JP2015086141A - 耐酸化性を有するタンパク質水性懸濁剤 - Google Patents

耐酸化性を有するタンパク質水性懸濁剤 Download PDF

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知明 木本
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Abstract

【課題】広範なタンパク質について、濃縮可能でありかつ安定性が高いタンパク質複合体を含有する水性懸濁剤を提供する。
【解決手段】緩衝液中で表面電荷を有するタンパク質とポリアミノ酸とが複合体を形成して懸濁する水性懸濁液で、前記複合体含有水性懸濁液から少なくとも一部の水分を除去することにより前記タンパク質の濃縮が可能であり、前記複合体中で、前記タンパク質が耐酸化性を有する水性懸濁剤。
【選択図】なし

Description

本発明は、タンパク質とポリアミノ酸との複合体で、前記タンパク質が複合体中で濃縮時に活性が劣化しない、振とうストレス耐性、流動性向上、耐酸化性、耐熱性、および凝集抑制性の少なくとも1つを有する水性懸濁剤に関する。また、前記複合体を緩衝液中で再溶解して得られる水性液に関する。
遺伝子組換え技術の進歩により、種々のタンパク質が医薬品として提供される機会が増している。特に抗体についての技術進歩は目覚しく、キメラ抗体やヒト化抗体、さらには糖鎖改変技術を応用した抗体も実用化され、数々の抗体医薬品が大きな治療効果を上げている。タンパク質医薬品は、従来用時溶解して用いる凍結乾燥製剤として提供されることが多かったが、近年では、より簡便に使用できる水性剤として提供されるようになってきている。また、投与についても、従来静脈注射による投与が一般的であったが、患者の利便性まで考慮し、皮下注射により投与されるタンパク質医薬品が増している。皮下注射では、静脈注射に比べ投与容量を少なくする必要があるため、タンパク質を高濃度化することが必須となる。また、特に抗体医薬品は、高用量で用いられるため、抗体医薬品を皮下注射する場合には、より高濃度化することが要求される。さらに最近は、投与回数を減らす目的で高濃度化する試みもなされており、提供される市販製剤にはタンパク質濃度が100mg/mL以上のものも存在する。
しかしながら、元来生体高分子であるタンパク質は、振とう等の物理的ストレスや酸化等の化学的ストレスに弱く、特に凍結乾燥製剤に比べ水に溶解して水性剤とした場合には変性しやすい。変性したタンパク質は、本来の活性を失い凝集体や会合体を形成することが多く、また、この反応は不可逆な場合が多い。このような凝集体の形成は、一般にタンパク質が高濃度である程起きやすく、振とう等による気液界面への暴露およびタンパク質分子どうしの相互作用の機会が増えることにより、特に長期保存時や輸送時に凝集体が形成される可能性が高まる。凝集体の形成は、タンパク質医薬品の有効性を低下させ、さらに安全性をも脅かす。すなわち、投与後に抗薬物抗体の産生がおこる等の望まれない免疫反応を惹起する可能性を有する(非特許文献1)。このため、米国FDAおよび欧州EMEAでは、免疫原性の評価に対するガイドラインを設定し、対策を喚起している。また、酵素やサイトカイン等の低濃度のタンパク質製剤においても、種類や製剤によって凝集体を形成しやすいものが存在し、溶解時や投与時に激しく振とうしない、フィルターを通す等、用時の取扱に注意を要するものも少なくない。
このような背景から、タンパク質の各種ストレスに対する安定性を向上させることは極めて重要な課題であり、特にタンパク質が高濃度な状態や凝集体を形成しやすいタンパク質においても適用できる汎用性が高い安定化技術の構築が望まれている。
これに対し、タンパク質の安定性を向上させるための取組みとして、主に各種添加剤による安定化が数多く検討されている。特許文献1では、アミノ酸エステル、ポリアミンの添加によるタンパク質の安定化方法が、また、特許文献2では、ポリエチレングリコール、および特定のアミノ酸としてアラニン、アルギニン、グルタミン酸、またはこれらの誘導体を共存させることによる熱ストレスに対するタンパク質の安定化方法が開示されている。
一方、タンパク質とポリアミノ酸による複合体に関して、ドラッグデリバリーシステムとしての検討もなされている。特許文献3では、生体内での安定性と機能性の付与を目的とし、疎水化ポリアミノ酸と抗原タンパク質あるいは抗原ペプチドとの複合体が、免疫原性を高める免疫アジュバントとして利用できることを開示している。また、特許文献4では、カチオン性ポリマーの一つとしてポリアミノ酸を用いた複合体が、内包させるタンパク質とデリバリーシステムを構成するポリマーマトリックスとの相互作用を低減させ、優れた持続放出性を示すシステムに組み込まれる技術として開示されている。しかし、これら複合体を含む水性懸濁剤の輸送時や保存時の安定性については検討されていない。
特許文献5には、請求項1に、「抗体製剤を作製する方法であって、抗体をポリカチオンと組み合わせる工程を含む方法。」が、記載されている。請求項4には、「ポリカチオンが、ポリリジン、ポリアルギニン、ポリオルニチン、ポリヒスチジン、およびカチオン性多糖類、またはその混合物からなる群より選択される。」、請求項24には、「製剤が、前記ポリカチオン組成物と組み合わせたときに、ポリカチオンの非存在下での前記抗体製剤の溶解性と比較して、より大きい溶解性を有する」、請求項25には、「製剤が、ポリカチオン組成物と組み合わせていない抗体製剤と比較して、増大した貯蔵寿命を有する」ことが記載されている。しかし、抗体とポリアミノ酸との複合体である固体粒子の形成、抗体とポリアニオンとの組合せについての記載はない。
Schellekens, H. Clin. Therapeutics, 24(11):1720−1740. 2002.
特許第3976257号 特許第5119545号 国際公開番号WO2010/110455 特表平7−503700 特表2010−536786号
本発明の目的は、上述の状況に鑑みてなされたもので、タンパク質を含み輸送時や保存時の安定性に優れ、用時の取り扱い性に優れる水性懸濁剤を提供することにある。本発明者らは、上記目的で種々のタンパク質について鋭意研究を重ねた結果、タンパク質とポリアミノ酸とが緩衝液中で懸濁する複合体を形成し、この複合体中でタンパク質が耐酸化性を有し安定性が向上することを見出し、本発明をなすに至った。
本発明者らは、タンパク質とポリアミノ酸とを組み合わせる工程を含む方法で、タンパク質が耐酸化性を有し安定性が向上することを見出し、本発明に到達した。
すなわち、本発明は、以下を提供する。
(1)緩衝液中で表面電荷を有するタンパク質とポリアミノ酸とが複合体を形成して懸濁する水性懸濁液で、前記複合体含有水性懸濁液から少なくとも一部の水分を除去することにより前記タンパク質の濃縮が可能であり、前記複合体中で、前記タンパク質が振とうストレス耐性、流動性、耐酸化性、耐熱性、および凝集抑制性からなる群から選択される少なくとも1つを有するタンパク質水性懸濁剤。
(2)前記複合体含有水性懸濁液に低濃度の電解質を添加して前記タンパク質が溶解可能である(1)に記載のタンパク質水性懸濁剤。
(3)前記ポリアミノ酸がカチオン性ポリアミノ酸、またはアニオン性ポリアミノ酸である(1)または(2)に記載のタンパク質水性懸濁剤。
(4)前記カチオン性ポリアミノ酸が、ポリリジン、ポリアルギニン、ポリヒスチジンおよびこれらの水溶性塩からなる群から選択される少なくとも1つであり、前記アニオン性ポリアミノ酸が、ポリグルタミン酸、ポリアスパラギン酸およびこれらの水溶性塩からなる群から選択される少なくとも1つである(3)に記載のタンパク質水性懸濁剤。
(5)前記カチオン性または前記アニオン性ポリアミノ酸の分子量が、0.5kDa〜1000kDaの範囲である(3)または(4)に記載のタンパク質水性懸濁剤。
(6)前記タンパク質の分子量が、3kDa〜670kDaの範囲である(1)ないし(5)のいずれか1つに記載のタンパク質水性懸濁剤。
(7)前記複合体が、前記緩衝液のpHと前記タンパク質の等電点(pI)の差の絶対値が0.5〜4.0の範囲に、前記タンパク質の最大濃縮率が存在するように濃縮可能である(1)ないし(6)のいずれか1つに記載のタンパク質水性懸濁剤。
(8)前記振とうストレス耐性を有する水性懸濁剤は、前記複合体が同一緩衝液中で同一濃度である同一タンパク質の水溶液と比較して振とうストレス耐性が高い(1)ないし(7)のいずれか1つに記載のタンパク質水性懸濁剤。
(9)前記流動性を有する水性懸濁剤は、前記複合体が同一緩衝液中で同一濃度である同一タンパク質水溶液と比較して粘度が低い(1)ないし(7)のいずれか1つに記載のタンパク質水性懸濁剤。
(10)前記耐酸化性を有する水性懸濁剤は、前記複合体が同一緩衝液中で同一濃度である同一タンパク質水溶液と比較して耐酸化性が高い(1)ないし(7)のいずれか1つに記載のタンパク質水性懸濁剤。
(11)前記耐熱性を有する水性懸濁剤は、前記複合体が同一緩衝液中で同一濃度である同一タンパク質の水溶液と比較して耐熱性が高い(1)ないし(7)のいずれか1つに記載のタンパク質水性懸濁剤。
(12)前記凝集抑制性を有する水性懸濁剤は、前記複合体が同一緩衝液中で同一濃度である同一タンパク質の水溶液と比較して凝集抑制性が高い(1)ないし(7)のいずれか1つに記載のタンパク質水性懸濁剤。
(13)前記タンパク質が生物活性を有するタンパク質である(1)ないし(12)のいずれか1つに記載のタンパク質水性懸濁剤。
(14)前記タンパク質が酵素、サイトカイン、ホルモン、抗体、抗体フラグメントおよび融合タンパク質の少なくとも1つである(1)ないし(13)のいずれか1つに記載のタンパク質水性懸濁剤。
(15)前記タンパク質が糖鎖を有する(1)ないし(14)のいずれか1つに記載のタンパク質水性懸濁剤。
(16)前記ポリアミノ酸が分岐鎖を有しないポリアミノ酸である(1)ないし(15)のいずれか1つに記載のタンパク質水性懸濁剤。
(17)前記水性懸濁剤が、緩衝液、タンパク質、ポリアミノ酸およびpH調製剤以外の添加剤を含有しない(1)ないし(16)のいずれか1つに記載のタンパク質水性懸濁剤。
(18)前記複合体を形成しその後可溶化する工程で前記タンパク質の二次構造が保持される(1)ないし(17)のいずれか1に記載のタンパク質水性懸濁剤。
(19)上記(1)ないし(18)のいずれか1つに記載の前記複合体を含む水性懸濁液に低濃度の電解質が添加され前記タンパク質が溶解されてなるタンパク質含有水性液。
本発明の水性懸濁剤は、緩衝液中で表面電荷を有するタンパク質とポリアミノ酸とが複合体を形成して懸濁し、前記タンパク質が複合体中で濃縮時に活性が劣化しない、振とうストレス耐性、流動性向上、耐酸化性、耐熱性、および凝集抑制性の少なくとも1つの効果を有する。具体的にはタンパク質とポリアミノ酸が複合体を形成し安定化され、水性懸濁液から水分を除去することにより濃縮可能である。輸送時や保存時の安定性に優れ、用時の取り扱い性に優れる。一般にタンパク質医薬品の安定化には、賦形剤、界面活性剤、安定化剤等の添加剤が用いられるが、これらを用いる際には、タンパク質医薬品毎にその種類や組合せ、添加量を最適化するための複雑かつ膨大な検討が必要となる。本発明の水性懸濁剤は、ポリアミノ酸との複合体を形成することで簡便に安定化させることができ、従来必要であった添加剤を加える必要がない。また、凍結乾燥製剤で必要となる煩雑な溶解操作を必要とせず、そのまま投与する、あるいは用時に塩化ナトリウムに代表される無機塩を加えて溶解させて水性液として投与することができる。さらに、タンパク質が高濃度であっても粘度が低いという特徴を有するため、使用時に容器中に残存し無駄となる量を減らすことができ、また、シリンジを用いて投与する際には、同濃度のタンパク質水溶液に比べ弱い力で投与することができる。
本発明の水性懸濁剤は、上記のいずれか1つの特徴を有する。
図1は、L-アスパラギナーゼに対して、ポリリジン(Poly‐K、分子量4kDa−15kDa)添加の状態を示す図である。図1の1)、2)図においてそれぞれ右側の試料はMOPS緩衝液中のL-アスパラギナーゼ、左側の試料はMOPS緩衝液中のL-アスパラギナーゼに対して、ポリリジンが添加されている。図1の1)は添加直後で、左試料で複合体が形成された水性懸濁液を示す。2)は一定時間経過後、左試料は形成された複合体が自然沈降する状態を示す。一方ポリリジンを添加しない右試料は1)および2)で複合体ができていないことを示す。 図2は、図1と同じ試料の遠心分離後の状態を示す図である。図2の3)の左試料は、図1の2)の左試料を遠心分離して複合体がペレット状になった状態を示す。図2の4)の左試料は、遠心分離後の上清の緩衝液が除去され複合体中のタンパク質がポリリジン添加前と比べ10倍濃縮された状態を示す。図2の3)、4)の右試料は、遠心分離後も変化がないことを示す。 図3は、図3の5)左試料で、図2の4)の左試料の全体を振って、ペレット状であった複合体を再懸濁させた状態を示す図である。図3の5)の右試料は図2の4)の右試料の全体を振っても複合体ができていない状態が変わらないことを示す。 図3の6−1)は図3の5)にNaClを添加した状態を示す図である。図3の6−1)左試料は、図3の5)の左試料にNaClを添加して複合体を再溶解させた状態を示す。図3の6−1)の右試料は、図3の5)の右試料にNaClを添加しても複合体ができていない状態が変わらないことを示す。図3の6−1)の左試料はポリリジン添加前と比べ10倍程度に濃縮された再可溶化状態であるのに対し、図3の6−1)の右試料は図3の5)の右試料と同程度あるいはNaClを添加した分希釈された状態を示す。 また図3の6−2)の左試料は、図3の6−1)の左試料に緩衝液、水等を加えることで量を調整しても再溶解させた状態が変わらないことを示す。図3の6−2)の左試料は、図3の6−1)の左試料に緩衝液を加えることで、ポリリジン添加前と同等のタンパク質濃度となっている状態を示す。 図3の6−3)の右試料は図3の5)の右試料から上清の緩衝液を除去しさらに両試料にNaClを添加した状態を示す図である。図3の6−3)の左試料は図3の6−1)の左試料と同様にポリリジン添加前と比べ10倍程度に濃縮された再可溶化状態であるのに対し、図3の6−3)の右試料はポリリジン添加前と比べNaClを添加した分希釈され、さらにタンパク質量として9割が失われている状態を表わす。 図4は、MOPS緩衝液中に添加したL-アスパラギナーゼとポリリジンとの混合質量部の比に対する、L-アスパラギナーゼの濃縮倍率を示すグラフである。実線はタンパク質濃度(濃縮倍率)、破線はタンパク質の活性倍率を示す。両グラフは一致しており、複合体を形成し、その後可溶化した後にタンパク質の活性が保持されていることが示される。 図5は、タンパク質とポリアミノ酸との複合体の最大濃縮倍率が、緩衝液のpHとタンパク質の等電点pIの差の絶対値が0.5〜4.0の範囲に存在することを示すグラフである。 図6は、後に説明する試験例10において得られた抗TNFαモノクローナル抗体・ポリ−L−グルタミン酸複合体(MOPS緩衝液中)を形成して濃縮後再溶解した実施例80(破線)とポリアミノ酸を含有せず濃縮されていない比較例80(実線)を対照液として、CDスペクトルを測定したグラフである。両者のCDスペクトルは一致し、複合体を形成し、その後可溶化した後に、タンパク質の二次構造は変化せず保持されていることが示される。 図7は、後に説明する試験例11において得られた抗TNFαモノクローナル抗体・ポリ−L−グルタミン酸複合体(クエン酸緩衝液中)を形成して濃縮後再溶解した実施例81(破線)とポリアミノ酸を含有せず濃縮されていない比較例81(実線)を対照液として、CDスペクトルを測定したグラフである。両者のCDスペクトルは一致し、複合体を形成し、その後可溶化した際に、濃縮されたタンパク質の二次構造は変化せず保持されていることが示される。 図8は、後に説明する試験例18において抗TNFαモノクローナル抗体・ポリ−L−グルタミン酸複合体含有水性懸濁液(実施例85)の振とう後(破線)について、およびポリアミノ酸を含有しない対照液(比較例85)の振とう前(実線)について、測定されたCDスペクトルを示すグラフである。抗TNFαモノクローナル抗体・ポリ−L−グルタミン酸複合体含有水性懸濁液に振とうストレスを加えた場合と、加えていない場合とでCDスペクトルが一致し、複合体中のタンパク質に振とうストレスを加えてもタンパク質の二次構造が保持されていることが示される。 図9は、後に説明する試験例19において抗IgEモノクローナル抗体・ポリ−L−グルタミン酸複合体含有水性懸濁液(実施例87)の振とう後(破線)について、およびポリアミノ酸を含有しない対照液(比較例87)の振とう前(実線)および振とう後(破線)について、測定されたCDスペクトルを示すグラフである。対照液に振とうストレスを加えた場合と、加えていない場合とでCDスペクトルが一致せず二次構造変化が生じているのに対し、抗IgEモノクローナル抗体・ポリ−L−グルタミン酸複合体含有水性懸濁液に振とうストレスを加えた場合と、加えていない場合とでCDスペクトルが一致し、複合体中でタンパク質が振とうストレスを加えてもタンパク質の二次構造が保持されていることが示される。
以下、本発明のタンパク質・ポリアミノ酸複合体含有水性懸濁剤の一例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
〔タンパク質〕
