JP2015096452A - ガス浮遊方式による大型試料の浮遊方法及び浮遊装置 - Google Patents

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【課題】大直径のガラスの創製を可能とすべく、ガス浮遊炉において大型試料の安定した浮遊を可能とすること。【解決手段】内部に試料容器20を設けた試料作製容器30と、流量/差圧コントローラ31とを設ける。流量/差圧コントローラ31から試料容器20内にガスを流入させるガス送給管33を試料作製容器30に配管し、また、試料容器20からガスを排気するガス排出管34を試料作製容器30から流量/差圧コントローラ31に配管する。試料容器20内に球径が8〜10mmの試料1を配し、試料容器20内に流入するガスの流量と、試料容器20から排気されるガスの流量とがほぼ同じになるように流量/差圧コントローラ31にて制御する。【選択図】図3

Description

本発明は、ガス浮遊方式による大型試料の浮遊方法及び浮遊装置に関するものである。
ガス浮遊炉で、酸化物(試料)を溶融/凝固させると、試料に自由界面が形成されることから大過冷が生じ、本来結晶化する材料であっても非結晶の準安定相(ガラス)が得られる。
本発明者は、すでにBaTi酸化物系において準安定相として屈折率が2.4のダイヤモンドに匹敵するガラス材料の製造に成功している(特許文献1参照)。
このような高屈折率の材料はNTTが開発した結晶(屈折率:2.2)があるが、レンズなどの光学的応用では、結晶体をレンズに用いることは不可能である。これは、結晶面により屈折率が異なり収差をとることが不可能であるためである。なお、これまでのガス浮遊法により得られる試料は一般には直径(球径)が2mmほどであり、最大でも直径が5mm程である。
なお、参考として非特許文献1を挙げておく。
特開2006−248801号公報(特許第4789086号) M. Kaneko, J. Yu, A. Masuo, H. Inoue, M. S. V. Kumar,O. Odawara, S. Yoda, "GlassFormation in LaO3/2-TiO2 Binary System by Containerless Processing" , Journal of the American Ceramic Society, 95, 79-81 (2012).
図4は、上記特許文献1に開示されているガス浮遊装置全体の構成図を示している。図示するように、試料1の浮遊のために試料ホルダー2を使用しており、この試料ホルダー2は、浮遊用ガス供給及び試料ホルダー2の移動防止のために、固定台3に固定用ワイヤー4あるいはネジキリを試料ホルダー2に施し、固定台3に固定されている。
試料1は、試料ホルダー2に配され、試料ホルダー2の下方に設けられたノズルから上方に向けてガスを送入して試料1を浮遊させる。試料1を浮遊させるためのガス流量を制御するために、流量調整器13を備えている。
試料1の浮遊状態は、撮影装置、例えば、CCDカメラ11にて監視されている。CCDカメラ11は、モニター15に接続されており、試料1の位置を目視にて監視している。このCCDカメラ11の出力に基づいて、ガス流量を調整するように構成することもできるようになっている。
試料1の温度は、該試料1に対して指向された放射温度計12によって非接触で計測される。放射温度計12により計測された試料1の温度情報は、コンピュータ14により取得される。
試料1を加熱するためのレーザービームを発生する炭酸ガスレーザー装置5が設けられている。コンピュータ14は、炭酸ガスレーザー装置5に接続されており、そのレーザー出力を制御するようになっている。
すなわち、コンピュータ14は、放射温度計12で検出された試料1の温度データを読み込んで、所定の制御プログラムにより、試料1の加熱源としてのレーザー出力を制御し、試料1の温度を制御することができるようになっている。
炭酸ガスレーザー装置5からのレーザービームは、ビームスプリッター6により分割される。そのレーザーパワーを均等に分割し、浮遊した試料1に対して上下方向よりレーザービーム9及び10を照射して所定温度に加熱することができるようになっている。
