JP2015101930A - 採光性遮熱膜材 - Google Patents
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Abstract
【課題】特に太陽放射に対する遮熱性に優れ、採光性に優れ、彩色が可能で、かつ、高周波ウェルダーによる縫製が可能な膜材の提供。【解決手段】少なくとも1層の近赤外線遮蔽層を有する可撓性シートであって、前記近赤外線遮蔽層が、熱可塑性樹脂と、平均一次粒子径0.01〜0.20μmの導電性金属酸化物微粒子、および、平均粒子径0.3〜1.2μmの硫酸バリウム粒子を含み、前記近赤外線遮蔽層が、前記導電性金属酸化物微粒子と前記硫酸バリウム粒子を合わせて3〜20質量%含み、前記近赤外線遮蔽層中において、前記導電性金属酸化物微粒子と前記硫酸バリウム粒子の質量比を1:2〜1:10とする。【選択図】図1
Description
本発明は、採光性を有しながら遮熱性に優れ、彩色も可能な可撓性シートに関するものである。更に詳しく述べるならば、本発明は、テント倉庫、イベント向けテント、日除けテント、日除けモニュメント、装飾テント、ブラインド、シートシャッター、トラック幌などに用いられる高周波ウェルダー縫製が可能な可撓性の膜材であり、例えばテント倉庫など全体が覆われた膜構造物に用いた場合、日中であれば特に照明を用いる事無く作業を行う事ができる採光性を有し、彩色が可能であり、近赤外線を遮蔽して、特に太陽放射に対する遮熱性に優れた膜材に関するものである。
繊維基布に可撓性樹脂をコーティング法、ディッピング法、カレンダー法やTダイ押出し法などの方法により被覆した膜材は、組立及び施工が容易であり、色相やデザインの自由度が高い等の理由から、テント倉庫、イベント向けテント、日除けテント、日除けモニュメント、装飾テント、ブラインド、トラック幌等、雨よけ、日よけの分野に広く利用されている。しかしながら、従来の膜材は、雨を防いだり、日光を遮ってまぶしさを防ぎ、更に紫外線を低減させることはできても、太陽放射に含まれる近赤外線を透過して、冷涼効果に関してはほとんど認められないのが実情であった。
この様な問題に対して、可撓性樹脂層に近赤外線領域で反射率の高い金属からなる粉末を練り込む方法(例えば、特許文献1参照)が提案されているが、この方法では、赤外線を遮ることができる一方、可視光線も遮られてしまい、採光性を有する膜材を得ることはできなかった。
また、建物の外壁などで、バインダー樹脂に酸化チタン粒子を分散した白色の塗膜は、ある程度の遮熱性を示すことが経験上知られている。酸化チタンは高い屈折率(ルチル型で2.71)を有する物質であり、樹脂(一般的な樹脂の屈折率は1.4〜1.65程度)に分散させると、樹脂との屈折率差が大きいため、光を強く散乱して白く見える。顔料向けとしては一般に、粒子径に依存した散乱特性(光の散乱のピークが粒子径の倍の波長となる)から、可視領域(380〜780nm)の散乱を強くする為に通常平均粒子径0.2〜0.3μm(200〜300nm)の酸化チタン粒子が使用されている。しかし、この粒子径の酸化チタン粒子は可視領域の光を強く散乱する一方で、近赤外線(780〜2500nm)の散乱は弱いので、充分な遮熱性を得るためには顔料向け酸化チタン粒子を多量に添加する必要があり、その結果、可視領域の散乱が大きくなって、隠蔽性の高い白色外観となってしまい、有彩色の顔料を添加しても着色の効果を得にくい。すなわち、これを膜材に応用した場合、採光性が得られないばかりでなく、色相のバリエーションも得られなくなってしまう。
これに対して、近年、顔料向けよりも粒子径の大きな粗粒酸化チタン粒子を用いる方法が提案されている。(例えば、特許文献2参照)これにより、近赤外線領域に散乱のピークが生じて遮熱性が向上する一方、可視光領域の散乱は抑制されるため、顔料向け酸化チタン粒子を用いるのに比べて、彩色性や、採光性を向上させることができる。ところで、太陽放射に含まれる近赤外線の多くは780nm〜1400nmの領域にあり、その領域中でも可視光領域に近い波長ほど放射照度が高い為、遮熱性の向上を考えるならば、この範囲で、より短波長側に散乱のピークを設定するのが良い。しかし、可視光領域の近傍に散乱のピークがあると可視光の散乱が充分に抑制されず、採光性、彩色性の面からはマイナスとなる。その対応として、可視光の散乱を抑制する為に、より粒径の大きな粗粒酸化チタン粒子を用いて散乱のピークをより長波長側にシフトさせると、780nm〜1400nmの散乱が減少して遮熱性まで低下してしまうジレンマがあり、粗粒酸化チタン粒子を用いて遮熱性、採光性を両立させることには限界があった。
また、スズドープ酸化インジウム(ITO)やアンチモンドープ酸化スズ(ATO)などの導電性金属酸化物は、可視光を透過して赤外線を遮蔽する特性が知られており、その特性を活かして、導電性金属酸化物微粒子を樹脂に分散した赤外線遮蔽薄膜およびシートも提案されている。(例えば、特許文献3参照)この方法によれば、可視光を透過して透明性を有する樹脂膜でありながら、近赤外線を遮蔽して遮熱性を得る事ができる。しかし、充分な遮熱性を得るためには、導電性金属酸化物微粒子を樹脂中に多量に分散させる必要がある一方、導電性金属酸化物微粒子には可視領域に多少の吸収があり、これを多量に加えると樹脂層に着色して色相への影響が大きくなる問題があった。また、導電性金属酸化物は一般に高価であり、テントや日除け用の膜材に多量に用いることはコスト面で不利である。更に、テントや日除け用の膜材は、一般に高周波ウェルダーによる溶融縫製が行われるが、導電性金属酸化物微粒子を多量に含む樹脂層は導電性を示すため、縫製時にスパークを生じ易い問題も有している。それに対して樹脂中に分散させる導電性金属酸化物微粒子の量を減らすと、量が減るに従って、780nm〜1400nmの部分の遮蔽性が低下してしまい、特に太陽放射に対する遮熱性が充分に得られなくなってしまう問題があった。
以上の様に、テント倉庫や日よけテントなどに用いる可撓性膜材であって、高い遮熱性を有しながら、適度な採光性を有し、高周波ウェルダーによる縫製が可能であり、かつ、彩色も可能な膜材は、これまで提供されていなかった。
本発明は、上記従来技術の課題を解決し、可視領域の光線を透過して採光性に優れ、彩色が可能であり、近赤外領域の光線を遮蔽して、太陽放射に対する遮熱性に優れており、高周波ウェルダー縫製が可能であり、特にテント倉庫、イベント向けテント、日除けテント、日除けモニュメント、装飾テント、ブラインド、シートシャッター、トラック幌などに好適に用いられる可撓性膜材を提供しようとするものである。
本発明者は、上記課題を解決する為鋭意検討を行った結果、可視光透過性と近赤外線の遮蔽性を有する導電性金属酸化物微粒子と、可視光領域から近赤外線領域にかけて吸収が少ない硫酸バリウムを併用し、その際、両者の粒子径の組み合わせ、配合比、および添加量を特定の範囲とすることで、膜材の採光性を損なわずに、優れた遮熱性を有する膜材が得られることを見出し、本発明を完成させた。
すなわち、本発明の採光性遮熱膜材は、少なくとも1層の近赤外線遮蔽層を有する可撓性シートであって、前記近赤外線遮蔽層が、熱可塑性樹脂と、平均一次粒子径0.01〜0.20μmの導電性金属酸化物微粒子、および、平均粒子径0.3〜1.2μmの硫酸バリウム粒子を含み、前記近赤外線遮蔽層が、前記導電性金属酸化物微粒子と前記硫酸バリウム粒子を合わせて3〜20質量%含み、前記近赤外線遮蔽層中において、前記導電性金属酸化物微粒子と前記硫酸バリウム粒子の質量比が1:2〜1:10であることを特徴とする。
本発明の採光性遮熱膜材において、前記導電性金属酸化物微粒子が、スズドープ酸化インジウム粒子、アンチモンドープ酸化スズ粒子、タンタルドープ酸化スズ粒子、リンドープ酸化スズ粒子、ニオブドープ酸化チタン粒子、アルミニウムドープ酸化亜鉛粒子、および、ガリウムドープ酸化亜鉛粒子から選ばれた1種または2種以上以上からなることが好ましい。
本発明の採光性遮熱膜材において、前記可撓性シートが、繊維材料より形成された基布層を有することが好ましい。
本発明の採光性遮熱膜材において、前記近赤外線遮蔽層上に防汚層を有することが好ましい。
本発明の採光性に優れた遮熱膜材において、前記防汚層が、平均粒子径0.3〜0.7μmの硫酸バリウム粒子を3〜20質量%含むことが好ましい。
本発明によれば、可視領域の光線を透過して採光性に優れ、かつ、近赤外領域の光線を遮蔽して、特に太陽放射に対する遮熱性に優れ、しかも彩色性も有する可撓性膜材を提供する事ができる。本発明の可撓性膜材は、テント倉庫、イベント向けテント、日除けテント、日除けモニュメント、装飾テント、ブラインド、シートシャッター、トラック幌などに好適に用いられ、この可撓性膜材に覆われた空間を、明るく涼しい快適な環境にすることができ、日中の照明や、エアコンなどにかかる費用を削減することができる。
本発明の採光性遮熱膜材は、近赤外線遮蔽層を有する可撓性シートであって、その形態は樹脂シート(樹脂フィルム)、または、帆布、ターポリン等の防水性シートである。このうち樹脂シートは、カレンダー成型法、Tダイス押出法、あるいはキャスティング法などにより製造することができ、近赤外線遮蔽層単層であっても良く、近赤外線遮蔽層を含む複数の樹脂層からなる積層体であっても良い。帆布(図1参照)、ターポリン(図2参照)等の防水性シートは、近赤外線遮蔽層と繊維材料より形成された基布層とを含む積層体であり、近赤外線遮蔽層は基布の一方の面のみに形成されても良く、両面に形成されても良い。近赤外線遮蔽層が基布の一方の面のみに形成される場合、基布のもう一方の面側には近赤外線遮蔽層以外の樹脂層が形成されても良い。帆布は、樹脂加工液(ペーストゾル、樹脂溶液、樹脂分散液)を用いるディッピング加工(基布への両面加工)、及びコーティング加工(基布への片面加工、または両面加工)等によって製造することができる。ターポリンはカレンダー成型法、Tダイス押出法またはキャスティング法により成型された樹脂フィルム又は樹脂シートを、基布の片面または両面に接着層を介在して積層する方法、あるいは粗目状の繊維性編織物の両面に目抜け空隙部を介して熱ラミネート積層する方法により製造することができ、さらにディッピング加工、またはコーティング加工と、樹脂フィルム積層の組み合わせによっても実施可能である。
