JP6328410B2 - アルミ合金部材の製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、アルミ合金部材の製造方法に関する。
従来、アルミニウム合金からなるアルミ合金部材本体を備えるアルミ合金部材およびそのアルミ合金部材の製造方法が知られている(たとえば、特許文献1参照)。
上記特許文献1には、アルミニウム−珪素合金からなるピストン本体(アルミ合金部材本体)の表面に、強化元素や光触媒元素を含む噴射紛体を噴射することによって、ショットピーニング処理が行われた内燃機関用ピストン(アルミ合金部材)が開示されている。この内燃機関用ピストンでは、ショットピーニング処理が行われることによって、ピストン本体(アルミ合金部材本体)の表面付近のアルミニウム−珪素合金が改質されて、ある程度強度が向上される。
ここで、アルミ合金部材を軽量化するためには、アルミ合金部材のさらなる薄肉化が必要となる。
特開2008−51091号公報
しかしながら、上記特許文献1に記載された内燃機関用ピストンなどのアルミ合金部材で行われたショットピーニング処理では、アルミ合金部材本体の表面に加えられる圧力が弱いことから、アルミ合金部材本体の表面付近のアルミニウム−珪素合金の改質層が浅いため、アルミ合金部材の軽量化のためにさらなる薄肉化を行った場合に、アルミ合金部材に要求される疲労強度を確保するのが困難である。さらに、高温環境下に配置されるようなアルミ合金部材では、高温環境下での疲労強度を確保するのがさらに困難であるという問題点がある。
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、この発明の1つの目的は、高温環境下で使用されるようなアルミ合金部材の軽量化のためにさらなる薄肉化を行った場合にも、高温環境下での疲労強度を十分に確保することが可能なアルミ合金部材の製造方法を提供することである。
上記目的を達成するために本願発明者が鋭意検討した結果、上記課題を解決するために以下のような構成を見出した
この発明のの局面におけるアルミ合金部材の製造方法は、アルミニウム合金からなるアルミ合金部材本体を準備する工程と、アルミ合金部材本体の強度補強部分の表面に対して、パルス幅が100ナノ秒以下の超短パルス高ピーク出力密度のレーザー光を所定の照射条件で照射することによりプラズマを発生させて、発生したプラズマの圧力によりアルミ合金部材本体の強度補強部分にレーザーピーニング処理を施すことによって、アルミ合金部材本体の強度補強部分の表面に転位密度の増加による加工硬化を生じさせる工程と、レーザーピーニング処理を施した後のアルミ合金部材本体に熱処理を施すことによって、アルミ合金部材本体強度補強部分の表面に、アルミ合金部材本体の構成元素を含む微細析出物が転位に集まるように形成されることによる歪時効硬化を生じさせる工程とを備え、歪時効硬化および加工硬化によって、アルミ合金部材本体の強度補強部分の表面に、アルミ合金部材本体の母材の硬度よりも大きい硬度を有するように改質された改質層を形成する。
この発明のの局面におけるアルミ合金部材の製造方法では、上記のように、アルミ合金部材本体の強度補強部分の表面に、アルミ合金部材本体の構成元素を含む微細析出物が転位に集まるように形成されることによる歪時効硬化および転位密度の増加による加工硬化によって、アルミ合金部材本体の母材の硬度よりも大きい硬度を有するように改質された改質層を形成することによって、硬度が向上した改質層により塑性変形が発生するために必要な応力を大きくすることができるので、高温環境下におけるアルミ合金部材の機械的強度を十分に向上させることができる。これにより、高温環境下で使用されるようなアルミ合金部材に対してさらなる薄肉化を行った場合にも、高温環境下での疲労強度を十分に確保することができる。また、アルミ合金部材を薄肉化して軽量化することができるので、アルミ合金部材が用いられる機械製品を軽量化することができる。また、レーザーピーニング処理を用いることによって、照射位置などの照射条件を制御してレーザー光を照射することができるので、粒子がランダムに表面に噴射されるショットピーニング処理と比べて、アルミ合金部材本体の強度補強部分の表面により均一な改質層を形成することができる。
上記の局面におけるアルミ合金部材の製造方法において、好ましくは、熱処理を施す工程は、レーザーピーニング処理後のアルミ合金部材本体を、50時間以上再結晶終了温度以下の温度に加熱することによって熱処理を施す工程を含む。
上記の局面におけるアルミ合金部材の製造方法において、好ましくは、アルミ合金部材本体の母材の転位密度よりも大きな転位密度を有するように改質層を形成する。このように構成すれば、改質層において互いの転位同士が変形の際の抵抗となると考えられるので、塑性変形させるために必要な応力を大きくすることができる。また、微細析出物により多くの転移の移動が抑制されると考えられるので、これによっても、塑性変形させるために必要な応力を大きくすることができる。これらにより、アルミ合金部材の機械的強度をより向上させることができるので、高温環境下で使用されるようなアルミ合金部材に対してさらなる薄肉化を行った場合にも、容易に、高温環境下での疲労強度を向上させることができる。
