JP2015094017A - 減酸素装置と冷蔵庫 - Google Patents

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Abstract

【課題】固体高分子電解質膜を用いた減酸素装置において、水素が発生しないようにした減酸素装置を提供する。
【解決手段】固体高分子電解質膜方法を用いた減酸素装置200において、アノード208とカソード210との間の電位差が、上限電位差に到達するまでは定電流制御を維持しつつ電圧を印加し、上限電位差に到達するとこの上限電位差を超えないように定電圧制御する。
【選択図】 図9

Description

本発明の実施形態は、減酸素装置と冷蔵庫に関するものである。
従来より、CA(Controlled Atmosphere)貯蔵方法には、食品業界で多く用いられているガス置換方法、減圧することで酸素を低減する真空方法、固体高分子電解質膜を用いて減酸素室の酸素を減少させる固体高分子電解質方法、酸素吸着剤を用いる吸着方法などがある。
この中で固体高分子電解質膜方法を用いる減酸素装置は、アノードで水を電気分解して水素イオンを作り、その水素イオンが固体高分子電解質膜内を移動してカソードに到達し、貯蔵容器内の酸素と反応して水を生成することで、酸素を消費する。そのため、圧力変化が少なく減酸素室の強度が余り必要ないというメリットがある。
特開2004−218924号公報 特開2011−202898号公報 特開2010−243072号公報 特開2010−210171号公報 特許第3056578号公報
上記のような固体高分子電解質膜を用いた減酸素装置であると、アノードで水の電気分解反応が起こり、カソードで酸素還元反応が起こる。そして、カソードで供給される酸素濃度の拡散低下に伴い過電圧が上昇し、限界電流密度を越えるなどしてカソード電位が0V以下となると水素が発生する。
しかし、可燃性冷媒を用いた冷蔵庫では、可燃性冷媒が水素に引火して爆発する可能性がある。
そこで、本発明の実施形態は、固体高分子電解質膜を用いた減酸素装置において、水素が発生しないか、又は、ある一定濃度以下の水素の発生に抑えることができる減酸素装置と冷蔵庫を提供することを目的とする。
本実施形態は、固体高分子電解質膜と、前記固体高分子電解質膜の一方の側に設けられたアノードと、前記固体高分子電解質膜の他方の側に設けられ、減酸素室へ通じるカソードと、前記アノードに通電するアノード集電体と、前記カソードに通電するカソード集電体と、前記アノード側に設けられた水の給水体と、前記アノードと前記カソードに電圧を印加する制御部と、を有し、前記制御部は、前記アノードと前記カソードとの間の電位差が、所定の上限電位差に到達するまでは定電流を維持しつつ前記アノードと前記カソードとの間に電圧を印加し、前記電位差が前記上限電位差に到達すると前記上限電位差を超えないように前記アノードと前記カソードとの間に定電圧を印加する減酸素制御を行う、減酸素装置である。
本実施形態は、固体高分子電解質膜と、前記固体高分子電解質膜の一方の側に設けられたアノードと、前記固体高分子電解質膜の他方の側に設けられ、減酸素室へ通じるカソードと、前記アノードに通電するアノード集電体と、前記カソードに通電するカソード集電体と、前記アノード側に設けられた水の給水体と、前記アノードと前記カソードに電圧を印加する制御部と、前記アノードと前記カソードとの間の電圧値、又は、電流値を測定する測定手段と、を有し、前記制御部は、前記測定手段が測定した前記電圧値、又は、前記電流値に基づいて前記カソードから発生する水素の発生量を算出する、減酸素装置である。
実施形態1の冷蔵庫の縦断面図。 減酸素装置の縦断面図。 減酸素ユニットの分解斜視図。 減酸素装置の分解斜視図。 前ケースの斜視図。 後ケースの半縦断面斜視図。 給水装置の縦断面図。 冷凍サイクルの説明図。 冷蔵庫のブロック図。 減酸素装置におけるカソードとアノードの電位、電位差と電流との関係を示すグラフ。 減酸素装置における水素発生開始電圧を示したグラフ。 実施形態2の変更例の冷蔵庫の縦断面図。
以下、一実施形態の冷蔵庫の減酸素装置200について図面に基づいて説明する。
実施形態1
実施形態1の冷蔵庫10について図1〜図10に基づいて説明する。本実施形態の冷蔵庫10は減酸素室100を有し、減酸素室100は減酸素装置200を有している。
(1)冷蔵庫10の構造
冷蔵庫10の構造について図1に基づいて説明する。図1は冷蔵庫10の全体の側面から見た縦断面図である。
