JP2015086739A - 羽根車とそれを備えた送風機 - Google Patents

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Abstract

【課題】 腐食性ガスを送る環境でも長期間の安定した運転ができる羽根車を提供すること。【解決手段】 送風機の駆動軸に取付けられる羽根車1を、駆動軸に取付けられる主板11とこの主板11に立設された複数の翼12とをプラスチックで一体的に成形された本体10と、翼12の開放端部に固定されるプラスチックで成形された側板20とを備え、本体10は、翼12の開放端部から本体10の軸心と平行に突出する複数の係止ピン16を有し、側板20は、翼12の係止ピン16を挿入して反挿入側で固定する係止穴21を有するとともに、中央部分に向けて係止穴21を設けた部分の厚みが増すように形成する。【選択図】 図3

Description

本願発明は、化学工場や薬品工場などの腐食性ガスの送風機に用いられる羽根車とそれを備えた送風機に関する。
従来、種々の工場などで送風機が用いられており、効率が良く騒音が小さい送風機として翼形羽根を備えた羽根車を用いた送風機が多く用いられている。
この種の羽根車に関する先行技術として、例えば、ディスクとシュラウドとを金属素材で形成し、翼形羽根をプラスチック材で形成し、これらを固着したものがある(例えば、特許文献1参照)。
また、他の先行技術として、翼形状部と翼形形状取付部とに分けることで、それぞれの機能に最適な素材(金属+非金属)及び形状を選択できるようにして、設計の自由度を増すようにしたものもある(例えば、特許文献2参照)。
特開平5−272493号公報 特開平7−103190号公報
ところで、上記したような羽根車が用いられる工場には、化学工場や薬品工場などもある。このような工場では、例えば、無機酸系ガスや有機酸系ガス及びアルカリ系ガスのような腐食性ガスを送風機で排気する必要がある。
しかしながら、上記した先行技術の羽根車をこのような腐食性ガスを送る送風機に用いた場合、数週間から数ヶ月で金属素材が腐食して長時間の安定した運転が難しい。また、羽根車が腐食によって損傷し、腐食性ガスの排気が止まる場合もある。
また、金属素材が腐食によって損傷した場合、送風機を停止させて羽根車を交換しなければならないため、非常に多くの時間と労力及び費用を要し、工場においては生産性を低下させる。
しかも、この種の送風機には長時間運転(例えば、24時間運転)する場合があるとともに、メンテナンス回数も限られる(例えば、半年に1回程度)場合があるため、安定した運転ができることが望まれている。
そこで、本願発明は、腐食性ガスを送る環境でも長時間の安定した運転ができる羽根車と、それを備えた送風機を提供することを目的とする。
上記目的を達成するために、本願発明の羽根車は、送風機の駆動軸に取付けられる羽根車であって、前記駆動軸に取付けられる主板と、前記主板に立設された複数の翼と、をプラスチックで一体的に成形された本体と、前記翼の開放端部に固定されるプラスチックで成形された側板と、を備え、前記本体は、前記翼の開放端部から突出する複数の係止ピンを有し、前記側板は、前記翼の係止ピンを挿入して反挿入側で固定する係止穴を有するとともに、中央部分に向けて前記係止穴を設けた部分の厚みが増すように形成されている。この明細書及び特許請求の範囲の書類中における「プラスチック」は、繊維強化プラスチックなどを含む。
この構成により、羽根車はプラスチックで形成され、耐腐食性の高い羽根車を構成することができる。しかも、本体の係止ピンに固定する側板の厚みが中央部分に向けて増すように形成したので、経年使用によっても安定した固定状態を保つことができ、長時間の安定した運転ができる。
また、前記係止ピンは、翼の開放端部における翼長方向に複数本が設けられ、中央部分側の係止ピンの外径が半径方向外側の係止ピンよりも大きく形成されていてもよい。この明細書及び特許請求の範囲の書類中における「係止ピンの大きさ」は、「太さ」、「長さ」のいずれか又はいずれも含む概念である。
このように構成すれば、遠心力によって大きな引っ張り力が作用する中央部分側における係止ピンの安定した強度を保つことができる。
また、前記本体の係止ピンと側板の係止穴とを同心円上に備え、前記側板は、同心円上の係止穴の位置における係止ピンの突出側表面が、軸心に対して直交する平面状に形成されていてもよい。
このように構成すれば、係止ピンを挿入して側板から突出する部分の表面を平面状とし、軸心と平行方向から押圧してカシメ(加熱押圧)ることができ、係止ピンに作用する荷重が係止ピンの軸心方向に作用するようにできる。
