以下に図面を参照して、この発明を実施するための形態を例示的に詳しく説明する。なお、本実施の形態に記載されている構成要素の寸法、材質、形状、その相対配置等は、特に特定的な記載がない限りは、発明の技術的範囲をそれらのみに限定する趣旨のものではない。
<実施形態>
図1Aは、実施形態に係る錠前装置1が組み込まれたロッカー100を示す図である。図1Bは、実施形態に係る錠前装置1の斜視図である。図2は、実施形態に係る錠前装置1の正面図(前面図)である。図3は、実施形態に係る錠前装置1の背面図(後面図)である。図4は、実施形態に係る錠前装置1の横断面図である。図5は、実施形態に係る錠前装置1の縦断面図である。錠前装置1における上下前後左右方向を図1Bに図示する。図4は、錠前装置1を背面側から眺めた断面図である。
錠前装置1は、錠箱(筐体)2、ダイヤル錠3、シリンダー錠4、ストッパー5、操作つまみ6を備えた操作部60、引手7等を備える。図1Aに示す例では、錠前装置1は、ロッカー100の扉100aに取り付けられている。錠箱2は、錠前装置1を構成する各種部品を収容する筐体であり、フロントケース(アッパーケースともいう)21、リアケース(ロアケースともいう)22を含む。フロントケース21およびリアケース22は、互いの側板同士が嵌め込まれることで、錠箱2内部に各種部品の収容空間が形成される。
ストッパー5は、錠前装置1の背面側に配置された板状のいわゆるデッドボルト(閂体)であり、操作部60の操作つまみ6の回動操作に連動して回動可能となっている。操作つまみ6は、フロントケース21の表面に「CLOSE」と表示された閉位置と、「OPEN」と表示された開位置との間で回動操作を行うことができる。操作つまみ6の操作によって、ストッパー5が回動される。そして、操作つまみ6が閉位置にあるときには、ストッパー5が相手側の受け具、すなわち図1Aに示す例ではロッカー100の枠体側に設けられた受け具と係合する施錠位置に位置することによって引き出しや扉等の開閉が禁止(規制)される。一方、操作つまみ6が閉位置から開位置に開操作されると、ストッパー5が施錠位置からロッカー100における枠体側の受け具との係合が解除される解錠位置まで回動することによって、扉100aの開閉が許容されるようになる。
ダイヤル錠3は、複数のダイヤル31を有しており、ダイヤル操作によって、その施錠状態、および解錠(開錠)状態の切り替えが可能である。本実施形態では、4個のダイヤル31の組み合わせが、設定されている解錠符号(暗証番号)に揃った状態で解錠状態となり、解錠符号に揃っていない状態で施錠状態となる。なお、ダイヤル31の数は適宜変更することができる。
シリンダー錠4は、外筒41およびその内側に保持される錠機構である内筒42を備える。外筒41の内周面にはタンブラーを係止可能な係止溝が形成されており、通常時においては内筒42のタンブラーが内筒42の外周面から突出している。そして、外筒41の内周面に形成された上記係止溝にタンブラーが嵌め合わされることで、外筒41に対する内筒42の相対回転が禁止される。一方、内筒42の鍵穴420に正規の解錠鍵を挿入す
ると、外筒41の係止溝に係止されているタンブラーが内筒42の内部に没入し、係止溝から退出する。その結果、外筒41に対して内筒42が相対回転することが可能となる。
図1B、図2、図5等に示すように外筒41の外周側には、筒形状を有する操作部60が一体に装着されている。操作部60の一方の端部には、操作部60を回動動作させるための操作つまみ6が設けられている。また、外筒41の後端側には、環状のディスク部材10が一体に取り付けられている。錠前装置1において、外筒41、操作部60およびディスク部材10は一体構造であり、且つ、これらは錠箱2に対して相対回動自在に取り付けられている。そして、詳しくは後述するが、操作つまみ6(操作部60)の開閉操作(回動操作)は、ダイヤル錠3が解錠されているときに許容され、ダイヤル錠3が施錠されているときに禁止される。操作つまみ6を介した操作部60の開閉操作がなされた場合、外筒41およびディスク部材10も連動して回動する。
内筒42の後端側にはドライブシャフト11が固定されており、このドライブシャフト11にストッパー5が固定されている。図6は、内筒42、ドライブシャフト11およびストッパー5の関係を示す図である。内筒42とストッパー5は、ドライブシャフト11を介して連結されている。ドライブシャフト11の後端部には軸部111が形成されており、ドライブシャフト11は、後端面に開口すると共に軸方向に沿った円筒状の中空部が設けられている。ストッパー5には、ドライブシャフト11の軸部111の先端側を挿入可能な取り付け孔51が形成され、軸部111が取り付け孔51に挿入された状態でドライブシャフト11とストッパー5とがネジ等を介して固定されることで、内筒42、ドライブシャフト11およびストッパー5が一体となる。
内筒42の鍵穴420に解錠鍵が挿入されていない場合、内筒42のタンブラー421が係止溝に係止されることで外筒41に対して内筒42の相対回転が規制される。そのため、通常時においては、ダイヤル錠3が解錠されている状態のときに操作つまみ6を介した操作部60の回動操作が行われると、外筒41に係止された状態の内筒42も操作部60に連動して回動する。その際、内筒42と一体に連結されているストッパー5も連動する。このようにして、操作つまみ6が開位置と閉位置との間で切り替えられることで、ストッパー5の解錠位置と施錠位置との間の切り替えが行われる。
