JP2015102945A - 画像回復フィルタの生成方法、画像処理方法、撮像装置、画像処理装置 - Google Patents

画像回復フィルタの生成方法、画像処理方法、撮像装置、画像処理装置 Download PDF

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Abstract

【課題】画像回復精度を維持し、オーバーフローを防止すること【解決手段】撮影光学系101のOTFに基づいて固定小数点演算により、画像回復をする画像回復フィルタを生成する方法は、目標回復ゲイン値Gを、固定小数点演算で演算可能な最大値をデータ点数で除算することによって算出される回復ゲインリミット値Gmを超えないように設定するS104と、S104によって設定された目標回復ゲイン値に基づいて画像回復フィルタの周波数特性を生成するS106を有する。【選択図】図1

Description

本発明は、画像回復を行う画像処理に関する。
撮影光学系の収差等の影響により、撮影光学系を介して撮影された画像はぼけて劣化するため、これを補正する画像回復は従来から知られている。画像回復では、ソフトウエアによる演算とハードウエアによる演算が考えられる。このうちソフトウエアは、一般には、パーソナルコンピュータ(PC)を必要とするため、撮像装置でも画像回復を行いたい場合にはハードウエアによる演算が有利である。
ハードウエアによる演算は整数演算であり、16ビットや32ビットなどで処理可能な桁数が決定される。画像回復では正負の符号や小数点以下も使用されるため、例えば、最初のビットで±の符号を表現し、残りのビットにおける整数部と小数部の境目(小数点の位置)を固定する固定小数点演算を使用することを考える。すると、整数部の桁を超える演算はオーバーフローとなる。このオーバーフローは、特に、画像回復フィルタを生成する際の逆フーリエ変換において発生し易い。
特許文献1は、入力データに対して、固定ビット長の固定小数点演算で高速フーリエ変換(FFT)を行う複数の演算部を有するFFT演算装置を開示している。このFFT演算装置は、演算部の少なくとも1つの演算データに対してビットシフトを行い、演算部の少なくとも1つは自身の桁溢れを検出する機能を有し、何れかの演算部で桁溢れが検出された場合にビットシフト量を調整する。
特開2011−60177号公報
しかしながら、特許文献1の手法では計算中に小数部のビット割り当てが変更されてしまうため、計算精度が保証されないという課題がある。
本発明は、画像回復精度を維持し、オーバーフローを防止することが可能な画像処理方法、撮像装置、画像処理装置を提供することを例示的な目的とする。
本発明の画像回復フィルタの生成方法は、光学系を介して撮影された画像の劣化を補正するための画像回復フィルタを生成する方法であって、前記光学系の光学伝達関数の絶対値の目標回復度合を表す目標回復ゲイン値を、固定小数点演算で演算可能な最大値を前記光学伝達関数のデータ点数で除算することによって算出される回復ゲインリミット値を超えないように設定する第1ステップと、前記第1ステップによって設定された前記目標回復ゲイン値に基づいて前記画像回復フィルタの周波数特性を前記固定小数点演算により生成する第2ステップと、を有することを特徴とする。
本発明によれば、画像回復精度を維持し、オーバーフローを防止することが可能な画像処理方法、撮像装置、画像処理装置を提供することができる。
本実施形態の画像回復処理を示すフローチャートである。(実施例1、2) 図1に示す画像回復処理を実行する撮像装置のブロック図である。(実施例1、2) 本発明における画像回復処理の光学伝達関数の逆特性に基づいた周波数特性の一例を示す図である。(実施例1、2) 本発明における周波数変換部におけるビット数割り当ての一例を示す図である。(実施例1、2) 本発明の画像回復処理のフローチャートである。(実施例1) 本発明の画像回復処理のフローチャートである。(実施例2)
