JP2015091228A - 油脂組成物 - Google Patents
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Abstract
【課題】消化管の不調(下痢等)等の副作用が無いにも関わらず、吸収性が良く、常温でも油脂結晶が析出せずに加工し易く、安定で風味の良い油脂組成物及びその製造方法の提供。
【解決手段】構成脂肪酸残基中、カプリル酸及び/又はカプリン酸を10〜40重量%、パルミチン酸を15〜40重量%、オレイン酸を20〜60重量%含有し、α-リノレン酸の含有量は5重量%未満であり、2位に結合するパルミチン酸残基量/パルミチン酸残基総量(重量比)が0.4〜0.95であり、油脂組成物全体中、MPM、OPM及びOPOトリグリセリドの合計含有量が30〜90重量%、MMMトリグリセリドの含有量が10重量%以下である油脂組成物。
【選択図】なし
【解決手段】構成脂肪酸残基中、カプリル酸及び/又はカプリン酸を10〜40重量%、パルミチン酸を15〜40重量%、オレイン酸を20〜60重量%含有し、α-リノレン酸の含有量は5重量%未満であり、2位に結合するパルミチン酸残基量/パルミチン酸残基総量(重量比)が0.4〜0.95であり、油脂組成物全体中、MPM、OPM及びOPOトリグリセリドの合計含有量が30〜90重量%、MMMトリグリセリドの含有量が10重量%以下である油脂組成物。
【選択図】なし
Description
本発明は、吸収性が良い油脂組成物及びその製造方法に関する。
近年、高齢者の増加に伴い、各食品メーカーが介護食品の製造販売に力を入れている。特に高齢者や手術後の患者は、消化吸収機能が衰え、油脂などの高カロリーの食材を多量に摂取できない場合が多く、消化吸収性の問題は大きい。その結果、体重減少が起こると、免疫機能の低下を招いて易感染状態(感染にかかりやすい状態)となる。そのような人向けの介護食品に求められることは「カロリーの付与」による体重増加である。しかし、長鎖脂肪酸で構成される天然油脂は消化吸収性が良いとはいえない。また同様に、乳幼児及び妊産婦・授乳婦においても、吸収性が良く、且つ効率的なカロリー摂取に効果のある食材が求められている。
例えば吸収性の良い油脂として、高齢者や手術後の患者でも少量でカロリーを十分に吸収でき、消化が早く特有の代謝経路を持ち、即効性のエネルギー源として有益であることが知られている中鎖脂肪酸トリグリセリド(MCT)が挙げられるが、急速な吸収、代謝に伴う消化管の不調(下痢等)、多量摂取時のケトン体の生成などの副作用を生じることが知られている。また、直ちにエネルギーとして利用できる反面、体重増加の効果はなく、また油脂特有の風味のまろやかさや美味しさに欠ける。
そこで、パルミチン酸残基及び/又はステアリン酸残基を少なくとも30重量%含み、そのうち存在する総パルミチン酸及び/又はステアリン酸残基の少なくとも30重量%が2位に結合しており、残りの脂肪酸残基が主として不飽和脂肪酸、特にオレイン酸残基及びリノール酸残基であるトリグリセリド混合物と、1、3位の少なくとも10重量%が中鎖脂肪酸(C8〜C14)であるトリグリセリド混合物とを、1、3位特異的エステル交換することによって得られる、母乳脂肪代用可能なトリグリセリド組成物を得る方法(特許文献1)や、USU及び/又はSSUに富む生成物と、パルミチン酸及び/又はステアリン酸以外の酸を1、3位に有するトリグリセリドを多く含むがC16以上の飽和脂肪酸を2位に40重量%以上含有しない油脂とを酵素的エステル交換することによって、三飽和トリグリセリドを除去することで、飽和脂肪酸の総量の40重量%以上が2位にあるトリグリセリド組成物を製造する方法が開示されている(特許文献2)。しかし、両特許文献のいずれにも、胃で分解され速やかに吸収されるC8及び/又はC10の含有量に関する記載はなく、その実施例においてもC8及び/又はC10の含有量は、約2〜3%であるため、吸収性が良くないといった問題がある。
更に、乳脂肪と、中鎖脂肪酸や長鎖脂肪酸で構成された油脂とをエステル交換した油脂が開示されている(特許文献3)。しかし、乳脂肪10〜90重量%を原料に使用しているため、常温で結晶が析出して作業効率が悪く、また出来た油脂組成物に乳脂肪の風味が付与されて用途が制限されたり、原材料費も高くコストがかかるといった問題がある。また、油脂組成物中の構成脂肪酸残基全体中、α-リノレン酸を5〜55質量%、及び中鎖脂肪酸を2〜40質量%含むことで、体脂肪蓄積が少なく、かつ食用油としての調理適性と風味に優れた油脂組成物が開示されている(特許文献4)。しかし、この油脂組成物は、α-リノレン酸を比較的多く含有しているため、熱や光、酸素などに対する安定性が悪いといった問題がある。
本発明の目的は、消化管の不調(下痢等)等の副作用が無いにも関わらず、吸収性が良く、常温でも油脂結晶が析出せずに加工し易く、安定で風味の良い油脂組成物及びその製造方法を提供することである。
