以下、本発明に関する好ましい実施形態について図面を参照しつつ詳細に説明する。尚、以下に説明する実施形態において互いに共通する部材には同一符号を付しており、それらについての重複する説明は省略する。
図1は、本発明の一実施形態に関する画像形成システム1の一構成例を示す図である。この画像形成システム1は、複数の画像形成装置2a〜2iと、複数の情報処理装置3a〜3iと、サーバー装置4とがLAN(Local Area Network)などのネットワーク5に接続されたネットワークシステムとして構成され、各装置が相互にネットワーク5を介してデータ通信を行うことが可能である。ネットワーク5は、有線ネットワークに限られず、無線ネットワークを含むものであっても良く、またインターネットなどの広域ネットワークを含むものであっても良い。尚、以下においては、複数の画像形成装置2a〜2iのそれぞれを区別しないときにはそれらを総称して画像形成装置2と表し、また複数の情報処理装置3a〜3iのそれぞれを区別しないときにはそれらを総称して情報処理装置3と表して説明する。
複数の画像形成装置2のそれぞれは、例えばMFP(Multifunction Peripherals)などによって構成され、ネットワーク5を介して受信する印刷ジョブに基づいて印刷用紙に画像形成を行うことにより、印刷出力を行うことが可能な装置である。本実施形態では、複数の画像形成装置2は、予め管理者によって複数のグループGP1,GP2,GP3に分類されている。すなわち、図1に示すように、画像形成装置2a,2b,2cがグループGP1に分類され、画像形成装置2d,2e,2fがグループGP2に分類され、画像形成装置2g,2h,2iがグループGP3に分類されている。尚、図例では、各グループGP1,GP2,GP3に3台ずつの画像形成装置2が含まれる場合を示しているが、これに限られるものではない。ただし、各グループGP1,GP2,GP3に含まれる画像形成装置2の台数は所定台数(例えば10台程度)が上限値として定められており、その上限値以下の台数となるように各グループGP1,GP2,GP3が決定される。また、図例では、3つのグループGP1,GP2,GP3を示しているが、グループの数は2以上であれば良い。
複数の情報処理装置3のそれぞれは、例えば一般的なパーソナルコンピュータ(PC)などによって構成される。これら情報処理装置3は、それぞれ異なるユーザーによって使用されるものである。各情報処理装置3には、ユーザーによる印刷ジョブの発行指示に基づいて印刷ジョブを生成し、ネットワーク5を介してその印刷ジョブを複数の画像形成装置2のうちの一の画像形成装置2に送信するプリンタドライバが予めインストールされている。本実施形態では、これら複数の情報処理装置3についても、予め管理者によって複数のグループCG1,CG2,CG3に分類されている。すなわち、図1に示すように、情報処理装置3a,3b,3cがグループCP1に分類され、情報処理装置3d,3e,3fがグループCP2に分類され、情報処理装置3g,3h,3iがグループCP3に分類されている。これら3つのグループCP1,CP2,CP3は、複数の画像形成装置2が分類された3つのグループGP1,GP2,GP3のそれぞれに対応するものである。それ故、情報処理装置3のグループ数は、画像形成装置2のグループ数に応じて決定される。尚、図例では、各グループCP1,CP2,CP3に3台ずつの情報処理装置3が含まれる場合を示しているが、これに限られるものではない。
グループCG1に含まれる情報処理装置3a,3b,3cには、予め管理者によって第1のプリンタドライバがインストールされる。そして情報処理装置3a,3b,3cにおいて第1のプリンタドライバが起動すると、ユーザーによる印刷ジョブの発行指示に基づいて生成される印刷ジョブがネットワーク5を介してグループGP1に含まれる複数の画像形成装置2a,2b,2cのいずれか一つに送信される。第1のプリンタドライバは、複数の画像形成装置2a,2b,2cのうちからランダムに印刷ジョブの送信先を決定しても良いし、また予め定められたルールに基づいて送信先を決定しても良い。またユーザーが印刷ジョブの発行指示を行うときに複数の画像形成装置2a,2b,2cのうちから一の画像形成装置を選択して送信先を指定するものであっても構わない。
またグループCG2に含まれる情報処理装置3d,3e,3fには、予め管理者によって第2のプリンタドライバがインストールされる。そして情報処理装置3d,3e,3fにおいて第2のプリンタドライバが起動すると、ユーザーによる印刷ジョブの発行指示に基づいて生成される印刷ジョブがネットワーク5を介してグループGP2に含まれる複数の画像形成装置2d,2e,2fのいずれか一つに送信される。印刷ジョブの送信先の決定手法については上記と同様である。
さらにグループCG3に含まれる情報処理装置3g,3h,3iには、予め管理者によって第3のプリンタドライバがインストールされる。そして情報処理装置3g,3h,3iにおいて第3のプリンタドライバが起動すると、ユーザーによる印刷ジョブの発行指示に基づいて生成される印刷ジョブがネットワーク5を介してグループGP3に含まれる複数の画像形成装置2g,2h,2iのいずれか一つに送信される。ここでも印刷ジョブの送信先の決定手法については上記と同様である。
サーバー装置4は、ネットワーク5に接続された各装置を使用するユーザーを認証するために設けられたサーバーである。すなわち、サーバー装置4は、画像形成装置2及び情報処理装置3のそれぞれから認証情報を受信するとその認証情報に基づいて認証処理を行い、その認証処理の結果を返信する。またサーバー装置4は、情報処理装置3から画像形成装置2に対して送信される印刷ジョブの概要を管理するように構成される。ただし、サーバー装置4は、情報処理装置3から送信される印刷ジョブを集約して管理するものではなく、従来のジョブ管理サーバーとは異なるものである。
図2は、情報処理装置3において印刷ジョブが生成されることに伴って送信される情報の一例を示す図である。例えば図2に示すように、グループCG1に含まれる情報処理装置3aのユーザーXが印刷ジョブの発行指示を行った場合、情報処理装置3aは、ユーザーXによって指定されたドキュメントなどに基づいて描画用の画像データを生成し、その画像データを含む印刷ジョブD1を生成する。この印刷ジョブD1には、描画用の画像データの他、ユーザーXに関する情報や、印刷出力時に適用される各種印刷設定項目の設定値に関する情報が含まれる。そして情報処理装置3aは、その印刷ジョブD1をグループGP1に含まれる複数の画像形成装置2a,2b,2cのいずれか一つに送信する。グループGP1に含まれる画像形成装置2a,2b,2cは、情報処理装置3aから送信される印刷ジョブD1を受信すると、その印刷ジョブD1を保存する。つまり、グループGP1に含まれる複数の画像形成装置2a,2b,2cのうちの1台の画像形成装置だけが印刷ジョブD1を記憶して保有する。
