSのキャリアを制御する技術が開示されているが、ナトリウムの濃度を制御するには至っていない。
特開2003−318424号公報 特開2010−129648号公報 特表2012−515708号公報 特開平11−060399号公報
Journal of Applied Physics,110,2011,124513 Europian Journal of Inorganic Chemistry,2010,17−28 Progress in Photovoltaics:Research and Applications,2013,21,82−87 Progress in Photovoltaics:Research and Applications,2012,20,526−533 Catalysis Science and Technology,2013,3,1849−1854
しかしながら、上述したように、光吸収層として金属カルコゲナイド半導体を用いる光電変換素子にナトリウムに代表されるアルカリ金属原子をドーピングする技術は知られているものの、本発明のような高濃度でアルカリ金属原子をドーピングする技術は何ら開示されていない。また、水溶性アルカリ金属塩をアルカリ金属原子の供給源として、金属カルコゲナイド半導体原料とともに水溶液として加熱された前記第1の電極層上に噴霧して光電変換素子を作製する技術は、何ら開示されていない。
本発明、このような問題に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、高いアルカリ金属原子ドーピング濃度でエネルギー変換効率や生産性に優れた光電変換素子及びその製造方法を提供することである。
本発明は、このような目的を達成するためになされたもので、請求項1に記載の発明は、導電性の第1の電極層(1)と、該第1の電極層(1)上に設けられ、硫黄及び/又はセレンから選択されるカルコゲン元素を含有する金属カルコゲナイド半導体を含む光吸収層(2)と、該光吸収層(2)上に設けられ、該光吸収層(2)と異なる極性の半導体を含むバッファ層(3)と、該バッファ層(3)上に設けられた第2の電極層(4)を備えている光電変換素子であって、前記光吸収層(2)中のアルカリ金属原子の濃度が、4.0×1020atoms/cm以上、5.0×1021atoms/cm以下であることを特徴とする。
また、請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、前記金属カルコゲナイド半導体が、銅を含有することを特徴とする。
また、請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の発明において、前記金属カルコゲナイド半導体が、インジウム及び/又はガリウムを含有することを特徴とする。
また、請求項4に記載の発明は、請求項1,2又は3に記載の発明において、前記光吸収層(2)が、前記金属カルコゲナイド半導体を構成する金属を含有する1種以上の水溶性金属塩と、硫黄及び/又はセレンから選択されるカルコゲン元素を含有する1種以上の水溶性カルコゲン含有有機化合物とを含有する金属カルコゲナイド半導体原料と、水溶性アルカリ金属塩とを含有する水溶液を、加熱された前記第1の電極層(1)上に噴霧して形成されていることを特徴とする。
また、請求項5に記載の発明は、請求項1乃至4のいずれかに記載の発明において、前記光吸収層(2)が、前記金属カルコゲナイド半導体を構成する金属を含有する1種以上の水溶性金属塩と、硫黄及び/又はセレンから選択されるカルコゲン元素を含有する1種以上の水溶性カルコゲン含有有機化合物と、水溶性アルカリ金属塩とを含有する金属カルコゲナイド半導体原料を含有する水溶液を、加熱された前記第1の電極層(1)上に複数回噴霧した後、硫黄及び/又はセレンから選択されるカルコゲン元素を含み、かつ、酸素分圧1Pa以下の気体雰囲気で焼成して形成されていることを特徴とする。
また、請求項6に記載の発明は、請求項1乃至5のいずれかに記載の発明において、前記第1及び第2の電極層(1,4)のいずれか一方は、前記光吸収層(2)に光を導入するために透光性であることを特徴とする。
また、請求項7に記載の発明は、請求項1乃至6のいずれかに記載の発明において、前記光吸収層(2)と前記バッファ層(3)の界面において、前記光吸収層(2)に20nm以上400nm以下の凹凸状の粗面が形成されていることを特徴とする。
また、請求項8に記載の発明は、導電性の第1の電極層(1)上に金属カルコゲナイド半導体を含み、前記第1の電極層(1)を加熱し、該第1の電極層(1)上に、前記金属カルコゲナイド半導体を構成する金属を含有する1種以上の水溶性金属塩と、硫黄及び/又はセレンから選択されるカルコゲン元素を含有する1種以上の水溶性カルコゲン含有有機化合物と、水溶性アルカリ金属塩とを含有する金属カルコゲナイド半導体原料を含有する水溶液を噴霧して前記光吸収層(2)の前駆体を形成する第1の工程と、前記光吸収層(2)の前記前駆体を焼成して前記光吸収層(2)を形成する第2の工程とを有していることを特徴とする。
また、請求項9に記載の発明は、請求項8に記載の発明において、前記第1の工程で使用するカルコゲン元素を含有する1種以上の水溶性カルコゲン含有有機化合物が硫黄を含有する化合物であり、前記第2の工程の焼成を、セレンを含み、かつ、酸素分圧1Pa以下の気体雰囲気で行うことを特徴とする。
また、請求項10に記載の発明は、請求項8又は9に記載の発明において、前記第1の工程における前記前駆体が、金属カルコゲナイド半導体で、前記第2の工程における前記前駆体の焼成により、前記光吸収層(2)と前記バッファ層(3)の界面において、前記光吸収層(2)に20nm以上400nm以下の凹凸状の粗面を形成することを特徴とする。
また、請求項11に記載の発明は、導電性の第1の電極層(1)と、該第1の電極層(1)上に設けられた、硫黄及び/又はセレンから選択されるカルコゲン元素を含有する金属カルコゲナイド半導体を含む光吸収層(2)と、該光吸収層(2)上に設けられ、該光吸収層(2)と異なる極性の半導体を含むバッファ層(3)と、該バッファ層(3)上に設けられた第2の電極層(4)を備えている光電変換素子の製造方法であって、前記光吸収層(2)中のアルカリ金属原子の濃度が、4.0×1020atoms/cm以上、5.0×1021atoms/cm以下であることを特徴とする。
また、請求項12に記載の発明は、請求項11に記載の発明において、前記金属カルコゲナイド半導体が、銅を含有することを特徴とする。
また、請求項13に記載の発明は、請求項12に記載の発明において、前記金属カルコゲナイド半導体が、インジウム及び/又はガリウムを含有することを特徴とする。
また、請求項14に記載の発明は、請求項11,12又は13に記載の発明において、前記光吸収層(2)が、前記金属カルコゲナイド半導体を構成する金属を含有する1種以上の水溶性金属塩と、硫黄及び/又はセレンから選択されるカルコゲン元素を含有する1種以上の水溶性カルコゲン含有有機化合物とを含有する金属カルコゲナイド半導体原料と、水溶性アルカリ金属塩とを含有する水溶液を、加熱された前記第1の電極層(1)上に噴霧して形成されていることを特徴とする。
また、請求項15に記載の発明は、請求項11乃至14のいずれかに記載の発明において、前記光吸収層(2)が、前記金属カルコゲナイド半導体を構成する金属を含有する1種以上の水溶性金属塩と、硫黄及び/又はセレンから選択されるカルコゲン元素を含有する1種以上の水溶性カルコゲン含有有機化合物と、水溶性アルカリ金属塩とを含有する金属カルコゲナイド半導体原料を含有する水溶液を、加熱された前記第1の電極層(1)上に複数回噴霧した後、硫黄及び/又はセレンから選択されるカルコゲン元素を含み、かつ、酸素分圧1Pa以下の気体雰囲気で焼成して形成されていることを特徴とする。
また、請求項16に記載の発明は、請求項11乃至15のいずれかに記載の発明において、前記第1及び第2の電極層(1,4)のいずれか一方は、前記光吸収層(2)に光を導入するために透光性であることを特徴とする。
本発明によれば、特定範囲の濃度のアルカリ金属原子を含有する光吸収層を有することにより優れたエネルギー変換効率の光電変換素子が得られる。更に、高いエネルギー光電変換効率を有する光電変換素子を容易に製造できる。
本発明に係る光電変換素子の実施形態を説明するための構成図である。 本発明に係る光電変換素子の製造方法を説明するための工程図である。
以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。
[実施形態]
図1は、本発明に係る光電変換素子の実施形態を説明するための構成図である。図中符号1は第1の電極層、2は光吸収層、3はバッファ層、4は第2の電極層を示している。
本発明の光電変換素子は、導電性の第1の電極層1と、この第1の電極層1上に設けられ、硫黄及び/又はセレンから選択されるカルコゲン元素を含有する金属カルコゲナイド半導体を含む光吸収層2と、この光吸収層2上に設けられ、この光吸収層2と異なる極性の半導体を含むバッファ層3と、このバッファ層3上に設けられた第2の電極層4を備えている光電変換素子である。
光吸収層2中のアルカリ金属原子の濃度が、4.0×1020atoms/cm以上、5.0×1021atoms/cm以下である。
また、金属カルコゲナイド半導体が、銅を含有する。また、金属カルコゲナイド半導体が、インジウム及び/又はガリウムを含有する。