上記の局面におけるアルミ合金部材の製造方法において、好ましくは、アルミ合金部材本体は、アルミニウムと、銅およびニッケルの少なくともいずれか一方とを含むアルミニウム合金からなり、微細析出物は、銅またはニッケルを含む微細析出物を含む。このように構成すれば、銅またはニッケルを含む微細析出物により、改質層の機械的強度を確実に向上させることができる。また、析出物が微細であることにより、改質層における転位の移動がより抑制されると考えられるので、これによっても、塑性変形が発生するために必要な応力を大きくすることができる。これらにより、アルミ合金部材の機械的強度をより向上させることができる。
上記の局面におけるアルミ合金部材の製造方法において、好ましくは、レーザーピーニング処理を施す工程は、アルミ合金部材本体の強度補強部分の表面に液体の膜が配置された状態で、アルミ合金部材本体の強度補強部分にレーザーピーニング処理を施す工程を含む。このように構成すれば、アルミ合金部材本体の強度補強部分の表面に配置された液体の膜によって、発生したプラズマによる衝撃波が拡散するのを抑制することができるので、アルミ合金部材本体の強度補強部分の表面からアルミ合金部材本体の内部に向かって衝撃波を集中して伝播させることができる。これにより、アルミ合金部材本体の強度補強部分の深い領域にまで、改質層を形成することができるので、アルミ合金部材の薄肉化(軽量化)を行った場合にも、容易に、高温環境下での疲労強度を確保することができる。
なお、本出願では、上記第1の局面によるアルミ合金部材とは別に、以下のような構成も考えられる。
本発明によれば、上記のように、高温環境下で使用されるようなアルミ合金部材の軽量化のためにさらなる薄肉化を行った場合にも、高温環境下での疲労強度を十分に確保することが可能なアルミ合金部材およびアルミ合金部材の製造方法を提供することができる。
本発明の一実施形態によるアルミ合金部材を示した断面図である。 本発明の一実施形態によるアルミ合金部材の改質層および母材を示した断面図である。 本発明の一実施形態によるアルミ合金部材の改質層を示した拡大断面図である。 本発明の一実施形態によるアルミ合金部材の製造方法を説明するための模式図である。 本発明の効果を確認するために行ったTEM像の観察結果および残留応力を一覧で示した図である。 本発明の効果を確認するために行ったTEM像のうち、切断片1の明視野像である。 本発明の効果を確認するために行ったTEM像のうち、切断片1の暗視野像である。 本発明の効果を確認するために行ったTEM像のうち、切断片1の暗視野拡大像である。 本発明の効果を確認するために行った切断片1のEDSの測定結果を示した図である。 本発明の効果を確認するために行ったTEM像のうち、切断片2の明視野像である。 本発明の効果を確認するために行ったTEM像のうち、切断片2の暗視野像である。 本発明の効果を確認するために行ったTEM像のうち、切断片2の明視野拡大像である。 本発明の効果を確認するために行った切断片2のEDSの測定結果を示した図である。 本発明の効果を確認するために行ったTEM像のうち、切断片3の明視野像である。 本発明の効果を確認するために行ったTEM像のうち、切断片3の明視野拡大像である。 本発明の効果を確認するために行ったTEM像のうち、切断片3の暗視野拡大像である。 本発明の効果を確認するために行った切断片3のEDSの測定結果を示した図である。 本発明の効果を確認するために行ったTEM像のうち、切断片4の明視野像である。 本発明の効果を確認するために行ったTEM像のうち、切断片4の暗視野像である。 本発明の効果を確認するために行った切断片4のEDSの測定結果を示した図である。 本発明の効果を確認するために行った硬度測定の結果を示した図である。
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
図1〜図3を参照して、本発明の一実施形態によるアルミ合金部材100の構成について説明する。
本発明の一実施形態によるアルミ合金部材100は、使用時に約250℃の高温環境下に配置される部品である。このアルミ合金部材100を構成するアルミ合金部材本体1は、微量元素としてMgやTiなどが含まれたAl−12Si−Cu−Ni合金(アルミニウム合金)の鋳物により形成されている。また、鋳物からなるアルミ合金部材本体1の表面1aは鋳肌面であり、微細な欠陥を有する湯境や鋳巣などが形成されている。なお、Al−12Si−Cu−Ni合金の再結晶終了温度(再結晶が終了して、結晶粒の成長が行われる温度)は、400℃程度である。
また、図1に示すように、アルミ合金部材本体1のうち、強度補強部分10ではアルミ合金部材100の軽量化のために他の部分に比べて薄肉化されている。このため、強度補強部分10では、高温環境下において、アルミ合金部材本体1の他の部分と同等またはそれ以上の十分な疲労強度を確保する必要がある。また、アルミ合金部材本体1の図示しない摺動部分(強度補強部分)においても、摺動に対する耐久性を向上させるために、高温環境下において、十分な疲労強度を確保する必要がある。