撮像光学系で発生する回折や収差等の影響により、1点から発生した光が1点に収束せず、PSF(点像強度分布関数)と呼ばれる微小な広がりを持つようになる。この結果、撮影光学系を介して撮影された画像はぼけて解像度が劣化する。この画像劣化を補正する従来の画像回復は以下の通りである。
実空間(x,y)上で、光学系による劣化を受ける前の画像をf(x,y)、PSFをh(x,y)、劣化した画像をg(x,y)とすると、次式が成立する。
g(x,y)=∫∫f(X,Y)*h(x−X,y−Y)dXdY ・・・(1)
(1)式にフーリエ変換を施し、実空間(x,y)から周波数空間(u,v)へ変換すると次式のようになる。
G(u,v)=F(u,v)*H(u,v) ・・・(2)
ここで、F(u,v)はf(x,y)のフーリエ変換、G(u,v)はg(x,y)のフーリエ変換、H(u,v)はh(x,y)のフーリエ変換である。(2)式を変形すると、次式のようになる。
F(u,v)=G(u,v)/H(u,v) ・・・(3)
これは周波数空間上で、劣化画像g(x,y)のフーリエ変換G(u,v)をPSFであるh(x,y)のフーリエ変換H(u,v)で割ることにより、劣化を受ける前の画像f(x,y)のフーリエ変換であるF(u,v)を得ることができることを意味する。従って、F(u,v)にフーリエ逆変換を施せば、劣化前の画像f(x,y)を得ることができる。
しかしながら、この画像回復は、撮像素子によって生じ得るノイズを著しく増幅させ、画像上にリンギングを発生させるおそれがあり、単純な逆特性で除算する手法では良好な画像を得ることが困難である。
そこで、ノイズの増幅を抑制する画像回復手法として、(4)式で表されるウィナーフィルタ(回復ゲイン周波数特性)W(u,v)を用いることが知られている。ここで、H(u,v)はOTF(光学伝達関数)であり、Γはノイズの増幅量を低減するための定数である。対象画像に全くノイズが発生していなくても、増幅率が大きくなり過ぎるとリンギングやエッジの掘り込みが発生し易くなるため、Γの制御は重要である。従って、Γを、増幅率を制御する調整項として利用する。Γは定数ではなくΓ(u,v)として、周波数特性を考慮した調整項としてもよい。
W(u,v)
=1/H(u,v)*|H(u,v)|^2/(|H(u,v)|^2+Γ) ・・・(4)
(4)式を、劣化画像g(x,y)のフーリエ変換G(u,v)に乗算すれば、光学系の回折や収差によって発生したPSFの位相成分を0にし、振幅成分の周波数特性を増幅することで高解像度かつ良好な画像を得ることができる。即ち、ウィナーフィルタを用いた画像回復処理により回復された画像の周波数空間情報をR(u,v)とすると次式が得られる。画像回復フィルタの周波数特性は、光学伝達関数の逆数(逆特性)を利用している。
R(u,v)=G(u,v)*W(u,v) ・・・(5)
W(u,v)を回復ゲイン周波数特性、Γを回復ゲイン調整項と称する。(5)式は、周波数空間上での回復処理であり、実空間で考えれば対象となる領域にシフトインバリアントなフィルタをコンボリューションすることと等価である。
この回復処理は、像高全域に亘って収差が良好に補正されている場合や収差特性の変化が小さい領域に限定すれば精度を維持することができる。しかし、デジタルカメラ等に用いられる撮像光学系は、像高全域での収差変動が大きく、また像高の位置に応じてビネッティングも大きく変動するため、この限りではない。
このため、回復ゲイン周波数特性W(u,v)を、像高毎に実空間上に変換し、実空間画像回復フィルタw(x,y)として像高毎にコンボリューションする必要がある。このとき像高の代表点の実空間画像回復フィルタw(x,y)を生成し、代表点以外は、代表点から補間生成して用いるなどして処理負荷を減らしてもよい。
