実施の形態1.
以下、図面を参照して、本発明の実施形態を詳細に説明する。本実施形態においては、複合機(MFP:Multi Function Peripheral)としての画像形成装置を例として説明する。本実施形態に係る画像形成装置は、電子写真方式による画像形成装置であり、現像されたトナー像を転写するために印加される転写バイアスの制御に特徴を有する。
図1は、本実施形態に係る画像形成装置1のハードウェア構成を示すブロック図である。図1に示すように、本実施形態に係る画像形成装置1は、一般的なサーバやPC(Personal Computer)等の情報処理端末と同様の構成に加えて、画像形成を実行するエンジンを有する。即ち、本実施形態に係る画像形成装置1は、CPU(Central Processing Unit)10、RAM(Random Access Memory)11、ROM(Read Only Memory)12、エンジン13、HDD(Hard Disk Drive)14及びI/F15がバス18を介して接続されている。また、I/F15にはLCD(Liquid Crystal Display)16及び操作部17が接続されている。
CPU10は演算手段であり、画像形成装置1全体の動作を制御する。RAM11は、情報の高速な読み書きが可能な揮発性の記憶媒体であり、CPU10が情報を処理する際の作業領域として用いられる。ROM12は、読み出し専用の不揮発性記憶媒体であり、ファームウェア等のプログラムが格納されている。エンジン13は、画像形成装置1において実際に画像形成を実行する機構である。
HDD14は、情報の読み書きが可能な不揮発性の記憶媒体であり、OS(Operating System)や各種の制御プログラム、アプリケーション・プログラム等が格納されている。I/F15は、バス18と各種のハードウェアやネットワーク等を接続し制御する。LCD16は、ユーザが画像形成装置1の状態を確認するための視覚的ユーザインタフェースである。操作部17は、キーボードやマウス等、ユーザが画像形成装置1に情報を入力するためのユーザインタフェースである。
このようなハードウェア構成において、ROM12やHDD14若しくは図示しない光学ディスク等の記録媒体に格納されたプログラムがRAM11に読み出され、CPU10がそれらのプログラムに従って演算を行うことにより、ソフトウェア制御部が構成される。このようにして構成されたソフトウェア制御部と、ハードウェアとの組み合わせによって、本実施形態に係る画像形成装置1の機能を実現する機能ブロックが構成される。
次に、図2を参照して、本実施形態に係る画像形成装置1の機能構成について説明する。図2は、本実施形態に係る画像形成装置1の機能構成を示すブロック図である。図2に示すように、本実施形態に係る画像形成装置1は、コントローラ20、ADF(Auto Documennt Feeder:原稿自動搬送装置)110、スキャナユニット22、排紙トレイ23、ディスプレイパネル24、給紙テーブル25、プリントエンジン26、排紙トレイ27及びネットワークI/F28を有する。
また、コントローラ20は、主制御部30、エンジン制御部31、入出力制御部32、画像処理部33及び操作表示制御部34を有する。図2に示すように、本実施形態に係る画像形成装置1は、スキャナユニット22、プリントエンジン26を有する複合機として構成されている。尚、図2においては、電気的接続を実線の矢印で示しており、用紙の流れを破線の矢印で示している。
ディスプレイパネル24は、画像形成装置1の状態を視覚的に表示する出力インタフェースであると共に、タッチパネルとしてユーザが画像形成装置1を直接操作し若しくは画像形成装置1に対して情報を入力する際の入力インタフェース(操作部)でもある。ネットワークI/F28は、画像形成装置1がネットワークを介して他の機器と通信するためのインタフェースであり、Ethernet(登録商標)やUSB(Universal Serial Bus)インタフェースが用いられる。
コントローラ20は、ソフトウェアとハードウェアとの組み合わせによって構成される。具体的には、ROM12や不揮発性メモリ並びにHDD14や光学ディスク等の不揮発性記録媒体に格納されたファームウェア等の制御プログラムが、RAM11等の揮発性メモリ(以下、メモリ)にロードされ、それらのプログラムに従ったCPU10の演算によって構成されるソフトウェア制御部と集積回路などのハードウェアとによってコントローラ20が構成される。コントローラ20は、画像形成装置1全体を制御する制御部として機能する。
