以下に図面を参照して、この発明を実施するための形態を例示的に詳しく説明する。なお、本実施の形態に記載されている構成要素の寸法、材質、形状、その相対配置等は、特に特定的な記載がない限りは、発明の技術的範囲をそれらのみに限定する趣旨のものではない。
<全体構成>
図1は、実施形態に係る機械式のプッシュボタン錠(以下、単に「ボタン錠」という)100の正面図(前面図)である。図2は、実施形態に係るボタン錠100の背面図(後面図)である。図3、図4は、ボタン錠100の分解斜視図である。ボタン錠100は、当該ボタン錠100を構成する各種部品を収容、保護するハウジングとしてアッパーケース2およびロアケース3等を有する。アッパーケース2およびロアケース3は、互いに嵌め合わされることで、ハウジングを構成している。なお、ハウジングの構造、形状等は、種々の変更を加えることができる。また、図1および図2に示すように、アッパーケース2の外面にはフロントパネル21が装着され、ロアケース3の外面にはリアパネル30が装着されている。図5は、フロントパネル21を取り外した状態のボタン錠100の斜視図である。
アッパーケース2に装着されたフロントパネル21は、アッパーケース2の正面側を覆っている。本実施形態では、ボタン錠100における上下、左右方向を図1に示すように定義する。また、上下、左右方向に直交する方向を前後方向として定義し、フロントパネル21側が前方であり、ロアケース3側が後方として扱うものとする。但し、ボタン錠100の上下、左右、前後方向は、外部的な参照基準に対する位置関係を特定するものではなく、ボタン錠100における各部同士の相対的な位置関係を特定しているに過ぎない。
ボタン錠100のフロントパネル21には、複数の押しボタン22、クリアボタン23、操作摘み4、表示窓24等が設けられている。また、フロントパネル21における各押しボタン22の近傍には、押しボタン22に対応する符号(数字、記号、文字等を含む)が印字、刻印などされている。ボタン錠100は、11個の押しボタン22を有しており、0〜9、および※マークが対応する押しボタン22の隣に印字されている。但し、ボタン錠100が備える押しボタン22の個数や、フロントパネル21に印字する符号の種類はボタン錠100の仕様に応じて変更できる。なお、フロントパネル21には、押しボタン22やクリアボタン23等を出没可能とするために適した形状および大きさを有するボタン用開口部211が設けられており、このボタン用開口部211を通じて押しボタン22等が出没可能となっている。クリアボタン23は、全ての押しボタン22を一旦クリアするためのボタンである。
押しボタン22は、フロントパネル21に形成されたボタン用開口部211を通じて、ハウジングの内外に進退(出没)自在となっている。後述するように、ボタン錠100は、解錠符号(いわゆる暗証番号)に則した押しボタン22の押動操作がなされることによ
って解錠することができる。ボタン錠100が解錠状態にある場合、使用者(扱い者)は、操作摘み4を回動させ、ボタン錠100のストッパーSPの開閉操作を行うことができる。ストッパーSPは、ハウジングに取り付けられ、施錠対象物の相手側部材に係脱可能である。操作摘み4は、ストッパーSPに連結されており、操作摘み4を回動させることでストッパーSPの姿勢を変更できる。使用者は、操作摘み4の位置合わせマークを、OPEN位置(開位置)25と、CLOSE位置(閉位置)26の何れかに合わせることで、施錠対象物の相手側部材に対するストッパーSPの係止、離脱状態を切り替える切り替え操作を行うことができる。
ボタン錠100が施錠状態にある場合、操作摘み4の回動操作が規制される。表示窓24は、操作摘み4が、OPEN位置とCLOSE位置との何れの位置に合わせられているかを表示するものである。
通常使用時において、ボタン錠100の施錠および解錠操作(以下、あわせて「施錠・解錠操作」ともいう。)は、使用者が押しボタン22を解錠符号に合わせて押動することによって行われる。例えば、解錠符号が「1246」である場合、フロントパネル21に表示されている符号のうち、解錠符号に該当する「1」、「2」、「4」、「6」に対応する押しボタン22のみが押下され、かつ、それ以外の押しボタン22が押下されない場合に、ボタン錠100が解錠される。この場合、上記のように、操作摘み4を回動させることによる開閉操作が可能となる。ここでいう操作摘み4の開閉操作とは、操作摘み4の位置をOPEN位置25からCLOSE位置26、或いはCLOSE位置26からOPEN位置25へと切り替える操作をいう。以下では、前者の操作を「閉操作」と称し、後者の操作を「開操作」と称する。また、実施形態に係るボタン錠100は、いわゆるワンタイム方式を採用しており、ボタン錠100を施錠する際にはその都度、使用者は新たな暗証番号を設定するために任意の押しボタン22を押してから操作摘み4を閉操作することで施錠される構造となっている。
<シリンダー錠機構>
ボタン錠100は、使用者が解錠符号を忘れた場合、ボタン錠100を強制的に解錠するためのシリンダー錠機構(以下、「シリンダー」という)5を備える(図6を参照)。シリンダー5は、操作摘み4とストッパーSPとの間に介在し、所定の解錠鍵を使用することで、操作摘み4の動作の規制を強制的に解除可能である。
図6は、シリンダー5における軸線方向に沿った縦断面を通るボタン錠100の断面図である。シリンダー5は、その軸線方向に沿って形成された鍵穴51を有する錠機構であり、外筒6の内側に回動自在に保持されている。外筒6は、アッパーケース2の一部として形成される円筒スリーブ部27の内側に配置されている。円筒スリーブ部27の前端部には、インジケータ13が嵌め込まれている。シリンダー5の後端部には駆動シャフト12が連結されており、この駆動シャフト12を介してストッパーSPがシリンダー5に取り付けられている。言い換えると、ストッパーSPは、駆動シャフト12を介してシリンダー5と一体に固定されている。また、図1に示すように、シリンダー5および外筒6の前端側は、操作摘み4によって覆われている。外筒6は、アッパーケース2の円筒スリーブ部27に対して回動自在に取り付けられている。また、外筒6の内周側には、シリンダー5が回動自在かつ摺動自在に装着されている。但し、通常時においては、外筒6に対してシリンダー5は係止されており、シリンダー5の鍵穴51に後述する非常解錠鍵またはシリンダー交換鍵が挿入された場合を除いて、外筒6に対するシリンダー5の相対回動および摺動は規制(禁止)されるように構成されている。非常解錠鍵によるシリンダー錠の非常解錠、およびシリンダー交換鍵によるシリンダー交換に関する技術は公知であるため、ここでの詳しい説明は割愛する。
<ボタン錠機構>
次に、ボタン錠100におけるボタン錠機構について詳しく説明する。図7は、ボタン錠100の断面図である。図8および図9は、実施形態に係るボタン錠100の内部構造を示す斜視図である。図8、図9において、ボタン錠100のアッパーケース2およびロアケース3の図示を省略している。また、図8および図9は、ボタン錠100が解錠された状態を示している。
ボタン錠100におけるハウジング内部には、アッパーケース2側からガイドプレート7、ミドルプレート8、ロッドリターンプレート9、チルトプレート10が、これらの順に並んで配置されている。これら各プレート部材は、ボタン錠100の平面方向に沿って互いに平行に配置されている。詳しくは後述するが、ミドルプレート8は、アッパーケース2に固定されており、ハウジングの内部を2つの空間に分割している。以下、ハウジング内部のうち、ミドルプレート8よりも前方、すなわちミドルプレート8とアッパーケース2によって画定される収容空間を第1収容部と称する。また、ハウジング内部のうち、ミドルプレート8よりも後方、すなわちミドルプレート8とロアケース3によって画定される収容空間を第2収容部と称する。図7に示すように、ガイドプレート7は第1収容部内に収容され、ロッドリターンプレート9およびチルトプレート10が第2収容部内に収容されている。
[操作用ロッド]
図7に示すように、ボタン錠100のハウジング内部には、複数の操作用ロッド32がボタン錠100の前後方向に沿って延設されている。操作用ロッド32は、アッパーケース2に設けられた挿通孔に挿通されており、頭部側がアッパーケース2とフロントパネル21との間の空間に突出した状態で配置されている。
図10は、ボタン錠100の操作用ロッド32を示す図である。操作用ロッド32は、長手方向の一端側から胴部本体321、首部322および頭部323を有している。操作用ロッド32における胴部本体321は略四角柱形状を有している。一方、首部322および頭部323は略円柱形状を有し、これらは胴部本体321に比べて横断面が小さい。操作用ロッド32は、アッパーケース2のロッド挿通孔31に対して、首部322および頭部323を挿通可能となっているが、胴部本体321を挿通させることはできないようになっている。また、操作用ロッド32における首部322および頭部323の境界部分には、括れ形状を有するくびれ部が形成されている。
操作用ロッド32は、頭部323を、アッパーケース2の内面側からロッド挿通孔31を挿通させた状態で、ロッド保持用のロッドスプリング324がアッパーケース2の前壁2aと操作用ロッド32のくびれ部との間に介装されている。ロッドスプリング324は、アッパーケース2に対して、操作用ロッド32を引き抜く方向に弾性力を作用させている。また、図7に示すように、各操作用ロッド32の頭部323には押しボタン22が位置付けられている。また、操作用ロッド32における胴部本体321の後端には、溝部325が設けられている。溝部325の溝底は、操作用ロッド32の軸方向に対して傾斜した傾斜面325aとして形成されており、後述するチルトプレート10の傾斜突部102と係合可能となっている。