ダイヤル錠3は、複数のダイヤル31を回動自在に支持するダイヤル支持軸32を有する。図7にダイヤル支持軸32の外観図を示す。(a)は、ダイヤル支持軸32の正面図であり、(b)はダイヤル支持軸32の上面図である。(b)は、(a)のA矢視方向からダイヤル支持軸32を眺めた状態を示している。ダイヤル支持軸32には、ダイヤル31の他、複数のインナーホイール33が回転自在に支持(外嵌)されている。図8は、ダイヤル錠3の主要部の断面図である。図8に示すように、インナーホイール33は、ダイヤル31に対応する数だけダイヤル支持軸32に配置されており、本実施形態では、4組のダイヤル31およびインナーホイール33がダイヤル支持軸32に回動自在に支持されている。
ダイヤル31の外周面には、0〜9までの符号(数字)が表示されている。但し、ダイヤル31に表示させる符号は、数字以外の例えばアルファベット等であっても勿論構わない。図1B、図2に示すように、フロントケース21には、各ダイヤル31と相対する位置に窓孔211が形成されている。使用者は、フロントケース21の外部に窓孔211を通じて部分的に露出したダイヤル31を回転操作する。以下、ダイヤル31の表示する数字とは、この窓孔211に現れる数字を指す。使用者によって、ダイヤル31の表示が解錠符号(暗証番号)に揃えられることで錠前装置1が解錠され、ダイヤル31の表示が解錠符号から崩されることで錠前装置1が施錠される。
ダイヤル支持軸32は、棒形状を有する軸本体部320、軸本体部320の上端に形成された上端部321、上端部321から側方に延伸する第1腕部322、上端部321から第1腕部322と逆方向に延伸する第2腕部323を有する。軸本体部320は、円柱断面を有しており、その軸方向における上端部321と逆側の端部近傍には他の部分に比べて外径が縮小された縮径部320aが形成されている。この縮径部320aにはワッシャー324が嵌められている(図8を参照)。また、ダイヤル支持軸32の上端部321は板形状を有しており、軸本体部320の軸方向に直交する方向に延設されている。上端部321は、その下面が軸本体部320の上端に接続されている。一方、上端部321の上面には、後述するシャフトスプリング37を保持するためのスプリング受け穴321aが形成されている。スプリング受け穴321aは、シャフトスプリング37の一部を収容するための凹部である。また、上端部321における背面側の縁部には、小幅の突起部321bが突出して形成されている。
図9は、錠前装置1における内部構造部品の背面図である。図10は、錠前装置1における内部構造部品の斜視図である。図11は、錠前装置1における内部構造部品の側面図である。図12は、リアケース22を外した状態の錠前装置1を背面側から眺めた斜視図である。ダイヤル支持軸32は、錠箱2に支持されており、軸本体部320の軸方向に往復動が自在である。ダイヤル支持軸32は、軸本体部320の下端部、第1腕部322の先端側に形成された第1先端部322a、第2腕部323の先端側に形成された第2先端部323aが錠箱2の外壁あるいはその内部に設けられた壁体に支持されている。軸本体部320は、フロントケース21の下側面壁211の内側に設けられた支持壁(図示せず)の挿通孔に下端部近傍を挿通した状態で支持されている。フロントケース21の左側面壁212には、第2先端部323aをスライド自在に保持するためのガイド孔212a(図12を参照)が設けられている。ガイド孔212aは、第2先端部323aに比べて若干幅広になっており、ガイド孔212aに挿入された第2先端部323aは錠前装置1の上下方向に沿って所定範囲でスライド自在となっている。
図13は、ダイヤル支持軸32の軸方向に直交する方向の錠前装置1の断面図である。錠箱2内における正面側と背面側には、ダイヤル支持軸32の軸方向に平行なスライド溝213a,213bが設けられている。一方、スライドプレート23は、全体としては略板形状を有しており、その前端縁および後端縁には、スライド溝213a,213bに挿入可能な挿入突片23a,23bが設けられている。スライド溝213a,213bに対して挿入された挿入突片23a,23bがスライドすることで、スライドプレート23は錠箱2内を上下方向、すなわちダイヤル支持軸32の軸方向に沿ってスライドすることが可能である。図14は、図4と異なる位置で切断した錠前装置1の縦断面図である。スライドプレート23の表面には、ダイヤル支持軸32における第1腕部322の第1先端部322aと係合するU字形状の係合部23cが突設されている。スライドプレート23の係合部23cは、第1先端部322aと係合することでダイヤル支持軸32の第1腕部322を支持している。
以上のように、ダイヤル支持軸32は、軸本体部320、第1腕部322、および第2腕部323が支持されることで、錠前装置1の上下方向に沿って往復動が自在に支持されている。また、ダイヤル支持軸32のスプリング受け穴321aには、シャフトスプリング37の一端側が収容されており、このシャフトスプリング37の他端側は、外筒41の外周面の外周面を押圧している(図11を参照)。そして、外筒41の外周面を押圧するシャフトスプリング37の反発力がダイヤル支持軸32に作用することで、ダイヤル支持軸32は常に外筒41から離反する方向への付勢力を受けている。
