JP2015105234A - 卵アレルギー減感作療法用食品又は減感作療法剤の製造方法 - Google Patents

卵アレルギー減感作療法用食品又は減感作療法剤の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】患者への負担が軽減され、安全に減感作療法を行うことができる、卵アレルギー減感作療法用食品又は減感作療法剤の製造方法を提供する。【解決手段】卵黄蛋白質及び卵白蛋白質を含む卵蛋白質を含有し、前記卵蛋白質中の抗原量が0.4〜450mg/gである卵アレルギー減感作療法用食品又は減感作療法剤の製造方法であって、卵を加熱変性する工程、前記加熱変性した卵を粉末化する工程、前記工程により得られた粉末卵を、増量剤とともに小分け包装容器に充填する工程を有し、前記小分け包装容器から取り出す際の、小分け包装容器への付着量が充填量全体に対し3%未満である、卵アレルギー減感作療法用食品又は減感作療法剤の製造方法。【選択図】 なし

Description

本発明は、卵アレルギー減感作療法用食品又は減感作療法剤の製造方法に関する。
より詳細には、患者への負担が軽減され、安全に減感作療法を行うことができる、卵アレルギー減感作療法用食品又は減感作療法剤の製造方法に関する。
従来より、食物アレルギーに対する治療法として、除去食療法が行われている。除去食療法は、アレルギーの原因となる物質(抗原)を除去した食事をアレルギーの患者に与え、アレルギーの症状を発症させないようにするというものである。しかしながら、除去食療法は、免疫の異常そのものに対するアプローチではないため、自然寛解に委ねることとなり、治療期間が長期にわたることも多かった。さらに、栄養バランスの面でも偏りが生じやすいため、患者本人の負担も大きく、また除去食を用意する家族の負担も大きかった。
そこで、食物アレルギーの治療法として、減感作療法が試みられている。減感作療法は、一般に、アレルギーの患者に対して抗原を少量ずつ投与することで、免疫寛容を獲得させる治療法である。減感作療法は、除去食療法とは異なり、アレルギー自体が免疫寛容し、抗原を含む食品を食べられるようになる可能性が高まるため、近年注目されている。例えば、食物アレルギーの一つである卵アレルギーに対しては、患者にゆで卵等の卵料理を必要な量摂取させることにより、減感作療法が行われている(非特許文献1、2参照)。
しかしながら、卵は、加熱の程度によってその抗原の減少量にバラつきが生じる可能性がある。したがって、加熱調理された卵を用いた減感作療法は、アナフィラキシーショック等の原因となるおそれが否定できず、減感作療法を実施するには十分な注意と熟練が必要であった。
一方、卵アレルギーの原因となる卵白中の特定の抗原(オボムコイド)を低減させた卵アレルギー体質改善材及び卵アレルギー予防材等が開発されている(特許文献1参照)。同文献には、当該卵アレルギー体質改善材等により抗原摂取量を低減し、卵アレルギーの発症を予防することが可能となる旨、記載されている。
特許第4689205号
岡本真道、他5名、"卵アレルギー患者に対する食物経口減感作療法時の特異的卵白IgG抗体の推移"、[online]、2008年11月、第58回日本アレルギー学会秋季学術大会、[2013年11月22日検索]、インターネット<URL:http://jja.jsaweb.jp/am/view.php?pubdate=20081030&dir=2008a&number=08a_gl000254738> 佐藤さくら、他1名、"食物アナフィラキシー患者への経口免疫(減感作)療法の作用機序"、[online]、2011年11月、第61回日本アレルギー学会秋季学術大会、[11月22日検索]<URL:http://jja.jsaweb.jp/am/view.php?pubdate=20111010&dir=2011a&number=11a_sy001S1-5>
しかしながら、特許文献1に記載の卵アレルギー体質改善材及び卵アレルギー予防材等は、抗原量が少ないため、減感作療法に用いることが難しい場合があった。