また、図10に示すように、操作用ロッド32の胴部本体321には、複数対の凹部が設けられている。符号321a,321aは第1凹部対、符号321b,321bは第2凹部対である。第1凹部対321a,321aおよび第2凹部対321b,321bは、胴部本体321の底面と側面との境界をなす角部に形成されており、胴部本体321の軸方向(長手方向)に関しては、第1凹部対321a,321aに比べて第2凹部対321b,321bの方が内側に形成されている。また、第1凹部対321a,321aと第2
凹部対321b,321bの形状および大きさは同等である。
更に、操作用ロッド32の胴部本体321には、第3凹部対321c,321c、および第4凹部対321d,321dが設けられている。第3凹部対321c,321cおよび第4凹部対321d,321dも、第1凹部対321a,321aおよび第2凹部対321b,321bと同様に、胴部本体321の底面と側面との境界をなす角部に形成されている。操作用ロッド32における胴部本体321の軸方向において、第3凹部対321c,321cは第2凹部対321b,321bよりも前端側に配置され、第4凹部対321d,321dは更に第3凹部対321c,321cよりも前端側に配置されている。なお、第3凹部対321c,321cと第4凹部対321d,321dの形状および大きさは同等である。
更に、操作用ロッド32の胴部本体321には、第1凸部対321e,321e、第2凸部対321f,321f、第3凸部対321g,321gが設けられている。第1凸部対321e,321e、第2凸部対321f,321f、第3凸部対321g,321gは、胴部本体321の上面と側面との境界をなす角部に形成されており、胴部本体321の後端側からこれらの順に配置されている。第1凸部対321e,321e、第2凸部対321f,321f、第3凸部対321g,321gの形状および大きさは同等である。
図11は、ボタン錠100の操作用ロッド32と押しボタン22との相対関係を示す図である。押しボタン22は、フロントパネル21に形成されたボタン用開口部211に比べて断面積が小さなボタン部221と、ボタン用開口部211に比べて断面積が大きなベース部222とを有する。押しボタン22のベース部222は、フロントパネル21の裏側に配置されており、押しボタン22がフロントパネル21のボタン用開口部211から抜け落ちることを防止している。また、押しボタン22のベース部222の裏側には、ボタンスプリング223が装着されている。このボタンスプリング223は、押しボタン22のベース部222とアッパーケース2との間に縮んだ状態で挟まれており、押しボタン22を、フロントパネル21の前方側に突出させる方向に押圧している。なお、図11において、ロッドスプリング324の図示を省略している。
以上のように、ボタン錠100における押しボタン22は、ボタンスプリング223によってボタン用開口部211から押し出される方向に常に押圧されている。また、操作用ロッド32は、ロッドスプリング324によって、ロッド挿通孔31から押し出される方向に常に押圧されている。使用者がボタンスプリング223の付勢力に抗して押しボタン22を押動した場合、押しボタン22のベース部222が操作用ロッド32の頭部323をハウジング内部側に押し込む結果、押しボタン22の押動操作に連動して操作用ロッド32も軸方向に変位することとなる。その後、使用者の指を押しボタン22から離すと、ボタンスプリング223の弾性力によって、押しボタン22が図7に示す初期位置まで戻される。なお、押しボタン22の初期位置とは、図7に示すように、押しボタン22がハウジング内に埋没していない位置をいう。
次に、操作用ロッド32に対して着脱自在に装着される可動ブロック33について説明する。操作用ロッド32における第3凹部対321c,321c、第4凹部対321d,321d、第1凸部対321e,321e、第2凸部対321f,321f、第3凸部対321g,321gは、図3、4等に示される可動ブロック33(可動体)を嵌め合いによって装着する際に用いられる。
図12は、操作用ロッド32に可動ブロック33が装着された状態を示す図である。図12において、押しボタン22の図示は省略している。図13は、可動ブロック33の斜視図である。ボタン錠100は、各操作用ロッド32に、1つの可動ブロック33が着脱
自在に装着されるように構成されている。図13に示すように、可動ブロック33は、略コの字形の形状を有する部材であり、底壁部331と、この底壁部331の両端から立設する一対の側壁部332を有する。
可動ブロック33における側壁部332の上端内側には、ブロック側第1凹部対333a,333a、ブロック側第2凹部対333b,333bが、所定間隔だけ離れて設けられている。また、ブロック側第1凹部対333a,333aおよびブロック側第2凹部対333b,333bの略中間位置であって、底壁部331における下端内側には、ブロック側凸部対333c,333cが設けられている。可動ブロック33のブロック側第1凹部対333a,333aは、操作用ロッド32における第1凸部対321e,321e又は第2凸部対321f,321fを選択的に受け入れ可能であり、ブロック側第2凹部対333b,333bは、操作用ロッド32における第2凸部対321f,321f又は第3凸部対321g,321gを選択的に受け入れ可能である。また、可動ブロック33のブロック側凸部対333c,333cは、操作用ロッド32における第3凹部対321c,321c又は第4凹部対321d,321dに対して選択的に嵌合可能である。
図12に示す例では、可動ブロック33におけるブロック側第1凹部対333a,333a、ブロック側第2凹部対333b,333b、ブロック側凸部対333c,333cがそれぞれ、操作用ロッド32における第1凸部対321e,321e、第2凸部対321f,321f、第3凹部対321c,321cと係合することで、操作用ロッド32の第1保持位置に可動ブロック33が保持されている。一方、操作用ロッド32は、図14に示すように、第1保持位置に比べて前端側(頭部323側)の第2保持位置に可動ブロック33を保持することが可能である。ここで、操作用ロッド32における第2保持位置は、第1保持位置に比べて、相対的に押しボタン22に近接した位置といえる。可動ブロック33が操作用ロッド32の第2保持位置に保持される場合、ブロック側第1凹部対333a,333a、ブロック側第2凹部対333b,333bがそれぞれ操作用ロッド32における第2凸部対321f,321f、第3凸部対321g,321gを受け入れ、ブロック側凸部対333c,333cが操作用ロッド32における第4凹部対321d,321dに嵌合された状態となる。以上のように、可動ブロック33は、操作用ロッド32に対して保持される位置を、第1保持位置と第2保持位置との間で選択的に切り替えることが可能である。また、可動ブロック33の底壁部331の外面には、略四角錐形状を有する凹部334が設けられている。
[ミドルプレート]
図15〜図17は、ミドルプレート8を説明する図である。図15は、ミドルプレート8の正面側の斜視図である。図16は、ミドルプレート8の正面図である。図17は、ミドルプレート8の背面側の斜視図である。ミドルプレート8は、アッパーケース2に固定された略矩形の平面形状を有するプレート部材である。ミドルプレート8には、可動ブロック33を収容可能なブロック収容凹部81が操作用ロッド32の数だけ設けられている。ブロック収容凹部81は、ハウジング内の第1収容部側に面して開口している。なお、ブロック収容凹部81は、可動ブロック33よりも僅かに大きな横断面を有している。また、ブロック収容凹部81の底部によって、当該ブロック収容凹部81に収容される可動ブロック33が支持されるようになっている。また、ブロック収容凹部81の底部にはロッド挿通孔81aが形成されており、このロッド挿通孔81aに対して各操作用ロッド32の胴部本体321を挿通させることができるようになっている。また、符号82は、検索ピン34をガイドするためのスリーブである。ミドルプレート8においてスリーブ82で囲まれた領域には、図3、4等に示す検索ピン34を挿通させるための貫通孔83が形成されている。
ミドルプレート8におけるロッド挿通孔81aの開口断面積は、可動ブロック33の断
面よりも小さく、操作用ロッド32の胴部本体321の断面よりも僅かに大きい。操作用ロッド32は、頭部323および首部322がアッパーケース2のロッド挿通孔31に挿通され、胴部本体321がミドルプレート8のロッド挿通孔81aに挿通される。その結果、操作用ロッド32は、ハウジングの第1収容部内で姿勢が斜めに傾くことがなく、図7に示したような正規の姿勢に保持される。
[ガイドプレート/スライドロッド/ロッドリターンプレート/チルトプレート]