そして、図4に示す装置では、試料1を1300℃ないし1400℃程度に加熱し、溶融させた後、自由界面に結晶核発生防止と500K/sec 〜1500K/sec 程度の速度で冷却することによって、原料を凝固させガラスを生成する。
図4に示すように、試料ホルダー2にガスを導入し、レーザービームを試料1の上下方向から照射して試料1を加熱する。試料1の温度測定は、放射温度計12より上部から行なうようになっている。試料浮遊過程においては、まず試料ホルダー2からガスを噴出させることにより試料1を浮遊させる。
試料1を浮遊させた状態でレーザービームを上方及び下方から試料1を加熱し、溶融させる。試料1の状態は、CCDカメラ11により観察されており、適宜ビデオ撮影できるようにしている。
また、モニター15により試料1の状態は、目視されており、試料1が試料ホルダー2に接触しないように適宜ガス流量を流量調整器13により調整することができるようになっている。
また、CCDカメラ11とほぼ同じレベルの異なる角度位置には、試料1の温度を測定する放射温度計12が設けられ、放射温度計12は、試料1の発光を分析し、その発光状態に基づいて温度を測定することができる。検出された温度はコンピュータ14に入力され、レーザー出力の調整を通して、試料1の温度を制御する。
試料1の溶融後、所定の冷却温度で冷却して結晶化を生じさせることなく凝固させることによって、バリウムチタン系原料のガラスを生成するようにしている。
上記特許文献1に示すように、高屈折率ガラスの創製は、BaTi酸化物系、及びLaTi酸化物系の研究を実施し、両者共に2.3以上の高屈折率を持つガラスを得ることができるのを可能としてきた。
しかしながら、これまでの従来のガス浮遊法では、試料系が通常2mm程であり、大型化を図っても最大5mmが限界であった。カメラなどの光学レンズへの応用に当たっては、最低でも直径が8mm程の高屈折率ガラスが必要である。
本発明は上述の問題点に鑑みて考案したものであって、大直径のガラスの創製を可能とすべく、ガス浮遊炉において大型試料の安定した浮遊を可能とすることを目的としたガス浮遊方式による大型試料の浮遊方法及び浮遊装置を提供するものである。
そこで、本発明の請求項1に記載のガス浮遊方式による大型試料の浮遊方法では、下部からガスが注入される注入口22と、上部から前記注入されたガスを排気する排気口21を有する試料容器20を形成し、
前記試料容器20に試料1を配し、
前記試料容器20の注入口22に注入されるガスの流量と、前記排気口21から排気されるガスの流量とを調整して試料上部に負圧状態を達成し、前記試料1の大型試料を安定浮遊させるようにしていることを特徴としている。
請求項2に記載のガス浮遊方式による大型試料の浮遊方法では、前記試料容器20の注入口22に注入されるガスの流量と、前記排気口21から排気されるガスの流量とをほぼ同じにしていることを特徴としている。
請求項3に記載のガス浮遊方式による大型試料の浮遊方法では、前記ガスは、酸素、空気、窒素、及びinert ガス(不活性ガス)のいずれかとしていることを特徴としている。
請求項4に記載のガス浮遊方式による大型試料の浮遊装置では、下部からガスが注入される注入口22と、上部から前記注入されたガスを排気する排気口21を有する試料容器20を形成し、
前記試料容器20に試料1を配し、
前記試料容器20の注入口22に注入されるガスの流量と、前記排気口21から排気されるガスの流量とを調整して試料上部に負圧状態を達成し、前記試料1を安定浮遊させる制御手段を備えていることを特徴としている。
請求項5に記載のガス浮遊方式による大型試料の浮遊装置では、前記試料容器20の注入口22に注入されるガスの流量と、前記排気口21から排気されるガスの流量とをほぼ同じにしていることを特徴としている。
請求項6に記載のガス浮遊方式による大型試料の浮遊装置では、前記ガスは、酸素、空気、窒素、及びinert ガス(不活性ガス)のいずれかとしていることを特徴としている。
本発明の請求項1に記載のガス浮遊方式による大型試料の浮遊方法によれば、試料容器20に試料1を配し、前記試料容器20の注入口22に注入されるガスの流量と、前記排気口21から排気されるガスの流量とを調整して試料上部に負圧状態にしていることで、大型の試料1を安定して浮遊させることができる。
これにより、屈折率が2.3のガラスを作製することができ、広範なレンズの使用範囲を拡大させていくことができる。