また情報処理装置3aは、描画用の画像データを含む印刷ジョブD1をグループGP1の画像形成装置2a,2b,2cへ送信することに伴い、その印刷ジョブD1に対応するジョブ付属情報D2を生成し、そのジョブ付属情報D2をサーバー装置4へ送信する。このジョブ付属情報D2には、ユーザーXに関する情報や、印刷ジョブD1の送信先グループに関する情報、印刷出力時に適用される各種印刷設定項目の設定値に関する情報などが含まれる。ただし、描画用の画像データは、ジョブ付属情報D2には含まれない。そのため、サーバー装置4に送信されるジョブ付属情報D2は、印刷ジョブD1と比較して極めて小さなデータサイズとなる。そしてサーバー装置4は、情報処理装置3aから受信するジョブ付属情報D2に基づいて印刷ジョブD1を管理する。
そして本実施形態の画像形成システム1は、情報処理装置3から送信された印刷ジョブD1が複数の画像形成装置2a〜2iのうちの一の画像形成装置2に保存されている状態のとき、その印刷ジョブD1の発行指示を行ったユーザーXが任意の画像形成装置2の設置場所に移動して操作することにより、ユーザーXが操作する画像形成装置2がネットワーク5を介して印刷ジョブD1を取得して印刷出力を行うことができるように構成される。このとき、ユーザーXが操作する画像形成装置2は、サーバー装置4及び他の画像形成装置2との間で必要な通信を行い、複数の画像形成装置2a〜2iから印刷ジョブD1が保存されている一の画像形成装置2を特定するように構成される。
図3は、サーバー装置4のハードウェア構成及び機能構成の一例を示すブロック図である。サーバー装置4は、CPU10と、メモリ11と、ネットワークインタフェース12と、記憶装置13とを備えており、これらがデータバス14を介して相互にデータの入出力を行うことができる構成である。CPU10は、サーバー装置4に予めインストールされているプログラムを実行することにより、管理情報更新部10a、認証処理部10b及び送信処理部10cとして機能する。メモリ11は、CPU10がプログラムを実行して管理情報更新部10a、認証処理部10b及び送信処理部10cとして機能するときに発生する一時的なデータなどを記憶するものである。ネットワークインタフェース12は、サーバー装置4をネットワーク5に接続して画像形成装置2や情報処理装置3とデータ通信を行うためのものである。記憶装置13は、例えばハードディスクドライブ(HDD)などによって構成される不揮発性の記憶手段である。
記憶装置13には、ユーザー登録情報15と、グループ管理情報16と、ジョブ管理情報17とが記憶される。ユーザー登録情報15は、ユーザーを認証するために参照される情報であり、ネットワーク5に接続されている画像形成装置2や情報処理装置3を使用する各ユーザーを予め登録した情報である。このユーザー登録情報15には、ユーザーごとに、例えばユーザー名やユーザーID、認証情報などが予め登録される。
グループ管理情報16は、複数の画像形成装置2が分類されたグループGP1,GP2,GP3を管理する情報である。図4は、グループ管理情報16の一例を示す図である。グループ管理情報16は、グループ情報16aと、画像形成装置情報16bとが相互に関連付けられた情報である。すなわち、グループ管理情報16には、各グループGP1,GP2,GP3に属する画像形成装置2に関する情報が登録されている。画像形成装置情報16bには、各画像形成装置2の識別情報と、IPアドレスと、設置場所とが登録されており、この画像形成装置情報16bを参照すれば各グループGP1,GP2,GP3に属する画像形成装置2を特定することができるようになっている。
ジョブ管理情報17は、情報処理装置3から画像形成装置2に対して送信される印刷ジョブの概要を管理するための情報である。図5は、ジョブ管理情報17の一例を示す図である。ジョブ管理情報17は、例えばユーザーID17aと、ジョブID17bと、発行日時17cと、実行フラグ17dと、送信先グループ17eと、ジョブ設定値17fとを含む情報であり、サーバー装置4が各情報処理装置3から受信するジョブ付属情報D2に基づいて逐次更新される情報である。
次にCPU10の機能について説明する。管理情報更新部10aは、ジョブ管理情報17を更新する処理部である。管理情報更新部10aは、情報処理装置3からジョブ付属情報D2を受信すると、そのジョブ付属情報D2に基づいてジョブ管理情報17に新規なジョブを登録する。例えば、管理情報更新部10aは、図5に示すジョブ管理情報17のユーザーID17a、ジョブID17b、発行日時17c、送信先グループ17e及びジョブ設定値17fに関する情報を、情報処理装置3から受信するジョブ付属情報D2に基づいて登録する。また管理情報更新部10aは、ジョブ管理情報17に新規なジョブを登録することに伴い、そのジョブの実行フラグ17dの欄に「0」を登録する。実行フラグ17dは、「0」が印刷ジョブの未実行状態であることを示しており、「1」が印刷ジョブの実行完了状態であることを示している。この実行フラグ17dが「0」から「1」に書き換えられるタイミングは、サーバー装置4が画像形成装置2から印刷ジョブの実行完了通知を受けたタイミングである。つまり、管理情報更新部10aは、画像形成装置2から印刷ジョブの実行完了通知を受信すると、その印刷ジョブに対応する実行フラグ17dを「0」から「1」に書き換える。つまり、管理情報更新部10aは、各情報処理装置3から印刷ジョブが送信される度にその印刷ジョブをジョブ管理情報17に追加登録していくと共に、各画像形成装置2において印刷ジョブの実行が行われる度にジョブ管理情報17を更新して印刷ジョブの実行が完了したことを記録していく。したがって、ジョブ管理情報17には、画像形成システム1における印刷ジョブの実行履歴が記録されることになる。
認証処理部10bは、ネットワーク5を介して受信する認証情報に基づいて画像形成装置2や情報処理装置3を使用するユーザーを認証する処理部である。例えば、情報処理装置3に電源が投入され、ユーザーがその情報処理装置3に対して自身のユーザーIDやパスワードなどの認証情報を入力すると、情報処理装置3はサーバー装置4に対して認証情報を添付した認証要求を送信する。認証処理部10bは、認証要求を受信すると、その認証要求に含まれる認証情報がユーザー登録情報15に登録されている情報と一致するか否かを判定する。認証要求に含まれる認証情報がユーザー登録情報15に登録されている情報と一致すれば認証成功となり、認証処理部10bは、情報処理装置3に対して認証成功を示す認証結果を返答する。このとき認証処理部10bは、ユーザー名やユーザーIDなどを認証結果に付加しても良い。情報処理装置3は、サーバー装置4から受信する認証結果が認証成功であれば、ネットワーク5を介して他の装置とデータ通信を行うことができる状態へと移行させる。