OTFの逆特性に基づくウィナーフィルタに準じた方式では、(4)式における回復ゲイン調整項Γの制御が重要となる。回復ゲイン調整項Γを大きくすれば回復ゲイン周波数特性W(u,v)が小さくなり、回復ゲイン調整項Γを小さくすれば回復ゲイン周波数特性W(u,v)が大きくなる。
以上を考慮して回復ゲイン周波数特性W(u,v)を設計し、実際の画像回復処理ではこの回復ゲイン周波数特性W(u,v)をフーリエ逆変換して実空間画像回復フィルタw(x,y)を生成する。
従って、変換を用いる画像回復処理では、フーリエ変換またはフーリエ逆変換後のデータがオーバーフローしないように、フーリエ変換またはフーリエ逆変換の対象となるデータの整数部、小数部割り当てを制御する必要がある。
まず、離散フーリエ変換におけるフーリエ変換対を以下のように定義する。
式(6)はフーリエ変換であり、式(7)はフーリエ逆変換である。フーリエ逆変換は1/(MN)でスケーリングされていない場合もあるが、どちらでもよい。また、式中のexp部分を回転因子と呼ぶ。定義によっては回転因子の前の符号が逆である場合もあるが、フーリエ変換対として成立していればよい。
ここでM、Nは2次元データのそれぞれの次元におけるタップ数であり、MとNの積MNをデータ点数とする。
実空間画像回復フィルタw(x,y)を生成するには、式(7)のフーリエ逆変換を用いる。F(u,v)は回復ゲイン周波数特性に相当し、f(x,y)は実空間画像回復フィルタに相当する。ここで、F(u,v)からf(x,y)の最大値を見積もる方法を説明する。簡単のため、F(u),f(x)の一次元フーリエ変換で説明する。
am,bmはそれぞれ回復ゲイン特性の実部、虚部の値である。δ(u−m)はδ関数を位置mシフトすることを意味している。jは虚数単位である。
F(u)を数3のようにおくと、次式が成立する。
ここで、三角不等式を用いると下記が成り立つ。
従って、次式が成立する。
従って、周波数変換部は最大値としてΣΣ|a+jb|を格納でき、更に所望の計算精度の小数点ビット数と符号ビット1ビットを確保する必要がある。若しくは、確保した全体のビット数から符号ビット1ビットと小数点ビット数を除いたビット数にΣΣ|a+jb|が収まるようにaとbを制御しなくてはならない。
図1は、本実施形態の画像処理装置が実行する画像回復処理(画像処理方法)の簡単な処理手順を示すフローチャートであり、「S」はステップを表す。このうち、S102〜S108は画像回復フィルタの生成方法としても機能する。
まず、光学伝達関数情報(OTF情報)を取得する(S102)。OTF情報は、撮影条件、例えば、撮像光学系の焦点距離、F値、撮影距離など、に依存する。OTF情報は、想定する波長、撮影画像上の像高別に複数種類取得してもよい。
次に、OTF情報に対する目標回復ゲイン値Gを、回復ゲインリミット値Gmを超えないように設定する(第1ステップ、S104)。目標回復ゲイン値Gは、回復の強さを表す指標(OTFの絶対値であるMTFの目標回復度合)であり、目標回復ゲイン値Gが大きければ、より劣化した画像も回復することができるが、画像回復フィルタのデータ量も大きくなり、オーバーフローし易くなる。そこで、本実施形態は、Gの上限値としてGmを設定してオーバーフローを防止している。つまり、目標回復ゲインGは、回復ゲインリミット値Gm以下となるようにする。Gmの設定方法については後述する。
次に、OTF情報の逆特性と設定した目標回復ゲイン値Gに基づいて、式(4)に示す回復ゲイン周波数特性W(u,v)を生成する(第2ステップ、S106)。式(4)は、目標回復ゲイン値Gに対して、回復ゲイン調整項Γを制御して回復ゲイン周波数特性W(u,v)を生成する。
