JP2015093949A - 表面滑り性に優れた撥水性コーティング剤およびコーティング膜の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】撥水性、滑り性、深みのある光沢性を有し、かかる性能の耐久性に優れたコーティング膜を得ることが可能なコーティング剤の提供。亦、大型基板にも適用可能なコーティング斑の発生が無い製膜性に優れたコーティング膜の製造方法の提供。【解決手段】下記成分(1)〜(4)を含有してなることを特徴とする撥水性コーティング剤であって、該撥水性コーティング剤を基板に塗布したのち、極細長繊維からなる布を用いて展延させた後、室温下で自然乾燥によって硬化させて、耐久性に優れたコーティング膜を得る。成分(1)100重量部に成分(2)を5〜1000重量部配する該撥水コーティング剤。(1)両末端にシラノール基を有する数平均分子量(Mn)が50,000〜200,000のジメチルシリコーンポリマー,(2)3官能性シラン化合物および/またはその部分加水分解縮合物,(3)アルミニウムトリアルコキシド化合物,(4)溶剤【選択図】なし
Description
本発明は、耐久性のある表面滑り性に優れた撥水性コーティング膜の作製に適した撥水性コーティング剤およびコーティング膜の製造方法に関するものである。
従来から、各種基板表面に雨水などによる汚れを防ぐことを目的に、表面エネルギーを小さくすることができるフッ素系材料やシリコーン系材料からなる撥水性コーティング剤およびこれら撥水性コーティング剤を塗布することによって得られる撥水性コーティング膜が検討されてきた。とくに、コーティング膜の耐久性を向上させるために、各種基板表面に撥水性コーティング剤を塗布したのちに、加熱処理や紫外線などの活性光線照射を施すことによる架橋反応を行わせる方法が用いられてきた。
フッ素系材料としては、フッ素化アルキル基(Rf基)を含む材料が知られている。かかる材料は表面のみにRf基を存在させることで撥水性の付与が可能であるが、塗膜表面の滑り性向上効果や耐久性に劣るという課題がある。
また、耐久性向上を目的にアクリル系紫外線硬化性樹脂とフッ素系表面改質剤からなるコーティング剤処理を施して撥水性および耐摩耗性に優れる表面を有する材料の製造方法なども提案されている。しかし、特殊な処理装置を必要とし、塗膜表面の滑り性に乏しいことに加えて、大型基板や異型基板材料への適用が困難であるなどといった汎用性に欠けるという課題を抱えている。
一方、シリコーン系材料としては、両末端にシラノール基やアクリル基を有するジメチルシリコーン化合物などからなる硬化性材料が知られている。これらの材料は表面のみならず内部まで3次元架橋した構造となっているために、優れた耐摩耗性を有するという特徴がある。しかし、従来のシリコーン系材料は加熱装置や紫外線照射装置のような特殊な設備を必要とするといった課題がある。さらには、撥水性と深みのある光沢性など、実用的に重要な意匠性や雨水などによる汚染防止などを兼ね備えることが困難であるといった課題がある。さらには、シリコーン系材料の分子量が小さいために、塗膜表面の滑り性に劣るという課題も抱えている。
また、表面に撥水性材料からなる突起を形成させることによる撥水性表面を得ることも提案されているが、高い撥水性を有する半面、やはり耐久性に欠ける課題がある。さらには、光沢性を低下させる欠点も有しているため、とくに意匠性を重視する用途には好ましくない。
さらには、特殊な装置を用いず、外気の湿気で硬化させる湿気硬化性コーティング剤についても提案されているが、撥水性や滑り性が不十分である、あるいはコーティング膜の膜厚が不十分なため、撥水性と光沢性の両立を実現する表面を得ることが困難であるといった課題を抱えている。
本発明は、以上のような従来の欠点に鑑み、優れた撥水性に加えて、滑り性、深みのある光沢性などの実用性に富み、かつ耐久性に優れる撥水性コーティング膜の作製に適した撥水性コーティング剤を提供することを目的としている。
さらに、本発明撥水性コーティング剤を適用することで、特殊な処理装置を用いることなく、自然環境下などの温和な条件下で滑り性に優れた撥水性コーティング膜を提供すること、および良好な外観を有するコーティング膜の製造方法を提供することも目的としている。
本発明者は上記課題を解決するために鋭意検討した結果、下記成分(1)〜(4)を含有してなることを特徴とする撥水性コーティング剤を見出した。
(1)両末端にシラノール基を有する数平均分子量(Mn)が50,000〜200,000のジメチルシリコーンポリマー
(2)3官能性シラン化合物および/またはその部分加水分解縮合物
(3)アルミニウムトリアルコキシド化合物
(4)溶剤
(1)両末端にシラノール基を有する数平均分子量(Mn)が50,000〜200,000のジメチルシリコーンポリマー
(2)3官能性シラン化合物および/またはその部分加水分解縮合物
(3)アルミニウムトリアルコキシド化合物
(4)溶剤
また、本発明者は上記課題を解決するコーティング膜の製造方法として、下記成分(1)〜(4)を含有してなる撥水性コーティング剤を塗布した後、極細長繊維からなる布を用いて展延させることを特徴とする撥水性コーティング膜の製造方法を見出した。
(1)両末端にシラノール基を有する数平均分子量(Mn)が50,000〜200,000のジメチルシリコーンポリマー
(2)3官能性シラン化合物および/またはその部分加水分解縮合物
(3)アルミニウムトリアルコキシド化合物
(4)溶剤
(1)両末端にシラノール基を有する数平均分子量(Mn)が50,000〜200,000のジメチルシリコーンポリマー
(2)3官能性シラン化合物および/またはその部分加水分解縮合物
(3)アルミニウムトリアルコキシド化合物
(4)溶剤
本発明における両末端にシラノール基を有する数平均分子量(Mn)が50,000〜200,000のジメチルシリコーンポリマーとは、両末端にSi−OHで表わされるシラノール基を有し、一般に市販されている材料が使用可能である。
高い撥水性、いわゆる水の静止接触角が高く、かつ塗膜表面の滑り性に優れたコーティング膜を得るためには、数平均分子量(Mn)が50,000以上のジメチルシリコーンポリマーを用いることが必要である。数平均分子量(Mn)が50,000未満の分子量が小さいジメチルシリコーンポリマー材料では、高い撥水性、あるいは良好な塗膜表面滑り性を得ることができない。薄い膜厚で高い撥水性、あるいは塗膜表面滑り性を得るためには、数平均分子量(Mn)が55,000以上、さらに高い撥水性および塗膜表面の滑り性を得るためには数平均分子量(Mn)が60,000以上の両末端にシラノール基を有するジメチルシリコーンポリマーを用いることが好ましい。
一方、数平均分子量(Mn)が高いジメチルシリコーンポリマー材料は、高い撥水性、塗膜表面滑り性に加えて深みのある光沢性発現にも有用であるが、ジメチルシリコーンポリマーの数平均分子量(Mn)が高くなるに伴ってチクソトロピー性が強くなり、とくに200,000を超えると硬化時のゲル効果が大きくなるために、均一な塗膜を形成することが困難となる傾向にある。
すなわち、数平均分子量(Mn)が200,000までのジメチルシリコーンポリマーを用いた場合は、塗装方法等の改良によって均一な塗膜を得ることが可能であるが、200,000を超えると塗装方法の工夫では対応が極めて困難である。さらには、材料の製造そのものが困難となり、入手することが難しく、かつ高価となるため、実用性に乏しいという課題もある。