また、アルミ合金部材本体1の強度補強部分10の表面10aには、後述するレーザーピーニング処理が施されることにより、図2に示すように、改質層2が形成されている。この改質層2は、改質層2以外の部分(母材3)よりも大きな硬度を有するとともに、表面2aからの厚み(深さ)方向(Z方向)に約500μm以上の厚み(深さ)tを有している。なお、改質層2が形成されていない部分(強度補強部分10の表面10a以外の部分や、強度補強部分10の改質層2よりも内側の部分)には、母材3が位置している。
また、改質層2は、図3に示すように、表面2aおよびその近傍に形成された酸化アルミ膜2bと、酸化アルミ膜2bの内側の部分に形成された内部層2cとから構成されている。酸化アルミ膜2bは、Al−12Si−Cu−Ni合金(アルミ合金部材本体1の母材3)よりも硬度の高い白色の酸化アルミニウムからなり、レーザーピーニング処理におけるプラズマ酸化により形成されている。なお、図2および図3では、理解容易のため、改質層2と母材3との境界、および、酸化アルミ膜2bと内部層2cとの境界をそれぞれ明確に図示しているものの、実際には、図2および図3のようには明確でない。また、酸化アルミ膜2bは、本発明の「最表層」の一例である。
また、改質層2は、レーザーピーニング処理において発生したプラズマの体積膨張が圧力(衝撃波)となり、アルミ合金部材本体1の強度補強部分10の表面10aおよび強度補強部分10の内部(内部層2c)が塑性変形されることによって形成されている。この結果、酸化アルミ膜2bだけでなく内部層2cにも、プラズマの圧力による圧縮残留応力が付与されている。また、常温時だけでなく再結晶終了温度(約400℃)以下の約250℃の高温環境下であっても、改質層2の転位密度が母材3の転位密度よりも大きくなるように、改質層2には多くの転位が形成されている。この結果、転位密度の増加による加工硬化により、塑性変形が発生するために必要な応力が大きくなる。なお、転位密度の詳細については実施例において後述する。
ここで、本実施形態では、レーザーピーニング処理が行われたアルミ合金部材100が、アルミ合金部材100の使用環境である再結晶終了温度(約400℃)以下の約250℃の高温環境下に50時間以上配置されて加熱された際に、改質層2では、AlおよびCuからなる金属間化合物や中間相と、AlおよびNiからなる金属間化合物や中間相とを含む複数の微細析出物が、改質層2内の転位に集まるように形成される。この転位に集まった微細析出物により、改質層2における転位の移動が阻害されることによって、改質層の硬度が向上し、その結果、塑性変形が発生するために必要な応力が大きくなる。なお、微細析出物の大きさは、約0.05μm以上約10μm以下である。なお、歪時効硬化の詳細については実施例において後述する。
また、常温時だけでなく再結晶終了温度(約400℃)以下の約250℃の高温環境下であっても、改質層2は、レーザーピーニング処理を施さないAl−12Si−Cu−Ni合金(アルミ合金部材本体1の母材3)の硬度よりも大きい硬度を有している。なお、硬度の詳細については実施例において後述する。また、鋳物からなるアルミ合金部材本体1の強度補強部分10の表面10a(鋳肌面)がプラズマにより瞬間的に約5000℃以上の超高温にされることにより、改質層2の表面2aは、鋳肌面が一度溶融されて再凝固されている。
また、レーザー光が照射されたアルミ合金部材本体1の強度補強部分10の表面10aが衝撃波により塑性変形して若干窪むことによって、改質層2の表面2aには、微細な凹凸が形成されている。この微細な凹凸に内燃機関のオイルが入り込むことにより、油膜が改質層2の表面2aに保持されやすくなる。これにより、改質層2の表面2aにおける油膜保持性が向上し、その結果、摺動部分(強度補強部分)における摺動抵抗を低減することが可能である。
上記実施形態では、以下のような効果を得ることができる。
本実施形態では、上記のように、アルミ合金部材本体1の強度補強部分10の表面10aに、AlおよびCuからなる金属間化合物や中間相を含む複数の微細析出物が転位に集まるように形成されたことによる歪時効硬化および転位密度の増加による加工硬化によりアルミ合金部材本体1の母材3の硬度よりも大きい硬度を有するように改質された改質層2を設ける。これにより、硬度が向上した改質層2により塑性変形が発生するために必要な応力を大きくすることができるので、再結晶終了温度(約400℃)以下の約250℃の高温環境下におけるアルミ合金部材100の機械的強度を十分に向上させることができる。この結果、高温環境下で使用されるアルミ合金部材100に対してさらなる薄肉化を行った場合にも、アルミ合金部材100に要求される高温環境下での疲労強度を十分に確保することができる。また、アルミ合金部材100を薄肉化して軽量化することができるので、アルミ合金部材100が用いられる製品を軽量化することができる。
また、本実施形態では、改質層2がアルミ合金部材本体1の母材3の転位密度よりも大きな転位密度を有することによって、改質層2において互いの転位同士が変形の際の抵抗となると考えられるので、塑性変形させるために必要な応力を大きくすることができる。また、AlおよびCuからなる金属間化合物や中間相を含む複数の微細析出物により多くの転移の移動が抑制されると考えられるので、これによっても、塑性変形させるために必要な応力を大きくすることができる。これらにより、アルミ合金部材100の機械的強度をより向上させることができるので、高温環境下で使用されるアルミ合金部材100に対してさらなる薄肉化を行った場合にも、容易に、アルミ合金部材100に要求される高温環境下での疲労強度を向上させることができる。