図18は、ガイドプレート7の正面図である。図19は、ガイドプレート7の背面側の斜視図である。ガイドプレート7は、操作用ロッド32とこの操作用ロッド32に装着された可動ブロック33を収容する貫通孔71が設けられている。貫通孔71は、四角形と楕円形を合わせたような形状を有しており、ガイドプレート7を厚さ方向に貫通している。また、ガイドプレート7における貫通孔71は、ボタン錠100の押しボタン22に対応する位置に設けられている。以下では、ガイドプレート7における貫通孔71のうち、略四角形を呈する部分を「ブロック収容孔部71a」と称し、略楕円形を呈する部分を「検索ピン挿通孔部71b」と称する。図18、図19に示すように、ガイドプレート7のブロック収容孔部71aには、操作用ロッド32の胴部本体321に保持された可動ブロック33が収容されている。可動ブロック33は、ブロック収容孔部71aに収容された状態において、操作用ロッド32の軸方向に沿ってスライド自在である。一方、ガイドプレート7の検索ピン挿通孔部71bには、検索ピン34(図15等を参照)が挿通される。検索ピン34は、ボタン錠100の解錠符号(暗証番号)を検索するために使用される部材である。また、ガイドプレート7の側面には、後述するガイドプレート制御アーム14と係合する係合凹部76が設けられている。
図7に示すように、ガイドプレート7は、ミドルプレート8の前面に沿って配置されている。ミドルプレート8はアッパーケース2に固定されているのに対して、ガイドプレート7はハウジング内(第1収容部)における上下方向、すなわち操作用ロッド32のスライド方向と直交する方向にスライド可能に配置される。その際、ガイドプレート7は、ミドルプレート8に摺接した状態で、スライドするようになっている。なお、本実施形態において、操作用ロッド32のスライド方向は、外筒6およびシリンダー5の軸線方向と平行である。ガイドプレート7のブロック収容孔部71aのそれぞれがミドルプレート8のブロック収容凹部81と位置が合致した状態、すなわち対応するブロック収容孔部71aとブロック収容凹部81との位置が前後に重なった状態となるようなガイドプレート7の位置を「第1基準位置」として定義する。
図19に示すように、ガイドプレート7の背面(後面)側には、スライドロッド40を収容可能な収容凹部75が形成されている。収容凹部75内におけるスライドロッド40は、スライドロッド40の軸方向に沿って所定範囲内でスライド自在である。より具体的には、ガイドプレート7に対するスライドロッド40のスライド方向は、ハウジングの第1収容部内におけるガイドプレート7のスライド方向と一致する。図20には、ガイドプレート7の収容凹部75にスライドロッド40を収容した状態が示されている。なお、ガイドプレート7の収容凹部75に収容されたスライドロッド40は、ガイドプレート7と相対的にスライドすることができる。なお、図20においては、作図上、ガイドプレート7における一部の収容凹部75のみに対応する操作用ロッド32、可動ブロック33、検索ピン34、押しボタン22等を図示している。
図21は、スライドロッド40を示す斜視図である。スライドロッド40は、軸本体部41と、この軸本体部41の側方から突設される複数の腕部42を有している。スライドロッド40の腕部42は、押しボタン22に対応して設けられている。また、各腕部42の先端には、側面視略三角形状を有する突起部43が形成されている。腕部42の突起部43は、可動ブロック33に形成された略角錐形状を有する凹部334と係合可能である
。スライドロッド40における突起部43と可動ブロック33における凹部334との係合、およびその解除については後述する。
また、スライドロッド40における軸本体部41の端部近傍には、矩形状のロッド貫通孔44が形成されている。軸本体部41の軸方向へのロッド貫通孔44の開口幅は、ロッドリターンプレート9の立ち上り部92の幅よりも大きい。これにより、ロッドリターンプレート9の立ち上り部92をロッド貫通孔44に挿通させた状態で、立ち上り部92を所定の範囲でスライドさせることができる。なお、図18および図19に示されるように、ガイドプレート7にも、ロッドリターンプレート9の立ち上り部92を挿通させる貫通孔77が形成されている。ガイドプレート7に設けられた貫通孔77は、収容凹部75にスライドロッド40を収容した状態で、スライドロッド40のロッド貫通孔44と平面的な位置が合致するように配置されている。これにより、ガイドプレート7の収容凹部75にスライドロッド40を収容した状態で、ロッドリターンプレート9の立ち上り部92をロッド貫通孔44および貫通孔77に挿通させることができる。なお、ロッドリターンプレート9における立ち上り部92の詳細については後述する。
更に、スライドロッド40の軸本体部41の下端部には、棒形状を有するアーム制御部45が側方から突設されている。アーム制御部45の途中には、鍔部451が形成されており、この鍔部451によって、アーム制御部45が先端側の第1領域部452と、基端側の第2領域部453とに区分されている。スライドロッド40のアーム制御部45は、図22に示すアーム36の姿勢を制御(変更)することができる。
ここで、図22を参照してアーム36を説明する。図22は、ボタン錠100の正面側から内部を透視した透視図であり、アッパーケース2の図示を省略している。アーム36は、円筒形状を有する軸受け部361と、この軸受け部361から突設される連結部362と回転ストッパー363とを有している。アーム36の軸受け部361は、アッパーケース2の裏面から突設された回転軸37に回転自在に軸支されている。また、アーム36の連結部362および回転ストッパー363は、互いに反対方向に軸受け部361から突出している。連結部362の端部には連結用爪が形成されており、この連結用爪にアーム制御部45の鍔部451を係止することで、アーム制御部45およびアーム36を連結している。その結果、ガイドプレート7に保持(収容)されたスライドロッド40が、ハウジング内を上下方向にスライドする際、これに連動してアーム36の姿勢を変更することができる。なお、アーム36の作動状況に関する詳細は、後述する。
また、アーム制御部45の第1領域部452および第2領域部453には、第1スプリング454および第2スプリング455がそれぞれ縮んだ状態で装着されている。第1スプリング454は、アーム36の連結部362とアッパーケース2の側壁との間に挟まれており、アーム36の連結部362を上方に向かって付勢している。また、第2スプリング455は、アーム36の連結部362と軸本体部41の下端部との間に挟まれており、スライドロッド40を上方に向かって付勢している。なお、ガイドプレート7は、第1スプリング454および第2スプリング455に付勢されないように、ガイドプレート7の収容凹部75の大きさが調整されている。また、アーム36の回転ストッパー363は、その姿勢によって、外筒6の外周部に設けられた扇形の外周突起片631と係合することが可能である。詳しくは後述するが、外筒6の外周突起片631が回転ストッパー363によって係止されている状態では、操作摘み4の開操作に対応する方向(開方向)への外筒6の回動動作が規制(制限)される。一方、外筒6の外周突起片631が回転ストッパー363に係止されていない状態では、操作摘み4の開操作に対応する開方向への外筒6の回動動作は規制されない。
次に、ロッドリターンプレート9およびチルトプレート10について説明する。図23
は、ロッドリターンプレート9の正面側の斜視図である。図24は、チルトプレート10の正面側の斜視図である。図25は、ロッドリターンプレート9とチルトプレート10を組み合わせた状態の斜視図である。図7に示した様に、ロッドリターンプレート9およびチルトプレート10は、ミドルプレート8とロアケース3によって形成される第2収容部に配置されるプレート部材である。ロッドリターンプレート9およびチルトプレート10は、ボタン錠100の第2収容部において、上下方向にスライド自在に収容されている。ロッドリターンプレート9およびチルトプレート10のスライド方向は、操作用ロッド32のスライド方向と直交する方向であって、ガイドプレート7のスライド方向と一致する。なお、ガイドプレート7、チルトプレート10、ロッドリターンプレート9は、それぞれが独立して操作用ロッド32のスライド方向と直交する方向にスライド自在である。ガイドプレート7、チルトプレート10、ロッドリターンプレート9は、本発明における第1プレート、第2プレート、第3プレートに相当する。
ロッドリターンプレート9は、プレート本体部93と、プレート本体部93から立設する立ち上り部92を有する。ロッドリターンプレート9は、ハウジング内においてチルトプレート10の手前側に配置される。ここでいう手前側とは、ボタン錠100におけるフロントパネル21側から見て手前側に位置することを指す。言い換えると、チルトプレート10は、ロッドリターンプレート9の背面側に配置されている。ロッドリターンプレート9の立ち上り部92は、プレート本体部93における幅方向中央部かつ下端寄りの部分に設けられており、プレート本体部93の長辺方向に沿って伸びている。また、立ち上り部92の先端は、他の部分に比べて幅が一段狭い先端段差部921が形成されている。図1、33等に示すクリアボタン23は、使用者が把持するためのボタン把持部231と、図23に示すロッドリターンプレート9に設けられた立ち上り部92の先端段差部921と係合する係合部232を有している。ボタン錠100は、ロッドリターンプレート9における立ち上り部92の先端段差部921を、クリアボタン23に形成された係合部232に係合させた状態で組み上げられる。これにより、クリアボタン23がスライド操作された際に、ロッドリターンプレート9も連動してスライドするようになる。