またユーザーが画像形成装置2を使用するために画像形成装置2に対して認証情報を入力すると、画像形成装置2はサーバー装置4に対してその認証情報を添付した認証要求を送信する。認証処理部10bは、画像形成装置2から認証要求を受信した場合も上記と同様に認証処理を行い、認証処理の結果を画像形成装置2へ送信する。そして画像形成装置2は、サーバー装置4から受信する認証結果が認証成功であれば、認証処理部10bによって認証された認証ユーザーをログインユーザーとして動作状態をログアウト状態からログイン状態へと移行させる。これにより、認証ユーザーは画像形成装置2を使用してジョブを実行させることができる状態となる。
送信処理部10cは、画像形成装置2から認証ユーザーの発行した印刷ジョブに関するジョブ付属情報D2の要求を受信した場合に機能するものであり、画像形成装置2から要求されたジョブ付属情報D2をジョブ管理情報17から抽出し、画像形成装置2へ送信する。このとき、送信処理部10cは、認証ユーザーが発行した印刷ジョブのうち、未実行状態である印刷ジョブのジョブ付属情報D2だけを抽出して画像形成装置2へ送信する。このとき、送信されるジョブ付属情報D2には、認証ユーザーに関する情報や、印刷ジョブの送信先グループに関する情報、印刷出力時に適用される各種印刷設定項目の設定値に関する情報などが含まれる。また送信処理部10cは、ジョブ付属情報D2を画像形成装置2へ送信するとき、グループ管理情報16を参照し、印刷ジョブの送信先グループに含まれている各画像形成装置2に関する情報を送信する。例えば、図2に示したように、認証ユーザー(ユーザーX)の印刷ジョブD1がグループGP1に送信されていた場合、送信処理部10cは、その印刷ジョブD1が送信されたグループGP1に含まれている各画像形成装置2a,2b,2cの識別情報、IPアドレス及び設置場所に関する情報を送信する。したがって、サーバー装置4にジョブ付属情報D2を要求した画像形成装置2は、サーバー装置4から認証ユーザーの発行した印刷ジョブに関するジョブ付属情報D2を受信すると、そのジョブ付属情報D2に基づいて認証ユーザーが発行した印刷ジョブD1が複数のグループGP1,GP2,GP3のうちのいずれのグループに送信されたかを特定することができると共に、そのグループに含まれている画像形成装置2を特定することができる。
次に画像形成装置2について説明する。図6は、画像形成装置2のハードウェア構成の一例を示す図である。図6に示すように、画像形成装置2は、制御部20と、原稿読取部21と、印刷出力部22と、FAX部23と、操作パネル24と、カード情報読取装置25と、ネットワークインタフェース26と、記憶装置27とを備えており、これら各部がデータバス28を介して相互にデータの入出力を行うことができる構成である。
制御部20は、各部の動作を制御するものである。この制御部20は、CPU20aと、RAM20bと、ROM20cとを備えている。CPU20aは、ROM20cに予め格納されているプログラムを読み出して実行することにより、制御部20を後述する各種の処理部として機能させるものである。RAM20bは、CPU20aがプログラムを実行することに伴って発生する一時的なデータなどを記憶するメモリである。ROM20cは、不揮発性のメモリであり、CPU20aによって実行されるプログラムや、その他各種パラメータなどを予め記憶するものである。
原稿読取部21は、ユーザーによってセットされる原稿を光学的に読み取って画像データを生成するものである。原稿読取部21は、画像データを生成すると、その画像データを記憶装置27に出力して保存したり、或いは、ネットワークインタフェース26を介して情報処理装置3や他の画像形成装置2などに送信したりする。またコピージョブの場合、原稿読取部21は、原稿を読み取って生成した画像データを印刷出力部22へ出力する。さらにFAX送信ジョブの場合、原稿読取部21は、原稿を読み取って生成した画像データをFAX部23へ出力する。
印刷出力部22は、入力する画像データに基づいて印刷用紙に画像形成を行うことにより、印刷出力を行うものである。例えばコピージョブの場合、印刷出力部22は、原稿読取部21から入力する画像データに基づいて印刷出力を行う。また印刷ジョブの場合、印刷出力部22は、制御部20から入力する描画用の画像データに基づいて印刷出力を行う。この印刷出力部22は、制御部20から指示される各種印刷設定項目の設定値を反映させて印刷出力を行う。
FAX部23は、電話通信網を介してFAXデータの送受信を行うものである。FAX部23は、例えば原稿読取部21から画像データを入力すると、その画像データに基づいて送信用のFAXデータを生成し、制御部20から指定された電話番号宛先にFAXデータを送信する。
操作パネル24は、ユーザーが画像形成装置2を操作するときのユーザーインタフェースである。操作パネル24は、ユーザーに対して各種情報を表示する表示部24aと、ユーザーによる操作入力を受け付ける操作部24bとを備えている。表示部24aは、例えばカラー液晶ディスプレイなどで構成される。操作部24bは、例えば表示部24aの画面上に設けられるタッチパネルと、表示部24aの画面周囲に配置される押しボタンキーとを備えて構成される。
カード情報読取装置25は、画像形成装置2を使用する個々のユーザーが所持しているICカードからカード情報を読み取る装置である。カード情報の読み取り方式は、接触式であっても良いし、非接触式であっても良い。例えばユーザーが自身のICカードをカード情報読取装置25の所定位置にかざすと、カード情報読取装置25は、そのICカードを自動検知してカード情報を読み取る。カード情報読取装置25によって読み取られるカード情報は、画像形成装置2を使用するユーザーを認証するため認証情報として用いられる。すなわち、本実施形態では、画像形成装置2においてユーザー認証を行う際の認証方式として、カード認証を採用している。認証方式としてカード認証を採用することにより、各ユーザーが操作パネル24に対してユーザーIDやパスワードなどを手動操作で入力する必要がなくなるので、効率的にユーザー認証を行えるようになる。ただし、認証方式は、カード認証に限られるものではなく、例えば各ユーザーの指紋や静脈パターンなどを読み取って認証を行う生体認証であっても構わない。またユーザーが操作パネル24に対して手動操作でユーザーIDやパスワードなどの認証情報を入力するものであっても構わない。
ネットワークインタフェース26は、画像形成装置2をネットワーク5に接続するインタフェースである。制御部20は、このネットワークインタフェース26を介して、サーバー装置4、他の画像形成装置2及び情報処理装置3のそれぞれとデータ通信を行うことができる。
記憶装置27は、例えばハードディスクドライブ(HDD)やソリッドステートドライブ(SSD)などによって構成される不揮発性の記憶手段である。この記憶装置27には、ジョブ記憶部29が設けられている。このジョブ記憶部29には、様々なジョブを記憶することができる。例えば制御部20が、ネットワークインタフェース26を介して情報処理装置3から送信された印刷ジョブD1を取得した場合、その印刷ジョブD1をジョブ記憶部29に保存する。
