JP2015085564A - 複合構造体の施工方法及び複合構造体 - Google Patents

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Abstract

【課題】無機系繊維又は有機系繊維を製織してなるシート状補強材により母材が繊維強化された複合構造体において、比較的高い曲げ強度と曲げ靱性を得ることができる複合構造体の施工方法及び複合構造体を提供する。【解決手段】ベース部の施工面に接着剤を塗付する(S1)。その接着剤塗付面にシート状補強材を載置して貼り付ける(S2)。さらにシート状補強材の表面に、接着剤混合モルタルを打設して接着剤を混合した被覆モルタル層を形成する(S3)。必要な層数を形成するまで、ステップS2,S3の工程を繰り返す。その後、必要な硬化時間だけ放置し、接着剤が混合されたモルタル層を硬化させる(S4)。シート状補強材には、例えばバサルト繊維で製織されたメッシュシートを使用する。接着剤混合モルタルに混合される接着剤は、セメントを硬化させるために必要な水に溶解可能な水性の硬化性樹脂を主成分とする。【選択図】図6

Description

本発明は、セメント等の硬化性無機材料を含む母材が、無機材料又は有機材料の強化繊維で補強されてなる複合構造体の施工方法及び複合構造体に関する。
建物の基礎や外壁、橋脚、コンクリート製品、盛土や切土の法面を保護するためにコンクリート又はセメントモルタル等で形成された法面保護壁等の構造体には、それ自体にかかる荷重、地震等の加振源からの振動や骨材等の劣化による体積膨張などに起因して、応力(例えば曲げ応力)が加わる。このため、この種の曲げ応力に耐えられるように構造体には、比較的高い曲げ強度及び曲げ靱性が要求とされる。従来、強度及び靱性を高めるために例えばセメント等の硬化性無機材料を含む母材に無機系繊維又は有機系繊維を混入して繊維強化された複合構造体が知られている。
例えば特許文献1には、ガラス繊維がメッシュ状に製織されたメッシュ織物(シート状補強材)が、モルタル層に混入された建造物用複合構成体(複合構造体)が知られている。メッシュ織物は、耐アルカリ性ガラス繊維を製織したメッシュ生地に浸漬法により樹脂を塗付し、その塗付した樹脂を乾燥固化することにより作製される。
また、特許文献2には、コンクリート構造物の表面にコンクリートと一体となった剥落防止層を形成した補強用シート複合体(複合構造体)が開示されている。補強用シート複合体は、無機系繊維又は有機系繊維でメッシュ状に製織された補強用網状シート(シート状補強材)を、上塗モルタルと下塗モルタルとで挟んだ構造を有する。無機系繊維としては、ガラス繊維、炭素繊維、バサルト繊維が挙げられ、有機系繊維としては、ナイロン繊維、ビニロン繊維、アラミド繊維、ポリプロピレン繊維、アクリル繊維が挙げられている。また、補強用網状シートは、無機系繊維又は有機系繊維に含浸させた樹脂材料を硬化させて得られる繊維強化樹脂材料(Fiber reinforced plastics)からなる。使用される樹脂材料としては、エポキシ樹脂、アクリル樹脂等が挙げられている。
特開2010−121248号公報 特開2004−156360号公報
ところで、特許文献1、2に記載されたシート状補強材を母材に混入して製造された複合構造体では、曲げ応力が加わってひび割れが発生すると、シート状補強材の繊維が母材から引き抜ける現象が発生する場合がある。この場合、複合構造体は、その引き抜けた一部の繊維が破断されることなく破壊に至り、シート状補強材が複合構造体の強度及び靱性の向上にその機能を十分発揮できない場合があった。
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、その目的は、無機系繊維又は有機系繊維を製織してなるシート状補強材により母材が繊維強化された複合構造体において、比較的高い曲げ強度と曲げ靱性を得ることができる複合構造体の施工方法及び複合構造体を提供することにある。
以下、上記課題を解決するための手段及びその作用効果について記載する。
上記課題を解決する複合構造体の施工方法は、無機系繊維と有機系繊維のうちから選択される少なくとも一つの繊維で製織されたシート状補強材と、硬化性樹脂材料を主成分とする未硬化の接着剤及び未硬化の硬化性無機材料を混合した状態で含む母材流動物とを、当該母材流動物が未硬化のまま複合化させる複合化工程と、前記母材流動物を硬化させて母材が前記シート状補強材により繊維強化された複合構造体を形成する硬化工程とを備えている。
この方法によれば、母材流動物とシート状補強材とが複合化された状態では、母材流動物中の接着剤がシート状補強材との界面に沿って濡れ広がるとともにその周囲で接着剤が硬化性無機材料の粒子を囲むように粒子の間隙に分布する。このような状態で母材流動物中において混合状態にある接着剤と硬化性無機材料とが共に未硬化の状態から硬化することで、シート状補強材と母材中の無機系硬化材料とが接着剤を介して比較的強く結合する。よって、シート状補強材と母材との付着力が高まるので、曲げ強度及び曲げ靱性の高い複合構造体を得ることができる。
上記複合構造体の施工方法において、前記複合構造体は、ベース部の施工面に保護層として施工される複合構造層であり、前記複合化工程は、前記施工面と前記シート状補強材とのうち少なくとも一方に硬化性樹脂材料を主成分とする接着剤を塗付する接着剤塗付工程と、塗付した前記接着剤が未硬化のうちに前記シート状補強材を前記施工面に載置して貼り付ける補強材載置工程と、前記シート状補強材を前記母材流動物で被覆して母材層を形成する母材層形成工程とを含み、前記硬化工程では、塗付した前記接着剤と前記母材層の前記母材流動物とを硬化させることが好ましい。
この方法によれば、シート状補強材と施工面との間に介在する塗付された未硬化の接着剤と、シート状補強材を被覆する母材層の母材流動物とが共に未硬化の状態から硬化する。この結果、施工面とシート状補強材とを接着剤で比較的強固に接合できるうえ、接着剤と母材流動物とが少なくとも一方がシート状補強材の織目又は網目に入り込んだ状態で接触し、その接触箇所で接着剤と母材流動物中の接着剤とが強く結合する。したがって、施工面とシート状補強材との付着力、及びシート状補強材と母材との付着力が共に高まり、曲げ強度及び曲げ靱性の高い複合構造体を得ることができる。
上記複合構造体の施工方法において、前記複合構造体は、ベース部の施工面に保護層として施工される複合構造層であり、前記複合化工程は、前記ベース部の施工面を前記母材流動物で被覆して下地層を形成する下地層形成工程と、前記シート状補強材を未硬化の前記下地層の表面に載置する補強材載置工程と、前記シート状補強材を前記母材流動物で被覆して母材層を形成する母材層形成工程とを含むことが好ましい。
この方法によれば、シート状補強材と施工面との間に介在する下地層と、シート状補強材を被覆する母材層とを構成する各母材流動物が共に未硬化の状態から硬化する。この結果、施工面とシート状補強材とを母材流動物中の接着剤を介して比較的強固に接合できるうえ、シート状補強材を挟む両側の各母材流動物が、そのうち少なくとも一方がシート状補強材の織目又は網目に入り込んだ状態で互いに接触し、その接触箇所で母材流動物中の接着剤同士が強く結合する。よって、シート状補強材と母材との付着力が高まり、曲げ強度及び曲げ靱性の高い複合構造体を得ることができる。
上記複合構造体の施工方法において、未硬化の前記母材層に前記シート状補強材を載置する第2の前記補強材載置工程と前記母材層形成工程とをこの順番で一回以上行って、前記母材層で被覆されたシート状補強材の層を複数層形成することが好ましい。
