以下、本発明の吸収性物品を、その好ましい一実施形態である生理用ナプキン(以下、ナプキンという)に基づき図面を参照して説明する。本実施形態のナプキン1は、図1及び図2に示すように、液保持性の吸収体4並びに該吸収体4の肌対向面側に配置された表面シート2及び該吸収体4の非肌対向面側に配置された裏面シート3を具備する吸収性本体5を備え、着用者の前後方向に相当する縦方向Xとこれに直交する横方向Yとを有する。
尚、本明細書において、肌対向面は、吸収性物品又はその構成部材(例えば吸収性本体5)における、吸収性物品の着用時に着用者の肌側に向けられる面であり、非肌対向面は、吸収性物品又はその構成部材における、吸収性物品の着用時に肌側とは反対側(着衣側)に向けられる面である。また、縦方向Xは、吸収性物品(吸収性本体)の長辺に沿う方向(長手方向)に一致し、横方向Yは、吸収性物品(吸収性本体)の幅方向(長手方向に直交する方向)に一致する。
吸収性本体5は、着用時に着用者の排泄部に対向配置される排泄部対向部Mと、着用時に排泄部対向部Mよりも着用者の腹側(前側)に配される前方部Fと、着用時に排泄部対向部Mよりも着用者の背側(後側)に配される後方部Rとを縦方向Xに有している。ここでいう「着用時」は、通常の適正な着用位置(当該吸収性物品の正しい着用位置)が維持された状態を意味し、吸収性物品が該着用位置からずれた状態にある場合は含まない。
尚、本発明の吸収性物品において、排泄部対向部は、本実施形態のナプキン1のようにウイング部を有する場合には、吸収性物品の縦方向(吸収性物品の長手方向、図中のX方向)においてウイング部を有する領域(ウイング部の縦方向一方側の付け根と他方側の付け根とに挟まれた領域)である。ウイング部を有しない吸収性物品における排泄部対向部は、吸収性物品が3つ折りの個装形態に折り畳まれた際に生じる、該吸収性物品を横方向(吸収性物品の幅方向、図中のY方向)に横断する2本の折曲線(図示せず)について、該吸収性物品の縦方向の前端から数えて第1折曲線と第2折曲線とに囲まれた領域と同じか又は該領域よりも狭い領域である。
表面シート2及び裏面シート3は、それぞれ、吸収体4よりも大きな寸法を有し、吸収体4の周縁から外方に延出している。即ち、表面シート2及び裏面シート3は、図1に示すように、吸収体4の縦方向Xの前端及び後端それぞれから縦方向Xの外方に延出し、それらの延出部において、接着剤、ヒートシール、超音波シール等の公知の接合手段によって、互いに接合されてエンドシール部8を形成している。また、表面シート2及び裏面シート3は、吸収体4の縦方向Xに沿う両側縁それぞれから横方向Yの外方に延出し、後述するサイドシート10と共にサイドフラップ部6を形成している。表面シート2と裏面シート3とサイドシート10とは、吸収体4の縦方向Xに沿う両側縁からの延出部において、公知の接合手段によって互いに接合されている。表面シート2及び裏面シート3それぞれと吸収体4との間は接着剤によって接合されていても良い。
サイドフラップ部6は、図1に示すように、排泄部対向部Mにおいて横方向Yの外方に向かって大きく張り出しており、これにより吸収性本体5の縦方向Xに沿う左右両側に、一対のウイング部7,7が延設されている。即ち、ナプキン1は、吸収性本体5に加えて更に、吸収性本体5における排泄部対向部Mの縦方向Xに沿う両側部それぞれから横方向Yの外方に延出する一対のウイング部7,7を有している。
ウイング部7は、ショーツ等の着衣のクロッチ部(股間部)の非肌対向面(外面)側に折り返されて用いられるものである。ウイング部7は、図1に示すように、平面視において、下底(上底よりも長い辺)が吸収性本体5の側部側に位置する略台形形状を有している。尚、ナプキン1においては、吸収性本体5とウイング部7との境界線は、ウイング部7の縦方向Xの両付け根を結ぶ直線(図示せず)である。ウイング部7の非肌対向面には、該ウイング部7(ナプキン1)をショーツ等の着衣(図示せず)に固定するウイング部ズレ止め部70が形成されており、このウイング部ズレ止め部70によって、使用時に、着衣のクロッチ部の非肌対向面(外面)側に折り返されたウイング部7を、該クロッチ部に固定できるようになされている。ウイング部ズレ止め部70は、後述する吸収性本体5のズレ止め部(フック材35)と同様に構成されている。
吸収性本体5の肌対向面(表面シート2の肌対向面)には、表面シート2及び吸収体4が裏面シート3側に向かって一体的に凹陥してなる溝9が形成されている。溝9は、図1に示す如き平面視において、縦方向Xに長い閉じた環状をなしている。溝9は、熱を伴うか又は伴わない圧搾加工、あるいは超音波エンボス等のエンボス加工により常法に従って形成することができる。溝9においては、表面シート2及び吸収体4が熱融着等により一体化している。また、吸収性本体5の肌対向面における縦方向Xに沿う両側部には、図1に示す如き平面視において吸収体4の縦方向Xに沿う左右両側部に重なるように、一対のサイドシート10,10が吸収性本体5の縦方向Xの略全長に亘って配されている。サイドシート10は、撥水性の不織布からなる。
