JP2015086766A - ピストンおよびピストンの製造方法 - Google Patents

ピストンおよびピストンの製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】ピストンのさらなる軽量化のためにさらなる薄肉化を行った場合にも、ピストンに要求される高温環境下での疲労強度を十分に確保することが可能なピストンを提供する。
【解決手段】このピストン100は、内燃機関に用いられ、アルミニウムまたはアルミニウム合金からなるピストン本体1と、ピストン本体1の強度補強部分の表面1aに形成され、プラズマ酸化による酸化アルミニウムからなる表面2aを有し、かつ、圧縮残留応力が付与された改質層2とを備える。
【選択図】図4

Description

本発明は、ピストンおよびピストンの製造方法に関する。
従来、アルミニウムまたはアルミニウム合金からなるピストン本体を備えるピストンおよびそのピストンの製造方法が知られている(たとえば、特許文献1参照)。
上記特許文献1には、アルミニウム−珪素合金からなるピストン本体の表面に、強化元素や光触媒元素を含む噴射紛体を噴射することによって、ショットピーニング処理が行われた内燃機関用ピストンが開示されている。この内燃機関用ピストンでは、ショットピーニング処理が行われることによって、ピストン本体の表面付近のアルミニウム−珪素合金が改質されて、ある程度強度が向上される。
ここで、近年では、ピストンの軽量化の要求が著しいため、ピストンのさらなる薄肉化を図る必要がある。また、ピストンのさらなる薄肉化を行った場合にも、ピストンに要求される高温環境下での疲労強度を確保する必要がある。
特開2008−51091号公報
しかしながら、上記特許文献1に記載された内燃機関用ピストンで行われたショットピーニング処理では、ピストン本体の表面に加えられる圧力が弱いことから、ピストン本体の表面付近のアルミニウム−珪素合金の改質層が浅いため、ピストンのさらなる軽量化のためにさらなる薄肉化を行った場合に、ピストンに要求される高温環境下での疲労強度を確保するのが困難であるという問題点がある。
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、この発明の1つの目的は、ピストンのさらなる軽量化のためにさらなる薄肉化を行った場合にも、ピストンに要求される高温環境下での疲労強度を十分に確保することが可能なピストンおよびピストンの製造方法を提供することである。
上記目的を達成するために本願発明者が鋭意検討した結果、上記課題を解決するために以下のような構成を見出した。すなわち、この発明の第1の局面におけるピストンは、内燃機関に用いられ、アルミニウムまたはアルミニウム合金からなるピストン本体と、ピストン本体の強度補強部分の表面に形成され、プラズマ酸化による酸化アルミニウムからなる表面を有し、かつ、圧縮残留応力が付与された改質層とを備える。
この発明の第1の局面におけるピストンでは、上記のように、ピストン本体の強度補強部分の表面に、プラズマ酸化による酸化アルミニウムからなる表面を有し、かつ、圧縮残留応力が付与された改質層を形成することによって、改質層の表面がプラズマ酸化による高硬度の酸化アルミニウムからなることにより、改質層の表面の硬度を向上させることができる。さらに、圧縮残留応力が付与された改質層により塑性変形が発生するために必要な応力を大きくすることができるので、常温時だけでなく約250℃以上の高温環境下においても、ピストンの機械的強度を十分に向上させることができる。これにより、ピストンに対してさらなる薄肉化を行った場合にも、ピストンに要求される高温環境下での疲労強度を十分に確保することができる。なお、このことは、後述する本発明の効果を確認するために行った実験により確認済みである。また、ピストンのさらなる薄肉化および軽量化を行うことができるので、ピストンの重量に応じて重量調整されるエンジンの他の部材(コンロッド、フライホイールなど)も軽量化することができる。この結果、エンジン全体を軽量化することができるので、エンジンの燃費を向上させることができる。
上記第1の局面におけるピストンにおいて、好ましくは、改質層は、ピストン本体の母材の硬度よりも大きい硬度を有する。このように構成すれば、改質層のうち、プラズマ酸化による高硬度の酸化アルミニウムからなる表面近傍だけでなく、表面以外の改質層の硬度も母材の硬度より大きくすることができるので、改質層の硬度をより向上させることができる。この結果、ピストンに対してさらなる薄肉化を行った場合にも、容易に、ピストンに要求される高温環境下での疲労強度を向上させることができる。
上記第1の局面におけるピストンにおいて、好ましくは、ピストン本体は、アルミニウムまたはアルミニウム合金の鋳物により形成されており、改質層は、鋳物からなるピストン本体の強度補強部分の鋳肌面が溶融されて再凝固されることにより形成されている。このように構成すれば、鋳肌面を溶融して再凝固することによって、鋳肌面に形成された湯境や鋳巣などの微細な欠陥を除去することができるので、高温環境下での改質層の疲労強度をより向上させることができる。
上記第1の局面におけるピストンにおいて、好ましくは、改質層は、レーザーピーニング処理により形成されている。このように構成すれば、容易に、ピストン本体の強度補強部分の表面に、プラズマ酸化による酸化アルミニウムからなる表面を有し、かつ、圧縮残留応力が付与された改質層を形成することができる。また、レーザーピーニング処理を用いることによって、照射位置などの照射条件を制御してレーザー光を照射することができるので、粒子がランダムに表面に噴射されるショットピーニング処理と比べて、ピストン本体の強度補強部分の表面により均一な改質層を形成することができる。