冷蔵庫10のキャビネット12は断熱箱体であって、内箱と外箱とより形成され、その間に断熱材が充填されている。このキャビネット12内部は、上から順番に冷蔵室14、野菜室16、小型冷凍室18及び冷凍室20を有し、小型冷凍室18の横には製氷室が設けられている。野菜室16と小型冷凍室18及び製氷室の間には断熱仕切体36が設けられている。冷蔵室14と野菜室16とは水平な仕切体38によって仕切られている。冷蔵室14の前面には、観音開き式の扉14aが設けられ、野菜室16、小型冷凍室18、冷凍室20及び製氷室にはそれぞれ引出し式の扉16a,18a,20aが設けられている。
キャビネット12の背面底部には、機械室22が設けられ、冷凍サイクルを構成する圧縮機24などが載置されている。この機械室22背面上部には、制御板26が設けられている。
冷蔵室14の背面下部から野菜室16の背面において、冷蔵用蒸発器(以下、「Rエバ」という)28が設けられ、その下方には冷蔵用送風機(以下、「Rファン」という)30が設けられている。Rエバ28とRファン30とは、エバカバー15で形成されたRエバ室17に配されている。Rエバ28には、Rエバ28で発生した除霜水を溜める受け皿54が設けられている。
小型冷凍室18の背面から冷凍室20の背面にかけてのFエバ室29には冷凍用蒸発器(以下、「Fエバ」という)32が設けられ、その上方には冷凍用送風機(以下、「Fファン」という)34が設けられている。Rエバ28で冷却された冷気は、Rファン30によって冷蔵室14及び野菜室16に送風される。Fエバ32で冷却された冷気は、Fファン34によって小型冷凍室18、製氷室、冷凍室20に送風される。
冷蔵室14の背面には、冷蔵室14の庫内温度を検出する冷蔵室用センサ(以下、「Rセンサ」という)31が設けられ、冷凍室20の背面には、冷凍室20の庫内温度を検出する冷凍用センサ(以下、「Fセンサ」という)35が設けられている。
図1に示すように、冷蔵室14には、複数の棚40が設けられ、下部には引出し式のチルド容器42を有するチルド室44が設けられている。このチルド室44は低温室であって、肉や魚を収納する。冷蔵室14の扉14aの背面には複数のドアポケット46が設けられている。野菜室16には、引出し式の野菜容器48が設けられている。
野菜室16の天井部に当たる仕切体38の後部には、減酸素室100が設けられている。減酸室100の前面は開口し、この減酸素室100内部には、引き出し式の減酸素容器102が収納されている。この減酸素容器102の扉104が、減酸素室100の前扉を兼ね、減酸素容器102を収納すると、扉104によって減酸素室100が密閉状態となる。
(2)減酸素装置200
減酸素装置200は、断熱性を有するケース204と、その内部に収納された減酸素ユニット202を有する。この減酸素ユニット202について、図2〜図6に基づいて説明する。なお、図2〜図4において、各部材の厚みは薄いものであるが、説明を判り易くするために、その厚みは拡大して記載している。
固体高分子電解質膜(以下、単に「電解質膜」という)206が縦方向に設けられ、電解質膜206の後部にはアノード208が設けられ、電解質膜206の前部にはカソード210が設けられている。カソード210は、カーボン触媒とカーボンペーパーを積層したものである。また、アノード208とカソード210には白金の触媒がそれぞれ担持されている。電解質膜206、アノード208及びカソード210がホットプレスなどを用いて一体に接合されて減酸素セルを形成している。アノード208の後方には、アノード集電体212が設けられ、カソード210の前方にはカソード集電体214が設けられている。両集電体212、214は、それぞれ気体が通過するためのスリット状の開口部216,218を有している。そして、アノード集電体212はアノード208にプラス通電を行い、カソード集電体214はカソード210にマイナス通電を行う。両集電体212,214は、不図示の電線からそれぞれ通電される。また、両集電体212,214が接触しないようにするために、絶縁体220が両集電体212,214の間に設けられている。この絶縁体220は額縁状であって、電解質膜206とアノード208とカソード210がその内部に収納されている。
アノード208側のアノード集電体212の後方には、シート状の給水体222が配されている。この給水体222としては、例えば不織布などである。また、この給水体222は、水の表面張力により吸い上げるシート状である。
