JP2015100942A - 採光性に優れた遮熱膜材 - Google Patents

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Abstract

【課題】近赤外領域の光線を散乱し、特に太陽放射に対する遮熱性に優れ、可視光領域の光線の透過して採光性に優れ、彩色が可能な可撓性膜材の提供。【解決手段】少なくとも1層の近赤外線遮蔽層2を有する可撓性シート1であり、近赤外線遮蔽層が、軟質ポリ塩化ビニル樹脂組成物からなるマトリックス樹脂と、遮熱性付与剤3として、平均粒子径0.5〜2.0μmの酸化チタン粒子3−1、及び、平均粒子径0.3〜1.2μmの硫酸バリウム粒子3−2を、マトリックス樹脂中に5〜25質量%分散して含み、前記遮熱性付与剤における酸化チタン粒子及び硫酸バリウム粒子の質量比が1:1〜1:5であり、酸化チタン粒子及び硫酸バリウム粒子が、シリカ、アルミナ、酸化ジルコニウム等から選ばれた無機物質、シラン系、チタネート系等から選ばれたカップリング剤、のいずれか1種又は2種以上により表面被覆されている遮熱膜材。【選択図】図1

Description

本発明は、優れた採光性を有しながら遮熱性にも優れ、彩色も可能な可撓性シートに関するものである。更に詳しく述べるならば、本発明は、テント倉庫、イベント向けテント、日除けテント、日除けモニュメント、装飾テント、ブラインド、シートシャッター、トラック幌などに用いられる可撓性の膜材であり、可視光線を透過して採光性に優れ、近赤外線を散乱して、特に太陽放射に対する遮熱性に優れた膜材に関するものである。
繊維基布に可撓性樹脂をコーティング法、ディッピング法、カレンダー法やTダイ押出し法などの方法により被覆した膜材は、組立及び施工が容易であり、色相やデザインの自由度が高い等の理由から、テント倉庫、イベント向けテント、日除けテント、日除けモニュメント、装飾テント、ブラインド、トラック幌等、雨よけ、日よけの分野に広く利用されている。しかしながら、従来の膜材は、雨を防いだり、日光を遮ってまぶしさを防ぎ、更に紫外線を低減させることはできても、太陽放射に含まれる近赤外線に対する透過性又は吸収性が高いため、冷涼効果に関してはほとんど認められないのが実情であった。
この様な問題に対して、可撓性樹脂層に近赤外線領域で反射率の高い金属からなる粉末を練り込む方法(例えば、特許文献1参照)が提案されているが、この方法では、赤外線を遮ることができる一方、可視光線も遮られてしまい、採光性に優れた膜材を得ることはできなかった。
また、建物の外壁などで、マトリックス樹脂に酸化チタン粒子を分散した白色の塗膜は、ある程度の遮熱性を示すことが経験上知られている。酸化チタンは高い屈折率(ルチル型で2.71)を有する物質であり、樹脂(一般的な樹脂の屈折率は1.4〜1.65程度)に分散させると、樹脂との屈折率差が大きいため、光を強く散乱して白く見える。顔料向けとしては一般に、粒子径に依存した散乱特性(光の散乱のピークが粒子径の倍の波長となる)を考慮して、可視領域(380〜780nm)の散乱を強くする為に通常平均粒子径0.2〜0.3μm(200〜300nm)の酸化チタン粒子が使用されている。しかし、顔料向け酸化チタン粒子は可視領域の光を強く散乱する一方で、近赤外線(780〜2500nm)の散乱は弱くなるので、充分な遮熱性を得るためには多量の酸化チタン粒子を添加する必要がある。顔料向け酸化チタン粒子の量を増やすと、可視領域の光の散乱が大きくなり、隠蔽性の高い白色外観となるため、有彩色の顔料を添加しても着色の効果が得にくくなる。そのため、顔料向け酸化チタン粒子を用いて、有彩色で採光性のある遮熱膜材を得ることは困難であった。これに対して、近年、顔料向けよりも粒子径の大きな粗粒酸化チタン粒子を用いる方法が提案されている。(例えば、特許文献2および特許文献3参照)これにより、近赤外線領域に散乱のピークが生じて遮熱性が向上する一方、可視光領域の散乱が抑制されるため、塗料としての彩色性や、膜材としての採光性が向上する。しかし、酸化チタンは可視光領域から近赤外線領域にかけて5〜10%程度の吸収を有しているため、特に膜材に応用した場合、可視光線および近赤外線を吸収して、その分採光性と遮熱性が低下してしまう問題があった。
これに対し、可視領域から近赤外線領域にかけて酸化チタンよりも吸収の少ない粒子を用いれば、酸化チタンを用いるより高い採光性と遮熱性を得ることができると考えられ、その様な特性を有する粒子としては、硫酸バリウムが挙げられる。硫酸バリウムは、分光光度計の標準白板にも使用される材料であり、紫外線領域から近赤外領域にかけての吸収が非常に少ないことが知られている。しかし、硫酸バリウムは屈折率が低く(1.64)、マトリックス樹脂に分散させても樹脂との屈折率差が小さいため、少量の添加では近赤外線を充分に散乱させることが出来ず、遮熱性が充分に得られない問題があり、遮熱性を得るために、可撓性膜材の樹脂層に多量に添加すると、膜材の採光性が低下し、また、樹脂層が硬くなって柔軟性が損なわれたり、折り曲げや摩擦により樹脂層表面が白化しやすくなるなどの問題があった。
また、太陽放射に含まれる近赤外線の多くは780nm〜1400nmの領域にあり、可視光領域に近い波長ほど放射照度が高い為、粒子の光散乱により遮熱性を向上させる観点からは、この範囲で、より短波長側に散乱のピークを設定するのが良い。しかし、可視光領域の近傍に散乱のピークがあると可視光の散乱が充分に抑制されず、採光性の面からはマイナスとなる。その対応として、可視光の散乱を抑制する為に散乱のピークをより長波長側にシフトさせると、780nm〜1400nmの散乱が減少して遮熱性まで低下してしまうジレンマがあり、これは特に酸化チタンの様に屈折率の高い粒子を用いた場合に顕著であり、粗粒酸化チタン粒子を用いて遮熱性と採光性を両立させることには限界があった。
以上の様に、テント倉庫や日よけテントなどに用いる可撓性膜材であって、遮熱性と、採光性を高いレベルで両立し、かつ彩色性も有する膜材は、これまで提案されていない。
特開昭61−167546号公報 特開2006−8874号公報 特開2007−55177号公報
本発明は、上記従来技術の課題を解決し、可視領域の光線を透過して採光性に優れ、彩色が可能であり、近赤外領域の光線を散乱して、特に太陽放射に対する遮熱性に優れており、特にテント倉庫、イベント向けテント、日除けテント、日除けモニュメント、装飾テント、ブラインド、シートシャッター、トラック幌などに好適に用いられる可撓性膜材を提供しようとするものである。
本発明者は、上記課題を解決する為鋭意検討を行った結果、光の散乱に優れた酸化チタン粒子と、近赤外線の吸収が少ない硫酸バリウムを併用し、その際、両者の平均粒子径の組み合わせと配合比を特定の範囲とすることで、膜材の採光性を損なわずに、優れた遮熱性を有する可撓性膜材が得られることを見出し、本発明を完成させた。
