JP2016053054A - リゾホスファチジン酸に対する抗体を用いたニューロン分化の増加法 - Google Patents

リゾホスファチジン酸に対する抗体を用いたニューロン分化の増加法 Download PDF

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Abstract

【課題】リゾホスファチジン酸(LPA)と結合する抗体を用いてニューロン幹細胞のニューロン分化を増加させるための方法の提供。【解決手段】好適なLPAに対する抗体は、LPAに対するヒト化モノクローナル抗体を含めたモノクローナル抗体である。前記抗体並びにその誘導体及び変異体を、ニューロン分化の増加、並びに神経組織における不十分なニューロン分化及び/又はLPAレベル上昇に関連した損傷、疾患又は状態の治療及び/又は予防に使用する方法。【選択図】なし

Description

本発明は、リゾホスファチジン酸(LPA)と結合する抗体を用いた、ニューロン幹細胞のニューロン分化を増加させるための方法に関する。特に好適なLPAに対する抗体は、LPAに対するモノクローナル抗体、好ましくはヒト化モノクローナル抗体である。このような抗体ならびにその誘導体および変異体は、ニューロン分化の増大において、ならびに不十分なニューロン分化に関連した損傷、疾患または状態の治療および/または予防において使用することができる。
1.序論
以下の記載は、本発明の理解する上で有用であり得る情報を含む。このような情報はいずれも、本明細書で特許請求される発明に対する先行技術である、もしくは関連するものであるということ、または明確にもしくは暗に引用される刊行物はいずれも、本明細書で特許請求される発明に対する先行技術である、もしくは特に関連するものであるということではない。
2.背景
A.ニューロン分化およびLPAの役割
神経幹細胞(NSC)は中枢神経系(CNS)のニューロン新生領域内に見られ、神経損傷部位に移動することができる。したがって、NSCは、神経変性環境におけるニューロンの代替および接続の回復を目的として研究されている。Dottori,M.ら(2008)“Lysophosphatidic Acid Inhibits Neuronal Differentiation of Neural Stem/Progenitor Cells Derived from Human Embryonic Stem Cells.” Stem Cells 26:1146−1154。
神経系の損傷、出血または外傷に続いて、神経系内のLPAのレベルが高レベルに達すると考えられている。Dottoriら(同上)は、損傷後に到達するレベルと同等のLPAレベルがヒトNSCのニューロン分化を阻害し得ることを示しており、このことは、損傷後のCNS内の高レベルのLPAがNSCのニューロンへの分化を阻害して、内因性のニューロン再生を阻害し得ることを示唆している。したがって、LPAシグナル伝達の調節は、神経系損傷に大きな影響を及ぼして、新たな可能性のある治療アプローチを可能にし得る。
B.LPAおよびその他のリゾ脂質
リゾ脂質は、一方または両方の可能なアシル化位置にアシル基が存在しないことにより、極性頭部基および単一の炭化水素骨格を含む低分子量脂質である。sn−3位にある極性頭部基に対して、炭化水素鎖はsn−2および/またはsn−1位(1つまたは複数)にあり得る(本来は溶血に関係する「リゾ」という用語は、IUPACにより脱アシル化を指すものであると再定義された)。“Nomenclature of Lipids,www.chem.qmul.ac.uk/iupac/lipid/lip1n2.html”を参照されたい。これらの脂質は、シグナル伝達生物活性脂質の代表的なものであり、その生物学的および医学的に重要性は、治療、診断/予防または研究目的で脂質シグナル伝達分子の標的化により何が達成され得るかを強調している(Gardellら(2006),Trends in Molecular Medicine,vol 12:65−75)。医学的に重要なリゾ脂質の2つの具体例は、LPA(グリセロール骨格)およびS1P(スフィンゴイド骨格)である。その他のリゾ脂質としては、スフィンゴシン、リゾホスファチジルコリン(LPC)、スフィンゴシルホスフォリルコリン(リゾスフィンゴミエリン)、セラミド、セラミド−1−リン酸、スフィンガニン(ジヒドロスフィンゴシン)、ジヒドロスフィンゴシン−1−リン酸およびN−アセチル−セラミド−1−リン酸が挙げられる。これに対し、C−1(sn1)にO−アルキル(−O−CH−)またはO−アルケニルエーテルおよびC−2にアシルを含むプラスマロゲンは、リゾ脂質類から除外される。選択されたLPA、S1PおよびジヒドロS1Pの構造を以下に示す。
Figure 2016053054
LPAは単一の分子的実体ではなく、様々な長さおよび飽和度の脂肪酸を有する内因性の構造変異体の集まりである(Fujiwaraら(2005),J Biol Chem,vol.280:35038−35050)。LPAの構造骨格は、ホスファチジルコリン(PC)またはホスファチジン酸(PA)のようなグリセロール系リン脂質に由来する。S1Pのようなリゾスフィンゴ脂質の場合、sn−2のセラミド骨格の脂肪酸がない。S1P、ジヒドロS1P(DHS1P)およびスフィンゴシルホスフォリルコリン(SPC)の構造骨格は、スフィンゴミエリンに由来するスフィンゴシンを基礎とする。
LPAおよびS1Pは、同じクラスの複数回膜貫通ドメインGタンパク質共役(GPCR)受容体と結合することにより様々な細胞シグナル伝達経路を調節する生物活性脂質(シグナル伝達脂質)である(Chun J,Rosen H(2006),Current Pharm Des,vol.12:161−171およびMoolenaar,WH(1999),Experimental Cell Research,vol.253:230−238)。S1P受容体はS1P、S1P、S1P、S1PおよびS1P(以前はEDG−1、EDG−5/AGR16、EDG−3、EDG−6およびEDG−8)と命名されており、LPA受容体はLPA、LPA、LPA(以前はEDG−2、EDG−4およびEDG−7)と命名されている。LPAに関してこのファミリーの4番目のLPA受容体が同定されており(LPA)、またその他の推定受容体も上記リゾリン脂質に関して報告されている。
LPAは、真核および原核細胞の両方におけるリン脂質生合成の前駆体として長く知られてきたが、ごく最近では、LPAは活性化細胞、特に血小板により迅速に産生および放出されて、特定の細胞表面受容体に作用することにより標的細胞に影響を与えるシグナル伝達分子として明らかになっている(例えば、Moolenaarら(2004),BioEssays,vol.26:870−881およびvan Leewenら(2003),Biochem Soc Trans,vol 31:1209−1212を参照されたい)。LPAは、小胞体内で合成され、より複雑なリン脂質へプロセシングされる以外に、細胞活性化後に、予め存在するリン脂質の加水分解により生成され得る;例えば、sn−2位は通常、脱アシル化により脂肪酸残基がなく、脂肪酸とエステル化されたsn−1ヒドロキシルだけが残っている。さらに、LPA産生の鍵となる酵素である自己毒素(lysoPLD/NPP2)は、多くのタイプの腫瘍が自己毒素を上方制御するように、癌遺伝子の産物であり得る(Brindley,D.(2004),J Cell Biochem,vol.92:900−12)。高感度かつ特異的なLC/MS法を用いて行われた判定を含む、ヒト血漿および血清中のLPA濃度が報告されている(Bakerら(2001),Anal Biochem,vol.292:287−295)。例えば、新たに調製したヒト血清を25℃で1時間放置したものでは、LPA濃度が約1.2mMであると推定され、LPA類似体である16:0、18:1、18:2および20:4が優勢種であった。同様に、新たに調製したヒト血漿25℃で1時間放置したものでは、LPA濃度が約0.7mMと推定され、18:1および18:2のLPAが優勢種であった。
LPAは、細胞増殖の誘導、細胞移動および神経突起退縮の刺激、ギャップ結合の閉鎖ならびに粘菌の走化性までにもわたる広範な生物学的応答に影響を与える(Goetzlら(2002),Scientific World Journal,vol.2:324−338)。LPAの生物学に関する知識体系は、より多くの細胞系がLPA応答性に関して試験されるにつれて拡大し続ける。例えば、LPAは、細胞の成長および増殖を刺激することに加えて、創傷修復および再生において重要な事象である細胞伸張および細胞表面フィブロネクチン結合を促進することが現在知られている(Moolenaarら(2004),BioEssays,vol.26:870−881)。最近、抗アポトーシス活性もLPAに起因するとされ、またペルオキシソーム増殖受容体γがLPAの受容体/標的であることが最近報告されている(Simonら(2005),J Biol Chem,vol.280:14656−14662)。
LPAは抗体産生が困難な標的であることがわかっているが、LPAに対するポリクローナルマウス抗体産生の科学文献において報告がある(Chenら(2000),Med Chem Lett,vol 10:1691−3)。
3.定義
本発明を詳細に説明する前に、本発明と関連して使用されるいくつかの用語を定義する。これらの用語に加え、必要に応じて他の用語を本明細書の他の箇所で定義する。本明細書で別途明確に定義されない限り、本明細書で使用される技術用語は、当該技術分野で認められているその意味を有する。
「抗体」(「Ab」)または「免疫グロブリン」(Ig)は、免疫グロブリン遺伝子またはそのフラグメントに由来するか、それらを基にして作製されるか、またはそれらによりコードされ、抗原またはエピトープと結合することができる、任意の形態のペプチド、ポリペプチドを指す。例えば、Immunobiology,第5版,C.A.Janeway,P.Travers,M.,Walport,M.J.Shlomchiked編,Garland Publishing(2001)を参照されたい。
「抗体誘導体」とは免疫由来部分、すなわち、抗体に由来する分子のことである。これは、抗原に対して所望の結合活性レベルを保持する、例えば抗体変異体、抗体フラグメント、キメラ抗体、ヒト化抗体、多価抗体、抗体コンジュゲートなどを包含する。
本明細書で使用される「抗体フラグメント」は、インタクト抗体の抗原結合部位または可変領域を含むインタクト抗体の一部分を指し、この部分はインタクト抗体のFc領域の定常重鎖ドメイン(例えば、CH2、CH3およびCH4)がなくてもよい。あるいは、定常重鎖ドメイン(例えば、CH2、CH3およびCH4)の一部分が「抗体フラグメント」に含まれ得る。抗体フラグメントは抗原結合能を保持し、Fab、Fab’、F(ab’)、FdおよびFvフラグメント;ダイアボディ;トライアボディ;一本鎖抗体分子(sc−Fv);ミニボディ、ナノボディならびに抗体フラグメントから形成される多重特異性抗体を含む。抗体のパパイン消化により、それぞれ単一の抗原結合部位を有する、「Fab」フラグメントと呼ばれる2つの同一の抗原結合フラグメント、および残りの「Fc」フラグメントが生じ、容易に結晶化する能力がその名称に反映されている。ペプシン処理により、2つの抗原結合部位を有し、依然として抗原を架橋することができる、F(ab’)フラグメントが生じる。例として、Fabフラグメントは、軽鎖の定常ドメインおよび重鎖の第一定常ドメイン(CH1)も含む。「Fv」とは、完全な抗原認識および抗原結合部位を含む最小限の抗体フラグメントのことである。この領域は、強く非共有結合している1つの重鎖と1つの軽鎖可変ドメインの二量体からなる。各可変ドメインの3つの超可変領域が相互作用してV−V二量体表面上の抗原結合部位を規定するのはこの立体配置においてである。6つの超可変領域が合わさって、抗原結合特異性が抗体に付与される。しかし、単一の可変ドメイン(または抗原に対して特異的な3つの超可変領域のみを含む半分のFv)でも、完全な結合部位よりは低親和性であるが、抗原を認識して結合する能力を有する。「一本鎖Fv」または「sFv」抗体フラグメントは、抗体のVおよびVドメインを含み、これらのドメインは単一ポリペプチド鎖内に存在する。一般にFvポリペプチドは、VドメインとVドメインの間にポリペプチドリンカーをさらに含み、このリンカーにより、sFvは抗原結合のための所望の構造を形成することができる。sFvの概説に関しては、Pluckthun in The Pharmacology of Monoclonal Antibodies,vol.113,RosenburgおよびMoore編,Springer−Verlag,New York,pp.269−315(1994)を参照されたい。