図15は、実施形態に係る揺動プレート34の概略構成を示す図である。図16は、揺動プレート34に対して揺動自在に取り付けられる揺動アーム35の概略構成を示す図で
ある。図17は、揺動プレート34に揺動アーム35を取り付けた状態を示す図である。図18は、ダイヤル錠3が解錠状態のときの揺動プレート34およびインナーホイール33の関係を示す図である。図19は、ダイヤル錠3が施錠状態のときの揺動プレート34およびインナーホイール33の関係を示す図である。
揺動プレート34は、梯子型のフレーム板状部材であり、ダイヤル31の外周部を部分的に通すためのダイヤル用穴部340が、ダイヤル31に対応する数だけ設けられている。また、揺動プレート34における長辺の一方には揺動軸部341が形成されている。揺動プレート34の揺動軸部341は、錠箱2に揺動自在に支持されている。揺動軸部341を含む一組の対向する長辺は、短辺方向に沿った連結部材342によって互いに連結されている。各連結部材342の中央部上面には、他の部分よりも隆起した凸部342aが形成されている。揺動プレート34のうち凸部342aが形成されている方を上面と呼び、反対側を下面と呼ぶ。また、連結部材342における各凸部342aには、ダイヤル用穴部340側に向かって連結部材342の側方に突出する突出片342bが設けられている。この突出片342bは、インナーホイール33に形成された係合孔332に係脱自在となっている。
揺動アーム35は、揺動プレート34における揺動軸部341の端部341aに軸支されており、揺動軸部341(端部341a)を揺動軸として揺動自在である。本実施形態においては、揺動アーム35が本発明に係る揺動部材に相当する。揺動アーム35に隣接する連結部材342の上面には、アームスプリング344を装着する押さえ片345が突設されている。押さえ片345は略L字形状を有しており、アームスプリング344が縮んだ状態で、揺動アーム35に隣接する連結部材342の上面と押さえ片345との間に挟持されている。これにより、揺動アーム35は、アームスプリング344によって揺動プレート34の上面から下面の方向に向かって付勢される。
揺動アーム35の上面には、揺動アーム35に隣接する連結部材342側に向かって突出する突出片351が設けられている。揺動アーム35がアームスプリング344によって付勢された際、揺動アーム35の上面が隣接する連結部材342の上面と面一になった時点で、突出片351が当該連結部材342の上面に当接し、それ以上の揺動プレート34の揺動が制限される。なお、揺動アーム35の上面には、アームスプリング344の半球状のずれ止めが形成されており、アームスプリング344が揺動アーム35の上面から外れることを抑制している。
図18および図19に示すように、揺動プレート34は、ダイヤル支持軸32の背面側、すなわち、ダイヤル支持軸32とリアケース22との間に配置されている。揺動プレート34が錠箱2内に組み込まれる際、揺動軸部341がダイヤル支持軸32と平行に配置される。また、揺動プレート34の凸部342aは、ダイヤル支持軸32のインナーホイール33に対向して配置されている。また、錠箱2内には、揺動プレート34をフロントケース21側に向けて付勢するスプリング36が設置されており、このスプリング36の付勢力によって揺動プレート34はインナーホイール33に接近する方向に付勢されている。これにより、揺動プレート34は、揺動軸部341を中心に揺動可能に錠箱2内に支持され、且つ、上記スプリング36の付勢力によってインナーホイール33に押し付けられる。
インナーホイール33は、その周方向の一部に凹部331が形成されている。各インナーホイール33に対応するダイヤル31(窓孔211に表示する数字)が解錠符号と一致している状態、すなわちダイヤル31の配列が解錠符号に揃えられている状態のときに、揺動プレート34における連結部材342の凸部342aが、対応するインナーホイール33の凹部331に嵌り込むように、インナーホイール33およびダイヤル31のダイヤ
ル支持軸32に対する相対回転角度が調節されている。一方、解錠符号に揃っていたダイヤル31の符号列が崩されると、少なくとも何れかのダイヤル31に対応するインナーホイール33の凹部331に没入していた揺動プレート34の凸部342aが凹部331から退出する。そうすると、解錠符号に一致しなくなったダイヤル31に対応するインナーホイール33の凹部331と、揺動プレート34の凸部342aとの嵌め合い状態が解除される。ここで、図18に示した状態、すなわちインナーホイール33の凹部331と連結部材342の凸部342aとが嵌め合い状態にあるときの揺動プレート34の姿勢(揺動角度)を「第1姿勢」と定義する。そうすると、解錠符号に揃っていたダイヤル31の符号列が崩された場合には、揺動プレート34がインナーホイール33によって錠前装置1の背面側に押し込まれることで「第2姿勢」に変更される。この「第2姿勢」は、「第1姿勢」に比べて、揺動プレート34がリアケース22に接近している姿勢といえる。「第2姿勢」における揺動プレート34は、図19に示すように傾斜した姿勢をとり、揺動軸部341の反対側に位置する自由端343が揺動軸部341よりもリアケース22に接近している。また、図19に示すように、インナーホイール33には、揺動プレート34における連結部材342の各凸部342aに形成された突出片342bを係脱自在とする係合孔332が貫通孔として設けられている。なお、図18においては、揺動プレート34における各突出片342bおよびインナーホイール33における各係合孔332は凸部342aによって隠れており、図示されていないが、ダイヤル錠3が解錠された状態において、各連結部材342における突出片342bとインナーホイール33側の係合孔332がダイヤル支持軸32の軸方向に直交する平面において位置がちょうど重なるようになっている。