また、本実施形態では、改質層2の酸化アルミ膜2bのみならず内部層2cも、アルミ合金部材本体1の母材3の硬度よりも大きな硬度を有するように形成することによって、改質層2の酸化アルミ膜2bのみならず内部層2cにおいても、塑性変形が発生するために必要な応力を大きくすることができるので、アルミ合金部材100の機械的強度をより向上させることができる。
また、本実施形態では、アルミ合金部材本体1をAl−12Si−Cu−Ni合金により形成するとともに、改質層2において、AlおよびCuからなる金属間化合物や中間相を含む複数の微細析出物が析出されるように構成する。これにより、Cuを含む微細析出物により、改質層2の機械的強度を確実に向上させることができる。また、微細析出物が微細であることにより、改質層2における転位の移動がより抑制されると考えられるので、これによっても、塑性変形が発生するために必要な応力を大きくすることができる。これらにより、アルミ合金部材100の機械的強度をより向上させることができる。
また、本実施形態では、改質層2をレーザーピーニング処理後に、再結晶終了温度(約400℃)以下の約250℃の高温環境下に50時間以上配置して加熱することによって、容易に、アルミ合金部材本体1の強度補強部分10の表面10aに、アルミ合金部材本体1の母材3の硬度よりも大きい硬度を有するように改質された改質層2を形成することができる。また、レーザーピーニング処理を用いることによって、照射位置などの照射条件を制御してレーザー光を照射することができるので、粒子がランダムに表面に噴射されるショットピーニング処理と比べて、アルミ合金部材本体1の強度補強部分10の表面10aにより均一な改質層2を形成することができる。
次に、図1〜図4を参照して、本実施形態によるアルミ合金部材100の製造方法(表面加工方法)について説明する。
まず、溶融したAl−12Si−Cu−Ni合金(アルミニウム合金)を鋳型に流し込むことによって、表面加工が行われていない状態のアルミ合金部材本体1(図1参照)を鋳造して、鋳型から取り出す。この際、アルミ合金部材本体1の鋳肌面からなる表面1a(図1参照)には、微細な欠陥を有する湯境や鋳巣などが形成されている。そして、アルミ合金部材本体1の強度補強部分10の表面10aにレーザーピーニング処理を施す。
具体的には、図4に示すように、まず、水中にアルミ合金部材本体1を配置する。そして、Q−switch YAGパルスレーザー発生装置(Thales Laser製 SAGA)を用いて、アルミ合金部材本体1の強度補強部分10に約530nmの波長を有するレーザー光を照射する。ここで、レーザー光の照射条件として、レーザー光のパルス幅を約8ナノ秒の超短パルスに設定するとともに、レーザー光のパワー密度(1平方センチメートルあたりに照射されるレーザー光の出力)を約2.5GW/cm以上約10GW/cm以下の高ピーク出力密度に設定する。また、レーザー光のスポット径(レーザー光が照射される領域の径)が約400μm以上約800μm以下になるように、レンズ101を調整する。
これにより、レーザー光が照射された水中におけるアルミ合金部材本体1の強度補強部分10の表面10aにおいて、Al−12Si−Cu−Ni合金(アルミ合金部材本体1の母材3)が気化および電離してプラズマが発生する。このプラズマにより、レーザー光が照射された水中のアルミ合金部材本体1の強度補強部分10の表面10aは、約5000℃以上の超高温になる。しかしながら、この昇温は局所的、かつ、瞬間的であるとともに、周辺に急速に放熱されて冷却されるため、昇温は、レーザー光が照射された強度補強部分10の表面10aに限定される。
また、発生したプラズマにより、レーザー光が照射された強度補強部分10の表面10aにおいて急激な体積の膨張が生じる。この際、強度補強部分10の表面10aに配置された水は急には移動できないので、発生したプラズマによる衝撃波が強度補強部分10から拡散するのを抑制される。これにより、プラズマの圧力は数万気圧になって強度補強部分10の表面10aからアルミ合金部材本体1の内部の深い領域にまで衝撃波が集中して伝播する。この結果、衝撃波により塑性変形されて、レーザー光が照射されたアルミ合金部材本体1の強度補強部分10に圧縮残留応力が付与されるとともに、母材3の転位密度よりも大きな転位密度になるように、多くの転位が形成される。これにより、レーザー光が照射されたアルミ合金部材本体1の強度補強部分10の表面10aに、図2に示すような改質層2が容易に形成される。なお、改質層2は、約500μm以上の厚み(深さ)tになるように形成される。
また、アルミ合金部材本体1の強度補強部分10の表面10aにプラズマを発生させた際に、陽イオン化したAlが酸素と結びつくプラズマ酸化によって、図3に示すように、改質層2の表面2aに酸化アルミ膜2bが形成される。さらに、強度補強部分10の表面10a(鋳肌面)は、プラズマにより瞬間的に約5000℃以上の超高温になることによって、一度溶融され、急冷されて再凝固する。これにより、鋳肌面の湯境や鋳巣などに存在する微細な欠陥が修復された改質層2の表面2aが形成される。
