JP2015103881A - 音声信号処理装置および音声信号処理方法 - Google Patents

音声信号処理装置および音声信号処理方法 Download PDF

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Abstract

【課題】特性の異なる複数のスピーカが配置された空間において、各スピーカから複数のリスニングポイントへ、再生音に含まれる全周波数をほぼ同時に同一レベルで到達させ、各リスニングポイントで同時に良好な音像定位を与える。【解決手段】同じ振幅周波数特性および位相特性を有する左スピーカおよび右スピーカと、左右のスピーカの間に配置された1つのセンタースピーカとからの音声信号を出力する際に、左スピーカとセンタースピーカとの間、および左スピーカとセンタースピーカとの間にリスニングポイントを設定する音声信号処理装置であって、センタースピーカの振幅周波数特性および位相特性の逆特性を付与する逆フィルタ処理部と、逆フィルタ処理部により処理されたセンタースピーカの音声信号の振幅周波数特性および位相特性を、左スピーカおよび右スピーカの特性に合わせるように補正するスピーカ特性付加処理部とを備える。【選択図】図1

Description

本開示は、入力される音声信号を処理する音声信号処理装置および音声信号処理方法に関する。
音声信号を再生してスピーカから出力する音声再生システムにおいては、より高音質で臨場感ある音場を実現することが望まれている。この際、音声再生システム自体の制約や、これが設置される空間の状況に応じて音声信号処理を行うことで、より最適な音声再生空間を提供することが可能となる。
例えば、特許文献1には、小型のスピーカシステムにおいても良好な音質で充分な量感のある低音の再生を実現するための技術として、低域信号の検出レベルに応じて、低域のブースト量と高調波信号のレベルとを調整制御することが開示されている。また、例えば、車内空間における音声再生システムでは、IIR(Infinite impulse response)フィルタを用いた音質調整用イコライザや各スピーカから出力される音の出力時間を調整するタイムアライメント機能を用いて高音質化を図っている。
特開2009−55079号公報
上記技術においては、各スピーカからリスニングポイントへの音の到達時間や到達する音のレベルをおおよそ揃えることは可能である。しかし、音声再生システムを異なる複数のスピーカにより構成すると、周波数により到達時間がばらつき、複数のリスニングポイントにおける位相特性が乱れてしまい、結果的に音像定位が安定しない再生空間となってしまう。
例えば、車両空間において、音声再生システムを2つのドアスピーカから構成した場合、各ドアスピーカについて別々にタイムアライメント調整をすれば運転席または助手席のうちいずれか一方の席について再生音の最初の到達時間を揃えることは可能である。しかし、全周波数帯で音の到達時間が揃わないため、良好な音像定位は得られない。さらに、他方の席においては再生音の最初の到達時間も揃わない再生音になる。このように、IIRフィルタにより振幅周波数特性を調整したとしても位相制御はできないため、良好な音像定位を得ることができない。
また、例えば、2つのドアスピーカと1つのセンタースピーカとを備える車内空間において、センタースピーカとドアスピーカとの間のタイムアライメント調整を行うことで再生音の最初の到達時間を揃えることは可能である。しかし、この場合も全周波数帯で音の到達時間は揃わず、良好な音像定位は得られない。IIRフィルタにより振幅周波数特性を調整したとしても位相制御はできないため、良好な音像定位を得ることができない。
そこで、特性の異なる複数のスピーカが配置された空間において、各スピーカから複数のリスニングポイントへ、再生音に含まれる全周波数をほぼ同時に同一レベルで到達させ、各リスニングポイントで同時に良好な音像定位を得られることが求められている。
本開示によれば、同じ振幅周波数特性および位相特性を有する左スピーカおよび右スピーカと、左スピーカと右スピーカとの間に配置された1つのセンタースピーカとからの音声信号を出力する際に、左スピーカとセンタースピーカとの間、および左スピーカとセンタースピーカとの間にリスニングポイントを設定する音声信号処理装置であって、センタースピーカの振幅周波数特性および位相特性の逆特性を付与する逆フィルタ処理部と、逆フィルタ処理部により処理されたセンタースピーカの音声信号の振幅周波数特性および位相特性を、左スピーカおよび右スピーカの特性に合わせるように補正するスピーカ特性付加処理部と、を備える、音声信号処理装置が提供される。
本開示によれば、センタースピーカの振幅周波数特性および位相特性を、左右のスピーカの各特性と同一となるように補正する。これにより、特性の異なる複数のスピーカから複数のリスニングポイントへ、再生音に含まれる全周波数をほぼ同時に同一レベルで到達させ、各リスニングポイントで同時に良好な音像定位を得ることが可能となる。
また、本開示によれば、同じ振幅周波数特性および位相特性を有する左スピーカおよび右スピーカと、左スピーカと右スピーカとの間に配置された1つのセンタースピーカとからの音声信号を出力する際に、左スピーカとセンタースピーカとの間、および左スピーカとセンタースピーカとの間にリスニングポイントを音声情報処理装置により設定する音声情報処理方法であって、センタースピーカの振幅周波数特性および位相特性の逆特性を付与すること、逆特性が付与されたセンタースピーカの音声信号の振幅周波数特性および位相特性を、左スピーカおよび右スピーカの特性に合わせるように補正すること、を含む、音声信号処理方法が提供される。
以上説明したように本開示によれば、特性の異なる複数のスピーカから複数のリスニングポイントへ、再生音に含まれる全周波数をほぼ同時に同一レベルで到達させ、各リスニングポイントで同時に良好な音像定位を得ることが可能となる。なお、上記の効果は必ずしも限定的なものではなく、上記の効果とともに、または上記の効果に代えて、本明細書に示されたいずれかの効果、または本明細書から把握され得る他の効果が奏されてもよい。
本開示の音声信号処理の概要を説明するための説明図である。 本開示の第1の実施形態に係る車両空間におけるスピーカの配置例を示す説明図である。 同実施形態に係る音声信号処理装置の構成を示すブロック図である。 スピーカ特性の逆特性を付与するフィルタ処理を実現するためのデジタルフィルタの一構成例を示す説明図である。 同実施形態に係る逆フィルタ処理部による音声信号補正処理を説明するための説明図である。 同実施形態に係るスピーカ特性付加処理部による音声信号の畳み込み処理を説明するための説明図である。 同実施形態に係る音声信号処理による補正前後のインパルス応答特性および振幅周波数特性に関するグラフである。 本開示の第2の実施形態に係る音声信号処理装置の構成を示すブロック図である。 同実施形態に係る音声信号処理による補正前後のインパルス応答特性および振幅周波数特性に関するグラフである。 本開示の第3の実施形態に係る車両空間におけるスピーカの配置例を示す説明図である。 同実施形態に係る音声信号処理装置の構成を示すブロック図である。 同実施形態に係る音声信号処理による補正前のインパルス応答特性および振幅周波数特性に関するグラフである。 同実施形態に係る音声信号処理による補正後のインパルス応答特性および振幅周波数特性に関するグラフである。 本開示の第4の実施形態に係る車両空間におけるスピーカの配置例を示す説明図である。 同実施形態に係る音声信号処理装置の構成を示すブロック図である。 同実施形態に係る音声信号処理による補正前のインパルス応答特性および振幅周波数特性に関するグラフである。 同実施形態に係る音声信号処理による補正後のインパルス応答特性および振幅周波数特性に関するグラフである。
以下に添付図面を参照しながら、本開示の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
なお、説明は以下の順序で行うものとする。
0.概要
1.第1の実施形態(3つのスピーカ、センタースピーカのみ補正)
1.1.スピーカ配置構成
1.2.音声信号処理装置
1.3.音声信号処理方法
1.4.実施例(音声信号処理装置による音響特性の補正)
2.第2の実施形態(3つのスピーカ、各スピーカ補正)
2.1.音声信号処理装置
2.2.音声信号処理方法
2.3.実施例(音声信号処理装置による音響特性の補正)
3.第3の実施形態(5つのスピーカ)
3.1.スピーカ配置構成
3.2.音声信号処理装置
3.3.音声信号処理方法