本発明において近赤外線遮蔽層は、熱可塑性樹脂と、導電性金属酸化物微粒子、および、硫酸バリウム粒子とを、必須として含むものである。
本発明において近赤外線遮蔽層に含まれる導電性金属酸化物微粒子としては、スズドープ酸化インジウム(ITO)、アンチモンドープ酸化スズ(ATO)、二酸化スズ(SnO2)、タンタルドープ酸化スズ(TaTO)、リンドープ酸化スズ(PTO)、フッ素ドープ酸化スズ(FTO)、ニオブドープ酸化チタン(NbTO)、酸化亜鉛(ZnO)、アルミニウムドープ酸化亜鉛(AZO)、ガリウムドープ酸化亜鉛(GaZO)、亜鉛−アンチモン複合酸化物、一酸化スズ(SnO)、および酸化銅(I)(Cu2O)などからなる微粒子から1種あるいは2種以上適宜選択して用いることができ、これらの内、スズドープ酸化インジウム、アンチモンドープ酸化スズ、リンドープ酸化スズ、アルミニウムドープ酸化亜鉛、および、ガリウムドープ酸化亜鉛は、採光性と遮熱性を得易いことから、特に好ましく用いられる。導電性金属酸化物微粒子の平均一次粒子径は、0.01〜0.20μmであることが好ましく、0.02〜0.15μmである事がより好ましい。平均一次粒子径がこの範囲であることで、樹脂中に分散させても可視光の散乱が抑えられて採光性が損なわれず、また、少量の添加では導電性を示し難く、高周波ウェルダーでの縫製作業上の危険を回避できる。導電性金属酸化物微粒子の平均一次粒子径が0.01μm未満であると、樹脂への均一な分散が困難となることがあり、0.20μmを超えると、可視光領域の光を散乱して採光性が損なわれたり、樹脂層中で粒子同士が接触し易くなって導電性を示し易くなる事がある。また、本発明において導電性金属酸化物微粒子は、シリカ、アルミナ、シリカ−アルミナ、および酸化ジルコニウムから選ばれた無機物質、シラン系、チタネート系およびアルミネート系から選ばれたカップリング剤、のいずれか1種または2種以上を含む表面被覆剤により被覆されていても良い。なお、本発明において表面被覆された導電性金属酸化物微粒子が用いられる場合、平均一次粒子径や質量については、表面被覆を含む値が用いられる。なお、ここで、導電性金属酸化物微粒子の平均一次粒子径とは、粒子のBET比表面積と真比重から換算した粒子径を示す。
本発明において、硫酸バリウム粒子の平均粒子径は、0.3〜1.2μmであることが好ましく、0.4〜0.7μmである事がより好ましい。硫酸バリウムは可視光領域から近赤外線領域にかけての吸収が少なく、また、硫酸バリウムの屈折率は1.64と、樹脂の屈折率(一般的な樹脂の屈折率は1.4〜1.65程度)との差が小さい為、可視光領域の散乱が少ないため、樹脂に分散させた場合に、採光性や、顔料を加えた時の彩色性をほとんど阻害しない。一方、近赤外領域の散乱も多くはなく、硫酸バリウム粒子を単独で使用したのでは充分な遮熱性を得る事はできないが、硫酸バリウム粒子の平均粒子径を0.3〜1.2μmとすることで近赤外線領域に散乱にピークを生じ、導電性金属酸化物微粒子と併用して用いることで、特に太陽放射に多く含まれる780nm〜1400nmの範囲の散乱を補って遮熱性が向上する。硫酸バリウム粒子の平均粒子径が0.3μm未満では、散乱のピークが可視領域、あるいは紫外領域となり、近赤外線の散乱が向上せず、遮熱性の向上にほとんど寄与しないことがある。硫酸バリウム粒子の平均粒子径が1.2μmを超えると、780nm〜1400nmの範囲の近赤外線の散乱が向上せず、遮熱性が向上しないことがある。なお、本発明において硫酸バリウムとしては、沈降性硫酸バリウム、簸性硫酸バリウム(バライト粉)のいずれを用いても良い。また、ここで、硫酸バリウム微粒子の平均粒子径としては、レーザー回折粒子径分布測定装置で測定した粒子径分布から球体積相当径の平均として求めた値を示す。
本発明において、硫酸バリウム粒子は、シリカ、アルミナ、シリカ−アルミナ、および酸化ジルコニウムから選ばれた無機物質、シラン系、チタネート系およびアルミネート系から選ばれたカップリング剤、のいずれか1種以上により表面被覆されていることが好ましい。硫酸バリウム粒子が、これらの物質により表面被覆されていることで、熱可塑性樹脂への分散性が良好となって遮熱性および採光性が得やすくなり、熱可塑性樹脂との接着性が付与されて近赤外線遮蔽層の樹脂強度が増して折り曲げや摩擦による白化を生じ難くすることができる。なお、本発明において表面被覆された硫酸バリウム粒子が用いられる場合、平均粒子径や質量については、表面被覆を含む値が用いられる。
本発明において、導電性金属酸化物微粒子の平均一次粒子径および硫酸バリウム粒子の平均粒子径を上述の範囲とし、更に近赤外線遮蔽層に含まれる導電性金属酸化物微粒子と硫酸バリウム粒子の質量比を1:2〜1:10とすることで、近赤外線遮蔽層に含まれる導電性金属酸化物微粒子と硫酸バリウム粒子の量が合わせて3〜20質量%と比較的少なくても、高い遮熱性を得ることができ、優れた採光性を得ることができ、かつ、顔料を加えた時の彩色性を阻害しない。さらに、導電性を示し難く、高周波ウェルダーでの縫製作業上の危険を回避できる。導電性金属酸化物微粒子の質量に対して硫酸バリウム粒子の質量が2倍未満である場合、合わせた添加量を多くしなければ遮熱性を得にくくなることがあり、添加量が多くなると導電性金属酸化物微粒子により導電性を生じて高周波ウェルダーでの縫製に問題を生じることがある。導電性金属酸化物微粒子の質量に対して硫酸バリウム粒子の質量が10倍を超えた場合も、全体の添加量を多くしなければ遮熱性を得にくくなることがあり、添加量が多くなると硫酸バリウム粒子により採光性と彩色性が低下することがある。
本発明の近赤外線遮蔽層に含まれる導電性金属酸化物微粒子および硫酸バリウム粒子の量は、合わせて3〜20質量%である。3質量%より少ないと、充分な遮熱性が得られなくなることがあり、20質量%より多いと充分な採光性が得られないことがある。また、導電性金属酸化物微粒子および硫酸バリウム粒子の形状には特に限定は無く、球状の粒子であっても良く、その他、紡錘型、回転楕円形、立方体、円筒形、大きな粒子を粉砕してできた不規則な形状、平板型および棒状など、いずれの形状であっても良い。粒子のアスペクト比にも特に限定は無いが、導電性金属酸化物微粒子および硫酸バリウム粒子それぞれが独立して1〜3の範囲のアスペクト比を有することが好ましい。なお、アスペクト比とは一般に物体の縦横比を指すが、ここでは、粒子の最大縦径とそれに直交する最大の横幅との比を表す。
本発明の近赤外線遮蔽層を構成する熱可塑性樹脂には特に限定は無いが、例えば軟質塩化ビニル樹脂、塩化ビニル系共重合体樹脂、オレフィン樹脂(PE,PPなど)、オレフィン系共重合体樹脂、ウレタン樹脂、ウレタン系共重合体樹脂、アクリル系共重合体樹脂、酢酸ビニル系共重合体樹脂、スチレン系共重合体樹脂、ポリエステル系共重合体樹脂、フッ素含有共重合体樹脂など、可視光領域から近赤外線領域までの光線に対して比較的吸収が少なく、可撓性のある熱可塑性樹脂が好ましく用いられる。
本発明の近赤外線遮蔽層は、上述の熱可塑性樹脂、導電性金属酸化物微粒子、および、硫酸バリウム粒子の他に、有機あるいは無機の顔料を含んで、有彩色の近赤外線散乱層を形成することができる。用いる顔料には特に限定はないが、遮熱性向上のためには、近赤外領域、特に780nm〜1400nmの部分に吸収の少ない顔料である事が好ましい。この様な有機顔料としては、例えば、ペリレン系、ペリノン系、フタロシアニン系、カルボニウム系、アントラキノン系、キノフタロン系、アゾ系(モノアゾ、ジスアゾ、縮合ジスアゾ等)、アゾメチン系、キナクリドン系等の有機顔料を例示することができる。また、無機顔料としては、ルチル型、ヘマタイト型、またはスピネル型構造を有し、チタン、亜鉛、アンチモン、鉄、ニッケル、コバルト、クロム、マグネシウム、銅、マンガン、アルミニウム、ニオブ、及びケイ素の内2種以上の成分を含んでなる金属複合酸化物を例示することができる。
本発明の近赤外線遮蔽層には、本発明の目的を阻害しない限りにおいて、必要に応じて、その他の添加剤、例えば、可塑剤、安定剤、分散剤、滑剤、防炎剤、難燃剤、発泡剤、帯電防止剤、界面活性剤、撥水剤、撥油剤、架橋剤、硬化剤、加工助剤、導電性フィラー、充填剤、防黴剤、抗菌剤、防虫剤、消臭剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、カップリング剤(シラン系、チタネート系、アルミネート系)などを含むことができる。
本発明の採光性遮熱膜材は、繊維材料より形成された基布層を有することが好ましい。本発明の基布層に用いられる繊維素材としては、ポリプロピレン繊維、ポリエチレン繊維、ポリエステル繊維、ナイロン繊維、ビニロン繊維などの合成繊維、木綿、麻などの天然繊維、アセテートなどの半合成繊維、ガラス繊維、シリカ繊維、アルミナ繊維、炭素繊維などの無機繊維が挙げられ、これらは単独または2種以上からなる混用繊維によって構成されていてもよく、その形状はマルチフィラメント糸条、短繊維紡績糸条、モノフィラメント糸条、スプリットヤーン糸条、テープヤーン糸条などいずれであってもよい。本発明に使用する繊維基布は織布、編布、不織布のいずれでもよく、織布の場合平織、綾織、繻子織、模紗織などいずれの構造をとるものでもよいが、平織織物は、得られる採光性遮熱膜材の経緯物性バランスに優れているため好ましく用いられる。編布としてはラッセル編の緯糸挿入トリコットが好ましく用いられる。これら編織物は、少なくともそれぞれ、糸間間隙をおいて平行に配置された経糸及び緯糸を含む糸条により構成された粗目状の編織物(空隙率は最大80%、好ましくは5〜50%)、及び非粗目状編織物(糸条間に実質上間隙が形成されていない編織物)を包含する。不織布としてはスパンボンド不織布などが使用できる。繊維基布には必要に応じて撥水処理、吸水防止処理、接着処理、難燃処理などが施されていても良い。
