JP2015091761A - 中枢神経の損傷を治療するための組成物およびその利用 - Google Patents

中枢神経の損傷を治療するための組成物およびその利用 Download PDF

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Abstract

【課題】中枢神経の損傷によって生じる様々な後遺症を効果的に改善することができる組成物、およびその利用の提供。【解決手段】中枢神経の損傷を治療するために、CD3アゴニスト活性を有する化合物として抗CD3モノクローナル抗体を含む組成物、およびその利用。【選択図】なし

Description

本発明は、中枢神経の損傷を治療するための組成物およびその利用に関する。
脳や脊髄などの中枢神経が損傷を受けると、生体の様々な箇所に麻痺が生じ、これによって生体の運動機能が低下する。このような運動機能の低下は、中枢神経に損傷を受けた患者が社会復帰することを妨げる大きな要因となる。それ故に、医療分野にとって、損傷した中枢神経の機能を回復させることは解決すべき重要な課題である。
従来から、損傷を受けた脊髄に活性化されたマクロファージを移植することによって、損傷した中枢神経の機能を回復させようとする試みがなされている(例えば、非特許文献1参照)。
また、神経幹細胞、または、ノギン(noggin)のような公知のBMPアンタゴニストを発現している神経前駆細胞を、損傷を受けた脊髄へ移植するとともに、これらの細胞を神経細胞へ分化させることによって、損傷した中枢神経の機能を回復させようとする試みがなされている(例えば、非特許文献2参照)。
また、Tリンパ球のサブセットであるTh1細胞と大脳皮質神経細胞とを共培養すれば、神経突起が伸張することが見出されており、当該現象に対して注目が集まっている(例えば、非特許文献3参照)。
Rapalino O, Lazarov-Spiegler O, Agranov E, Velan GJ, Yoles E, Fraidakis M, Solomon A, Gepstein R, Katz A, Belkin M, Hadani M, Schwartz M (1998) Implantation of stimulated homologous macrophages results in partial recovery of paraplegic rats. Nat Med 4: 814-821. Setoguchi, T., et al. Treatment of spinal cord injury by transplantation of fetal neural precursor cells engineered to express BMP inhibitor. Exp Neurol 189, 33-44 (2004). Ishii H, Kubo T, Kumanogoh A, Yamashita T. Th1 cells promote neurite outgrowth from cortical neurons via a mechanism dependent on semaphorins. Biochem Biophys Res Commun 2010; 402: 168-172.
しかしながら、上述したような従来の技術は、中枢神経の損傷によって生じる様々な後遺症を改善できるものの、その効果は十分であるとはいえない。
本発明の目的は、中枢神経の損傷によって生じる様々な後遺症を効果的に改善することができる組成物、およびその利用を提供することにある。
本発明の中枢神経の損傷を治療するための組成物は、上記課題を解決するために、CD3アゴニスト活性を有する化合物を含むことを特徴としている。
本発明の中枢神経の損傷を治療するための組成物では、上記CD3アゴニスト活性を有する化合物は、抗CD3抗体であることが好ましい。
本発明の中枢神経の損傷を治療するための組成物では、上記抗CD3抗体は、クローン145−2c11、OKT3、MGA031、TRX4、HuM291、UCHT1、HIT3a、17A2、または、G4.18によって生産されるモノクローナル抗体であることが好ましい。
