JP2015098802A - 圧縮着火式エンジンの制御装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】エンジン負荷の低い運転領域においても安定した圧縮自着火燃焼を実現する。【解決手段】エンジン負荷が特定負荷T1以上の高負荷側圧縮自着火領域A2,A3では、内部EGRを実施するとともに内部EGR率をエンジン負荷が低いほど高くし、エンジン負荷が特定負荷T1未満の低負荷側圧縮自着火領域A1では、排気弁22を排気行程および吸気行程において開弁させ、かつ、吸気行程中に排気弁22と前記吸気弁21とのいずれもが閉弁しているネガティブオーバーラップ期間が生じるように吸気弁21を排気弁22が吸気行程中に閉弁した後に開弁させるとともに、エンジン負荷が低いほど排気弁22の閉弁時期EVCを進角側にする。【選択図】図8

Description

本発明は、圧縮着火式エンジンの制御装置に関する。
従来より、燃費性能の向上等を目的として、エンジン本体の気筒に形成された燃焼室内で圧縮自着火燃焼を実施することが行われている。
ここで、安定した圧縮自着火燃焼を実現するには、気筒内の混合気の温度を適正に制御する必要がある。
例えば、混合気の温度が高過ぎる場合には、燃焼時の圧力上昇が急峻となる、あるいは、過早着火してしまい、燃焼騒音の増大やノッキング等の異常燃焼が生じる。これに対して、特許文献1には、圧縮自着火燃焼を実施するエンジンであって、混合気の温度が比較的低い低回転低負荷領域においてのみ圧縮自着火燃焼を実施し、それ以外の高回転領域および高負荷領域では火花点火燃焼を実施するものが開示されている。
特開2012−172665号公報
一方、圧縮自着火燃焼を実現するためには、混合気の温度を自着火可能な温度にまで高める必要がある。しかしながら、エンジン負荷が低く供給される燃料量が少ない極低負荷領域では燃焼により生じる熱量が小さいために、混合気の温度が自着火可能な温度にまで上昇せず安定した圧縮自着火燃焼が実現されないおそれがある。特に、エンジン抵抗が小さく構成されており要求されるエンジン負荷に対して必要な燃料量が少ないエンジンでは、前記問題が顕著に生じるおそれがある。これに対して、例えば、極低負荷領域において火花点火燃焼を実施し比較的負荷の高い領域でのみ圧縮自着火燃焼を実施する、あるいは、極低負荷領域での燃焼を停止するすなわち極低負荷領域を設けずに比較的高い負荷をエンジン負荷の最小値として設定するという対策が考えられるが、このようにした場合には、このエンジンを搭載した車両において、無負荷状態からの加速時や無負荷状態への減速時に、燃焼形態の変更、あるいは、負荷の急激な変更に伴い、トルクショックが生じて良好な走行性が得られないという問題がある。
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、エンジン負荷の低い運転領域においても安定した圧縮自着火燃焼を実現することができる圧縮着火式エンジンの制御装置を提供する。
前記課題を解決するために、本発明は、内側に少なくとも燃料と空気とを含む混合気が燃焼する燃焼室が形成された気筒と、当該気筒内に吸気を導入する吸気ポートと、前記気筒内から排気を排出する排気ポートと、前記吸気ポートを開閉可能な吸気弁と、前記排気ポートを開閉可能な排気弁とを有するエンジン本体と、前記混合気の燃焼形態と、前記燃焼室内に残留している既燃ガスの混合気中の割合である内部EGR率と、前記排気弁の開弁状態および前記吸気弁の開弁状態とを制御する制御手段とを備え、前記制御手段は、前記圧縮自着火燃焼が実施される圧縮自着火領域のうちエンジン負荷が特定の負荷以上の高負荷側圧縮自着火領域では、前記燃焼室内に既燃ガスを残留させるとともにこの既燃ガスの割合である前記内部EGR率をエンジン負荷が低いほど高くし、エンジン負荷が特定の負荷未満の低負荷側圧縮自着火領域では、前記排気弁を排気行程および吸気行程において開弁させ、かつ、吸気行程中に前記排気弁と前記吸気弁とのいずれもが閉弁しているネガティブオーバーラップ期間が生じるように前記吸気弁を前記排気弁が吸気行程中に閉弁した後に開弁させるとともに、エンジン負荷が低いほど前記排気弁の閉弁時期を進角側にすることを特徴とする圧縮着火式エンジンの制御装置を提供する(請求項1)。
本発明によれば、特定負荷以上の高負荷側圧縮自着火領域において高温の既燃ガスを燃焼室内に残留させる内部EGRの実施およびエンジン負荷が低いほどこの内部EGR率を高くすることにより混合気の温度を高めて安定した圧縮自着火燃焼を実現することができるとともに、特定負荷未満の低負荷側圧縮自着火領域すなわち極低負荷領域においてポンピングロスの増大に伴う燃料量の増大により混合気を高温化して安定した圧縮自着火燃焼を実現することができる。このことは、燃費性能の向上および極低負荷領域近傍での燃焼形態の切替等を回避して良好な走行性を確保する。
具体的には、エンジン負荷が低くなるほど燃焼室内の温度は低下するが、本発明では、所定負荷よりもエンジン負荷が高く既燃ガスの温度もある程度高い高負荷側圧縮自着火領域において、エンジン負荷が低いほど内部EGR率すなわち高温の既燃ガスの割合を増大させている。そのため、既燃ガスによりエンジン負荷に応じて燃焼室内および混合気の温度を適正に高めることができ、高負荷側圧縮自着火領域全域において、安定した圧縮自着火燃焼を実現することができる。
一方、エンジン負荷が特定負荷よりも低い低負荷側圧縮自着火領域すなわち極低負荷領域では、発熱量が小さいために既燃ガスの温度が十分に高くならず内部EGR率の増加だけでは混合気の温度を適正に高めることができない。これに対して、本発明では、低負荷側圧縮自着火領域において、排気弁を吸気行程中に閉弁させかつ吸気弁を排気弁閉弁後に開弁させて吸気行程中に排気弁と前記吸気弁とのいずれもが閉弁しているネガティブオーバーラップ期間を生じさせているとともにエンジン負荷が低いほど排気弁の閉弁時期を進角させてこのネガティブオーバーラップ期間を大きくしている。すなわち、極低負荷領域において、排気弁閉弁後から吸気弁が開弁するまでのネガティブオーバーラップ期間中、気筒内の既燃ガスを膨張させることに伴うポンピングロスが発生するよう構成しているとともに、エンジン負荷が低いほどこのポンピングロスが大きくなるように制御している。そのため、極低負荷領域全域において、要求されるエンジン負荷に対して必要なエンジンの仕事量をポンピングロスの増加分だけ増大させ、これに伴い燃焼室内に供給する噴射量および発熱量を多くして燃焼室および混合気の温度を高温化することができ、低負荷側圧縮自着火領域においても安定した圧縮自着火燃焼を実現することができる。