この方法によれば、複合構造体は母材層で被覆されたシート状補強材の層を複数層含むので、シート状補強材が一層の構成に比べ、曲げ強度及び曲げ靱性の一層高い複合構造体を得ることができる。
上記複合構造体の施工方法において、前記硬化性無機材料は水硬性材料であり、前記接着剤は、前記水硬性材料を硬化させる水に溶解可能な水性の接着剤であり、前母材流動物は、前記水硬性材料と前記水性の接着剤と水とを含む混合物であることが好ましい。
この方法によれば、母材流動物は、水性(水溶性)の接着剤が水に溶けた水溶液(樹脂水溶液)と水硬性無機材料とを含む混合物であり、樹脂水溶液は水硬性無機材料の粒子の周囲に分布するとともに、母材流動物とシート状補強材との界面に沿って濡れ広がる。この状態で、母材流動物が硬化すると、母材とシート状補強材との界面付近に接着剤層が形成されるうえ、樹脂水溶液と混合状態にある水硬性無機材料は樹脂水溶液中の水分と反応して硬化する。このように母材中の樹脂は水硬性無機材料と混合する状態でかつシート状補強材の周囲ではこれを覆う状態で硬化するので、複合構造体中の母材とシート状補強材との間に比較的高い付着力が確保される。
上記課題を解決する複合構造体は、無機系繊維と有機系繊維のうちから選択される少なくとも一つの繊維で製織されたシート状補強材と、水硬性無機材料と前記水硬性無機材料を硬化させるために混合する水に溶解可能な水性の接着剤と水とを混合した状態で含む母材流動物が、前記シート状補強材が少なくとも一層混入された状態で硬化してなる母材と、を備えている。この構成によれば、シート状補強材で母材を繊維強化した場合に、比較的高い曲げ強度と曲げ靱性を得ることができる。
本発明によれば、無機系繊維又は有機系繊維を製織してなるシート状補強材で母材を繊維強化した場合に、比較的高い曲げ強度と曲げ靱性を得ることができる。
第1実施形態における構造体の構成及び複合構造層の施工方法を示す模式分解斜視図。 構造体の模式断面図。 メッシュシートを示す部分平面図。 モルタル層に挟まれた強化繊維層を示す模式断面図。 モルタル層と強化繊維層との境界付近を示す模式拡大断面図。 複合構造層の施工方法を示すフローチャート。 第2実施形態における構造体の模式断面図。 四点曲げ試験における供試体の構造を示す模式斜視図。 四点曲げ試験方法を説明する模式側面図。 CM−B3とCM−B3−Wの供試体に係る荷重−たわみ曲線を示すグラフ。 CM−B3C1−Wの供試体に係る荷重−たわみ曲線を示すグラフ。 供試体の曲げ靱性係数を示すグラフ。
(第1実施形態)
以下、図1〜図6を参照して母材として硬化性無機系材料を用いた複合構造体として実施した第1実施形態を説明する。
図2に示すように、構造体10は、例えば鉄筋コンクリート、鉄骨鉄筋コンクリート、コンクリートからなる所定形状の躯体、あるいは盛土又は切土等の地盤を施工し易く基礎工事された施工対象部分からなるベース部11と、ベース部11の表面又は法面である施工面11aに、保護層として施工される複合構造層12とを備えている。なお、構造体10が不動産の場合は、ベース部11の施工面11aに施工される複合構造層12が複合構造体の一例となる。また、構造体10がコンクリート製品等の動産である場合、ベース部11を構成する躯体と複合構造層12とを含む構造体10の全体が、複合構造体の一例となる。
ベース部11はその表面側にセメントモルタル又はコンクリートで形成された下地層17を有し、その下地層17の表面が施工面11aとなっている。複合構造層12は、ベース部11の施工面11aに繊維強化された補強層(保護層)として施工されている。なお、下地層17は複合構造層12を施工し易くする施工面11aを形成するためのもので、ベース部11の表面に直に複合構造層12を施工できれば、下地層17は省くことができる。
図2に示すように、複合構造層12は、セメントモルタル又はコンクリートからなる母材13と、母材13中に繊維強化の目的で混入され、無機系繊維(無機材料繊維)と有機系繊維(有機材料繊維)のうち少なくとも一方の繊維で製織されたシート状補強材14とを含む。母材13中にシート状補強材14が混入されることにより複合構造層12中に強化繊維層15が形成されている。
図2に示すように、シート状補強材14は、複合構造層12の厚さ方向に例えば複数層含まれている。図2では、シート状補強材14を3層含む複合構造層12の例を示している。もちろん、シート状補強材14の層数は、2層、4層、5層〜8層でもよい。この層数は、シート状補強材14の目付(1平方メートル当たり重量(g/m))、複合構造層12に必要とされる曲げ強度、曲げ靱性係数などの値から決められる。但し、施工時の作業性を考慮すれば層数は少ない方が好ましく、複合構造層12に必要な曲げ強度等からシート一枚当たりの目付を調整し、2層〜8層の範囲内の層数を選択することが好ましい。もちろん、シート状補強材14は、少なくとも1層含まれればよく、例えば1層のみとしてもよい。
シート状補強材14は、メッシュシートと織物シートと編物シートのうちから選択される少なくとも1つからなる。複数層の場合、シート状補強材14が全ての層で同じシート種である構成、全ての層で異なるシート種である構成、一部の二以上の層で同じシート種で他の一部の層で異なるシート種である構成でもよい。本例ではシート状補強材14に、一例として繊維を網状(メッシュ状)に製織したメッシュシート16(図1、図3を参照)を採用している。
図1は、図2に示す複合構造層12の施工方法を分かり易く示した分解斜視図である。図1、図2に示すように、ベース部11はその表面に例えばセメントモルタル又はコンクリートを打設して形成された下地層17を有し、この下地層17が硬化してその表面にできた施工面11aに、複合構造層12が施工される。複合構造層12は、母材13を補強するために混入された複数層のシート状補強材14を含む。1層目のシート状補強材14は施工面11aに硬化性樹脂材料を主成分にする接着剤18(図4参照)を介して貼り付けられる。また、複合構造層12は、複数のシート状補強材14を一枚ずつそれぞれベース部11側の面(第1の面)と反対側の面(第2の面)を被覆する複数の被覆モルタル層19を含む。つまり、シート状補強材14間には被覆モルタル層19が介在している。母材13は、複数の被覆モルタル層19により構成される。なお、最表面層の被覆モルタル層19は、必要なかぶり厚で形成される。
図3に示すように、シート状補強材14は、無機系繊維と有機系繊維のうち少なくとも一方の繊維14aで網目状(メッシュ状)に製織されたメッシュシート16である。ここで、シート状補強材14を構成する繊維14aとしては、バサルト繊維(Basalt fiber)、炭素繊維、アラミド繊維、ガラス繊維のうちの一つが選択されている。これらの繊維はいずれも引張弾性率(ヤング率)と伸び率(伸度)が共に高い。本例のメッシュシート16は、メッシュ生地の繊維14aに硬化性樹脂(一例としてエポキシ樹脂)を含浸・硬化させることで製造された繊維強化樹脂材料(Fiber reinforced plastics)(FRP)からなる。このため、メッシュシート16は繊維14aに含浸する硬化樹脂層14b(図5参照)によりその表面が被覆されている。但し、硬化樹脂層14bは、メッシュシート16の網目が樹脂で埋まらない程度の樹脂量に調整され、繊維14aをコーティングしている被覆厚は比較的薄い。
特に本実施形態では、シート状補強材14の繊維14aの一例としてバサルト繊維を採用する。このため、本実施形態で使用するシート状補強材14は、バサルト繊維強化樹脂材料(Basaltfiber reinforced plastics)(BFRP)からなるメッシュシート16である。シート状補強材14が、繊維14aが硬化樹脂層14bで被覆されたFRPであると、アルカリ耐久性が一層よくなるうえ、メッシュの網目が崩れにくく作業性が良く好ましい。もちろん、メッシュシート16は樹脂未含浸のメッシュ生地のままでもよい。