上記第1の局面におけるピストンにおいて、好ましくは、ピストン本体の強度補強部分の表面は、少なくともピストン本体の頂部の内表面を含む。このように構成すれば、大きな負荷が加えられるピストン本体の頂部の内表面の硬度を十分に向上させることができるので、ピストン本体の頂部についても、薄肉化(軽量化)を行いながら、ピストンに要求される高温環境下での疲労強度を確保することができる。
この発明の第2の局面におけるピストンの製造方法は、内燃機関に用いられる、アルミニウムまたはアルミニウム合金からなるピストン本体を準備する工程と、ピストン本体の強度補強部分の表面に対して、パルス幅が100ナノ秒以下の超短パルス高ピーク出力密度のレーザー光を所定の照射条件で照射することによりプラズマを発生させて、発生したプラズマの圧力によりピストン本体の強度補強部分にレーザーピーニング処理を施すことによって、ピストン本体の強度補強部分の表面に、プラズマ酸化による酸化アルミニウムからなる表面を有するとともに、圧縮残留応力が付与された改質層を形成する工程とを備える。
この発明の第2の局面におけるピストンの製造方法では、上記のように、ピストン本体の強度補強部分の表面に、プラズマ酸化による酸化アルミニウムからなる表面を有し、かつ、圧縮残留応力が付与された改質層を形成することによって、改質層の表面がプラズマ酸化による高硬度の酸化アルミニウムからなることにより、改質層の表面の硬度を向上させることができる。さらに、圧縮残留応力が付与された改質層により塑性変形が発生するために必要な応力を大きくすることができるので、常温時だけでなく約250℃以上の高温環境下においても、ピストンの機械的強度を十分に向上させることができる。これにより、ピストンに対してさらなる薄肉化を行った場合にも、ピストンに要求される高温環境下での疲労強度を十分に確保することができる。したがって、ピストンを薄肉化して軽量化することができるので、ピストンの重量に応じて重量調整されるエンジンの他の部材(コンロッド、フライホイールなど)も軽量化することができる。この結果、エンジン全体を軽量化することができるので、エンジンの燃費を向上させることができる。また、レーザーピーニング処理を用いることによって、照射位置などの照射条件を制御してレーザー光を照射することができるので、粒子がランダムに表面に噴射されるショットピーニング処理と比べて、ピストン本体の強度補強部分の表面により均一な改質層を形成することができる。
上記第2の局面におけるピストンの製造方法において、好ましくは、改質層を形成する工程は、ピストン本体の強度補強部分の表面に液体の膜が配置された状態で、ピストン本体の強度補強部分にレーザーピーニング処理を施すことによって、ピストン本体の強度補強部分の表面に、プラズマ酸化による酸化アルミニウムからなる表面を有するとともに、圧縮残留応力が付与された改質層を形成する工程を含む。このように構成すれば、ピストン本体の強度補強部分の表面に配置された液体の膜によって、発生したプラズマによる衝撃波が拡散するのを抑制することができるので、ピストン本体の強度補強部分の表面からピストン本体の内部に向かって衝撃波を集中して伝播することができる。これにより、ピストン本体の強度補強部分の深い領域にまで、改質層を形成することができるので、ピストンの薄肉化(軽量化)を行った場合にも、容易に、ピストンに要求される高温環境下での疲労強度を確保することができる。
上記第2の局面におけるピストンの製造方法において、好ましくは、改質層は、ピストン本体の母材の硬度よりも大きい硬度を有する。このように構成すれば、改質層のうち、プラズマ酸化による高硬度の酸化アルミニウムからなる表面近傍だけでなく、表面以外の改質層の硬度も母材の硬度よりも大きくすることができるので、改質層の硬度をより向上させることができる。この結果、ピストンに対してさらなる薄肉化を行った場合にも、容易に、ピストンに要求される高温環境下での疲労強度を向上させることができる。
上記第2の局面におけるピストンの製造方法において、好ましくは、ピストン本体は、アルミニウムまたはアルミニウム合金の鋳物により形成されており、改質層を形成する工程は、ピストン本体の強度補強部分にレーザーピーニング処理を施すことによって、鋳物からなるピストン本体の強度補強部分の鋳肌面を溶融して再凝固させるとともに、プラズマ酸化による酸化アルミニウムからなる表面を有し、かつ、圧縮残留応力が付与された改質層を形成する工程を含む。このように構成すれば、鋳肌面を溶融して再凝固することによって、鋳肌面に形成された湯境や鋳巣などの微細な欠陥を除去することができるので、高温環境下での改質層の疲労強度をより向上させることができる。
なお、本出願では、上記第1の局面によるピストンとは別に、以下のような構成も考えられる。
(付記項)
すなわち、本出願の他の構成によるピストンは、内燃機関に用いられ、アルミニウムまたはアルミニウム合金からなるアルミ部分を含むピストン本体と、ピストン本体のアルミ部分の強度補強部分の表面にレーザーピーニング処理により形成され、プラズマ酸化による酸化アルミニウムからなる表面を有し、かつ、圧縮残留応力が付与された改質層とを備える。このように構成すれば、改質層の表面がプラズマ酸化による高硬度の酸化アルミニウムからなることにより、改質層の表面の硬度を向上させることができる。さらに、圧縮残留応力が付与された改質層により塑性変形が発生するために必要な応力を大きくすることができるので、常温時だけでなく約250℃以上の高温環境下においても、ピストンの機械的強度を十分に向上させることができる。これにより、ピストンに対してさらなる薄肉化を行った場合にも、ピストンに要求される高温環境下での疲労強度を十分に確保することができる。また、ピストンを薄肉化して軽量化することができるので、ピストンの重量に応じて重量調整されるエンジンの他の部材(コンロッド、フライホイールなど)も軽量化することができるので、エンジンの燃費を向上させることができる。この結果、エンジン全体を軽量化することができる。また、レーザーピーニング処理を用いることによって、照射位置などの照射条件を制御してレーザー光を照射することができるので、粒子がランダムに表面に噴射されるショットピーニング処理と比べて、ピストン本体のアルミ部分の強度補強部分の表面により均一な改質層を形成することができる。