本発明者らは上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、油脂組成物中の構成脂肪酸残基中に、カプリル酸及び/又はカプリン酸、パルミチン酸、オレイン酸を特定量含有し、α-リノレン酸の含有量は特定量未満であり、2位に結合するパルミチン酸残基量/パルミチン酸残基総量の重量比が特定の範囲内であり、また、油脂組成物全体中、2位がパルミチン酸且つ1位及び3位がカプリル酸及び/又はカプリン酸であるトリグリセリド、2位がパルミチン酸且つ1位又は3位がカプリル酸又はカプリン酸且つ1位又は3位がオレイン酸であるトリグリセリド、2位がパルミチン酸且つ1位及び3位がオレイン酸であるトリグリセリドを合計で特定量含み、結合する全ての脂肪酸がカプリル酸及び/又はカプリン酸であるトリグリセリドの含有量は特定量未満とすることで、消化管の不調(下痢等)等の副作用が無いにも関わらず、吸収性が良く、常温でも油脂結晶が析出せずに加工し易く、安定で風味の良いという特性を備えた油脂組成物を得ることができることを見出し、本発明を完成するに至った。
即ち、本発明の第一は、油脂組成物中の構成脂肪酸残基中、カプリル酸及び/又はカプリン酸を10〜40重量%、パルミチン酸を15〜40重量%、オレイン酸を20〜60重量%含有し、α-リノレン酸の含有量は5重量%未満であり、2位に結合するパルミチン酸残基量/パルミチン酸残基総量(重量比)が0.4〜0.95であり、油脂組成物全体中、MPM、OPM及びOPOトリグリセリドの合計含有量が30〜90重量%、MMMトリグリセリドの含有量が10重量%以下である油脂組成物(但し、M:カプリル酸又はカプリン酸、P:パルミチン酸、O:オレイン酸。)に関する。好ましい実施態様は、油脂組成物全体中、OPMの含有量が10〜90重量%である上記記載の油脂組成物に関する。本発明の第二は、中鎖脂肪酸トリグリセリド(MCT)、カプリル酸及びカプリン酸からなる群より選ばれる少なくとも1種である成分(A)と、パーム油、パーム分別油、パーム油もしくはパーム分別油のエステル交換油、ランダムエステル交換パームステアリンとオレイン酸のエステル交換油、ラード、ラード分別油、米油、綿実油、ピーナッツ油、ゴマ油、オリーブ油、コーン油、大豆油、ヒマワリ油、高オレインヒマワリ油、サフラワー油、高オレインサフラワー油、ナタネ油、牛脂、カカオ脂、トリパルミチン、パルミチン酸及びオレイン酸からなる群より選ばれる少なくとも1種である成分(B)とを、混合物全体中、前記成分(A)と成分(B)との合計含有量が70〜100重量%且つ成分(A)/成分(B)の重量比率が10/90〜60/40となるように含有し、更に、乳脂肪からなる成分(C)を10重量%未満しか含有しない混合物を、1、3位特異性のリパーゼでエステル交換することを特徴とする上記記載の油脂組成物の製造方法(但し、前記成分(A)及び成分(B)の少なくとも一方は油脂又はトリパルミチンである。)に関する。本発明の第三は、食品全体中、上記記載の油脂組成物を0.5〜30重量%含有する食品に関する。より好ましくは、高齢者向け高カ口リー摂取用介護食品、経腸栄養剤、乳幼児又は妊産婦・授乳婦向けの調製乳の何れかである上記記載の食品に関する。
本発明に従えば、消化管の不調(下痢等)等の副作用が無いにも関わらず、吸収性が良く、常温でも油脂結晶が析出せずに加工し易く、安定で風味の良い油脂組成物及びその製造方法を提供することができる。
以下、本発明につき、さらに詳細に説明する。本発明の油脂組成物(以下、「本油脂組成物」ともいう。)は、油脂組成物中の構成脂肪酸残基中、カプリル酸及び/又はカプリン酸、パルミチン酸、オレイン酸を特定量含有し、α-リノレン酸含量は特定量未満であり、2位に結合するパルミチン酸残基量/パルミチン酸残基総量の重量比が特定の範囲内であり、また、油脂組成物全体中に、2位がパルミチン酸且つ1位及び3位がカプリル酸及び/又はカプリン酸であるトリグリセリド(以下、MPMともいう。M:カプリル酸又はカプリン酸、P:パルミチン酸。)、2位がパルミチン酸且つ1位又は3位がカプリル酸又はカプリン酸且つ1位又は3位がオレイン酸であるトリグリセリド(以下、OPMともいう。M:カプリル酸又はカプリン酸、P:パルミチン酸、O:オレイン酸。)、2位がパルミチン酸且つ1位及び3位がオレイン酸であるトリグリセリド(以下、OPOともいう。P:パルミチン酸、O:オレイン酸。)を特定量含有し、結合する全ての脂肪酸がカプリル酸及び/又はカプリン酸であるトリグリセリド(以下、MMMともいう。M:カプリル酸又はカプリン酸。)の含有量は特定量未満であることを特徴とする。
前記カプリル酸は、炭素数8の直鎖状飽和脂肪酸であり、前記カプリン酸は炭素数10の直鎖状飽和脂肪酸であり、いずれも天然にはヤシ油、パーム核油、乳脂肪などに含まれる。該カプリル酸及び/又はカプリン酸の含有量は、本油脂組成物における構成脂肪酸残基全体中10〜40重量%が好ましく、15〜30重量%がより好ましく、15〜25重量%が更に好ましい。10重量%より少ないと、吸収性が悪くなる場合があり、40重量%より多いと、風味が悪くなる場合がある。ここでカプリル酸とカプリン酸は、60/40〜100/0(重量比)で含有することが好ましく、80/20〜100/0(重量比)がより好ましく、90/10〜100/0(重量比)が更に好ましく、99/1〜100/0(重量比)が特に好ましい。カプリル酸/カプリン酸(重量比)が60/40より小さいと、吸収性が悪くなる場合がある。
前記パルミチン酸は、白色の蝋(ろう)状の固体で、動植物中に広く分布し、特に木蝋やパーム油に多く含まれる炭素数16の直鎖状飽和脂肪酸である。該パルミチン酸の含有量は、本油脂組成物における構成脂肪酸残基全体中15〜40重量%が好ましく、20〜35重量%がより好ましく、20〜30重量%が更に好ましい。15重量%より少ないと、吸収性が悪くなる場合がある。また、40重量%よりも多いと、常温で油脂結晶が析出して作業性が低下する場合がある。