なお、数平均分子量(Mn)が高い材料と本発明成分(2)との相溶性をより高めるために比較的、数平均分子量(Mn)の小さいジメチルシリコーンポリマーを併用することは好ましく用いられる。
本発明で言うところの数平均分子量(Mn)は、通常の合成高分子の分子量測定に使用されるGPCシステム(Gel Permeation Chromatography System)を用いれば容易に測定可能である。例えば、東ソー株式会社製の高速GPC装置(HLC-8220GPC)を用い、クロロホルムを展開溶媒として用いる方法を挙げることができる。
本発明撥水性コーティング剤の使い易さの改良、および硬化速度のコントロール、べたつき性向上、油脂成分に対する防汚性改良などを目的に、先に述べた相溶性改良に有効な数平均分子量(Mn)が50,000未満の両末端にシラノール基を有するジメチルシリコーンポリマーを併用することが可能である。
さらには、コーティング膜の屈折率などを制御する目的で、フェニル基やトリフルオロプロピル基を含有する両末端にシラノール基を有するシリコーンポリマーなどを併用することも可能である。とくに、表面反射を抑えることを可能とする、より低い屈折率のコーティング膜を得るためには、トリフルオロプロピル基含有シリコーンポリマーを併用することが好ましい。
本発明撥水性コーティング剤は、基板への濡れ性に優れているとは言い難い。しかし、本発明撥水性コーティング剤は極薄い膜厚に塗布されるため、基板との高分子間親和力で均一塗布および耐久性確保を可能とするものである。
基板との濡れ性向上を図り、コーティング特性を向上させるためには、数平均分子量(Mn)が50,000未満の両末端にシラノール基を有するジメチルシリコーンポリマーを併用することが、塗膜性能を低下させることなく可能なことから好ましい。
かかる両末端にシラノール基を有する数平均分子量(Mn)が50,000未満のジメチルシリコーンポリマーやフェニル基含有シリコーンポリマー、トリフルオロプロピル基含有シリコーンポリマーなどの添加量は、あまり多くなり過ぎると撥水性を低下させる、塗膜表面の滑り性を低下させる、あるいは深みのある光沢性を低下させる傾向にあることから、目的とする特性との関係で決められるべきものである。
本発明の成分(1)である数平均分子量(Mn)が50,000〜200,000の両末端にシラノール基を有するジメチルシリコーンポリマーで入手可能な材料としてはDMS-S42、DMS-S45、DMS-S51(GELEST Inc.製)などが挙げられる。
これら両末端にシラノール基を有するジメチルシリコーンポリマーは、単独で用いることも可能であるし、2種以上併用することも可能である。
以上の本発明の成分(1)と併用可能な数平均分子量(Mn)が50,000未満の両末端にシラノール基を有するジメチルシリコーンポリマーで入手可能な材料としては、PRX413、BY16-873(東レ・ダウコーニング製)、X-21-5841、KF-9701(信越シリコーン製)、DMS-S12、DMS-S14、DMS-S15、DMS-S21、DMS-S27、DMS-S31、DMS-S32、DMS-S33、DMS-S35(GELEST Inc.製)などを挙げることができる。
また、両末端にシラノール基を有するフェニル基含有シリコーンポリマーとしてはPDS-0338,PDS-1615(GELEST Inc.製)、トリフルオロプロピル基含有シリコーンポリマーとしてはFMS-9921,FMS-9922(GELEST Inc.製)などを挙げることができる。
次に、成分(2)について以下に述べる。本発明撥水性コーティング剤に含まれる成分(1)は、単独では液状、ないしは流動性はあるものの非常に高粘度の液状物であり、未硬化状態では撥水性に乏しく、さらにはべとつきが大きいため、実用性のあるコーティング膜は得られない。
よって、撥水性および滑り性に優れる成分(1)を含むコーティング膜を得るためには、三次元架橋させることが必要となる。そのために用いられる成分が成分(2)である。
すなわち、成分(2)を用いることで、コーティング膜は三次元架橋構造となり、撥水性、滑り性、あるいはかかる性能の耐久性を向上させることが可能となる。
ここで、本発明成分(2)の含有量は成分(1)を三次元架橋させることで、べとつきを解消し、さらには耐久性の付与が可能な量を含んでいれば十分であるが、通常、本発明の特徴である室温硬化を可能とするためには、成分(1)100重量部に対して、成分(2)を5重量部〜1,000重量部を用いることが望ましい。さらに撥水性と滑り性の両性能を満足させるためには成分(1)100重量部に対して、成分(2)を10重量部〜900重量部を用いることが好ましい。
なお、成分(2)における重量部とは使用される化合物が、湿気などによって硬化した後の残分量が一定になったときの重量として定義される重量部数を示す。ちなみに、成分(1)は実質的に揮発性を全く有していないので、使用重量そのものが重量部となる。よって、成分(2)の重量部は硬化後の総重量部から成分(1)を差し引いた重量部として求めることができる。
成分(2)は、3官能性シラン化合物および/またはその部分加水分解縮合物であって、成分(1)である両末端にシラノール基を有する数平均分子量(Mn)が50,000〜200,000のジメチルシリコーンポリマーを特殊な装置を必要とせずに硬化可能な材料であればとくに限定されないが、硬化速度、硬化膜の撥水性および滑り性、さらには耐久性付与等の観点から、以下の材料が好ましく用いられる。
ここで、3官能性シラン化合物としては、下記一般式(A)で表わされるシラン化合物が挙げられる。
R1Si(OR2)3 (A)
(ここで、R1は炭素数1〜3のアルキル基、またはアルケニル基、OR2は加水分解性基である)。
R1Si(OR2)3 (A)
(ここで、R1は炭素数1〜3のアルキル基、またはアルケニル基、OR2は加水分解性基である)。
炭素数1〜3のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基が挙げられる。中でも、撥水性が優れるアルキル基としては、メチル基、エチル基が挙げられる。さらにはより耐久性を高めることが可能なことからもっとも好ましいアルキル基としてメチル基が挙げられる。
アルケニル基としては、ビニル基やアリル基が挙げられるが、中でも入手が容易なことからビニル基が好ましく用いられる。
次に、加水分解性基であるOR2について述べる。OR2としては、加水分解が可能な官能基であれば、とくに限定されるものではないが、加水分解の容易さ、すなわち空気中の水分によって容易に加水分解反応が可能であるとの観点から、アシルオキシ基や低級アルコキシ基が好ましく用いられる。
中でも、室温環境下放置による硬化処理を考慮すれば、加水分解性に優れ、加水分解後の揮散性等からアセトキシ基、メトキシ基、エトキシ基、プロピル基が好ましい加水分解性基として挙げられる。さらに、本発明コーティング剤が特別な換気設備などを有していない環境下でも塗布可能なことが望まれることを考慮すると、揮散後の臭気や刺激性等の関係からメトキシ基、エトキシ基が好ましく、中でも適度な加水分解性を有し、かつ揮発性に優れ、臭気が少ないことからメトキシ基が最も好ましい。
3官能性シラン化合物の部分加水分解縮合物としては、上記一般式(A)で表わされるシラン化合物をゲル化しない程度の水で加水分解し、その後、該加水分解物を熟成によって縮合させた化合物や、敢えて濃縮することで縮合をより進行させた化合物が挙げられる。