ここで、複合構造層12に含まれるシート状補強材14と母材13との付着力が十分確保されていないと、複合構造層12の表面に曲げ応力がかかってひび割れが発生したときに、シート状補強材14の繊維14aが母材13から引き抜ける現象が発生する。この場合、引き抜けた繊維14aが破断されることなく複合構造層12が破壊に至るので、引き抜け繊維数の割合に応じて複合構造層12の曲げ強度及び曲げ靱性が低下する。このため、高強度かつ高靱性の構造体10を得るには、シート状補強材14の繊維14aと母材13との付着力を高める必要がある。
そこで、本実施形態では、母材13とシート状補強材14との界面に接着剤を介在させ、接着剤によりシート状補強材14の繊維14aと母材13との付着力を高める。但し、シート状補強材14に塗付等した接着剤が硬化した後にセメントモルタル(以下、単に「モルタル」ともいう。)を打設しても、シート状補強材14の繊維14aの引き抜け抑制効果は低い。そのため、未硬化の接着剤と未硬化のセメントを含む流動物とでシート状補強材14を覆う状態としたうえで、接着剤とセメントとを必要な硬化時間の間、放置(養生)して未硬化の状態から一緒に硬化させる。
未硬化の接着剤と未硬化のモルタルとでシート状補強材14を覆う方法としては、シート状補強材14に接着剤を塗付した後、その接着剤塗付面に未硬化のモルタルを打設する方法がある。しかし、この方法では接着剤塗付工程とモルタル打設工程との二工程が必要になる。そこで、本実施形態では、未硬化の接着剤を未硬化のモルタルに混合した接着剤混合モルタルM(図1参照)を、シート状補強材14を被覆する状態に打設する方法をとることで、工程数の低減を図っている。なお、本実施形態では、接着剤混合モルタルMが、母材流動物の一例に相当する。
そのため、本実施形態では、母材13に硬化性樹脂を主成分とする接着剤を混合している。母材13は、セメントと細骨材(砂等)と硬化性樹脂を主成分とする接着剤とを混合状態で含む。なお、母材13がコンクリートである場合は、セメントと粗骨材(砂利等)と細骨材と硬化性樹脂を主成分とする接着剤とを含む。また、母材13が骨材を含まずセメントと接着剤を含むのみの構成でもよい。いずれの場合も、母材13を構成するセメントが、硬化性無機材料及び水硬性材料の一例に相当する。
被覆モルタル層19の形成時に打設する接着剤混合モルタルMは、硬化性樹脂を主成分とする接着剤と、水と、セメントと、細骨材とを含み、これらを混合した流動性を有する混合物である。本例では、硬化性無機材料の一例として水硬性材料であるセメントを用い、接着剤として、この水硬性材料を硬化させるために必要な水に溶解可能な水性(水溶性)の硬化性樹脂を使用する。なお、母材13がコンクリートである場合、母材流動物の一例としての接着剤混合コンクリートは、セメント、粗骨材、細骨材、水及び水性の硬化性樹脂を主成分とする接着剤を含む流動性を有する混合物となる。また、母材13が骨材を含まない場合、母材流動物は、セメント、水、水性の硬化性樹脂を主成分とする接着剤を含む混合物(セメントペースト)からなる。
接着剤の主成分である水性の硬化性樹脂材料としては、常温硬化性樹脂を使用している。水性の硬化性樹脂材料は一液型でも二液型でもよい。水性の硬化性樹脂の一例として、水性エポキシ樹脂、水性アクリル樹脂等を使用できる。本例では、接着剤の一例として二液型の水性エポキシ樹脂接着剤を使用する。
本実施形態では、接着剤として用いる水性エポキシ樹脂接着剤の一例として、商品名「Terrific GC−100」又は「Terrific GC−300」(製造元:株式会社グローケミカル)を使用する。この水性エポキシ樹脂接着剤は、二液型で主剤と硬化剤を、例えば容量比1:1で使用する。また、セメントモルタル原料として、セメントと細骨材とを混合状態で含む「GC骨材−2000」(製造元:株式会社グローケミカル)を使用する。
接着剤混合モルタルMの混合組成は、水性エポキシ系接着剤として使用する「Terrific GC−100」又は「Terrific GC−300」100重量部に対して、1〜20重量部の範囲内の水と、セメントモルタル原料として「GC骨材−2000」300〜600重量部とを含む。
セメントに対する水の重量比である水セメント比(%)が適正な範囲内の値になるように、混合する水の量を選択する。例えば接着剤混合モルタルMにおける水セメント比は40〜80%としており、特に55〜65%が好ましい。水性エポキシ樹脂接着剤は、その主剤及び硬化剤のそれぞれに水を含有するので、この接着剤中の水の量を考慮して、水セメント比が適正な範囲内の値となるように、混合する水の量を調製する。また、接着剤混合モルタルM中の細骨材は、セメント100重量部に対して50〜400重量部としており、特に100〜300重量部が好ましい。
本実施形態では、施工面11aに塗付する接着剤18と、接着剤混合モルタルM中に混合されている接着剤とに共通に使用する水性エポキシ樹脂接着剤(「Terrific GC−100」又は「Terrific GC−300」)は、水性エポキシ樹脂を含有する主剤と、ポリアミンを含有する硬化剤とからなる二液型水性エポキシ樹脂である。二液型水性エポキシ樹脂は、例えば水性エポキシ樹脂100重量部に対してポリアミンを一例として35〜45重量部含有する。また、接着剤は水性であるため、主剤及び硬化剤ともに水を含んでいる。主剤に含まれる水は水性エポキシ樹脂100重量部に対し約80〜125重量部、硬化剤に含まれる水は水性エポキシ樹脂100重量部に対し約140〜175重量部の量で含有されている。なお、接着剤は必要に応じて一般に接着剤で用いられている顔料、増粘剤、消泡剤、分散剤、粘性調整剤、有機溶剤、紫外線吸収剤、カップリング剤、光安定剤、酸化防止剤等の添加剤を含有することもできる。また、水性エポキシ樹脂接着剤の主剤にクレー又は水性セルロースを含有したり、硬化剤に酸化チタン又はベントナイトを含有したりしてもよい。
図4は、1層目の強化繊維層15の周辺における模式断面図を示す。図4に示すように、強化繊維層15は、施工面11aに塗付された接着剤18の層と、接着剤18と第1の面で接着されたシート状補強材14と、シート状補強材14の第2の面を被覆する被覆モルタル層19(以下、単に「モルタル層19」ともいう。)とシート状補強材14との界面付近に形成される接合層とにより構成される。接着剤18とモルタル層19はシート状補強材14の網目に一部入り込んで互いに接合された状態でシート状補強材14の表裏面を被覆している。
図5に示すように、本例のメッシュシート16は繊維強化樹脂材料(FRP)からなるため、繊維14aの表面は硬化樹脂層14bで被覆されている。接着剤18とモルタル層19は、硬化樹脂層14bと接触している。接着剤混合モルタルMが硬化してできたモルタル層19は、細骨材13a及びセメント粒子(図5ではドットで示す)等の母材粒子と、母材粒子を囲むように母材粒子の間隙に分布する接着剤13bとを有する。
モルタル層19中で水性エポキシ樹脂を主成分とする接着剤13bは、同じくエポキシ樹脂を主成分とする硬化樹脂層14bと比較的強く結合する。また、モルタル層19中のセメントは樹脂水溶液中の水と水和反応をして硬化する。モルタル層19中のセメントと接着剤13b(水性エポキシ樹脂)は細骨材13aと共に混合状態で硬化し互いに絡んで強く結合すると共に、その接着剤13bの樹脂水溶液のうちシート状補強材14との界面に沿って濡れ広がった一部がシート状補強材14を被覆する層を形成する状態で硬化し、この層が硬化樹脂層14bと強く結合する。このため、母材13はシート状補強材14と接着剤13bを介して強く結合し、母材13とシート状補強材14との間に比較的強い付着力が確保される。