ナプキン1における各部の形成材料について説明すると、表面シート2及び裏面シート3としては、当該技術分野において従来用いられている各種のものを特に制限なく用いることができる。表面シート2としては、例えば、親水化処理が施された各種不織布や開孔フィルム等の液透過性のシートを用いることができる。吸収体4としては、当該技術分野において従来用いられている各種のものを特に制限なく用いることができ、例えば、木材パルプ、親水化処理された合繊繊維等の繊維集合体、又は該繊維集合体に粒子状の吸水性樹脂を保持させたもの等を用いることができる。吸収体4は、前記繊維集合体等からなる液保持性の吸収性コアと、該吸収性コアを被覆する液透過性のコアラップシートとを含んで構成されていても良く、このコアラップシートとしては、例えば、ティッシュペーパー等の紙や各種不織布、開孔フィルム等を用いることができる。サイドシート10としては、当該技術分野において従来用いられている各種のものを特に制限なく用いることができ、例えば、液不透過性又は撥水性の樹脂フィルム、樹脂フィルムと不織布との積層体等を用いることができる。
サイドシート10は、液体難透過性のシート材料によって構成されていることが好ましい。具体的には、撥水性のエアスルー不織布単独のシート材、またはこれと他の材料との複合体であることが、柔らかさ、表面のタッチ感の両面から好ましい。特に、前記撥水性のエアスルー不織布と、弾性部材(例えば複数の長手方向に連続する弾性ストランド、又はウレタンなどのエラストマースパンボンド)とを複合化した部材を、刃溝加工などの部分延伸処理で活性化した伸縮不織布複合体は、柔軟性・タッチ感・ウイング部7の下着への巻き込み易さ、吸収性物品のヨレ防止性等の効果をより一層確実に奏させるようにする観点から、サイドシート10として最も好ましい。
裏面シート3としては液難透過性の透湿性シートが用いられる。透湿性シートの具体例として、シートを厚み方向に貫通する微細な貫通孔を多数有する、多孔性の樹脂フィルムが挙げられる。一般に、透湿性の裏面シートは、非透湿性の裏面シートに比して強度に乏しく、特に靱性と引き裂き強度に乏しく、吸収性物品における透湿性の裏面シートがズレ止め部を介してショーツ等の着衣に強固に接着している場合に、該吸収性物品を該ショーツから引き剥がすと、該裏面シートが破れる可能性が比較的高い。しかしながら、本実施形態のナプキン1においては、後述する面強度強化要素30の採用により、斯かる不都合の発生が効果的に防止されている。
本実施形態のナプキン1の主たる特徴の1つとして、図2及び図3に示すように、裏面シート3の非肌対向面に、不織布31と該不織布31を裏面シート3に固定する接着剤32とを含んで構成される、面強度強化要素30が配されており、該面強度強化要素30をなす不織布31の非肌対向面(外面)に、吸収性本体5を着衣に固定するズレ止め部として、図4に示すように、ベースシート36の表面(非肌対向面)に多数の係合突起37が設けられてなるフック材35が設けられている点が挙げられる。尚、図2では、説明容易の観点から、接着剤32の図示を省略している。また同様の観点から、図3では接着剤32を図示しているが、実際には、接着剤32は不織布31で被覆されているため、通常、ナプキン1の非肌対向面側からは視認できない。
面強度強化要素30は、図3に示す如き平面視において、縦方向Xの前側に向けて凸のU字状部分を有し、そのU字状部分は、吸収性本体5の前方部F側の縦方向Xの端部(前端部)をU字の底部30Aとし、且つ該前端部から吸収性本体5の横方向両側部5S,5Sを縦方向Xに延びる一対の直線状部30B,30Bを有している。面強度強化要素30の一対の直線状部30B,30Bは、それぞれ、前方部Fから排泄部対向部Mを通って後方部R側のエンドシール部8の近傍に亘っている。そして、この面強度強化要素30の各直線状部30B(直線状部30Bを形成する不織布31)に、ズレ止め部としてのフック材35が縦方向Xに所定間隔を置いて複数(4個)設けられており、横方向両側部5S,5Sには、それぞれ、複数のフック材35からなる縦方向列が1列形成されている。その複数のフック材35からなる縦方向列は、排泄部対向部Mの縦方向Xの全長に亘り、更に排泄部対向部Mの前後に位置する前方部F及び後方部Rにも延びている。複数のフック材35は、それぞれ、平面視において矩形形状をなし、その長手方向が縦方向Xに一致している。
尚、吸収性本体5の横方向両側部5S,5Sは、図3に示すように、吸収性本体5を横方向Yに3分割した場合に、その3分割のうちの中央に位置する横方向中央部5Mに対し、横方向Yの左右両外方に位置する部分である。
フック材35(ズレ止め部)の縦方向Xに沿った長さ(長手方向長さ)L1(図3参照)は、好ましくは10mm以上、更に好ましくは15mm以上、そして、好ましくは30mm以下、更に好ましくは25mm以下、より具体的には、好ましくは10mm以上30mm以下、更に好ましくは15mm以上25mm以下である。
また、フック材35の横方向Yに沿った長さ(幅方向長さ)W1(図3参照)は、好ましくは5mm以上、更に好ましくは7mm以上、そして、好ましくは15mm以下、更に好ましくは12mm以下、より具体的には、好ましくは5mm以上15mm以下、更に好ましくは7mm以上12mm以下である。