本発明の採光性遮熱膜材は、経時的な汚れの付着による遮熱性、透光性の低下を防止し、且つ美観を維持するために、近赤外線遮蔽層上に防汚層を有することが好ましい。防汚層は採光性遮熱膜材の遮熱性及び透光性を損なわず極度の隠蔽性を伴わないものであれば、その形成方法及び素材に特に限定はなく、例えば、溶剤に可溶化されたアクリル系樹脂もしくはフッ素系樹脂の少なくとも1種以上からなる樹脂溶液を塗布して形成した塗膜、溶剤に可溶化されたアクリル系樹脂もしくはフッ素系樹脂の少なくとも1種以上からなる樹脂溶液を工程フィルム状に塗布して被膜を形成した後近赤外線遮蔽層上に転写した転写被膜、オルガノシリケート及び/又はその縮合体を含む塗布剤で塗布した親水性被膜層、光触媒性無機材料(例えば光触媒性酸化チタン)と結着剤とを含む塗布剤を塗布した光触媒層、少なくとも最外表面がフッ素系樹脂により形成されたフィルムを接着剤もしくは熱溶融加工により積層したもの、等から適宜選択して用いることができる。
本発明の防汚層は、遮熱性を更に向上させるために、硫酸バリウム粒子を含むことが好ましい。防汚層に硫酸バリウム粒子を加える場合に、その平均粒子径は0.3〜0.7μmであることが好ましい。また、防汚層中の硫酸バリウム粒子の量としては、防汚層の固形分に対して3〜20質量%であることが好ましく、5〜15質量%であることがより好ましい。これにより、近赤外線遮蔽層が彩色されている場合でも色相への影響が少なく、採光性遮熱膜材の採光性をほとんど損なうことなく、遮熱性を更に向上することができる。硫酸バリウム粒子の平均粒子径が0.3μm未満であると遮熱性がほとんど向上しない事がある。平均粒子径が0.7μmを超えると、防汚層を形成するための樹脂溶液中で沈殿を生じて加工が困難となる事があり、また、遮熱性もほとんど向上しないことがある。防汚層中の硫酸バリウム粒子の量が3質量%未満では、遮熱性がほとんど向上しないことがある。一方、20質量%を超えると、近赤外線遮蔽層が彩色されている場合に色相への影響が避けられず、かつ、採光性が低下することがあり、また、硫酸バリウム粒子を多量に含むことで防汚層の被膜強度が低下して、傷つき易くなったり、シートの屈曲により防汚層が脱落し易くなったりすることがある。なお、防汚層中に加える硫酸バリウム粒子についても、シリカ、シリカ−アルミナ、アルミナおよび酸化ジルコニウムから選ばれた無機物質、シラン系、チタネート系およびアルミネート系から選ばれたカップリング剤、のいずれか1種以上により表面被覆されていることが好ましい。
本発明の防汚層は、また、遮熱性を更に向上させるために、導電性金属酸化物微粒子を含んでも良い。防汚層に含まれる導電性金属酸化物微粒子としては、近赤外線遮蔽層に含まれる導電性金属酸化物微粒子と同じ群から、1種または2種以上を選択して用いることができる。防汚層に導電性金属酸化物微粒子を加える場合に、その平均粒子径は0.01〜0.05μmであることが好ましい。また、防汚層中の導電性金属酸化物微粒子の量としては、防汚層の固形分に対して1〜3質量%であることが好ましい。これにより、近赤外線遮蔽層が彩色されている場合でも色相への影響が少なく、採光性遮熱膜材の採光性をほとんど損なうことなく、遮熱性を更に向上することができる。導電性金属酸化物微粒子の平均粒子径が0.01μm未満であると防汚層中への分散が困難となることがあり、0.05μmを超えると、可視領域の光線を散乱して採光性を低下させたり、色相に影響を与えたりする事があり、また、微粒子どうしが接触しやすくなって導電性を示し、高周波ウェルダー縫製が困難となる事がある。防汚層中の導電性金属酸化物微粒子の量が1質量%未満では、遮熱性がほとんど向上しないことがある。一方、3質量%を超えると、近赤外線遮蔽層が彩色されている場合に色相への影響が避けられず、かつ、採光性が低下することがあり、また、導電性金属酸化物微粒子を多量に含むことで導電性を示し、高周波ウェルダー縫製が困難となる事がある。なお、防汚層に導電性金属酸化物微粒子と硫酸バリウム粒子とを同時に含んでも良く、その場合、それぞれの質量比は1:2〜1:10である事が好ましく、防汚層の固形分に対する両者をあわせた含有量は3〜20質量%であることが好ましい。
本発明の防汚層には、本発明の目的を阻害しない限りにおいて、その他必要に応じて、帯電防止剤、界面活性剤、撥水剤、撥油剤、架橋剤、硬化剤、防黴剤、抗菌剤、防虫剤、消臭剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、カップリング剤(シラン系、チタネート系、アルミネート系)など、公知の添加剤を含むことができる。
本発明の採光性遮熱膜材の可視光透過率(JIS Z8722.5.4条件g)は、5〜30%であることが好ましく、10〜25%がより好ましい。可視光透過率がこの範囲にあることで、適度な採光性となり、例えば本発明の採光性遮熱膜材をテント倉庫など全体が覆われた膜構造物に用いた場合、日中であれば、特に照明を用いる事無く作業を行う事ができ、かつ、日差しの強い日でも、この膜材の下ではまぶしさを感じる事無く快適に過ごすことができる。可視光透過率が5%未満であると、日中であっても膜構造物内部では照明なしで作業することが困難となることがある。一方、可視光透過率が30%を超える膜材では、充分な遮熱性が得られないことがあり、また、日差しの強い日ににまぶしさを防げないことがある。
次に、本発明の実施の形態を実施例を挙げて説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
<評価項目>
1、可視光透過率
実施例および比較例で作成した膜材について、JIS Z8722.5.4(条件g)に従いミ
ノルタ分光測色計CM−3600dを用いて可視光(380〜780nm)の透過率
を測定した。
可視光透過率の評価は、初期と、1年間屋外曝露後のそれぞれについて行った。
※屋外曝露
屋外曝露台上に、実施例及び比較例で作成したシートのおもて面を上にして南向
きに傾斜角30度に設置して1年間の屋外曝露を行った。
場所:埼玉県草加市
2、遮熱性
実施例および比較例で作成した膜材を用いて、膜材のおもて面側を外側として、
屋根部および側壁部を覆って、床面と側壁部の膜材との隙間を除けば外部との空気の
流通が無い状態の小型テント(図3参照)を作成し、周辺に高い建物の無い3階建て
のビル屋上(コンクリート床面)に、テント屋根部の傾斜面の一方を真南に向けて設
置し、テント設置の翌日以降で、朝から晴天であった日の正午のテント内温度(A)
を測定した。一方、同じビルの屋上において、床面から1.2mの高さに百葉箱を設
置し、テント内温度測定時の百葉箱内部の温度を測定して、環境温度(B)とし、
(A)−(B)の値が小さいほど、膜材の遮熱性が高いものとして評価した。
なお、評価に用いたテントのサイズは、底面がたて・よことも50cm、床面から
軒先までの高さ50cm、屋根部の傾斜角20°(床面から主棟までの高さ約59
cm)であり、テント内中央部床面から、高さ30cmの位置にセンサーを配置して
温度を測定した。
また、遮熱性の評価は、初期と、1年間屋外曝露後(曝露条件は可視光透過率評価
と同じ)のそれぞれについて行った。
3、高周波ウェルダー縫製性
実施例・比較例で作成した膜材より、長さ40cm×幅8cmの試料を2枚採取
し、2枚の試料のおもて面側とうら面側が接する様に重ね合わせ、4cm×30cmのウ
ェルドバー(歯形:凸部は等間隔4cm幅直線状賦型9本/25.4mm、凸部高さ0.
5mm:凹部は等間隔4cm幅直線状賦型9本/25.4mm、凹部深さ0.5mm)を装着
した高周波ウェルダー融着機(山本ビニター(株)製YF-7000型:出力7KW))を
用いて、試料の中央部に対して、試料のおもて面側から、下記条件で高周波ウェルダ
ー融着接合を行い、以下の様に評価した。
※ウェルダー融着条件:融着時間4秒、冷却時間4秒、陽極電流0.8A、
ウェルドバー温度40〜50℃
評価
1:融着縫製可能
2:スパークを生じ融着縫製不可
1、可視光透過率
実施例および比較例で作成した膜材について、JIS Z8722.5.4(条件g)に従いミ
ノルタ分光測色計CM−3600dを用いて可視光(380〜780nm)の透過率
を測定した。
可視光透過率の評価は、初期と、1年間屋外曝露後のそれぞれについて行った。
※屋外曝露
屋外曝露台上に、実施例及び比較例で作成したシートのおもて面を上にして南向
きに傾斜角30度に設置して1年間の屋外曝露を行った。
場所:埼玉県草加市
2、遮熱性
実施例および比較例で作成した膜材を用いて、膜材のおもて面側を外側として、
屋根部および側壁部を覆って、床面と側壁部の膜材との隙間を除けば外部との空気の
流通が無い状態の小型テント(図3参照)を作成し、周辺に高い建物の無い3階建て
のビル屋上(コンクリート床面)に、テント屋根部の傾斜面の一方を真南に向けて設
置し、テント設置の翌日以降で、朝から晴天であった日の正午のテント内温度(A)
を測定した。一方、同じビルの屋上において、床面から1.2mの高さに百葉箱を設
置し、テント内温度測定時の百葉箱内部の温度を測定して、環境温度(B)とし、
(A)−(B)の値が小さいほど、膜材の遮熱性が高いものとして評価した。
なお、評価に用いたテントのサイズは、底面がたて・よことも50cm、床面から
軒先までの高さ50cm、屋根部の傾斜角20°(床面から主棟までの高さ約59
cm)であり、テント内中央部床面から、高さ30cmの位置にセンサーを配置して
温度を測定した。
また、遮熱性の評価は、初期と、1年間屋外曝露後(曝露条件は可視光透過率評価
と同じ)のそれぞれについて行った。
3、高周波ウェルダー縫製性
実施例・比較例で作成した膜材より、長さ40cm×幅8cmの試料を2枚採取
し、2枚の試料のおもて面側とうら面側が接する様に重ね合わせ、4cm×30cmのウ
ェルドバー(歯形:凸部は等間隔4cm幅直線状賦型9本/25.4mm、凸部高さ0.