本発明の中枢神経の損傷を治療するための組成物では、上記中枢神経は、脊髄であることが好ましい。
本発明の中枢神経の損傷を治療するためのキットは、上記課題を解決するために、CD3アゴニスト活性を有する化合物を備えることを特徴としている。
本発明の中枢神経の損傷を治療するためのキットでは、上記CD3アゴニスト活性を有する化合物は、抗CD3抗体であることが好ましい。
本発明の中枢神経の損傷を治療するためのキットでは、上記抗CD3抗体は、クローン145−2c11、OKT3、MGA031、TRX4、HuM291、UCHT1、HIT3a、17A2、または、G4.18によって生産されるモノクローナル抗体であることが好ましい。
本発明の中枢神経の損傷を治療するためのキットでは、上記中枢神経は、脊髄であることが好ましい。
本発明は、損傷した中枢神経回路の修復を促進することによって、損傷によって低下した運動機能を改善することができるという効果を奏する。
本発明は、生体に本来備わっている修復機能を活性化させる温存治療であるので、本発明を、中枢神経の機能障害を伴う様々な疾患へ適用することができる。
本発明は、従来の治療法と比較して、損傷した中枢神経回路をより効果的に修復できるとともに、運動機能をより効果的に改善させることができるという効果を奏する。
本発明の実施例における神経突起伸長アッセイの結果を示すグラフである。 本発明の実施例におけるBMSスコアの結果を示すグラフである。
以下に本発明の実施の形態について説明するが、本発明はこれらに限定されない。
〔1.組成物〕
本実施の形態の組成物は、中枢神経の損傷を治療するための組成物である。
中枢神経を大別すれば脳および脊髄を挙げることができるが、本実施の形態の組成物は、脳および脊髄の何れをも治療の対象とすることができる。本実施の形態の組成物は、脳および脊髄の中では、脊髄を治療の対象とすることが好ましいといえる。
中枢神経の損傷とは、中枢神経を形成する細胞群(例えば、ニューロンおよびグリア細胞など)の少なくとも一部が機能を失うような状態を意図する。例えば、中枢神経の損傷としては、交通事故、スポーツ事故または転倒等の事故による外傷の他、脊髄腫瘍またはヘルニア等の疾病に起因する損傷を挙げることができるが、これらに限定されない。
本実施の形態の組成物は、Tリンパ球を活性化させる作用を有する抗CD3抗体を含んでいる。
本明細書において「CD3アゴニスト活性」とは、CD3特異的な反応を引き起こす活性を意図する。なお、化合物がCD3アゴニスト活性を有しているか否かは、例えば、Tリンパ球などへ化合物を投与した場合に、CD3(例えば、CD3のITAMモチーフ)がリン酸化されるか否かによって判定することが可能である。具体的には、Tリンパ球へ化合物を投与した場合にCD3がリン酸化されれば、当該化合物はCD3アゴニスト活性を有していると判定することができる。一方、Tリンパ球へ化合物を投与した場合にCD3がリン酸化されなければ、当該化合物はCD3アゴニスト活性を有していないと判定することができる。
また、化合物がCD3アゴニスト活性を有しているか否かは、例えば、CD3およびTCR(T cell receptor)にて形成されているレセプター複合体の下流に存在するシグナル伝達系(例えば、キナーゼ群または転写因子群)が活性化したか否かによっても判定することが可能である。例えば、Tリンパ球へ化合物を投与した場合に、MAPキナーゼファミリー、SrcキナーゼファミリーまたはZAP−70などが基質をリン酸化すれば、当該化合物はCD3アゴニスト活性を有していると判定することができる。一方、Tリンパ球へ化合物を投与した場合に、MAPキナーゼファミリー、SrcキナーゼファミリーまたはZAP−70などが基質をリン酸化しなければ、当該化合物はCD3アゴニスト活性を有していないと判定することができる。
また、Tリンパ球へ化合物を投与した場合に、NF−κB、c−FosまたはNF−ATなどの転写因子群が活性化すれば、当該化合物はCD3アゴニスト活性を有していると判定することができる。一方、Tリンパ球へ化合物を投与した場合に、NF−κB、c−FosまたはNF−ATなどの転写因子群が活性化しなければ、当該化合物はCD3アゴニスト活性を有していないと判定することができる。