前記オレイン酸は、オリーブ油、高オレインサフラワー油、高オレインヒマワリ油などに多く含まれる炭素数18の一価不飽和脂肪酸である。該オレイン酸の含有量は、本油脂組成物における構成脂肪酸残基全体中20〜60重量%が好ましく、30〜50重量%がより好ましく、35〜45重量%が更に好ましい。20重量%よりも少ないと、相対的に油脂組成物中の高融点成分量が増大することから常温で油脂結晶が析出して作業性が低下する場合がある。60重量%より多いと、原料コストが高くなり過ぎる場合がある。
前記α-リノレン酸は、シソ油、エゴマ油、亜麻仁油などに多く含まれている直鎖18炭素で3つのcis二重結合を持つ不飽和脂肪酸である。本油脂組成物では、熱や光、酸素などに対する安定性を高めるために、該α-リノレン酸の含有量はできるだけ少ない方が良く、本油脂組成物における構成脂肪酸残基全体中5重量%未満が好ましく、4.5重量%未満がより好ましく、3重量%未満が更に好ましい。
また、前記2位に結合するパルミチン酸残基量/パルミチン酸残基総量の重量比とは、油脂組成物の構成脂肪酸残基中のパルミチン酸残基総量に対する、トリグリセリドの2位に結合するパルミチン酸残基量の比率であり、2位に結合するパルミチン酸残基の総重量を、油脂組成物中のパルミチン酸残基の総重量で除した値をいう。本油脂組成物では、2位に結合するパルミチン酸残基量/パルミチン酸残基総量の重量比は、0.4〜0.95が好ましく、0.5〜0.95がより好ましく、0.6〜0.95が更に好ましい。0.4より小さいと、油脂組成物の体内への吸収性が悪くなる場合がある。また、0.95より大きいと、製造条件が煩雑化し、高コストになり過ぎる場合がある。
本発明の油脂組成物は、前記のような構成脂肪酸残基の組成を有することに加えて、MPM、OPM及びOPOを特定量含む。
前記MPM、OPM及びOPOの合計含有量は、油脂組成物全体中30〜90重量%が好ましく、30〜80重量%がより好ましく、30〜70重量%が更に好ましい。30重量%より少ないと、吸収性が悪くなる場合や、常温で油脂結晶が析出して加工し難くなる場合がある。また、90重量%より多いと、安定で風味が良い油脂組成物が得られない場合や、製造コストが高くなり過ぎる場合がある。なお、油脂組成物全体中の脂質成分量(トリグリセリド、ジグリセリド、モノグリセリド、脂肪酸)は、99〜100重量%である。
更に、本発明の油脂組成物は、前記OPMの含有量が、油脂組成物全体中10〜90重量%であることが好ましく、10〜70重量%がより好ましく、10〜55重量%が更に好ましい。10重量%より少ないと、吸収性が悪くなる場合や、常温で油脂結晶が析出して加工し難くなる場合がある。また、90重量%より多いと、安定で風味が良い油脂組成物が得られない場合や、安価に工業生産できない場合がある。
本発明の油脂組成物には、急激な吸収、代謝に伴う消化管の不調(下痢等)、多量摂取時のケトン体の生成などの副作用を生じさせないために、MMMの含有量はできるだけ少ない方が良く、その含有量は、油脂組成物全体中10重量%以下が好ましく、8重量%以下がより好ましく、6重量%以下が更に好ましい。
本発明においては、上記脂肪酸組成及びトリグリセリド組成を満たす限りにおいては、上記以外の脂肪酸残基やトリグリセリドを含有しても構わない。
本発明の油脂組成物は吸収性に優れているので、体重増加の効果が期待できる。
本発明の油脂組成物は吸収性に優れているので、体重増加の効果が期待できる。
本発明の油脂組成物の製造方法を以下に例示する。本発明の油脂組成物は、各種油脂原料を適宜混合し、常法に従って1、3位特異性のリパーゼでエステル交換することにより、所定の脂肪酸組成及びトリグリセリド組成とすることで製造することができる。
例えば、前記油脂原料として、カプリル酸、カプリン酸の供給源となる油脂又は脂肪酸である成分(A)と、パルミチン酸及びオレイン酸の供給源となる油脂又は脂肪酸である成分(B)とを含有する混合物を用いてエステル交換することで、容易に本発明の油脂組成物を得ることができる。但し、前記成分(A)及び成分(B)の少なくとも一方は油脂又はトリパルミチンであることが必要である。また、前記成分(B)は、油脂を含むことがより好ましい。なお、本発明において、前記カプリル酸、カプリン酸、パルミチン酸又はオレイン酸の供給源となる脂肪酸として、脂肪酸エチルエステル、脂肪酸メチルエステルなどの脂肪酸エステルを用いることもでき、好ましい脂肪酸エステルは脂肪酸エチルエステルである。
前記成分(A)としては、MCT(中鎖脂肪酸トリグリセリド)、カプリル酸及びカプリン酸からなる群より選ばれる少なくとも1種であることが好ましく、MCT及び/又はカプリル酸であることがより好ましい。
また、前記成分(B)としては、パーム油、パーム分別油、パーム油もしくはパーム分別油のエステル交換油、ランダムエステル交換パームステアリンとオレイン酸のエステル交換油、ラード、ラード分別油、米油、綿実油、ピーナッツ油、ゴマ油、オリーブ油、コーン油、大豆油、ヒマワリ油、高オレインヒマワリ油、サフラワー油、高オレインサフラワー油、ナタネ油、牛脂、カカオ脂、トリパルミチン、パルミチン酸及びオレイン酸から選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。なお、成分(B)は、本発明で規定する脂肪酸組成などに調整し易く、効率的に製造し易い観点から、パーム油、パーム分別油、パーム油もしくはパーム分別油のエステル交換油、ランダムエステル交換パームステアリンとオレイン酸のエステル交換油、ラード及びラード分別油から選ばれる少なくとも1種がより好ましい。
