JP2015103281A - 高エネルギーイオン注入装置、ビーム電流調整装置、及びビーム電流調整方法 - Google Patents

高エネルギーイオン注入装置、ビーム電流調整装置、及びビーム電流調整方法 Download PDF

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Abstract

【課題】例えば高エネルギーイオン注入装置において注入ビーム電流を調整する。
【解決手段】イオン注入装置のためのビーム電流調整装置300は、イオンビームの収束点Pまたはその近傍に配置されている可変アパチャー302を備える。可変アパチャー302は、注入ビーム電流を制御するために、収束点Pにおけるイオンビームの収束方向に垂直な方向のビーム幅を調整するよう構成されている。可変アパチャー302は、質量分析スリット22bの直後に配置されていてもよい。ビーム電流調整装置300は、高エネルギー多段直線加速ユニット14を有する高エネルギーイオン注入装置100に設けられていてもよい。
【選択図】図19

Description

本発明は、高エネルギーイオン注入装置に関する。
半導体素子製造工程では、真空中で半導体ウェハにイオンを打ち込んで半導体ウェハの結晶に不純物を添加することにより導電性を変化させ、半導体ウェハを半導体素子化させるための重要な工程が標準的に実施されている。この工程で使用される装置は、一般に半導体素子化させるための不純物原子をイオンとして加速して、半導体ウェハに打ち込むイオン注入装置と呼ばれる。
半導体素子の高集積化・高性能化に伴い、より深く半導体ウェハに打ち込むための高エネルギーのイオン注入が可能な装置が従来利用されてきた。このような装置は、特に高エネルギーイオン注入装置と呼ばれている。その一例として、イオンビームの加速系をタンデム型静電加速器で構成する方法がある(特許文献1参照)。
(バッチ式)
また、高周波加速を行う高周波線形加速器を備えたバッチ処理式高エネルギーイオン注入装置も長年使用されてきた(特許文献2参照)。
バッチ処理式のイオン注入は、十数枚のシリコンウェハを直径1m程度のアルミディスクの外周側に乗せ、ディスクを毎分1000回転程度で高速回転させながら、イオンを均一に注入する手法である。遠心力によってウェハが飛び出さないように、ディスクのウェハを乗せる部分には、回転面(回転軸に直交する面)に対して5°程度の角度が付けられている。この角度と、ウェハの回転運動とによって、ウェハの中心部と端部とで、注入角度(イオンがウェハに入射する角度)が、1°前後異なる(注入角度偏差)問題を、バッチ処理式のイオン注入方法は持っている。
一般に、ウェハ上のダイには、イオン注入を行いたい領域と行ってはいけない領域があり、行ってはいけない領域は、フォトレジストと呼ばれる有機物で覆われている。注入時にイオンはフォトレジストを突き抜けてはいけないため、高エネルギーイオン注入時に塗布されるフォトレジストは、非常に厚くなる。注入が必要な領域は、リソグラフィーによって、フォトレジストが除かれているが、集積度が高く、注入領域が微小であると、そそり立つフォトレジストの壁に囲まれた深い穴の底に垂直にイオンを打ち込むような状況になる。このようなアスペクト比の高い構造へのイオン注入には、高い注入角度精度が要求される。
特に、CCDなど、高品位の撮像素子の製造では、深くイオン注入するほど解像度が上がり、感度が高くなるため、超高エネルギーのイオン注入(3〜8MeV)も行われるようになってきた。この場合、許される注入角度誤差は、0.1°程度であり、大きな注入角度偏差のあるバッチ式装置は、使えなくなっている。
(枚葉式高エネルギーイオン注入装置)
そこで、近年、枚葉式高エネルギーイオン注入装置が実用化された(特許文献3)。バッチ方式が、ビームを固定してウェハを動かすこと(ディスク上の回転移動)によって、水平方向に均一な注入を行っているのに対して、枚葉式装置では、ビームを動かして(水平方向にビームスキャンして)ウェハを固定している。この方式では、スキャンビームを平行化することによって、ウェハ面内で注入ドーズを均一にするだけでなく、注入角度も均一にすることができ、注入角度偏差の問題を解消できる。なお、鉛直方向のドーズ均一性は、両方式ともウェハを一定速度で平行移動させることによって実現しているが、この運動によっては、角度誤差は発生しない。
この他にも、枚葉式イオン注入装置は、少数枚数の処理を行う際に無駄なシリコンウェハの消費がないなどの理由から、多品種少量生産に適しており、近年需要が増大している。
ただし、高品位撮像素子の生産では、角度精度だけでなく、金属汚染がないこと、注入ダメージ(アニール後の残留結晶欠陥)が少ないこと、注入深さ精度(エネルギー精度)が良いことなど、厳しい要求が多々あり、枚葉式イオン注入装置にも、改善すべき点が多数残されている。
従来の枚葉式高エネルギーイオン注入装置では、高エネルギー加速方式として、タンデム式静電加速装置、または、高周波加速方式の重イオンリナック(線形加速器)が用いられている。
このような加速系の下流には、エネルギーフィルタリングマグネット、ビームスキャナー、磁場によるスキャン軌道の平行化を行うパラレル(平行化)マグネットが設けられている。そして、パラレルマグネットによって、ビームがどのスキャン位置にあっても、ウェハへの入射角(注入角)は同じになるようにされている。イオンのエネルギーは、3〜4MeV程度までである。
また、高エネルギーイオン注入装置よりも低いエネルギー領域(10〜600keV)で使用される(枚葉式)中電流イオン注入装置の一部では、電場(電極)によってスキャン軌道を平行化する電場パラレルレンズが使われている(特許文献4)。電場パラレルレンズは、軌道の対称性を保ちながらスキャン軌道を平行化できるので、パラレルマグネットより角度精度を上げられる。また、この装置には、AEF(Angular Energy Filter)と呼ばれる電場式偏向電極が、ウェハの近傍に取り付けられている。AEFによって、ビーム輸送中に価数変化したイオンやビームラインで発生したパーティクルが除去されるので、純度の高いビームを供給することができる。
特許第3374335号公報 特開2000−11944号公報 米国特許第8035080号公報 特開2003−288857号公報
本発明はこうした状況に鑑みてなされたものであり、本発明のある態様の例示的な目的の一つは、高エネルギーイオン注入装置において注入ビーム電流を調整することにある。
本発明のある態様によると、高エネルギー多段直線加速ユニットを有する高エネルギーイオン注入装置が提供される。高エネルギーイオン注入装置は、前記高エネルギー多段直線加速ユニットの上流または下流に配設されており、イオンビームの収束点を形成するビームライン構成要素と、前記収束点またはその近傍に配置されており、注入ビーム電流を制御するために、前記収束点における前記イオンビームの収束方向に垂直な方向のビーム幅を調整するよう構成されている可変アパチャーと、を備える。
本発明のある態様によると、イオン注入装置のためのビーム電流調整装置が提供される。ビーム電流調整装置は、イオンビームの収束点またはその近傍に配置されており、注入ビーム電流を制御するために、前記収束点における前記イオンビームの収束方向に垂直な方向のビーム幅を調整するよう構成されている可変アパチャーを備える。
本発明のある態様によると、高エネルギー多段直線加速ユニットを有する高エネルギーイオン注入装置のためのビーム電流調整方法が提供される。本方法は、前記高エネルギー多段直線加速ユニットの上流または下流に形成される収束点にイオンビームを収束することと、前記収束点またはその近傍に配置されている可変アパチャーにより、注入ビーム電流を制御するために、前記イオンビームの収束方向に垂直な方向のビーム幅を調整することと、を備える。
なお、以上の構成要素の任意の組合せや本発明の構成要素や表現を、方法、装置、システムなどの間で相互に置換したものもまた、本発明の態様として有効である。
本発明によれば、高エネルギーイオン注入装置において注入ビーム電流を調整することができる。
本実施の形態に係る高エネルギーイオン注入装置の概略レイアウトとビームラインを模式的に示した図である。 図2(a)は、イオンビーム生成ユニットの概略構成を示す平面図、図2(b)は、イオンビーム生成ユニットの概略構成を示す側面図である。 高エネルギー多段直線加速ユニットの概略構成を含む全体レイアウトを示す平面図である。 複数の高周波共振器先端の加速電場(ギャップ)を直線状に並べた高エネルギー多段直線加速ユニット及び収束発散レンズの制御系の構成を示すブロック図である。 図5(a)、図5(b)は、EFM(エネルギー分析用偏向電磁石)、エネルギー幅制限スリット、エネルギー分析スリット、BM(横方向中心軌道補正用偏向電磁石)、ビーム整形器、ビーム走査器(スキャナー)の概略構成を示す平面図である。 図6(a)は、ビーム走査器からビーム平行化器以降のビームラインから基板処理供給ユニットまでの概略構成を示す平面図、図6(b)は、ビーム走査器からビーム平行化器以降のビームラインから基板処理供給ユニットまでの概略構成を示す側面図である。 ビーム走査器の一例の主要部を上方から見た模式図である。 ビーム走査器の一例の主要部を側方から見た模式図である。 ビーム走査器の一例をイオンビームラインの途中経路に着脱自在に装着した構造を下流側から見た正面模式図である。 角度エネルギーフィルターの偏向電極の他の態様を示す模式図である。 図11(a)は、横収束レンズである四重極レンズを模式的に示す平面図、図11(b)は、四重極レンズを模式的に示す正面図である。 図12(a)、図12(b)は、電磁石の構成の一例を示す斜視図である。 電磁石が備える開閉装置を模式的に示した図である。 図14(a)は、インジェクターファラデーカップとほぼ同じ構成のリゾルバーファラデーカップを正面から見た模式図、図14(b)は、リゾルバーファラデーカップの動作を説明するための模式図である。 横長ファラデーカップを正面から見た模式図である。 図16(a)は、本実施の形態に係るビーム整形器からビーム走査器までの概略構成を示す上面図、図16(b)は、本実施の形態に係るビーム整形器からビーム走査器までの概略構成を示す側面図である。 下流側グランド電極の開口幅とサプレッション電極の開口幅と上流側グランド電極の開口幅との大きさの関係を説明するための模式図である。 ビーム平行化器の他の例を模式的に示す図である。 本発明のある実施形態に係るビーム電流調整装置を示す模式図である。 イオンビームの収束点におけるイオンビーム断面を例示する図である。 図21(a)及び図21(b)は、本実施形態に係る可変アパチャーを示す模式図である。 本発明のある他の実施形態に係るビーム電流調整装置の配置を示す模式図である。 本発明のある他の実施形態に係るビーム電流調整装置の配置を示す模式図である。
以下、本実施の形態に係る高エネルギーイオン注入装置の一例についてより詳細に説明する。はじめに、本願発明者らが本願発明に想到した経緯について説明する。
(平行化マグネット)
偏向磁場によって軌道を平行化する平行化マグネットを使用している従来の高エネルギーイオン注入装置には、次のような課題がある。
フォトレジスト付きウェハに高エネルギーイオンを注入すると、大量のアウトガスが発生し、このアウトガスの分子とビームイオンとが相互作用し、一部のイオンの価数が変化する。平行化マグネット通過中にこの価数変化が起こると、偏向角が変わるので、ビームの平行性が崩れ、ウェハへの注入角が一様ではなくなる。
また、注入されるイオンの量(個数またはドーズ)は、ウェハ付近に置かれたファラデーカップで、ビーム電流値を測定することによって求められるが、価数変化によってその計測値が狂い、予定の注入量から外れ、半導体素子の特性が予定された通りにならない。
さらに、1台の平行化マグネットによる平行化は、内側の軌道と外側の軌道で、偏向角と軌道長が異なるため、外側の軌道ほど価数変化するイオンの割合が増え、ウェハ面内のドーズ均一性も悪化する。
したがって、従来の高エネルギーイオン注入装置のビーム輸送方式では、最近の高精度注入への要求に十分応えることができない。
また、平行化マグネットは、スキャン方向に幅の広い磁極と、ある程度長い平行化区間とを必要とし、エネルギーが高くなるとさらに磁極が長く大きくなるので、重量が非常に大きくなる。装置を安全に据え付けし維持するために、半導体工場自体の強度設計を強化する必要が出てくる上に、消費電力も非常に大きくなる。
これらの問題は、前述の中電流イオン注入装置で用いられている電場平行化レンズと、電場(電極式)エネルギーフィルター(AEF:Angular Energy Filter)を高エネルギー領域で使うことができれば、解消する。電場平行化レンズは、軌道の対称性を保ちながらスキャン軌道を中心軌道方向に揃えて平行化し、AEFは、ウェハ直前で価数変化したイオンを除去する。これによって、アウトガスが多いときでも、エネルギーコンタミネーションのないビームを得ることができ、平行化マグネットのようなスキャン方向の注入角度のバラツキも発生せず、結果として、正確な深さ方向の注入分布と注入量(ドーズ)を均一に注入できるとともに、注入角度も一様になって、非常に精度の高いイオン注入が実現する。また、軽量な電極部材で構成され、電磁石と比べて、消費電力も少なくできる。
本発明の核心は、この中電流イオン注入装置の優れたシステムを高エネルギーイオン注入装置に導入し、高エネルギー装置でありながら中電流装置と同等の高精度注入ができる装置を生み出した点にある。その過程で解決されてきた課題について以下で述べる。第一に問題になるのは、装置の長さである。