また、前記側板は、同心円上の係止穴の位置において外面が段部に形成され、かつ中央部分に向けて厚みが増すように形成されていてもよい。
このように構成すれば、側板の全周に同心円上の段部が形成されるので、回転体である側板を回転対称に形成して重量バランスを容易に保つことができる。しかも、軸心に対して直交するように形成された係止穴の段部のみが厚みが増すので、部分的な厚みの増加で全体的な重量増加を抑えつつ、係止ピンで結合している中央部分の強度をより適切に保つことができる。
一方、本願発明の送風機は、前記いずれかの羽根車を備えた送風機であって、前記羽根車の中央部分に気体を導く吸込口を有し、羽根車の周方向から気体を吐出する吐出口を有するケーシングを備えている。
この構成により、耐腐食性の高い羽根車を備え、効率が良く騒音が小さい腐食性ガス用の遠心送風機を構成することができる。
本願発明によれば、プラスチックによって形成された羽根車によって、化学工場や薬品工場などの腐食性ガスの送風機において経年使用に耐えうるので、長期間の安定した運転が可能となる。
図1は本願発明の一実施形態に係る羽根車の本体を示す図面であり、(a) は断面図、(b) は平面図である。 図2は図1の本体に固定する側板であり、(a) は平面図、(b) は断面図、(c) は底面図、(d) は(b) に示すII部の拡大図である。 図3は図1の本体と図2の側板とを固定した状態の図面であり、(a) は断面図、(b) は一部断面した平面図である。 図4は図3に示す羽根車を備えた送風機の断面図である。
以下、本願発明の実施形態を図面に基づいて説明する。以下の実施形態では、例えば、化学工場などで、約−10℃〜50℃以下、締切り最大圧力が約0.5kPa〜2.5kPa以下の環境で、最大回転数における最外周部の周速が約65m/sで使用されるような羽根車を例に説明する。
図1(a),(b) に示すように、この実施形態の羽根車1(図3)の本体10は、円板状の主板11と、この主板11に立設される複数の翼12とを有している。これら主板11と翼12は、一体的に形成されている。この図では、翼12を同一面に示して説明する。
上記主板11には、中央部に駆動軸32(図4)に取付けるための金属製のボス13が設けられている。また、主板11には、このボス13の外周部から翼12と反対方向に筒状体14が突設されている。筒状体14は、羽根車1を後述するように送風機30に取付けたときに、ボス13を取付ける駆動軸32を覆うように延びている。この筒状体14により、駆動軸32が腐食性ガスと接しないようにする。
上記翼12は、断面が翼形状となっており、主板11との接合部分の翼長が最も長く、開放端部(主板11側と反対側の端部)15の部分の翼長が最も短くなっている。この翼12の開放端部15は、周囲から中央部分に向かって主板11からの距離が長くなるように湾曲した形状となっている。開放端部15の湾曲形状は、後述する側板20の湾曲した内面に沿う形状となっている。この実施形態では、8枚の翼12が設けられた例である。なお、この実施形態の翼形状は一例であり、使用条件に応じた翼形状とすればよい。また、翼12の枚数も一例であり、使用条件に応じて好ましい枚数とすればよい。
そして、翼12の開放端部15には、主板11の軸心Cと平行に複数の係止ピン16が設けられている。これらの係止ピン16は、主板11の軸心Cに対して同心円(一点鎖線で示す円)上に設けられている。係止ピン16は、翼12の開放端部15における翼長方向に複数本が設けられている。
また、この実施形態では、翼長方向に設けられた複数本の係止ピン16の内、一番中央部分の係止ピン16は、直径が太く、また長く形成されている。さらに、その外方の係止ピン16も、最外方部分の係止穴21に比べて少し太く、また長く形成されている。このように中央部分の係止ピン16を太く、長くすることで、翼12の中央部分において側板20との結合が強固に行われるようにしている。しかも、長い係止ピン16の上端が翼12の開放端部15から離れるので、後述するように側板20を固定するときに加熱押圧してカシメるときの熱応力が係止ピン16の基部に作用するのを抑えることができる。
さらに、主板11の翼12と反対側に裏羽根17が設けられている。この裏羽根17により、送風機30(図4)の駆動軸32に取付けたときの、筒状体14の貫通部から2次空気を吸引することで、送風機30内部の腐食性ガスGが漏洩するのを防止している。
このような本体10は、翼12と主板11とは繊維強化プラスチック(FRP)などによって一体成形される。また、上記ボス13も主板11の成形時に一体となるように設けられる。この成形された本体10は、各構成が軸心Cに対して回転対称となっている。