更に、ロッドリターンプレート9のプレート本体部93の表面には、複数の爪部91が設けられている。爪部91は、一対の爪片によって構成されており、各爪部91は操作用ロッド32に対応する位置に配置されている。ロッドリターンプレート9の爪部91は、操作用ロッド32の胴部本体321における第1凹部対321a,321aおよび第2凹部対321b,321bの何れかに選択的に嵌合されるようになっている。ロッドリターンプレート9の爪部91が、第1凹部対321a,321aおよび第2凹部対321b,321bの何れかに嵌合されることで、操作用ロッド32がロッドリターンプレート9に保持された状態となる。そして、第1凹部対321a,321aと第2凹部対321b,321bとの間で爪部91が嵌合する相手が切り替えられることで、ロッドリターンプレート9による操作用ロッド32の保持状態を変更することができる。
チルトプレート10は、プレート本体部101と、プレート本体部101の表面に突設された複数の傾斜突部102と、プレート本体部101の側面に突設された駆動用アーム103を有する。チルトプレート10における各傾斜突部102は、操作用ロッド32に対応する位置に配置されている。また、チルトプレート10の駆動用アーム103は、図22に示す係止部材11を駆動するための部材である。
また、図23および図25に示すように、ロッドリターンプレート9のプレート本体部93に突設された各爪部91における爪片間には、チルトプレート10の傾斜突部102を挿通可能な開口部94が設けられている。開口部94は、プレート本体部93を厚さ方向に貫通しており、本発明における案内孔に相当する。ロッドリターンプレート9の各開口部94にチルトプレート10の各傾斜突部102を挿通させることで、ロッドリターン
プレート9(プレート本体部93)にチルトプレート10(プレート本体部101)を添わせた状態で重ね合せることができる。更に、図23に示すように、ロッドリターンプレート9におけるプレート本体部93の側面には、波形のアーム部材であるリセット用アーム95が側方に向けて突設されている。リセット用アーム95の先端には、凸部95aが設けられている。また、プレート本体部93の下側の短辺には、リターンスプリング97を保持するための保持ピン98が突設されている。リターンスプリング97は、ロアケース3に設けられる突出片300とプレート本体部93との間に介装されている。ロッドリターンプレート9は、リターンスプリング97の弾性力によって、常に上方に向かって押圧されている。
[外筒]
図26Aおよび図26Bは、外筒6の斜視図である。外筒6の後端側には、ロッドリターンプレート9における波形のリセット用アーム95の先端に設けられた凸部95aと係合する一対の第1凹部611と第2凹部612が周方向に沿って離間した状態で並んで配置されている。第1凹部611および第2凹部612は、外筒6の側壁を貫通する略矩形状の貫通孔である。第1凹部611および第2凹部612は、外筒6の軸線方向において互いに等しい位置に配置されている。図中、符号613は、第1凹部611および第2凹部612の間に位置する外周領域(以下、「凹部間外周領域」という)である。第1凹部611における凹部間外周領域613との境界に位置する第1縁部611aと、第2凹部612における凹部間外周領域613との境界に位置する第2縁部612aとはテーパ状の斜面となっている。通常時において操作摘み4、シリンダー5、外筒6、ストッパーSPは一体となっており、操作摘み4の操作に伴って、外筒6は回動する。詳しくは後述するが、外筒6の第1凹部611および第2凹部612には、操作摘み4の操作に伴う外筒6の回動位置に応じて、ロッドリターンプレート9におけるリセット用アーム95の先端に設けられた凸部95aが選択的に受け入れられるように構成されている。
また、外筒6の外周面には、外筒6の周方向に隣接配置される回転規制凹部621および回転規制凸部622が設けられている。回転規制凹部621と回転規制凸部622は、外筒6の軸線方向において同じ位置に配置されている。詳しくは後述するが、外筒6の外周面に設けられた回転規制凹部621および回転規制凸部622が係止部材11によって係止されることで、外筒6の回動動作が規制される。
また、図26Aおよび図26Bに示すように、外筒6の外周面には、アーム36の回転ストッパー363と係合可能な外周突起片631が設けられている。更に、外筒6の外周面には、後述するガイドプレート制御アーム14と選択的に係合可能な一対の第1嵌合凹部641および第2嵌合凹部642が設けられている。第1嵌合凹部641および第2嵌合凹部642は、外筒6の軸線方向において同じ位置に配置されている。また、第1嵌合凹部641および第2嵌合凹部642は、外筒6の周方向に沿って離間した状態で並んで配置されている。以上のように構成される外筒6において、図26Aおよび図26Bに示すように、第1凹部611および第2凹部612と、回転規制凹部621および回転規制凸部622と、外周突起片631と、第1嵌合凹部641および第2嵌合凹部642は、外筒6の軸線方向に沿って異なる位置に配置されている。なお、ガイドプレート制御アーム14は外筒6およびガイドプレート7の間に介在する部材であり、操作摘み4の操作に応じてガイドプレート7をスライド駆動する。本実施形態においては、ガイドプレート制御アーム14が本発明における第1プレート制御手段に相当する。
次に、組み付け後におけるボタン錠100の各部品同士の関係について説明する。図27は、施錠状態におけるボタン錠100の内部構造を示す図である。図28は、解錠状態におけるにおけるボタン錠100の内部構造を示す図である。
ボタン錠100が組み上がった状態において、上述したガイドプレート7は、ブロック収容孔部71aに可動ブロック33を収容し、収容凹部75にスライドロッド40を収容した状態で、ハウジングの第1収容部の上下方向に所定範囲内でスライド自在に配置されている。一方、ハウジングの第2収容部に配置されるロッドリターンプレート9およびチルトプレート10は、図25で説明したようにロッドリターンプレート9の各開口部94にチルトプレート10の各傾斜突部102を挿通させることで互いに重ね合せた状態で、ハウジングの第2収容部の上下方向に所定範囲内でスライド自在に配置されている。また、図25に示すように、チルトプレート10の傾斜突部102に比べてロッドリターンプレート9の開口部94の方が相対的に大きく、ロッドリターンプレート9の各開口部94にチルトプレート10の各傾斜突部102を挿通した状態において、チルトプレート10とロッドリターンプレート9とにおける相対的なスライド動作が許容されている。
ここで、図22、27、28等に示す符号15は、ガイドプレート制御アーム14の動作を制御するガイドブロックである。ガイドブロック15は、アッパーケース2に固定されている部材であり、図29に示すように略矩形状の貫通孔151が厚さ方向に穿設されている。ガイドブロック15の貫通孔151の長辺は、ガイドプレート7のスライド方向、言い換えると第1収容部の上下方向に沿って平行に伸びている。図30は、ガイドプレート制御アーム14を示す図である。図30(a)は、ガイドプレート制御アーム14における一方の側面からの斜視図である。図30(b)は、ガイドプレート制御アーム14における他方の側面からの斜視図である。ガイドプレート制御アーム14の一方の端部には、外筒6の外周面に設けられた第1嵌合凹部641又は第2嵌合凹部642に対して選択的に嵌合可能なフック部141が設けられている。ガイドプレート制御アーム14の他端側には、V型凸部142が設けられており、このV型凸部142の厚さ方向中央部からガイドブロック15の貫通孔151に挿通可能な腕片143が延設されている。ガイドブロック15の貫通孔151を挿通した腕片143の先端部は、図31に示すようにガイドプレート7の係合凹部76と係合することで、ガイドプレート7とガイドプレート制御アーム14とが連結される。
なお、ガイドプレート制御アーム14には、アーム用スプリング144を装着するスプリング保持部145が設けられている。アーム用スプリング144は、アッパーケース2の内壁面とガイドプレート制御アーム14との間に狭持されており、アーム用スプリング144の弾性力によってガイドプレート制御アーム14のフック部141が外筒6の外周面に押し付けられている。
また、ガイドブロック15の表面には、ガイドプレート制御アーム14のV型凸部142を嵌合可能なV型凹部152が形成されている。なお、ガイドプレート制御アーム14のV型凸部142は、ガイドブロック15の貫通孔151よりも幅広となっており、V型凸部142は貫通孔151に挿入されないようになっている。また、ガイドプレート制御アーム14の腕片143は、ガイドブロック15の貫通孔151の長辺に沿ってスライド自在である。即ち、ガイドプレート制御アーム14の腕片143は、貫通孔151の一方の短辺に当接する位置から他方の短辺に当接する位置までのストローク範囲でスライドすることができる。
図22に示すように、係止部材11は、アッパーケース2に軸支されており、回転自在となっている。係止部材11は、回動部材の一例である外筒6と第2プレートの一例であるチルトプレート10との間に介在する部材である。図32に示すように、係止部材11は、チルトプレート10の駆動用アーム103と係合することで、その姿勢が制御されるようになっている。より具体的には、係止部材11の軸受け部111は、アッパーケース2の内面から突設された回転軸に回転自在に軸支されている。また、係止部材11の軸受け部111には、チルトプレート10における駆動用アーム103の係止用フック103