そして、アルミ合金部材本体1の強度補強部分10の表面10aの全体にレーザー光を照射する。なお、レーザー光の照射条件として、ガバレージ(走査回数)が複数回(たとえば、3回や7回)になるようにレーザー光を照射する。これにより、改質層2の表面2aに、微細な凹凸が形成される。この結果、アルミ合金部材本体1の強度補強部分10の表面10aへの表面加工が終了する。
その後、アルミ合金部材100を再結晶終了温度(約400℃)以下の約250℃の高温環境下に所定時間配置することによって、改質層2において、AlおよびCuからなる金属間化合物や中間相と、AlおよびNiからなる金属間化合物や中間相とを含む複数の微細析出物が、改質層2内の転位に集まるように形成される。これにより、改質層2(酸化アルミ膜2bおよび内部層2c)は、歪時効硬化によりアルミ合金部材本体1の母材3の硬度よりも大きい硬度を有するように形成される。また、改質層2の転位密度は、高温環境下に配置された場合であっても、母材3の転位密度よりも大きな転位密度を維持する。なお、微細析出物は、約0.05μm以上約10μm以下の大きさになるように形成される。このようにして、図1に示すアルミ合金部材100が製造される。
[実施例]
次に、図5〜図22を参照して、上記実施形態の効果を確認するために行った確認実験について説明する。以下、確認実験として行った母材観察、元素分析および転位密度観察と、残留応力測定と、硬度分布測定とについて説明する。
(母材観察、元素分析および転位密度観察)
まず、母材観察、元素分析および転位密度観察について説明する。この母材観察、元素分析および転位密度観察では、Al−12Si−Cu−Ni合金(アルミニウム合金)からなるアルミ合金部材本体に、上記実施形態におけるアルミ合金部材本体1の強度補強部分10の表面10aへの表面加工と同様の表面加工を行った。具体的には、アルミ合金部材本体の強度補強部分に530nmの波長を有するレーザー光を照射した。ここで、レーザー光の照射条件として、レーザー光のパルス幅を8ナノ秒の超短パルスに設定するとともに、レーザー光のパワー密度を10GW/cmの高ピーク出力密度に設定した。また、レーザー光のスポット径を400μmにした。さらに、ガバレージが7回になるようにレーザー光を照射した。これにより、一対のアルミ合金部材を作製した。
そして、1つのアルミ合金部材を、250℃の温度条件下で100時間加熱処理を行うことによって、高温環境下に配置した。そして、熱処理を行わないアルミ合金部材のうち、レーザーピーニング処理により改質層が形成された部分、および、改質層が形成されていない部分を切断して、研磨およびエッチングを行うことにより、切断片1および2をそれぞれ作成した。また、熱処理を行ったアルミ合金部材のうち、レーザーピーニング処理により改質層が形成された部分、および、改質層が形成されていない部分を切断して、研磨およびエッチングを行うことにより、切断片3および4をそれぞれ作成した。なお、観察を容易に行うため、切断片1〜4を埋め込み樹脂に埋め込んだ状態で観察を行った。
そして、形成した各々の切断片を、電子顕微鏡(Transmission Electron Microscope、TEM)を用いて観察した。そして、切断片1〜4の母材観察と転位密度観察とをTEM像を観察することにより行った。また、切断片1〜4の所定位置における元素組成をEDS(Energy Dispersive X−ray Spectrometry)を用いて測定した。その測定結果を図5にまとめて示す。さらに、レーザー変位計を用いて、切断片1〜4の切断面における凹凸具合を観察した。
図6〜図9に示すように、レーザーピーニング処理が施された一方、熱処理(250℃で100時間)が行われていない切断片1において、図6に示す明視野像では、金属シリコンの単結晶(図6および図7の左側中央部)や、AlおよびCuの析出物(図9に示すEDSを測定した位置における析出物)が観察されたものの、微小な黒点(微細析出物)は観察されなかった。また、図7に示す暗視野像および図8に示す暗視野拡大像では、多くの転位が観察された。具体的には、1010cm−2以上1011cm−2以下の転位密度で転位が観察された。また、転位のセル構造(転位密度が高い位置と低い位置とが分かれた構造)が確認されるとともに、内部歪に起因して画像が歪んで観察された。これにより切断片1には、多くの結晶歪エネルギーが蓄積されていると考えられる。なお、切断片1では凹凸は確認されなかった。
また、図10〜図13に示すように、レーザーピーニング処理、および、熱処理の双方が行われていない切断片2において、図10に示す明視野像では、黒点(微細析出物)は確認されなかった。また、図11に示す暗視野像では、転位密度が10cm−2程度の転位が観察された。つまり、レーザーピーニング処理が施されていない切断片2の転位密度は、レーザーピーニング処理が施された切断片1の転位密度の1/100以下であった。また、図12に示す明視野拡大像では、セル状の凝固組織が多く検出されるとともに、単結晶や析出物が確認された。また、TEM像では、内部歪に起因する画像の歪みは観察されず、結晶歪エネルギーの蓄積が小さいと考えられる。さらに、図13に示すEDSの結果としては、Alの他にCuとNiとが観察された。これは、切断片作成の際の機械加工において、Al−12Si−Cu−Ni合金に基づく多結晶組織が形成されたからであると考えられる。なお、切断片2では凹凸は確認されなかった。