請求項2に記載のガス浮遊方式による大型試料の浮遊方法によれば、前記試料容器20の注入口22に注入されるガスの流量と、前記排気口21から排気されるガスの流量とをほぼ同じにしているので、大型の試料1を安定して浮遊させることができる。
請求項3に記載のガス浮遊方式による大型試料の浮遊方法によれば、ガスは、酸素、空気、窒素、及びinert ガス(不活性ガス)のいずれかとしているので、安価なガスにより最大10mm以上の試料を容易に浮遊させることができる。
請求項4に記載のガス浮遊方式による大型試料の浮遊装置によれば、試料容器20に試料1を配し、前記試料容器20の注入口22に注入されるガスの流量と、前記排気口21から排気されるガスの流量とを調整して試料上部に負圧状態にしていることで、大型の試料1を安定して浮遊させることができる。
これにより、屈折率が2.3のガラスを作製することができ、広範なレンズの使用範囲を拡大させていくことができる。
請求項5に記載のガス浮遊方式による大型試料の浮遊装置によれば、前記試料容器20の注入口22に注入されるガスの流量と、前記排気口21から排気されるガスの流量とをほぼ同じにしているので、大型の試料1を安定して浮遊させることができる。
請求項6に記載のガス浮遊方式による大型試料の浮遊装置によれば、ガスは、酸素、空気、窒素、及びinert ガス(不活性ガス)のいずれかとしているので、安価なガスにより最大10mm以上の試料を容易に浮遊させることができる。
従来例の問題点を示す説明図である。 本発明の実施の形態における試料ホルダー内での大型試料を浮遊させる場合の説明図である。 本発明の実施の形態における試料ホルダー内での大型試料を浮遊させる場合のブロック構成図である。 従来例のガス浮遊装置の全体の構成図である。
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して詳細に説明する。従来例の欄でも説明したように、従来のガス浮遊法では、試料1を浮遊させることができるのは、直径が2mm程度であり、大型化を図っても直径が最大5mmが限界であった。
光学レンズへの応用を図るためには、直径(球径)が最低8mmほどのガラスが必要であり、従来の方法では不可能であった。8mm以上の大型試料の浮遊を達成するために、本発明者は以下のことを発明した。
すなわち、8mm以上の大型試料の浮遊を達成するために、従来下方向からのガスにより試料を浮遊していたが大型に伴い流量を大きくする必要があり、流速が大きくなると流体不安定性が生じて安定浮遊が出来ず、試料ホルダーに接触して結晶化が生じる。このため、下方からのガス流による浮遊に加え、新たに試料作成容器上部を負圧にし、負圧を一定に保つガス流量を調整することで、大型試料の浮遊が可能となる方法・機構を考えだし、ジルコニア(4gほど)で直径10mmを用いて、浮遊の原理確認に成功したものである。これにより、カメラレンズ等への応用が可能となる。
ところで、ガス浮遊炉の機構は、試料下方からガスを吹き付け、この吹き付け力により試料を浮遊させ、また、試料ホルダー間をガスが流れる際に試料が、試料ホルダーの内壁に近づくとガス流速が低下する。このため、圧力が高くなることから安定点へと引き戻される機構を利用している。
試料下方からだけのガスによる大型/重量試料の浮遊には、高速のガス流入が必要となるが、ガス流速を増すと試料ホルダーと試料との間の流速が増し、レイノルズ不安定性が生じて安定浮遊は不可能である。
ガス浮遊炉の原理として、試料下部からのガス注入による浮遊と試料ホルダー間の流速による負圧効果があるが、そのほかにも試料上部には試料下方へ押しつける圧力が働いている。
大型・大重量試料を浮遊/溶融させるためには、この試料上部の圧力を減少させ、積極的に試料をつり上げるようにすれば良い。すなわち、試料上部に負圧を付加することで、試料をつり上げる力を新たに発生させれば良い。これが、新たなガス浮遊炉の基本概念(基本の技術思想)である。
ガス浮遊炉において直径が小さい場合のガラスを作成する基本的な方法は以下の通りである。基本的には、図4に示すような装置において、試料の下方からガスを噴射させ、直径4mm×高さ1mm程度の円筒状あるいは円柱状の原料(試料)を置き溶融させる。
この円筒状あるいは円柱状の原料の個数は、作成したいガラス材料の直径により決定する。なお、この円筒状あるいは円柱状の試料は、粉体をプレスして作製する。