3.4.実施例(音声信号処理装置による音響特性の補正)
4.第4の実施形態(7つのスピーカ)
4.1.スピーカ配置構成
4.2.音声信号処理装置
4.3.音声信号処理方法
4.4.実施例(音声信号処理装置による音響特性の補正)
5.まとめ
<0.概要>
まず、図1に基づいて、本開示の音声信号処理の概要を説明する。なお、図1は、本開示の音声信号処理の概要を説明するための説明図である。
本技術は、室内空間や車両空間等の、特性の異なる複数のスピーカが配置された空間において、各スピーカから出力される再生音が空間内の複数のリスニングポイントで同時に良好な音像定位を得るようにするものである。例えば、図1に示すように、空間内にセンタースピーカCと、当該センタースピーカCの左右に配置された左スピーカLおよび右スピーカRとの3つのスピーカが配置されているとする。左スピーカLおよび右スピーカRの振幅周波数特性および位相特性は同一である。
このような空間において、聴取者が左スピーカLとセンタースピーカCとの間の位置P1、右スピーカRとセンタースピーカCとの間の位置P2にて各スピーカから出力される再生音を聴くとする。位置P1では、左スピーカLとセンタースピーカCとからの再生音が支配し、位置P2では、右スピーカRとセンタースピーカCとからの再生音が支配する。このとき、従来のように、各スピーカC、L、Rから出力される再生音に含まれる全周波数が、聴取者の位置P1、P2に異なる到達時間で、あるいは異なるレベルで到達すると、各位置で同時に良好な音像定位を得ることができない。
そこで、本技術では、複数のリスニングポイントに対して、再生音に含まれる全周波数がほぼ同時に、同一レベルで到達するように音声信号処理する。すなわち、センタースピーカCおよび左スピーカLから出力される各再生音は、これらのスピーカC、Lの間に位置する位置P1にほぼ同時に同一レベルで到達するように信号処理する。同様に、センタースピーカCおよび右スピーカRから出力される各再生音は、これらのスピーカC、Rの間に位置する位置P2にほぼ同時に同一レベルで到達するように信号処理する。これにより、同一空間内の複数のリスニングポイントにおいて、同時に良好な音像定位を得ることができる。
このような音声信号処理に基づく本開示の実施の形態について、以下詳細に説明していく。なお、以下では、車両空間に配置された複数のスピーカから出力される音声信号の処理方法について説明するが、本技術はかかる例に限定されない。例えば、室内空間にテレビジョンやオーディオ機器の複数のスピーカが配置されている場合等にも適用できる技術である。
<1.第1の実施形態>
図2〜図7に基づいて、本開示の第1の実施形態に係る音声信号処理装置の構成とこれによる音声信号処理について説明する。
[1.1.スピーカ配置構成]
まず、図2を参照して、本実施形態に係る車両空間におけるスピーカの配置例について説明する。図2は、本実施形態に係る車両空間におけるスピーカの配置例を示す説明図である。
図2に示す車両10の車内空間には、ダッシュボード上に設けられたセンタースピーカ11と、運転席側のドアに設けられた左ドアスピーカ12と、助手席側のドアに設けられた右ドアスピーカ13との3つのスピーカが設けられている。センタースピーカ11は、車両10の幅方向のほぼ中央に、左ドアスピーカ12と右ドアスピーカ13との間に配置されている。センタースピーカ11の再生周波数レンジは、例えば300Hz〜20kHzの中高音帯域である。左ドアスピーカ12および右ドアスピーカ13は、同一の振幅周波数特性および位相特性を有しており、例えば80Hz〜20kHzの再生周波数レンジを有する。
本実施形態では、運転席と助手席とのヘッドレスト付近をそれぞれリスニングポイントP1、P2とする。そして、各リスニングポイントP1、P2にて同時に良好な音像定位を得るため、音声信号処理装置100により後述する音声信号処理を行った後、各スピーカから再生音を出力する。音声信号処理装置100は、各リスニングポイントに、各スピーカからの再生音に含まれる各周波数が、それぞれ同時に、かつ同一レベルで到達するように信号処理する。
運転席および助手席のヘッドレスト付近のリスニングポイントP1、P2において観測される再生音は、次のように構成されると考えられる。まず、300Hz〜20kHzの再生帯域については、センタースピーカ11およびリスニングポイントP1(P2)に近い側のドアスピーカ12(13)の2つの再生音が支配的になる。例えば運転席で観測される再生音は、センタースピーカ11および左ドアスピーカ12から出力される再生音に支配され、助手席で観測される再生音は、センタースピーカ11および右ドアスピーカ13から出力される再生音に支配される。また、300Hz以下の再生音に関しては、センタースピーカ11の再生帯域外のため、左ドアスピーカ12および右ドアスピーカ13からの再生音が各リスニングポイントP1、P2で観測されることになる。
運転席および助手席で同時に良好な音像定位を得るためには、運転席側のリスニングポイントP1と助手席側のリスニングポイントP2とに、各スピーカ11、12、13の再生音に含まれる各周波数が、同時に、かつ同一レベルで到達することが必要である。つまり、300Hz〜20kHzの再生帯域については、センタースピーカ11およびリスニングポイントP1(P2)に近い側のドアスピーカ12(13)からの再生音を、各リスニングポイントへ、同時に、かつ同一レベルで到達させる。また、300Hz以下の再生音に関しては、左ドアスピーカ12または右ドアスピーカ13からの再生音を、各リスニングポイントP1、P2へ、同時に、かつ同一レベルで到達させる。
ここで、一般的な車内空間では、左ドアスピーカ12から聴取者までの距離と、右ドアスピーカ13から聴取者までの距離との距離差は、30〜40cm程度である。音速を340m/sとすると、この距離差は425〜570Hzの半波長の長さに相当する。つまり、左ドアスピーカ12または右ドアスピーカ13からの425〜570Hz以下の低周波数再生音は、半波長(λ/2)以内の遅延で各リスニングポイントP1、P2へ届くことになる。このとき、再生帯域が低域になるほど、リスニングポイントP1、P2における再生音の位相のずれの影響は小さくなる。一方、左ドアスピーカ12または右ドアスピーカ13から出力される425〜570Hz以上の中高音域の再生音については、リスニングポイントP1、P2への到達が半波長以上ずれるため、安定した定位の実現には寄与しない。
そこで、本実施形態に係る音声信号処理装置100では、中高音域の再生音について、リスニングポイントP1、P2で観測されるセンタースピーカ11の特性を、左ドアスピーカ12および右ドアスピーカ13の特性に近いものとなるように補正する。これにより、300Hz〜20kHzの再生帯域においてセンタースピーカ11の特性とドアスピーカ12、13の特性とが一致することになり、再生音のリスニングポイントP1、P2への到達時間および再生レベルを揃えることが可能となる。
[1.2.音声信号処理装置]
図3に、本実施形態に係る音声信号処理装置100の構成を示す。本実施形態では、2チャンネルの音声を再生するステレオ再生を行う場合を示す。また、本実施形態では、デジタル入力信号を想定して説明するが、アナログ音声信号の場合も、フィルタ信号処理部110、120、130による処理の前にA/D変換処理を最初に行うことにより、全く同様に説明できる。
音声信号処理装置100は、図3に示すように、各スピーカ11、12、13に対して、それぞれフィルタ信号処理部110、120、130と、D/A変換器115、125、135と、電力増幅器117、127、137とを備える。
フィルタ信号処理部110、120、130は、入力されたデジタル音声信号に対して所定の信号処理を行う。センタースピーカ11から出力される再生音の処理を行うフィルタ信号処理部110には、左右の2つのチャンネルの音源Left、Rightの和が入力される。本実施形態において、フィルタ信号処理部110は、センタースピーカ11から出力される再生音の特性を、左ドアスピーカ12および右ドアスピーカ13の特性に近いものとなるように補正する。このため、フィルタ信号処理部110は、逆フィルタ処理部112と、スピーカ特性付加処理部114とを備えている。