本発明の油脂組成物を得るには、成分(A)と成分(B)の合計含有量を混合物全体中70〜100重量%とすることが好ましく、80〜100重量%がより好ましい。70重量%より少ないと、油脂組成物の脂肪酸組成やトリグリセリド組成を調整し難くなる場合や油脂組成物の吸収性が悪くなる場合、更には常温で油脂結晶が析出して加工し難くなる場合がある。
また前記成分(A)と前記成分(B)の比率(重量比)は10/90〜60/40が好ましく、20/80〜50/50がより好ましい。成分(A)/成分(B)(重量比)が10/90より小さいと吸収性が悪くなる場合や、常温で油脂結晶が出るなどして取り扱いが困難になる場合がある。逆に、成分(A)/成分(B)(重量比)が60/40より大きいと、風味が悪くなる場合や、吸収性が悪くなる場合がある。
なお、前記エステル交換に供する混合物は、乳脂肪からなる成分(C)を含んでも良いが、その含有量は10重量%未満であることが好ましい。前記混合物中に成分(C)を10重量%以上含むと、エステル交換油脂、ひいては目的とする油脂組成物の製造価格が上昇するだけでなく、常温で油脂結晶が出るなどして取り扱いが困難になる場合や、得られた油脂組成物に乳脂肪の風味が付与されて用途が制限されたりする場合がある。
更に該エステル交換に供する油脂混合物には、その他の成分(D)を含むこともできる。その他の成分(D)としては、ヤシ油、パーム核油、魚油、大豆油の硬化油やナタネ油の硬化油が挙げられ、これらの少なくとも1種を使用することができる。
本発明の油脂組成物は、前記成分(A)及び成分(B)の油脂及び/又は脂肪酸のエステル交換、又は前記成分(A)、成分(B)及び成分(C)の油脂及び/又は脂肪酸のエステル交換によって得られる。該エステル交換は常法に従えばよく、エステル交換には、1、3位特異性のリパーゼを用いることが好ましい。本発明で用いるリパーゼとしては、アルカリゲネス属、アスペルギルス属、ムコール属、リゾプス属、サーモマイセス属、ペニシリウム属、キャンリダ属等から得られるリパーゼが挙げられる。リパーゼを用いたエステル交換反応は、カラム式の連続反応、バッチ反応のどちらでもよい。
さらに、本発明の油脂組成物は、エステル交換時の原料油脂の配合比率で脂肪酸組成やトリグリセリド組成を適正な範囲に調整することが好ましく、上記に示したエステル交換によって得られた油脂組成物を、蒸留及び/又は分別時の温度条件の選択などによって、脂肪酸及び/又は油脂を分別したり、精製したりすることがより好ましい。
前記蒸留方法としては、短工程薄膜蒸留や分子蒸留などが挙げられる。また、分別方法としては、ヘキサンやアセトンなどの有機溶剤を用いて分別する方法、あるいは、溶剤を用いないで分別する方法を利用することができ、特に限定されない。
なお、本発明の油脂組成物は、本発明で規定する脂肪酸組成やトリグリセリド組成を満たす限りにおいて、前記エステル交換油脂以外の食用油脂を含むこともできる。この食用油脂は特に限定されないが、流動性のある加工しやすい油脂組成物を得るという観点から、液状油脂を使用することが好ましい。前記食用油脂としては、例えば、ナタネ油、コーン油、大豆油、米油、ヒマワリ油、ゴマ油、オリーブ油、サフラワー油、綿実油、固体脂の高融点部を除去した分別油などが挙げられ、これらの内の少なくとも1種を使用できる。
本発明の油脂組成物は、油脂を使用する食品であれば特に限定はなく使用でき、例えば、各種菓子類、各種調理品、各種加工食品などの食品全般が挙げられる。
また、本発明の油脂組成物は、従来の食用油脂に比べると、消化管の不調(下痢等)等の副作用が無いにも関わらず、吸収性が良く、且つ体重増加の効果が期待できる点から、高齢者や身体障害者用の介護食品や、経腸栄養剤、調整乳などに使用することで、体力が衰えがちな高齢者、油脂を十分に消化吸収できない乳幼児、不足がちな栄養素の補給が必要な妊産婦・授乳婦でも効率的なカロリーの摂取が可能になる。特に、油脂の吸収力が衰えている高齢者向け高カロリー摂取用介護食品に好適に使用でき、例えばプリン、クッキー、ケーキなどの菓子類、ハンバーグなどの肉料理、焼き魚などの魚料理、卵焼きなどの卵料理、カレー、シチューなどの鍋料理などの各種調理品が挙げられる。前記経腸栄養剤は、消化管を通して消化吸収される栄養剤を言い、薬事法上の医薬品として承認されているものと、食品として取り扱われているもののいずれでもよい。
また、前記調整乳の形態としては、液状、粉末状のいずれでもよく、乳幼児用としては、エネルギー、蛋白質等の各種成分組成を適合させた乳幼児用調整粉乳とし、妊産婦・授乳婦用としては、カルシウム、鉄分等を強化した妊産婦・授乳婦用粉乳としてもよい。
前記食品中の本発明の油脂組成物の含有量は、食品の形態により一概に限定はできないが、食品全体中、0.5〜30重量%含有すればよい。
以下に実施例を示し、本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。なお、実施例において「部」や「%」は重量基準である。
<脂肪酸組成の分析>