本発明によれば、上記のように、ピストンのさらなる軽量化のためにさらなる薄肉化を行った場合にも、ピストンに要求される高温環境下での疲労強度を十分に確保することが可能なピストンおよびピストンの製造方法を提供することができる。
本発明の一実施形態によるピストンを示した断面図である。 図1の200−200線に沿ったピストンの断面図である。 図2の300−300線に沿ったピストンの断面図である。 本発明の一実施形態によるピストンの改質層および母材を示した断面図である。 本発明の一実施形態によるピストンの改質層を示した拡大断面図である。 本発明の一実施形態によるピストンの製造方法を説明するための模式図である。 本発明の効果を確認するために行った回転曲げ試験(疲労強度)の結果を示した図である。 本発明の効果を確認するために行った引張試験における0.2%耐力の結果を示した図である。 本発明の効果を確認するために行った引張試験における引張強度の結果を示した図である。 本発明の効果を確認するために行った残留応力測定の結果を示した図である。 本発明の効果を確認するために行った硬度測定の結果を示した図である。
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
図1〜図5を参照して、本発明の一実施形態によるピストン100の構成について説明する。
本発明の一実施形態によるピストン100は、図示しない車両の内燃機関(エンジン)に用いられる機械部品である。このピストン100は、ピストン本体1の上部の頂部10側(図1参照)の燃焼室において混合気が燃焼されることにより、約250℃以上の高温環境下に配置される。さらに、図1に示すように、頂部10には、燃焼室において混合気が燃焼された際に大きな燃焼圧が応力として加えられる。また、ピストン本体1の側部のスカート部11が図示しないシリンダの内面に対して摺動することによって、スカート部11には摩擦力などに起因する応力が発生する。
この結果、図2および図3に示すように、ピストン本体1の頂部10の外表面10aおよび内表面10bと、スカート部11の外表面11aおよび内表面11b(強度補強部分の表面1a(図4参照))とでは、高い硬度(高温環境下における高い疲労強度)が必要とされる。特に、頂部10の内表面10bおよびスカート部11の内表面11bの上側領域(図1〜図3における一点鎖線の領域)には、他の強度補強部分の表面1a(図1〜図3における破線の領域)と比べて、特に大きな応力(負荷)が加えられるため、高温環境下において特に高い硬度が必要とされる。
また、ピストン本体1は、微量元素としてMgやTiなどが含まれたAl−12Si−Cu−Ni合金(アルミニウム合金)の鋳物により形成されている。また、ピストン本体1では、図示しない鋳型から取り出された後に、ピストン本体1の頂部10の中央部などの所定部分が切削されることによって、鋳肌面の所定部分には切削面が形成されている。
また、ピストン本体1の強度補強部分の表面1a(頂部10の外表面10aおよび内表面10b、スカート部11の外表面11aおよび内表面11b)には、後述するレーザーピーニング処理が鋳肌面および切削面に施されることにより、図4に示すように、改質層2が形成されている。この改質層2は、改質層2以外の部分(母材3)とは異なる性質を有しており、表面2aからの厚み(深さ)方向(Z方向)に約500μm以上の厚み(深さ)t1を有している。なお、改質層2が形成されていない部分(強度補強部分の表面1a以外の部分や、強度補強部分(頂部10、スカート部11)の改質層2よりも内側の部分)には、母材3が位置している。
ここで、本実施形態では、改質層2は、図5に示すように、表面2aおよびその近傍に形成された酸化アルミ膜2bと、酸化アルミ膜2bの内側の部分に形成された内部層2cとから構成されている。酸化アルミ膜2bは、Al−12Si−Cu−Ni合金(ピストン本体1の母材3)よりも硬度の高い白色の酸化アルミニウムからなり、プラズマ酸化により形成されている。具体的には、酸化アルミ膜2bは、レーザーピーニング処理において強度補強部分の表面1aにプラズマを発生させた際に、陽イオン化したAlが酸素と結びつくことによって形成されている。このプラズマ酸化により形成された酸化アルミ膜2bは、アルマイト処理(陽極酸化処理)による厚み方向に延びる柱状の酸化膜とは異なり、厚み(深さ)方向に延びる柱状には形成されていない。また、酸化アルミ膜2bは、厚み方向(Z方向)に約1μmの厚み(深さ)t2を有している。なお、図4および図5では、理解容易のため、改質層2と母材3との境界、および、酸化アルミ膜2bと内部層2cとの境界をそれぞれ明確に図示しているものの、実際には、図4および図5のようには明確でない。
また、改質層2は、レーザーピーニング処理において発生したプラズマの体積膨張が圧力(衝撃波)となり、ピストン本体1の強度補強部分の表面1aおよび強度補強部分の内部(内部層2c)が塑性変形されることによって形成されている。この結果、酸化アルミ膜2bだけでなく内部層2cにも、プラズマの圧力による圧縮残留応力が付与されている。また、衝撃波による塑性変形に伴い、改質層2には多くの転位が形成されていると考えられる。