また、光吸収層2が、金属カルコゲナイド半導体を構成する金属を含有する1種以上の水溶性金属塩と、硫黄及び/又はセレンから選択されるカルコゲン元素を含有する1種以上の水溶性カルコゲン含有有機化合物とを含有する金属カルコゲナイド半導体原料と、水溶性アルカリ金属塩とを含有する水溶液を、加熱された第1の電極層1上に噴霧して形成されている。
また、光吸収層2が、金属カルコゲナイド半導体を構成する金属を含有する1種以上の水溶性金属塩と、硫黄及び/又はセレンから選択されるカルコゲン元素を含有する1種以上の水溶性カルコゲン含有有機化合物と、水溶性アルカリ金属塩とを含有する金属カルコゲナイド半導体原料を含有する水溶液を、加熱された第1の電極層1上に複数回噴霧した後、硫黄及び/又はセレンから選択されるカルコゲン元素を含み、かつ、酸素分圧1Pa以下の気体雰囲気で焼成して形成されている。
また、第1及び第2の電極層1,4のいずれか一方は、光吸収層2に光を導入するために透光性である。また、光吸収層2とバッファ層3の界面において、光吸収層2に20nm以上400nm以下の凹凸状の粗面が形成されている。
以下、本発明の光電変換素子を構成する各構成要素について順次説明する。
まず、電極層について説明する。
本発明において、電極層1,4は、光吸収層2とバッファ層3を挟持するように一対をなしており、光吸収層2側を第1の電極層1、バッファ層3側を第2の電極層4とを備えている。
第1及び第2の電極層1,4は、本発明の光電変換素子において、正負の電極の一対をなす。第1及び第2の電極層1,4を構成する材料は、導電性であれば特に限定されないが、いずれか片方は本発明の光吸収層に光を導入するために透光性である。
本発明において、導電性とは、シート抵抗が、1kΩ/□以下の材料を意味し、好ましくは100Ω/□以下、更に好ましくは、50Ω/□以下である材料である。
具体的には、金、銀、銅、白金、アルミニウム、鉄、チタン、モリブデン、タングステン、タンタル、ニオブ、ニッケルやこれらの合金といった金属類、アルミニウムをドープした酸化亜鉛(AZO)、ガリウムをドープした酸化亜鉛(GZO)、インジウムとガリウムをドープした酸化亜鉛(IGZO)などの酸化亜鉛系材料、錫をドープした酸化インジウム(ITO)に代表される酸化インジウム系材料、フッ素をドープした酸化錫(FTO)、アンチモンをドープした酸化錫(ATO)、燐をドープした酸化錫(PTO)などの酸化錫系材料といった酸化物半導体類、更には、カーボンブラックに代表される炭素系材料などが例示できる。
本発明において、第1の電極層1と第2の電極層4は、上述したように、一対をなし、少なくともいずれか片方が透光性を有するため、金属材料と酸化物半導体の組合せが好ましく用いられる。
電極層に、金属を用いる場合、後述のように、本発明の光吸収層2は、硫黄及び/又はセレンから選択されるカルコゲン元素を含有する金属カルコゲナイド半導体からなるため、硫黄やセレンと接触した際の腐食性が低いものが好ましく、具体的には、モリブデン、タングステン、タンタル、ニオブ及びこれらの合金が好ましく、加工性の観点から、モリブデンやタンタルがより好ましく、更に好ましくはモリブデンである。とりわけ、光吸収層2と直接接する第1の電極層1として金属類を用いる場合は、これらの硫黄やセレンと接触した際の腐食性が低い材料が好ましく選択される。
電極層に酸化物半導体を用いる場合、酸化物半導体の電極は透光性の機能を有するため、導電性と透光性のバランスの取れた材料が好ましく用いられる。
透光性とは、本発明の光吸収層2の感度波長に応じて光を導出入できることを意味するが、本発明においては、可視光の代表値として550nmの波長の光を用いて測定した光透過性が、50%以上、好ましくは60%以上、より好ましくは70%以上のことをいう。なお、光透過性は、光電変換素子において高いほど受発光の効率が高くなるため好ましいので上限については限定されず、100%以下である。
本発明において透光性の電極に用いる材料は特に限定されないが、具体的には、アルミニウムをドープした酸化亜鉛(AZO)、ガリウムをドープした酸化亜鉛(GZO)、錫をドープした酸化インジウム(ITO)、フッ素をドープした酸化錫(FTO)が好ましい。更に、これらの材料を、第1の電極層1として用いる場合は、耐熱性や耐薬品性が要求される場合があるので、フッ素をドープした酸化錫(FTO)が好ましく用いられる。一方、第2の電極層4として用いるためには、比較的低温で作製して、高導電性を得やすいといった観点から、アルミニウムをドープした酸化亜鉛(AZO)、ガリウムをドープした酸化亜鉛(GZO)、錫をドープした酸化インジウム(ITO)が好ましく用いられる。
また、本発明において第1の電極層1は、それを支持する基板の上に設置されていてもよい。本発明において、基板は特に限定されず、本発明の光電変換素子の用途に応じて選択すればよい。
具体的には、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリイミドなどの各種樹脂基板、ソーダライムガラス、無アルカリガラス、石英ガラスなどの各種ガラス基板、酸化亜鉛、サファイア、ジルコニウムなどの各種セラミックス基板、金、銀、銅、白金、アルミニウム、鉄、チタン、モリブデン、タングステン、タンタル、ニオブ、ニッケルなどの各種金属やそれらの合金の金属基板、シリコン、ガリウム砒素などの各種半導体基板などが例示できる。
次に、本発明の光吸収層について説明する。
本発明の光吸収層2は、硫黄及び/又はセレンから選択されるカルコゲン元素を含有する金属カルコゲナイド半導体を含んでなる。このような半導体は、直接遷移型の電子遷移特性を有するため、光電変換素子の受発光高効率が高くなる。
具体的には、ZnS、CdS、FeS、Fe、FeS、MoS、MoS、CuS、CuS、AgS、Al、Ga、In、SnS、SnS、PbS、Sb、Biなどの金属硫化物類、ZnSe、CdSe、FeSe、FeSe、FeSe、MoSe、MoSe、CuSe、CuSe、AgSe、AlSe、GaSe、InSe、SnSe、SnSe、PbSe、SbSe、BiSeなどの金属セレン化物類や、例えば、(Cd(1−x),Zn)Se(0<x<1)のように、金属元素の一部が置換された混晶化合物類などがある。
また、Zn(S(1−x),Se)(0<x<1)のように、カルコゲン元素の一部が置換された混晶化合物類、CuInS、CuGaS、AgSnS、AgSn、CuInSe、CuGaSe、AgSnSe、AgSnSeなどの三元系金属カルコゲナイド半導体類、Cu(In(1−x),Ga)S(0<x<1)やCu(In(1−x),Ga)(S(1−y),Se(0<x,y<1)の如くの三元系金属カルコゲナイド半導体類の一部元素が置換された混晶化合物類などがある。
また、CuZnSnS、CuZnGeS、AgZnSnS、AgFeSnS、CuZnSnSe、CuZnGeSe、AgZnSnSe、AgFeSnSeなどの四元系金属カルコゲナイド半導体類、(Cu(1−x),Ag)ZnSnS(0<x<1)、CuZnSn(S(1−x),Se(0<x<1)、(Cu(1−x),Ag)ZnSn(S(1−y),Se(0<x,y<1)の如くの四元系金属カルコゲナイド半導体類の一部元素が置換された混晶化合物類などが例示できる。
とりわけ、本発明の光電変換素子を太陽電池に代表される受光素子に用いる場合は、CuS、CuS、CuSe、CuSe、CuInS、CuGaS、CuInSe、CuGaSe、CuZnSnS、CuZnGeS、CuZnSnSe、CuZnGeSe並びにこれらの混晶化合物といったCuを含有する金属カルコゲナイド半導体が、高い光電変換性能を有する半導体として好ましく用いられる。
即ち、銅を含有するカルコゲナイド半導体は、銅とカルコゲン元素の軌道の混成によってp型半導体になりやすく、このような銅を含有するp型半導体では、電子遷移によって発生したキャリアの拡散がn型半導体に比べて遅いため、カルコゲナイド半導体の結晶品質がより重要になるためである。従って、本発明のカルコゲナイド半導体が、銅を金属元素として含有し、かつ、硫黄及び又はセレンをカルコゲン元素として含有するカルコゲナイド半導体である場合に光電変換性能が向上するため好ましい。
とりわけ、本発明のカルコゲナイド半導体が、銅に加えて、インジウム及び/又はガリウムから選択される元素を金属元素として含有し、かつ、硫黄及び又はセレンをカルコゲン元素として含有するカルコゲナイド半導体である場合、高い光電変換性能が得られるので好ましい。
即ち、本発明のカルコゲナイド半導体が、CuInS、CuGaS、CuInSe、CuGaSeから選択される化合物の混晶化合物の場合、本発明のアルカリ金属原子を含有する光吸収層を有する光電変換素子のエネルギー変換効率が、最も高くなるためである。
光吸収層中のアルカリ金属原子の濃度が4.0×1020atoms/cm以上、5.0×1021atoms/cm以下である。即ち、光吸収層中のアルカリ金属原子濃度が4.0×1020atoms/cm以上、5.0×1021atoms/cm以下であることによって、本発明の光電変換素子は、とりわけ高い発電電圧が得られ、高いエネルギー変換効率を実現する。
本発明において、光吸収層中のアルカリ金属原子濃度は、上述した範囲であれば特に限定されないが、下限に関しては、アルカリ金属添加による性能向上効果がより顕著になるため、好ましくは、5.0×1020atoms/cm以上、より好ましくは7.0×1020atoms/cm以上である。一方、上限に関しては、多いと光吸収層の結晶品質が低下する場合があるので、好ましくは、4.0×1021atoms/cm以下、より好ましくは、3.0×1021atoms/cm以下である。