油脂50mgをイソオクタン5mlに溶解し、0.2mol/Lのナトリウムメチラート/メタノール溶液1mlを加え、70℃で15分間反応させることにより、メチルエステル化を行った。酢酸により反応液を中和した後、適量の水を加えた。有機層をガラスピペットにて採取し、ガスクロマトグラフィー(装置:Agilent社製「6890N」、カラム:Quadrex社製「CPS−2」(長さ60m×内径0.25mm×膜厚0.25μm))により分析した。
油脂50mgをイソオクタン5mlに溶解し、0.2mol/Lのナトリウムメチラート/メタノール溶液1mlを加え、70℃で15分間反応させることにより、メチルエステル化を行った。酢酸により反応液を中和した後、適量の水を加えた。有機層をガラスピペットにて採取し、ガスクロマトグラフィー(装置:Agilent社製「6890N」、カラム:Quadrex社製「CPS−2」(長さ60m×内径0.25mm×膜厚0.25μm))により分析した。
<トリグリセリド組成の分析>
油脂10mgをイソオクタン5mlに溶解し、ガスクロマトグラフィー(装置:Agilent社製「HP5890」、カラム:Agilent社製「DB−1」(長さ30m×内径0.25mm×膜厚0.25μm))により分析した。
油脂10mgをイソオクタン5mlに溶解し、ガスクロマトグラフィー(装置:Agilent社製「HP5890」、カラム:Agilent社製「DB−1」(長さ30m×内径0.25mm×膜厚0.25μm))により分析した。
<トリグリセリドの2位に結合した脂肪酸量の分析>
油脂7.5gとエタノール22.5gを混合し、リパーゼ(ノボザイム社製「ノボザイム435」)を1.2g加え、30℃で4時間反応させた。反応液を濃縮後、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(メルク社製「シリカゲル60(0.063−0.200mm)カラムクロマトグラフィー用」)により、モノグリセリドを分離し、濃縮した。分離したモノグリセリドは前記脂肪酸組成の分析方法に従って脂肪酸組成を分析した。
前記脂肪酸組成の分析とトリグリセリドの2位に結合した脂肪酸の分析から、全トリグリセリド中のパルミチン酸残基と2位に結合したパルミチン酸残基の量(重量%)をそれぞれ得ることができ、(2位に結合するパルミチン酸残基)/(パルミチン酸残基総量)を算出した。
油脂7.5gとエタノール22.5gを混合し、リパーゼ(ノボザイム社製「ノボザイム435」)を1.2g加え、30℃で4時間反応させた。反応液を濃縮後、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(メルク社製「シリカゲル60(0.063−0.200mm)カラムクロマトグラフィー用」)により、モノグリセリドを分離し、濃縮した。分離したモノグリセリドは前記脂肪酸組成の分析方法に従って脂肪酸組成を分析した。
前記脂肪酸組成の分析とトリグリセリドの2位に結合した脂肪酸の分析から、全トリグリセリド中のパルミチン酸残基と2位に結合したパルミチン酸残基の量(重量%)をそれぞれ得ることができ、(2位に結合するパルミチン酸残基)/(パルミチン酸残基総量)を算出した。
<MPM、OPM、OPOなどのトリグリセリド組成分析>
油脂20mgをイソオクタン3mlに溶解し、ガスクロマトグラフィー(装置:Agilent社製「HP7890」、カラム:フロンティアラボ社製「Ultra ALLOY TRG」(長さ30m×内径0.25mm×膜厚0.1μm))により分析した。得られたパルミチン酸が一つ、カプリル酸又はカプリン酸が二つ結合したトリグリセリドの合計量に前記(2位に結合するパルミチン酸残基)/(パルミチン酸残基総量)を乗じた値をMPMトリグリセリド量とし、得られたパルミチン酸、オレイン酸、及びカプリル酸又はカプリン酸が一つずつ結合したトリグリセリドの合計量に前記(2位に結合するパルミチン酸残基)/(パルミチン酸残基総量)を乗じた値をOPM量とし、得られたパルミチン酸が一つ、オレイン酸が二つ結合したトリグリセリドの合計量に前記(2位に結合するパルミチン酸残基)/(パルミチン酸残基総量)を乗じた値をOPOトリグリセリド量とした。
油脂20mgをイソオクタン3mlに溶解し、ガスクロマトグラフィー(装置:Agilent社製「HP7890」、カラム:フロンティアラボ社製「Ultra ALLOY TRG」(長さ30m×内径0.25mm×膜厚0.1μm))により分析した。得られたパルミチン酸が一つ、カプリル酸又はカプリン酸が二つ結合したトリグリセリドの合計量に前記(2位に結合するパルミチン酸残基)/(パルミチン酸残基総量)を乗じた値をMPMトリグリセリド量とし、得られたパルミチン酸、オレイン酸、及びカプリル酸又はカプリン酸が一つずつ結合したトリグリセリドの合計量に前記(2位に結合するパルミチン酸残基)/(パルミチン酸残基総量)を乗じた値をOPM量とし、得られたパルミチン酸が一つ、オレイン酸が二つ結合したトリグリセリドの合計量に前記(2位に結合するパルミチン酸残基)/(パルミチン酸残基総量)を乗じた値をOPOトリグリセリド量とした。
<吸収性の評価>
7週齢のウィスター系雄性ラットを16時間絶食させ、頸静脈より0.3ml採血した。採血30分後に油脂サンプルを、各群5匹ずつ6ml/kg(体重)用量を強制経口投与した。サンプル投与後、2、4、6、8時間毎に各ラット頸静脈より0.3ml採血した。採血した血液サンプルはトリグリセライド測定キット(和光純薬工業株式会社製「トリグリセライド Eテストワコー」)にて常法に従い、血中トリグリセリド濃度を測定した。得られたデータは0〜8時間までのトリグリセリド血中濃度−時間曲線下面積(AUC)を算出し、Mean±S.D.(N=5)Thompson−testにより棄却検定し外れ値を除いた後、Dunnett−testにて統計処理を行った。