集電体212と、給水体222の間には、板状のスペーサ211が配されている。このスペーサ211には、スリット状の開口部213が複数開口している。スペーサ211の厚みは1mmであり、集電体212と給水体222との間に一定の空間Aを形成する。
上記のようにして順番に積層した部材を、前後一対の後固定部材224と前固定部材226によって挟持して固定する。アノード側に配される後固定部材224は積層した部材を収納するための収納凹部228を有し、上部には両集電体212,214の突片が突出する溝230が設けられている。また、後固定部材224の中央には、気体が通過するためのスリット状の開口部232が開口している。
カソード側に取り付けられる前固定部材226は板状を成し、中央部に気体が通過するためのスリット状の開口部234を有している。図2に示すように、スリット状の開口部234に関して、前側の断面積と後側の断面積とは異なり、後にいくほど狭くなるように傾斜している。これは、カソード集電体214に空気を送り易くするためである。
図3と図4に示すように、後固定部材224と前固定部材226とは、不図示のネジによってネジ止めされる。これら部材が一体となったものを、「減酸素ユニット202」と呼ぶ。なお、減酸素ユニット202の上部からは両集電体212、214の突片がそれぞれ突出し、下部からは給水体222が垂れ下がっている。
(3)ケース204
図4に示すように、上記で説明した減酸素ユニット202が、箱型の断熱性を有するケース204内部に収納される。図4〜図6に示すように、ケース204は、直方体状の前ケース236、後ケース238、前ケース236及び後ケース238の間に挟まれた額縁状の中ケース240とより構成されている。減酸素ユニット202のカソード側に前ケース236が配され、アノード側に後ケース238が配され、減酸素ユニット202を収納した状態で前ケース236、後ケース238、中ケース240が不図示のネジによってネジ止めされる。
前ケース236について図4と図5に基づいて説明する。断熱性を有する前ケース236の後面の中央部には、正方形状の反応凹部244が設けられている。また、この反応凹部244の上面から前ケース236の上面に向かって溝状の上流路246が設けられ、前ケース236の上面に上通気孔248が開口している。また、反応凹部244の下面から下方に向かって溝状の下流路250が設けられ、前ケース236の下面に下通気孔252が開口している。そして、図2に示すように、反応凹部244によってカソード側のカソード集電体214と前ケース236の前壁との間に直方体状の空間Bが生じる。
次に、図4に基づいて中ケース240について説明する。額縁状の中ケース240の中央部242には、減酸素ユニット202の前固定部材226が収納される。
次に、図4と図6に基づいて後ケース238について説明する。後ケース238の前面中央部には、減酸素ユニット202の後固定部材224が収納できる収納凹部254が設けられ、この収納凹部254から後ケース238の上面に向かって両集電体212,214の突片がそれぞれ突出する溝256,258が設けられている。収納凹部254の後面には、さらに排気凹部260が設けられ、この排気凹部260の下面は互いに近づくように傾斜面を有し、排気口262に通じている。排気口262は、後ケース238の下面に開口している。
減酸素ユニット202を収納したケース204は、減酸素室100の容器収納部104の後面に取り付けられる。この取り付け方法について図2に基づいて説明する。
容器収納部104の後面中央部には、収納側に向かって立方体状の収納保持部264が突出している。この収納保持部264は、後方からケース204の前ケース236が収納される。そのため、前ケース236の上面及び下面に開口している上通気孔248と下通気孔252に対応する位置に上孔266と下孔268が開口している。
ケース204が、容器収納部104の後面から突出した状態となっているため、この突出部分を覆うようにカバー270を被せる。このカバー270は、合成樹脂製であって、ケース204の後ケース238を全て覆う形状に形成されている。なお、このカバー270には、両集電体212,214が突出するための集電体開口部278,278が設けられている。また、後ケース238の排気口262と通じた排気口280が開口している。
なお、容器収納部104に減酸素容器106を収納する構造に代えて、容器収納部104自身が食品を収納する減酸素容器で構成してもよい。
(4)給水装置300
次に、給水装置300について、図2と図7に基づいて説明する。