Fabフラグメントは、軽鎖の定常ドメインおよび重鎖の第一定常ドメイン(CH1)も含む。Fab’フラグメントは、抗体ヒンジ領域由来の1つ以上のシステイン(1つまたは複数)を含めた重鎖CH1ドメインのカルボキシル末端の少数の残基が加わっていることにより、Fabフラグメントとは異なる。Fab’−SHは、定常ドメインのシステイン残基(1つまたは複数)が遊離チオール基を有するFab’に対して本明細書において命名したものである。F(ab’)抗体フラグメントは最初、間にヒンジシステインを有するFab’フラグメントの対として作製された。抗体フラグメントの他の化学的結合も知られている。
本明細書における「抗体変異体」は、抗体配列における1つ以上のアミノ酸残基(1つまたは複数)の付加、削除および/または置換により、アミノ酸配列が天然抗体(例えば、抗LPA抗体)アミノ酸配列とは異なり、かつ親抗結合抗体の所望の活性を少なくとも1つ保持する分子を指す。所望の活性としては、抗原と特異的に結合する能力、インビトロで増殖を阻害する能力、インビボで血管新生を阻害する能力およびインビトロでサイトカインプロファイルを変化させる能力を挙げることができる。抗体変異体におけるアミノ酸変化(1つまたは複数)は、Fc領域、Fab領域、CHドメイン、CHドメイン、CHドメインおよびヒンジ領域内を含めた、軽鎖および/または重鎖の可変領域または定常領域内であり得る。一実施形態では、変異体は、親抗体の1つ以上の超可変領域(1つまたは複数)における1つ以上のアミノ酸置換(1つまたは複数)を含む。例えば、変異体は、親抗体の1つ以上の超可変領域において少なくとも1個、例えば約1個〜約10個、好ましくは約2個〜約5個の置換を含み得る。通常、変異体は、親抗体重鎖または軽鎖の可変ドメイン配列と少なくとも75%、より好ましくは少なくとも65%、より好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも85%、より好ましくは少なくとも90%、最も好ましくは少なくとも95%のアミノ酸配列同一性を有するアミノ酸配列を有する。この配列に対する同一性または相同性は、配列を整列させ、必要に応じてギャップを挿入して、最大のパーセント配列同一性を得た後に親抗体残基と一致する、候補配列中のアミノ酸残基のパーセンテージとして本明細書では定義される。N末端、C末端もしくは内部の伸長、削除、または抗体配列内への挿入は、いずれも配列同一性または相同性に影響を与えないものとして解釈されるものとする。変異体はLPAと結合する能力を保持し、好ましくは、親抗体のものより優れた所望の活性を有する。例えば、変異体は、より強い結合親和性、血管新生を低下させるおよび/または腫瘍進行を停止させる増強された能力を有し得る。このような所望の特性(例えば、より低い免疫原性、より長い半減期、増強された安定性、増強された効力)を分析するためには、例えば、抗スフィンゴ脂質抗体のフォーマットが本明細書に開示される生物学的活性のアッセイにおけるその活性に影響を与えることが見出さされているため、Fab形態の変異体をFab形態の親抗体と、または完全長形態の変異体を完全長形態の親抗体と比較するべきである。本明細書において特に対象となる変異体抗体は、少なくとも約10倍の、好ましくは少なくとも約%5、25、59のまたはそれを超える所望の活性を少なくとも1つ示すものであり得る。好適な変異体は、親抗体と比べて、インビトロで測定される優れた生物物理学的特性またはインビトロもしくはインビボで測定される優れた生物学的活性を有するものである。
「抗原」という用語は、抗原と結合する抗体分子または免疫由来部分により認識および結合される分子を指す。抗体により結合される抗原の特定部分は「エピトープ」と呼ばれる。
「抗LPA抗体」は、リゾホスファチジン酸と結合する任意の抗体または抗体由来分子を指す。用語「抗LPA抗体」、「LPAと結合する抗体」および「LPAと反応する抗体」は互換性がある。
「生物活性脂質」は脂質シグナル伝達分子を指す。生物活性脂質は、細胞外および/または細胞内シグナル伝達を仲介して分化、移動、増殖、分泌、生存およびその他のプロセスを調節することにより、多数のタイプの細胞の機能制御に関与するという点で、構造脂質(例えば、膜結合リン脂質)とは区別される。
抗体または抗体のフラグメントもしくは変異体との関連における「生物学的に活性な」という用語は、所望のエピトープと結合することができる、およびいくつかの点で生物学的作用を及ぼすできる抗体または抗体フラグメントまたは抗体変異体を指す。生物学的作用としては、増殖シグナルの調節、抗アポトーシスシグナルの調節、アポトーシスシグナルの調節、エフェクター機能カスケードの調節およびその他のリガンド相互作用の調節が挙げられるが、これらに限定されない。
「バイオマーカー」とは、疾患進行または治療効果を測定するのに有用となる特定の分子特性を有する、身体内の特定の生化学のことである。
「キャリア」は、ハプテンとコンジュゲートすることによりハプテンに免疫原性を付与するのに適合した部分を指す。代表的で非限定的なキャリアのクラスはタンパク質であり、その例としては、アルブミン、キーホールリンペットヘモシアニン、ヘマグルタニン、破傷風およびジフテリアトキソイドが挙げられる。本発明による使用に適したキャリアのその他のクラスおよび例は、当該技術分野で公知である。上記のもののみならず、後に発見または発明される天然または合成のキャリアも本発明による適用に適合し得る。
「化学療法剤」という用語は、抗癌剤およびその他の抗過剰増殖剤を意味する。したがって、化学療法剤は一般的な治療剤の一部である。化学療法剤としては以下のものが挙げられるが、これらに限定されない:DNA傷害剤およびDNA合成を阻害する薬剤;アントラサイクリン(ドキソルビシン、ドノルビシン(donorubicin)、エピルビシン)、アルキル化剤(ベンダムスチン、ブスルファン、カルボプラチン、カルムスチン、クロラムブシル、シクロホスファミド、ダカルバジン、ヘキサメチルメラミン、イホスファミド、ロムスチン、メクロレタミン、メルファラン、ミトタン、マイトマイシン、ピポブロマン、プロカルバジン、ストレプトゾシン、チオテパ、およびトリエチレンメラミン)、白金誘導体(シスプラチン、カルボプラチン、シスジアンミンジクロロ白金)およびトポイソメラーゼ阻害剤(Camptosar);抗代謝産物剤、例えばカペシタビン、クロロデオキシアデノシン、シタラビン(およびその活性化型であるara−CMP)、シトシンアラビノシド、ダカバジン、フロクスウリジン、フルダラビン、5‐フルオロウラシル、5−DFUR、ゲムシタビン、ヒドロキシウレア、6−メルカプトプリン、メトトレキサート、ペントスタチン、トリメトレキサート、6−チオグアニン)など;抗血管新生剤(ベバシズマブ、サリドマイド、スニチニブ、レナリドマイド、TNP−470、2−メトキシエストラジオール、ラニビズマブ、ソラフェニブ、エルロチニブ、ボルテゾミブ、ペガプタニブ、エンドスタチン);血管破壊剤(フラボノイド/フラボン、DMXAA、コンブレタスタチン誘導体、例えばCA4DP、ZD6126、AVE8062Aなど);抗体(Herceptin、Avastin、Panorex、Rituxin、Zevalin、Mylotarg、Campath、Bexxar、Erbitux)のような生物学的薬剤;内分泌療法剤:アロマターゼ阻害剤(4−ヒドロアンドロステンジオン(4−hydroandrostendione)、エキセメスタン、アミノグルテヒミド(aminoglutehimide)、アナストラゾール、レトゾール(letozole))、抗エストロゲン剤(タモキシフェン、トレミフィン、ラオキシフェン(Raoxifene)、Faslodex)、デキサメタゾンのようなステロイド剤;免疫調節剤:サイトカイン(例えばIFN−βおよびIL2など)、インテグリン、その他の接着タンパク質およびマトリックスメタロプロテイナーゼに対する阻害剤;スベロイルアニリドヒドロキサム酸のようなヒストン脱アセチル化酵素阻害剤;イマチニブ(Gleevec)のようなチロシンキナーゼ阻害剤などのシグナル伝達阻害剤;17−N−アリルアミノ−17−デメトキシゲルダナマイシンのような熱ショックタンパク質阻害剤;全トランスレチノイン酸のようなレチノイド;増殖因子受容体阻害剤または増殖因子それ自体;抗有糸分裂化合物および/またはチューブリン脱重合化剤、例えばタキソイド(パクリタキセル、ドセタキセル、タキソテール、BAY59−8862)、ナベルビン、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ビンデシンおよびビノレルビンなど;COX阻害剤のような抗炎症剤および細胞周期調節剤、例えば、チェックポイント調節剤およびテロメラーゼ阻害剤。
「キメラ」抗体(または免疫グロブリン)という用語は、特定の種に由来するまたは特定の抗体クラスもしくはサブクラスに属する抗体中の対応する配列と同一または相同である重鎖および/または軽鎖を含む分子であって、残りの鎖(1つまたは複数)は、別の種に由来するまたは別の抗体クラスもしくはサブクラスに属する抗体中の対応する配列と同一または相同である分子、ならびに所望の生物学的活性を示す限りそのような抗体のフラグメントを指す(Cabillyら,下記;Morrisonら,Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.,vol.81:6851(1984))。
「併用療法」という用語は、示される治療効果を得るための少なくとも2つの異なる治療法の提供を含む治療計画を指す。例えば、併用療法は、2つ以上の化学的に異なる有効成分、例えば即効性の化学療法剤と抗脂質抗体の投与を含み得る。あるいは、併用療法は、抗脂質抗体および/または1つ以上の化学療法剤を単独で、または放射線療法および/または外科手術のような別の治療の送達と共に投与することを含み得る。2つ以上の化学的に異なる有効成分の投与との関連において、有効成分は同じ組成物の一部として、または異なる組成物として投与され得ることが理解される。別々の組成物として投与する場合、異なる有効成分を含む組成物を同じまたは異なる投与計画を用いて、同じまたは異なる経路で、同じまたは異なる時間に、すべて特定の状況に応じて、また担当医により決定される通りに投与し得る。同様に、1つ以上の抗脂質抗体種、例えば、抗LPA抗体を単独でまたは1つ以上の化学療法剤と共に、例えば放射線照射および/または外科手術と組み合わせる場合、その薬物(1つまたは複数)を、外科手術または放射線照射治療の前または後に送達し得る。
「ダイアボディ」という用語は、2つの抗原結合部位を有する小型の抗体フラグメントを指し、このフラグメントは、同一ポリペプチド鎖内の軽鎖可変ドメイン(V)と連結された重鎖可変ドメイン(V)(V−V)を含む。同一鎖上の2つのドメイン間で対形成ができない程度に短いリンカーを使用することにより、ドメインを別の鎖の相補的ドメインと対形成させて、2つの抗原結合部位を作出する。ダイアボディは、例えば、欧州特許第404,097号;国際公開第93/11161号;およびおHollingerら,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 90:6444−6448(1993)においてより詳細に記載されている。