吸収性の評価については、以下の基準で実施例、比較例の評価をした。
◎:体内への吸収性が極めて良好である(AUCが800以上)。
○:体内への吸収性が良好である(AUCが700以上800未満)。
△:体内への吸収性がやや劣る(AUCが600以上700未満)。
×:体内への吸収性が劣る(AUCが600未満)。
7週齢のウィスター系雄性ラットを16時間絶食させ、頸静脈より0.3ml採血した。採血30分後に油脂サンプルを、各群5匹ずつ6ml/kg(体重)用量を強制経口投与した。サンプル投与後、2、4、6、8時間毎に各ラット頸静脈より0.3ml採血した。採血した血液サンプルはトリグリセライド測定キット(和光純薬工業株式会社製「トリグリセライド Eテストワコー」)にて常法に従い、血中トリグリセリド濃度を測定した。得られたデータは0〜8時間までのトリグリセリド血中濃度−時間曲線下面積(AUC)を算出し、Mean±S.D.(N=5)Thompson−testにより棄却検定し外れ値を除いた後、Dunnett−testにて統計処理を行った。
吸収性の評価については、以下の基準で実施例、比較例の評価をした。
◎:体内への吸収性が極めて良好である(AUCが800以上)。
○:体内への吸収性が良好である(AUCが700以上800未満)。
△:体内への吸収性がやや劣る(AUCが600以上700未満)。
×:体内への吸収性が劣る(AUCが600未満)。
<体重増加の効果の評価>
8週齢のSDラットに試料注入用胃ろう造設手術を行った。16時間絶食後、体重測定を行い、各群4匹ずつ群分けした。胃ろうから栄養剤(味の素製薬株式会社製「エレンタール」)をペリスターポンプにて8日間連続投与した(213ml/kg/day)。2〜8日目は油脂57kcal/kg/dayを追加して投与した。そして8日目に再度体重測定を行った。
体重増加の効果の評価については、以下の基準で実施例、比較例の評価をした。
◎:体重の変化が+12%以上であり、体重増加の効果が著しい。
○:体重の変化が+10.5%以上、+12%未満であり、体重増加の効果がある。
△:体重の変化が+9%以上、+10.5%未満であり、体重増加の効果があまり認められない。
×:体重の変化が+9%未満であり、体重増加の効果が殆ど認められない。
8週齢のSDラットに試料注入用胃ろう造設手術を行った。16時間絶食後、体重測定を行い、各群4匹ずつ群分けした。胃ろうから栄養剤(味の素製薬株式会社製「エレンタール」)をペリスターポンプにて8日間連続投与した(213ml/kg/day)。2〜8日目は油脂57kcal/kg/dayを追加して投与した。そして8日目に再度体重測定を行った。
体重増加の効果の評価については、以下の基準で実施例、比較例の評価をした。
◎:体重の変化が+12%以上であり、体重増加の効果が著しい。
○:体重の変化が+10.5%以上、+12%未満であり、体重増加の効果がある。
△:体重の変化が+9%以上、+10.5%未満であり、体重増加の効果があまり認められない。
×:体重の変化が+9%未満であり、体重増加の効果が殆ど認められない。
<作業性の評価>
作業性の評価については、以下の基準で実施例、比較例を評価した。
◎:常温で油脂結晶が析出せず、加工し易い。
○:常温で油脂結晶が僅かに析出するが、加工するのに問題はない。
△:常温で油脂結晶が少し析出するために、加工するのが困難になる場合がある。
×:常温で油脂結晶が析出し、加工し難い。
作業性の評価については、以下の基準で実施例、比較例を評価した。
◎:常温で油脂結晶が析出せず、加工し易い。
○:常温で油脂結晶が僅かに析出するが、加工するのに問題はない。
△:常温で油脂結晶が少し析出するために、加工するのが困難になる場合がある。
×:常温で油脂結晶が析出し、加工し難い。
<風味の評価>
風味の評価については、8名の専門パネラーにて、以下の基準で実施例、比較例の油脂組成物を評価した。
◎:異味がなく、極めて良好である。
○:異味がなく、良好である。
△:少し異味が感じられ、やや不良である。
×:異味が感じられ、不良である。
風味の評価については、8名の専門パネラーにて、以下の基準で実施例、比較例の油脂組成物を評価した。
◎:異味がなく、極めて良好である。
○:異味がなく、良好である。
△:少し異味が感じられ、やや不良である。
×:異味が感じられ、不良である。
(実施例1)油脂組成物1の作製
表1の原料組成に従って、油脂組成物1を作製した。即ち、パームステアリンを100mmHg以下の減圧下で90℃に加熱し、油脂に含まれる水分および気体成分を除去した。この油脂100重量部に対して、ナトリウムメチラート(Jinbang Medicine Chemical社製「ナトリウムメチラート」)0.2重量部を添加し、10mmHg以下の減圧下で20分間、90℃で攪拌し、エステル交換反応を行った。反応生成物は水洗後、乾燥し、常法に従い、脱色、脱酸を行い、ランダムエステル交換パームステアリンを得た。このランダムエステル交換パームステアリン10重量部、カプリル酸50重量部、オレイン酸40重量部を混合した油脂を等量のヘキサンに溶解し、50℃に温調した。これに1、3位特異性のリパーゼ(ノボザイム社製「Lipozyme RMIM」)7.5重量部を加え、反応温度50℃で38時間エステル交換反応を行った。反応後、酵素及びヘキサンを除去した。反応生成物は、常法に従い脱色した後、0.01mmHg以下の減圧下、210℃で蒸留を行い、脂肪酸を除去し、油脂組成物1を得た。