ここで、上記一般式(A)で表わされるシラン化合物が3官能性シラン化合物であること、さらには溶液塗布を可能とするために加水分解物をゲル化させないこと、および部分加水分解縮合物にすることを考慮すると、加水分解に使用される水の添加量は3官能性シラン化合物1モルに対して1.20モル〜0.04モル、よりゲル化を抑制するためには1.10モル〜0.04モル、さらには1.05モル〜0.04モルであることが望ましい。すなわち、0.04モル未満の場合には未反応3官能性シラン化合物の残存量が多くなり、部分加水分解縮合物にする効果が小さくなる。
また、加水分解性基がメトキシ基やエトキシ基を有し、かつR1官能基が低級アルキル基を有する化合物のような架橋反応が起こり易い3官能性シラン化合物の場合には1.10モル〜0.40モル、さらに好ましくは1.05モル〜0.50モルが最も好ましい。
加水分解に際しては、加水分解反応をスムーズに進行させ、より確実に進行させるためには、用いる水に酸や塩基を添加すること、あるいは加温することも有用な手段である。とくに、加水分解後に脱アルコールや脱酢酸を行う際には、濃縮後の部分加水分解縮合物中に酸や塩基を残存させないために、加水分解に用いる酸としては希塩酸が好ましい。希塩酸の濃度は加水分解性基R2の種類などによって適宜、選択されるべきであるが、通常は0.005規定〜1.500規定の塩酸が用いられる。
上記一般式(A)で表わされる3官能性シラン化合物は通常、水との相溶性に乏しいため、加水分解反応が一部進行するまでは不均一反応となる。かかる反応の均一化を図る目的で3官能性シラン化合物にアルコールなどを添加することも好ましく適用される。その際に添加するアルコールとしては加水分解後に生成するアルコールと同じ、ないしはそれよりも低級なアルコールが好ましい。
加水分解反応は通常、3官能性シラン化合物中に水を添加して行われるが、添加する水は、撹拌下で滴下しながら添加する方法、あるいは一度に添加しても何ら問題は無い。また、該加水分解反応は発熱を伴う反応であるため、加水分解によって生成するアルコール等が異常に揮発することを抑えるために、外温を冷却することも好ましい実施態様である。
また、加水分解後の脱水縮合は室温下で熟成することで十分進行可能であるが、より確実に脱水縮合を進行させるためには加水分解物を脱アルコール等による濃縮によって、より完全に脱水縮合反応を進行させることが可能である。
得られた部分加水分解縮合物は、FT-IRやGC/MS等による分析結果から、実質的にシラノール基を有さないアルコキシ基、あるいはアシルオキシ基を官能基として有する化合物であることが確認できる。
本発明における一般式(A)で表わされる3官能性シラン化合物の具体的な代表化合物例としては、メチルトリアセトキシシラン、エチルトリアセトキシシラン、プロピルトリアセトキシシラン、イソプロピルトリアセトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、プロピルトリメトキシシラン、イソプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、プロピルトリエトキシシラン、イソプロピルトリエトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、メチルトリプロピオノキシシラン、エチルトリプロピオノキシシラン、プロピルトリプロピオノキシシラン、イソプロピルトリプロピオノキシシラン、ビニルトリプロピオノキシシラン、メチルトリプロポキシシラン、エチルトリプロポキシシラン、プロピルトリプロポキシシラン、イソプロピルトリプロポキシシラン、ビニルトリプロポキシシラン、メチルトリブトキシシラン、エチルトリブトキシシラン、プロピルトリブトキシシラン、イソプロピルトリブトキシシラン、ビニルトリブトキシシランなどが挙げられる。
これらの3官能性シラン化合物は、そのままで組成物中に添加混合して用いることも可能である。しかし、一般的に3官能性シラン化合物は揮発性を有するものが多く、塗膜化段階で一部揮発し、さらにはその揮発量は温度や湿度などの環境に大きく依存することから、性能のばらつき要因となるため、あらかじめ加水分解し、部分加水分解縮合物として用いることが好ましい。また、部分加水分解縮合物は1分子内の加水分解官能基数が多くなるため、架橋度を高める効果があり、その結果、コーティング膜の耐久性向上にも有効である。
3官能性シラン化合物は、それぞれ単独で用いることも可能であるが、耐久性、硬化速度や撥水性のバランスを高める目的で、部分加水分解縮合物を含めて2種以上の3官能性シラン化合物を併用して使用することも可能であることは言うまでもない。
3官能性シラン化合物の中でもとくにメチルトリメトキシシラン化合物、エチルトリメトキシシラン化合物、メチルトリエトキシシラン化合物、エチルトリエトキシシラン化合物、またアシルオキシシラン化合物としてはエチルトリアセトキシシラン化合物が、撥水性、滑り性に優れ、さらにはこれらの性能の耐久性が高く、加えて性状が室温で液体のために取り扱い易さに優れることから、とくに好ましく用いられる。
また、エチルトリアセトキシシラン化合物とメチルトリアセトキシシラン化合物との混合系は、室温で液体として取り扱うことが可能なこと、および架橋度をさらに高めることが可能なことから好ましい実施態様のひとつとして挙げられる。
3官能性シラン化合物の部分加水分解縮合物としてはメチルトリメトキシシラン化合物、メチルトリエトキシシラン化合物、エチルトリメトキシシラン化合物およびエチルトリエトキシシラン化合物の部分加水分解縮合物が、塗料の安定性、溶剤および成分(1)との相溶性に優れることから好ましく用いられる。さらには塗布後の反応性、反応生成物の揮発性などのバランスに優れることからメチルトリメトキシシラン化合物の部分加水分解縮合物がもっとも好ましく用いられる。
3官能性シラン化合物の部分加水分解縮合物の構造としては、鎖状構造や環状構造を挙げることができるが、いずれの構造においても塗布後に架橋反応が可能なアルコキシ基やアセトキシ基などの官能基を有している。
また、3官能性シラン化合物1分子内にアセトキシ基とアルコキシ基の2種以上を有する3官能性シラン化合物も硬化速度制御の観点から、好ましく用いられる。1分子内にアセトキシ基とアルコキシ基の2種の官能基を有する3官能性シラン化合物は、たとえばトリアセトキシシラン化合物に各種アルコールを適当量添加し、単に撹拌・混合することによる置換反応によって得ることができる。また、必要に応じて加熱等を行うことで、より簡単に得ることも可能である。
3官能性シラン化合物や3官能性シラン化合物の部分加水分解縮合物、さらにはトリアセトキシシラン化合物と各種アルコールとの反応によって得られる3官能性シラン化合物の成分分析、構造解析はGC/MS、FT-IR等で容易に行うことができる。
次に、成分(3)であるアルミニウムトリアルコキシド化合物について述べる。アルミニウムトリアルコキシド化合物を用いることで、コーティング膜を着色することなく、撥水性、滑り性およびその耐久性に優れた膜を得ることができるばかりでなく、有機スズ化合物などの他の有機金属化合物に比べて安全性にも優れると言う特長がある。
アルミニウムトリアルコキシド化合物としては、下記一般式(B)で表わされる材料が安全性に加えて、硬化性、耐久性の観点から好ましい化合物として挙げられる。
Al(OR3)3 (B)
(ここで、R3は炭素数1〜10の炭化水素基である)。
Al(OR3)3 (B)
(ここで、R3は炭素数1〜10の炭化水素基である)。
炭素数1〜10のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基が挙げられる。とくに炭素数が3以上のアルキル基においては鎖状、分岐状であってもとくに問題ない。