イオンビームを同じ角度偏向する場合、必要な磁場はエネルギーの平方根に比例するのに対して、必要な電場はエネルギーそのものに比例する。したがって、偏向磁極の長さはエネルギーの平方根に比例するのに対して、偏向電極の長さはエネルギーに比例して長くなる。高エネルギーイオン注入装置に前記の電場平行化レンズと電場AEFを搭載して、高精度角度注入を実現しようとすると、ビーム輸送系(スキャナーからウェハまでの距離)が、平行化マグネットを使う従来の装置に比べて、大幅に長くなる。
例えば、このような電場による平行化機構を備える高エネルギーイオン注入装置として、従来の高エネルギーイオン注入装置と同様に、イオン源、質量分析磁石、タンデム型静電加速装置若しくは高周波線形加速装置、ビーム走査器、スキャン軌道平行化装置、エネルギーフィルター、注入処理室および基板搬送機器(エンドステーション)等の構成機器を、ほぼ直線状に据え付ける構造が考えられる。この場合、従来の装置の長さが8m程度であるのに対して、装置の全長が20m程度まで長くなり、設置場所の設定と準備、設置作業等が大がかりとなって、しかも設置面積も大きくなる。また、各機器の据付けアライメントの調整、装置稼働後のメンテナンスや修理、調整のための作業スペースも必要である。このような大がかりなイオン注入装置は、半導体製造ラインにおける装置サイズを、工場の製造ラインの配置の実状に合わせることへの要求を満たすことができない。
このような状況から、本発明のある態様におけるビームライン構成の目的は、十分な作業領域を確保しつつ設置場所の設定と準備、設置作業やメンテナンス作業を簡略化・効率化し、設置面積を抑える技術を実現することによって、電場平行化レンズと電場エネルギーフィルターとを備えた高精度の高エネルギーイオン注入装置を提供することである。
(U字状の折り返し型ビームライン)
前記目的は、高エネルギーイオン注入装置のビームラインを、イオン源で生成したイオンビームを加速する複数のユニットから成る長直線部と、スキャンビームを調整してウェハに注入する複数のユニットから成る長直線部とで構成し、対向する長直線部を有する水平のU字状の折り返し型ビームラインにすることによって達成できる。このようなレイアウトは、イオン源からイオンを加速するユニットの長さに合わせて、ビーム走査器、ビーム平行化器、エネルギーフィルターなどから成るビーム輸送ユニットの長さをほぼ同じ長さに構成することで実現している。そして、二本の長直線部の間に、メンテナンス作業のために十分な広さのスペースを設けている。
本発明のある態様は、こうしたビームラインのレイアウトを前提としてなされたものであり、その目的は、高エネルギーのイオンビームをウェハサイズより充分広い範囲で走査でき、ビーム輸送で問題が発生したときに瞬時に輸送を停止できる応答性の良い高エネルギービームの走査を行うことにより、常に高精度の注入が維持できる高エネルギーイオン注入装置を提供することである。
本発明のある態様の高エネルギーイオン注入装置は、イオン源で発生したイオンを加速してイオンビームを生成し、ビームラインに沿ってウェハまでイオンビームを輸送し、該ウェハに注入する高エネルギーイオン注入装置であって、イオン源と質量分析装置を有するビーム生成ユニットと、イオンビームを加速して高エネルギーイオンビームを生成する高エネルギー多段直線加速ユニットと、前記高エネルギーイオンビームをウェハに向けて方向変換する高エネルギービームの偏向ユニットと、偏向された高エネルギーイオンビームをウェハまで輸送するビーム輸送ラインユニットと、輸送された高エネルギーイオンビームを均一に半導体ウェハに注入する基板処理供給ユニットと、を備える。ビーム輸送ラインユニットは、ビーム整形器と、高エネルギー用のビーム走査器と、高エネルギー用の電場式ビーム平行化器と、高エネルギー用の電場式最終エネルギーフィルターとを有し、偏向ユニットを出た高エネルギーイオンビームを、前記ビーム走査器および前記電場式ビーム平行化器により、ビームスキャンするとともに平行化し、前記高エネルギー用の電場式最終エネルギーフィルターにより、質量、イオン価数、エネルギー等が異なる混入イオンを取り除いて、ウェハに注入するように構成されている。
この構成の中の高エネルギー用のビーム走査器は、微調整可能な三角波で動作する電場式のビーム走査器とした。応答の早い電場式とすることで、イオン注入中に放電などが発生してビームが不安定になり、注入量が不均一になることが予想される場合に、瞬時に注入を中止し、安定化後直ちに再開するシステムを作ることができ、どんな場合でも注入精度を維持できる。また、動作周波数を可変にすることが容易で、イオン注入時にシリコン結晶中に生じる結晶欠陥の量を制御して、製品の品質を上げることもできる。
電場式ビーム走査器は、一対の偏向電極を有するが、高速で応答させるためには、その電極にあまり高い電圧をかけることが出来ない。しかし、ウェハ面全体の注入ドーズ不均一性を0.5%以下に抑える高精度注入を行うためには、走査範囲をウェハサイズより充分広く取らなければならない。そのためには、ビーム走査器が高エネルギービームに対して充分な偏向角を持たなければならない。そこで、本発明では、当該偏向電極対の間隔をD1、ビーム進行方向の長さをL1としたとき、L1≧5D1を満たすように構成することによって、充分な偏向角を得ている。
本発明のある態様によれば、高エネルギーのイオンビームをウェハサイズより充分広い範囲で走査でき、ウェハ前面で注入ドーズの不均一性を0.5%以下に抑える高精度注入が可能になる。また、ビーム輸送で電極の放電などの問題が発生したときに、瞬時にイオン注入を停止できる応答性の良い高エネルギービームの走査を行うことができる。これにより常に高精度の注入が維持できる。
そこで、本実施の形態のある態様の高エネルギーイオン注入装置は、イオン源で発生したイオンを加速し、ビームラインに沿ってウェハまでイオンビームとして輸送し、ウェハに注入するイオン注入装置である。この装置は、イオンビームを加速して高エネルギーイオンビームを生成する高エネルギー多段直線加速ユニットと、高エネルギーイオンビームの軌道をウェハに向かって方向転換する偏向ユニットと、偏向された高エネルギーイオンビームをウェハまで輸送するビーム輸送ラインユニットとを備え、平行化したイオンビームをメカニカルに走査移動中のウェハに高精度に照射して、ウェハに注入するものである。
イオンビームを高加速する高周波(交流方式)の高エネルギー多段直線加速ユニットを出た高エネルギーイオンビームは、ある範囲のエネルギー分布を持っている。このため、後段の高エネルギーのイオンビームをビームスキャンおよびビーム平行化させてメカニカルに走査移動中のウェハに照射するためには、事前に高い精度のエネルギー分析と、中心軌道補正、及びビーム収束発散の調整を実施しておくことが必要となる。
ビーム偏向ユニットは、少なくとも二つの高精度偏向電磁石と少なくとも一つのエネルギー幅制限スリットとエネルギー分析スリット、及び、少なくとも一つの横収束機器とを備える。複数の偏向電磁石は、高エネルギーイオンビームのエネルギー分析とイオン注入角度の精密な補正、及び、エネルギー分散の抑制とを行うよう構成されている。高精度偏向電磁石のうちエネルギー分析を行う電磁石には、核磁気共鳴プローブとホールプローブが取り付けられており、他の電磁石にはホールプローブのみ取り付けられている。核磁気共鳴プローブは、ホールプローブの校正に使用され、ホールプローブは、磁場一定のフィードバック制御に使用される。
ビーム輸送ラインユニットは、高エネルギーのイオンビームをビームスキャンおよびビーム平行化させて、メカニカルに走査移動中のウェハに高精度にスキャンビームを照射して、イオンを注入することができる。
以下、本実施の形態に係る高エネルギーイオン注入装置の一例について、図面を参照しながら、より詳細に説明する。なお、図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を適宜省略する。また、以下に述べる構成は例示であり、本発明の範囲を何ら限定するものではない。
(高エネルギーイオン注入装置)
はじめに、本実施の形態に係る高エネルギーイオン注入装置の構成を簡単に説明する。なお、本明細書の内容は、荷電粒子の種類の一つであるイオンビームのみならず荷電粒子ビーム全般にかかる装置にも適用できるものである。
図1は、本実施の形態に係る高エネルギーイオン注入装置100の概略レイアウトとビームラインを模式的に示した図である。
本実施の形態に係る高エネルギーイオン注入装置100は、高周波線形加速方式のイオン加速器と高エネルギーイオン輸送用ビームラインを有するイオン注入装置であり、イオン源10で発生したイオンを加速し、ビームラインに沿ってウェハ(基板)200までイオンビームとして輸送し、ウェハ200に注入する。
図1に示すように、高エネルギーイオン注入装置100は、イオンを生成して質量分離するイオンビーム生成ユニット12と、イオンビームを加速して高エネルギーイオンビームにする高エネルギー多段直線加速ユニット14と、高エネルギーイオンビームのエネルギー分析、中心軌道補正、エネルギー分散の制御を行うビーム偏向ユニット16と、分析された高エネルギーイオンビームをウェハまで輸送するビーム輸送ラインユニット18と、輸送された高エネルギーイオンビームを均一に半導体ウェハに注入する基板処理供給ユニット20とを備える。
イオンビーム生成ユニット12は、イオン源10と、引き出し電極40と、質量分析装置22と、を有する。イオンビーム生成ユニット12では、イオン源10から引き出し電極を通してビームが引き出されると同時に加速され、引き出し加速されたビームは質量分析装置22により質量分析される。質量分析装置22は、質量分析磁石22a、質量分析スリット22bを有している。質量分析スリット22bは、質量分析磁石22aの直後に配置する場合もあるが、実施例では、その次の構成である高エネルギー多段直線加速ユニット14の入り口部内に配置している。
質量分析装置22による質量分析の結果、注入に必要なイオン種だけが選別され、選別されたイオン種のイオンビームは、次の高エネルギー多段直線加速ユニット14に導かれる。高エネルギー多段直線加速ユニット14により、さらに加速されたイオンビームは、ビーム偏向ユニット16により方向が変化させられる。
ビーム偏向ユニット16は、エネルギー分析電磁石24と、エネルギー分散を抑制する横収束四重極レンズ26と、エネルギー幅制限スリット27(後述する図5参照)と、エネルギー分析スリット28と、ステアリング機能を持つ偏向電磁石30とを有する。なお、エネルギー分析電磁石24は、エネルギーフィルター電磁石(EFM)と呼ばれることもある。高エネルギーイオンビームは、偏向ユニットによって方向転換され、基板ウェハの方向へ向かう。
ビーム輸送ラインユニット18は、ビーム偏向ユニット16から出たイオンビームを輸送するものであり、収束/発散レンズ群から構成されるビーム整形器32と、ビーム走査器34と、ビーム平行化器36と、最終エネルギーフィルター38(最終エネルギー分離スリットを含む)とを有する。ビーム輸送ラインユニット18の長さは、イオンビーム生成ユニット12と高エネルギー多段直線加速ユニット14との長さに合わせて設計されており、ビーム偏向ユニット16で結ばれて、全体でU字状のレイアウトを形成する。
ビーム輸送ラインユニット18の下流側の終端には、基板処理供給ユニット20が設けられており、注入処理室の中に、イオンビームのビーム電流、位置、注入角度、収束発散角、上下左右方向のイオン分布等を計測するビームモニター、イオンビームによる基板の帯電を防止する帯電防止装置、ウェハ(基板)200を搬入搬出し適正な位置・角度に設置するウェハ搬送機構、イオン注入中ウェハを保持するESC(Electro Static Chuck)、注入中ビーム電流の変動に応じた速度でウェハをビームスキャン方向と直角方向に動かすウェハスキャン機構が収納されている。
このように各ユニットをU字状に配置した高エネルギーイオン注入装置100は、設置面積を抑えつつ良好な作業性が確保されている。また、高エネルギーイオン注入装置100においては、各ユニットや各装置をモジュール構成とすることで、ビームライン基準位置に合わせて着脱、組み付けが可能となっている。
次に、高エネルギーイオン注入装置100を構成する各ユニット、各装置について更に詳述する。
(イオンビーム生成ユニット)
図2(a)は、イオンビーム生成ユニットの概略構成を示す平面図、図2(b)は、イオンビーム生成ユニットの概略構成を示す側面図である。
図2(a)、図2(b)に示すように、ビームラインの最上流に配置されているイオン源10の出口側には、イオンチャンバ(アークチャンバー)内で生成されたプラズマからイオンビームを引き出す引き出し電極40が設けられている。引き出し電極40の下流側近傍には、引き出し電極40から引き出されたイオンビーム中に含まれる電子が引き出し電極40に向かって逆流するのを抑制する引き出しサプレッション電極42が設けられている。
イオン源10は、イオン源高圧電源44と接続されている。引き出し電極40とターミナル48との間には、引き出し電源50が接続されている。引き出し電極40の下流側には、入射するイオンビームから所定のイオンを分離し、分離したイオンビームを取り出すための質量分析装置22が配置されている。
後述する図5に示すように、高エネルギー多段直線加速ユニット14の直線加速部ハウジング内の最前部に、イオンビームの総ビーム電流値を計測するためのファラデーカップ80a(インジェクター)が配置されている。
図14(a)は、インジェクターファラデーカップ80aとほぼ同じ構成のリゾルバーファラデーカップ80bを正面から見た模式図、図14(b)は、リゾルバーファラデーカップ80bの動作を説明するための模式図である。