給水装置300は、給水本体302を有し、この給水本体302は、横長の直方体の箱体である。給水本体302は、その内部において区画壁304によって上下に区画され、上部が浄水区画306、下部が吸い上げ区画308を構成している。給水本体302の左端部上面、すなわち浄水区画306の上面には、給水パイプ152が接続されている。この給水パイプ152には、冷蔵庫10のRエバ28から発生した除霜水が受け皿54を介して送り込まれる。
区画壁304は、図6に示すように給水パイプ152が接続されている部分から下方に向かって傾斜し、右端部において吸い上げ区画308に通じる給水孔310が形成されている。浄水区画306内部には、イオン交換樹脂よりなる浄水部312が設けられている。この浄水部312を設けることにより、Rエバ28から供給された除霜水の水質による影響を取り除くことができ、減酸素ユニット115の劣化を防止できる。すなわち、除霜水は、Rエバ28に付着した霜であり、またドレンパンに集められているため、金属イオンが含まれている。そのため、給水体222を構成する合成樹脂繊維の加水分解を助長する可能性があるため、この浄水部312を設けることにより、除霜水の水質による影響を取り除くことができる。
吸い上げ区画308は、給水孔310から供給された水を溜めるための貯水部314を有している。また、吸い上げ区画308の左端部には排水パイプ154が設けられている。この排水パイプ154と貯水部314との間には、仕切り壁316が設けられている。給水孔310から給水された除霜水は、貯水部314に溜まる。この貯水部314は中央が凹み、上記で説明した減酸素ユニット202の給水体222の下部が浸され、給水体222はこの溜まった水を吸い上げる。貯水部314の水の量が多くなり仕切り壁316を超えると、排水パイプ154から不図示の蒸発皿に水が排水される。なお、横長の直方体である給水本体302において、吸い上げ区画308は、浄水区画306よりも前方に突出し、この吸い上げ区画308の前方に突出した天井面から給水体222が引き出されている。
(5)冷凍サイクル
次に、冷凍サイクルの構造について、図8に基づいて説明する。
冷凍サイクルは、圧縮機24の吐出側から順番に凝縮器60、三方弁62が接続されている。三方弁62の一方の出口には冷蔵用キャピラリーチューブ64とRエバ28が接続されている。三方弁62の他方の出口には冷凍用キャピラリーチューブ66とFエバ32が接続されている。その後に冷媒流路は一つになりサクションパイプ68を経て圧縮機24の吸入側に至る。可燃性冷媒は圧縮機24で圧縮されて、高温高圧の気体状の可燃性冷媒に変化し、凝縮器60で放熱しながら液体状となる。液体状の可燃性冷媒は、三方弁62によって冷蔵用キャピラリーチューブ64又は冷凍用キャピラリーチューブ66に送られ、ここで気化し易いように減圧され、その後にRエバ28又はFエバ32で気化し、周囲から熱を奪うことにより冷気が発生する。
(6)冷蔵庫10の電気的構成
次に、冷蔵庫10の電気的構成について、図9のブロック図に基づいて説明する。
減酸素装置200のアノード208とカソード210は、電源106から直流電圧が供給され、電源106から供給された電圧は、アノード208とカソード210との間に設けられた電圧計108によってその電位差が検出できる。
制御板26には、マイクロコンピュータよりなる制御部70が設けられている。この制御部70には、圧縮機24、三方弁62、Rファン30、Fファン34、減酸素装置200、Rセンサ31、Fセンサ35、電源106、電圧計108が接続されている。
制御部70は、圧縮機24のインバータモータと三方弁62を用いて上記で説明した冷凍サイクルを制御し、冷蔵室14を2℃〜4℃、野菜室16の庫内温度を5℃〜7℃及びチルド室44を0℃〜1℃に制御し、小型冷凍室18、製氷室、冷凍室20の庫内温度を−20℃〜−25℃に制御する。
また、制御部70は、電源106を制御することにより、減酸素装置200のアノード208とカソード210への印加電圧を制御し、また、電圧計108からの測定値によって、現在印加されている電位差を測定する。
(7)減酸素装置200の動作状態
減酸素装置200の動作状態について説明する。
減酸素室100に食品を収納すると、制御部70が、両集電体208,210に対し通電を開始する。
次に、図2と図5に示すように、減酸素容器106の空気が、減酸素室100の下通気孔252、下流通路250、空間B、固定部材226の開口部234を経て供給され、両集電体210,208が通電されているので、流入した空気から減酸素が行われる。アノード208とカソード210では次の式(1)と式(2)のような減酸素反応が行なわれる。