本発明において、アルカリ金属原子とは、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウムから選択され、これらを混合して使用することも可能である。これら中で、アルカリ金属原子として、ナトリウムを含む場合が好ましい。即ち、ナトリウムは、本発明の光吸収層に添加して用いると、最もエネルギー変換効率向上効果が高いためである。
このような、アルカリ金属原子濃度で高いエネルギー変換効率を実現できる効果は、本発明の光電変換素子が、金属カルコゲナイド半導体を構成する金属を含有する1種以上の水溶性金属塩と、硫黄及び/又はセレンから選択されるカルコゲン元素を含有する1種以上の水溶性カルコゲン含有有機化合物とを含有する金属カルコゲナイド半導体原料と、水溶性アルカリ金属塩とを含有する水溶液を、加熱された第1の電極層1上に噴霧して形成された場合に特に顕著になる。即ち、このようにして製造された光電変換素子では、光吸収層内の欠陥や不純物濃度が高い場合が多く、このような高い濃度のアルカリ金属原子濃度の領域において、エネルギー変換効率の向上効果が顕著になるためである。
本発明の光電変換素子において、光吸収層は、金属カルコゲナイド半導体を構成する金属を含有する1種以上の水溶性金属塩と、硫黄及び/又はセレンから選択されるカルコゲン元素を含有する1種以上の水溶性カルコゲン含有有機化合物とを含有する金属カルコゲナイド半導体原料と、水溶性アルカリ金属塩とを含有する水溶液を、加熱された第1の電極層1上に噴霧して形成されたものであることが好ましい。
即ち、このように製造された光吸収層では、光吸収層内の欠陥や不純物濃度が、本発明のアルカリ金属原子濃度に適した濃度になり、本発明の光吸収層中のアルカリ金属原子濃度において、高いエネルギー変換効率を有する光電変換素子が得られるためである。
また、このよう製造された光吸収層2は、好ましくは、金属カルコゲナイド半導体が略球形の形状を有し、光吸収層2とバッファ層3の界面において、光吸収層2が20nm以上400nm以下の凹凸状の粗面を有する。
そのような形状になることによって、高い発電電圧と発電電流を兼ね備えた高いエネルギー変換効率の光電変換素子が得られやすくなるが、このような形状の光電変換素子では、前述のように光吸収層内の欠陥が形成する場合があり、本発明の光吸収層中のアルカリ金属原子濃度において、高いエネルギー変換効率を有する光電変換素子がより得られやすくなる。
本発明において、金属カルコゲナイド半導体原料は、金属カルコゲナイド半導体を構成する金属を含有する1種以上の水溶性金属塩と、硫黄及び/又はセレンから選択されるカルコゲン元素を含有する1種以上の水溶性カルコゲン含有有機化合物とを含有する金属カルコゲナイド半導体原料と、水溶性アルカリ金属塩とを含有し、水性媒体に溶解して水溶液して使用される。
本発明において水溶性とは、水を50容量%以上含有する水性媒体に0.0001モル%以上溶解することであり、好ましくは0.001モル%以上溶解することである。即ち、本発明の金属カルコゲナイド半導体を構成する金属を含有する1種以上の水溶性金属塩や水溶性カルコゲン含有有機化合物の水性媒体への溶解度が低いとそれらの溶液を作製する際に、水性媒体の割合が大きくなり、水性媒体の揮発に多くのエネルギーを要するためである。
本発明において水性媒体とは、上記の範囲水を含有すれば特に制限は無く、水とメタノール、エタノール、プロパノールといったアルコール類、アセトン、メチルエチルケトンといったケトン類、トリメチルアミン、トリエチルアミン、エタノールアミンといったアミン化合物類、ジメチルフォルムアミド、ジメチルスルフォキシドなどの有機溶媒との混合溶媒が使用できる。
なお、水性媒体に有機溶剤が混合されることによって、本発明の塗布組成物の使用時に引火の危険が高くなるため、好ましくは、水を70容量%、より好ましくは、90容量%以上含有する溶媒であり、最も好ましい水性媒体は、水である。
このような水性媒体に、後述の水溶性金属塩と水溶性カルコゲン含有有機化合物と水溶性アルカリ金属塩とを独立に又は混合して溶解させて、水溶液を作製する。
本発明において、金属カルコゲナイド半導体を構成する金属を含有する1種以上の水溶性金属塩とは、前述のカルコゲナイド半導体を構成する金属の、フッ化物、塩化物、臭化物、ヨウ化物などのハロゲン化物塩、硝酸塩、硫酸塩、リン酸塩などの無機化合物塩、酢酸塩に代表される有機化合物塩であって、上述の水溶性を有するものである。
具体的には、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、亜鉛、カドミウム、鉄、ニッケル、モリブデン、銅、銀、アルミニウム、ガリウム、インジウム、錫、鉛、アンチモン、ビスマスなどの金属のフッ化物、塩化物、臭化物、ヨウ化物などのハロゲン化物塩、硝酸塩、硫酸塩、リン酸塩などの無機化合物塩、酢酸塩に代表される有機化合物塩などが例示できる。
これらの中で、フッ化物、塩化物、臭化物、ヨウ化物などのハロゲン化物塩、硝酸塩は本発明の金属カルコゲナイド半導体原料を噴霧した際、加熱された第1の電極層上で分解等によって排除されるアニオン成分の体積が小さいために好ましく用いられる。即ち、排除されるアニオン成分の体積が小さいことにより、光吸収層の孔状欠陥が発生しにくくなり、本発明のバッファ層が、第1の電極層と接しにくくなるためである。
本発明において水溶性カルコゲン含有有機化合物とは、1つ以上の炭素元素と1つ以上の硫黄、セレンから選択されるカルコゲン元素とを含有する化合物であって、上記の水溶性を示す化合物である。
具体的には、スルホン酸、セレノン酸などのカルコゲン酸基を有する有機化合物類、スルホキシド、セレノキシド基のカルコゲノキシド基を有する有機化合物類、チオール、セレノールといったカルコゲノール基を有する有機化合物類、チオケトン、セレノケトンといったカルコゲノケトン基を有する有機化合物類が例示できる。
これらの中で、チオール、セレノールといったカルコゲノール基を有する有機化合物類、チオケトン、セレノケトンといったカルコゲノケトン基を有する有機化合物類が好ましく用いられる。
即ち、本発明において水溶性カルコゲン含有有機化合物は、本発明の金属カルコゲナイド半導体にカルコゲン元素を供給する機能を有するため、本発明の金属カルコゲナイド半導体原料の水溶液が第1の電極層上に塗布され、加熱などのエネルギーを付与された際に分解してカルコゲン元素を放出する必要があるが、カルコゲン酸基を有する有機化合物類やカルコゲノキシド基を有する有機化合物類は、酸素とカルコゲン元素の強い結合を有するため、カルコゲン元素の放出する機能が劣る場合があるためである。
より具体的には、チオウレア、チオアセトアミド、N−メチルチオウレア、N−アリルチオウレア、N,N‘−ジメチルチオウレア、N,N‘−ジエチルチオウレア、テトラメチルチオウレア、セレノウレア、N−メチルセレノウレア、N,N‘−ジメチルセレノウレア、1−ヘキサンチオール、オクタン−1−チオールなどが例示できる。
これらの中で、チオール、チオケトンから選択される硫黄含有有機化合物類は、安全対策等を必要とせず、取り扱いが容易になるため本発明の水溶性カルコゲン含有有機化合物として好ましい。更に、チオケトン類は、水溶性が高いために好ましく使用される。
このような硫黄をカルコゲン元素として含有する金属カルコゲナイド半導体は、しばしば、セレンをカルコゲン元素として含有する金属カルコゲナイド半導体に比べて、半導体物性が劣る場合があるが、後述のように、本発明の金属カルコゲナイド半導体水溶液を第1の電極層上に噴霧したのちに、カルコゲン元素を含有する雰囲気で焼成することによってカルコゲン元素の置換も可能であるので、とりわけこのような場合に、金属カルコゲナイド半導体原料の安全性が重視されるため、チオール類、チオケトン類から選択される硫黄含有有機化合物類が好ましく用いられる。
一方、本発明の金属カルコゲナイド半導体が、カルコゲン元素としてセレンを含有する際に優れた半導体物性を得られやすい。そのため、本発明の金属カルコゲナイド半導体を第1の電極層上に噴霧した後にカルコゲン元素を置換する焼成を行わない場合は、セレン含有有機化合物類が、本発明の水溶性カルコゲン含有有機化合物として好ましく用いられる。
本発明のカルコゲナイド半導体原料中の水溶性金属塩と水溶性カルコゲン含有有機化合物の比率は特に限定されず、本発明の金属カルコゲナイド半導体原料水溶液を用いて加熱された第1の電極層上に噴霧した後、目的とする金属カルコゲナイド半導体を得られれば良い。即ち、金属カルコゲナイド半導体原料における金属塩とカルコゲン含有有機化合物の混合比が、目的とする金属カルコゲナイド半導体の量論比からずれた場合であっても、未反応成分を洗浄したり、加熱等のエネルギーを与えることで除去したりすることが可能であり、さらに、本発明の金属カルコゲナイド半導体原料を噴霧後に、カルコゲン元素を含有する雰囲気で焼成することによってカルコゲン元素を加えたり、置換したりすることも可能なためである。
一方、未反応の成分が多すぎると、本発明の金属カルコゲナイド半導体原料の水溶液を加熱された第1の電極層上に複数回噴霧して製造された膜の均一性が低下する場合があるので、水溶性金属塩の水溶性カルコゲン含有有機化合物に対する比率は、目的の金属カルコゲナイド半導体の量論比に対して、10以下が好ましく、より好ましくは5以下であり、更に好ましくは2以下であり、最も好ましくは、1以下である。下限に関しては、水溶性カルコゲン含有有機化合物が、金属カルコゲナイド半導体原料の水溶液を噴霧する際に、金属塩との混合液の場合は水溶液の安定性を向上させる効果があったり、第1の電極層上の噴霧した際に加熱によって分解したりするので、上限に比べて広く許容され、好ましくは、0.01以上、より好ましくは0.02以上、更に好ましくは0.05以上、最も好ましくは0.1以上である。