インジェクターファラデーカップ80aは、駆動機構によりビームライン上に上下方向から出し入れ可能に構成され、また、水平方向に長い長方形の枡状形状で、開口部をビームライン上流側に向けて構成されており、イオン源や質量分析電磁石の調整時に、イオンビームの総ビーム電流を計測する目的の他、ビームライン下流に到達するイオンビームを必要に応じてビームライン上で完全に遮断するために用いられる。さらに、インジェクターファラデーカップ80aの直前の高エネルギー多段直線加速ユニット14の入り口部内には、前述の通り、質量分析スリット22bが配置されており、単一の質量分析スリット、あるいは、質量の大きさにより、幅の異なる多数スリットの選択方式、または質量スリット幅を無段階または多段に変更できる方式の構成としている。
(高エネルギー多段直線加速ユニット)
図3は、高エネルギー多段直線加速ユニット14の概略構成を含む全体レイアウトを示す平面図である。高エネルギー多段直線加速ユニット14は、イオンビームの加速を行う複数の線形加速装置、すなわち、一つ以上の高周波共振器14aを挟む加速ギャップを備えている。高エネルギー多段直線加速ユニット14は、高周波(RF)電場の作用により、イオンを加速することができる。図3において、高エネルギー多段直線加速ユニット14は、高エネルギーイオン注入用の基本的な複数段の高周波共振器14aを備えた第1線形加速器15aと、さらに、超高エネルギーイオン注入用の追加の複数段の高周波共振器14aを備えた第2線形加速器15bとから構成されている。
一方、高周波(RF)加速を用いたイオン注入装置においては、高周波のパラメータとして電圧の振幅V[kV]、周波数f[Hz]を考慮しなければならない。更に、複数段の高周波加速を行う場合には、お互いの高周波の位相φ[deg]がパラメータとして加わる。加えて、加速の途中や加速後にイオンビームの上下左右への広がりを収束・発散効果によって制御するための磁場レンズ(例えば、四極電磁石)や電場レンズ(例えば、静電四極電極)が必要であり、それらの運転パラメータは、そこを通過する時点でのイオンのエネルギーによって最適値が変わることに加え、加速電界の強度が収束・発散に影響を及ぼすため、高周波のパラメータを決めた後にそれらの値を決めることになる。
図4は、複数の高周波共振器先端の加速電場(ギャップ)を直線状に並べた高エネルギー多段直線加速ユニット及び収束発散レンズの制御系の構成を示すブロック図である。
高エネルギー多段直線加速ユニット14には一つ以上の高周波共振器14aが含まれている。高エネルギー多段直線加速ユニット14の制御に必要な構成要素としては、オペレータが必要な条件を入力するための入力装置52、入力された条件から各種パラメータを数値計算し、更に各構成要素を制御するための制御演算装置54、高周波の電圧振幅を調整するための振幅制御装置56、高周波の位相を調整するための位相制御装置58、高周波の周波数を制御するための周波数制御装置60、高周波電源62、収束発散レンズ64のための収束発散レンズ電源66、運転パラメータを表示するための表示装置68、決定されたパラメータを記憶しておくための記憶装置70が必要である。また、制御演算装置54には、あらかじめ各種パラメータを数値計算するための数値計算コード(プログラム)が内蔵されている。
高周波線形加速器の制御演算装置54では、内蔵している数値計算コードによって、入力された条件を基にイオンビームの加速並びに収束・発散をシミュレーションし、最適な輸送効率が得られるよう高周波パラメータ(電圧振幅、周波数、位相)を算出する。また同時に、効率的にイオンビームを輸送するための収束発散レンズ64のパラメータ(Qコイル電流、またはQ電極電圧)も算出する。計算された各種パラメータは、表示装置68に表示される。高エネルギー多段直線加速ユニット14の能力を超えた加速条件に対しては、解がないことを意味する表示が表示装置68に表示される。
電圧振幅パラメータは、制御演算装置54から振幅制御装置56に送られ、振幅制御装置56が、高周波電源62の振幅を調整する。位相パラメータは、位相制御装置58に送られ、位相制御装置58が、高周波電源62の位相を調整する。周波数パラメータは、周波数制御装置60に送られる。周波数制御装置60は、高周波電源62の出力周波数を制御するとともに、高エネルギー多段直線加速ユニット14の高周波共振器14aの共振周波数を制御する。制御演算装置54はまた、算出された収束発散レンズパラメータにより、収束発散レンズ電源66を制御する。
イオンビームを効率的に輸送するための収束発散レンズ64は、高周波線形加速器の内部あるいはその前後に、必要な数が配置される。すなわち、複数段の高周波共振器14aの先端の加速ギャップの前後には交互に発散レンズまたは収束レンズが備えられている、その一方で、第2線形加速器15bの終端の横収束レンズ64a(図5参照)の後方には追加の縦収束レンズ64b(図5参照)が配置され、高エネルギー多段直線加速ユニット14を通過する高エネルギー加速イオンビームの収束と発散を調整して、後段のビーム偏向ユニット16に最適な二次元ビームプロファイルのイオンビームを入射させるようにしている。
高周波線形加速器の加速ギャップに生じる電界の方向は、イオンを加速する方向と減速する方向が数十ナノ秒毎に切り替わる。イオンビームを高エネルギーまで加速するためには、数十か所ある加速ギャップの全てで、イオンが加速ギャップに入ったとき、電界は加速方向を向いていなければならない。ある加速ギャップで加速されたイオンは、次の加速ギャップの電界が加速方向を向くまでの間に、二つの加速ギャップの間の電界がシールドされた空間(ドリフトスペース)を通過しなければならない。速すぎても遅すぎても減速されるので、高エネルギーに到達できない。全加速ギャップで加速位相に乗るのは、非常に厳しい条件になるため、予定エネルギーに達するということは、高周波線形加速器による、質量、エネルギー、電荷(速度を決める要因)に対する厳しい選別をくぐり抜けたことになる。その意味で、高周波線形加速器は良い速度フィルターでもある。
(ビーム偏向ユニット)
図1に示すように、ビーム偏向ユニット16は、エネルギーフィルター偏向電磁石(EFM)であるエネルギー分析電磁石24と、エネルギー幅制限スリット27(図5参照)と、エネルギー分析スリット28と、偏向後のエネルギー分散を制御する横収束四重極レンズ26と、注入角度補正機能を有する偏向電磁石30を含む。
図5(a)、図5(b)は、EFM(エネルギー分析用偏向電磁石)、エネルギー幅制限スリット、エネルギー分析スリット、BM(横方向中心軌道補正用偏向電磁石)、ビーム整形器、ビーム走査器(スキャナー)の概略構成を示す平面図である。なお、図5(a)に示す符号Lは、イオンビームの中心軌道を示している。
高エネルギー多段直線加速ユニット14通過後のイオンビームは、シンクロトロン振動によってエネルギー分布ができてしまう。また、加速位相の調整量が大きいときに、中心値が予定のエネルギーからややずれたビームが高エネルギー多段直線加速ユニット14から出てくることがある。そこで、後述のビーム偏向ユニット16により所望のエネルギーのイオンのみが通過できるように、エネルギーフィルター偏向磁石(EFM)の磁場を設定して、エネルギー幅制限スリット27とエネルギー分析スリット28により、ビームの一部を選択的に通過させ、イオンのエネルギーを設定値に揃える。通過できるイオンビームのエネルギー幅はエネルギー幅制限スリットと分析スリットの開口横幅によってあらかじめ設定できる。エネルギー分析スリットを通過したイオンのみが後段のビームラインに導かれ、ウェハに注入される。
エネルギー分布を持ったイオンビームが、前述したフィードバックループ制御系で磁場を一定値に制御されたエネルギーフィルター電磁石(EFM)に入射すると、入射イオンビーム全体が設計軌道に沿って偏向されながらエネルギー分散を起こし、所望のエネルギー幅の範囲にあるイオンが、EFM出口付近に設置されたエネルギー幅制限スリット27を通過する。この位置では、エネルギー分散は極大値に向かって増加中であり、エミッタンスによるビームサイズσ1(エネルギー幅がないときのビームサイズ)は、極小値に向かって減少中であるが、エネルギー分散によるビーム幅がエミッタンスによるビーム幅より大きくなっている。このような状態のイオンビームをスリットで切る場合、空間的な分布はシャープに切られるが、エネルギー分布は2σ1に対応するエネルギー幅でなまらされた切り口になる。言い換えると、例えば、スリット幅を、3%のエネルギー幅に対応する寸法に設定したとしても、予定注入エネルギーとのエネルギー差が3%より小さいイオンの一部はスリットの壁に当たって失われ、逆にエネルギー差が3%より大きいイオンの一部は、スリットを通過してしまう。
エネルギー分析スリットは、σ1が極小になる位置に設置する。この位置では、σ1はスリット幅に比べて無視できるほど小さくなるので、エネルギー分布も空間分布とほとんど同じくシャープに切断される。例えば、エネルギー分析スリットの開口幅もエネルギー幅3%に相当する寸法(0.03η)に設定した場合、エネルギー幅制限スリットを通過できたエネルギー差が3%を超えるイオンは、全てここで阻止される。この結果、最初矩形のエネルギー分布だったビームが二枚のスリットを通過した後では、0%でピークになり、±3%で高さが1/2に減り、その後急激にゼロまで低下するドーム状の分布に変わる。エネルギー差の小さいイオンの数が相対的に多くなるので、一枚のエネルギー分析スリットだけ設置して、ほぼ矩形のエネルギー分布のままスリットを通過させたときより、エネルギー幅が実質的に小さくなる。
二重のスリットシステムは、エネルギー分布の端部を削る効果によって、リナックにより加速されたビームのエネルギーが予定注入エネルギーからわずかにずれている場合、通過後のビームのエネルギーずれを小さくする効果がある。例えば、エネルギー幅が±3%で、エネルギーずれも3%ある場合、二重スリットを通過した後のエネルギー分布は、前記ドーム状分布のエネルギーのプラス側半分になり、その分布の重心であるエネルギー中心は、ほぼΔE/E=1%付近に来る。一方、単一のエネルギー分析スリットでカットした場合、中心はΔE/E=1.5%になる。分布をなまらせる効果は、必ずエネルギー中心のずれを抑える方向に働く。
このように、エネルギー幅とエネルギーずれの両方を持つ加速システムで、エネルギー幅とエネルギー中心のずれを両方縮小して、エネルギー精度を上げるためには、二重スリットによるエネルギー制限が有効である。
エネルギー分析電磁石には高い磁場精度が必要であるので、精密な磁場測定を行う高精度な測定装置86a,86bが、取り付けられている(図5(b)参照)。測定装置86a,86bは、MRP(磁気共鳴プローブ)とも呼ばれるNMR(核磁気共鳴)プローブとホールプローブとを適宜組み合わせたもので、MRPはホールプローブの校正に、ホールプローブは磁場一定のフィードバック制御にそれぞれ使用される。また、エネルギー分析電磁石は、磁場の不均一性が0.01%未満になるように、厳しい精度で製作されている。さらに、それぞれの電磁石には、電流設定精度と電流安定度とが1×10−4以上の電源とその制御機器が接続されている
また、エネルギー分析スリット28の上流側であって、エネルギー分析スリット28とエネルギー分析電磁石24との間に、横収束レンズとして四重極レンズ26が配置されている。四重極レンズ26は、電場式若しくは磁場式で構成することができる。これによって、イオンビームがU字状に偏向された後のエネルギー分散が抑制され、ビームサイズが小さくなるので、高効率のビーム輸送ができる。また、偏向電磁石の磁極部ではコンダクタンスが小さくなるため、例えば、エネルギー分析スリット28の近傍に、アウトガス排出用の真空ポンプを配置することが有効である。磁気浮上式のターボ分子ポンプを使用する場合は、エネルギー分析電磁石24や偏向電磁石30の電磁石の漏れ磁場の影響を受けない位置に設置しなければならない。この真空ポンプによって、偏向ユニットでの残留ガス散乱によるビーム電流低下が防がれる。
高エネルギー多段直線加速ユニット14中の四重極レンズや、分散調整用四重極レンズ26、ビーム整形器32に、大きな据付け誤差があると、図5(b)に示されているビームの中心軌道が歪み、ビームがスリットに当たって失われやすくなり、最終的な注入角度と注入位置も狂ってしまう。これに対しては、注入角度補正機能を有する偏向電磁石30の磁場補正値によって、水平面上では、ビームの中心軌道が、必ずビーム走査器34の中心を通るようになっている。これによって、注入角度の狂いは矯正される。さらに、ビーム走査器34に適切なオフセット電圧を加えると、走査器からウェハまでの中心軌道の歪みはなくなり、注入位置の左右ずれは解消される。
ビーム偏向ユニット16の各偏向電磁石を通過中のイオンには、遠心力とローレンツ力が働いており、それらが釣り合って、円弧状の軌跡が描かれる。この釣合いを式で表すとmv=qBrとなる。mはイオンの質量、vは速度、qはイオン価数、Bは偏向電磁石の磁束密度、rは軌跡の曲率半径である。この軌跡の曲率半径rが、偏向電磁石の磁極中心の曲率半径と一致したイオンのみが、偏向電磁石を通過できる。言い換えると、イオンの価数が同じ場合、一定の磁場Bがかかっている偏向電磁石を通過できるのは、特定の運動量mvを持ったイオンのみである。EFMは、エネルギー分析電磁石と呼ばれているが、実際は、イオンの運動量を分析する装置である。BMや、イオン生成ユニットの質量分析電磁石も、全て運動量フィルターである。
また、ビーム偏向ユニット16は、複数の磁石を用いることで、イオンビームを180°偏向させることができる。これにより、ビームラインがU字状の高エネルギーイオン注入装置100を簡易な構成で実現できる。