「有効濃度」は、例えば特定の望ましくない生物活性脂質の絶対的、相対的および/または利用可能な濃度および/または活性を指す。換言すれば、生物活性脂質の有効濃度とは、その生物学的機能を発揮するのに利用可能な、および発揮することができる脂質の量のことである。本発明では、例えば、生物活性脂質(例えば、C1Pなど)に対するモノクローナル抗体のような免疫由来部分は、脂質と結合することにより脂質の有効濃度を低下させて、その生物学的機能の発揮を不可能にすることができる。この例では、脂質それ自体はまだ存在する(換言すれば、脂質は抗体により分解されない)が、その受容体または他の標的と結合して下流効果を引き起こすことがもはやできないため、絶対濃度よりもむしろ「有効濃度」の方が適切な尺度である。生物活性脂質の有効濃度を直接的および/または間接的に測定するための方法およびアッセイがある。
「エピトープ」または「抗原決定基」は、抗体由来の抗体抗原結合部分と反応する抗原の部分を指す。
「完全ヒト抗体」は、免疫原が与えられたときに、CDR移植を必ずしも必要としないヒト抗体を産生することができる遺伝子操作された(すなわち、トランスジェニック)マウス(例えば、Medarex製)において産生される抗体を指し得る。このような抗体は、非ヒト抗体遺伝子が抑制され、ヒト抗体遺伝子発現に置き換わっているマウスのような動物に由来する完全ヒト(100%タンパク質配列)である。関連するCDRに対するヒトフレームワークが産生可能であり得るこのような遺伝子操作されたマウスまたは他の動物に与えられた場合、生物活性脂質に対して抗体が生成され得ると出願者らは考える。
「ハプテン」とは、非免疫原性であるが、抗体または抗体由来の抗原結合部分と反応し得る物質のことである。換言すれば、ハプテンは抗原性という特性を有するが、免疫原性ではない。ハプテンは一般に、ほとんどの状況下で、キャリア、例えば、タンパク質、ポリエチレングリコール(PEG)、コロイド金、シリコーンビーズなどと結合した場合のみ免疫応答を誘発する(すなわち、抗原として作用する)ことができる。キャリアは、同様にそれ自体だけでは免疫応答を誘発しないものであり得る。
「ヘテロコンジュゲート抗体」という用語は、2つの共有結合した抗体を指し得る。このような抗体は、架橋剤の使用を含めた合成タンパク質化学で既知の方法を用いて調製し得る。本明細書で使用される「コンジュゲート」という用語は、1つ以上の抗体フラグメント(1つまたは複数)または結合部分と1つ以上のポリマー分子(1つまたは複数)との共有結合により形成される分子を指す。
非ヒト(例えば、マウス)抗体の「ヒト化」形態とは、非ヒト免疫グロブリンに由来する最小限の配列を含むキメラ抗体のことである。または別の見方をすれば、ヒト化抗体とは、ヒト配列の代わりに非ヒト(例えば、マウス)抗体由来の選択された配列も含むヒト抗体のことである。ヒト化抗体は、その結合活性および/または生物学的活性を著しく変化させない、同じまたは異なる種由来の保存的アミノ酸置換または非天然残基を含み得る。このような抗体は、非ヒト免疫グロブリンに由来する最小限の配列を含むキメラ抗体である。ほとんどの場合、ヒト化抗体は、レシピエントの相補性決定領域(CDR)由来の残基が、所望の特性を有する非ヒト種(ドナー抗体)、例えばマウス、ラット、ラクダ、ウシ、ヤギまたはウサギなどのCDRに由来する残基に置き換わっているヒト免疫グロブリン(レシピエント抗体)である。いくつかの場合には、ヒト免疫グロブリンのフレームワーク領域(FR)残基が、対応する非ヒト残基に置き換わっている。CDRは、所望の抗原結合レベルが保持される限り、任意の様々なフレームワーク内に配置し得る。
さらに、ヒト化抗体は、レシピエント抗体においても移入されたCDRまたはフレームワーク配列においても見られない残基を含み得る。このような改変を行って、抗体の性能をさらに洗練し最大化する。したがって、一般にヒト化抗体は、すべてまたは超可変ループのすべてが非ヒト免疫グロブリンのそれらに対応し、FR領域のすべてまたは実質的にすべてがヒト免疫グロブリン配列のFR領域である、少なくとも1つの、一態様では2つの可変ドメインをすべて含む。ヒト化抗体はまた、免疫グロブリン定常領域(Fc)またはヒト免疫グロブリンの定常領域(Fc)の少なくとも一部分を任意に含む。例えば、Cabillyら,米国特許第4,816,567号;Cabillyら,欧州特許第0,125,023B1号;Bossら,米国特許第4,816,397号;Bossら,欧州特許第0,120,694B1号;Neubergerら,国際公開第86/01533号;Neubergerら,欧州特許第0,194,276B1号;Winter,米国特許第5,225,539号;Winter,欧州特許第0,239,400B1号;Padlanら,欧州特許出願公開第0,519,596A1号;Queenら(1989),Proc.Natl Acad.Sci.USA,vol.86:10029−10033を参照されたい。さらなる詳細に関しては、Jonesら,Nature 321:522−525(1986);Reichmannら,Nature 332:323−329(1988);およびPresta,Curr.Op.Struct.Biol.2:593−596(1992)およびHansen,国際公開第2006105062号を参照されたい。
「高増殖性疾患」という用語は、特に限定されないが癌および良性腫瘍を生じ得る器官および組織細胞の無制御増殖を含めた、細胞の無制御増殖に関連した疾患および障害を指す。内皮細胞に関連した高増殖性疾患は、血管腫のような血管新生、子宮内膜症、肥満症、加齢性黄斑変性症および様々な網膜症、ならびにアテローム性動脈硬化症の治療でのステント挿入の結果として再狭窄を引き起こす内皮細胞および平滑筋細胞の増殖といった疾患を生じ得る。線維芽細胞に関連した高増殖性疾患(すなわち、線維形成)としては、過剰な瘢痕化(すなわち、線維症)、例えば加齢性黄斑変性症、心筋梗塞に関連した心再構築および心不全、外科手術または傷害の結果として一般的に生じるケロイドのような過剰な創傷治癒など、ならびに類繊維腫、ならびにステント挿入といった障害が挙げられるが、これらに限定されない。
「免疫原」とは、特定の免疫応答、特に、免疫原が投与された動物における抗体応答を誘発することができる分子のことである。本発明では、免疫原は、キャリアとコンジュゲートされた誘導体化生物活性脂質、すなわち「誘導体化生物活性脂質コンジュゲート」である。免疫原として使用される誘導体化生物活性脂質コンジュゲートは、免疫原に応答して生成される抗体検出のための捕捉物質として使用し得る。したがって、免疫原は検出試薬としても使用し得る。あるいは、捕捉物質として使用される誘導体化生物活性脂質コンジュゲートは、免疫原におけるものとは異なるリンカーおよび/またはキャリア部分を有し得る。
特に生物学的現象との関連における「阻害する」ことは、減少させる、抑制するまたは遅延させることを意味する。例えば、「腫瘍形成の阻害」をもたらす治療は、腫瘍が全く形成されないこと、または未処置対照よりも腫瘍がよりも緩やかに形成されるか、もしくはその数が少ないことを意味し得る。
「単離(された)」抗体とは、その天然環境の成分から同定、分離および/または回収された抗体のことである。その天然環境の夾雑成分とは、抗体の診断的または治療的使用を妨げる物質のことであり、酵素、ホルモンおよびその他のタンパク質性または非タンパク質性の溶質を含み得る。好適な実施形態では、抗体は、(1)Lowry法による判定で95重量%を超える抗体、最も好ましくはで99重量%を超えるまで、(2)スピニングカップ配列決定装置の使用により少なくとも15残基のN末端または内部アミノ酸配列を得るのに十分な程度まで、あるいは(3)クーマシーブルーまたは好ましくは銀染色を用いた還元または非還元条件下でのSDS−PAGEによる均一性まで精製する。抗体の天然環境の少なくとも1つの成分が存在しないことから、単離抗体には組換え細胞内のインサイチュ抗体が含まれる。しかし、通常、単離抗体は少なくとも1つの精製段階で調製される。
本明細書で使用される「標識」という語は、検出可能な化合物または組成物、例えば抗体と直接的または間接的にコンジュゲートされたものなどを指す。標識自体が単独で検出可能であり得る(例えば、放射性同位元素標識または蛍光標識)か、または酵素標識の場合、基質化合物または組成物の検出可能な化学変化を触媒し得る。
本願を通して使用される「線状抗体」という語句は、Zapataら,Protein Eng.8(10):1057−1062(1995)に記載されている抗体を指す。簡潔には、この抗体は、1対の抗原結合領域を形成する1対の直列のFdセグメント(V−C1−V−C1)を含む。線状抗体は二重特異性または単一特異性であり得る。
本発明との関連において、「液体組成物」は、製造者から最終使用者(例えば、医師または看護師)に供給されるその充填されたまたは完成された形態において、固体ではなく液体または溶液であるものを指す。ここで、「固体」は液体または溶液でない組成物を指す。例えば、固体は、凍結乾燥(lyophilization、freeze−drying)、沈降および同様の方法により調製される乾燥組成物を含む。
「代謝産物」という用語は、そこからLPAが生成される化合物およびLPAの分解により生じる化合物;すなわち、リゾリン脂質代謝経路に関与する化合物を指す。「代謝前駆体」という用語は、そこからスフィンゴ脂質が生成される化合物を指すために使用され得る。
本明細書で使用される「モノクローナル抗体」(mAb)という用語は、実質的に均一な抗体の集団から得られる抗体、または前述抗体の集団を指す。集団を構成する個々の抗体は、少量存在し得る可能な天然の突然変異を除き基本的に同一である。モノクローナル抗体は単一の抗原部位に対して高度に特異的である。さらに、通常は異なる決定基(エピトープ)に対する異なる抗体を含む従来の(ポリクローナル)抗体調製物とは対照的に、各モノクローナル抗体は抗原上の単一の決定基に対するものである。「モノクローナル」という修飾語は、実質的に均一な抗体集団から得られる抗体の特徴を示すものであり、任意の特定の方法による抗体の作製を必要とするものであると解釈するべきではない。例えば、本発明に従って使用されるモノクローナル抗体は、Kohlerら,Nature 256:495(1975)により最初に記載されたハイブリドーマ法により作製し得るか、または組換えDNA法(例えば、米国特許第4,816,567号を参照されたい)により作製し得る。「モノクローナル抗体」はまた、例えばClacksonら,Nature 352:624−628(1991)およびMarksら,J.Mol.Biol.222:581−597(1991)において記載されている技術を用いて、または他の当該技術分野で公知の方法により、ファージ抗体ライブラリーから単離し得る。本明細書のモノクローナル抗体は特に、重鎖および/または軽鎖の一部分が、特定の種に由来するまたは特定の抗体のクラスもしくはサブクラスに属する抗体中の対応する配列と同一または相同であり、残りの鎖(1つまたは複数)が、別の種に由来するまたは特定の抗体のクラスもしくはサブクラスに属する抗体中の対応する配列と同一または相同であるキメラ抗体、ならびに所望の生物学的活性を示す限りそのような抗体のフラグメントを指す(米国特許第4,816,567号;およびMorrisonら,Proc.Natl.Acad.Sci USA 81:6851−6855(1984))。
「単独療法」は、単回投与として投与されるか、経時的な複数回投与として投与されるかに関係なく、1つの治療的に有効な化合物の送達に基づく治療計画を指す。
「多重特異性抗体」という用語は、少なくとも2つの異なるエピトープに対する結合特性を有する抗体またはモノクローナル抗体を指し得る。一実施形態では、エピトープは同じ抗原に由来する。別の実施形態では、エピトープは2つ以上の異なる抗原に由来する。多重特異性抗体を作製するための方法は当該技術分野で公知である。多重特異性抗体は二重特異性抗体(2つのエピトープに対する結合特性を有する)、三重特異性抗体(3つのエピトープ)などを含む。例えば、多重特異性抗体は、組換えにより2つ以上の免疫グロブリン重鎖/軽鎖対の同時発現を用いて作製し得る。あるいは、多重特異性抗体は化学結合を用いて調製し得る。当業者は、上記のまたは他の方法を用いて、当該技術分野で公知の通りに多重特異性抗体を作製し得る。多重特異性抗体は多重特異性抗体フラグメントを含む。