錠前装置1のリアケース22には、切り替えスイッチ14が設けられている。この切り替えスイッチ14を操作することで、解錠符号の設定モードを自由設定方式と固定方式との何れかを選択して切り替えることができる。自由設定方式とは、使用者が操作つまみ6を介した操作部60の開閉操作を行う毎に解錠符号の設定を変更可能な方式である。一方、固定方式とは、操作部60の操作状態に関わらず解錠符号の設定を保持(固定)する方式である。以下では、錠前装置1が「自由設定方式」に切り替えられた状態を「自由設定方式使用時」と称し、「固定方式」に切り替えられた状態を「固定方式使用時」と称する。本実施形態においては、切り替えスイッチ14が本発明に係る切り替え手段に相当する。なお、解錠符号の設定モードを切り替えるための切り替えスイッチ14はリアケース22に設けられているため、錠前装置1が解錠され、ロッカー100の扉100aが開放された状態で切り替えスイッチ14の切り替え操作が可能となる。
切り替えスイッチ14は、例えばコインやマイナスドライバー等によって回動可能に、一文字型の溝140を有する。リアケース22の表面には、「自由設定」、「固定」と表記された目印マークが表示されている。一方、図4に示したように、スライドプレート23における後縁部には、切り替えスイッチ14の軸部141を挿通可能なロ字状のフレーム部231が設けられている。このフレーム部231によって囲まれた空間である角穴部232には、切り替えスイッチ14の軸部141が挿通されている。切り替えスイッチ14の軸部141は、図4に示すように略半円形状の断面を有しており、以下では「半円部」と呼ぶ。半円部141は、切り替えスイッチ14に連動して回動する。
図20には、切り替えスイッチ14を自由設定に位置合わせした状態が示されている。図21は、自由設定方式使用時における半円部141とフレーム部231との関係を示す図である。一方、上述した図4には、固定方式使用時における半円部141とフレーム部231との関係が示されている。自由設定方式使用時においては、スライドプレート23のフレーム部231が半円部141からの押圧を受けないように、半円部141とフレーム部231との相対関係が規定されている(図21を参照)。その結果、自由設定方式使用時であって、且つ、操作つまみ6が閉位置に合わせられている時を除いて、ダイヤル支
持軸32はシャフトスプリング37の付勢力によって、外筒41から離反する方向に軸本体部320の軸方向に沿って、所定の「離脱位置」までスライドする。
一方、固定方式使用時においては、スライドプレート23のフレーム部231が半円部141から、外筒41に接近する方向(上方)に押圧されるように、半円部141とフレーム部231との相対関係が規定されている(図4を参照)。ここで、ダイヤル支持軸32の第1腕部322は、スライドプレート23の係合部23cと係合しているため、スライドプレート23がスライドすると、ダイヤル支持軸32もスライドプレート23に連動する。その結果、固定方式使用時においては、ダイヤル支持軸32は、シャフトスプリング37の付勢力に抗して、外筒41に接近する方向に軸本体部320の軸方向に沿って、所定の「係合位置」までスライドする。なお、詳しくは後述するが、自由設定方式使用時であって、且つ、操作つまみ6が閉位置に合わせられている時は、ダイヤル支持軸32は上記「係合位置」に保持される。
図22は、固定方式使用時におけるダイヤル31とインナーホイール33との相対関係を示す図である。また、上述した図11には、自由設定方式使用時におけるダイヤル31とインナーホイール33との相対関係が示されている。ダイヤル錠3において、ダイヤル支持軸32(軸本体部320)に回動自在に嵌められているインナーホイール33およびダイヤル31の間にはこれらを係脱させる係脱手段が介在している。係脱手段は、例えば、インナーホイール33側に設けられる凸部332と、この凸部332を嵌合可能なダイヤル31側に設けられる凹部311との組み合わせによって実現されている(図8を参照)。自由設定方式使用時において操作つまみ6が閉位置から開位置に切り替えられると、シャフトスプリング37の反発力によってダイヤル支持軸32が「係合位置」から「離脱位置」までスライドする。シャフトスプリング37の反発力によってダイヤル支持軸32がスライドする際、軸本体部320の上端部321によってインナーホイール33が軸本体部320の下端側に向かって押圧されるため、ダイヤル支持軸32に連動してスライドする。一方、ダイヤル31は、部分的に揺動プレート34のダイヤル用穴部340や窓孔211に嵌め込まれているため、ダイヤル支持軸32のスライドには連動しない。その結果、ダイヤル支持軸32が「係合位置」から「離脱位置」までスライドする際に、インナーホイール33およびダイヤル31が軸本体部320の軸方向に沿って離反し、凸部332と凹部311との嵌め合い状態が解除される。