5mm:凹部は等間隔4cm幅直線状賦型9本/25.4mm、凹部深さ0.5mm)を装着
した高周波ウェルダー融着機(山本ビニター(株)製YF-7000型:出力7KW))を
用いて、試料の中央部に対して、試料のおもて面側から、下記条件で高周波ウェルダ
ー融着接合を行い、以下の様に評価した。
※ウェルダー融着条件:融着時間4秒、冷却時間4秒、陽極電流0.8A、
ウェルドバー温度40〜50℃
評価
1:融着縫製可能
2:スパークを生じ融着縫製不可
[実施例1]
1、基布
経糸、緯糸ともにポリエステル短繊維紡績糸295.3dtex(20番手)双糸を配置し、経糸打ち込み密度が55本/25.4mm、緯糸打ち込み密度が48本/25.4mmであり、質量230g/m2の非粗目状平織物を基布1として使用した。
2、膜材の形成
下記配合1の近赤外線遮蔽層形成用軟質ポリ塩化ビニル樹脂ペースト組成物をバスに入れ、基布1をバス中に浸漬し、これを引き上げると同時にマングルロールで圧搾し、150℃で1分間ゲル化した後、190℃で1分間熱処理を行い、さらにその片面に鏡面エンボス処理を施した。これにより基布1の両面への付着、および内部含浸した状態で、導電性金属酸化物微粒子、および、硫酸バリウム粒子を合わせて8.0質量%含んだ付着量320g/m2の近赤外線遮蔽層が形成された。なお、配合1において、導電性金属酸化物微粒子として平均一次粒子径0.03μmのスズドープ酸化インジウム(ITO)微粒子を用い、硫酸バリウム粒子としては、アスペクト比1〜2.5の不定型な沈降性硫酸バリウム粒子をシリカ−アルミナで表面被覆した、平均粒子径0.5μmの不定形粒子を用い、スズドープ酸化インジウム微粒子と硫酸バリウム粒子の質量比は1:7であった。得られた近赤外線遮蔽層の外観はかすかに青みのある乳白色であった。
<配合1>近赤外線遮蔽層用軟質ポリ塩化ビニル樹脂ペースト組成物
ポリ塩化ビニル樹脂(重合度1600) 100質量部
フタル酸ジ−2−エチルヘキシル(可塑剤) 70質量部
三酸化アンチモン(難燃剤) 10質量部
ステアリン酸亜鉛(安定剤) 2質量部
ステアリン酸バリウム(安定) 2質量部
スズドープ酸化インジウム微粒子(ITO:平均一次粒子径0.03μm)2質量部
硫酸バリウム粒子(BaSO4:平均粒子径0.5μm) 14質量部
紫外線吸収剤:ベンゾトリアゾール系 0.5質量部
希釈溶剤:トルエン 20質量部
3.防汚層の形成
膜材の鏡面エンボス処理を施した側の近赤外線遮蔽層上に、下記配合2の防汚層塗工液をグラビアコーターによりコーティング加工し、120℃で3分間乾燥した。これによって5g/m2の防汚層が形成された、帆布状の採光性遮熱膜材が得られた。この膜材について、防汚層が形成された側をおもて面として評価を行った。結果を表1に示す。
<配合2>防汚層塗工液
アクリル系樹脂(三菱レイヨン(株)製、商標:アクリプレンHBS001)
4質量
フッ素系樹脂(ビニリデンフルオライド−テトラフルオロエチレン共重合体樹脂、
エルフ・アトケム・ジャパン(株)製、商標:カイナー7201) 12質量部
高分子型紫外線吸収剤(一方社油脂工業(株)製、品番:UCI−635L)
〔2−ヒドロキシ−4−(メタクリロイルオキシエトキシ)ベンゾフェノン〕
とメタクリル酸メチルとの50wt%:50wt%共重合体樹脂
1質量部
希釈溶剤(トルエン−メチルエチルケトン50/50質量比) 80質量部
1、基布
経糸、緯糸ともにポリエステル短繊維紡績糸295.3dtex(20番手)双糸を配置し、経糸打ち込み密度が55本/25.4mm、緯糸打ち込み密度が48本/25.4mmであり、質量230g/m2の非粗目状平織物を基布1として使用した。
2、膜材の形成
下記配合1の近赤外線遮蔽層形成用軟質ポリ塩化ビニル樹脂ペースト組成物をバスに入れ、基布1をバス中に浸漬し、これを引き上げると同時にマングルロールで圧搾し、150℃で1分間ゲル化した後、190℃で1分間熱処理を行い、さらにその片面に鏡面エンボス処理を施した。これにより基布1の両面への付着、および内部含浸した状態で、導電性金属酸化物微粒子、および、硫酸バリウム粒子を合わせて8.0質量%含んだ付着量320g/m2の近赤外線遮蔽層が形成された。なお、配合1において、導電性金属酸化物微粒子として平均一次粒子径0.03μmのスズドープ酸化インジウム(ITO)微粒子を用い、硫酸バリウム粒子としては、アスペクト比1〜2.5の不定型な沈降性硫酸バリウム粒子をシリカ−アルミナで表面被覆した、平均粒子径0.5μmの不定形粒子を用い、スズドープ酸化インジウム微粒子と硫酸バリウム粒子の質量比は1:7であった。得られた近赤外線遮蔽層の外観はかすかに青みのある乳白色であった。
<配合1>近赤外線遮蔽層用軟質ポリ塩化ビニル樹脂ペースト組成物
ポリ塩化ビニル樹脂(重合度1600) 100質量部
フタル酸ジ−2−エチルヘキシル(可塑剤) 70質量部
三酸化アンチモン(難燃剤) 10質量部
ステアリン酸亜鉛(安定剤) 2質量部
ステアリン酸バリウム(安定) 2質量部
スズドープ酸化インジウム微粒子(ITO:平均一次粒子径0.03μm)2質量部
硫酸バリウム粒子(BaSO4:平均粒子径0.5μm) 14質量部
紫外線吸収剤:ベンゾトリアゾール系 0.5質量部
希釈溶剤:トルエン 20質量部
3.防汚層の形成
膜材の鏡面エンボス処理を施した側の近赤外線遮蔽層上に、下記配合2の防汚層塗工液をグラビアコーターによりコーティング加工し、120℃で3分間乾燥した。これによって5g/m2の防汚層が形成された、帆布状の採光性遮熱膜材が得られた。この膜材について、防汚層が形成された側をおもて面として評価を行った。結果を表1に示す。
<配合2>防汚層塗工液
アクリル系樹脂(三菱レイヨン(株)製、商標:アクリプレンHBS001)
4質量
フッ素系樹脂(ビニリデンフルオライド−テトラフルオロエチレン共重合体樹脂、
エルフ・アトケム・ジャパン(株)製、商標:カイナー7201) 12質量部
高分子型紫外線吸収剤(一方社油脂工業(株)製、品番:UCI−635L)
〔2−ヒドロキシ−4−(メタクリロイルオキシエトキシ)ベンゾフェノン〕
とメタクリル酸メチルとの50wt%:50wt%共重合体樹脂
1質量部
希釈溶剤(トルエン−メチルエチルケトン50/50質量比) 80質量部
[実施例2]
配合1の代わりに下記配合3を用いた以外は、実施例1と同様にして、実施例2の帆布状の採光性遮熱膜材を得た。近赤外線遮蔽層中の導電性金属酸化物微粒子、および、硫酸バリウム粒子は合わせて7.9質量%であった。また、配合3は、配合1に、近赤外線に吸収の少ない縮合ジスアゾ系有機顔料としてC.I.ピグメントイエロー155を加えており、得られた採光性遮熱膜材の近赤外線遮蔽層は明るい黄色外観であった。この膜材について、防汚層が形成された側をおもて面として評価を行った。結果を表1に示す。
<配合3>近赤外線遮蔽層用軟質ポリ塩化ビニル樹脂ペースト組成物
ポリ塩化ビニル樹脂(重合度1600) 100質量部
フタル酸ジ−2−エチルヘキシル(可塑剤) 70質量部
三酸化アンチモン(難燃剤) 10質量部
ステアリン酸亜鉛(安定剤) 2質量部
ステアリン酸バリウム(安定) 2質量部
スズドープ酸化インジウム微粒子(ITO:平均一次粒子径0.03μm)2質量部
硫酸バリウム粒子(BaSO4:平均粒子径0.5μm) 14質量部
紫外線吸収剤:ベンゾトリアゾール系 0.5質量部
希釈溶剤:トルエン 20質量部
C.I.ピグメントイエロー155(縮合ジスアゾ系有機顔料) 2質量部
配合1の代わりに下記配合3を用いた以外は、実施例1と同様にして、実施例2の帆布状の採光性遮熱膜材を得た。近赤外線遮蔽層中の導電性金属酸化物微粒子、および、硫酸バリウム粒子は合わせて7.9質量%であった。また、配合3は、配合1に、近赤外線に吸収の少ない縮合ジスアゾ系有機顔料としてC.I.ピグメントイエロー155を加えており、得られた採光性遮熱膜材の近赤外線遮蔽層は明るい黄色外観であった。この膜材について、防汚層が形成された側をおもて面として評価を行った。結果を表1に示す。
<配合3>近赤外線遮蔽層用軟質ポリ塩化ビニル樹脂ペースト組成物
ポリ塩化ビニル樹脂(重合度1600) 100質量部
フタル酸ジ−2−エチルヘキシル(可塑剤) 70質量部
三酸化アンチモン(難燃剤) 10質量部
ステアリン酸亜鉛(安定剤) 2質量部
ステアリン酸バリウム(安定) 2質量部
スズドープ酸化インジウム微粒子(ITO:平均一次粒子径0.03μm)2質量部
硫酸バリウム粒子(BaSO4:平均粒子径0.5μm) 14質量部
紫外線吸収剤:ベンゾトリアゾール系 0.5質量部
希釈溶剤:トルエン 20質量部
C.I.ピグメントイエロー155(縮合ジスアゾ系有機顔料) 2質量部
[実施例3]
配合1の代わりに下記配合4を用いた以外は、実施例1と同様にして、実施例3の帆布状の採光性遮熱膜材を得た。配合4は、導電性金属酸化物微粒子として平均一次粒子径0.02μmのアンチモンドープ酸化スズ(ATO)微粒子を用い、アンチモンドープ酸化錫微粒子と硫酸バリウム粒子の質量比は1:3であった。また、近赤外線遮蔽層におけるアンチモンドープ酸化錫微粒子、および、硫酸バリウム粒子の量は合わせて8.0質量%であり、得られた採光性遮熱膜材において、近赤外線遮蔽層の外観はかすかに青みのある乳白色であった。この採光性遮熱膜材について、防汚層が形成された側をおもて面として評価を行った。結果を表1に示す。
<配合4>近赤外線遮蔽層用軟質ポリ塩化ビニル樹脂ペースト組成物
ポリ塩化ビニル樹脂(重合度1600) 100質量部
フタル酸ジ−2−エチルヘキシル(可塑剤) 70質量部
三酸化アンチモン(難燃剤) 10質量部
ステアリン酸亜鉛(安定剤) 2質量部
ステアリン酸バリウム(安定) 2質量部
アンチモンドープ酸化スズ微粒子(ATO:平均一次粒子径0.02μm)4質量部
硫酸バリウム粒子(BaSO4:平均粒子径0.5μm) 12質量部
紫外線吸収剤:ベンゾトリアゾール系 0.5質量部
希釈溶剤:トルエン 20質量部