アノード・・・2HO→O+4H+4e ・・・(1)

カソード・・・O+4H+4e→2HO ・・・(2)

この減酸素反応式を説明すると、給水体222からの水蒸気が空間Aを通り、アノード208で電気分解して水素イオン(プロトンH)を作り、その水素イオンが電解質膜116内を移動してカソード210に到達し、減酸素室100内部の酸素と反応して水を生成し、酸素を消費する。これにより減酸素が行われ、食品をCA貯蔵できる。
次に、図2と図6に示すように、減酸素ユニット202のアノード208で発生した酸素が、後ケース238の排気路262から拡散する。
(8)水素の発生防止方法
次に、制御部70が上記のように減酸素装置200を動作させる場合において、カソード210からの水素の発生を防止する方法について図10に基づいて説明する。
式(1)と式(2)の減酸素反応を行うためには、アノード208とカソード210の電位差は、例えば1.23V−1.23V=0Vとして反応開始理論電圧は0Vとなる。しかし、これに加えて減酸素反応を開始するためのエネルギー障壁(活性化エネルギー)を超えるために、減酸素セルに含まれる白金などの金属触媒を用いてエネルギー障壁を低減させ、さらに電源106により電圧を印加することにより減酸素反応を起こす。
一方、カソード電位が0V以下となるとカソード210側で水素が発生することは次の式(3)に示すように原理的に明確である。

2H+2e→H ・・・(3)