例えば、施工面11aに塗付したのと同様の接着剤18をシート状補強材14に塗付する接着剤塗付工程と、その接着剤18が未硬化のうちにその塗付面に接着剤非含有のモルタルを打設するモルタル打設工程とを含む施工方法をとったとする。この場合、未硬化の接着剤18と未硬化のモルタルとがシート状補強材14の周囲で混ざり合い、シート状補強材14を被覆する接着剤層の周囲に接着剤とセメントとの混合層が形成され、これが母材とシート状補強材との付着力向上に寄与する。本実施形態のように、予め接着剤をモルタルと混合させた接着剤混合モルタルMを打設した場合、シート状補強材14との界面に沿って樹脂水溶液が濡れ広がってできた接着剤の層の周囲に接着剤とセメントとの混合層が形成される。この場合、モルタル打設工程だけで、接着剤塗付工程とモルタル打設工程との二工程で行う方法の場合と、ほぼ同等の形態がシート状補強材の周囲に形成され、接合強度上もほぼ同等の効果が得られる。
また、複数層(枚)のメッシュシート16は、本例では全て同じメッシュサイズ(網目サイズ)となっている。もちろんメッシュサイズを異ならせてもよい。ここで、メッシュサイズは、2mm〜10cmの範囲内の値が好ましい。2mmより小さいと、塗付した接着剤及び接着剤混合モルタルが網目に含浸しにくくなる虞がある。このため、メッシュサイズは2mm以上が好ましい。一方、メッシュサイズが10cmを超えると、母材に対する繊維の割合が少なくなって繊維強化の効果が小さくなる。このため、メッシュサイズは10cm以下が好ましい。
メッシュシート16のバサルト繊維は、一例として径13μmのものを使用している。もちろん、繊維の径は6〜30μmの範囲内であればよい。5μm以下であると繊維が切れやすく、30μmを超えると柔軟性に劣る。また、本例では、繊維14aとして撚りのないロービング糸(不撚糸)を使用するので、樹脂やモルタルが含浸し易く硬化後の強度が出やすい。もちろんバサルト繊維は撚糸でもよい。本例では、バサルト繊維のロービング糸で製織された5mmピッチのメッシュシート16を使用している。メッシュシート16は、例えば幅およそ1メートルの長尺のものを適当な長さに切断して使用する。
ここで、バサルト繊維、炭素繊維、アラミド繊維、ガラス繊維の特性を比較する。引張弾性率(ヤング率)Eは、バサルト繊維E=90GPa、炭素繊維(TR50S)E=240GPa、ガラス繊維(Eガラス)E=74GPa、アラミド繊維(ケブラー(登録商標)49)E=80〜118GPaである。また、伸び率は、バサルト繊維が2.4%、炭素繊維が1.5%、ガラス繊維が1.8〜2.0%、アラミド繊維が1.7%である。
炭素繊維は、引張弾性率がバサルト繊維よりも高く、伸び率はバサルト繊維よりも低い。アラミド繊維は引張弾性率がバサルト繊維と同程度であるが、伸び率がバサルト繊維よりも低い。ガラス繊維は引張弾性率がバサルト繊維よりも低く、伸び率がバサルト繊維よりも少し低い。この中でバサルト繊維の伸び率が一番高いので、バサルト繊維のシート状補強材14を使用することで、曲げ強度及び曲げ靱性(曲げ靱性係数)が共に高い複合構造層12が得られる。
図2に示すように、複合構造層12では、シート状補強材14間に介在するモルタル層19の厚みで規定されるシート状補強材14の間隔が広すぎると、シート状補強材14が別々に効き出すので、強度確保の点から間隔は狭い方がよい。強化繊維層15間の間隔、つまりモルタル層19の厚さは、例えば0.1〜20mmの範囲内の値であればよい。特に0.5〜10mmの範囲内の値が好ましく、その中でも1〜5mmの範囲内の値が最も好ましい。
モルタル層19の厚さが0.1mm未満であると、モルタルの厚みにむらができてメッシュシート16の網目にモルタルが入らない箇所ができる場合がある。また、20mmを超える厚さでは、強化繊維層15が別々に効き出す場合があり、複数層の割に強度向上効果が得られにくくなる。また、0.5mm以上の厚さでは、モルタルの厚みのむらを少なくできメッシュシート16の面全体に均一にモルタルを網目に入れることができる。10mm以下の厚さでは、複数の強化繊維層15が一層協働して効き易く強度向上に繋がる。さらに1mm以上の厚さがあれば、モルタルがメッシュシート16の網目に十分入り込むことができ、強化繊維層15とモルタル層19との結合を一層高められる。5mm以下の厚さであると、強化繊維層15がさらに一層協働して効き易く一層の強度向上に繋がる。なお、最表面の被覆モルタル層19のかぶり厚さは、一例として1cm以上にしている。
次に、上記のように構成された複合構造層12の施工方法、及びこの方法で施工された複合構造層12の作用を説明する。
予めベース部11に下地層17が施工されている。ベース部11は、盛土又は切土などの施工対象の地盤、鉄筋コンクリート、鉄骨鉄筋コンクリート又はコンクリートからなるの躯体のうちの一つであり、その表面に下地層17が形成されることで、複合構造層12を施工し易い施工面11aを有している。なお、ベース部11の下地層形成前の表面が比較的凹凸がなくシート状補強材14を直接貼ってもその浮きが発生しない程度に滑らかな面であり、かつ土や砂を固めただけの面のような流動性のある面でなければ、その面を施工面としてもよい。
次に図6に示す施工方法のフローチャートを参照して、ベース部11の施工面11aに複合構造層12を施工する手順について説明する。
まずステップS1では、施工面に接着剤を塗付する。すなわち、施工面の所定エリア(シート状補強材貼付けエリア)に接着剤18を塗付する。ここで、所定エリアは一例として全面としているが、ベース部11の施工面の広さに応じて施工は複数回に分けて行ってもよく、この場合、施工面のうち1回分の所定エリアに接着材を塗付する。接着剤18の塗付方法としては、例えばローラを用いて接着剤を塗付するローラ塗付法、刷毛で塗付する方法、スプレー装置を用いて施工面11aに接着剤を吹き付ける吹付法、特定の転写媒体を用いて接着剤を転写する転写法などを使用できる。接着剤18の塗付量は1面当たり、例えば50〜300g/mの範囲内の値としている。接着剤18は硬化性樹脂の一例として水性エポキシ樹脂を主成分とする二液型で主剤と硬化剤とを混合したものである。これは、その後、打設される接着剤混合モルタルM中の接着剤(硬化性樹脂)が水性であるため、これと接触した箇所で結合力を高めるべく、同じ水性エポキシ系の接着剤を使用する。ここで、本実施形態では、接着剤18を施工面に塗付したが、シート状補強材14の施工面11aと固定される側の第1の面と施工面11aとのうち少なくとも第1の面に接着剤を塗付してもよい。この場合、接着剤18の塗付方法としては、前述の方法の他に、シート状補強材14を接着剤貯留槽中の接着剤液に浸漬する浸漬塗付法(ディッピング法)を採用できる。なお、本実施形態では、ステップS1の工程が、接着剤塗付工程の一例に相当する。
次のステップS2では、シート状補強材14を施工面の接着剤塗付面に載置する。シート状補強材14は施工面に塗付された未硬化の接着剤18の上に載置されることで、接着剤18により施工面11aに貼り付けられる。このとき、シート状補強材14を軽く押さえ付けて接着剤にしっかり密着させることが好ましい。なお、本実施形態では、このステップS2の工程が、補強材載置工程の一例に相当する。
次のステップS3では、シート状補強材14の第2の面を覆うように接着剤混合モルタルを打設して、被覆モルタル層19を形成する。被覆モルタル層19の厚みは、硬化後で例えば0.1〜20mmの範囲内の値とするが、1〜10mmの範囲内が好ましい。もちろん、必要な強度を確保できれば、被覆モルタル層19の厚みはこの範囲外でもよい。モルタル打設方法としては、一例として吹付法を採用する。もちろん、刷毛、コテ、ローラ等を用いて打設してもよい。なお、本実施形態では、このステップS3の工程が、母材層形成工程の一例に相当する。