中でも、反応性に優れるアルキル基としては、プロピル基、ブチル基が挙げられ、硬化速度が速いにもかかわらず拭き上げ時の展延性に優れることから好ましく用いられる。とくに、分岐状アルコキシド化合物であるイソプロピル基、t−ブチル基およびイソブチル基が好ましい。
具体的なアルミニウムトリアルコキシド化合物としては、硬化性と塗料ポットライフとのバランスに優れたアルミニウムトリメトキシド、アルミニウムトリエトキシド、アルミニウムトリプロポキシド、アルミニウムトリイソプロポキシド、アルミニウムトリn−ブトキシド、アルミニウムトリ-sec-ブトキシド、アルミニウムトリ-t-ブトキシド、アルミニウムトリペントオキシドなどのアルミニウムトリアルコキシドが挙げられる。
とくに室温で液状を示すアルミニウムトリアルコキシド化合物は塗料化段階で溶解が容易なことから取り扱い性に優れることから好ましく、中でもアルミニウムトリ-sec-ブトキシドが取り扱い易さと硬化性の観点から、最も好ましい。
これらのアルミニウムトリアルコキシド化合物は、単独でも2種以上併用してもよい。さらには、1分子内に2種以上のアルコキシドを有するアルミニウムトリアルコキシド化合物も好ましい実施態様として挙げられる。
本発明に用いられる成分(2)の3官能性シラン化合物および/またはその部分加水分解縮合物は、成分(3)であるアルミニウムトリアルコキシド化合物と併用して用いることで、はじめて有用な塗膜を形成することができる。すなわち、成分(2)である3官能性シラン化合物および/またはその部分加水分解縮合物と成分(3)であるアルミニウムトリアルコキシド化合物のいずれが含まれていなくても、強固な三次元架橋構造にならない。
なお、強固な三次元架橋構造を有するかどうかは、成分(1)、成分(2)を溶解可能な溶剤、たとえばイソパラフィン系炭化水素溶剤であるアイソパーE中に室温下で数時間以上浸漬した後の残存固形分量や塗膜の撥水性などを測定することで確かめることができ、前者は一般的にはゲル分率と呼ばれる。
高い耐久性を得るためには、ゲル分率が60%以上、さらに好ましくは70%以上、また、水の静止接触角保持率が90%以上、さらに好ましくは95%以上を有していることが望ましい。
なお、成分(2)である3官能性シラン化合物および/またはその部分加水分解縮合物と成分(3)であるアルミニウムトリアルコキシド化合物の添加重量比は、成分(1)の種類や成分(1)と成分(2)の組成重量比によって、実験的に定められるべきであるが、通常は((3官能性シラン化合物および/またはその部分加水分解縮合物)/アルミニウムトリアルコキシド化合物)=1/1〜700/1の重量比範囲であることが好ましい。
すなわち、3官能性シラン化合物および/またはその部分加水分解縮合物とアルミニウムトリアルコキシド化合物の添加重量比が1/1未満では、架橋度が劣る傾向にあり、耐久性に優れたコーティング膜を得ることが困難となる。また、3官能性シラン化合物および/またはその部分加水分解縮合物とアルミニウムトリアルコキシド化合物の添加重量比が700/1を越える場合には、硬化が不十分となり、三次元架橋度が低下するため、耐久性が劣る傾向にある。
より好ましい添加重量比としては、撥水性、滑り性および耐久性のバランスがもっとも得られやすいことから、3/1〜550/1、さらに好ましくは4/1〜500/1が用いられる。
また、成分(2)の3官能性シラン化合物および/またはその部分加水分解縮合物および成分(3)のアルミニウムトリアルコキシド化合物などからなる架橋剤中には、塗料としての安定性、撥水性、成分(1)との相溶性向上の観点から、塗料中における三次元化の進行が制御可能な範囲内であれば水分やアルコール等の活性プロトンを有する化合物が含有されていても何ら問題はない。
次に本発明の成分(4)について述べる。本発明撥水性コーティング剤は、成分(1)、成分(2)および成分(3)を成分(4)である溶剤に溶解させた状態で保存・使用されることから、溶剤としてはこれら成分と均一混合可能な有機化合物が適用される。
本発明撥水性コーティング剤は成分(1)として両末端にシラノール基を有する数平均分子量(Mn)が50,000〜200,000のジメチルシリコーンポリマーが用いられるが、数平均分子量が高いジメチルシリコーンポリマーを用いると塗料粘度が高くなるため、無溶剤系で塗料化することは実質的に不可能となるばかりか、実用的でない。したがって、塗膜の均一化および塗料安定性の観点から、溶剤に溶解させて使用される。
本発明撥水性コーティング剤が、通常、室温環境下のような温和な条件下で使用されるため、少なくとも溶剤のうちの50wt%以上は1気圧下の沸点が60℃〜250℃、より好ましくは70℃〜230℃を有する溶剤であることが好ましい。
また、本発明の成分(2)である3官能性シラン化合物および/またはその部分加水分解縮合物が水、アルコールなどの活性プロトンを有する化合物との反応性が高いことから、主溶剤としては塗料の安定性を保持し、塗膜の耐久性を高めるために、成分(2)および成分(3)に対して不活性な、活性プロトンを有していない化合物が好ましく用いられる。
しかし、水やアルコールなどの活性プロトンを有する材料を成分(2)のアセトキシ基やアルコキシ基などと反応させることによって、成分(2)化合物を改質させると同時に有機酸やアルコールなどの反応生成物を溶剤の一部として用いることは可能である。
使用可能な代表的溶剤としては、エーテル系化合物、エステル系化合物、脂肪族炭化水素系化合物、芳香族炭化水素系化合物、ケトン系化合物、有機ハロゲン化物系化合物などがある。中でも安全性などの点から、エーテル系化合物、エステル系化合物、脂肪族炭化水素系化合物が好ましい。
エーテル系化合物の具体例としてはジプロピルエーテル、ジブチルエーテル、ジアミルエーテルなどが挙げられる。
エステル系化合物の具体例としてはエチルアセテート、プロピルアセテート、ブチルアセテート、アミルアセテート、イソアミルアセテート、ヘプチルアセテート、エチルブチレート、イソアミルイソバレレートなどが挙げられる。
脂肪族炭化水素系化合物の具体例としてはノルマルヘプタン、ノルマルオクタン、ノルマルノナン、ノルマルデカンなどが挙げられる。さらには、数種類の沸点を有するイソパラフィン系炭化水素化合物、あるいはナフテン系炭化水素化合物などの混合物なども好ましい例として挙げられる。
芳香族炭化水素系化合物の具体例としてはトルエン、キシレン、ジメチルベンゼン、トリメチルベンゼン、エチルベンゼンなどが挙げられる。
ケトン系化合物の具体例としてはメチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどが挙げられる。
有機ハロゲン化物系化合物の具体例としてはトリクロロエタン、トリクロロエチレンなどが挙げられる。
本発明が自然環境下の開放系で用いられることが多いことを考慮すると、芳香性を有するエチルアセテート、プロピルアセテート、ブチルアセテート、アミルアセテート、イソアミルアセテート、ヘプチルアセテート、エチルブチレート、イソアミルイソバレレートなどのエステル系を含んでなる溶剤が好ましい。
一方、臭気に敏感な作業者にとっては、臭いが弱く、毒性も弱い脂肪族炭化水素系化合物が、とくに有用な溶剤である。かかる脂肪族炭化水素系化合物の具体例としては、イソパラフィン系炭化水素系化合物であるアイソパーE,G,H,L,M,V、あるいはナフテン系炭化水素化合物であるエクソールD30, D40,D60, D80, D110, D130やミネラルスピリットなどが挙げられる。