以上のような事情に鑑み、本発明の目的は、患者への負担が軽減され、安全に減感作療法を行うことができる、卵アレルギー減感作療法用食品又は減感作療法剤の製造方法を提供することにある。
本発明者等は、上記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた。その結果、卵を加熱変性し、粉末化し、さらに、他の特定成分と混合して小分け包装容器に充填することにより、患者への負担が少なく、抗原量の把握が容易で安全な減感作療法を実施することが可能であることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、
(1)卵黄蛋白質及び卵白蛋白質を含む卵蛋白質を含有し、前記卵蛋白質中の抗原量が0.4〜450mg/gである卵アレルギー減感作療法用食品又は減感作療法剤の製造方法であって、卵を加熱変性する工程、前記加熱変性した卵を粉末化する工程、前記工程により得られた粉末卵を、増量剤とともに小分け包装容器に充填する工程を有し、前記小分け包装容器から取り出す際の、小分け包装容器への付着量が充填量全体に対し3%未満である、卵アレルギー減感作療法用食品又は減感作療法剤の製造方法、
(2)(1)に記載の卵アレルギー減感作療法用食品又は減感作療法剤の製造方法であって、硫化水素の含有量が1ppm以下である、卵アレルギー減感作療法用食品又は減感作療法剤の製造方法、
である。
本発明により、患者への負担が軽減され、安全に減感作療法を行うことができる、卵アレルギー減感作療法用食品又は減感作療法剤の製造方法を提供することが可能となる。
以下、本発明を詳細に説明する。なお、本発明において、「%」は「質量%」を意味し、「部」は「質量部」を意味する。
<卵アレルギー>
本発明は、卵アレルギー減感作療法用食品又は減感作療法剤を提供するものである。本発明に係る卵アレルギーとは、一般に鶏卵に含まれる蛋白質に対するアレルギーのことを示す。なお、これに限定されず、ウズラ、アヒル等の他の家禽類の卵に含まれる蛋白質に対するアレルギーを含めてもよい。
<卵アレルギー減感作療法>
減感作療法とは、一般に、アレルギーの患者に抗原を投与し、抗原に対する免疫反応を欠如させ、あるいは抑制させる(免疫寛容を誘導する)アレルギーの治療方法をいう。このうち、卵アレルギーの減感作療法は、卵食品を経口摂取させることにより、卵に含まれる抗原に対して経口免疫寛容を獲得させることを目的とする。従来、卵アレルギーの減感作療法には、ゆで卵等の加熱した卵食品が利用されており、その治療効果が認められている(非特許文献1、2参照)。
減感作療法では、抗原の摂取量が治療の上で非常に重要となる。例えば、抗原の経口摂取量により、得られる治療効果も変わってくるとともに、アナフィラキシーショック等を引き起こす可能性もある。さらに、ゆで卵等の調理を伴う卵食品を用いた場合には、治療効果が認められている反面、加熱等の加工の程度に応じて抗原量が変動する可能性があるため、所望の抗原摂取量を適切に摂取させることが難しかった。本発明は、加熱により卵白が完全に凝固したゆで卵(以下、固ゆで卵とする)と同等であり、かつ一定の範囲に制限された抗原量を提供するものであるため、より安定した治療効果と安全性とを確保することが可能となる。
<卵アレルギー減感作療法用食品、減感作療法剤の製造方法>
本発明に係る卵アレルギー減感作療法用食品又は卵アレルギー減感作療法剤の製造方法は、例えば、卵を加熱変性する工程と、加熱変性卵を粉末化する工程と、増量剤と混合し、小分け包装容器に充填する工程が挙げられる。より詳しくは、卵を加熱変性する工程と、加熱変性卵を粉砕処理してペースト状にする工程と、ペースト状にした加熱変性卵を乾燥し粉末化する工程と、容器に充填する工程とを有してもよい。以下、具体的に説明する。
<本発明に用いる原料卵>