上記のように、各インナーホイール33に対応するダイヤル31が解錠符号と一致している状態のときに、揺動プレート34における連結部材342の凸部342aが、対応するインナーホイール33の凹部331に嵌り込むように、インナーホイール33およびダイヤル31のダイヤル支持軸32に対する相対回転角度が調節されている。これに対して、インナーホイール33およびダイヤル31の嵌め合い状態が解除されると、インナーホイール33とは独立してダイヤル31を回転させることができる。この状態では、ダイヤル31を回すことで、インナーホイール33およびダイヤル31の相対関係を変更することができ、その結果、インナーホイール33の凹部331に揺動プレート34の凸部342aが嵌り込むときのダイヤル31の符号を変更することができる。これは、ダイヤル31の解錠符号を変更することに他ならない。このようにして、使用者は、自由設定方式使用時であって、且つ、操作つまみ6が閉位置に合わせられている時に、次回の施錠時において解錠符号として設定したい符号列にダイヤル31を合わせることで、新たな解錠符号を設定することができる。
ここで、ダイヤル支持軸32のスライド動作時に伴う、揺動プレート34に形成された突出片342bとインナーホイール33に形成された係合孔33との係脱状態について説明する。図23は、揺動プレート34に形成された突出片342bとインナーホイール33に形成された係合孔332とのダイヤル支持軸32の軸方向に関する相対位置関係を示
す図である。(a)は、ダイヤル支持軸32が係合位置にあるときの突出片342bと係合孔332との関係を示し、(b)は、ダイヤル支持軸32が離脱位置にあるときの突出片342bと係合孔332との関係を示している。なお、図中には、ダイヤル支持軸32の軸方向を図示する。また、図中の白抜き矢印は、ダイヤル支持軸32に連動するインナーホイール33のスライド方向を示している。
そして、ダイヤル支持軸32が係合位置にあるときには、図23(a)に示すように、揺動プレート34に形成された突出片342bとインナーホイール33に形成された係合孔332とはダイヤル支持軸32の軸方向に沿った位置がずれており、嵌め合わされていない。つまり、揺動プレート34に形成された突出片342bからインナーホイール33に形成された係合孔332が離脱しており、双方の嵌合が解除された状態となる。これに対して、自由設定方式使用時に操作つまみ6が閉位置から開位置に切り替えられた際、ダイヤル支持軸32が「係合位置」から「離脱位置」までスライドすると、揺動プレート34に形成された突出片342bがインナーホイール33の係合孔332に接近する(図23(b)における白抜き矢印を参照)。そして、ダイヤル錠3が解錠された状態では、揺動プレート34の各連結部材342における突出片342bとインナーホイール33側の係合孔332とは、ダイヤル支持軸32の軸方向に直交する平面において互いに位置が重なっている。その結果、図23(b)に示すように、揺動プレート34に形成された突出片342bがインナーホイール33に形成された係合孔332に嵌り込み、双方が互いに係合する。その結果、インナーホイール33が回転不能に固定される。つまり、この状態では、インナーホイール33は、ダイヤル31に対しては係合が解除される一方で、ダイヤル支持軸32に対しては相対回転位置が固定された状態となる。これによれば、使用者が、新たな解錠符号を設定するためにダイヤル31の回転操作を行う際に、インナーホイール33が共回りすることを、より確実に抑制できる。これにより、ダイヤル支持軸32に対するインナーホイール33の相対回転角度が変更されることがない。
使用者は、ダイヤル31の操作によって新たに任意の解錠符号を設定した後、操作つまみ6の閉操作を行う。なお、ダイヤル錠3において、インナーホイール33およびダイヤル31が係合されている状態のときに解錠符号の設定を保持(記憶)する。一方、インナーホイール33およびダイヤル31の係合が解除された時に、保持(記憶)しておいた解錠符号の設定が解除される。
図24は、ディスク部材10の正面図である。ディスク部材10は、円周方向の一部に、他の領域よりも直径が拡大されている略扇形の扇部101を有している。ディスク部材10は、外筒41と同心状に連結され、外筒41と一体に回動自在である。扇部101は、回動中心からの距離(径)が異なる第1外周部101aおよび第2外周部101bを有し、これらの境界位置には概ね径方向に延在する段差部101cが形成されている。扇部101の正面側には、前述したダイヤル支持軸32における上端部321に形成された突起部321bを受け入れると共に突起部321bをガイドするための突起収容凹部102が形成されている。以下では、扇部101の正面、すなわち突起収容凹部102が形成される方の面を「凹部形成面103」と呼ぶ。図10に示されるように、扇部101における凹部形成面103は、揺動アーム35および揺動プレート34に対向して配置されている。
図24に示すように、突起収容凹部102における平面的な形状は、102a〜102fに示す内壁面によって画定されている。以下では、符号102a〜102fを、第1径方向面、第1内周面、接続傾斜面、第2内周面、第2径方向面、第3内周面と呼ぶ。第1径方向面102aおよび第2径方向面102eは、ディスク部材10の回動中心を基準として径方向に延在する内壁面である。第1径方向面102aは、第2径方向面102eに比べて径方向の幅寸法が小さい。また、第1内周面102b、第2内周面102d、第3