すなわち、本発明の採光性に優れた遮熱膜材は、少なくとも1層の近赤外線遮蔽層を有する可撓性シートであり、前記近赤外線遮蔽層が、軟質ポリ塩化ビニル樹脂組成物からなるマトリックス樹脂と、遮熱性付与剤として、平均粒子径0.5〜2.0μmの酸化チタン粒子、および、平均粒子径0.3〜1.2μmの硫酸バリウム粒子を、前記マトリックス樹脂中に分散して含み、前記近赤外線遮蔽層に含まれる前記遮熱性付与剤が5〜25質量%であり、かつ、前記遮熱性付与剤における前記酸化チタン粒子および前記硫酸バリウム粒子の質量比が1:1〜1:5であることを特徴とする。
本発明の採光性に優れた遮熱膜材において、前記酸化チタン粒子および前記硫酸バリウム粒子が、それぞれ独立して、シリカ、シリカ−アルミナ、アルミナおよび酸化ジルコニウムから選ばれた無機物質、シラン系、チタネート系およびアルミネート系から選ばれたカップリング剤、のいずれか1種または2種以上により表面被覆されていることが好ましい。
本発明の採光性に優れた遮熱膜材において、前記可撓性シートが、繊維材料より形成された基布層を有することが好ましい。
本発明の採光性に優れた遮熱膜材において、前記近赤外線遮蔽層上に防汚層を有することが好ましい。
本発明の採光性に優れた遮熱膜材において、前記防汚層が、平均粒子径0.3〜0.7μmの硫酸バリウム粒子を3〜30質量%含むことが好ましい。
本発明によれば、可視領域の光線を透過して採光性に優れ、かつ、近赤外領域の光線を散乱して、特に太陽放射に対する遮熱性に優れ、かつ彩色性も有する可撓性膜材を提供する事ができる。本発明の可撓性膜材は、テント倉庫、イベント向けテント、日除けテント、日除けモニュメント、装飾テント、ブラインド、シートシャッター、トラック幌などに好適に用いられ、この可撓性膜材に覆われた空間を、明るく涼しい快適な環境にすることができ、日中の照明や、エアコンなどにかかる費用を削減することができる。
本発明の採光性に優れた遮熱膜材の一例を示す図 本発明の採光性に優れた遮熱膜材の一例を示す図 実施例・比較例において、遮熱性の評価に用いた小型テントを示す図
本発明の採光性に優れた遮熱膜材は、近赤外線遮蔽層を有する可撓性シートであって、その形態は樹脂シート(樹脂フィルム)、または、帆布、ターポリン等の防水性シートである。このうち樹脂シートは、カレンダー成型法、Tダイス押出法、あるいはキャスティング法などにより製造することができ、近赤外線遮蔽層単層であっても良く、近赤外線遮蔽層を含む複数の樹脂層からなる積層体であっても良い。帆布(図1参照)、ターポリン(図2参照)等の防水性シートは、近赤外線遮蔽層と繊維材料より形成された基布層とを含む積層体であり、近赤外線遮蔽層は基布の一方の面のみに形成されても良く、両面に形成されても良い。近赤外線遮蔽層が基布の一方の面のみに形成される場合、基布のもう一方の面側には近赤外線遮蔽層以外の樹脂層が形成されても良い。帆布は、ペーストゾルを用いるディッピング加工(基布への両面加工)、及びコーティング加工(基布への片面加工、または両面加工)等によって製造することができる。ターポリンはカレンダー成型法、Tダイス押出法またはキャスティング法により成型された樹脂フィルム又は樹脂シートを、基布の片面または両面に接着層を介在して積層する方法、あるいは粗目状の繊維性編織物の両面に目抜け空隙部を介して熱ラミネート積層する方法により製造することができ、さらにディッピング加工、またはコーティング加工と、樹脂フィルム積層の組み合わせによっても実施可能である。
本発明において近赤外線遮蔽層は、軟質ポリ塩化ビニル樹脂組成物からなるマトリックス樹脂と、遮熱性付与剤として酸化チタン粒子、および、硫酸バリウム粒子を、必須として含むものである。
本発明の近赤外線遮蔽層に含まれる遮熱性付与剤において、酸化チタン粒子の平均粒子径は、0.5〜2.0μmであることが好ましく、0.7〜1.2μmである事がより好ましい。酸化チタン粒子の平均粒子径がこの範囲であることで、粒子径による散乱特性から、可視光の散乱が抑制されて採光性が向上し、反対に、近赤外線領域の散乱は向上して、高い遮熱性を得ることができる。平均粒子径が0.5μm未満では、可視光の散乱が大きくなる一方近赤外線の散乱が低下して、充分な採光性および遮熱性を得られなくなることがある。平均粒子径が2.0μmを超えると、特に太陽放射に多く含まれる780nm〜1400nmの領域の近赤外線の散乱が低下して充分な遮熱性を得られなくなることがある。
本発明の近赤外線遮蔽層に含まれる遮熱性付与剤において、硫酸バリウム粒子の平均粒子径は、0.3〜1.2μmであることが好ましく、0.4〜0.7μmである事がより好ましい。硫酸バリウムは酸化チタンに比べて可視光領域から近赤外線領域にかけての吸収が少なく、マトリックス樹脂に加えた場合に採光性と遮熱性を損なわない。また、マトリックス樹脂である軟質ポリ塩化ビニル樹脂組成物との屈折率差があまり大きくない為、可視光領域の散乱が少なく、採光性の低下が少なく、顔料を加えた時の彩色性を阻害しない。一方、近赤外領域の散乱も少ない為、硫酸バリウム粒子を単独で使用したのでは充分な遮熱性を得る事はできないが、平均粒子径0.5〜2.0μmの酸化チタン粒子と併用して用いることで、特に太陽放射に多く含まれる780nm〜1400nmの範囲の近赤外線の散乱を補って遮熱性を向上させつつ、採光性を低下させない効果を及ぼすことができる。硫酸バリウム粒子の平均粒子径が0.3μm未満では、散乱のピークが可視領域、あるいは紫外領域となり、近赤外線の散乱が向上せず、遮熱性の向上ほとんど寄与しないことがある。硫酸バリウム粒子の平均粒子径が1.2μmを超えると、780nm〜1400nmの範囲の近赤外線の散乱が向上せず、遮熱性が向上しないことがある。なお、本発明において硫酸バリウムとしては、沈降性硫酸バリウム、簸性硫酸バリウム(バライト粉)のいずれを用いても良い。
なお、本発明において平均粒子径は、レーザー回折粒子径分布測定装置で測定した粒子径分布から球体積相当径の平均として求めることができる。
本発明の遮熱性付与剤において、酸化チタン粒子および硫酸バリウム粒子の平均粒子径を上述の範囲とし、更に近赤外線遮蔽層に含まれる酸化チタン粒子と硫酸バリウム粒子の質量比を1:1〜1:5とすることで、近赤外線遮蔽層に含まれる遮熱性付与剤の量が5〜25質量%と比較的少なくても、高い遮熱性を得ることができ、優れた採光性を得ることができ、かつ、顔料を加えた時の彩色性を阻害しない。遮熱性付与剤において、酸化チタン粒子の質量よりも硫酸バリウム粒子の質量が少ない場合、高い遮熱性を得ることはできるが、採光性が不充分となることがある。酸化チタン粒子の質量に対する硫酸バリウム粒子の質量が5倍を超える場合、高い採光性を得ることはできるが、遮熱性が充分に得られないことがある。
