JP2015105308A - 液体含有マスターバッチ - Google Patents

液体含有マスターバッチ Download PDF

Info

Publication number
JP2015105308A
JP2015105308A JP2013247520A JP2013247520A JP2015105308A JP 2015105308 A JP2015105308 A JP 2015105308A JP 2013247520 A JP2013247520 A JP 2013247520A JP 2013247520 A JP2013247520 A JP 2013247520A JP 2015105308 A JP2015105308 A JP 2015105308A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
liquid
resin
master batch
bottle
molding
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Granted
Application number
JP2013247520A
Other languages
English (en)
Other versions
JP6209957B2 (ja
Inventor
洋介 阿久津
Yosuke Akutsu
洋介 阿久津
晋也 岩本
Shinya Iwamoto
晋也 岩本
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Toyo Seikan Group Holdings Ltd
Original Assignee
Toyo Seikan Group Holdings Ltd
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Toyo Seikan Group Holdings Ltd filed Critical Toyo Seikan Group Holdings Ltd
Priority to JP2013247520A priority Critical patent/JP6209957B2/ja
Publication of JP2015105308A publication Critical patent/JP2015105308A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP6209957B2 publication Critical patent/JP6209957B2/ja
Active legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Images

Landscapes

  • Processes Of Treating Macromolecular Substances (AREA)
  • Compositions Of Macromolecular Compounds (AREA)

Abstract

【課題】液体含有マスターバッチであって、含有されている液体の粘度が低く、しかも高濃度で液体を含有している場合においても、該液体のブリードが長期間にわたって有効に抑制されている液体含有マスターバッチを提供する。【解決手段】ガラス転移点が35℃以上のマトリックス樹脂(A)中に、粘度(23℃)が1000mPa・s以下である液体(B)が分散されていることを特徴とする。【選択図】なし