なお、ステップS2,S3において、貼り付け前のシート状補強材14を複数のスペーサで支持して施工面又は前層のモルタル層19の表面から少し離間して宙に浮く状態とし、この状態でシート状補強材14の表面にモルタルを打設することで、モルタルがシート状補強材14の網目を通り易くしてもよい。この場合、網目にモルタルが入り込み易くなった分、モルタルと繊維14aとの付着力が高まる。
図1及び図2に示す例では、強化繊維層15が3層なので、S1〜S3の工程を1回(1層形成分)行った段階では、複合構造層12の施工は終了しない。複合構造層12の施工終了でなければ(S4で否定判定)、ステップS2に戻り、ステップS2,S3の各工程を複合構造層12の施工終了まで繰り返す。強化繊維層15がN層である場合、ステップS2,S3の工程を合計N回繰り返し、最表面側の被覆モルタル層19の形成まで行う。こうして、バサルト繊維を含む強化繊維層15を所定の複数層含む複合構造層12が施工される。なお、強化繊維層15の層数は1層、2層あるいは4層以上であってもよい。そして、複合構造層12の施工を終えると(S4で肯定判定)、ステップS5に進む。なお、本実施形態では、シート状補強材14を接着剤混合モルタルMで被覆してシート状補強材14を未硬化の母材13中に混入させるステップS2,S3の工程が、複合化工程の一例に相当する。また、未硬化のモルタル層19の表面(第2の面)にシート状補強材14を載置する2回目以降のステップS2の工程が、第2の補強材載置工程の一例に相当する。
ステップS5では、接着剤18とモルタル層19(接着剤混合モルタル層)とを硬化させる。すなわち、それぞれの硬化に必要な時間のうち長い方の時間(養生時間)だけ放置し、接着剤18とモルタル層19とを共に硬化させる。この硬化によって、ベース部11とシート状補強材14とが接着剤18により強い結合力で接着される。また、シート状補強材14とモルタル層19との界面に沿って濡れ広がった接着剤混合モルタルM中の接着剤がシート状補強材14を覆う樹脂層を形成する状態で硬化するとともに、モルタル層19中でセメントと接着剤とが細骨材13aと共に絡み合った状態で硬化する。シート状補強材14を被覆する硬化樹脂層14bと接着剤13bは、樹脂同士のため、硬化樹脂層14bとセメントとの結合力よりも強く結合する。このため、母材13とシート状補強材14は、接着剤非含有のモルタルのみからなるモルタル層とシート状補強材とが接合された構造に比べ、強い結合力で結合し、両者間に比較的高い付着力が確保される。なお、本実施形態では、ステップS5の工程が、硬化工程の一例に相当する。
なお、上記の例では、シート状補強材14を一枚ずつ両側からモルタル層で挟んだが、例えば複数枚のシート状補強材14を間にモルタル層を挟まず重ねて配置して、1つの強化繊維層15を構成してもよい。
以上詳述したように本実施形態によれば、以下の効果が得られる。
(1)複合化工程(S2,S3)において、接着剤混合モルタルM(母材流動物の一例)でシート状補強材14を被覆してモルタル層19(母材層の一例)を形成することで、そのシート状補強材14と未硬化の接着剤混合モルタルMとを複合化させる。そして、硬化工程(S5)で、未硬化のモルタル層19を硬化させる。接着剤混合モルタルM中の細骨材13a及びセメントの粒子を囲む接着剤13bを介して母材13とシート状補強材14は比較的強固に接合する。この結果、母材13とシート状補強材14との間に比較的高い付着力が確保される。したがって、構造体10に曲げ応力が加わって複合構造層12の表面にひび割れが発生した際に、母材13からシート状補強材14の繊維14aが引き抜ける引抜け現象が発生しにくくなる。よって、曲げ強度及び曲げ靱性が共に高い構造体10及び複合構造層12を得ることができる。また、モルタル層19の形成時にシート状補強材14の第2の面に接着剤を塗付する必要がないので、モルタル層19の形成工程がモルタル打設工程の一工程で済み、複合構造層12の施工時の作業性がよくなる。
(2)施工方法は、ベース部11の施工面11aに接着剤18を塗付する接着剤塗付工程(S1)と、シート状補強材14を接着剤塗付面に載置する補強材載置工程(S2)と、接着剤混合モルタルMでシート状補強材の第2の面を被覆して母材層の一例であるモルタル層19を形成する母材層形成工程(S3)とを含む。このため、塗付された接着剤18と、モルタル層19の接着剤混合モルタルMとは共に未硬化の状態から硬化する。この結果、施工面11aとシート状補強材14とを接着剤18で比較的強固に接合できるうえ、接着剤18と接着剤混合モルタルMは少なくとも一方がシート状補強材14の網目に入り込んだ状態で接触し、その接触箇所で強く結合する。このため、施工面11aとシート状補強材14との接着剤18を介した付着力、及びシート状補強材14と母材13との付着力が共に高まり、曲げ強度及び曲げ靱性の高い構造体10及び複合構造層12を得ることができる。
(3)シート状補強材14の繊維14aとして引張弾性率の比較的高い無機系及び有機系の繊維のうち比較的伸び率(伸度)の高いバサルト繊維を用いた。例えば地震などで比較的振幅の大きな振動を受けても、ひび割れが発生し難いうえ、ひび割れ発生後、破壊に至るまでに比較的大きなたわみを許容できる曲げ靱性の高い高靱性の構造体10及び複合構造層12を提供できる。
(4)接着剤混合モルタルMは、無機系硬化材料として水硬性材料の一例であるセメントと、細骨材13a(砂等)と、その水硬性材料を硬化させるために必要な水に溶解可能な水性の接着剤(例えば水性エポキシ樹脂接着剤)と、水とを含む混合物である。このため、未硬化のモルタル層19では、接着剤の水溶液(樹脂水溶液)がセメント粒子及び骨材等の母材粒子を囲む状態に分布するとともに、その表面張力等によりシート状補強材14との界面に沿って濡れ広がってシート状補強材14の周囲に接着剤層を形成する。つまり、接着剤混合モルタルMをシート状補強材14の第2の面を被覆する状態に打設しただけでも、シート状補強材14の第2の面に接着剤を塗付したときと同じような接着剤層と、その周囲に接着剤とセメントと細骨材13aとが絡み合って硬化した混合層が形成される。この結果、シート状補強材14とモルタル層19とが強く接合する。よって、モルタル層19の形成時に接着剤塗付工程が無くても、母材13とシート状補強材14との付着力が高くすることができ、曲げ強度及び曲げ靱性の高い構造体10及び複合構造層12を得ることができる。
(5)補強材載置工程(S2)と母材層形成工程(S3)とを複数回繰り返して、シート状補強材14をモルタル層19(母材層の一例)で被覆した層を複数層形成した。このため、構造体10及び複合構造層12にシート状補強材14の層数に応じた必要な曲げ強度及び曲げ靱性を確保できる。例えば複数枚のシート状補強材を重ね合わせた状態でその両側から接着剤混合モルタルMで挟んだ構成の場合、シート状補強材の間に存在する接着剤混合モルタルの割合が相対的に少なくなり易く、構造物に曲げ応力が加わった際にシート状補強材間に相対的に滑りが発生し易くなる。これに対し、本実施形態では、シート状補強材14間に全面に亘ってモルタル層19が介在するとともに、一枚のシート状補強材14の網目に接着剤混合モルタルMが入り込んだ状態で硬化するので、構造体10に曲げ応力が加わった際にシート状補強材14間で滑りが発生しにくくなる。この結果、曲げ強度及び曲げ靱性の比較的高い構造体10及び複合構造層12が得られる。