次に、生成された回復ゲイン周波数特性W(u,v)をフーリエ逆変換し、実空間画像回復フィルタw(x,y)を生成する(S108)。対象となる画像に対して実空間の画像回復フィルタw(x,y)をコンボリューションすることで回復処理を実行する(第3ステップ、S110)。
図2は、上述した画像処理方法を実行する画像処理回路を備えた撮像装置のブロック図である。撮像装置には、絞り101a及びフォーカスレンズ101bを備えた撮像光学系101が交換可能に装着される。撮影光学系は、被写体の光学像を形成する。絞り101aは、撮像素子102に入射する光量を調整する。フォーカスレンズ101bは、光軸方向に移動して焦点調節を行う。
なお、本発明は本実施形態に限定されるものではなく、撮像光学系が一体化された撮像装置にも適用可能である。撮像光学系101を介して得られた撮影画像は、撮像素子102により光電変換が行われてアナログ信号に変換され、A/D変換器103によりデジタル信号に変換される。
画像処理部(画像処理手段)104は、このデジタル信号に対して、状態検知部107及び記憶部108の各情報を用いて画像処理を行い、画像情報を生成する。
画像処理部104は、画像回復処理回路を有して図1に示すハードウエアによる演算を利用した画像回復も行う。これにより、撮像装置で画像処理を行うことができる。
この場合、OTF情報を交換レンズの不図示のメモリに格納してレンズ制御手段である撮像光学系制御部106からこの情報を取得してもよい。あるいは、カメラ本体の記憶部108が、OTF情報を保持してシステムコントローラ110は撮像光学系制御部106から識別情報(ID情報)を取得して対応するOTF情報を取得してもよい。OTFは、撮影条件に依存するので、状態検知部107において取得した撮影条件情報も同様に記憶部108に保持してもよい。また、記憶部108は、画像回復フィルタの情報や上述した数式の情報、画像回復に必要なプログラムや変数を保持してもよい。
システムコントローラ110は、画像処理部104、表示部105、撮像光学系制御部106、状態検知部107、及び、画像記録媒体109の各部を制御するカメラ制御手段であり、マイクロコンピュータなどから構成される。撮像光学系制御部106は、撮像光学系101の動作を制御し、状態検知部107は、撮像光学系制御部106の情報から撮像光学系101の状態を検知する。システムコントローラ110は、後述する画像回復において判断、設定、決定などを行う。例えば、システムコントローラ110は、入力された目標回復ゲイン値Gが回復ゲインリミット値Gmを超えていないかどうかを判断し、超えていない場合に目標回復ゲイン値Gを記憶部108に設定する。また、後述する実施例1、2では、システムコントローラ110は、画像回復フィルタの周波数特性の絶対値の平均値または絶対値の最大値が、目標回復ゲイン値Gから許容範囲内にあるかどうかを判断する。
なお、本実施形態の画像回復は専用の画像処理装置やPCで実行されることを妨げるものではない。
本実施形態の画像処理方法を実行する画像処理回路は、固定小数点演算で動作するため、ソフトウエアによる演算を使用するよりも圧倒的な処理速度が得られ易いが、固定小数点演算に起因する演算中のオーバーフローや計算精度の不足等が発生しやすい。これらを回避するために、回復ゲインリミット値Gmを用いる。
本実施形態においては、固定小数点演算におけるフーリエ変換、逆変換を行う周波数変換部で、固定小数点演算で演算可能な最大値をデータ点数で除算することによって算出される値を回復ゲインリミット値Gmとする。
画像が2次元画像である場合、一般的に、画像回復フィルタも画像の各画素に対応したタップ(セル)を有する2次元フィルタとなり、画像回復フィルタのタップ数(セルの数)は、一般的に多いほど回復精度が向上する。このため、要求画質、画像処理能力、収差の特性等に応じて実現可能なタップ数が設定される。画像回復フィルタは、少なくとも収差の特性を反映しており、エッジ強調フィルタ(ハイパスフィルタ)などとは異なる。画像回復フィルタは光学伝達関数の逆数に基づいて設定され、振幅成分および位相成分の劣化の両方を高精度に補正することができる。