本発明の近赤外線遮蔽層に含まれる遮熱性付与剤の量は、酸化チタン粒子および硫酸バリウム粒子を合わせて、5〜25質量%である。遮熱性付与剤が5質量%より少ないと、充分な遮熱性が得られなくなる事があり、25質量%より多いと充分な採光性が得られない事がある。また、酸化チタン粒子および硫酸バリウム粒子の形状には特に限定は無く、球状の粒子であっても良く、その他、紡錘型、回転楕円形、立方体、円筒形、大きな粒子を粉砕してできた不規則な形状、平板型および棒状など、いずれの形状であっても良い。粒子のアスペクト比にも特に限定は無いが、酸化チタン粒子および硫酸バリウム粒子それぞれが独立して1〜3の範囲のアスペクト比を有することが好ましい。なお、アスペクト比とは一般に物体の縦横比を指すが、ここでは、粒子の最大縦径とそれに直交する最大の横幅との比を表す。
本発明の近赤外線遮蔽層に含まれる遮熱性付与剤において、酸化チタン粒子および硫酸バリウム粒子は、それぞれ独立して、シリカ、アルミナ、シリカ−アルミナ、および酸化ジルコニウムから選ばれた無機物質、シラン系、チタネート系およびアルミネート系から選ばれたカップリング剤、のいずれか1種以上により表面被覆されていることが好ましい。酸化チタン粒子および硫酸バリウム粒子が、これらの物質により表面処理されていることで、マトリックス樹脂への分散性が良好となって遮熱性および採光性が得やすくなり、マトリックス樹脂との接着性が付与されて近赤外線遮蔽層の樹脂強度が増して折り曲げや摩擦による白化を生じ難くすることができ、また、酸化チタンの場合光触媒活性を抑制することができる。なお、本発明において表面被覆された遮熱性付与剤が用いられる場合、平均粒子径や質量については、表面被覆を含む値が用いられる。
本発明の近赤外線遮蔽層のマトリックス樹脂を構成する軟質ポリ塩化ビニル樹脂組成物は、ポリ塩化ビニル系樹脂と可塑剤を含む組成物である。ポリ塩化ビニル系樹脂としては、ポリ塩化ビニルの他、塩化ビニル−エチレン共重合体樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体樹脂、塩化ビニル−塩化ビニリデン共重合体樹脂、塩化ビニル−アクリル酸共重合体樹脂、及び塩化ビニル−ウレタン共重合体樹脂などを包含し、これらを単独で用いても良く、2種以上を併用して用いても良い。可塑剤には特に限定は無く、通常ポリ塩化ビニル系樹脂用可塑剤として用いられる、フタル酸エステル系可塑剤、脂肪酸エステル系可塑剤、リン酸エステル系可塑剤、塩素化パラフィン系可塑剤、ポリエステル系可塑剤、スルホン酸エステル系可塑剤、クエン酸エステル系可塑剤、トリメリット酸エステル可塑剤、アクリル系ポリマー可塑剤、シクロヘキサンジカルボン酸エステル系可塑剤、エチレン−酢酸ビニル−一酸化炭素共重合体、エチレン−アクリル酸エステル−一酸化炭素共重合体、2官能以上のアクリレートモノマー、などから1種又は2種以上を適宜選択して用いる事ができる。これらの内特に、フタル酸エステル系可塑剤、脂肪酸エステル系可塑剤、クエン酸エステル系可塑剤、トリメリット酸エステル可塑剤、および、シクロヘキサンジカルボン酸エステル系可塑剤は、可塑化効率が良いため好ましく、また、これらの可塑剤を用いることで軟質ポリ塩化ビニル樹脂組成物の屈折率が低くなり、遮熱性付与剤、特に硫酸バリウム粒子との屈折率差が大きくなって、遮熱性をより向上させることができる。また、2官能以上のアクリレートモノマーは、その他の可塑剤とブレンドして用いる事が好ましい。2官能以上のアクリレートモノマー、塩ビ系樹脂に対して可塑剤として作用するだけでなく、これを用いることで、近赤外線遮蔽層内で経時的に官能基同士が重合して架橋ネットワークを形成し、酸化チタン粒子および硫酸バリウム粒子を担持して、折り曲げや摩擦に強い近赤外線遮蔽層を形成することができる。2官能以上のアクリレートモノマーをブレンドして用いる場合には、可塑剤全体に占める割合を1〜20質量%とすることが好ましい。2官能以上のアクリレートモノマーの割合が1質量%未満では、添加する効果がほとんど得られない事があり、20質量%を超えると柔軟性が損なわれ、膜材としての取扱い性が悪くなったり、近赤外線遮蔽層の溶融温度が上昇して熱融着縫製が困難になることがある。
近赤外線遮蔽層のマトリックス樹脂を構成する軟質ポリ塩化ビニル樹脂組成物に含まれる可塑剤の量は、ポリ塩化ビニル系樹脂100質量部に対して、可塑剤の合計量として30〜150質量部であることが好ましく、40〜120質量部であることがより好ましい。可塑剤量が30質量部未満では、得られる遮熱膜材の柔軟性が不足する事がある。可塑剤量が150質量部を超えると、近赤外線遮蔽層の耐熱強度が低下し、この遮熱膜材を用いて熱融着縫製部を有する構造物を形成した場合に、縫製部の耐熱耐久性が得られないことがあり、さらに、遮熱膜材形成後に可塑剤が膜材表面に移行しやすくなり、移行した可塑剤に汚れが付着して、外観が損なわれることがある。
本発明の近赤外線遮蔽層において、マトリックス樹脂を構成する軟質ポリ塩化ビニル樹脂組成物には、上述の酸化チタン粒子、および、硫酸バリウム粒子の他に、有機あるいは無機の顔料を含んで、有彩色の近赤外線散乱層を形成することができる。用いる顔料には特に限定はないが、遮熱性向上のためには、近赤外領域、特に780nm〜1400nmの部分に吸収の少ない顔料である事が好ましい。この様な有機顔料としては、例えば、ペリレン系、ペリノン系、フタロシアニン系、カルボニウム系、アントラキノン系、キノフタロン系、アゾ系(モノアゾ、ジスアゾ、縮合ジスアゾ等)、アゾメチン系、キナクリドン系等の有機顔料を例示することができる。また、無機顔料としては、ルチル型、ヘマタイト型、またはスピネル型構造を有し、チタン、亜鉛、アンチモン、鉄、ニッケル、コバルト、クロム、マグネシウム、銅、マンガン、アルミニウム、ニオブ、及びケイ素の内2種以上の成分を含んでなる金属複合酸化物を例示することができる。
本発明の近赤外線遮蔽層において、マトリックス樹脂を構成する軟質ポリ塩化ビニル樹脂組成物には、その他必要に応じて、安定剤、滑剤、防炎剤、難燃剤、発泡剤、帯電防止剤、界面活性剤、撥水剤、撥油剤、架橋剤、硬化剤、加工助剤、有機・無機顔料、導電性フィラー、充填剤、防黴剤、抗菌剤、防虫剤、消臭剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、カップリング剤(シラン系、チタネート系、アルミネート系)など、公知の添加剤を含むことができる。