本発明において、水溶性アルカリ金属塩は、ドーピングされるアルカリ金属原子のところで説明した、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウムの塩で、上述の範囲の水溶性を有するものであれば特に限定されないが、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウムのフッ化物、塩化物、臭化物、ヨウ化物などのハロゲン化物塩、硝酸塩、硫酸塩、リン酸塩などの無機化合物塩、酢酸塩に代表される有機化合物塩などが例示できる。
そして、光吸収層中のアルカリ金属原子の供給源になるため、上述したと同様の理由で、ナトリウムを含む水溶性金属塩であることが好ましい。
これらの中で、フッ化物、塩化物、臭化物、ヨウ化物などのハロゲン化物塩、硝酸塩は本発明の金属カルコゲナイド半導体原料を噴霧した際、加熱された第1の電極層上で分解等によって排除されるアニオン成分の体積が小さいために好ましく用いられる。更に、硝酸塩は、融点が低い材料が多いため、加熱された基板上で融解して、均一化するために好ましい。
従って、本発明において、最も好ましい水溶性アルカリ金属塩は、硝酸ナトリウムである。
本発明において、水溶性アルカリ金属塩と金属カルコゲナイド半導体原料の混合比は特に限定されず、本発明の光電変換素子において、光吸収層中のアルカリ金属原子の濃度が4.0×1020atoms/cm以上、5.0×1021atoms/cm以下になればよい。
即ち、水溶性アルカリ金属塩に含まれるアルカリ金属が、金属カルコゲナイド半導体のアルカリ金属原子として全てが取り込まれない場合があるためである。
本発明において、光吸収層は、本発明の金属カルコゲナイド半導体原料と水溶性アルカリ金属塩とを含有する水溶液を、加熱された前記第1の電極層上に複数回噴霧して製造されたものであることが好ましい。このようにして第1の電極層上に形成された金属カルコゲナイド半導体を含有する膜は、孔状の欠陥が発生せず、本発明の光電変換素子においてバッファ層と第1の電極層の接触が発生しない。
即ち、本発明の金属カルコゲナイド半導体原料と水溶性アルカリ金属塩とを含有する水溶液において、水溶性の金属塩は、水中でイオン乖離するカウンターイオンを有するのが一般的であり、このカウンターイオンが脱離して金属カルコゲナイド半導体に転換するので、カウンターイオンの脱離を塗布によって固着した膜で行うと、膜が多孔質になって、均一性が不足する場合が発生するため、加熱された第1の電極層上でこの脱離を行うことにより孔状の欠陥が発生しにくくなるためである。
また、水溶性カルコゲン含有有機化合物は、上述したように、本発明の金属カルコゲナイド半導体にカルコゲン元素を供給する機能を有するため、カルコゲン元素以外の有機成分が脱離する場合があり、この場合も、塗布によって固着した膜で行うと、膜が多孔質になって、均一性が不足する場合が発生するため、加熱された第1の電極層上でこの脱離を行うことにより孔状の欠陥が発生しにくくなるためである。
更に、本発明の金属カルコゲナイド半導体原料の水溶液を噴霧によって第1の電極層上に金属カルコゲナイド半導体を含有する膜を形成することによって、本発明の水性媒体がその場で容易に揮発し、第1の電極層上に金属カルコゲナイド半導体を含有する膜の孔状欠陥が減少する。
そして、その操作を複数回繰り返すことによって製造された本発明の光吸収層を含有する光電変換素子では、バッファ層が、第1の電極層と接することなく高いエネルギー変換効率が実現できるため好ましい。
また、複数回に分けて噴霧することによって、本発明の光電変換素子の光吸収層として好ましい組成の1つであるCIGSと称されるCuInS、CuGaS、CuInSe、CuGaSeから選択される化合物の混晶化合物を用いる場合などにおいて、第1の電極層と第2の電極層間に組成の傾斜をつけることが可能になり、高い発電電流と高い発電電圧を兼ね備える光電変換素子が得られる。
本発明において第1の電極層を加熱する温度は特に限定されず、本発明のカルコゲナイド半導体原料の反応性や基板の耐熱温度によって適宜選択される。
例えば、水溶性カルコゲン含有有機化合物として好適に使用されるチオウレアを1つのカルコゲナイド半導体原料と使用する場合、チオウレアは240℃付近で分解して硫黄を放出する機能を有するため、好ましい基板を加熱する温度は240℃以上であり、より好ましくは270℃以上である。更に、加熱された基板が、本発明の水性媒体で多少冷却されることを考慮すると、更に好ましくは300℃以上である。
また、上述したように、水溶性アルカリ金属塩が加熱された基板上で融解している状態の方が、均一に混合されるために好ましいため、使用される水溶性アルカリ金属塩の融点以上が好ましく、例えば、水溶性アルカリ金属塩として、硝酸ナトリウムを用いる場合は、308℃に融点を持つため、308℃以上が好ましく、より好ましくは、310℃以上である。
また、大気雰囲気に代表される酸素を含有する雰囲気で使用する場合は、チオウレアが発火する恐れがあるので、好ましくは、430℃以下、より好ましくは400℃以下が、基板を加熱する温度として好適である。
本発明の光吸収層2は、金属カルコゲナイド半導体の結晶品質が向上するので、加熱された第1の電極層1上に噴霧して設置した後に熱、プラズマ、マイクロ波などのエネルギーを加えることが好ましい。このようなエネルギーの付与は、大気下、非反応性ガス雰囲気下、硫黄及び/又はセレンから選択されるカルコゲン元素を含む気体雰囲気下、真空雰囲気下など、目的に応じた雰囲気で行うことが可能であるが、硫黄及び/又はセレンから選択されるカルコゲン元素を含む気体雰囲気下で行うことが好ましい。即ち、金属カルコゲナイド半導体にエネルギーを与えると、カルコゲン元素の脱離が発生して、半導体の電気物性が低下する場合があるためである。
また、硫黄及び/又はセレンから選択されるカルコゲン元素を含む気体雰囲気下で金属カルコゲナイド半導体にエネルギーを与える場合は、酸素分圧1Pa以下の雰囲気で行うことが好ましい。即ち、酸素分圧が高いと、硫黄及び/又はセレンから選択されるカルコゲン元素が酸化されるばかりか、金属カルコゲナイド半導体の結晶成長が阻害される場合があるためである。
なお、酸素分圧の下限は特に限定されず、酸素分圧が低いほど好ましいが、低い酸素分圧を実現するために、装置が大掛かりになったりして生産性が低下する場合があるので、好ましくは、100nPa以上である。
このようなエネルギー付与を行う場合、電気炉に代表される加熱設備加熱するのが簡便で好ましい。その際の加熱温度は特に限定されず、金属カルコゲナイド半導体の物性に応じて適宜設定すればよいが、結晶成長の観点から、高温の方が好ましく、好ましくは300℃以上、より好ましくは350℃以上、更に好ましくは400℃以上、最も好ましくは450℃以上である。上限については、特に限定されないが、第1の電極層や第1の電極層を支持する基板の耐熱温度以下が好ましい。
具体的には、例えば、石英ガラスの基板を用いる場合は、1000℃以下が好ましく、ソーダライムガラスの基板を用いる場合は600℃以下が好ましく、ポリイミド基板を用いる場合は、450℃以下が好ましい。
従って、本発明において光吸収層2が、金属カルコゲナイド半導体を構成する金属を含有する1種以上の水溶性金属塩と、硫黄及び/又はセレンから選択されるカルコゲン元素を含有する1種以上の水溶性カルコゲン含有有機化合物とを含有する金属カルコゲナイド半導体原料と、水溶性アルカリ金属塩とを含有する水溶液を、加熱された第1の電極層上に複数回噴霧した後、硫黄及び/又はセレンから選択されるカルコゲン元素を含み、かつ、酸素分圧1Pa以下の気体雰囲気で焼成して製造されたことものであることが好ましい。
このような、硫黄及び/又はセレンから選択されるカルコゲン元素を含む気体雰囲気としては、硫化水素、セレン化水素、二硫化炭素の蒸気、硫黄元素の蒸気、セレン元素の蒸気やこれらの混合物の気体雰囲気が例示できるが、これらの中で、硫黄元素の蒸気、セレン元素の蒸気またはこれらの混合物が好ましく使用される。
即ち、硫黄元素の蒸気、セレン元素の蒸気やこれらの混合物は、単体元素の蒸気のため副生成物がなく純度の高いカルコゲナイド半導体を製造するのに適しているばかりか、常温で固体のため、余剰分を冷却することで容易に取り除くことが可能となり生産性に優れるためである。
本発明において、光吸収層2の膜厚は、特に限定されず、本発明のカルコゲナイド半導体の光吸収特性や移動度といった物性や、本発明の光電変換素子の使用目的に応じて適宜選択できるが、厚いと光照射によって発生した電子の取り出し効率が下がる場合があるので、好ましくは5ミクロン以下、より好ましくは3ミクロン以下、更に好ましくは2ミクロン以下である。
下限に関しては、薄すぎると、金属カルコゲナイド半導体の均一性が低下したり、光吸収が不十分になったりする場合があるので、好ましくはり好ましくは0.1ミクロン以上、より好ましくは0.3ミクロン以上、更に好ましくは0.5ミクロン以上である。
次に、本発明のバッファ層について説明する。
本発明においてバッファ層3は、光吸収層2上に設けられ、光吸収層2と異なる極性の半導体を含む。そして、光吸収層2とバッファ層3は、第1の電極層1と第2の電極層4に挟持されている。このような構造にすることによって、本発明の光電変換素子は、発電素子として機能する。