図2(a) 〜(d) は、上記翼12の開放端部15に固定される円板状の側板20を示す図面である。なお、図2(b) では周方向にずれた位置の係止穴21を同一面に示して説明する。図2(b) に示すように、側板20は、翼12と接する内側が、翼12の開放端部15の湾曲形状に沿うように湾曲した形状となっている。この側板20には、上記翼12の端部に設けられた係止ピン16を挿入して係止する係止穴21が設けられている。図2(a) に示すように、この係止穴21も、上記本体10の係止ピン16と同様に、側板20の軸心C(主板11の軸心C)に対して同心円(一点鎖線で示す円)上に設けられている。
そして、図2(b) に示すように、側板20に設けられた係止穴21の中央部分は、同心円上の係止穴21の位置における係止ピン16の突出側(外側)表面が、軸心Cに対して直交する平面状の座22に形成されている。この実施形態では、最も中央部分とその半径方向外側の係止ピン16の突出側表面が、軸心Cと直交する平面状の座22に形成されている。このように、側板20の外面に平面状の座22を形成することにより、側板20の外面には同心円の段部25が形成されている。このように、座22の部分となる段部25を全周に設けることで、一体成形時の重量バランスが安定して保てるようにしている。また、図2(d) にも示すように、係止穴21の外面側には、外側に係止ピン16の端部のカシメた部分が入り込む凹部23が形成されている。
このように、係止ピン16を挿入して側板20から突出させる部分を、軸心Cに対して直交する平面状の座22とすることで、この係止ピン16の突出した部分を外側から軸方向にカシメて側板20を本体10に固定することができる。従って、係止ピン16に作用させる荷重が係止ピン16の軸方向に作用し、斜めの荷重が残らないようにできる。
また、上記側板20は、同心円上に設けられた係止穴21の部分の中央部分において厚みが増すようにしている。係止穴21は、上記したように軸心Cに対して直交する平面状の座22を有し、この座22の部分の厚みが中央部分に向けて増すように形成されている。この実施形態では、最も中央部分の係止ピン16を挿入する係止穴21の部分が最も厚みが増している。
このようにすれば、側板20と翼12とを結合している中央部分の係止ピン16と係止穴21との結合強度を高めることができ、翼12と側板20との結合状態をより長時間適切に保つことができる。
さらに、図2(c) に示すように、側板20の内面には、上記翼12の開放端部15が入り込む位置決めリブ24が設けられている。上記翼12の開放端部15は、この位置決めリブ24の間に入り込み、係止ピン16が係止穴21に挿入される。この側板20も、繊維強化プラスチック(FRP)などによって一体成形される。この成形された側板20は、各構成が軸心Cに対して回転対称となっている。
図3は、上記本体10に側板20を固定した状態を示している。図示するように、翼12の開放端部15に設けられた係止ピン16に側板20の係止穴21を挿入し、外側から係止ピン16の先端部分をカシメ(加熱押圧など)ることで、係止ピン16の先端部が係止穴21の凹部23を埋めて側板20が本体10に固定される。このように固定された本体10と側板20は、軸心Cに対して回転対称となっているため、例えば、最外周部における周速が約65m/sの高速回転で長時間運転されるような使用条件でも、長時間安定して使用することができる。なお、この羽根車1は、例えば、定格回転数の最外周部における周速が30m/s〜65m/sの高速回転で使用される場合に好適である。
また、上記したように、側板20の係止穴21が設けられた座22に対して直交するように押圧するため、側板20の係止穴21から突出している係止ピン16を軸方向に押圧して座22の凹部23に固定することができる。しかも、係止ピン16を軸方向に押圧するため、固定後の係止ピン16に斜めの力が残ることを防止することができる。
さらに、この実施形態では、側板20の最も中央部分の係止ピン16の外径が太く形成され、しかも、この係止ピン16を固定する中央部分の係止穴21は、厚みが増した座22に形成されているため、側板20の中央部分をより強固に固定することができる。これにより、回転時に側板20に遠心力が作用し、その遠心力によって円弧状断面に形成された側板20の中央部分には外向きに広がろうとする大きな引っ張り力が作用するが、その大きな引っ張り力を厚みの厚い段部25の係止穴21と太い係止ピン16とによって支持することができる。
このように、本体10に側板20を固定することにより、本体10と側板20とが一体となったプラスチック製の羽根車1が形成される。この羽根車1は、ボス13以外がプラスチックで形成されているため、耐食性の高い羽根車1となる。この羽根車1は、主板11の中央部分に設けられたボス13を一方向に回転駆動することにより、周囲の翼12によって側板20の中央部分から翼12の周囲へ気体を流すことができる。