Description

本発明は、液体含有マスターバッチに関するものであり、特には、液層を表面に備えたプラスチック成形体を成形するために使用されるマスターバッチに関するものである。
プラスチックは、成形が容易であり、種々の形態に容易に成形できることなどから、各種の用途に広く使用されている。特に、容器壁の内面が低密度ポリエチレンなどのオレフィン系樹脂で形成されたボトル形状のオレフィン系樹脂容器は、内容物を絞り出し易いという観点から、ケチャップなどの粘稠なスラリー状或いはペースト状の内容物を収容するための容器として好適に使用されている。
また、粘稠な内容物を収容するボトルでは、該内容物を速やかに排出するため、或いはボトル内に残存させることなくきれいに最後まで使いきるために、ボトルを倒立状態で保存しておかれる場合が多い。従って、ボトルを倒立させたときには、粘稠な内容物がボトル内壁面に付着残存せずに、速やかに落下するという特性が望まれている。
このような要求を満足するボトルとして、例えば、特許文献1には、最内層が、MFR(メルトフローレート)が10g/10min以上のオレフィン系樹脂からなる多層構造のボトルが提案されている。
この多層構造ボトルは、最内層が油性内容物に対する濡れ性に優れており、この結果、ボトルを倒立させたり、或いは傾斜させたりすると、マヨネーズ等の油性内容物は、最内層表面に沿って広がりながら落下していき、ボトル内壁面(最内層表面)に付着残存することなく、綺麗に排出することができるというものである。
また、ケチャップのような植物繊維が水に分散されている粘稠な非油性内容物用のボトルについては、特許文献2或いは特許文献3に、最内層に滑剤として飽和或いは不飽和の脂肪族アミドが配合されたポリオレフィン系樹脂ボトルが提案されている。
上述した特許文献1〜3は、何れもプラスチック容器について、容器内面を形成する熱可塑性樹脂組成物の化学組成によって内容物に対する滑り性を向上させたものであり、ある程度の滑り性向上は達成されているが、用いる熱可塑性樹脂の種類や添加剤が限定される為、滑り性向上には限界があり、飛躍的な向上は達成されていないのが実情である。
このような観点から、本発明者等は、内容物と接触する内表面に内容物とは異なる液体の層が形成されているプラスチック容器を提案している(例えば、特願2012−157744号)。即ち、かかる容器では、内容物と非混和性の液体による液層を内面に形成しておくことにより、内容物に対する滑り性を従来公知のものに比して格段に向上させることに成功したものであり、容器を倒立或いは傾倒せしめることにより、容器内壁に付着・残存させることなく、内容物を速やかに容器外に排出することが可能となっている。
このように表面に液層を形成することにより滑り性等の表面特性を改質方法は、容器の形態に限らず、フィルム等の形態を有する成形体にも適用できるものであり、液体の種類を適宜選択することにより、表面の性質を大幅に改質することができる。
しかるに、上記のように、容器等の成形体の表面に液体の層を形成して表面特性を改質するという手段では、容器を成形後、容器の内面に内容物ではない液体を浸漬、スプレー等により施すという格別の液層形成手段を採用しなければならず、従って、生産性向上の観点からさらなる改良が必要である。
このため、本発明者等は、容器の内面が、容器内容物とは非混和性の液体(以下、潤滑液と呼ぶ)と成形用樹脂とを含む樹脂組成物により成形されている流動性内容物用の容器を、先に提案した(特願2013−91244号)。
かかる容器は、上記樹脂組成物を内面形成用樹脂材料として用いて成形することにより、製造される。即ち、成形後に、格別の処理を行わずとも、容器の内面に前記樹脂組成物に含まれる潤滑液が偏析し、これにより、自動的に潤滑液の層が容器内面に形成されることとなり、極めて高い生産性で該容器を製造できるという利点がある。
ところで、上記のような潤滑液含有樹脂組成物を用いて容器を成形する場合、工業的には、当然、前記潤滑液と成形用樹脂とを含むペレット形態のマスターバッチが使用される。即ち、成形時に、その都度、潤滑液と成形用樹脂とを混合して樹脂組成物を調製するのでは、効率が悪く、潤滑液を多量に収容するタンクなども必要となってしまう。従って、該潤滑液を高濃度で含むペレット形状のマスターバッチを予め調製し、保管、搬送などの取り扱いは、このマスターバッチの形で潤滑液を取り扱い、成形時に、該マスターバッチを成形用樹脂により希釈して、容器の内面形成用樹脂組成物を調製し、容器への成形が行われることとなる。
そこで、問題となるのはマスターバッチからの液体のブリード性である。即ち、マスターバッチに含まれる液体の濃度が薄く(例えば5質量%以下)、或いは、この液体の粘度が非常に高い場合(例えば粘度が100万センチストークス以上)には問題は無いのであるが、マスターバッチの液体濃度が高い場合や液体粘度が低い場合には、マスターバッチから液体がブリードしてしまい、該ペレットがベタついて取扱いが困難となったり、液体のブリーディングにより、これを希釈して成形用の樹脂組成物を調製した時、液体濃度が目標値よりも小さくなってしまうなどの問題があることが、本発明者等の研究により判った。特に、この傾向は、液体と混合する成形用樹脂がスクイズ容器等の成形に使用されるポリエチレンやポリプロピレン等のオレフィン系樹脂の場合に顕著である。
例えば、液体成分を含むマスターバッチに関して、特許文献4の実施例には、ポリグリセリンの脂肪酸エステル(液体成分)をポリエチレンやポリプロピレンに5%添加し、押出成形機によりマスターバッチペレットを作成し、このマスターバッチペレットを、ポリエチレンやポリプロピレンの樹脂ペレットと混合しての押し出しにより、フィルムを成形したことが記載されている。しかるに、この特許文献4では、液体成分であるポリグリセリンの濃度が5%と低いため、このマスターバッチから形成される成形用樹脂組成物は、その濃度がかなり低いもの(特許文献4の実施例では、何れも1.5%以下である)に限られてしまい、高濃度で液体成分を含む成形用樹脂組成物を調製することができない。
また、特許文献5の実施例には(段落[0022]参照)、ポリアミド樹脂600gに、粘度が100万センチストークスのポリジメチルシロキサン(液体成分)400g及びカルボキシル基含有ポリオルガノシロキサン60gからなるマスターペレットを調製したことが開示されている。この特許文献5では、液体成分であるポリジメチルシロキサンを高濃度で含んでいるものの、この液体成分の粘度が著しく高く、例えばグリセリンエステルなどの低粘度液体には適用できない。