本発明において、バッファ層3を構成する材料は、上述した範囲の半導体であれば特に限定されず、有機材料であっても無機材料であってもよい。
例えば、本発明の光吸収層2を形成する金属カルコゲナイド半導体として、CIGSと称されるCuInS、CuGaS、CuInSe、CuGaSeから選択される化合物の混晶化合物を用いる場合、一般に、光吸収層2は、p型半導体になる場合が多い。その場合は、バッファ層3は、n型半導体である必要があり、CdS、ZnS、In、ZnO、(Zn,Mg(1−x))Oといった各種材料やそれらの混晶化合物類、或いは、それらを積層した材料などが好ましく使用される。
本発明のバッファ層3の材料は、化学バス堆積法に代表される溶液法で形成されたものでも、スパッタリング法、真空蒸着法といった真空成膜法を用いて形成されたものでも構わないが、化学バス堆積法で形成されたものが好ましい。即ち、化学バス堆積法で形成されたバッファ層材料は、本発明の金属カルコゲナイド半導体膜に欠陥等のダメージを与えにくく、優れた光電変換性能を実現しやすいためである。
次に、本発明の光電変換素子の製造方法について説明する。
本発明の光電変換素子の製造方法は、導電性の第1の電極層1と、この第1の電極層1上に設けられ、硫黄及び/又はセレンから選択されるカルコゲン元素を含有する金属カルコゲナイド半導体を含む光吸収層2と、この光吸収層2上に設けられ、この光吸収層2と異なる極性の半導体を含むバッファ層3と、このバッファ層3上に設けられた第2の電極層4を備えている光電変換素子の製造方法である。
光吸収層2中のアルカリ金属原子の濃度が、4.0×1020atoms/cm以上、5.0×1021atoms/cm以下である。
また、金属カルコゲナイド半導体が、銅を含有する。また、金属カルコゲナイド半導体が、インジウム及び/又はガリウムを含有する。
また、光吸収層2が、金属カルコゲナイド半導体を構成する金属を含有する1種以上の水溶性金属塩と、硫黄及び/又はセレンから選択されるカルコゲン元素を含有する1種以上の水溶性カルコゲン含有有機化合物とを含有する金属カルコゲナイド半導体原料と、水溶性アルカリ金属塩とを含有する水溶液を、加熱された第1の電極層1上に噴霧して形成されている。
また、光吸収層2が、金属カルコゲナイド半導体を構成する金属を含有する1種以上の水溶性金属塩と、硫黄及び/又はセレンから選択されるカルコゲン元素を含有する1種以上の水溶性カルコゲン含有有機化合物と、水溶性アルカリ金属塩とを含有する金属カルコゲナイド半導体原料を含有する水溶液を、加熱された第1の電極層1上に複数回噴霧した後、硫黄及び/又はセレンから選択されるカルコゲン元素を含み、かつ、酸素分圧1Pa以下の気体雰囲気で焼成して形成されている。
また、第1及び第2の電極層1,4のいずれか一方は、光吸収層2に光を導入するために透光性である。
図2は、本発明に係る光電変換素子の製造方法を説明するための工程図である。
本発明の光電変換素子の製造方法は、導電性の第1の電極層1上に金属カルコゲナイド半導体を含む光吸収層2を積層して形成された積層構造を含んでいる。光吸収層2の前駆体を形成する第1の工程と、前駆体を焼成して光吸収層2を形成する第2の工程とを有している。
第1の工程は、第1の電極層1を加熱し、この第1の電極層1上に、金属カルコゲナイド半導体を構成する金属を含有する1種以上の水溶性金属塩と、硫黄及び/又はセレンから選択されるカルコゲン元素を含有する1種以上の水溶性カルコゲン含有有機化合物と、水溶性アルカリ金属塩とを含有する金属カルコゲナイド半導体原料を含有する水溶液を噴霧して光吸収層2の前駆体を形成する。
第2の工程は、光吸収層2の前駆体を焼成して光吸収層2を形成する。
また、第1の工程で使用するカルコゲン元素を含有する1種以上の水溶性カルコゲン含有有機化合物が硫黄を含有する化合物であり、第2の工程の焼成を、セレンを含み、かつ、酸素分圧1Pa以下の気体雰囲気で行う。
また、第1の工程における前駆体が、金属カルコゲナイド半導体で、第2の工程における前駆体の焼成により、光吸収層2とバッファ層3の界面において、光吸収層2に20nm以上400nm以下の凹凸状の粗面を形成する。
つまり、本発明の光電変換素子は、上述したように、第1の電極層1と、第1の電極層1上に設けられ、硫黄及び/又はセレンから選択されるカルコゲン元素を含有する金属カルコゲナイド半導体を含む光吸収層2と、光吸収層2上に設けられた、光吸収層2と異なる極性の半導体を含むバッファ層3と、バッファ層3上に設けられた第2の電極層4を備えている光電変換素子であって、光吸収層2中のアルカリ金属原子の濃度が、4.0×1020atoms/cm以上、5.0×1021atoms/cm以下になれば特に限定されないが、光吸収層2が、金属カルコゲナイド半導体を構成する金属を含有する1種以上の水溶性金属塩と、硫黄及び/又はセレンから選択されるカルコゲン元素を含有する1種以上の水溶性カルコゲン含有有機化合物と、水溶性アルカリ金属塩とを含有する金属カルコゲナイド半導体原料を含有する水溶液を、加熱された前記第一の電極層上に複数回噴霧した後、硫黄及び/又はセレンから選択されるカルコゲン元素を含み、かつ、酸素分圧1Pa以下の気体雰囲気で焼成する工程を経て好適に製造される。
即ち、このようにして製造されることによって、容易に本発明の特徴を有する光電変換素子が得られる。
そして、このような工程を経て製造されることによって、好ましくは、金属カルコゲナイド半導体が略球形の形状を有し、光吸収層2とバッファ層3の界面において、光吸収層2が20nm以上400nm以下の凹凸状の粗面を有する。
本発明の光電変換素子の好ましい製造方法の第1の工程について説明する。
本発明の光電変換素子の製造方法において第1の工程では、第1の電極層1を加熱し、第1の電極層1上に、金属カルコゲナイド半導体を構成する金属を含有する1種以上の水溶性金属塩と、硫黄及び/又はセレンから選択されるカルコゲン元素を含有する1種以上の水溶性カルコゲン含有有機化合物とを含有する金属カルコゲナイド半導体原料を含有する水溶液を複数回噴霧して光吸収層2の前駆体を形成する。
即ち、加熱された電極層上に金属カルコゲナイド半導体を構成する金属を含有する1種以上の水溶性金属塩と、硫黄及び/又はセレンから選択されるカルコゲン元素を含有する1種以上の水溶性カルコゲン含有有機化合物と、水溶性アルカリ金属塩とを含有する金属カルコゲナイド半導体原料を含有する溶液を噴霧して光吸収層2を形成すると、加熱された電極層上において、本発明の金属カルコゲナイド半導体の前駆体である結晶核が生成するため、上述したような略球形の形状を有する金属カルコゲナイド半導体が容易に得られるためである。そして、加熱された電極層上に噴霧する溶液は、後述する引火などの懸念より水性媒体を溶媒とした水溶液が好ましく使用される。
更に複数回噴霧することによって、孔状の欠陥が生成せず、上述したバッファ層3が、第1の電極層と接していない光電変換素子が容易に得られるため、噴霧を複数回行うことは好ましい。
また、複数回に分けて噴霧することによって、本発明の光電変換素子の光吸収層として好ましい組成の1つであるCIGSと称されるCuInS、CuGaS、CuInSe、CuGaSeから選択される化合物の混晶化合物を用いる場合などにおいて、光吸収層の組成に傾斜をつけることが可能になり、高い発電電流と高い発電電圧を兼ね備える光電変換素子が得られる。
本発明において、第1の電極層は導電性を有する。
本発明において、導電性とは、シート抵抗が、1kΩ/□以下の材料を意味し、好ましくは100Ω/□以下、更に好ましくは、50Ω/□以下である材料である。
具体的には、金、銀、銅、白金、アルミニウム、鉄、チタン、モリブデン、タングステン、タンタル、ニオブ、ニッケルやこれらの合金といった金属類、アルミニウムをドープした酸化亜鉛(AZO)、ガリウムをドープした酸化亜鉛(GZO)、インジウムとガリウムをドープした酸化亜鉛(IGZO)などの酸化亜鉛系材料、錫をドープした酸化インジウム(ITO)に代表される酸化インジウム系材料、フッ素をドープした酸化錫(FTO)、アンチモンをドープした酸化錫(ATO)、燐をドープした酸化錫(PTO)などの酸化錫系材料といった酸化物半導体類、更には、カーボンブラックに代表される炭素系材料などが例示できる。
これらの中で、本発明の第2の工程において、後述のように硫黄やセレンを含む気体雰囲気で焼成することが好ましいため、硫黄やセレンと接触した際の腐食性が低いものが好ましく、具体的には、モリブデン、タングステン、タンタル、ニオブ及びこれらの合金が好ましく、加工性の観点から、モリブデンやタンタルがより好ましく、更に好ましくはモリブデンである。
本発明において、電極層に酸化物半導体を用いる場合、酸化物半導体の電極は透光性の機能を有するため、導電性と透光性のバランスの取れた材料が好ましく用いられる。
透光性とは、本発明の光吸収層の感度波長に応じて光を導出入できることを意味するが、本発明においては、可視光の代表値として550nmの波長の光を用いて測定した光透過性が、50%以上、好ましくは60%以上、より好ましくは70%以上のことをいう。なお、光透過性は、光電変換素子において高いほど発電効率が高くなるため好ましいので上限については限定されず、100%以下である。