これらの溶剤は、単独で用いることも、また2種以上を併用して用いることも可能である。とくに、塗料を白濁させない、あるいは2層に分離させない範囲内で蟻酸、酢酸、プロピオン酸、安息香酸、ラウリン酸、ステアリン酸などの有機酸、さらにはメタノール、エタノール、プロピルアルコール、ブタノールなどの低級アルコールなどを塗料溶剤として添加することも、塗料の保存安定性を向上させ得る点から有用である。
さらには、蟻酸、酢酸、プロピオン酸、安息香酸、ラウリン酸、ステアリン酸などの有機酸をアシルオキシシランとの反応によって生成せしめるために、溶剤中にメタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、さらにはプロピレングリコールモノメチルエーテルやプロピレングリコールモノエチルエーテルなどを適当量、溶剤中に添加することも可能である。
かかる溶剤の一部として用いる有機酸やアルコールとしては、塗料の安定性と硬化性とのバランスが優れることから酢酸およびメタノールが好ましい。また、その含有量は成分(3)のアルミニウムトリアルコキシド化合物1モルに対して、2モル〜500モルの範囲が好ましい。さらに好ましくは10モル〜350モルの範囲で用いられる。
また、本発明成分(2)の3官能性シラン化合物は、アルコキシ基の種類によっては、比較的沸点が低く、揮発性もあり、かつ成分(1)との相溶性に優れることから、これらの3官能性シラン化合物を溶剤の一部として用いることも可能である。
溶剤の含有量は固形分として定義されるが、塗料の安定性、十分な撥水性を得るのに必要な膜厚の確保、さらには斑の無い均一な塗膜を得るために、塗装方法にもよるが、通常は固形分が0.5wt%〜30wt%の範囲で使用される。とくに撥水性に加えて塗膜表面の滑り性を確保するためには、1wt%〜27.5wt%が好ましく用いられる。さらには耐久性を含めた性能確保のためには、3wt%〜25wt%がより好ましく用いられる。種々の塗装方法や塗装条件にも適応可能な固形分としては、3.5wt%〜20wt%の範囲がもっとも好ましい。
なお、固形分測定は、本発明が自然環境下などの温和な条件下で用いられることから、厳密に規定することは困難であるが、通常はアルミカップなどの容器に少量の塗料を注ぎ、使用条件下で放置した後の残存重量を測定し、一定値に達した値を持って固形分とすることができる。また、測定時間の短縮を目的に乾燥機内等で加熱することも可能である。生産管理上の測定条件としては、100℃で残存重量が一定になる時間を求め、該条件を用いて固形分とすることも可能である。
本発明成分(1)は実質的に揮発性を有していないので、その固形分は100%とすることができる。しかし、本発明成分(2)の3官能性シラン化合物および/またはその部分加水分解縮合物、および成分(3)のアルミニウムトリアルコキシド化合物の固形分は、これら成分がいずれも空気中の水分によって少なくともその一部が加水分解し、その後、成分(1)とも反応することが考えられるので、反応した後に得られる一定値となった値をもって固形分とすることが現実的である。
本発明撥水性コーティング剤は、成分(1)、成分(2)、成分(3)および成分(4)からなる組成物として保存・使用可能であるが、より保存時の変質を防ぐ目的で、あらかじめ成分(1)、成分(2)および成分(4)からなる溶液と成分(3)および成分(4)からなる溶液の二つの溶液を調整しておいて、使用前に混合することでより安定したコーティング膜を得る塗料とすることも実用面では好ましい実施態様である。
本発明撥水性コーティング剤中には、成分(1)、成分(2)および成分(3)以外の塗膜形成成分として、先に述べた数平均分子量(Mn)が50,000未満の両末端にシラノール基を有するジメチルシリコーンポリマー、さらにはフェニル基やトリフルオロプロピル基含有シリコーンポリマー以外に、4官能性シラン化合物や2官能性シラン化合物、さらには各種界面活性剤などの多くの添加可能な材料がある。
とくに、4官能性シラン化合物は、基板との密着性や硬化速度をさらに高める目的で、撥水性を大きく低下させない範囲内で併用することが可能である。その具体的な代表化合物例としては、テトラアセトキシシラン、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラプロポキシシラン、テトライソプロポキシシラン、テトラブトキシシラン、テトラsec-ブトキシシランおよびかかる4官能性シラン化合物の部分加水分解縮合物などが挙げられる。
また、塗布時の拭き上げ性向上を目的とした硬化速度の制御に有効な添加材として、2官能性シラン化合物が挙げられる。該シラン化合物の具体例としては、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジメチルジプロポキシシラン、ジメチルジブトキシシラン、ジメチルジアセトキシシラン、メチルエチルジメトキシシラン、メチルエチルジエトキシシラン、メチルエチルジプロポキシシラン、メチルエチルジブトキシシラン、メチルエチルジアセトキシシラン、メチルプロピルジメトキシシラン、メチルプロピルジエトキシシラン、メチルプロピルジプロポキシシラン、メチルプロピルジブトキシシラン、メチルプロピルジアセトキシシラン、メチルフェニルジメトキシシラン、メチルフェニルジメトキシシラン、メチルフェニルジエトキシシラン、メチルフェニルジプロポキシシラン、メチルフェニルジブトキシシラン、メチルフェニルジアセトキシシランなどが挙げられる。中でも撥水性を低下させない点から、ジメチルシラン化合物が好ましく用いられる。
これら4官能性シラン化合物や2官能性シラン化合物は単に3官能性シラン化合物と混合して用いることができるが、3官能性シラン化合物を部分加水分解縮合物として用いる場合には、あらかじめそれぞれを均一混合液とした後に、加水分解・脱水縮合させて共縮合系の部分加水分解縮合物とすることが塗料としての均一性を高めるために有用な手段である。
本発明撥水性コーティング剤中には、基板への濡れ性、およびコーティング膜の平滑性を高める目的で各種界面活性剤が好ましく用いられる。界面活性剤としては、本発明成分(4)の溶剤に溶解可能であるフッ素系レベリング剤、シリコーン系レベリング剤、高分子エーテル系レベリング剤、ノニオン系レベリング剤などの中から選ばれた1種以上を使用することが好ましい。
とくに、塗膜の撥水性を低下させずに、界面活性効果を高めることが可能な材料として、フッ素系レベリング剤が好ましく用いられ、たとえばメガファックF-554(DIC社製)などが好ましい界面活性剤として挙げられる。
また、各種界面活性剤の添加量は、本発明撥水性コーティング剤に対して、10ppm〜104ppmであることが望ましい。10ppm未満の場合は、界面活性剤のレベリング性に対する添加効果が小さく、104ppmを越える場合は界面活性剤が表面にブリードアウトして、撥水性が低下する傾向にある。
本発明撥水性コーティング剤は、基材表面に塗布後、特殊な硬化処理装置などを必要とせず、室温条件下に放置するのみで容易に硬化させることが可能である。具体的な温度条件としては、溶媒が揮散可能な温度であれば十分であるが、通常は5℃以上、好ましくは10℃以上が実用的な温度条件として推奨される。また、硬化時間を短縮させるために、加熱すること、あるいは乾燥を速めるために風を当てることも好ましい実施態様である。
次に本発明によって得られる塗膜の特長である滑り性について述べる。滑り性に関する実用的な評価としては、人の指や爪などで軽くこすることで良、不良を定性的に測ることが可能である。また、任意性を無くすための方法としては表面摩擦係数を測定することも可能である。表面摩擦係数はTRIBOGEAR(HEIDON社製)TYPE:14FWを測定装置として用いることで再現性良く、かつ定量的な測定結果を得ることができる。