実際の画像にはノイズ成分が含まれるため、光学伝達関数の逆数をとって作成した画像回復フィルタを用いると、劣化画像の回復とともにノイズ成分も増幅されてしまう。これは、画像の振幅成分にノイズの振幅が付加されている状態に対して、光学系のOTFの絶対値であるMTF(振幅成分:ModulationTransfer Function)を全周波数に亘って1に戻すようにMTFを回復するためである。光学系による振幅劣化であるMTFは1に戻るが、同時にノイズのパワースペクトルも持ち上がってしまい、結果的にMTFの回復度合(回復ゲイン)に応じてノイズが増幅されてしまう。
以下、本画像回復システムを使用する使用者が指定した目標回復ゲイン値Gが回復ゲインリミット値Gmを超過しないように制御する方法を述べる。目標回復ゲイン値Gとは、画像回復の補正の強さの目安となるものである。
回復ゲイン周波数特性W(u,v)の各周波数位置の絶対値の平均値(1/MN)Σ|W(u,v)|(以下、「平均回復ゲイン値」と称する)と、最大絶対値max{|W(u,v)|}(以下、「最大回復ゲイン値」と称する)のそれぞれを使用して説明する。まず、目標回復ゲイン値Gを平均回復ゲイン値とした場合について説明する。
目標回復ゲイン値Gは、回復ゲインリミット値Gm超過しないように設定される対象であり、周波数空間上の回復ゲイン特性W(u,v)そのものである。本実施形態では、目標回復ゲイン値Gはユーザが任意に設定し、回復ゲインリミット値Gmはシステムコントローラ110が設定する。回復ゲインリミット値Gmは表示部105に表示されてもよい。ユーザが、回復ゲインリミット値Gmを超える目標回復ゲイン値Gを入力した場合には、設定できない旨の警告がでて再入力を促されるか、自動的に回復ゲインリミット値Gmが目標回復ゲイン値Gとして設定されてもよい。
図3(a)、(b)、(c)は、回復ゲイン調整項Γの値が0.005、0.01、0.02の回復ゲイン特性、Re、Im、Absはそれぞれ回復ゲイン周波数特性W(u,v)の実部、虚部、絶対値を示している。
式(4)を見ると、(1/MN)Σ|W(u,v)|を所望の値にするための回復ゲイン調整項Γの値は簡単には求めることができないため、回復ゲイン調整項Γにある初期値Γ0を与え、その時の(1/MN)Σ|W(u,v)|を求める。終了条件を満たさない場合は、回復ゲイン調整項ΓをΓ0からΓ1に微小変化させて再度評価を行うことで(1/MN)Σ|W(u,v)|を所望の値に収束させる。回復ゲイン周波数特性W(u,v)は、複素数データであり、W(u,v)=Re{W(u,v)}+jIm{W(u,v)}である。
図3(a)は、回復ゲイン調整項Γ=0.005における、Re{W(u,v)}、Im{W(u,v)}、|W(u,v)|を表している。図3(b),(c)は、同様にΓ=0.01、Γ=0.02の場合である。
まず、W(u,v)=Re{W(u,v)}+jIm{W(u,v)}が計算され、絶対値を取り|W(u,v)|が生成される。ここで(1/MN)Σ|W(u,v)|を評価すると、(a),(b),(c)のそれぞれで3.38,2.43,1.66である。
式(4)においてΓ=0.005,0.01,0.02と変化させていったときに平均回復ゲイン値は3.38,2.43,1.66と変化することを意味している。仮に、目標回復ゲイン値Gが2.00であれば、回復ゲイン調整項Γは0.01と0.02の間で収束し、目標回復ゲイン値Gが1.50ならば回復ゲイン調整項Γは0.02より大きな値で収束する。
次に、目標回復ゲイン値Gを最大回復ゲイン値とした場合について説明する。評価の手法は同様であるから詳細は割愛するが、最大回復ゲイン値の場合、max{|W(u,v)|}について収束判定する。図3の場合の例で言えば、(a),(b),(c)のmax{|W(u,v)|}はそれぞれ7.07,5.00,3.54である。