本発明において、前記制御手段は、前記高負荷側圧縮自着火領域において、前記排気弁を排気行程および吸気行程で開弁させるとともに、前記排気弁の閉弁時期をエンジン負荷が低いほど遅角側にするのが好ましい(請求項2)。
このようにすれば、高負荷側圧縮自着火領域において、排気行程で一旦気筒外に排出された既燃ガスが吸気行程で気筒内に逆流するため、気筒内に高温の既燃ガスすなわちEGRガスを多く確保することができる。そして、排気弁の閉弁時期を遅角させることで排気の逆流量を多くすることができ、エンジン負荷の低下に伴ってEGR率を確実に増大させ、安定した自己着火燃焼を実現することができる。
また、本発明において、前記気筒内にオゾンを導入可能なオゾン導入手段をさらに備え、前記制御手段は、前記低負荷側圧縮自着火領域において、前記オゾン導入手段によって前記気筒内にオゾンを導入するのが好ましい(請求項3)。
このようにすれば、低負荷側圧縮自着火領域において、混合気の着火性および圧縮自着火燃焼の安定性をより一層高めることができる。
前記オゾン導入手段としては、前記気筒に吸入される空気中の酸素からオゾンを生成するものが挙げられる(請求項4)。
本発明では、低負荷側圧縮自着火領域において、吸気弁を排気弁が吸気行程中に閉弁した後に開弁させるとともに、エンジン負荷が低いほど排気弁の閉弁時期を進角側にしており、吸気行程中に排気弁が開いている期間がエンジン負荷が低いほど短くなる。そのため、低負荷側圧縮自着火領域では、エンジン負荷が低いほど内部EGR率は小さくなり、新気量すなわち気筒に吸入される空気量の割合が増大する。そのため、オゾン導入手段として、新気すなわち気筒に吸入される空気中の酸素からオゾンを生成するものが用いられれば、エンジン負荷の低下に合わせて気筒に供給されるオゾン量を適正に増大させることができ、低負荷側圧縮自着火領域全域で安定した圧縮自着火燃焼をより確実に実現する。
以上説明したように、本発明によれば、エンジン負荷の低い運転領域においても安定した圧縮自着火燃焼を実現することができる。
本発明の実施形態に係るエンジンシステムを示す概略図である。 図1に示すエンジンシステムの制御に係るブロック図である。 図1に示す燃焼室を拡大して示す断面図である。 (a)通常モードにおける排気弁のリフト特性を示した図である。(b)特殊モードにおける排気弁のリフト特性を示した図である。 エンジンの運転制御マップを例示する図である。 (a)第2領域の高負荷側での排気弁と吸気弁の開弁状態を示した図である。(b)第2領域の低負荷側での排気弁と吸気弁の開弁状態を示した図である。 CI燃焼領域におけるエンジン負荷と排気弁の閉弁時期との関係を示した図である。 全運転領域におけるエンジン負荷とEGR率との関係を示した図である。 (a)第1領域の高負荷側での排気弁と吸気弁の開弁状態を示した図である。(b)第1領域の低負荷側での排気弁と吸気弁の開弁状態を示した図である。 ポンピングロスを説明するための模式的なPV線図である。 CI燃焼領域におけるエンジン負荷と燃料量との関係を示した図である。 CI燃焼領域におけるエンジンの負荷とオゾン濃度との関係を示した図である。 オゾン発生器の概略構成図である。
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
図1は、本発明に係る圧縮着火式エンジンの制御装置が適用されたエンジンシステム100の概略構成図である。エンジンシステム100は、車両に搭載されて、エンジン本体1を有する。
エンジン本体1は、少なくともガソリンを含有する燃料が供給されるガソリンエンジンであり、4サイクルエンジン、すなわち、吸気行程、圧縮行程、膨張行程、排気行程が順に実施されるエンジンである。エンジン本体1は、圧縮自着火燃焼が実施される圧縮着火式エンジンである。エンジン本体1は、気筒18が設けられたシリンダブロック11と、シリンダブロック11上に配設されたシリンダヘッド12とを有する。エンジン本体1は、例えば、4つの気筒18を有する。
各気筒18内には、コンロッド142を介してクランクシャフト15と連結されたピストン14が往復動可能に嵌挿されている。各気筒18内には、気筒18の内側面とピストン14の頂面とによって囲まれた燃焼室19が形成されている。
ピストン14および燃焼室19の具体的構成は特に限定されないが、例えば、図3に示すような構成を有する。図3に示す例では、ピストン14の頂面の中央には、シリンダヘッド12から離間する方向に凹むとともにその深さが中央から径方向外側に向かに従って深くなった後浅くなる、いわゆるリエントラント型のキャビティ141が形成されている。
本実施形態では、熱効率の向上や圧縮自着火燃焼の安定化等を目的として、エンジン本体1の幾何学的圧縮比は、15以上の比較的高い値に設定されている。エンジン本体1の幾何学的圧縮比は、これに限定されるものではないが、15以上20以下程度の範囲が好ましい。
シリンダヘッド12には、気筒18毎に、気筒18内に吸気を導入するための吸気ポート16および気筒18内から排気を排出するための排気ポート17がそれぞれ形成されている。吸気ポート16および排気ポート17には、これら各ポート、詳細には、シリンダヘッド12に形成されたこれら各ポート16,17の開口をそれぞれ開閉する吸気弁21および排気弁22がそれぞれ配設されている。
排気弁22は、排気弁駆動機構70aによって駆動される。排気弁駆動機構70aは、排気バルブリフト可変機構(以下、排気VVL(Variable Valve Lift)という)71と、排気位相可変機構(以下、排気VVT(Variable Valve Timing)という)75とを含む。