主制御部30は、コントローラ20に含まれる各部を制御する役割を担い、コントローラ20の各部に命令を与える。エンジン制御部31は、プリントエンジン26やスキャナユニット22等を制御若しくは駆動する駆動手段としての役割を担う。入出力制御部32は、ネットワークI/F28を介して入力される信号や命令を主制御部30に入力する。また、主制御部30は、入出力制御部32を制御し、ネットワークI/F28を介して他の機器にアクセスする。
画像処理部33は、主制御部30の制御に従い、入力された印刷ジョブに含まれる印刷情報に基づいて描画情報を生成する。この描画情報とは、画像形成部であるプリントエンジン26が画像形成動作において形成すべき画像を描画するための情報である。また、印刷ジョブに含まれる印刷情報とは、PC等の情報処理装置にインストールされたプリンタドライバによって画像形成装置1が認識可能な形式に変換された画像情報である。操作表示制御部34は、ディスプレイパネル24に情報表示を行い若しくはディスプレイパネル24を介して入力された情報を主制御部30に通知する。
画像形成装置1がプリンタとして動作する場合は、まず、入出力制御部32がネットワークI/F28を介して印刷ジョブを受信する。入出力制御部32は、受信した印刷ジョブを主制御部30に転送する。主制御部30は、印刷ジョブを受信すると、画像処理部33を制御して、印刷ジョブに含まれる印刷情報に基づいて描画情報を生成させる。
画像処理部33によって描画情報が生成されると、エンジン制御部31は、生成された描画情報に基づいてプリントエンジン26を制御し、給紙テーブル25から搬送される用紙に対して画像形成を実行する。即ち、プリントエンジン26が画像形成部として機能する。プリントエンジン26によって画像形成が施された文書は排紙トレイ27に排紙される。
次に、本実施形態に係るプリントエンジン26の構成について、図3を参照して説明する。図3に示すように、本実施形態に係るプリントエンジン26は、無端状移動手段である搬送ベルト105に沿って各色の画像形成部106が並べられた構成を備えるものであり、所謂タンデムタイプといわれるものである。すなわち、給紙トレイ101から給紙ローラ102により分離給紙される用紙(記録媒体の一例)104に転写するための中間転写画像が形成される中間転写ベルトである搬送ベルト105に沿って、この搬送ベルト105の搬送方向の上流側から順に、複数の画像形成部(電子写真プロセス部)106Y、106M、106C、106K(以降、総じて画像形成部106とする)が配列されている。
また、給紙トレイ101から給紙された用紙104は、レジストローラ103によって一度止められ、画像形成部106における画像形成のタイミングに応じて搬送ベルト105からの画像の転写位置に送り出される。
複数の画像形成部106Y、106M、106C、106Kは、形成するトナー画像、即ち顕色剤画像の色が異なるだけで内部構成は共通である。画像形成部106Kはブラックの画像を、画像形成部106Mはマゼンタの画像を、画像形成部106Cはシアンの画像を、画像形成部106Yはイエローの画像をそれぞれ形成する。尚、以下の説明においては、画像形成部106Yについて具体的に説明するが、他の画像形成部106M、106C、106Kは画像形成部106Yと同様であるので、その画像形成部106M、106C、106Kの各構成要素については、画像形成部106Yの各構成要素に付したYに替えて、M、C、Kによって区別した符号を図に表示するにとどめ、説明を省略する。
搬送ベルト105は、回転駆動される駆動ローラ107と従動ローラ108とに架け渡されたエンドレスのベルト、即ち無端状ベルトである。この駆動ローラ107は、不図示の駆動モータにより回転駆動させられ、この駆動モータと、駆動ローラ107と、従動ローラ108とが、無端状移動手段である搬送ベルト105を移動させる駆動手段として機能する。
画像形成に際しては、回転駆動される搬送ベルト105に対して、最初の画像形成部106Yが、ブラックのトナー画像を転写する。画像形成部106Yは、感光体としての感光体ドラム109Y、この感光体ドラム109Yの周囲に配置された帯電器110Y、光書き込み装置111、現像器112Y、感光体クリーナ(図示せず)、除電器113Y等から構成されている。光書き込み装置111は、夫々の感光体ドラム109Y、109M、109C、109K(以降、総じて「感光体ドラム109」という)に対して光を照射するように構成されている。
画像形成に際し、感光体ドラム109Yの外周面は、暗中にて帯電器110Yにより一様に帯電された後、光書き込み装置111からのブラック画像に対応した光源からの光により書き込みが行われ、静電潜像が形成される。現像器112Yは、この静電潜像をイエロートナーにより可視像化し、このことにより感光体ドラム109Y上にイエローのトナー画像が形成される。