図7は、画像形成装置2の制御部20における機能構成の一例を示すブロック図である。制御部20は、CPU20aがROM20cに予め格納されているプログラムを読み出して実行することにより、ユーザー認証部31、付属情報取得部32、グループ特定部33、ジョブ保有装置特定部34、印刷ジョブ取得部35及びジョブ実行制御部36として機能する。
ユーザー認証部31は、カード情報読取装置25によってカード情報が読み取られると、そのカード情報を取得してユーザー認証を行い、そのユーザー認証に成功すると、画像形成装置2の動作状態をログアウト状態からログイン状態へと移行させる処理部である。すなわち、ユーザー認証部31は、カード情報読取装置25から取得するカード情報を添付した認証要求をネットワークインタフェース26経由でサーバー装置4へ送信する。その後、サーバー装置4から認証結果を受信すると、ユーザー認証部31は、その認証結果が認証成功であるか否かを判定し、認証成功であれば、サーバー装置4によって認証された認証ユーザーを特定する。そしてユーザー認証部31は、認証ユーザーをログインユーザーとするログイン状態へと移行させ、認証ユーザーによる指示操作に基づいてジョブを実行可能な状態とする。
ユーザー認証部31によって認証ユーザーが特定されると、付属情報取得部32が機能する。付属情報取得部32は、認証ユーザーによって発行された印刷ジョブD1が記憶装置27のジョブ記憶部29に保存されているか否かを判断する。その結果、認証ユーザーによって発行された印刷ジョブD1が記憶装置27のジョブ記憶部29に保存されていない場合、付属情報取得部32は、認証ユーザーが発行した印刷ジョブD1に関するジョブ付属情報D2をサーバー装置4に要求する。この要求には、例えば認証ユーザーのユーザーIDなどが含まれる。そのため、サーバー装置4は、ジョブ管理情報17から認証ユーザーの発行した印刷ジョブに関する情報だけを抽出することができる。そして付属情報取得部32は、サーバー装置4から認証ユーザーが発行した印刷ジョブD1に関するジョブ付属情報D2を取得する。このように認証ユーザーによって発行された印刷ジョブD1が記憶装置27に保存されていない場合には、印刷ジョブD1が他の画像形成装置2の記憶装置27に保存されていることになるため、付属情報取得部32は、サーバー装置4から認証ユーザーが発行した印刷ジョブD1に関するジョブ付属情報D2を取得する。
一方、認証ユーザーによって発行された印刷ジョブD1が記憶装置27に保存されている場合、付属情報取得部32は、サーバー装置4に対して認証ユーザーが発行した印刷ジョブD1に関するジョブ付属情報D2を要求しない。すなわち、認証ユーザーによって発行された印刷ジョブD1が記憶装置27に保存されていれば、他の画像形成装置2から印刷ジョブD1を取得する必要がないため、付属情報取得部32は、サーバー装置4に対してジョブ付属情報D2を要求しない。ただし、認証ユーザーによって発行された別の印刷ジョブが他の画像形成装置2に保存されている可能性もある。そのため、付属情報取得部32は、認証ユーザーによって発行された印刷ジョブD1が記憶装置27に保存されている場合であっても、別の印刷ジョブが他の画像形成装置2に保存されているか否かを確認するために、サーバー装置4からジョブ付属情報D2を取得するようにしても良い。
また付属情報取得部32は、サーバー装置4に対してジョブ付属情報D2を要求すると、サーバー装置4から認証ユーザーが発行した印刷ジョブD1の送信先グループに含まれている各画像形成装置2に関する情報を取得することもできる。
付属情報取得部32によってジョブ付属情報D2が取得されると、グループ特定部33が機能する。グループ特定部33は、付属情報取得部32によって取得されたジョブ付属情報D2に基づき、認証ユーザーによって発行された印刷ジョブD1の送信先グループを特定する処理部である。すなわち、付属情報取得部32によって取得されるジョブ付属情報D2には、印刷ジョブD1の送信先グループに関する情報が含まれている。グループ特定部33は、その情報に基づいて複数のグループGP1,GP2,GP3のうちから印刷ジョブD1が送信された送信先グループを特定する。
ジョブ保有装置特定部34は、グループ特定部33によって複数のグループGP1,GP2,GP3のうちの一のグループが送信先グループとして特定されることに伴って機能する。このジョブ保有装置特定部34は、グループ特定部33によって特定された送信先グループに含まれる複数の画像形成装置2のうちの印刷ジョブD1を保有している装置を特定する処理部である。すなわち、ジョブ保有装置特定部34は、送信先グループに含まれる複数の画像形成装置2のそれぞれに対して認証ユーザーによって発行された印刷ジョブD1を保持しているか否かを問い合わせることにより、印刷ジョブD1を保有している一の画像形成装置2を特定する。ただし、ジョブ保有装置特定部34は、送信先グループに自機が含まれている場合は、自機を除く他の画像形成装置2に対して印刷ジョブD1を保持しているか否かを問い合わせる。
具体的に説明すると、ジョブ保有装置特定部34は、付属情報取得部32によって取得される情報であって、印刷ジョブD1の送信先グループに含まれている各画像形成装置2に関する情報に基づき、送信先グループに含まれている各画像形成装置2のIPアドレスを特定し、そのIPアドレスに対して問い合わせを行う。このとき、ジョブ保有装置特定部34は、認証ユーザーのユーザーIDなどを添付して問い合わせを行う。このような問い合わせを受信する他の画像形成装置2は、ジョブ保有装置特定部34によって指定された認証ユーザーの印刷ジョブが自機の記憶装置27に保存されているか否かを確認し、その確認結果を返答する。そしてジョブ保有装置特定部34は、問い合わせを行った各画像形成装置2からの返答結果に基づき、認証ユーザーの印刷ジョブD1を保有している一の画像形成装置2を特定する。
図8は、ジョブ保有装置特定部34による他の画像形成装置2への問い合わせ態様の一例を示す図である。図8では、グループGP1の画像形成装置2aにおいて印刷ジョブD1が保持されており、認証ユーザーであるユーザーXが同じグループGP1に含まれる別の画像形成装置2cを操作している場合を例示している。この場合、画像形成装置2cのジョブ保有装置特定部34は、同じグループGP1に含まれる他の2つの画像形成装置2a,2cに対して印刷ジョブD1を保持しているか否かの問い合わせD3を行う。また画像形成装置2cのジョブ保有装置特定部34は、送信先グループとして特定されなかった他のグループGP2,GP3に含まれる画像形成装置2d〜2iに対して印刷ジョブD1を保持しているか否かの問い合わせを行わない。そのため、図8の例では、ジョブ保有装置特定部34が2つの画像形成装置2a,2bに対して1回ずつ、合計2回の問い合わせD3を送信すれば良いので、ネットワーク5に多大な負荷をかけることなく、印刷ジョブD1を保有している一の画像形成装置2aを特定することができる。