排気VVL71は、排気弁22の作動モードを図4(a)の実線で示す通常モードと、図4(b)の実線で示す特殊モードとに切り替える。すなわち、排気弁22のリフト特性を、図4(a)の実線で示す第1特性と、図4(b)の実線で示す第2特性とに切り替える。通常モードでは、排気弁22のバルブリフトは、開弁後徐々に増大していき、最大リフトに到達すると再び徐々に減少してゼロに至る。特殊モードでは、排気弁22のバルブリフトは、通常モードと同様に、第1の開弁期間t_1中は、開弁後徐々に増大し最大リフトに到達した後再び徐々に減少していくが、そのままゼロに至ることなく、そのリフト量すなわち第1の開弁期間t_1での最大リフトよりも低いリフトを所定期間維持した後ゼロに至る。このように、特殊モードでは、排気弁22の開弁期間すなわち排気弁22が開弁してから最終的に(本実施形態では吸気行程中に)閉弁するまでの間の期間t_3は、所定の最大リフトとなる第1の開弁期間t_1と、この第1の開弁期間t_1に継続して最大リフトが第1の開弁期間t_1における最大リフトよりも小さくなるよう構成された第2の開弁期間t_2とからなる。特殊モードでは、通常モードにおける閉弁時期の直前から通常モードにおける閉弁時期よりも遅角側の所定タイミングまで開弁しており、排気弁の開弁期間は通常モードよりも特殊モードの方が長くなっている。排気VVL71は、これらのモードを実現するために、カム形状が互いに異なる第1カムと第2カムとを有する。第1カムは、図4(a)の実線で示すリフト特性に対応した形状を有し、カム山を1つ有する。第2カムは、図4(b)の破線で示すリフト特性に対応した形状を有し、カム山を2つ有する。排気VVL71は、第1カムと第2カムの作動状態を選択的に排気弁22に伝達するロストモーション機構を含んでおり、第1カムの作動状態を排気弁22に伝達することで排気弁22の作動状態を通常モードとし、第2カムの作動状態を排気弁22に伝達することで排気弁22の作動状態を特殊モードとする。排気VVL71は、例えば油圧作動式である。なお、第2カムの作動状態を排気弁22に伝達させた場合には、排気弁22のリフト特性は、図4(a)の破線で示す形状となる。
排気VVT75は、クランクシャフト15に対する排気カムシャフトの回転位相を変更して排気弁22の開弁時期と閉弁時期とを変更する。なお、排気弁VVT75は、通常モードおよび特殊モードの各モードで、それぞれ排気弁22の開弁期間を一定に維持したまま、排気弁22の開弁時期と閉弁時期とを変更する。排気VVT75は、液圧式、電磁式又は機械式の公知の構造を適宜採用すればよく、その詳細な構造についての説明は省略する。
排気VVT75は、排気弁22の作動状態が特殊モードとされている場合、排気弁22が排気行程に加えて吸気行程でも開弁するように、排気カムシャフトの回転位相を設定する。また、排気VVT75は、排気弁22の作動状態が特殊モードとされている場合、第2の開弁期間t_2中に吸気上死点がくるように、すなわち吸気上死点における排気弁22のバルブリフトが第2の開弁期間t_2中に実現される比較的小さい値となるように、排気カムシャフトの回転位相を設定する。このように、本実施形態では、排気弁22の作動状態が特殊モードとされることで、排気弁22が排気行程に加えて吸気行程中にも開弁する排気二度開きが実施される。特に、本実施形態では、排気弁22は、途中で閉弁することなく吸気上死点を挟んで排気行程と吸気行程において連続して開弁する。ここで、このように排気弁22を吸気上死点を挟んで連続して開弁させた場合には、排気弁22とピストン14とが干渉するおそれがある。これに対して、本実施形態では、前述のように、吸気上死点付近での排気弁22のバルブリフト量が小さい値に抑えられるため、排気弁22とピストン14との干渉を回避することができる。排気二度開きすなわち特殊モードは、高温の既燃ガスすなわち内部EGRガスを燃焼室19内に残留させていわゆる内部EGRを行うために実施される。具体的には、排気二度開きが実施されて吸気行程中にも排気弁22が開弁していると、排気行程で一旦排気ポート17に排出された排気が吸気行程中に燃焼室19内に逆流して排気すなわち高温の既燃ガスが燃焼室19内に残留する。
吸気弁22は、吸気弁駆動機構70bによって駆動される。吸気弁駆動機構70bは、排気弁駆動機構70aと同様に、吸気弁21の作動モードを2モードで切り替える吸気VVL74と、クランクシャフト15に対する吸気ジャムシャフトの回転位相を変更して吸気弁21の開弁時期と閉弁時期とを変更する吸気VVT72とを含む。
吸気VVL74は、吸気弁21のバルブリフトを相対的に大きくする大リフトカムと、吸気弁21のバルブリフトを相対的に小さくする小リフトカムと、これらカムのいずれか一方のカムの作動状態を選択的に吸気弁21に伝達するロストモーション機構とを含む。吸気VVL74は、大リフトカムの作動状態を吸気弁21に伝達することで、吸気弁21の作動モードを、バルブリフトおよび開弁期間が相対的に大きいモードにする。吸気VVL74は、小リフトカムの作動状態を吸気弁21に伝達することで、吸気弁21の作動モードを、バルブリフトおよび開弁期間が相対的に小さいモードにする。大リフトカムと小リフトカムとは、閉弁時期又は開弁時期を同じにして切り替わるように設定されている。
吸気VVT72は、排気VVT75と同様に、液圧式、電磁式又は機械式の公知の構造を適宜採用すればよく、その詳細な構造についての図示は省略する。
各吸気ポート16には、吸気通路30が接続されている。具体的には、吸気通路30の下流端には気筒18に対応して分岐する分岐通路が形成されており、これら分岐通路と各吸気ポート16とが接続されている。
吸気通路30には、その上流側から順に、エアクリーナ31、水冷式のインタークーラ/ウォーマ34、スロットル弁36、サージタンク33が配設されている。
吸気通路30には、インタークーラ/ウォーマ34をバイパスするインタークーラバイパス通路35が接続されている。インタークーラバイパス通路35には、気筒18内に流入する新気の温度を調整するためにインタークーラバイパス通路35を通過する空気流量を調整するインタークーラバイパス弁351が配設されている。なお、インタークーラ/ウォーマ34及びそれに付随する部材は、省略してもよい。