本発明に使用されるタンパク質は、緩衝液中で表面電荷を有するタンパク質であれば特に限定されない。好ましくは生物活性を有するタンパク質であり、より具体的には、植物、動物、微生物等の生物由来のタンパク質、あるいは遺伝子組換え技術を用いて製造されたタンパク質などが挙げられる。本発明において、より好ましい形態のタンパク質は、酵素、サイトカイン、ホルモン、抗体、抗体フラグメント、融合タンパク質等の医療用タンパク質である。
タンパク質が抗体または抗体フラグメントであると、これらのタンパク質を製剤または診断剤としてヒトに適用する際に、本発明の水性懸濁剤を用いればより安定に運搬、保存が可能であり、しかも用時にヒトに投与することが容易であり有用性が高い。タンパク質は糖鎖を有していてもよく、糖鎖は親水性であり、本発明の複合体含有水性懸濁液中で何らかの相互作用を有すると考えられる。
〔ポリアミノ酸〕
本発明に使用されるポリアミノ酸またはその水溶性塩は、緩衝液中で表面電荷を有するポリアミノ酸またはその水溶性塩であれば特に限定されない。具体的にはカチオン性あるいはアニオン性ポリアミノ酸またはその塩である。カチオン性ポリアミノ酸として、ポリグルタミン酸、ポリアスパラギン酸のナトリウム塩等、ポリアルギニン、ポリリジン、ポリオルニチン、ポリシトルリン等の塩酸塩等が挙げられる。本発明において、より好ましい形態のポリアミノ酸の形態は、カチオン性ポリアミノ酸として、ポリ−L−グルタミン酸ナトリウム塩、ポリ−L−アスパラギン酸ナトリウム塩、アニオン性ポリアミノ酸として、ポリ−L−アルギニン塩酸塩、ポリ−L−リジン塩酸塩、ポリ−L−アルギニン臭化水素酸塩、ポリ−L−リジン臭化水素酸塩が例示できる。
〔緩衝液〕
本発明に使用する緩衝液は、水素イオン濃度に対する緩衝作用のある溶液を指し、緩衝液は少量の酸や塩基を加えたり、多少濃度が変化したりしてもpHが大きく変化しないように調整された水溶液である。緩衝液は通常化学的に用いられるものであれば特に限定されないが、生物学的に用いられる緩衝液が好ましい。より好ましい形態の緩衝液は、リン酸緩衝液、クエン酸緩衝液、MOPS緩衝液(3−(N−morpholino)propanesulfonic acid)緩衝液、PIPES(Piperazine−1,4−bis(2−ethanesulfonic acid))緩衝液、TrisHCl緩衝液、MES(2−Morpholinoethanesulfonic acid, monohydrate)緩衝液、HEPES(4−(2−Hydroxyethyl)−1−piperazineethanesulfonic acid)緩衝液等の生体試料に適したもので,生体への投与が可能な緩衝液を用いることができる。
〔タンパク質・ポリアミノ酸複合体〕
1.タンパク質・ポリアミノ酸複合体
本発明の複合体は、以下の(1)〜(4)の特性を有する。
(1)本発明のタンパク質とポリアミノ酸との複合体は、タンパク質とポリアミノ酸とが緩衝液中で複合体を形成して懸濁する複合体含有水性懸濁液中に得られる。
(2)タンパク質は前記緩衝液中で複合体を形成し、得られる複合体含有水性懸濁液から少なくとも一部の水分を除去することにより濃縮可能である。
(3)複合体は、複合体含有水性懸濁液に低濃度の電解質を添加して溶解可能である。
(4)前記タンパク質は前記複合体中で安定であり、濃縮時に活性が劣化しない。
以下にタンパク質が、L-アスパラギナーゼ、ポリアミノ酸がポリリジンである場合を例として上記(1)〜(3)の特性を説明する。
(1)本発明のタンパク質とポリアミノ酸との複合体は、タンパク質とポリアミノ酸とが緩衝液中で複合体を形成して懸濁する複合体含有水性懸濁液中に得られる。
図1は、L-アスパラギナーゼに対して、ポリリジン(Poly−K、分子量4kDa−15kDa)添加の状態を示す図である。右側の試料はMOPS緩衝液中のL-アスパラギナーゼ、左側の試料はMOPS緩衝液中のL-アスパラギナーゼ1質量部に対して、ポリリジンが0.05質量部添加されている。1)の左試料は、添加直後で、白い固体粒子状の複合体が形成された水性懸濁液を示す写真である。2)の左試料は、形成された複合体が、一定時間経過後自然沈降する状態を示す写真である。一方ポリリジンを添加しない右試料は1)および2)で複合体ができていないことがわかる。
図2は、図1と同じ試料で、3)の左試料は、図1の2)の左試料を遠心分離して複合体がペレット状になった状態を示す写真である。4)の左試料は、上清の緩衝液を除いて複合体が10倍濃縮された状態を示す写真である。
複合体の形成時に条件によっては一部のタンパク質が上清中に残存することもあると考えられる。
(2)タンパク質は前記緩衝液中で複合体を形成し、得られる複合体含有水性懸濁液から少なくとも一部の水分を除去することにより濃縮可能である。
図2の4)左試料中に示すように、得られたタンパク質・ポリアミノ酸複合体は、上清の緩衝液を除去して濃縮されたタンパク質を保持する複合体を得ることができる。図2の3)の左試料に示すように遠心分離して複合体を得てもよい。複合体含有水性懸濁液は緩衝液、水等を添加して任意の濃度に薄めることもできる。
(3)複合体は、前記複合体含有水性懸濁液に無機塩である低濃度の電解質を添加して溶解可能である。電解質としてはNaCl、KCl、CaCl2、MgCl2等が例示できるが、好ましくは生体適合性が最も高いNaClが選択される。電解質濃度は限定されないが5質量%以下で、複合体が溶解する十分量を用いることができる。
図3は、図2と同じ試料で、図3の5)の左試料は、図2の4)の左試料の全体を振ってペレット状であった複合体を再懸濁させた状態を示す写真である。図3の5)の右試料は複合体が形成されていない図2の3)、4)の右試料と同様に全体を振っても複合体が形成されないことに変わりがないことを示す。
図3の6−1)左試料は、図3の5)の左試料にNaClを添加して複合体を再溶解させた状態を示す。図3の6−1)の右試料は、図3の5)の右試料にNaClを添加しても複合体ができていない状態が変わらないことを示す。図3の6−1)の左試料はポリリジン添加前と比べ10倍程度に濃縮された再可溶化状態であるのに対し、図3の6−1)の右試料は図3の5)の右試料と同程度あるいはNaClを添加した分希釈された状態を示す。
また図3の6−2)の左試料は、図3の6−1)の左試料に緩衝液、水等を加えることで量を調整しても再溶解させた状態が変わらないことを示す。図3の6−2)の左試料は、図3の6−1)の左試料に緩衝液、水等を加えることで、ポリリジン添加前と同等のタンパク質濃度となっている状態を示す。
図3の6−3)の左試料は図3の5)の左試料にNaClを添加した状態を示す図である。図3の6−3)の右試料は図3の5)の左試料と量が同等となるよう図3の5)の右試料の一部を除去しさらにNaClを添加した状態を示す図である。図3の6−3)の左試料は図3の6−1)の左試料と同様にポリリジン添加前と比べ10倍程度に濃縮された再可溶化状態であるのに対し、図3の6−3)の右試料はポリリジン添加前と比べNaClを添加した分希釈され、さらにタンパク質量として9割が失われている状態を表わす。
図4は、MOPS緩衝液中に添加したL-アスパラギナーゼと、L-アスパラギナーゼ1質量部に対するポリリジン混合比に対する、L-アスパラギナーゼの非濃縮に対する濃縮倍率を示すグラフである。L-アスパラギナーゼの濃縮倍率は、複合体を含む水性懸濁液を遠心分離して得られた複合体にNaClを添加して再溶解し、得られた水性液中で、L-アスパラギナーゼ濃度を吸光度から算出する。
本発明の複合体は、緩衝液中に表面電荷を有するタンパク質とポリアミノ酸とを含み、前記タンパク質と前記ポリアミノ酸とが好ましくは静電的相互作用によって形成される複合体で、前記緩衝液のpHと前記タンパク質の等電点pIの差の絶対値が、好ましくは0.5〜4.0で、1超の濃縮倍率が得られる。図5に示すように濃縮倍率はタンパク質の種類が変わっても|pH-pI|が0.5から2付近の範囲では濃縮率が上がり、約10倍の濃縮倍率が得られその後は|pH-pI|の値にかかわらずほぼ横ばい状態の濃縮率を示す。つまり、|pH-pI|が、好ましくは0.5〜4.0、より好ましくは1.0〜4.0、より好ましくは1.0〜3.5、より好ましくは1.8〜3.5、より好ましくは1.8〜3.0、さらに好ましくは1.8〜2.5の範囲で適切に濃縮できることがわかる。
タンパク質とポリアミノ酸との複合体中のタンパク質の最大濃縮率が、緩衝液のpHと前記タンパク質の等電点pIの差の絶対値が0.5〜4.0の範囲に存在する理由は不明である。本発明者らは、複合体中のタンパク質の最大濃縮率が、緩衝液のpHと前記タンパク質の等電点pIの差の絶対値が1.5〜4.0、好ましくは1.0〜4.0、より好ましくは1.0〜3.5、より好ましくは1.5〜3.5、より好ましくは1.8〜3.5、より好ましくは1.8〜3.0、さらに好ましくは1.8〜2.5の範囲に存在することは、タンパク質とポリアミノ酸とが複合体を形成する静電的相互作用の状態を表す1つの特徴であると考えているが、本発明はこれらの機序に限定されるものではない。
(4)前記タンパク質は前記複合体中で安定であり、濃縮時に活性が劣化しない。
ここで、活性が劣化しないとは、複合体が濃縮操作によっても同一緩衝液中で同一濃度である同一タンパク質の対照液に対してその生物活性が好ましくは80%以上保持されることをいう。さらに好ましくは85%以上、90%以上保持されることをいう。場合によっては100%超の測定値を示す場合もあるがその原因は測定誤差によるものか何かの機序によるものか不明である。
また、前記タンパク質は前記複合体中で安定であり、複合体を形成しその後可溶化した後にタンパク質の二次構造が保持され、濃縮されてもタンパク質の二次構造は保持される。タンパク質が本発明の複合体を形成し濃縮された後、再溶解されても、タンパク質の二次構造の変化はほとんどないことが分かっている。後に説明する実施例80、81の結果を示す、図6、7でそれぞれ複合体形成前と、複合体形成および再溶解後とのそれぞれのCDスペクトルを測定して確認されている。
本発明のタンパク質・ポリアミノ酸複合体はその特性により異なる用途を持つ以下の5つの特性で特徴付けられる複合体[1]〜複合体[5]として説明できる。
〔1.振とうストレス耐性を有するタンパク質・ポリアミノ酸複合体(以下、複合体[1]という)〕
本発明の複合体[1]は、以下の(1)〜(5)の特性を有する。
(1)本発明のタンパク質とポリアミノ酸との複合体[1]は、タンパク質とポリアミノ酸とが緩衝液中で複合体を形成して懸濁する複合体含有水性懸濁液中に得られる。
(2)タンパク質は前記緩衝液中で複合体[1]を形成し、得られる複合体含有水性懸濁液から少なくとも一部の水分を除去することにより濃縮可能である。
(3)複合体[1]は、複合体含有水性懸濁液に低濃度の電解質を添加して溶解可能である。
(4)タンパク質は本発明の複合体を用いる濃縮で、その活性が損なわれない。またタンパク質は、複合体を形成しその後可溶化した後にタンパク質の二次構造が保持され、濃縮されてもタンパク質の二次構造は保持される。
(5)タンパク質は複合体[1]中で振とうストレス耐性を有する。
(1)〜(4)の特性については上記1.タンパク質・ポリアミノ酸複合体で説明したのと同様でありここでは記載を省略する。以下に特性(5)を説明する。
(5)前記タンパク質は前記複合体中で振とうストレス耐性を有する。
ここで、振とうストレス耐性を有するとは、複合体[1]が同一緩衝液中で同一濃度である同一タンパク質の対照液に対して振とうストレス耐性がより高いことを言い、具体的には振とう後の活性残存率がより高いこと、またはタンパク質の構造がより保持されること、またはタンパク質の残存率がより高いことをいう。
振とうストレスとは、例えば後に実施例の試験例で示すような100〜500rpm×10〜100時間の振とうを緩衝液中のタンパク質または複合体に与えることを言う。振とうストレス耐性とはタンパク質の種類によって異なるので限定できないが、振とうストレス前と比較して振とうストレス後のタンパク質の残存活性率が、複合体を形成しない場合の残存活性率と比較して10%〜99%高いことをいう。好ましくは10%〜50%、さらには15%〜40%であってもよい。
また、上記の振とうストレスの前後において、タンパク質の濃度を吸光度で測定すると、複合体を形成しない場合は多量の不溶性の沈殿物ができて振とう後、遠心分離して凝集体を除くと緩衝液中のタンパク質の濃度が低くなりタンパク質含量の残存率が小さくなり、7%未満となる場合もある。一方複合体を形成する場合は振とうストレスの前後において複合体中のタンパク質が安定でありタンパク質含量の残存率が測定によっては100%以上の値となる。複合体中のタンパク質含量の残存率の値は、複合体を形成しない場合の対照液のタンパク質含量の残存率の値より、好ましくは15%〜99%高く、より好ましくは18%〜95%高く、さらには25%〜90%高い。
〔2.流動性を有するタンパク質・ポリアミノ酸複合体(以下、複合体[2]という)〕
本発明の複合体[2]は、以下の(1)〜(5)の特性を有する。
(1)本発明のタンパク質とポリアミノ酸との複合体[2]は、タンパク質とポリアミノ酸とが緩衝液中で複合体を形成して懸濁する複合体含有水性懸濁液中に得られる。
(2)タンパク質は前記緩衝液中で複合体[2]を形成し、得られる複合体含有水性懸濁液から少なくとも一部の水分を除去することにより濃縮可能である。
(3)複合体[2]は、複合体含有水性懸濁液に低濃度の電解質を添加して溶解可能である。
(4)タンパク質は本発明の複合体[2]を用いる濃縮で、その活性が損なわれない。またタンパク質は、複合体を形成しその後可溶化した後にタンパク質の二次構造が保持され、濃縮されてもタンパク質の二次構造は保持される。
(5)タンパク質は複合体[2]中で流動性に優れる。
(1)〜(4)の特性については上記1.タンパク質・ポリアミノ酸複合体で説明したのと同様でありここでは記載を省略する。以下に特性(5)を説明する。
(5)タンパク質は前記複合体[2]中で流動性に優れる。
ここで、流動性を有する、流動性に優れる、または流動性の向上とは、複合体[2]が同一緩衝液中で同一濃度である同一タンパク質の対照液に対してより流動性を有することを言い、具体的には同一緩衝液同一濃度で、複合体[2]中に含まれるタンパク質の粘度がより低いことをいう。
複合体[2]中のタンパク質の粘度はタンパク質の種類、濃度によって異なり限定されない。対照液の粘度の60%以下であり、好ましくは55%以下、さらには50%以下であってもよい。
〔3.耐酸化性を有するタンパク質・ポリアミノ酸複合体(以下、複合体[3]という)〕
本発明の複合体[3]は、以下の(1)〜(5)の特性を有する。
(1)本発明のタンパク質とポリアミノ酸との複合体[3]は、タンパク質とポリアミノ酸とが緩衝液中で複合体を形成して懸濁する複合体含有水性懸濁液中に得られる。
(2)タンパク質は前記緩衝液中で複合体[3]を形成し、得られる複合体含有水性懸濁液から少なくとも一部の水分を除去することにより濃縮可能である。
(3)複合体[3]は、複合体含有水性懸濁液に低濃度の電解質を添加して溶解可能である。
(4)タンパク質は本発明の複合体[3]を用いる濃縮で、その活性が損なわれない。またタンパク質は、複合体を形成しその後可溶化した後にタンパク質の二次構造が保持され、濃縮されてもタンパク質の二次構造は保持される。
(5)タンパク質は複合体[3]中で耐酸化性を有する。
(1)〜(4)の特性については上記1.タンパク質・ポリアミノ酸複合体で説明したのと同様でありここでは記載を省略する。以下に特性(5)を説明する。
(5)タンパク質は複合体[3]中で耐酸化性を有する。
ここで、酸化ストレスとは、添加された酸化性化合物中の活性酸素種等がタンパク質中の酸化を受けやすいアミノ酸側鎖に切断、会合、修飾などを引き起こし、タンパク質の一次構造に生じさせる変化を言い、耐酸化性を有するとは、複合体[3]が同一緩衝液中で同一濃度である同一タンパク質の対照液に対して耐酸化性がより高いことを言い、具体的には同一緩衝液同一濃度で、酸化性化合物の添加に対して複合体[3]中のタンパク質の活性残存率が同一化合物添加の対照液より高いこと、またはタンパク質の構造がより保持されることをいう。
用いる酸化性化合物としては、0.01〜3.00質量%の過酸化水素水と緩衝液との混合物、1〜10mM銅イオン存在下の1〜10mMアスコルビン酸等が例示でき、所定時間、所定温度後のタンパク質の活性変化または一次構造の変化を測定する。所定時間、所定温度は例えば、1〜10時間、20℃〜40℃であってもよい。
複合体[3]中のタンパク質の耐酸化性はタンパク質の種類、濃度によって異なり限定されない。同一酸化ストレス下の対照液の残存活性との差が5%〜30%高く、好ましくは5%〜25%高く、さらには10%〜20%高くてもよい。
また、タンパク質の構造保持は、複合体を形成しない対照液(比較例)における酸化ストレス下の一次構造変化率を100%とした場合、複合体中のタンパク質における同様の酸化ストレス下の一次構造変化率は好ましくは95%以下、より好ましくは91%以下、さらには87%以下に抑制される。
〔4.耐熱性を有するタンパク質・ポリアミノ酸複合体(以下、複合体[4]という)〕
本発明の複合体[4]は、以下の(1)〜(5)の特性を有する。
(1)本発明のタンパク質とポリアミノ酸との複合体[4]は、タンパク質とポリアミノ酸とが緩衝液中で複合体を形成して懸濁する複合体含有水性懸濁液中に得られる。