なお、キナーゼ群が基質をリン酸化したか否か、および、転写因子群が活性化したか否かは、適宜、周知の方法によって確認することが可能である。
上記CD3アゴニスト活性を有している化合物としては特に限定されない。例えば、細胞内のCD3の量を増加させることによってCD3特異的な反応を引き起こす化合物であってもよい。また、上記CD3アゴニスト活性を有している化合物は、CD3分子を不活性な状態(例えば、非リン酸化状態)から活性化した状態(例えば、リン酸化された状態)へ変化させ得る化合物であってもよい。
上記CD3アゴニスト活性を有している化合物の具体的な例として、抗CD3抗体を挙げることができる。
上記抗CD3抗体としては特に限定されず、CD3アゴニスト活性を有する、あらゆる抗CD3抗体であり得る。
CD3タンパク質は、5種類のポリペプチド(具体的には、γポリペプチド、δポリペプチド、εポリペプチド、ζポリペプチド、および、ηポリペプチド)によって形成されている。したがって、上記抗CD3抗体は、CD3のγポリペプチドを認識する抗体であってもよく、CD3のδポリペプチドを認識する抗体であってもよく、CD3のεポリペプチドを認識する抗体であってもよく、CD3のζポリペプチドを認識する抗体であってもよく、CD3のηポリペプチドを認識する抗体であってもよく、これらの抗体の混合物であってもよい。
上記抗CD3抗体は、あらゆるタイプのイムノグロブリンであり得る。具体的には、IgG、IgM、IgA、IgDまたはIgEであり得る。
また、上記抗CD3抗体は、ポリクローナル抗体であってもよく、モノクローナル抗体であってもよい。上記抗CD3抗体がポリクローナル抗体である場合には、抗体群の中の少なくとも一部の抗体がTリンパ球を活性化させる作用を有していればよい。
上記抗CD3抗体は、種々の公知の方法(例えば、HarLowら、「Antibodies:A laboratory manual,Cold Spring Harbor Laboratory,New York(1988)」、岩崎ら、「単クローン抗体 ハイブリドーマとELISA、講談社(1991)」)に従って作製され得る。
そして、周知の方法にて作製した抗体の中から、CD3アゴニスト活性を有する抗体を選抜することによって、本実施の形態の組成物に含まれる抗体を得ることができる。
CD3アゴニスト活性を有する抗CD3抗体を選抜する具体的な方法は特に限定されず、適宜、周知の方法を用いることが可能である。例えば、作製した抗CD3抗体をTリンパ球(例えば、Th1細胞)に投与し、その結果、当該Tリンパ球の中でキナーゼ(MAPキナーゼファミリー、Srcキナーゼファミリー、ZAP−70など)による基質(例えば、CD3のITAMモチーフなど)のリン酸化が誘導されたか否かを確認することによって、CD3アゴニスト活性を有する抗CD3抗体を選抜することができる。
または、得られた抗CD3抗体をTリンパ球(例えば、Th1細胞)に投与し、その結果、これらのキナーゼが関与するシグナル伝達経路の下流に存在する転写因子(例えば、NF−κB、c−Fos、NF−AT)が活性化されたか否かを確認することによって、CD3アゴニスト活性を有する抗CD3抗体を選抜することができる。なお、上記方法は選抜方法の一例にすぎず、他の周知の方法によって、CD3アゴニスト活性を有する抗CD3抗体を選抜することが可能である。
上記選抜においては、Tリンパ球自体(例えば、Th1細胞)を用いて抗CD3抗体を選抜してもよいし、Tリンパ球と類似の性質を有する公知の株化された細胞を用いて抗CD3抗体を選抜してもよい。
また、上記選抜方法から自明なように、本実施の形態の抗CD3抗体は、「Tリンパ球を活性化させる作用を有する抗CD3抗体」であってもよいし、「Th1細胞を活性化させる作用を有する抗CD3抗体」であってもよい。