本発明において透光性の電極に用いる材料は特に限定されないが、具体的には、アルミニウムをドープした酸化亜鉛(AZO)、ガリウムをドープした酸化亜鉛(GZO)、錫をドープした酸化インジウム(ITO)、フッ素をドープした酸化錫(FTO)が好ましい。更に、これらの材料を、第1の電極層として用いる場合は、耐熱性や耐薬品性が要求される場合があるので、フッ素をドープした酸化錫(FTO)が好ましく用いられる。一方、第2の電極層として用いるためには、比較的低温で作製して、高導電性を得やすいといった観点から、アルミニウムをドープした酸化亜鉛(AZO)、ガリウムをドープした酸化亜鉛(GZO)、錫をドープした酸化インジウム(ITO)が好ましく用いられる。
また、本発明において第1の電極層は、それを支持する基板の上に設置されていてもよい。
本発明において、基板は特に限定されず、本発明の光電変換素子の用途に応じて選択すればよい。
具体的には、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリイミドなどの各種樹脂基板、ソーダライムガラス、無アルカリガラス、石英ガラスなどの各種ガラス基板、酸化亜鉛、サファイア、ジルコニウムなどの各種セラミックス基板、金、銀、銅、白金、アルミニウム、鉄、チタン、モリブデン、タングステン、タンタル、ニオブ、ニッケルなどの各種金属やそれらの合金の金属基板、シリコン、ガリウム砒素などの各種半導体基板などが例示できる。
これらの中で、第2の工程で硫黄やセレンを含む気体雰囲気で焼成された時に、加熱されて形状を維持でき、かつ反応性が高くない材料が好ましく、ポリイミドに代表される耐熱性樹脂基板、ソーダライムガラス、無アルカリガラス、石英ガラスなどの各種ガラス基板、鉄、チタン、モリブデン、タングステン、タンタル、ニオブの各種金属やそれらの合金の金属基板が好ましい。
本発明において、金属カルコゲナイド半導体原料は、金属カルコゲナイド半導体を構成する金属を含有する1種以上の水溶性金属塩と、硫黄及び/又はセレンから選択されるカルコゲン元素を含有する1種以上の水溶性カルコゲン含有有機化合物と、水溶性アルカリ金属塩とを含有するとを含有し、水溶液として噴霧される。
本発明において水溶性とは、水を50容量%以上含有する水性媒体に0.0001モル%以上溶解することであり、好ましくは0.001モル%以上溶解することである。即ち、本発明の金属カルコゲナイド半導体を構成する金属を含有する1種以上の水溶性金属塩や水溶性カルコゲン含有有機化合物の水性媒体への溶解度が低いとそれらの溶液を作製する際に、水性媒体の割合が大きくなり、水性媒体の揮発に多くのエネルギーを要するためである。
本発明において水性媒体とは、上述した範囲水を含有すれば特に制限は無く、水とメタノール、エタノール、プロパノールといったアルコール類、アセトン、メチルエチルケトンといったケトン類、トリメチルアミン、トリエチルアミン、エタノールアミンといったアミン化合物類、ジメチルフォルムアミド、ジメチルスルフォキシドなどの有機溶媒との混合溶媒が使用できる。
なお、水性媒体に有機溶剤が混合されることによって、本発明の塗布組成物の使用時に引火の危険が高くなるため、好ましくは、水を70容量%、より好ましくは、90容量%以上含有する溶媒であり、最も好ましい水性媒体は、水である。
このような水性媒体に、後述の水溶性金属塩と水溶性カルコゲン含有有機化合物とを独立に又は混合して溶解させて、水溶液を作製する。
本発明において、金属カルコゲナイド半導体を構成する金属を含有する1種以上の水溶性金属塩とは、上述したカルコゲナイド半導体を構成する金属の、フッ化物、塩化物、臭化物、ヨウ化物などのハロゲン化物塩、硝酸塩、硫酸塩、リン酸塩などの無機化合物塩、酢酸塩に代表される有機化合物塩であって、上述した水溶性を有するものである。
具体的には、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、亜鉛、カドミウム、鉄、ニッケル、モリブデン、銅、銀、アルミニウム、ガリウム、インジウム、錫、鉛、アンチモン、ビスマスなどの金属のフッ化物、塩化物、臭化物、ヨウ化物などのハロゲン化物塩、硝酸塩、硫酸塩、リン酸塩などの無機化合物塩、酢酸塩に代表される有機化合物塩などが例示できる。
これらの中で、フッ化物、塩化物、臭化物、ヨウ化物などのハロゲン化物塩、硝酸塩は本発明の金属カルコゲナイド半導体原料を噴霧した際、加熱された第1の電極層上で分解等によって排除されるアニオン成分の体積が小さいために好ましく用いられる。即ち、排除されるアニオン成分の体積が小さいことにより、光吸収層の孔状欠陥が発生しにくくなり好ましい。
本発明において水溶性カルコゲン含有有機化合物とは、1つ以上の炭素元素と1つ以上の硫黄、セレンから選択されるカルコゲン元素とを含有する化合物であって、上記の水溶性を示す化合物である。
具体的には、スルホン酸、セレノン酸などのカルコゲン酸基を有する有機化合物類、スルホキシド、セレノキシド基のカルコゲノキシド基を有する有機化合物類、チオール、セレノールといったカルコゲノール基を有する有機化合物類、チオケトン、セレノケトンといったカルコゲノケトン基を有する有機化合物類が例示できる。
これらの中で、チオール、セレノールといったカルコゲノール基を有する有機化合物類、チオケトン、セレノケトンといったカルコゲノケトン基を有する有機化合物類が好ましく用いられる。
即ち、本発明において水溶性カルコゲン含有有機化合物は、本発明の金属カルコゲナイド半導体にカルコゲン元素を供給する機能を有するため、本発明の金属カルコゲナイド半導体原料の水溶液が第1の電極層上に塗布され、加熱などのエネルギーを付与された際に分解してカルコゲン元素を放出する必要があるが、カルコゲン酸基を有する有機化合物類やカルコゲノキシド基を有する有機化合物類は、酸素とカルコゲン元素の強い結合を有するため、カルコゲン元素の放出する機能が劣る場合があるためである。
より具体的には、チオウレア、チオアセトアミド、N−メチルチオウレア、N−アリルチオウレア、N,N‘−ジメチルチオウレア、N,N‘−ジエチルチオウレア、テトラメチルチオウレア、セレノウレア、N−メチルセレノウレア、N,N‘−ジメチルセレノウレア、1−ヘキサンチオール、オクタン−1−チオールなどが例示できる。
これらの中で、チオール、チオケトンから選択される硫黄含有有機化合物類は、安全対策等を必要とせず、取り扱いが容易になるため本発明の水溶性カルコゲン含有有機化合物として好ましい。更に、チオケトン類は、水溶性が高いために好ましく使用される。
このような硫黄をカルコゲン元素として含有する金属カルコゲナイド半導体は、しばしば、セレンをカルコゲン元素として含有する金属カルコゲナイド半導体に比べて、半導体物性が劣る場合があるが、後述のように、本発明の金属カルコゲナイド半導体水溶液を第1の電極層上に噴霧したのちに、カルコゲン元素を含有する雰囲気で焼成することによってカルコゲン元素の置換も可能であるので、とりわけこのような場合に、金属カルコゲナイド半導体原料の安全性が重視されるため、チオール類、チオケトン類から選択される硫黄含有有機化合物類が好ましく用いられる。
本発明のカルコゲナイド半導体原料中の水溶性金属塩と水溶性カルコゲン含有有機化合物の比率は特に限定されず、本発明の金属カルコゲナイド半導体原料水溶液を用いて加熱された第1の電極層上に噴霧した後、目的とする金属カルコゲナイド半導体を得られれば良い。即ち、金属カルコゲナイド半導体原料における金属塩とカルコゲン含有有機化合物の混合比が、目的とする金属カルコゲナイド半導体の量論比からずれた場合であっても、未反応成分を洗浄したり、加熱等のエネルギーを与えることで除去したりすることが可能であり、さらに、第2の工程を硫黄やセレンの気体雰囲気で行うことによって、カルコゲン元素を含有する雰囲気で焼成することによってカルコゲン元素を加えたり、置換したりすることも可能なためである。
一方、未反応の成分が多すぎると、本発明の金属カルコゲナイド半導体原料の水溶液を加熱された第1の電極層上に複数回噴霧して製造された膜の均一性が低下する場合があるので、水溶性金属塩の水溶性カルコゲン含有有機化合物に対する比率は、目的の金属カルコゲナイド半導体の量論比に対して、10以下が好ましく、より好ましくは5以下であり、更に好ましくは2以下であり、最も好ましくは、1以下である。下限に関しては、水溶性カルコゲン含有有機化合物が、金属カルコゲナイド半導体原料の水溶液を噴霧する際に、金属塩との混合液の場合は水溶液の安定性を向上させる効果があったり、第1の電極層上の噴霧した際に加熱によって分解したりするので、上限に比べて広く許容され、好ましくは、0.01以上、より好ましくは0.02以上、更に好ましくは0.05以上、最も好ましくは0.1以上である。
本発明において、水溶性アルカリ金属塩は、ドーピングされるアルカリ金属原子のところで説明した、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウムの塩で、上述の範囲の水溶性を有するものであれば特に限定されないが、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウムのフッ化物、塩化物、臭化物、ヨウ化物などのハロゲン化物塩、硝酸塩、硫酸塩、リン酸塩などの無機化合物塩、酢酸塩に代表される有機化合物塩などが例示できる。
そして、光吸収層中のアルカリ金属原子の供給源になるため、前述と同様の理由で、ナトリウムを含む水溶性金属塩であることが好ましい。
これらの中で、フッ化物、塩化物、臭化物、ヨウ化物などのハロゲン化物塩、硝酸塩は本発明の金属カルコゲナイド半導体原料を噴霧した際、加熱された第一の電極層上で分解等によって排除されるアニオン成分の体積が小さいために好ましく用いられる。更に、硝酸塩は、融点が低い材料が多いため、加熱された基板上で融解して、均一化するために好ましい。