(2)タンパク質は前記緩衝液中で複合体[4]を形成し、得られる複合体含有水性懸濁液から少なくとも一部の水分を除去することにより濃縮可能である。
(3)複合体[4]は、複合体含有水性懸濁液に低濃度の電解質を添加して溶解可能である。
(4)タンパク質は本発明の複合体[4]を用いる濃縮で、その活性が損なわれない。またタンパク質は、複合体を形成しその後可溶化した後にタンパク質の二次構造が保持され、濃縮されてもタンパク質の二次構造は保持される。
(5)タンパク質は複合体[4]中で耐熱性を有する。
(1)〜(4)の特性については上記1.タンパク質・ポリアミノ酸複合体で説明したのと同様でありここでは記載を省略する。以下に特性(5)を説明する。
(5)タンパク質は前記複合体[4]中で耐熱性を有する。
ここで、耐熱性を有するとは、複合体[4]が同一緩衝液中で同一濃度である同一タンパク質の対照液に対して耐熱性がより高いことを言い、具体的には同一緩衝液、同一濃度で、熱負荷後の複合体[4]中のタンパク質の活性が複合体を形成しない対照液と比較してより高いこと,またはタンパク質の変性温度がより高温であることをいう。
熱負荷とは例えば後に実施例の試験例で示すような、所定温度、所定時間、例えば、室温〜60℃×5分〜20時間で複合体[4]または同一緩衝液中で同一濃度である同一タンパク質の対照液に熱を加えることを言う。耐熱性は、複合体[4]または同一緩衝液中で同一濃度である同一タンパク質の対照液を室温放置した場合の活性を100%として上記熱負荷を与えた複合体[4]または同一緩衝液中で同一濃度である同一タンパク質の対照液における活性保持率を測定することで評価できる。または、複合体[4]と同一緩衝液中で同一濃度である同一タンパク質の対照液とを示差走査熱量測定し各変性温度を測定することで評価できる。
複合体[4]中のタンパク質の耐熱性はタンパク質の種類、濃度によって異なり限定されない。同一熱ストレス下の対照液の活性残存率との差が5%〜95%、好ましくは10%〜95%以下、さらには20%〜85%であってもよい。
複合体[4]中のタンパク質の熱変性温度は対照液と比較して好ましくは、1℃〜20℃高い。
〔5.凝集抑制性を有するタンパク質・ポリアミノ酸複合体(以下、複合体[5]という)〕
本発明の複合体[5]は、以下の(1)〜(5)の特性を有する。
(1)本発明のタンパク質とポリアミノ酸との複合体[5]は、タンパク質とポリアミノ酸とが緩衝液中で複合体を形成して懸濁する複合体含有水性懸濁液中に得られる。
(2)タンパク質は前記緩衝液中で複合体[5]を形成し、得られる複合体含有水性懸濁液から少なくとも一部の水分を除去することにより濃縮可能である。
(3)複合体は、複合体含有水性懸濁液に低濃度の電解質を添加して溶解可能である。
(4)タンパク質は本発明の複合体[5]を用いる濃縮で、その活性が損なわれない。またタンパク質は、複合体を形成しその後可溶化した後にタンパク質の二次構造が保持され、濃縮されてもタンパク質の二次構造は保持される。
(5)タンパク質は複合体[5]中で凝集抑制性を有する。
(1)〜(4)の特性については上記1.タンパク質・ポリアミノ酸複合体で説明したのと同様でありここでは記載を省略する。以下に特性(5)を説明する。
(5)前記タンパク質は凝集抑制性を有する。
ここで、凝集抑制性を有するとは、複合体[5]が同一緩衝液中で同一濃度である同一タンパク質の対照液に対して凝集抑制により優れていることを言い、具体的には複合体の形成により凝集体の形成が抑制されることを言う。凝集体の形成は、複合体[5]および同一緩衝液中で同一濃度である同一タンパク質の対照液中のタンパク質の振とうストレス前後の凝集量を総タンパク質量から上清のタンパク質量を差し引くことで算出する、あるいはサイズ排除クロマトグラフ法による可溶性凝集体ピーク面積を測定することで評価できる。あるいは複合体[5]および同一緩衝液中で同一濃度である同一タンパク質の対照液中のタンパク質の加熱ストレス前後の凝集体数増加率、あるいは濁度増加率を算出することで評価できる。これらの測定により複合体[5]中のタンパク質が種々の条件下で凝集体の形成が抑制されていることを評価できる。
複合体[5]中のタンパク質の凝集抑制性はタンパク質の種類、濃度によって異なり限定されない。同一振とうストレス下の対照液との不溶性凝集体化率の差が5%〜20%、好ましくは振とうストレス後に凝集物を実質的に有しない特性であってもよい。同一振とうストレス下で可溶性凝集体増加率は対照液との比率で30%以下、好ましくは10%以下、さらには5%以下であってもよい。同一加熱ストレス下で凝集体数増加率は対照液との比率で1.0%以下、好ましくは0.5%以下、さらには0.3%以下であってもよい。同一加熱ストレス下で濁度増加率は対照液との比率で10%以下、好ましくは6%以下、さらには4%以下であってもよい。
〔タンパク質・ポリアミノ酸複合体を含む水性懸濁剤の特性〕
タンパク質が正又は負の表面電荷を有する。ポリアミノ酸がカチオン性またはアニオン性である。
カチオン性またはアニオン性ポリアミノ酸の分子量が、0.5kDa〜1000kDaの範囲である。タンパク質の分子量が、10kDa〜670kDaの範囲である。
タンパク質が正の表面電荷を有する場合はアニオン性ポリアミノ酸と組合せ、タンパク質が負の表面電荷を有する場合はカチオン性ポリアミノ酸と組合せるのが好ましい。
タンパク質は、水性懸濁液中で0.01mg/mL〜500mg/mLの濃度範囲で含まれる。
水性懸濁液に用いる緩衝液のpHは、pH3〜pH9の範囲である。
本発明の水性懸濁剤は、緩衝液中に表面電荷を有するタンパク質とポリアミノ酸を含み、これらの配合比が前記タンパク質1質量部に対し前記ポリアミノ酸が0.005質量部〜6質量部の範囲であり、前記緩衝液のpHが含まれる前記タンパク質の等電点pIより0.5以上塩基性又は酸性側に調整されていて、前記タンパク質と前記ポリアミノ酸が静電的相互作用による複合体を形成している、安定なタンパク質・ポリアミノ酸複合体含有水性懸濁剤である。
本発明の水性懸濁剤は、タンパク質の等電点に応じて緩衝液のpHとポリアミノ酸を選択するのみで簡便に濃縮、安定化させることができ、従来必要であった添加剤を加える必要がない。水性懸濁剤は、緩衝液、タンパク質、ポリアミノ酸、pH調製剤以外の添加剤を加えることもできるが加える必要はない。また、凍結乾燥製剤で必要となる煩雑な溶解操作を必要とせず、そのまま製剤として投与できる。あるいは用時に塩化ナトリウムに代表される無機塩を加えて溶解して製剤として投与することができる。
〔タンパク質・ポリアミノ酸複合体を含む水性懸濁剤の製造方法〕
(工程1):緩衝液のpHを、含まれる前記タンパク質の等電点pIより絶対値で0.5以上4.0以下塩基性側および・または酸性側に調整する。
(工程2):前記緩衝液に、表面電荷を有する前記タンパク質を0.01mg/mL〜50mg/mLの濃度範囲、前記ポリアミノ酸を0.01mg/mL〜100mg/mLの濃度範囲となるように加えて前記タンパク質・ポリアミノ酸複合体を含む水性懸濁液を形成させる。
(工程3):このタンパク質・ポリアミノ酸複合体を含む水性懸濁液から少なくとも一部の水分、または緩衝液を遠心分離、限外濾過、上清除去等より選ばれる方法で除去し、前記タンパク質が0.1mg/mL〜500mg/mLの濃度範囲で含まれるよう調整する。
(工程4):工程3で調製した水性懸濁液に、工程3で除去した水分または緩衝液の量よりも少ない量の緩衝液、水等を添加することにより濃縮されたタンパク質濃度を有するタンパク質・ポリアミノ酸複合体を含む水性懸濁液を得る。あるいは、工程3で除去した水分または緩衝液の量と等しい量の緩衝液、水等を添加することにより同等のタンパク質濃度を有するタンパク質・ポリアミノ酸複合体を含む水性懸濁液を得る。あるいは、工程3で除去した水分または緩衝液の量よりも多い量の緩衝液、水等を添加することにより希釈されたタンパク質濃度を有するタンパク質・ポリアミノ酸複合体を含む水性懸濁液を得る。
(工程5):上記の工程1および工程2の後に得られた複合体を含む水性懸濁液から水分を除去せずに、緩衝液、水等を添加することにより希釈されたタンパク質濃度を有するタンパク質・ポリアミノ酸複合体を含む水性懸濁を得る。
上記タンパク質が、医療用タンパク質である場合は、上記の工程1、工程2、工程3および工程4あるいは上記の工程1、工程2および工程5により水性懸濁剤が製造される。
〔タンパク質の濃縮方法、濃縮された、あるいは同等の、あるいは希釈されたタンパク質濃度を有する水性剤の製造方法〕
(工程1):緩衝液のpHを、含まれる前記タンパク質の等電点pIより絶対値で0.5以上4.0以下塩基性側および・または酸性側に調整する。
(工程2):前記緩衝液に、表面電荷を有する前記タンパク質を0.01mg/mL〜50mg/mLの濃度範囲、前記ポリアミノ酸を0.01mg/mL〜100mg/mLの濃度範囲となるように加えて前記タンパク質・ポリアミノ酸複合体を含む水性懸濁液を形成させる。
(工程3):上記の工程1および工程2の後に得られた複合体を含む水性懸濁液から少なくとも一部の水分、または緩衝液を遠心分離、限外濾過、上清除去等より選ばれる方法で除去し、前記タンパク質が0.1mg/mL〜500mg/mLの濃度範囲で含まれるように水性懸濁液を調整する。
(工程4)工程3で調製した水性懸濁液に、工程3で除去した水分または緩衝液の量よりも少ない量の低濃度の電解質を添加して複合体中のタンパク質を緩衝液中に再溶解することにより濃縮されたタンパク質濃度を有する水性液を得る。あるいは、工程3で除去した水分または緩衝液の量と等しい量の低濃度の電解質を添加して複合体中のタンパク質を緩衝液中に再溶解することにより同等のタンパク質濃度を有する水性液を得る。あるいは、工程3で除去した水分または緩衝液の量よりも多い量の低濃度の電解質を添加して複合体中のタンパク質を緩衝液中に再溶解することにより希釈されたタンパク質濃度を有する水性液を得る。
(工程5):上記の工程1および工程2の後に得られた複合体を含む水性懸濁液から水分を除去せずに、低濃度の電解質を添加して複合体中のタンパク質を緩衝液中に再溶解することにより希釈されたタンパク質濃度を有する水性液を得る。
上記タンパク質が、医療用タンパク質である場合は、上記の工程1、工程2、工程3および工程4あるいは上記の工程1、工程2および工程5により水性剤が製造される。
工程1では、前記緩衝液のpHを、含まれるタンパク質の等電点をpIとして、|pI−pH|を0.5〜4.0の範囲に調整して、複合体を得るのが好ましい。
(1)タンパク質の濃縮方法
以下の工程1)〜3)は任意の順序で行うことができ、同時に行っても逐次に行ってもよい。
1)タンパク質を緩衝液に加える。
2)ポリアミノ酸を緩衝液に加える。
3)緩衝液のpHを、含まれるタンパク質の等電点をpIとして、|pI−pH|を0.5以上に調整する。
4)緩衝液中でタンパク質とポリアミノ酸とが複合体を形成し水性懸濁液が得られる。
5)少なくとも一部の水分または緩衝液を除去する。得られる複合体中のタンパク質濃度は工程1)の緩衝液中のタンパク質濃度より濃縮したタンパク質が得られる。
6)必要な場合は、得られた水性懸濁液を遠心分離して複合体を得る。
(2)複合体の溶解方法
得られた複合体は、水性懸濁液中に、低濃度の電解質を添加して再溶解することができる。電解質としてはNaCl、KCl、CaCl2、MgCl2等が例示できるが、好ましくは生体適合性が最も高いNaClが選択され、濃度は5質量%以下である。
得られた複合体を再溶解して緩衝液中に溶解したタンパク質を可逆的量で得るためには、|pI−pH|を0.5〜4.0の範囲とするのが好ましい。
(3)タンパク質濃度測定方法
緩衝液中のタンパク質濃度は、例えば波長280nmの吸光度を測定して標準曲線から濃度を算出する。複合体中のタンパク質濃度は遠心分離して得られる複合体を上記(2)の方法で溶解して、例えば波長280nmの吸光度を測定して標準曲線から濃度を算出する。例えばタンパク質濃縮時の濃度変化を非濃縮に対する濃縮倍率で算出し、また複合体に振とう、酸化、熱等のストレス負荷を行い負荷後の濃度変化を負荷前に対する残存率で算出する。
(4)タンパク質の二次構造の変化の測定方法
複合体中のタンパク質のCDスペクトルを当該タンパク質を上記(2)の方法で溶解した水溶液として測定する。複合体に振とう、酸化、熱等のストレス負荷を行い負荷前後でのCDスペクトルを測定し、タンパク質の二次構造変化を検出する。同様にタンパク質の対照液を同一緩衝液中で同濃度でCDスペクトルを測定し、複合体の負荷後のCDスペクトルと比較して変化が見られない場合は上記負荷によっても複合体中のタンパク質の二次構造は変化しなかったことが示される。
(5)タンパク質活性測定方法
1)L-アスパラギナーゼ活性:水溶液中で測定する。複合体は上記(2)の方法で溶解して測定する。L-アスパラギナーゼが触媒する、アスパラギンをアスパラギン酸とアンモニアに分解する反応で、反応液中のアンモニア濃度を定量し、L-アスパラギナーゼ活性を求める。例えばタンパク質濃縮時の活性変化を非濃縮時に対する活性倍率で算出し、また複合体に振とう、酸化、熱等のストレス負荷を行い負荷後の活性変化を負荷前に対する残存率で算出する。
2)抗IgE抗体活性(IgE結合能またはIgE受容体阻害能)
水溶液中で測定する。複合体は上記(2)の方法で溶解して測定する。ELISA法により抗IgEモノクローナル抗体による、IgEとの結合活性またはIgE受容体に対するIgE結合の阻害活性を測定する。両者とも、IgE−抗IgE抗体の結合を見るアッセイであり、IgE結合試験はIgEと結合した抗IgEモノクローナル抗体濃度が測定され、IgE受容体阻害試験はIgE受容体と結合したIgE濃度が測定される。例えばタンパク質濃縮時の活性変化を非濃縮時に対する活性倍率で算出し、また複合体に振とう、酸化、熱等のストレス負荷を行い負荷後の活性変化を負荷前に対する残存率で算出する。具体的には実施例74の試験例4がIgE結合試験で、その他の抗IgE抗体活性は受容体阻害試験で測定される。
3)抗TNFα抗体活性:(TNFα結合能)
水溶液中で測定する。複合体は上記(2)の方法で溶解して測定する。ELISA法により抗TNFαモノクローナル抗体による,TNFαとの結合活性を測定する。例えばタンパク質濃縮時の活性変化を非濃縮時に対する活性倍率で算出し、また複合体に振とう、酸化、熱等のストレス負荷を行い負荷後の活性変化を負荷前に対する残存率で算出する。
(6)振とうストレスに対する安定性の測定方法
1)振とうストレスに対する抗EGFR抗体の安定性
振とうストレス前後におけるタンパク質含量の変化をタンパク質含量残存率として測定する。振とうストレス前に吸光度を測定して抗EGFRモノクローナル抗体濃度を測定する。振とうストレスを与え、それにより不溶性の凝集体ができた場合の不溶性の沈殿物を遠心分離して除いた後の吸光度を測定して抗EGFRモノクローナル抗体濃度を測定しタンパク率含量残存率を求める。
2)振とうストレスに対する抗TNFα抗体の安定性
振とうストレス前後におけるタンパク質含量の変化をタンパク質含量残存率として測定する。振とうストレス前に吸光度を測定して抗TNFαモノクローナル抗体濃度を測定する。振とうストレスを与え、それにより不溶性の凝集体ができた場合の不溶性の沈殿物を遠心分離して除いた後の吸光度を測定して抗TNFαモノクローナル抗体濃度を測定しタンパク質含量残存率を求める。
3)振とうストレスに対する抗IgE抗体の安定性
振とうストレス前後におけるタンパク質含量の変化をタンパク質含量残存率として測定する。振とうストレス前に吸光度を測定して抗IgEモノクローナル抗体濃度を測定する。振とうストレスを与え、それにより不溶性の凝集体ができた場合の不溶性の沈殿物を遠心分離して除いた後の吸光度を測定して抗IgEモノクローナル抗体濃度を測定しタンパク質含量残存率を求める。
(7)タンパク質の一次構造の変化率の測定方法
1)ペプチドマッピング法:タンパク質を化学的もしくは酵素的に消化して、生じたペプチド断片を液体クロマトグラフィー(LC)などで分離検出、そのクロマトパターンを比較することで、構成しているアミノ酸の変化を確認する試験法。タンパク質の一次構造の変化の状態を一次構造の変化率で算出できる。
(8)熱ストレスに対する安定性の測定方法
1)示差走査熱量測定法:一定の熱を与えながら基準物質と試料の温度を測定し、試料の状態変化による吸熱反応や発熱反応を測定する試験法。タンパク質の構造転移に伴う熱の出入りを直接測定でき、タンパク質の熱変性温度が測定できる。
(9)凝集抑制性の測定方法
1)抗EGFRモノクローナル抗体の複合体および複合体を形成しない対照液に振とうストレスを加えた前後のサンプルについて、後に実施例で具体的に記載する条件で遠心分離して沈降した不溶性凝集量を,振とう後に上清中に残存する抗EGFRモノクローナル抗体量を振とう前における総抗EGFRモノクローナル抗体量から差し引いた量として求める。
2)L-アスパラギナーゼのポリアミノ酸との複合体および対照液を加熱した前後のサンプルについて,各凝集体数を、マイクロフローイメージング法を用いて求める。
3)上記2)と同じサンプルについて吸光度を測定し濁度を求める。
4)サイズ排除クロマトグラフ:サイズ排除クロマトグラフィー、分子篩(ふるい)クロマトグラフィー、SEC(Size Exclusion Chromatography)とも呼ばれる。試料の分子サイズに基づく篩い分けを原理とするクロマトグラフィーである。タンパク質分子は担体内部にまで拡散できるが、凝集体は担体内部に到達できず担体の外部を流れ去るので凝集体の量が測定できる。後に記載する実施例98の測定では可溶性凝集体量がピーク面積として測定される。