配合1の代わりに下記配合4を用いた以外は、実施例1と同様にして、実施例3の帆布状の採光性遮熱膜材を得た。配合4は、導電性金属酸化物微粒子として平均一次粒子径0.02μmのアンチモンドープ酸化スズ(ATO)微粒子を用い、アンチモンドープ酸化錫微粒子と硫酸バリウム粒子の質量比は1:3であった。また、近赤外線遮蔽層におけるアンチモンドープ酸化錫微粒子、および、硫酸バリウム粒子の量は合わせて8.0質量%であり、得られた採光性遮熱膜材において、近赤外線遮蔽層の外観はかすかに青みのある乳白色であった。この採光性遮熱膜材について、防汚層が形成された側をおもて面として評価を行った。結果を表1に示す。
<配合4>近赤外線遮蔽層用軟質ポリ塩化ビニル樹脂ペースト組成物
ポリ塩化ビニル樹脂(重合度1600) 100質量部
フタル酸ジ−2−エチルヘキシル(可塑剤) 70質量部
三酸化アンチモン(難燃剤) 10質量部
ステアリン酸亜鉛(安定剤) 2質量部
ステアリン酸バリウム(安定) 2質量部
アンチモンドープ酸化スズ微粒子(ATO:平均一次粒子径0.02μm)4質量部
硫酸バリウム粒子(BaSO4:平均粒子径0.5μm) 12質量部
紫外線吸収剤:ベンゾトリアゾール系 0.5質量部
希釈溶剤:トルエン 20質量部
[実施例4]
配合1の代わりに下記配合5を用いた以外は、実施例1と同様にして、実施例4の帆布状の採光性遮熱膜材を得た。配合5では配合1の硫酸バリウム粒子を、アスペクト比1〜2.5の不定型な沈降性硫酸バリウム粒子をシリカ−アルミナで表面被覆(硫酸バリウム95質量%、シリカ−アルミナ5質量%)した平均粒子径0.7μmの不定形粒子に変更した。得られた採光性遮熱膜材において、近赤外線遮蔽層の外観はかすかに青みのある乳白色であった。この膜材について、防汚層が形成された側をおもて面として評価を行った。結果を表1に示す。
<配合5>近赤外線遮蔽層用軟質ポリ塩化ビニル樹脂ペースト組成物
ポリ塩化ビニル樹脂(重合度1600) 100質量部
フタル酸ジ−2−エチルヘキシル(可塑剤) 70質量部
三酸化アンチモン(難燃剤) 10質量部
ステアリン酸亜鉛(安定剤) 2質量部
ステアリン酸バリウム(安定) 2質量部
スズドープ酸化インジウム微粒子(ITO:平均一次粒子径0.03μm)2質量部
硫酸バリウム粒子(BaSO4:平均粒子径0.7μm) 14質量部
紫外線吸収剤:ベンゾトリアゾール系 0.5質量部
希釈溶剤:トルエン 20質量部
配合1の代わりに下記配合5を用いた以外は、実施例1と同様にして、実施例4の帆布状の採光性遮熱膜材を得た。配合5では配合1の硫酸バリウム粒子を、アスペクト比1〜2.5の不定型な沈降性硫酸バリウム粒子をシリカ−アルミナで表面被覆(硫酸バリウム95質量%、シリカ−アルミナ5質量%)した平均粒子径0.7μmの不定形粒子に変更した。得られた採光性遮熱膜材において、近赤外線遮蔽層の外観はかすかに青みのある乳白色であった。この膜材について、防汚層が形成された側をおもて面として評価を行った。結果を表1に示す。
<配合5>近赤外線遮蔽層用軟質ポリ塩化ビニル樹脂ペースト組成物
ポリ塩化ビニル樹脂(重合度1600) 100質量部
フタル酸ジ−2−エチルヘキシル(可塑剤) 70質量部
三酸化アンチモン(難燃剤) 10質量部
ステアリン酸亜鉛(安定剤) 2質量部
ステアリン酸バリウム(安定) 2質量部
スズドープ酸化インジウム微粒子(ITO:平均一次粒子径0.03μm)2質量部
硫酸バリウム粒子(BaSO4:平均粒子径0.7μm) 14質量部
紫外線吸収剤:ベンゾトリアゾール系 0.5質量部
希釈溶剤:トルエン 20質量部
実施例1〜4の採光性遮熱膜材はいずれも本発明の要件を満たし、初期の遮熱性に優れ、採光性を有し、高周波ウェルダーによる縫製が可能であった。また、それぞれが、近赤外線遮蔽層上に防汚層を有するため、1年間の屋外曝露後もほとんどその性能が損なわれていなかった。実施例1は近赤外線遮蔽層に平均一次粒子径0.03μmのスズドープ酸化インジウム微粒子と平均粒子径0.5μmの硫酸バリウム粒子を含む、かすかに青みのある乳白色の近赤外線遮蔽層を有する採光性遮熱膜材であり、高い採光性と優れた遮熱性を示すものであった。実施例2は近赤外線遮蔽層にさらに有彩色の着色剤を含むものであり、近赤外線遮蔽層は着色剤により有効に彩色されていた。着色剤を含むことで採光性は実施例1よりやや劣るものの、近赤外線領域に吸収の少ない有機顔料が用いられている為、遮熱性については、実施例1とほぼ同等であった。実施例3は、導電性金属酸化物微粒子としてスズドープ酸化インジウム微粒子の代わりにアンチモンドープ酸化スズ微粒子を用いており、実施例1に比べて導電性金属酸化物微粒子の割合が高くなっているが、本発明の要件の範囲内であり、採光性、遮熱性共に優れていた。実施例4では実施例1より平均粒子径の大きな硫酸バリウム粒子を用いたが、本発明の要件の範囲であり、採光性、遮熱性ともに優れていた。
[実施例5]
1、基布
経糸、緯糸ともにポリエステルマルチフィラメント糸555dtex(500d)を配置し、経糸打ち込み密度が18本/25.4mm、緯糸打ち込み密度が19本/25.4mmであり、質量70g/m2の粗目状平織物を基布2として使用した。
2、膜材の形成
下記配合6のを用いて、カレンダー成型法により、導電性金属酸化物微粒子、および、硫酸バリウム粒子を合わせて8.9質量%含む厚さ0.2mmの近赤外線遮蔽層用軟質ポリ塩化ビニル樹脂フィルム5−1を成型した。フィルム5−1はかすかに青みのある乳白色外観であった。ついで、下記配合7を用いて、カレンダー成型法により、導電性金属酸化物微粒子、および、硫酸バリウム粒子を含まない厚さ0.2mmの軟質ポリ塩化ビニル樹脂フィルム5−2を成型した。次に、得られたフィルム5−1とフィルム5−2の中間に基布2を挿入し、熱圧着により積層してターポリン状の膜材を得た。なお、配合6において、導電性金属酸化物微粒子として平均一次粒子径0.03μmのスズドープ酸化インジウム(ITO)微粒子を用いた。また、硫酸バリウム粒子としては、アスペクト比1〜2.5の不定型な沈降性硫酸バリウム粒子をシリカ−アルミナで表面被覆した、平均粒子径0.4μmの不定形粒子を用い、スズドープ酸化インジウム微粒子と硫酸バリウム粒子の質量比は1:5とした。
<配合6>近赤外線遮蔽層用軟質ポリ塩化ビニル樹脂フィルム組成物
ポリ塩化ビニル樹脂(重合度1300) 100質量部
フタル酸ジ−2−エチルヘキシル(可塑剤) 60質量部
リン酸トリクレジル(可塑剤) 10質量部
三酸化アンチモン(難燃剤) 10質量部
ステアリン酸亜鉛(安定剤) 2質量部
ステアリン酸バリウム(安定剤) 2質量部
スズドープ酸化インジウム微粒子(ITO:平均一次粒子径0.02μm)3質量部
硫酸バリウム粒子(BaSO4:平均粒子径0.4μm) 15質量部
紫外線吸収剤:ベンゾトリアゾール系 0.5質量部
<配合7>軟質ポリ塩化ビニル樹脂フィルム組成物
ポリ塩化ビニル樹脂(重合度1300) 100質量部
フタル酸ジ−2−エチルヘキシル(可塑剤) 60質量部
リン酸トリクレジル(可塑剤) 10質量部
三酸化アンチモン(難燃剤) 10質量部
ステアリン酸亜鉛(安定剤) 2質量部
ステアリン酸バリウム(安定剤) 2質量部
紫外線吸収剤:ベンゾトリアゾール系 0.5質量部
3、防汚層の形成
膜材の近赤外線遮蔽層側の面上に、配合3の防汚層塗工液をグラビアコーターによりコーティング加工し、120℃で3分間乾燥した。これによって近赤外線遮蔽層上に5g/m2の防汚層が形成された、実施例5の採光性遮熱膜材が得られた。この膜材について、防汚層が形成された側をおもて面として評価を行った。結果を表2に示す。
1、基布
経糸、緯糸ともにポリエステルマルチフィラメント糸555dtex(500d)を配置し、経糸打ち込み密度が18本/25.4mm、緯糸打ち込み密度が19本/25.4mmであり、質量70g/m2の粗目状平織物を基布2として使用した。
2、膜材の形成
下記配合6のを用いて、カレンダー成型法により、導電性金属酸化物微粒子、および、硫酸バリウム粒子を合わせて8.9質量%含む厚さ0.2mmの近赤外線遮蔽層用軟質ポリ塩化ビニル樹脂フィルム5−1を成型した。フィルム5−1はかすかに青みのある乳白色外観であった。ついで、下記配合7を用いて、カレンダー成型法により、導電性金属酸化物微粒子、および、硫酸バリウム粒子を含まない厚さ0.2mmの軟質ポリ塩化ビニル樹脂フィルム5−2を成型した。次に、得られたフィルム5−1とフィルム5−2の中間に基布2を挿入し、熱圧着により積層してターポリン状の膜材を得た。なお、配合6において、導電性金属酸化物微粒子として平均一次粒子径0.03μmのスズドープ酸化インジウム(ITO)微粒子を用いた。また、硫酸バリウム粒子としては、アスペクト比1〜2.5の不定型な沈降性硫酸バリウム粒子をシリカ−アルミナで表面被覆した、平均粒子径0.4μmの不定形粒子を用い、スズドープ酸化インジウム微粒子と硫酸バリウム粒子の質量比は1:5とした。
<配合6>近赤外線遮蔽層用軟質ポリ塩化ビニル樹脂フィルム組成物
ポリ塩化ビニル樹脂(重合度1300) 100質量部
フタル酸ジ−2−エチルヘキシル(可塑剤) 60質量部
リン酸トリクレジル(可塑剤) 10質量部
三酸化アンチモン(難燃剤) 10質量部
ステアリン酸亜鉛(安定剤) 2質量部
ステアリン酸バリウム(安定剤) 2質量部
スズドープ酸化インジウム微粒子(ITO:平均一次粒子径0.02μm)3質量部
硫酸バリウム粒子(BaSO4:平均粒子径0.4μm) 15質量部
紫外線吸収剤:ベンゾトリアゾール系 0.5質量部
<配合7>軟質ポリ塩化ビニル樹脂フィルム組成物
ポリ塩化ビニル樹脂(重合度1300) 100質量部
フタル酸ジ−2−エチルヘキシル(可塑剤) 60質量部
リン酸トリクレジル(可塑剤) 10質量部
三酸化アンチモン(難燃剤) 10質量部
ステアリン酸亜鉛(安定剤) 2質量部
ステアリン酸バリウム(安定剤) 2質量部
紫外線吸収剤:ベンゾトリアゾール系 0.5質量部
3、防汚層の形成
膜材の近赤外線遮蔽層側の面上に、配合3の防汚層塗工液をグラビアコーターによりコーティング加工し、120℃で3分間乾燥した。これによって近赤外線遮蔽層上に5g/m2の防汚層が形成された、実施例5の採光性遮熱膜材が得られた。この膜材について、防汚層が形成された側をおもて面として評価を行った。結果を表2に示す。
[実施例6]
1、基布
実施例5と同様基布2を用いた。
2、膜材の形成