このトナー画像は、感光体ドラム109Yと搬送ベルト105とが当接若しくは最も接近する位置(転写位置)で、転写器115Yの働きにより搬送ベルト105上に転写される。この転写により、搬送ベルト105上にイエローのトナーによる画像が形成される。トナー画像の転写が終了した感光体ドラム109Yは、外周面に残留した不要なトナーを感光体クリーナにより払拭された後、除電器113Yにより除電され、次の画像形成のために待機する。
以上のようにして、画像形成部106Yにより搬送ベルト105上に転写されたイエローのトナー画像は、搬送ベルト105のローラ駆動により次の画像形成部106Mに搬送される。画像形成部106Mでは、画像形成部106Yでの画像形成プロセスと同様のプロセスにより感光体ドラム109M上にマゼンタのトナー画像が形成され、そのトナー画像が既に形成されたイエローの画像に重畳されて転写される。
搬送ベルト105上に転写されたイエロー、マゼンタのトナー画像は、さらに次の画像形成部106C、106Kに搬送され、同様の動作により、感光体ドラム109C上に形成されたシアンのトナー画像と、感光体ドラム109K上に形成されたブラックのトナー画像とが、既に転写されている画像上に重畳されて転写される。こうして、搬送ベルト105上にフルカラーの中間転写画像が形成される。
給紙トレイ101に収納された用紙104は最も上のものから順に送り出される。用紙104の搬送経路が搬送ベルト105と接触する位置若しくは最も接近する位置において、搬送ベルト105と対向するように二次転写ローラ117が設けられている。この二次転写ローラ117から印加される転写バイアス及び従動ローラ108から印加される転写バイアスによってトナーを移動させるための力が生じ、搬送ベルト105上に形成された中間転写画像が用紙の紙面上に転写される。これにより、用紙104の紙面上に画像が形成される。紙面上に画像が形成された用紙104は更に搬送され、定着器116にて画像を定着された後、画像形成装置の外部に排紙される。
また、トナー画像が用紙に転写され、再度画像形成部106に対して対向する範囲に搬送される搬送ベルト105に余分なトナーが残らないようにするため、ベルトクリーナ118が設けられている。ベルトクリーナ118は、図3に示すように、二次転写ローラ117の下流側であって、感光体ドラム109よりも上流側において搬送ベルト105に押し当てられたクリーニングブレードであり、搬送ベルト105の表面に付着したトナーを掻きとる顕色剤除去部である。
次に、本実施形態に係る二次転写ローラ117や従動ローラ108によって構成される二次転写機構を制御するための転写制御部の機能構成について、図4を参照して説明する。図5は、本実施形態に係る転写制御部130の機能構成と、従動ローラ108及び二次転写ローラ117との接続関係を示す図である。即ち、図4に示す構成が画像転写装置として機能する。
図4に示すように、本実施形態に係る転写制御部130は、二次転写制御部131、第一電圧印加部132、第二電圧印加部133、異常検知部134及び温度検知部135を含み、画像転写制御装置として機能する。尚、図4に示す転写制御部130は、プリントエンジン26の一部として含まれる。また、本実施形態に係る転写制御部130は、図1において説明したようなCPU10、RAM11、ROM12等の情報処理機構を含み、画像形成装置1のコントローラ20と同様に、ROM12等の記憶媒体に記憶されている制御プログラムに従ってCPU10が演算を行うことにより構成される。
二次転写制御部131は、エンジン制御部31等の上位の機能ブロックからの命令に基づき、従動ローラ108及び二次転写ローラ117への電圧の印加態様を制御する。本実施形態に係る二次転写制御部131は、従動ローラ108及び二次転写ローラ117夫々に間欠的に電圧が印加され、且つ従動ローラ108への電圧の印加と二次転写ローラ117への電圧の印加とが交互に行われるように制御する。即ち、二次転写制御部131が電圧印加制御部として機能する。
また、二次転写制御部131は、温度検知部135による温度の検知結果に基づき、上述したように間欠的に電圧を印加する際の1回の印加期間を変更することにより、異常検知部134による誤検知を防ぐ。このような二次転写制御部131の機能が、本実施形態に係る要旨である。