従って、本発明において、最も好ましい水溶性アルカリ金属塩は、硝酸ナトリウムである。
本発明において、水溶性アルカリ金属塩と金属カルコゲナイド半導体原料の混合比は特に限定されず、本発明の光電変換素子において、光吸収層中のアルカリ金属原子の濃度が4.0×1020atoms/cm以上、5.0×1021atoms/cm以下になればよい。
即ち、水溶性アルカリ金属塩に含まれるアルカリ金属が、金属カルコゲナイド半導体のアルカリ金属原子として全てが取り込まれない場合があるためである。
本発明の第1の工程において、金属カルコゲナイド半導体原料を含有する水溶液を、加熱された前記第1の電極層上に噴霧する必要がある。
即ち、本発明の金属カルコゲナイド半導体原料の水溶液において、水溶性の金属塩は、水中でイオン乖離するカウンターイオンを有するのが一般的であり、このカウンターイオンが脱離して金属カルコゲナイド半導体に転換するので、カウンターイオンの脱離を塗布によって固着した膜で行うと、膜が多孔質になって、均一性が不足する場合が発生するため、加熱された第1の電極層上でこの脱離を行うことにより孔状の欠陥が発生しにくくなるためである。
また、水溶性カルコゲン含有有機化合物は、上述したように、本発明の金属カルコゲナイド半導体にカルコゲン元素を供給する機能を有するため、カルコゲン元素以外の有機成分が脱離する場合があり、この場合も、塗布によって固着した膜で行うと、膜が多孔質になって、均一性が不足する場合が発生するため、加熱された第1の電極層上でこの脱離を行うことにより孔状の欠陥が発生しにくくなるためである。
更に、本発明の金属カルコゲナイド半導体原料の水溶液を噴霧によって第1の電極層上に金属カルコゲナイド半導体を含有する膜を形成することによって、本発明の水性媒体がその場で容易に揮発し、第1の電極層上に金属カルコゲナイド半導体を含有する膜の孔状欠陥が減少する。
そして、その操作を複数回繰り返すことによって孔状欠陥がなくなるため、複数回噴霧することが好ましい。
本発明において第1の電極層を加熱する温度は特に限定されず、本発明のカルコゲナイド半導体原料の反応性や基板の耐熱温度によって適宜選択される。
例えば、水溶性カルコゲン含有有機化合物として好適に使用されるチオウレアを1つのカルコゲナイド半導体原料と使用する場合、チオウレアは240℃付近で分解して硫黄を放出する機能を有するため、好ましい基板を加熱する温度は240℃以上であり、より好ましくは270℃以上である。更に、加熱された基板が、本発明の水性媒体で多少冷却されることを考慮すると、更に好ましくは300℃以上である。また、大気雰囲気に代表される酸素を含有する雰囲気で使用する場合は、チオウレアが発火する恐れがあるので、好ましくは、430℃以下、より好ましくは400℃以下が、基板を加熱する温度として好適である。
本発明の第2の工程において、金属カルコゲナイド半導体の結晶品質を目的として、加熱された第1の電極層上に噴霧して設置した後に焼成を行う。
このような焼成は、大気下、非反応性ガス雰囲気下、硫黄及び/又はセレンから選択されるカルコゲン元素を含む気体雰囲気下、真空雰囲気下など、目的に応じた雰囲気で行うことが可能であるが、硫黄及び/又はセレンから選択されるカルコゲン元素を含む気体雰囲気下で行うことが好ましい。即ち、金属カルコゲナイド半導体を硫黄及び/又はセレンから選択されるカルコゲン元素を含まない環境で焼成すると、カルコゲン元素の脱離が発生して、半導体の電気物性が低下する場合があるためである。
焼成温度は特に限定されず、金属カルコゲナイド半導体の物性に応じて適宜設定すればよいが、結晶成長の観点から、高温の方が好ましく、好ましくは300℃以上、より好ましくは350℃以上、更に好ましくは400℃以上、最も好ましくは450℃以上である。上限については、特に限定されないが、第1の電極層や第1の電極層を支持する基板の耐熱温度以下が好ましい。
具体的には、例えば、石英ガラスの基板を用いる場合は、1000℃以下が好ましく、ソーダライムガラスの基板を用いる場合は600℃以下が好ましく、ポリイミド基板を用いる場合は、450℃以下が好ましい。
このような、硫黄及び/又はセレンから選択されるカルコゲン元素を含む気体雰囲気としては、硫化水素、セレン化水素、二硫化炭素の蒸気、硫黄元素の蒸気、セレン元素の蒸気やこれらの混合物の気体雰囲気が例示できるが、これらの中で、硫黄元素の蒸気、セレン元素の蒸気またはこれらの混合物が好ましく使用される。
即ち、硫黄元素の蒸気、セレン元素の蒸気やこれらの混合物は、単体元素の蒸気のため副生成物がなく純度の高いカルコゲナイド半導体を製造するのに適しているばかりか、常温で固体のため、余剰分を冷却することで容易に取り除くことが可能となり生産性に優れるためである。
また、硫黄及び/又はセレンから選択されるカルコゲン元素を含む気体雰囲気下で金属カルコゲナイド半導体を焼成する場合は、酸素分圧1Pa以下の雰囲気で行うことが好ましい。即ち、酸素分圧が高いと、硫黄及び/又はセレンから選択されるカルコゲン元素が酸化されるばかりか、金属カルコゲナイド半導体の結晶成長が阻害される場合があるためである。
酸素分圧の下限は特に限定されず、酸素分圧が低いほど好ましいが、低い酸素分圧を実現するために、装置が大掛かりになったりして生産性が低下する場合があるので、好ましくは、100nPa以上である。
また、本発明において、第2工程の焼成を、セレンを含む気体雰囲気で行うことが好ましい。即ち、上述したように、金属カルコゲナイド半導体がカルコゲン元素としてセレンを多く含む場合、硫黄を多く含む場合に比べて半導体物性に優れるためである。このようにすることによって、上述したような生産性に優れるチオール、チオケトンから選択される硫黄含有有機化合物類を本発明の第1の工程で使用される水溶性カルコゲン含有有機化合物として使用した場合であっても、その硫黄の大部分をセレンに置き換え、半導体物性に優れた金属カルコゲナイド半導体が得られる。
従って、本発明の光電変換素子は、第1の電極層を加熱し、第1の電極層上に、金属カルコゲナイド半導体を構成する金属を含有する1種以上の水溶性金属塩と、硫黄を含有する1種以上の水溶性カルコゲン含有有機化合物とを含有する金属カルコゲナイド半導体原料を含有する水溶液を複数回噴霧して光吸収層の前駆体を形成する第1の工程と、光吸収層の前駆体を、セレンを含み、かつ、酸素分圧1Pa以下の気体雰囲気で焼成して光吸収層を形成する第2の工程とを経てより好適に製造される。
更に、上述したように、セレンを含む気体雰囲気がセレン元素の蒸気であることが好ましい。
このようにして製造された光吸収層上には、光電変換素子のところで述べた、バッファ層や第2の電極層を設置して光電変換素子が作製できる。
また、このような場合、光電変換素子のところで述べたとの同様に、バッファ層は光吸収層と異なる極性の半導体であり、第2の電極層と第1の電極層のいずれか片方は透光性を有する。
次に、本発明の光電変換素子の用途について説明する。
本発明の光電変換素子は、光エネルギーを電気エネルギーに変換する機能を有する。従って、光エネルギーを与えて発電する光触媒電極、光センサーや太陽電池といった受光素子として用いられる。
本発明の光電変換素子は、容易に大面積で製造できることも特徴であり、太陽電池として好適に使用される。
さらに、本発明の光電変換素子に、電気エネルギーを与えると発光することも可能なので、発光素子としての使用も可能になる。
以下、本発明を実施例、比較例を用いて具体的に説明するが、本発明はこれらの範囲に限定されない。
本発明で用いられる測定法は、以下のとおりである。
<二次イオン質量分析測定>
アルバックファイ株式会社製、二次イオン質量分析装置ADEPT−1010型を用いて不純物濃度分布を測定した。測定は、1次イオンビーム:イオン種Cs+、加速電圧5kVの条件で行った。
<結晶構造>
株式会社リガク製X線回折装置Ultima−IVを用い、ターゲットとしてCuを用い、励起電圧40kV、励起電流40mAとし、操作軸は2θ/θとして測定した。検出器には、高速1次元X線検出器D/teX Ultraを用いた。
<発電特性>
光学顕微鏡を用いて、光電変換素子の面積を算出し、次いで、ソーラーシミュレーター(ワコム電創(株)製)によって、約100mW/cmである擬似太陽光を光電変換素子に照射し、ソースメジャーメーター(Agilent Technologies社製B2902A型)を用いて、電流−電圧特性を測定し、短絡電流密度(Jsc)、開放電圧値(Voc)、曲線因子(F.F.)、エネルギー変換効率を求めた。
<アルカリ金属塩含有金属カルコゲナイド半導体原料水溶液の調製>
金属カルコゲナイド半導体原料として、Cu(NO・3HO、In(NO・3HO、Ga(NO・nHO(n=7〜9)を、アルカリ金属塩としてNaNOを、この順で、0.18/0.14/0.06/0.06mol/Lの濃度になるよう秤量、調合した水溶液A1を調整した。この際、Ga(NO・nHO(n=7〜9)のnは8と計算して秤量した。別に、チオウレアの1.6mol/Lの水溶液B1を調整した。次いで、水溶液A1と水溶液B1を容量比1:1で混合し、噴霧に供する水溶液C1を作製した。
<光電変換素子の作製>
360℃にセットしたホットプレート上に、1mm厚のソーダライムガラス上に第1の電極層として1μm厚のモリブデンを成膜した導電性の基板をモリブデンが表面側になるようにセットし、次いで、水溶液C1を2mL/分の速度で1分間噴霧する操作を3回行って、合計6mLの水溶液を噴霧した。この試料をX線回折法で分析したところ、低結晶性のCuInSが形成していた。