次に、実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
〔1.ポリアミノ酸による濃縮可能性を示す実施例1〜72および比較例1〜72、ポリアミノ酸ではないアミノ酸単体では濃縮が出来ないことを示す陰性対照比較例7−2、27−2〕
<L−アスパラギナーゼ>
(実施例1)
10mM MOPS(3−(N−morpholino)propanesulfonic acid)緩衝液(pH7.0)中において、L−アスパラギナーゼ(pI:4.7、MW:141kDa)を0.5mg/mLの濃度となるように調製し、L−アスパラギナーゼ1質量部に対し0.05〜1質量部のポリ−L−リジン(MW:4kDa−15kDa)を加えた。これら調製した各液を遠心分離し全容の9割を上清部として除去し、L−アスパラギナーゼ・ポリ−L−リジン複合体含有水性懸濁液を得た。
(実施例2)
10mM MOPS緩衝液(pH6.4)を用いた以外は実施例1と同じ操作を行い、L−アスパラギナーゼ・ポリ−L−リジン複合体含有水性懸濁液を得た。
(実施例3)
10mM TrisHCl緩衝液(pH8.2)を用いた以外は実施例1と同じ操作を行い、L−アスパラギナーゼ・ポリ−L−リジン複合体含有水性懸濁液を得た。
(実施例4)
10mM TrisHCl緩衝液(pH8.7)を用いた以外は実施例1と同じ操作を行い、L−アスパラギナーゼ・ポリ−L−リジン複合体含有水性懸濁液を得た。
(実施例5)
10mM クエン酸緩衝液(pH3.4)中において、L−アスパラギナーゼを0.5mg/mLの濃度となるように調製し、L−アスパラギナーゼ1質量部に対し0.1〜1質量部のポリ−L−グルタミン酸(MW:3kDa−15kDa)を加えた。これら調製した各液を遠心分離し全容の9割を上清部として除去し、L−アスパラギナーゼ・ポリ−L−グルタミン酸複合体含有水性懸濁液を得た。
(実施例6)
10mM クエン酸緩衝液(pH2.9)中において、L−アスパラギナーゼを0.5mg/mLの濃度となるように調製し、L−アスパラギナーゼ1質量部に対し0.3〜2質量部のポリ−L−グルタミン酸(MW:3kDa−15kDa)を加えた。これら調製した各液を遠心分離し全容の9割を上清部として除去し、L−アスパラギナーゼ・ポリ−L−グルタミン酸複合体含有水性懸濁液を得た。
(実施例7)
ポリ−L−アルギニン(MW:5kDa−15kDa)を用いた以外は実施例1と同じ操作を行い、L−アスパラギナーゼ・ポリ−L−アルギニン複合体含有水性懸濁液を得た。
(実施例8)
10mM MOPS緩衝液(pH7.0)中において、L−アスパラギナーゼを14.7mg/mLの濃度となるように調製し、L−アスパラギナーゼ1質量部に対し0.025〜0.5質量部のポリ−L−リジン(MW:4kDa−15kDa)を加えた。これら調製した各液を遠心分離し全容の9割を上清部として除去し、L−アスパラギナーゼ・ポリ−L−リジン複合体含有水性懸濁液を得た。
(実施例9)
10mM MOPS緩衝液(pH7.0)中において、L−アスパラギナーゼを0.5mg/mLの濃度となるように調製し、L−アスパラギナーゼ1質量部に対し0.5〜7質量部のポリ−L−リジン(MW:1kDa−5kDa)を加えた。これら調製した各液を遠心分離し全容の9割を上清部として除去し、L−アスパラギナーゼ・ポリ−L−リジン複合体含有水性懸濁液を得た。
(実施例10)
10mM MOPS緩衝液(pH7.0)中において、L−アスパラギナーゼを1.0mg/mLの濃度となるように調製し、L−アスパラギナーゼ1質量部に対し0.005〜0.3質量部のポリ−L−リジン(MW:15kDa−30kDa)を加えた。これら調製した各液を遠心分離し全容の9割を上清部として除去し、L−アスパラギナーゼ・ポリ−L−リジン複合体含有水性懸濁液を得た。
(実施例11)
ポリ−L−リジン(MW:30kDa以上)を用いた以外は実施例10と同じ操作を行い、L−アスパラギナーゼ・ポリ−L−リジン複合体含有水性懸濁液を得た。
(実施例12)
10mM HEPES(4−(2−Hydroxyethyl)−1−piperazineethanesulfonic acid)中において、L−アスパラギナーゼを1.5mg/mLの濃度となるように調製し、L−アスパラギナーゼ1質量部に対し0.05〜0.5質量部のポリ−L−リジン(MW:4kDa−15kDa)を加えた。これら調製した各液を遠心分離し全容の9割を上清部として除去し、L−アスパラギナーゼ・ポリ−L−リジン複合体含有水性懸濁液を得た。
(実施例13)
10mM MES(2−Morpholinoethanesulfonic acid, monohydrate)緩衝液(pH7.0)を用いた以外は実施例12と同じ操作を行い、L−アスパラギナーゼ・ポリ−L−リジン複合体含有水性懸濁液を得た。
<ヒト血清アルブミン>
(実施例14)
10mM MOPS緩衝液(pH7.0)中において、ヒト血清アルブミン(pI:5.0、MW:69kDa)を1.0mg/mLの濃度となるように調製し、ヒト血清アルブミン1質量部に対し0.05〜0.5質量部のポリ−L−リジン(MW:4kDa−15kDa)を加えた。これら調製した各液を遠心分離し全容の9割を上清部として除去し、ヒト血清アルブミン・ポリ−L−リジン複合体含有水性懸濁液を得た。
(実施例15)
ポリ−L−リジン(MW:15kDa−30kDa)を用いた以外は実施例14と同じ操作を行い、ヒト血清アルブミン・ポリ−L−リジン複合体含有水性懸濁液を得た。
(実施例16)
ポリ−L−リジン(MW:30kDa以上)を用いた以外は実施例14と同じ操作を行い、ヒト血清アルブミン・ポリ−L−リジン複合体含有水性懸濁液を得た。
<ウシ血清アルブミン>
(実施例17)
10mM MOPS緩衝液(pH7.0)中において、ウシ血清アルブミン(pI:5.0、MW:69kDa)を0.5mg/mLの濃度となるように調製し、ウシ血清アルブミン1質量部に対し0.05〜0.5質量部のポリ−L−リジン(MW:4kDa−15kDa)を加えた。これら調製した各液を遠心分離し全容の9割を上清部として除去し、ウシ血清アルブミン・ポリ−L−リジン複合体含有水性懸濁液を得た。
(実施例18)
10mM MOPS緩衝液(pH6.4)を用いた以外は実施例17と同じ操作を行い、ウシ血清アルブミン・ポリ−L−リジン複合体含有水性懸濁液を得た。
(実施例19)
10mM MOPS緩衝液(pH7.0)中において、ウシ血清アルブミンを49.7mg/mLの濃度となるように調製し、ウシ血清アルブミン1質量部に対し0.03〜0.15質量部のポリ−L−リジン(MW:4kDa−15kDa)を加えた。これら調製した各液を遠心分離し全容の9割を上清部として除去し、ウシ血清アルブミン・ポリ−L−リジン複合体含有水性懸濁液を得た。
<INF−α−2b>
(実施例20)
10mM MOPS緩衝液(pH7.5)中において、インターフェロン(INF)−α−2b(pI:5.7、MW:18kDa)を0.04mg/mLの濃度となるように調製し、INF−α−2b、1質量部に対し0.05〜0.5質量部のポリ−L−リジン(MW:4kDa−15kDa)を加えた。これら調製した各液を遠心分離し全容の9割を上清部として除去し、INF−α−2b・ポリ−L−リジン複合体含有水性懸濁液を得た。
(実施例21)
10mM MOPS緩衝液(pH7.0)中において、INF−α−2bを0.1mg/mLの濃度となるように調製し、INF−α−2b、1質量部に対し0.05〜0.5質量部のポリ−L−リジン(MW:4kDa−15kDa)を加えた。これら調製した各液を遠心分離し全容の9割を上清部として除去し、INF−α−2b・ポリ−L−リジン複合体含有水性懸濁液を得た。
<ヒト心房性ナトリウム利尿ペプチド>
(実施例22)
10mM TrisHCl緩衝液(pH9.0)中において、ヒト心房性ナトリウム利尿ペプチド(pI:10.5、MW:3kDa)を0.5mg/mLの濃度となるように調製し、ヒト心房性ナトリウム利尿ペプチド、1質量部に対し0.05〜1質量部のポリ−L−グルタミン酸(MW:0.75kDa−5kDa)を加えた。これら調製した各液を遠心分離し全容の9割を上清部として除去し、ヒト心房性ナトリウム利尿ペプチド・ポリ−L−グルタミン酸複合体含有水性懸濁液を得た。
(実施例23)
10mM MOPS緩衝液(pH7.0)を用いた以外は実施例22と同じ操作を行い、ヒト心房性ナトリウム利尿ペプチド・ポリ−L−グルタミン酸複合体含有水性懸濁液を得た。
<ウシサイログロブリン>
(実施例24)
10mM MOPS緩衝液(pH7.0)中において、ウシサイログロブリン(pI:5.5、MW:670kDa)を0.12mg/mLの濃度となるように調製し、ウシサイログロブリン、1質量部に対し0.05〜1質量部のポリ−L−リジン(MW:4kDa−15kDa)を加えた。これら調製した各液を遠心分離し全容の9割を上清部として除去し、ウシサイログロブリン・ポリ−L−リジン複合体含有水性懸濁液を得た。
(実施例25)
ポリ−L−リジン(MW:30kDa以上)を用いた以外は実施例24と同じ操作を行い、ウシサイログロブリン・ポリ−L−リジン複合体含有水性懸濁液を得た。
<抗TNFαモノクローナル抗体>
(実施例26)
10mM MOPS緩衝液(pH5.5)中において、抗腫瘍壊死因子(TNF)αモノクローナル抗体(pI:8.7、MW:150kDa)を0.5mg/mLの濃度となるように調製し、抗TNFαモノクローナル抗体1質量部に対し0.05〜2質量部のポリ−L−グルタミン酸(MW:3kDa−15kDa)を加えた。これら調製した各液を遠心分離し全容の9割を上清部として除去し、抗TNFαモノクローナル抗体・ポリ−L−グルタミン酸複合体含有水性懸濁液を得た。
(実施例27)
10mM MOPS緩衝液(pH5.5)中において、抗TNFαモノクローナル抗体を0.5mg/mLの濃度となるように調製し、抗TNFαモノクローナル抗体1質量部に対し0.05〜1質量部のポリ−DL−アスパラギン酸(MW:2kDa−11kDa)を加えた。これら調製した各液を遠心分離し全容の9割を上清部として除去し、抗TNFαモノクローナル抗体・ポリ−DL−アスパラギン酸複合体含有水性懸濁液を得た。
(実施例28)
10mM MOPS緩衝液(pH5.5)中において、抗TNFαモノクローナル抗体を0.5mg/mLの濃度となるように調製し、抗TNFαモノクローナル抗体1質量部に対し0.5〜7質量部のポリ−L−グルタミン酸(MW:0.75kDa−5kDa)を加えた。これら調製した各液を遠心分離し全容の9割を上清部として除去し、抗TNFαモノクローナル抗体・ポリ−L−グルタミン酸複合体含有水性懸濁液を得た。
(実施例29)
10mM TrisHCl緩衝液(pH8.2)中において、抗TNFαモノクローナル抗体を0.5mg/mLの濃度となるように調製し、抗TNFαモノクローナル抗体1質量部に対し0.05〜1質量部のポリ−L−グルタミン酸(MW:3kDa−15kDa)を加えた。これら調製した各液を遠心分離し全容の9割を上清部として除去し、抗TNFαモノクローナル抗体・ポリ−L−グルタミン酸複合体含有水性懸濁液を得た。
(実施例30)
10mM MOPS緩衝液(pH7.7)を用いた以外は実施例29と同じ操作を行い、抗TNFαモノクローナル抗体・ポリ−L−グルタミン酸複合体含有水性懸濁液を得た。
(実施例31)
10mM MOPS緩衝液(pH6.5)を用いた以外は実施例29と同じ操作を行い、抗TNFαモノクローナル抗体・ポリ−L−グルタミン酸複合体含有水性懸濁液を得た。
(実施例32)
10mM クエン酸緩衝液(pH4.7)中において、抗TNFαモノクローナル抗体を0.5mg/mLの濃度となるように調製し、抗TNFαモノクローナル抗体1質量部に対し0.1〜1質量部のポリ−L−グルタミン酸(MW:3kDa−15kDa)を加えた。これら調製した各液を遠心分離し全容の9割を上清部として除去し、抗TNFαモノクローナル抗体・ポリ−L−グルタミン酸複合体含有水性懸濁液を得た。
(実施例33)
10mM MOPS緩衝液(pH7.0)中において、抗TNFαモノクローナル抗体を0.5mg/mLの濃度となるように調製し、抗TNFαモノクローナル抗体1質量部に対し0.01〜1質量部のポリ−L−グルタミン酸(MW:15kDa−50kDa)を加えた。これら調製した各液を遠心分離し全容の9割を上清部として除去し、抗TNFαモノクローナル抗体・ポリ−L−グルタミン酸複合体含有水性懸濁液を得た。
(実施例34)
ポリ−L−グルタミン酸(MW:50kDa−100kDa)を用いた以外は実施例33と同じ操作を行い、抗TNFαモノクローナル抗体・ポリ−L−グルタミン酸複合体含有水性懸濁液を得た。
(実施例35)
10mM リン酸緩衝液(pH7.0)中において、抗TNFαモノクローナル抗体を0.5mg/mLの濃度となるように調製し、抗TNFαモノクローナル抗体1質量部に対し0.05〜0.5質量部のポリ−L−グルタミン酸(MW:3kDa−15kDa)を加えた。これら調製した各液を遠心分離し全容の9割を上清部として除去し、抗TNFαモノクローナル抗体・ポリ−L−グルタミン酸複合体含有水性懸濁液を得た。
(実施例36)
10mM PIPES(Piperazine−1,4−bis(2−ethanesulfonic acid))緩衝液(pH7.0)を用いた以外は実施例35と同じ操作を行い、抗TNFαモノクローナル抗体・ポリ−L−グルタミン酸複合体含有水性懸濁液を得た。
(実施例37)
10mM MES緩衝液(pH7.0)を用いた以外は実施例35と同じ操作を行い、抗TNFαモノクローナル抗体・ポリ−L−グルタミン酸複合体含有水性懸濁液を得た。
(実施例38)
10mM HEPES緩衝液(pH7.0)を用いた以外は実施例35と同じ操作を行い、抗TNFαモノクローナル抗体・ポリ−L−グルタミン酸複合体含有水性懸濁液を得た。
<抗IgEモノクローナル抗体>
(実施例39)
10mM MOPS緩衝液(pH5.5)中において、抗免疫グロブリンE(IgE)モノクローナル抗体(pI:7.6、MW:150kDa)を0.5mg/mLの濃度となるように調製し、抗IgEモノクローナル抗体1質量部に対し0.025〜0.5質量部のポリ−L−グルタミン酸(MW:3kDa−15kDa)を加えた。これら調製した各液を遠心分離し全容の9割を上清部として除去し、抗IgEモノクローナル抗体・ポリ−L−グルタミン酸複合体含有水性懸濁液を得た。
(実施例40)
10mM MOPS緩衝液(pH6.5)を用いた以外は実施例39と同じ操作を行い、抗IgEモノクローナル抗体・ポリ−L−グルタミン酸複合体含有水性懸濁液を得た。
(実施例41)
10mM MOPS緩衝液(pH5.5)中において、抗IgEモノクローナル抗体を0.5mg/mLの濃度となるように調製し、抗IgEモノクローナル抗体1質量部に対し0.03〜1質量部のポリ−DL−アスパラギン酸(MW:2kDa−11kDa)を加えた。これら調製した各液を遠心分離し全容の9割を上清部として除去し、抗IgEモノクローナル抗体・ポリ−DL−アスパラギン酸複合体含有水性懸濁液を得た。
(実施例42)
10mM MOPS緩衝液(pH5.5)中において、抗IgEモノクローナル抗体を15.0mg/mLの濃度となるように調製し、抗IgEモノクローナル抗体1質量部に対し0.05〜0.3質量部のポリ−L−グルタミン酸(MW:3kDa−15kDa)を加えた。これら調製した各液を遠心分離し全容の9割を上清部として除去し、抗IgEモノクローナル抗体・ポリ−L−グルタミン酸複合体含有水性懸濁液を得た。
(実施例43)
10mM クエン酸緩衝液(pH5.4)中において、抗IgEモノクローナル抗体を0.5mg/mLの濃度となるように調製し、抗IgEモノクローナル抗体1質量部に対し0.05〜1質量部のポリ−L−グルタミン酸(MW:3kDa−15kDa)を加えた。これら調製した各液を遠心分離し全容の9割を上清部として除去し、抗IgEモノクローナル抗体・ポリ−L−グルタミン酸複合体含有水性懸濁液を得た。
(実施例44)
10mM クエン酸緩衝液(pH4.1)中において、抗IgEモノクローナル抗体を0.5mg/mLの濃度となるように調製し、抗IgEモノクローナル抗体1質量部に対し0.1〜1質量部のポリ−L−グルタミン酸(MW:3kDa−15kDa)を加えた。これら調製した各液を遠心分離し全容の9割を上清部として除去し、抗IgEモノクローナル抗体・ポリ−L−グルタミン酸複合体含有水性懸濁液を得た。
(実施例45)
10mM クエン酸緩衝液(pH3.6)を用いた以外は実施例44と同じ操作を行い、抗IgEモノクローナル抗体・ポリ−L−グルタミン酸複合体含有水性懸濁液を得た。
(実施例46)
10mM TrisHCl緩衝液(pH8.2)中において、抗IgEモノクローナル抗体を0.5mg/mLの濃度となるように調製し、抗IgEモノクローナル抗体1質量部に対し0.025〜0.5質量部のポリ−L−リジン(MW:4kDa−15kDa)を加えた。これら調製した各液を遠心分離し全容の9割を上清部として除去し、抗IgEモノクローナル抗体・ポリ−L−リジン複合体含有水性懸濁液を得た。
(実施例47)
10mM TrisHCl緩衝液(pH9.0)中において、抗IgEモノクローナル抗体を1.0mg/mLの濃度となるように調製し、抗IgEモノクローナル抗体1質量部に対し0.03〜0.15質量部のポリ−L−リジン(MW:4kDa−15kDa)を加えた。これら調製した各液を遠心分離し全容の9割を上清部として除去し、抗IgEモノクローナル抗体・ポリ−L−リジン複合体含有水性懸濁液を得た。
