JP2015082447A - 燃料電池用添加剤 - Google Patents

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JP2015082447A JP2013220554A JP2013220554A JP2015082447A JP 2015082447 A JP2015082447 A JP 2015082447A JP 2013220554 A JP2013220554 A JP 2013220554A JP 2013220554 A JP2013220554 A JP 2013220554A JP 2015082447 A JP2015082447 A JP 2015082447A
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増田 豪
Takeshi Masuda
豪 増田
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Abstract

【課題】電解質膜は湿潤状態で高いプロトン導電性を示すため、通常、電解質膜への水分供給(加湿)が必要である。加湿の為の装置はコンパクト化の障害となるだけでなくシステムコストの増大や、速やかなスタートアップや負荷変動に即応し辛く、重負荷時に水分の過剰供給に依る特性低下をきたす。このため、電解質膜は水保持能を有することが好ましく、高い水保持能を向上できる燃料電池用添加剤、特に高分子電解質膜用添加剤を提供する。
【解決手段】少なくとも1個の下記式(2)または式(3):

の置換基がフタロシアニン骨格に導入されたフタロシアニン化合物を含む燃料電池用添加剤。
【選択図】なし

Description

本発明は、燃料電池用添加剤に関する。より詳細には、本発明は、高い水保持能を有する燃料電池用添加剤、特に高分子電解質膜用添加剤に関する。
現在、我々の日々の生活を支えているエネルギー源は、主に石油を中心とする化石燃料である。しかし、化石燃料の埋蔵量には限りがある。また、化石燃料を燃やした時に生じる排出ガス(HC,CO,NOx)や二酸化炭素による温室効果などが大きな環境問題となっており、近年、ゼロエミッションが叫ばれている。このような状況下で、燃料電池は、電極反応による生成物が原理的に水であり、クリーンで高効率なエネルギー源であるとして、開発が進められている。
燃料電池には様々な形態があるが、特に固体高分子形燃料電池は低温(100℃前後)で作動し、かつ、エネルギー密度が高いことから、比較的小規模の分散型発電施設、自動車や船舶など移動体の発電装置として幅広い応用が期待されている。また、固体高分子形燃料電池は、小型移動機器、携帯機器の電源としても注目されており、ニッケル水素電池やリチウムイオン電池などの二次電池に替わり、携帯電話やノートパソコン用電源から自動車用、家庭用まで幅広い利用が期待されている。この固体高分子形燃料電池では、アノード側に燃料ガス(水素、アルコールなど)を、カソード側に酸化剤ガス(酸素)を、それぞれ、供給することによる電気化学反応(アノード側:2H→4H+4e、カソード側:O+4H+4e→2HO)を通して、電気を外部に取り出すことが可能となる。
従来、固体高分子形燃料電池の電解質膜には、パーフルオロスルホン酸系ポリマーであるナフィオン(登録商標)(Nafion(登録商標):デュポン社製)が概ねバランスのとれた特性を有することから広く用いられてきた。しかし、ナフィオン(登録商標)は多段階合成を経て製造されるため非常に高価であり、かつ、クラスター構造を形成するために燃料ガスのクロスオーバーが大きいという課題があった。加えて、燃料電池の運転中に特にカソード側で酸素還元反応(O+2e+2H→H)により過酸化水素が発生するが、この過酸化水素が分解して生成するOHラジカルによって電解質膜の劣化が起こり、フッ化水素やフッ素イオンが溶出する。
このような問題を考慮して、フタロシアニン錯体等の大環状金属錯体を全フッ素系固体高分子電解質に含ませてなる固体高分子電解質が報告された(特許文献1)。特許文献1では、大環状金属錯体として全水素型のフタロシアニン化合物を使用することが記載されている。
特開2005−56776号公報
ナフィオン(登録商標)膜等の電解質膜は湿潤状態で高いプロトン導電性を示すため、通常、電解質膜への水分供給(加湿)が必要である。加湿の為の装置はコンパクト化の障害となるだけでなくシステムコストの増大や、速やかなスタートアップや負荷変動に即応し辛く、重負荷時に水分の過剰供給に依る特性低下をきたす。このため、電解質膜は水保持能を有することが好ましい。