面強度強化要素30は、強力な接着力(垂直接着力)を有するフック材35を介してショーツ等の着衣に強固に固定されているナプキン1を該ショーツから引き剥がす際の、裏面シート3の破損防止に有効である。また、吸収性本体5の縦方向Xの前端部は、ナプキン1の使用後にこれをショーツ等の着衣から引き剥がす際に持ち手となる部位であり、指で摘まんで引っ張っても破れない程度の強度が要求される部位であるから、ここに面強度強化要素30(底部30A)が配されていることは、裏面シート3の破損防止に有効である。
図3に示すように、排泄部対向部M及び後方部Rそれぞれの横方向Yの中央部には、透湿性及び柔軟性の確保の観点から、面強度強化要素30又はこれを構成する不織布31は一切配されておらず、裏面シート3が露出している。この裏面シート露出領域は、吸収性本体5の横方向中央部5Mよりも横方向Yの長さ(幅)が長く幅広であり、また、図3に示す如き平面視において、該裏面シート露出領域の縦方向Xの前端部及び後端部の幅は、それぞれ、縦方向Xの内方から外方に向かうに従って漸次減少している。
面強度強化要素30による作用効果(裏面シート3の破損防止)と透湿性及び柔軟性とのバランスの観点から、前記裏面シート露出領域の縦方向Xの長さL2(図3参照)は、吸収性本体5の縦方向Xの全長に対して、好ましくは30%以上、更に好ましくは50%以上、特に好ましくは60%以上、そして、好ましくは95%以下、更に好ましくは85%以下、特に好ましくは80%以下であり、より具体的には、好ましくは30%以上95%以下、更に好ましくは50%以上85%以下、特に好ましくは60%以上80%以下である。前記裏面シート露出領域の縦方向長さL2の、吸収性本体5の縦方向全長に対する割合が当該範囲であると、引き剥がし操作の初期に均一に力がナプキンに加わり易く、両側部のフック材35を引き剥がす操作がスムーズにできる。また、十分に高い通気性を確保し易くなる。
また、前記裏面シート露出領域の横方向Yの長さ(幅)W2(図3参照)は、吸収性本体5の横方向Yの全長(幅)に対して、好ましくは25%以上、更に好ましくは35%以上、そして、好ましくは90%以下、更に好ましくは80%以下、より具体的には、好ましくは25%以上90%以下、更に好ましくは35%以上80%以下である。前記裏面シート露出領域の横方向長さW2の、吸収性本体5の全幅に対する割合が当該範囲であると、フック材35による固定力を十分に確保するとともに、十分に高い通気性を確保することが容易となる。
このように、ナプキン1の非肌対向面に裏面シート露出領域が存している場合、裏面シート3における該裏面シート露出領域に位置する部分は、フック材35(ズレ止め部)を介してナプキン1をショーツ等の着衣に固定して使用した場合に、該着衣と接触する。従って、裏面シート3の非肌対向面のすべり摩擦力等の面特性は、ナプキン1の着用中のズレに少なからず影響する。
本発明者らの知見によれば、ナプキン1の非肌対向面に裏面シート露出領域が存している場合において、裏面シート3がエラストマー素材から形成されていると、ショーツ等の着衣の股間部にナプキン1を固定した装着システムにおいて、下着の足繰りに両足を通した状態でこれを引っ張り上げるときに、ナプキン1(吸収性本体5)は、エラストマー素材から形成された裏面シート3の作用により、該ナプキン1を横方向Yに二分する中心線(図示せず)に沿って縦方向Xに滑るため、該下着の伸長を妨げず、また、下着が着用者の身体に沿ってフィットし、ナプキン1に一定の装着圧がかかったときには、ナプキン1の特に後方部Rを左右に振るようなズレカが加わっても、裏面シート3がこのズレ力に抗して滑り止め効果を発揮し、着用者の身体の動きによってナプキン1の着用位置がずれる、等の不都合が効果的に防止される。従って、裏面シート3としては、エラストマー素材から形成されたものが好ましい。
裏面シート3を形成するエラストマー素材としては、例えば、ウレタン系エラストマー、メタロセン触媒によるオレフィン系エラストマー、ゴム薄膜等を用いることができる。当該ズレ防止特性と前記透湿性とを両立し得る裏面シート3の一例として、エラストマー素材に非相溶性の無機フィラーを適当量内添した上で延伸した、微細多孔フィルムが挙げられる。また、裏面シート3を形成するエラストマー素材の一例として、極性基を多く含み、且つ熱可塑性を有し、分子間隙が広く結晶性が低くなるような樹脂、例えば日本合成樹脂(株)製ペレット「フレックマー」のようなウレタン系樹脂、及びポリエステル系樹脂が挙げられる。斯かるウレタン系樹脂(エラストマー素材)を溶融押し出ししてフィルム化したエラストマーフィルムを裏面シートとして用いると、所定のすべり摩擦力実現に寄与する他、裏面シートが伸縮性となり、且つ透湿性も有するため好ましい。
面強度強化要素30及びフック材35が吸収性本体5の外周縁部に配され、且つ排泄部対向部Mを含む吸収性本体5の中央の透湿性裏面シート3が露出していること(前記裏面シート露出領域が吸収性本体5の縦方向中央部且つ横方向中央部に存していること)が、ナプキン1の透湿性・柔軟性確保の両面から重要である。この観点で更に好ましい実施形態としては、吸収性本体5における面強度強化要素30が配されていない領域(前記裏面シート露出領域)に、透湿性裏面シート3と吸収体4とを固定する固定接着剤(図示せず)が塗布されない実施形態が挙げられる。