「新生物」または「癌」は、異常で無制御な細胞増殖を指す。「新生物」または腫瘍または癌とは、異常な、無制御かつ無秩序な細胞増殖の拡散のことであり、一般に癌と呼ばれる。新生物は良性または悪性であり得る。新生物が破壊的増殖、侵襲性および転移といった特性を有するならば、それは悪性または癌性である。侵襲性は、周囲組織への浸潤またはその破壊よる、通常は、組織の境界を規定する基底層を突破して、多くの場合、身体の循環系に侵入することによる、新生物の局所的拡大を指す。転移は通常、リンパ管または血管による腫瘍細胞の播種を指す。転移はまた、漿膜腔またはくも膜下またはその他の空隙を介した直接的拡大による腫瘍細胞の移動も指す。転移のプロセスでは、身体の他の部位への腫瘍細胞の移動により、原発部位から離れた領域で新生物が確立される。
「神経の」は神経に関するという意味である。神経とはニューロンからなる繊維束のことである。
「神経幹細胞」(NSC)とは、神経系の主要な表現型に分化する、自己再生性の多能性細胞のことである。NSCはグリア細胞およびニューロン細胞を生じさせる。ニューロン幹細胞はニューロン細胞を生じさせる。神経前駆細胞(NPC)とは、通常はインビボでの限られた回数の複製サイクルを経る幹細胞分裂の子孫のことである。
「ニューロン」は、電気化学的シグナル伝達により情報を処理および伝達する神経系内の興奮性細胞型を指す。ニューロンはCNS(脳および脊髄)および末梢神経の核となる構成要素である。「ニューロンの」は「ニューロンに関する」という意味である。
「ニューロン分化」とは、ニューロン、アストロサイトなどのような神経系の成熟細胞型への神経幹細胞の転換のことである。このような分化はインビボで生じるが、ニューロスフェアのようなモデル系においてインビトロで生じさせ得る。分化は多段階(multistepまたはmultistage)のプロセスであるため、分化の複数の相または段階をインビトロで研究することができる。
本明細書における「親」抗体とは、変異体の調製に使用するアミノ酸配列によりコードされている抗体のことである。親抗体は、天然抗体であり得るか、または既に変異体、例えばキメラ抗体であり得る。例えば、親抗体はヒト化またはヒト抗体であり得る。
本発明による「特許性のある」組成物、工程、機構または製造品は、分析を行ったときに、対象物が法的要件をすべて満たすことを意味する。例えば、新規性、進歩性などに関して、後の調査で、1つ以上の特許請求の範囲が、新規性、進歩性などを無効にする1つ以上の実施形態を包含することが明らかになった場合、定義により「特許性のある」実施形態に限定されているその特許請求範囲(1つまたは複数)は、特許性のないその実施形態(1つまたは複数)を具体的に除外する。また、本明細書に添付の特許請求の範囲は、最も広い妥当な範囲を与えるものとして、およびその正当性を保護するものとして共に解釈されるべきである。さらに、特許請求の範囲は、本願が出願されるかまたは特許として発行された時点から、1つ以上の添付の特許請求の範囲の正当性が疑問視されるまでに、特許性のための1つ以上の法的要件が改正さるか、または特許性のための特定の法的要件が満たされているか否かを評価するための基準が変わるような状況下において、(1)その正当性を保護する、および(2)最も広い妥当な範囲を与えるように解釈されるべきである。
「薬学的に許容される塩」という用語は、製剤中で使用され、本発明の薬剤および化合物の生物学的有効性および特性を保持し、生物学的にまたはその他で望ましくない塩を指す。多くの場合、本発明の薬剤および化合物は、荷電基、例えば荷電アミノ基および/またはカルボキシル基あるいはそれらと同様の基が存在することにより、酸性および/または塩基性塩を形成することができる。薬学的に許容される酸付加塩が無機酸および有機酸から調製され得るのに対し、薬学的に許容される塩基付加塩は、無機塩基および有機塩基から調製され得る。薬学的に許容される塩の概説に関しては、Bergeら(1977)J.Pharm.ScL,vol.66,1−19)を参照されたい。
「複数」は2つ以上という意味である。
「分離(された)」、「精製(された)」、「単離(された)」などの用語は、試料入りの容器内に容れられた試料の1つ以上の成分が、1つ以上の他の試料成分が容器内に存在した状態で、物理的に除去または希釈される、またはされていることを意味する。分離または精製段階の間に除去または希釈され得る成分としては、化学反応産物、非反応化学物質、タンパク質、炭水化物、脂質および未結合分子が挙げられる。
「固相」は、本発明の抗体が付着し得る基質のような非水性基質を意味する。本明細書に包含される固相の例としては、部分的にまたは全部がガラス(例えば、制御細孔ガラス)、多糖類(例えば、アガロース)、ポリアクリルアミド、ポリスチレン、ポリビニルアルコールおよびシリコーンで形成されているものが挙げられる。特定の実施形態では、状況に応じて、固相はアッセイプレートのウェルを含み得;他の実施形態ではそれは精製カラム(例えば、アフィニティクロマトグラフィーカラム)である。またこの用語は、米国特許第4,275,149号に記載されているような、離散粒子の不連続固相も包含する。
「種」という用語は、本明細書において様々な文脈、例えば化学療法剤の特定の種において使用される。各文脈において、この用語は、特定の文脈で記載される種類の化学的に不明瞭な分子の集団を指す。
抗体−抗原相互作用との関連における「特異的」または「特異性」という用語は、抗体とその標的エピトープ間の選択的で非ランダムな相互作用を指す。ここで、「抗原」は、抗体分子または他の免疫由来部分により認識および結合される分子を指す。抗体が結合する抗原の特定の部分を「エピトープ」と呼ぶ。この相互作用は、分子間の適切な化学的または分子的相互作用を可能にする構造的、疎水性/親水性および静電的特性の存在に依存する。したがって、抗体は通常、その標的抗原のエピトープと「結合する」(もしくは「特異的に結合する」)、またはそれ「と反応する」(もしくは「と特異的に反応する」)、または同様にそれ「に対して反応する」(もしくは「に対して特異的に反応する」と言われる。抗体は、当該技術分野においては一般に、抗原に対する抗体結合の略記として、その抗原「に対する(againstまたto)」と記載される。したがって、「LPAと結合する抗体」、「LPAに対して反応する抗体」、「LPAと反応する抗体」、「LPAに対する抗体」および「抗LPA抗体」はすべて同じ意味である。抗体分子は、所与の条件設定下で、所望の抗原との結合を無関係な抗原または類似抗原または抗原混合物との結合と比較することにより、結合特異性に関して試験することができる。本発明の抗体は、無関係な抗原とまたは標的抗原の類似体とさえ有意な結合がないことが好ましい。
「被検体」または「患者」は、本発明の分子によりもたらされ得る治療を必要とする動物を指す。本発明に従って治療し得る動物は脊椎動物を含み、哺乳動物、例えばウシ、イヌ、ウマ、ネコ、ヒツジ、ブタおよび霊長類(ヒトおよび非ヒト霊長類を含む)動物などが特に好適な例である。
「治療剤」は、治療効果をもたらすことを意図がされる薬物または化合物を指し、以下のものを含むが、これらに限定されない:COX阻害剤およびその他のNSAIDSを含めた抗炎症剤、抗血管新生薬、上で定義されるような化学療法剤、心血管剤、免疫調節剤、神経変性障害を治療するために使用される薬剤、点眼薬など。
「治療有効量」(または「有効量」)は、治療を必要とする被検体に投与した場合に治療をもたらすのに十分な有効成分、例えば本発明による薬剤の量を指す。したがって、本発明による組成物の治療有効量を構成するものは、当業者により容易に決定され得る。例えば、癌治療との関連では、「治療有効量」とは、癌細胞の生存または代謝に関連した1つ以上のパラメーターの客観的に測定される変化をもたらす量のことであり、このようなパラメーターには、特定の癌に関連した1つ以上の遺伝子発現の増加または減少、腫瘍量の減少、癌細胞溶解、生物試料(例えば、生検および体液、例えば全血、血漿、血清、尿などのアリコート)中の1つ以上の癌細胞死マーカーの検出、アポトーシス誘導またはその他の細胞死経路の誘導などが含まれる。当然ながら、治療有効量は、治療される特定の被検体および状態、被検体の体重および年齢、疾患状態の重症度、選択される特定の化合物、従うべき投与計画、投与のタイミング、投与方法などに応じて異なり、これらはすべて当業者により容易に決定され得る。併用療法との関連では、特定の有効成分の治療有効量を構成するものは、単独療法(すなわち、有効成分として1つの化学物質のみを使用する治療計画)として投与される場合のその有効成分の治療有効量を構成するものとは異なることが理解される。
本明細書で使用される「(治)療法」および「治療(的)」という用語は、疾患、障害または身体的外傷に対する予防および/または治療の全領域を包含する。本発明の「治療」剤は、危険性があると同定され得る個人を標的とするように設計された方法(遺伝薬理学)を組み込むものを含めた予防的(prophylacticまたはpreventive)な形で;または本質的に寛解性もしくは治癒的な形で作用し得る;あるいは治療される疾患または障害の少なくとも1つの症状の進行の速度または程度を低減するように作用し得る;あるいは疾患、障害または身体的外傷からの回復に伴う、必要時間、任意の不快感もしくは疼痛の発生もしくは程度、または身体的制約を低減するように作用し得る;あるいは他の療法および治療に対する補助剤として使用され得る。
「治療」または「治療すること」という用語は、疾患もしくは障害に対して予防もしくは防御すること(すなわち、臨床症状を発症させないこと);疾患もしくは障害を阻害すること(すなわち、臨床症状の発症の停止、遅延もしくは抑制);および/または疾患もしくは障害を緩和すること(すなわち、臨床症状の軽減を引き起こすこと)を含めた、疾患または障害の任意の治療を意味する。理解されるように、1つまたは複数の最終的な誘導事象が未知または潜在的であり得るため、疾患または障害を「予防すること」と「抑制すること」の間の区別が常に可能であるとは限らない。「治療を必要とする」者は、障害を既に有する者のみならず、障害を予防するべき者も含む。したがって、「予防」という用語は、「予防すること」および「抑制すること」を共に包含するタイプの「治療」を構成すると理解される。したがって、「防御」という用語は「予防」を包含する。
「治療計画」という用語は、化学療法剤および細胞毒性剤、放射線療法、外科手術、遺伝子治療、DNAワクチンおよびDNA療法、siRNA療法、抗血管新生療法、免疫療法、骨髄移植、アプタマー、ならびに生物学的薬剤、例えば抗体および抗体変異体、受容体デコイおよびその他のタンパク質ベースの治療剤などを用いた、疾患または障害の任意の治療を意味する。