しかしながら、特許文献1に記載の全水素型のフタロシアニン化合物は、電解質膜に十分な水保持能を付与できない。また、全水素型のフタロシアニン化合物は溶解性が低いため、ピリジンや濃硫酸等の溶媒に溶解させる必要がある。しかし、これらの溶媒は、人体に影響がある、危険であるなどの問題もある。
したがって、本発明は、上記事情を鑑みてなされたものであり、水保持能を向上できる燃料電池用添加剤を提供することを目的とする。
本発明の他の目的は、溶剤溶解性に優れる燃料電池用添加剤を提供することである。
本発明者は、上記の問題を解決すべく、鋭意研究を行った結果、イミダゾール基をフタロシアニン骨格に導入したフタロシアニン化合物を用いることによって、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成させた。
すなわち、上記目的は、下記式(1):
上記式(1)中、Z〜Z16は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子または下記式(2):
ただし、Xは、硫黄原子または酸素原子を表わし;YおよびYは、それぞれ独立して、水素原子、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアルコキシ基、置換基を有してもよいアルキルオキシカルボニル基または置換基を有してもよいアリール基を表わす、
で示される置換基(a)または下記式(3):
ただし、X’は、硫黄原子または酸素原子を表わし;Y〜Yは、それぞれ独立して、水素原子、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアルコキシ基、置換基を有してもよいアルキルオキシカルボニル基または置換基を有してもよいアリール基を表わす、
で示される置換基(b)であり、
Mは、無金属、金属、金属酸化物または金属ハロゲン化物を表わす、
この際、Z〜Z16の少なくとも1つは置換基(a)または置換基(b)である、
で示されるフタロシアニン化合物を含む燃料電池用添加剤によって達成できる。
本発明の燃料電池用添加剤は、電解質に水保持能を付与できる。
本発明に係るフタロシアニン化合物を使用することによるプロトン伝導性向上のメカニズムを説明するための図面である。
本発明は、下記式(1):
上記式(1)中、Z〜Z16は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、下記式(2):
ただし、Xは、硫黄原子または酸素原子を表わし;YおよびYは、それぞれ独立して、水素原子、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアルコキシ基、置換基を有してもよいアルキルオキシカルボニル基または置換基を有してもよいアリール基を表わし、
で示される置換基(a)または下記式(3):
ただし、X’は、硫黄原子または酸素原子を表わし;Y〜Yは、それぞれ独立して、水素原子、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアルコキシ基、置換基を有してもよいアルキルオキシカルボニル基または置換基を有してもよいアリール基を表わす、
で示される置換基(b)であり、
Mは、無金属、金属、金属酸化物または金属ハロゲン化物を表わす、
この際、Z〜Z16の少なくとも1つは置換基(a)または置換基(b)(本明細書では、一括して「置換基(a)/(b)」とも称する)である、
で示されるフタロシアニン化合物(本明細書では、単に「本発明に係るフタロシアニン化合物」とも称する)を含む燃料電池用添加剤に関する。本発明の燃料電池用添加剤は、イミダゾール基(チオイミダゾール基またはオキシイミダゾール基)(置換基(a))またはベンズイミダゾール基(チオベンズイミダゾール基またはオキシベンズイミダゾール基)(置換基(b))をフタロシアニン骨格に導入してなるフタロシアニン化合物を含むことを特徴とする。当該化合物を用いることによって、燃料電池の部材、特に電解質膜の水保持能を向上できるため、別途水分供給(加湿)のための装置を必要としない、または水分供給(加湿)のための装置をよりコンパクトにできる。ゆえに、システムのコストを抑え、速やかなスタートアップや負荷変動に容易に即応し、重負荷時に水分の過剰供給に依る特性低下を抑制・防止できる。このような効果を奏するメカニズムは明らかではないが、以下のように推測できる。なお、本発明は、下記推測によって限定されるものではない。すなわち、イミダゾールやベンズイミダゾールは水にも易溶な化合物である。このため、フタロシアニン化合物骨格にイミダゾール基やベンズイミダゾール基を導入したフタロシアニン化合物では水に対する親和性を向上できる。また、イミダゾール基やベンズイミダゾール基中のNHの水素結合の作用も加わることによって、フタロシアニン化合物近傍に水を保持する効果を向上することもできる。