特開2007−284066号公報 特開2008−222291号公報 特開2009−214914号公報 特公昭43−8605号公報 特開平6−200151号公報
従って、本発明の目的は、液体含有マスターバッチであって、含有されている液体の粘度が低く、しかも高濃度で液体を含有している場合においても、該液体のブリーディングが長期間にわたって有効に抑制されている液体含有マスターバッチ及びその使用方法を提供することにある。
本発明の他の目的は、液層を表面に備えたプラスチック成形体を成形するために好適に使用される液体含有マスターバッチ及びその使用方法を提供することにある。
本発明によれば、ガラス転移点が35℃以上のマトリックス樹脂(A)中に、粘度(23℃)が1000mPa・s以下である液体(B)が分散されていることを特徴とするマスターバッチが提供される。
本発明のマスターバッチにおいては、
(1)前記液体(B)は、前記マトリックス樹脂(A)100質量部当たり10〜70質量部で存在すること、
(2)前記マトリックス樹脂(A)が、環状オレフィン系樹脂であること、
が好ましい。
本発明によれば、また、上記のマスターバッチを、マスターバッチを、ガラス転移点が35℃未満の成形用樹脂に混合し、該混合物を成形する工程を含むことを特徴とするマスターバッチの使用方法が提供される。
かかる方法においては、
(3)前記マスターバッチ中のマトリックス樹脂(A)が、環状オレフィン系樹脂であり、前記成形用樹脂が、非環状オレフィン系樹脂であること、
が望ましい。
本発明のマスターバッチは、液体成分として、粘度が1000mPa・s以下と低粘性の液体(B)を含んでいながら、そのブリーディングを長期にわたって有効に抑制することができ、例えば後述する実施例からも明らかなように、液体(B)を、マトリックス樹脂(A)100質量部当り最大で67質量部(マスターバッチ当りでは約40質量%程度)まで含有させることができ、しかも約3か月もの長期にわたって、該液体(B)のブリーディングを有効に防止できる。
即ち、本発明では、マトリックス樹脂(A)としてガラス転移点(Tg)が35℃以上の樹脂が使用されているため、通常の保存環境下である室温付近では、低粘性の液体(B)はガラス状となっている樹脂中に閉じ込められた状態にある。この結果、多量の低粘性液体(B)が分散されている状態であっても、長期間にわたって、そのブリーディングを有効に回避することが可能となる。例えば、ガラス転移点(Tg)が35℃よりもかなり低いポリエチレンやポリプロピレンでは、室温付近では、分子同士の拘束が緩く、分子が可動し易く、このため、これをマトリックス樹脂(A)として使用した場合には、分散されている液体(B)は容易に分子間をすり抜けてしまい、この結果、ブリーディングを生じてしまうこととなる。
本発明の最も大きな利点は、上記のマトリックス樹脂(A)として、環状オレフィン系樹脂を使用することができるという点にある。
即ち、環状オレフィン系樹脂は、ポリエチレンやポリプロピレン等の非環状のオレフィン系樹脂と相容性が高く、これらの非環状のオレフィン系樹脂中に微分散する。しかるに、粘稠な内容物の絞り出しなどに適したスクイズボトルなどの可撓性容器は、主として上記の非環状オレフィン系樹脂を用いて成形され、しかも、このような可撓性容器において、容器の内面に所定の液体の層を形成することにより、粘稠な内容物に対する滑り性を高め、その排出性を著しく向上させることができる。
上記の説明から理解されるように、環状オレフィン系樹脂をマトリックス樹脂(A)として使用し、所定の液体を分散させた本発明のマスターバッチによれば、このマスターバッチを非環状オレフィン系樹脂(例えばポリエチレン)と混合することにより、液層を形成するに十分な量の液体を含む成形用樹脂組成物を調製することが可能となり、かかる成形用樹脂組成物を用いて成形することにより、内面に液層を備えた容器を得ることができ、液体による表面特性の改善効果を最大限に発揮させることができる。
本発明のマスターバッチを用いて成形される容器の代表例を示す概略図。
<マスターバッチ>
本発明のマスターバッチは、マトリックス樹脂(A)中に液体(B)が分散された構造を有する。
マトリックス樹脂(A);
本発明のマスターバッチにおいて、マトリックス樹脂(A)としては、ガラス転移点(Tg)が35℃以上の樹脂が使用される。即ち、ガラス転移点が低いものでは、室温付近での分子同士の拘束力が弱いため、マスターバッチを室温付近で保存したとき、保存中に内部に分散された液体(B)が容易にブリーディングしてしまい、ベタつきを生じ、その取扱いが困難となってしまうこととなり、内部に分散させる液体(B)の量が大きく制限され、さらには、その粘度も大きなものに制限されてしまうこととなる。
また、上記のようなガラス転移点を有するマトリックス樹脂(A)を用いて形成されるマスターバッチのガラス転移点は、後述する液体(B)が分散されているため、マトリックス樹脂(A)のガラス転移点よりも低くなる。液体(B)の存在により分子間の拘束力が弱くなるためである。従って、液体(B)のブリーディングを防止するためには、マトリックス樹脂(A)のガラス転移点はより高く、例えば50℃以上であることが好ましく、これにより、液体(B)が分散されているマスターバッチの状態でのガラス転移点をより高くしてマトリックス樹脂の分子間の同士の拘束力をより高くし、液体(B)のブリーディング防止効果をより一層高めることができる。
このようなマトリックス樹脂(A)としては、溶融押出しが可能であり且つガラス転移点が上記範囲内にある限り、種々の樹脂を使用することができ、例えば、マスターバッチを用いて成形される成形体の形態や用途等に応じた適宜の樹脂を使用することができる。即ち、ポリエチレンテレフタレート(PET)に代表されるポリエステル樹脂や、ナイロン6,6に代表されるポリアミド樹脂、さらにはポリカーボネートやアクリル系樹脂などを使用することができるが、本発明では、特に環状オレフィン系樹脂の中から、ガラス転移点が上記範囲にあるものを選択して使用することが最も好適である。