(抗体の)「可変」領域という用語はフレームワークを含み、また相補性領域またはCDR(他にも超可変領域としても知られる)は、抗体間の配列が大きく異なりかつ各特定の抗体のその特定の抗原に対する結合および特異性において使用される、可変ドメインの特定部分を指す。しかし、可変性は、抗体の可変ドメイン全体に均一に分布しているわけではない。それは軽鎖および重鎖可変ドメインの両方の超可変領域(CDR)と呼ばれる3つのセグメント内に集中している。可変ドメインの中でより高度に保存されている部分はフレームワーク領域(FR)と呼ばれる。天然の重鎖および軽鎖の各可変ドメインは4つのFR(それぞれFR1、FR2FR3およびFR4)を含み、これらのFRは、主としてβシート立体配置をとり、このβシート構造を連結するまたは場合によりその一部を形成するループを形成している、3つの超可変領域により連結されている。本明細書で使用される「超可変領域」という用語は、抗原結合に関与する抗体のアミノ酸残基を指す。超可変領域は、「相補性決定領域」または「CDR」由来のアミノ酸残基(例えば、軽鎖可変ドメイン中の残基24〜34(L1)、50〜56(L2)および89〜97(L3)、ならびに重鎖可変ドメイン中の31〜35(H1)、50〜65(H2)および95〜102(H3);Kabatら,Sequences of Proteins of Immunological Interest,第5版,Public Health Service,National Institutes of Health,Bethesda,Md.(1991))および/または「超可変ループ」由来のアミノ酸残基(例えば、軽鎖可変ドメイン中の残基26〜32(L1)、50〜52(L2)および91〜96(L3)、ならびに重鎖可変ドメイン中の26〜32(H1)、53〜55(H2)および96〜101(H3);ChothiaおよびLesk J.Mol.Biol.196:901−917(1987))を含む。「フレームワーク」または「FR」残基とは、本明細書で定義される超可変領域残基以外の可変ドメイン残基のことである。各鎖中の超可変領域は、FRによって近接してまとめられ、他の鎖由来の超可変領域と共に抗体の抗原結合部位の形成に寄与する(Kabatら,Sequences of Proteins of Immunological Interest,第5版.Public Health Service,National Institutes of Health,Bethesda,Md.(1991),p.647−669を参照されたい)。したがって、抗体のその抗原と結合するための特異性は、CDR(超可変領域)を支える特定のフレームワークよりもむしろCDRとその空間配置によりもたらされる。CDRは、所望の抗原結合レベルが保持される限り、任意の様々なフレームワーク内に配置し得る。
定常ドメインは、抗体と抗原の結合には直接関与しないが、抗体依存性細胞傷害への抗体関与のような様々なエフェクター機能を示す。
(発明の概要)
本発明は、神経幹細胞のニューロン分化を増加させるための方法を提供し、この方法は、リゾホスファチジン酸のレベルが減少し、ニューロン分化が増大するように、リゾホスファチジン酸と結合する抗体またはそのフラグメント、変異体もしくは誘導体を、神経幹細胞を含む環境(例えば、中枢神経系内の組織)に送達することを含む。ニューロン分化の増大は、ニューロスフェアを含めたインビボまたはインビトロで生じ得る。上記方法は、リゾホスファチジン酸と結合する抗体またはその抗体フラグメント、変異体もしくは誘導体を使用する。上記抗体は、モノクローナル抗体またはそのフラグメント、変異体もしくは誘導体であり得、またヒト化抗体であり得る。
本発明はまた、ヒトのような動物における神経系の疾患、状態または損傷を治療するための方法も提供する。神経系の疾患、状態または損傷は、不必要に高レベルのリゾホスファチジン酸に関連したもの、または不十分なニューロン分化に関連したものである。上記方法は、リゾホスファチジン酸と結合する抗体または抗体のフラグメント、変異体もしくは誘導体で動物を治療することを含む。この抗体は、モノクローナル抗体またはそのフラグメント、変異体もしくは誘導体であり得、またヒト化抗体であり得る。上記方法での治療に適した疾患または状態の例としては、外傷性脳損傷、脳もしくは脊髄出血、脊髄損傷、脳卒中または神経変性疾患が挙げられる。神経変性疾患の例はパーキンソン病、アルツハイマー病およびハンチントン病である。
本発明の上記およびその他の態様および実施形態を、以下の節でより詳細に述べる。
当業者が理解するように、以下の説明は、本発明の特定の好適な実施形態を詳細に説明するものであり、したがって、単に代表的なものであって、本発明の実際の範囲を示すものではない。本発明を詳細に説明する前に、記載されている特定の分子、システムおよび方法論は変化し得るため、本発明はこれらに限定されないことが理解される。また、本明細書で使用される用語は、単に特定の実施形態を説明することを目的とし、添付の特許請求の範囲により規定される本発明の範囲を限定することを意図するものではないことも理解されるべきである。
本願には着色された図が1枚含まれている。カラー図面を添付した本願の写しは、要請があれば、必要な料金を支払うことで提供される。以下に図の簡単な概要を記載する。
皮質損傷後のマウス脳を示す顕微鏡像である。左側のパネルAは、皮質衝撃モデルにおけるTBI後に通常見られる出血領域を有するマウス脳を示す。右側のパネルBは、同じモデルにおけるTBI後であるが、抗LPA抗体で治療したマウス脳を示す。このモデルにおいて通常観察される出血が大幅に減少している。
本発明は、リゾ脂質、特にリゾホスファチジン酸(LPA)に対する抗体を用いた、インビトロまたはインビボでのニューロン分化増大のための方法に関する。
1.抗体
抗体分子または免疫グロブリンは、通常は異なる2種類のポリペプチド鎖からなる、分子量約150kDaの大きな糖タンパク質分子である。一方のポリペプチド鎖は重鎖(H)と呼ばれ、約50kDaである。他方のポリペプチドは軽鎖(L)と呼ばれ、約25kDaである。各免疫グロブリン分子は通常、2つの重鎖と2つの軽鎖からなる。2つの重鎖はジスルフィド結合により互いに連結されており、異なる免疫グロブリンアイソタイプの重鎖の間でその数は異なる。各軽鎖は、1つのジスルフィド共有結合により重鎖と連結されている。天然に存在するいずれの抗体分子においても、2つの重鎖および2つの軽鎖は同一で、2つの同一の抗原結合部位を有し、したがって二価と呼ばれる、すなわち、同時に2つの同一分子と結合する能力を有する。
任意の脊椎動物種に由来する抗体分子の軽鎖は、その定常ドメインのアミノ酸配列に基づき、カッパ(κ)およびラムダ(λ)という明らかに異なる2つのタイプの1つに割り当てることができる。2つの軽鎖のタイプの比は種によって異なる。例として、λに対するκの平均的な比はマウスでは20:1であるが、ヒトでは2:1であり、ウシでは1:20である。
任意の脊椎動物種に由来する抗体分子の重鎖は、その定常ドメインのアミノ酸配列に基づき、アイソタイプと呼ばれる5つの明らかに異なるタイプの1つに割り当てることができる。一部のアイソタイプにはいくつかのサブタイプがある。免疫グロブリンの5つの主要なクラスは、免疫グロブリンM(IgM)、免疫グロブリンD(IgD)、免疫グロブリンG(IgG)、免疫グロブリンA(IgA)および免疫グロブリンE(IgE)である。IgGは最も豊富にあるアイソタイプであり、いくつかのサブクラス(ヒトではIgG1、2、3および4)がある。Fcフラグメントおよびヒンジ領域は、異なるアイソタイプの抗体では異なっており、その機能的特性を決定する。しかし、ドメインの全体的な構成はすべてのアイソタイプで類似している。
軽鎖および重鎖可変ドメインの両方において、可変性が抗体の可変ドメイン全体に均一に分布しているのではなく、相補性決定領域(CDR)または超可変領域と呼ばれる3つのセグメント内に集中していることは注目すべきことである。可変ドメインのより高度に保存されている部分はフレームワーク領域(FR)と呼ばれる。天然の重鎖および軽鎖の可変ドメインはそれぞれ、3つのCDRにより連結された4つのFR領域を含む。各鎖内のCDRは、FR領域によって近接してまとめられ、他の鎖由来のCDRと共に抗体の抗原結合部位の形成に寄与する(Kabatら,Sequences of Proteins of Immunological Interest,第5版,National Institute of Health,Bethesda,Md.(1991)を参照されたい)。合わせて6つのCDRが抗体分子の結合特性に寄与する。しかし、単一の可変ドメイン(または抗原に対して特異的な3つのCDRのみを含む半分のFv)でも、抗原を認識して結合する能力を有する(Pluckthun,in The Pharmacology of Monoclonal Antibodies,vol.113,RosenburgおよびMoore編,Springer−Verlag,New York,pp.269−315(1994)を参照されたい)。
定常ドメインは、抗体重鎖または軽鎖のC末端領域を指す。一般に定常ドメインは、抗原に対する抗体分子の結合特性には直接関与しないが、抗体依存性細胞傷害への抗体関与のような様々なエフェクター機能を示す。ここで、「エフェクター機能」は、Fcドメインと免疫系タンパク質の間の分子的相互作用による免疫細胞動員により仲介される、抗体の異なる生理作用(例えば、オプソニン化、細胞溶解、マスト細胞、好塩基球および好酸球の脱顆粒ならびにその他のプロセス)を指す。重鎖のアイソタイプは抗体の機能的特性を決定する。それらの特有の機能的特性は、重鎖が軽鎖と関わらない、重鎖のカルボキシ末端部分により付与される。
抗体分子は、所与の条件設定下で、所望の抗原との結合を無関係な抗原または類似抗原または抗原混合物との結合と比較することにより、抗原結合特異性に関して試験することができる。本発明による抗体は、無関係な抗原とまたは標的抗原の類似体とさえ有意な結合がないことが好ましい。
本発明との関連における「抗体」という用語は、最も広い意味で使用され、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、多重特異性(例えば、抗体の各腕が同じまたは異なる抗原の異なるエピトープと反応する二重特異性)抗体、ミニボディ、ヘテロコンジュゲート、ダイアボディ、トライアボディ、キメラ抗体および合成抗体のみならず、所望の結合特性および/または生物学的活性を有する、抗原と特異的に結合する抗体フラグメント、誘導体および変異体も包含する。
所望の活性としては、抗原と特異的に結合する能力、インビトロで増殖を阻害する能力、インビボで血管新生を阻害する能力およびインビトロでサイトカインプロファイル(1つまたは複数)を変化させる能力を挙げ得る。
天然抗体(天然免疫グロブリン)は通常、約150,000ダルトンのヘテロ四量体糖タンパク質であり、通常は2つの同一の軽(L)鎖と2つの同一の重(H)鎖からなる。各軽鎖は通常、1つのジスルフィド共有結合により重鎖と連結されているのに対し、異なる免疫グロブリンアイソタイプの重鎖間ではジスルフィド結合の数が異なる。各重鎖および軽鎖はまた、規則的間隔の鎖間ジスルフィド架橋を有する。各重鎖は、一端に可変ドメイン(V)とそれに続く多数の定常ドメインを有する。各軽鎖は、一端に可変ドメイン(V)を、その反対側に定常ドメインを有し;軽鎖の定常ドメインは重鎖の第一定常ドメインと並び、軽鎖可変ドメインは重鎖の可変ドメインと並んでいる。特定のアミノ酸残基が軽鎖と重鎖の可変ドメイン間の接合部分を形成すると考えられている。
任意の脊椎動物種に由来する抗体(免疫グロブリン)の軽鎖は、その定常ドメインのアミノ酸配列に基づき、カッパ(κ)およびラムダ(λ)と呼ばれる2つの明らかに異なるタイプの1つに割り当てることができる。
免疫グロブリンは、その重鎖の定常ドメインのアミノ酸配列に応じて、異なるクラスに割り当てることができる。免疫グロブリンの5つの主要なクラス:IgA、IgD、IgE、IgGおよびIgMがあり、そのいくつかはさらにサブクラス(アイソタイプ)、例えばIgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgAおよびIgA2に分かれ得る。異なるクラスの免疫グロブリンに対応する重鎖定常ドメインは、それぞれアルファ、デルタ、イプシロン、ガンマおよびミューと呼ばれる。異なるクラスの免疫グロブリンのサブユニット構造および三次元立体配置は公知である。
2.LPAに対する抗体
天然LPAに対するポリクローナル抗体が論文で報告されている((Chen JHら,Bioorg Med Chem Lett 2000 Aug 7,10(15):1691−3)が、LPAに対するモノクローナルは、2008年6月19日に公開されたSabbadiniらの米国特許出願公開第20080145360号および2009年5月28日に公開された米国特許出願公開第20090136483(共にあらゆる目的において、その内容全体が参照により本明細書に組み込まれる)まで記載されていなかった。前者の刊行物では、LPAに対する一連のマウスモノクローナル抗体の産生および特徴付けが記載されており、後者の刊行物では、LPAに対するヒト化モノクローナル抗体が記載されている。様々なLPAアイソフォームに対する各抗体の特異性を以下の表1に示す。IC50:半数阻害濃度;MI:最大阻害(阻害剤の非存在下での結合の%);‐‐‐:阻害性が弱いため算出していない。高い阻害結果は、抗体による競合脂質の認識を示している。