下記配合8の軟質ポリ塩化ビニル樹脂組成物を用いて、カレンダー成型法により、導電性金属酸化物微粒子、および、硫酸バリウム粒子を合わせて8.8質量%含む厚さ0.2mmの近赤外線遮蔽層用軟質ポリ塩化ビニル樹脂フィルム6−1を成型した。次いで、配合7を用いて、カレンダー成型法により厚さ0.2mmの軟質ポリ塩化ビニル樹脂フィルム6−2を成型した。次に、得られたフィルム6−1とフィルム6−2の中間に基布2を挿入し、熱圧着により積層してターポリン状の膜材を得た。なお、配合8には、近赤外線に吸収の少ない有機顔料としてC.I.ピグメントイエロー155(縮合ジスアゾ系有機顔料)を用いた事により、フィルム6−1は明るい黄色外観であった。
<配合8>軟質ポリ塩化ビニル樹脂組成物
ポリ塩化ビニル樹脂(重合度1300) 100質量部
フタル酸ジ−2−エチルヘキシル(可塑剤) 60質量部
リン酸トリクレジル(可塑剤) 10質量部
三酸化アンチモン(難燃剤) 10質量部
ステアリン酸亜鉛(安定剤) 2質量部
ステアリン酸バリウム(安定剤) 2質量部
スズドープ酸化インジウム微粒子(ITO:平均一次粒子径0.03μm)3質量部
硫酸バリウム粒子(BaSO4:平均粒子径0.4μm) 15質量部
紫外線吸収剤:ベンゾトリアゾール系 0.5質量部
C.I.ピグメントイエロー155(縮合ジスアゾ系有機顔料) 2質量部
3、防汚層の形成
実施例5と同様にして、近赤外線遮蔽層上に5g/m2の防汚層を形成して、実施例6の採光性遮熱膜材を得た。この膜材について、防汚層が形成された側をおもて面として評価を行った。結果を表2に示す。
1、基布
実施例5と同様基布2を用いた。
2、膜材の形成
下記配合8の軟質ポリ塩化ビニル樹脂組成物を用いて、カレンダー成型法により、導電性金属酸化物微粒子、および、硫酸バリウム粒子を合わせて8.8質量%含む厚さ0.2mmの近赤外線遮蔽層用軟質ポリ塩化ビニル樹脂フィルム6−1を成型した。次いで、配合7を用いて、カレンダー成型法により厚さ0.2mmの軟質ポリ塩化ビニル樹脂フィルム6−2を成型した。次に、得られたフィルム6−1とフィルム6−2の中間に基布2を挿入し、熱圧着により積層してターポリン状の膜材を得た。なお、配合8には、近赤外線に吸収の少ない有機顔料としてC.I.ピグメントイエロー155(縮合ジスアゾ系有機顔料)を用いた事により、フィルム6−1は明るい黄色外観であった。
<配合8>軟質ポリ塩化ビニル樹脂組成物
ポリ塩化ビニル樹脂(重合度1300) 100質量部
フタル酸ジ−2−エチルヘキシル(可塑剤) 60質量部
リン酸トリクレジル(可塑剤) 10質量部
三酸化アンチモン(難燃剤) 10質量部
ステアリン酸亜鉛(安定剤) 2質量部
ステアリン酸バリウム(安定剤) 2質量部
スズドープ酸化インジウム微粒子(ITO:平均一次粒子径0.03μm)3質量部
硫酸バリウム粒子(BaSO4:平均粒子径0.4μm) 15質量部
紫外線吸収剤:ベンゾトリアゾール系 0.5質量部
C.I.ピグメントイエロー155(縮合ジスアゾ系有機顔料) 2質量部
3、防汚層の形成
実施例5と同様にして、近赤外線遮蔽層上に5g/m2の防汚層を形成して、実施例6の採光性遮熱膜材を得た。この膜材について、防汚層が形成された側をおもて面として評価を行った。結果を表2に示す。
[実施例7]
実施例6と同様にして実施例7のターポリン状の採光性遮熱膜材を得た。ただし、配合3の代わりに、下記配合9の硫酸バリウム粒子を含む防汚層塗工液を用いて、6g/m2の防汚層を形成した。防汚層に用いた硫酸バリウム粒子は、アスペクト比1〜2.5の不定型な沈降性硫酸バリウム粒子をシリカ−アルミナで表面被覆(硫酸バリウム95質量%、シリカ−アルミナ5質量%)した、平均粒子径0.5μmの不定形粒子であり、形成された防汚層には硫酸バリウム粒子が10質量%含まれていた。この採光性遮熱膜材を近赤外線遮蔽層側から見たところ、実施例6との色相の差はほとんど感じられず、明るい黄色外観であった。この膜材について、防汚層が形成された側をおもて面として評価を行った。結果を表2に示す。
<配合9>防汚層塗工液
アクリル系樹脂(三菱レイヨン(株)製、商標:アクリプレンHBS001)
4質量部
フッ素系樹脂(ビニリデンフルオライド−テトラフルオロエチレン共重合体樹脂、
エルフ・アトケム・ジャパン(株)製、商標:カイナー7201) 12質量部
高分子型紫外線吸収剤(一方社油脂工業(株)製、品番:UCI−635L)
〔2−ヒドロキシ−4−(メタクリロイルオキシエトキシ)ベンゾフェノン〕
とメタクリル酸メチルとの50wt%:50wt%共重合体樹脂
1質量部
硫酸バリウム粒子(BaSO4:平均粒子径0.5μm) 2質量部
希釈溶剤(トルエン−メチルエチルケトン50/50質量比) 80質量部
実施例6と同様にして実施例7のターポリン状の採光性遮熱膜材を得た。ただし、配合3の代わりに、下記配合9の硫酸バリウム粒子を含む防汚層塗工液を用いて、6g/m2の防汚層を形成した。防汚層に用いた硫酸バリウム粒子は、アスペクト比1〜2.5の不定型な沈降性硫酸バリウム粒子をシリカ−アルミナで表面被覆(硫酸バリウム95質量%、シリカ−アルミナ5質量%)した、平均粒子径0.5μmの不定形粒子であり、形成された防汚層には硫酸バリウム粒子が10質量%含まれていた。この採光性遮熱膜材を近赤外線遮蔽層側から見たところ、実施例6との色相の差はほとんど感じられず、明るい黄色外観であった。この膜材について、防汚層が形成された側をおもて面として評価を行った。結果を表2に示す。
<配合9>防汚層塗工液
アクリル系樹脂(三菱レイヨン(株)製、商標:アクリプレンHBS001)
4質量部
フッ素系樹脂(ビニリデンフルオライド−テトラフルオロエチレン共重合体樹脂、
エルフ・アトケム・ジャパン(株)製、商標:カイナー7201) 12質量部
高分子型紫外線吸収剤(一方社油脂工業(株)製、品番:UCI−635L)
〔2−ヒドロキシ−4−(メタクリロイルオキシエトキシ)ベンゾフェノン〕
とメタクリル酸メチルとの50wt%:50wt%共重合体樹脂
1質量部
硫酸バリウム粒子(BaSO4:平均粒子径0.5μm) 2質量部
希釈溶剤(トルエン−メチルエチルケトン50/50質量比) 80質量部
[実施例8]
配合6の代わりに下記配合10を用いた以外は、実施例5と同様にして実施例8のターポリン状の膜材を得た。配合10から得た近赤外線遮蔽層フィルムには、導電性金属酸化物微粒子と、硫酸バリウム粒子は合わせて14.0質量%含まれており、質量比は1:4であり、近赤外線遮蔽層フィルムの外観は、やや濃い青みの乳白であった。この膜材について、防汚層が形成された側をおもて面として評価を行った。結果を表2に示す。
<配合10>近赤外線遮蔽層用軟質ポリ塩化ビニル樹脂フィルム組成物
ポリ塩化ビニル樹脂(重合度1300) 100質量部
フタル酸ジ−2−エチルヘキシル(可塑剤) 60質量部
リン酸トリクレジル(可塑剤) 10質量部
三酸化アンチモン(難燃剤) 10質量部
ステアリン酸亜鉛(安定剤) 2質量部
ステアリン酸バリウム(安定剤) 2質量部
スズドープ酸化インジウム微粒子(ITO:平均一次粒子径0.03μm)6質量部
硫酸バリウム粒子(BaSO4:平均粒子径0.4μm) 24質量部
紫外線吸収剤:ベンゾトリアゾール系 0.5質量部
配合6の代わりに下記配合10を用いた以外は、実施例5と同様にして実施例8のターポリン状の膜材を得た。配合10から得た近赤外線遮蔽層フィルムには、導電性金属酸化物微粒子と、硫酸バリウム粒子は合わせて14.0質量%含まれており、質量比は1:4であり、近赤外線遮蔽層フィルムの外観は、やや濃い青みの乳白であった。この膜材について、防汚層が形成された側をおもて面として評価を行った。結果を表2に示す。
<配合10>近赤外線遮蔽層用軟質ポリ塩化ビニル樹脂フィルム組成物
ポリ塩化ビニル樹脂(重合度1300) 100質量部
フタル酸ジ−2−エチルヘキシル(可塑剤) 60質量部
リン酸トリクレジル(可塑剤) 10質量部
三酸化アンチモン(難燃剤) 10質量部
ステアリン酸亜鉛(安定剤) 2質量部
ステアリン酸バリウム(安定剤) 2質量部
スズドープ酸化インジウム微粒子(ITO:平均一次粒子径0.03μm)6質量部
硫酸バリウム粒子(BaSO4:平均粒子径0.4μm) 24質量部
紫外線吸収剤:ベンゾトリアゾール系 0.5質量部
実施例5〜8の採光性遮熱膜材は、いずれも本発明の要件を満たし、採光性を有し、遮熱性に優れ、高周波ウェルダーによる縫製が可能であった。また、それぞれが、近赤外線遮蔽層上に防汚層を有するため、1年間の屋外曝露後もほとんどその性能が損なわれていなかった。実施例5はかすかな青みの乳白色を有するターポリン状採光性遮熱膜材であり、非常に高い採光性と優れた遮熱性を示すものであった。実施例6は近赤外線遮蔽層に有彩色の着色剤を含むものであり、導電性金属酸化物微粒子による影響をあまり受ける事無く、近赤外線遮蔽層が有効に彩色されていた。また、着色剤を含むため、採光性は実施例5よりやや劣るものの、近赤外線領域に吸収の少ない金属複合酸化物からなる無機顔料である為、遮熱性については、実施例5とほぼ同等であった。実施例7は、防汚層に平均粒子径0.5μmの硫酸バリウム粒子を10質量%含むことを除けば、実施例6と同じ構成であるが、防汚層に硫酸バリウム粒子を含むことで、可視光透過率をほとんど下げる事無く遮熱性が向上しており、しかも、色相にはほとんど影響がなかった。実施例8は、近赤外線遮蔽層におけるスズドープ酸化インジウム微粒子、および、硫酸バリウムの量が実施例1より多いため、遮熱性は実施例1より優れており、また、スズドープ酸化インジウム微粒子が多いにもかかわらず、質量比で4倍の硫酸バリウム粒子を含むため、高周波ウェルダー縫製時にスパークを生じなかった。
[比較例1]
配合1から、導電性金属酸化物微粒子と硫酸バリウム粒子を省略した以外は実施例1と同様にして、比較例1の帆布状の膜材を得た。この膜材の樹脂層は、透明な外観を有しており、基布1を構成する糸がはっきりと視認できた。この膜材について、防汚層が形成された側をおもて面として評価を行った。結果を表3に示す。