ここで、図14〜図17に示すように、レーザーピーニング処理および熱処理の双方が行われた切断片3において、図14に示す明視野像では、棒状の析出物や微小な黒点(微細析出物)が多数確認された。また、図15に示す明視野拡大像では、転位線2dの上に微細析出物2eが位置している(析出している)ことが観察された。なお、微細析出物2eの大きさは、0.05μm程度である。また、図16に示す暗視野拡大像では、熱処理が行われていない切断片1の転位密度よりは小さいものの、転位密度が1010cm−2以上の多くの転位が観察された。また、TEM像では、内部歪に起因する画像の歪みが若干観察され、この結果、結晶歪エネルギーは残っているものの小さいと考えられる。また、図17に示す微細析出物2eに対して測定を行ったEDSの結果としては、Alの他にCuが観察された。なお、切断片3では凹凸が確認された。
また、図18〜図20に示すように、レーザーピーニング処理が施されていない一方、熱処理が行われた切断片4において、図18に示す明視野像では、アルミニウムの単結晶や金属間化合物の析出物などが確認された。また、図19に示す暗視野像では、切断片2よりも小さな転位密度(転位密度が10cm−2以下)の転位が観察された。つまり、切断片4では、熱処理により転位が多く開放されたと考えられる。また、図20に示すEDSの結果としては、Alの他にCu、Ni、SiおよびFeが観察された。これらにより、切断片4では、多くの析出物が析出した過時効の状態になっていると考えられる。なお、切断片4では凹凸は確認されなかった。
(残留応力測定)
次に、残留応力測定について説明する。この残留応力測定では、上記のレーザーピーニング処理が施された切断片1および3において、表面からの深さ位置(μm)における残留応力(MPa)を、X線回折測定装置を用いて求めた。なお、残留応力が負の値である場合には、圧縮応力が残留しており、残留応力が正の値である場合には、引張応力が残留していることを示す。
図5に示した残留応力測定の結果としては、熱処理が行われていない切断片1においては、残留応力は−240MPa以下になり、レーザーピーニング処理に基づく大きな圧縮残留応力が形成されていた。一方、熱処理が行われた切断片3においては、−60MPa以下のかなり高い残留応力が残存した。これにより、レーザーピーニング処理を行った後に熱処理を行ったとしても、圧縮残留応力が一部残存して、硬度の低下がある程度抑制されることが判明した。
(硬度測定)
次に、硬度測定について説明する。この硬度測定では、上記の切断片1〜4の複数の深さ位置において、20gfの荷重で微小硬さ測定用の圧子を押しあて、形成されたへこみの表面積からビッカース硬さを求めた。なお、レーザーピーニング処理が施されていない切断片2および4では、硬度は深さ位置に拘わらず一定であると考えられるので、表層のみビッカース硬さを求めた。
図21に示したビッカース硬さの結果としては、熱処理が行われていない切断片1および2では、表面から少なくとも500μmの深さ位置までの範囲において、レーザーピーニング処理が施された切断片1のビッカース硬度は、レーザーピーニング処理が施されていない切断片2のビッカース硬度よりも大きくなった。これにより、レーザーピーニング処理を施すことにより、表面から少なくとも500μmの深さ位置までの範囲において、レーザーピーニング処理に因る改質層が形成され、ビッカース硬度を向上させることが可能であることが判明した。
また、熱処理が行われた切断片3および4では、表面から少なくとも500μmの深さ位置までの範囲において、レーザーピーニング処理が施された切断片3のビッカース硬度は、レーザーピーニング処理が施されていない切断片4のビッカース硬度よりも大きくなった。これにより、レーザーピーニング処理を施すことにより、高温環境下においても、表面から少なくとも500μmの深さ位置までの範囲において、レーザーピーニング処理に因る改質層が残存しており、ビッカース硬度を向上させることが可能であることが判明した。
また、レーザーピーニング処理が施された切断片1および3では、熱処理が行われた切断片3のビッカース硬度は、熱処理が行われていない切断片1のビッカース硬度よりも小さくなった。また、レーザーピーニング処理が施されていない切断片2および4では、熱処理が行われた切断片4のビッカース硬度は、熱処理が行われていない切断片2のビッカース硬度よりも小さくなった。
また、表面から1000μmの深さ位置よりも深い深さ位置においては、熱処理が行われていない切断片1のビッカース硬度と切断片2のビッカース硬度とは略等しくなるとともに、熱処理が行われた切断片3のビッカース硬度と切断片4のビッカース硬度とは略等しくなった。これにより、表面から1000μmの深さ位置よりも深い深さ位置においては、レーザーピーニング処理に因る改質層はほとんど形成されていないと考えられる。
(考察)