本発明に用いる原料卵は、一般に、鶏卵が用いられる。鶏卵としては、例えば、殻付鶏卵の他、工業的に割卵して殻が除去された状態で市販されている液全卵、あるいは液卵白及び液卵黄を使用することができる。なお、液卵白及び液卵黄を使用する場合には、卵黄1部に対して卵白が1〜10部、好ましくは卵黄1部に対して卵白が1〜5部程度であればよい。また、本発明で用いる原料卵としては、例えば、アルコール抽出法や超臨界二酸化炭素抽出法等により脂質やコレステロールを低減処理されたもの、バッチ式殺菌タンク、プレート式熱交換機、ジュール加熱装置等で殺菌処理されたもの、脱糖処理、脱塩処理等の各種処理が施されたものであってもよい。
<卵を加熱変性する工程>
本発明に係る卵を加熱変性する工程とは、原料卵を加熱により凝固させ、加熱変性卵、すなわち固ゆで卵を製する工程をいう。本工程では、具体的には、殻付鶏卵を85℃〜100℃で5〜20分加熱して凝固変性させ、冷却した後、殻を除去することができる。あるいは、本工程では、液全卵、又は、液卵黄及び液卵白を別々に耐熱性パウチ等に充填し、80℃〜100℃で20〜60分間ボイルして凝固変性させることも可能である。加熱方法については特に限定されないが、例えばマイクロ波加熱等を用いることができる。加熱変性した卵を使用することで、乾燥卵等を使用する場合と比較して、オボアルブミン等の抗原量を減少させることが可能となる。なお、加熱変性卵は、製造後、所定の期間冷凍保存又は冷蔵保存してもよい。
<粉砕処理してペースト状にする工程>
前述した加熱変性する工程を経た加熱変性卵は、次いで粉砕処理してペースト状にすることができる。粉砕処理とは、加熱凝固卵を粉砕可能な粉砕処理装置を用いて粉砕処理することをいう。粉砕処理装置としては、マスコロイダー(登録商標)、シャーポンプ、コミットロール(登録商標)等を用いることができる。粉砕処理条件は特に限定されない。本工程では、加熱変性卵の粉砕処理物に対して0.5〜10倍量程度の清水を加え、ペースト状とすることができる。この際、高圧ホモジナイザー等を用いて均質化処理することで、よりなめらかなペースト状とすることができる。本工程において加熱変性卵をペースト状とすることで、次工程においてより容易に粉末化することができる。
なお、本工程において、冷凍した後、解凍された加熱変性卵を用いることができる。これにより、冷凍保存された大量の加熱変性卵を用いて処理することができ、生産性を高めることが可能となる。さらに、半解凍状態のものを用いることで、粉砕処理も容易に行うことができる。
<粉末化する工程>
次に、加熱変性卵を粉末化し、パウダー状とする。また、加熱変性卵を粉砕処理してペースト状にした場合は、得られたペースト状の加熱変性卵を乾燥して粉末化し、パウダー状とすることができる。これにより、本発明の粉末卵を得ることができる。本工程では、例えば、ペースト状の加熱変性卵を噴霧乾燥することができる。噴霧乾燥方法としては、例えば、加圧ノズル方式又は遠心アトマイザー方式が好ましい。加圧ノズル方式は、30〜100kg/m2程度に圧力を上げることにより、小さい粒径の粉末卵を容易に得ることができる。同様に、遠心アトマイザー方式は、アトマイザーの回転速度を5000〜40000rpm程度に上げることにより、小さい粒径の粉末卵を容易に得ることができる。
あるいは、凍結乾燥(フリーズドライ)装置を用いて粉末化し、パウダー状としてもよい。この場合、フリーズドライ処理の前に、予めマイクロ波乾燥、凍結乾燥、熱風乾燥、パンドライ等の方法で乾燥処理してもよい。
<パウダー状>
本発明に係る卵アレルギー減感作療法用食品又は減感作療法剤は、パウダー状に形成されることを特徴とする。パウダー状とは、乾燥した固体の微小粒子の集合物をいう。平均粒子径は、特に限定されないが、例えば10〜100μm程度であればよい。本発明では、加熱変性卵を粉末化することによって、パウダー状に形成する。なお、本明細書の説明において、パウダー状に形成された卵アレルギー減感作療法用食品、卵アレルギー減感作療法剤を、「粉末卵」と呼ぶこともあるものとする。
<小分け包装容器に充填する工程>