逆フィルタ処理部112は、予め演算されたスピーカの逆特性に基づいて設定されたフィルタにより、音声信号の特性を変換する。具体的には、スピーカのインパルス応答を予め測定してその逆特性を求め、その逆特性に相当する音響特性を与えるフィルタ処理を行うデジタルフィルタを構成する。逆特性に相当する音響特性を与えるデジタルフィルタは、例えば図4に示すように構成される。スピーカの逆特性のように、比較的広範な周波数帯域にわたる音響特性を与えるためのデジタルフィルタとしては、例えばFIR(Finite Impulse Response)フィルタを用いることができる。逆フィルタ処理部112は、当該デジタルフィルタによって音声信号を処理し、入力信号に逆特性に相当する音響特性を付与する。
例えば、図3に示す音声信号処理装置100を備える音声再生システムが、図5上側に示すようなインパルス応答と、その周波数領域での表現である振幅周波数特性とを有しているとする。図5上側に示す音響特性の逆特性を算出すると、図5中央に示すようになる。図5中央に示すインパルス応答を、逆フィルタ処理部112においてデジタルフィルタにより実現することにより、同じ測定点でスピーカの特性を図った場合、図5下側に示すようなインパルスに近いインパルス応答特性と平坦な振幅周波数特性とを得ることができる。これにより、スピーカの特性に左右されない、音質劣化のない原音が取得される。
スピーカ特性付加処理部114は、音声信号の音響特性に対して所定の音響特性を付加する処理を行う。本実施形態では、スピーカ特性付加処理部114は、逆フィルタ処理部112により振幅周波数特性と位相特性とを同時に補正された音声信号の音響特性を、左右のドアスピーカ12、13の音響特性に合わせる。これにより、各リスニングポイントP1、P2における再生音をより左右のドアスピーカ12、13の音響特性に近づけることができる。
図6を用いてスピーカ特性付加処理部114の処理について具体的に説明する。図6の上側は、左右のドアスピーカ12、13(front)のインパルス応答特性および振幅周波数特性であり、図6下側は、スピーカ特性付加処理部114による処理後のセンタースピーカ11(center)のインパルス応答特性および振幅周波数特性を示している。左右のドアスピーカ12、13(front)の音響特性は予め取得されるものとする。スピーカ特性付加処理部114は、逆フィルタ処理部112により補正されたセンタースピーカ11の音響特性に左右のドアスピーカ12、13の音響特性を畳み込むことで、センタースピーカ11の音響特性を左右のドアスピーカ12、13の音響特性に近づける。スピーカ特性付加処理部114は、処理後のセンタースピーカ11の音声信号をD/A変換器115へ出力する。
また、本実施形態において、左ドアスピーカ12から出力される再生音の処理を行うフィルタ信号処理部120および右ドアスピーカ13から出力される再生音の処理を行うフィルタ信号処理部130は、逆フィルタ処理部は備えていない。したがって、フィルタ信号処理部120、130は、入力された音声信号の特性はそのままで各種信号処理を行う。フィルタ信号処理部110、120、130は、信号処理した音声信号をD/A変換器115、125、135へ出力する。
D/A変換器115、125、135は、フィルタ信号処理部110、120、130から入力されたデジタル音声信号をそれぞれアナログ音声信号に変換する。D/A変換器115、125、135によりアナログ音声信号に変換された再生音は、電力増幅器117、127、137へ出力される。
電力増幅器117、127、137は、D/A変換器115、125、135から入力されたアナログ音声信号を増幅してスピーカを駆動させる。
ここで、図2を参照すると、左ドアスピーカ12から運転席側のリスニングポイントP1までの距離と、センタースピーカ11からリスニングポイントP1までの距離とには、距離差が存在している。かかる距離差については、図3および図4で示されるフィルタ信号処理部110内の遅延量の調整をすることによってなくすことが可能である。したがって、各スピーカ11、12からの再生音が同時にリスニングポイントP1に届く状態を実現することができる。また、このような遅延器を、図3および図4に示すフィルタとは別に、図3および図4に示すフィルタの前段もしくは後段に設けることで、これと等価な処理をすることも可能である。
[1.3.音声信号処理方法]
センタースピーカ11から出力する再生音は、以下の処理によって取得される。まず、逆フィルタ処理部112により、入力される音源Left、Rightの和の音声信号に対して、インパルスに近いインパルス応答特性と平坦な振幅周波数特性とを得る処理が行われる。かかる処理は、例えば図4に示す逆特性に相当する音響特性を与えるデジタルフィルタを用いて行われる。
次いで、スピーカ特性付加処理部114により、逆フィルタ処理部112により補正された音声信号に対して、予め取得された左右のドアスピーカ12、13の音響特性を畳み込む処理(コンフィルタ処理)を行う。これにより、センタースピーカ11の音響特性が左右のドアスピーカ12、13の音響特性に近づけられる。スピーカ特性付加処理部114により処理された音声信号は、D/A変換器115、電力増幅器117を介して、センタースピーカ11から出力される。
なお、左ドアスピーカ12からは、音源Leftがフィルタ信号処理部120、D/A変換器125、電力増幅器127を介して出力される。また、右ドアスピーカ13からは、音源Rightがフィルタ信号処理部130、D/A変換器135、電力増幅器137を介して出力される。
このように、中高音域の再生音について、リスニングポイントP1、P2で観測されるセンタースピーカ11の特性が、左ドアスピーカ12および右ドアスピーカ13の特性に近いものとなるように補正される。したがって、300Hz〜20kHzの再生帯域においてセンタースピーカ11の特性とドアスピーカ12、13の特性とが一致することになり、再生音のリスニングポイントP1、P2への到達時間および再生レベルを揃えることが可能となる。これにより、運転席と助手席とにおいて同時に良好な音像定位を得ることができる。
[1.4.実施例(音声信号処理装置による音響特性の補正)]
図7に基づいて、本実施形態に係る音声信号処理装置100を適用した場合の、運転席側のリスニングポイントにおける音響特性測定結果の一例を説明する。図7上側は、左右のドアスピーカ12、13から出力される音声信号のインパルス応答特性および振幅周波数特性であり(front)、図7中央は、センタースピーカ11から出力される音声信号のインパルス応答特性および振幅周波数特性である(center(補正前))。図7下側は、音声信号処理装置100により音響特性が補正された後のセンタースピーカ11から出力される音声信号のインパルス応答特性および振幅周波数特性である(center(補正後))。
図7に示すように、センタースピーカ11のインパルス応答特性および振幅周波数特性は、補正前と補正後において波形が変化している。特に、300Hz以上の帯域において、補正後のセンタースピーカ11のインパルス応答特性および振幅周波数特性は、左右のドアスピーカ12、13の音響特性と近い波形となっていることが確認できる。すなわち、音声信号処理装置100により、センタースピーカ11の音響特性が左右のドアスピーカ12、13の音響特性に近づけられたことがわかる。
<2.第2の実施形態>
次に、図8および図9に基づいて、本開示における第2の実施形態について説明する。本実施形態においては、車内空間の音声再生システムの構成は第1の実施形態と同一であるが、音声信号処理装置の構成が相違する。本実施形態に係る音声信号処理装置により、運転席と助手席との複数のリスニングポイントで同時に高音質を実現し、かつ良好な音像定位を得る。なお、本実施形態では、車内空間の音声再生システムの構成は図2と同一であるため、ここでは説明を省略する。
[2.1.音声信号処理装置]
運転席と助手席とで同時に高音質かつ良好な音像定位を得るためには、まず、各スピーカ11、12、13から出力される再生音に対して音響特性が補正される。そして、運転席および助手席のヘッドレスト付近のリスニングポイントP1、P2に、各スピーカ11、12、13からの再生音に含まれる全周波数を同時に、かつ同一レベルで到達させる。
例えば、第1の実施形態と同様、センタースピーカ11の再生周波数レンジを300Hz〜20kHzの再生帯域とし、左ドアスピーカ12および右ドアスピーカ13の再生周波数レンジを80Hz〜20kHzの再生帯域とする。このとき、300Hz〜20kHzの再生帯域についてはセンタースピーカ11およびリスニングポイントP1(P2)に近い側のドアスピーカ12(13)からの再生音が、300Hz以下の再生音については左右のドアスピーカ12、13からの再生音が、同時にかつ同一レベルに到達される。