内周面102fは、ディスク部材10の回動中心を基準として周方向に延在する内壁面である。ディスク部材10の回動中心から各内周面までの離間寸法は、第3内周面102fが最も小さく、第2内周面102dが最も大きい。また、第1内周面102bは、第2内周面102dに比べてディスク部材10の回動中心からの離間寸法は小さくなっており、第1内周面102bおよび第2内周面102dを接続傾斜面102cが緩やかに接続している。
図25は、自由設定方式使用時であって且つ操作つまみ6が開位置に合わせられている時のディスク部材10の突起収容凹部102とダイヤル支持軸32の突起部321bとの相対関係を示す図である。図示のように、この状態においては、突起収容凹部102において、第1内周面102bよりも幅が広い第2内周面102dに当接した状態で突起部321bが位置決めされている。この状態から錠前装置1の施錠を行う場合、使用者が解錠符号を任意の符号列に設定後、操作つまみ6の閉操作を行う。操作つまみ6の閉操作が行われると、操作部60および外筒41と連動してディスク部材10が回動するため、ディスク部材10の突起収容凹部102とダイヤル支持軸32の突起部321bとの相対関係が図26に示す状態に変更される。図26においては、ダイヤル支持軸32の突起部321bは、突起収容凹部102において第2内周面102dより幅が狭い第1内周面102bに当接した状態で位置決めされている。
以上のように、自由設定方式使用時においては、錠前装置1を施錠する際に操作つまみ6の閉操作を行う場合、突起収容凹部102における第2内周面102d、接続傾斜面102c、第1内周面102bに沿って突起部321bが摺動する。その際、ディスク部材10の回動中心から第2内周面102dまでの距離に比べて、当該回動中心から第1内周面102bまでの距離が相対的に小さいため、操作つまみ6が開位置から閉位置に移行する過程で、ダイヤル支持軸32が外筒41に接近する方向に引っ張られる。その結果、ダイヤル支持軸32は「離脱位置」から「係合位置」までスライドする。これにより、インナーホイール33の凸部332とダイヤル31の凹部311が噛み合うようになり、インナーホイール33およびダイヤル31が再び係合されるようになる。これにより、操作つまみ6の閉操作を行う直前におけるダイヤル31の符号列が新たな解錠符号として保持(記憶)される。また、ダイヤル支持軸32は「離脱位置」から「係合位置」にスライドすると、図23(a)に示すように、インナーホイール33が揺動プレート34に形成された突出片342bから離反する方向に移動し(図23(a)における白抜き矢印を参照)、揺動プレート34の突出片342bとインナーホイール33の係合孔332との嵌め合いが解除される。また、操作つまみ6が閉位置に切り替えられることで、ストッパー5がロッカー100の枠体側の受け具と係合するようになり、扉100aの開閉が規制された状態となる。ここで、ディスク部材10の回動中心からの距離が互いに異なる突起収容凹部102の第1内周面102bと第2内周面102dとは、本発明に係る第1周方向面と第2周方向面とに相当する。また、本実施形態においては接続傾斜面102c、突起収容凹部102、突起部321bが、本発明に係る接続面、係合凹部、被係合部に夫々相当する。
なお、操作つまみ6の閉操作後において、使用者は、ダイヤル31を適当に回し、ダイヤル31の符号列を解錠番号から崩す。ここで、ダイヤル支持軸32は既に「離脱位置」から「係合位置」にスライドされているため、図23(a)に示すように、揺動プレート34の突出片342bとインナーホイール33の係合孔332との嵌め合いが解除されている。そのため、ダイヤル支持軸32に対するインナーホイール33の相対回転位置の変更が許容される状態となり、ダイヤル31に係合状態にあるインナーホイール33をダイヤル31に連動させることができる。これにより、図19に示したように、インナーホイール33の凹部331と揺動プレート34(連結部材342)の凸部342aとの嵌め合い状態が解除される。ここで、図27は、操作つまみ6が閉位置にある時のディスク部材
10における扇部101と揺動アーム35との相対関係について示す図である。図示のように、操作つまみ6が閉位置に切り替えられた状態では、ディスク部材10における扇部101と揺動アーム35との前後の重なり合いが解除されている。したがって、上記のようにダイヤル31の符号列が解錠番号から崩されることで、揺動プレート34および揺動アーム35は一体となって第1姿勢から第2姿勢に移行し、図28に示す状態となる。その結果、ディスク部材10の扇部101と揺動アーム35とが同一面内に位置するようになり、図27に示されるように、揺動アーム35の先端部352と扇部101の段差部101cとが係合する。これにより、操作つまみ6の開操作が禁止される。
なお、錠前装置1を解錠する場合には、使用者は、ダイヤル31の符号列を設定した解錠符号に揃える。そうすると、各ダイヤル31に対応するインナーホイール33の凹部331と揺動プレート34の凸部342とが嵌め合い状態となり、揺動プレート34が第1姿勢に戻る(図18を参照)。そして、揺動プレート34に追従するように、揺動アーム35も第2姿勢から第1姿勢に移行する。これにより、揺動アーム35の先端部352と扇部101の段差部101cとの係合が解除される。その結果、操作つまみ6の開操作ができるようになる。そして、操作つまみ6が閉位置から開位置に切り替えられることでロッカー100の扉100aの開閉が可能となる。