aと係合する係合部112、および係止片113が設けられている。係止片113の先端には、先端係合部113aが形成されている。係止部材11の係止片113には、スプリング114が装着されている。スプリング114は、アッパーケース2の内壁面と係止部材11の係止片113との間に狭持されており、スプリング114の弾性力によって係止片113の先端係合部113aを外筒6の外周面に押し付けている。また、スプリング114の弾性力が、係合部112を介してチルトプレート10における駆動用アーム103に伝達されるようにして、チルトプレート10をハウジングの第2収容部における下方に向かって常に付勢する構造としても良い。
なお、上記のようにロッドリターンプレート9およびチルトプレート10は、ハウジングの第2収容部において上下方向にスライド自在に保持されている。そして、ロッドリターンプレート9は、第2収容部において上方に向かってバネ付勢されている一方、チルトプレート10は、第2収容部において下方に向かって付勢されている。ここで、ロッドリターンプレート9の爪部91およびチルトプレート10の傾斜突部102がそれぞれ対応する操作用ロッド32の後方に位置するようなチルトプレート10およびロッドリターンプレート9のそれぞれの位置を、「第2基準位置」、「第3基準位置」と定義する(図33を参照)。
<解錠・施錠時の動作>
[解錠時の動作]
次に、ボタン錠100の解錠・施錠時における作動内容について詳しく説明する。まず、施錠されているボタン錠100を解錠する際の動作について説明する。ボタン錠100が施錠されている状態では、操作摘み4はCLOSE位置26に合わせられている。また、後述するように、ボタン錠100の施錠時には、全ての操作用ロッド32が自動でクリアされ、押動されていない状態のクリア位置に戻される。なお、クリア位置に戻された操作用ロッド32は、図33に示すように、第1凹部対321a,321aにロッドリターンプレート9の爪部91が嵌合された状態(以下、「ロッド第1保持状態」という)となっている。また、図27に示すように、ボタン錠100が施錠状態にあるときには、アーム36の回転ストッパー363が外筒6の外周突起片631に係止されることにより、操作摘み4の開操作が規制された状態となっている。また、図27に示すように、ロッドリターンプレート9におけるリセット用アーム95の先端に設けられた凸部95aは、外筒6の第1凹部611に受け入れられている。また、ガイドプレート制御アーム14のフック部141が、外筒6の第1嵌合凹部641に嵌合している。また、ガイドプレート7は第1基準位置に配置され、チルトプレート10は第2基準位置に配置され、ロッドリターンプレート9は第3基準位置に配置されている。すなわち、この状態において、ガイドプレート7のブロック収容孔部71aのそれぞれがミドルプレート8のブロック収容凹部81と位置が重なった状態となり、且つ、ロッドリターンプレート9の爪部91およびチルトプレート10の傾斜突部102がそれぞれ対応する操作用ロッド32と位置が合致した状態となっている。
この状態から、ボタン錠100の解錠に際して、使用者は、設定されている解錠符号に則して押しボタン22の押動操作を行う。ボタン錠100の押しボタン22が押されると、押された押しボタン22に組み込まれた操作用ロッド32がクリア位置から軸方向にスライドし、ハウジング内部に押し込まれる。以下、このときの操作用ロッド32の位置を「押込み位置」という。クリア位置から押込み位置まで変位した操作用ロッド32は、ロッドリターンプレート9の爪部91が第2凹部対321b,321bに嵌合された状態(以下、「ロッド第2保持状態」という)となる。また、ロッドリターンプレート9の爪部91は、操作用ロッド32が押込み位置に変位した際に当該操作用ロッド32に形成された被係合部としての第2凹部対321b,321bに係合する係合部の一例である。
操作用ロッド32は、対応する押しボタン22が押動された際にハウジング内に押し込まれることでクリア位置から押込み位置へと変位する。こうして、押しボタン22の押動操作によって、押し込まれた押しボタン22に対応する操作用ロッド32のみがロッド第2保持状態となり、押されなかった押しボタン22に対応する操作用ロッド32はロッド第1保持状態に維持される(図33を参照)。なお、ボタン錠100の解錠時において、使用者による押し込まれた押しボタン22は、常にボタンスプリング223によって押し上げられているため、使用者の指が離れた時点で、ボタン用開口部211に埋没した状態から外部に突出した状態へと移行する。なお、ボタンスプリング223の設置を備えないようにしても良い。この場合、使用者によって押し込まれた押しボタン22は埋没した状態を維持する。これはボタン錠100を解錠状態から施錠する際、施錠状態から解錠する際のいずれも同様であり、ボタン22は押し込まれる都度、埋没状態を維持し、操作摘み4、またはクリアボタン23を操作することで押しボタン22の埋没状態が解除される。なお、図33においては、各操作用ロッド32に対応する押しボタン22の図示を省略している。
ボタン錠100は、解錠符号を任意に設定することができる構造となっている。解錠符号の設定方法については後述するが、ボタン錠100は、解錠符号に対応する押しボタン22に装着された操作用ロッド(以下、単に「解錠符号に対応する操作用ロッド」ともいう)32と、解錠符号に対応しない押しボタン22に装着された操作用ロッド(以下、単に「解錠符号に対応しない操作用ロッド」ともいう)32とにおいて、操作用ロッド32に対する可動ブロック33の係合位置(保持位置)が異なっている。具体的には、解錠符号に対応しない操作用ロッド32は第1保持位置に可動ブロック33が保持され、解錠符号に対応する操作用ロッド32は第2保持位置に可動ブロック33が保持される。解錠符号に対応するか否かに応じた操作用ロッド32に対する可動ブロック33の保持位置の変更動作に関しては後述する。
上記のように、可動ブロック33には凹部334が設けられており、凹部334はスライドロッド40の突起部43と相補的な形状を有している。図33、34等に示す状態では、全ての操作用ロッド32がロッド第1保持状態にあり、かつ、第1保持位置に可動ブロック33を装着している。操作用ロッド32における可動ブロック33の装着位置と、ロッドリターンプレート9の爪部91による操作用ロッド32の保持状態との関係について言及すると、まず、ロッド第1保持状態にある操作用ロッド32は、可動ブロック33を第1保持位置に装着した状態のときに、可動ブロック33の凹部334とスライドロッド40の突起部43との位置が合致し、凹部334に突起部43を嵌め込むことができる(図7、図34を参照)。可動ブロック33の凹部334は、本発明における被嵌合部に対応している。また、可動ブロック33の凹部334に嵌合可能なスライドロッド40の突起部43が本発明における嵌合部に対応している。
また、本実施形態において、第1保持位置から第2保持位置に変更したときの操作用ロッド32に対する可動ブロック33の変位ずれ量は、操作用ロッド32をロッド第1保持状態からロッド第2保持状態へ変更したときの操作用ロッド32の相対移動量に一致するように調整されている。従って、図示はしないが、操作用ロッド32がロッド第2保持状態にある場合には、可動ブロック33を第1保持位置にではなく第2保持位置に装着することで、可動ブロック33の凹部334とスライドロッド40の突起部43との位置が合致し、突起部43をちょうど凹部334に嵌め込むことができる。
言い換えると、可動ブロック33が第1保持位置に装着された操作用ロッド32が第2保持状態にある場合、あるいは、可動ブロック33が第2保持位置に装着された操作用ロッド32が第1保持状態にある場合には、可動ブロック33の凹部334とスライドロッド40の突起部43との位置が合致せず、前後方向にずれた状態となる。図35は、可動
ブロック33が第2保持位置に装着された操作用ロッド32が第1保持状態にあるときの凹部334と突起部43との相対関係を示す図である。可動ブロック33の凹部334とスライドロッド40の突起部43とにおける相対位置がずれることで、突起部43を凹部334に嵌め込む(収容する)ことができなくなる。この場合、スライドロッド40における突起部43の頂部が可動ブロック33における凹部334の縁部と干渉するため、凹部334の深さだけ、突起部43が下方に押し下げられる。更に、スライドロッド40の突起部43は、各腕部42の先端に設けられており、各腕部42は軸本体部41を介して一体となっている。従って、スライドロッド40における突起部43のうちの一つでも可動ブロック33の凹部334に対する相対位置がずれた場合には、可動ブロック33の凹部334に対する相対位置がずれる前に比べてハウジング内において下方にスライドする。以下、可動ブロック33が第1保持位置に装着された操作用ロッド32が第1保持状態にあり、且つ、可動ブロック33が第2保持位置に装着された操作用ロッド32が第2保持状態にある場合のように、全ての操作用ロッド32について可動ブロック33の凹部334にスライドロッド40の突起部43が受け入れられた状態のときのスライドロッド40の位置を「第4基準位置」と呼ぶ。また、スライドロッド40における突起部43のうちの一つでも可動ブロック33の凹部334に対する相対位置がずれることで、スライドロッド40が第4基準位置からハウジング内において下方にスライドしたときの位置を「解錠規制位置」と呼ぶ。