図4は、上記羽根車1を遠心送風機30に備えさせた例を示している。羽根車1は、ボス13が、駆動モータで駆動するベルト31で回転駆動する駆動軸32にナット33で取付けられている。ナット33と駆動軸32の先端部分には、これらを腐食性ガスGから守るようにカバー34が取付けられている。また、羽根車1は、周囲に設けられたケーシング35の中に収められている。このケーシング35には、羽根車1の側板20に向けて気体を案内するラッパ状の筒体36が設けられている。ケーシング35のフランジ37,38には、羽根車1の中央部分に腐食性ガスGを吸込む吸込パイプ(吸込口)39が設けられ、羽根車1の周方向から腐食性ガスGを吐出する吐出パイプ40(吐出口)が取付けられている。
このような遠心送風機30によれば、駆動軸32で羽根車1を回転させることにより、吸込パイプ39から吸込まれた腐食性ガスGは、羽根車1の周囲から吐出パイプ40に吐出される。なお、この実施形態では遠心送風機30を例に説明したが、他の送風機であってもよい。
以上のように、上記羽根車1によれば、本体10及び側板20をプラスチック(繊維強化プラスチック)で一体成形し、本体10の翼12に設けられた係止ピン16を側板20の係止穴21に挿入して固定することで一体となった羽根車1を形成することができる。しかも、この羽根車1は、全体がプラスチック製であるため、腐食性ガスの送風機30に用いたとしても、長時間の安定した運転が可能となる。
従って、上記羽根車1を用いた送風機30によれば、メンテナンス期間が長い設備などでも、腐食性ガス中で安定した運転が可能となり、安定した運用が可能な送風機30を提供することが可能となる。
なお、上記実施形態では、化学工場、薬品工場などにおける腐食性ガスの送風機を例に説明したが、その他、多種類のガス体を取り扱う化学実験室のドラフトチャンバー用送風機、バイオ、IC研究室の送風機、トイレ、浴室の排送風機、厨房設備の送風機、及び浄化槽設備の臭気用送風機など、種々の送風機における羽根車1として使用できる。羽根車の用途は、上記実施形態に限定されるものではない。
また、羽根車1の使用条件も、例えば、約−10℃〜50℃以下で、締切り最大圧力が約0.5kPa〜2.5kPa以下の環境であれば、長期間使用しても安定した運転が可能であり、上記実施形態に限定されるものではない。
さらに、上記実施形態は一例を示しており、本願発明の要旨を損なわない範囲での種々の変更は可能であり、本願発明は上記実施形態に限定されるものではない。
本願発明に係る羽根車は、化学工場や薬品工場、化学実験室やバイオ、IC研究室などにおける腐食性ガスの送風機に利用することができる。
1 羽根車
10 本体
11 主板
12 翼
13 ボス
14 筒状体
15 開放端部
16 係止ピン
17 裏羽根
20 側板
21 係止穴
22 座
23 凹部
30 送風機
31 駆動モータ
32 駆動軸
35 ケーシング

Claims (5)

  1. 送風機の駆動軸に取付けられる羽根車であって、
    前記駆動軸に取付けられる主板と、前記主板11に立設された複数の翼と、をプラスチックで一体的に成形された本体と、
    前記翼の開放端部に固定されるプラスチックで成形された側板と、を備え、
    前記本体は、前記翼の開放端部から該本体の軸心と平行に突出する複数の係止ピンを有し、
    前記側板は、前記翼の係止ピンを挿入して反挿入側で固定する係止穴を有するとともに、中央部分に向けて前記係止穴を設けた部分の厚みが増すように形成されていることを特徴とする羽根車。
  2. 前記係止ピンは、翼の開放端部における翼長方向に複数本が設けられ、中央部分側の係止ピンの外径が半径方向外側の係止ピンよりも大きく形成されている請求項1に記載の羽根車。
  3. 前記本体の係止ピンと側板の係止穴とを同心円上に備え、
    前記側板は、同心円上の係止穴の位置における係止ピンの突出側表面が、軸心に対して直交する平面状に形成されている請求項1又は2に記載の羽根車。
  4. 前記側板は、同心円上の係止穴の位置において外面が段部に形成され、かつ中央部分に向けて厚みが増すように形成されている請求項3に記載の羽根車。
  5. 請求項1〜4のいずれか1項に記載の羽根車を備えた送風機であって、
    前記羽根車の中央部分に気体を導く吸込口を有し、羽根車の周方向から気体を吐出する吐出口を有するケーシングを備えていることを特徴とする送風機。
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