(実施例48)
ポリ−L−リジン(MW:15kDa−30kDa)を用いた以外は実施例47と同じ操作を行い、抗IgEモノクローナル抗体・ポリ−L−リジン複合体含有水性懸濁液を得た。
(実施例49)
ポリ−L−リジン(MW:30kDa以上)を用いた以外は実施例48と同じ操作を行い、抗IgEモノクローナル抗体・ポリ−L−リジン複合体含有水性懸濁液を得た。
(実施例50)
ポリ−L−アルギニン(MW:5kDa−15kDa)を用いた以外は実施例47と同じ操作を行い、抗IgEモノクローナル抗体・ポリ−L−リジン複合体含有水性懸濁液を得た。
<抗EGFRモノクローナル抗体>
(実施例51)
10mM MOPS緩衝液(pH5.0)中において、抗上皮細胞増殖因子受容体(EGFR)モノクローナル抗体(pI:6.9、MW:150kDa)を1.0mg/mLの濃度となるように調製し、抗EGFRモノクローナル抗体1質量部に対し0.01〜0.5質量部のポリ−L−グルタミン酸(MW:3kDa−15kDa)を加えた。これら調製した各液を遠心分離し全容の9割を上清部として除去し、抗EGFRモノクローナル抗体・ポリ−L−グルタミン酸複合体含有水性懸濁液を得た。
(実施例52)
10mM MOPS緩衝液(pH5.5)を用いた以外は実施例51と同じ操作を行い、抗EGFRモノクローナル抗体・ポリ−L−グルタミン酸複合体含有水性懸濁液を得た。
(実施例53)
10mM クエン酸緩衝液(pH4.7)中において、抗EGFRモノクローナル抗体を0.5mg/mLの濃度となるように調製し、抗EGFRモノクローナル抗体1質量部に対し0.05〜1質量部のポリ−L−グルタミン酸(MW:3kDa−15kDa)を加えた。これら調製した各液を遠心分離し全容の9割を上清部として除去し、抗EGFRモノクローナル抗体・ポリ−L−グルタミン酸複合体含有水性懸濁液を得た。
(実施例54)
10mM MES緩衝液(pH4.7)を用いた以外は実施例53と同じ操作を行い、抗EGFRモノクローナル抗体・ポリ−L−グルタミン酸複合体含有水性懸濁液を得た。(実施例55)
10mM クエン酸緩衝液(pH3.4)中において、抗EGFRモノクローナル抗体を0.5mg/mLの濃度となるように調製し、抗EGFRモノクローナル抗体1質量部に対し0.3〜1質量部のポリ−L−グルタミン酸(MW:3kDa−15kDa)を加えた。これら調製した各液を遠心分離し全容の9割を上清部として除去し、抗EGFRモノクローナル抗体・ポリ−L−グルタミン酸複合体含有水性懸濁液を得た。
(実施例56)
10mM クエン酸緩衝液(pH2.9)中において、抗EGFRモノクローナル抗体を0.5mg/mLの濃度となるように調製し、抗EGFRモノクローナル抗体1質量部に対し0.5〜1.5質量部のポリ−L−グルタミン酸(MW:3kDa−15kDa)を加えた。これら調製した各液を遠心分離し全容の9割を上清部として除去し、抗EGFRモノクローナル抗体・ポリ−L−グルタミン酸複合体含有水性懸濁液を得た。
(実施例57)
10mM MOPS緩衝液(pH7.5)中において、EGFRモノクローナル抗体を0.5mg/mLの濃度となるように調製し、抗EGFRモノクローナル抗体1質量部に対し0.05〜1質量部のポリ−L−リジン(MW:4kDa−15kDa)を加えた。これら調製した各液を遠心分離し全容の9割を上清部として除去し、抗EGFRモノクローナル抗体・ポリ−L−リジン複合体含有水性懸濁液を得た。
(実施例58)
10mM TrisHCl緩衝液(pH8.2)を用いた以外は実施例57と同じ操作を行い、抗EGFRモノクローナル抗体・ポリ−L−グルタミン酸複合体含有水性懸濁液を得た。
(実施例59)
10mM TrisHCl緩衝液(pH8.7)を用いた以外は実施例57と同じ操作を行い、抗EGFRモノクローナル抗体・ポリ−L−グルタミン酸複合体含有水性懸濁液を得た。
<抗HER2モノクローナル抗体>
(実施例60)
10mM MOPS緩衝液(pH6.5)中において、抗ヒト上皮成長因子受容体(HER)2モノクローナル抗体(pI:8.7、MW:150kDa)を0.5mg/mLの濃度となるように調製し、抗HER2モノクローナル抗体1質量部に対し0.05〜1質量部のポリ−L−グルタミン酸(MW:3kDa−15kDa)を加えた。これら調製した各液を遠心分離し全容の9割を上清部として除去し、抗HER2モノクローナル抗体・ポリ−L−グルタミン酸複合体含有水性懸濁液を得た。
(実施例61)
10mM MOPS緩衝液(pH7.7)を用いた以外は実施例60と同じ操作を行い、抗HER2モノクローナル抗体・ポリ−L−グルタミン酸複合体含有水性懸濁液を得た。
(実施例62)
10mM TrisHCl緩衝液(pH8.2)を用いた以外は実施例60と同じ操作を行い、抗HER2モノクローナル抗体・ポリ−L−グルタミン酸複合体含有水性懸濁液を得た。
(実施例63)
10mM クエン酸緩衝液(pH4.7)中において、抗HER2モノクローナル抗体を0.5mg/mLの濃度となるように調製し、抗HER2モノクローナル抗体1質量部に対し0.1〜1質量部のポリ−L−グルタミン酸(MW:3kDa−15kDa)を加えた。これら調製した各液を遠心分離し全容の9割を上清部として除去し、抗HER2モノクローナル抗体・ポリ−L−グルタミン酸複合体含有水性懸濁液を得た。
<抗CD20モノクローナル抗体>
(実施例64)
10mM MOPS緩衝液(pH6.5)中において、抗CD20モノクローナル抗体(pI:8.7、MW:150kDa)を0.5mg/mLの濃度となるように調製し、抗CD20モノクローナル抗体1質量部に対し0.05〜1質量部のポリ−L−グルタミン酸(MW:3kDa−15kDa)を加えた。これら調製した各液を遠心分離し全容の9割を上清部として除去し、抗CD20モノクローナル抗体・ポリ−L−グルタミン酸複合体含有水性懸濁液を得た。
(実施例65)
10mM TrisHCl緩衝液(pH8.7)を用いた以外は実施例64と同じ操作を行い、抗CD20モノクローナル抗体・ポリ−L−グルタミン酸複合体含有水性懸濁液を得た。
(実施例66)
10mM MOPS緩衝液(pH7.7)を用いた以外は実施例63と同じ操作を行い、抗CD20モノクローナル抗体・ポリ−L−グルタミン酸複合体含有水性懸濁液を得た。
(実施例67)
10mM クエン酸緩衝液(pH4.7)中において、抗CD20モノクローナル抗体を0.5mg/mLの濃度となるように調製し、抗CD20モノクローナル抗体1質量部に対し0.1〜1質量部のポリ−L−グルタミン酸(MW:3kDa−15kDa)を加えた。これら調製した各液を遠心分離し全容の9割を上清部として除去し、抗CD20モノクローナル抗体・ポリ−L−グルタミン酸複合体含有水性懸濁液を得た。
<ヒト型可溶性TNF受容体−Fc融合タンパク質>
(実施例68)
10mM TrisHCl緩衝液(pH8.7)中において、ヒト型可溶性TNF受容体−Fc融合タンパク質(pI:8.0、MW:150kDa)を1.0mg/mLの濃度となるように調製し、ヒト型可溶性TNF受容体−Fc融合タンパク質1質量部に対し0.025〜0.5質量部のポリ−L−リジン(MW:4kDa−15kDa)を加えた。これら調製した各液を遠心分離し全容の9割を上清部として除去し、ヒト型可溶性TNF受容体−Fc融合タンパク質・ポリ−L−リジン複合体含有水性懸濁液を得た。
(実施例69)
ポリ−L−リジン(MW:15kDa−30kDa)を用いた以外は実施例68と同じ操作を行い、ヒト型可溶性TNF受容体−Fc融合タンパク質・ポリ−L−リジン複合体含有水性懸濁液を得た。
(実施例70)
ポリ−L−リジン(MW:30kDa以上)を用いた以外は実施例68と同じ操作を行い、ヒト型可溶性TNF受容体−Fc融合タンパク質・ポリ−L−リジン複合体含有水性懸濁液を得た。
<ヒト免疫グロブリンG>
(実施例71)
10mM MOPS緩衝液(pH5.5)中において、ヒト免疫グロブリンG(hIgG)(pI:6.9、MW:150kDa)を1.0mg/mLの濃度となるように調製し、hIgG1質量部に対し0.01〜0.5質量部のポリ−L−グルタミン酸(MW:3kDa−15kDa)を加えた。これら調製した各液を遠心分離し全容の9割を上清部として除去し、hIgG・ポリ−L−グルタミン酸複合体含有水性懸濁液を得た。
(実施例72)
ポリ−DL−アスパラギン酸(MW:2kDa−11kDa)を用いた以外は実施例71と同じ操作を行い、hIgG・ポリ−DL−アスパラギン酸複合体含有水性懸濁液を得た。
(比較例1〜72)
上記実施例1〜72においてポリアミノ酸を加えなかった以外は実施例1〜72と同じ操作を行った。
[試験例1]
上記実施例1〜72について、得られた各タンパク質・ポリアミノ酸複合体含有水性懸濁液に150mMとなるように塩化ナトリウムを加え、波長280nmの吸光度を測定することによりタンパク質濃度を測定した。また、上記比較例1〜72について、波長280nmの吸光度を測定することによりタンパク質濃度を測定した。これらの結果より、各比較例におけるタンパク質濃度に対する各実施例のタンパク質濃度比を求めたところ、実施例1〜72の全てで、タンパク質濃度が上昇しており、濃縮できることが示された。結果の詳細を表1〜7に示した。
(比較例7−2、比較例27−2)
上記実施例7において、ポリ−L−アルギニン(MW:5kDa−15kDa)を用いるかわりにL-アルギニンを用い、それ以外は実施例7と同じ操作を行って、陰性対照とした(比較例7−2)。また、上記実施例27において、ポリ−DL−アスパラギン酸(MW:2kDa−11kDa)を用いるかわりにアスパラギン酸を用い、それ以外は実施例27と同じ操作を行って陰性対照とした(比較例27−2)。
(比較例7および27)〕
上記陰性対照の比較例としてアミノ酸もポリアミノ酸も加えなかった上記比較例7、比較例27と同じ試料を作成した。
[試験例2]
上記比較例7−2および27−2について、得られた各タンパク質・アミノ酸含有水性懸濁液に150mMとなるように塩化ナトリウムを加え、波長280nmの吸光度を測定することによりタンパク質濃度を測定した。また、上記比較例7および27について、波長280nmの吸光度を測定することによりタンパク質濃度を測定した。これらの結果より、各比較例におけるタンパク質濃度に対する各実施例のタンパク質濃度比を求めたところ、陰性対照比較例7−2および27−2においてはタンパク質濃度の上昇が認められず、ポリアミノ酸ではないアミノ酸単独では、濃縮できないことが示された。結果の詳細を表8に、ポリアミノ酸により濃縮が可能だった実施例7および27の結果と併記して示した。
〔2.タンパク質の濃縮は最大濃縮率を有する。〕
本発明の複合体を形成するタンパク質の濃縮方法は、用いた緩衝液のpI、pH,に対して濃縮率を表にすると最大濃縮率を示すことがわかる。
下記表9は、表1〜7の濃縮中のタンパク質の等電点pIに対して緩衝液のpHを変化させて、pI‐pHの絶対値(|pI‐pH|)が表1〜7に示す値となっている状態で、タンパク質とポリアミノ酸とを緩衝液中に添加してタンパク質とポリアミノ酸との複合体を形成した。得られた複合体中のタンパク質濃度を測定し、濃縮率の最大値が得られる|pI‐pH|の値を示した。
濃縮率を|pI‐pH|に対してプロットすると図5に示すグラフが得られる。複合体中のタンパク質の最大濃縮率が、|pI−pH|、1.5〜4.0の範囲に存在することが図5に示されている。
濃縮率の最大値が得られる|pI−pH|の値は以下である。
抗TNFαモノクローナル抗体−ポリ-L-グルタミン酸:2.2
抗IgEモノクローナル抗体−ポリ-L-グルタミン酸:2.2
抗EGFRモノクローナル抗体−ポリ-L-グルタミン酸:2.2
L-アスパラギナーゼ−ポリ-L-リジン:2.3
〔3.タンパク質の濃縮で活性が損なわれないことを示す実施例73〜79〕
<抗IgEモノクローナル抗体>
(実施例73)
10mM MOPS緩衝液(pH5.5)中において、抗IgEモノクローナル抗体を0.5mg/mLの濃度となるように調製し、抗IgEモノクローナル抗体1質量部に対し0.25、0.05、0.1、0.15質量部のポリ−L−グルタミン酸(MW:3kDa−15kDa)を加えた。これら調製した各液を遠心分離し全容の9割を上清部として除去し、抗IgEモノクローナル抗体・ポリ−L−グルタミン酸複合体含有水性懸濁液を得た。
(比較例73)
ポリ−L−グルタミン酸を加えなかった以外は実施例73と同じ操作を行った。
[試験例3]
上記実施例73について、得られた抗IgEモノクローナル抗体・ポリ−L−グルタミン酸複合体含有水性懸濁液に150mMとなるように塩化ナトリウムを加え、タンパク質濃度測定として波長280nmの吸光度を測定し、さらに、抗IgEモノクローナル抗体活性を測定した。また、比較例73について、タンパク質濃度測定として波長280nmの吸光度を測定し、さらに抗IgEモノクローナル抗体活性を測定した。これら結果より、比較例73におけるタンパク質濃度に対する実施例73のタンパク質濃度比、および比較例73における抗IgEモノクローナル抗体活性に対する実施例73の抗IgEモノクローナル抗体活性の比を求めたところ、タンパク質濃度比、活性比ともに約10倍に上昇しており、抗IgEモノクローナル抗体の活性を損なうことなく濃縮できることが示された。結果を表10に示した。
(実施例74)
10mM MOPS緩衝液(pH5.5)中において、抗IgEモノクローナル抗体を15mg/mLの濃度となるように調製し、抗IgEモノクローナル抗体1質量部に対し0.05、0.10、0.15質量部のポリ−L−グルタミン酸(MW:3kDa−15kDa)を加えた。これら調製した各液を遠心分離し全容の9割を上清部として除去し、抗IgEモノクローナル抗体・ポリ−L−グルタミン酸複合体含有水性懸濁液を得た。
(比較例74)
ポリ−L−グルタミン酸を加えなかった以外は実施例74と同じ操作を行った。
[試験例4]
上記実施例74について、得られた抗IgEモノクローナル抗体・ポリ−L−グルタミン酸複合体含有水性懸濁液に150mMとなるように塩化ナトリウムを加え、タンパク質濃度測定として波長280nmの吸光度を測定し、さらに、抗IgEモノクローナル抗体活性を測定した。また、比較例74について、タンパク質濃度測定として波長280nmの吸光度を測定し、さらに抗IgEモノクローナル抗体活性を測定した。これらの結果より、比較例74におけるタンパク質濃度に対する実施例74のタンパク質濃度比、および比較例74における抗IgEモノクローナル抗体活性に対する実施例74の抗IgEモノクローナル抗体活性の比を求めたところ、タンパク質濃度比、活性比ともに約10倍に上昇しており、抗IgEモノクローナル抗体の活性を損なうことなく濃縮できることが示された。結果を表11に示した。
(実施例75)
10mM クエン酸緩衝液(pH3.6)中において、抗IgEモノクローナル抗体を0.5mg/mLの濃度となるように調製し、抗IgEモノクローナル抗体1質量部に対し0.6質量部のポリ−L−グルタミン酸(MW:3kDa−15kDa)を加えた。これら調製した各液を遠心分離し全容の9割を上清部として除去し、各抗IgEモノクローナル抗体・ポリ−L−グルタミン酸複合体含有水性懸濁液を得た。
(比較例75)
ポリ−L−グルタミン酸を加えなかった以外は実施例75と同じ操作を行った。
[試験例5]
上記実施例75について、得られた各抗IgEモノクローナル抗体・ポリ−L−グルタミン酸複合体含有水性懸濁液に150mMとなるように塩化ナトリウムを加え、タンパク質濃度測定として波長280nmの吸光度を測定し、さらに、抗IgEモノクローナル抗体活性を測定した。また、比較例75について、タンパク質濃度測定として波長280nmの吸光度を測定し、さらに抗IgEモノクローナル抗体活性を測定した。これら結果より、比較例75におけるタンパク質濃度に対する実施例75のタンパク質濃度比、および比較例75における抗IgEモノクローナル抗体活性に対する実施例75の抗IgEモノクローナル抗体活性の比を求めたところ、タンパク質濃度比、活性比ともに約10倍に上昇しており、抗IgEモノクローナル抗体の活性を損なうことなく濃縮できることが示された。結果を表12に示した。
<L−アスパラギナーゼ>
(実施例76)
10mM MOPS緩衝液(pH7.0)中において、L−アスパラギナーゼを0.5mg/mLの濃度となるように調製し、L−アスパラギナーゼ1質量部に対し0.025、0.05、0.10、0.15、0.3、0.5、0.7および1質量部のポリ−L−リジン(MW:4kDa−15kDa)を加えた。調製した液を遠心分離し全容の9割を上清部として除去し、L−アスパラギナーゼ・ポリ−L−リジン複合体含有水性懸濁液を得た。
(比較例76)
ポリ−L−リジンを加えなかった以外は実施例76と同じ操作を行った。
[試験例6]
上記実施例76について、得られたL−アスパラギナーゼ・ポリ−L−リジン複合体含有水性懸濁液に150mMとなるように塩化ナトリウムを加え、タンパク質濃度測定として波長280nmの吸光度を測定し、さらに、L−アスパラギナーゼ活性を測定した。また、比較例76について、タンパク質濃度測定として波長280nmの吸光度を測定し、さらにL−アスパラギナーゼ活性を測定した。これらの結果より、比較例76におけるタンパク質濃度に対する実施例76のタンパク質濃度比、および比較例76におけるL−アスパラギナーゼ活性に対する実施例76のL−アスパラギナーゼ活性の比を求めたところ、タンパク質濃度比、活性比ともに約10倍に上昇しており、L−アスパラギナーゼの活性を損なうことなく濃縮できることが示された。結果を表13に示した。