図36に示す例では、符号A〜Eで示す操作用ロッド32のうち、B、Dが第2保持位置に可動ブロック33が保持されており、A、C、Eが第1保持位置に可動ブロック33が保持されている。この図の例では、A〜Eで示す操作用ロッド32のうち、第2保持位置に可動ブロック33が保持されたB、Dが解錠符号に対応する操作用ロッド32であるのに対して、当該B、Dに係る操作用ロッド32はいずれも押動されていない。従って、図示の例では、ボタン錠100の押しボタン22が解錠符号に揃っていない。また、図36の例では、いずれの操作用ロッド32も押動されていないため、A〜Eの各操作用ロッド32における可動ブロック33は、ミドルプレート8のブロック収容凹部81には挿入されておらず、図36において不図示のガイドプレート7のブロック収容孔部71aに各可動ブロック33が収容された状態となっている。なお、解錠符号に対応しないA、C、Eで示す操作用ロッド32に対応する押しボタン22が押し込まれた場合、A、C、Eで示す操作用ロッド32の押し込みに伴い、第1保持位置に装着された可動ブロック33がガイドプレート7のブロック収容孔部71aとミドルプレート8のブロック収容凹部81に跨るようにしてこれらに挿入される。一方、解錠符号に対応する操作用ロッド32は可動ブロック33が第2保持位置に保持されているため、解錠符号に対応する押しボタン22が押し込まれた場合に、解錠符号に対応する操作用ロッド32に装着された可動ブロック33はミドルプレート8のブロック収容凹部81に挿入されず、ガイドプレート7のブロック収容孔部71aのみに収容された状態となる。
このように、ボタン錠100の押しボタン22が解錠符号に揃っていない場合、少なくとも何れかの操作用ロッド32に関して、可動ブロック33の凹部334とスライドロッド40の突起部43とにおける位置が合致せず、スライドロッド40が第4基準位置から下方に押し下げられることで解錠規制位置に変位した状態となる。そうすると、スライドロッド40におけるアーム制御部45がアーム36の連結部362を押し下げる。図22で説明したように、アーム36は、アッパーケース2の回転軸37に軸支されているため、アーム制御部45によって押し下げられる連結部362とは逆に、回転ストッパー363が押し上げられる。その結果、アーム36の回転ストッパー363が、外筒6の外周突起片631に係止され(図27を参照)、外筒6の開方向(図27でいうと、反時計廻り方向であり、操作摘み4の開操作方向と一致)への回動が規制される。そして、上述した非常解錠鍵やシリンダー交換鍵がシリンダー5の鍵穴51に挿入されていない限り、シリンダー5と外筒6との相対回動は規制され、かつ、シリンダー5とこれに装着された操作
摘み4とは相対回動ができない構造となっている。そのため、ボタン錠100の押しボタン22が解錠符号に揃っていない場合、すなわち押しボタン22が解錠符号に則して押動操作されていない場合は、アーム36の回転ストッパー363が外筒6の外周突起片631に係止されることにより、操作摘み4の開操作を規制することができる。
なお、解錠符号に対応する押しボタン22の全てが押動され、解錠符号に対応しない押しボタン22が何れも押動されていない状態のときに、ボタン錠100の押しボタン22が解錠符号に揃った状態となる。この状態では、全ての操作用ロッド32に関し、可動ブロック33の凹部334とスライドロッド40の突起部43との相対位置が一致するため、可動ブロック33との干渉に起因するスライドロッド40の押し下げは起こらない。この場合、スライドロッド40は、第1スプリング454および第2スプリング455の弾性力によって上方に付勢され、第4基準位置に維持される。その結果、図22に示す状態のように、外筒6の外周突起片631の回転ストッパー363による係止が解除される。以上のように、外筒6の外周突起片631の係止が解除されることで、ボタン錠100が内部機構的に解錠された状態となり、操作摘み4の開操作を行うことができる状態になる。
なお、ボタン錠100の解錠時に、何れかの押しボタン22が押されると、第2基準位置に配置されているチルトプレート10の傾斜突部102と操作用ロッド32の傾斜面325aとが衝突し、チルトプレート10が第2基準位置から上方にスライドすることで施錠規制解除位置に変位する。このようにしてチルトプレート10が第2基準位置から施錠規制解除位置にスライドすると、駆動用アーム103の係止用フック103aが係止部材11の係合部112をリフトし、係止部材11の係止片113が外筒6の外周面から離間する方向に係止部材11を回転させる。その結果、外筒6の回転規制凹部621に嵌合していた係止部材11の先端係合部113aが回転規制凹部621から抜け出し、係止片113による回転規制凸部622の係止が解除される。
ボタン錠100の押しボタン22を解錠符号に揃え、外筒6の外周突起片631とアーム36の回転ストッパー363との係合状態が解除されることでボタン錠100を解錠した後、使用者は、操作摘み4の開操作を行う。ボタン錠100は、操作摘み4の開操作を行う過程、即ち操作摘み4を開方向(反時計回り)へ回転させてゆく過程で、ガイドプレート制御アーム14のフック部141が第1嵌合凹部641から抜け出し、第2嵌合凹部642に嵌合するようになる。例えば、操作摘み4が、CLOSE位置26とOPEN位置25との間の途中まで開操作された時点で、ガイドプレート制御アーム14のフック部141が第1嵌合凹部641から抜け出し、第2嵌合凹部642に嵌合するように調整されている。このように、第1嵌合凹部641から第2嵌合凹部642に、ガイドプレート制御アーム14のフック部141の嵌合位置が変化することに伴い、ガイドプレート制御アーム14が下方に引き下げられる。ここで、ガイドプレート制御アーム14の腕片143が、ガイドプレート7と連結されているため、ガイドプレート7は第1基準位置から下方にスライドする。以下、ガイドプレート制御アーム14によってガイドプレート7が第1基準位置から下方にスライド移動させられた後の位置を「ブロック離脱位置」と呼ぶ。本実施形態におけるブロック離脱位置は、本発明における離脱位置に相当する。
上記のように、ガイドプレート7が第1基準位置からブロック離脱位置に変位すると、各操作用ロッド32に対して装着されていた各可動ブロック33の装着状態が解除され、操作用ロッド32から可動ブロック33が離脱する。これにより、図37に示す状態のように、操作用ロッド32に対する可動ブロック33の嵌め合いが解除される。以上のように、ガイドプレート制御アーム14は、操作摘み4の操作に連動してガイドプレート7の位置を第1基準位置とブロック離脱位置との何れかに切り替える。
また、上記操作摘み4の開操作に際して、ガイドプレート7が第1基準位置からブロック離脱位置に向けてのスライドを開始すると、ガイドプレート7のブロック収容孔部71aに収容されている可動ブロック33もガイドプレート7に追従してスライドすることになる。その際、可動ブロック33の凹部334に対してスライドロッド40の突起部43は嵌め合い状態にあるため、可動ブロック33のスライド変位に連動して、スライドロッド40も下方にスライドすることになる。すなわち、ガイドプレート7に連動して、スライドロッド40が第4基準位置から解錠規制位置に向けてスライドを開始する。本実施形態におけるボタン錠100は、操作摘み4の開操作に伴い、ガイドプレート制御アーム14におけるフック部141の嵌合対象が第1嵌合凹部641から第2嵌合凹部642に切り替えられる時点で、既に、アーム36における回転ストッパー363の先端部は外筒6の外周突起片631を乗り越え、例えば外周突起片631の外周面631a(図26Bを参照)に回転ストッパー363の先端部が位置付けられている。従って、ボタン錠100の解錠時において、操作摘み4の開操作に伴ってスライドロッド40が第4基準位置から解錠規制位置に変位しても、アーム36の回転ストッパー363が既に外筒6の外周突起片631を乗り越えているため、当該回転ストッパー363は外周面631aに当接することとなり、操作摘み4の開操作をOPEN位置25まで続行することができる。
更に、操作摘み4の開操作が進行すると、ロッドリターンプレート9におけるリセット用アーム95の先端に設けられた凸部95aが外筒6の第1凹部611から凹部間外周領域613に乗り上げる。その結果、リセット用アーム95がハウジング内の下方に押し下げられることで、ロッドリターンプレート9が、第3基準位置から下方にスライドする。以下、ロッドリターンプレート9におけるリセット用アーム95の凸部95aが外筒6の凹部間外周領域613に乗り上げることで、第3基準位置から下方にスライド移動させられた後の位置を「リセット位置」と呼ぶ。ロッドリターンプレート9が第3基準位置からリセット位置に変位すると、操作用ロッド32の第1凹部対321a,321aまたは第2凹部対321b,321bに嵌合しているロッドリターンプレート9の爪部91の嵌合状態が解除される。
操作摘み4の開操作に伴い、外筒6の第1凹部611から一旦凹部間外周領域613に乗り上げたリセット用アーム95の凸部95aは、第2凹部612に受け入れられる。その結果、リセット用アーム95はハウジング内における下方に押し下げられなくなるため、ロッドリターンプレート9はリターンスプリング97によって上方に付勢され、リセット位置から第3基準位置にスライドする。