図5(a)に示すように、ビーム偏向ユニット16は、高エネルギー多段直線加速ユニット14から出たイオンビームを、エネルギー分析電磁石24で90°偏向する。そして、軌道補正兼用偏向電磁石30によりビーム進路をさらに90°偏向し、後述するビーム輸送ラインユニット18のビーム整形器32に入射させる。ビーム整形器32は、入射したビームを整形してビーム走査器34に供給する。また、図5(b)に示す四重極レンズ26のレンズ作用により、ビームのエネルギー分散による発散を防止し、あるいは、エネルギー分散によるビーム拡大効果を利用して、ビームが小さくなりすぎることを防いでいる。
図11(a)は、横収束レンズである四重極レンズを模式的に示す平面図、図11(b)は、四重極レンズを模式的に示す正面図である。図11(a)の平面図では、四重極レンズ26のビームライン進行方向の電極長さを示すとともに、エネルギー分析器(EFM偏向磁石)24に選別されたエネルギーのビームについて、横発散していくビームが四重極レンズ26により横収束される作用を示す。図11(b)の正面図では、四重極レンズ26の電極による収束発散作用によるビームの横収束作用を示す。
上述のように、ビーム偏向ユニット16は、イオン源で発生したイオンを加速してウェハまで輸送して打ち込むイオン注入装置において、高エネルギー多段直線加速ユニット14とビーム輸送ラインユニット18との間において、イオンビームの180°の偏向を複数の電磁石で行っている。つまり、エネルギー分析電磁石24および軌道補正兼用偏向電磁石30は、それぞれ偏向角度が90度となるように構成されており、その結果、合計の偏向角度が180度となるように構成されている。なお、一つの磁石で行う偏向量は90°に限られず、以下の組合せでもよい。
(1)偏向量が90°の磁石が1つ+偏向量が45°の磁石が2つ
(2)偏向量が60°の磁石が3つ
(3)偏向量が45°の磁石が4つ
(4)偏向量が30°の磁石が6つ
(5)偏向量が60°の磁石が1つ+偏向量が120°の磁石が1つ
(6)偏向量が30°の磁石が1つ+偏向量が150°の磁石が1つ
エネルギー分析部としてのビーム偏向ユニット16は、U字状のビームラインにおける折り返し路であり、それを構成する偏向電磁石の曲率半径rは、輸送できるビームの最大エネルギーを限定するとともに、装置の全幅や中央のメンテナンスエリアの広さを決定する重要なパラメータである(図5参照)。その値を最適化することによって、最大エネルギーを下げることなく、装置の全幅を最小に抑えている。そして、これにより、高エネルギー多段直線加速ユニット14とビーム輸送ラインユニット18との間の間隔が広くなり、十分な作業スペースR1が確保できている(図1参照)。
図12(a)、図12(b)は、電磁石の構成の一例を示す斜視図である。図13は、電磁石が備える開閉装置を模式的に示した図である。エネルギー分析電磁石24や偏向電磁石30を構成する電磁石は、例えば、図12(a)、図12(b)に示すように、アッパーヨーク87、ロアーヨーク88、内側と外側のサイドヨーク89a,89b、上ポール(不図示)、下ポール93、上コイル91a、下コイル91b、で構成されている。また、図13に示すように、外側サイドヨーク89bは、2つの部材89b1,89b2に分割されており、開閉装置92a,92bによって、外側に観音開きできるようになっており、図示しない、ビームラインを構成するビームガイド容器を着脱できるよう構成されている。
また、ビーム偏向ユニット16の中央部の真空容器、例えば、エネルギー幅制限スリット27、四重極レンズ26、エネルギー分析スリット28等を収納している容器は、ビームラインから容易に脱着できる構造になっている。これによって、メンテナンス作業時に、U字状ビームライン中央の作業エリアに、簡単に出入りすることができる。
高エネルギー多段直線加速ユニット14は、イオンの加速を行う複数の線形加速装置を備えている。複数の線形加速装置のそれぞれは、共通の連結部を有しており、その連結部は、複数の電磁石のうちエネルギー分析スリット28よりも上流側にあるエネルギー分析電磁石24に対して着脱可能に構成されている。同様に、ビーム輸送ラインユニット18は、偏向電磁石30に対して着脱可能に構成されていてもよい。
また、エネルギー分析スリット28より上流側に設けられている、電磁石を含むエネルギー分析電磁石24は、上流の高エネルギー多段直線加速ユニット14に対して着脱したり連結したりできるように構成してもよい。また、後述するビーム輸送ラインユニット18をモジュール型のビームラインユニットで構成した場合、エネルギー分析スリット28より下流側に設けられている偏向電磁石30は、下流のビーム輸送ラインユニット18に対して着脱したり連結したりできるように構成してもよい。
リナック、ビーム偏向ユニットは、それぞれ平面架台上に配置され、それぞれの機器を通過するイオンビーム軌道が実質的に1水平面に含まれる(最終エネルギーフィルターの偏向後の軌道は除く)ように構成されている。
(ビーム輸送ラインユニット)
図6(a)は、ビーム走査器からビーム平行化器以降のビームラインから基板処理供給ユニットまでの概略構成を示す平面図、図6(b)は、ビーム走査器からビーム平行化器以降のビームラインから基板処理供給ユニットまでの概略構成を示す側面図である。
ビーム偏向ユニット16によって必要なイオン種のみが分離され、必要なエネルギー値のイオンのみとなったビームは、ビーム整形器32により所望の断面形状に整形される。図5、図6に示すように、ビーム整形器32は、Q(四重極)レンズ等(電場式若しくは磁場式)の収束/発散レンズ群により構成される。整形された断面形状を持つビームは、ビーム走査器34により図1(a)の面に平行な方向にスキャンされる。例えば、横収束(縦発散)レンズQF/横発散(縦収束)レンズQD/横収束(縦発散)レンズQFからなるトリプレットQレンズ群として構成される。ビーム整形器32は、必要に応じて、横収束レンズQF、横発散レンズQDをそれぞれ単独で、あるいは複数組み合わせて構成することができる。
図5に示すようにスキャナーハウジング内の最前部のビーム整形器32の直前部とには、イオンビームの総ビーム電流値を計測するためのファラデーカップ80b(リゾルバーファラデーカップと呼ぶ)が配置されている。
図14(a)は、リゾルバーファラデーカップ80bを正面から見た模式図、図14(b)は、リゾルバーファラデーカップ80bの動作を説明するための模式図である。
リゾルバーファラデーカップ80bは、駆動機構によりビームライン上に上下方向から出し入れ可能に構成され、また、水平方向に長い長方形の枡状形状で、開口部をビームライン上流側に向けて構成されており、リナック及びビーム偏向部の調整の際に、イオンビームの総ビーム電流を計測する目的の他、ビームライン下流に到達するイオンビームを必要に応じてビームライン上で完全に遮断するために用いられる。またリゾルバーファラデーカップ80b、ビーム走査器34及びサプレッション電極74、グランド電極76a、78a、78bは、スキャナーハウジング82に収容されている。
ビーム走査器34は、周期変動する電場により、イオンビームの進行方向と直交する水平方向にイオンビームを周期的に往復走査させる偏向走査装置(ビームスキャナーとも呼ばれる)である。
ビーム走査器34は、ビーム進行方向に関して、イオンビームの通過域を挟むようにして対向配置された一対(2枚)の対向走査電極(二極式偏向走査電極)を備え、0.5Hz〜4000Hzの範囲の一定の周波数で正負に変動する三角波に近似する走査電圧が、2枚の対向電極にそれぞれ逆符号で印加される。この走査電圧は、2枚の対向電極のギャップ内において、そこを通過するビームを偏向させる変動する電場を生成する。そして、走査電圧の周期的な変動により、ギャップを通過するビームが水平方向にスキャンされる。
高エネルギーイオン注入された際に、シリコンウェハ内部に生成される結晶ダメージの量は、スキャン周波数に反比例する。そして、結晶ダメージの量が、生産される半導体デバイスの品質に影響することがある。このような場合に、スキャン周波数を自由に設定できるようにすることにより、生産される半導体デバイスの品質を高めることができる。
さらに、走査電圧をかけない状態で、ウェハ直近で測定されたビーム位置ずれ量を補正するために、オフセット電圧(固定電圧)が走査電圧に重畳される。このオフセット電圧によって、スキャン範囲が左右に偏ることがなくなり、左右対称なイオン注入が実施できる。
ビーム走査器34の下流側には、イオンビームの通過域に開口を有するサプレッション電極74が2つのグランド電極78a、78bの間に配置されている。上流側には、走査電極の前方にグランド電極76aを配置しているが、必要に応じて下流側と同じ構成のサプレッション電極を配置することができる。サプレッション電極は、正電極への電子の侵入を抑制する。
また、偏向電極87a,87bの上方と下方には、グランド遮蔽板89が配置されている。グランド遮蔽板は、ビームに付随する二次電子が、外側から回り込んでビーム走査器34の正電極に流れ込むことを防いでいる。サプレッション電極とグランド遮蔽板により、走査器の電源が保護されるとともに、イオンビームの軌道が安定化される。
ビーム走査器34の後方側にはビームパーク機能が備わっている。ビームパークは、ビームスキャナーを通過したイオンビームを必要に応じて水平に大きく偏向させてビームダンプに導くように構成されている。
ビームパークは、電極の放電など、イオン注入中に予期せぬ障害が発生し、そのまま注入動作を続けると、ドーズの均一性不良などの注入不良が発生する場合に、瞬間的(10μs以内)にビーム輸送を中止するシステムである。実際には、ビーム電流の著しい低下を観測した瞬間に、ビームスキャナー電源の出力電圧を最大スキャン幅に対応する電圧の1.5倍に上げて、ビームをパラレルレンズ横のビームダンプに導いている。障害が発生した時点のウェハ上のビーム照射位置を記憶しておき、障害が解消した後、上下に走査運動しているウェハがその位置に来た瞬間にビームを元の軌道に戻すことによって、あたかも何もなかったかのように、イオン注入が継続される。
このように高速応答する電源は、あまり電圧を高くできない(主にコスト上の問題)。一方で、高度な注入ドーズの均一性を得るためには、走査範囲をウェハより広く取らなければならない。そのためには、ビーム走査器に高エネルギービームを充分偏向できる能力が必要である。これは、ビーム走査器の偏向電極の間隔と長さに制約を設けることで実現できる。本発明のエネルギー領域では、電極長を間隔の5倍以上とすればよい。
スキャンハウジング内において、ビーム走査器34の下流側には、ビーム走査空間部が長い区間において設けられ、ビーム走査角度が狭い場合でも十分なスキャン幅を得られるように構成されている。ビーム走査空間部の下流にあるスキャンハウジングの後方には、偏向されたイオンビームを、ビーム走査偏向前のイオンビームの方向になるように調整する、つまり、ビームラインに平行となるように曲げ戻すビーム平行化器36が設けられている。
ビーム平行化器36で発生する収差(ビーム平行化器の中心部と左右端部の焦点距離の差)は、ビーム走査器34の偏向角の2乗に比例するので、ビーム走査空間部を長くして偏向角を小さくすることは、ビーム平行化器の収差を抑えることに大きく寄与する。収差が大きいと、半導体ウェハにイオンビームを注入する際に、ウェハの中心部と左右端部とでビームサイズとビーム発散角が異なるため、製品の品質にバラツキが生じることがある。
また、このビーム走査空間部の長さを調整することによって、ビーム輸送ラインユニットの長さを、高エネルギー多段直線加速ユニット14の長さに合わせることができる。
図7は、ビーム走査器の一例の主要部を上方から見た模式図である。図8は、ビーム走査器の一例の主要部を側方から見た模式図である。図9は、ビーム走査器の一例をイオンビームラインの途中経路に着脱自在に装着した構造を下流側から見た正面模式図である。
ビーム走査器134は、図7、図8に示すように、一対の偏向電極128、130とこれらの上流側近傍、下流側近傍に組み付けられたグランド電極132、133とが箱体150内に収容、設置されている。箱体150の上流側側面及び下流側側面であって、グランド電極132、133の開口部に対応する箇所には、それぞれ、上流側開口部(図示省略)、グランド電極133の開口部より大きめの開口部152Aが設けられている。
偏向電極と電源との接続は、フィードスルー構造にて実現されている。一方、箱体150の上面には偏向電極128、130と電源とを接続するためのターミナルとグランド用のターミナルが設けられている。また、箱体150には、ビーム軸に平行な2つの側面に、着脱や持ち運びに都合のよい取っ手が設けられている。なお、箱体150には、ビーム走査器134内の圧力を下げるための真空排気用の開口部が形成されており、図示しない真空排気装置に接続されている。
図9に示すように、箱体150は、架台160上に固定設置されたビームガイドボックス170にスライド自在に設置されている。ビームガイドボックス170は箱体150より十分に大きく、底部には箱体150をスライド可能にするための2本のガイドレールが敷設されている。ガイドレールは、ビーム軸に直交する方向に延びており、その一端側のビームガイドボックス170の側面は扉172により開閉自在にされている。これにより、ビーム走査器134の保守・点検時には、箱体150をビームガイドボックス170から簡単に取り出すことができる。なお、ビームガイドボックス170内に押し込まれた箱体150をロックするために、ガイドレールの他端には係止機構(不図示)が設けられている。
これらのスキャナー周辺のユニット部材は、ビームラインのメンテナンス時の作業対象であり、メンテナンス作業は作業スペースR1から容易に実施することができる。高エネルギー多段直線加速ユニット14のメンテナンス作業時にも、同様に、作業スペースR1から容易に実施することができる。