面強度強化要素30を構成する不織布31としては、薄さ、柔らかさと長手方向の引っ張り強度を全て満足する観点から、スパンボンドを少なくとも含む不織布、例えばスパンボンド不織布、スパンボンド-メルトブローン複合不織布(SM)、スパンボンド-メルトブローン-スパンボンド複合不織布(SMS)、スパンボンド-メルトブローン-メルトブローン-スパンボンド複合不織布(SMMS)等を用いることができる。面強度強化要素30を構成する不織布の構成繊維の繊維太さの平均は、該構成繊維のちぎれ等の不都合を防止する観点から、好ましくは11μm以上、更に好ましくは13μm以上20μm以下である。
面強度強化要素30を構成する接着剤32としては、ホットメルト接着剤を用いることができ、また、接着剤の塗布パターンは、接着剤塗布予定部分(裏面シート3におけるシート状部材と重なる部分)の全域に塗布するいわゆるベタ塗りでもよく、該接着剤塗布予定部分に部分的に塗布するパターンでもよい。後者の部分的な塗布パターンとしては、スパイラル状、ドット状、ストライプ状(スロットスプレーによる)飛散パターン等が挙げられる。本実施形態においては、図3に示すように、接着剤32は裏面シート3の非肌対向面にスパイラル状に塗布されている。
不織布31の坪量は、好ましくは10g/m2以上、更に好ましくは13g/m2以上、そして、好ましくは30g/m2以下、更に好ましくは20g/m2以下、より具体的には、好ましくは10g/m2以上30g/m2以下、更に好ましくは13g/m2以上20g/m2以下である。
面強度強化要素30を構成する接着剤32の塗布量は、好ましくは3g/m2以上、更に好ましくは6g/m2以上、そして、好ましくは25g/m2以下、更に好ましくは 20g/m2以下、より具体的には、好ましくは3g/m2以上25g/m2以下、更に好ましくは6g/m2以上20g/m2以下である。
不織布31がスパンボンド不織布を含む場合の繊維配向は、縦方向Xと一致又は近似していることが好ましく、特に縦方向Xと一致していることが好ましい。ここで、「不織布31の繊維配向が縦方向Xと一致している」とは、不織布31の構成繊維の繊維配向方向が、吸収性本体5(ナプキン1)の縦方向Xと平行であることを意味し、「不織布31の繊維配向が縦方向Xと近似している」とは、不織布31の構成繊維の繊維配向方向と縦方向Xとのなす角度が、45°よりも小さいことを意味する。言い換えれば、不織布31の繊維配向が横方向Yよりも縦方向Xに優位に配向している状態である。このように、面強度強化要素30を構成する不織布31の構成繊維の繊維配向が吸収性本体5(ナプキン1)の縦方向Xと一致又は近似していると、ウイング部7,7を下着等の着衣に沿って折り下げる時の、ウイング部7の付け根の製品長手方向の可撓性が高く折り曲げやすい一方、ウイング部7の長手方向への折り曲げ強度が高いために、ナプキン1を下着から引き剥がしたときに、ウイング部7の千切れ、及びウイング部7の千切れを起点とするナプキン1の側部破壊(液漏れ)といった問題が生じないという効果が奏される。
不織布31の繊維配向の判定は、不織布31を構成するスパンボンド不織布層を取り出して拡大観察することでなされる。例えば、不織布31がSMS等の複合シートである場合、S層を全て(方向性が判るように)取り出し、キーエンス製マイクロスコープ「VHX-1000」等の簡易拡大観察手段を用いて、30倍程度の拡大観察を行う。サンプリングは20mm角程度の大きさがあれば十分であり、製品サイズに応じて適宜変更可能である。スパンボンド不織布は、概ね繊維配向方向の揃った連続繊維と見做されるため、このような簡易拡大観察手段による観察により、繊維の配向方向(流れ方向)を容易に検出可能である。同様の観察を、不織布31における部位の異なる複数個所について行って、繊維の配向性を広い範囲で判定することも好ましい。また、前記の如く、SMS等、不織布31を構成するスパンボンド不織布が複数層からなる場合、全てのスパンボンド層について同様の判定を行う。好ましくは全スパンボンド層の繊維配向が概ね一致している、更に好ましくは全スパンボンド層の繊維配向が揃っていることが、面強度を強化する観点から好ましい。
本実施形態においては、図3に示すように、吸収性本体5の後方部R側の縦方向Xの端部(後端部)には、面強度強化要素30は配されていない。即ち、吸収性本体5の後端部には、面強度強化要素30を構成する不織布31のみが配されており、該不織布31を裏面シート3に固定する接着剤32は配されていない。従って、該後端部には面強度強化要素30は配されていない。面強度強化要素30の構成部材のうち、透湿性及び柔軟性の低下に特に関係のある要素は、不織布31ではなく、接着剤32であるから、ある程度以上の透湿性及び柔軟性を確保したい部位には、不織布31は配しても、接着剤32は配さないことが好ましい。
本実施形態においては、不織布31は、裏面シート3の非肌対向面の周縁部の全域に亘って配されており、平面視において、U字状の面強度強化要素30を含む、環状をなしている。また本実施形態においては、吸収性本体5のみならず、ウイング部7にも不織布31が配されており、ウイング部7における裏面シート3の非肌対向面の全域が不織布31で被覆されている。尚、ウイング部7に面強度強化要素30を配してもよい。