各排気ポート17には排気通路40が接続されている。具体的には、吸気通路30と同様に、排気通路40の上流端には気筒18に対応して分岐する分岐通路が形成されており、これら分岐通路と各吸気ポート18とが接続されている。
排気通路40には、排ガス中の有害成分を浄化する排気浄化装置が配設されている。本実施形態では、上流側から順に直キャタリスト41とアンダーフットキャタリスト42とが設けられている。直キャタリスト41及びアンダーフットキャタリスト42は、例えば三元触媒を含む。
吸気通路30と排気通路40との間には、排気の一部を吸気に還流するため、すなわち、外部EGRを行うためのEGR装置50が設けられている。EGR装置50は、EGR通路51と、EGRクーラ52と、EGRクーラバイパス通路53とを含む。EGR通路51は、吸気通路30のうちのサージタンク33とスロットル弁36との間の部分と、排気通路40のうちの直キャタリスト41よりも上流側の部分とを接続している。EGRクーラ52は、EGR通路51を通過するガスを冷却するためのものであり、EGR通路51に介設されている。EGRクーラバイパス通路53は、EGRクーラ52をバイパスする通路であり、EGR通路51のうちEGRクーラ52の上下流部分を接続している。EGR通路51およびEGRクーラバイパス通路53には、それぞれ、各通路51、53を通過する排気の流量を調整するEGR弁511、EGRクーラバイパス弁531が配設されている。以下、このEGR装置50を用いて排気の一部を吸気に還流することを、外部EGRを行うといい、このEGR装置50により吸気に還流された排気を外部EGRガスという場合がある。
シリンダヘッド12には、気筒18毎に、燃焼室19内に燃料を直接噴射するインジェクタ67が取り付けられている。インジェクタ67は、図3に示すように、その噴口が燃焼室19の天井面の中央部分から、その燃焼室19内に臨むように配設されており、キャビティ141と相対している。本実施形態では、インジェクタ67は、複数の噴口を有する多噴口型である。インジェクタ67から噴射された燃料噴霧は、燃焼室19の中心位置から放射状に広がる。
ここで、ピストン14が圧縮上死点付近に位置するタイミングでインジェクタ67から燃料が噴射された場合には、図3の矢印に示すように、燃料噴霧はキャビティ141の壁面に沿って流動する。そのため、本エンジンシステム100では、後述する高圧リタード噴射を行った際に、燃料噴霧をより早期に拡散させて早期に混合気を形成することができる。
インジェクタ67には、燃料供給システム62により燃料タンク(不図示)から燃料が供給される。燃料供給システム62は、燃料ポンプ63と蓄圧レール64とを含む。燃料ポンプ63は、燃料タンクから蓄圧レール64に燃料を圧送する。本実施形態では、燃料ポンプ63は、エンジン1によって駆動されるプランジャー式のポンプである。蓄圧レール64は圧送された燃料を比較的高い圧力で蓄える。インジェクタ67は、蓄圧レール64に蓄えられている高圧の燃料を燃焼室19内に噴射する。噴射圧の値は特に限定されるものではないが、例えば、30MPa以上120MPa以下に設定されている。
シリンダヘッド12には、燃焼室19内の混合気に強制点火する点火プラグ25が取り付けられている。本実施形態では、点火プラグ25は、エンジン本体1の排気側から斜め下向きに延びるように、シリンダヘッド12を貫通して配置されている。図3に示すように、点火プラグ25の先端は、圧縮上死点に位置するピストン14のキャビティ141内に臨んでいる。
前記各装置は、パワートレイン・コントロール・モジュール(制御手段、以下、PCMという)10によって制御される。PCM10は、CPU、メモリ、カウンタタイマ群、インターフェース及びこれらのユニットを接続するパスを有するマイクロプロセッサで構成されている。
PCM10には、図1,2に示すように、各種のセンサSW1〜SW16の検出信号が入力される。
センサSW1は、新気の流量を検出するエアフローセンサSW1である。センサSW2は、新気の温度を検出する吸気温度センサSW2である。エアフローセンサSW1、吸気温度センサSW2は、吸気通路20のうちエアクリーナ31の下流側に配設されている。センサSW3は、インタークーラ/ウォーマ34を通過した後の新気の温度を検出する第2吸気温度センサSW3であり、インタークーラ/ウォーマ34の下流側に配置されている。センサSW4は、外部EGRガスの温度を検出するためのEGRガス温センサSW4であり、EGR通路50のうち吸気通路30との接続部分近傍に配置されている。センサSW5は、気筒18内に流入する直前の吸気の温度を検出する吸気ポート温度センサSW5であり、吸気ポート16に取り付けられている。センサSW6は、気筒18内の圧力を検出する筒内圧センサSW6であり、シリンダヘッド12に取り付けられている。センサSW7は、排気温度を検出する排気温センサSW7である。センサSW8は、排気圧を検出する排気圧センサSW8である。排気温センサSW7、排気圧センサSW8は、排気通路40のうちEGR通路50の接続部分近傍に配置されている。センサSW9は、排気中の酸素濃度を検出するリニアOセンサSW9であり、排気通路40のうち直キャタリスト41の上流側に配置されている。センサSW10は、排気中の酸素濃度を検出するラムダOセンサSW10であり、直キャタリスト41とアンダーフットキャタリスト42との間に配置されている。センサSW11は、エンジン冷却水の温度を検出する水温センサSW11である。センサSW12は、クランクシャフト15の回転角を検出するクランク角センサSW12である。センサSW13は、車両のアクセルペダル(図示略)の操作量に対応したアクセル開度を検出するアクセル開度センサSW13である。センサSW14、センサSW15は、それぞれ吸気側及び排気側のカム角センサSW14,SW15である。センサSW16は、インジェクタ67に供給される燃料の圧力を検出する燃圧センサSW16であり、コモンレール64に取り付けられている。