また、改質層2の硬度は、レーザーピーニング処理を施さないAl−12Si−Cu−Ni合金(ピストン本体1の母材3)の硬度よりも大きい硬度を有している。具体的には、ピストン100の実際の使用環境である約250℃の高温環境下にピストン100が所定時間配置された場合、ピストン本体1の母材3のビッカース硬度は、約70HVであり、改質層2のビッカース硬度は、約75HV以上である。なお、約250℃の高温環境下に配置される前(熱処理が行われていない状態)での、ピストン本体1の母材3のビッカース硬度は、約110HVであり、改質層2のビッカース硬度は、約120HV以上である。
また、鋳物からなるピストン本体1の強度補強部分の表面1a(鋳肌面および切削面)がプラズマにより瞬間的に約5000℃以上の超高温にされることにより、改質層2の表面2aは、鋳肌面および切削面が一度溶融されて再凝固されている。これにより、改質層2の表面2aでは、鋳肌面の湯境や鋳巣などに存在する微細な欠陥が修復されているとともに、切削面の表面粗さが変化されている。
また、レーザー光が照射されたピストン本体1の表面1aが衝撃波により塑性変形して若干窪むことによって、図4に示すように、改質層2の表面2aには、微細な凹凸が形成されている。この際、微細な凹凸が形成された改質層2の表面2aの表面粗さは、レーザーピーニング処理を施す前の切削面の表面粗さよりも、大きく変化する場合と小さく変化する場合とがある。つまり、切削面の表面粗さが十分に小さい場合には、微細な凹凸が形成された改質層2の表面2aの表面粗さは、切削面の表面粗さよりも大きくなりやすい。一方、切削面の表面粗さが大きい場合には、微細な凹凸が形成された改質層2の表面2aの表面粗さは、切削面の表面粗さよりも小さくなりやすい。つまり、上記した「切削面の表面粗さが変化する」というのは、切削面の表面粗さが大きく変化する場合と小さく変化する場合とのどちらも含んでいる。
上記実施形態では、以下のような効果を得ることができる。
本実施形態では、上記のように、ピストン本体1の強度補強部分の表面1a(頂部10の外表面10aおよび内表面10b、スカート部11の外表面11aおよび内表面11b)に、プラズマ酸化による酸化アルミニウムからなる表面2aを有し、かつ、圧縮残留応力が付与された改質層2を形成することによって、改質層2の表面2aがプラズマ酸化による高硬度の酸化アルミニウムからなることにより、改質層2の表面2aの硬度を向上させることができる。さらに、圧縮残留応力が付与された改質層2により塑性変形が発生するために必要な応力を大きくすることができるので、常温時だけでなく約250℃以上の高温環境下においても、ピストン100の機械的強度を十分に向上させることができる。これにより、ピストン100に対してさらなる薄肉化を行った場合にも、ピストン100に要求される高温環境下での疲労強度を十分に確保することができる。また、ピストン100のさらなる薄肉化および軽量化を行うことができるので、ピストン100の重量に応じて重量調整されるエンジンの他の部材(コンロッド、フライホイールなど)も軽量化することができる。この結果、エンジン全体を軽量化することができるので、エンジンの燃費を向上させることができる。
また、本実施形態では、改質層2の硬度を、常温時だけでなく、約250℃以上の高温環境下に配置された際においても、レーザーピーニング処理を施さないAl−12Si−Cu−Ni合金(ピストン本体1の母材3)の硬度よりも大きい硬度を有するように構成する。これにより、改質層2のうち、プラズマ酸化による酸化アルミニウムからなる表面2a近傍の酸化アルミ膜2bだけでなく、表面2a以外の改質層2(内部層2c)の硬度も母材3の硬度より大きくすることができるので、改質層2の硬度をより向上させることができる。この結果、ピストン100に対してさらなる薄肉化を行った場合にも、容易に、ピストン100に要求される高温環境下での疲労強度を向上させることができる。
また、本実施形態では、鋳物からなるピストン本体1の強度補強部分の表面1a(鋳肌面および切削面)がプラズマにより瞬間的に約5000℃以上の超高温にされることにより、改質層2の表面2aを、鋳肌面および切削面が一度溶融して再凝固することにより形成する。これにより、鋳肌面および切削面を溶融して再凝固することによって、鋳肌面に形成された湯境や鋳巣などの微細な欠陥を除去することができるとともに、切削面の表面粗さを変化させることができるので、高温環境下での改質層2の疲労強度をより向上させることができる。
また、本実施形態では、改質層2をレーザーピーニング処理により形成することによって、容易に、ピストン本体1の強度補強部分の表面1aに、プラズマ酸化による酸化アルミニウムからなる表面2a(酸化アルミ膜2b)を有し、かつ、圧縮残留応力が付与された改質層2を形成することができる。また、レーザーピーニング処理を用いることによって、照射位置などの照射条件を制御してレーザー光を照射することができるので、紛体がランダムに表面に噴射されるショットピーニング処理と比べて、ピストン本体1の強度補強部分の表面1aにより均一な改質層2を形成することができる。
また、本実施形態では、ピストン本体1の頂部10の内表面10bに、酸化アルミ膜2bを有する改質層2を形成することによって、大きな負荷が加えられるピストン本体1の頂部10の内表面10bの硬度を十分に向上させることができるので、ピストン100の機械的強度を十分に向上させることができるので、ピストン本体1の頂部10についても、薄肉化(軽量化)を行いながら、ピストン100に要求される高温環境下での疲労強度を確保することができる。
次に、図1〜図6を参照して、本実施形態によるピストン100の製造方法(表面加工方法)について説明する。