ビーム平行化器36には、電場平行化レンズ84が配置されている。図6に示すように、電場平行化レンズ84は、略双曲線形状の複数の加速電極対と減速電極対で構成されている。各電極対は、放電が起きない程度の広さの加速・減速ギャップを介して向き合っており、加速減速ギャップには、イオンビームの加減速を引き起こす軸方向の成分と、基準軸からの距離に比例して強くなって、イオンビームに横方向の収束作用を及ぼす横成分とを併せ持つ電界が形成される。
加速ギャップを挟む電極対のうち下流側の電極と、減速ギャップの上流側の電極、及び、減速ギャップの下流側の電極と次の加速ギャップの上流側の電極とは、同一電位になるように、それぞれ一体の構造体を形成している。図6(b)に示すように、さらにこれらの構造体は、上部ユニットと下部ユニットの上下対の組体で構成され、上部ユニットと下部ユニットの間には、イオンビームが通過する空間部が設けられている。
電場平行化レンズ84の上流側から最初の電極(入射電極)と最後の電極(出射電極)は、接地電位に保たれている。これによって、平行化レンズ84通過前後で、ビームのエネルギーは変化しない。
中間の電極構造体において、加速ギャップの出口側電極と減速ギャップの入り口側電極には、可変式定電圧の負電源90が、減速ギャップの出口側電極と加速ギャップの入り口側電極には、可変式定電圧の正電源が接続されている(n段の時は負正負正負・・・)。これによって、イオンビームは加速・減速を繰り返しながら、ビームラインの中心軌道と平行な方向に段階的に向いていく。そして、最終的に偏向走査前のイオンビーム進行方向(ビームライン軌道方向)に平行な軌道に乗る。
このように、ビーム走査器34によりスキャンされたビームは、電場平行化レンズ等を含むビーム平行化器36により、スキャン前のイオンビーム進行方向(ビームライン軌道方向)に平行な偏向角0度の軸(基準軸)に対して平行になる。このとき、スキャン領域は、基準軸に関して左右対称になる。
電場平行化レンズ84から出たイオンビームは、電場最終エネルギーフィルター38(AEF(94):Angular Energy Filter)に送られる。最終エネルギーフィルター94では、ウェハに注入する直前のイオンビームのエネルギーに関する最終的な分析が行われ、必要なエネルギー値のイオン種のみが選択されるとともに、合わせて、中性化した価数のない中性粒子や、イオン価数の異なるイオンの除去が行われる。この電界偏向による最終エネルギーフィルター94は、ビームライン軌道方向の上下方向に対向する一対の平面若しくは曲面からなる板状の偏向電極により構成され、ビームライン軌道方向の上下方向において最終エネルギーフィルター94自身の偏向作用により下方に曲がっていくイオンビーム軌道に合わせて屈曲している。
図6(a)、図6(b)に示すように、電界偏向用電極は、一対のAEF電極104から構成され、イオンビームを上下方向より挟み込むように配置されている。一対のAEF電極104のうち、上側のAEF電極104には正電圧を、下側のAEF電極104には負電圧をそれぞれ印加している。電界による偏向時には、一対のAEF電極104間で発生する電界の作用によって、イオンビームを下方に約10〜20度偏向させ、目的エネルギーのイオンビームのみが選択されることとなる。図6(b)に示されるように、最終エネルギーフィルター94においては選択された価数のイオンビームのみが設定した軌道角度で下方に偏向される。このようにして選択されたイオン種のみからなるビームが正確な角度で一様に被照射物であるウェハ200に照射される。
実際に高エネルギービームを偏向する上では、上下方向に対向する一対の板状の偏向電極204は、図10に示すように、イオンビーム軌道に合わせて屈曲させるときに、偏向角と曲率半径に合わせて、前後にn分割し、それぞれの上部電極および下部電極が各々同電位に保たれた板状の電極とした方が、製作精度や経済性の点で優れている。また、前後にn分割された板状の偏向電極は、上部電極および下部電極を各々同電位に保つ構成のほか、n分割の上下一対の板状電極として、それぞれ別の電位設定とすることも可能である。
このような構造を取ることによって、電場式のエネルギーフィルターを高エネルギーのスキャンビーム輸送ラインに搭載することが可能になっている。電場によって、ビームスキャン面と直交する方向にビームを偏向するため、ビームスキャン方向の注入イオン密度分布(均一性)に影響を与えず、エネルギー分析を行うことができるようになっている。
さらに、最終エネルギーフィルターの搭載によって、本ビームラインには、高エネルギー多段直線加速ユニット14の高周波線形加速装置、U字状偏向部の磁場式のEFM(エネルギー分析電磁石24)とBM(偏向電磁石30)と合わせて、3種類のビームフィルターが搭載されることになった。前述のように、高周波線形加速装置は速度(v)フィルターであり、EFMとBMは運動量(mv)フィルターであり、この最終エネルギーフィルターはその名の通りエネルギー(mv2/2)フィルターである。このように、方式の異なる三重のフィルターをかけることにより、従来と比べてエネルギー純度が高いだけでなく、パーティクルやメタルコンタミネーションも少ない非常に純粋なイオンビームをウェハに供給できるようになっている。
なお、機能的には、EFMは高分解能で、高周波線形加速装置をすり抜けたエネルギーコンタミネーションの除去やエネルギー幅の制限を行い、AEFは比較的低分解能で、EFMによるエネルギー分析後のビーム輸送ラインユニットで、主にレジストアウトガスによって価数が変化したイオンを除去する役割を担っている。
最終エネルギーフィルター94は、最終エネルギーフィルター94の上流側にグランド電極108、および下流側の2つのグランド電極の間にAEFサプレッション電極110を設けた電極セットを備えている。このAEFサプレッション電極110は、正電極へ電子の侵入を抑制する。
最終エネルギーフィルター94の最下流側のグランド電極の左右端に配置されたドーズカップ122により、ドーズ量の目安とする注入注のビーム電流量を測定する。
(基板処理供給ユニット)
図6(a)においてウェハ200に隣接して示した矢印はビームがこれらの矢印の方向にスキャンされることを示し、図6(b)においてウェハ200に隣接して示した矢印はウェハ200がこれらの矢印の方向に往復移動、すなわち機械走査されることを示している。つまり、ビームが、例えば一軸方向に往復スキャンされるものとすると、ウェハ200は、図示しない駆動機構により上記一軸方向に直角な方向に往復移動するように駆動される。
ウェハ200を所定の位置に搬送供給し、イオン注入による処理を行う基板処理供給ユニット20は、プロセスチャンバ(注入処理室)116に収納されている。プロセスチャンバ116は、AEFチャンバ102と連通している。プロセスチャンバ116内には、エネルギー制限スリット(EDS:Energy Defining Slit)118が配置されている。エネルギー制限スリット118は、所用以外のエネルギー値と価数を持つイオンビームの通過を制限することにより、AEFを通過した所用のエネルギー値と価数を持つイオンビームだけを分離するために、スキャン方向に横長のスリットで構成されている。また、エネルギー制限スリット118は、スリットの分離の間隔を調整するために上下方向から可動式の部材でスリット体を構成し、エネルギー分析や、注入角度の測定など、複数の測定目的に対応できるようにしても良い。さらに、可動式の上下の切替えスリット部材は、複数のスリット面を備えて、これらのスリット面を切り替えた後、さらに上下スリットの軸を上下方向に調整させたり、回転させたりすることによって、所望のスリット幅に変更するよう構成しても良い。これら複数のスリット面をイオン種に応じて順次切り替えることにより、クロスコンタミネーションを低減する構成とすることも可能である。
プラズマシャワー120は、低エネルギー電子をイオンビームのビーム電流量に応じて軌道上のイオンビームとウェハ200の前面に供給し、イオン注入で生じる正電荷のチャージアップを抑制する。なお、最終エネルギーフィルター94の最下流側のグランド電極の左右端に配置されたドーズカップ122の代わりに、プラズマシャワー120の左右端にドーズ量を測定するドーズカップ(不図示)を配置しても良い。
ビームプロファイラ124は、イオン注入位置でのビーム電流の測定を行うためのビームプロファイラカップ(図示省略)を備えている。ビームプロファイラ124は、イオン注入前に水平方向へ移動させながら、イオン注入位置のイオンビーム密度を、ビームスキャン範囲において測定する。ビームプロファイル測定の結果、イオンビームの予想不均一性(PNU:Predicted Non Uniformity)がプロセスの要求に満たない場合には、ビーム走査器34の印加電圧の制御関数を補正して、プロセス条件を満たすように自動的に調整する。また、ビームプロファイラ124に、バーティカルプロファイルカップ(図示省略)を併設して、ビーム形状・ビームX−Y位置を測定して、注入位置でのビーム形状を確認し、ビーム幅やビーム中心位置、ダイバージェンスマスクと組み合わせて注入角度やビーム発散角を確認できるよう構成することも可能である。
ビームラインの最下流には、スキャン範囲のイオンビームをウェハ領域において全て計測できるビーム電流計測機能を有する横長ファラデーカップ126が配置されており、最終セットアップビームを計測するよう構成されている。図15は、横長ファラデーカップを正面から見た模式図である。なお、クロスコンタミネーションを低減するために、横長ファラデーカップ126は、イオン種に応じて三角柱の3面を切り替えることができるトリプルサーフェス構造のファラデーカップの切り換え式底面を持つ構成とすることも可能である。また、横長ファラデーカップ126に、バーティカルプロファイルカップ(図示省略)を併設して、ビーム形状やビーム上下位置を測定して、注入位置での上下方向の注入角度やビーム発散角をモニターできるよう構成することも可能である。
前述のように、高エネルギーイオン注入装置100は、図1に示すように、作業スペースR1を囲むように、各ユニットがU字状に配置されている。そのため、作業スペースR1にいる作業者は、最小限の移動により、多くのユニットに対して部品の交換やメンテナンス、調整を行うことができる。
(全体レイアウト、メンテナンス性、製造性、地球環境配慮)
以上、本実施の形態に係る高エネルギーイオン注入装置100は、イオンビーム生成ユニット12にて生成したイオンビームを、高エネルギー多段直線加速ユニット14にて加速するとともに、ビーム偏向ユニット16により方向転換し、ビーム輸送ラインユニット18の終端に設けられている基板処理供給ユニット20にある基板に照射する。
また、高エネルギーイオン注入装置100は、複数のユニットとして、高エネルギー多段直線加速ユニット14と、ビーム輸送ラインユニット18と、を含んでいる。そして、高エネルギー多段直線加速ユニット14およびビーム輸送ラインユニット18は、図1に示す作業スペースR1を挟んで対向するように配置されている。これにより、従来装置ではほぼ直線状に配置されてきた高エネルギー多段直線加速ユニット14と、ビーム輸送ラインユニット18とが折り返して配置されるため、高エネルギーイオン注入装置100の全長を抑えることができる。また、ビーム偏向ユニット16を構成する複数の偏向電磁石の曲率半径は、装置幅を最小にするように最適化されている。これらによって、装置の設置面積を最小化するとともに、高エネルギー多段直線加速ユニット14とビーム輸送ラインユニット18との間に挟まれた作業スペースR1において、高エネルギー多段直線加速ユニット14やビーム輸送ラインユニット18の各装置に対する作業が可能となる。
また、高エネルギーイオン注入装置100を構成する複数のユニットは、ビームラインの上流側に設けられている、イオンビームを発生させるイオンビーム生成ユニット12と、ビームラインの下流側に設けられている、イオンが注入される基板を供給し処理する基板処理供給ユニット20と、イオンビーム生成ユニット12から基板処理供給ユニット20へ向かうビームラインの途中に設けられている、イオンビームの軌道を偏向するビーム偏向ユニット16とを含んでいる。そして、イオンビーム生成ユニット12および基板処理供給ユニット20をビームライン全体の一方の側に配置し、ビーム偏向ユニット16をビームライン全体の他方の側に配置している。これにより、比較的短時間でメンテナンスの必要なイオン源10や、基板の供給、取り出しが必要な基板処理供給ユニット20が隣接して配置されるため、作業者の移動が少なくてすむ。
また、高エネルギー多段直線加速ユニット14は、イオンの加速を行う複数の一連の線形加速装置を備えており、複数の一連の線形加速装置のそれぞれは、共通の連結部を有していてもよい。これにより、基板へ注入するイオンに必要とされるエネルギーに応じて、線形加速装置の数や種類を容易に変更できる。
また、スキャナー装置であるビーム走査器34および平行化レンズ装置であるビーム平行化器36は、隣接するユニットとの連結部として標準化された形状を有していてもよい。これにより、線形加速装置の数や種類を容易に変更できる。そして、ビーム走査器34やビーム平行化器36は、高エネルギー多段直線加速ユニット14が備える線形加速装置の構成および数に応じて選択されてもよい。
また、高エネルギーイオン注入装置100において、各装置のフレームと真空チャンバとを一体化し、装置フレームまたは真空チャンバの基準位置に合わせて組付けを行うことにより、ビームの芯出し(位置調整)が可能となるように構成してもよい。これにより、煩雑な芯出し作業が最小限となり、装置立ち上げ時間が短縮でき、作業間違いによる軸ずれの発生が抑制できる。また、連続する真空チャンバ同士の芯出しを、モジュール単位で実施してもよい。これにより、作業負荷を低減できる。また、モジュール化された装置の大きさを、装置の移動がし易い大きさ以下にしてもよい。これにより、モジュールや高エネルギーイオン注入装置100の移設負荷を低減できる。