次いで、得られた基板をホウ珪酸ガラス製の片方を封じた管に投入し、次いで硫黄を5mg同じ管に投入した後、酸素分圧が約0.01Paの真空に保ちながら、ホウ珪酸ガラス製管の他方を封じて、管内を真空に保った状態にした。次いで、この管を電気炉を用いて560℃で10分間加熱し、p型のCu(In,Ga)(S,Se)の光吸収層を形成した。
次いで、水70.5mLを60℃に加熱し、次いで、3CdSO・8HOの粉0.13gを水に溶解して10.5mLにした硫酸カドミウム水溶液を添加し、更に、28%アンモニア水19mLを添加した。この水溶液が60℃になった時点で、上記、光吸収層と第1の電極層を有する基板をこの水溶液に浸漬し、更に、チオウレアを0.845g添加して7分間、攪拌しながら60℃に保ち、n型のCdSのバッファ層を作製した。
更に、約80nm厚の酸化亜鉛バッファ層と、電極として約1μm厚のアルミニウムをドープした酸化亜鉛(AZO)をこの順で成膜して光電変換素子を作製した。アルミニウムをドープした酸化亜鉛(AZO)電極のシート抵抗は、約10Ω/□であった。
<光電変換素子の評価>
この光電変換素子の発電特性を評価したところ、短絡電流密度(Jsc):23mA/cm、開放電圧(Voc):0.63V、曲線因子(F.F.):60%でエネルギー変換効率:8.8%であった。
また、二次イオン質量分析測定法を用いて、ナトリウム原子濃度を測定したところ、1.0×1021atoms/cmであった。
NaNOの濃度を0.05mol/Lにした以外は、実施例1と同様にして、アルカリ金属塩含有金属カルコゲナイド半導体原料水溶液を調整し、実施例1と同様にして光電変換素子を作製した。この光電変換素子の発電特性を評価したところ、短絡電流密度(Jsc):26mA/cm、開放電圧(Voc):0.53V、曲線因子(F.F.):52%でエネルギー変換効率:7.1%であった。
また、二次イオン質量分析測定法を用いて、ナトリウム原子濃度を測定したところ、1.5×1021atoms/cmであった。
NaNOの濃度を0.03mol/Lにした以外は、実施例1と同様にして、アルカリ金属塩含有金属カルコゲナイド半導体原料水溶液を調整し、実施例1と同様にして光電変換素子を作製した。この光電変換素子の発電特性を評価したところ、短絡電流密度(Jsc):25mA/cm、開放電圧(Voc):0.47V、曲線因子(F.F.):50%でエネルギー変換効率:5.9%であった。
また、二次イオン質量分析測定法を用いて、ナトリウム原子濃度を測定したところ、7.6×1020atoms/cmであった。
[比較例1]
NaNOの濃度を添加しなかった以外は、実施例1と同様にして、金属カルコゲナイド半導体原料水溶液を調整し、実施例1と同様にして光電変換素子を作製した。この光電変換素子の発電特性を評価したところ、短絡電流密度(Jsc):22mA/cm、開放電圧(Voc):0.46V、曲線因子(F.F.):47%でエネルギー変換効率:4.7%であった。
また、二次イオン質量分析測定法を用いて、ナトリウム原子濃度を測定したところ、3.0×1020atoms/cmであった。
本発明の光電変換素子は、高いエネルギー変換効率を有し、また、容易に製造することが可能であり、とりわけ太陽電池として好適である。
1 第1の電極層
2 光吸収層
3 バッファ層
4 第2の電極層

Claims (16)

  1. 導電性の第1の電極層と、該第1の電極層上に設けられ、硫黄及び/又はセレンから選択されるカルコゲン元素を含有する金属カルコゲナイド半導体を含む光吸収層と、該光吸収層上に設けられ、該光吸収層と異なる極性の半導体を含むバッファ層と、該バッファ層上に設けられた第2の電極層を備えている光電変換素子であって、
    前記光吸収層中のアルカリ金属原子の濃度が、4.0×1020atoms/cm以上、5.0×1021atoms/cm以下であることを特徴とする光電変換素子。
  2. 前記金属カルコゲナイド半導体が、銅を含有することを特徴とする請求項1に記載の光電変換素子。
  3. 前記金属カルコゲナイド半導体が、インジウム及び/又はガリウムを含有することを特徴とする請求項2に記載の光電変換素子。
  4. 前記光吸収層が、前記金属カルコゲナイド半導体を構成する金属を含有する1種以上の水溶性金属塩と、硫黄及び/又はセレンから選択されるカルコゲン元素を含有する1種以上の水溶性カルコゲン含有有機化合物とを含有する金属カルコゲナイド半導体原料と、水溶性アルカリ金属塩とを含有する水溶液を、加熱された前記第1の電極層上に噴霧して形成されていることを特徴とする請求項1,2又は3に記載の光電変換素子。
  5. 前記光吸収層が、前記金属カルコゲナイド半導体を構成する金属を含有する1種以上の水溶性金属塩と、硫黄及び/又はセレンから選択されるカルコゲン元素を含有する1種以上の水溶性カルコゲン含有有機化合物と、水溶性アルカリ金属塩とを含有する金属カルコゲナイド半導体原料を含有する水溶液を、加熱された前記第1の電極層上に複数回噴霧した後、硫黄及び/又はセレンから選択されるカルコゲン元素を含み、かつ、酸素分圧1Pa以下の気体雰囲気で焼成して形成されていることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の光電変換素子。
  6. 前記第1及び第2の電極層のいずれか一方は、前記光吸収層に光を導入するために透光性であることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の光電変換素子。
  7. 前記光吸収層と前記バッファ層の界面において、前記光吸収層に20nm以上400nm以下の凹凸状の粗面が形成されていることを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載の光電変換素子。
  8. 導電性の第1の電極層上に金属カルコゲナイド半導体を含む光吸収層を積層して形成された積層構造を含み、
    前記第1の電極層を加熱し、該第1の電極層上に、前記金属カルコゲナイド半導体を構成する金属を含有する1種以上の水溶性金属塩と、硫黄及び/又はセレンから選択されるカルコゲン元素を含有する1種以上の水溶性カルコゲン含有有機化合物と、水溶性アルカリ金属塩とを含有する金属カルコゲナイド半導体原料を含有する水溶液を噴霧して前記光吸収層の前駆体を形成する第1の工程と、
    前記光吸収層の前記前駆体を焼成して前記光吸収層を形成する第2の工程と
    を有していることを特徴とする光電変換素子の製造方法。
  9. 前記第1の工程で使用するカルコゲン元素を含有する1種以上の水溶性カルコゲン含有有機化合物が硫黄を含有する化合物であり、前記第2の工程の焼成を、セレンを含み、かつ、酸素分圧1Pa以下の気体雰囲気で行うことを特徴とする請求項8に記載の光電変換素子の製造方法。
  10. 前記第1の工程における前記前駆体が、金属カルコゲナイド半導体で、前記第2の工程における前記前駆体の焼成により、前記光吸収層と前記バッファ層の界面において、前記光吸収層に20nm以上400nm以下の凹凸状の粗面を形成することを特徴とする請求項8又は9に記載の光電変換素子の製造方法。
  11. 導電性の第1の電極層と、該第1の電極層上に設けられ、硫黄及び/又はセレンから選択されるカルコゲン元素を含有する金属カルコゲナイド半導体を含む光吸収層と、該光吸収層上に設けられ、該光吸収層と異なる極性の半導体を含むバッファ層と、該バッファ層上に設けられた第2の電極層を備えている光電変換素子の製造方法であって、
    前記光吸収層中のアルカリ金属原子の濃度が、4.0×1020atoms/cm以上、5.0×1021atoms/cm以下であることを特徴とする光電変換素子の製造方法。
  12. 前記金属カルコゲナイド半導体が、銅を含有することを特徴とする請求項11に記載の光電変換素子の製造方法。
  13. 前記金属カルコゲナイド半導体が、インジウム及び/又はガリウムを含有することを特徴とする請求項12に記載の光電変換素子の製造方法。
  14. 前記光吸収層が、前記金属カルコゲナイド半導体を構成する金属を含有する1種以上の水溶性金属塩と、硫黄及び/又はセレンから選択されるカルコゲン元素を含有する1種以上の水溶性カルコゲン含有有機化合物とを含有する金属カルコゲナイド半導体原料と、水溶性アルカリ金属塩とを含有する水溶液を、加熱された前記第1の電極層上に噴霧して形成されていることを特徴とする請求項11,12又は13に記載の光電変換素子の製造方法。
  15. 前記光吸収層が、前記金属カルコゲナイド半導体を構成する金属を含有する1種以上の水溶性金属塩と、硫黄及び/又はセレンから選択されるカルコゲン元素を含有する1種以上の水溶性カルコゲン含有有機化合物と、水溶性アルカリ金属塩とを含有する金属カルコゲナイド半導体原料を含有する水溶液を、加熱された前記第1の電極層上に複数回噴霧した後、硫黄及び/又はセレンから選択されるカルコゲン元素を含み、かつ、酸素分圧1Pa以下の気体雰囲気で焼成して形成されていることを特徴とする請求項11乃至14のいずれかに記載の光電変換素子の製造方法。
  16. 前記第1及び第2の電極層のいずれか一方は、前記光吸収層に光を導入するために透光性であることを特徴とする請求項11乃至15のいずれかに記載の光電変換素子の製造方法。
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