具体的には、図8に示すような音声信号処理装置100Aによって音響特性が補正される。図8に示す音声信号処理装置100Aは、図3に示す第1の実施形態に係る音声信号処理装置100と比較して、左右のドアスピーカ12、13から出力される音声信号処理を行うフィルタ信号処理部120、130が、逆フィルタ処理部122、132を備える点で相違する。
すなわち、すべてのスピーカ11、12、13から出力される音声信号について、逆フィルタ処理部112、122、132により予め取得した音声信号の逆特性に基づき、インパルスに近いインパルス応答特性および平坦な振幅周波数特性を得る。これにより、音の高さによる出力のばらつきをなくした自然な再生音による原音忠実再生や明瞭な音像定位を実現することができる。また、センタースピーカ11に対するフィルタ信号処理部110は、センタースピーカ11の音響特性に左右のドアスピーカ12、13の音響特性を合わせ込むためのスピーカ特性付加処理部114を備えている。
[2.2.音声信号処理方法]
各スピーカ11、12、13から出力する再生音は、以下の処理によって取得される。まず、低音域周波数について、運転席と助手席とへの左右のドアスピーカ12、13からの到達時間を揃える。このため、左右のドアスピーカ12、13に対して、左右で同じパラメータを用いて音響特性を補正する。別々のパラメータを設定すると、運転席もしくは助手席どちらか一方のみに対してのみ音の到達時間が揃い、他方に対しては到達時間が全く揃わない音になるためである。
次いで、センタースピーカ11に対して、上記特性の補正がされた左右のドアスピーカ12、13の音響特性を用いて音声信号を補正する。すなわち、スピーカ特性付加処理部114は、センタースピーカ11から出力される再生音の音響特性を、左右のドアスピーカ12、13の音響特性に合わせ込む。このようにして各スピーカ11、12、13に対する音響特性の補正が行われる。そして、運転席および助手席において、300Hz〜20kHzの再生帯域についてはセンタースピーカ11およびリスニングポイントP1(P2)に近い側のドアスピーカ12(13)からの再生音が、300Hz以下の再生音については左右のドアスピーカ12、13からの再生音が、同時にかつ同一レベルで到達する状態を実現できる。したがって、両席で同時に高音質かつ良好な音像定位を得ることができる。
本実施形態あるいは上記第1の実施形態に係る音声信号処理装置による音声信号の補正が行われない場合、例えば運転席においては左のドアスピーカ12とセンタースピーカ11との特性が一致しなくなる。このため、音源Leftのみに含まれる楽器の再生音や音源Left、Rightに等しく含まれるボーカル成分・低域成分の音像定位に偏りが生じたりボケが発生したりする。これに対して、本実施形態あるいは上記第1の実施形態に係る音声信号処理装置による音声信号の補正によって、各スピーカ11、12、13の特性が一致され、良好な音像定位を得ることができる。
また、音声信号処理装置に入力される音声信号がモノラル信号の場合も同様である。すなわち、本実施形態あるいは上記第1の実施形態に係る音声信号処理装置による音声信号の補正が行われない場合、例えば運転席においては左のドアスピーカ12とセンタースピーカ11との特性が一致しなくなる。このため、モノラル信号の音像定位の偏りやボケが発生する。これに対して、本実施形態あるいは上記第1の実施形態に係る音声信号処理装置による音声信号の補正によって、各スピーカ11、12、13の特性が一致され、良好な音像定位を得ることができる。
なお、左右のドアスピーカ12、13に対して音響特性を補正する際、上述のように逆フィルタ処理部122、132によってインパルスに近いインパルス応答特性および平坦な振幅周波数特性を得る処理を行う。本実施形態では、さらにその後、補正された音声信号に対してあるリファレンスとなるターゲット特性を持たせるようにその音響特性を補正してもよい。すなわち、左右のドアスピーカ12、13の各フィルタ信号処理部120、130に、図3のフィルタ信号処理部110に示したスピーカ特性付加処理部114を備える構成としてもよい。第1の実施形態においてスピーカ特性付加処理部114は、センタースピーカ11の音響特性を左右のドアスピーカ12、13に合わせ込むための処理を行うものであるが、フィルタ信号処理部120、130においては、左右のドアスピーカ12、13の音響特性をさらに他のスピーカの音響特性に補正するために用いられる。
この場合、まず、左右のドアスピーカ12、13から出力される音声信号は、逆フィルタ処理部122、132によりインパルスに近いインパルス応答特性および平坦な振幅周波数特性を得る第1の処理を行う。そして、第1の処理にて得られた補正後の音声信号を、スピーカ特性付加処理部114によって、あるターゲット特性に近づけるように補正する第2の処理を行う。これにより、音の高さによる出力のばらつきをなくした自然な再生音による原音忠実再生や明瞭な音像定位を実現することができるとともに、所望のスピーカの音響特性を実現することも可能となる。
[2.3.実施例(音声信号処理装置による音響特性の補正)]
図9に基づいて、本実施形態に係る音声信号処理装置100Aを適用した場合の、運転席側のリスニングポイントにおける音響特性測定結果の一例を説明する。図9上側には、補正前の左右のドアスピーカ12、13から出力される音声信号のインパルス応答特性および振幅周波数特性(front)およびセンタースピーカ11から出力される音声信号のインパルス応答特性および振幅周波数特性(center)を示す。図9下側には、補正後の左右のドアスピーカ12、13から出力される音声信号のインパルス応答特性および振幅周波数特性(front)およびセンタースピーカ11から出力される音声信号のインパルス応答特性および振幅周波数特性(center)を示す。
図9に示すように、センタースピーカ11のインパルス応答特性および振幅周波数特性は、補正前と補正後において波形が変化している。インパルス応答においては、各スピーカ11、12、13のいずれもインパルスにより近い特性が現れており、その波形はセンタースピーカ11と左右のドアスピーカ12、13とで近いものとなっている。また、振幅周波数特性については、特に、300Hz以上の帯域において、補正後のセンタースピーカ11と左右のドアスピーカ12、13との波形が近いものとなっており、これらの音響特性が一致したものとなっていることが確認できる。すなわち、音声信号処理装置100により、センタースピーカ11の音響特性が左右のドアスピーカ12、13の音響特性に近づけられたことがわかる。
<3.第3の実施形態>
次に、図10〜図13に基づいて、本開示の第3の実施形態について説明する。本実施形態においては、車内空間の音声再生システムの構成において、第1の実施形態の3つのスピーカ加えて、左右のドアツィーターをさらに備える点で第1の実施形態と相違する。このような車内空間において運転席と助手席との複数のリスニングポイントで同時に高音質を実現し、かつ良好な音像定位を得るための音声信号処理について、以下説明する。
[3.1.スピーカ配置構成]
まず、図10を参照して、本実施形態に係る車両空間におけるスピーカの配置例について説明する。図10は、本実施形態に係る車両空間におけるスピーカの配置例を示す説明図である。
図10に示す車両20の車内空間には、ダッシュボード上に設けられたセンタースピーカ21と、運転席側のドアに設けられた左ドアウーハー22と、助手席側のドアに設けられた右ドアウーハー23とを備える。さらに、本実施形態に係る車両20には、運転席側のドアに設けられた左ドアツィーター24および助手席側のドアに設けられた右ドアツィーター25が設けられている。
センタースピーカ21は、車両20の幅方向のほぼ中央に設けられており、左ドアウーハー22、左ドアツィーター24と右ドアウーハー23、右ドアツィーター25との間に配置されている。センタースピーカ21の再生周波数レンジは、例えば300Hz〜20kHzの中高音帯域である。左ドアウーハー22および右ドアウーハー23は、例えば80Hz〜3kHzの中低音帯域の再生周波数レンジを有する。左ドアツィーター24および右ドアツィーター25は、例えば3kHz〜20kHzの高音帯域の再生周波数レンジを有する。本実施形態において、左ドアウーハー22および右ドアウーハー23、左ドアツィーター24および右ドアツィーター25は、それぞれ同一の振幅周波数特性および位相特性を有している。
本実施形態では、運転席と助手席とのヘッドレスト付近をそれぞれリスニングポイントP1、P2として、各リスニングポイントP1、P2にて同時に良好な音像定位を得るため、音声信号処理装置200により音声信号処理を行った後、各スピーカ21〜25から再生音を出力する。音声信号処理装置200は、各リスニングポイントP1、P2に、各スピーカからの再生音に含まれる各周波数が、それぞれ同時に、かつ同一レベルで到達するように信号処理する。