即ち、環状オレフィン系樹脂は、それ自体で種々の形態に成形可能であるばかりか、先に説明したように、粘稠な内容物が収容されるスクイズボトルなどの可撓性容器の成形に使用される非環状のオレフィン系樹脂(ポリエチレンやポリプロピレン等)との相溶性に優れており、環状オレフィン系樹脂がマトリックス樹脂として使用されるマスターバッチは、このような非環状オレフィン系樹脂と混合(希釈)して、容器成形用の樹脂組成物として使用することができるからである。
このような環状オレフィン系樹脂は公知であり、例えば非環状オレフィンと環状オレフィンとの非晶質乃至低結晶性の共重合体(COC)が代表的である。
上記の非環状オレフィンとしては、エチレンが好適であるが、その他に、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン、3−メチル1−ペンテン、1−デセン等の炭素数3〜20のα−オレフィンが、それぞれ、単独或いはエチレンとの組み合わせで使用される。
環状オレフィンとしては、基本的には、エチレン系不飽和結合とビシクロ環とを有する脂肪族炭化水素化合物(例えばシクロヘキセン)が代表的であるが、シクロヘキセン環の内部に橋絡基(例えばメチレン基やエチレン基など)を有しているビシクロ環や、ビシクロ環にさらに脂肪族環が結合した多環構造を有している脂肪族炭化水素も好適である。
このような多環構造の脂肪族炭化水素化合物は、下記式(1)で表される。
Figure 2015105308
(1)
式中、Zは、メチレン基またはエチレン基である。
上記多環構造の脂肪族炭化水素化合物の具体例としては、以下のものを例示することができる。
Figure 2015105308
ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン
Figure 2015105308
トリシクロ[4.4.0.12.5]−3−ウンデセン
Figure 2015105308
テトラシクロ[4.4.0.12.5.17.10]−3
−ドデセン
Figure 2015105308
ペンタシクロ[8.4.0.12.5.1.9.12.
8.13]−3−ヘキサデセン
Figure 2015105308
ペンタシクロ[6.6.1.13.6.0.2.7.
9.14]−4−ヘキサデセン
勿論、環状オレフィンは、上記のものに限定されるものではなく、例えば、式(1)中の脂肪族環にアルキル基等の置換基を1又は2以上有するものであってもよく、特許第3893650号等に例示されているものであってもよい。
即ち、本発明では、上記の環状オレフィンと非環状オレフィンとの共重合体であって、共重合比や重合度などの調節により、ガラス転移点が前述した範囲内にある環状オレフィン系樹脂がマトリックス(A)として好適に使用される。
液体(B);
上記のマトリックス樹脂(A)中に分散される液体(B)は、このマスターバッチを成形用の樹脂と混合して成形体を製造したとき、その表面に該液体(B)が析出した液層を形成し、かかる液層により、成形体の表面に液体(B)の種類に応じた表面特性を発現させるというものである。従って、かかる液体(B)は、当然、大気圧で揮散しないような沸点、例えば100℃以上の沸点を有するものであり、且つ成形体表面に付与しようとする表面特性に応じて選択される。
ところで、本発明においては、上記の液体(B)は、粘度(23℃)が1000mPa・s以下、好ましくは500mPa・以下、さらに好ましくは100mPa・sの低粘性液体でなければならない。即ち、高粘性の液体は、ブリーディング傾向が少なく、マトリックス樹脂のガラス転移点にかかわらず、多量にマトリックス樹脂に分散できるのであるが、上記のような粘度の低粘性液体は、ブリーディング傾向が高く、前述した高ガラス転移点のマトリックス樹脂(A)を使用しなければ、多量に分散させることが困難となるからである。
例えば、本発明では、低粘性の上記液体(B)は、前述したマトリックス樹脂100質量部当り10〜70質量部、特に15〜65質量部の量でマスターバッチ中に配合される。即ち、本発明では、低粘性の液体(B)をこのように多量配合した場合においても、長期にわたって安定にブリーディングを防止することができ、製造後、他の樹脂と混合するまでの保管中に、ブリーディングによりベタつき、ハンドリング性が悪くなるなどの不都合を有効に回避することができる。
上述した液体(B)の種類としては、粘度が上記範囲内にあり、大気圧下で揮散しないような沸点を有するものであれば特に制限されず、上記でも述べたように、マスターバッチを用いて成形する成形体表面に付与する表面特性や成形体の使用形態などに応じて、適宜のものを使用することができる。
例えば、撥水性を付与しようとする場合には、シリコーンオイル、グリセリン脂肪酸エステル、流動パラフィン、食用油脂などの中から、前述した粘度を有するものを使用することができる。
また、撥油性を付与しようとする場合には、水あるいは親水性の高いイオン液体等を使用することができ、成形体の用途も考慮して、適宜の液体を選択すればよい。
さらに、成形体が容器であり、粘稠な内容物に対する滑り性を高めるようとするときには、用いる液体(B)は、内容物に対して非混和性であり、内容物と混ざり合わないようなものが選択される。内容物に対して混和性であると、容器内面に露出した液体が内容物と混ざり合ってしまい、容器内面から脱落してしまい、目的とする表面特性を付与することが困難となってしまうからである。
<マスターバッチの調製及び使用>
上述した本発明のマスターバッチは、前述したマトリックス樹脂(A)と液体(B)との所定量を、例えば押出機の混練部等へ供給して混練し、溶融押出し、溶融押出物をペレタイザーなどにより切断し、所定の大きさのペレットとして保管、搬送或いは販売等を通して、使用に供される。即ち、製造直後から使用までの間に、液体(B)がブリーディングしてペレットがベタつくなどの不都合を生じることが有効に防止されている。
また、このようにして得られるマスターバッチのガラス転移点は、液体(B)が配合されているため、マトリックス樹脂(A)のガラス転移点よりも低くなることは先にも述べたが、このマスターバッチとマトリックス樹脂(A)のガラス転移点の差は、マトリックス樹脂(A)のガラス転移点や、液体(B)の種類、配合量によって定まる。本発明においては、このガラス転移点差が20℃以上となるように、これらが設定されているとき、マトリックス樹脂(A)のガラス転移点がより高く、且つマトリックス樹脂(A)による液体(B)のブリーディング防止性を最大限に発揮し得る点で、好適である。