第一電圧印加部132は、二次転写制御部131の制御に従い、従動ローラ108に印加するための転写電圧を出力する。第二電圧印加部133は、二次転写制御部131の制御に従い、二次転写ローラ117に印加するための転写電圧を出力する。即ち、第一電圧印加部132及び第二電圧印加部133が電圧印加部として機能し、夫々が別系統の電力機構である。即ち、本実施形態に係る電圧印加部は、第一電圧印加部132及び第二電圧印加部133という二系統の電力系統を含む。本実施形態に係る従動ローラ108及び二次転写ローラ117は定電流駆動である。そのため、第一電圧印加部132及び第二電圧印加部133は、夫々従動ローラ108、二次転写ローラ117に流れる電流値が所定の基準値となるように電圧を印加する。
異常検知部134は、第一電圧印加部132及び第二電圧印加部133による過剰電圧の出力を異常として検知する。即ち、異常検知部134が過剰電圧検知部として機能する。上述したように定電流駆動を行う場合、従動ローラ108、二次転写ローラ117内部における電流路に断線等が発生していると、いくら電圧をかけても電流が上がらないため、過剰な電圧が出力されてしまう。そのような過剰な電圧出力が継続されることを防ぐため、異常検知部134は第一電圧印加部132及び第二電圧印加部133の出力電圧を監視し、その出力電圧が予め定められた電圧閾値を超えている場合に異常を検知し、異常を検知した場合に二次転写制御部131に異常検知信号を出力する。
温度検知部135は、従動ローラ108及び二次転写ローラ117の温度を検知し、その検知結果が所定の閾値よりも低い場合に、低温時のための制御を行わせるための信号(以降、「低温検知信号」とする)を二次転写制御部131に入力する。ここで、従動ローラ108及び二次転写ローラ117の温度に応じたインピーダンス値について図5を参照して説明する。
一般的に従動ローラ108や二次転写ローラ117に用いられる材質は、インピーダンス値の温度依存性が高く、低温時には数倍から数百倍のインピーダンス値となる。上述したように、従動ローラ108、二次転写ローラ117への給電は定電流制御であるため、電圧を印加する対象の負荷のインピーダンスが数百倍になってしまうと、トランスの給電能力を超えてしまう場合があり、過剰電圧としてエラー検知されてしまう場合がある。
図5の本実施形態に係る例では、従動ローラ108及び二次転写ローラ117の温度が5℃以下になった場合、二次転写ローラのインピーダンス値が500MΩを超えるため、過剰電圧出力によりエラー検知されることとなる。従って、温度検知部135は、従動ローラ108及び二次転写ローラ117の温度が5℃以下となった場合に、低温検知信号を出力する。尚、本実施形態においては、従動ローラ108及び二次転写ローラ117で共通の温度閾値である5℃を用いるが、夫々の特性に応じて異なる閾値を用いても良い。
尚、温度検知部135は、従動ローラ108、二次転写ローラ119に設けられた温度検知センサの出力信号に基づいて従動ローラ108、二次転写ローラ119の温度を検知するモジュールであれば、公知の様々なモジュールを用いることが出来る。
温度検知センサとしては、従動ローラ108、二次転写ローラ119の温度に応じた信号を出力するモジュールであれば公知の様々なモジュールを用いることが可能であり、例えば温度に応じてインピーダンスが変化する回路を用い、その回路のインピーダンス値に基づいて温度を予測することが可能である。また、インピーダンス値は、上記回路に流れる電流や印加される電圧に基づいて算出することが出来る。
次に、本実施形態に係る転写制御部130による二次転写バイアスの制御態様について、図6を参照して説明する。図6に示すように、温度検知部135は、従動ローラ108及び二次転写ローラ117の温度を監視している(S601)。従動ローラ108及び二次転写ローラ117いずれかの温度が閾値温度以下となった場合には(S601/YES)、温度検知部135が低温検知信号を出力する。
これにより、二次転写制御部131が、従動ローラ108及び二次転写ローラ117についての二次転写バイアスの制御態様として低温時の制御態様を選択する(S602)。他方、従動ローラ108及び二次転写ローラ117の温度が閾値温度を超えている場合には(S601/NO)、二次転写制御部131は、常温時の制御態様を選択する(S603)。このように、予め設定された温度の閾値に基づいて低温時と常温時とを判断し、低温時と判断された場合に低温時の制御態様を選択することが本実施形態に係る要旨である。
次に、本実施形態に係る二次転写バイアスの制御態様について説明する。図7(a)〜(c)は、本実施形態に係る二次転写バイアスの制御態様を示す図である。図7(a)〜(c)においては、二次転写ローラ117の電圧を実線で示し、従動ローラ108の電圧を破線で示している。