まず、溶融したAl−12Si−Cu−Ni合金(アルミニウム合金)を鋳型に流し込むことによって、ピストン本体1(図1〜図3参照)を鋳造して、鋳型から取り出す。この際、ピストン本体1の鋳肌面からなる表面1aには、微細な欠陥を有する湯境や鋳巣などが形成されている。その後、ピストン本体1の頂部10の中央部などの所定部分を切削する。これにより、ピストン本体1の所定部分に切削面が形成される。そして、ピストン本体1の強度補強部分の鋳肌面または切削面からなる表面1a(頂部10の外表面10aおよび内表面10b、スカート部11の外表面11aおよび内表面11b)にレーザーピーニング処理を施す。
具体的には、図6に示すように、まず、水中にピストン本体1を配置する。そして、Q−switch YAGパルスレーザー発生装置(Thales Laser製 SAGA)を用いて、ピストン本体1の強度補強部分(頂部10、スカート部11)に約530nmの波長を有するレーザー光を照射する。ここで、レーザー光の照射条件として、レーザー光のパルス幅を約8ナノ秒の超短パルスに設定するとともに、レーザー光のパワー密度(1平方センチメートルあたりに照射されるレーザー光の出力)を約2.5GW/cm以上約10GW/cm以下の高ピーク出力密度に設定する。また、レーザー光のスポット径(レーザー光が照射される領域の径)が約400μm以上約800μm以下になるように、レンズ101を調整する。
これにより、レーザー光が照射された水中におけるピストン本体1の表面1aにおいて、Al−12Si−Cu−Ni合金(ピストン本体1の母材3)が気化および電離してプラズマが発生する。このプラズマにより、レーザー光が照射された水中のピストン本体1の表面1aは、約5000℃以上の超高温になる。しかしながら、この昇温は局所的、かつ、瞬間的であるとともに、周辺に急速に放熱されて冷却されるため、昇温は、レーザー光が照射されたピストン本体1の表面1aに限定される。
また、発生したプラズマにより、レーザー光が照射されたピストン本体1の表面1aにおいて急激な体積の膨張が生じる。この際、ピストン本体1の表面1aに配置された水は急には移動できないので、発生したプラズマによる衝撃波がピストン本体1の強度補強部分から拡散するのが抑制される。これにより、プラズマの圧力は数万気圧になってピストン本体1の表面1aからピストン本体1の内部の深い領域にまで衝撃波が集中して伝播する。この結果、衝撃波により塑性変形されて、レーザー光が照射されたピストン本体1の表面1aに圧縮残留応力が付与されるとともに、微細な凹部が形成される。これにより、レーザー光が照射されたピストン本体1の表面1a(2a)に、図4に示すような改質層2が容易に形成される。なお、改質層2は、約500μm以上の厚み(深さ)t1になるように形成される。
また、図5に示すように、ピストン本体1の表面1aにプラズマを発生させた際に、陽イオン化したAlが酸素と結びつくプラズマ酸化によって、改質層2の表面2aに酸化アルミ膜2bが形成される。また、ピストン本体1の強度補強部分の表面1a(鋳肌面および切削面)は、プラズマにより瞬間的に約5000℃以上の超高温になることによって、一度溶融され、急冷されて再凝固する。これにより、鋳肌面の湯境や鋳巣などに存在する微細な欠陥が修復されるとともに、切削面の表面粗さが変化された改質層2の表面2aが形成される。
そして、ピストン本体1の強度補強部分の表面1a(頂部10の外表面10aおよび内表面10b、スカート部11の外表面11aおよび内表面11b)の全体にレーザー光を照射する。なお、レーザー光の照射条件として、ガバレージ(走査回数)が複数回(たとえば、3回や7回)になるようにレーザー光を照射する。これにより、改質層2の表面2aに、微細な凹凸が形成される。この結果、ピストン本体1の強度補強部分の表面1aへの表面加工が終了して、図1〜図3に示すピストン100が製造される。
[実施例]
次に、図7〜図11を参照して、上述した実施形態の効果を確認するために行った確認実験(実施例)について説明する。以下、確認実験として行った回転曲げ試験、引張試験、残留応力測定および硬度分布測定について説明する。
(回転曲げ試験、引張試験)
まず、回転曲げ試験について説明する。この回転曲げ試験では、Al−12Si−Cu−Ni合金(アルミニウム合金)からなる試験片を準備した。この試験片は、回転曲げ試験に関するJIS規格(JIS Z 2274)に適合する形状および寸法で作成した。そして、作成した試験片に対して、上記実施形態におけるピストン本体1の強度補強部分の表面1aへの表面加工と同様の表面加工を行った。具体的には、ピストン本体1の強度補強部分(頂部10、スカート部11)に約530nmの波長を有するレーザー光を照射した。ここで、レーザー光の照射条件として、レーザー光のパルス幅を約8ナノ秒の超短パルスに設定するとともに、レーザー光のパワー密度を約10GW/cmの高ピーク出力密度に設定した。また、レーザー光のスポット径を約400μmにした。さらに、ガバレージが7回になるようにレーザー光を照射した。このようなレーザーピーニング処理(LP処理)を、試験片の表面の略全面に亘って施すことによって、上記実施形態に対応する実施例1の試験片を作製した。
また、実施例1に対する比較例1では、実施例1の試験片とは異なり、レーザーピーニング処理ではなく、一般的なショットピーニング処理(SP処理)を施した試験片を作製した。具体的には、Al−12Si−Cu−Ni合金の表面に金属粒子を所定の圧力で噴射することによって、Al−12Si−Cu−Ni合金の表面に圧縮応力を加えることによって、実施例1に対する比較例1の試験片を作製した。また、実施例1に対する比較例2として、実施例1および比較例1の試験片とは異なり、レーザーピーニング処理およびショットピーニング処理のいずれも施さない未処理の試験片をそのまま用いた。