各リスニングポイントP1、P2において観測される再生音は、次のように構成されると考えられる。まず、300Hz〜20kHzの再生帯域については、センタースピーカ21とリスニングポイントP1(P2)に近い側のドアウーハー22(23)およびドアツィーター24(25)の3つの再生音が支配的になる。例えば運転席で観測される再生音は、センタースピーカ21、左ドアウーハー22および左ドアツィーター24から出力される再生音に支配される。また、助手席で観測される再生音は、センタースピーカ21、右ドアウーハー23および右ドアツィーター25から出力される再生音に支配される。さらに、300Hz以下の再生音に関しては、センタースピーカ21およびドアツィーター24、25の再生帯域外のため、左ドアウーハー22および右ドアウーハー23からの再生音が各リスニングポイントP1、P2で観測されることになる。
運転席および助手席で同時に良好な音像定位を得るためには、運転席と助手席とのヘッドレスト付近のリスニングポイントP1、P2に、各スピーカ21〜25からの再生音に含まれる各周波数それぞれが、同時に、かつ同一レベルで到達することが必要である。つまり、300Hz〜20kHzの再生帯域については、センタースピーカ21とリスニングポイントP1(P2)に近い側のドアウーハー22(23)およびドアツィーター24(25)からの再生音が、各リスニングポイントP1(P2)へ、同時に、かつ同一レベルで到達することである。また、300Hz以下の再生音に関しては、左ドアウーハー22および右ドアウーハー23からの再生音が、各リスニングポイントP1(P2)へ、同時に、かつ同一レベルで到達することである。
そこで、本実施形態に係る音声信号処理装置200では、中高音域の再生音について、リスニングポイントP1、P2で観測されるセンタースピーカ21の特性を、ドアウーハー22、23およびドアツィーター24、25の特性に近いものとなるように補正する。これにより、300Hz〜20kHzの再生帯域においてセンタースピーカ21の特性とドアウーハー22、23およびドアツィーター24、25の特性とが一致し、再生音のリスニングポイントP1、P2への到達時間および再生レベルを揃えることができる。
[3.2.音声信号処理装置]
図11に、本実施形態に係る音声信号処理装置200の構成を示す。本実施形態では、2チャンネルの音声を再生するステレオ再生を行う場合を示す。また、本実施形態では、デジタル入力信号を想定して説明するが、アナログ音声信号の場合も、各フィルタ信号処理部210〜250による処理の前にA/D変換処理を最初に行うことにより、全く同様に説明できる。
音声信号処理装置200は、図11に示すように、各スピーカ21〜25に対して、それぞれフィルタ信号処理部210〜250と、D/A変換器215〜255と、電力増幅器217〜257とを備える。各機能部は、図3に示した第1の実施形態と同様の処理を行う。このため、ここでは詳細な説明を省略する。
図11に示すように、左ドアウーハー22および左ドアツィーター24には、ステレオで録音された音源Leftがそれぞれ入力され、右ドアウーハー23よび右ドアツィーター25には、ステレオで録音された音源Rightがそれぞれ入力される。また、センタースピーカ21には音源Leftおよび音源Rightの成分が入力される。
[3.3.音声信号処理方法]
各スピーカ21〜25から出力する再生音は、以下の処理によって取得される。まず、第2の実施形態と同様に、低音域周波数について、運転席と助手席とへの左右のドアウーハー22、23からの到達時間を揃える。このため、左右のドアウーハー22、23に対して、左右で同じパラメータを用いて音響特性を補正する。別々のパラメータを設定すると、運転席もしくは助手席どちらか一方のみに対してのみ音の到達時間が揃い、他方に対しては到達時間が全く揃わない音になるためである。本処理では、例えば予め元のスピーカの音響特性を測定し、その特性の逆関数処理によって振幅特性の平坦化のみを行う。これにより自然な再生音を実現する。
次いで、高音域周波数について、運転席と助手席とへの左右のドアツィーター24、25からの到達時間を揃える。このため、ドアツィーター24、25に対して、左右で同じパラメータを用いて音響特性を補正する。ドアツィーター24、25の音響特性の補正は、ドアウーハー22、23の場合と同様に行うことができる。
さらに、音声信号処理装置200は、補正されたドアウーハー22、23の音響特性とドアツィーター24、25の音響特性の合成特性を補正する。例えば、図10に示すようなセンタースピーカ21と、左右のドアウーハー22、23と、左右のドアツィーター24、25の5つのスピーカを備える車内空間では、ドアウーハー22、23とドアツィーター24、25とによって全周波数帯域がカバーされる。したがって、左ドアウーハー22と左ドアツィーター24の合成特性、および右ドアウーハー23と右ドアツィーター25の合成特性を、あるリファレンスのターゲット特性を持つように補正し、全周波数帯域がカバーされるようにする。
このように生成されたドアウーハー22、23とドアツィーター24、25との合成特性に対して、振幅周波数特性の平坦化を行い、自然な再生音を実現する。あるいは、あるターゲット特性の振幅周波数特性に近くなるように合成特性を補正してもよい。そして、振幅周波数特性の補正後の各スピーカ22〜25に対し、その特性の逆関数処理によってインパルス応答特性をインパルスに近づける。こうして、ドアウーハー22、23とドアツィーター24、25とによって全周波数帯域がカバーされる高音質の音声信号が取得される。
その後、上記補正された音響特性を用いて、センタースピーカ21に対する音声信号を補正する。かかる処理は、第2の実施形態と同様に行うことができる。すなわち、スピーカ特性付加処理部214により、センタースピーカ21から出力される再生音の音響特性を、左右のドアウーハー22、23およびドアツィーター24、25の音響特性に合わせ込む。このようにして各スピーカ21〜25に対する音響特性の補正が行われる。
本実施形態に係る音声信号処理により、運転席および助手席において、300Hz〜20kHzの再生帯域については、センタースピーカ21とリスニングポイントP1(P2)に近い側のドアウーハー22、23およびドアツィーター24、25からの再生音が、300Hz以下の再生音に関しては、左ドアウーハー22および右ドアウーハー23からの再生音が、同時にかつ同一レベルで到達する状態を実現できる。したがって、両席で同時に高音質かつ良好な音像定位を得ることができる。
本実施形態の実施形態に係る音声信号処理装置200による音声信号の補正が行われない場合、例えば運転席においては左ドアウーハー22および左ドアツィーター24の合成特性とセンタースピーカ11の特性とが一致しなくなる。このため、音源Leftのみに含まれる楽器の再生音や音源Left、Rightに等しく含まれるボーカル成分・低域成分の音像定位に偏りが生じたりボケが発生したりする。これに対して、本実施形態に係る音声信号処理装置200による音声信号の補正によって、各スピーカ21〜25の特性が一致され、良好な音像定位を得ることができる。
また、音声信号処理装置に入力される音声信号がモノラル信号の場合も同様である。すなわち、本実施形態に係る音声信号処理装置200による音声信号の補正が行われない場合、例えば運転席においては左ドアウーハー22および左ドアツィーター24の合成特性とセンタースピーカ11の特性とが一致しなくなる。このため、モノラル信号の音像定位の偏りやボケが発生する。これに対して、本実施形態に係る音声信号処理装置による音声信号の補正によって、各スピーカ21〜25の特性が一致され、良好な音像定位を得ることができる。
なお、左右のドアウーハー22、23あるいは左右のドアツィーター24、25に対して音響特性を補正する際、上述のように逆フィルタ処理部222、232、224、225によってインパルスに近いインパルス応答特性および平坦な振幅周波数特性を得る処理を行う。本実施形態では、さらにその後、補正された音声信号に対してあるリファレンスとなるターゲット特性を持たせるようにその音響特性を補正してもよい。すなわち、各スピーカ22〜25の各フィルタ信号処理部220〜250に、フィルタ信号処理部210のスピーカ特性付加処理部214を備える構成としてもよい。