図7(a)〜(c)に示すように、本実施形態に係る二次転写バイアスの制御においては、二次転写ローラ117と従動ローラ108とが、交互に二次転写バイアスを印加する。これが本実施形態に係る要旨の1つである。図7(a)は、交互に二次転写バイアスを印加する際の電圧の切り替えを瞬間的に行う場合の例を示す図である。
図7(a)の場合、二次転写ローラ117は、絶対値“H”のプラスの電圧を、従動ローラ108が電圧を印加していない期間において、“a1”の期間印加する。従動ローラ108は、絶対値“H”のマイナスの電圧を、二次転写ローラ117が電圧を印加していない期間において、“a2”の期間印加する。
本実施形態においては、搬送ベルト105表面に転写されたトナーはマイナスの電荷に帯電している。そのため、二次転写ローラ117がプラスの電圧を印加している間、搬送ベルト105上のトナーには、搬送ベルト105から離れて二次転写ローラ117にひきつけられる方向に引力が働く。これにより、搬送ベルト105上のトナー像は搬送ベルト105から紙面上に転写される。
他方、従動ローラ108がマイナスの電圧を印加している間、搬送ベルト105上のトナーには、従動ローラ108と反発して搬送ベルト105から離れる方向に斥力が働く。これにより、搬送ベルト105上のトナー像は搬送ベルト105から紙面上に転写される。このように、図7(a)の制御態様の場合、いずれの期間においても、従動ローラ108、二次転写ローラ117のいずれかが電圧“H”に相当する引力若しくは斥力を発生させるため、搬送ベルト105から用紙に転写されるトナー量を常に一定に保ち、画像の濃度のバラつきを防ぐことが出来る。
図7(b)の場合、二次転写ローラ117は、“a1”の半分の期間かけてゼロからプラスの“H”まで緩やかに印加電圧を上げ、その後“a1”の半分の期間かけてプラスの“H”からゼロまで緩やかに印加電圧を下げる。他方、従動ローラ108は、二次転写ローラ117が電圧をゼロから“H”に上げるタイミングと同じタイミングで、マイナス“H”からゼロまで“a2”の半分の期間かけて緩やかに電圧を上げ、その後、“a2”の半分の期間かけてゼロからマイナスの“H”まで緩やかに印加電圧を下げる。
このような制御態様の場合、二次転写ローラ117の印加電圧がプラス“H”の場合には、図7(b)と同様に、二次転写ローラ117によって印加される電圧による引力により、搬送ベルト105上のトナーが紙に転写される。他方、従動ローラ108の印加電圧がマイナス“H”の場合には、図7(b)と同様に、従動ローラ108によって印加される電圧による斥力により、搬送ベルト105上のトナーが用紙に転写される。
そして、二次転写ローラ117及び従動ローラ108の印加電圧が上昇若しくは下降している間は、二次転写ローラ117によって印加される電圧による引力と、従動ローラ108によって印加される電圧による斥力とで、搬送ベルト105上のトナーが用紙に転写される。
そして、二次転写ローラ117と従動ローラ108との電位差は常に“H”となるため、搬送ベルト105上のトナーに与えられる引力及び斥力の合計は電圧“H”に相当するものとなる。従って、搬送ベルト105から用紙に転写されるトナー量を常に一定に保ち、画像の濃度のバラつきを防ぐことが出来る。
図7(c)の場合、二次転写ローラ117は、“a1”の四半分の期間かけてゼロからプラスの“H”まで印加電圧を上げた後“a1”の半分の期間は“H”の電圧を維持する。その後、“a1”の四半分の期間かけてプラスの“H”からゼロまで印加電圧を下げる。その後、“a1”の半分の期間はゼロを維持する。
他方、従動ローラ108は、二次転写ローラ117が電圧をゼロから“H”に上げるタイミングと同じタイミングで、マイナス“H”からゼロまで“a2”の四半分の期間かけて電圧を上げた後、“a2”の半分の期間は、ゼロの電圧を維持する。その後、“a2”の四半分の期間かけてゼロからマイナスの“H”まで印加電圧を下げる。その後、“a2”の半分の期間はマイナス“H”の電圧を維持する。
このような制御態様の場合、二次転写ローラ117の印加電圧がプラス“H”の場合には、図7(b)と同様に、二次転写ローラ117によって印加される電圧による引力により、搬送ベルト105上のトナーが紙に転写される。他方、従動ローラ108の印加電圧がマイナス“H”の場合には、図7(b)と同様に、従動ローラ108によって印加される電圧による斥力により、搬送ベルト105上のトナーが用紙に転写される。