また、上記のようにロッドリターンプレート9の爪部91による操作用ロッド32の保持が解除されると、操作用ロッド32はロッドスプリング324の弾性力によって前方、即ちハウジング外部に向けて引っ張られる。その結果、押動されていた操作用ロッド32が所定のクリア位置に戻されることで操作用ロッド32がリセットされる。なお、ロッドリターンプレート9の爪部91による操作用ロッド32の保持が解除されるまでは、解錠符号に対応する操作用ロッド32のみが押し込まれているため、ここでは解錠符号に対応する操作用ロッド32のみがクリア位置に戻されることになる(解錠符号に対応しない操作用ロッド32は、元々クリア位置にある)。本実施形態においては、ロッドリターンプレート9を付勢するリターンスプリング97が本発明におけるリセット手段に相当する。
上記のように、全ての操作用ロッド32がクリア位置に戻されると、チルトプレート10の傾斜突部102と操作用ロッド32の傾斜面325aとの干渉が無くなる。これにより、チルトプレート10は重力(自重)によって施錠規制解除位置から第2基準位置に変位する。その結果、駆動用アーム103の係止用フック103aによる係止部材11の係合部112のリフトが解除される。その結果、スプリング114の弾性力によって、係止部材11が外筒6に接近する方向に付勢される。そして、例えば開操作によって操作摘み
4がOPEN位置25まで到達した時点で、係止片113における先端係合部113aが外筒6の回転規制凹部621に再び嵌合されると同時に、先端係合部113aによって回転規制凸部622が係止される。その結果、操作摘み4の閉操作方向に対応する外筒6の閉方向への回転が規制される。
[解錠符号(暗証番号)の設定および施錠時の操作]
次に、ボタン錠100を施錠する際の動作について説明する。本実施形態に係るボタン錠100は、内部機構的に解錠状態、すなわち、押しボタン22が解錠符号に揃った状態にあるボタン錠100の操作摘み4をOPEN位置25からCLOSE位置26に合わせる閉操作を行うことで、施錠される構造となっている。また、上記の通り、ボタン錠100は、いわゆるワンタイム方式を採用しており、ボタン錠100を施錠する際にはその都度、使用者は新たな解錠符号(暗証番号)を設定するために任意の押しボタン22を押してから操作摘み4を閉操作することで施錠が行われる。言い換えると、本実施形態のボタン錠100は、解錠後、解錠符号(暗証番号)を再設定した後でないと施錠できない構造を採用している。
上記のように、ボタン錠100の解錠時に操作摘み4をOPEN位置25まで開操作した状態においては、係止部材11における係止片113の先端係合部113aによって回転規制凸部622が係止されることで、外筒6の閉方向への回転が規制されている。つまり、この状態では、操作摘み4の閉操作を行うことが制限される。つまり、操作摘み4の閉操作を行うためには、新たな解錠符号(暗証番号)を設定するために任意の押しボタン22(操作用ロッド32)を押操作する必要がある。
解錠符号(暗証番号)の設定時において、使用者によって押しボタン22が押される前の状態において、ロッドリターンプレート9およびチルトプレート10は、それぞれ第3基準位置および第2基準位置に配置されている(図33を参照)。具体的には、ロッドリターンプレート9は、リターンスプリング97の弾性力によって第3基準位置に維持されている。また、チルトプレート10は、重力の作用(自重)によって第2基準位置に維持されている。
そして、使用者が新たな解錠符号(暗証番号)を設定するために任意の押しボタン22を押すと、解錠符号に対応する操作用ロッド32はロッド第2保持状態に移行し、解錠符号に対応しない操作用ロッド32は第1保持状態のまま維持される。また、新たな解錠符号設定に伴い押しボタン22が押されることで、押し込まれた押しボタン22に対応する操作用ロッド32の傾斜面325aがチルトプレート10の傾斜突部102と衝突する。その結果、チルトプレート10が第2基準位置から上方の施錠規制解除位置にスライドすることで、駆動用アーム103の係止用フック103aが係止部材11の係合部112をリフトする。その結果、外筒6の回転規制凹部621に嵌合していた係止部材11の先端係合部113aが回転規制凹部621から抜け出し、先端係合部113aによる回転規制凸部622の係止が解除される。これにより、操作摘み4の閉操作を行うことが可能な状態となる。
ここで、チルトプレート10には、各操作用ロッド32毎に対応して傾斜突部102が設けられているため、操作摘み4が開位置にある状態で何れかの操作用ロッド32がクリア位置から押込み位置に変位した場合に、第2基準位置から施錠規制解除位置に変位する結果、係止部材11(先端係合部113a)による外筒6(回転規制凸部622)の係止が解除されることとなり、その結果、操作摘み4の閉操作の規制を解除することができる。本実施形態においては、チルトプレート10、および係止部材11が本発明における第2規制手段を構成している。なお、新たな解錠符号の設定時は、操作用ロッド32に対する可動ブロック33の装着状態が解除され、操作用ロッド32から可動ブロック33が離
脱した状態で行われる。すなわち、ガイドプレート7が「ブロック離脱位置」に変位した状態で新たな解錠符号の設定が行われる。
また、本実施形態では、新たな解錠符号の設定に伴って使用者が任意の押しボタン22を押した際、使用者の指が押しボタン22から離れた時点で、ボタンスプリング223の弾性力によって押しボタン22が押込み位置からクリア位置に復帰するが、上記のようにボタンスプリング223を設けないようにしても良い。これによれば、ボタン錠100を施錠する度に新たな解錠符号の設定を使用者に要求するに際して、使用者が押し込んだ押しボタン22を押込み位置に維持しておくことで、使用者が新たな解錠符号を意図しない解錠符号として誤認識して覚えてしまうことを抑制できる。勿論、本実施形態のように、ボタンスプリング223を設置し、新たな解錠符号の設定時に使用者の指が押し込んだ押しボタン22から離れた時点で、その押しボタン22を押込み位置からクリア位置に復帰させても良く、これによって新たな解錠符号が他人に盗み見されるリスクを減らすことができる。
次に、使用者が、解錠状態にあるボタン錠100に対して、操作摘み4の閉操作を行うと、操作摘み4と一体となって、シリンダー5および外筒6が閉方向に回動する。操作摘み4の閉操作を行う過程で、ガイドプレート制御アーム14のフック部141が第2嵌合凹部642から抜け出し、第1嵌合凹部641に嵌合するようになる。第2嵌合凹部642から第1嵌合凹部641に、ガイドプレート制御アーム14のフック部141の嵌合位置が変化することに伴い、ガイドプレート制御アーム14が上方に引き上げられ、ガイドプレート制御アーム14に連結されているガイドプレート7がブロック離脱位置から第1基準位置に変位する。その際、ガイドプレート制御アーム14のV型凸部142は、ガイドブロック15のV型凹部152に嵌合されるため、ガイドプレート制御アーム14の姿勢が安定する。これにより、ガイドプレート7を第1基準位置に安定して保持することができ、ガイドプレート7が不用意に第1基準位置からブロック離脱位置にスライドすることを抑制できる。そして、上記のようにガイドプレート制御アーム14によってガイドプレート7がブロック離脱位置から第1基準位置まで変位させられることで、各操作用ロッド32に対する各可動ブロック33の離脱状態が解除され、操作用ロッド32に可動ブロック33が装着される。
例えば、解錠符号の設定時において、使用者が、「2」、「5」、「7」、「8」に対応する押しボタン22を押動した場合、これらに対応する操作用ロッド32がロッドリターンプレート9の爪部91との関係でロッド第2保持状態となり、それ以外の操作用ロッド32がロッド第1保持状態となる。この状態からガイドプレート7がブロック離脱位置から第1基準位置にスライドすることで、ロッド第2保持状態にある「2」、「5」、「7」、「8」に対応する操作用ロッド32に対しては第2保持位置に可動ブロック33が装着され、それ以外の操作用ロッド32に対しては第1保持位置に可動ブロック33が装着される。その際、解錠符号に対応する押しボタン22の全てが押動され、解錠符号に対応しない押しボタン22が何れも押動されていない状態となるため、各可動ブロック33の凹部334に対してスライドロッド40の各突起部43が嵌め合い状態となることで、可動ブロック33との干渉に起因するスライドロッド40の押し下げは起こらない。その結果、スライドロッド40は、第1スプリング454および第2スプリング455の弾性力によって上方に付勢され、解錠規制位置から第4基準位置に切り替えられる。
更に、操作摘み4をCLOSE位置26に向けて回転させると、外筒6の第2凹部612に嵌合されていたロッドリターンプレート9におけるリセット用アーム95の凸部95aが、第2凹部612から凹部間外周領域613に乗り上げる。その結果、リセット用アーム95がハウジング内の下方に押し下げられることで、ロッドリターンプレート9が、第3基準位置から下方にスライドし、リセット位置に変位する。これにより、操作用ロッ
ド32の第1凹部対321a,321aまたは第2凹部対321b,321bに嵌合しているロッドリターンプレート9の爪部91の嵌合状態が解除される。そして、操作摘み4の閉操作に伴い、外筒6の第2凹部612から一旦凹部間外周領域613に乗り上げたリセット用アーム95の凸部95aは、第1凹部611に受け入れられる。その結果、リセット用アーム95はハウジング内における下方に押し下げられなくなるため、ロッドリターンプレート9はリターンスプリング97によって上方に付勢され、リセット位置から第3基準位置に戻る。