この場合、まず、左右のドアウーハー22、23から出力される音声信号に対して、逆フィルタ処理部222、232によりインパルスに近いインパルス応答特性および平坦な振幅周波数特性を得る第1の処理を行う。そして、第1の処理にて得られた補正後の音声信号を、スピーカ特性付加処理部214によって、あるターゲット特性に近づけるように補正する第2の処理を行う。これにより、音の高さによる出力のばらつきをなくした自然な再生音による原音忠実再生や明瞭な音像定位を実現することができるとともに、所望のスピーカの音響特性を実現することも可能となる。ドアツィーター24、25に対しても同様に処理すればよい。
[3.4.実施例(音声信号処理装置による音響特性の補正)]
図12および図13に基づいて、本実施形態に係る音声信号処理装置200を適用した場合の、運転席側のリスニングポイントにおける音響特性測定結果の一例を説明する。図12には、補正前の左右のドアウーハー22、23から出力される音声信号のインパルス応答特性および振幅周波数特性(front woofer)、左右のドアツィーター24、25から出力される音声信号のインパルス応答特性および振幅周波数特性(front
tweeter)およびセンタースピーカ21から出力される音声信号のインパルス応答特性および振幅周波数特性(center)を示す。図13には、補正後の左右のドアウーハー22、23と左右のドアツィーター24、25との合成音声信号のインパルス応答特性および振幅周波数特性(front)およびセンタースピーカ21から出力される音声信号のインパルス応答特性および振幅周波数特性(center)を示す。
図12および図13より、左右のドアウーハー22、23と左右のドアツィーター24、25との合成音声信号およびセンタースピーカ21から出力される音声信号のインパルス応答特性および振幅周波数特性は、補正前と補正後において波形が変化している。インパルス応答においては、左右のドアウーハー22、23と左右のドアツィーター24、25との合成音声信号およびセンタースピーカ21から出力される音声信号のいずれもインパルスにより近い特性が現れている。また、その波形は、センタースピーカ21の音声信号と左右のドアウーハー22、23と左右のドアツィーター24、25との合成音声信号とで近いものとなっている。
振幅周波数特性については、特に、300Hz以上の帯域において、補正後のセンタースピーカ21の音声信号と左右のドアウーハー22、23と左右のドアツィーター24、25との合成音声信号との波形が近いものとなっている。これより、音声信号処理装置200によってこれらの音響特性が一致し、センタースピーカ21の音響特性が左右のドアウーハー22、23と左右のドアツィーター24、25との合成音声信号の音響特性に近づけられたことがわかる。
<4.第4の実施形態>
次に、図14〜図17に基づいて、本開示の第4の実施形態について説明する。本実施形態においては、車内空間の音声再生システムの構成において、第3の実施形態の5つのスピーカ加えて、左右のドアスコーカーをさらに備える点で第3の実施形態と相違する。このような車内空間において運転席と助手席との複数のリスニングポイントで同時に高音質を実現し、かつ良好な音像定位を得るための音声信号処理について、以下説明する。
[4.1.スピーカ配置構成]
まず、図14を参照して、本実施形態に係る車両空間におけるスピーカの配置例について説明する。図14は、本実施形態に係る車両空間におけるスピーカの配置例を示す説明図である。
図14に示す車両30の車内空間には、ダッシュボード上に設けられたセンタースピーカ31と、運転席側のドアに設けられた左ドアウーハー32と、助手席側のドアに設けられた右ドアウーハー33とを備える。さらに、本実施形態に係る車両30には、運転席側のドアに設けられた左ドアツィーター34および助手席側のドアに設けられた右ドアツィーター35と、運転席側のドアに設けられた左ドアスコーカー36および助手席側のドアに設けられた右ドアスコーカー37とが設けられている。
センタースピーカ31は、車両30の幅方向のほぼ中央に設けられており、左ドアウーハー32、左ドアツィーター34、左ドアスコーカー36と右ドアウーハー33、右ドアツィーター25、右ドアスコーカー37との間に配置されている。センタースピーカ31の再生周波数レンジは、例えば300Hz〜20kHzの中高音帯域である。左ドアウーハー32および右ドアウーハー33は、例えば80Hz〜500Hzの低音帯域の再生周波数レンジを有する。左ドアツィーター34および右ドアツィーター35は、例えば5kHz〜20kHzの高音帯域の再生周波数レンジを有する。左ドアスコーカー36および右ドアスコーカー37は、例えば500Hz〜5kHzの中音帯域の再生周波数レンジを有する。本実施形態において、左ドアウーハー22および右ドアウーハー23、左ドアツィーター24および右ドアツィーター25、左ドアスコーカー36および右ドアスコーカー37は、それぞれ同一の振幅周波数特性および位相特性を有している。
本実施形態では、運転席と助手席とのヘッドレスト付近をそれぞれリスニングポイントP1、P2として、各リスニングポイントP1、P2にて同時に良好な音像定位を得るため、音声信号処理装置300により音声信号処理を行った後、各スピーカ31〜37から再生音を出力する。音声信号処理装置300は、各リスニングポイントP1、P2に、各スピーカからの再生音に含まれる各周波数が、それぞれ同時に、かつ同一レベルで到達するように信号処理する。
各リスニングポイントP1、P2において観測される再生音は、次のように構成されると考えられる。まず、300Hz〜20kHzの再生帯域については、センタースピーカ31とリスニングポイントに近い側のドアウーハー32、33、ドアツィーター34、35およびドアスコーカー36、37の4つの再生音が支配的になる。例えば運転席で観測される再生音は、センタースピーカ31、左ドアウーハー32、左ドアツィーター34および左ドアスコーカー36から出力される再生音に支配される。また、助手席で観測される再生音は、センタースピーカ31、右ドアウーハー33、右ドアツィーター35および右ドアスコーカー37から出力される再生音に支配される。さらに、300Hz以下の再生音に関しては、センタースピーカ31、ドアツィーター34、35およびドアスコーカー36、37の再生帯域外のため、左ドアウーハー32および右ドアウーハー33からの再生音が各リスニングポイントで観測されることになる。
運転席および助手席で同時に良好な音像定位を得るためには、運転席と助手席とのヘッドレスト付近のリスニングポイントP1、P2に、各スピーカ31〜37からの再生音に含まれる各周波数それぞれが、同時に、かつ同一レベルで到達することが必要である。つまり、300Hz〜20kHzの再生帯域については、センタースピーカ21とリスニングポイントP1(P2)に近い側のドアウーハー32(33)、ドアツィーター34(35)およびドアスコーカー36(37)からの再生音が、各リスニングポイントP1(P2)へ、同時に、かつ同一レベルで到達することである。また、300Hz以下の再生音に関しては、左ドアウーハー32および右ドアウーハー33からの再生音が、各リスニングポイントP1、P2へ、同時に、かつ同一レベルで到達することである。
そこで、本実施形態に係る音声信号処理装置300では、中高音域の再生音について、リスニングポイントP1、P2で観測されるセンタースピーカ31の特性を、ドアウーハー32、33、ドアツィーター34、35およびドアスコーカー36、37の特性に近いものとなるように補正する。これにより、300Hz〜20kHzの再生帯域においてセンタースピーカ31の特性とドアウーハー32、33、ドアツィーター34、35およびドアスコーカー36、37の特性とが一致し、再生音のリスニングポイントP1、P2への到達時間および再生レベルを揃えることができる。
[4.2.音声信号処理装置]
図15に、本実施形態に係る音声信号処理装置300の構成を示す。本実施形態では、2チャンネルの音声を再生するステレオ再生を行う場合を示す。また、本実施形態では、デジタル入力信号を想定して説明するが、アナログ音声信号の場合も、各フィルタ信号処理部310〜370による処理の前にA/D変換処理を最初に行うことにより、全く同様に説明できる。
音声信号処理装置300は、図15に示すように、各スピーカ31〜37に対して、それぞれフィルタ信号処理部310〜370と、D/A変換器315〜375と、電力増幅器317〜377とを備える。各機能部は、図3に示した第1の実施形態と同様の処理を行う。このため、ここでは詳細な説明を省略する。