また、高エネルギーイオン注入装置100は、高エネルギー多段直線加速ユニット14、ビーム輸送ラインユニット18、排気装置等を含む構成機器を一体の架台に組み込んでもよい。また、高エネルギーイオン注入装置100は、高エネルギー多段直線加速ユニット14やビーム偏向ユニット16、ビーム輸送ラインユニット18を平面基盤上にほぼ一水平面に含まれるようにしている。これにより、高エネルギーイオン注入装置100を一水平面の平面基盤上に固定された状態で調整しブロック毎にそのまま運搬することもできるので、輸送中に調整ずれを生ずることが少なく、現地で再調整する手間が大いに省ける。そのため、現場に多数の熟練者を送り込んで長期間滞在させる不経済を避けることができる。
また、上記の平面基盤を架台の床でなく中間に形成すると、平面基盤上に、イオンビーム軌道に直接的に関係する上述の機器のみを搭載するようにできる。そして、これらに対する補助的な機器である高周波立体回路等の部材を、全て平面基盤の下に形成される空間中に組み込むことで、空間利用率を向上させ、よりコンパクトなイオン注入装置を実現することも可能になる。
したがって、上述の高エネルギーイオン注入装置100は、設置場所に余裕がない場所でも設置でき、製作工場内で組み付け調整したままの状態で需要箇所に輸送して、現地に据え付け、最終調整により使用ができる。また、高エネルギーイオン注入装置100は、半導体製造工場の半導体製造装置ラインの標準的な水準における利用に耐えられる以上の高エネルギーのイオン注入を実現できる。
このように、高エネルギーイオン注入装置100は、各ユニットや各装置のレイアウトを工夫することで、従来と比較して大いに小型化され、従来の半分程度の設置長さに納めることができる。また、本実施の形態に係るイオン注入装置は、製造工場内で各構成要素を基盤上に組み込み、基盤上で位置調整してイオンビーム軌道を確立したまま輸送車に搭載して現地に輸送し、架台ごと据え付けた上で輸送中に生じた狂いを微調整して除去することにより稼働させることができる。そのため、熟練者でなくとも現場調整が格段に容易かつ確実に実施でき、また立ち上げ期間を短縮できる。
また、長いU字状の折り返し型ビームラインのようなレイアウトを取ることによって、最高5〜8MeVの高エネルギーイオンを高精度で注入できるイオン注入装置を実現することができる。また、このイオン注入装置は、中央通路(中央領域)を持つこのレイアウトによって、小さな設置面積で十分なメンテナンスエリアを持つ。また、イオン注入装置の運転時においては、電場パラレルレンズや電場式スキャナー、電場AEF等の使用による低消費電力運転によって、消費電力を少なくできる。換言すると、本実施の形態に係るイオン注入装置は、電場偏向式の平行化レンズ装置の使用によるスキャンビームの平行化機構を有することで、低消費電力運転が可能となる。
以上、本発明を上述の実施の形態を参照して説明したが、本発明は上述の実施の形態に限定されるものではなく、実施の形態の構成を適宜組み合わせたものや置換したものについても本発明に含まれるものである。また、当業者の知識に基づいて各実施の形態における組合せや処理の順番を適宜組み替えることや各種の設計変更等の変形を各実施の形態に対して加えることも可能であり、そのような変形が加えられた実施の形態も本発明の範囲に含まれうる。
以下、本願発明の異なる態様を実施の形態に沿って列挙する。
前述の高エネルギーイオン注入装置は、少なくともビーム輸送ラインユニットに含まれる各装置が電場式のため、装置構成の簡略化や電源の低出力化が可能となる。
図16(a)は、本実施の形態に係るビーム整形器32からビーム走査器34までの概略構成を示す上面図、図16(b)は、本実施の形態に係るビーム整形器32からビーム走査器34までの概略構成を示す側面図である。
図16(a)、図16(b)に示すように、電場式のビーム走査器34は、一対の偏向電極87a,87bを有している。また、偏向電極87a,87bの上方と下方には、グランド遮蔽板89が配置されている。グランド遮蔽板89は、ビームに付随する二次電子が、外側から回り込んでビーム走査器34の電極に流れ込むことを防いでいる。外側から一対の偏向電極87a,87bの平行部の間隔をW1、偏向電極87a,87bのビーム進行方向の長さをL1とすると、L1≧5W1を満たすように構成されてもよい。また、電源(増幅器)は、0.5Hz〜4kHzの範囲の任意の走査周波数で動作が可能なように構成されてもよい。また、平行部のない一対の偏向電極87a,87bの間隔をD1とすると、L1≧5D1を満たすように構成されていてもよい。
一般に高エネルギービームを十分に偏向するためには,ビームを、高い電界の中を長い距離通過させる必要がある。高い電界を作るためには高い電圧を利用するか電極間隔を狭める必要がある。また、ビーム走査器では、電圧を1kHz程度の周波数で変化させることのできる高圧電源を使用する必要があるが,この種の電源で高い電圧を出力できるものを一般に入手することは困難である。したがって、ビーム走査器における偏向電極の間隔を狭める必要がある。
偏向電極87a,87bの間隔は、通過させるビームの幅より大きくなければならない。これによって、電極の最低間隔が決定される。また、電極の長さは、ビームエネルギー、電界および偏向する角度によって決まる。また、ビームエネルギーは装置仕様で決められている。電界は上の条件により決まる。よって、偏向する角度を決めることで電極の長さが決まる。
例えば、本実施の形態に係るビーム走査器における左右スキャナー電極の間隔は60mm程度(ビームサイズ最大40mmを想定、電極間の耐圧については問題がない程度。)、スキャナー電極のビーム進行方向幅は460mm程度と長くした。また、スキャン電圧±30kV、走査周波数は0.5〜4kHz程度である。
電場式のビーム走査器34を有する一対の偏向電極87a,87bの平行部の間隔をW1、偏向電極の高さをH1とすると、H1≧1.5W1を満たすように構成されていてもよい。ビームの全体にわたって均一な走査を行うためには,スキャナー中の電界は上下方向に一様になっている必要がある。そこで、電極高さが十分に高い偏向電極を用いることで、電界を一様にすることができる。
偏向電極87a(87b)は、長方形のロングプレート形状であり、他の偏向電極87b(87a)との対向面が平面または曲面で構成されており、対向面と反対側の外側面は段差形状となるように構成されていてもよい。
また、偏向電極87a(87b)は、他の偏向電極87b(87a)との対向面が二段平面で構成されており、対向面と反対側の外側面は段差形状となるように構成されていてもよい。これにより、加工性(製作性)が向上する。このように、外側面を簡易な平面構造とすることで加工費用を低減することができる。また、段差を付けてより多く外側を削ることにより部品重量が軽なり、取付け作業時の作業者負担を軽減することができる。
また、偏向電極87b(87a)は、他の偏向電極87b(87a)との対向面がノコギリ刃状に加工された段差で構成されていてもよい。これにより、メタルコンタミネーションの発生を抑えることができる。
なお、上述のように、ビーム走査器の偏向電極の間隔は狭い方が望ましい。しかしながら、スキャンされたビームは幅を持っているため、電極間隔が狭すぎると電極にビームが当たってしまう。そこで、一対の偏向電極は、スキャン幅がまだ広がっていない上流側の間隔が狭くなるように上流側の形状は互いに平行な直線構造とし、スキャン幅の広がる下流に向かって約±5度で広がっていく形状とした。広がる部分を曲線や段差にすることもできるが、直線構造は加工がより簡易であり低コストで作ることができる。
高エネルギーイオン注入装置100は、電場式のビーム走査器34のビームライン下流側に配置され、イオンビームの通過域に開口を有する上流側のグランド電極78aおよび下流側のグランド電極78bと、上流側のグランド電極78aと下流側のグランド電極78bとの間に配置されているサプレッション電極74と、を更に備えている。
図17は、下流側グランド電極の開口幅とサプレッション電極の開口幅と上流側グランド電極の開口幅との大きさの関係を説明するための模式図である。上流側のグランド電極78aの開口78a1の幅をW1、サプレッション電極74の開口74a1の幅をW2、下流側のグランド電極78bの開口78b1の幅をW3、とすると、各電極は、W1≦W2≦W32を満たすように構成されていてもよい。スキャンされたビームは、下流に向かうにつれて横方向に広がるため、サプレッション電極74、グランド電極78a,78bのそれぞれの開口幅を上述の関係を満たすように構成することで、スキャンされたビームが各部材に当たらないようにできる。
電場式のビーム走査器34は、図16(a)に示すように、偏向角度が±5°以下であってもよい。これにより、下流にある電場式のビーム平行化器36(図6参照)への入射角が小さくなり、収差の発生を抑えられる。収差(ビーム平行化器中心と端部との焦点距離の差)はこの入射角の2乗に比例して大きくなる。
電場式のビーム走査器34と電場式のビーム平行化器36との間に、電場式のビーム走査器34の偏向角度を小さくするためのビーム走査空間96が設けられている。これにより、電場式のビーム走査器34と電場式のビーム平行化器36との間隔を広げることができる。そのため、電場式のビーム走査器34における偏向角度が小さくても、スキャンされたビームが電場式のビーム平行化器36に到達するまでに十分に広がる。そのため、電場式のビーム平行化器36でのビームの収差を抑えつつ十分な広さのスキャン範囲を確保できる。
電場式のビーム走査器34が収納され、ビーム走査空間96が設けられている真空容器91と、真空容器91に接続され、真空容器の内部の気体を排出するための真空ポンプ(不図示)と、を備えてもよい。例えば、電場式ビーム走査器の位置に真空度確保のためのターボ分子ポンプを設け、電場式ビーム走査器の直下にターボポンプを配置してもよい。これにより、電場式のビーム走査器34のビームライン真空度を確保することができる。また、電場式のビーム走査器34近傍のアパチャや電極等にイオンが衝突することで発生するアウトガスを効率よく排気できる。このように、発生したガスを発生源付近でできるだけ多く取り除くことができれば周囲に拡散するガスが少なくなる。また、不要なガスがなければそのガスに邪魔されずビームが通過できるため、ビームの輸送効率が向上する。
電場式のビーム平行化器36(図6参照)は、ビーム走査空間96を挟んで上流側に配置されている電場式のビーム走査器34が有する一対の偏向電極87a,87bの間の領域に焦点Fが位置するように構成される。走査範囲が一定のとき、ビーム平行化器の収差はその焦点距離の2乗に反比例するため、焦点距離の長いビーム平行化器36を設置することで、収差を抑えることができる。
図18は、ビーム平行化器の他の例を模式的に示す図である。図18に示す電場式の多段式のビーム平行化器136は、多段の平行化レンズ84a,84b,84cを有している。これにより、スキャンされたビームを徐々に平行化することができるため、電場式のビーム走査器34と電場式のビーム平行化器136との間隔、例えば上述のビーム走査空間96の長さ、を短くできる。そのため、ビームライン全長を短縮できる。
本実施の形態に係る高エネルギーイオン注入装置100は、図1に示すように、イオン源10を有するイオンビーム生成ユニット12および高エネルギー多段直線加速ユニット14を含む、長い軌道を有する第1セクションと、ビーム偏向ユニット16を含む偏向部による方向変換のための第2セクションと、ビーム輸送ラインユニット18を含む、長い軌道を有する第3セクションと、により高エネルギーイオン注入ビームラインを構成し、第1セクションと第3セクションとを対向させて配置して、対向する長直線部を有するU字状の装置レイアウトを構成した。
また、高エネルギーイオン注入装置100は、図5に示すように、イオンビーム生成ユニット12と高エネルギー多段直線加速ユニット14との間に、イオンビームの総ビーム電流量を測定するインジェクターファラデーカップ80aを、ビームラインへの挿入退避が可能なように設けた。
同様に、ビーム偏向ユニット16とビーム輸送ラインユニット18との間に、イオンビームの総ビーム電流量を測定するリゾルバーファラデーカップ80bを、ビームラインへの挿入退避が可能なように設けた。
また、高エネルギーイオン注入装置100は、図1に示すように、ビーム輸送ラインユニット18の下流側に配置され、イオン注入による処理を行う基板処理供給ユニット20を更に備えている。基板処理供給ユニット20は、図6に示すように、イオン注入位置の後方に、イオンビームの総ビーム電流量を測定する固定式の横長ファラデーカップ126を設けた。
また、高エネルギーイオン注入装置100は、図1等に示すように、イオンビーム生成ユニット12に設けたビーム方向調整部を含む引出電極装置(引き出し電極40:図2参照)と、高エネルギー多段直線加速ユニット14の終端内部に設けた、ビーム方向性並びに収束発散の調整を行う調整部(横収束レンズ64a、縦収束レンズ64b:図5参照)と、エネルギー分析ユニット(ビーム偏向ユニット16:図1参照)に設けた電場式の高エネルギービーム調整部(軌道調整四重極レンズ26:図5参照)と、ビーム輸送ラインユニット18が有する電場式のビーム整形器32および電場式のビーム平行化器36と、を調整することにより、ビーム収束発散量が均質で軌道ずれの少ない方向性が均一なビームを生成し、そのビームを電場式のビーム走査器34に供給するよう構成した。