そして、得られた粉末卵を、後述する増量剤とともに小分け包装容器に充填する。小分け包装容器としては、袋状であるとよいが、ビン、缶等の保存容器であってもよい。また、小分け包装容器の材質は、袋状の場合にはアルミ、紙、PP(ポリプロピレン)、PE(ポリエチレン)等、通常用いられる材質であるとよい。なお、本工程においては、粉末卵を増量剤とともに小分け包装容器に充填する。
<増量剤>
本発明の卵アレルギー減感作療法用食品又は減感作療法剤には、増量剤を配合する。配合する増量剤としては、通常粉末薬等に用いられるものであればいずれのものでも良いが、例えばスクロース、グルコース、ブドウ糖、デンプン、デキストリン、コーンパウダー、乳糖等を用いることができる。これにより、包装容器内に充填した粉末卵の分散性が向上し、使用時により正確な抗原量を摂取することが可能となる。また、より正確な抗原量を摂取することが可能であることから、患者への負担が少なく、抗原量の把握が容易で安全な減感作療法を実施することが可能である、本願発明の効果が得られやすい。
<増量剤の配合量>
本発明に用いる増量剤の配合量は、粉末卵1部に対して0.05〜100部であるとよく、0.1〜50部であるとよい。本発明の卵アレルギー減感作療法用食品又は減感作療法剤に用いる増量剤の配合量を前記範囲とすることにより、患者への負担が少なく、抗原量の把握が容易で安全な減感作療法を実施することが可能である、卵アレルギー減感作療法用食品、減感作療法剤が得られる本願発明の効果が得られやすい。
<包装容器への付着量>
前述した製造方法により小分け包装容器に充填された卵アレルギー減感作療法用食品又は減感作療法剤は、包装容器を開封して使用した際の、包装容器への減感作療法用食品又は減感作療法剤の付着量を3%未満とすることができる。包装容器への付着量が前記範囲内であることにより、患者が摂取時に、抗原量の把握が容易となり、減感作療法における摂取量の管理がより行いやすくなる。
<包装容器への付着量の測定方法>
前述した包装容器への付着量の測定方法は、例えば、まず、包装容器に充填する本発明の卵アレルギー減感作療法用食品又は減感作療法剤の充填量を特定する。次いで、包装容器に充填された前記食品又は剤の一辺を全て切り落として開封し、袋を軽くたたきながら中身を出したのち、風袋を除いた包装容器の重量を測定することにより、包装容器への付着量を測定することができる。
<抗原、抗原性>
抗原とは、アレルギーの原因物質として作用し得る蛋白質(アレルゲン)をいい、加熱変性等により抗原性を失ったものは含まないものとする。また抗原性とは、アレルギーの原因物質として作用する(アレルゲン活性のある)性質をいうものとする。
<全卵蛋白質>
本発明に係る卵アレルギー減感作療法用食品又は減感作療法剤は、卵黄蛋白質及び卵白蛋白質を含む卵蛋白質を含有する。卵黄蛋白質は、卵黄に含まれる蛋白質であり、ホスビチン等が挙げられる。卵白蛋白質は、卵白に含まれる蛋白質であり、オボアルブミン、オボムコイド、リゾチーム、オボトランスフェリン、オボムチン等が挙げられる。
<卵蛋白質中の抗原量>
卵蛋白質中の抗原量とは、卵蛋白質1g中の抗原の含有量(mg/g)をいう。本発明に係る卵蛋白質中の抗原量は、0.4〜450mg/gであり、0.4〜300mg/gであり、さらに0.4〜100mg/gである。これにより、固ゆで卵と同程度の抗原量を有し、減感作療法に必要かつ十分な量の抗原を提供することができる。さらに、抗原量が上記範囲であるため、抗原量の把握が容易となり、安全かつ適切に減感作療法を行うことが可能となる。
<抗原量の測定方法>
抗原量は、例えば、ELISA(Enzyme-Linked Immunosorbent
Assay)法により測定することができる。ELISA法は、上記抗原(オボアルブミン、オボムコイド等)と各々の抗体との抗原抗体反応を利用した抗原量測定方法である。ELISA法では、抗原量を酵素反応によって可視化させるため、放射線を用いたラジオイムノアッセイと比較しても安全性が高い。本発明では、特に、後述するサンドイッチELISA法を用いることができる。
<硫化水素量>