このマスターバッチのペレットは、特に、液体(B)による液層が表面に形成された成形体を成形するために使用される。即ち、このマスターバッチペレットを成形用樹脂(希釈樹脂)と混練し、所定濃度で液体(B)を含む混練物を調製し、この混練物を用いて所定形状に成形することにより、目的とする成形体が得られる。また、成形体が多層構造体から成る場合、液層を表面に形成するためだけではなく、例えば、多層構造中の任意の層における液体成分の濃度調整のために、このマスターバッチペレットを成形用樹脂(希釈樹脂)と混合して使用することもできる。
マスターバッチペレットと混合する成形用樹脂としては、マトリックス樹脂(A)と均一に混合し得るものであれば特に制限されないが、本発明においては、特にマトリックス樹脂(A)とは異なる樹脂、特にガラス転移点が35℃未満の樹脂が成形用樹脂として使用することが好適である。即ち、マトリックス樹脂(A)のようにガラス転移点が35℃以上の樹脂は、低粘性の液体(B)のブリーディングを抑制し得るものであるため、かかる低ガラス転移点の樹脂を用いて成形を行うと、ブリーディングし難いため、得られた成形体の表面に液層を形成することが困難となり、液体(B)による表面特性を十分に発揮させることができなくなるおそれがある。
さらに、混練手段や成形手段は、樹脂の物性(例えばメルトフローレート)などに応じて適宜の手段を採用することができるが、低粘性の液体(B)を固体のマトリックス樹脂(A)と混練するという観点から、両者の混練は、押出機等の成形機中の混練部での溶融混練により行うことが好ましく、さらに、成形手段は、押出成形や押出ブロー成形(ダイレクトブロー成形)が好適に適用される。このような手段は、混練時や成形時での液体(B)の逸散を有効に回避でき、さらには液体(B)の存在が成形に及ぼす影響(例えば成形等への液体の付着など)を無視することができるからである。
本発明においては、特に、マトリックス樹脂(A)として前述した環状オレフィン系樹脂が使用されたマスターバッチを使用し、さらに、成形用樹脂として非環状のオレフィン系樹脂を使用することが好ましい。即ち、環状オレフィ系樹脂は、非環状オレフィン系樹脂との相容性が高く、しかも、非環状オレフィン系樹脂、例えば、高、中或いは低密度ポリエチレン、直鎖低密度ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ1−ブテン、ポリ4−メチル−1−ペンテン、エチレンもしくはプロピレンと他のα−オレフィンとの共重合体等は、粘稠な内容物を絞り出すスクイズ容器などの可撓性容器の成形に好適に使用されるものであり、このような可撓性容器の成形に本発明のマスターバッチを使用したとき、液体(B)の液層による表面特性を最大限に活かすことができるからである。
図1には、このような可撓性容器として代表的なダイレクトブローボトルの例を示した。
このボトルは、図1において全体として10で示されており、螺条を備えた首部11、肩部13を介して首部11に連なる胴部壁15及び胴部壁15の下端を閉じている底壁17を有しており、このようなボトル10に粘稠な内容物を充填した後、首部11の上端開口部にアルミ箔等の金属箔19をヒートシールにより施し、所定のキャップ20を装着することにより、包装ボトルとして使用に供される。かかる包装ボトルでは、キャップ20を開封し、シール材が塗布された金属箔19を引き剥がし、ボトル10を傾倒乃至倒立させることにより、必要により胴部壁15をスクイズすることにより容器内容物の取り出しが行われる。
即ち、本発明のマスターバッチは、上記のような容器の成形に好適に使用されるのであり、例えば、環状オレフィン系樹脂をマトリックス樹脂(A)として含むマスターバッチのペレットを、上記の容器の成形に用いる非環状のオレフィン系樹脂と混練し、得られた混練物を、内層成形用の樹脂組成物として使用し、適宜、ガスバリア性樹脂や外層形成用の非環状オレフィン系樹脂、接着剤樹脂と併用しての同時溶融押出により多層パリソンを成形し、引き続いて公知のブロー成形を行って目的とするボトル10を得ることができる。かかるボトル10では、内面層が前述した液体(B)を含んでおり、このため、ボトル10の成形後、徐々に液体(B)が内面に偏析し、液層を形成し、この液層により、内容物に対する滑り性が向上し、ボトル10の傾倒乃至倒立、或いは胴部壁15のスクイズにより、内面への内容物の付着残存を有効に回避し、速やかに内容物を排出することができるのである。
しかも、本発明のマスターバッチは、液体(B)を多量に含んでおり、このため、内層を形成するための成形用樹脂組成物中の液体(B)の濃度を高濃度(例えば3〜20質量%、特に3〜15質量%、最も好ましくは4〜10質量%)に設定することができ、液体(B)の液層による滑り性向上を安定して発揮させることができる。
尚、ボトル10内に収容される内容物は、先の説明から理解されるように、液体(B)の種類によって決定され或いは内容物の種類によって液体(B)の種類が決定されることとなる。
例えば、かかる内容物としては、粘稠なペースト乃至スラリー状の流動性物質、例えば23℃での粘度が100cps以上のもの、具体的には、ケチャップ、水性糊、蜂蜜、各種ソース類、マヨネーズ、乳液等の化粧液、液体洗剤、シャンプー、リンス、コンディショナーなどが好適に使用される。
これらの内、水分含有のもの、例えばケチャップでは、液体(B)として、前述したシリコーンオイル、グリセリン脂肪酸エステル、流動パラフィン、食用油脂などが好適に使用される。中でも、中鎖脂肪酸トリグリセライド、グリセリントリオレート及びグリセリンジアセトモノオレートに代表されるグリセリン脂肪酸エステル、流動パラフィン、食用油脂は、揮散し難く、しかも、食品添加物として認可されており、さらには、無臭であり、内容物のフレーバ−を損なわないという利点もある。
また、マヨネーズ等の乳化系の内容物に対しては、シリコーンオイル、グリセリン脂肪酸エステル、流動パラフィン、食用油脂などが液体(B)として好適であり、その中でも、乳化に時間を有する性質を示す液体が最適である。このような性質を有するものは、これらの中でも比較的分子量の高いものである。
さらに、リンス等の油性の内容物に対しては、水あるいは親水性の高いイオン液体等が液体(B)として好適である。