そして、二次転写ローラ117及び従動ローラ108の印加電圧が上昇若しくは下降している間は、二次転写ローラ117によって印加される電圧による引力と、従動ローラ108によって印加される電圧による斥力とで、搬送ベルト105上のトナーが用紙に転写される。
そして、二次転写ローラ117と従動ローラ108との電位差は常に“H”となるため、搬送ベルト105上のトナーに与えられる引力及び斥力の合計は電圧“H”に相当するものとなる。従って、搬送ベルト105から用紙に転写されるトナー量を常に一定に保ち、画像の濃度のバラつきを防ぐことが出来る。
図7(a)〜(c)のいずれにも共通するように、本実施形態に係る二次転写バイアスの制御においては、トナー画像を転写する対象である用紙の搬送経路を挟んだ両側に、互いに対向して配置されている従動ローラ108と二次転写ローラ117とが交互に二次転写バイアスを印加する。尚、図7(b)では“a1”と“a2”とが同一である必要があるが、図7(a)、(c)においては、“a1”と“a2”とは別々でも構わない。
そして、交互に二次転写バイアスを印加する際の、一方のローラが二次転写バイアスを印加する1回の期間(以降、「切替期間」とする)、例えば、図7(a)〜(c)における“a1”、“a2”の期間を、低温時と常温時で変えることにより、低温時における二次転写バイアスのエラーの誤検知を防ぐ。これが、本実施形態に係る要旨の1つである。
次に、低温時制御と常温時制御との切替期間の変化について説明する。図8(a)、(b)は、図7(a)の制御態様における低温時制御の切替期間の例を示す図である。尚、以降の説明においては、二次転写ローラ117の出力を出力1とし、従動ローラ108の出力を出力2とする。また、印加される電圧の最大値を基準として“1”で示し、最大値からの割合に基づいた小数値で示す。
図8(a)は“a1”と“a2”とが同一である場合を示す図である。図8(a)の場合、“a1”、“a2”は共に0.8秒であり、二次転写ローラ117と従動ローラ108とが、0.8秒ごとに電圧の印加を繰り返す。図8(b)は“a1”と“a2”とが異なり、“a1”が0.8秒、“a2”が0.6秒である。この場合、二次転写ローラ117が0.8秒の間電圧を印加した後、従動ローラ108が0.6秒の間電圧を印加し、それが交互に繰り返される。
図9は、図7(b)の制御態様における低温時制御の切替期間の例を示す図である。図9の例においては、“a1”、“a2”共に0.8秒である。即ち、二次転写ローラ117及び従動ローラ108は0.4秒間かけて電圧の上昇若しくは下降を行い、0.4秒間かけてその逆を行う。
図10(a)、(b)は、図7(c)の制御態様における低温時制御の切替期間の例を示す図である。図10(a)は“a1”と“a2”とが同一である場合を示す図である。図10(a)の場合、“a1”、“a2”は共に0.8秒であり、二次転写ローラ117及び従動ローラ108は、0.2秒かけて電圧の上昇若しくは下降を行い、0.4秒間その状態を維持し、0.2秒かけて電圧を元に戻すための上昇若しくは下降を行う。
このような二次転写バイアスの制御は、夫々第一電圧印加部132及び第二電圧印加部133によって行われる。即ち、第一電圧印加部132及び第二電圧印加部133が、図7(a)〜(c)に示すような態様で電圧を出力することにより、従動ローラ108及び二次転写ローラ117の電圧が制御される。
このように、本実施形態に係る二次転写バイアスの制御においては、低温時において1回の電圧の印加期間である切替期間を0.8秒以下にする。これに対して、常温時における切替期間をそれよりも長い期間、例えば1.2秒や1.4秒にする。そして、異常検知部134が、第一電圧印加部132及び第二電圧印加部133が出力する電圧が過剰であると判断する期間(以降、「異常検知期間」とする)を、低温時における切替期間よりも長く、且つ常温時における切替期間よりも短くすることが、本実施形態に係る要旨の1つである。
例えば、異常検知部134が、第一電圧印加部132及び第二電圧印加部133が出力する電圧が過剰であると判断する期間を1秒とし、常温時の切替期間を1.2秒とし、低温時の切替期間を0.8秒とする。その場合、常温時において従動ローラ108や二次転写ローラ117内部の負荷に断線等が発生していると、定電流駆動されている第一電圧印加部132、第二電圧印加部133は、所定の電流を流すためにより高い電圧を出力する。