また、本発明に係るフタロシアニン化合物を使用することによって、プロトン伝導性を向上できる。このような効果を奏するメカニズムは明らかではないが、以下のように推測できる。なお、本発明は、下記推測によって限定されるものではない。すなわち、例えば、ナフィオン等、従来のスルホン酸基を有する電解質膜におけるプロトン伝導性は、図1Aに示されるように、電解質膜中のスルホン酸基とその周辺に存在する水(束縛水および自由水双方を包含する)部分からなるネットワーク中を、ヒドロニウムイオン(H)が移動することによって得られる(Vehicle機構)。また、このヒドロニウムイオンは、電解質膜中を移動する際、2〜3分子の水分子と水和して移動する。ここで、本発明に係るフタロシアニン化合物はイミダゾール基(置換基(a))またはベンズイミダゾール基(置換基(b))を有するが、図1Bに示されるように、これららの置換基(a)/(b)の窒素から他のイミダゾール基の窒素へとプロトン(H)が移動することにより、プロトン伝導を促進する(Grotthuss機構(ポッピング機構))。このため、本発明に係るフタロシアニン化合物を燃料電池部材(例えば、電解質膜、触媒層)用いると、当該化合物中に存在するイミダゾール基の窒素を介してプロトンが効率よく移動する。ゆえに、本発明に係るフタロシアニン化合物を含む燃料電池部材では、プロトン伝導性を向上できる。なお、図1では、イミダゾール基(置換基(a))の場合について詳述したが、ベンズイミダゾール基(置換基(b))の場合も同様のメカニズムにより、プロトン伝導性を向上できる。
さらに、本発明に係るフタロシアニン化合物を使用することによって、過酸化水素の分解を抑制・防止できる。このような効果を奏するメカニズムは明らかではないが、以下のように推測できる。なお、本発明は、下記推測によって限定されるものではない。すなわち、上述したように、固体高分子形燃料電池(特にカソード側)では、電池反応により過酸化水素が発生する。この過酸化水素は、ヒドロキシラジカル等に変質し、電解質膜や触媒層の担体を攻撃して、これらの有機材料を分解・劣化させる。これに対して、本発明に係るフタロシアニン化合物の中心金属イオンが有機材料の分解・劣化反応の抑制に触媒として作用する。ゆえに、本発明に係るフタロシアニン化合物を用いることによって、燃料電池部材(例えば、電解質膜、触媒層)の過酸化水素による分解を抑制・防止できる。特に中心金属(式(1)中のM)が遷移金属である場合に、上記効果が顕著に達成できる。
したがって、高温低加湿条件下にでも優れたプロトン伝導性を有する燃料電池用添加剤、特に高分子電解質膜用添加剤が提供できる。
以下、本発明の実施の形態を説明する。なお、本明細書において、範囲を示す「X〜Y」は「X以上Y以下」を意味し、「重量」と「質量」、「重量%」と「質量%」及び「重量部」と「質量部」は同義語として扱う。また、特記しない限り、操作および物性等の測定は室温(20〜25℃)/相対湿度40〜50%の条件で測定する。
また、本明細書において、上記式(1)における、Z、Z、Z、Z、Z10、Z11、Z14及びZ15を、単に「β位の置換基」または「β位」とも称する。同様にして、上記式(1)における、Z、Z、Z、Z、Z、Z12、Z13及びZ16を、単に「α位の置換基」または「α位」とも称する。
(本発明に係るフタロシアニン化合物)
本発明に係るフタロシアニン化合物は、上記式(1)で示される。
上述したように、本発明に係るフタロシアニン化合物は、燃料電池部材に水保持能を付与できる。また、本発明に係るフタロシアニン化合物によると、プロトン伝導性を向上できるおよび/または過酸化水素による分解を抑制・防止できる。
加えて、本発明に係るフタロシアニン化合物は、溶媒溶解性に優れる。ここで、溶媒としては、特に制限されないが、ベンゼン、トルエン、キシレン、ニトロベンゼン、モノクロロベンゼン、ジクロロベンゼン、トリクロロベンゼン、1−クロロナフタレン、1−メチルナフタレン、ベンゾニトリル、ピリジン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリジノン、N,N−ジメチルアセトフェノン、トリエチルアミン、トリ−n−ブチルアミン、スルホラン、キノリン、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、tert−ブタノール、1−ヘキサノール、2−ヘキサノール、3−ヘキサノール、シクロヘキサノール、2−メトキシエタノール、2−エトキシエタノール、2−(2−メトキシメトキシ)エタノール、2−(2−メトキシエトキシ)エタノール、2−(2−エトキシエトキシ)エタノール、テトラヒドロフラン、ジオキサン、アニソール、フェネトール、アセトン、2−ブタノン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、ジメチルスルホキシド、トリフルオロ酢酸などが挙げられる。