この状態で、CO2 レーザーを点灯し、試料上部、及び下部から加熱を行なう。円筒状あるいは円柱状の試料は、軽重量の場合、アルミニウム製のすり鉢状の試料ホルダーの内壁面に接することなく溶融できる。
試料の溶融時に浮遊が不安定になり、時として試料が試料ホルダーの内壁面に接触することがあるが、ガス流量をうまく調節し、溶融をコントロールすることで、試料ホルダーの内壁面に接することなく、完全溶融状態が得られる。
冷却は、レーザーパワーを瞬断あるいは徐々に落とすことにより、試料ホルダーの内壁面に接することなく過冷状態が達成され、準安定相物質の製造ができる。なお、言うまでもなく、試料ホルダーの内壁面に接した試料は結晶化してしまい、準安定相試料は製造できない。
図1によりガス浮遊炉の浮遊原理を簡単に説明する。下方から空気を試料1に吹き付けることにより、試料1自体を重力と逆向きに浮遊させる力Fが働く。空気は試料1と試料ホルダー19のとの間の狭い空間を通過するため流速は早くなり、圧力P1よりも圧力P3は小さくなり、試料ホルダー19の壁面と試料1間には負力が働く。一方、試料ホルダー19の壁面部分を通過した後の空気は流速が遅くなり、圧力は高くなる。
従って、試料1を試料ホルダー19の方向へ押し付ける力が働き、P1、P2、P3の圧力は、P3<P1<P2の順となる。実際、ロートでピンポン球を浮遊させ、ロートを重力方向に向けてもピンポン球は落下しない。
このことは、圧力P3が試料1を試料ホルダー19に押さえ込み、重力に逆らっても落下しないことを意味している。
大型試料を浮遊させようとすると、ガス流量と流速を上げる必要があるが、気体の流速を上げる方法は、試料と試料ホルダーの壁面での流速が速くなり、レイノルズ不安定性のため安定浮遊のための制御が困難となる。
大型試料作製のためには、下方から試料に吹き付ける流量を増やし、レイノルズ不安定限界の流速まで上げることが必要であるが、制御にかなりの困難さを伴う。試料と試料ホルダーの壁面の流速を限界まで上げるとして、大型試料を安定浮遊させるためには、溶融試料上部の工夫が必要である。
試料1の上方の状態は、図1に示すように、よどみが生じ、また圧力も高い。この試料1の溶融部上方のよどみを無くすことで、大型試料を安定に浮遊させることができる。
そのため、図2に示すように、下部にガスを注入する注入口22と、上部にガスを排気する排気口21を有し、周囲を閉塞した試料容器20を形成する。そして、試料容器20(排気口21)からガスを積極的に排気し、溶融試料の上方のよどみを無くして、この部分の流速を上げ、溶融試料に積極的に上向きの力を付加する。
これは、浮遊容器(試料容器20)内の試料1の上方を負圧にすることで、試料1の下方への圧力を無くし、上方への力を大きくすることによって従来に無い大型試料を安定に浮遊させ、溶融・凝固する新ガス浮遊炉の基本的概念である。
なお、試料容器20の排気口21から真空ポンプの真空度を制御し、注入口22からの空気が流入量と整合することが大切である。
この方法の特徴は、従来圧力P2が圧力P4に比べて大きく溶融試料を下向きに押さえつける圧力が作用した部分を取り除くことから、大型試料(直径が8mm以上)を安定に浮遊溶融させることが狙いである。
つまり、大型試料を浮遊溶融させるために、従来のガス浮遊炉は、ガスを下方から吹き付けて試料を上方へ浮遊させていたのに対し、試料の上方からも引っ張り上げるという技術思想である。
また、試料容器20の注入口22の注入されるガスの流量と、排気口21から排気されるガスの流量は、常に釣り合っていることが必須であり、注入口22部分での圧力チョークが生じないような流量を常に保持しておくため、排気ポンプ側でも調整弁を設けることでガス流量の均衡を図るようにする。
溶融試料の不安定性の最大の要因は、試料容器20のP4部分での流速が増し、レイノルズ不安定性が生じることによるため、注入口22からの流量増加及び排気口21からの排気を調整して、試料1を高い位置に保持することで(試料1と試料ホルダー19(図1参照)の内壁面の間隔を大きくして流速を減少させる)、図2に示すP4部分での流速を抑える(レイノルズ数の増加)ようにする。
ガス浮遊炉の特徴の一つは、自由界面形成による過冷却下でガスの流れがあるためにガスによる冷却効果が相乗して、比較的容易に準安定相、あるいは、高温相が得られる点にある。