尚、容器の形態は、図1に示されたダイレクトブローボトルに限定されるものではなく、必要により、カップ或いはコップ状、ボトル状、袋状(パウチ)、シリンジ状、ツボ状、トレイ状等、種々の形態を有することができ、延伸成形されていてもよい。
本発明のマスターバッチの優れた特性を、次の実験例で説明する。
尚、以下の実験例等で行った各種の特性、物性等の測定方法及びマスターバッチの作製、ならびに容器(ボトル)の成形に用いた樹脂等は次の通りである。
1.マスターバッチの安定性評価
後述の方法で作製したマスターバッチ(マスターペレット)をガラス瓶に入れ、22℃60%RHの環境下で所定期間保管し、ペレット表面への液体成分の滲み出しの有無を目視にて評価した。液体の滲み出しが観察されなかったものを○、液体の滲み出しが観察されたものを×とした。
2.マスターバッチを用いたボトル成形性評価
多層ボトルの最内層形成用樹脂として、後述の方法で作成したマスターバッチ(液体含有樹脂組成物)ペレットを高圧法低密度ポリエチレンに混合し、公知のダイレクトブロー成形法によりダイヘッド温度210℃にて多層ボトルを成形した。本ボトルの層構成は次の通りである。
最内層/接着層/ガスバリア層/接着層/最外層
ボトル成形時において、問題無く成形可能だったものを○、問題が生じたものを×とした。
3.ガラス転移点測定
マスターバッチ作製用マトリックス樹脂、ならびに作製したマスターバッチペレットのガラス転移点を、示差走査熱量計(PERKIN ELMER社製 Diamond DSC)を用いて測定を行った。
試料として、各々約10mgを準備し、25℃から−30℃まで降温速度10℃/minで走査し、−30℃にて5分間保持し、−30℃から200℃まで昇温速度10℃/minで走査した際に得られたプロファイルから、各マトリックス樹脂、ならびにマスターバッチのガラス転移点を求めた。ガラス転移点がこの範囲に観測できなかったものについては、−30℃以下と判断した。
<マスターバッチ作製用マトリックス樹脂>
環状オレフィン系樹脂A (COC−A、エチレン−テトラシクロドデセン共重合体)
MFR;15g/10min (260℃、2.16Kg)
密度;1.02g/cm
ガラス転移点(Tg);67℃
環状オレフィン系樹脂B (COC−B、エチレン−テトラシクロドデセン共重合体)
MFR;30g/10min (260℃、2.16Kg)
密度;1.02g/cm
ガラス転移点(Tg);74℃
環状オレフィン系樹脂C (COC−C、エチレン−テトラシクロドデセン共重合体)
MFR;15g/10min (260℃、2.16Kg)
密度;1.04g/cm
ガラス転移点(Tg);128℃
高圧法低密度ポリエチレン (LDPE)
MFR;0.3g/10min (190℃、2.16Kg)
密度;0.922g/cm
ガラス転移点(Tg);−30℃以下
<液体>
中鎖脂肪酸トリグリセライド(MCT)
表面張力:28.8mN/m (23℃)
粘度:33.8mPa・s (23℃)
沸点:210℃以上
引火点:242℃(参考値)
尚、液体の表面張力は固液界面解析システムDropMaster700(協和界面科学(株)製)を用いて23℃にて測定した値を用いた。なお、液体の表面張力測定に必要な液体の密度は、密度比重計DA−130(京都電子工業(株)製)を用いて23℃で測定した値を用いた。また、潤滑液の粘度は音叉型振動式粘度計SV−10((株)エー・アンド・デイ製)を用いて23℃にて測定した値を示した。
<ボトル成形用樹脂>
(最内層形成用ベース材料)
低密度ポリエチレン(LDPE)
MFR;0.3g/10min
密度;0.92g/cm
(最外層形成用材料)
低密度ポリエチレン(LDPE)
MFR;0.3g/10min
(接着層形成用材料)
無水酸変性ポリエチレン
(ガスバリア層形成用材料)
エチレンビニルアルコール共重合体
(エチレン含量:32mol%、密度1.19g/cm、Tg61℃)
<実験例1>
マスターバッチ作製用マトリックス樹脂として、環状オレフィン系樹脂A(COC−A)を、液体として中鎖脂肪酸トリグリセライド(MCT)をそれぞれ用いて、COC−A:MCT=100:25(質量部)となるように、二軸混練押出機((株)テクノベル製 ULTNano05)を用い、シリンダー温度200℃の条件下で溶融混練し、マスターバッチペレットA(MB−A)を作製した。
作製したペレットを3ヶ月間保管した後、マスターバッチの安定性評価を行った。ペレット表面への液体の滲み出しは観察されなかった。
また、作製したマスターバッチペレットAのガラス転移点測定を行った。
さらに、マスターバッチペレットA(MB−A)を低密度ポリエチレンに1:3の重量比となるように混合したものを最内層形成用樹脂として用い、多層ボトルを成形し、ボトル成形性評価を行った。問題無く成形可能であった。また、成形したボトルの内面はMCTの油膜が形成されていた。結果をまとめて表1に示す。
<実験例2>
環状オレフィン系樹脂A(COC−A):中鎖脂肪酸トリグリセライド(MCT)=100:42(質量部)とした以外は実験例1と同様の条件で二軸混練押出機を用いてマスターバッチペレットB(MB−B)を作製した。作製したペレットを3ヶ月間保管した後、マスターバッチの安定性評価を行った。ペレット表面への液体の滲み出しは観察されなかった。
また、作製したマスターバッチペレットBのガラス転移点測定を行った。
さらに、マスターバッチペレットB(MB−B)を低密度ポリエチレンに1:5の重量比となるように混合したものを最内層形成用樹脂として用い、実験例1と同様に多層ボトルを成形し、ボトル成形性評価を行った。問題無く成形可能であった。また、成形したボトルの内面はMCTの油膜が形成されていた。結果をまとめて表1に示す。
<実験例3>
環状オレフィン系樹脂B(COC−B):中鎖脂肪酸トリグリセライド(MCT)=100:25(質量部)とした以外は実験例1と同様の条件で二軸混練押出機を用いてマスターバッチペレットC(MB−C)を作製した。作製したペレットを3ヶ月間保管した後、マスターバッチの安定性評価を行った。ペレット表面への液体の滲み出しは観察されなかった。
また、作製したマスターバッチペレットCのガラス転移点測定を行った。