Figure 2016053054
興味深いことに、抗LPA mAbは、12:0(ラウロイル)、14:0(ミリストイル)、16:0(パルミトイル)、18:1(オレオイル)、18:2(リノレオイル)および20:4(アラキドノイル)LPAを識別することができた。最終的な薬物開発のための望ましいEC50順位は、不飽和脂質に対しては18:2>18:1>20:4であり、飽和脂質に対しては14:0>16:0>18:0であり、高い特異性を有する。抗LPA mAbの特異性を、ジステアロイル−ホスファチジン酸、リゾホスファチジルコリン、S1P、セラミドおよびセラミド−1−リン酸のようなLPA関連生体脂質とのその結合性に関して評価した。いずれの抗LPA抗体も、LPAの直接の代謝前駆体であるジステアロイルPAおよびLPCに対する交差反応性を示さなかった。
表2〜6は、5つの抗LPAモノクローナル抗体の重鎖および軽鎖可変ドメイン(VおよびV)の一次アミノ酸配列を示す。
Figure 2016053054
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以下の表7〜11は、上の表2〜6に示される各抗体のCDRのアミノ酸配列を示す。
Figure 2016053054
Chothia/AbMに従って定義されるCDRH1は、示される10アミノ酸配列である。太字の5アミノ酸部分(NYLIE;配列番号17)は、Kabatに従って定義されるCDRH1配列である。
Figure 2016053054
Chothia/AbMに従って定義されるCDRH1は、示される10アミノ酸配列である。太字の5アミノ酸部分(NYLIE;配列番号17)は、Kabatに従って定義されるCDRH1配列である。
Figure 2016053054
Chothia/AbMに従って定義されるCDRH1は、示される10アミノ酸配列である。太字の5アミノ酸部分(NYLIE;配列番号17)は、Kabatに従って定義されるCDRH1配列である。
Figure 2016053054
Chothia/AbMに従って定義されるCDRH1は、示される10アミノ酸配列である。太字の5アミノ酸部分(NYLIE;配列番号17)は、Kabatに従って定義されるCDRH1配列である。
Figure 2016053054
Chothia/AbMに従って定義されるCDRH1は、示される11アミノ酸配列である。太字の6アミノ酸部分(SGYYWT;配列番号42)は、Kabatに従って定義されるCDRH1配列である。
Lpathomab/LT3000の生物物理学的特性
Lpathomab/LT3000(本明細書では、「B7」抗LPAモノクローナル抗体とも呼ぶ)は、シグナル伝達脂質LPAに対する高い親和性を有し(BiaCoreアッセイでの表面プラズモン共鳴により、および直接結合ELISAアッセイにおいて示される1〜50pMのK);さらに、LT3000はLPAに対する高い特異性を示し、20を超える生物活性脂質(そのうちのいくつかはLPAと構造的に類似している)を含めた100を超える異なった生物活性脂質に対して結合親和性を示さない。このマウス抗体は、2つの同一の軽鎖および2つの同一の重鎖からなる総分子量155.5kDaの完全長IgG1κアイソタイプ抗体である。生物物理学的特性を以下の表12にまとめる。
Figure 2016053054
Lpathomabはまた、サイトカイン放出、移動および浸潤のような予備的な細胞ベースのアッセイにおいても生物学的活性を示し;これらを、LPAアイソフォームおよびその他の生物活性脂質に対するLT3000の特異性およびLT3000のインビトロでの生物学的作用を示すデータと共に以下にまとめる。
Figure 2016053054
Lpathomab/LT3000のLPAとの強力かつ特異的な結合により、癌関連、血管新生関連および線維症関連の障害に対する治療効果の可能性を有する、細胞外LPAの利用能の低下が生じた。
以下の表14に示すように、2つ目のマウス抗LPA抗体であるB3も結合解析に供した。
Figure 2016053054
LT3000のヒト化
B7マウス抗LPAモノクローナル抗体(LT3000、Lpathomab)の可変ドメインを、マウスCDRをヒトフレームワーク領域(FR)内に移植することによりヒト化した。あらゆる目的においてその内容全体が参照により本明細書に組み込まれる、2009年4月17日に出願された米国特許仮出願第61/170,595号を参照されたい。CDR移植技術の説明に関しては、例えば、Lefranc,M.P,(2003),Nucleic Acids Res,31:307−10;MartinおよびThornton(1996),J Mol Biol,1996.263:800−15;Moreaら(2000),Methods,20:267−79;FooteおよびWinter(1992),J Mol Biol,224:487−99;Chothia,ら(1985)J.J Mol Biol,186:651−63を参照されたい。
配列アライメントおよび解析プログラム(SR v7.6)を用いて、LT3000との相同性に基づき、IMGTおよびKabatデータベースから適当なアクセプターヒトFR配列を選択した。Lefranc(2003),上記;Kabatら(1991),Sequences of Proteins of Immunological Interest,NIH National Techn.Inform.Service,pp.1−3242。FRにおいて高い同一性を有する配列である、vernier、canonicalおよびVH−VL界面残基(VCI)を最初に選択した。このサブセットから、最も非保存的なVCI置換、異常なプロリンまたはシステイン残基および体細胞変異を除外した。このようにヒト化型のLT3000重鎖可変ドメインの基礎となるヒトフレームワークとしてAJ002773を選択し、このようにヒト化型のLT3000軽鎖可変ドメインの基礎となるヒトフレームワークとしてDQ187679を選択した。
ヒト化VLおよびVH配列を含む三次元(3D)モデルを構築して、CDRを形成する残基と並列するFR残基を同定した。これらのFR残基は、CDRループ構造ならびに抗体が抗原に対する高い親和性および特性を保持する能力に影響を及ぼす可能性がある。この解析に基づき、AJ002773中の6残基およびDQ187679中の3残基が同定され、LT3000から著しく異なると判断され、マウス配列への突然変異復帰が検討された。
マウス抗LPA mAb LT3000の配列を、LPAに対する高い親和性、特異性および結合能を保持する抗体の作製を目的としてヒト化した。さらに、7つのヒト化変異体を無血清条件においてHEK293細胞内で一過性に発現させ、精製し、次いでアッセイパネルで特徴付けた。各軽鎖および重鎖の配列を含むプラスミドを、産生のために哺乳動物細胞内にトランスフェクトした。培養の5日後、定量的ELISAを用いてmAb力価を判定した。重鎖および軽鎖のすべての組合せが、細胞培養物1ml当たり、2〜12ugの抗体を生じた。
ヒト化変異体の特徴付けおよび活性
すべてのヒト化抗LPA mAb変異体が、キメラ抗LPA抗体(LT3010としても知られる)およびマウス抗体LT3000と同様に低いピコモル範囲で結合親和性を示した。すべてのヒト化変異体が、LT3000と同等またはそれを超えるTを示した。特異性に関しては、ヒト化変異体は、LT3000のものと同様の特異性プロファイルを示した。例えば、LT3000は、リゾホスファチジルコリン(LPC)、ホスファチジン酸(PA)、リゾホスファチジン酸の様々なアイソフォーム(14:0および18:1のLPA、環状ホスファチジン酸(cPA)およびホスファチジルコリン(PC))との交差反応性を示さなかった。
5つのヒト化変異体をインビトロ細胞アッセイでさらに評価した。LPAは、癌細胞からのインターロイキン−8(IL−8)の放出誘発において重要である。LT3000は、濃度依存的に卵巣癌細胞からのIL−8放出を減少させた。ヒト化変異体は、LT3000と比べて同様のIL−8放出の減少を示した。
また2つのヒト化変異体を、血管新生に関するマトリゲル管腔形成アッセイにおいて、微小血管密度(MVD)に対するその作用に関しても試験した。共にMVD形成を減少させることが示された。
ヒト化抗LPA可変領域配列
ヒト化変異体配列を表15および17に示す。復帰突然変異を太字で示す。CDR配列は灰色で示す。canonical残基には、それらが関連するCDR(1、2または3)に従って番号が付されている。
Figure 2016053054
Figure 2016053054
Figure 2016053054
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LT3015
好適なヒト化抗LPAモノクローナル抗体としてLT3015を選択した。LT3015は、生物活性脂質であるリゾホスファチジン酸(LPA)と高い親和性で結合する、組換えヒト化モノクローナル抗体である。LT3015は、2つの同一の軽鎖および2つの同一の重鎖からなる総分子量150kDaの完全長IgG1κアイソタイプ抗体である。重鎖はN連結グリコシル化部位を含んでいる。2つの重鎖は、2つの分子間ジスルフィド結合により互いに共有結合しており、ヒトIgG1の構造と一致している。
LT3015は元来、LPAで免疫化したマウスから作製されるハイブリドーマを用いて作製されたマウスモノクローナル抗体から誘導された。マウス抗体のヒト化は、マウス親抗体とのその構造類似性で選択されたヒト抗体フレームワークの相補性決定領域(CDR)の代わりに6つのマウス相補性決定領域を挿入することを含んでいた。ヒト化抗体を設計するためにフレームワーク内で一連の置換を行った。これらの置換は復帰突然変異と呼ばれ、ヒト残基を抗原との相互作用に関与するマウス残基で置き換える。最終的なヒト化型は、重鎖可変ドメインのヒトフレームワーク中に6つのマウス復帰突然変異を(pATH602)、また軽鎖可変ドメインのヒトフレームワーク中に3つのマウス復帰突然変異を(pATH502)含み、これは上の表15〜18に示されている。
3.ニューロン分化およびLPAの役割
神経幹細胞(NSC)は中枢神経系(CNS)のニューロン新生領域内に見られ、神経損傷部位に移動することができる。したがって、NSCは、神経変性環境におけるニューロンの代替および接続の回復を目的として研究されている。Dottori,M.ら(2008)“Lysophosphatidic Acid Inhibits Neuronal Differentiation of Neural Stem/Progenitor Cells Derived from Human Embryonic Stem Cells.” Stem Cells 26:1146−1154。NSCは浮遊性のニューロスフェアとしてインビトロで維持することができ、かつインビトロでニューロンに分化することができる。このことは、顕微鏡下で観察できるニューロスフェアからのニューロン成長を視覚化および定量化することによりアッセイすることができる。
ニューロン幹細胞には、ニューロン分化に進むか、または非ニューロン性のグリア細胞形成であるグリア分化(グリア新生)に進むかという選択肢がある。大グリア細胞(グリア)にはアストロサイトおよびオリゴデンドロサイトが含まれる。したがって、一般にニューロン分化の増加に伴ってグリア分化が減少し、またその逆もある。したがって、ニューロン分化の増加は、ニューロン形成の増加により、またはグリア分化の減少により判定し得る。
神経系の損傷、出血または外傷に続いて、神経系内のLPAのレベルが10μMまで増加すると考えられている。Dottoriら(同上)は、10μMのLPAはヒトNSCのニューロン分化を阻害することができるのに対し、低濃度のものは阻害しないことを示しており、このことは、損傷後のCNS内の高レベルのLPAがNSCのニューロンへの分化を阻害して、内因性のニューロン再生を阻害し得ることを示唆している。したがって、LPAシグナル伝達の調節は、神経系損傷に大きな影響を及ぼして、新たな可能性のある治療アプローチを可能にし得る。