本発明の遮熱膜材は、繊維材料より形成された基布層を有することが好ましい。本発明の基布層に用いられる繊維素材としては、ポリプロピレン繊維、ポリエチレン繊維、ポリエステル繊維、ナイロン繊維、ビニロン繊維などの合成繊維、木綿、麻などの天然繊維、アセテートなどの半合成繊維、ガラス繊維、シリカ繊維、アルミナ繊維、炭素繊維などの無機繊維が挙げられ、これらは単独または2種以上からなる混用繊維によって構成されていてもよく、その形状はマルチフィラメント糸条、短繊維紡績糸条、モノフィラメント糸条、スプリットヤーン糸条、テープヤーン糸条などいずれであってもよい。本発明に使用する繊維基布は織布、編布、不織布のいずれでもよく、織布の場合平織、綾織、繻子織、模紗織などいずれの構造をとるものでもよいが、平織織物は、得られる遮熱膜材の縦緯物性バランスに優れているため好ましく用いられる。編布としてはラッセル編の緯糸挿入トリコットが好ましく用いられる。これら編織物は、少なくともそれぞれ、糸間間隙をおいて平行に配置された経糸及び緯糸を含む糸条により構成された粗目状の編織物(空隙率は最大80%、好ましくは5〜50%)、及び非粗目状編織物(糸条間に実質上間隙が形成されていない編織物)を包含する。不織布としてはスパンボンド不織布などが使用できる。繊維基布には必要に応じて撥水処理、吸水防止処理、接着処理、難燃処理などが施されていても良い。
本発明の遮熱膜材は、経時的な汚れの付着による遮熱性、透光性の低下を防止し、且つ美観を維持するために、近赤外線遮蔽層上に防汚層を有することが好ましい。防汚層は遮熱膜材の遮熱性及び透光性を損なわず極度の隠蔽性を伴わないものであれば、その形成方法及び素材に特に限定はなく、例えば、溶剤に可溶化されたアクリル系樹脂もしくはフッ素系樹脂の少なくとも1種以上からなる樹脂溶液を塗布して形成した塗膜、溶剤に可溶化されたアクリル系樹脂もしくはフッ素系樹脂の少なくとも1種以上からなる樹脂溶液を工程フィルム状に塗布して被膜を形成した後近赤外線遮蔽層上に転写した転写被膜、オルガノシリケート及び/又はその縮合体を含む塗布剤で塗布した親水性被膜層、光触媒性無機材料(例えば光触媒性酸化チタン)と結着剤とを含む塗布剤を塗布した光触媒層、少なくとも最外表面がフッ素系樹脂により形成されたフィルムを接着剤もしくは熱溶融加工により積層したもの、等から適宜選択して用いることができる。
本発明の防汚層には、遮熱性を更に向上させるために、硫酸バリウム粒子を含んでも良い。防汚層に硫酸バリウム粒子を加える場合に、その平均粒子径は0.3〜0.7μmであることが好ましい。また、防汚層中の硫酸バリウム粒子の量としては、防汚層の固形分に対して3〜30質量%であることが好ましく、5〜15質量%であることがより好ましい。これにより、近赤外線遮蔽層が彩色されている場合でも色相への影響が少なく、遮熱膜材の採光性をほとんど損なうことなく、遮熱性を更に向上することができる。硫酸バリウム粒子の平均粒子径が0.3μm未満であると遮熱性がほとんど向上しない事がある。平均粒子径が0.7μmを超えると、防汚層を形成するための樹脂溶液中で沈殿を生じて加工が困難となる事があり、また、遮熱性もほとんど向上しないことがある。防汚層中の硫酸バリウム粒子の量が3質量%未満では、硫酸バリウム粒子を加える効果がほとんど現れないことがある。一方、30質量%を超えると、近赤外線遮蔽層が彩色されている場合に色相への影響が避けられず、かつ、採光性が低下することがあり、また、硫酸バリウム粒子を多量に含むことで防汚層の被膜強度が低下して、傷つき易くなったり、シートの屈曲により防汚層が脱落し易くなったりすることがある。なお、防汚層中に加える硫酸バリウム粒子についても、シリカ、シリカ−アルミナ、アルミナおよび酸化ジルコニウムから選ばれた無機物質、シラン系、チタネート系およびアルミネート系から選ばれたカップリング剤、のいずれか1種以上により表面被覆されていることが好ましい。
本発明の遮熱膜材の可視光透過率(JIS Z8722.5.4条件g)は、5〜30%であることが好ましく、10〜25%がより好ましい。可視光透過率がこの範囲にあることで、適度な採光性となり、例えば本発明の遮熱膜材をテント倉庫など全体が覆われた膜構造物に用いた場合、日中であれば、特に照明を用いる事無く作業を行う事ができ、かつ、日差しの強い日でも、この膜材の下ではまぶしさを感じる事無く快適に過ごすことができる。可視光透過率が5%未満であると、日中であっても膜構造物内部では照明なしで作業することが困難となることがある。一方、可視光透過率が30%を超える膜材では、充分な遮熱性が得られないことがあり、また、日差しの強い日ににまぶしさを防げないことがある。
本発明の防汚層には、本発明の目的を阻害しない限りにおいて、その他必要に応じて、帯電防止剤、界面活性剤、撥水剤、撥油剤、架橋剤、硬化剤、防黴剤、抗菌剤、防虫剤、消臭剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、カップリング剤(シラン系、チタネート系、アルミネート系)など、公知の添加剤を含むことができる。
次に、本発明の実施の形態を実施例を挙げて説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
<評価項目>
1、可視光透過率
実施例および比較例で作成した膜材について、JIS Z8722.5.4(条件g)に従いミ
ノルタ分光測色計CM−3600dを用いて可視光(380〜780nm)の透過率
を測定した。
可視光透過率の評価は、初期と、1年間屋外曝露後のそれぞれについて行った。
※屋外曝露
屋外曝露台上に、実施例及び比較例で作成したシートのおもて面を上にして南向
きに傾斜角30度に設置して1年間の屋外曝露を行った。
場所:埼玉県草加市
2、遮熱性
実施例および比較例で作成した膜材を用いて、膜材のおもて面側を外側として、
屋根部および側壁部を覆った小型テント(図3参照)を作成し、周辺に高い建物の無
い3階建てのビル屋上(コンクリート床面)に、テント屋根部の傾斜面の一方を真南
に向けて、外部との空気の流通が無い状態に設置した。テント設置の翌日以降で、朝
から晴天であった日の正午のテント内温度(A)を測定した。一方、同じビルの屋上
において、床面から1.2mの高さに百葉箱を設置し、テント内温度測定時の百葉箱
内部の温度を測定して、環境温度(B)とし、(A)−(B)の値が小さいほど、
膜材の遮熱性が高いものとして評価した。
なお、評価に用いたテントのサイズは、底面がたて・よことも50cm、床面から
軒先までの高さ50cm、屋根部の傾斜角20°(床面から主棟までの高さ約59
cm)であり、テント内中央部床面から、高さ30cmの位置にセンサーを配置して
温度を測定した。
また、遮熱性の評価は、初期と、1年間屋外曝露後(曝露条件は可視光透過率評価
と同じ)のそれぞれについて行った。
3、折り曲げ試験:(折り曲げによる表面白化の有無)
実施例および比較例で作成した膜材より幅4cm×長さ2cmの試料を2点採取し
て、一方はおもて面側を山折りとし、もう一方はおもて面側を谷折りとして、横方向
に2ツ折りし、折り曲げ部を含む試料全体にそれぞれ1kgの錘を乗せ25℃の環境