PCM10は、各センサSW1〜16の検出信号に基づいて種々の演算を行う。PCM10は、これらの検出信号に基づいてエンジン本体1や車両の運転条件を判定する。PCM10は、運転条件に応じてインジェクタ67、点火プラグ25、燃料供給システム62、並びに、各種の弁(スロットル弁36、インタークーラバイパス弁351、EGR弁511、EGRクーラバイパス弁531)のアクチュエータへ制御信号を出力して、これらを制御する。PCM10は、運転条件に応じて、吸気VVT72、吸気VVL74、排気VVT75、排気VVL71へ制御信号を出力して、これらおよび吸気弁21、排気弁22を制御する。
図5は、横軸がエンジンの回転数、縦軸がエンジン負荷の制御マップを示している。前述のように、エンジン本体1では、点火プラグ25による点火を行わずに混合気を圧縮自着火させて燃焼させる圧縮自着火燃焼が実施される。ただし、エンジン負荷が高い運転領域において圧縮自着火燃焼を実施した場合には、混合気の温度が高いために燃焼が急峻になり燃焼騒音等の問題が生じる。そのため、本実施形態に係るエンジンシステム100では、エンジン負荷が所定の第3負荷T3未満の低負荷領域でのみ圧縮自着火燃焼を実施し、エンジン負荷が第3負荷T3以上の高負荷領域では点火プラグ25により混合気を強制点火する火花点火燃焼を実施する。すなわち、このエンジンシステム100では、低負荷領域がCI(Compression Ignition)燃焼領域に設定され、高負荷領域がSI(Spark Ignition)燃焼領域に設定されている。なお、これら燃焼領域の境界線は、図例に限定されるものではない。
CI燃焼領域は、さらに、エンジン負荷の高低に応じて3つの領域に分けられている。以下に、各領域の詳細な制御内容について説明する。
(1)第2領域(高負荷側圧縮自着火領域)
CI燃料領域のうちエンジン負荷が所定の第1負荷T1以上かつ第2負荷T2未満となる領域に設定された第2領域A2では、外部EGRは実施されず内部EGRのみが実施される。すなわち、第2領域A2では、EGR弁511およびEGRクーラバイパス弁531は閉弁される一方、排気VVL71により排気弁22の作動状態が特殊モードとされて、排気二度開きが実施される。
第2領域A2では、図6(a)、(b)に示すように、排気VVT75と吸気VVT72とにより、吸気弁21の開弁時期IVOが排気弁22の閉弁時期EVCよりも進角側とされ、吸気行程において吸気弁21の開弁期間と排気弁22の開弁期間とがオーバーラップする、あるいは、排気弁22の閉弁後比較的早期に吸気弁21が開弁するように制御される。ここで、図6(a)は、第2領域A2のうちエンジン負荷の比較的高い運転条件における吸気弁21、排気弁22のバルブリフトを示した図である。図6(b)は、図6(a)での運転条件よりもエンジン負荷の低い条件における吸気弁21、排気弁22のバルブリフトを示した図である。また、図6(a)(b)において、実線が排気弁22のバルブリフト、破線が吸気弁21のバルブリフトである。
そして、第2領域A2では、図6(a)、(b)、図7に示すように、排気VVT75により、排気弁22の閉弁時期EVCは、エンジン負荷の低下に伴って遅角側とされる。なお、第2領域A2では、吸気弁21には、小リフトカムの作動状態が伝達され、吸気弁21のバルブリフトは相対的に小さいリフトとされる。また、第2領域A2では、吸気弁21は、開弁期間一定でエンジン負荷が低いほど遅角される。
また、第2領域A2では、吸気行程中にインジェクタ67により噴射が行われる吸気行程噴射が実施される。
第1負荷T1は、全エンジン回転数において一定の値に設定されている。一方、第2負荷T2は、エンジン回転数に応じて異なる値に設定されており、エンジン回転数が高くなるほど低い値に設定されている。
第2領域A2で上記の制御を行うのは次の理由による。
前述のように、エンジン負荷が高い場合には燃焼室19内および混合気の温度が高いために圧縮自着火燃焼を行うと燃焼騒音等の問題が生じる。そのため、燃焼騒音等を回避するためには燃焼室19内の温度は低い方が好ましい。一方、燃焼室19内の温度が低すぎる場合には、今度は、混合気の温度が自着火可能な温度にまで上昇せず、失火等が発生して、安定した圧縮自着火燃焼を実現できないという問題が生じる。
そこで、エンジン負荷が第2負荷T2未満の比較的低い負荷であって混合気の発熱量が小さく、この発熱量だけでは燃焼室19内および混合気の温度が十分に高められない第2領域A2では、失火等を回避するべく、排気二度開きによる内部EGRを実施して高温の既燃ガス(内部EGRガス)を燃焼室19内に残留させ、これにより燃焼室19内および混合気の温度を高めている。
ここで、エンジン負荷が低くなるほど燃焼室19内での混合気の発熱量は小さくなり燃焼室内の温度は低くなる。そして、排気二度開きにおいては、排気弁22の閉弁時期EVCがより遅角側となると、吸気行程中で排気弁22が開弁している期間が増大して燃焼室19に逆流する既燃ガスすなわち内部EGRガス量が増大する。
そこで、第2領域A2では、エンジン負荷が低くなるほど排気弁22の閉弁時期EVCを遅角側として図8に示すようにエンジン負荷の低下に伴って内部EGR率を増大させて、燃焼室19内の温度を適正な温度にまで高める。本実施形態では、第1負荷T1において内部EGR率が最大値となるように、エンジン負荷の低下に伴って内部EGR率を連続的に増大させる。内部EGR率の最大値は、例えば、50〜80%に設定される。
また、吸気行程において吸気弁21を排気弁22の閉弁後に開弁させた場合には、排気弁22の閉弁後から吸気弁21の開弁までの間、燃焼室19内に残留している既燃ガスを膨張させることに伴ってポンピングロスが増大する。
そこで、第2領域では、ポンピングロスの増大を回避するべく、排気弁22の閉弁時期に対して吸気弁21の開弁時期を近づけ、第2領域の低負荷側では、排気弁22と吸気弁21の開弁期間を吸気行程中でオーバーラップさせる、あるいは、排気弁22の閉弁後比較的早期に吸気弁21を開弁させている。
また、空気と燃料との混合が十分になされていれば混合気を適切にすなわち排気性能および熱効率の高い状態で自着火させることができる。そして、第2領域では、混合気の温度がそれほど高くないため、混合気が過早着火するおそれがない。
そこで、第2領域では、燃料を吸気行程中に噴射して予め空気と混合させておくことで圧縮上死点近傍で適切に圧縮自着火させる。