本発明に係る卵アレルギー減感作療法用食品又は減感作療法剤は、硫化水素の含有量が1ppm以下であってもよい。硫化水素は、硫黄と水素からなる無機化合物である。卵白蛋白質には、硫黄を含むアミノ酸であるシステインやメチオニンが含まれており、卵を加熱すると、これらのアミノ酸が分解し、含まれていた硫黄が硫化水素に変化する。硫化水素は、独特の臭気(腐卵臭)を持つため、硫化水素を多く含むゆで卵等の加熱変性卵は、摂取しにくい場合があった。
本発明によれば、硫化水素量を1ppm以下に低減できるため、ゆで卵等と比較して腐卵臭が少なく、腐卵臭が苦手な患者の抵抗感を和らげることが可能となる。また、本発明に係る卵アレルギー減感作療法用食品又は減感作療法剤を他の加工食品等に混ぜて用いる場合にも、これらの加工食品の風味を損なうことを防止することができる。
なお、硫化水素量を低減させる方法としては、卵の加熱時や乾燥時に開放系で行い、加熱した卵に含まれる硫化水素を放出させる方法などが挙げられる。
<硫化水素量の測定方法>
本発明に係る硫化水素量は、以下のように測定することができる。
まず、上記製造方法により得られた粉末卵25gを75gの精製水で水戻ししてペースト化する。得られたペースト30gを300mL容の三角フラスコに入れ、ポリ塩化ビニリデン製ラップフィルムで蓋をし、30℃の恒温槽中に30分間静置する。次いで、ラップフィルムに穴を空けて硫化水素検知管((株)ガステック製、硫化水素検知管、No.4LK)を挿し、100mLを吸引して1分間静置する。静置後の硫化水素検知管の目盛を読み取り、この値を硫化水素量とする。なお、硫化水素量の測定方法は、上記に限定されない。
<卵アレルギー減感作療法用食品>
本発明に係る卵アレルギー減感作療法用食品は、加熱変性した卵を原料としたパウダー状の食品であって、卵アレルギー減感作療法のために患者に摂取させるものである。上記食品は、必要量をそのまま摂取させることが可能である。また、パウダー状であるため、上記減感作療法用食品を他の食品に配合して使用することも可能である。したがって、より摂取しやすい減感作療法用食品を提供することができる。当該他の食品としては、卵白又は全卵を含む加工食品に限定されず、卵白等を含まない食品であってもよい。例えば、スープ、お粥、クッキー、ケーキ、マヨネーズ、ミルクセーキ、ふりかけ等が挙げられる。また、上記減感作療法用食品の配合量は、減感作療法の治療効果を発揮し、かつこれらを配合した食品の風味や食感を損なわない範囲であれば特に限定されない。
<卵アレルギー減感作療法剤>
本発明に係る卵アレルギー減感作療法剤は、加熱変性した卵を原料とする粉末を有効成分とする散剤であって、卵アレルギー減感作療法のために患者に摂取させるものである。上記減感作療法剤は、上記減感作療法用食品と同様に、所定の摂取量が分包され、分包袋、カプセル等の小分け包装容器に充填される。
<本発明の作用効果>
本発明に係る卵アレルギー減感作療法用食品又は減感作療法剤は、加熱変性卵を用いることから、従来減感作療法に用いられていた固ゆで卵等と同等の抗原量とすることができ、十分な治療効果を発揮することができる。さらに一般的なゆで卵等と比較して、有効成分である抗原量が均一であるため、摂取量を決定しやすい。これにより、減感作療法をより簡便に実施することができるとともに、アナフィラキシーショック等のおそれを低減し、より安全に実施することができる。
また、パウダー状に形成されることにより、外観からは卵とわかりにくいため、卵アレルギーの患者の抵抗感を和らげることが可能となる。さらに、摂取量の調節やその把握が容易な形態とすることができる。加えて、乾燥しているため、保存性が高いものとすることができる。
また、ゆで卵等の卵料理は、他の食材を調理する環境で調理することが多く、他の抗原の混入(コンタミ)の可能性を否定できない。一方、本発明に係る粉末卵は、コンタミの可能性が極めて低いため、治療効果をより容易に検討することができる。
本発明によれば、前述した粉末卵が増量剤とともに包装容器に充填されていることにより、包装容器内に充填した粉末卵の分散性が向上し、使用時により正確な抗原量を摂取することが可能となる。