図15に示すように、左ドアウーハー32、左ドアツィーター34および左ドアスコーカー36には、ステレオで録音された音源Leftがそれぞれ入力される。右ドアウーハー33、右ドアツィーター35および右ドアスコーカー37には、ステレオで録音された音源Rightがそれぞれ入力される。また、センタースピーカ31には音源Leftおよび音源Rightの成分が入力される。
[4.3.音声信号処理方法]
各スピーカ31〜37から出力する再生音は、以下の処理によって取得される。まず、第2の実施形態と同様に、運転席と助手席とへの左右のドアウーハー32、33からの到達時間を揃える。このため、左右のドアウーハー32、33に対して、左右で同じパラメータを用いて音響特性を補正する。本処理は、例えば予め元のスピーカの音響特性を測定し、その特性の逆関数処理によって振幅特性の平坦化のみを行う。これにより自然な再生音を実現する。
次いで、運転席と助手席とへの左右のドアスコーカー36、37からの到達時間を揃える。このため、ドアスコーカー36、37に対して、左右で同じパラメータを用いて音響特性を補正する。ドアスコーカー36、37の音響特性の補正は、ドアウーハー32、33の場合と同様に行うことができる。
さらに、運転席と助手席とへの左右のドアツィーター34、35からの到達時間を揃える。このため、ドアツィーター34、35に対して、左右で同じパラメータを用いて音響特性を補正する。ドアツィーター34、35の音響特性の補正も、ドアウーハー32、33の場合と同様に行うことができる。
さらに、音声信号処理装置300は、補正されたドアウーハー32、33の音響特性とドアツィーター34、35とドアスコーカー36、37の音響特性の合成特性を補正する。例えば、図14に示すようなセンタースピーカ31と、左右のドアウーハー32、33と、左右のドアツィーター34、35と、左右のドアスコーカー36、37との7つのスピーカを備える車内空間では、ドアウーハー32、33、ドアツィーター34、35およびドアスコーカー36、37によって全周波数帯域がカバーされる。したがって、左ドアウーハー32、左ドアツィーター34および左ドアスコーカー36の合成特性、および右ドアウーハー33、右ドアツィーター35および右ドアスコーカー37の合成特性を、あるリファレンスのターゲット特性を持つように補正し、全周波数帯域がカバーされるようにする。
このように生成されたドアウーハー32、33、ドアツィーター34、35およびドアスコーカー36、37の合成特性に対して、振幅周波数特性の平坦化を行い、自然な再生音を実現する。あるいは、あるターゲット特性の振幅周波数特性に近くなるように合成特性を補正してもよい。そして、振幅周波数特性の補正後の各スピーカ32〜37に対し、その特性の逆関数処理によってインパルス応答特性をインパルスに近づける。こうして、ドアウーハー32、33、ドアツィーター34、35およびドアスコーカー36、37によって全周波数帯域がカバーされる高音質の音声信号が取得される。
その後、上記補正された音響特性を用いて、センタースピーカ31に対する音声信号を補正する。かかる処理は、第2の実施形態と同様に行うことができる。すなわち、スピーカ特性付加処理部314により、センタースピーカ31から出力される再生音の音響特性を、左右のドアウーハー32、33、ドアツィーター34、35およびドアスコーカー36、37の音響特性に合わせ込む。このようにして各スピーカ31〜37に対する音響特性の補正が行われる。
本実施形態に係る音声信号処理により、運転席および助手席において、300Hz〜20kHzの再生帯域については、センタースピーカ31とリスニングポイントP1(P2)に近い側のドアウーハー32(33)、ドアツィーター34(35)およびドアスコーカー36(37)からの再生音が、300Hz以下の再生音に関しては、左ドアウーハー32および右ドアウーハー33からの再生音が、同時にかつ同一レベルで到達する状態を実現できる。したがって、両席で同時に高音質かつ良好な音像定位を得ることができる。
本実施形態の実施形態に係る音声信号処理装置300による音声信号の補正が行われない場合、例えば運転席においては左ドアウーハー32、左ドアツィーター34および左ドアスコーカー36の合成特性とセンタースピーカ31の特性とが一致しなくなる。このため、音源Leftのみに含まれる楽器の再生音や音源Left、Rightに等しく含まれるボーカル成分・低域成分の音像定位に偏りが生じたりボケが発生したりする。これに対して、本実施形態に係る音声信号処理装置300による音声信号の補正によって、各スピーカ31〜37の特性が一致され、良好な音像定位を得ることができる。
また、音声信号処理装置に入力される音声信号がモノラル信号の場合も同様である。すなわち、本実施形態に係る音声信号処理装置300による音声信号の補正が行われない場合、例えば運転席においては左ドアウーハー32、左ドアツィーター34および左ドアスコーカー36の合成特性とセンタースピーカ31の特性とが一致しなくなる。このため、モノラル信号の音像定位の偏りやボケが発生する。これに対して、本実施形態に係る音声信号処理装置による音声信号の補正によって、各スピーカ31〜37の特性が一致され、良好な音像定位を得ることができる。
なお、左右のドアウーハー32、33、ドアツィーター34、35あるいはドアスコーカー36、37に対して音響特性を補正する際、上述のように逆フィルタ処理部322〜372によってインパルスに近いインパルス応答特性および平坦な振幅周波数特性を得る処理を行う。本実施形態では、さらにその後、補正された音声信号に対してあるリファレンスとなるターゲット特性を持たせるようにその音響特性を補正してもよい。すなわち、各スピーカ32〜37の各フィルタ信号処理部320〜370に、フィルタ信号処理部310のスピーカ特性付加処理部314を備える構成としてもよい。
この場合、まず、左右のドアウーハー32、33から出力される音声信号に対して、逆フィルタ処理部322、332によりインパルスに近いインパルス応答特性および平坦な振幅周波数特性を得る第1の処理を行う。そして、第1の処理にて得られた補正後の音声信号を、スピーカ特性付加処理部314によって、あるターゲット特性に近づけるように補正する第2の処理を行う。これにより、音の高さによる出力のばらつきをなくした自然な再生音による原音忠実再生や明瞭な音像定位を実現することができるとともに、所望のスピーカの音響特性を実現することも可能となる。ドアツィーター34、35およびドアスコーカー36、37に対しても同様に処理すればよい。
[4.4.実施例(音声信号処理装置による音響特性の補正)]
図16および図17に基づいて、本実施形態に係る音声信号処理装置300を適用した場合の、運転席側のリスニングポイントにおける音響特性測定結果の一例を説明する。図16には、補正前の左右のドアウーハー32、33から出力される音声信号のインパルス応答特性および振幅周波数特性(front woofer)、左右のドアツィーター34、35から出力される音声信号のインパルス応答特性および振幅周波数特性(front
tweeter)、左右のドアスコーカー36、37から出力される音声信号のインパルス応答特性および振幅周波数特性(front
squawker)、およびセンタースピーカ31から出力される音声信号のインパルス応答特性および振幅周波数特性(center)を示す。図17には、補正後の左右のドアウーハー32、33、左右のドアツィーター34、35、および左右のドアスコーカー36、37の合成音声信号のインパルス応答特性および振幅周波数特性(front)と、センタースピーカ21から出力される音声信号のインパルス応答特性および振幅周波数特性(center)とを示す。
図16および図17より、左右のドアウーハー32、33、ドアツィーター34、35およびドアスコーカー36、37の合成音声信号と、センタースピーカ31から出力される音声信号とのインパルス応答特性および振幅周波数特性は、補正前と補正後において波形が変化している。インパルス応答においては、左右のドアウーハー32、33、ドアツィーター34、35およびドアスコーカー36、37との合成音声信号およびセンタースピーカ31から出力される音声信号のいずれもインパルスにより近い特性が現れている。また、その波形は、センタースピーカ31の音声信号と左右のドアウーハー32、33、ドアツィーター34、35およびドアスコーカー36、37の合成音声信号とで近いものとなっている。
振幅周波数特性については、特に、300Hz以上の帯域において、補正後のセンタースピーカ31の音声信号と左右のドアウーハー32、33、ドアツィーター34、35およびドアスコーカー36、37の合成音声信号との波形が近いものとなっている。これより、音声信号処理装置300によってこれらの音響特性が一致し、センタースピーカ31の音響特性が左右のドアウーハー32、33、ドアツィーター34、35およびドアスコーカー36、37の合成音声信号の音響特性に近づけられたことがわかる。