配合1から、導電性金属酸化物微粒子と硫酸バリウム粒子を省略した以外は実施例1と同様にして、比較例1の帆布状の膜材を得た。この膜材の樹脂層は、透明な外観を有しており、基布1を構成する糸がはっきりと視認できた。この膜材について、防汚層が形成された側をおもて面として評価を行った。結果を表3に示す。
比較例1は、樹脂層に導電性金属酸化物微粒子と硫酸バリウム粒子を含まず、実施例1に比べて遮熱性が大きく劣る膜材であった。
[比較例2]
配合1から、硫酸バリウム粒子を省略した以外は実施例1と同様にして、比較例2の帆布状の膜材を得た。この膜材の樹脂層は、青みのある透明な外観を有しており、樹脂層中において、スズドープ酸化インジウム微粒子の量は、1.1質量%であった。この膜材について、防汚層が形成された側をおもて面として評価を行った。結果を表3に示す。
配合1から、硫酸バリウム粒子を省略した以外は実施例1と同様にして、比較例2の帆布状の膜材を得た。この膜材の樹脂層は、青みのある透明な外観を有しており、樹脂層中において、スズドープ酸化インジウム微粒子の量は、1.1質量%であった。この膜材について、防汚層が形成された側をおもて面として評価を行った。結果を表3に示す。
比較例2は、近赤外線遮蔽性微粒子であるスズドープ酸化インジウム微粒子を、実施例と同量含んでいるが、樹脂層に硫酸マグネシウム粒子を含まず、実施例1に比べて遮熱性の劣る膜材であった。これにより、実施例1では近赤外線遮蔽性微粒子に硫酸マグネシウム粒子を併用することで遮熱性が向上していることが確認できる。
[比較例3]
配合3の代わりに、下記配合11を用いた以外は実施例2と同様にして、比較例3の帆布状の膜材を得た。この膜材の樹脂層は、暗く濁った緑色外観を有していた。配合11では、配合3に対してスズドープ酸化インジウム微粒子の量が多く、一方、硫酸バリウム粒子を省略した。形成された樹脂層中において、スズドープ酸化インジウム微粒子の量は、3.1質量%であった。
<配合11>軟質ポリ塩化ビニル樹脂ペースト組成物
ポリ塩化ビニル樹脂(重合度1600) 100質量部
フタル酸ジ−2−エチルヘキシル(可塑剤) 70質量部
三酸化アンチモン(難燃剤) 10質量部
ステアリン酸亜鉛(安定剤) 2質量部
ステアリン酸バリウム(安定) 2質量部
スズドープ酸化インジウム微粒子(ITO:平均一次粒子径0.03μm)6質量部
紫外線吸収剤:ベンゾトリアゾール系 0.5質量部
希釈溶剤:トルエン 20質量部
C.I.ピグメントイエロー155(縮合ジスアゾ系有機顔料) 2質量部
配合3の代わりに、下記配合11を用いた以外は実施例2と同様にして、比較例3の帆布状の膜材を得た。この膜材の樹脂層は、暗く濁った緑色外観を有していた。配合11では、配合3に対してスズドープ酸化インジウム微粒子の量が多く、一方、硫酸バリウム粒子を省略した。形成された樹脂層中において、スズドープ酸化インジウム微粒子の量は、3.1質量%であった。
<配合11>軟質ポリ塩化ビニル樹脂ペースト組成物
ポリ塩化ビニル樹脂(重合度1600) 100質量部
フタル酸ジ−2−エチルヘキシル(可塑剤) 70質量部
三酸化アンチモン(難燃剤) 10質量部
ステアリン酸亜鉛(安定剤) 2質量部
ステアリン酸バリウム(安定) 2質量部
スズドープ酸化インジウム微粒子(ITO:平均一次粒子径0.03μm)6質量部
紫外線吸収剤:ベンゾトリアゾール系 0.5質量部
希釈溶剤:トルエン 20質量部
C.I.ピグメントイエロー155(縮合ジスアゾ系有機顔料) 2質量部
比較例3の膜材は、スズドープ酸化インジウム微粒子を多く含むため、硫酸バリウム粒子を含まなくても遮熱性は実施例2と同等であったが、スズドープ酸化インジウム微粒子の色相への影響が大きく、顔料の添加によって鮮やかな色相を得る事ができなかった。また、スズドープ酸化インジウム微粒子を多く含んで、硫酸バリウム粒子を含まないため、高周波ウェルダー縫製においてスパークを生じた。
[比較例4]
配合1の代わりに、下記配合12を用いた以外は実施例1と同様にして、比較例4の帆布状の膜材を得た。この膜材の樹脂層は、乳白外観を有しており、樹脂層中の導電性金属酸化物微粒子、および、硫酸バリウム粒子は、合わせて8.0質量%であり、質量比は1:15であった。この膜材について、防汚層が形成された側をおもて面として評価を行った。結果を表3に示す。
<配合12>軟質ポリ塩化ビニル樹脂ペースト組成物
ポリ塩化ビニル樹脂(重合度1600) 100質量部
フタル酸ジ−2−エチルヘキシル(可塑剤) 70質量部
三酸化アンチモン(難燃剤) 10質量部
ステアリン酸亜鉛(安定剤) 2質量部
ステアリン酸バリウム(安定) 2質量部
スズドープ酸化インジウム微粒子(ITO:平均一次粒子径0.03μm)1質量部
硫酸バリウム粒子(BaSO4:平均粒子径0.4μm) 15質量部
紫外線吸収剤:ベンゾトリアゾール系 0.5質量部
配合1の代わりに、下記配合12を用いた以外は実施例1と同様にして、比較例4の帆布状の膜材を得た。この膜材の樹脂層は、乳白外観を有しており、樹脂層中の導電性金属酸化物微粒子、および、硫酸バリウム粒子は、合わせて8.0質量%であり、質量比は1:15であった。この膜材について、防汚層が形成された側をおもて面として評価を行った。結果を表3に示す。
<配合12>軟質ポリ塩化ビニル樹脂ペースト組成物
ポリ塩化ビニル樹脂(重合度1600) 100質量部
フタル酸ジ−2−エチルヘキシル(可塑剤) 70質量部
三酸化アンチモン(難燃剤) 10質量部
ステアリン酸亜鉛(安定剤) 2質量部
ステアリン酸バリウム(安定) 2質量部
スズドープ酸化インジウム微粒子(ITO:平均一次粒子径0.03μm)1質量部
硫酸バリウム粒子(BaSO4:平均粒子径0.4μm) 15質量部
紫外線吸収剤:ベンゾトリアゾール系 0.5質量部
比較例4の膜材は、樹脂層中の導電性金属酸化物微粒子、および、硫酸バリウム粒子の量は実施例1と同等であったが、質量比が1:15であったため、実施例1に比べて遮熱性が劣っていた。
[比較例5]
配合1の代わりに下記配合13を用い、防汚層を設けなかった以外は実施例1と同様にして、比較例5の帆布状の膜材を得た。この膜材の樹脂層は淡い黄色外観を有しており、樹脂層中の導電性金属酸化物微粒子、および、硫酸バリウム粒子は、合わせて25.7質量%であり、質量比は1:15であった。この膜材について、鏡面エンボス処理を施した側をおもて面として評価を行った。結果を表4に示す。
<配合13>軟質ポリ塩化ビニル樹脂ペースト組成物
ポリ塩化ビニル樹脂(重合度1600) 100質量部
フタル酸ジ−2−エチルヘキシル(可塑剤) 70質量部
三酸化アンチモン(難燃剤) 10質量部
ステアリン酸亜鉛(安定剤) 2質量部
ステアリン酸バリウム(安定) 2質量部
アンチモンドープ酸化スズ微粒子(ATO:平均一次粒子径0.02μm)4質量部
硫酸バリウム粒子(BaSO4:平均粒子径0.5μm) 60質量部
紫外線吸収剤:ベンゾトリアゾール系 0.5質量部
希釈溶剤:トルエン 20質量部
C.I.ピグメントイエロー155(縮合ジスアゾ系有機顔料) 2質量部
配合1の代わりに下記配合13を用い、防汚層を設けなかった以外は実施例1と同様にして、比較例5の帆布状の膜材を得た。この膜材の樹脂層は淡い黄色外観を有しており、樹脂層中の導電性金属酸化物微粒子、および、硫酸バリウム粒子は、合わせて25.7質量%であり、質量比は1:15であった。この膜材について、鏡面エンボス処理を施した側をおもて面として評価を行った。結果を表4に示す。
<配合13>軟質ポリ塩化ビニル樹脂ペースト組成物
ポリ塩化ビニル樹脂(重合度1600) 100質量部
フタル酸ジ−2−エチルヘキシル(可塑剤) 70質量部
三酸化アンチモン(難燃剤) 10質量部
ステアリン酸亜鉛(安定剤) 2質量部
ステアリン酸バリウム(安定) 2質量部
アンチモンドープ酸化スズ微粒子(ATO:平均一次粒子径0.02μm)4質量部
硫酸バリウム粒子(BaSO4:平均粒子径0.5μm) 60質量部
紫外線吸収剤:ベンゾトリアゾール系 0.5質量部
希釈溶剤:トルエン 20質量部
C.I.ピグメントイエロー155(縮合ジスアゾ系有機顔料) 2質量部
比較例5は、樹脂層中において、導電性金属酸化物微粒子に対する硫酸バリウム粒子の質量比は10倍を超えていたが、両方を合わせた含有量が多かったため、初期の遮熱性には優れていた。しかし、導電性金属酸化物微粒子と硫酸バリウム粒子を合わせた量が20質量%を超えて25.7質量%であったため、採光性に劣る膜材であり、また、黄色の顔料を加えても淡い色彩にしかならず、彩色性にも劣っていた。また、防汚層を設けなかったため、屋外曝露1年後には、表面に付着した汚れにより遮熱性が低下していた。
[比較例6]
配合1の代わりに、下記配合14を用いた以外は実施例1と同様にして比較例6の帆布状の膜材を得た。この膜材の樹脂層は、かすかに青みのある乳白外観であった。配合14において、硫酸バリウム粒子として、アスペクト比1〜2.5の不定型な簸性硫酸バリウム粒子をシリカ−アルミナで表面被覆(硫酸バリウム96質量%、シリカ−アルミナ4質量%)した、平均粒子径2.0μmの不定型粒子を用いた。この膜材について、防汚層が形成された側をおもて面として評価を行った。結果を表3に示す。
<配合14>軟質ポリ塩化ビニル樹脂ペースト組成物
ポリ塩化ビニル樹脂(重合度1600) 100質量部
フタル酸ジ−2−エチルヘキシル(可塑剤) 70質量部
三酸化アンチモン(難燃剤) 10質量部
ステアリン酸亜鉛(安定剤) 2質量部
ステアリン酸バリウム(安定) 2質量部
スズドープ酸化インジウム微粒子(ITO:平均一次粒子径0.03μm)2質量部
硫酸バリウム粒子(BaSO4:平均粒子径2.0μm) 14質量部
紫外線吸収剤:ベンゾトリアゾール系 0.5質量部
配合1の代わりに、下記配合14を用いた以外は実施例1と同様にして比較例6の帆布状の膜材を得た。この膜材の樹脂層は、かすかに青みのある乳白外観であった。配合14において、硫酸バリウム粒子として、アスペクト比1〜2.5の不定型な簸性硫酸バリウム粒子をシリカ−アルミナで表面被覆(硫酸バリウム96質量%、シリカ−アルミナ4質量%)した、平均粒子径2.0μmの不定型粒子を用いた。この膜材について、防汚層が形成された側をおもて面として評価を行った。結果を表3に示す。