で5分間静置した。重りを外した後試料を開き、幅4cm×長さ2cmの状態で試料
全体に1kgの錘を乗せ25℃の環境で5分間静置した後、それぞれの試料の折り曲
げ部のおもてうらを目視で観察して、表面白化の有無を以下の様に評価した。
A:山折り、谷折りいずれの試料とも、おもてうらに白化の発生を認めない。
B:山折り、谷折りいずれかの試料の、おもてうら、いずれか1面以上に白化が
認められる。
[実施例1]
1、基布
経糸、緯糸ともにポリエステル短繊維紡績糸295.3dtex(20番手)双糸を配置し、経糸打ち込み密度が55本/25.4mm、緯糸打ち込み密度が48本/25.4mmであり、質量230g/mの非粗目状平織物を基布1として使用した。
2、膜材の形成
下記配合1の軟質ポリ塩化ビニル樹脂組成物に、下記配合2の遮熱性付与剤を分散したペーストゾルをバスに入れ、基布1をバス中に浸漬し、これを引き上げると同時にマングルロールで圧搾し、150℃で1分間ゲル化した後、190℃で1分間熱処理を行い、さらにその片面に鏡面エンボス処理を施した。これにより基布1の両面への付着、および内部含浸した状態で、遮熱性付与剤として酸化チタン粒子、および、硫酸バリウム粒子を合わせて10質量%含んだ付着量320g/mの近赤外線遮蔽層が形成された。なお、配合2において、酸化チタン粒子として、アスペクト比1〜2.5の不定型なルチル型酸化チタン粒子をアルミナで表面被覆(酸化チタン94質量%、アルミナ6質量%)した、平均粒子径1.0μmの不定形粒子を用いた。また、硫酸バリウム粒子としては、アスペクト比1〜2.5の不定型な沈降性硫酸バリウム粒子をシリカ−アルミナで表面被覆(硫酸バリウム95質量%、シリカ−アルミナ5質量%)した、平均粒子径0.5μmの不定形粒子を用い、酸化チタン粒子と硫酸バリウム粒子の質量比は1:4とした。
<配合1>軟質ポリ塩化ビニル樹脂組成物
ポリ塩化ビニル樹脂(重合度1600) 100質量部
フタル酸ジ−2−エチルヘキシル(可塑剤) 70質量部
三酸化アンチモン(難燃剤) 10質量部
ステアリン酸亜鉛(安定剤) 2質量部
ステアリン酸バリウム(安定) 2質量部
紫外線吸収剤:ベンゾトリアゾール系 0.5質量部
希釈溶剤:トルエン 20質量部
<配合2>遮熱性付与剤組成
酸化チタン粒子(TiO:平均粒子径1.0μm) 4質量部
硫酸バリウム粒子(BaSO:平均粒子径0.5μm) 16質量部
3.防汚層の形成
膜材の鏡面エンボス処理を施した側の近赤外線遮蔽層上に、下記配合3の防汚層塗工液をグラビアコーターによりコーティング加工し、120℃で3分間乾燥した。これによって5g/mの防汚層が形成された乳白色外観の帆布状の遮熱膜材が得られた。得られた遮熱膜材について、防汚層が形成された側をおもて面として評価を行った。結果を表1に示す。
<配合3>防汚層塗工液
アクリル系樹脂(三菱レイヨン(株)製、商標:アクリプレンHBS001)
4質量部
フッ素系樹脂(ビニリデンフルオライド−テトラフルオロエチレン共重合体樹脂、
エルフ・アトケム・ジャパン(株)製、商標:カイナー7201) 12質量部
高分子型紫外線吸収剤(一方社油脂工業(株)製、品番:UCI−635L)
〔2−ヒドロキシ−4−(メタクリロイルオキシエトキシ)ベンゾフェノン〕
とメタクリル酸メチルとの50wt%:50wt%共重合体樹脂
1質量部
希釈溶剤(トルエン−メチルエチルケトン50/50質量比) 80質量部
[実施例2]
配合1の代わりに下記配合4を用いた以外は、実施例1と同様にして、実施例2の帆布状の遮熱膜材を得た。配合4には、近赤外線に吸収の少ないフタロシアニン系有機顔料としてC.I.ピグメントブルー15:3を用いており、得られた遮熱膜材は明るい青色外観であった。この遮熱膜材について、防汚層が形成された側をおもて面として評価を行った。結果を表1に示す。
<配合4>
ポリ塩化ビニル樹脂(重合度1600) 100質量部
フタル酸ジ−2−エチルヘキシル(可塑剤) 70質量部
三酸化アンチモン(難燃剤) 10質量部
ステアリン酸亜鉛(安定剤) 2質量部
ステアリン酸バリウム(安定) 2質量部
紫外線吸収剤:ベンゾトリアゾール系 0.5質量部
希釈溶剤:トルエン 20質量部
C.I.ピグメントブルー15:3(フタロシアニン系有機顔料) 1.8質量部
[実施例3]
配合2の代わりに下記配合5を用いた以外は、実施例1と同様にして、乳白色外観の帆布状の遮熱膜材を得た。配合5において、酸化チタン粒子および硫酸バリウム粒子の質量比は1:2であった。また、近赤外線遮蔽層における遮熱性付与剤の量は、10質量%であった。この遮熱膜材について、防汚層が形成された側をおもて面として評価を行った。結果を表2に示す。
<配合5>遮熱性付与剤組成
酸化チタン粒子(TiO:平均粒子径1.0μm) 7質量部
硫酸バリウム粒子(BaSO:平均粒子径0.5μm) 14質量部
[実施例4]
配合2の代わりに下記配合6を用いた以外は、実施例1と同様にして、乳白色外観の帆布状の遮熱膜材を得た。配合6において、酸化チタン粒子として、アスペクト比1〜2.5の不定型なルチル型酸化チタン粒子をアルミナで表面被覆(酸化チタン94質量%、アルミナ6質量%)した平均粒子径1.2μmの不定形粒子を用いた。また、硫酸バリウム粒子としては、アスペクト比1〜2.5の不定型な沈降性硫酸バリウム粒子をシリカ−アルミナで表面被覆(硫酸バリウム95質量%、シリカ−アルミナ5質量%)した平均粒子径0.7μmの不定形粒子を用い、酸化チタン粒子および硫酸バリウム粒子の質量比は1:4であった。この遮熱膜材について、防汚層が形成された側をおもて面として評価を行った。結果を表1に示す。
<配合6>遮熱性付与剤組成
酸化チタン粒子(TiO:平均粒子径1.2μm) 4質量部
硫酸バリウム粒子(BaSO:平均粒子径0.7μm) 16質量部
[実施例5]
配合2の代わりに下記配合7を用いた以外は、実施例1と同様にして、乳白色外観の帆布状の遮熱膜材を得た。配合7において、酸化チタン粒子として、アスペクト比1〜2.5の不定型なルチル型酸化チタン粒子をアルミナで表面被覆(酸化チタン93質量%、アルミナ7質量%)した、平均粒子径0.6μmの不定形粒子を用いた。また、硫酸バリウム粒子としては、アスペクト比1〜2.5の不定型な沈降性硫酸バリウム粒子をシリカ−アルミナで表面被覆(硫酸バリウム95質量%、シリカ−アルミナ5質量%)した、平均粒子径1.0μmの不定形粒子を用い、酸化チタン粒子および硫酸バリウム粒子の質量比は1:4であった。この遮熱膜材について、防汚層が形成された側をおもて面として評価を行った。結果を表1に示す。
<配合7>遮熱性付与剤組成
酸化チタン粒子(TiO:平均粒子径0.6μm) 4質量部
硫酸バリウム粒子(BaSO:平均粒子径1.0μm) 16質量部