これらの実験結果から、次のことが考えられる。レーザーピーニング処理が行われた場合で、かつ、熱処理が行われる前の改質層(切断片1)では、レーザーピーニング処理により、改質層には、加えられた衝撃波に基づく大きな圧縮残留応力および多くの転位が形成されて硬度が向上されているだけでなく、結晶歪エネルギーが多く蓄積されている。これにより、転位密度の増加による加工硬化によって、塑性変形が発生するために必要な応力が増大されていると考えられる。また、熱処理が行われる前の改質層では、Cuの過飽和固溶体になっているものの、析出はあまり行われていない。
そして、レーザーピーニング処理が行われた状態で、再結晶終了温度(約400℃)以下の250℃の高温環境下に100時間配置されて加熱された場合には、時効硬化の回復過程において、改質層にAlおよびCuの微細析出物が析出される。ここで、レーザーピーニング処理の際に蓄積された結晶歪エネルギーにより、改質層において、微細析出物が転位線上に多く析出したり、微細析出物と転位とが互いに相互作用を及ぼし合ったりする歪時効硬化が発生する。この結果、高温環境下に配置された後の改質層(切断片3)では、さらなる回復による過時効に起因して粗大な析出物が析出するのが抑制されると考えられる。さらに、転位の開放が行われる回復過程であるものの、微細析出物により転位の移動(開放)が抑制されて、転位の開放に起因する転位密度の減少も抑制され、圧縮残留応力の開放も抑制されると考えられる。これらの結果、改質層において硬度の低下が抑制されたと考えられる。なお、切断片3において観察された凹凸は、多数析出した微細析出物が凹凸として観察されたと考えられる。
一方、レーザーピーニング処理が行われていない場合(切断片2の場合)には、転位密度も低く、結晶歪エネルギーも蓄積されていない。このため、熱処理が行われた後の回復過程において、粗大な析出物が析出する過時効の状態になると考えられる。このため、高温環境下に配置された後(切断片4の場合)では、レーザーピーニング処理が行われた場合(切断片3の場合)と異なり、転位の開放に起因する転位密度の減少や圧縮残留応力の開放が抑制されずに硬度が低下したと考えられる。
この結果、レーザーピーニング処理を施したアルミ合金部材100を、アルミ合金部材100の使用環境である再結晶終了温度(約400℃)以下の約250℃の高温環境下に約50時間以上配置して加熱することによって、歪時効硬化によりアルミ合金部材本体1の母材3の硬度よりも大きい硬度を有する改質層2を形成することができ、その結果、アルミ合金部材100に要求される高温環境下での疲労強度を十分に確保することができることが確認できた。
なお、レーザーピーニング処理および熱処理の双方が行われた切断片3における微細析出物として、図17に示す微細析出物2eに対して測定を行ったEDSの結果から、AlおよびCuの金属間化合物(たとえば、CuAlやCuAlなど)やAlおよびCuの中間相が考えられる。また、図17に示すEDSにおいて今回は測定されなかったものの、切断片3において析出する可能性のある微細析出物として、AlおよびNiの金属間化合物(たとえば、NiAlやNiAlなど)やAlおよびNiの中間相が考えられる。さらに、微小元素としてAl−12Si−Cu−Ni合金に含まれるTiも微細析出物の構成元素となっていることも考えられる。
なお、今回開示された実施形態および実施例は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態および実施例の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれる。
たとえば、上記実施形態では、レーザーピーニング処理を施す際に、水中にアルミ合金部材本体1を配置した状態で、アルミ合金部材本体1の強度補強部分10にレーザー光を照射した例について示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、レーザーピーニング処理を施す際に、アルミ合金部材本体の強度補強部分の表面に液体の膜が形成されていればよい。たとえば、水中ではなく、油の中にアルミ合金部材本体を配置した状態でレーザーピーニング処理を施してもよいし、アルミ合金部材本体の強度補強部分の表面に液体(水や油)を連続的に流しながら、レーザーピーニング処理を施してもよい。
また、上記実施形態では、アルミ合金部材本体1がAl−12Si−Cu−Ni合金(アルミニウム合金)からなる例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、アルミニウム合金として、たとえば、Al−12Si−Cu−Ni合金以外のAl−Cu−Ni−Mg合金などのアルミニウム合金を用いてもよい。また、本発明では、歪時効硬化を目的としたアルミニウム合金において、さらなる硬度の向上や疲労強度の向上が見込まれる。
また、上記実施形態では、鋳物からなるアルミ合金部材本体1の強度補強部分10の表面10a(鋳肌面)にレーザーピーニング処理を施す例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、レーザーピーニング処理を施す表面は鋳肌面に限られず、たとえば、切削などの加工処理を施した加工処理後の表面にレーザーピーニング処理を施しても、鋳肌面に施した場合と同様の効果(硬度の向上に加えて欠陥の除去など)を得ることが可能である。