上記抗CD3抗体としては、市販されている周知のモノクローナル抗体を用いることも可能である。例えば、「モノクローナル抗CD3ε抗体:eBioscience, San Diego, Ca:クローン145−2c11)」、「ムロモナブ:ヤンセンファーマ:クローンOKT3」、「Teplizumab:MacroGenics Inc.(Rockville MD USA):クローンMGA031」、「Otelixizumab:TolerRx(Cambridge CA USA):クローンTRX4」、「Visilizumab:PDL(Protein Design Labs) BioPharma(Fremont CA USA):クローンHuM291」、「Anti-Human CD3 Functional Grade Purified:eBioscience(San Diego Ca USA):クローンUCHT1」、「Anti-Human CD3 Functional Grade Purified:eBioscience(San Diego Ca USA):クローンHIT3a」、「Anti-Mouse CD3 Functional Grade Purified:eBioscience(San Diego Ca USA):クローン17A2」または「Anti-Rat CD3 Functional Grade Purified:eBioscience(San Diego Ca USA):クローンG4.18」を用いることも可能である。
上記抗CD3抗体は、完全な抗体分子であってもよいが、抗体フラグメント(例えば、FabおよびF(ab’)2フラグメント)であってもよい。FabおよびF(ab’)2フラグメントは完全な抗体のFc部分を欠いており、完全な抗体が有している非特異的な組織結合をほとんど有していない(Wahlら、J.Nucl.Med.24:316−325(1983)参照)。従って、上記抗CD3抗体としては、抗体フラグメントを用いることが好ましいといえる。なお。上記抗体フラグメントは、代表的には、パパイン(Fabフラグメントを生じる)またはペプシン(F(ab’)2フラグメントを生じる)のような酵素を用いて抗CD3抗体を切断することによって産生され得る。
本実施の形態の組成物では、個々の抗CD3抗体が互いに分離されていてもよいし、複数の抗CD3抗体が一体化されていてもよい。例えば、本実施の形態の組成物では、複数の抗CD3抗体が同じ担体上に固定化されていてもよい。この場合には、当該担体を所望の媒体(例えば、生理食塩水など)中に分散させることによって、本実施の形態の組成物を作製してもよい。上記構成であれば、担体の表面上に抗CD3抗体が高濃度に密集した領域を形成することができる。そして、当該領域によって、より効果的にCD3アゴニスト活性を発揮させることができるとともに、中枢神経の損傷をより効果的に治療することができる。
上記担体としては特に限定されず、ゲル状の担体であってもよいし、固体状の担体であってもよい。上記担体としては、例えば、時間が経過するにしたがって生体内で分解される周知の生体吸収性材料を用いることが可能である。
本実施の形態の組成物は、抗CD3抗体以外の成分を含むことも可能である。
例えば、抗CD3抗体以外の成分として、TGF−β1阻害剤(例えば、抗TGF−β1中和抗体)、ノギンタンパク質を発現するためのベクター、Wnt阻害剤(例えば、抗Wnt中和抗体)、Ryk阻害剤(例えば、抗Ryk中和抗体)、Rhoキナーゼ阻害剤(例えば、Y−27632、または、ファスジル)、コレステロールのキレーター(例えば、methyl-beta-cyclodextrin)を挙げることが可能である。本実施の形態の組成物は、これらの物質群から選択される少なくとも1つの物質を含み得る。
これらの物質は、軸索の伸張を誘導する活性を有することが知られている物質である。それ故に、本実施の形態の組成物中にこれらの物質を加えれば、相乗効果によって、中枢神経の損傷をより効果的に治療することができる。
また、本実施の形態の組成物は、Tリンパ球の中でも特にTh1細胞の増殖および/または分化を誘導するサイトカイン(例えば、IL−12またはIL−18など)を含んでいてもよい。当該構成であれば、中枢神経の再生にTリンパ球による相乗効果を加えることができるので、中枢神経の損傷をより効果的に治療することができる。
また、上述した物質以外にも、本実施の形態の組成物は、緩衝剤、pH調節剤、浸透圧調節剤、抗生物質または栄養剤等などを含むことが可能である。