(実施例77)
10mM MOPS緩衝液(pH7.0)中において、L−アスパラギナーゼを15mg/mLの濃度となるように調製し、L−アスパラギナーゼ1質量部に対し0.025、0.05、0.1、0.15および0.3質量部のポリ−L−リジン(MW:4kDa−15kDa)を加えた。これら調製した各液を遠心分離し全容の9割を上清部として除去し、L−アスパラギナーゼ・ポリ−L−リジン複合体含有水性懸濁液を得た。
(比較例77)
ポリ−L−リジンを加えなかった以外は実施例77と同じ操作を行った。
[試験例7]
上記実施例77について、得た各L−アスパラギナーゼ・ポリ−L−リジン複合体含有水性懸濁液に150mMとなるように塩化ナトリウムを加え、タンパク質濃度測定として波長280nmの吸光度を測定し、さらに、L−アスパラギナーゼ活性を測定した。また、比較例77について、タンパク質濃度測定として波長280nmの吸光度を測定し、さらにL−アスパラギナーゼ活性を測定した。これら結果より、比較例77におけるタンパク質濃度に対する実施例77のタンパク質濃度比、および比較例77におけるL−アスパラギナーゼ活性に対する実施例77のL−アスパラギナーゼ活性の比を求めたところ、タンパク質濃度比、活性比ともに約10倍に上昇しており、L−アスパラギナーゼの活性を損なうことなく濃縮できることが示された。結果を表14に示した。
(実施例78)
10mM MOPS緩衝液(pH6.5)中において、抗TNFαモノクローナル抗体を0.5mg/mLの濃度となるように調製し、抗TNFαモノクローナル抗体1質量部に対し0.05、0.1、0.15、0.3、0.5および1質量部のポリ−L−グルタミン酸(MW:3kDa−15kDa)を加えた。これら調製した各液を遠心分離し全容の9割を上清部として除去し、抗TNFαモノクローナル抗体・ポリ−L−グルタミン酸複合体含有水性懸濁液を得た。
(比較例78)
ポリ−L−グルタミン酸を加えなかった以外は実施例78と同じ操作を行った。
[試験例8]
上記実施例78について、得られた抗TNFαモノクローナル抗体・ポリ−L−グルタミン酸複合体含有水性懸濁液に150mMとなるように塩化ナトリウムを加え、タンパク質濃度測定として波長280nmの吸光度を測定し、さらに、抗TNFαモノクローナル抗体活性を測定した。また、比較例78について、タンパク質濃度測定として波長280nmの吸光度を測定し、さらに抗TNFαモノクローナル抗体活性を測定した。これらの結果より、比較例78におけるタンパク質濃度に対する実施例78のタンパク質濃度比、および比較例78における抗TNFαモノクローナル抗体活性に対する実施例78の抗TNFαモノクローナル抗体活性の比を求めたところ、タンパク質濃度比、活性比ともに約10倍に上昇しており、抗TNFαモノクローナル抗体の活性を損なうことなく濃縮できることが示された。結果を表15に示した。
(実施例79)
10mM クエン酸緩衝液(pH4.7)中において、抗TNFαモノクローナル抗体を0.5mg/mLの濃度となるように調製し、抗TNFαモノクローナル抗体1質量部に対し0.4質量部のポリ−L−グルタミン酸(MW:3kDa−15kDa)を加えた。これら調製した各液を遠心分離し全容の9割を上清部として除去し、各抗TNFαモノクローナル抗体・ポリ−L−グルタミン酸複合体含有水性懸濁液を得た。
(比較例79)
ポリ−L−グルタミン酸を加えなかった以外は実施例79と同じ操作を行った。
[試験例9]
上記実施例79について、得られた各抗TNFαモノクローナル抗体・ポリ−L−グルタミン酸複合体含有水性懸濁液に150mMとなるように塩化ナトリウムを加え、タンパク質濃度測定として波長280nmの吸光度を測定し、さらに、抗TNFαモノクローナル抗体活性を測定した。また、比較例79について、タンパク質濃度測定として波長280nmの吸光度を測定し、さらに抗TNFαモノクローナル抗体活性を測定した。これら結果より、比較例79におけるタンパク質濃度に対する実施例79のタンパク質濃度比、および比較例79における抗TNFαモノクローナル抗体活性に対する実施例79の抗TNFαモノクローナル抗体の比を求めたところ、タンパク質濃度比、活性比ともに約10倍に上昇しており、抗TNFαモノクローナル抗体の活性を損なうことなく濃縮できることが示された。結果を表16に示した。
〔4.タンパク質の濃縮で二次構造が保たれる実施例80,81〕
<抗TNFαモノクローナル抗体>
(実施例80)
10mM MOPS緩衝液(pH7.0)中において、抗TNFαモノクローナル抗体を0.5mg/mLの濃度となるように調製し、抗TNFαモノクローナル抗体1質量部に対し0.04のポリ−L−グルタミン酸(MW:3kDa−15kDa)を加えた。これら調製した各液を遠心分離し全容の9割を上清部として除去し、抗TNFαモノクローナル抗体・ポリ−L−グルタミン酸複合体含有水性懸濁液を得た。
[試験例10]
上記実施例80について、得られた抗TNFαモノクローナル抗体・ポリ−L−グルタミン酸複合体含有水性懸濁液の一部を採り、150mMとなるように塩化ナトリウムを加え、タンパク質濃度測定として波長280nmの吸光度を測定した結果、5.0mg/mLであった。さらに、抗TNFαモノクローナル抗体・ポリ−L−グルタミン酸複合体含有水性懸濁液に150mMとなるように塩化ナトリウムを加え、CDスペクトルを測定した。また、10mM MOPS緩衝液(pH7.0)中において抗TNFαモノクローナル抗体を0.5mg/mLの濃度となるように調製した液を対照液(比較例80)として、CDスペクトルを測定した。その結果、両者のCDスペクトルは一致しており、タンパク質の濃縮により二次構造が変化せず、保たれていることが明らかとなった。結果を図6に示した。
(実施例81)
10mM クエン酸緩衝液(pH4.7)中において、抗TNFαモノクローナル抗体を0.5mg/mLの濃度となるように調製し、抗TNFαモノクローナル抗体1質量部に対し0.5質量部のポリ−L−グルタミン酸(MW:3kDa−15kDa)を加えた。これら調製した各液を遠心分離し全容の9割を上清部として除去し、抗TNFαモノクローナル抗体・ポリ−L−グルタミン酸複合体含有水性懸濁液を得た。
[試験例11]
上記実施例81について、得られた抗TNFαモノクローナル抗体・ポリ−L−グルタミン酸複合体含有水性懸濁液の一部を採り、150mMとなるように塩化ナトリウムを加え、タンパク質濃度測定として波長280nmの吸光度を測定した結果、5.0mg/mLであった。さらに、抗TNFαモノクローナル抗体・ポリ−L−グルタミン酸複合体含有水性懸濁液に150mMとなるように塩化ナトリウムを加え、CDスペクトルを測定した。また、10mM クエン酸緩衝液(pH5.2)中において抗TNFαモノクローナル抗体を0.5mg/mLの濃度となるように調製した液を対照液(比較例81)として、CDスペクトルを測定した。その結果、両者のCDスペクトルは一致しており、タンパク質の濃縮により二次構造が変化せず、保たれていることが明らかとなった。結果を図7に示した。
〔5.振とうストレスに対する安定化効果を示す実施例82〜87〕
<L−アスパラギナーゼ>
(実施例82)
10mM MOPS緩衝液(pH7.0)中において、L−アスパラギナーゼを0.5mg/mLの濃度となるように調製し、L−アスパラギナーゼ1質量部に対し0.05質量部のポリ−L−リジン(MW:4kDa−15kDa)を加えた。調製した液を遠心分離し全容の9割を上清部として除去し、L−アスパラギナーゼ・ポリ−L−リジン複合体含有水性懸濁液を得た。
[試験例12]
上記実施例82について、得られたL−アスパラギナーゼ・ポリ−L−リジン複合体含有水性懸濁液の一部を採り、150mMとなるように塩化ナトリウムを加え、タンパク質濃度測定として波長280nmの吸光度を測定した結果、5.0mg/mLであった。残りのL−アスパラギナーゼ・ポリ−L−リジン複合体含有水性懸濁液をポリプロピレン製ディスポーザブルシリンジに充填し、振とう機(バイオシェーカーV・BR−36)に設置し、500rpm、室温下で60時間振とうした。振とう前および振とう後のL−アスパラギナーゼ・ポリ−L−リジン複合体含有水性懸濁液に150mMとなるように塩化ナトリウムを加え、L−アスパラギナーゼ活性を測定した。また、10mM MOPS緩衝液(pH7.0)中においてL−アスパラギナーゼを5.0mg/mLの濃度となるように調製した液を対照液(比較例82)とし、シリンジに充填し、同時に振とうした。振とう前および振とう後の対照液のL−アスパラギナーゼ活性を測定した。これらの結果より、L−アスパラギナーゼ・ポリ−L−リジン複合体含有水性懸濁液(実施例82)および対照液(比較例82)について、振とう前に対する振とう後のL−アスパラギナーゼ活性残存率を求めたところ、対照液では活性の低下がみられたが、L−アスパラギナーゼ・ポリ−L−リジン複合体含有水性懸濁液では活性の低下は認められず、タンパク質・ポリアミノ酸複合体含有水性懸濁液の振とうストレスに対する安定化効果が示された。結果を表17に示した。
(実施例83)
10mM MOPS緩衝液(pH7.0)中において、L−アスパラギナーゼを1.0mg/mLの濃度となるように調製した以外は実施例81と同じ操作を行った。
[試験例13]
上記実施例83について、得られたL−アスパラギナーゼ・ポリ−L−リジン複合体含有水性懸濁液の一部を採り、150mMとなるように塩化ナトリウムを加え、タンパク質濃度測定として波長280nmの吸光度を測定した結果、10.0mg/mLであった。残りのL−アスパラギナーゼ・ポリ−L−リジン複合体含有水性懸濁液をポリプロピレン製ディスポーザブルシリンジに充填し、振とう機(バイオシェーカーV・BR−36)に設置し、500rpm、室温下で60時間振とうした。振とう前および振とう後のL−アスパラギナーゼ・ポリ−L−リジン複合体含有水性懸濁液に150mMとなるように塩化ナトリウムを加え、L−アスパラギナーゼ活性を測定した。また、10mM MOPS緩衝液(pH7.0)中においてL−アスパラギナーゼを10.0mg/mLの濃度となるように調製した液を対照液(比較例83)とし、シリンジに充填し、同時に振とうした。振とう前および振とう後の対照液のL−アスパラギナーゼ活性を測定した。これらの結果より、L−アスパラギナーゼ・ポリ−L−リジン複合体含有水性懸濁液および対照液について、振とう前に対する振とう後のL−アスパラギナーゼ活性残存率を求めたところ、対照液では活性の低下がみられたが、L−アスパラギナーゼ・ポリ−L−リジン複合体含有水性懸濁液では活性の低下は認められず、タンパク質・ポリアミノ酸複合体含有水性懸濁液の振とうストレスに対する安定化効果が示された。結果を表18に示した。
<抗EGFRモノクローナル抗体>
(実施例84)
10mM MOPS緩衝液(pH5.0)中において、抗EGFRモノクローナル抗体を13.3mg/mLの濃度となるように調製し、抗EGFRモノクローナル抗体1質量部に対し0.07質量部のポリ−L−グルタミン酸(MW:3kDa−15kDa)を加えた。調製した液を遠心分離し全容の9割を上清部として除去し、抗EGFRモノクローナル抗体・ポリ−L−グルタミン酸複合体含有水性懸濁液を得た。
[試験例14]
上記実施例84について、得た抗EGFRモノクローナル抗体・ポリ−L−グルタミン酸複合体含有水性懸濁液の一部を採り、150mMとなるように塩化ナトリウムを加え、タンパク質濃度測定として波長280nmの吸光度を測定した結果、78.5mg/mLであった。残りの抗EGFRモノクローナル抗体・ポリ−L−グルタミン酸複合体含有水性懸濁液をポリプロピレン製ディスポーザブルシリンジに充填し、振とう機(バイオシェーカーV・BR−36)に設置し、500rpm、室温下で90時間振とうした。振とう前および振とう後の抗EGFRモノクローナル抗体・ポリ−L−グルタミン酸複合体含有水性懸濁液に150mMとなるように塩化ナトリウムを加え、10,000gで10分間遠心分離し、上清部のタンパク質濃度測定として波長280nmの吸光度を測定した。また、10mM MOPS緩衝液(pH5.0)中において抗EGFRモノクローナル抗体を78.5mg/mLの濃度となるように調製した液を対照液(比較例84)とし、シリンジに充填し、同時に振とうした。振とう前および振とう後の対照液(比較例84)に150mMとなるように塩化ナトリウムを加え、10,000gで15分間遠心分離し、上清部のタンパク質濃度測定として波長280nmの吸光度を測定した。これらの結果より、抗EGFRモノクローナル抗体・ポリ−L−グルタミン酸複合体含有水性懸濁液および対照液について、振とう前に対する振とう後のタンパク質含量残存率を求めたところ、対照液では残存率の低下がみられたが、抗EGFRモノクローナル抗体・ポリ−L−グルタミン酸複合体含有水性懸濁液では残存率の低下はみられず、タンパク質・ポリアミノ酸複合体含有水性懸濁液の振とうストレスに対する安定化効果が示された。結果を表19に示した。
<抗TNFαモノクローナル抗体>
(実施例85)
10mM MOPS緩衝液(pH7.0)中において、抗TNFαモノクローナル抗体を0.5mg/mLの濃度となるように調製し、抗TNFαモノクローナル抗体1質量部に対し0.04質量部のポリ−L−グルタミン酸(MW:3kDa−15kDa)を加えた。調製した液を遠心分離し全容の9割を上清部として除去し、抗TNFαモノクローナル抗体・ポリ−L−グルタミン酸複合体含有水性懸濁液を得た。
[試験例15]
上記実施例85について、得られた抗TNFαモノクローナル抗体・ポリ−L−グルタミン酸複合体含有水性懸濁液の一部を採り、150mMとなるように塩化ナトリウムを加え、タンパク質濃度測定として波長280nmの吸光度を測定した結果、5.0mg/mLであった。残りの抗TNFαモノクローナル抗体・ポリ−L−グルタミン酸複合体含有水性懸濁液に9倍量の10mM MOPS緩衝液(pH7.0)を加え、0.5mg/mLとして、ポリプロピレン製ディスポーザブルシリンジに充填し、振とう機(バイオシェーカーV・BR−36)に設置し、500rpm、室温下で60時間振とうした。振とう前および振とう後の抗TNFαモノクローナル抗体・ポリ−L−グルタミン酸複合体含有水性懸濁液に150mMとなるように塩化ナトリウムを加え、10,000gで15分間遠心分離し、上清部のタンパク質濃度測定として波長280nmの吸光度を測定した。
また、10mM MOPS緩衝液(pH7.0)中において抗TNFαモノクローナル抗体を0.5mg/mLの濃度となるように調製した液を対照液(比較例85)とし、シリンジに充填し、同時に振とうした。振とう前および振とう後の対照液に150mMとなるように塩化ナトリウムを加え、10,000gで15分間遠心分離し、上清部のタンパク質濃度測定として波長280nmの吸光度を測定した。これらの結果より、抗TNFαモノクローナル抗体・ポリ−L−グルタミン酸複合体含有水性懸濁液および対照液について、振とう前に対する振とう後のタンパク質含量残存率を求めたところ、対照液では残存率の顕著な低下がみられたが、抗TNFαモノクローナル抗体・ポリ−L−グルタミン酸複合体含有水性懸濁液では残存率の低下が有意に抑制され、タンパク質・ポリアミノ酸複合体含有水性懸濁液の振とうストレスに対する安定化効果が示された。結果を表20に示した。
(実施例86)
10mM MOPS緩衝液(pH6.5)中において、抗TNFαモノクローナル抗体を5mg/mLの濃度となるように調製し、抗TNFαモノクローナル抗体1質量部に対し0.05質量部のポリ−L−グルタミン酸(MW:3kDa−15kDa)を加えた。調製した液を遠心分離し全容の9割を上清部として除去し、抗TNFαモノクローナル抗体・ポリ−L−グルタミン酸複合体含有水性懸濁液を得た。
[試験例16]
上記実施例86について、得られた抗TNFαモノクローナル抗体・ポリ−L−グルタミン酸複合体含有水性懸濁液の一部を採り、150mMとなるように塩化ナトリウムを加え、タンパク質濃度測定として波長280nmの吸光度を測定した結果、50.0mg/mLであった。残りの抗TNFαモノクローナル抗体・ポリ−L−グルタミン酸複合体含有水性懸濁液に9倍量の10mM MOPS緩衝液(pH6.5)を加え、5.0mg/mLとして、ポリプロピレン製ディスポーザブルシリンジに充填し、振とう機(バイオシェーカーV・BR−36)に設置し、500rpm、室温下で60時間振とうした。振とう前および振とう後の抗TNFαモノクローナル抗体・ポリ−L−グルタミン酸複合体含有水性懸濁液に150mMとなるように塩化ナトリウムを加え、10,000gで15分間遠心分離し、上清部のタンパク質濃度測定として波長280nmの吸光度を測定した。
また、10mM MOPS緩衝液(pH6.5)中において抗TNFαモノクローナル抗体を5.0mg/mLの濃度となるように調製した液を対照液(比較例86)とし、シリンジに充填し、同時に振とうした。振とう前および振とう後の対照液に150mMとなるように塩化ナトリウムを加え、10,000gで15分間遠心分離し、上清部のタンパク質濃度測定として波長280nmの吸光度を測定した。これらの結果より、抗TNFαモノクローナル抗体・ポリ−L−グルタミン酸複合体含有水性懸濁液および対照液について、振とう前に対する振とう後のタンパク質含量残存率を求めたところ、対照液では残存率の低下がみられたが、抗TNFαモノクローナル抗体・ポリ−L−グルタミン酸複合体含有水性懸濁液では残存率の低下が認められず、タンパク質・ポリアミノ酸複合体含有水性懸濁液の振とうストレスに対する安定化効果が示された。結果を表21に示した。