(6)補強材載置工程(S2)と母材層形成工程(S3)とを複数回繰り返して形成した複数のモルタル層19を一緒に硬化させる(S5)。このため、一層のモルタル層19を硬化させた後に次層のモルタル層19を形成する方法に比べ、シート状補強材14の網目を介して両側の接着剤混合モルタルMが接触した接触箇所における結合力を高めることができ、ひいては複合構造層12の曲げ強度及び曲げ靱性を高めることができる。
(第2実施形態)
次に図7を用いて第2実施形態について説明する。この第2実施形態は、複数の強化繊維層15のうち少なくとも一部の層でシート状補強材の繊維の材質が異なっている例である。以下、第1実施形態と同一の構成については同一の符号を付してその説明を省略し、特に異なる部分についてのみ説明する。
なお、本実施形態では、ベース部11の下地層形成前の表面を施工面11aとし、複合構造層12の施工工事を下地層17の形成から行う。この施工面11aに接着剤混合モルタルMを打設して下地層17を形成し、この下地層17の接着剤混合モルタルMが未硬化のうちにシート状補強材14を載置して貼り付ける。このため、この第2実施形態では、第1実施形態ではあった接着剤塗付工程が省略されている。
すなわち、本実施形態の施工方法では、図6におけるステップS1を、接着剤塗付工程に替え、ベース部11の下地層形成前の施工面11aに、接着剤混合モルタルMを打設(例えば吹付け)して下地層17(下地モルタル層)を形成する下地層形成工程(S1)とする。そして、この施工方法は、下地層17の接着剤混合モルタルMが未硬化のうちに下地層17の第2の面に、第1実施形態と同様に、シート状補強材14を載置する補強材載置工程(S2)を含む。さらにこの施工方法は、第1実施形態と同様に、シート状補強材14上に接着剤混合モルタルMを打設して母材層の一例としての被覆モルタル層19を形成する母材層形成工程(S3)を含む。そして、母材層形成工程(S3)の後は、第1実施形態と同様に、補強材載置工程(S2)と母材層形成工程(S3)とをこの順番で強化繊維層15が所望の層数形成される(図6のステップS4で肯定判定となる)まで繰り返す。
図7に示すように、構造体10の構成は基本的に第1実施形態とほぼ同様であり、母材13中に複数(図7では例えば3層)の強化繊維層15が含まれている。複数の強化繊維層15には、繊維の材質の異なる2種類のシート状補強材14,20が使用される。詳しくは、複数の強化繊維層15は、使用される複数種の繊維のうち最も引張弾性率の高い繊維で製織されたシート状補強材20を含む第1補強層21と、シート状補強材20の繊維よりも引張弾性率の低い繊維14aで製織されたシート状補強材14を含む第2補強層22とを有している。第1補強層21はベース部11に一番近い側の位置に一層形成され、下地層17と被覆モルタル層19との間に挟まれている。一方、第2補強層22は、第1補強層21よりも表面側(ベース部11側と反対側)の位置に二層形成され、それぞれモルタル層19,19の間に挟まれている。なお、第1補強層21の層数と、第2補強層22の層数は適宜変更してよい。
第2補強層22中のシート状補強材14は、バサルト繊維、アラミド繊維、ガラス繊維のうちから選択される少なくとも1つの繊維でそれぞれ製織されたメッシュシート16からなる。本例では、シート状補強材14としてバサルト繊維(引張弾性率E=90GPa)で製織されたメッシュシート16が使用されている。また、第1補強層21中のシート状補強材20は、第2補強層22中のシート状補強材14の繊維よりも引張弾性率の高い無機系繊維で製織されたメッシュシート23からなる。本例では、シート状補強材20として炭素繊維(引張弾性率E=240GPa)で製織されたメッシュシート23が使用されている。
バサルト繊維よりも3倍近く引張弾性率の高い炭素繊維のメッシュシート23を使用することで、構造体10が必要な曲げ強度を得るうえで必要なメッシュシートの枚数を減らしたり、メッシュシートの枚数が少ないままで構造体10の曲げ強度を十分高めたりすることができる。しかも、引張弾性率の高い炭素繊維のメッシュシート23をベース部11に近い側の層に配置することで、構造体10の曲げ強度を効果的に高めることができる。
また、複合構造層12内におけるメッシュシート23よりも表面側の位置に、その繊維の材質の伸び率(本例では炭素繊維の伸び率1.5%)よりも伸び率の高い繊維(本例では伸び率が2.4%のバサルト繊維)で製織されたメッシュシート16を配置しているので、比較的高い曲げ靱性を確保できる。よって、バサルト繊維のメッシュシート16と炭素繊維のメッシュシート23との混入により、曲げ強度及び曲げ靱性が一層高い構造体10及び複合構造層12を提供できる。
施工方法は、第1実施形態の図6と異なる前述の内容の他、二種類のシート状補強材14,20を用いて二種類の補強層21,22を形成する関係上、ステップS2で載置するシート状補強材の種類を層に応じて変えることになる。すなわち、図6のステップS2において、1回目(1層目)のシート状補強材を載置するときに炭素繊維のメッシュシート23を載置し、続くステップS3において接着剤混合モルタルMを打設して被覆モルタル層19を形成する。その後、ステップS2において、2回目(2層目)と3回目(3層目)のシート状補強材を載置するときにバサルト繊維のメッシュシート16を載置し、それぞれの回の補強材載置工程(S2)に続くステップS3において接着剤混合モルタルMを打設してメッシュシート16を一枚ずつ被覆する被覆モルタル層19を形成する。
この第2実施形態によれば、第1実施形態の(1),(3)〜(6)の効果を同様に得られるうえ、以下の効果も得られる。
(7)図6のステップS1を、第1実施形態における接着剤塗付工程に替え、ベース部11の下地層形成前の施工面11aに接着剤混合モルタルMを打設して下地層17を形成する下地層形成工程とした。そして、下地層17の接着剤混合モルタルMが未硬化のうちにシート状補強材20を載置する補強材載置工程(S2)と、シート状補強材20の第2の面を被覆するモルタル層19を形成する母材層形成工程(S3)とをこの順番で、強化繊維層15が必要な層数に達するまで繰り返す。よって、この施工方法により第1実施形態と同様に、比較的曲げ強度及び曲げ靱性の高い複合構造層12を得ることができる。
(8)繊維の材質の異なる二種以上(例えば二種)のメッシュシート16,23を採用した。特に、使用される複数種の繊維のうち最も引張弾性率の高い第1繊維(本例では炭素繊維)のメッシュシート23を、ベース部11寄りの層に配置し、第1繊維よりも引張弾性率が低いものの伸び率の高い第2繊維(本例ではバサルト繊維)のメッシュシート16を表面側の層に配置した。よって、構造体10の曲げ強度及び曲げ靱性を一層高めることができる。例えば、耐震に対しては、小規模の地震では引張弾性率の高い炭素繊維のメッシュシート23による高曲げ強度が有効に効き、中規模の地震では、炭素繊維のメッシュシート23とバサルト繊維のメッシュシート16の両方がひび割れ抑制に効く。さらに大規模の地震では、伸び率の高いバサルト繊維のメッシュシート16による高曲げ靱性がひび割れ後の破壊の抑制に効いてくる。よって、耐震性に優れた構造体10及び複合構造層12を提供できる。
<実験>
次に複合構造体の曲げ強度及び曲げ靱性を評価する実験の詳細を説明する。但し、以下の実験は、メッシュシートに接着剤としてエポキシ樹脂を塗付したうえで、その接着剤が未硬化のうちにその接着剤塗付面に未硬化のモルタルを打設して、接着剤とモルタルを共に未硬化の状態から一緒に硬化させる方法を評価するものである。つまり、この実験は、母材のうちシート状補強材の周辺に限って接着剤混合モルタルを打設したときと同じ形態を形成し、接着剤混合モルタルで母材を形成した複合構造体を評価するものである。