その結果、より高い電圧が1.2秒間にわたって出力されることとなるため、異常検知部134が異常を検知する機関である1秒間という閾値を超え、異常として検知される。他方、低温時において、従動ローラ108や二次転写ローラ117の温度が低く、インピーダンス値が非常に高くなってしまっている場合、定電流駆動されている第一電圧印加部132、第二電圧印加部133は、所定の電流を流すためにより高い電圧を出力するが、その期間は最大で0.8秒間であるため、異常検知部134が異常を検知する機関である1秒間という閾値を超えず、低温によるエラーの誤検知は発生しない。このような構成により、低温時におけるエラーの誤検知を防ぐことが出来る。
ここで、異常検知部134による異常検知動作について図11のフローチャートを参照して説明する。図11に示すように、異常検知部134は、予め定められた期間である0.1秒間待機し(S1101)、第一電圧印加部132、第二電圧印加部133が出力する電圧が、設定された閾値電圧を超えた過剰電圧であるか否かを判断する(S1102)。その結果、過剰電圧でなければ、過剰電圧の検知回数をカウントしているカウント値をクリアし(S1104)、S1101からの処理を繰り返す。
他方、過剰電圧であった場合(S1102/YES)、異常検知部134は、過剰電圧の検知回数のカウントをカウントアップし(S1103)、その結果、カウント値が10を超えたか否か、即ち、1秒間連続して過剰電圧が検知されたか否かを確認する(S1105)。S1105の判断の結果、カウント値が10に達していなければ(S1105/NO)、異常検知部134は、S1101からの処理を繰り返す。
他方、カウント値が10に達していた場合(S1105/YES)、異常検知部134は、上述したように二次転写制御部131に異常検知信号を出力するエラー処理を行い(S1106)、処理を終了する。これにより、二次転写制御部131は、第一電圧印加部132、第二電圧印加部133による電圧出力を緊急停止させる等の制御を行う。
このような制御により、本実施形態に係る異常検知部134は、過剰電圧が予め定められた期間(以降、「過剰電圧判断期間」とする)連続して検知された場合に、異常として検知する。尚、この過剰電圧判断期間は、図11においては1秒であるが、これは一例である。過剰電圧判断期間は、上述したように、低温時制御における切替期間よりも長く、常温時制御における切替期間よりも短い必要がある。従って、低温時制御及び常温時制御夫々の切替期間に応じて決定されることが好ましい。
このような制御に対して、上述したように、本実施形態に係る二次転写制御部131は、温度検知部135によって低温検知信号が出力された場合、第一電圧印加部132及び第二電圧印加部133による電圧出力を低温時制御に切り替える。その結果、従動ローラ108と二次転写ローラ117とが交互に電圧を印加する際の、1回の電圧印加期間である切替期間が、異常検知部134が過剰電圧による異常を検知するための期間である過剰電圧判断期間よりも短くなり、低温による過剰電圧の誤検知を防ぐことが可能となる。
以上説明したように、最終的に転写される画像に影響することなく、低温時における過電圧印加の誤検知を防ぐことが可能となる。
尚、上記実施形態においては、図7(a)〜(c)において説明したように、常温時においても従動ローラ108と二次転写ローラ117とが交互に転写バイアスを印加する場合を例といて説明した。しかしながら、交互の転写バイアスの印加は、低温時において転写バイアスの印加を間欠的に行い、その切替期間を異常検知期間よりも短くすることで、低温による過剰電圧の誤検知を回避することにある。
従って、常温時においては、間欠的な転写バイアスの印加は必要なく、例えば、二次転写ローラ117のみが連続的に転写バイアスを印加するように制御しても良い。換言すると、二次転写制御部131は、温度検知部135による温度検知結果が所定の温度閾値よりも低い場合にのみ、上述したような第一電圧印加部132及び第二電圧印加部133から交互に電圧を印加させるようにしても良い。これに対して、低温時においては、間欠的な二次転写バイアスの印加制御が必要となるため、常温時においても間欠的な二次転写バイアスの印加制御を行うことにより、制御態様を共通化し、“a1”、“a2”のパラメータ変更のみで対応可能であるため、制御を簡略化することが可能である。
また、上記実施形態においては、従動ローラ108に印加する電圧の最大値の絶対値と二次転写ローラ117に印加する電圧の最大値の絶対値とが同一である場合を例として説明した。これは、搬送ベルト105上のトナーを転写させるために加わる引力と斥力とを均一にするための構成である。
従って、電圧の絶対値が同一であっても、従動ローラ108から加わる転写力と二次転写ローラ117から加わる転写力とが異なる場合は、転写力が同一になるように従動ローラ108と二次転写ローラ117との電圧を調整することが好ましい。
実施の形態2.