フック材35(ズレ止め部)を構成する多数の係合突起37は、それぞれ図4に示すように、ベースシート36から起立する基端部37aと、該基端部37aの先端から所定方向に向かって張り出した張り出し部37bとを有している。張り出し部37bは、ショーツ等の着衣に直接係合する部位であり、張り出し部37bの張り出し方向が、係合突起37の張り出し方向を決定する。係合突起37(張り出し部37b)の張り出し方向は、フック材35を介してショーツ等の着衣に強固に固定されているナプキン1を該着衣から引き剥がす際の引き剥がしやすさに影響を及ぼし、該張り出し方向如何によっては、着衣からフック材35が抜け難く、ナプキン1を着衣から引き剥がすことが困難になってしまう。フック材35を介して着衣に固定されたナプキン1を該着衣から引き剥がすには、通常、吸収性本体5の縦方向Xの前端部を把持して前側に引っ張るところ、この引っ張り操作によりナプキン1(吸収性本体5)は横方向Yの内方に歪む(収縮する)。従って、係合突起37の張り出し方向が、このナプキン1の歪み方向と逆方向又は該逆方向に近似した方向であると、使用後のナプキン1を着衣から引き剥がすことが容易になる。
図5には、係合突起37(張り出し部37b)の張り出し方向が矢印で示されている。図5(a)に示す実施形態においては、係合突起37は、吸収性本体5の内方から外方に向かう方向で且つ斜め後ろ方向(縦方向X及び横方向Yの両方向に交差する方向で且つ前方部F側から後方部R側に向かう方向)に張り出している。また、図5(b)に示す実施形態においては、係合突起37は、吸収性本体5の内方から外方に向かう方向で且つ横方向Yと平行な方向に張り出している。図5(a)及び図5(b)の何れの実施形態も、フック材35を介して着衣に固定されているナプキン1を該着衣から引き剥がす操作を容易ならしめるものであるが、特に図5(a)に示す実施形態のように、係合突起37は斜め後ろ方向の外方に向かって張り出していることが好ましい。
尚、本発明に係るフック材は、図4に示す如き形状のフック材35に制限されず、要は、ベースシートの表面に多数の係合突起が設けられてなる構成であればよく、例えば、図6に示す如きフック材35Aでもよい。フック材35Aにおいては、係合突起37の張り出し部37bは、図6(b)に示すように、上面視(平面視)において半円形状をなし、その半円形状の円弧部分が、該張り出し部37bが連接されている基端部37aの先端よりも横方向Yの外方に延出して、該張り出し部37bの張り出し方向の先端部を形成している。つまり、フック材35Aの係合突起37(張り出し部37b)は、図5(b)に示す実施形態と同様に、吸収性本体5の内方から外方に向かう方向で且つ横方向Yと平行な方向に張り出している。
本発明に係るフック材としては、例えば、面ファスナーのフックテープを幅広く用いることが可能であり、マジックテープ(登録商標)のオス部材、ベルクロ(登録商標)のフック材、スコッチメイト(登録商標)ファスナーのフック材等を用いることができる。本発明に係るフック材としては、例えば、特表平2−537871号公報、特表平4−522538号公報、特表平7−511836号公報に記載のフック材を用いることもできる。前述したように、フック材35(ズレ止め部)の係合効果に方向性を付与する手法としては、予め係合に方向性を有する鉤状フック材を用いる方法の他、方向性のないフックテープを100〜120℃で加熱軟化した後、直ちに一方向に剪断変形させ、該フック材の突起を一方向に傾けた形状に成形する方法を採用してもよい。
本実施形態のナプキン1は、通常、個装シートと共に折り畳まれて個別包装体とされて市場に流通される。図7には、ナプキン1を折り畳んで個別包装体18を作製する手順が示されている。
先ず、図7(a)に示す如き展開状態のナプキン1において、その一対のウイング部7,7をそれぞれナプキン1の肌対向面側(表面シート2側)に折り曲げ、その折り曲げられた一対のウイング部7,7の非肌対向面(裏面シート3の非肌対向面)に個装シート15を重ね合わせて、図7(b)及び図7(b’)に示すように、ナプキン1の肌対向面の全域が個装シート15で被覆されてなる、ナプキン1と個装シート15との積層体16を得る。個装シート15は平面視矩形形状をなし、個装シート15の長手方向はナプキン1の縦方向Xと同じかそれよりも長く、個装シート15の幅方向はナプキン1の横方向Yよりも長い。個装シート15は、その長手方向をナプキン1の縦方向Xに一致させてナプキン1に重ね合わされ、ウイング部ズレ止め部70を介してナプキン1に固定される。前述したように、ウイング部ズレ止め部70はフック材35と同様に構成されており、積層体16においては、ウイング部ズレ止め部70の係合突起の張り出し部(図示せず)が個装シート15に係合している。個装シート15の長手方向の一端(ナプキン1の縦方向Xの前端に近い方の長手方向一端)には、封止テープ17が取り付けられている。
次に、図7(b)及び図7(b’)に示す状態から、図7(c)及び図7(c’)に示すように、ナプキン1の後方部Rを通って積層体16を幅方向(横方向Y)に横断する折曲線f1にて、該積層体16をナプキン1の非肌対向面側(裏面シート3側)に折り曲げ、折曲線f1よりも縦方向Xの後側に位置する積層体16の後方部をナプキン1の排泄部対向部M上に重ねる。この折曲線f1での積層体16の1回目の折り曲げにより、図7(c’)に示すように、ナプキン1の非肌対向面どうしが直接接触する。