そのときの水素が発生するカソード電位はアノード電位と等しくなるため、カソード電位の上限をアノード電位とすることで水素の発生が起こらないようにする。
図10は、縦軸がアノード208とカソード210の電位、横軸が電流、点線がアノード電位、二点鎖線がカソード電位であり、実線がアノード電位とカソード電位との電位差を示している。そして、上記で説明したように、カソード電位が0Vより低くなると水素が発生する。
そのため、制御部70は、カソード210で水素の発生を防止するために、実線で示す電位差が上限電位差1.5Vよりも常に低くなるように電源106を制御する。この場合に、電解質膜206が経年劣化するまでは、制御部70は、常に同じ電流値を流しておく定電流制御を行えば、上限電位差1.5V以下になる。
しかし、電解質膜206の経年劣化により、制御部70が定電流制御を行っていても、次第に実線で示す電位差が大きくなる。そのため、制御部70は、実線で示す電位差が上限電位差1.5Vになるまでは定電流制御を行い、電位差が上限電位差1.5Vに到達すると、それ以上電位差が広がらないようにするために、制御部70は定電圧制御に切り換え、常に上限電位差より低くなるように電源106の電圧を制御する。このため、制御部70は、アノード208とカソード210の電位差を電圧計108によって常に測定し、電源106を用いて定電流制御と定電圧制御を行う。
(9)効果
本実施形態によれば、カソード210側で水素が発生する前の上限電位差を超えないように、定電流制御及び定電圧制御を行うため、電解質膜206が経年劣化しても、カソード210側から水素が発生せず、可燃性冷媒を用いても安全である。
実施形態2
次に、実施形態2の冷蔵庫10について、図11に基づいて説明する。
実施形態1では、制御部70は、カソード210から水素が発生しない制御を行っていたが、本実施形態ではカソード210から水素が発生しても、この発生した水素の量を爆発限界以下に抑えて外に排出するものである。
水素と空気の爆発限界は、水素と空気の混合下限値が4.65%、上限値が93.3%であるため、水素の発生量は、減酸素室100の容積を考慮してこの下限値以下にする必要がある。
また、水素はその分子量から明らかなように最も軽い気体であり、水素が発生すると上方へ拡散するため、天井部分に集まって水素の濃度が高くならないようにする必要もある。
水素の発生量は、アノード電位を基準として、それ以上の電圧がかかったときに流れる電流値I(A)と次の式(4)を用いて計算できる。

Q={I/(2×F)}×22400×{(273.15+T)/298.15}
...(4)

但し、Q(cc/秒)は水素の発生量、T(℃)は庫内温度、F(C/mol)はファラデー定数である。
野菜室14の庫内温度T=5℃、I=2.4Aとすると、式(4)より水素の発生量はQ=0.26cc/秒=15.6cc/分となる。そのため、減酸素室100の容積を10リットルとすると、下限値の4.65%(465cc)まで到達する時間は約30分、正確には29.8分となる。
図11に示すように、制御部70が、アノード電位=1.5V以上の電圧を測定した時にその時刻を記憶し、その記憶した時刻から流れた電流値と時間から水素の発生量を計算できる。すなわち、記憶した時刻から29.8分経過するまでは爆発限界を超えていない。そして、制御部70によって計算された水素の発生量が爆発限界近くになると、制御部70が減酸素装置200の電源106の出力を停止したり、電圧設定値を下げることで、それ以上の水素が発生させない。
また、発生した水素は、これ以上濃度が高くならないように減酸素室100から外に排出する必要がある。そこで、本実施形態では、減酸素容器102の扉104に開閉センサを設け、また、減酸素室200内部にファンを設ける。そして、ユーザが扉104を開けて、制御部70が、開閉センサがこの開状態を検出したときに減酸素室200内部にあるファンを回転させて水素を強制的に減酸素室200外へ排出する。
また、本実施形態の変更例として、図12に示すように、減酸素室100の天井部に排出開口部としての水素排出口110を設け、また、キャビネット12の天板に排出開口部としての水素排出口112を設ける。これにより、減酸素室100から水素排出口110を通って水素が外に常に排出され、またRファン30を利用して冷蔵庫10の庫内を循環して最終的に冷蔵室12の上部に水素が溜まり、この溜まった水素は、キャビネット12の天板にある水素排出口112から排出される。
変更例
上記各実施形態の変更例としては、可燃性冷媒が漏れたときの安全性を確保するために、冷蔵庫10の庫内に可燃性冷媒の漏れを検出する漏れ検出センサを設け、この漏れ検出センサが可燃性冷媒が漏れたことを検出した場合に、制御部70が、減酸素装置200を強制的に停止させる。
上記実施形態では減酸素室100を野菜室14の天井部に設けたが、これに代えて、減酸素室100をチルド室44に設けてもよい。この理由は、チルド室44に収納される肉に含まれる油脂の酸化を防止し、肉などの保存に適するからである。
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると共に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
10・・・冷蔵庫、16・・・野菜室、100・・・減酸素室、102・・・減酸素容器、104・・・扉、106・・・電源、108・・・電圧計、200・・・減酸素装置、202・・・減酸素ユニット、208・・・アノード、210・・・カソード