図9は、ジョブ保有装置特定部34による他の画像形成装置2への問い合わせ態様の別の例を示す図である。図9では、グループGP1の画像形成装置2aにおいて印刷ジョブD1が保持されており、認証ユーザーであるユーザーXがグループGP1とは異なるグループGP2に含まれる画像形成装置2dを操作している場合を例示している。この場合、画像形成装置2dのジョブ保有装置特定部34は、送信先グループとして特定されたグループGP1に含まれる他の3つの画像形成装置2a,2b,2cに対して印刷ジョブD1を保持しているか否かの問い合わせD3を行う。また画像形成装置2dのジョブ保有装置特定部34は、送信先グループとして特定されなかった他のグループGP2,GP3に含まれる画像形成装置2e〜2iに対して印刷ジョブD1を保持しているか否かの問い合わせを行わない。そのため、図9の例では、ジョブ保有装置特定部34が3つの画像形成装置2a,2b,2cに対して1回ずつ、合計3回の問い合わせD3を送信すれば良いので、ネットワーク5に多大な負荷をかけることなく、印刷ジョブD1を保有している一の画像形成装置2aを特定することができる。
このようにジョブ保有装置特定部34は、複数の画像形成装置2a〜2iの全てに対して問い合わせD3を送信するのでなく、送信先グループとして特定された一のグループに含まれる画像形成装置2に対してのみ問い合わせD3を送信する。したがって、送信先グループ以外の他のグループに対して無駄な問い合わせを行わないので、ネットワーク5に対して大きな負荷をかけることなく、印刷ジョブD1を保有している一の画像形成装置2aを特定することができるようになっている。
ところで、例えば図9に示すように、認証ユーザーであるユーザーXが操作している画像形成装置2dとは異なる画像形成装置2aに印刷ジョブD1が保持されているとき、その印刷ジョブD1において設定されている各種印刷設定項目の設定値を画像形成装置2dにおいて正常に適用して印刷出力することができないことがある。例えば、印刷ジョブD1を保有している画像形成装置2aがカラー印刷可能であるのに対し、ユーザーXが操作している画像形成装置2dがモノクロでのみ印刷出力が可能な場合、画像形成装置2dにおいて正常に実行可能な印刷ジョブは、カラー/モノクロ設定の設定値がモノクロ印刷となっているジョブである。この場合、画像形成装置2aにおいて保持されている印刷ジョブD1のカラー/モノクロ設定の設定値がカラー印刷になっていれば、画像形成装置2dにおいてその印刷ジョブD1を正常に実行することができない。
また例えば、印刷ジョブD1を保有している画像形成装置2aが両面印刷可能であるのに対し、ユーザーXが操作している画像形成装置2dが片面印刷のみ可能な場合、画像形成装置2dにおいて正常に実行可能な印刷ジョブは、両面/片面設定の設定値が片面印刷となっているジョブである。この場合、画像形成装置2aにおいて保持されている印刷ジョブD1の両面/片面設定の設定値が両面印刷になっていれば、画像形成装置2dにおいてその印刷ジョブD1を正常に実行することができない。
また例えば、印刷ジョブD1を保有している画像形成装置2aが印刷出力時にステープルを打つことが可能であるのに対し、ユーザーXが操作している画像形成装置2dがステープル機能を有していない場合、画像形成装置2dにおいて正常に実行可能な印刷ジョブは、ステープル設定の設定値がステープルを打たないことを指定しているジョブである。この場合、画像形成装置2aにおいて保持されている印刷ジョブD1のステープル設定の設定値がステープルを打つことを指定していれば、画像形成装置2dにおいてその印刷ジョブD1を正常に実行することができない。
さらに例えば、印刷ジョブD1を保有している画像形成装置2aがA4サイズ及びA3サイズのいずれの用紙サイズであっても印刷出力可能であるのに対し、ユーザーXが操作している画像形成装置2dがA4サイズの用紙サイズでのみ印刷出力可能な場合、画像形成装置2dにおいて正常に実行可能な印刷ジョブは、用紙サイズ設定の設定値がA4サイズとなっているジョブである。この場合、画像形成装置2aにおいて保持されている印刷ジョブD1の用紙サイズ設定の設定値がA3サイズになっていれば、画像形成装置2dにおいてその印刷ジョブD1を正常に実行することができない。
このように画像形成装置2aで保持されている印刷ジョブD1を、認証ユーザーであるユーザーXが操作している画像形成装置2dにおいて正常に実行できないようなときには、ジョブ保有装置特定部34が上述したように問い合わせD3を送信して印刷ジョブD1を保持している一の画像形成装置2aを特定することが無駄になる。そのため、ジョブ保有装置特定部34は、上述したように送信先グループに含まれる画像形成装置2に対して問い合わせD3を送信するときには、その送信先グループに対して送信された印刷ジョブD1を自機において正常に実行可能であるか否かを事前に判定し、印刷ジョブD1を正常に実行できないときには問い合わせD3を送信しないようにすることが好ましい。
例えばジョブ保有装置特定部34は、付属情報取得部32によって取得されるジョブ付属情報D2から、印刷ジョブD1の印刷出力時に適用される各種印刷設定項目の設定値に関する情報を抽出し、それら各種印刷設定項目の設定値が自機において適用可能な設定値であるか否かを判定する。その結果、自機において適用可能な設定値であれば、ジョブ保有装置特定部34は、上述したように送信先グループに含まれる各画像形成装置2に対して問い合わせD3を送信する。これに対し、自機において適用不可能な設定値が含まれていれば、ジョブ保有装置特定部34は、問い合わせD3を送信しない。これにより、無駄な問い合わせD3が送信されることがなくなるので、ネットワーク5にかかる負荷を低減することができる。
またジョブ保有装置特定部34が送信先グループに含まれる各画像形成装置2に対して問い合わせD3を送信しようとするとき、既にネットワーク5の負荷レベルが高く、所定レベル以上となっていることも生じ得る。このようにネットワーク5の負荷レベルが所定レベル以上となっているときには、ジョブ保有装置特定部34が問い合わせD3を送信すると、ネットワーク5の負荷レベルがさらに上昇してしまう可能性がある。そのため、ジョブ保有装置特定部34は、送信先グループに含まれる画像形成装置2に対して問い合わせD3を送信するときには、ネットワーク5の負荷レベルを事前に検出し、その検出した負荷レベルが所定レベル以上であるときには問い合わせD3を送信しないようにすることが好ましい。