次に、本発明のガス浮遊方式による大型試料の浮遊方法及び浮遊装置について説明する。図3はガス浮遊方式による浮遊装置の概略構成図を示しており、前記試料容器20が内部に設けられている試料作製容器30と、この試料作製容器30との間でガスの吸気と排気の制御を行なう流量/差圧コントローラ31(制御手段)等で構成されている。
流量/差圧コントローラ31からはガス送給管33が試料作製容器30に配管されており、また、試料作製容器30からガス排出管34が流量/差圧コントローラ31へ配管されている。流量/差圧コントローラ31にはポンプ等が接続されている吸気系が配管され、また、流量/差圧コントローラ31からは真空ポンプ等の排気系が配管されている。
試料作製容器30の試料容器20内には、球径(直径)が8〜10mmの試料1を配し、流量/差圧コントローラ31からガス送給管33を介して試料容器20の注入口22よりガスを流入させる。
試料容器20の球径が従来の2〜5mmと比べて大きいので、流量/差圧コントローラ31をコントロールしてガスの流量を増やしていく。同時に流量/差圧コントローラ31の排気側では試料容器20の排気口21からのガスを強制的に排気していく。つまり、試料容器20の上部を負圧にする。
ここで、流量/差圧コントローラ31には、ガス送給管33のガスの流量と圧力を計測して値を表示する目盛りと、ガスの流量と圧力を調整する調整弁を操作するダイアルが設けられている。
また、流量/差圧コントローラ31には同様にガス排出管34の排気されるガスの流量と圧力を計測して値を表示する目盛りと、ガスの流量と圧力を調整する調整弁を操作するダイアルが設けられている。
流量/差圧コントローラ31側では、試料容器20へのガスの流入量と、試料容器20からのガスの排気量とがほぼ同じになるように流量/差圧コントローラ31のダイアルを手動で調整する。
本実施形態のように球径の大きな試料1では、試料容器20へのガスの流量を増やさないと試料1を浮遊させることができないので、ガスの流量を増やしてガスの流入と排気の差圧を0(ゼロ)あるいは多少の負圧状態に近づけていく。すなわち、試料容器20(図2参照)に入るガスの量を出る量をほぼ等しくすることで、試料1を定常的な浮遊状態を達成することができる。
ここで、ガスの流入側と排気側との差圧を見ているのは、注入口22側と排気口21側の圧力で両者の均衡を保つために制御をしている。注入口22側だけ流量が多いと、最後は試料容器20が高圧になり、ガスが試料容器20内に入らなくなるからである。そのため、ガスの入り口部と出口部の両者の均衡を保つことが重要で理想的には両者の差が0である。
なお、長さの異なる排気系、吸気系の場合には、ガス流入系及びガス排気系のコンダクタンスを等しくすることにより、安定浮遊制御を容易にすることができる。
なお、球径が大きい試料1を安定して浮遊させる場合、その最適条件は、ガスの流入量と排気量とが釣り合った状態であるが、実験からは多少の誤差があっても、試料1の安定浮遊を確認している。
試料容器20へのガス流量は、直径10mmの試料の場合には6〜7リットル/毎分入れている。なお、ガラスを作製する場合では、試料1の溶融に伴い試料1の重心位置がずれるので(試料1のレーザー照射面から溶融するため重心がずれる)、ガス量をコントロールしながら試料1を溶融させることになる。
試料1の溶融に伴い自由界面が形成されるが、この自由界面を利用して試料1を過冷却し、ガラスあるいはその材料が本来持っている結晶構造とは異なる結晶構造を有する準安定相が形成されることになる。
使用するガスは、酸素、空気、窒素、及びinert ガス(不活性ガス)のいずれかである。これにより、安価なガスにより最大10mm以上の試料を容易に浮遊させることができる。
このように本実施形態では、試料上部を負圧付加することから、試料1の浮遊力を大幅に増加させることが可能となる。アルミナ及びジルコニア試料を用いて、4、6、8、10mm直径の球形試料の浮遊実験を行ない、負圧を付加することにより最大直径10mmのアルミナ及びジルコニア(4gほど)の浮遊実験に成功した。
これは、従来のガス浮遊方式では不可能な大きさであり、試料上部の負圧付加新ガス方式が機能することを実証している。
カメラレンズは、1.7〜1.8程度の屈折率のガラスが用いられているが、自然光には多くの波長を含む光が存在し、屈折率は波長依存性を持つためにこの異なる波長が1点に焦点を持つように多くのレンズを組み合わせて補正している(色収差)。