また、表面摩擦係数には静摩擦係数と動摩擦係数があるが、本発明では塗膜の汚れ除去性などとの相関性が高いことから動摩擦係数を用いて塗膜の滑り性を得る指標とすることができる。
さらに、摩擦時に使用する材料としては、微細な埃除去に有効なことで知られているポリエステル100%製超極細繊維編み物(東レ(株)製“トレシー”、目付:275g/m2、厚み:0.75mm)を34mm×105mm角にカットして用いることで実用性のある動摩擦係数を得ることができる。
滑り性と動摩擦係数との関係は実験的に定めることができるが、通常、滑り性が良好な塗膜は動摩擦係数が0.165未満であり、これを越える塗膜は、埃や付着した汚れを除去する際に引っかかりが強く、汚れが取れにくいばかりでなく、結果的に塗膜に傷などを付けることになるなどの問題がある。
滑り性良好、すなわち動摩擦係数を0.165以下にするためには、下記成分(1)、(2)および(3)を含むコーティング剤を用いることに加えて、固形分や塗布方法などの適正化と制御が必要であり、実験的に定められねばならない。
(1)両末端にシラノール基を有する数平均分子量(Mn)が50,000〜200,000のジメチルシリコーンポリマー
(2)3官能性シラン化合物および/またはその部分加水分解縮合物
(3)アルミニウムトリアルコキシド化合物
(1)両末端にシラノール基を有する数平均分子量(Mn)が50,000〜200,000のジメチルシリコーンポリマー
(2)3官能性シラン化合物および/またはその部分加水分解縮合物
(3)アルミニウムトリアルコキシド化合物
コーティング剤の固形分は溶剤の含有量によって制御されるが、動摩擦係数を0.165以下にするためには、固形分が3.5wt%以上で使用されることが望ましい。また、種々の塗装方法や塗装条件にも適応可能な固形分としては、3.5wt%〜20wt%の範囲が好ましい。
本発明撥水性コーティング剤の基板への塗布方法は、とくに制限されることはないが、具体的方法としては、ディッピング塗装、スプレー塗装、流し塗り法、刷毛塗り法、スピンコート法、塗料を含浸させた布やスポンジによる転写塗布法などが挙げられ、基板の大きさ、形状などによって適宜、選択されるべきである。
次に、もう一つの本発明であるコーティング膜の製造方法について述べる。すなわち、本発明は、下記成分(1)〜(4)を含有してなる撥水性コーティング剤を塗布したのち、極細の長繊維からなる布を用いて展延させる撥水性コーティング膜の製造方法である。
(1)両末端にシラノール基を有する数平均分子量(Mn)が50,000〜200,000のジメチルシリコーンポリマー
(2)3官能性シラン化合物および/またはその部分加水分解縮合物
(3)アルミニウムトリアルコキシド化合物
(4)溶剤
(1)両末端にシラノール基を有する数平均分子量(Mn)が50,000〜200,000のジメチルシリコーンポリマー
(2)3官能性シラン化合物および/またはその部分加水分解縮合物
(3)アルミニウムトリアルコキシド化合物
(4)溶剤
本発明撥水性コーティング剤の塗布方法として、成型品のような異型形状を有する物品には、刷毛塗り法や塗料を含浸させた布やスポンジによる転写塗布法およびスプレー塗装が非塗布部分をなくすことができることから好ましい。
とくに塗膜の均一性や平滑性を確保する方法として、刷毛塗り法、塗料を含浸させた布やスポンジによる転写塗布法、あるいはスプレー塗装で塗布した後に、薄膜塗装を可能とする極細の長繊維からなる布を用いて、展延させる方法が実用的で、かつ良好な外観を得る方法として推奨される。
ここで、極細の長繊維からなる布の形態としては、一般にマイクロファイバーと呼ばれる糸からなる織物や編み物などを挙げることができ、シート状であってもタオル状であっても問題ない。さらに織物としては、表と裏がそれぞれ結節されたニ重織物、あるいは経糸が緯糸の上と下を交差させて織られた、いわゆる綾織物、さらには経糸と緯糸が5本以上から構成される織物である、朱子織などが挙げられる。とくに多量の塗料が転写塗布されてなる塗膜の展延時には織物をタオル状とした布が好ましく用いられる。
また、展延に用いられる布材料としては、天然繊維、合成繊維、および天然繊維と合成繊維の混紡繊維、さらにはポリエステルとポリアミドなどの2種以上の合成繊維を複合化させた繊維なども使用することができる。とくに2種の合成繊維を用いて得られる分割型構造からなる繊維は極細化可能なことからもっとも好ましい。さらには塗膜の均一化のためには、繊維直径としては1.0μmから7.5μmが好ましい。より塗膜厚みの均一化に望ましい繊維直径としては1.5μmから7.0μmが好ましく用いられる。
本発明の撥水性コーティング剤が疎水性材料から構成され、かつ空気中の水分によって硬化が促進されることから、ポリエステル/ナイロン=90%/10%〜60%/40%からなる2成分ポリマー材料を同時に紡糸した後に、ポリマー間を分割させた分割型構造からなる極細の長繊維が膜の表面均一性付与に優れることから、少なくとも最終仕上げにはもっとも好ましい布である。
また、水分による硬化を促進する目的から水分を含浸させた布を展延に用いることも有用な方法である。含浸させる水分量としては絞っても水の滴が落ちない程度であれば、十分な効果が期待される。
さらには水分中に少量の酸や塩基を含ませることも可能であり、具体的には希塩酸や希酢酸などの揮発性を有する酸化合物を含ませた水が展延後の加水分解をよりスムーズに進行可能なことから、好ましく用いられる。
本発明撥水性コーティング膜はジメチルシリコーンポリマーが三次元架橋した構造を有することから、その屈折率は比較的低いため、光の反射を低減させることが可能となり、深みのある光沢性を有するという特徴もある。
しかし、コーティング膜の膜厚が厚くなり過ぎると光の干渉作用による縞模様や塗り斑が目立ちやすく、意匠性に劣る傾向がある。また、コーティング膜の膜厚が薄くなりすぎると、撥水性効果が低下する傾向にあるばかりでなく、表面滑り性も低下傾向にある。また、被塗装基板上の傷を埋める効果も小さく、さらには光の反射低減による深みのある光沢性の発現が低下する傾向となる。
よって、本発明撥水性コーティング剤から得られるコーティング膜の膜厚は、可視光波長より薄く、撥水性確保に必要な膜厚である4nm〜200nm、より好ましくは6nm〜100nm、さらに好ましくは8nm〜80nmが推奨される。
本発明撥水性コーティング剤は、基板に塗布したのち、室温環境下で自然乾燥によって硬化させるのみで十分な撥水性、滑り性、耐薬品性などの耐久性を有する撥水性コーティング膜となる。
本発明撥水性コーティング剤の硬化条件としては、通常の自然環境条件で十分に硬化が可能であるが、撥水性をさらに高める施策として湿度の高い環境下、具体的には20%RH、より好ましくは30%RH以上の湿度環境下で硬化せしめることが好ましい。湿度を高める手段としては、床に水や温水を張る方法,あるいは水のミスト散布などが簡便で、かつ有効な方法として挙げられる。
本発明撥水性コーティング剤の硬化時間を短縮する方法としては、乾燥を速めるために送風すること、あるいは車への適用時には車のエンジンをかけてボンネットを含めた車体の温度を上げることも有効な方法として挙げられる。
本発明撥水性コーティング剤によって得られるコーティング膜は、撥水性が高く、滑り性、耐久性に優れることから、通常は人の手や指、さらには布やペーパー類などで擦すられることの多い用途、あるいは雨水や水道水などが降りかかる用途に適用されることが好ましい。