4.応用
本発明は、神経幹細胞(NSC)のニューロン分化を増加させるための方法に関する。上記方法は、この所望の結果を得るためにLPAに対する抗体を使用する。理論に拘束されることを望むものではないが、LPAに対する抗体はLPAと結合してLPA分子を吸収することにより、有効濃度のLPAを低下させると一般に考えられている。高濃度のLPAはNSCのニューロン分化を阻害することが知られている。
本発明は、グリア新生を減少させることを含めた、神経幹細胞のニューロン分化を増加させるための方法、および不十分なニューロン分化に関連した疾患または状態を治療または予防するための方法に関する。上記方法は、所望の結果を得るためにLPAに対する抗体を使用する。
特定の理論に拘束されることを望むものではないが、NSCのニューロン分化を阻止するのに十分な好ましくない高濃度のLPAおよび/またはその代謝産物のような脂質は、不十分なニューロン分化に関連した様々な神経疾患および障害の発症または症状に寄与し得ると考えられる。このような疾患には、ニューロンの正味の喪失がある神経変性疾患(パーキンソン病、アルツハイマー病およびハンチントン病を含む)、脳卒中および血液がCNSと接触する出血のようなその他の状態、ならびに脳癌が含まれると考えられる。反応性アストロサイトおよび神経膠腫は高レベルのLPAを産生し得る。LPAはNSCからのグリア分化を停止させない。Dottori M,Leung J,Turnley AM,Pebay A.,(2008)Stem Cells.May;26(5):1146−54.Epub 2008 Feb 28。したがって、抗LPA抗体を用いたLPAの阻止が、アストロサイト(および神経膠腫)増殖に対するその作用を減少させることにより腫瘍成長に影響を及ぼし得ると考えられる。また抗LPA抗体を用いたLPAの阻止が、より多くのグリア細胞へのNSC分化という偏りを減少させるとも考えられる。ニューロン分化の増加は、多くの失われたニューロンの代替が必要となる脳/脊髄損傷後に特に有用である。疾患または損傷に対する幹細胞の反応がいくらか存在しても、それが喪失を克服するのに不十分であれば正味のニューロン喪失が生じ得る。
(実施例)
本発明を、以下の詳細な例を参照しながらさらに説明する。これらの実施例は、本発明の範囲をいかなる形においても限定しないものであると必ず解釈されるべきである。
実施例1:ニューロスフェアの形成、処置および分化
Dottoriら(2008)(上記)に記載されている通りにニューロスフェアを形成し、培養した。簡潔には、ヒト胚性幹細胞(HES−2、HES−3およびHES−4、WiCell Research Institute,Madison WI)を既に公開されている方法に従って培養した。公開されている方法に従ってノギンを用いたニューロン誘導を行い、増殖および継代後、増殖因子の存在下でニューロスフェアとして増殖させた。ニューロスフェアは、ラミニンまたはフィブロネクチンラミニンでコートしたディッシュ上で平板培養することができた。ラミニン上に播き、神経基礎培地(NBM,R&D Systems,Minneapolis MN)で培養した場合、ニューロスフェアは通常、ニューロンに分化する。ニューロン成長が観察できるニューロスフェアの数を数えることにより、ニューロンを形成するスフィアの定量化(ニューロン分化の測定)を行った。プレートに付着できなかったニューロスフェアは数えなかった。
平板培養したニューロスフェアを、LPA(Sigma Aldrich,St.Louis,MO)および/または抗体(示される濃度)の存在下または非存在下で5日間インキュベートした。0.1%の無脂肪酸ウシ血清アルブミン(最終濃度0.01%BSA)でLPAの希釈物を作製した。
実施例2:LPAはニューロスフェア形成およびニューロン分化を阻害する
Dottoriらにより示されているように、LPAはbFGFおよびEGFの存在下においても、NSCがニューロスフェアを形成する能力を阻害する。簡潔には、ノギン処置細胞を、NBM中に懸濁させて継代しながら、LPAの存在下または非存在下でbFGFおよびEGF(それぞれ20ng/ml)と共に11〜14日間インキュベートした。形成されたニューロスフェアの数を数え、10μMのLPAの存在下では、LPA未処置の対照培養物の48.60%±8.15%に比べて、13.47%±6.94%の培養物がニューロスフェアを形成することがわかった。Dottori,Mら(2008),上記。
さらなる分化段階である、NSCの成熟細胞への分化に対するLPAに作用も測定した。NBM中、ラミニン上で平板培養した場合、ニューロスフェアは通常、ニューロンに分化し、このことは、観察できるニューロン、伸長した細胞形状および/またはβ−チューブリンに対する陽性染色法によりアッセイされる。Dottoriらは、未処置対照細胞におけるβ−チューブリンに陽性の伸長した細胞の形成を観察したが、LPAでインキュベートしたNSCは伸長した細胞へ分化せず、またニューロスフェア中にβ−チューブリン陽性細胞が存在してもわずかであった。一般に、10μMのLPAの存在下で平板培養したニューロスフェアは、ニューロン細胞を生じなかった。
実施例3:抗LPA抗体はLPAのニューロスフェア形成阻害を阻止する
実施例2においてLPA単独処置に使用した条件を用いて、ノギン処置細胞を、NBM中に懸濁させて継代しながら、LPAの存在下または非存在下でbFGFおよびEGF(それぞれ20ng/ml)と共に5〜7日間インキュベートした。形成されたニューロスフェアの数を数え、10μMのLPAの存在下では、上と同様にニューロスフェア形成が減少することがわかった(n≧3)。対照細胞が90.482±5.346%のニューロスフェア形成を生じたのに対し、10μMのLPAで処置した細胞は13.500±5.590%のニューロスフェア形成を生じるのみであった。これに対し、1μMのLPAで処置した細胞は50±12.50%のニューロスフェア形成を生じた。抗LPA抗体B3のみでは対照に匹敵するニューロスフェア形成を生じた(0.1mg/mlのB3では91.667±8.333%、および1.0mg/mlのB3では91.667±4.167%)。注目すべきことに、1mg/mlのB3と10μMのLPAの組合せも対照に匹敵するニューロスフェア形成を生じた(95.833±4.167%)が、このことは、LPAに対する抗体が、LPAの存在下で通常生じるニューロスフェア形成阻害を阻止したことを示している。
上と同じ条件下で、ニューロスフェアのサイズもLPA+/−B3抗体処置(それぞれn=3)後に測定した。B3抗体のみでの処置後のニューロスフェア面積は、未処置対照の93.94%±3.61%であり;LPA+B3での処置後のニューロスフェア面積は、対照の75.18%±9.89%であった。LPAのみでの処置後の測定は、ニューロスフェアが形成されないため不可能であった。統計は、処置群間でのサイズの違いは有意でないことを示している。
データは、(NSCによる内因性の産生由来の)LPA阻止はニューロスフェアのサイズを有意に増加させることはなく、またより重要なことに、ニューロスフェアの増殖に対するLPAの作用はB3により全体的に無効になることを示しており;このことは、LPA活性阻止におけるB3の有効性を示している。
実施例4:ヒト化およびマウス抗LPA抗体はLPAのニューロン分化阻害を阻止する
実施例2においてLPA単独処置に使用した条件を用いて、平板培養したニューロスフェアを10μMのLPAのみで、または抗LPA抗体B3もしくはB7(1mg/ml)のみで、または10μMのLPAと1mg/mlの抗体B3もしくはB7の組み合わせで処置した。同様に、細胞を10μMのLPAのみで、ヒト化抗LPA抗体LT3015(1mg/ml)のみで、または10μMのLPAと1mg/mlのLT3015の組み合わせで処置した。ニューロンを形成するニューロスフェアのパーセントを実施例2と同様に(Dottoriら(2008)に記載のβ−チューブリン染色およびニューロン形成スフィアの定量化)定量化した。LPAのみでは、ニューロンを形成するニューロスフェアが未処置対照の約25.00±6.45%まで減少した。B3抗体のみで処置したニューロスフェア試料では、ニューロンを形成するニューロスフェアは対照(100%)と等しかった。LPAとB3抗体の組み合わせで処置したニューロスフェアでは、ニューロンを形成するニューロスフェアは対照の86.66±5.65%に等しく、これはLPAの存在下で通常生じるニューロン形成阻害を抗体が阻止したことを示している。LPAとLT3015ヒト化抗体の組み合わせで処置した細胞は、B3処置細胞とほぼ同じニューロン形成(対照の87.5%±12.50%)を示した。抗体B7は、同様の条件下において、この実験における作用はほとんどまたは全くなかった(対照の37.00±5.31%)。
実施例5:ヒト化およびマウス抗LPA抗体はLPAのニューロスフェア形成阻害を阻止する
上の実施例に記載の条件を用いて、HSCをNBM培地中、LPA(10μM)有りまたは無しで、LPAに対する抗体1mg/ml(B3、B7またはヒト化抗体LT3015をLPA有りまたは無しで個々に試験)有りまたは無しで、ニューロン分化のためにラミニン上で平板培養した(3日間)。
上と同様に、10μMのLPAの存在下では、ニューロンを形成するスフィアの数が対照の約26%まで有意に減少した。単独で試験した場合、いずれの抗体もニューロンを形成するスフィアの数に影響を与えなかった(すべて100%の対照と等しかった)。しかし、すべての抗LPA抗体がLPAによるニューロン分化阻害を阻止することができた。B3とLPAでまたはLT3015とLPAで処置した細胞では、ニューロンを形成するニューロスフェアは対照の75%に等しかった。B7とLPAで処置した細胞では、ニューロンを形成するニューロスフェアが対照の50%に等しかった。データ結果のプールは同様である:LPA:25.00±6.45%;B3+LPA:86.66±5.65;B7+LPA:37.00±5.31%;ヒト化B7(LT3015):87.5±12.5(しかし、分化が生じてもB3で観察されたものよりもニューロンは少ない)(B7ではn=2ならびにB3およびB7ではn>3)。したがって、LPAに対するヒト化抗体であるLT3015を含めた3つのLPA抗体はすべて、ニューロスフェア形成により測定されたのと同様に、ニューロン分化に対するLPAの作用を阻害する。B3とLPAで処置した細胞由来のニューロスフェアが最もニューロン数が最も多く(さらなる分化を示している)、LT3015処置細胞由来のニューロスフェアがこれに続き、B7抗体で処置した細胞由来のニューロスフェアにおけるニューロン数はさらに少なかった。
実施例6:LPAに対するモノクローナル抗体を用いたLPAの免疫組織化学染色
免疫組織化学的方法を用いて、細胞内でのLPAの存在および局在を判定することができる。脊髄損傷有りまたは無しの個体由来の脊髄(成体(3ヶ月齢)雄C57BL/6マウス)を損傷の4日後に免疫染色した。成体C57BL/6マウス(20〜30g)を、ケタミンとキシラジン(それぞれ100mg/kgおよび16mg/kg)のリン酸緩衝生理食塩水(PBS)混合物の腹腔内注射により麻酔した。下部胸椎から、腰膨大の位置に相当する位置T12の上部腰椎までを露出させた。鋭利な鉗子を用いて椎骨の棘突起および層板を除去し、T12において左片側切断を行った。鋭利な解剖用メスを用いて、完全な損傷が確実に行われるように脊髄の左側で脊髄を2度切断し、次いで、上を覆う筋肉および皮膚を縫合した。これにより左後肢の麻痺が生じた。2日または4日後に、個体を上記のように再び麻酔した後、心臓の左心室からPBSで、次いで4%パラホルムアルデヒド(PFA)で還流した。還流後、鋭利な鉗子を用いて脊髄を静かに摘出し、冷4%PFAで後固定を1時間行い、次いでパラフィン包埋、または凍結切片用に4℃で一晩、PBS中20%のスクロース中で凍結保存を行った。組織は損傷の2日および4日後に、n=3の未損傷マウスおよびn=3の損傷マウスから取り出した。Goldshmit Y,Galea MP,Wise G,Bartlett PF,Turnley AM:Axonal regeneration and lack of astrocytic gliosis in EphA4−deficient mice.J Neurosci 2004,24(45):10064−10073に記載の通りである。