表1の原料組成に従って、油脂組成物1を作製した。即ち、パームステアリンを100mmHg以下の減圧下で90℃に加熱し、油脂に含まれる水分および気体成分を除去した。この油脂100重量部に対して、ナトリウムメチラート(Jinbang Medicine Chemical社製「ナトリウムメチラート」)0.2重量部を添加し、10mmHg以下の減圧下で20分間、90℃で攪拌し、エステル交換反応を行った。反応生成物は水洗後、乾燥し、常法に従い、脱色、脱酸を行い、ランダムエステル交換パームステアリンを得た。このランダムエステル交換パームステアリン10重量部、カプリル酸50重量部、オレイン酸40重量部を混合した油脂を等量のヘキサンに溶解し、50℃に温調した。これに1、3位特異性のリパーゼ(ノボザイム社製「Lipozyme RMIM」)7.5重量部を加え、反応温度50℃で38時間エステル交換反応を行った。反応後、酵素及びヘキサンを除去した。反応生成物は、常法に従い脱色した後、0.01mmHg以下の減圧下、210℃で蒸留を行い、脂肪酸を除去し、油脂組成物1を得た。
(実施例2)油脂組成物2
表1の原料組成に従って、油脂組成物2を作製した。即ち、精製ラード78重量部と、MCT22重量部を混合した油脂を50℃に温調した。これに1、3位特異性のリパーゼ(ノボザイムス社製「Lipozyme RMIM」)7.5重量部を加え、反応温度50℃で11時間エステル交換反応を行った。反応後、酵素を除去した。反応生成物は、常法に従い脱色し、油脂組成物2を得た。
表1の原料組成に従って、油脂組成物2を作製した。即ち、精製ラード78重量部と、MCT22重量部を混合した油脂を50℃に温調した。これに1、3位特異性のリパーゼ(ノボザイムス社製「Lipozyme RMIM」)7.5重量部を加え、反応温度50℃で11時間エステル交換反応を行った。反応後、酵素を除去した。反応生成物は、常法に従い脱色し、油脂組成物2を得た。
(実施例3)油脂組成物3
表1の原料組成に従って、油脂組成物3を作製した。即ち、実施例1と同様にして得たランダムエステル交換パームステアリン30重量部、オレイン酸70重量部を混合した油脂を等量のヘキサンに溶解し、50℃に温調した。これに1,3位特異性のリパーゼ(ノボザイム社製「Lipozyme RMIM」)7.5重量部を加え、反応温度50℃で10時間エステル交換反応を行った。反応後、酵素およびヘキサンを除去した。反応生成物は、常法に従い脱色した後、0.01mmHg以下の減圧下、210℃で蒸留を行い、オレイン酸を除去し、ランダムエステル交換パームステアリンとオレイン酸のエステル交換油を得た。得られたランダムエステル交換パームステアリンとオレイン酸のエステル交換油75重量部とMCT25重量部を混合した油脂を50℃に温調した。これに1、3位特異性のリパーゼ(ノボザイムス社製「Lipozyme RMIM」)7.5重量部を加え、反応温度50℃で11時間エステル交換反応を行った。反応後、酵素を除去した。反応生成物は、常法に従い脱色し、油脂組成物3を得た。
表1の原料組成に従って、油脂組成物3を作製した。即ち、実施例1と同様にして得たランダムエステル交換パームステアリン30重量部、オレイン酸70重量部を混合した油脂を等量のヘキサンに溶解し、50℃に温調した。これに1,3位特異性のリパーゼ(ノボザイム社製「Lipozyme RMIM」)7.5重量部を加え、反応温度50℃で10時間エステル交換反応を行った。反応後、酵素およびヘキサンを除去した。反応生成物は、常法に従い脱色した後、0.01mmHg以下の減圧下、210℃で蒸留を行い、オレイン酸を除去し、ランダムエステル交換パームステアリンとオレイン酸のエステル交換油を得た。得られたランダムエステル交換パームステアリンとオレイン酸のエステル交換油75重量部とMCT25重量部を混合した油脂を50℃に温調した。これに1、3位特異性のリパーゼ(ノボザイムス社製「Lipozyme RMIM」)7.5重量部を加え、反応温度50℃で11時間エステル交換反応を行った。反応後、酵素を除去した。反応生成物は、常法に従い脱色し、油脂組成物3を得た。
(実施例4)油脂組成物4
表1の原料組成に従って、油脂組成物4を作製した。即ち、ラード分別油78重量部とMCT22重量部を混合した油脂を50℃に温調した。これに1、3位特異性のリパーゼ(ノボザイムス社製「Lipozyme RMIM」)7.5重量部を加え、反応温度50℃で11時間エステル交換反応を行った。反応後、酵素を除去した。反応生成物は、常法に従い脱色し、油脂組成物4を得た。
表1の原料組成に従って、油脂組成物4を作製した。即ち、ラード分別油78重量部とMCT22重量部を混合した油脂を50℃に温調した。これに1、3位特異性のリパーゼ(ノボザイムス社製「Lipozyme RMIM」)7.5重量部を加え、反応温度50℃で11時間エステル交換反応を行った。反応後、酵素を除去した。反応生成物は、常法に従い脱色し、油脂組成物4を得た。
(比較例1)油脂組成物5