次に、図7(c)及び図7(c’)に示す状態から、図7(d)及び図7(d’)に示すように、ナプキン1の前方部Fを通って積層体16を幅方向(横方向Y)に横断する折曲線f2にて、該積層体16をナプキン1の非肌対向面側(裏面シート3側)に折り曲げ、折曲線f2よりも縦方向Xの前側に位置する積層体16の前方部を、排泄部対向部M上に重ねられている積層体16の後方部上に重ねる。こうして2回の折り曲げにより3つ折りされた積層体16において、ナプキン1の縦方向Xに沿う両側縁から横方向Yの外方に延出する個装シート15の延出部をヒートエンボス加工等の公知の接合方法により接合して側方封止部を形成すると共に、一端が個装シート15の長手方向一端に取り付けられている封止テープ17の他端を、該個装シート15に止着することにより、ナプキン1の個別包装体18が得られる。
前述した個別包装体20の作製方法(ナプキン1の折り畳み方法)は、吸収性本体5のズレ止め部がフック材35であるナプキン1に固有の方法であり、特に、積層体16をナプキン1の非肌対向面側(裏面シート3側)に折り曲げることは、ズレ止め部がズレ止め粘着剤である従来の生理用ナプキンでは通常実施しないことである。このような特殊な折り曲げ方法を採用する理由は、強力な接着力(垂直接着力)を有するフック材35が接触することによるナプキン1の各部(裏面シート3等)の破損を防止するためである。即ち、積層体16の折り曲げで利用した2本の折曲線f1,f2は、これら2本の折曲線f1,f2間に、吸収性本体5の非肌対向面に設けられている全てのフック材35(ズレ止め部)が位置するように設定されており、積層体16を折曲線f1,f2にてナプキン1の非肌対向面側に折り曲げたときに、これらのフック材35が、面強度強化要素30を構成する不織布31と接触するようになされている。そのため、フック材35による裏面シート3等の破損が効果的に防止される。このような、個別包装体20における不織布31によるフック材35の保護効果をより一層確実に奏させるようにする観点から、ナプキン1の後方部Rを通る折曲線f1よりも縦方向Xの後側で且つ面強度強化要素30の縦方向Xに延びる一対の直線状部30B,30B(図3参照)それぞれの延長線上に、面強度強化要素30を構成する不織布31が配されていることが好ましい。また、個装シート15としては、不織布31と同様のもの(スパンボンド不織布等)を用いることが好ましい。
個別包装体18の構成要素として、前述の個装シート15及び個装形態を選択する好ましいその他の理由は、個装シート15として通気性で安価なスパンボンド不織布を選択可能である他、(タック性のウイング固定材(粘着剤)がある構成とは異なり、剥離紙でウイングを固定して抑えることができない構造のため)製造工程でウイングがひらひらと不安定に動くことを真っ先に止められること、実際にナプキンを使用する場面で、最後までナプキン1の肌当接面が個装シート15(スパンボンド不織布)で覆われているため直接表面に手が触れず衛生的であること、しかも該個装シート15がシンプルな(半透明の)スパンボンド不織布からなることによって、個装シート15がナプキン1のショーツ貼付時の位置決めを邪魔することがない。
個装シート15としてのスパンボンド不織布は、コスト、柔軟性、強度(個装開封時、及びウイング部7/個装シート15引き剥がし時)の観点から、面強度強化要素30を構成する不織布31と同様なものが好ましいが、更にナプキン1のショーツ貼付時の位置決めのしやすさ(=透明性)とコストの観点から、スパンボンド不織布単層であることが更に好ましく、該スパンボンド不織布が酸化チタン等の着色剤を含まないことが最も好ましい。また、同様の観点から、個装シート15としてのスパンボンド不織布の好ましい繊維径は、好ましくは11μm以上、更に好ましくは13μm以上20μm以下である。更に、同様の観点から、個装シート15としてのスパンボンド不織布スパンボンドの好ましい坪量は、好ましくは8g/m2以上、更に好ましくは10g/m2以上、そして、好ましくは30g/m2以下、更に好ましくは20g/m2以下、より具体的には、好ましくは8g/m2以上30g/m2以下、更に好ましくは10g/m2以上20g/m2以下である。
また、個装シート15としてのスパンボンド不織布は、薄さ/コストと個装開封時、及びウイング部7/個装シート15引き剥がし時の強度両立の観点から、その繊維配向が概ね吸収性物品(ナプキン)の縦方向(長手方向)と一致することが好ましい。
更に、このような繊維配向で確実にウイング部7,7のフック材35と係合する観点、及び個装シート15の柔軟性向上/更には個別包装体18の開封からナプキン1の展開時に生じる異音(いわゆる「シャリ音」)を効果的に低減する観点も考慮すると、個装シート15には予めいわゆるカレンダー加工(揉み込み加工)が施されていることが好ましい。このカレンダー加工としては、繊維配向を歪ませる目的で用いられる、当業者公知の機械加工を各種選択可能であり、中でもネガ・ポジ関係の一対の凹凸ロール、刃溝ロールの間を通す方法、周速差があり/且つ摩擦係数の大きな金属ロールと受けロールの間を通す方法、とげ状突起を有するシリンダーロール(受けロールはなしで可)で引っ掻く方法、等が特に好適に用いることができる。