<配合14>軟質ポリ塩化ビニル樹脂ペースト組成物
ポリ塩化ビニル樹脂(重合度1600) 100質量部
フタル酸ジ−2−エチルヘキシル(可塑剤) 70質量部
三酸化アンチモン(難燃剤) 10質量部
ステアリン酸亜鉛(安定剤) 2質量部
ステアリン酸バリウム(安定) 2質量部
スズドープ酸化インジウム微粒子(ITO:平均一次粒子径0.03μm)2質量部
硫酸バリウム粒子(BaSO4:平均粒子径2.0μm) 14質量部
紫外線吸収剤:ベンゾトリアゾール系 0.5質量部
比較例6では、平均粒子径が2.0μmの硫酸バリウム粒子が用いられており、実施例1と比較して遮熱性が劣っていた。硫酸バリウム粒子の平均粒子径が1.2μmを超えて2.0μmであったため、特に太陽放射に多く含まれる780〜1400nmの近赤外線の散乱が充分に行われず、遮熱性の向上に寄与しなかったものと考えられる。
[比較例7]
配合1の代わりに、下記配合15を用いた以外は実施例1と同様にして比較例7の帆布状の膜材を得た。この膜材の樹脂層は、かすかに青みのある乳白色外観であった。配合15において、硫酸バリウム粒子として、アスペクト比1〜2.5の不定型な簸性硫酸バリウム粒子をシリカ−アルミナで表面被覆(硫酸バリウム96質量%、シリカ−アルミナ4質量%)した、平均粒子径0.1μmの不定型粒子を用いた。この膜材について、防汚層が形成された側をおもて面として評価を行った。結果を表4に示す。
<配合15>軟質ポリ塩化ビニル樹脂ペースト組成物
ポリ塩化ビニル樹脂(重合度1600) 100質量部
フタル酸ジ−2−エチルヘキシル(可塑剤) 70質量部
三酸化アンチモン(難燃剤) 10質量部
ステアリン酸亜鉛(安定剤) 2質量部
ステアリン酸バリウム(安定) 2質量部
スズドープ酸化インジウム微粒子(ITO:平均一次粒子径0.03μm)2質量部
硫酸バリウム粒子(BaSO4:平均粒子径0.1μm) 14質量部
紫外線吸収剤:ベンゾトリアゾール系 0.5質量部
配合1の代わりに、下記配合15を用いた以外は実施例1と同様にして比較例7の帆布状の膜材を得た。この膜材の樹脂層は、かすかに青みのある乳白色外観であった。配合15において、硫酸バリウム粒子として、アスペクト比1〜2.5の不定型な簸性硫酸バリウム粒子をシリカ−アルミナで表面被覆(硫酸バリウム96質量%、シリカ−アルミナ4質量%)した、平均粒子径0.1μmの不定型粒子を用いた。この膜材について、防汚層が形成された側をおもて面として評価を行った。結果を表4に示す。
<配合15>軟質ポリ塩化ビニル樹脂ペースト組成物
ポリ塩化ビニル樹脂(重合度1600) 100質量部
フタル酸ジ−2−エチルヘキシル(可塑剤) 70質量部
三酸化アンチモン(難燃剤) 10質量部
ステアリン酸亜鉛(安定剤) 2質量部
ステアリン酸バリウム(安定) 2質量部
スズドープ酸化インジウム微粒子(ITO:平均一次粒子径0.03μm)2質量部
硫酸バリウム粒子(BaSO4:平均粒子径0.1μm) 14質量部
紫外線吸収剤:ベンゾトリアゾール系 0.5質量部
比較例7では、平均粒子径が0.1μmの硫酸バリウム粒子が用いられており、実施例1と比較して遮熱性が劣っていた。硫酸バリウム粒子の平均粒子径が0.3μm未満であったため、近赤外線の散乱が充分でなく、遮熱性の向上に寄与しなかったものと考えられる。
[比較例8]
配合10の代わりに、下記配合16を用いた以外は実施例8と同様にして比較例8のターポリン状の膜材を得た。得られた膜材の樹脂層は青みの強い乳白色外観であった。配合16において、導電性金属酸化物微粒子として、平均一次粒子径0.30μmのスズドープ酸化インジウム微粒子を用いた。この膜材について、防汚層が形成された側をおもて面として評価を行った。結果を表4に示す。
<配合16>近赤外線遮蔽層用軟質ポリ塩化ビニル樹脂フィルム組成物
ポリ塩化ビニル樹脂(重合度1300) 100質量部
フタル酸ジ−2−エチルヘキシル(可塑剤) 60質量部
リン酸トリクレジル(可塑剤) 10質量部
三酸化アンチモン(難燃剤) 10質量部
ステアリン酸亜鉛(安定剤) 2質量部
ステアリン酸バリウム(安定剤) 2質量部
スズドープ酸化インジウム微粒子(ITO:平均一次粒子径0.30μm)6質量部
硫酸バリウム粒子(BaSO4:平均粒子径0.4μm) 24質量部
紫外線吸収剤:ベンゾトリアゾール系 0.5質量部
配合10の代わりに、下記配合16を用いた以外は実施例8と同様にして比較例8のターポリン状の膜材を得た。得られた膜材の樹脂層は青みの強い乳白色外観であった。配合16において、導電性金属酸化物微粒子として、平均一次粒子径0.30μmのスズドープ酸化インジウム微粒子を用いた。この膜材について、防汚層が形成された側をおもて面として評価を行った。結果を表4に示す。
<配合16>近赤外線遮蔽層用軟質ポリ塩化ビニル樹脂フィルム組成物
ポリ塩化ビニル樹脂(重合度1300) 100質量部
フタル酸ジ−2−エチルヘキシル(可塑剤) 60質量部
リン酸トリクレジル(可塑剤) 10質量部
三酸化アンチモン(難燃剤) 10質量部
ステアリン酸亜鉛(安定剤) 2質量部
ステアリン酸バリウム(安定剤) 2質量部
スズドープ酸化インジウム微粒子(ITO:平均一次粒子径0.30μm)6質量部
硫酸バリウム粒子(BaSO4:平均粒子径0.4μm) 24質量部
紫外線吸収剤:ベンゾトリアゾール系 0.5質量部
比較例8は、スズドープ酸化インジウム微粒子の平均一次粒子径が0.20μmを超えて0.30μmであったため、可視領域の光線が散乱され、実施例8より採光性が劣っていた。また、スズドープ酸化インジウム微粒子の粒子径が大きかった為、質量比で4倍の硫酸バリウム粒子を含んでも導電性を生じ、高周波ウェルダー縫製時にスパークを生じてしまった。
本発明の採光性遮熱膜材は、特に太陽放射に対する遮熱性に優れ、かつ採光性を有しているため、その膜材に覆われた空間に快適な環境をもたらすことができ、日中の照明や、エアコンなどにかかる費用を削減することができる。しかも彩色が可能で高周波ウェルダーによる縫製も可能である為、特にテント倉庫、イベント向けテント、日除けテント、日除けモニュメント、装飾テント、ブラインド、シートシャッター、トラック幌などに好適に用いることができる。
1:採光性遮熱膜材
2:近赤外線遮蔽層
3:導電性金属酸化物微粒子
4:硫酸バリウム粒子
5:基布
6:防汚層
7:近赤外線遮蔽層以外の樹脂層
8:遮熱性評価に用いた小型テント
9:実施例、比較例で作成した膜材
2:近赤外線遮蔽層
3:導電性金属酸化物微粒子
4:硫酸バリウム粒子
5:基布
6:防汚層
7:近赤外線遮蔽層以外の樹脂層
8:遮熱性評価に用いた小型テント
9:実施例、比較例で作成した膜材
Claims (5)
- 少なくとも1層の近赤外線遮蔽層を有する可撓性シートであって、前記近赤外線遮蔽層が、熱可塑性樹脂と、平均一次粒子径0.01〜0.20μmの導電性金属酸化物微粒子、および、平均粒子径0.3〜1.2μmの硫酸バリウム粒子を含み、前記近赤外線遮蔽層が、前記導電性金属酸化物微粒子と前記硫酸バリウム粒子を合わせて3〜20質量%含み、前記近赤外線遮蔽層中において、前記導電性金属酸化物微粒子と前記硫酸バリウム粒子の質量比が1:2〜1:10であることを特徴とする採光性遮熱膜材。
- 前記導電性金属酸化物微粒子が、スズドープ酸化インジウム、アンチモンドープ酸化スズ、リンドープ酸化スズ、アルミニウムドープ酸化亜鉛、および、ガリウムドープ酸化亜鉛から選ばれた1種または2種以上以上からなる、請求項1に記載の採光性遮熱膜材。
- 前記可撓性シートが、繊維材料より形成された基布層を有する、請求項1または2に記載の採光性遮熱膜材。
- 前記近赤外線遮蔽層上に防汚層を有する、請求項1から3いずれか1項に記載の採光性遮熱膜材。
- 前記防汚層が、平均粒子径0.3〜0.7μmの硫酸バリウム粒子を3〜20質量%含む、請求項4に記載の採光性に優れた遮熱膜材。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2013245675A JP2015101930A (ja) | 2013-11-28 | 2013-11-28 | 採光性遮熱膜材 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
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JP2013245675A JP2015101930A (ja) | 2013-11-28 | 2013-11-28 | 採光性遮熱膜材 |
Publications (1)
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JP2015101930A true JP2015101930A (ja) | 2015-06-04 |
Family
ID=53377870
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JP2013245675A Pending JP2015101930A (ja) | 2013-11-28 | 2013-11-28 | 採光性遮熱膜材 |
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JP (1) | JP2015101930A (ja) |
Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2021075031A (ja) * | 2019-11-06 | 2021-05-20 | 寧波瑞凌新能源科技有限公司Ningbo Radi−Cool Advanced Energy Technologies Co., Ltd. | 放射冷却生地及び製品 |
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2013
- 2013-11-28 JP JP2013245675A patent/JP2015101930A/ja active Pending
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