例えばジョブ保有装置特定部34は、問い合わせD3の送信対象となる他の画像形成装置2に対してpingコマンドを送信し、そのpingコマンドに対する応答時間が所定時間以上であるか否かを判定することにより、ネットワーク5の負荷レベルが所定レベル以上であるか否かを判定する。その結果、ネットワーク5の負荷レベルが所定レベル未満であれば、ジョブ保有装置特定部34は、上述したように送信先グループに含まれる各画像形成装置2に対して問い合わせD3を送信する。これに対し、ネットワーク5の負荷レベルが所定レベル以上であれば、ジョブ保有装置特定部34は、問い合わせD3を送信しない。これにより、ネットワーク5の負荷レベルがさらに上昇してしまうことを防止することができる。
さらにジョブ保有装置特定部34は、送信先グループに含まれる各画像形成装置2に対して問い合わせD3を送信しないときには、グループ特定部33によって特定された送信先グループや、その送信先グループに含まれる各画像形成装置2に関する情報を認証ユーザーに対して報知することが好ましい。このような報知は、例えば図7に示すように認証ユーザーが操作している画像形成装置2dの操作パネル24に対して報知用の表示画面を出力して表示させることにより行われる。
図10は、操作パネル24の表示部24aに表示される報知画面G1,G2の一例を示す図である。図10(a)は、印刷ジョブD1の印刷出力時に適用される各種印刷設定項目の設定値が自機において適用不可能な場合に表示される報知画面G1の一例を示している。この報知画面G1には、認証ユーザーに対して報知するためのメッセージM1が含まれている。このメッセージM1には、当該画像形成装置2において認証ユーザーが発行した印刷ジョブD1の印刷設定を正常に適用して印刷出力することができないことを示す情報、認証ユーザーが発行した印刷ジョブD1が保有されている送信先グループに関する情報、及び、送信先グループに含まれる各画像形成装置2に関する情報が含まれる。また送信先グループに含まれる各画像形成装置2に関する情報には、各画像形成装置2の設置場所に関する情報が含まれる。したがって、このような報知画面G1が表示されると、認証ユーザーは、現在ログインしている画像形成装置2では所望の印刷出力が行われないことを把握することができる。
また図10(b)は、ネットワーク5の負荷レベルが所定レベル以上である場合に表示される報知画面G2の一例を示している。この報知画面G2には、認証ユーザーに対して報知するためのメッセージM2が含まれている。このメッセージM2には、ネットワーク5の負荷レベルが大きいため、印刷ジョブD1を取得して印刷出力することができないことを示す情報、認証ユーザーが発行した印刷ジョブD1が保有されている送信先グループに関する情報、及び、送信先グループに含まれる各画像形成装置2に関する情報が含まれる。また送信先グループに含まれる各画像形成装置2に関する情報には、各画像形成装置2の設置場所に関する情報が含まれる。したがって、このような報知画面G2が表示されると、認証ユーザーは、ネットワーク5に大きな負荷がかかっているため、現在ログインしている画像形成装置2では印刷出力が行われないことを把握することができる。
図7に戻り、印刷ジョブ取得部35は、ジョブ保有装置特定部34によって印刷ジョブD1を保有している一の画像形成装置2が特定された場合に機能する。印刷ジョブ取得部35は、ジョブ保有装置特定部34によって特定された画像形成装置2から認証ユーザーの印刷ジョブD1を取得する処理部である。この印刷ジョブ取得部35は、印刷ジョブD1を保有している一の画像形成装置2に対してジョブ要求を送信することにより、認証ユーザーによって発行された印刷ジョブD1を取得する。
図11は、印刷ジョブ取得部35による印刷ジョブD1の取得態様を例示する図である。図11では、認証ユーザーであるユーザーXの印刷ジョブD1が画像形成装置2aに保存されており、ユーザーXが画像形成装置2dを操作している場合を例示している。
図11(a)は、印刷ジョブ取得部35による第1の取得態様を示している。画像形成装置2dの印刷ジョブ取得部35は、印刷ジョブD1が保存されている画像形成装置2aに対してジョブ要求D4を送信する。このジョブ要求D4には、印刷ジョブD1を特定するための情報として、例えばユーザーXのユーザーIDやジョブIDなどの情報が含まれる。画像形成装置2aは、ジョブ要求D4を受信すると、自機に保存されているジョブのうちから、ジョブ要求D4に対応する印刷ジョブD1を読み出し、画像形成装置2dへ送信する。これにより、画像形成装置2dの印刷ジョブ取得部35は、ユーザーXによって発行された印刷ジョブD1を取得することができる。
ところで、画像形成装置2aから画像形成装置2dに送信される印刷ジョブD1には、データサイズの大きな描画用の画像データが含まれる。そのため、画像形成装置2aが印刷ジョブD1の送信処理を開始すると、画像形成装置2aにおけるCPU20aの負荷レベルが一時的に増大する。このとき、画像形成装置2aが他のユーザーによって指定されたジョブの実行中であれば、そのジョブの実行効率が低下することになる。したがって、画像形成装置2dが画像形成装置2aに対してジョブ要求D4を送信すると、それによって画像形成装置2aを使用している他のユーザーに迷惑をかけてしまう可能性がある。
これを防止するため、印刷ジョブ取得部35は、図11(b)に示すような第2の取得態様で印刷ジョブD1を取得するようにしても良い。すなわち、印刷ジョブ取得部35は、印刷ジョブD1を保有している一の画像形成装置2aが特定されると、ジョブ要求D4の送信よりも先に、その画像形成装置2aの現在の動作状態を問い合わせるためのステータス確認要求D5を送信する。画像形成装置2aは、ステータス確認要求D5を受信すると、現在の動作状態を示すステータス情報D6を画像形成装置2dへ返信する。このステータス情報D6には、ジョブの実行中であるか否かを示す情報や、CPU20aの占有率などを示す情報が含まれる。ただし、ステータス情報D6には描画用画像データのようなデータサイズの大きな情報は含まれないため、画像形成装置2aがステータス情報D6を送信するときにはCPU20aの負荷レベルはあまり増大しない。そのため、仮に画像形成装置2aがジョブの実行中であっても、画像形成装置2dにステータス情報D6を返信するためにそのジョブの実行効率を低下させることはない。
画像形成装置2dの印刷ジョブ取得部35は、画像形成装置2aからステータス情報D6を受信すると、そのステータス情報D6に基づいて現在の画像形成装置2aにおける負荷レベルを検出する。そして画像形成装置2dは、画像形成装置2aの負荷レベルが所定レベル未満であることが判明すれば、その後、第1の取得態様と同様に、画像形成装置2aに対してジョブ要求D4を送信し、画像形成装置2aから印刷ジョブD1を取得する。この場合、画像形成装置2dは、画像形成装置2aにおけるジョブの実行効率を低下させることなく、印刷ジョブD1を取得することができるようになる。
一方、画像形成装置2aの負荷レベルが所定レベル以上である場合、画像形成装置2dの印刷ジョブ取得部35は、画像形成装置2aに対してジョブ要求D4を送信しない。これにより、画像形成装置2aにおいてジョブの実行効率が低下してしまうことを未然に防止することができるようになる。