さらに、マスターバッチペレットC(MB−C)を低密度ポリエチレンに1:3の重量比となるように混合したものを最内層形成用樹脂として用い、多層ボトルを成形し、ボトル成形性評価を行った。問題無く成形可能であった。また、成形したボトルの内面はMCTの油膜が形成されていた。結果をまとめて表1に示す。
<実験例4>
環状オレフィン系樹脂B(COC−B):中鎖脂肪酸トリグリセライド(MCT)=100:42(質量部)とした以外は実験例1と同様の条件で二軸混練押出機を用いてマスターバッチペレットD(MB−D)を作製した。作製したペレットを3ヶ月間保管した後、マスターバッチの安定性評価を行った。ペレット表面への液体の滲み出しは観察されなかった。
また、作製したマスターバッチペレットDのガラス転移点測定を行った。
さらに、マスターバッチペレットD(MB−D)を低密度ポリエチレンに1:5の重量比となるように混合したものを最内層形成用樹脂として用い、多層ボトルを成形し、ボトル成形性評価を行った。問題無く成形可能であった。また、成形したボトルの内面はMCTの油膜が形成されていた。結果をまとめて表1に示す。
<実験例5>
環状オレフィン系樹脂B(COC−B):中鎖脂肪酸トリグリセライド(MCT)=100:67(質量部)とした以外は実験例1と同様の条件で二軸混練押出機を用いてマスターバッチペレットE(MB−E)を作製した。作製したペレットを3ヶ月間保管した後、マスターバッチの安定性評価を行った。ペレット表面への液体の滲み出しは観察されなかった。
さらに、マスターバッチペレットE(MB−E)を低密度ポリエチレンに1:7の重量比となるように混合したものを最内層形成用樹脂として用い、多層ボトルを成形し、ボトル成形性評価を行った。問題無く成形可能であった。また、成形したボトルの内面はMCTの油膜が形成されていた。結果をまとめて表1に示す。
<実験例6>
環状オレフィン系樹脂C(COC−C):中鎖脂肪酸トリグリセライド(MCT)=100:42(質量部)とし、シリンダー温度を220℃とした以外は実験例1と同様の条件で二軸混練押出機を用いてマスターバッチペレットF(MB−F)を作製した。作製したペレットを3ヶ月間保管した後、マスターバッチの安定性評価を行った。ペレット表面への液体の滲み出しは観察されなかった。
また、作製したマスターバッチペレットFのガラス転移点測定を行った。
さらに、マスターバッチペレットF(MB−F)を低密度ポリエチレンに1:5の重量比となるように混合したものを最内層形成用樹脂として用い、多層ボトルを成形し、ボトル成形性評価を行った。問題無く成形可能であった。また、成形したボトルの内面はMCTの油膜が形成されていた。結果をまとめて表1に示す。
<実験例7>
環状オレフィン系樹脂B(COC−B):中鎖脂肪酸トリグリセライド(MCT)=100:11(質量部)とした以外は実験例1と同様の条件で二軸混練押出機を用いてマスターバッチペレットG(MB−G)を作製した。作製したペレットを3ヶ月間保管した後、マスターバッチの安定性評価を行った。ペレット表面への液体の滲み出しは観察されなかった。結果をまとめて表1に示す。
<実験例8>
マスターバッチ作製用マトリックス樹脂として、高圧法低密度ポリエチレン (LDPE)を、液体として中鎖脂肪酸トリグリセライド(MCT)をそれぞれ用いて、LDPE:MCT=100:11(質量部)とした以外は実験例1と同様の条件で二軸混練押出機を用いてマスターバッチペレットH(MB−H)を作製した。作製したペレットを用いて、マスターバッチの安定性評価を行った。ペレット作製一日後から、ペレット表面への液体の滲み出しが観察された。3ヶ月後では、液体の滲み出しが顕著に進行していた。
また、マスターバッチペレットH(MB−H)を低密度ポリエチレンに1:1の重量比となるように混合したものを最内層形成用樹脂として用い、多層ボトルを成形し、ボトル成形性評価を行った。混合した樹脂がホッパー内でブロッキングをおこし、吐出量が安定しないため、安定した成形が困難であった。また、成形したボトルの内面はMCTの油膜が形成されていた。結果をまとめて表1に示す。
Figure 2015105308
表1より、マトリックス樹脂(液体が未配合)のガラス転移点が35℃未満のマトリックス樹脂100質量部に対し、液体を11質量部配合した実験例8においては、マスターバッチの安定性評価の結果から、配合した液体の滲み出しが顕著に起こってしまうのに対し、マトリックス樹脂(液体が未配合)のガラス転移点が35℃以上のマトリックス樹脂100質量部に対し、液体を11乃至67質量部配合した実験例1から7においては、マスターバッチの安定性評価の結果から、配合した液体の滲み出しが抑制できていることが分かる。
また、ボトル成形性評価の結果から、マトリックス樹脂(液体が未配合)のガラス転移点が35℃以上の樹脂を用いて作製した実験例1から7のマスターバッチでは、問題無く成形可能であったのに対し、マトリックス樹脂(液体が未配合)のガラス転移点が35℃未満の樹脂を用いて作製した実験例8では、液体のペレット表面への滲み出しが顕著に起こったため、ホッパーにて混合した低密度ポリエチレンとブロッキングがおこり、吐出量が安定せず、成形が困難であった。
以上のことから、長期にわたり滲み出しが防止された液体を含有するマスターバッチを得るためには、液体が配合されていない状態でのマトリックス樹脂のガラス転移点が35℃以上の樹脂を用いて、液体を分散させることが有効であるといえる。さらに、本マスターバッチは押出成形に特段の問題が無く使用可能であることが明らかになった。
<考察>
ガラス転移点測定の結果から、マスターバッチ(液体含有樹脂組成物)のガラス転移点は、液体配合前のマトリックス樹脂のガラス転移点よりも低下していることが分かった。このガラス転移点の低下は、配合した液体がマトリックス樹脂中に相溶、あるいは部分相溶したためと解釈できる。本発明では、マスターバッチのマトリックス樹脂100質量部中に、最大で液体を67質量部含有させることが可能となるが、これは、マトリックス樹脂中に液体成分が相溶、ないし部分相溶していることが重要な役割をしていると推察される。また、マスターバッチ(液体含有樹脂組成物)の状態でのガラス転移点も35℃以上となっており、室温下でガラス状態となっているため、マトリックス中に分散された液体成分の滲み出しを有効に防止していると推察される。
10:ボトル
11:首部
13:肩部
15:胴部壁
17:底部
19:金属箔
20:キャップ