IHC凍結脊髄矢状切片(10μm)を標準的な免疫組織化学的方法を用いて調べ、異なるLPA受容体の発現および局在を判定した。凍結切片を4%PFAで10分間後固定し、PBSで3回洗浄した後、非特異的な抗血清相互作用をブロックするために、PBS中に5%ヤギ血清(Millipore)および0.1%Triton−Xを含有するブロッキング溶液中で1時間、室温(RT)でブロッキングした。使用した一次抗体はB3(0.1mg/ml)ウサギ抗LPA1(1:100,Cayman Chemical,USA)、ウサギ抗LPA2(1:100,Abeam,UK)およびマウス抗GFAP(1:500,Dako,Denmark)であった。ブロッキング溶液に一次抗体を加え、切片を4℃で一晩インキュベートした。次いでこれらを洗浄し、二次抗体中、RTで1時間インキュベートした後、Dapi対比染色を行った。切片をFluoromount(Dako)中、カバーガラスで覆い、Zeiss Axiocam HRcデジタルカメラおよびZeiss Axiovision 3.1ソフトウェアキャプチャーデジタルイメージを備えたOlympus BX60顕微鏡を用いて調べた。Zeiss Axioplan 2顕微鏡に装備されたBiorad MRC1024走査型共焦点レーザーシステムを用いて、二重標識切片もいくつか調べた。すべての画像を順番に並べ、Adobe Photoshop 6.0を用いてマルチカラーパネルを作成した。
損傷後、CNS内のアストロサイトと呼ばれる非ニューロン性のグリア細胞が多くの損傷および病的状態に反応して、「グリア反応」を生じる。反応性アストロサイトは、通常のアストロサイトよりもかなり強くGFAP抗体で染色されるため、グリア線維性酸性タンパク質(GFAP)抗体は、この反応の一部を形成する反応性アストロサイトを見るために広く用いられている。LPAは抗体B3(0.1mg/mlで一晩)を用いた免疫組織化学により明らかになった。蛍光顕微鏡により、反応性アストロサイトが損傷4日後の脊髄中に存在し、これらの細胞がLPAに関して陽性に染色されることが示された。これに対し、非損傷(対照)脊髄は、アストロサイトまたはLPAのいずれに関してもほとんどまたは全く染色されない。したがって、LPAは脊髄の反応性アストロサイト内に存在する。損傷および対照個体の両方において、中心管(幹細胞ニッチであると仮定される)はLPAに関して染色されない。
実施例7:抗LPA抗体がLPAのニューロン分化阻害を阻止することの免疫組織化学的確認
上の実施例のように増殖および処置したニューロスフェアを、上の実施例に記載のようにCD133(1/1000,Abeam,Inc.,Cambridge MA)、β−チューブリン(1/500,Millipore,Billerica MA)またはLPA(0.1mg/ml)に関して免疫染色した。β−チューブリン染色はニューロン分化の指標となる。これに対し、CD133染色は分化の際に喪失する。LPA処置により、CD133陽性細胞が、ニューロスフェアからの移動する細胞として観察された。対照細胞では、移動細胞はわずかにCD133陽性であるか、またはCD133染色に対し陰性である。CD133の発現がLPA抗体により減少するのが見られた(定量化は行っていない)。
実施例8:外傷性脳損傷(TBI)のマウス皮質衝撃モデルにおける抗LPA抗体
マウスはTBIの研究には理想的なモデル生物であるが、それは、認められたヒトTBIモデルが存在すること、マウスにおけるI型IFN系がヒトのものと類似していること、および遺伝子標的マウスを生じる能力が、単なる相互関係ではなく、因果関係を解明することに役立つという理由による。成体マウスをケタミン/キシラジンの単回ip注射で麻酔し、クリッパで頭頂骨上方の頭皮の体毛を剃った。各頭皮をクロルヘキシデイン(chlorhexideine)溶液で消毒し、切開を行って右側頭頂骨を露出させた。次いで、鋭利なバーチップを有する歯科ドリルを用いて、右側頭頂骨の中心部に中心を合わせた直径3mmの円形の薄い骨の溝を掘った。次いで、鋭利な鉗子を用いて頭頂骨の3mmの板をねじって取り除き、下にある頭頂皮質を露出させた。取り除いた骨板は、無菌生理食塩水中に置いて保管した。マウスを定位ヘッドフレームに取り付け、インパクタ(直径2mm)の先端をバーホールの中心上で皮質表面に対して垂直に位置させ、皮質を覆う硬膜にちょうど触れるまで位置を下げた。コンピュータ制御装置を用いて単回の衝撃損傷(深さ1.5mm)を与えた。マウスをヘッドフレームから外し、骨板を元の位置に戻した。板を適切な位置に密封および保持するために、板の縁の周りに骨ロウを塗布した。次いで、皮膚切開を細い絹製縫合糸で閉じ、その部分をクロルヘキシデイン(chlorhexideine)溶液を噴霧した。次いで、マウスを加熱ランプ下の飼育箱に戻し、意識を回復させた(総麻酔時間=30〜40分)。
処置:処置またはアイソタイプ対照をTBIの前後の様々な時点で注射した。抗LPA抗体(B3など)を尾部静注(0.5mg)により注射した。24〜48時間後、個体を屠殺し、その脳を解析した。
解析:ニューロンの死/生存(TUNEL解析)、反応性アストログリオーシス(GFAPで供標識したKi67陽性細胞により示される)およびNS/PC応答(CD133/Ki67による増殖、CD133による損傷部位への移動、および分化)を解析する。CD11b免疫染色により免疫応答を評価する。ImageJ(NIH)を用いた密度測定により定量化を行う。
予備結果:このモデルにおける予備データは、この皮質衝撃モデルにおいて、抗LPA抗体処置(B3)が、TBI後のマウス脳に通常見られる出血の程度を減少させることを示している(図1)。
実施例9:LPAは成体マウスNSCのニューロン分化を阻害する
マウス脳室下帯のNSCから生じたマウス成体ニューロスフェアにおいて、LPA受容体の発現解析は、LPA受容体LPA、LPAおよびLPAに対するmRNA転写産物の存在、ならびにLPA受容体LPAおよびLPAに対するmRNA転写産物の非存在または低レベルの発現を示し、このことは、成体mNS/PCもLPAの潜在的な標的であることを示している。ヒトNSCで観察されたものとは対照的に、LPAはニューロスフェア形成またはマウスNSCの増殖を変化させなかった。しかし、またヒトNSCで得られたデータと同様に、通常はニューロン分化を誘導する条件でNSCを平板培養した場合、LPAはそれらをNSCとして維持することにより、成体マウスNSCのニューロン分化を阻害した。3日後、LPA(10μM)処置マウスのみが分化ニューロンのマーカーであるβIII−チューブリンの低レベルの発現を示し(全細胞の26.25±2.08%)、未分化NSCのマーカーであるネスチンに対して大部分が陽性のままであった(全細胞の87.55±3.20%)。これに対し、未処置細胞は、より高いレベルの分化ニューロン(細胞の57.12±18.42%により発現されたβIII−チューブリン)およびより低いレベルの未分化NSC(ネスチンが全細胞の58.01±6.20により発現された)を示した。これらの作用はアポトーシスまたは増殖と無関係であった。
本明細書において記載および特許請求項されるすべての組成物および方法は、本開示を踏まえれば、必要以上の実験を行わずに作製および実行することができる。本発明の組成物および方法は、好適な実施形態という観点から記載されているが、当該組成物および方法に変更を施し得るということが当業者には明らかであろう。このような当業者に明らかな同様の代替および修正はすべて、添付の特許請求の範囲により規定される本発明の精神および範囲内にあるものと見なされる。
本明細書で言及されるすべての特許、特許出願および刊行物は、本発明に関連する当業者のレベルを示すものである。すべての特許、特許出願および刊行物は、優先権または別の利益が主張されているものを含め、個々の刊行物がそれぞれ具体的かつ個別に参照により組み込まれることが示された場合と同様に、参照により本明細書に組み込まれる。
本明細書において実例を伴って説明されている本発明は、本明細書に具体的に開示されていない任意の要素(1つまたは複数)の非存在下で適切に実施し得る。したがって、例えば、本明細書における各場合において、「〜を含む」、「〜から基本的になる」および「〜からなる」のいずれの用語も、他の2つのいずれでも置き換え得る。使用されている用語および表現は、限定する用語ではなく、説明する用語として使用されるのであって、このような用語および表現の使用において、示されているおよび記載されている特性またはその一部のいかなる均等物も排除する意図はないが、特許請求される本発明の範囲内で様々な修正が可能であることが認識される。したがって、本発明は好適な実施形態および任意の特性により具体的に開示されているが、本明細書で開示されている概念の修正および変更が当業者により用いられ得ること、またこのような修正および変更は添付の特許請求の範囲により規定される本発明の範囲内にあると見なされることを理解するべきである。

Claims (14)

  1. 神経幹細胞のニューロン分化を増加させるための方法であって、リゾホスファチジン酸と結合する抗体またはそのフラグメント、変異体もしくは誘導体を、環境中および/または前記細胞中のリゾホスファチジン酸レベルが減少し、かつニューロン分化が増加するように、神経幹細胞も含む前記環境に送達することを含む方法。
  2. 前記神経幹細胞のニューロン分化の増加がニューロン形成の増加により判定される、請求項1に記載の方法。
  3. 前記神経幹細胞のニューロン分化の増加がグリア新生の減少により判定される、請求項1に記載の方法。
  4. 前記ニューロン分化の増加または前記グリア新生の減少がインビボで生じる、請求項1に記載の方法。
  5. 前記ニューロン分化の増加または前記グリア新生の減少がインビトロで生じる、請求項1に記載の方法。
  6. 前記ニューロン分化の増加または前記グリア新生の減少がニューロスフィアにおいてで生じる、請求項1に記載の方法。
  7. リゾホスファチジン酸と結合する前記抗体が、リゾホスファチジン酸と結合するモノクローナル抗体またはそのフラグメント、変異体もしくは誘導体である、請求項1に記載の方法。
  8. 前記モノクローナル抗体が、ヒト化モノクローナル抗体またはそのフラグメント、変異体もしくは誘導体である、請求項7に記載の方法。
  9. 動物、好ましくはヒトにおける神経系の疾患、状態または損傷を治療するための方法であって、前記状態が、不必要に高レベルのリゾホスファチジン酸に関連し、前記方法が、前記動物の神経系における前記リゾホスファチジン酸のレベルが減少するように、前記動物をリゾホスファチジン酸と結合する抗体で治療することを含む方法。
  10. 前記疾患または状態が、外傷性脳損傷、脳卒中、脳もしくは脊髄出血、脊髄損傷、中枢神経系の癌および神経変性疾患からなる群より選択される、請求項9に記載の方法。
  11. 前記神経変性疾患が、パーキンソン病、アルツハイマー病およびハンチントン病からなる群より選択される、請求項10に記載の方法。
  12. 動物、好ましくはヒトにおける神経系の疾患、状態または損傷を治療するための方法であって、前記状態が、不十分なニューロン分化に関連し、前記方法が、前記動物の神経系における前記リゾホスファチジン酸のレベルが減少し、かつニューロン分化が増加するように、前記動物をリゾホスファチジン酸と結合する抗体で治療することを含む方法。
  13. 前記疾患または状態が、外傷性脳損傷、脳卒中、脳もしくは脊髄出血、脊髄損傷、中枢神経系の癌および神経変性疾患からなる群より選択される、請求項12に記載の方法。
  14. 前記神経変性疾患が、パーキンソン病、アルツハイマー病およびハンチントン病からなる群より選択される、請求項13に記載の方法。
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