そして、実施例1、比較例1および2の試験片を250℃の温度条件下で100時間熱処理を行うことによって、高温環境下に所定時間配置した。その後、回転曲げ試験として、実施例1、比較例1および2の試験片に回転曲げを連続的に繰り返し加え、実施例1、比較例1および2の試験片が破壊するまでのサイクル数を疲労強度(高温環境下での疲労強度)として求めた。なお、疲労強度は引張強さに正比例して大きくなる傾向があるとともに、硬度は引張強さに正比例して高くなる傾向があることから、硬度が大きい場合には、疲労強度が高くなる傾向がある。
比較例2を基準(100%)とした場合の、実施例1および比較例1のサイクル数の割合(%)を図7に示す。図7に示した回転曲げ試験の結果としては、実施例1の試験片では、未処理の試験片(比較例2の試験片)に対して、サイクル数が120%に増加した。つまり、実施例1の試験片では、未処理の試験片よりも高温環境下での疲労強度が大幅に向上した。一方、比較例1の試験片では、未処理の試験片に対して、サイクル数が111%に増加した。この結果、レーザーピーニング処理を施すことによって、ショットピーニング処理を施すよりも、ピストン100の実際の使用環境である高温環境下での疲労強度を大幅に向上させることが可能であることが判明した。
次に、引張試験について説明する。この引張試験では、レーザーピーニング処理を施した上記実施例1の試験片、および、ピーニング処理を施していない上記比較例2の未処理の試験片と同様の試験片を用いた。そして、試験片に対して、250℃の温度条件下で100時間加熱処理を行うことによって、高温環境下に所定時間配置した。その後、実施例1および比較例2の試験片を、引張試験機を用いて両端から引っ張った。そして、塑性ひずみが0.2%になる際の応力(0.2%耐力(高温環境下での0.2%耐力))と、加えることが可能な最大の応力(引張強度(高温環境下での引張強度))とを測定した。
比較例2を基準(100%)とした場合の、実施例1の0.2%耐力および引張強度をそれぞれ図8および図9に示す。図8に示した高温環境下での0.2%耐力の結果としては、実施例1の試験片では、未処理の試験片(比較例2の試験片)に対して、高温環境下での0.2%耐力が110%に増加した。また、図9に示した高温環境下での引張強度の結果としては、実施例1の試験片では、未処理の試験片に対して、高温環境下での引張強度が101%に増加した。この結果、レーザーピーニング処理を施すことによって、未処理の場合よりも、ピストン100の実際の使用環境である高温環境下での0.2%耐力および引張強度を共に向上させることが可能であることが判明した。
これらの結果から、レーザーピーニング処理により改質層を形成することによって、ショットピーニング処理により改質層を形成する場合(比較例1)や、改質層を形成しない場合(比較例2)と比べて、機械的強度を向上させることが可能であることが判明した。これは、硬度の高い酸化アルミニウムからなる酸化アルミ膜と圧縮残留応力とにより、改質層の硬度が向上したからであると考えられる。この結果、レーザーピーニング処理を施すことにより、250℃以上の高温環境下においても、ピストンの機械的強度を十分に向上させることができ、その結果、ピストンに対してさらなる薄肉化を行った場合にも、ピストンに要求される高温環境下での疲労強度を十分に確保することができることが確認できた。
(残留応力測定)
次に、残留応力測定について説明する。この残留応力測定では、Al−12Si−Cu−Ni合金(アルミニウム合金)からなるピストン本体を準備した。そして、上記実施例1と同様の照射条件で、4つのピストン本体1の強度補強部分の表面1a(頂部10の外表面10aおよび内表面10b、スカート部11の外表面11aおよび内表面11b)にレーザーピーニング処理(LP処理)を施した。このようにして、実施例2として、レーザーピーニング処理を施すことにより改質層が形成されたピストンを4つ作製した。
一方、実施例2に対する比較例3として、上記比較例1と同様に、一般的なショットピーニング処理(SP処理)を施すことにより改質層が形成されたピストンを2つ作製した。
そして、1つの実施例2(実施例2−1)のピストンと、1つの比較例3(比較例3−1)のピストンとには熱処理は行わなかった。また、1つの実施例2(実施例2−2)のピストンと、1つの比較例3(比較例3−2)のピストンとを250℃の温度条件下で100時間熱処理を行った。また、1つの実施例2(実施例2−3)のピストンを300℃の温度条件下で100時間熱処理を行うとともに、1つの実施例2(実施例2−4)のピストンを400℃の温度条件下で100時間熱処理を行った。つまり、実施例2−2〜実施例2−4と比較例3−2とを、高温環境下に所定時間(100時間)配置した。
その後、4つの実施例2のピストンと、2つの比較例3のピストンとの改質層が形成された強度補強部分をX線回折測定装置を用いて測定することによって、ピストン本体の表面からの深さ位置(μm)における残留応力(MPa)を求めた。
実施例2および比較例3の残留応力を図10に示す。なお、図10では、残留応力が負の値である場合には、圧縮応力が残留しており、残留応力が正の値である場合には、引張応力が残留していることを示している。図10に示した残留応力測定の結果としては、熱処理が行われていない場合において、レーザーピーニング処理を施した実施例2−1では、100μmの深さ位置における残留応力は−312MPaになり、200μmの深さ位置であっても、残留応力は−242MPaになった。一方、ショットピーニング処理を施した比較例3−1では、表面から50μmの深さ位置までにはある程度の大きさの圧縮残留応力が測定されるものの、100μm以上の深さ位置においては、圧縮残留応力は測定されなかった。これは、ショットピーニング処理では、ピストン本体の表面に加えられる圧力が弱く、ピストン本体の内部まで十分に改質することができなかったからであると考えられる。これにより、レーザーピーニング処理を施すことによって、最表面だけでなく、100μm以上のピストン本体の内部においても、圧縮残留応力を加えることが可能であることが判明した。