実施例1〜5の遮熱膜材はいずれも本発明の要件を満たし、初期の遮熱性に優れ、採光性にも優れ、かつ、折り曲げ部の白化も認められなかった。また、それぞれが、近赤外線遮蔽層上に防汚層を有するため、1年間の屋外曝露後もほとんどその性能が損なわれていなかった。実施例1は近赤外線遮蔽層に平均粒子径1.0μmの酸化チタン粒子と平均粒子径0.5μmの硫酸バリウム粒子を含む、乳白色の遮熱膜材であり、高い採光性と優れた遮熱性を示すものであった。実施例2は近赤外線遮蔽層にさらに有彩色の着色剤を含むものであり、近赤外線遮蔽層は着色剤により有効に彩色されていた。着色剤を含むことで採光性は実施例1よりやや劣るものの、近赤外線領域に吸収の少ない有機顔料が用いられている為、遮熱性については、実施例1より僅かに劣る程度であった。実施例3は、実施例1に比べて遮熱性付与剤における酸化チタン粒子の割合が高くなっているが、本発明の要件の範囲内であり、実施例1に比べて採光性がやや劣るものの、優れた遮熱性を示していた。実施例4および5は実施例1とは酸化チタン粒子と硫酸バリウム粒子の平均粒子径の組み合わせが異なるが、いずれも本発明の要件を満たしており、採光性、遮熱性ともに優れていた。
[実施例6]
1、基布
経糸、緯糸ともにポリエステルマルチフィラメント糸555dtex(500d)を配置し、経糸打ち込み密度が18本/25.4mm、緯糸打ち込み密度が19本/25.4mmであり、質量70g/mの粗目状平織物を基布2として使用した。
2、膜材の形成
下記配合8の軟質ポリ塩化ビニル樹脂組成物に下記配合9の遮熱性付与剤を加えたコンパウンドを用いて、カレンダー成型法により、遮熱性付与剤を10質量%含む厚さ0.2mmの近赤外線遮蔽層用軟質ポリ塩化ビニル樹脂フィルム6−1を成型した。ついで、配合8のみを用いて、カレンダー成型法により、遮熱性付与剤を含まない厚さ0.2mmの軟質ポリ塩化ビニル樹脂フィルム6−2を成型した。次に、得られたフィルム6−1とフィルム6−2の中間に基布2を挿入し、熱圧着により積層してターポリン状の膜材を得た。なお、配合9において、酸化チタン粒子として、アスペクト比1〜2.5の不定型なルチル型酸化チタン粒子をアルミナで表面被覆(酸化チタン94質量%、アルミナ6質量%)した、平均粒子径1.0μmの不定形粒子を用いた。また、硫酸バリウム粒子としては、アスペクト比1〜2.5の不定型な沈降性硫酸バリウム粒子をシリカ−アルミナで表面被覆(硫酸バリウム95質量%、シリカ−アルミナ5質量%)した、平均粒子径0.4μmの不定形粒子を用い、酸化チタン粒子および硫酸バリウム粒子の質量比は1:3であった。
<配合8>軟質ポリ塩化ビニル樹脂組成物
ポリ塩化ビニル樹脂(重合度1300) 100質量部
フタル酸ジ−2−エチルヘキシル(可塑剤) 60質量部
リン酸トリクレジル(可塑剤) 10質量部
三酸化アンチモン(難燃剤) 10質量部
ステアリン酸亜鉛(安定剤) 2質量部
ステアリン酸バリウム(安定剤) 2質量部
紫外線吸収剤:ベンゾトリアゾール系 0.5質量部
<配合9>遮熱性付与剤組成
酸化チタン粒子(TiO:平均粒子径1.0μm) 5質量部
硫酸バリウム粒子(BaSO:平均粒子径0.4μm) 15質量部
3、防汚層の形成
膜材の近赤外線遮蔽層側の面上に、配合3の防汚層塗工液をグラビアコーターによりコーティング加工し、120℃で3分間乾燥した。これによって近赤外線遮蔽層上に5g/mの防汚層が形成された乳白色外観の遮熱膜材が得られた。この遮熱膜材について、防汚層が形成された側をおもて面として評価を行った。結果を表2に示す。
[実施例7]
1、基布
実施例6と同様基布2を用いた。
2、膜材の形成
下記配合10の軟質ポリ塩化ビニル樹脂組成物に、配合9の遮熱性付与剤を加えたコンパウンドを用いて、カレンダー成型法により、遮熱性付与剤を10質量%含む厚さ0.2mmの近赤外線遮蔽層用軟質ポリ塩化ビニル樹脂フィルム7−1を成型した。次いで、配合8を用いて、カレンダー成型法により厚さ0.2mmの軟質ポリ塩化ビニル樹脂フィルム7−2を成型した。次いで、得られたフィルム7−1とフィルム7−2の中間に基布2を挿入し、熱圧着により積層してターポリン状の膜材を得た。なお、配合10には、近赤外線に吸収の少ない無機顔料として平均粒子径600nmのCr−Sb−Tiの複合酸化物(黄色)を用いた事により、得られた膜材は近赤外線遮蔽層側から見て明るい黄色外観であった。
<配合10>軟質ポリ塩化ビニル樹脂組成物
ポリ塩化ビニル樹脂(重合度1300) 100質量部
フタル酸ジ−2−エチルヘキシル(可塑剤) 60質量部
リン酸トリクレジル(可塑剤) 10質量部
三酸化アンチモン(難燃剤) 10質量部
無機顔料(Cr−Sb−Ti複合酸化物:平均粒子径600nm) 2質量部
ステアリン酸亜鉛(安定剤) 2質量部
ステアリン酸バリウム(安定剤) 2質量部
紫外線吸収剤:ベンゾトリアゾール系 0.5質量部
3、防汚層の形成
実施例6と同様にして、近赤外線遮蔽層上に5g/mの防汚層を形成して、実施例7の遮熱膜材を得た。この遮熱膜材について、防汚層が形成された側をおもて面として評価を行った。結果を表2に示す。
[実施例8]
実施例7と同様にして、ターポリン状の遮熱膜材を得た。ただし、配合10の代わりに、下記配合11を用いた。配合11には、近赤外線に吸収の少ない無機顔料として平均粒子径50nmのCo−Alの複合酸化物(青色)を用いており、得られた遮熱膜材は近赤外線遮蔽層側から見て明るい青色外観であった。この遮熱膜材について、防汚層が形成された側をおもて面として評価を行った。結果を表2に示す。
<配合11>軟質ポリ塩化ビニル樹脂組成物
ポリ塩化ビニル樹脂(重合度1300) 100質量部
フタル酸ジ−2−エチルヘキシル(可塑剤) 60質量部
リン酸トリクレジル(可塑剤) 10質量部
三酸化アンチモン(難燃剤) 10質量部
無機顔料(Co−Al複合酸化物:平均粒子径50nm) 2質量部
ステアリン酸亜鉛(安定剤) 2質量部
ステアリン酸バリウム(安定剤) 2質量部
紫外線吸収剤:ベンゾトリアゾール系 0.5質量部
[実施例9]
実施例8と同様にして実施例9のターポリン状の遮熱膜材を得た。ただし、配合3の代わりに、下記配合12の硫酸バリウム粒子を含む防汚層塗工液を用いて、6g/mの防汚層を形成した。防汚層に用いた硫酸バリウム粒子は、アスペクト比1〜2.5の不定型な沈降性硫酸バリウム粒子をシリカ−アルミナで表面被覆(硫酸バリウム95質量%、シリカ−アルミナ5質量%)した、平均粒子径0.5μmの不定形粒子であり、形成された防汚層には硫酸バリウム粒子が10質量%含まれていた。得られた遮熱膜材の色相は近赤外線遮蔽層側から見て、実施例8とほぼ同等の明るい青色外観であった。この遮熱膜材について、防汚層が形成された側をおもて面として評価を行った。結果を表2に示す。
<配合12>防汚層塗工液
アクリル系樹脂(三菱レイヨン(株)製、商標:アクリプレンHBS001)