本実施形態の画像回復は、フーリエ変換、逆変換を実行する周波数変換部のビット数を32ビットとする。
図4は、本実施形態の周波数変換部における符号部、整数部、小数部へのビット数割り当ての一例を示す図である。32ビットでの演算では、図4(a)〜(d)に共通で符号部に1ビット割り当てられる。整数部は、それぞれ11,9,7,5ビットの割り当てると、小数部はそれぞれ20,22,24,26ビットの割り当てとなる。実際には、固定小数点の演算時の丸めにより、少なくとも1ビットの余裕ができる。
整数部は、回復ゲイン周波数特性W(u,v)の分布のダイナミックレンジに大きな影響を及ぼし、小数部は、回復ゲイン周波数特性W(u,v)の精度、そしてフーリエ変換、逆変換の精度に大きな影響を及ぼす。即ち、回復ゲイン周波数特性W(u,v)のダイナミックレンジを大きくすれば精度が落ち、回復ゲイン周波数特性W(u,v)やフーリエ変換、逆変換演算の精度を向上させればダイナミックレンジが小さくなる。
32ビットを図4(a)に示すように割り当てると、式(7)のF(u,v)と回転因子の積で最小1/(2^20)まで表現でき、F(u,v)に小数点以下3〜4桁、sin,cosに相当する回転因子に3〜4桁割り当てることになる。
この割り当てでは、画像回復精度が不足するが、整数部に2^11ビット割当てているため、回復ゲインリミット値Gmが大きくなる。しかしながら、実用上2^11ビットも整数部割り当てがあっても殆どの場合無駄になるため、図4(b)、(c)に示すように、9〜7ビット程度整数部を確保すれば十分である。これにより、回復ゲイン周波数特性W(u,v)や回転因子に小数部ビットを多く割り当てることができるので、画像回復システムの演算が安定する。
一方、図4(d)に示すように、整数部を5ビット程度まで減らすと、小数部ビット数は26ビットとなり、演算精度は非常に向上するが、整数部に5ビットしか確保されていない。このため、演算中の数値丸めによる余裕を含めても32タップの回復フィルタを用いた回復処理が原理的な限界となり、さらに平均回復ゲインで2未満の強さでしか実空間画像回復フィルタw(x,y)を生成できなくなる。
固定小数点演算で動作する画像回復フィルタ生成の工程では、回復ゲイン周波数特性W(u,v)から実空間画像回復フィルタw(x,y)へのフーリエ逆変換時に最も整数部の値が大きくなり、オーバーフローが発生し易い。このときの最大値は回復ゲイン周波数特性W(u,v)の各値の絶対値の和であるΣΣ|a+jb|となる。このため、周波数変換部で取り得る最大値をΣΣ|a+jb|確保し、回復ゲインリミットを平均値1/(MN)ΣΣ|a+jb|以下とすればフーリエ逆変換時にオーバーフローが発生することはなくなる。
即ち、ダイナミックレンジと演算精度のバランスをとったビット数の割り当てを行い、表現できるダイナミックレンジの最大値を回復ゲインリミット値Gmとすることにより、少ないビット数で画像回復処理の強さと画像回復精度を両立することができる。
まず、画像回復処理を行う前に回復ゲインリミット値Gmを設定し、周波数変換部で確保できる最大ビット数(例えば、32ビット)を設定しておく。これは、その他の回路との兼ね合いや、コストとの兼ね合いで実現しうる回路実装規模内で決定される。その後、符号部、整数部、小数部に画像回復システムとして必要な効果、精度に応じてビット数を、例えば、図4(b)に示すように、割り当てる。これにより、画像回復システム内部で表現しうる最大値が決定される。ため、この最大値をデータ点数で除算した値を回復ゲインリミット値Gmとする。回復ゲインリミット値Gmは画像回復システムに保持しておく。