(2)第1領域(低負荷側圧縮自着火領域)
CI燃料領域のうちエンジン負荷が第1負荷T1未満となる極低負荷領域に設定された第1領域A1では、第2領域と同様に、外部EGRは実施されず、排気二度開きによる内部EGRのみが実施されるとともに、吸気行程噴射が実施される。一方、第1領域A1では、図9(a)、(b)に示すように、排気VVT75と吸気VVT72により、吸気弁21の開弁時期IVOが排気弁22の閉弁時期EVCよりも遅角側とされ、吸気行程において吸気弁21の開弁期間と排気弁22の開弁期間とがオーバーラップしないように、すなわち、吸気行程においてこれら吸気弁21、排気弁22のいずれもが閉弁しているネガティブオーバーラップ(NVO)期間が生じるように制御される。図9(a)は、第1領域A1のうちエンジン負荷の比較的高い運転条件における吸気弁21、排気弁22のバルブリフトを示した図である。図9(b)は、図9(a)の運転条件よりもエンジン負荷の低い条件における吸気弁21、排気弁22のバルブリフトを示した図である。また、図9(a)(b)において、実線が排気弁22のバルブリフト、破線が吸気弁21のバルブリフトである。
そして、第1領域A1では、図9(a)、(b)および図7に示すように、吸気行程におけるネガティブオーバーラップ期間がエンジン負荷の低下に伴って増大するように、排気VVT75により、排気弁22の閉弁時期EVCがエンジン負荷の低下に伴って進角側に制御される。なお、第1領域A1においても、吸気弁21には、小リフトカムの作動状態が伝達され、吸気弁21のバルブリフトは相対的に小さいリフトとされる。また、第1領域A1においても、吸気弁21は、エンジン負荷が低いほど開弁期間一定で遅角される。
また、第1領域A1でも、吸気行程中にインジェクタ67により噴射が行われる吸気行程噴射が実施される。
第1領域A1で上記の制御を行うのは次の理由による。
第1領域A1も、第2領域A2と同様に、燃焼室19内での混合気の発熱量が小さく、この発熱量だけでは燃焼室19内の温度が十分に高められない。そのため、第1領域A1においても、失火等を回避するべく、前記のように内部EGRを実施して高温の既燃ガスを燃焼室19内に残留させ、これにより燃焼室19内の温度を高めている。
しかしながら、第2領域A2よりもエンジン負荷が低い極低負荷領域である第1領域A1では、混合気の発熱量が小さいため、生成される既燃ガスすなわち内部EGRガスの温度も低い。そのため、第1領域A1では、内部EGRの実施だけでは、燃焼室19内の温度を十分に高めることができない。
ここで、ポンピングロスを増大させれば、増大したポンピングロス分燃焼室19に噴射する燃料量を増大させることができる。そして、この燃料量の増大に伴って混合気の発熱量および混合気の温度を高めることができる。
そこで、第1領域A1では、混合気の温度を高めるべく、第2領域A2と異なり、吸気行程において排気弁22の閉弁後に吸気弁21を開弁させて、吸気行程においてネガティブオーバーラップ期間が生じるように制御してポンピングロスを増大させ、この増大したポンピングロス分燃料量を増大させる。
具体的には、前述のように、吸気行程において吸気弁21を排気弁22の閉弁後に開弁させて吸気行程においてネガティブオーバーラップ期間を設けた場合には、ネガティブオーバーラップ期間中、燃焼室19に残留している既燃ガスを膨張させねばならず、ポンピングロスが増大する。すなわち、図10の模式的なPV線図に示されるように、吸気行程にネガティブオーバーラップ期間を設けた場合には、この期間を設けない場合に対して、斜線で示した分ポンピングロスが増大する。ポンピングロスが増大すれば、エンジン負荷すなわち要求されるエンジン出力に対して、燃料量を増大させることができる。そして、燃料量が増大すれば、混合気中の燃料割合が増大することにより混合気の着火性が向上するとともに、発熱量が増大することにより直接的および内部EGRガスの高温化を介して燃焼室19内の温度を高めて、混合気の着火性を高めることができる。
従って、第1領域A1では、混合気の着火性を高めて安定した圧縮自着火燃焼を実現するべく、吸気行程においてネガティブオーバーラップ期間を生じさせて、これに合わせて燃料噴射量を増大させる(ネガティブオーバーラップ期間を設けない場合よりも燃料噴射量を増大させる)。
また、エンジン負荷の低下に伴ってネガティブオーバーラップ期間を増大させれば、エンジン負荷の低下すなわち燃焼室19温度の低下に合わせて適正に燃料量の増加量を増やして混合気の着火性を確保することができる。従って、第1領域A1では、エンジン負荷の低下に伴って排気弁22の閉弁時期を進角させてネガティブオーバーラップ期間を増大させ、これにより、第1領域A1全域で安定した圧縮自着火燃焼を実現する。
エンジン負荷と燃料量との関係を図11に示す。図11に示すように、全負荷領域において燃料量はエンジン負荷の減少に伴い減少していくが、第1負荷T1以下の第1領域A1では、エンジン負荷の変化に対する燃料噴射量の減少割合が小さく、エンジン負荷に対して相対的に多くの燃料量を噴射している。図11の実線は、実際に噴射される燃料量を示しており、図9の波線は、第1負荷T1以上の領域におけるエンジン負荷と燃料量との関係を仮に第1負荷T1以下の領域に適用した場合のエンジン負荷と燃料量との関係を示している。
また、前記のように、排気二度開きを実施しつつエンジン負荷の低下に伴って排気弁22の閉弁時期を進角側にすれば、吸気行程中に排気弁22が開弁している期間がエンジン負荷の低下に伴って短くなり、排気ポート17側から燃焼室19に逆流する既燃ガスすなわち内部EGR量および内部EGR率が低下する。すなわち、図8に示すように、また、前述のように、第2領域A2では内部EGR率はエンジン負荷の低下に伴って高くなっていくが、エンジン負荷が第1負荷T1を越えてエンジン負荷が低くなると、内部EGR率はエンジン負荷の減少に伴って減少していく。すなわち、内部EGR率は、第1負荷T1において最大値となり、第1負荷T1からエンジン負荷が増大および減少するほど低くなる。このように内部EGR率が減少することにより、第1領域A1では、より低負荷側において新気量を多く確保することができる。第1領域A1では、この新気量の増大によっても混合気の着火性を高めることができる。