また、上記実施形態では、レーザーピーニング処理の照射条件として、レーザー光のパルス幅を約8ナノ秒の超短パルスに設定するとともに、レーザー光のパワー密度を約2.5GW/cm2以上約10GW/cm2以下の高ピーク出力密度に設定した。また、レーザー光のスポット径を約400μm以上約800μm以下にするとともに、ガバレージを複数回にした例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、歪時効硬化によりアルミ合金部材本体の母材の硬度よりも大きい硬度を有するように改質された改質層が形成可能であれば、レーザーピーニング処理におけるレーザー光の照射条件を変更してもよい。たとえば、レーザー光のパルス幅は、約100ナノ秒以下の超短パルスであれば、約8ナノ秒以外のパルス幅であってもよい。
なお、本発明によるアルミ合金部材は、高温環境下に配置されることにより歪時効硬化が行われると考えられるので、高温環境下(約250℃)に配置されるアルミ合金部材に適用するのが好ましい。たとえば、アルミニウム合金からなる電気モータの回転軸などに本発明を適用してもよいし、アルミニウム合金からなるシリンダや、コンロッド、ピストンなどの内燃機関の部品に本発明を適用してもよい。また、常温環境下に配置されるアルミ合金部材に対しては、レーザーピーニング処理後に、上記実施例と同様の熱処理を行うことによって、硬度が向上したアルミ合金部材を安定的に得ることも可能である。
また、上記実施形態では、レーザーピーニング処理が行われたアルミ合金部材100を、アルミ合金部材100の使用環境である再結晶終了温度(約400℃)以下の約250℃の高温環境下に50時間以上配置して加熱した場合を示したが、本発明では、再結晶終了温度(約400℃)以下の温度であれば、約250℃以外(たとえば、約300℃)の高温環境下にアルミ合金部材を配置して加熱してもよい。この場合であっても、約250℃の高温環境下に配置された場合と同様に、転位に集まった微細析出物により、改質層における転位の移動が阻害されることによって、改質層の硬度が向上し、その結果、塑性変形が発生するために必要な応力が大きくなると考えられる。
また、上記実施形態では、AlおよびCuからなる金属間化合物や中間相と、AlおよびNiからなる金属間化合物や中間相とを含む複数の微細析出物が、改質層2内の転位に集まるように形成される例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、微細析出物が、AlおよびCuからなる金属間化合物や中間相、および、AlおよびNiからなる金属間化合物や中間相の少なくともいずれか一方を含んでいればよい。

1 アルミ合金部材本体
2 改質層
2b 酸化アルミ膜(最表層)
2c 内部層
2e 微細析出物
10 強度補強部分
10a (強度補強部分の)表面
100 アルミ合金部材

Claims (5)

  1. アルミニウム合金からなるアルミ合金部材本体を準備する工程と、
    前記アルミ合金部材本体の強度補強部分の表面に対して、パルス幅が100ナノ秒以下の超短パルス高ピーク出力密度のレーザー光を所定の照射条件で照射することによりプラズマを発生させて、発生したプラズマの圧力により前記アルミ合金部材本体の強度補強部分にレーザーピーニング処理を施すことによって、前記アルミ合金部材本体の強度補強部分の表面に転位密度の増加による加工硬化を生じさせる工程と、
    前記レーザーピーニング処理を施した後の前記アルミ合金部材本体に熱処理を施すことによって、前記アルミ合金部材本体の強度補強部分の表面に、前記アルミ合金部材本体の構成元素を含む微細析出物が転位に集まるように形成されることによる歪時効硬化を生じさせる工程とを備え、
    前記歪時効硬化および前記加工硬化によって、前記アルミ合金部材本体の強度補強部分の表面に、前記アルミ合金部材本体の母材の硬度よりも大きい硬度を有するように改質された改質層を形成する、アルミ合金部材の製造方法。
  2. 前記熱処理を施す工程は、前記レーザーピーニング処理後の前記アルミ合金部材本体を、50時間以上再結晶終了温度以下の温度に加熱することによって前記熱処理を施す工程を含む、請求項に記載のアルミ合金部材の製造方法。
  3. 前記アルミ合金部材本体の母材の転位密度よりも大きな転位密度を有するように前記改質層を形成する、請求項またはに記載のアルミ合金部材の製造方法。
  4. 前記アルミ合金部材本体は、アルミニウムと、銅およびニッケルの少なくともいずれか一方とを含む前記アルミニウム合金からなり、
    前記微細析出物は、銅またはニッケルを含む微細析出物を含む、請求項のいずれか1項に記載のアルミ合金部材の製造方法。
  5. 前記レーザーピーニング処理を施す工程は、前記アルミ合金部材本体の強度補強部分の表面に液体の膜が配置された状態で、前記アルミ合金部材本体の強度補強部分に前記レーザーピーニング処理を施す工程を含む、請求項のいずれか1項に記載のアルミ合金部材の製造方法。
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