図8及び図9には、本発明の吸収性物品の他の実施形態が示されている。後述する他の実施形態については、前述した実施形態(生理用ナプキン1)と異なる構成部分を主として説明し、同様の構成部分は同一の符号を付して説明を省略する。特に説明しない構成部分は、前述したナプキン1についての説明が適宜適用される。
図8に示すナプキン1Aにおいては、裏面シート3(図8では図示せず)の非肌対向面の全域に、面強度強化要素30を構成する不織布31が配されており、そのため、ナプキン1Aの非肌対向面には前記裏面シート露出領域が存していない。但し、ナプキン1Aの非肌対向面における、排泄部対向部M及び後方部Rそれぞれの横方向Yの中央部(面強度強化要素30のU字状部分に包囲された領域)には、不織布31のみが配されており、該不織布31を裏面シート3に固定する接着剤32は配されておらず、従って、面強度強化要素30は配されていない。そのため、ナプキン1Aにおいては、面強度強化要素30のU字状部分に包囲された領域の透湿性及び柔軟性が実用上十分なレベルで確保されている。ナプキン1Aによってもナプキン1と同様の効果が奏される。
尚、ナプキン1Aと同様の趣旨で、面強度強化要素30を構成する不織布31が裏面シート3全体を覆うのではなく、フック材35の縦方向Xの後端近傍で横方向Y(幅方向)に切断された形態であってもよい。斯かる形態においては、複数のフック材35それぞれの縦方向Xの後端近傍に、不織布31が配されていない部分が存し、該部分以外は、不織布31が配されている。典型的には、最も物品後端に位置する左右のフック材35の後端を横方向Yに沿って結ぶ仮想線が、不織布31の後端縁と重なっており、これより後方では裏面シート3が露出している形態である。この場合においても、全てのフック材35は、面強度強化要素30を構成する不織布31、及び接着剤32の上に配されている。
図9に示すナプキン1Bにおいては、フック材35B(ズレ止め部)は、平面視において、縦方向Xの前端部が縦方向Xの中央部に比して横方向長さが短くなっている。より具体的には、フック材35Bは、平面視において直角三角形形状をなし、その直角を形成する二辺が縦方向X及び横方向Yに一致し、且つ残りの一辺(斜辺)が、吸収性本体5の外方から内方に向かう方向で且つ斜め前方向(縦方向X及び横方向Yの両方向に交差する方向で且つ後方部R側から前方部F側に向かう方向)に延びている。つまり、フック材35Bは、図9に示す如き平面視において、縦方向Xの後方から前方に向かうに従って横方向Yの長さ(幅)が漸次減少している。尚、図9では面強度強化要素30を構成する接着剤32の図示を省略しているが、図9に示すナプキン1Bは、前述した点(フック材の平面視形状)以外はナプキン1と同じに構成されている。
このように、フック材35Bの縦方向Xの前端部が、縦方向Xの中央部に比して横方向長さが短く幅狭になっていると、フック材35Bの横方向長さ(幅)がその縦方向の全長に亘って一定である場合に比して、フック材35Bを介してショーツ等の着衣に固定されているナプキン1Bを該着衣から引き剥がしやすくなる。即ち、フック材35Bを介して着衣に固定されているナプキン1Bを該着衣から引き剥がす際には、通常、吸収性本体5の縦方向Xの前端部を持ち手として縦方向Xの後方側に引き剥がすので、フック材35Bの縦方向Xの前端部はナプキン1Bの引き剥がしのきっかけとなる部位であるところ、このフック材35Bの縦方向Xの前端部が相対的に幅狭であると、着衣に対する係合力が弱まるため、引き剥がしのきっかけが得られやすく、ナプキン1Bの引き剥がしやすさの向上に繋がる。一方、フック材35Bの縦方向Xの中央部及び後方部は、前端部よりも幅広であるから、ナプキン1Bの着用中にこれを横方向Yに振るようなズレカが加わっても、フック材35Bはこのズレ力に抗して十分な滑り止め効果を発揮し得る。
図10には、フック材35Bと同様の効果が得られるフック材、即ち、平面視において縦方向Xの前端部が縦方向Xの中央部に比して横方向長さが短くなっているフック材の他の例が示されている。フック材35C及びフック材35Dは、何れも、縦方向Xの前端部及び後端部それぞれの横方向Yの長さ(幅)は、縦方向Xの内方から外方に向かうに従って漸次減少し、それ以外の部分(縦方向Xの中央部)の幅は一定である。フック材35Cとフック材35Dとは、縦方向Xの前端部及び後端部の平面視形状が異なっており、フック材35Cの縦方向Xの前端部及び後端部は何れも平面視において三角形形状、フック材35Dの縦方向Xの前端部及び後端部は何れも平面視において、縦方向Xの外方に向かって凸の半円形状である。
図11及び図12には、別の好ましい実施形態であるナプキン1Cを開示している。ナプキン1Cにおいては、図12に示すように、裏面シート3の縦方向に沿う側縁3Sが、サイドフラップ部6には達しているものの、ウイング部7には達しておらず、ウイング部7は、図11及び図12に示すように、裏面シート3を含まず、サイドシート10と面強度強化要素30とが直接接合して形成、即ち、サイドシート10と不織布31とが接着剤32を介して直接接合して形成されている。このように、ナプキン1Cにおけるウイング部7は、裏面シート3を含まずに、サイドシート10及び面強度強化要素30のみから構成されているために柔らかい。また、ナプキン1Cにおいては、吸収性本体5の縦方向Xに沿う両側縁の近傍に、縦方向Xに連続し、サイドシート10、裏面シート3の側縁部(側縁3S及びその近傍)並びに面強度強化要素30をそれらの厚み方向に一体的に結合するサイドシール39が形成されており、これにより体液のナプキン1C側部からの漏れ出しを効果的に抑制する。加えて、図11及び図12に示すように、サイドシール39の少なくとも一部が、吸収性本体5に設けられているフック材35と平面視で重なるように配置されていることが好ましい。その理由は、このようにサイドシール39とフック材35とを平面視で重ねる構成とすることによって、吸収性本体5の縦方向Xの引張強度は、全ての外装部材(吸収体4以外のナプキン1の構成部材)が一体的に結合されるサイドシール39で最も強くなるからである。