なお、第1領域A1で吸気行程中に噴射を行うのは、第2領域A2で吸気行程中に噴射を行うと同様の理由からである。
(3)第3領域A3(高負荷側圧縮自着火領域)
CI燃料領域のうちエンジン負荷が第2負荷T2以上となる比較的エンジン負荷の高い領域に設定された第3領域A3では、排気二度開きによる内部EGRに加えて外部EGRが実施される。第3領域A3では、EGRクーラ52を通過することによって冷却された排ガスすなわちクールドEGRガスが燃焼室19内に導入される。すなわち、第3領域A3では、EGRクーラバイパス弁531は閉弁され、EGR弁511が開弁される。第3領域A3では、排気弁22の閉弁時期EVCは、エンジン負荷の低下に伴って遅角側とされる。また、第3領域A3では、第2領域A2と同様に、吸気弁21には、小リフトカムの作動状態が伝達されるとともに、吸気弁21は、開弁期間一定でエンジン負荷が低いほど遅角される。そして、第3領域A3では、排気VVT75と吸気VVT72とにより、吸気行程において排気弁22の閉弁後に吸気弁21が開弁される。一方、第3領域A3では、第1領域A1および第2領域A2と異なり、圧縮行程後期から膨張行程初期までの期間にインジェクタ67により燃焼室19内に噴射が行われる高圧リタード噴射が実施される。
第3領域A3で上記の制御を行うのは次の理由による。
前述のように、エンジン負荷が高い場合には、燃焼室19内の温度が高いために圧縮自着火燃焼を行うと燃焼騒音等の問題が生じる。そのため、燃焼騒音等を回避するためには燃焼室19内の温度は低い方が好ましい。
そこで、エンジン負荷が第2負荷T2以上の比較的高い負荷であって、燃焼室19内の温度が高くなりやすい第3領域A3では、燃焼騒音等の問題を回避するべく、前記のように、内部EGRガスに加えてクールドEGRガスが燃焼室19内に導入され、これにより燃焼室19内の温度が適正な温度に抑えられている。
また、エンジン負荷が高いほど燃焼室19内の温度は高くなりやすい。そのため、第3領域A3では、排気弁22の閉弁時期EVCがエンジン負荷の低下に伴って遅角側とされる、すなわち、排気弁22の閉弁時期EVCがエンジン負荷の増大に伴って進角側とされ、燃焼室19内の温度がエンジン負荷に応じて適正な温度に抑えられる。図7に示すように、第3領域A2における排気弁22の閉弁時期EVCは、第2領域A2での排気弁22の閉弁時期EVCよりも進角側であり、第2領域A2と第3領域A3とを合わせた領域において、排気弁22の閉弁時期EVCはエンジン負荷の増大に伴って進角側とされる。これに伴い、図8に示すように、内部EGR率は、第2領域A2と第3領域A3とを合わせた領域において、エンジン負荷の増大に伴って減少していく。本実施形態では、第3領域A3において、外部EGRは、外部EGRと内部EGRとを合わせた全EGRガスの混合気中の割合すなわちEGR率が、第2領域A2と第3領域A3とを合わせた領域において、エンジン負荷の増大に伴って減少するよう設定されている。
また、燃焼室19内の温度が高い場合において、吸気行程中に燃料を噴射した場合には、過早着火するおそれがある。
そこで、第3領域A3では、過早着火を回避するべく、上記のようにEGRにより燃焼室19内の温度を適正に制御するとともに、第1領域A1および第2領域A2と異なり、圧縮行程後期から膨張行程初期までの期間に燃料を噴射して、膨張行程期間での燃焼を実現するとともに、均質な混合気を比較的短時間で形成するべく、燃料を比較的高圧で噴射する。
(4)SI燃焼領域
SI燃焼領域での具体的制御内容は特に限定されるものではないが、このエンジンシステム100では、SI燃焼領域では、過早着火やノッキングといった異常燃焼の回避、NOx生成の抑制および冷却損失の低減を目的として、高圧リタード噴射が実施され、内部EGRが停止される一方クールドEGRガスを燃焼室19内に導入する外部EGRが実施される。また、SI燃焼領域では、ポンプ損失を低減するべく、スロットル弁36は全開とされて、EGR弁511の開度を調整することで気筒18内に導入する新気量が調整される。図9に示すように、外部EGR率は、SI燃焼領域において、エンジン負荷が高くなるほど小さくされるとともに最大負荷において外部EGR率が0となり外部EGRが停止されるように設定されている。さらに、外部EGR率は、内部EGRと外部EGRとを含む全EGR率が、第3領域A3とSI燃焼領域とにわたってエンジン負荷の増加に対するEGR率の低下割合が一定となるように設定されている。また、SI燃焼領域では、吸気弁21は、吸気VVL54により大リフトとされ、エンジン負荷の増大に伴って遅角される。
以上のように、本エンジンシステム100では、圧縮自着火燃焼が実施されるCI領域全域において、比較的エンジン負荷の高い第2領域A2および第3領域A3では、エンジン負荷が低いほど内部EGR率が高くされる一方、極低負荷領域である第1領域A1では、排気弁22が吸気行程で閉弁した後、吸気弁21が開弁されて吸気行程でこれら吸気弁21と排気弁22とがいずれも閉弁しているネガティブオーバーラップ期間が生じるように制御されるとともに、エンジン負荷が低いほど排気弁の閉弁時期が進角側とされて、ネガティブオーバーラップ量が増大するように、また、内部EGR率が増大するように制御される。
そして、この制御により、本エンジンシステム100では、第2領域A2および第3領域A3において、エンジン負荷が低いほど内部EGRによる混合気の温度上昇量を多くしてこれらの領域A2、A3全域で安定した圧縮自着火燃焼を実現することができるとともに、第1領域A1において、既燃ガスを膨張させることに伴うポンピングロスを増大させて、これにより、燃料量を増大させて気筒内の温度を高めて安定した圧縮自着火燃焼を実現することができる。このことは、エンジンシステム全体として安定した圧縮自着火燃焼を実現して燃費性能をより確実に高める。また、極低負荷領域のみSI燃焼を行う場合や、極低負荷領域を省略する、すなわち、第2負荷領域からエンジン負荷を設定する場合には、無負荷状態からの加速時や無負荷状態への減速時に、燃焼形態の変更、あるいは、負荷の急激な変更に伴い、トルクショックが生じるおそれがあるが、本エンジンシステム100では、前記のように極低負荷領域でも安定した圧縮自着火燃焼を実現することができるため、トルクショックを回避して良好な走行性を得ることができる。