<抗IgEモノクローナル抗体>
(実施例87)
10mM クエン酸緩衝液(pH5.4)中において、抗IgEモノクローナル抗体を0.5mg/mLの濃度となるように調製し、抗IgEモノクローナル抗体1質量部に対し0.1質量部のポリ−L−グルタミン酸(MW:3kDa−15kDa)を加えた。調製した液を遠心分離し全容の9割を上清部として除去し、抗IgEモノクローナル抗体・ポリ−L−グルタミン酸複合体含有水性懸濁液を得た。
[試験例17]
上記実施例87について、得られた抗IgEモノクローナル抗体・ポリ−L−グルタミン酸複合体含有水性懸濁液の一部を採り、150mMとなるように塩化ナトリウムを加え、タンパク質濃度測定として波長280nmの吸光度を測定した結果、5.0mg/mLであった。残りの抗IgEモノクローナル抗体・ポリ−L−グルタミン酸複合体含有水性懸濁液に9倍量の10mM クエン酸緩衝液(pH5.4)を加え、0.5mg/mLとして、ポリプロピレン製ディスポーザブルシリンジに充填し、振とう機(バイオシェーカーV・BR−36)に設置し、500rpm、室温下で60時間振とうした。振とう前および振とう後の抗IgEモノクローナル抗体・ポリ−L−グルタミン酸複合体含有水性懸濁液に150mMとなるように塩化ナトリウムを加え、10,000gで15分間遠心分離し、上清部のタンパク質濃度測定として波長280nmの吸光度を測定した。
また、10mM クエン酸緩衝液(pH5.5)中において抗IgEモノクローナル抗体を0.5mg/mLの濃度となるように調製した液を対照液(比較例87)とし、シリンジに充填し、同時に振とうした。振とう前および振とう後の対照液に150mMとなるように塩化ナトリウムを加え、10,000gで15分間遠心分離し、上清部のタンパク質濃度測定として波長280nmの吸光度を測定した。これらの結果より、抗IgEモノクローナル抗体・ポリ−L−グルタミン酸複合体含有水性懸濁液および対照液について、振とう前に対する振とう後のタンパク質含量残存率を求めたところ、対照液では残存率の顕著な低下がみられたが、抗IgEモノクローナル抗体・ポリ−L−グルタミン酸複合体含有水性懸濁液では残存率の低下は認められず、タンパク質・ポリアミノ酸複合体含有水性懸濁液の振とうストレスに対する安定化効果が示された。結果を表22に示した。
〔6.振とうストレスに対して二次構造が保たれる実施例85、87〕
<抗TNFαモノクローナル抗体>
[試験例18]
上記試験例15において得た抗TNFαモノクローナル抗体・ポリ−L−グルタミン酸複合体含有水性懸濁液(実施例85)の振とう後について、CDスペクトルを測定した。一方上記試験例15において得た対照液(比較例85)の振とう前について、CDスペクトルを測定した。その結果、抗TNFαモノクローナル抗体・ポリ−L−グルタミン酸複合体含有水性懸濁液に振とうストレスを加えた場合と、加えていない場合とでCDスペクトルが一致しており、抗TNFαモノクローナル抗体・ポリ−L−グルタミン酸複合体含有水性懸濁液において振とうストレスを加えても二次構造が保たれていることが明らかとなった。結果を図8に示した。
<抗IgEモノクローナル抗体>
[試験例19]
上記試験例17において得た抗IgEモノクローナル抗体・ポリ−L−グルタミン酸複合体含有水性懸濁液(実施例87)の振とう後について、CDスペクトルを測定した。一方上記試験例17において得た対照液(比較例87)の振とう前後について、CDスペクトルを測定した。その結果、対照液に振とうストレスを加えた場合と、加えていない場合とでCDスペクトルが一致せず二次構造変化が生じているのに対し、抗IgEモノクローナル抗体・ポリ−L−グルタミン酸複合体含有水性懸濁液に振とうストレスを加えた場合と、加えていない場合とでCDスペクトルが一致しており、抗IgEモノクローナル抗体・ポリ−L−グルタミン酸複合体含有水性懸濁液において振とうストレスを加えても二次構造が保たれていることが明らかとなった。結果を図9に示した。
〔7.流動性向上を示す実施例88〕
<抗IgEモノクローナル抗体>
(実施例88)
10mM MOPS緩衝液(pH5.5)中において、抗IgEモノクローナル抗体を6.0mg/mL、8.0mg/mLおよび10.0mg/mLの各濃度となるように調製し、抗IgEモノクローナル抗体1質量部に対し0.08質量部のポリ−L−グルタミン酸(MW:3kDa−15kDa)をそれぞれ加えた。調製した液を遠心分離し全容の9割を上清部として除去し、各抗IgEモノクローナル抗体・ポリ−L−グルタミン酸複合体含有水性懸濁液を得た。
[試験例20]
上記実施例88について、得られた抗IgEモノクローナル抗体・ポリ−L−グルタミン酸複合体含有水性懸濁液の一部を採り、150mMとなるように塩化ナトリウムを加え、タンパク質濃度測定として波長280nmの吸光度を測定した結果、それぞれ60.0mg/mL、80.0mg/mLおよび100.0mg/mLであった。残りの抗IgEモノクローナル抗体・ポリ−L−グルタミン酸複合体含有水性懸濁液について、差圧式粘度計で粘度を測定した。また、10mM MOPS緩衝液(pH5.5)中において抗IgEモノクローナル抗体を60.0mg/mL、80.0mg/mLおよび100.0mg/mLの濃度となるように調製した液を対照液(比較例88)とし、差圧式粘度計で粘度を測定した。これらの結果より、抗IgEモノクローナル抗体・ポリ−L−グルタミン酸複合体含有水性懸濁液は対照液と比べて粘度が低く、流動性に優れることが示された。結果を表23に示した。
〔8.酸化ストレスに対する安定化効果を示す実施例89、90〕
<L−アスパラギナーゼ タンパク質濃度40.0mg/mL>
(実施例89)
10mM MOPS緩衝液(pH7.0)中において、L−アスパラギナーゼを18mg/mLの濃度となるように調製し、L−アスパラギナーゼ1質量部に対し0.05質量部のポリ−L−リジン(MW:4kDa−15kDa)を加えた。調製した液を遠心分離し全容の9割を上清部として除去し、L−アスパラギナーゼ・ポリ−L−リジン複合体含有水性懸濁液を得た。
[試験例21]
上記実施例89について、得たL−アスパラギナーゼ・ポリ−L−リジン複合体含有水性懸濁液の一部を採り、150mMとなるように塩化ナトリウムを加え、タンパク質濃度測定として波長280nmの吸光度を測定した結果、90.0mg/mLであった。残りのL−アスパラギナーゼ・ポリ−L−リジン複合体含有水性懸濁液に0.18%過酸化水素/10mM MOPS緩衝液(pH7.0)を1.25倍量加えることで、40.0mg/mL L−アスパラギナーゼ・ポリ−L−リジン複合体含有水性懸濁液/0.1%過酸化水素とした。この液を2時間、4時間および6時間の間それぞれ37℃に保った。また、0.18質量%過酸化水素/10mM MOPS緩衝液(pH7.0)の代わりに10mM MOPS緩衝液(pH7.0)を1.25倍量加えることで、40.0mg/mL L−アスパラギナーゼ・ポリ−L−リジン複合体含有水性懸濁液とした。これらの液を2、4および6時間、37℃に保った後、150mMとなるように塩化ナトリウムを加え、L−アスパラギナーゼ活性を測定した。また、10mM MOPS緩衝液(pH7.0)中においてL−アスパラギナーゼを90.0mg/mLの濃度となるように調製した液を対照液とし、0.18質量%過酸化水素/10mM MOPS緩衝液(pH7.0)を1.25倍量加えることで40.0mg/mL L−アスパラギナーゼ/0.1%過酸化水素とし、さらに0.18質量%過酸化水素/10mM MOPS緩衝液(pH7.0)の代わりに10mM MOPS緩衝液(pH7.0)を1.25倍量加えることで、40.0mg/mL L−アスパラギナーゼとした。これらの対照液を、同時に37℃に保った。2、4および6時間、37℃に保った後、150mMとなるように塩化ナトリウムを加え、L−アスパラギナーゼ活性を測定した。これらの結果より、L−アスパラギナーゼ・ポリ−L−リジン複合体含有水性懸濁液および対照液について、過酸化水素非存在下に対する、過酸化水素存在下のL−アスパラギナーゼ活性残存率を求めたところ、対照液では活性の顕著な低下がみられたが、L−アスパラギナーゼ・ポリ−L−リジン複合体含有水性懸濁液における活性の低下はより軽微であり、タンパク質・ポリアミノ酸複合体含有水性懸濁液の酸化ストレスに対する安定化効果が示された。結果を表24に示した。
<L−アスパラギナーゼ タンパク質濃度80.0mg/mL>
[試験例22]
上記実施例89について、得たL−アスパラギナーゼ・ポリ−L−リジン複合体含有水性懸濁液の一部を採り、150mMとなるように塩化ナトリウムを加え、タンパク質濃度測定として波長280nmの吸光度を測定した結果、90.0mg/mLであった。残りのL−アスパラギナーゼ・ポリ−L−リジン複合体含有水性懸濁液に0.9質量%過酸化水素/10mM MOPS緩衝液(pH7.0)を0.125倍量加えることで、80.0mg/mL L−アスパラギナーゼ・ポリ−L−リジン複合体含有水性懸濁液/0.1%過酸化水素とした。この液を2、4及び6時間37℃に保った。また、0.9質量%過酸化水素/10mM MOPS緩衝液(pH7.0)の代わりに10mM MOPS緩衝液(pH7.0)を0.125倍量加えることで、80.0mg/mL L−アスパラギナーゼ・ポリ−L−リジン複合体含有水性懸濁液とした。これらの液を2、4および6時間、37℃に保った後、150mMとなるように塩化ナトリウムを加え、L−アスパラギナーゼ活性を測定した。また、10mM MOPS緩衝液(pH7.0)中においてL−アスパラギナーゼを90.0mg/mLの濃度となるように調製した液を対照液とし、0.9質量%過酸化水素/10mM MOPS緩衝液(pH7.0)を0.125倍量加えることで80.0mg/mL L−アスパラギナーゼ/0.1%過酸化水素とし、さらに0.9質量%過酸化水素/10mM MOPS緩衝液(pH7.0)の代わりに10mM MOPS緩衝液(pH7.0)を0.125倍量加えることで、80.0mg/mL L−アスパラギナーゼとした。これらの対照液を、同時に37℃に保った。2、4および6時間、37℃に保った後、150mMとなるように塩化ナトリウムを加え、L−アスパラギナーゼ活性を測定した。これらの結果より、L−アスパラギナーゼ・ポリ−L−リジン複合体含有水性懸濁液および対照液について、過酸化水素非存在下に対する、過酸化水素存在下のL−アスパラギナーゼ活性残存率を求めたところ、対照液では活性の顕著な低下がみられたが、L−アスパラギナーゼ・ポリ−L−リジン複合体含有水性懸濁液における活性の低下はより軽微であり、タンパク質・ポリアミノ酸複合体含有水性懸濁液の酸化ストレスに対する安定化効果が示された。結果を表24に示した。
<抗IgEモノクローナル抗体>
(実施例90)
10mM MOPS緩衝液(pH5.5)中において、抗IgEモノクローナル抗体を6.0mg/mLの濃度となるように調製し、抗IgEモノクローナル抗体1質量部に対し0.1質量部のポリ−L−グルタミン酸(MW:3kDa−15kDa)を加えた。調製した液を遠心分離し全容の9割を上清部として除去し、抗IgEモノクローナル抗体・ポリ−L−グルタミン酸複合体含有水性懸濁液を得た。
[試験例23]
上記実施例90について、得た抗IgEモノクローナル抗体・ポリ−L−グルタミン酸複合体含有水性懸濁液の一部を採り、150mMとなるように塩化ナトリウムを加え、タンパク質濃度測定として波長280nmの吸光度を測定した結果、60.0mg/mLであった。残りの抗IgEモノクローナル抗体・ポリ−L−グルタミン酸複合体含有水性懸濁液に0.6%質量過酸化水素を0.1倍量加えることで、抗IgEモノクローナル抗体・ポリ−L−グルタミン酸複合体含有水性懸濁液/0.1%過酸化水素とした。この液を2時間37℃に保った。また、0.6質量%過酸化水素の代わりに水を0.1倍量加えることで、50.0mg/mL 抗IgEモノクローナル抗体・ポリ−L−グルタミン酸複合体含有水性懸濁液とした。これらの液を2時間37℃に保った後、150mMとなるように塩化ナトリウムを加えた。さらにトリプシンによる断片化を行ったものについて、ペプチドマッピング法による一次構造分析を行った。また、10mM MOPS緩衝液(pH5.5)中において抗IgEモノクローナル抗体を60.0mg/mLの濃度となるように調製した液を対照液(比較例90)とし、0.6質量%過酸化水素を0.1倍量加えることで50.0mg/mL 抗IgEモノクローナル抗体/0.1%過酸化水素とし、さらに0.6質量%過酸化水素の代わりに水を0.1倍量加えることで、50.0mg/mL 抗IgEモノクローナル抗体とした。これらの対照液を、2時間37℃に保った後、150mMとなるように塩化ナトリウムを加えた。さらにトリプシンによる断片化を行ったものについて、ペプチドマッピング法による一次構造分析を行った。これらの結果より、抗IgEモノクローナル抗体・ポリ−L−グルタミン酸複合体含有水性懸濁液および対照液について、過酸化水素非存在下に対する、過酸化水素存在下の一次構造変化率を、ピーク面積の減少率により算出した。抗IgEモノクローナル抗体・ポリ−L−グルタミン酸複合体含有水性懸濁液(実施例90)における一次構造の変化率は、対照液(比較例90)における一次構造の変化率と比べ有意に抑制されており、タンパク質・ポリアミノ酸複合体含有水性懸濁液の酸化ストレスに対する安定化効果が示された。対照液における一次構造の変化率を1とした際の結果を表25に示した。
〔9.熱ストレスに対する安定化効果を示す実施例91〜94〕
<L−アスパラギナーゼ>
(実施例91)
10mM MOPS緩衝液(pH7.0)中において、L−アスパラギナーゼを1mg/mLの濃度となるように調製し、L−アスパラギナーゼ1質量部に対し0.05質量部のポリ−L−リジン(MW:4kDa−15kDa)を加えた。調製した液を遠心分離し全容の9割を上清部として除去し、L−アスパラギナーゼ・ポリ−L−リジン複合体含有水性懸濁液を得た。
[試験例24]
上記実施例91について、得られたL−アスパラギナーゼ・ポリ−L−リジン複合体含有水性懸濁液の一部を採り、150mMとなるように塩化ナトリウムを加え、タンパク質濃度測定として波長280nmの吸光度を測定した結果、10.0mg/mLであった。残りのL−アスパラギナーゼ・ポリ−L−リジン複合体含有水性懸濁液を5分間、15分間および30分間、60℃あるいは室温に保った後、150mMとなるように塩化ナトリウムを加え、L−アスパラギナーゼ活性を測定した。また、10mM MOPS緩衝液(pH7.0)中においてL−アスパラギナーゼを10.0mg/mLの濃度となるように調製した液を対照液(比較例91)とし、5分間、15分間および30分間、60℃あるいは室温に保った後、150mMとなるように塩化ナトリウムを加え、L−アスパラギナーゼ活性を測定した。これらの結果より、L−アスパラギナーゼ・ポリ−L−リジン複合体含有水性懸濁液および対照液について、加熱時の非加熱時に対するL−アスパラギナーゼ活性残存率を求めたところ、対照液では活性が顕著に低下したが、L−アスパラギナーゼ・ポリ−L−リジン複合体含有水性懸濁液では活性の低下が有意に抑制され、タンパク質・ポリアミノ酸複合体含有水性懸濁液の熱ストレスに対する安定化効果が示された。結果を表26に示した。
(実施例92)
10mM MOPS緩衝液(pH7.0)中において、L−アスパラギナーゼを4.3mg/mLの濃度となるように調製し、L−アスパラギナーゼ1質量部に対し0.05質量部のポリ−L−リジン(MW:4kDa−15kDa)、または0.05質量部のポリ−L−リジン(MW:15kDa−30kDa)、または0.03質量部のポリ−L−リジン(MW:30kDa以上)、または0.05質量部のポリ−L−アルギニン(MW:5kDa−15kDa)を加えた。調製した液を遠心分離し全容の9割を上清部として除去し、L−アスパラギナーゼ・ポリ−L−リジン複合体含有水性懸濁液、またはL−アスパラギナーゼ・ポリ−L−アルギニン複合体含有水性懸濁液を得た。
[試験例25]
上記実施例92について、得られたL−アスパラギナーゼ・ポリ−L−リジン複合体含有水性懸濁液、またはL−アスパラギナーゼ・ポリ−L−アルギニン複合体含有水性懸濁液の一部を採り、150mMとなるように塩化ナトリウムを加え、タンパク質濃度測定として波長280nmの吸光度を測定した結果、43.0mg/mLであった。残りのL−アスパラギナーゼ・ポリ−L−リジン複合体含有水性懸濁液、またはL−アスパラギナーゼ・ポリ−L−アルギニン複合体含有水性懸濁液(実施例92)について、示差走査熱量測定を行った。また、10mM MOPS緩衝液(pH7.0)中においてL−アスパラギナーゼを43.0mg/mLの濃度となるように調製した液を対照液(比較例92)とし、示差走査熱量測定を行った。各水性懸濁液または対照液の変性温度を求めたところ、対照液と比べ、L−アスパラギナーゼ・ポリ−L−リジン複合体含有水性懸濁液、またはL−アスパラギナーゼ・ポリ−L−アルギニン複合体含有水性懸濁液ではより高温でタンパク質の変性が生じることが明らかとなり、タンパク質・ポリアミノ酸複合体含有水性懸濁液の熱ストレスに対する安定化効果が示された。結果を表27に示した。
<抗IgEモノクローナル抗体>
(実施例93)