本発明撥水性コーティング剤の硬化反応が、いかなる化学的変化を伴っているかを完全に解明するには至っていないが、基本的にはジメチルシリコーンポリマーの両末端シラノール基が3官能性シラン化合物および/またはその部分加水分解縮合物の加水分解生成物とアルミニウムトリアルコキシド化合物と直接的、あるいは間接的に反応した構造となっているものと推定される。
すなわち、高い数平均分子量(Mn)の両末端シラノール基を有するジメチルシリコーンポリマーが、三次元的に架橋構造を形成することによって良好な特性を発現していると考えられる。
また、成分(2)である3官能性シラン化合物および/またはその部分加水分解縮合物や成分(3)であるアルミニウムトリアルコキシド化合物の加水分解、および硬化反応スキームの詳細についても、未だ確定するには至っていないが、恐らく協奏的に、複雑な反応系で進行していると推定される。
本発明撥水性コーティング膜は、表面エネルギーが低く、優れた撥水性を有しており、さらにコーティング膜は高度に三次元架橋されたものであるため、撥水性、滑り性などに加えて、耐薬品性などに優れた高い耐久性を有する。
本発明における撥水性を評価する方法としては、微小な水滴を塗膜表面に形成させ、その時の水と塗膜表面との間に生じる、いわゆる水の静止接触角を測定する方法が最も一般的である。また、水の静止接触角は、 “自動接触角計”(FACE社製)CA-Z型を測定装置として用いることで測定が可能である。
本発明における撥水性に優れるコーティング膜とは、水の静止接触角が高く、具体的には、その初期における接触角が被コーティング基板より高い接触角を有する膜を意味する。さらに高い撥水性を有する膜としては静止接触角が100度以上、理想的な高い撥水性を有する膜としては静止接触角が105度以上を有する膜が挙げられる。
すなわち、水の静止接触角が基板より低い膜は撥水性コーティング膜を設ける意味が無く、また、静止接触角が100度未満の膜においては、雨水や浄水、さらには酒類などの液体飲料が、膜表面に付着した場合、膜表面から落下しにくくなることから、撥水性コーティング膜を設ける意味が小さい。
撥水性の乏しいコーティング膜では表面に水滴などが残り易く、高級感を損なうばかりでなく、乾燥後に塗膜上に雨染み、あるいは水焼け等と呼ばれる表面外観不良を起こしやすいという問題がある。
また、本発明における耐久性とは、長期間の使用に耐えるかどうかを判断するための尺度であり、具体的には一週間以上の水浸漬後、あるいは一カ月間以上の屋外曝露試験後の撥水性保持率が90%以上、さらに好ましくは95%以上、またシリコーン成分が溶解する溶剤、例えばイソパラフィン系炭化水素であるアイソパーEやエチルアセテートなどに浸漬した後の撥水性保持率が90%以上、さらに好ましくは95%以上であることを意味する。
以上の説明から明らかなように、本発明撥水性コーティング剤は下記成分を含有してなり、次に列挙する効果が得られる。
(1)「両末端にシラノール基を有する数平均分子量(Mn)が50,000〜200,000のジメチルシリコーンポリマーと3官能性シラン化合物および/またはその部分加水分解縮合物とアルミニウムトリアルコキシド化合物および溶剤を含んでなる溶液」からなる撥水性コーティング剤であって、各種基材の表面に、撥水性、滑り性に優れ、これらの耐久性に優れた撥水性コーティング膜を形成することができる。
(1)「両末端にシラノール基を有する数平均分子量(Mn)が50,000〜200,000のジメチルシリコーンポリマーと3官能性シラン化合物および/またはその部分加水分解縮合物とアルミニウムトリアルコキシド化合物および溶剤を含んでなる溶液」からなる撥水性コーティング剤であって、各種基材の表面に、撥水性、滑り性に優れ、これらの耐久性に優れた撥水性コーティング膜を形成することができる。
(2)「前記(1)の撥水性コーティング剤を用いたコーティング膜の製造方法として、撥水性コーティング剤を塗布し、極細の長繊維からなる布を用いて展延させるコーティング膜の製造方法」であり、簡便で、かつコーティング斑のない均一な表面を有する撥水性コーティング膜を得ることができる。
(3)本発明撥水性コーティング膜は低い屈折率を有しており、撥水性、滑り性、およびその耐久性などに優れる特性に加えて深みのある光沢発現が達成可能な、バランスに優れた撥水性コーティング膜とすることができる。
以下に実施例を挙げて本発明を詳しく説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
(1)評価方法
(a)撥水性
FACE社製“自動接触角計”CA-Z型を用いて、水の静止接触角(度)を測定し、その値を用いて撥水性とした。
(b)製膜性
以下に述べるテストピース基板に塗布した時のコーティング膜の均一性を肉眼にて評価した。
○:全く斑が認められない。
△:微少な斑が認められる。
×:明らかな斑の発生が認められる。
(c)滑り性
コーティング塗膜表面を指、あるいは爪でひっかいた時の引っかかりの強さで評価した。
○:未処理品より、明らかに引っかかりが少なく滑り性が良好。
△:未処理品と同等レベルの引っかかりがある。
×:未処理品より強い引っかかりを感じる。
(d)耐久性
室温水中に1週間浸漬処理した後の膜表面の水の静止接触角を測定し、その撥水性保持率(%)を求めた。保持率の高い塗膜ほど撥水性の耐久性に優れる。
(a)撥水性
FACE社製“自動接触角計”CA-Z型を用いて、水の静止接触角(度)を測定し、その値を用いて撥水性とした。
(b)製膜性
以下に述べるテストピース基板に塗布した時のコーティング膜の均一性を肉眼にて評価した。
○:全く斑が認められない。
△:微少な斑が認められる。
×:明らかな斑の発生が認められる。
(c)滑り性
コーティング塗膜表面を指、あるいは爪でひっかいた時の引っかかりの強さで評価した。
○:未処理品より、明らかに引っかかりが少なく滑り性が良好。
△:未処理品と同等レベルの引っかかりがある。
×:未処理品より強い引っかかりを感じる。
(d)耐久性
室温水中に1週間浸漬処理した後の膜表面の水の静止接触角を測定し、その撥水性保持率(%)を求めた。保持率の高い塗膜ほど撥水性の耐久性に優れる。
(実験例1〜4)、(比較例1)
(1)コーティング剤調整
回転子を備えた蓋つき容器に数平均分子量(Mn)が120,000の両末端にシラノール基を有するジメチルシリコーンポリマー(GELEST Inc.製DMS-S51)と下記(2)に記載の方法で調整したメチルトリメトキシシラン部分加水分解縮合物、およびアルミニウムトリイソプロポキシド(AIP)またはアルミニウムトリ-t-ブトキシド(ATB)またはアルミニウムトリ-sec-ブトキシド(ASB)とアイソパーL(初留点:185℃、乾点:199℃)をそれぞれ表1に記載した量を添加し、十分撹拌を行って塗料とした。
(2)メチルトリメトキシシラン部分加水分解縮合物の調整
メチルトリメトキシシラン13.6gをビーカーに秤量し、室温下、マグネティックスターラーで撹拌しながら、0.01規定塩酸水溶液1.8gを一度に添加した。添加後、加水分解の進行に伴って、少し発熱しながら不透明溶液が透明な溶液に変化した。ビーカーを密閉状態で、溶液温度が室温になるまで撹拌を続け、室温になった時点で撹拌を止め、室温で一晩熟成して加水分解物を得た。一晩熟成後、エバポレーター(45℃、75mmHg、30分間)で加水分解生成物であるメタノールを除去して、メチルトリメトキシシラン部分加水分解縮合物を得た。
(1)コーティング剤調整