尚、ナプキン1Cは、前述したように、ウイング部7が比較的柔らかいものである。サイドシート10として、エアスルー不織布等の感触のよい不織布を単独で使用すると、一層柔らかい感触を与えることが可能であるが、そのような感触のよい不織布は柔らかい一方で引き裂き強度が低いため、特にウイング部ズレ止め部70としてフック材を用いる場合、ナプキン1Cをショーツ等の着衣から引き剥がす操作が雑であったりすると、ウイング部7の付け根付近からナプキン1Cが分解してしまう危険性がある。そのような危険性を抑えるために、後述する図13に示す縦方向強度の高い面強度強化要素30と、表面の感触のよいサイドシート10とを一体的に結合してウイング部7とすることが好ましい。
図13に示すナプキン1Dにおいては、ウイング部7を形成する面強度強化要素30の不織布31に、該不織布31を厚み方向に貫通するスリット31Sが設けられている。不織布31にスリット31Sを設ける理由は、面強度強化要素30と共にウイング部7を形成するサイドシート10の特性と密接に関係する。即ち、サイドシート10は、ナプキン1Dの縦方向Xに沿う側部、特にウイング部7で下着等の着衣を巻き込みやすくする観点から、横方向Yの伸縮性、特に縦方向X及び横方向Yの両方向の伸縮性を有する素材からなることが好ましいところ(該素材は単一の素材でもよく、複数種の素材を組み合わせた複合素材でもよい)、そのような伸縮性を有するサイドシート10とウイング部7で一体的に結合する不織布31が固く、伸縮性に乏しいと、ウイング部7全体の柔軟性・下着巻き込み性を損なうおそれがある。一方、不織布31を柔軟及び/又は伸縮性を有する素材から形成すると、ウイング部ズレ止め部70をフック材35若しくは強い粘着剤にした場合、ウイング部7の伸びや千切れを生じるため好ましくない。そこで、ナプキン1Dにおいては、面強度強化要素30を構成する不織布31としてスパンボンド不織布を含み、且つ不織布31に可撓性及び拡幅性を与えるために、不織布31のみを貫通し且つ不織布31の肌対向面側に積層されたサイドシート10には及ばず且つ縦方向Xに長軸を有する(縦方向Xに延びる)、スリット31Sを、不織布31に複数形成したのである。スリット31Sに関しては、下記構成1〜5を満たすことが好ましい。
・構成1:スリット31Sの長さ方向(縦方向X)の端部が、サイドフラップ部6及びナプキン1Dの外周縁部にかからない。
・構成2:スリット31Sは、吸収性本体5の横方向側部5Sからサイドフラップ部6(図1参照)にかかる領域に設けられ、好ましくは、ウイング部7を含む、サイドフラップ部6の全域に設けられる。
・構成3:複数のスリット31Sにおいては、横方向Yの内方側(サイドフラップ部6の付け根側)に位置するスリット31Sの方が、横方向Yの外方側(サイドフラップ部6の横方向Yの末端側)に位置するスリット31Sに比して、その長手方向(縦方向X)の長さが短い。図13においては、横方向Yの内方から外方に向かうに従って、スリット31Sの長手方向の長さが漸次短くなっており、スリット31Sの長手方向の長さは、サイドフラップ部6の付け根側において最長、サイドフラップ部6の横方向Yの末端側において最短となっている。
・構成4:縦方向Xに連続するスリット31Sの列が、横方向Yに所定間隔を置いて複数設けられ、且つその複数のスリット31Sの列が、横方向Yにおいて互い違い(千鳥状)になっている(図示せず)。斯かる構成4により、不織布31を効果的に拡幅することができる。ここで、「横方向Yにおいて互い違い(千鳥状)」とは、複数のスリット31Sが縦方向Xに所定間隔を置いて配置されてなるスリット列が、縦方向Xと直交する横方向Yに複数列配置され、且つ横方向Yにおいて、隣り合う2列どうしで互いにスリット31Sがずれている配置をいう。
以上、本発明をその好ましい実施形態に基づき説明したが、本発明は前記実施形態に制限されない。例えば、前記実施形態では、フック材35(ズレ止め部)は、吸収性本体5の横方向両側部5S,5Sそれぞれにおいて縦方向Xに所定間隔を置いて複数設けられていたが、吸収性本体5の横方向両側部5S,5Sそれぞれにおいて縦方向Xに延びる連続線状であってもよく、この連続線状のフック材35(ズレ止め部)は、平面視において直線でも曲線でもよい。また、前記実施形態はウイング部を有する生理用ナプキンであったが、本発明の吸収性物品は、ウイング部を有していなくてもよく、また本発明の吸収性物品には、生理用ナプキンの他、パンティライナ(おりものシート)、失禁パッド等が含まれる。前述した一の実施形態のみが有する部分は、すべて適宜相互に利用できる。前述した本発明の実施形態に関し、更に以下の付記を開示する。