Claims (10)

  1. 固体高分子電解質膜と、
    前記固体高分子電解質膜の一方の側に設けられたアノードと、
    前記固体高分子電解質膜の他方の側に設けられ、減酸素室へ通じるカソードと、
    前記アノードに通電するアノード集電体と、
    前記カソードに通電するカソード集電体と、
    前記アノード側に設けられた水の給水体と、
    前記アノードと前記カソードに電圧を印加する制御部と、
    を有し、
    前記制御部は、前記アノードと前記カソードとの間の電位差が、所定の上限電位差に到達するまでは定電流を維持しつつ前記アノードと前記カソードとの間に電圧を印加し、前記電位差が前記上限電位差に到達すると前記上限電位差を超えないように前記アノードと前記カソードとの間に定電圧を印加する減酸素制御を行う、
    減酸素装置。
  2. 前記アノードと前記カソードとの間の電圧値、又は、電流値を測定する測定手段を有し、
    前記制御部は、前記測定手段の測定した前記電圧値、又は、前記電流値に基づいて前記減酸素制御を行う、
    請求項1に記載の減酸素装置。
  3. 固体高分子電解質膜と、
    前記固体高分子電解質膜の一方の側に設けられたアノードと、
    前記固体高分子電解質膜の他方の側に設けられ、減酸素室へ通じるカソードと、
    前記アノードに通電するアノード集電体と、
    前記カソードに通電するカソード集電体と、
    前記アノード側に設けられた水の給水体と、
    前記アノードと前記カソードに電圧を印加する制御部と、
    前記アノードと前記カソードとの間の電圧値、又は、電流値を測定する測定手段と、
    を有し、
    前記制御部は、前記測定手段が測定した前記電圧値、又は、前記電流値に基づいて前記カソードから発生する水素の発生量を算出する、
    減酸素装置。
  4. 前記減酸素室内部の前記水素を排出する水素排出手段を有する、
    請求項3に記載の減酸素装置。
  5. 前記減酸素室の扉の開閉を検出する開閉検出手段を有し、
    前記制御部は、前記開閉検出手段が前記扉の開状態を検出したときに、前記水素排出手段を動作させる、
    請求項4に記載の減酸素装置。
  6. 前記水素排出手段がファンである、
    請求項4又は5に記載の減酸素装置。
  7. 前記水素排出手段が、前記減酸素室の上部に設けられた排出開口部である、
    請求項4に記載の減酸素装置。
  8. 前記減酸素室と前記減酸素装置が冷蔵庫の庫内に設けられ、
    前記水素排出手段が、前記冷蔵庫の天板に設けられた排出開口部である、
    請求項4に記載の減酸素装置。
  9. 前記減酸素室と前記減酸素装置が冷蔵庫の庫内に設けられ、
    前記冷蔵庫の冷凍サイクルには、可燃性冷媒が流れ、
    前記可燃性冷媒が漏れたことを検出する漏れ検出手段を有し、
    前記制御部は、前記漏れ検出手段が前記可燃性冷媒の漏れを検出したときに前記減酸素装置の動作を停止させる、
    請求項1から8のいずれか一項に記載の減酸素装置。
  10. 請求項1から9のいずれか一項に記載の減酸素装置が設けられた、
    冷蔵庫。
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