画像回復フィルタのタップ数(セルの数)は、一般的に多いほど回復精度が向上する。このため、要求画質、画像処理能力、収差の特性等に応じて実現可能なタップ数が設定される。以上は実施例2にも当てはまる。
図5は、実施例1の実空間画像回復フィルタw(x,y)を生成するフローチャートである。上述したように、使用者が任意に画像回復の強さ(目標回復ゲイン値G)を設定する。目標回復ゲイン値Gが回復ゲインリミット値Gm以上に設定されないようになっている(S202)。予め指定可能範囲を回復ゲインリミット値Gm未満としてもよいし、目標回復ゲイン値Gが回復ゲインリミット値Gm以上になった場合にクリッピングしてもよい。
次に、回復ゲイン調整項Γの初期値Γ0を式(4)に入力する(S204)。初期値Γ0が小さ過ぎると回復ゲイン特性がオーバーフローしてしまうため、若干大きめの値を有する。ここから回復ゲイン調整項Γを更新する。更新するための回復ゲイン調整項Γの変化量は逐次変更しながら収束させるのが望ましい。回復ゲイン周波数特性W(u,v)の平均回復ゲインをA=(1/MN)Σ|W(u,v)|とし、ゲイン調整項Γを更新するたびに(S206)平均回復ゲインAを求める(S208)。平均回復ゲインAが目標回復ゲインGに対して±εの許容範囲内に収束した場合(S210)、回復ゲイン調整項Γの更新を終了する。
最終的な回復ゲイン調整項Γを用いて生成された(S212)回復ゲイン周波数特性W(u,v)をフーリエ逆変換することで実空間画像回復フィルタw(x,y)を生成する(S214)。生成された実空間画像回復フィルタw(x,y)を用いて画像を補正し、出力する。
図6は、実施例2の実空間画像回復フィルタw(x,y)を生成するフローチャートである。図5と同一のステップには同一の参照符号を付している。S202、S204の後で、回復ゲイン周波数特性W(u,v)の最大回復ゲイン値をB=max{|W(u,v)|}とし、回復ゲイン調整項Γを更新するたびに(S206)最大回復ゲインBを求める(S209)。最大回復ゲインBが目標回復ゲインGに対して±εの許容範囲内に収束した場合(S211)、回復ゲイン調整項Γの更新を終了する。
ここで、εは任意に設定してよいが、小さ過ぎると収束せずに無限ループに陥るおそれがあるので、別途回数による終了判定を併用することが好ましい。最終的に回復ゲイン調整項Γの更新が終了した回復ゲイン周波数特性W(u,v)(S212)をフーリエ逆変換することで実空間画像回復フィルタw(x,y)を生成する(S214)。生成された実空間画像回復フィルタw(x,y)を用いて画像を補正し、出力する。
最大回復ゲインBで回復ゲイン周波数特性W(u,v)を収束させる場合、平均回復ゲインは必ず最大回復ゲインB以下になるため、平均回復ゲインを監視する必要はなく、簡易な実装が可能となる利点がある。
本発明は、画像回復の用途に適用することができる。
101…撮影光学系、102…撮像素子、104…画像処理部(画像処理手段)、110…システムコントローラ(制御手段)

Claims (11)

  1. 光学系を介して撮影された画像の劣化を補正するための画像回復フィルタを生成する方法であって、
    前記光学系の光学伝達関数の絶対値の目標回復度合を表す目標回復ゲイン値を、固定小数点演算で演算可能な最大値を前記光学伝達関数のデータ点数で除算することによって算出される回復ゲインリミット値を超えないように設定する第1ステップと、
    前記第1ステップによって設定された前記目標回復ゲイン値に基づいて前記画像回復フィルタの周波数特性を前記固定小数点演算により生成する第2ステップと、
    を有することを特徴とする画像回復フィルタの生成方法。
  2. 前記第2ステップは、前記画像回復フィルタの周波数特性の絶対値の平均値が、前記第1ステップによって設定された前記目標回復ゲイン値から許容範囲内にあるように、前記画像回復フィルタの周波数特性を生成することを特徴とする請求項1に記載の画像回復フィルタの生成方法。