ここで、第2領域A2において、混合気の着火性をより高めるべく吸気中にオゾンを供給してもよい。このようにすれば、ポンピングロスの増大、新気量の増大に加えてオゾンの供給によって、混合気の着火性をより確実に高めて、より安定した圧縮自着火燃焼を実現することができる。
なお、オゾンは、第2領域A2全域で一定量あるいは一定濃度供給されるようにしてもよいが、例えば、図12に示すように、第2領域A2においてエンジン負荷が低下するほど混合気中のオゾン濃度を増大させれば、オゾンを供給するための電力等を小さく抑えつつ各負荷において混合気の着火性を適正に確保することができる。また、オゾン濃度の具体的な値としては、例えば、最大濃度が20〜30ppm程度に設定すればよい。
オゾンを供給する具体的な装置としては、例えば、図1の破線および図13に示すように、吸気通路30に介設されて、吸気通路30を通過する新気に含まれる酸素を減量ガスとしてオゾンを生成するオゾン発生器(オゾン導入手段)76が挙げられる。このオゾン発生器76は、吸気管30の横断面上で、上下又は左右方向に所定間隔を設けて並列された複数の電極を備える。これら電極に対して、図外の電源から高周波交流高電圧が印加されると、放電間隙において無声放電が発生し、この間隙を通過する酸素がオゾン化される。オゾン発生器76で生成されるオゾン量は、電極に対する電圧の印加態様を変更する、及び/又は、電圧を印加する電極の数を変更することによって変更可能であり、この変更により吸気中のオゾン濃度は調整可能である。
このように吸気中の酸素からオゾンを生成する装置は、吸気とは別の空気からオゾンを生成する装置に比べて、空気の取り込み口を別途設ける必要がない等、比較的簡単な構成で、吸気にオゾンを生成することができる。また、前述のように第2領域A2では、EGR率が少なく抑えられて燃焼室に新気量が多く導入される。従って、吸気中の新気に含まれる酸素からオゾンを生成するものを用いれば、第2領域A2において、簡単な構成で、新気の増大に応じてオゾンをより多く燃焼室内に導入することができる。換言すれば、吸気中の新気に含まれる酸素からオゾンを生成する装置を有するエンジンシステム100において、第2領域A2で、排気弁22の吸気行程中の開弁期間をエンジン負荷の低下に伴って進角すれば、エンジン負荷の低下に伴って燃焼室内により多くのオゾンを供給することができ、第2領域A2全域においてより確実に安定した圧縮自着火燃焼を実現することができる。
なお、本発明は、前述した実施形態に限定されるものではない。例えば、吸気行程中に燃料を噴射する場合において、気筒18内に設けたインジェクタ67ではなく、別途、吸気ポート16に設けたポートインジェクタにより、吸気ポート16内に燃料を噴射してもよい。
また、排気弁22の特殊モードとして、吸気圧縮上死点付近で排気弁22が一端閉弁し、その直後に排気弁22が開弁するよう構成されたものを適用してもよい。
また、エンジン1の動弁系に関し、吸気弁21のVVL74に代えて、リフト量を連続的に変更可能なCVVL(Continuously Variable Valve Lift)を備えるようにしてもよい。
また、高圧リタード噴射は、必要に応じて分割噴射にしてもよく、同様に、吸気行程噴射もまた、必要に応じて分割噴射にしてもよい。これらの分割噴射では、吸気行程と圧縮行程とのそれぞれにおいて燃料を噴射してもよい。
1 エンジン(エンジン本体)
10 PCM(制御手段)
18 気筒
21 吸気弁
22 排気弁
76 オゾン発生器(オゾン導入手段)

Claims (4)

  1. 内側に少なくとも燃料と空気とを含む混合気が燃焼する燃焼室が形成された気筒と、当該気筒内に吸気を導入する吸気ポートと、前記気筒内から排気を排出する排気ポートと、前記吸気ポートを開閉可能な吸気弁と、前記排気ポートを開閉可能な排気弁とを有するエンジン本体と、
    前記混合気の燃焼形態と、前記燃焼室内に残留している既燃ガスの混合気中の割合である内部EGR率と、前記排気弁の開弁状態および前記吸気弁の開弁状態とを制御する制御手段とを備え、
    前記制御手段は、
    少なくともエンジン負荷が所定負荷よりも低い低負荷領域では前記燃焼形態を圧縮自着火燃焼にし、
    前記圧縮自着火燃焼が実施される圧縮自着火領域のうちエンジン負荷が特定の負荷以上の高負荷側圧縮自着火領域では、前記燃焼室内に既燃ガスを残留させるとともにこの既燃ガスの割合である前記内部EGR率をエンジン負荷が低いほど高くし、
    エンジン負荷が特定の負荷未満の低負荷側圧縮自着火領域では、前記排気弁を排気行程および吸気行程において開弁させ、かつ、吸気行程中に前記排気弁と前記吸気弁とのいずれもが閉弁しているネガティブオーバーラップ期間が生じるように前記吸気弁を前記排気弁が吸気行程中に閉弁した後に開弁させるとともに、エンジン負荷が低いほど前記排気弁の閉弁時期を進角側にすることを特徴とする圧縮着火式エンジンの制御装置。
  2. 請求項1に記載の圧縮着火式エンジンの制御装置において、
    前記制御手段は、前記高負荷側圧縮自着火領域において、前記排気弁を排気行程および吸気行程で開弁させるとともに、前記排気弁の閉弁時期をエンジン負荷が低いほど遅角側にすることを特徴とする圧縮着火式エンジンの制御装置。
  3. 請求項1または2に記載の圧縮着火式エンジンの制御装置において、
    前記気筒内にオゾンを導入可能なオゾン導入手段をさらに備え、
    前記制御手段は、前記低負荷側圧縮自着火領域において、前記オゾン導入手段によって前記気筒内にオゾンを導入することを特徴とする圧縮着火式エンジンの制御装置。
  4. 請求項3のいずれかに記載の圧縮着火式エンジンの制御装置において、
    前記オゾン導入手段は、前記気筒に吸入される空気中の酸素からオゾンを生成するものであることを特徴とする圧縮着火式エンジンの制御装置。
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