さらに印刷ジョブ取得部35は、画像形成装置2aに対してジョブ要求D4を送信しないときには、ジョブ保有装置特定部34によって特定された一の画像形成装置2aに関する情報を認証ユーザーに対して報知することが好ましい。このような報知は、例えば図7に示すように認証ユーザーが操作している画像形成装置2dの操作パネル24に対して報知用の表示画面を出力して表示させることにより行われる。
図12は、印刷ジョブ取得部35によって操作パネル24に表示される報知画面G3の一例を示す図である。この報知画面G3には、認証ユーザーに対して報知するためのメッセージM3が含まれている。このメッセージM3には、認証ユーザーの印刷ジョブD1を保有している画像形成装置2aの負荷レベルが大きいため印刷ジョブD1を取得することができないことを示す情報と、その印刷ジョブD1を保有している画像形成装置2aに関する情報とが含まれる。また画像形成装置2aに関する情報には、画像形成装置2aの設置場所に関する情報が含まれる。したがって、このような報知画面G3が表示されると、認証ユーザーは、印刷ジョブD1を保有している画像形成装置2aの設置場所を把握することができるので、その設置場所まで移動し、先のユーザーの後に並んで順番待ちをするようになる。
また印刷ジョブ取得部35は、ネットワーク5を介して画像形成装置2aから印刷ジョブD1を取得した場合、ジョブ実行制御部36を機能させ、その印刷ジョブD1をジョブ実行制御部36へ出力する。さらに印刷ジョブ取得部35は、認証ユーザーの印刷ジョブD1が自機に搭載されている記憶装置27のジョブ記憶部29に保存されている場合、そのジョブ記憶部29から印刷ジョブD1を取得する。そして印刷ジョブ取得部35は、ジョブ実行制御部36を機能させ、ジョブ記憶部29から取得した印刷ジョブD1をジョブ実行制御部36へ出力する。
ジョブ実行制御部36は、原稿読取部21、印刷出力部22及びFAX部23のそれぞれの動作を統括的に制御することにより画像形成装置2におけるジョブの実行を制御する。特に上述のように印刷ジョブ取得部35によって印刷ジョブD1が取得された場合、ジョブ実行制御部36は、その印刷ジョブD1に基づいて印刷出力部22における画像形成動作を制御し、印刷ジョブD1に対応した印刷出力が行われるようにする。このとき、ジョブ実行制御部36は、印刷ジョブD1に含まれる各種印刷設定項目の設定値に基づいて印刷出力部22の動作を制御する。そのため、印刷出力部22によって出力される印刷物は、認証ユーザーが予め設定した設定値が適用された印刷物となる。
次に画像形成装置2における具体的な処理手順について説明する。図13及び図14は、画像形成装置2において行われる処理手順の一例を示すフローチャートである。この処理は、主として画像形成装置2の制御部20が上述したユーザー認証部31、付属情報取得部32,グループ特定部33、ジョブ保有装置特定部34、印刷ジョブ取得部35及びジョブ実行制御部36として機能することによって行われる処理であり、制御部20において繰り返し実行される処理である。
まず図13に示すように制御部20は、この処理を開始すると、情報処理装置3から送信された印刷ジョブD1を受信したか否かを判断する(ステップS10)。情報処理装置3から送信された印刷ジョブD1を受信している場合(ステップS10でYES)、制御部20は、その受信した印刷ジョブD1をジョブ記憶部29へ保存する(ステップS11)。尚、印刷ジョブD1を受信していない場合(ステップS10でNO)、ステップS11の処理はスキップする。
次に制御部20は、カード情報読取装置25から認証情報を入力したか否かを判断する(ステップS12)。このとき認証情報を受信していなければ(ステップS12でNO)、その後の処理は行われずに終了する。これに対し、認証情報を受信している場合(ステップS12でYES)、制御部20は、サーバー装置4に対してその認証情報を添付した認証要求を送信し(ステップS13)、サーバー装置4から認証結果を受信するまで待機する(ステップS14)。サーバー装置4から認証結果を受信すると、制御部20は、認証成功であるか否かを判断する(ステップS15)。そして認証結果が認証失敗である場合、その後の処理は行われずに終了する。また認証結果が認証成功である場合(ステップS15でYES)、制御部20は、認証ユーザーを特定し、その認証ユーザーの印刷ジョブD1がジョブ記憶部29に保存されているか否かを判断する(ステップS16)。認証ユーザーの印刷ジョブD1がジョブ記憶部29に保存されている場合(ステップS16でYES)、制御部20は、その印刷ジョブD1を読み出し(ステップS17)、ステップS20へと進む。
一方、ジョブ記憶部29に印刷ジョブD1が記憶されていない場合(ステップS16でNO)、認証ユーザーの印刷ジョブD1は他の画像形成装置2へ送信されたことになる。そのため、制御部20は、他の画像形成装置2から印刷ジョブD1を取得するための印刷ジョブ取得処理を実行する(ステップS18)。
図14は、印刷ジョブ取得処理(ステップS18)の詳細な処理手順の一例を示すフローチャートである。制御部20は、この処理を開始すると、まずサーバー装置4に対して認証ユーザーの印刷ジョブD1に対応するジョブ付属情報D2を要求し(ステップS30)、サーバー装置4からジョブ付属情報D2を受信するまで待機する(ステップS31)。そしてサーバー装置4からジョブ付属情報D2を受信すると、制御部20は、そのジョブ付属情報D2に基づいて送信先グループを特定する(ステップS32)。また制御部20は、ジョブ付属情報D2と共に受信する情報に基づき、認証ユーザーが発行した印刷ジョブD1の印刷設定を判別するための設定値判別処理を実行する(ステップS33)。そして制御部20は、印刷ジョブD1の印刷設定が当該画像形成装置2において印刷出力可能な設定であるか否かを判断する。(ステップS34)。その結果、印刷出力可能な印刷設定でない場合(ステップS34でNO)、制御部20は、操作パネル24の表示部24aに対して図10(a)のような報知画面G1を表示し、認証ユーザーに対するメッセージM1を報知する(ステップS35)。この場合、制御部20は、印刷ジョブD1を取得する処理を行わない。
一方、印刷ジョブD1の印刷設定が当該画像形成装置2において印刷出力可能な設定である場合(ステップS34でYES)、制御部20は、次にネットワーク5の負荷検出処理を行う(ステップS36)。そしてネットワーク5の負荷レベルが所定レベル以上である場合(ステップS37でNO)、制御部20は、操作パネル24の表示部24aに対して図10(b)のような報知画面G2を表示し、認証ユーザーに対するメッセージM2を報知する(ステップS38)。この場合も、制御部20は、印刷ジョブD1を取得する処理を行わない。