なお、錠前装置1の解錠時に操作つまみ6の開操作が行われると、図26に示す状態から図25に示す状態に移行する。つまり、操作つまみ6が閉位置から開位置に移行する過程で、ダイヤル支持軸32の突起部321bが突起収容凹部102における第1内周面102b、接続傾斜面102c、第2内周面102dに沿って順次摺動する。そして、図25に示す状態では、突起部321bが第2内周面102dに係合してダイヤル支持軸32が外筒41に接近する方向に引っ張られることはない。このため、シャフトスプリング37の付勢力によって、ダイヤル支持軸32が「係合位置」から「離脱位置」までスライドする。その結果、インナーホイール33およびダイヤル31の係合が解除されるため、保持(記憶)されていた解錠符号の設定が解除される。よって、使用者は、新たに任意の解錠符号を設定することができる。また、揺動プレート34に形成された突出片342bがインナーホイール33に形成された係合孔332に嵌合されるため、インナーホイール33の回転が禁止され、新たな解錠符号の設定時にインナーホイール33の位置がずれることが抑制される。
次に、固定方式使用時における錠前装置1の動作内容について説明する。ダイヤル錠3が解錠された状態で、切り替えスイッチ14を約90°回転させ、自由設定位置から固定位置に切り替えると、上記のように、固定方式使用時においては、ダイヤル支持軸32はシャフトスプリング37の付勢力に抗して、「離脱位置」から「係合位置」までスライドする。その結果、ダイヤル31側の凹部311とインナーホイール33側の凸部332とが噛み合うことによって、ダイヤル31およびインナーホイール33が係合し、互いに連結される(図22を参照)。その結果、操作部60の操作状態に関わらず解錠符号の設定が保持(固定)されるようになる。また、同時に、図23(a)に示したように、揺動プレート34の突出片342bとインナーホイール33の係合孔332との嵌め合いが解除されるようになる。なお、図29および図30は、固定方式使用時において操作つまみ6が開位置にある時のディスク部材10の突起収容凹部102とダイヤル支持軸32の突起部321bとの相対関係を示す図である。この状態では、図示のように、ダイヤル支持軸32の突起部321bは、突起収容凹部102における第3内周面102fに近接した位置に位置決めされている。
固定方式使用時においては、錠前装置1は、ダイヤル錠3のダイヤル31の符号列を解錠符号から崩した状態においても操作つまみ6の閉操作を行うことができる。まず、ダイヤル31の符号列が解錠符号に揃っている状態からの施錠操作、つまり、操作つまみ6の
閉操作を行う場合を説明する。ダイヤル31の符号列が解錠符号に揃っている場合、図18に示したように、全てのダイヤル31に対応するインナーホイール33の凹部331と揺動プレート34における連結部材342の凸部342aが嵌め合い状態となり、揺動プレート34の姿勢が第1姿勢に保持される。また、揺動アーム35の突出片351が揺動プレート34(連結部材342)の上面に当接した時点でそれ以上の揺動が規制されるため、揺動アーム35も揺動プレート34と同じく第1姿勢に保持される。この状態から操作つまみ6の閉操作が行われると、操作部60、外筒41、内筒42、およびストッパー5が一体となって回動する。そして、操作つまみ6が閉位置に切り替えられると、ストッパー5がロッカー100の枠体側の受け具と係合することで、扉100aの開閉を規制することができる。その後は、自由設定方式使用時の場合と同様、ダイヤル31の符号列を解錠番号から崩せばよい。その結果、揺動プレート34および揺動アーム35が第1姿勢から第2姿勢に移行し、揺動アーム35の先端部352が扇部101の段差部101cに係止される結果、操作つまみ6の開操作が禁止されるようになる。
次に、ダイヤルの符号列が解錠符号から崩された状態での閉操作について説明する。この場合、使用者は、解錠されている状態のダイヤル錠3に対して、操作つまみ6を開位置に保持した状態でダイヤル31の符号列を解錠符号から崩す。その結果、図19に示した様に、インナーホイール33の凹部331と揺動プレート34(連結部材342)の凸部342aとの嵌め合い状態が解除され、揺動プレート34は第1姿勢から第2姿勢に移行する。ここで、操作つまみ6は開位置にあるため、図31に示すように、ディスク部材10における扇部101と揺動アーム35とが前後に重なり合っている。そのため、アームスプリング344によって付勢される揺動アーム35が、ディスク部材10の凹部形成面103に当接する。これにより、揺動アーム35が第1姿勢から第2姿勢に移行することが規制され、揺動アーム35は第1姿勢のまま維持される。その結果、図32に示すように、揺動プレート34は第1姿勢から第2姿勢に移行するが、揺動アーム35は第1姿勢に維持される。
図31、図32に示す状態から操作つまみ6の閉操作が行われると、揺動アーム35がディスク部材10における扇部101の凹部形成面103を滑動(スライド)する。このため、ダイヤル錠3のダイヤル31が解錠符号に揃っていなくても、操作つまみ6の閉操作を行うことが可能となる。つまり、解錠符号を非表示の状態でも、操作つまみ6の閉操作を行うことができる。