回転子を備えた蓋つき容器に数平均分子量(Mn)が120,000の両末端にシラノール基を有するジメチルシリコーンポリマー(GELEST Inc.製DMS-S51)と下記(2)に記載の方法で調整したメチルトリメトキシシラン部分加水分解縮合物、およびアルミニウムトリイソプロポキシド(AIP)またはアルミニウムトリ-t-ブトキシド(ATB)またはアルミニウムトリ-sec-ブトキシド(ASB)とアイソパーL(初留点:185℃、乾点:199℃)をそれぞれ表1に記載した量を添加し、十分撹拌を行って塗料とした。
(2)メチルトリメトキシシラン部分加水分解縮合物の調整
メチルトリメトキシシラン13.6gをビーカーに秤量し、室温下、マグネティックスターラーで撹拌しながら、0.01規定塩酸水溶液1.8gを一度に添加した。添加後、加水分解の進行に伴って、少し発熱しながら不透明溶液が透明な溶液に変化した。ビーカーを密閉状態で、溶液温度が室温になるまで撹拌を続け、室温になった時点で撹拌を止め、室温で一晩熟成して加水分解物を得た。一晩熟成後、エバポレーター(45℃、75mmHg、30分間)で加水分解生成物であるメタノールを除去して、メチルトリメトキシシラン部分加水分解縮合物を得た。
(3)被塗装基板作成
厚さ0.1mmのブリキ板にプライマーとしてイサム塗料(株)製のLVプラサフを施し、その後、中塗り塗料として同じくイサム塗料(株)製のミラノ2K、さらにトップクリア層として、これもイサム塗料(株)製のミラノ2KコモクリアNo.1を塗布して撥水性コーティング膜用の被塗装テストピース基板を作成した。
厚さ0.1mmのブリキ板にプライマーとしてイサム塗料(株)製のLVプラサフを施し、その後、中塗り塗料として同じくイサム塗料(株)製のミラノ2K、さらにトップクリア層として、これもイサム塗料(株)製のミラノ2KコモクリアNo.1を塗布して撥水性コーティング膜用の被塗装テストピース基板を作成した。
(4)コーティング膜調整
前記(3)の被塗装基板上に、スポンジにコーティング剤を含浸させて塗布した後、ポリエステル/ナイロン=80%/20%の分割型極細繊維織物からなるマイクロファイバータオル(丸野タオル(株)製、マイクロファイバーグリーン色タオル、No.RO463-1-S)を用いて塗り斑のない状態に展延させたのち、一週間、解放状態で自然乾燥させて、コーティング膜を得た。
前記(3)の被塗装基板上に、スポンジにコーティング剤を含浸させて塗布した後、ポリエステル/ナイロン=80%/20%の分割型極細繊維織物からなるマイクロファイバータオル(丸野タオル(株)製、マイクロファイバーグリーン色タオル、No.RO463-1-S)を用いて塗り斑のない状態に展延させたのち、一週間、解放状態で自然乾燥させて、コーティング膜を得た。
(5)評価結果
得られた塗膜の評価結果を表1に示す。本発明撥水性コーティング剤によって得られたコーティング膜は、製膜性に優れることから被塗装基板上に均一に塗布されており、さらには表1に示したとおり、非常に優れた撥水性、滑り性と耐久性に優れていることが明らかとなった(実験例1〜実験例4)。未処理の被塗装基板表面の静止接触角は95度であり、撥水性の無い表面であった(比較例1)。
得られた塗膜の評価結果を表1に示す。本発明撥水性コーティング剤によって得られたコーティング膜は、製膜性に優れることから被塗装基板上に均一に塗布されており、さらには表1に示したとおり、非常に優れた撥水性、滑り性と耐久性に優れていることが明らかとなった(実験例1〜実験例4)。未処理の被塗装基板表面の静止接触角は95度であり、撥水性の無い表面であった(比較例1)。
本発明撥水性コーティング剤は、各種基板表面の撥水性,滑り性および耐久性に優れたコーティング膜を得るのに適している。とくに、本発明撥水性コーティング膜は光や熱に対して安定であるため、高い耐久性を有し、さらには、深みのある光沢性に優れるコーティング膜となる。また、室温環境下で硬化が可能であり、さらには塗装方法の選択幅が大きく、自由度が大きいという特徴があり、塗り斑の無い均一な塗膜が得られることから電車、自動車、バスなどの乗り物の窓や外装部分、さらにはビルや一般家屋の外壁、窓ガラスなどにも適用が可能である。また、車両のホイールのような塗装金属部品への適用も可能である。
Claims (10)
- 下記成分(1)〜(4)を含有してなることを特徴とする撥水性コーティング剤。
(1)両末端にシラノール基を有する数平均分子量(Mn)が50,000〜200,000のジメチルシリコーンポリマー
(2)3官能性シラン化合物および/またはその部分加水分解縮合物
(3)アルミニウムトリアルコキシド化合物
(4)溶剤 - 成分(1)100重量部に対して、成分(2)が5重量部〜1,000重量部を含有してなることを特徴とする請求項1に記載の撥水性コーティング剤。
- 成分(2)である3官能性シラン化合物および/またはその部分加水分解縮合物と成分(3)であるアルミニウムトリアルコキシド化合物の添加重量比が1/1〜700/1からなる組成物であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の撥水性コーティング剤。
- 成分(2)の3官能性シラン化合物および/またはその部分加水分解縮合物がメチル基を有する3官能性シラン化合物および/またはその部分加水分解縮合物であることを特徴とする請求項1、請求項2または請求項3に記載の撥水性コーティング剤。
- 成分(2)の3官能性シラン化合物および/またはその部分加水分解縮合物における官能基が炭素数1〜2のアルコキシ基またはアセトキシ基から選ばれる1種以上であることを特徴とする請求項1、請求項2、請求項3または請求項4に記載の撥水性コーティング剤。
- 成分(3)のアルミニウムトリアルコキシド化合物が炭素数1〜10の炭化水素基から選ばれる1種以上であることを特徴とする請求項1、請求項2、請求項3、請求項4または請求項5に記載の撥水性コーティング剤。
- 成分(4)の溶剤が塗料固形分として0.5t%〜30wt%となる量を含んでなることを特徴とする請求項1、請求項2、請求項3、請求項4、請求項5または請求項6に記載の撥水性コーティング剤。
- 成分(4)の溶剤の50wt%以上が60℃〜250℃の沸点を有することを特徴とする請求項1、請求項2、請求項3、請求項4、請求項5、請求項6または請求項7に記載の撥水性コーティング剤。
- 下記成分(1)〜(4)を含有してなる撥水性コーティング剤を用いたコーティング膜作成において、繊維直径が1.0μmから7.5μmの極細長繊維からなる布を用いて展延させることを特徴とする撥水性コーティング膜の製造方法。
(1)両末端にシラノール基を有する数平均分子量(Mn)が50,000〜200,000のジメチルシリコーンポリマー
(2)3官能性シラン化合物および/またはその部分加水分解縮合物
(3)アルミニウムトリアルコキシド化合物系硬化剤
(4)溶剤 - 長繊維からなる布が、ポリエステル/ナイロン=90%/10%〜60%/40%の分割型極細長繊維織物からなる布であることを特徴とする請求項9に記載の撥水性コーティング膜の製造方法。
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JP2013234947A JP2015093949A (ja) | 2013-11-13 | 2013-11-13 | 表面滑り性に優れた撥水性コーティング剤およびコーティング膜の製造方法 |
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