上述の趣旨で、以下の実験では、バサルト繊維強化樹脂材料(BFRP)のメッシュシート26の混入及び母材を構成する接着剤とモルタルを未硬化の状態から硬化させることによる複合構造体の強度及び靱性の向上効果、及びこの複合構造体の曲げ挙動を評価した。詳しくは、コンクリート標準示方書におけるコンクリートの曲げ強度試験方法に準拠した寸法、すなわち幅100mm×高さ100mm×長さ400mmの供試体を作製し、曲げ試験を実施した。実験パラメータはBFRPメッシュシートの枚数(0枚、1枚、2枚、3枚、それぞれCM−N,CM−B1,CM−B2,CM−B3と呼称する。)とエポキシ樹脂の事前塗付による接着の有無(事前塗付を行った供試体をCM−B3−Wと呼称する。)とした。エポキシ樹脂の塗付量は1面当たり200g/mとした。さらにBFRPメッシュシートと炭素繊維複合材(Carbon fiber reinforced plastics)のメッシュシート(CFRPメッシュシートと呼称する。)を混入し、エポキシ樹脂をモルタル打設前にメッシュシートに塗付するエポキシ樹脂の事前塗付による接着を行った供試体を作製した。それぞれの供試体について3体の実験を行った。
BFRPメッシュシートは、0°,90°の方向に1本200texのバサルト繊維紐を4.2mmの格子間隔で編んだバサルト繊維メッシュシートをエポキシ樹脂で含浸・成形したものである。供試体の幅内にはメッシュシート1枚当たり14本のBFRP棒が混入される。CFRPメッシュシートも、バサルト繊維に替えて炭素繊維を使用している点以外の構成はBFRPメッシュシートと同じである。
BFRPメッシュシート26の詳細寸法を図8に、各種材料の物性値を表1にそれぞれ示す。図8に示すように、供試体は、幅100mm×高さ100mm×長さ400mmで、その母材であるセメントモルタル25中に、供試体の底面から20mmの高さ位置に、幅60mm×長さ100mmのBFRPメッシュシート26を、底面と平行に配置する状態で混入している。BFRPメッシュシート26についてはBFRP棒(1本)の引張試験を10本行い、平均値を物性値として採用した。
また、モルタルの物性については3本のφ100mm×200mmの円柱供試体3体の試験結果を平均した値を採用した。モルタル供試体は、打設後に屋外環境下で湿布養生を行い、28日間の養生後に2000kN加圧試験機により4点曲げ試験を実施した。曲げ試験の状況を図9に示す。計測機器及び項目は、荷重及び供試体両側面の各載荷点に設置した変位計27により測定したたわみ(平均値)とした。
(実験結果と考察)
4点曲げ試験の結果より、荷重(曲げ応力)−たわみ曲線を、図10、図11に示す。式(1)より求めた曲げ靱性係数の一覧を図12に示す。また、曲げ応力は以下の式(2)より算出した。
ここで、fbバーは曲げ靱性係数、Tbは荷重−たわみ曲線におけるδthまでの面積、δthはスパンの1/150のたわみ、lはスパン、bは破壊断面の幅、そしてhは破壊断面の高さ、Pは荷重である。
CM−Nのケースでは、荷重12kN付近(曲げ応力約3N/mm)で供試体のスパン中央部に1本のひび割れが発生して2つに割れ、載荷を継続できなくなったが、CM−B1のケースでは1本のひび割れ発生後、一時的にひび割れ発生直前における荷重の50%程度低下するも、その後はやや荷重が増加するひずみ硬化が見られた。また、CM−Nのケースに比べて最大荷重は向上しないが、終局破壊時のたわみは410%、曲げ靱性係数は161%それぞれ増加した。
さらにCM−B2,CM−B3と補強量が大きいほど、このひずみ硬化がより明確に現れ、CM−Nのケースに比べて最大荷重、終局破壊時のたわみ、曲げ靱性係数のすべてで大幅に増加した。しかし、最大荷重時には、BFRPメッシュシート26が数本ずつ段階的に破断し、その都度荷重低下を伴って早期にすべてのBFRPメッシュシート26が破断に至ったため、靱性の向上効果は限定的であった。また、破断後にひび割れ近傍を観察したところ、CM−B1及びCM−B2については剥離や引き抜けは確認できなかったが、CM−B3についてはひび割れから両端に向かって50mm程度離れた箇所に新たにひび割れが生じ、BFRPメッシュシートの引き抜けや段階的な部分破断、かぶりの剥落が生じた。以上から、CM−B3のようにある程度補強量が大きいケースでは、BFRPメッシュシートの引き抜けやすべりが生じるため、メッシュシートを構成する14本のBFRP棒間に生じる応力が不均一化し、モルタルの曲げ挙動が不安定化することから、BFRPメッシュシートの付着確保が重要な課題と考えられた。
そこで、BFRPメッシュシート26の付着確保のため、モルタルの打設前にBFRPメッシュシート26の表面にエポキシ樹脂を塗付することにより付着確保を図った。
図10に示したCM−B3−WとCM−B3の荷重−たわみ曲線と、図12に示した曲げ靱性係数より、CM−B3−Wのケースでは、CM−B3のケースに比べて最大荷重は63%〜134%、最大荷重時のたわみは40%〜206%、曲げ靱性係数は32%〜78%、それぞれ飛躍的に向上した。
また、図10に示すように、CM−B3のケースでは、最大荷重とBFRPメッシュシート完全破壊時のたわみが大きくばらついているが、CM−B3−Wではばらつきがかなり制御されている。よって、モルタルの打設前にBFRPメッシュシート26の表面にエポキシ樹脂を塗付することにより、BFRPメッシュシート混入モルタルの曲げ耐力及び靱性が飛躍的に向上し、その性能はかなり安定化されることが実験的に明確となった。
また、図11に示したCM−B3C1−Wの荷重−たわみ曲線と、図12に示した曲げ靱性係数のグラフとから、CM−B3C1−Wのケースでは、CM−B3−Wのケースに比べて、最大荷重時のたわみは多少小さくなっているものの、最大荷重、曲げ靱性係数は共に飛躍的に向上した。特に図12に示すCM−B3C1−Wのケースでは、6.0N/mmを超える曲げ靱性係数が得られた。また、炭素繊維メッシュシートを加えることで、剛性(一次剛性及び二次剛性)を容易に上げられることが確認できた。
この実験結果から、メッシュシートの周囲に未硬化の接着剤(エポキシ樹脂)を塗付してその塗付した未硬化の接着剤の塗付面に未硬化のモルタルを打設し、接着剤とモルタルを共に未硬化の状態から硬化させることで、メッシュシートとモルタルとの付着力が高まることが分かる。モルタルの打設によって、未硬化の接着剤と未硬化のモルタルとはシート状補強材の周辺で混ざり合い、混ざり合った接着剤とモルタルとを未硬化の状態から硬化させるので、両者の付着力が高まる。
これに対して本実施形態では、セメントを硬化させるための水に溶解可能な水性エポキシ樹脂を使用し、セメントモルタルに用いる水に水性エポキシ樹脂接着剤を溶かし込むことにより母材流動物(接着剤混合モルタル)を調製する。そして、メッシュシートの表面を接着剤混合モルタルで被覆して複合化し、この複合化状態のまま硬化させる。この複合化状態では、接着剤混合モルタル中の接着剤水溶液がシート状補強材の界面に沿って濡れ広がるとともに、セメントと細骨材等の母材粒子の隙間に分布するので、接着剤混合モルタルが硬化したときには母材とシート状補強材が接着剤を介して比較的強固に結合する。
なお、実施形態は、以下に示す態様でもよい。
・シート状補強材をメッシュシートに替えて織物シートとしてもよい。織物シートは、例えば平織り又は綾織りにより製織されている。例えば複数層(N層)のシート状補強材のうち、例えばベース部11寄りの(N−n)層(但しN>n)の強化繊維層15にメッシュシート16(又は23)を使用し、残りの表面寄りのn層の強化繊維層15に織物シートを使用する。織物シートは、その織目の隙間がメッシュシートの網目の隙間よりも十分小さいため、複合構造層12の内側(ベース部側)への空気の透過を抑制できる。このため、母材13であるモルタル、ベース部11を構成するコンクリートが、透過した空気中の炭酸ガスと反応して劣化(中性化)する劣化速度を遅らせることができる。