さらに、本発明によれば、抗原の量等を把握することが容易になる。例えば、電気泳動により抗原量等を確認する際、ゆで卵を用いた場合には、試料の調製のためにスラリー等を作成しなければならず、また試料毎の混合の度合により、測定結果にバラつきが見られる可能性があった。一方で、本発明に係る粉末卵を用いた場合には、卵黄と卵白が均一に近い状態に混合されているため、電気泳動に供する試料の調製が容易になり、さらに抗原量を精度よく測定することができる。したがって、減感作療法の実施先においても実際の抗原の量等を確認することが容易になり、より治療効果の高い減感作療法を実施することが可能となる。
以下、本発明について、実施例、比較例及び試験例に基づき具体的に説明する。なお、本発明は、これらに限定するものではない。
[実施例1]
<粉末卵の製造>
鶏卵を95℃で15分間加熱し凝固させた後、冷却して殻を除去した。そして、この加熱変性卵を−18℃で冷凍保存して冷凍ゆで卵200kgを準備した。この冷凍ゆで卵を解凍後、等量の清水を加え、これらをコミットロール(登録商標、アーシェル社製、モデルナンバー1700、212ブレード)で粉砕してペースト状に処理した。これにより、加熱凝固卵の粉砕物が清水に分散したペースト状物を得た。このペースト状物を遠心アトマイザー方式の噴霧乾燥装置(アトマイザー回転速度15000rpm)で噴霧乾燥して水分量が4%である本発明の粉末卵を得た。
<卵アレルギー減感作療法用食品(減感作療法剤)の製造>
上記製造方法により得られた粉末卵と、増量剤としてスクロースとを、1:1の比率で混合した。次いで、袋状の小分け包装容器(グラシン紙、70×100mm)に前記混合物1gを充填し、ヒートシールにより密封した。その後、粉末が混合するように1分間振ることにより、本発明の卵アレルギー減感作療法用食品(減感作療法剤)を得た。
なお、粉末卵1部に対する増量剤の配合量は1部であった。
[実施例2]
実施例1の<卵アレルギー減感作療法用食品(減感作療法剤)の製造>の工程において、粉末卵とスクロースとを1:0.5の比率で混合して用いる以外は、実施例1と同様に卵アレルギー減感作療法用食品(減感作療法剤)を得た。
なお、粉末卵1部に対する増量剤の配合量は0.5部であった。
[実施例3]
実施例1の<卵アレルギー減感作療法用食品(減感作療法剤)の製造>の工程において、粉末卵とスクロースとを1:2の比率で混合して用いる以外は、実施例1と同様に卵アレルギー減感作療法用食品(減感作療法剤)を得た。
なお、粉末卵1部に対する増量剤の配合量は2部であった。
[比較例1]
特開平3−206866号公報記載に基づいて、乾燥全卵(液全卵を常法により噴霧乾燥したもの)を得た。次いで、前記工程により得られた乾燥全卵1gを粉末卵として用いる以外は、実施例1と同様に製した。
[比較例2]
実施例1において、充填時に増量剤を配合しない以外は実施例1と同様に製した。詳しくは、粉末卵1gを小分け包装容器に充填する以外は、実施例1と同様に製した。
[参考例]
実施例1において、粉末卵に代えて固ゆで卵の粉砕物1gを用いる以外は、実施例1と同様に製した。
[試験例1]
<抗原量の測定>
実施例1〜3、比較例1〜2、および参考例により得られた卵アレルギー減感作療法用食品(減感作療法剤)について、下記の測定方法により、全卵蛋白質中の抗原量を測定した。
<測定方法>
(抗原量の測定)
実施例1〜3、比較例1〜2及び参考例により得られた粉末卵について、減感作療法用食品又は減感作療法剤としての作用を確認する目的で、全卵蛋白質中の抗原量を測定した。測定方法としては、以下のサンドイッチELISA法を用いた。
(抗原量の測定方法:サンドイッチELISA法)
本試験例においては、測定キット(R−Bioparm社 RIDA SCREEN FAST Ei/Egg Protain)を用いて、サンドイッチELISA法により測定した。すなわち、ELISA用96穴マイクロプレートに、キット付属の抽出緩衝液に溶解した試料を100μLずつ分注し、10分間室温で静置する。キット付属の洗浄緩衝液で3回洗浄した後、ペルオキシダーゼ標識抗体を含む酵素複合体液を100μLずつ加え、10分間室温で静置する。洗浄後、過酸化尿素を含む発色基質液を100μL加え、暗所、室温で10分間静置し、反応後、1Nの硫酸100μLで反応を停止させた。そしてマイクロプレートリーダーで450nmの吸光度を測定した。各抗原の標準も同様に測定を行い、その吸光度から試料中の各抗原の含量を算出した。