4質量部
フッ素系樹脂(ビニリデンフルオライド−テトラフルオロエチレン共重合体樹脂、
エルフ・アトケム・ジャパン(株)製、商標:カイナー7201) 12質量部
高分子型紫外線吸収剤(一方社油脂工業(株)製、品番:UCI−635L)
〔2−ヒドロキシ−4−(メタクリロイルオキシエトキシ)ベンゾフェノン〕
とメタクリル酸メチルとの50wt%:50wt%共重合体樹脂
1質量部
硫酸バリウム粒子(BaSO:平均粒子径0.5μm) 2質量部
希釈溶剤(トルエン−メチルエチルケトン50/50質量比) 80質量部
[実施例10]
配合8の代わりに、下記配合13を、配合9の代わりに下記配合14を、それぞれ用いた以外は、実施例6と同様にして実施例10のターポリン状の遮熱膜材を得た。配合13では、可塑剤の一部として2官能以上のアクリレートモノマーを、可塑剤全体の5.4質量%併用した。また、配合14で用いた酸化チタン粒子は配合9で用いたものと同じであるが、硫酸バリウム粒子については、アスペクト比1〜2.5の不定型な沈降性硫酸バリウム粒子をシリカ−アルミナで表面被覆(硫酸バリウム95質量%、シリカ−アルミナ5質量%)した、平均粒子径0.6μmの不定形粒子を用いた。また、近赤外線遮蔽層における遮熱性付与剤の量は18%であった。この遮熱膜材について、防汚層が形成された側をおもて面として評価を行った。結果を表2に示す。
<配合13>軟質ポリ塩化ビニル樹脂組成物
ポリ塩化ビニル樹脂(重合度1300) 100質量部
フタル酸ジ−2−エチルヘキシル(可塑剤) 60質量部
リン酸トリクレジル(可塑剤) 10質量部
ペンタエリスリトールテトラアクリレート(可塑剤) 4質量部
(アクリロイル基を4個有する化合物)
三酸化アンチモン(難燃剤) 10質量部
ステアリン酸亜鉛(安定剤) 2質量部
ステアリン酸バリウム(安定剤) 2質量部
紫外線吸収剤:ベンゾトリアゾール系 0.5質量部
<配合14>遮熱性付与剤組成
酸化チタン粒子(TiO:平均粒子径1.0μm) 10質量部
硫酸バリウム粒子(BaSO:平均粒子径0.6μm) 30質量部
実施例6〜10は、いずれの遮熱膜材も本発明の要件を満たし、遮熱性に優れ、採光性にも優れ、かつ、折り曲げ部の白化も認められなかった。また、それぞれが、近赤外線遮蔽層上に防汚層を有するため、1年間の屋外曝露後もほとんどその性能が損なわれていなかった。実施例6は乳白色のターポリン状遮熱膜材であり、非常に高い採光性と優れた遮熱性を示すものであった。実施例7および実施例8は近赤外線遮蔽層に有彩色の着色剤を含むものであり、近赤外線遮蔽層は着色剤により有効に彩色されていた。実施例7および実施例8は着色剤を含むため、それぞれ採光性は実施例6よりやや劣るものの、近赤外線領域に吸収の少ない金属複合酸化物からなる無機顔料である為、遮熱性については、実施例6と同等であった。実施例9は、防汚層に平均粒子径0.5μmの硫酸バリウム粒子を10質量%含むことを除けば、実施例8と同じ構成であるが、防汚層に硫酸バリウム粒子を含むことで、可視光透過率をほとんど下げる事無く遮熱性が向上しており、しかも、色相にはほとんど影響がなかった。実施例10は、近赤外線遮蔽層における遮熱性付与剤の量が実施例1に対して大幅に増えて18%となっているが、初期の可視光透過率16%を有して採光性に優れ、かつ、遮熱性にも優れており、遮熱性付与剤が多いにもかかわらず折り曲げ部の白化も認められなかった。
[比較例1]
配合2の遮熱性付与剤の代わりに、アスペクト比1〜2.5のルチル型酸化チタン粒子をアルミナで表面被覆(酸化チタン92質量%、アルミナ8質量%)した、平均粒子径0.25μmの不定形粒子20質量部を用いた以外は、実施例1と同様にして帆布状の膜材を得た。得られた膜材は白色外観であった。この膜材について、防汚層が形成された側をおもて面として評価を行った。結果を表3に示す。
比較例1の膜材は、本発明の遮熱性付与剤の代わりに顔料用酸化チタン粒子を用いたものである。顔料用酸化チタン粒子により可視光領域が強く散乱される一方、近赤外線領域の散乱の散乱が弱いため、実施例1と比べて採光性・遮熱性ともに大きく劣っていた。
[比較例2]
配合2の遮熱性付与剤の代わりに、アスペクト比1〜2.5のルチル型酸化チタン粒子をアルミナで表面被覆(酸化チタン94質量%、アルミナ6質量%)した、平均粒子径1.0μmの不定形粒子10質量部(近赤外線遮蔽層中に5質量%)を用いた以外は、実施例1と同様にして帆布状の膜材を得た。得られた膜材は乳白色外観であった。この膜材について、防汚層が形成された側をおもて面として評価を行った。結果を表3に示す。
[比較例3]
配合2の遮熱性付与剤の代わりに、アスペクト比1〜2.5のルチル型酸化チタン粒子をアルミナで表面被覆(酸化チタン94質量%、アルミナ6質量%)した、平均粒子径1.0μmの不定形粒子16質量部(近赤外線遮蔽層中に8質量%)を用いた以外は、実施例1と同様にして帆布状の膜材を得た。得られた膜材は白色外観であった。この膜材について、防汚層が形成された側をおもて面として評価を行った。結果を表3に示す。
比較例2および比較例3の膜材は、本発明の遮熱性付与剤の代わりに、平均粒子径1.0μmの粗粒酸化チタン粒子のみを用いたものである。この粗粒酸化チタン粒子は、近赤外線領域に散乱のピークを有し、近赤外線が強く散乱される一方、可視光領域の散乱が弱いため、従来より。採光性を有しながら遮熱性を付与することのできる添加剤として、単独で用いられているものである。その為、比較例2は比較例1に比べて近赤外線遮蔽層中の含有量が少ないにもかかわらず遮熱性が同等であり、しかも採光性が優れていた。しかし、実施例1との比較では、比較例2は実施例1と採光性が同程度である一方遮熱性が劣り、比較例3は実施例1と遮熱性が同程度である一方採光性が大きく劣っていた。このことから、本発明によれば、従来方法に比べて、遮熱性と採光性を、共に、より高いレベルで得られる事がわかる。
[比較例4]
配合2の代わりに、アスペクト比1〜2.5のルチル型酸化チタン粒子をアルミナで表面被覆(酸化チタン94質量%、アルミナ6質量%)した、平均粒子径1.0μmの不定形粒子20質量部を用いた以外は、実施例2と同様にして、比較例4の帆布状の膜材を得た。得られた膜材は、薄い水色の外観であった。この膜材について、防汚層が形成された側をおもて面として評価を行った。結果を表3に示す。
比較例4の膜材は、色相に対する酸化チタン粒子の影響が大きく、青色の顔料を加えても薄い水色にしかならず、彩色性が実施例2と比べて劣っていた。また、近赤外線領域に散乱のピークがある粗粒酸化チタンを多く含むため、可視光領域も散乱され、実施例2に比べてに比べて採光性が大きく劣っていた。
[比較例5]
配合2の代わりに、下記配合15を用いた以外は実施例1と同様にして比較例5の帆布状の膜材を得た。得られた膜材は白色外観であった。この膜材について、防汚層が形成された側をおもて面として評価を行った。結果を表3に示す。