実施の形態1においては、第一電圧印加部132が従動ローラ108に電圧を印加し、第二電圧印加部133が二次転写ローラ117に電圧を印加する場合を例として説明した。しかしながら、実本願発明の要旨は、二系統の電力系統が夫々交互に電圧を出力し、夫々の電力系統が電圧を出力する1回の期間である切替期間を、検知された期間に応じて変えることにある。従って、二系統の電力系統の両方が、二次転写ローラ117に電圧を出力する態様も可能である。本実施形態においては、そのような態様について説明する。
図12は、本実施形態に係る転写制御部130の機能構成と二次転写ローラ117との接続関係を示す図である。図12に示すように、本実施形態に係る転写制御部130は、図4において説明した実施の形態1に係る転写制御部130と略同一の構成を有するが、第一電圧印加部132及び第二電圧印加部133両方の出力が二次転写ローラに出力される点が異なる。
第一電圧印加部132及び第二電圧印加部133が交互に電圧を出力する点は、実施の形態1と同様である。しかしながら、本実施形態においては、第一電圧印加部132及び第二電圧印加部133の両方が二次転写ローラ117に電圧を出力するため、第一電圧印加部132及び第二電圧印加部133の双方が、搬送ベルト105上のトナーに対して二次転写ローラ117側への引力となる電圧を出力する必要がある。
次に、本実施形態に係る二次転写バイアスの制御態様について説明する。図13(a)〜(c)は、本実施形態に係る二次転写バイアスの制御態様を示す図であり、図7(a)〜(c)に夫々対応する。図7(a)〜(c)においては、第一電圧印加部132の出力を実線で示し、第二電圧印加部133の出力を破線で示している。図13(a)〜(c)に示すように、本実施形態に係る二次転写バイアスの制御においても、第一電圧印加部132と第二電圧印加部133とが、交互に二次転写バイアスを印加する。
但し、実施の形態1においては、用紙の搬送経路を挟む従動ローラ108と二次転写ローラ117とに夫々二次転写バイアスを印加していたため、第一電圧印加部132が出力する電圧と第二電圧印加部133が出力する電圧とは夫々逆極性であった。これに対して、本実施形態に係る二次転写バイアスの制御においては、第一電圧印加部132及び第二電圧印加部133が共に二次転写ローラ117に電圧を印加するため、第一電圧印加部132及び第二電圧印加部133は同局性の電圧を出力する。
図13(a)の場合、第一電圧印加部132は、絶対値“H”のプラスの電圧を、第二電圧印加部133が電圧を印加していない期間において、“a1”の期間印加する。第二電圧印加部133は、絶対値“H”のプラスの電圧を、第一電圧印加部132が電圧を印加していない期間において、“a2”の期間印加する。
その結果、図13(a)の三段目に示すように、二次転写ローラ117には、常に絶対値“H”のプラスの電圧が印加されることとなる。その結果、搬送ベルト105から用紙に転写されるトナー量を常に一定に保ち、画像の濃度のバラつきを防ぐことが出来る。
図13(b)の場合、第一電圧印加部132は、“a1”の半分の期間かけてゼロからプラスの“H”まで緩やかに印加電圧を上げ、その後“a1”の半分の期間かけてプラスの“H”からゼロまで緩やかに印加電圧を下げる。他方、第二電圧印加部133は、第一電圧印加部132が電圧をゼロから“H”に上げるタイミングと同じタイミングで、マイナス“H”からゼロまで“a2”の半分の期間かけて緩やかに電圧を上げ、その後、“a2”の半分の期間かけてゼロからマイナスの“H”まで緩やかに印加電圧を下げる。
このような制御態様の場合も、図13(a)の三段目と同様に、二次転写ローラ117には、常に絶対値“H”のプラスの電圧が印加されることとなる。その結果、搬送ベルト105から用紙に転写されるトナー量を常に一定に保ち、画像の濃度のバラつきを防ぐことが出来る。
図13(c)の場合、第一電圧印加部132は、“a1”の四半分の期間かけてゼロからプラスの“H”まで印加電圧を上げた後“a1”の半分の期間は“H”の電圧を維持する。その後、“a1”の四半分の期間かけてプラスの“H”からゼロまで印加電圧を下げる。その後、“a1”の半分の期間はゼロを維持する。
他方、第二電圧印加部133は、第一電圧印加部132が電圧をゼロから“H”に上げるタイミングと同じタイミングで、マイナス“H”からゼロまで“a2”の四半分の期間かけて電圧を上げた後、“a2”の半分の期間は、ゼロの電圧を維持する。その後、“a2”の四半分の期間かけてゼロからマイナスの“H”まで印加電圧を下げる。その後、“a2”の半分の期間はマイナス“H”の電圧を維持する。
このような制御態様の場合も、図13(a)の三段目と同様に、二次転写ローラ117には、常に絶対値“H”のプラスの電圧が印加されることとなる。その結果、搬送ベルト105から用紙に転写されるトナー量を常に一定に保ち、画像の濃度のバラつきを防ぐことが出来る。