次いで、各試料に含まれる水分量及び蛋白質量を、五訂成分表を用いて換算し、上記方法で得られた抗原量の数値を、各試料に含まれる卵蛋白質1gに対する抗原量の値として換算した。
結果を、以下の表1に示す。
<測定結果>
[表1]
Figure 2015105234
測定の結果、実施例1〜3により得られた卵アレルギー減感作療法用食品(減感作療法剤)は、全卵蛋白質中の抗原量が、比較例1(液全卵の噴霧乾燥物)の抗原量と比較して、参考例のゆで卵と同等であることが確認された。このことから、実施例1〜3に係る粉末卵は、減感作療法に十分に対応することが可能である。すなわち、本発明に係る粉末卵は、卵アレルギー減感作療法用食品(減感作療法剤)として適切であることが確認された。
一方、比較例1により得られた粉末卵は、実施例1〜3及び参考例と比較して、抗原量が高いことが確認された。これは、噴霧乾燥の前に加熱処理を行っていないため、オボアルブミン等の抗原量が減少していないものと考えられる。したがって、比較例1に係る粉末卵を減感作療法に用いるには、安全性の面から好ましくないと考えられる。また、仮に比較例1に係る粉末卵を減感作療法に用いようとした際には、オボアルブミン等の抗原を変性除去する等の処理が必要となり、生産性の面で問題が生じると考えられる。
[試験例2]
実施例1〜3、比較例1〜2、および参考例により得られた卵アレルギー減感作療法用食品(減感作療法剤)について、パネラーが経口摂取し、減感作療法として用いた際の操作性及び風味の評価を行った。
また、包装容器への付着量についても、[0029]に記載の測定方法を用いて、あわせて測定を行った。結果を下記に示す。
<操作性評価>
○:摂取しやすく、好ましい。
△:包装容器へやや付着が見られるものの、問題のない範囲である。
×:包装容器へ付着が見られる。
<風味評価>
○:卵臭みがマスキングされており、好ましい。
△:卵臭みをやや感じるものの、問題のない範囲である。
×:卵臭みを感じ、好ましくない。
<結果>
[表2]
Figure 2015105234
表2に示すように、実施例1〜3により得られた卵アレルギー減感作療法用食品(減感作療法剤)は、参考例に係る固ゆで卵と比較して、操作性及び風味の評価が高いことが確認された。これは、パウダー状にするための噴霧乾燥やフリーズドライの工程等により、硫化水素量が低減し、卵特有の臭みを感じにくくなったものと考えられる。
また、実施例1〜3により得られた卵アレルギー減感作療法用食品(減感作療法剤)は、比較例2と比較して操作性が高いことが示された。これは、卵を加熱変性後ペースト状にし、さらに粉末状にするという上記製造方法により、平均粒子径等が適度なものに調整されることから、口当たりがよく、卵特有のやわらかな風味が維持されたものと考えられる。

Claims (2)

  1. 卵黄蛋白質及び卵白蛋白質を含む卵蛋白質を含有し、前記卵蛋白質中の抗原量が0.4〜450mg/gである卵アレルギー減感作療法用食品又は減感作療法剤の製造方法であって、
    卵を加熱変性する工程、前記加熱変性した卵を粉末化する工程、前記工程により得られた粉末卵を、増量剤とともに小分け包装容器に充填する工程を有し、
    前記小分け包装容器から取り出す際の、小分け包装容器への付着量が充填量全体に対し3%未満である、
    卵アレルギー減感作療法用食品又は減感作療法剤の製造方法。
  2. 請求項1に記載の卵アレルギー減感作療法用食品又は減感作療法剤の製造方法であって、
    硫化水素の含有量が1ppm以下である、卵アレルギー減感作療法用食品又は減感作療法剤の製造方法。


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