<配合15>
酸化チタン粒子(TiO:平均粒子径1.0μm) 14質量部
硫酸バリウム粒子(BaSO:平均粒子径0.4μm) 7質量部
比較例5は、酸化チタン粒子の質量よりも硫酸バリウム粒子の質量が少なく、質量比で2:1であり、実施例1に比べて採光性が劣っていた。
[比較例6]
配合2の代わりに、下記配合16を用いた以外は実施例1と同様にして比較例6の帆布状の膜材を得た。得られた膜材は乳白色外観であった。配合16において、硫酸バリウム粒子として、アスペクト比1〜2.5の不定型な簸性硫酸バリウム粒子をシリカ−アルミナで表面被覆(硫酸バリウム96質量%、シリカ−アルミナ4質量%)した、平均粒子径2.0μmの不定型粒子を用いた。この膜材について、防汚層が形成された側をおもて面として評価を行った。結果を表4に示す。
<配合16>
酸化チタン粒子(TiO:平均粒子径1.0μm) 5質量部
硫酸バリウム粒子(BaSO:平均粒子径2.0μm) 15質量部
比較例6では、平均粒子径が2.0μmの硫酸バリウム粒子が用いられており、実施例1と比較して遮熱性が劣っていた。硫酸バリウム粒子の平均粒子径が1.2μmを超えて2.0μmであったため、特に太陽放射に多く含まれる780〜1400nmの近赤外線の散乱が充分に行われず、遮熱性の向上に寄与しなかったものと考えられる。
[比較例7]
配合2の代わりに、下記配合17を用いた以外は実施例1と同様にして比較例7の帆布状の膜材を得た。配合17では硫酸バリウム粒子として、アスペクト比1〜2.5の不定型な沈降性硫酸バリウム粒子をシリカ−アルミナで表面被覆(硫酸バリウム92質量%、シリカ−アルミナ8質量%)した、平均粒子径0.1μmの不定形粒子を用いた。得られた膜材は乳白色外観であった。この膜材について、防汚層が形成された側をおもて面として評価を行った。結果を表4に示す。
<配合17>
酸化チタン粒子(TiO:平均粒子径1.0μm) 5質量部
硫酸バリウム粒子(BaSO:平均粒子径0.1μm) 15質量部
比較例7では、平均粒子径が0.1μmの硫酸バリウム粒子が用いられており、実施例1と比較して遮熱性が劣っていた。硫酸バリウム粒子の平均粒子径が0.3μm未満であったため、近赤外線の散乱が充分でなく、遮熱性の向上に寄与しなかったものと考えられる。
[比較例8]
配合9の代わりに、下記配合18を用いた以外は実施例6と同様にして比較例8のターポリン状の膜材を得た。得られた膜材は乳白色外観であった。この膜材について、防汚層が形成された側をおもて面として評価を行った。結果を表4に示す。
<配合18>
酸化チタン粒子(TiO:平均粒子径1.0μm) 2.5質量部
硫酸バリウム粒子(BaSO:平均粒子径0.4μm) 17.5質量部
比較例8の膜材は、酸化チタン粒子の質量に対する硫酸バリウム粒子の質量が5倍を超えて7倍であったため、実施例6に比べて採光性は優れていたものの遮熱性が大きく劣っていた。
[比較例9]
配合9の代わりに、下記配合19を用い、防汚層を省略した以外は実施例6と同様にして比較例9のターポリン状の膜材を得た。近赤外線遮蔽層における遮熱性付与剤の量は30質量%であり、得られた膜材は白色外観であった。この膜材について、近赤外線遮蔽層が形成された側をおもて面として評価を行った。結果を表4に示す。
<配合19>
酸化チタン粒子(TiO:平均粒子径1.0μm) 20質量部
硫酸バリウム粒子(BaSO:平均粒子径0.6μm) 60質量部
比較例9は、近赤外線遮蔽層に含まれる遮熱性付与剤の量が30質量%であり、遮熱性付与剤を多量に含むため、初期の遮熱性は実施例6より優れていたが、採光性は著しく劣っていた。また、防汚層を設けなかったため、屋外曝露1年後には、表面に付着した汚れにより遮熱性が低下していた。更に、近赤外線遮蔽層に含まれる遮熱性付与剤の量が多かったため、折り曲げ試験において折り曲げ部に表面白化を生じていた。
[参考例1]
配合13の代わりに配合8を用いた以外は、実施例10と同様にしてターポリン状の膜材を得た。この膜材について、近赤外線遮蔽層が形成された側をおもて面として評価を行った。結果を表4に示す。
参考例1の膜材は、実施例10とは、軟質ポリ塩化ビニル樹脂組成物に、可塑剤として2官能以上のアクリレートモノマーを含まない点が異なる。採光性と遮熱性については実施例10と同等であったが、折り曲げ試験では折り曲げ部に表面白化を生じていた。このことから、近赤外線遮蔽層に含まれる遮熱性付与剤の量が多くなると、折り曲げ部に白化を生じ易くなるが、可塑剤として2官能以上のアクリレートモノマーを含むことで、白化を防げることが確認された。
本発明の遮熱膜材は、適度な採光性と優れた遮熱性により、その膜材に覆われた空間に快適な環境をもたらすことができ、しかも彩色性も有するため、特にテント倉庫、イベント向けテント、日除けテント、日除けモニュメント、装飾テント、ブラインド、シートシャッター、トラック幌などに好適に用いることができる。
1:遮熱シート
2:近赤外線遮蔽層
3:遮熱性付与剤
3−1:酸化チタン粒子
3−2:硫酸バリウム粒子
4:基布
5:防汚層
6:近赤外線遮蔽層以外の樹脂層
7:遮熱性評価に用いた小型テント
8:実施例、比較例で作成した膜材

Claims (5)

  1. 少なくとも1層の近赤外線遮蔽層を有する可撓性シートであり、前記近赤外線遮蔽層が、軟質ポリ塩化ビニル樹脂組成物からなるマトリックス樹脂と、遮熱性付与剤として、平均粒子径0.5〜2.0μmの酸化チタン粒子、および、平均粒子径0.3〜1.2μmの硫酸バリウム粒子を、前記マトリックス樹脂中に分散して含み、前記近赤外線遮蔽層に含まれる前記遮熱性付与剤が5〜25質量%であり、かつ、前記遮熱性付与剤における前記酸化チタン粒子および前記硫酸バリウム粒子の質量比が1:1〜1:5であることを特徴とする、採光性に優れた遮熱膜材。
  2. 前記酸化チタン粒子および前記硫酸バリウム粒子が、それぞれ独立して、シリカ、シリカ−アルミナ、アルミナおよび酸化ジルコニウムから選ばれた無機物質、シラン系、チタネート系およびアルミネート系から選ばれたカップリング剤、のいずれか1種または2種以上により表面被覆されている、請求項1に記載の採光性に優れた遮熱膜材。
  3. 前記可撓性シートが、繊維材料より形成された基布層を有する、請求項1または2に記載の採光性に優れた遮熱膜材。
  4. 前記近赤外線遮蔽層上に防汚層を有する、請求項1から3いずれか1項に記載の採光性に優れた遮熱膜材。
  5. 前記防汚層が、平均粒子径0.3〜0.7μmの硫酸バリウム粒子を3〜30質量%含む、請求項4に記載の採光性に優れた遮熱膜材。
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