Claims (5)

  1. ガラス転移点が35℃以上のマトリックス樹脂(A)中に、粘度(23℃)が1000mPa・s以下である液体(B)が分散されていることを特徴とするマスターバッチ。
  2. 前記液体(B)は、前記マトリックス樹脂(A)100質量部当たり10〜70質量部で存在する請求項1に記載のマスターバッチ。
  3. 前記マトリックス樹脂(A)が、環状オレフィン系樹脂である請求項1または2に記載のマスターバッチ。
  4. 請求項1〜3の何れかに記載のマスターバッチを、ガラス転移点が35℃未満の成形用樹脂に混合し、該混合物を成形する工程を含むことを特徴とするマスターバッチの使用方法。
  5. 前記マスターバッチ中のマトリックス樹脂(A)が、環状オレフィン系樹脂であり、前記成形用樹脂が、非環状オレフィン系樹脂である請求項4に記載の使用方法。
JP2013247520A 2013-11-29 2013-11-29 液体含有マスターバッチ Active JP6209957B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2013247520A JP6209957B2 (ja) 2013-11-29 2013-11-29 液体含有マスターバッチ

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2013247520A JP6209957B2 (ja) 2013-11-29 2013-11-29 液体含有マスターバッチ

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2015105308A true JP2015105308A (ja) 2015-06-08
JP6209957B2 JP6209957B2 (ja) 2017-10-11

Family

ID=53435647

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2013247520A Active JP6209957B2 (ja) 2013-11-29 2013-11-29 液体含有マスターバッチ

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP6209957B2 (ja)

Cited By (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO2020166193A1 (ja) * 2019-02-13 2020-08-20 東洋製罐グループホールディングス株式会社 液状滑剤を含む包装用構造体
WO2021111689A1 (ja) 2019-12-02 2021-06-10 東洋製罐グループホールディングス株式会社 プロピレン系樹脂のマスターバッチ

Citations (6)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2006077250A (ja) * 2004-09-10 2006-03-23 Mitsubishi Polyester Film Gmbh ポリエステルフィルム及びその製造方法
JP2006077249A (ja) * 2004-09-10 2006-03-23 Mitsubishi Polyester Film Gmbh ポリエステルフィルム及びその製造方法
JP2009203339A (ja) * 2008-02-27 2009-09-10 Jsr Corp スタンパー形成用組成物、スタンパーおよび光情報記録媒体の製造方法
JP2013529725A (ja) * 2010-06-29 2013-07-22 イーストマン ケミカル カンパニー セルロースエステルおよびセルロースエステル/エラストマー組成物ならびに製造方法
WO2014010534A1 (ja) * 2012-07-13 2014-01-16 東洋製罐株式会社 内容物に対する滑り性に優れた包装容器
WO2014175378A1 (ja) * 2013-04-24 2014-10-30 東洋製罐株式会社 流動性内容物に対する滑り性に優れたブロー成形容器及びその製造方法

Patent Citations (6)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2006077250A (ja) * 2004-09-10 2006-03-23 Mitsubishi Polyester Film Gmbh ポリエステルフィルム及びその製造方法
JP2006077249A (ja) * 2004-09-10 2006-03-23 Mitsubishi Polyester Film Gmbh ポリエステルフィルム及びその製造方法
JP2009203339A (ja) * 2008-02-27 2009-09-10 Jsr Corp スタンパー形成用組成物、スタンパーおよび光情報記録媒体の製造方法
JP2013529725A (ja) * 2010-06-29 2013-07-22 イーストマン ケミカル カンパニー セルロースエステルおよびセルロースエステル/エラストマー組成物ならびに製造方法
WO2014010534A1 (ja) * 2012-07-13 2014-01-16 東洋製罐株式会社 内容物に対する滑り性に優れた包装容器
WO2014175378A1 (ja) * 2013-04-24 2014-10-30 東洋製罐株式会社 流動性内容物に対する滑り性に優れたブロー成形容器及びその製造方法

Non-Patent Citations (5)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Title
AUSTIN CARR, MIT'S FREAKY NON-STICK COATING KEEPS KETCHUP FLOWING, JPN6013041013, 24 May 2012 (2012-05-24), ISSN: 0003619576 *
TERGITOL 15-S-9 SURFACTANT, JPN7017001600, US, pages 1, ISSN: 0003558443 *
シリコーンオイル KF−96 性能試験結果, JPN7017001597, 31 May 2014 (2014-05-31), JP, pages 2 - 13, ISSN: 0003558440 *
動粘度の求め方, JPN7017001598, 10 May 2017 (2017-05-10), JP, ISSN: 0003558441 *
粘度換算表, JPN7017001599, 10 May 2017 (2017-05-10), JP, ISSN: 0003558442 *

Cited By (6)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO2020166193A1 (ja) * 2019-02-13 2020-08-20 東洋製罐グループホールディングス株式会社 液状滑剤を含む包装用構造体
JP2020132156A (ja) * 2019-02-13 2020-08-31 東洋製罐グループホールディングス株式会社 液状滑剤を含む包装用構造体
JP7356803B2 (ja) 2019-02-13 2023-10-05 東洋製罐グループホールディングス株式会社 液状滑剤を含む包装用構造体
WO2021111689A1 (ja) 2019-12-02 2021-06-10 東洋製罐グループホールディングス株式会社 プロピレン系樹脂のマスターバッチ
KR20220093154A (ko) 2019-12-02 2022-07-05 도요세이칸 그룹 홀딩스 가부시키가이샤 프로필렌계 수지의 마스터배치
CN114746481A (zh) * 2019-12-02 2022-07-12 东洋制罐集团控股株式会社 丙烯系树脂的母粒

Also Published As

Publication number Publication date
JP6209957B2 (ja) 2017-10-11

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP6531859B2 (ja) 流動性内容物に対する滑り性に優れた容器
EP2990176B1 (en) A process for producing a blow-molded container with excellent slipperiness in relation to flowable contents
JP5125635B2 (ja) 非油性内容物用多層プラスチック容器
JP6589863B2 (ja) 表面に潤滑層が形成されている構造体
JP6375632B2 (ja) 水中油型乳化物を内容物とする包装容器
EP3133032B1 (en) Method for filling viscous contents
JP2008222291A (ja) 非油性内容物用ポリエチレン製容器
CN107531380B (zh) 具有液膜的结构体及其制造方法
CN107531382A (zh) 表面上具有外部添加区域的结构体
JP5962879B1 (ja) 水性液状体に対する滑り性に優れた中空成形体
CN107531004A (zh) 表面分布有固体颗粒的结构体
JP5569517B2 (ja) 非油性内容物熱間充填包装体
JP6209957B2 (ja) 液体含有マスターバッチ
JP7035366B2 (ja) 内面に油膜を形成して使用されるブロー容器
US10486387B2 (en) Package for storage under low temperature environment and method using same
JP7487467B2 (ja) プロピレン系樹脂のマスターバッチ
JP2022175074A (ja) プロピレン系樹脂組成物

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20161024

A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20170510

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20170523

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20170718

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20170815

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20170828

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Ref document number: 6209957

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150