電場式のビーム走査器34は、図16に示すように、イオンビームを通常のスキャン範囲の更に外側に偏向させて、電場式のビーム平行化器36の手前部に配設された左右いずれか一方のビームダンプ部95a,95bに導くことで、ビームを一時的にダンプできるように構成されていてもよい。
また、電場式のビーム走査器34は、走査範囲の左右の偏りを補正するためのオフセット電圧(電界がゼロになる位置を左右の中心からずらすための一定電圧)が印加できるように構成されている。また、ビーム走査器34は、オフセット電圧を、電場式のビーム走査器34の中心付近を通るように調整されたビームがウェハに到達したときの位置ずれから逆算して決められるようにし、注入角度・注入位置微調整システムの一部を構成するようにした。
上述の実施の形態では、電場式のビーム平行化器を例に説明したが、場合によっては磁場式のビーム平行化器を採用してもよい。
図19は、本発明のある実施形態に係るビーム電流調整装置300を示す模式図である。詳しくは後述するが、ビーム電流調整装置300は、可変アパチャー302及び制御装置304を備える。
ビーム電流調整装置300は、高エネルギー多段直線加速ユニット14を有する高エネルギーイオン注入装置100に設けられている。ビーム電流調整装置300は、イオンビーム生成ユニット12と高エネルギー多段直線加速ユニット14との間に配設されている。高エネルギー多段直線加速ユニット14は、図1及び図3等を参照して説明した構成と同様の構成を備えていてもよい。イオンビーム生成ユニット12は、図1及び図2(a)等を参照して説明した構成と同様の構成を備えていてもよい。また、上述のように、高エネルギーイオン注入装置100は、高エネルギー多段直線加速ユニット14により加速された高エネルギーイオンビームを基板に向けて方向変換するビーム偏向ユニット16を備えてもよい。
図19にはイオンビームの中心軌道を図5(a)と同様に符号Lで示す。中心軌道Lは一点鎖線で図示する。以下では説明の便宜上、高エネルギー多段直線加速ユニット14における中心軌道Lに沿う方向をZ方向と呼ぶことがある。Z方向はイオンビーム輸送方向と呼ぶこともできる。Z方向に関してイオン源10に近い側を上流と呼び、イオン源10から遠い側を下流と呼ぶことがある。この実施形態においては、Z方向は水平面内にある。水平面内においてZ方向に垂直な方向をY方向と呼び、Z方向及びY方向に垂直な方向をX方向と呼ぶことがある。また、X方向を横方向と呼び、Y方向を縦方向と呼ぶこともある。
高エネルギー多段直線加速ユニット14の入口部には、注入ビーム電流を測定するために可変アパチャー302の下流に配設されうるビーム電流検出器、例えばインジェクターファラデーカップ80aが設けられている。ここで、注入ビーム電流とは、基板(例えば、図1に示すウェハ200)に注入されるビーム電流量、つまり、基板レベル(言い換えれば基板表面)でのビーム電流量をいう。ビーム電流検出器は中心軌道Lに出し入れ可能に構成されており、測定のために中心軌道Lに配置されるときイオンビームの全体(つまりビームのXY断面の全域)を受けるよう構成されている。よって、ビーム電流検出器は、ビーム電流の総量を測定するよう構成されている。
また、高エネルギー多段直線加速ユニット14の入口部には、インジェクターファラデーカップ80aの下流に入口Qレンズ174が設けられている。入口Qレンズ174は、高エネルギー多段直線加速ユニット14において最も上流に配設されているビームライン構成要素であってもよい。ここで、ビームライン構成要素とは、例えば、偏向、加速、減速、整形、走査などを含む操作のためにイオンビームに電気的及び/または磁気的に作用する高エネルギーイオン注入装置100の構成要素をいう。入口Qレンズ174の下流に高周波共振器14a(図3参照)が設けられている。
イオンビーム生成ユニット12は、少なくとも1つのビームライン構成要素、例えば質量分析装置22を備える。図示されるように質量分析磁石22aの偏曲軌道はXZ面にあり、破線で図示するように、質量分析磁石22aは、高エネルギー多段直線加速ユニット14の上流にイオンビームの収束点Pを形成するよう構成されている。
イオンビームの収束点Pは、質量分析磁石22aとその下流のビームライン構成要素(例えば入口Qレンズ174)との間に形成される。したがって、収束点Pが形成される「高エネルギー多段直線加速ユニット14の上流」とは、高エネルギー多段直線加速ユニット14の最上流部または入口部を含んでもよい。つまり、図19においては収束点Pが高エネルギー多段直線加速ユニット14の外にあるが、収束点Pは、高エネルギー多段直線加速ユニット14の中(例えば、高エネルギー多段直線加速ユニット14の入口部)にあってもよい。
図20は、イオンビームの収束点Pにおけるイオンビーム断面306を例示する図である。図20に示されるイオンビーム断面306は、収束点Pにおけるイオンビーム輸送方向に垂直な平面(つまりXY面)によるイオンビームの断面である。
質量分析磁石22aは、収束点Pにおいてイオンビームを横方向(つまりX方向)に関して収束する。よって、収束点Pは横方向ビーム収束点である。
したがって、イオンビーム断面306は縦方向(Y方向)に細長い形状を有する。イオンビーム断面306は収束点Pにおいて、横方向に第1ビーム幅W1を有し、縦方向に第2ビーム幅W2を有する。第2ビーム幅W2は、第1ビーム幅W1より長い。イオンビーム断面306の形状は、図示されるように、例えば楕円である。第1ビーム幅W1は短径に相当し、第2ビーム幅W2は長径に相当する。
加えて、図20には、イオンビーム断面306における強度分布を等高線で示す。また、この等高線に相当するY方向の強度分布308をイオンビーム断面306の右側に図示し、X方向の強度分布310をイオンビーム断面306の下側に図示する。図からわかるように、イオンビーム断面306の外周部においては、Y方向の強度分布308の勾配がX方向の強度分布310の勾配よりも緩やかである。
また、図20には、本実施形態に係る縦方向のビーム幅制限(縦締めともいう)を実線の矢印Vで模式的に示し、横方向のビーム幅制限(横締めともいう)を破線の矢印Hで模式的に示す。これらの詳細は後述する。
図19に示されるように、質量分析装置22は、質量分析スリット22bを備える。本実施形態においては、質量分析スリット22bは固定式であり、質量分析スリット22bのスリット位置及びスリット幅は固定されている。Z方向に関して質量分析スリット22bは収束点Pに配置されている。また、XY面においては質量分析スリット22bはその開口の中心が中心軌道Lに一致するように配置されている。質量分析スリット22bの横方向スリット幅は、所望の質量分解能を与えるよう定められている。また、質量分析スリット22bのスリット形状は例えば、収束点Pにおけるイオンビーム断面306の形状に一致していてもよく、従って縦長の楕円であってもよい。
なお、ある実施形態においては、質量分析装置22は、複数の質量分析スリット22bを備えてもよい。複数の質量分析スリット22bはそれぞれが異なる位置及び/または幅のスリットを有してもよい。また、複数の質量分析スリット22bは異なる形状のスリットを有してもよい。必要に応じて複数の質量分析スリット22bのうち選択されたある1つのスリットが中心軌道Lに配置され使用されてもよい。
また、ある実施形態においては、質量分析スリット22bは可変式であってもよい。この場合、質量分析スリット22bはスリット位置及び/またはスリット幅を、例えば、収束点Pにおけるイオンビームの収束方向に調整可能に構成されていてもよい。このようなスリット位置及び/またはスリット幅の調整がイオンビームの横締めに用いられてもよい。
ビーム電流調整装置300は、隣接して配置されている2つのビームライン構成要素(例えば、質量分析磁石22a及び入口Qレンズ174)の間に配設されている。ビーム電流調整装置300の可変アパチャー302は、質量分析スリット22bの直後に配置されている。可変アパチャー302は、質量分析スリット22bの下流にて質量分析スリット22bに接触し又はわずかな隙間を有して隣接して設けられている。このように、可変アパチャー302は、収束点Pの近傍に配置されている。なお、可変アパチャー302が収束点Pに配置されていてもよく、その場合、質量分析スリット22bは可変アパチャー302の直前に配置され、収束点Pの近傍に配置されていてもよい。
ここで、可変アパチャー302が配置される「質量分析スリット22bの直後」とは、質量分析スリット22bと可変アパチャー302との間にビームライン構成要素(すなわち、上述のように、イオンビームに電気的及び/または磁気的に作用する構成要素)が介在しないことをいう。したがって、可変アパチャー302は、質量分析スリット22bと高エネルギー多段直線加速ユニット14(又は入口Qレンズ174)との間の任意のZ方向位置に設けられていてもよい。このようにして、可変アパチャー302は、収束点Pまたはその近傍に配置されている。
図21(a)及び図21(b)は、本実施形態に係る可変アパチャー302を示す模式図である。図21(a)は、可変アパチャー302を開放した状態を示し、図21(b)は、可変アパチャー302をある程度閉じた状態を示す。
可変アパチャー302は、Y方向に移動可能に構成されている一組のアパチャープレート312を備える。図中の矢印Vのように、一組のアパチャープレート312は中心軌道Lを含む水平面に対し対称に移動するよう構成されており、可変アパチャー302にはそのための駆動部(図示せず)が設けられている。すなわち、一方のアパチャープレート312が中心軌道Lに近づくように+Y方向にある長さだけ移動するとき、他方のアパチャープレート312も中心軌道Lに近づくように−Y方向にその長さだけ移動する。このように、一組のアパチャープレート312は互いに反対方向に等距離の移動をする。
可変アパチャー302は、例えば、CVA(Continuously Variable Aperture)であってもよい。CVAの一構成例は、例えば、特開2000−243341号公報及び特開2000−243342号公報に開示されており、これらの文献の全体を参照により本願明細書に援用する。
なお、ある実施形態においては、可変アパチャー302は、収束点Pにおけるイオンビームの収束方向に垂直な方向に移動可能に構成されている少なくとも1つのアパチャープレートを備えてもよい。したがって、可変アパチャー302は例えば、収束方向に垂直な方向に移動可能に構成されている可動アパチャープレートと、固定アパチャープレートと、を含む一組のアパチャープレートを備えてもよい。
また、ある実施形態においては、可変アパチャー302は、イオンビームの収束方向に平行で輸送方向に垂直な回転軸まわりに回動可能に構成されている少なくとも1つのアパチャープレートを備えてもよい。
図21(a)及び図21(b)に示されるように、アパチャープレート312間に、イオンビームを通すアパチャー幅314が形成される。アパチャープレート312が移動することにより、アパチャー幅314が変更される。上述のようにアパチャープレート312はY方向に移動するから、アパチャー幅314はY方向に可変である。イオンビームがアパチャー幅314を通過することにより、Y方向のビーム幅が制限される。すなわち、イオンビーム断面306(図20参照)のY方向両端部分(アパチャー幅314の外側部分)がアパチャープレート312により遮蔽され、アパチャー幅314に相当するイオンビーム断面306の中央部がビームラインの下流に向かう。
このようにして、可変アパチャー302を通過したイオンビームは、可変アパチャー302に入射するイオンビームに比べて、ビーム電流が低減される。よって、アパチャー幅314を変更することにより、ビーム電流を調整することができる。可変アパチャー302を通過することにより収束方向に垂直な方向に調整されたビーム幅を有するイオンビームが、高エネルギー多段直線加速ユニット14(図19参照)に与えられる。
本実施形態に係る高エネルギーイオン注入装置100は、可変アパチャー302によって注入ビーム電流が決定されるよう構成されている。高エネルギーイオン注入装置100は、基板に注入されるビーム電流量がアパチャー幅314に応じて決定されるように設計されている。よって、アパチャー幅314を適切に設定することにより、所望の注入ビーム電流を基板に与えるようイオンビームを制御することができる。
可変アパチャー302は、ビーム電流検出器、例えばインジェクターファラデーカップ80aにより測定されたビーム電流に基づいて注入ビーム電流を決定するよう構成されている。そのため、制御装置304(図19参照)は、ビーム電流検出器による測定電流に基づいてアパチャー幅314を設定するよう構成されている。例えば、制御装置304は、測定電流を目標の注入ビーム電流に一致させるようにアパチャー幅314を変更するよう構成されている。
なお、制御装置304は、高エネルギーイオン注入装置100を制御するための制御装置またはその一部であってもよいし、そうした制御装置とは別に設けられたビーム電流調整装置300のための専用のコントローラであってもよい。
ある典型的な構成においては、イオンビームは、質量分析磁石の偏曲軌道を含む平面に垂直な方向に長い縦長ビームとして輸送され、質量分析磁石の出口に配置された横幅制限アパチャーによって質量分解能が決定されている。この横幅制限アパチャーは、質量分解能を決定するだけでなくビーム電流を調整する機能も果たしており、結果的にビーム電流が横締めによって調整されている。