そして、操作つまみ6が閉位置まで移動すると、図27に示した位置まで扇部101が移動する。そうすると、扇部101と揺動アーム35との重なり状態が解除され、アームスプリング344の付勢力によって、第1姿勢にある揺動アーム35が揺動プレート34と同じ揺動角度まで押し込まれる。これにより、図28に示すように、揺動アーム35が、揺動プレート34と同様の第2姿勢に変更される。その結果、ディスク部材10の扇部101と揺動アーム35とが同一面内に位置するようになり、揺動アーム35の先端部352と扇部101の段差部101cとが係合する。これにより、操作つまみ6が閉位置まで移動して施錠対象物の施錠が行われた後は、操作つまみ6を開方向に回転させようとしても、揺動アーム35の先端部352が扇部101の段差部101cに係止され、操作つまみ6の開操作が禁止される。本実施形態においては、揺動プレート34、揺動アーム35、ディスク部材10、インナーホイール33等を含んで本発明に係る規制手段が構成される。また、本実施形態においては、ディスク部材10の扇部101における凹部形成面103が本発明に係る揺動規制部に相当し、段差部101cが本発明に係る回動規制部に相当する。また、ディスク部材10が本発明に係る回動部材に相当する。
固定方式使用時において錠前装置1を解錠する場合、使用者は、自由設定方式使用時と同様に、ダイヤル31の符号列を設定した解錠符号に揃える。そうすると、各ダイヤル3
1に対応するインナーホイール33の凹部331と揺動プレート34の凸部342とが嵌め合い状態となり、揺動プレート34が第1姿勢に戻る(図18を参照)。そして、揺動プレート34に追従するように、揺動アーム35も第2姿勢から第1姿勢に移行することで、揺動アーム35の先端部352と扇部101の段差部101cとの係合が解除される。その結果、操作つまみ6の開操作ができるようになり、ロッカー100の扉100aの開閉が可能となる。なお、固定方式使用時においては、操作つまみ6の操作状態に関わらず、ダイヤル支持軸32は「係合位置」に保持され、インナーホイール33およびダイヤル31が係合することによって、錠前装置1が解錠された後も解錠番号の設定は保持される。
以上のように、本実施形態における錠前装置1は、切り替えスイッチ14の操作によって、解錠符号の設定モードを自由設定方式と固定方式との何れかを選択して切り替えることができる。また、固定方式使用時においては、ダイヤル31の符号列を解錠符号に揃えた状態でなくても、すなわち窓孔に解錠符号を表示させなくても、操作つまみ6の閉操作を行うことができる。これにより、施錠時に他人に解錠符号を覗き見されることもなく、これによって、他人に不正に解錠される虞がない。また、本実施形態における錠前装置1は、上記の通り解錠符号の設定モードを切り替える機能や、解錠符号を表示することなく操作つまみ6の閉操作を行う機能などのように多機能化を実現する。更に、本実施形態においては、ディスク部材10の扇部101という単一の部材に、ダイヤル31を解錠符号から崩した状態での操作つまみ6の閉操作を可能とする機能と、自由設定方式使用時において解錠符号の設定を変更する機能といったように、複数の機能を付与するようにした。これにより、錠前装置1の多機能化と部品数の低減を両立することができる。
また、ディスク部材10における扇部101の突起収容凹部102(係合凹部)は、ディスク部材10の回動中心からの距離が異なる第1内周面102b(第1周方向面)と第2内周面102d(第2周方向面)とを有し、操作部60(操作つまみ6)の開閉操作に連動してダイヤル支持軸32の突起部321b(被係合部)と係合する部位を第1内周面102b(第1周方向面)と第2内周面102d(第2周方向面)との間で切り替えるようにしたため、ダイヤル支持軸32を好適に往復動させることができる。つまり、ダイヤル支持軸32に支持されているダイヤル31とインナーホイール33との係合およびその解除を精度よく切り替えることができ、解錠符号の設定の保持およびその解除を好適に行うことができる。また、突起収容凹部102(係合凹部)は、第1内周面102b(第1周方向面)と第2内周面102d(第2周方向面)を緩やかに接続する接続傾斜面102c(接続面)を有しているため、操作つまみ6の開閉操作時に、円滑にダイヤル支持軸32をスライドさせることができる。つまり、ダイヤル支持軸32を「係合位置」から「離脱位置」に、あるいはその逆に円滑に切り替えることができる。
なお、本実施形態における錠前装置1は、シリンダー錠4を有しているため、ダイヤル錠3の解錠符号がわからなくなった場合等においても、強制的にダイヤル錠3を解錠することができる。この場合、上記のように、シリンダー錠4(内筒42)の鍵穴420に解錠鍵を挿入することで外筒41に対して内筒42を回動させることができる。これにより、ドライブシャフト11を介して内筒42に連結されたストッパー5を施錠位置から解錠位置に操作することができる。また、本実施形態におけるシリンダー錠4は、内筒交換鍵を鍵穴420に挿入することで、外筒41から内筒42を引き抜くことができる内筒交換式のシリンダー錠である。但し、本実施形態における錠前装置1において、シリンダー錠4は必須の構成ではなく、省略することも可能である。