10mM TrisHCl緩衝液(pH8.7)中において、抗IgEモノクローナル抗体を1.25mg/mLの濃度となるように調製し、抗IgEモノクローナル抗体1質量部に対し0.1質量部のポリ−L−リジン(MW:4kDa−15kDa)を加えた。調製した液を遠心分離し全容の9割を上清部として除去し、抗IgEモノクローナル抗体・ポリ−L−リジン複合体含有水性懸濁液を得た。
[試験例26]
上記実施例93について、得られた抗IgEモノクローナル抗体・ポリ−L−リジン複合体含有水性懸濁液の一部を採り、150mMとなるように塩化ナトリウムを加え、タンパク質濃度測定として波長280nmの吸光度を測定した結果、10.6mg/mLであった。残りの抗IgEモノクローナル抗体・ポリ−L−リジン複合体含有水性懸濁液を15時間、60℃あるいは室温に保った後、150mMとなるように塩化ナトリウムを加え、抗IgEモノクローナル抗体活性を測定した。また、10mM MOPS緩衝液(pH7.0)中において抗IgEモノクローナル抗体を10.6mg/mLの濃度となるように調製した液を対照液とし、15時間、60℃あるいは室温に保った後、150mMとなるように塩化ナトリウムを加え、抗IgEモノクローナル抗体活性を測定した。これらの結果より、抗IgEモノクローナル抗体・ポリ−L−リジン複合体含有水性懸濁液および対照液について、加熱時の非加熱時に対する抗IgEモノクローナル抗体活性残存率を求めたところ、対照液では活性が低下したが、抗IgEモノクローナル抗体・ポリ−L−リジン複合体含有水性懸濁液では活性の低下が抑制され、タンパク質・ポリアミノ酸複合体含有水性懸濁液の熱ストレスに対する安定化効果が示された。結果を表28に示した。
(実施例94)
10mM クエン酸緩衝液(pH5.4)中において、抗IgEモノクローナル抗体を5.0mg/mLの濃度となるように調製し、抗IgEモノクローナル抗体1質量部に対し0.075質量部のポリ−L−グルタミン酸(MW:3kDa−15kDa)を加えた。調製した液を遠心分離し全容の9割を上清部として除去し、抗IgEモノクローナル抗体・ポリ−L−グルタミン酸複合体含有水性懸濁液を得た。
[試験例27]
上記実施例94について、得た抗IgEモノクローナル抗体・ポリ−L−グルタミン酸複合体含有水性懸濁液の一部を採り、150mMとなるように塩化ナトリウムを加え、タンパク質濃度測定として波長280nmの吸光度を測定した結果、50.0mg/mLであった。残りの抗IgEモノクローナル抗体・ポリ−L−グルタミン酸複合体含有水性懸濁液について、示差走査熱量測定を行った。また、10mM クエン酸緩衝液(pH5.4)中において抗IgEモノクローナル抗体を50.0mg/mLの濃度となるように調製した液を対照液とし、示差走査熱量測定を行った。各水性懸濁液または対照液の変性温度を求めたところ、対照液と比べ、抗IgEモノクローナル抗体・ポリ−L−グルタミン酸複合体含有水性懸濁液ではより高温でタンパク質の変性が生じることが明らかとなり、タンパク質・ポリアミノ酸複合体含有水性懸濁液の熱ストレスに対する安定化効果が示された。結果を表29に示した。
〔10.凝集体抑制効果を示す実施例95〜98〕
<抗EGFRモノクローナル抗体>
(実施例95)
10mM MOPS緩衝液(pH5.0)中において、抗EGFRモノクローナル抗体を5.3mg/mLの濃度となるように調製し、抗EGFRモノクローナル抗体1質量部に対し0.05質量部のポリ−L−グルタミン酸(MW:3kDa−15kDa)を加えた。調製した液を遠心分離し全容の9.4割を上清部として除去し、抗EGFRモノクローナル抗体・ポリ−L−グルタミン酸複合体含有水性懸濁液を得た。
[試験例28]
上記実施例95について、得られた抗EGFRモノクローナル抗体・ポリ−L−グルタミン酸複合体含有水性懸濁液の一部を採り、150mMとなるように塩化ナトリウムを加え、タンパク質濃度測定として波長280nmの吸光度を測定した結果、89.0mg/mLであった。残りの抗EGFRモノクローナル抗体・ポリ−L−グルタミン酸複合体含有水性懸濁液をポリプロピレン製ディスポーザブルシリンジに充填し、振とう機(バイオシェーカーV・BR−36)に設置し、500rpm、室温下で90時間振とうした。振とう前および振とう後の抗EGFRモノクローナル抗体・ポリ−L−グルタミン酸複合体含有水性懸濁液に150mMとなるように塩化ナトリウムを加え、10,000gで15分間遠心分離し、上清部のタンパク質濃度測定として波長280nmの吸光度を測定した(実施例95)。また、10mM MOPS緩衝液(pH5.0)中において抗EGFRモノクローナル抗体を89.0mg/mLの濃度となるように調製した液を対照液(比較例95)とし、シリンジに充填し、同時に振とうした。振とう前および振とう後の対照液に150mMとなるように塩化ナトリウムを加え、10,000gで15分間遠心分離し、上清部のタンパク質濃度測定として波長280nmの吸光度を測定した。これらの結果より、抗EGFRモノクローナル抗体・ポリ−L−グルタミン酸複合体含有水性懸濁液および対照液について、総タンパク質量から上清部のタンパク質量を差し引くことでタンパク質の不溶性凝集体量を算出し、振とう前に対する振とう後のタンパク質の不溶性凝集体化率を求めたところ、対照液と比べて抗EGFRモノクローナル抗体・ポリ−L−グルタミン酸複合体含有水性懸濁液ではタンパク質の不溶性凝集体化率が抑制されており、タンパク質・ポリアミノ酸複合体含有水性懸濁液の凝集体抑制効果が示された。結果を表30に示した。
(実施例96)
10mM MOPS緩衝液(pH5.0)中において、抗EGFRモノクローナル抗体を5.3mg/mLの濃度となるように調製し、抗EGFRモノクローナル抗体1質量部に対し0.05質量部のポリ−L−グルタミン酸(MW:3kDa−15kDa)を加えた。調製した液を遠心分離し全容の9.5割を上清部として除去し、抗EGFRモノクローナル抗体・ポリ−L−グルタミン酸複合体含有水性懸濁液を得た。
[試験例29]
上記実施例96について、得られた抗EGFRモノクローナル抗体・ポリ−L−グルタミン酸複合体含有水性懸濁液の一部を採り、150mMとなるように塩化ナトリウムを加え、タンパク質濃度測定として波長280nmの吸光度を測定した結果、114.9mg/mLであった。残りの抗EGFRモノクローナル抗体・ポリ−L−グルタミン酸複合体含有水性懸濁液をポリプロピレン製ディスポーザブルシリンジに充填し、振とう機(バイオシェーカーV・BR−36)に設置し、500rpm、室温下で90時間振とうした。振とう前および振とう後の抗EGFRモノクローナル抗体・ポリ−L−グルタミン酸複合体含有水性懸濁液に150mMとなるように塩化ナトリウムを加え、10,000gで15分間遠心分離し、上清部のタンパク質濃度測定として波長280nmの吸光度を測定した(実施例96)。また、10mM MOPS緩衝液(pH5.0)中において抗EGFRモノクローナル抗体を114.9mg/mLの濃度となるように調製した液を対照液(比較例96)とし、シリンジに充填し、同時に振とうした。振とう前および振とう後の対照液に150mMとなるように塩化ナトリウムを加え、10,000gで15分間遠心分離し、上清部のタンパク質濃度測定として波長280nmの吸光度を測定した。これらの結果より、抗EGFRモノクローナル抗体・ポリ−L−グルタミン酸複合体含有水性懸濁液および対照液について、総タンパク質量から上清部のタンパク質量を差し引くことでタンパク質の不溶性凝集体量を算出し、振とう前に対する振とう後のタンパク質の不溶性凝集体化率を求めたところ、抗EGFRモノクローナル抗体・ポリ−L−グルタミン酸複合体含有水性懸濁液ではタンパク質凝集を認めず、タンパク質・ポリアミノ酸複合体含有水性懸濁液の凝集体抑制効果が示された。結果を表31に示した。
<L−アスパラギナーゼ>
(実施例97)
10mM MOPS緩衝液(pH7.0)中において、L−アスパラギナーゼを1mg/mLの濃度となるように調製し、L−アスパラギナーゼ1質量部に対し0.05質量部のポリ−L−リジン(MW:4kDa−15kDa)を加えた。調製した液を遠心分離し全容の9割を上清部として除去し、L−アスパラギナーゼ・ポリ−L−リジン複合体含有水性懸濁液を得た。
[試験例30]
上記実施例97について、得られたL−アスパラギナーゼ・ポリ−L−リジン複合体含有水性懸濁液の一部を採り、150mMとなるように塩化ナトリウムを加え、タンパク質濃度測定として波長280nmの吸光度を測定した結果、10.0mg/mLであった。残りのL−アスパラギナーゼ・ポリ−L−リジン複合体含有水性懸濁液(実施例97)を5分間60℃あるいは室温に保った後、150mMとなるように塩化ナトリウムを加え、マイクロフローイメージング(MFI)法により凝集体数を測定した。また、10mM MOPS緩衝液(pH7.0)中においてL−アスパラギナーゼを10.0mg/mLの濃度となるように調製した液を対照液(比較例97)とし、5分間60℃あるいは室温に保った後、150mMとなるように塩化ナトリウムを加え、マイクロフローイメージング法により凝集体数を測定した。これらの結果より、L−アスパラギナーゼ・ポリ−L−リジン複合体含有水性懸濁液および対照液について、加熱時の凝集体数を非加熱時の凝集体数で除することにより、凝集体数の増加率を求めたところ、対照液における凝集体増加率と比べて、L−アスパラギナーゼ・ポリ−L−リジン複合体含有水性懸濁液における凝集体増加率は有意に低く、タンパク質・ポリアミノ酸複合体含有水性懸濁液の凝集体抑制効果が示された。結果を表32に示した。
[試験例31]
上記実施例97について、得られたL−アスパラギナーゼ・ポリ−L−リジン複合体含有水性懸濁液の一部を採り、150mMとなるように塩化ナトリウムを加え、タンパク質濃度測定として波長280nmの吸光度を測定した結果、10.0mg/mLであった。残りのL−アスパラギナーゼ・ポリ−L−リジン複合体含有水性懸濁液を5分間60℃あるいは室温に保った後、150mMとなるように塩化ナトリウムを加え、濁度測定として波長600nmの吸光度を測定した。また、10mM MOPS緩衝液(pH7.0)中においてL−アスパラギナーゼを10.0mg/mLの濃度となるように調製した液を対照液とし、5分間60℃あるいは室温に保った後、150mMとなるように塩化ナトリウムを加え、濁度測定として波長600nmの吸光度を測定した。これらの結果より、L−アスパラギナーゼ・ポリ−L−リジン複合体含有水性懸濁液および対照液について、加熱時の濁度を非加熱時の濁度で除することにより、濁度の増加率を求めたところ、対照液における濁度増加率と比べて、L−アスパラギナーゼ・ポリ−L−リジン複合体含有水性懸濁液における濁度増加率は有意に低く、タンパク質・ポリアミノ酸複合体含有水性懸濁液の凝集体抑制効果が示された。結果を表32に示した。
<抗IgEモノクローナル抗体>
(実施例98)
10mM クエン酸緩衝液(pH5.4)中において、抗IgEモノクローナル抗体を5.0mg/mLの濃度となるように調製し、抗EGFRモノクローナル抗体1質量部に対し0.1質量部のポリ−L−グルタミン酸(MW:3kDa−15kDa)を加えた。調製した液を遠心分離し全容の9割を上清部として除去し、抗IgEモノクローナル抗体・ポリ−L−グルタミン酸複合体含有水性懸濁液を得た。
[試験例32]
上記実施例98について、得られた抗IgEモノクローナル抗体・ポリ−L−グルタミン酸複合体含有水性懸濁液の一部を採り、150mMとなるように塩化ナトリウムを加え、タンパク質濃度測定として波長280nmの吸光度を測定した結果、50.0mg/mLであった。残りの抗IgEモノクローナル抗体・ポリ−L−グルタミン酸複合体含有水性懸濁液に9倍量の10mM クエン酸緩衝液(pH5.4)を加え、5.0mg/mLとして、ポリプロピレン製ディスポーザブルシリンジに充填し、振とう機(バイオシェーカーV・BR−36)に設置し、500rpm、室温下で60時間振とうした。振とう前および振とう後の抗IgEモノクローナル抗体・ポリ−L−グルタミン酸複合体含有水性懸濁液に150mMとなるように塩化ナトリウムを加え、サイズ排除クロマトグラフ(SEC)法による分析を行った(実施例98)。また、10mM クエン酸緩衝液(pH5.4)中において抗IgEモノクローナル抗体を5.0mg/mLの濃度となるように調製した液を対照液(比較例98)とし、シリンジに充填し、同時に振とうした。振とう前および振とう後の対照液に150mMとなるように塩化ナトリウムを加え、サイズ排除クロマトグラフ法による分析を行った。これらの結果より、抗IgEモノクローナル抗体・ポリ−L−グルタミン酸複合体含有水性懸濁液および対照液について、求めたところ、対照液では可溶性凝集体ピーク面積が顕著に増大したのに対し、抗IgEモノクローナル抗体・ポリ−L−グルタミン酸複合体含有水性懸濁液では可溶性凝集体ピーク面積の増大が有意に抑制され、タンパク質・ポリアミノ酸複合体含有水性懸濁液の凝集体抑制効果が示された。結果を表33に示した。
本発明は以下のいずれかの特性を有するので有用性が高い。
広範なタンパク質について、輸送時の振動や保存時の熱ストレス、酸化ストレスに対して安定である水性懸濁剤である。本発明は複合体を形成し安定化され、輸送時や保存時の安定性に優れる。本発明の複合体は限外ろ過等の特別な設備を必要とせずにタンパク質濃度を簡便に高濃度に濃縮できる。濃縮による活性の低下が少ない。本発明の水性懸濁剤は、タンパク質の等電点に応じて緩衝液のpHとポリアミノ酸を選択するのみで簡便にタンパク質を安定化させることができ、従来必要であった添加剤を加える必要がない。また、凍結乾燥製剤で必要となる煩雑な溶解操作を必要とせず、複合体含有水性懸濁液をそのまま製剤として投与でき、あるいは用時に塩化ナトリウムに代表される無機塩を加えて再溶解して水性液として投与することができる。本発明の水性懸濁剤は、タンパク質が高濃度であっても粘度が低いという特徴を有するため、使用時に容器中に残存し無駄となる量を減らすことができ、また、シリンジを用いて投与する際には、同濃度のタンパク質水溶液に比べ弱い力で投与することができる。

Claims (15)

  1. 緩衝液中で表面電荷を有するタンパク質とポリアミノ酸とが複合体を形成して懸濁する水性懸濁液で、前記複合体含有水性懸濁液から少なくとも一部の水分を除去することにより前記タンパク質の濃縮が可能であり、前記複合体中で、前記タンパク質が耐酸化性を有するタンパク質水性懸濁剤。
  2. 前記複合体含有水性懸濁液に低濃度の電解質を添加して前記タンパク質が溶解可能である請求項1に記載のタンパク質水性懸濁剤。
  3. 前記ポリアミノ酸がカチオン性ポリアミノ酸、またはアニオン性ポリアミノ酸である請求項1または2に記載のタンパク質水性懸濁剤。
  4. 前記カチオン性ポリアミノ酸が、ポリリジン、ポリアルギニン、ポリヒスチジンおよびこれらの水溶性塩からなる群から選択される少なくとも1つであり、前記アニオン性ポリアミノ酸が、ポリグルタミン酸、ポリアスパラギン酸およびこれらの水溶性塩からなる群から選択される少なくとも1つである請求項3に記載のタンパク質水性懸濁剤。
  5. 前記カチオン性または前記アニオン性ポリアミノ酸の分子量が、0.5kDa〜1000kDaの範囲である請求項3または4に記載のタンパク質水性懸濁剤。
  6. 前記タンパク質の分子量が、3kDa〜670kDaの範囲である請求項1ないし5のいずれか1項に記載のタンパク質水性懸濁剤。
  7. 前記複合体が、前記緩衝液のpHと前記タンパク質の等電点(pI)の差の絶対値が0.5〜4.0の範囲に、前記タンパク質の最大濃縮率が存在するように濃縮可能である請求項1ないし6のいずれか1項に記載のタンパク質水性懸濁剤。
  8. 前記耐酸化性を有する水性懸濁剤は、前記複合体が同一緩衝液中で同一濃度である同一タンパク質水溶液と比較して耐酸化性が高い請求項1ないし7のいずれか1項に記載のタンパク質水性懸濁剤。
  9. 前記タンパク質が生物活性を有するタンパク質である請求項1ないし8のいずれか1項に記載のタンパク質水性懸濁剤。
  10. 前記タンパク質が酵素、サイトカイン、ホルモン、抗体、抗体フラグメントおよび融合タンパク質の少なくとも1つである請求項1ないし9のいずれか1項に記載のタンパク質水性懸濁剤。
  11. 前記タンパク質が糖鎖を有する請求項1ないし10のいずれか1項に記載のタンパク質水性懸濁剤。
  12. 前記ポリアミノ酸が分岐鎖を有しないポリアミノ酸である請求項1ないし11のいずれか1項に記載のタンパク質水性懸濁剤。
  13. 前記水性懸濁剤が、緩衝液、タンパク質、ポリアミノ酸およびpH調製剤以外の添加剤を含有しない請求項1ないし12のいずれか1項に記載のタンパク質水性懸濁剤。
  14. 前記複合体を形成しその後可溶化する工程で前記タンパク質の二次構造が保持される請求項1ないし13のいずれか1項に記載のタンパク質水性懸濁剤。
  15. 請求項1ないし14のいずれか1項に記載の前記複合体を含む水性懸濁液に低濃度の電解質が添加され前記タンパク質が溶解されてなるタンパク質含有水性液。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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WO2018074559A1 (ja) * 2016-10-19 2018-04-26 テルモ株式会社 医療用タンパク質とポリアミノ酸の複合体、安定化方法およびその用途

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