表1の原料組成に従って、油脂組成物5を作製した。即ち、MCTを10重量部、精製ナタネ油を90重量部混合してから100mmHg以下の減圧下で90℃に加熱し、混合物に含まれる水分および気体成分を除去した。この混合物にナトリウムメチラート(Jinbang Medicine Chemical社製「ナトリウムメチラート」)0.2重量部を添加し、10mmHg以下の減圧下で20分間、90℃で攪拌し、エステル交換反応を行った。反応生成物は水洗後、乾燥し、常法に従い、脱色、脱酸を行い、油脂組成物5を得た。
表1の原料組成に従って、油脂組成物5を作製した。即ち、MCTを10重量部、精製ナタネ油を90重量部混合してから100mmHg以下の減圧下で90℃に加熱し、混合物に含まれる水分および気体成分を除去した。この混合物にナトリウムメチラート(Jinbang Medicine Chemical社製「ナトリウムメチラート」)0.2重量部を添加し、10mmHg以下の減圧下で20分間、90℃で攪拌し、エステル交換反応を行った。反応生成物は水洗後、乾燥し、常法に従い、脱色、脱酸を行い、油脂組成物5を得た。
以上のようにして得られた油脂組成物1〜5の脂肪酸組成、カプリル酸とカプリン酸の合計含有量、パルミチン酸残基総量に対するトリグリセリドの2位に結合したパルミチン酸残基量の比、トリグリセリド組成ならびに油脂組成物1〜5の吸収性、作業性、風味の評価結果を表1に示した。また、油脂組成物1及び5の体重増加の評価結果を表1に示した。
表1の結果から明らかなように、油脂組成物1〜4は、吸収性が良く、常温でも油脂結晶が僅かしか析出せずに加工し易く、安定で風味も良く、また油脂組成物1は体重増加の効果があったのに対して、油脂組成物5は、吸収性が劣り、体重増加の効果も殆どなかった。
(実施例5)経腸栄養剤の作製
実施例1〜4と同じ油脂組成物1〜4を用いて、表2の配合で常法に従い、4種類の経腸栄養剤を作製した。即ち、カゼインNa、乳化剤、増粘多糖類を水に順次加え溶解した後、デキストリン、食物繊維、ビタミン類、ミネラル類、pH調整剤を順次混合した。次に、油脂組成物1〜4を少量ずつ前記混合物に加え、均質化した。常法に従い、殺菌し、経腸栄養剤を作製した。
実施例1〜4と同じ油脂組成物1〜4を用いて、表2の配合で常法に従い、4種類の経腸栄養剤を作製した。即ち、カゼインNa、乳化剤、増粘多糖類を水に順次加え溶解した後、デキストリン、食物繊維、ビタミン類、ミネラル類、pH調整剤を順次混合した。次に、油脂組成物1〜4を少量ずつ前記混合物に加え、均質化した。常法に従い、殺菌し、経腸栄養剤を作製した。
(実施例6)育児調整粉乳の作製
実施例1と同じ油脂組成物1〜4を用いて、表3の配合で常法に従い、4種類の育児調整粉乳を作製した。即ち、脱脂乳に乳清蛋白濃縮物と乳糖、カゼインNa、ビタミン類、ミネラル類を順次加え溶解した。次に油脂組成物1〜4を前記混合物に加え、均質化した。常法に従い殺菌、乾燥を行い、調整粉乳300gを得た。
実施例1と同じ油脂組成物1〜4を用いて、表3の配合で常法に従い、4種類の育児調整粉乳を作製した。即ち、脱脂乳に乳清蛋白濃縮物と乳糖、カゼインNa、ビタミン類、ミネラル類を順次加え溶解した。次に油脂組成物1〜4を前記混合物に加え、均質化した。常法に従い殺菌、乾燥を行い、調整粉乳300gを得た。
Claims (5)
- 油脂組成物中の構成脂肪酸残基中、カプリル酸及び/又はカプリン酸を10〜40重量%、パルミチン酸を15〜40重量%、オレイン酸を20〜60重量%含有し、α-リノレン酸の含有量は5重量%未満であり、2位に結合するパルミチン酸残基量/パルミチン酸残基総量(重量比)が0.4〜0.95であり、油脂組成物全体中、MPM、OPM及びOPOトリグリセリドの合計含有量が30〜90重量%、MMMトリグリセリドの含有量が10重量%以下である油脂組成物。
(但し、M:カプリル酸又はカプリン酸、P:パルミチン酸、O:オレイン酸。) - 油脂組成物全体中、OPMの含有量が10〜90重量%である請求項1に記載の油脂組成物。
- 中鎖脂肪酸トリグリセリド(MCT)、カプリル酸及びカプリン酸からなる群より選ばれる少なくとも1種である成分(A)と、パーム油、パーム分別油、パーム油もしくはパーム分別油のエステル交換油、ランダムエステル交換パームステアリンとオレイン酸のエステル交換油、ラード、ラード分別油、米油、綿実油、ピーナッツ油、ゴマ油、オリーブ油、コーン油、大豆油、ヒマワリ油、高オレインヒマワリ油、サフラワー油、高オレインサフラワー油、ナタネ油、牛脂、カカオ脂、トリパルミチン、パルミチン酸及びオレイン酸からなる群より選ばれる少なくとも1種である成分(B)とを、混合物全体中、前記成分(A)と成分(B)との合計含有量が70〜100重量%且つ成分(A)/成分(B)の重量比率が10/90〜60/40となるように含有し、更に、乳脂肪からなる成分(C)を10重量%未満しか含有しない混合物を、1、3位特異性のリパーゼでエステル交換することを特徴とする請求項1又は2に記載の油脂組成物の製造方法(但し、前記成分(A)及び成分(B)の少なくとも一方は油脂又はトリパルミチンである。)。
- 食品全体中、請求項1又は2に記載の油脂組成物を0.5〜30重量%含有する食品。
- 食品が、高齢者向け高カ口リー摂取用介護食品、経腸栄養剤、乳幼児又は妊産婦・授乳婦向けの調製乳の何れかである請求項4に記載の食品。
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