本実施の形態の組成物に含まれる抗CD3抗体の量は特に限定されず、損傷の程度、または、抗CD3抗体のTリンパ球の活性化能などに応じて適宜設定することが可能である。例えば、本実施の形態の組成物中の抗CD3抗体の量は、0.01重量%〜90重量%であってもよく、0.1重量%〜90重量%であってもよく、0.1重量%〜50重量%であってもよく、0.1重量%〜30重量%であってもよく、0.1重量%〜10重量%であってもよい。
本実施の形態の組成物を生体(例えば、ヒト、または、非ヒトである各種動物(例えば、非ヒトである脊椎動物))に対して投与する場合、組成物の投与経路は特に限定されないが、損傷した中枢神経の機能をより効果的に回復させるという観点から、損傷部へ局所的に直接投与することが好ましい。
例えば、組成物の投与は、注射器によって行うことが可能である。この場合には、所望の時間間隔にて、所望の期間、組成物を投与すればよい。例えば、1日おきに所望の期間投与することも可能であるし、1週間おきに所望の期間投与することも可能である。
また、実施例に記載されるように、本実施の形態の組成物を、ミニポンプとこれに接続したカテーテルとを用いて持続的に損傷部へ投与することも可能である。当該方法であれば、上述した注射器を用いた投与と比較して、損傷した中枢神経の機能をより効果的に回復させることができる。なお、この場合にも、所望の期間、投与を続ければよい。
本実施の形態の組成物は、中枢神経が損傷を受けた後、可能な限り速やかに生体へ投与されることが好ましい。損傷後、長時間経過した後は治療効果が低くなるので、少なくとも損傷から1週間後、更に好ましくは損傷から1日後には、本実施の形態の組成物の投与を開始することが好ましい。また、本実施の形態の組成物を投与する期間は特に限定されず、損傷の程度などを考慮して、適宜設定すればよい。損傷後、長時間経過した後は治療効果が低くなること、また、長期にわたる投与は多くの費用がかかること、などを考慮すれば、例えば、6日間、10日間、1ヶ月間または2ヶ月間投与すればよい。勿論、当該投与期間に限定されないことは言うまでもない。
本実施の形態の組成物の投与量は、損傷の程度や患者の状態等により適宜設定できるが、成人(体重:約70kg)の場合、抗CD3抗体の量に換算して、1日当たり0.01mg〜2000mg程度であってもよく、0.5mg〜100mg程度であってもよく、5.0mg〜100mgであってもよく、1.0mg〜100mgであってもよい。また、製剤は、常法に従い、注射剤として製剤したものを用いることができ、例えば、生理食塩液中に抗体を溶解した抗体溶液等を用いることができる。
〔2.キット〕
本実施の形態の中枢神経の損傷を治療するためのキットは、CD3アゴニスト活性を有する化合物を備えている。
上記CD3アゴニスト活性を有している化合物としては特に限定されない。例えば、細胞内のCD3の量を増加させることによってCD3特異的な反応を引き起こす化合物であってもよい。また、上記CD3アゴニスト活性を有している化合物は、CD3分子を不活性な状態(例えば、非リン酸化された状態)から活性化した状態(例えば、リン酸化された状態)へ変化させ得る化合物であってもよい。
上記CD3アゴニスト活性を有している化合物の具体的な例として、抗CD3抗体を挙げることができる。
上記抗CD3抗体は、CD3のγポリペプチド、δポリペプチド、εポリペプチド、ζポリペプチド、または、ηポリペプチドの何れを認識する抗体であってもよい。
上記抗CD3抗体は、ポリクローナル抗体であってもよく、モノクローナル抗体であってもよい。具体的に、上記CD3抗体は、クローン145−2c11、OKT3、MGA031、TRX4、HuM291、UCHT1、HIT3a、17A2、または、G4.18によって生産されるモノクローナル抗体であり得る。
本実施の形態のキットでは、上記中枢神経は特に限定されないが、脊髄であり得る。
本実施の形態のキットは、上記抗CD3抗体以外にも様々な構成を備え得る。例えば、本実施の形態のキットは、上記抗CD3抗体を生体内へ投与するための投与手段を備えていてもよい。当該投与手段の具体的な構成は特に限定されないが、例えば、注射器であってもよく、ポンプとカテーテルとの組み合わせであってもよい。
<1.神経突起伸長アッセイ>