ネットワーク5の負荷レベルが所定レベル未満である場合(ステップS37でNO)、制御部20は、送信先グループに含まれる各画像形成装置2に対し、印刷ジョブD1を保有しているか否かの問い合わせD3を送信する(ステップS39)。そして各画像形成装置2からの応答を受信するまで待機し(ステップS40)、全ての応答の受信が完了すると(ステップS40でYES)、制御部20は、それらの応答内容に基づいて印刷ジョブD1を保有している一の画像形成装置2を特定する(ステップS41)。
そして制御部20は、印刷ジョブD1を保有している一の画像形成装置2に対し、ステータス確認要求D5を送信し(ステップS42)、その画像形成装置2からの応答としてステータス情報D6を受信するまで待機する(ステップS43)。制御部20は、ステータス情報D6を受信すると(ステップS43でYES)、そのステータス情報D6に基づき印刷ジョブD1を保有している画像形成装置2の負荷レベルが所定レベル未満であるか否かを判断する(ステップS44)。その結果、負荷レベルが所定レベル以上である場合(ステップS44でNO)、制御部20は、操作パネル24の表示部24aに対して図12のような報知画面G3を表示し、認証ユーザーに対するメッセージM3を報知する(ステップS45)。この場合も、制御部20は、印刷ジョブD1を取得する処理を行わない。
これに対し、印刷ジョブD1を保有している画像形成装置2の負荷レベルが所定レベル未満である場合(ステップS44でYES)、制御部20は、その画像形成装置2に対してジョブ要求D4を送信し、印刷ジョブD1の受信が完了するまで待機する(ステップS47)。そして印刷ジョブD1の受信が完了すると(ステップS47で)、印刷ジョブ取得処理が終了する。
図13のフローチャートに戻り、次に制御部20は、上記のような印刷ジョブ取得処理(ステップS18)によって印刷ジョブD1が取得できたか否かを判断する(ステップS19)。このとき、印刷ジョブD1を取得していなければ(ステップS19でNO)、その後の処理を行わずに処理を終了する。これに対し、印刷ジョブD1が取得されている場合(ステップS19でYES)、制御部20による処理はステップS20へと進む。
そして制御部20は、認証ユーザーが発行した印刷ジョブD1を実行し、印刷出力を行う(ステップS20)。そして印刷ジョブD1の実行が完了すると、制御部20は、サーバー装置4に対してジョブの実行完了通知を送信する(ステップS21)。これにより、サーバー装置4は、ジョブ管理情報17の実行フラグ17dを書き換えて更新することができるようになる。以上で、画像形成装置2において印刷ジョブD1を実行するための処理が終了する。
上記フローチャートに基づく処理は、複数の画像形成装置2a〜2iのそれぞれにおいて行われる処理である。また上記フローチャートに基づく処理が各画像形成装置2a〜2iにおいて正常に行われるためには、各画像形成装置2a〜2iが他の画像形成装置から問い合わせD3やジョブ要求D4、ステータス確認要求D5を受信したときには、それに対する適切な応答処理を行うことができるように構成されることが必要である。そのため、各画像形成装置2a〜2iは、そのような応答処理を適切に行う応答処理手段(図示省略)を備えている点で互いに共通する構成を有している。
以上のように本実施形態の画像形成システム1は、ネットワーク5に接続される複数の画像形成装置2a〜2iのそれぞれが複数のグループGP1,GP2,GP3のうちの一つのグループに分類された構成を有している。そして複数の画像形成装置2a〜2iのそれぞれは、情報処理装置3から送信される印刷ジョブD1を受信した場合にその印刷ジョブD1を記憶して保持する記憶装置27を備えている。また情報処理装置3は、印刷ジョブD1を送信するとき、複数のグループGP1,GP2,GP3のうちの一のグループを送信先グループとして送信する。このような印刷ジョブD1は、送信先グループに含まれる複数の画像形成装置2のうちの一の画像形成装置に保存される。
そして各画像形成装置2は、ユーザー認証部31によって認証された認証ユーザーが発行した印刷ジョブD1が自機の記憶装置27に記憶されていないとき、認証ユーザーが発行した印刷ジョブD1に対応するジョブ付属情報D2をサーバー装置4から取得し、そのジョブ付属情報D2に基づいて認証ユーザーが発行した印刷ジョブD1の送信先グループを特定する。そして送信先グループが特定されることに伴い、その送信先グループに含まれる複数の画像形成装置2のそれぞれに対して認証ユーザーが発行した印刷ジョブD1を保持しているか否かを問い合わせると共に、その送信先グループに含まれる複数の画像形成装置2のそれぞれからの返答結果に基づいて印刷ジョブD1を保有している一の画像形成装置2を特定する。さらに各画像形成装置2は、印刷ジョブD1を保有している一の画像形成装置2から、認証ユーザーによって発行された印刷ジョブD1を取得し、その印刷ジョブD1に基づいて印刷出力を行うように構成されている。
上記構成を有する画像形成システム1は、認証ユーザーが操作している画像形成装置2から、複数の画像形成装置2a〜2iの全てに対して印刷ジョブD1を保有しているか否かの問い合わせD3を送信する必要はなく、問い合わせD3の送信回数を所定回数の範囲内に制限することができる。したがって、一の画像形成装置2から他の画像形成装置2に対して多数の問い合わせD3が送信されることを防止できるので、ネットワーク5にかかる負荷を抑制することが可能である。
また上記構成を有する画像形成システム1では、認証ユーザーが操作している画像形成装置2が問い合わせD3を送信するとき、印刷ジョブD1が送信された送信先グループに含まれる複数の画像形成装置2のそれぞれに送信する。そのため、ユーザーが情報処理装置3を操作して印刷ジョブD1を送信した後、送信先グループを間違えて別のグループの画像形成装置2にログインしてしまった場合での、その画像形成装置2は、送信先グループに含まれる複数の画像形成装置2のそれぞれに問い合わせD3を送信する。したがって、認証ユーザーが操作している画像形成装置2が送信先グループとは異なるグループに属する場合であっても、印刷ジョブD1を取得して印刷出力を行うことができるようになる。
このように本実施形態の画像形成システム1は、複数の画像形成装置2a〜2iを複数のグループGP1,GP2,GP3に分類することにより、ネットワーク5にかかる負荷を低減しつつ、ユーザーがグループを間違えてしまった場合でも印刷出力を行えるようにした利便性の高いものとなっている。
以上、本発明に関する一実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態において説明した内容のものに限られるものではなく、種々の変形例が適用可能である。
例えば上記実施形態では、画像形成装置2がMFPなどで構成され、印刷出力機能の他、原稿読取機能やFAX機能なども備えた装置を例示した。しかし、画像形成装置2は、そのような多機能装置に限られるものではなく、例えばプリンタ専用装置であっても構わない。