また、熱処理が行われた実施例2−2〜2−4と比較例3−2とにおいては、ショットピーニング処理を施した比較例3−2では、略0MPaになった。これは、熱処理により圧縮残留応力が略解放されたからであると考えられる。一方、レーザーピーニング処理を施した実施例2−2〜2−4では、熱処理によっても、圧縮残留応力が一部残存した。これにより、レーザーピーニング処理を施すことによって、熱処理を行ったとしても(高温環境下に配置された場合にも)圧縮残留応力が一部残存して、硬度の低下をある程度抑制することが可能であることが判明した。なお、250℃で熱処理が行われた実施例2−2は、300℃および400℃でそれぞれ熱処理が行われた実施例2−3および2−4と比べて、圧縮残留応力が多く残存した。これにより、高温になるにつれて残留応力が開放されやすいことが判明した。これは、高温になるにつれて改質層における金属原子の熱運動が大きくなり、再結晶化がより行われることによって、圧縮残留応力が周囲に開放されやすくなるからであると考えられる。
(硬度測定)
次に、硬度測定について説明する。この硬度測定では、強度補強部分の表面1aにレーザーピーニング処理(LP処理)を施しただけで熱処理が行われていない、上記残留応力測定の実施例2−1のピストンを用いた。そして、熱処理が行われていない実施例2−1のピストンのうち、レーザーピーニング処理を施して改質層を形成した部分と、改質層が形成されていない部分(レーザーピーニング処理を施していない部分)とを厚み(深さ)方向に切断および研磨することによって、それぞれ、切断片1および2を作製した。また、強度補強部分の表面1aにレーザーピーニング処理(LP処理)を施した後に250℃で熱処理が行われた、上記残留応力測定の実施例2−2のピストンを用いた。そして、熱処理が行われた実施例2−2のピストンのうち、レーザーピーニング処理を施して改質層を形成した部分と、改質層が形成されていない部分とを厚み方向に切断および研磨することによって、それぞれ、切断片3および4を作製した。
そして、切断片1および3の複数の深さ位置において、20gfの荷重で微小硬さ測定用の圧子を押しあて、形成されたへこみの表面積からビッカース硬さを求めた。なお、切断片2および4では、硬度は深さ位置に拘わらず一定であると考えられるので、一箇所だけビッカース硬さを求めた。
図11に示したビッカース硬さの結果としては、熱処理が行われていない切断片1および2を比較した場合、表面から少なくとも500μmの深さ位置までの範囲において、レーザーピーニング処理を施した切断片1のビッカース硬度は、レーザーピーニング処理を施していない切断片2のビッカース硬度よりも大きくなった。これにより、表面から少なくとも500μmの深さ位置までの範囲において、レーザーピーニング処理に因る改質層が形成されており、ビッカース硬度を向上させることが可能であることが判明した。また、熱処理が行われた切断片3および4を比較した場合、レーザーピーニング処理を施した切断片3のビッカース硬度は、レーザーピーニング処理を施していない切断片4のビッカース硬度よりも大きくなった。これにより、表面から少なくとも500μmの深さ位置までの範囲において、高温環境下においても、レーザーピーニング処理に因る改質層が残存しており、ビッカース硬度を向上させることが可能であることが判明した。
また、レーザーピーニング処理を施した切断片1および3を比較した場合、熱処理が行われた切断片3のビッカース硬度は、熱処理が行われていない切断片1のビッカース硬度よりも小さくなった。また、レーザーピーニング処理を施していない切断片2および4を比較した場合、熱処理が行われた切断片4のビッカース硬度は、熱処理が行われていない切断片2のビッカース硬度よりも小さくなった。これは、熱処理による再結晶化により、圧縮残留応力の一部が開放されたからであると考えられる。
一方、表面から1000μmの深さ位置よりも深い深さ位置においては、熱処理が行われていない切断片1および2のビッカース硬度は略等しくなるとともに、熱処理が行われた切断片3および4のビッカース硬度は略等しくなった。これにより、表面から1000μmの深さ位置よりも深い深さ位置においては、改質層はほとんど形成されていないと考えられる。
なお、今回開示された実施形態および実施例は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態および実施例の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれる。
たとえば、上記実施形態では、車両の内燃機関(エンジン)に用いられるピストン100に本発明を適用した例を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、船舶や航空機などの内燃機関に用いるピストンに本発明を適用してもよい。
また、上記実施形態では、強度補強部分の表面としての、ピストン本体1の頂部10の外表面10aおよび内表面10bと、スカート部11の外表面11aおよび内表面11bとにレーザーピーニング処理を施すことによって改質層2を形成した例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、ピストン本体1の頂部10の外表面10aおよび内表面10bと、スカート部11の外表面11aおよび内表面11bとの全てにレーザーピーニング処理を施さなくてもよく、任意のいずれかにのみ、レーザーピーニング処理を施すことによって改質層2を形成してもよい。この際、特に大きな応力(負荷)が加えられる頂部10の内表面10bおよびスカート部11の内表面11bの上側領域(図1〜図3における一点鎖線の領域)に、少なくともレーザーピーニング処理を施すのが好ましい。また、ピストン本体1の全面に亘ってレーザーピーニング処理を施してもよい。さらに、上記した強度補強部分の表面としての、ピストン本体1の頂部10の外表面10aおよび内表面10bと、スカート部11の外表面11aおよび内表面11bと以外のうち、補強する必要のある所定の部分の表面にレーザーピーニング処理を施してもよい。また、レーザーピーニング処理を鋳肌面および切削面の両方に施す例を示したが、本発明はこれに限られず、レーザーピーニング処理を鋳肌面または切削面のいずれか一方にのみに施してもよい。