日本SLCからC57BL/6Jマウスを購入し、当該マウスを以下の実施例に用いた。なお、全てのマウスは、SPF(specific pathogen-free)条件下で、国立大学法人大阪大学の実験動物ガイドラインに従って飼育した。
まず、胎生16日のマウスの大脳皮質を、トリプシン含有リン酸緩衝液(トリプシン濃度:0.25質量%)中で37℃にて15分間インキュベートし、これによって大脳皮質を形成する神経細胞群を分離した。
得られた神経細胞群を血清添加培地中に懸濁した後、当該懸濁液を遠心分離することによって、神経細胞群を回収するとともに、上清である血清添加培地を除去した。その後、リン酸緩衝液を用いて、遠心分離によって神経細胞群を3回洗浄した。
洗浄後の神経細胞群をB27(Invitrogen, Carlsbad, CA)とL−グルタミン(ナカライテスク)とを含む、血清無しのNeurobasal medium(Invitrogen)に懸濁した。
当該懸濁液を、Poly−L−lysineでコートされたLab−Tek 4ウェル チャンバースライド(Thermo Fisher Scientific, Waltham, MA)に、1ウェルあたり200μLずつ加えた。このとき、各ウェルに対して、1.5×104細胞/cm2の密度になるように神経細胞を播いた。
モノクローナル抗CD3ε抗体(eBioscience, San Diego, Ca、クローン145-2c11)または抗CD28抗体(eBioscience, クローン37.51)を、1ウェルあたり2μg添加した後、培養を開始した。なお、上述したモノクローナル抗CD3ε抗体(eBioscience, San Diego, Ca、クローン145-2c11)は、CD3アゴニスト活性を有することが知られている抗体である。
神経細胞を37℃にて24時間培養した後、各ウェルから培地を除去した。その後、4%パラフォルムアルデヒド溶液を用いて、神経細胞を固定した。
固定後の神経細胞を、神経のマーカーであるβ tubulin IIIを認識するTuj1抗体(1:1000; Covance, Princeton, NJ)を用いて蛍光染色した。なお、蛍光染色の具体的な方法は、当業者に周知である一般的な方法に従った。
蛍光染色された神経細胞を、位相差顕微鏡(DP70, オリンパス)で観察した。神経細胞の最も長い突起の長さが細胞体の長径以上である場合に、当該突起の長さを神経突起長として計測した。また、各ウェル毎に、100個以上の神経細胞について神経突起長を計測して、これらの神経突起長の平均値を算出した。
具体的に、全ての数値は、平均値の標準誤差(Standard error of the mean:SEM)で示した。また、神経突起伸長アッセイの統計解析には、「1-way ANOVA with Dunnett post-test collection」を使用した。そして、p<0.05のときに、統計学的有意差ありとみなした。
上述した試験の結果を図1に示す(Control:培地のみ、n=5;Anti−CD3ε、n=5;Anti−CD28、n=5;* p<0.05)。
図1に示すように、抗体を培養液に加えない場合(図1の「control」)、および、抗CD28抗体を培養液に加えた場合と比較して、モノクローナル抗CD3ε抗体(145-2c11)を培養液に加えた場合には、有意に神経突起の伸長が促進されることが明らかになった。
<2.脊髄損傷に対する抗体の効果>
in vitroにおいて神経突起の伸長を促す作用を示したモノクローナル抗CD3ε抗体が、in vivoにおいて中枢神経損傷後の神経の再生または神経の保護する作用を示すのではないかと考え、以下の試験を行った。
8週齢〜10週齢の成体のC57BL/6Jマウスにソムノペンチル(50mg/kg;共立製薬)を腹腔内投与して麻酔をかけた。
胸椎9−10番の椎弓を一部削り、27ゲージ針(テルモ)にて髄膜を左右方向に切開した。切開した箇所に、先刃刀にて深さ1mmの脊髄背側半切断を加えた。
マイクロシリコンチューブ(内径0.3mm、外径0.5mm;イマムラ)の一方の先端に、モノクローナル抗CD3ε抗体(1μg/μL;eBioscience、クローン145-2c11)またはアルメニアンハムスターIgG(100μg/μL;eBioscience)を満たした浸透圧ミニポンプ(Alzet, Cupertino, Ca)を接続し、マイクロシリコンチューブの他方の先端を、マウスの尾側から頭側へ向けて損傷脊髄周囲に固定されるように縫合糸で固定した。