  3. 前記周波数特性をW(u,v)、前記光学伝達関数をH(u,v)とすると、前記第2ステップは、前記絶対値の前記平均値が、前記目標回復ゲイン値から前記許容範囲内にあるように、
    W(u,v)
    =1/H(u,v)*|H(u,v)|^2/(|H(u,v)|^2+Γ)
    で表されるΓを更新することを特徴とする請求項2に記載の画像回復フィルタの生成方法。
  4. 前記第2ステップは、前記画像回復フィルタの周波数特性の絶対値の最大値が、前記第1ステップによって設定された前記目標回復ゲイン値から許容範囲内にあるように、前記画像回復フィルタの周波数特性を前記固定小数点演算により生成することを特徴とする請求項1に記載の画像回復フィルタの生成方法。
  5. 前記周波数特性をW(u,v)、前記光学伝達関数をH(u,v)とすると、前記第2ステップは、前記絶対値の前記最大値が、前記目標回復ゲイン値から前記許容範囲内にあるように、
    W(u,v)
    =1/H(u,v)*|H(u,v)|^2/(|H(u,v)|^2+Γ)
    で表されるΓを更新することを特徴とする請求項4に記載の画像回復フィルタの生成方法。
  6. 前記第2ステップによって生成された前記周波数特性を周波数変換することによって、実空間における画像回復フィルタを生成する第3ステップを更に有することを特徴とする請求項1または2に記載の画像回復フィルタの生成方法。
  7. 前記第1ステップは、前記回復ゲインリミット値を超える前記目標回復ゲイン値が入力された場合に前記回復ゲインリミット値を前記目標回復ゲイン値として設定することを特徴とする請求項1乃至6のうちいずれか1項に記載の画像回復フィルタの生成方法。
  8. 前記第1ステップは、前記回復ゲインリミット値を超える前記目標回復ゲイン値が入力された場合に、前記回復ゲインリミット値を超えている旨の警告と前記目標回復ゲイン値の再入力を促すことを特徴とする請求項1乃至7のうちいずれか1項に記載の画像回復フィルタの生成方法。
  9. 請求項1乃至8のうちいずれか1項に記載の画像回復フィルタの生成方法によって生成された前記画像回復フィルタを用いて固定小数点演算により、前記画像の劣化を補正する画像処理方法。
  10. 光学系を介して撮影された画像の劣化を補正するための画像回復フィルタを生成する方法であって、
    前記光学系の光学伝達関数の絶対値の目標回復度合を表す目標回復ゲイン値を、固定小数点演算で演算可能な最大値を前記光学伝達関数のデータ点数で除算することによって算出される回復ゲインリミット値を超えないように設定する制御手段と、
    前記制御手段によって設定された前記目標回復ゲイン値に基づいて前記画像回復フィルタの周波数特性を固定小数点演算により生成する画像処理手段と、
    を有することを特徴とする画像処理装置。
  11. 撮影光学系が形成した被写体の画像を光電変換する撮像素子と、
    前記撮像素子の出力を画像処理する画像処理手段と、
    前記撮影光学系の光学伝達関数の絶対値の目標回復度合を表す目標回復ゲイン値を、固定小数点演算で演算可能な最大値を前記光学伝達関数のデータ点数で除算することによって算出される回復ゲインリミット値を超えないように設定する制御手段と、
    を有し、
    前記画像処理手段は、前記制御手段によって設定された前記目標回復ゲイン値に基づいて画像回復フィルタの周波数特性を生成し、生成された前記周波数特性を周波数変換することによって、実空間における画像回復フィルタを生成し、前記画像回復フィルタによって前記被写体の画像の劣化を補正するための画像回復フィルタを生成することを特徴とする撮像装置。
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