また、上記実施形態では、レーザーピーニング処理を施す際に、水中にピストン本体1を配置した状態で、ピストン本体1の強度補強部分にレーザー光を照射した例について示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、レーザーピーニング処理を施す際に、ピストン本体の強度補強部分の表面に液体の膜が形成されていればよい。たとえば、水中ではなく、油の中にピストン本体を配置した状態でレーザーピーニング処理を施してもよいし、ピストン本体の強度補強部分の表面に液体(水や油)を連続的に流しながら、レーザーピーニング処理を施してもよい。
また、上記実施形態では、ピストン本体1がAl−12Si−Cu−Ni合金(アルミニウム合金)からなる例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、アルミニウム合金として、たとえば、Al−12Si−Cu−Ni合金以外のAl−Cu−Ni−Mg合金などのアルミニウム合金を用いてもよい。また、ピストン本体がA1000系の純アルミニウムからなるように構成してもよい。
また、上記実施形態では、レーザーピーニング処理の照射条件として、レーザー光のパルス幅を約8ナノ秒の超短パルスに設定するとともに、レーザー光のパワー密度を約2.5GW/cm以上約10GW/cm以下の高ピーク出力密度に設定した。また、レーザー光のスポット径を約400μm以上約800μm以下にするとともに、ガバレージを複数回にした例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、プラズマ酸化による酸化アルミニウムからなる表面を有し、かつ、圧縮残留応力が付与された改質層が形成可能であれば、レーザーピーニング処理におけるレーザー光の照射条件を変更してもよい。たとえば、レーザー光のパルス幅は、約100ナノ秒以下の超短パルスであれば、約8ナノ秒以外のパルス幅であってもよい。
1 ピストン本体
1a 強度補強部分の表面
2 改質層
10 頂部(強度補強部分)
10a (頂部の)外表面((強度補強部分の)表面)
10b (頂部の)内表面((強度補強部分の)表面)
11 スカート部(強度補強部分)
11a (スカート部の)外表面((強度補強部分の)表面)
11b (スカート部の)内表面((強度補強部分の)表面)
100 ピストン

Claims (9)

  1. 内燃機関に用いられ、アルミニウムまたはアルミニウム合金からなるピストン本体と、
    前記ピストン本体の強度補強部分の表面に形成され、プラズマ酸化による酸化アルミニウムからなる表面を有し、かつ、圧縮残留応力が付与された改質層とを備えた、ピストン。
  2. 前記改質層は、前記ピストン本体の母材の硬度よりも大きい硬度を有する、請求項1に記載のピストン。
  3. 前記ピストン本体は、アルミニウムまたはアルミニウム合金の鋳物により形成されており、
    前記改質層は、鋳物からなる前記ピストン本体の強度補強部分の鋳肌面が溶融されて再凝固されることにより形成されている、請求項1または2に記載のピストン。
  4. 前記改質層は、レーザーピーニング処理により形成されている、請求項1〜3のいずれか1項に記載のピストン。
  5. 前記ピストン本体の強度補強部分の表面は、少なくとも前記ピストン本体の頂部の内表面を含む、請求項1〜4のいずれか1項に記載のピストン。
  6. 内燃機関に用いられる、アルミニウムまたはアルミニウム合金からなるピストン本体を準備する工程と、
    前記ピストン本体の強度補強部分の表面に対して、パルス幅が100ナノ秒以下の超短パルス高ピーク出力密度のレーザー光を所定の照射条件で照射することによりプラズマを発生させて、発生したプラズマの圧力により前記ピストン本体の強度補強部分にレーザーピーニング処理を施すことによって、前記ピストン本体の強度補強部分の表面に、プラズマ酸化による酸化アルミニウムからなる表面を有するとともに、圧縮残留応力が付与された改質層を形成する工程とを備えた、ピストンの製造方法。
  7. 前記改質層を形成する工程は、前記ピストン本体の強度補強部分の表面に液体の膜が配置された状態で、前記ピストン本体の強度補強部分にレーザーピーニング処理を施すことによって、前記ピストン本体の強度補強部分の表面に、プラズマ酸化による前記酸化アルミニウムからなる表面を有するとともに、圧縮残留応力が付与された前記改質層を形成する工程を含む、請求項6に記載のピストンの製造方法。
  8. 前記改質層は、前記ピストン本体の母材の硬度よりも大きい硬度を有する、請求項6または7に記載のピストンの製造方法。
  9. 前記ピストン本体は、アルミニウムまたはアルミニウム合金の鋳物により形成されており、
    前記改質層を形成する工程は、前記ピストン本体の強度補強部分にレーザーピーニング処理を施すことによって、鋳物からなる前記ピストン本体の強度補強部分の鋳肌面を溶融して再凝固させるとともに、プラズマ酸化による前記酸化アルミニウムからなる前記表面を有し、かつ、圧縮残留応力が付与された前記改質層を形成する工程を含む、請求項6〜8のいずれか1項に記載のピストンの製造方法。
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