浸透圧ミニポンプは損傷脊髄よりも尾側の皮下に、縫合糸にて固定した。その後、筋と皮膚とを縫合して閉創した。抗体は、0.6μL/時間の速度にて14日間持続投与された。用手導尿を毎日、1週間以上続けた。
後肢の運動機能の解析は、Basso Mouse Scale(BMS)スコアにて計測した。当該解析の具体的な方法は、「Basso DM, Fisher LC, Anderson AJ, Jakeman LB, McTigue DM, Popovich PG. Basso Mouse Scale for locomotion detects differences in recovery after spinal cord injury in five common mouse strains. J Neurotrauma 2006; 23: 635-659.」に記載の方法に従った。なお、本実施例では、BMSスコアを、損傷前、損傷後1日、損傷後3日、損傷後7日、以後、1週間おきに損傷後8週まで観測した。
具体的に、全ての数値は、平均値の標準誤差(Standard error of the mean:SEM)で示した。また、運動機能の統計解析には、「2-way ANOVA with repeated measures, Bonferroni post-test」を使用した。そして、 p<0.05のときに、統計学的有意差ありとみなした。
図2にBMSスコアの結果を示す(Control IgG、n=10;Anti−CD3ε、n=11);* p<0.05、** p<0.01)。
BMSスコアが0点の場合には後肢が全く動かないことを示しており、運動機能が良い程、BMSスコアが高くなる。BMSスコアの満点は9点であって、当該値は、損傷を受けていないマウスの後肢の運動機能に対応する。
図2に示すように、対照であるアルメニアンハムスターIgGを投与したマウスに比べて、モノクローナル抗CD3ε抗体を投与したマウスは、脊髄損傷後3週以降において有意な運動機能の回復が観察された。
なお本発明は、以上説示した各構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施の形態や実施例にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施の形態や実施例についても本発明の技術的範囲に含まれる。
本発明は、中枢神経の損傷の治療に利用することができる。

Claims (8)

  1. CD3アゴニスト活性を有する化合物を含むことを特徴とする、中枢神経の損傷を治療するための組成物。
  2. 上記CD3アゴニスト活性を有する化合物は、抗CD3抗体であることを特徴とする、請求項1に記載の組成物。
  3. 上記抗CD3抗体は、クローン145−2c11、OKT3、MGA031、TRX4、HuM291、UCHT1、HIT3a、17A2、または、G4.18によって生産されるモノクローナル抗体であることを特徴とする請求項2に記載の組成物。
  4. 上記中枢神経は、脊髄であることを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載の組成物。
  5. CD3アゴニスト活性を有する化合物を備えることを特徴とする、中枢神経の損傷を治療するためのキット。
  6. 上記CD3アゴニスト活性を有する化合物は、抗CD3抗体であることを特徴とする請求項5に記載のキット。
  7. 上記抗CD3抗体は、クローン145−2c11、OKT3、MGA031、TRX4、HuM291、UCHT1、HIT3a、17A2、または、G4.18によって生産されるモノクローナル抗体であることを特徴とする請求項6に記載のキット。
  8. 上記中枢神経は、脊髄であることを特徴とする請求項5〜7の何れか1項に記載のキット。
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