高屈折率レンズを用いる利点は、標準レンズ、望遠レンズにおいて、従来の焦点距離よりも短くすることが可能となり、これらのレンズは、40%程短いものが作成可能である。
現在、市場はこれまでのデジタルカメラから一眼レフに移行しつつあるが、一眼レフカメラの超小型化/軽量化には高屈折率レンズが不可欠であり、高性能一眼レフカメラへの適応は、時代の要求であり、本発明により大型試料の浮遊が可能となり、そのため、高屈折率レンズを容易に作成することができる。
また、防犯カメラへの応用もある。焦点距離が短いことから、同じカメラの大きさなら広角の画像がとらえられる利点がある。屈折率が2.3のガラスはこれまで存在せず、この点で多様な利用が存在する。
このように、本実施形態では、試料容器20に試料1を配し、試料容器20の注入口22に注入されるガスの流量と、排気口21から排気されるガスの流量とを調整し試料上部に負圧条件(負圧状態)を付加して、大型の試料1を安定して浮遊させることができる。
また、本実施形態では、試料容器20に試料1を配し、試料容器20の注入口22に注入されるガスの流量と、排気口21から排気されるガスの流量とをほぼ同じにしていることで、大型の試料1を安定して浮遊させることができる。
これにより、屈折率が2.3のガラスを作製することができ、広範なレンズの使用範囲を拡大させていくことができる。
1 試料
20 試料容器
21 排気口
22 注入口
30 試料作製容器
31 流量/差圧コントローラ(制御手段)
33 ガス送給管
34 ガス排出管

Claims (6)

  1. 下部からガスが注入される注入口(22)と、上部から前記注入されたガスを排気する排気口(21)を有する試料容器(20)を形成し、
    前記試料容器(20)に試料(1)を配し、
    前記試料容器(20)の注入口(22)に注入されるガスの流量と、前記排気口(21)から排気されるガスの流量とを調整して試料上部に負圧状態を達成し、前記試料(1)を安定浮遊させるようにしていることを特徴とするガス浮遊方式による大型試料の浮遊方法。
  2. 前記試料容器(20)の注入口(22)に注入されるガスの流量と、前記排気口(21)から排気されるガスの流量とをほぼ同じにしていることを特徴とする請求項1に記載のガス浮遊方式による大型試料の浮遊方法。
  3. 前記ガスは、酸素、空気、窒素、及びinert ガス(不活性ガス)のいずれかとしていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のガス浮遊方式による大型試料の浮遊方法。
  4. 下部からガスが注入される注入口(22)と、上部から前記注入されたガスを排気する排気口(21)を有する試料容器(20)を形成し、
    前記試料容器(20)に試料(1)を配し、
    前記試料容器(20)の注入口(22)に注入されるガスの流量と、前記排気口(21)から排気されるガスの流量とを調整して試料上部に負圧状態を達成し、前記試料(1)を安定浮遊させる制御手段を備えていることを特徴とするガス浮遊方式による大型試料の浮遊装置。
  5. 前記試料容器(20)の注入口(22)に注入されるガスの流量と、前記排気口(21)から排気されるガスの流量とをほぼ同じにしていることを特徴とする請求項4に記載のガス浮遊方式による大型試料の浮遊装置。
  6. 前記ガスは、酸素、空気、窒素、及びinert ガス(不活性ガス)のいずれかとしていることを特徴とする請求項4または請求項5に記載のガス浮遊方式による大型試料の浮遊装置。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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JP2016222509A (ja) * 2015-06-02 2016-12-28 日本電気硝子株式会社 ガラス材の製造方法及びガラス材の製造装置

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JP2016222509A (ja) * 2015-06-02 2016-12-28 日本電気硝子株式会社 ガラス材の製造方法及びガラス材の製造装置

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