上記のようにロッドリターンプレート9が一旦リセット位置に変位することで、爪部91による操作用ロッド32の保持が解除されると、操作用ロッド32はロッドスプリング324の弾性力によって前方、即ちハウジング外部に向けて引っ張られる。その結果、押動されていた操作用ロッド32が所定のクリア位置に戻されることで操作用ロッド32がリセットされる。なお、ロッドリターンプレート9の爪部91による操作用ロッド32の保持が解除されるまでは、解錠符号に対応する操作用ロッド32のみが押し込まれているため、ここでは解錠符号に対応する操作用ロッド32のみがクリア位置に戻されることになる(解錠符号に対応しない操作用ロッド32は、元々クリア位置にある)。これにより、新たな解錠符号の設定が確定(完了)する。なお、上記のようにボタン錠100がボタンスプリング223を設置しない場合には、操作用ロッド32がリセットされるタイミングで、クリア位置に押し戻される操作用ロッド32の頭部323が押しボタン22に衝突し、押しボタン22が押込み位置からクリア位置に復帰させられることになる。なお、本実施形態では、操作用ロッド32の頭部323が押しボタン22に嵌合されていても良い。
また、上記のように、全ての操作用ロッド32がクリア位置に戻されると、チルトプレート10の傾斜突部102と操作用ロッド32の傾斜面325aとの干渉が無くなる。これにより、チルトプレート10が重力(自重)によって、施錠規制解除位置から第2基準位置に変位する。その結果、駆動用アーム103の係止用フック103aによる係止部材11の係合部112のリフトが解除される。その結果、スプリング114の弾性力によって、係止部材11が外筒6に接近する方向に付勢される。その結果、駆動用アーム103の係止用フック103aによる係止部材11の係合部112のリフトが解除される。そのため、それ以降、操作摘み4がCLOSE位置26に至るまでの間は、スプリング114の付勢力によって係止部材11の先端係合部113aが外筒6の外周面を摺接することになる。
また、上記のようにロッドリターンプレート9によって操作用ロッド32のリセットが行われると、ボタン錠100の押しボタン22が解錠符号に揃っていない状態となる。つまり、全ての操作用ロッド32が第1保持状態となるため、解錠符号に対応する操作用ロッド32に関して、図35に示したように可動ブロック33の凹部334の位置とスライドロッド40の突起部43の位置が互いにずれた状態となり、スライドロッド40が第4基準位置から解錠規制位置にスライドする。その結果、スライドロッド40におけるアーム制御部45によってアーム36の姿勢が変更され、その回転ストッパー363が押し上げられることで外筒6の外周突起片631に係止される。その結果、外筒6の開方向への回動が規制されるようになり、操作摘み4の開操作が制限されるようになる。つまり、操作摘み4の位置がCLOSE位置26に至った後は、操作摘み4の開方向への回動ができなくなることで、ボタン錠100の内部機構的な施錠が完了する。また、操作摘み4、シリンダー5、ストッパーSPは一体となっているため、操作摘み4を閉操作によってCLOSE位置26まで回転することで、ストッパーSPが係止位置まで回転する。これにより、ストッパーSPが施錠対象物の相手側部材に係止されることで、外部機構的にもボタン錠100の施錠が完了する。本実施形態においては、スライドロッド40およびアーム36が本発明における第1規制手段を構成する。
以上のように、本実施形態におけるボタン錠100によれば、操作用ロッド32に対する可動ブロック33の装着位置を変更することで、解錠符号の設定を自由に変更することができる。
また、従来のボタン錠においては、押しボタンが設けられていない背面側に、各押しボタンに対応する操作スイッチが設けられており、この操作スイッチを切り替え操作することで、解錠符号の設定を変更する構造が採用されている場合が多い。このような従来方式による解錠符号の設定変更機構では、例えばボタン錠を引き出し等に適用した場合などのように、背面を視認しにくい箇所にボタン錠を設置した場合、解錠符号の設定変更作業が行いにくいという課題がある。このように、従来のボタン錠では、ボタン錠の設置条件次第では、解錠符号の設定変更を行うための操作スイッチを視認しにくい状態で操作せざるを得ないため、使用者の意図通りに新たな解錠符号が設定されない設定ミス(エラー)を招く虞がある。これに対して、本実施形態に係るボタン錠100によれば、ボタン錠100の正面側から、押しボタン22の押動操作によって解錠符号を設定することができるため、解錠符号の設定変更作業の作業性を従来に比べて向上させることが可能であり、かつ、より確実に新たな解錠符号を使用者が意図した符号に変更することができる。つまり、解錠符号の設定ミスが起こることを好適に抑制することができる。
そして、本実施形態におけるボタン錠100は、いわゆるワンタイム方式を採用し、ボタン錠100を施錠する都度、使用者は新たな解錠符号(暗証番号)を設定する。ボタン錠100は、施錠時に、何れかの押しボタン22を押して新たな解錠符号(暗証番号)を設定しない限り、施錠ができない構造を採用した。これにより、新たな解錠符号(暗証番号)が未設定の状態での操作摘み4の閉操作を規制するようにした。これにより、使用者が解錠符号とする任意の押しボタン22を押したつもりが、正しく押し込みが行われなかった場合や、押しボタン22の押し忘れがあった場合に、内部機構的に正しい施錠がなされない状態のまま操作摘み4をCLOSE位置26まで回転させ、表示窓24に施錠状態を表す表示がなされてしまうことを抑制することができる。これにより、解錠符号(暗証番号)に則したボタン操作を行うことなく第3者が勝手に操作摘み4を開操作してしまうことを抑制できる。
なお、本実施形態において、使用者が解錠符号を忘れた時などの際に検索ピン34を用いた解錠符号の検索作業は、例えば非常解錠鍵を用いてボタン錠100を強制的に解錠した状態で行われる。解錠符号の検索作業は、ボタン錠100の非常解錠が完了して、ストッパーSPを係止位置から離脱位置へと回転させた後、ボタン錠100における全ての押しボタン22を押すことで実現される。このように押しボタン22が押されると、操作用ロッド32も連動して押し込まれる。その際、操作用ロッド32に装着された状態の可動ブロック33も、ガイドプレート7のブロック収容孔部71a内を、ミドルプレート8に近づく方向へ相対移動する。
図38および図39は、検索ピン34の詳細を説明する図である。検索ピン34は、円柱状のピン本体部341と、このピン本体部341の途中に設けられるとともに該ピン本体部341の側方に向けて突出する第1係止片342と、第1係止片342と所定寸法だけ離間するようにしてピン本体部341の側方に向けて突出する第2係止片344を有する。第2係止片344は、第1係止片342に比べて検索ピン34の基端側の位置に設けられている。検索ピン34の第1係止片342および第2係止片344は、互いに対向する対向面342a,344aを有しており、図39に示すように、各対向面342a,344aの間には、可動ブロック33が挟み込まれており、これによって、可動ブロック33の前端面33bおよび後端面33aを、検索ピン34における第2係止片344および第1係止片342との間に挟み込むようにして、検索ピン34が可動ブロック33に装着
されている。そして、可動ブロック33は、上記の通り操作用ロッド32に取り付けられているため、押しボタン22の押込み操作に連動して操作用ロッド32がスライド動作すると、検索ピン34も連動してスライドするようになっている。
ここで、解錠符号に対応する操作用ロッド32には第2保持位置に可動ブロック33が装着され、その他の操作用ロッド32には第1保持位置に可動ブロック33に装着されているため、使用者が押しボタン22を押し込んだ際、解錠符号に対応しない操作用ロッド32に装着される可動ブロック33の方が、解錠符号に対応する操作用ロッド32に装着される可動ブロック33よりも、ボタン錠100の背面側に変位する。従って、解錠符号に対応していない操作用ロッド32に装着された可動ブロック33と係合する検索ピン34は、解錠符号に対応する操作用ロッド32に装着された可動ブロック33と係合する検索ピン34よりも、ボタン錠100の背面側に位置することになる。
ここで、検索ピン34の長さは、解錠符号に対応しない検索ピン34におけるピン本体部341の先端部がボタン錠100の背面に設けられたピン挿通孔305(図2を参照)からハウジングの外部に突出し、解錠符号に対応する検索ピン34におけるピン本体部341の先端部が上記ピン挿通孔305から外部に突出しないような長さに調整されている。ここで、ロアケース3の外面における各ピン挿通孔305の近傍には、そのピン挿通孔305が何れの押しボタン22に対応しているかを表す「0」〜「9」、「※」のマーク(図示せず)が表示されている。従って、解錠符号の検索作業時において、使用者によって全ての押しボタン22が押し込まれると、解錠符号に対応しない検索ピン34におけるピン本体部341の先端のみが、ボタン錠100における背面のピン挿通孔305から先端部が突出するため、ピン挿通孔305から突出する検索ピン34に基づいて何れの押しボタン22が解錠符号に対応するものかを判別することができる。これにより、使用者は、解錠符号を検索することができる。
なお、本実施形態に係るプッシュボタン錠は、本発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々の変更を加えることができる。