・ベース部11を形成するために打設したコンクリートが未硬化のうちにその表面側に複合構造層を形成してもよい。施工方法は、まず接着剤混合コンクリートを打設してベース部11を形成し、未硬化のベース部11にシート状補強材14(20)を貼り付け、さらにシート状補強材14(20)の表面に接着剤混合モルタルMを打設して被覆モルタル層を形成する。以後、必要な強化繊維層数の施工を終えるまで、シート状補強材の載置の工程と被覆モルタル層の形成の工程とを繰り返す。
・被覆モルタル層19(母材層の一例)の形成時に、シート状補強材の第2の面に接着剤を塗付する接着剤塗付工程と、母材流動物(例えば接着剤混合モルタルM)を打設して母材層を形成する母材層形成工程との二工程を行ってもよい。この構成によれば、シート状補強材の第2の面に塗付された接着剤と母材流動物中に混合された接着剤とが接合することで、母材13とシート状補強材14との付着力を高めることができる。
・前記第2実施形態において、第1実施形態と同様に図6におけるステップS1を、ベース部11の施工面11a(下地層17の表面)に、接着剤18を塗付する接着剤塗付工程としてもよい。また、第1実施形態において、第2実施形態と同様に図6におけるステップS1の接着剤塗付工程を、下地層形成工程に替えてもよい。
・接着剤は水性の硬化性樹脂に限定されず、溶剤系の硬化性樹脂を用いてもよい。この構成でも、母材粒子と接着剤とが混合した状態で未硬化の状態から硬化することで、母材とシート状補強材との付着力を高めることができる。
・前記第1実施形態において、複数層のシート状補強材は、それぞれを製織している繊維の材質が異なってもよい。例えばバサルト繊維メッシュシート、ガラス繊維メッシュシート及びアラミド繊維メッシュシートのうち少なくとも2つを使用してもよい。また、第2実施形態において、第2シート状補強材の繊維は、バサルト繊維に替え、ガラス繊維又はアラミド繊維としてもよい。
・前記各実施形態において、補強材載置工程(S2)と母材層形成工程(S3)とを複数回繰り返す場合、母材層(被覆モルタル層19)を一層ずつ硬化させつつ複数の母材層を形成してもよい。
・複合構造層12中に、メッシュシートを複数枚含む強化繊維層と、メッシュシートを1枚のみ含む強化繊維層とが混在していてもよい。
・シート状補強材を構成する繊維は、アラミド繊維以外の有機系繊維でもよい。例えばナイロン繊維、ビニロン繊維、ポリプロピレン繊維、アクリル繊維などの有機系繊維を用いることもできる。また、無機系繊維で製織されたシート状補強材と有機系繊維で製織されたシート状補強材とを母材に混入してもよい。
・1つのシート状補強材(例えばメッシュシート)を材質の異なる複数種の繊維を混ぜて製織してもよい。例えば炭素繊維とバサルト繊維とを混ぜたメッシュシート、バサルト繊維とアラミド繊維とを混ぜたメッシュシート、バサルト繊維とガラス繊維とを混ぜたメッシュシートを使用してもよい。
・第1及び第2実施形態において、複数のシート状補強材の網目(織目)のサイズを異ならせてもよい。例えばシート状補強材を表面側のものよりベース部側のものの方が網目(織目)が細かくなる順番に配置したり、この逆の順番にしたり、網目サイズの順番をランダムにしたりしてもよい。
・第2実施形態において、引張弾性率の高い材質のシート状補強材を表面側に配置してもよいし、複合構造体の厚さ方向に引張弾性率の順番をランダムにしてもよい。
・母材を構成する硬化性無機材料はセメントに限定されない。水硬性材料の一例としての水硬性石灰でもよい。また、硬化性無機材料は水硬性材料に限定されず、例えば硬化剤を添加した水ガラス(珪酸ナトリウム)でもよい。
・施工面は法面に限定されず、水平な地盤にコンクリートを打設して形成された水平な施工面でもよいし、坑内の施工面、天井の施工面でもよい。
・プレキャストコンクリート製品に適用してもよい。例えば側溝、管、橋桁、擁壁、杭、建物の一部(柱、梁、壁材)、カルバート、マンホールでもよい。これらの構成でも、ベース部11(躯体)の施工面11aに複合構造層12が形成された構造体を高い曲げ強度及び曲げ靱性とすることができる。
10…構造体、11…ベース部、11a…施工面、12…複合構造体の一例である複合構造層、13…母材、13a…細骨材、13b…接着剤、14…シート状補強材、14a…繊維、15…強化繊維層、16…メッシュシート、17…下地層、18…接着剤、19…母材層の一例としての被覆モルタル層、20…シート状補強材、21…第1補強層、22…第2補強層、23…メッシュシート、M…母材流動物の一例としての接着剤混合モルタル。

Claims (6)

  1. 無機系繊維と有機系繊維のうちから選択される少なくとも一つの繊維で製織されたシート状補強材と、硬化性樹脂材料を主成分とする未硬化の接着剤及び未硬化の硬化性無機材料を混合した状態で含む母材流動物とを、当該母材流動物が未硬化のまま複合化させる複合化工程と、
    前記母材流動物を硬化させて母材が前記シート状補強材により繊維強化された複合構造体を形成する硬化工程と
    を備えたことを特徴とする複合構造体の施工方法。
  2. 前記複合構造体は、ベース部の施工面に保護層として施工される複合構造層であり、
    前記複合化工程は、
    前記施工面と前記シート状補強材とのうち少なくとも一方に硬化性樹脂材料を主成分とする接着剤を塗付する接着剤塗付工程と、
    塗付した前記接着剤が未硬化のうちに前記シート状補強材を前記施工面に載置して貼り付ける補強材載置工程と、
    前記シート状補強材を前記母材流動物で被覆して母材層を形成する母材層形成工程とを含み、
    前記硬化工程では、塗付した前記接着剤と前記母材層の前記母材流動物とを硬化させることを特徴とする請求項1に記載の複合構造体の施工方法。
  3. 前記複合構造体は、ベース部の施工面に保護層として施工される複合構造層であり、
    前記複合化工程は、
    前記ベース部の施工面を前記母材流動物で被覆して下地層を形成する下地層形成工程と、
    前記シート状補強材を未硬化の前記下地層の表面に載置する補強材載置工程と、
    前記シート状補強材を前記母材流動物で被覆して母材層を形成する母材層形成工程と
    を含むことを特徴とする請求項1に記載の複合構造体の施工方法。
  4. 未硬化の前記母材層に前記シート状補強材を載置する第2の補強材載置工程と前記母材層形成工程とをこの順番で一回以上行って、前記母材層で被覆されたシート状補強材の層を複数層形成することを特徴とする請求項2又は3に記載の複合構造体の施工方法。
  5. 前記硬化性無機材料は水硬性無機材料であり、前記接着剤は、前記水硬性無機材料を硬化させる水に溶解可能な水性の接着剤であり、
    前記母材流動物は、前記水硬性無機材料と前記水性の接着剤と水とを含む混合物であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載の複合構造体の施工方法。
  6. 無機系繊維と有機系繊維のうちから選択される少なくとも一つの繊維で製織されたシート状補強材と、
    水硬性無機材料と前記水硬性無機材料を硬化させるために混合する水に溶解可能な水性の接着剤と水とを混合した状態で含む母材流動物が、前記シート状補強材が少なくとも一層混入された状態で硬化してなる母材と、
    を備えたことを特徴とする複合構造体。
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