したがって、こうした典型的な構成においては、アパチャーの調整は、質量分解能とビーム電流の両方を考慮して行わなければならず、これらをともに最適に設定することは容易ではない。例えば、精細な質量分解能を実現するためにアパチャーを狭くすると、ビーム電流は小さくなる。よって、精細な質量分解能と大ビーム電流とを両立するのは難しい。
また、図20を参照して説明したように、縦長ビームの横方向強度分布は勾配が大きいので、アパチャー横幅に対してビーム電流は敏感である。わずかな横幅の変更によって大きなビーム電流の変動が引き起こされるので、目標のビーム電流に制御することが容易でない。
さらに、アパチャー横幅の中心とビーム中心との間にずれがあった場合には、ビームの右側と左側とで非対称にビームが遮蔽されるため、アパチャー通過後のビームは通過前と異なる位置にビーム中心を有することになる。ビームの横方向強度分布の勾配が大きいので、アパチャー通過前後のビーム中心の位置ずれ量も大きくなりやすい。位置ずれ量を小さくするためにアパチャー横幅の中心とアパチャー通過前のビーム中心とを揃えるようビームの調整作業が必要となりうる。こうした作業はウェハ200へのイオン注入処理に装置を使用できる時間の減少を招くので、装置の生産性に影響する。
しかし、本実施形態においては、可変アパチャー302は、注入ビーム電流を制御するために、収束点Pにおけるイオンビームの収束方向に垂直な方向のビーム幅を調整するよう構成されている。注入ビーム電流が可変アパチャー302の縦締めによって調整される。図20を参照して説明したように、イオンビーム断面306は外周部において縦方向強度分布が横方向強度分布に比べて緩やかな勾配を有するので、アパチャー幅314の変化に対して注入ビーム電流が穏やかに変化する。また、可変アパチャー302は、質量分析スリット22bとは別に設けられている。
したがって、本実施形態によると、アパチャー幅314の変更による目標の注入ビーム電流への調整が容易である。縦締めを採用したことにより、注入ビーム電流の制御性が向上する。
また、本実施形態によると、注入ビーム電流を質量分解能とは独立に調整可能であるので、それぞれを最適に設定することができる。
さらに、本実施形態によると、アパチャー通過前後のビーム中心の位置ずれ量は比較的小さくなるので、上述のようなビームの調整作業が必要とされない点で有利である。ビーム中心の位置ずれ量は基板レベルでのビームの位置誤差及び/または角度誤差に関連し、ビームの輸送距離が長いほど当初の位置ずれ量が基板レベルでの大きな誤差を生む。したがって、ビーム中心の位置ずれ量が小さいことは、高エネルギーイオン注入装置100のように長いビームラインを有する注入装置にとって有利である。
また、本実施形態のように、収束方向と垂直な方向に、すなわちイオンビーム断面306において強度分布の勾配が緩やかである方向にビーム幅を制限することには、次の利点もある。それは、ビーム電流調整装置300から出るイオンビームのビーム電流量が、ビーム電流調整装置300に入射するイオンビームの変動による影響を受けにくいということである。例えばイオン源10において何らかの変動があったとしても、そのときのイオンビーム断面306の縦方向強度分布への影響は横方向強度分布への影響に比べて小さいと考えられるからである。
よって、本実施形態によると、質量分解能など他のビーム品質に影響を与えることなく基板レベルでのビーム電流を短時間で調整することができるので、生産性の向上に寄与するイオン注入装置を提供することができる。特に、枚葉式の高エネルギーイオン注入装置100において、生産性を向上することができる。
ある実施形態においては、ビーム電流調整装置300は、ビーム電流量のみが異なる連続注入(いわゆるチェーンレシピ)に適応するよう構成されていてもよい。そのため、制御装置304は、第1のイオン注入処理についての第1の注入レシピと後続する第2のイオン注入処理についての第2の注入レシピとで注入ビーム電流のみが異なる場合に、第1のイオン注入処理と第2のイオン注入処理との合間に収束方向に垂直な方向について可変アパチャー302によりビーム幅を調整し、第1のイオン注入処理に連続して第2のイオン注入処理を実行するよう構成されていてもよい。このようにすれば、ビーム調整作業のために注入作業を停滞させることなく次のイオン注入処理を開始することができるので、生産性の向上に役立つ。
なお、この場合、制御装置304は、必要に応じて、注入ビーム電流以外の少なくとも1つの注入条件を、第1のイオン注入処理と第2のイオン注入処理との合間に調整し、第1のイオン注入処理に連続して第2のイオン注入処理を実行するよう構成されていてもよい。
以上、本発明を実施形態にもとづいて説明した。本発明は上記実施形態に限定されず、種々の設計変更が可能であり、様々な変形例が可能であること、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは、当業者に理解されるところである。
上述の実施形態においては、イオンビームの収束点Pを形成するビームライン構成要素が高エネルギー多段直線加速ユニット14の上流に配設されているが、本発明はこれに限られない。ある実施形態においては、イオンビームの収束点を形成するビームライン構成要素が高エネルギー多段直線加速ユニット14の下流に配設され、その収束点またはその近傍に可変アパチャーが設けられていてもよい。
例えば、ビーム電流調整装置の可変アパチャー302は、高エネルギー多段直線加速ユニット14と、高エネルギー多段直線加速ユニット14により加速された高エネルギーイオンビームのためのビーム整形器32との間に配設されていてもよい。この場合、図22に示されるように、可変アパチャー302は、エネルギー分析スリット28の直後に配置されていてもよい。
また、ビーム電流調整装置の可変アパチャー302は、高エネルギー多段直線加速ユニット14と、高エネルギー多段直線加速ユニット14により加速された高エネルギーイオンビームのためのビーム走査器34との間に配設されていてもよい。この場合、図23に示されるように、可変アパチャー302は、ビーム走査器34のグランド電極76aと走査電極316との間に配置されていてもよい。
上述の実施形態においては、可変アパチャー302は質量分析スリット22bの直後に配置されているが、本発明はこれに限られない。ある実施形態においては、可変アパチャー302は、質量分析磁石22aと質量分析スリット22bとの間に配置されていてもよい。この場合、可変アパチャー302は、例えば、質量分析スリット22bの直前に配置されていてもよい。
上述の実施形態においては、ビーム電流調整装置300は高エネルギーイオン注入装置100に設けられているが、本発明はこれに限られない。ある実施形態においては、ビーム電流調整装置300は、高エネルギー多段直線加速ユニット14を有しないイオン注入装置に設けられていてもよい。
10 イオン源、 12 イオンビーム生成ユニット、 14 高エネルギー多段直線加速ユニット、 14a 高周波共振器、 15a 第1線形加速器、 15b 第2線形加速器、 16 ビーム偏向ユニット、 18 ビーム輸送ラインユニット、 20 基板処理供給ユニット、 22 質量分析装置、 22a 質量分析磁石、 22b 質量分析スリット、 24 エネルギー分析電磁石、 26 四重極レンズ、 27 エネルギー幅制限スリット、 28 エネルギー分析スリット、 30 偏向電磁石、 32 ビーム整形器、 34 ビーム走査器、 36 ビーム平行化器、 38 最終エネルギーフィルター、 42 サプレッション電極、 44 イオン源高圧電源、 48 ターミナル、 50 電源、 52 入力装置、 54 制御演算装置、 56 振幅制御装置、 58 位相制御装置、 60 周波数制御装置、 62 高周波電源、 64 収束発散レンズ、 64a 横収束レンズ、 64b 縦収束レンズ、 66 収束発散レンズ電源、 68 表示装置、 70 記憶装置、 74 サプレッション電極、 74a 開口、 76a グランド電極、 80a,80b ファラデーカップ、 82 スキャナーハウジング、 84 平行化レンズ、 87 アッパーヨーク、 87a,87b 偏向電極、 88 ロアーヨーク、 89 グランド遮蔽板、 90 負電源、 91 真空容器、 91a 上コイル、 91b 下コイル、 92a 開閉装置、 93 下ポール、 94 最終エネルギーフィルター、 95a ビームダンプ部、 96 ビーム走査空間、 100 高エネルギーイオン注入装置、 300 ビーム電流調整装置、 302 可変アパチャー、 304 制御装置、 306 イオンビーム断面、 312 アパチャープレート、 314 アパチャー幅。

Claims (16)

  1. 高エネルギー多段直線加速ユニットを有する高エネルギーイオン注入装置であって、
    前記高エネルギー多段直線加速ユニットの上流または下流に配設されており、イオンビームの収束点を形成するビームライン構成要素と、
    前記収束点またはその近傍に配置されており、注入ビーム電流を制御するために、前記収束点における前記イオンビームの収束方向に垂直な方向のビーム幅を調整するよう構成されている可変アパチャーと、を備えることを特徴とする高エネルギーイオン注入装置。
  2. 前記ビームライン構成要素は、前記収束点を前記高エネルギー多段直線加速ユニットの上流に形成するよう配設されており、
    前記可変アパチャーは、前記可変アパチャーを通過することにより前記収束方向に垂直な方向に調整されたビーム幅を有するイオンビームが前記高エネルギー多段直線加速ユニットに与えられるよう前記ビームライン構成要素の下流に配置されていることを特徴とする請求項1に記載の高エネルギーイオン注入装置。
  3. 前記ビームライン構成要素は、質量分析スリットを備える質量分析装置であり、前記可変アパチャーは、前記質量分析スリットの直後に配置されていることを特徴とする請求項1または2に記載の高エネルギーイオン注入装置。
  4. 第1のイオン注入処理についての第1の注入レシピと後続する第2のイオン注入処理についての第2の注入レシピとで前記注入ビーム電流が異なる場合に、前記第1のイオン注入処理と前記第2のイオン注入処理との合間に前記収束方向に垂直な方向について前記可変アパチャーにより前記ビーム幅を調整し、前記第1のイオン注入処理に連続して前記第2のイオン注入処理を実行するよう構成されている制御装置をさらに備えることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の高エネルギーイオン注入装置。
  5. 前記高エネルギー多段直線加速ユニットにより加速された高エネルギーイオンビームのためのビーム整形器をさらに備え、
    前記可変アパチャーは、前記高エネルギー多段直線加速ユニットと前記ビーム整形器との間に配設されていることを特徴とする請求項1に記載の高エネルギーイオン注入装置。
  6. 前記高エネルギー多段直線加速ユニットにより加速された高エネルギーイオンビームのためのビーム走査器をさらに備え、
    前記可変アパチャーは、前記高エネルギー多段直線加速ユニットと前記ビーム走査器との間に配設されていることを特徴とする請求項1に記載の高エネルギーイオン注入装置。
  7. 前記可変アパチャーによって前記注入ビーム電流が決定されるよう構成されていることを特徴とする請求項1から6のいずれかに記載の高エネルギーイオン注入装置。
  8. 前記注入ビーム電流を測定するよう前記可変アパチャーの下流に配設されうるビーム電流検出器をさらに備え、
    前記可変アパチャーは、前記ビーム電流検出器により測定されたビーム電流に基づいて前記注入ビーム電流を決定するよう構成されていることを特徴とする請求項7に記載の高エネルギーイオン注入装置。
  9. 前記可変アパチャーは、質量分析スリットの直前に配置されていることを特徴とする請求項1または2に記載の高エネルギーイオン注入装置。
  10. 前記質量分析スリットは、固定のスリットを有することを特徴とする請求項3または9に記載の高エネルギーイオン注入装置。
  11. 前記質量分析スリットは、前記収束方向にスリットの位置及び/または幅を調整可能に構成されていることを特徴とする請求項3または9に記載の高エネルギーイオン注入装置。
  12. 前記可変アパチャーは、前記収束方向に垂直な方向に移動可能に構成されている少なくとも1つのアパチャープレートを備えることを特徴とする請求項1から11のいずれかに記載の高エネルギーイオン注入装置。
  13. 前記高エネルギー多段直線加速ユニットにより加速された高エネルギーイオンビームを基板に向けて方向変換する高エネルギービームの偏向ユニットをさらに備えることを特徴とする請求項1から12のいずれかに記載の高エネルギーイオン注入装置。
  14. イオン注入装置のためのビーム電流調整装置であって、
    イオンビームの収束点またはその近傍に配置されており、注入ビーム電流を制御するために、前記収束点における前記イオンビームの収束方向に垂直な方向のビーム幅を調整するよう構成されている可変アパチャーを備えることを特徴とするビーム電流調整装置。
  15. 前記可変アパチャーは、質量分析スリットの直後に配置されていることを特徴とする請求項14に記載のビーム電流調整装置。
  16. 高エネルギー多段直線加速ユニットを有する高エネルギーイオン注入装置のためのビーム電流調整方法であって、
    前記高エネルギー多段直線加速ユニットの上流または下流に形成される収束点にイオンビームを収束することと、
    前記収束点またはその近傍に配置されている可変アパチャーにより、注入ビーム電流を制御するために、前記イオンビームの収束方向に垂直な方向のビーム幅を調整することと、を備えることを特徴とする方法。
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