<5.まとめ>
以上、本開示の各実施形態によれば、特性の異なるスピーカが多数配置された車内空間において、再生音に含まれる全周波数が、運転席と助手席の各ヘッドレスト付近のリスニングポイントへ、同時に、同一レベルで到達される。これにより、運転席と助手席で同時に良好な音像定位を得ることができる。
以上、添付図面を参照しながら本開示の好適な実施形態について詳細に説明したが、本開示の技術的範囲はかかる例に限定されない。本開示の技術分野における通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、これらについても、当然に本開示の技術的範囲に属するものと了解される。
また、本明細書に記載された効果は、あくまで説明的または例示的なものであって限定的ではない。つまり、本開示に係る技術は、上記の効果とともに、または上記の効果に代えて、本明細書の記載から当業者には明らかな他の効果を奏しうる。
なお、以下のような構成も本開示の技術的範囲に属する。
(1)同じ振幅周波数特性および位相特性を有する左スピーカおよび右スピーカと、前記左スピーカと前記右スピーカとの間に配置された1つのセンタースピーカとからの音声信号を出力する際に、
前記左スピーカと前記センタースピーカとの間、および前記左スピーカと前記センタースピーカとの間にリスニングポイントを設定する音声信号処理装置であって、
前記センタースピーカの振幅周波数特性および位相特性の逆特性を付与する逆フィルタ処理部と、
前記逆フィルタ処理部により処理された前記センタースピーカの音声信号の振幅周波数特性および位相特性を、前記左スピーカおよび前記右スピーカの特性に合わせるように補正するスピーカ特性付加処理部と、
を備える、音声信号処理装置。
(2)前記センタースピーカは、中高音域用スピーカである、前記(1)に記載の音声信号処理装置。
(3)前記センタースピーカは、前記左スピーカから出力される音声信号と前記右スピーカから出力される音声信号との和を出力する、前記(1)または(2)に記載の音声信号処理装置。
(4)前記スピーカ特性付加処理部は、前記左スピーカ、前記右スピーカ、および前記センタースピーカから出力される各音声信号を、所定の振幅周波数特性および位相特性にそれぞれ補正する、前記(1)〜(3)のいずれか1項に記載の音声信号処理装置。
(5)前記左スピーカおよび前記右スピーカは、それぞれ中低音域用スピーカと高音域用スピーカからなり、
前記スピーカ特性付加処理部は、前記センタースピーカの音声信号の振幅周波数特性および位相特性を、前記左スピーカまたは前記右スピーカの中低音域用スピーカおよび高音域用スピーカの振幅周波数特性および位相特性の合成特性に合わせるように補正する、前記(1)〜(4)のいずれか1項に記載の音声信号処理装置。
(6)前記左スピーカおよび前記右スピーカは、それぞれ低音域用スピーカ、中音域用スピーカおよび高音域用スピーカからなり、
前記スピーカ特性付加処理部は、前記センタースピーカの音声信号の振幅周波数特性および位相特性を、前記左スピーカまたは前記右スピーカの低音域用スピーカ、中音域用スピーカおよび高音域用スピーカの各振幅周波数特性および位相特性の合成特性に合わせるように補正する、前記(1)〜(4)のいずれか1項に記載の音声信号処理装置。
(7)前記各スピーカの音声信号はモノラル信号である、前記(1)〜(6)のいずれか1項に記載の音声信号処理装置。
(8)前記音声信号処理装置は、車両の運転席および助手席をリスニングポイントとして、車内空間に設けられる前記各スピーカの音声信号を処理する、前記(1)〜(7)のいずれか1項に記載の音声信号処理装置。
(9)同じ振幅周波数特性および位相特性を有する左スピーカおよび右スピーカと、前記左スピーカと前記右スピーカとの間に配置された1つのセンタースピーカとからの音声信号を出力する際に、
前記左スピーカと前記センタースピーカとの間、および前記左スピーカと前記センタースピーカとの間にリスニングポイントを音声情報処理装置により設定する音声情報処理方法であって、
前記センタースピーカの振幅周波数特性および位相特性の逆特性を付与すること、
逆特性が付与された前記センタースピーカの音声信号の振幅周波数特性および位相特性を、前記左スピーカおよび前記右スピーカの特性に合わせるように補正すること、
を含む、音声信号処理方法。
11、21、31 センタースピーカ
12、13 ドアスピーカ
22、23、32、33 ドアウーハー
24、25、34、35 ドアツィーター
36、37 ドアスコーカー
100、100A、200、300 音声信号処理装置
110、120、130、210、220、230、240、250、310、320、330、340、350、360、370 フィルタ信号処理部
112、122、132、212、222、232、242、252、312、322、332、342、352、362、372 逆フィルタ処理部
114、214、314 スピーカ特性付加処理部

Claims (9)

  1. 同じ振幅周波数特性および位相特性を有する左スピーカおよび右スピーカと、前記左スピーカと前記右スピーカとの間に配置された1つのセンタースピーカとからの音声信号を出力する際に、
    前記左スピーカと前記センタースピーカとの間、および前記左スピーカと前記センタースピーカとの間にリスニングポイントを設定する音声信号処理装置であって、
    前記センタースピーカの振幅周波数特性および位相特性の逆特性を付与する逆フィルタ処理部と、
    前記逆フィルタ処理部により処理された前記センタースピーカの音声信号の振幅周波数特性および位相特性を、前記左スピーカおよび前記右スピーカの特性に合わせるように補正するスピーカ特性付加処理部と、
    を備える、音声信号処理装置。
  2. 前記センタースピーカは、中高音域用スピーカである、請求項1に記載の音声信号処理装置。
  3. 前記センタースピーカは、前記左スピーカから出力される音声信号と前記右スピーカから出力される音声信号との和を出力する、請求項1に記載の音声信号処理装置。
  4. 前記スピーカ特性付加処理部は、前記左スピーカ、前記右スピーカ、および前記センタースピーカから出力される各音声信号を、所定の振幅周波数特性および位相特性にそれぞれ補正する、請求項1に記載の音声信号処理装置。
  5. 前記左スピーカおよび前記右スピーカは、それぞれ中低音域用スピーカと高音域用スピーカからなり、
    前記スピーカ特性付加処理部は、前記センタースピーカの音声信号の振幅周波数特性および位相特性を、前記左スピーカまたは前記右スピーカの中低音域用スピーカおよび高音域用スピーカの振幅周波数特性および位相特性の合成特性に合わせるように補正する、請求項1に記載の音声信号処理装置。
  6. 前記左スピーカおよび前記右スピーカは、それぞれ低音域用スピーカ、中音域用スピーカおよび高音域用スピーカからなり、
    前記スピーカ特性付加処理部は、前記センタースピーカの音声信号の振幅周波数特性および位相特性を、前記左スピーカまたは前記右スピーカの低音域用スピーカ、中音域用スピーカおよび高音域用スピーカの各振幅周波数特性および位相特性の合成特性に合わせるように補正する、請求項1に記載の音声信号処理装置。
  7. 前記各スピーカの音声信号はモノラル信号である、請求項1に記載の音声信号処理装置。
  8. 前記音声信号処理装置は、車両の運転席および助手席をリスニングポイントとして、車内空間に設けられる前記各スピーカの音声信号を処理する、請求項1に記載の音声信号処理装置。
  9. 同じ振幅周波数特性および位相特性を有する左スピーカおよび右スピーカと、前記左スピーカと前記右スピーカとの間に配置された1つのセンタースピーカとからの音声信号を出力する際に、
    前記左スピーカと前記センタースピーカとの間、および前記左スピーカと前記センタースピーカとの間にリスニングポイントを音声情報処理装置により設定する音声情報処理方法であって、
    前記センタースピーカの振幅周波数特性および位相特性の逆特性を付与すること、
    逆特性が付与された前記センタースピーカの音声信号の振幅周波数特性および位相特性を、前記左スピーカおよび前記右スピーカの特性に合わせるように補正すること、
    を含む、音声信号処理方法。
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