これらの溶媒は人体に影響が低いため好ましい。これらの溶媒は、単独で使用されてもあるいは2種以上の混合物の形態で使用されてもよい。これらのうち、燃料電池部材への不活性、人体への影響、などを考慮すると、N,N−ジメチルアセトアミド、ベンゾニトリル、メタノール、エタノール、イソプロパノール、2−ブタノン、シクロヘキサノンが好ましく、N,N−ジメチルアセトアミド、メタノール、エタノール、シクロヘキサノンがより好ましい。また、本発明に係るフタロシアニン化合物は、上記溶媒への溶解度が、0.05重量%以上であることが好ましく、0.2重量%以上であることがより好ましい。溶解度の上限は特に限定されるものではない。
上記式(1)において、Z〜Z16は、水素原子、ハロゲン原子、上記式(2)で示される置換基(a)または上記式(3)で示される置換基(b)である。水保持能、プロトン伝導性向上効果、過酸化水素による分解を抑制・防止効果、溶媒溶解性などを考慮すると、Z〜Z16のうち、2〜14個が置換基(a)および/または置換基(b)であることが好ましく、4〜12個が置換基(a)および/または置換基(b)であることがより好ましい。ここで、置換基(a)/(b)のフタロシアニン骨格への導入位置は特に制限されない。水保持能、プロトン伝導性向上効果、過酸化水素による分解を抑制・防止効果、溶媒溶解性、などを考慮すると、置換基(a)/(b)は、フタロシアニン骨格のβ位に導入されることが好ましい。また、Z〜Z、Z〜Z、Z〜Z12、Z13〜Z16を含む各構成単位を、それぞれ、構成単位A、B、C、Dとすると、Z〜Z16の2個以上が置換基(a)/(b)である場合には、置換基(a)/(b)は、構成単位A〜D中、ほぼ均一に導入されても不均一に導入されてもよい。水保持能、プロトン伝導性向上効果、過酸化水素による分解を抑制・防止効果、溶媒溶解性などを考慮すると、置換基(a)/(b)は、構成単位A〜D中、均一にまたは不均一に導入されることが好ましく、イミダゾール基が相互に近傍に存在することにより水保持能、プロトン伝導性向上効果、過酸化水素による分解を抑制・防止効果、溶媒溶解性をより向上することを考慮すると、不均一に導入されることがより好ましい。例えば、Z〜Z16の6個が置換基(a)/(b)である場合には、置換基(a)/(b)がβ位に1個導入される構成単位 2個および置換基(a)/(b)がα位及びβ位に1個ずつ導入される構成単位 2個から構成されることが好ましい。
上述したように、Z〜Z16は、少なくとも1個が上記式(2)の置換基(a)または上記式(3)の置換基(b)であり、残位が水素原子またはハロゲン原子である。ここで、ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子およびヨウ素原子が挙げられる。水保持能、プロトン伝導性向上効果、過酸化水素による分解を抑制・防止効果、溶媒溶解性などを考慮すると、残位は、ハロゲン原子であることが好ましく、フッ素原子または塩素原子であることがより好ましく、フッ素原子であることが特に好ましい。
上記式(2)において、Xは、硫黄原子または酸素原子を表わす。また、YおよびYは、水素原子、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアルコキシ基(アルキルオキシ基)、置換基を有してもよいアルキルオキシカルボニル基(エステル基)または置換基を有してもよいアリール基を表わす。ここで、YおよびYは、同じであってもあるいは異なるものであってもよい。
ここで、アルキル基は、特に制限されないが、炭素数1〜24の直鎖、分岐状及び環状のアルキル基でありうる。より具体的には、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、tert−ペンチル基、ネオペンチル基、1,2−ジメチルプロピル基、n−ヘキシル基、イソヘキシル基、1,3−ジメチルブチル基、1−イソプロピルプロピル基、1,2−ジメチルブチル基、n−ヘプチル基、1,4−ジメチルペンチル基、3−エチルペンチル基、2−メチル−1−イソプロピルプロピル基、1−エチル−3−メチルブチル基、n−オクチル基、2−エチルヘキシル基、3−メチル−1−イソプロピルブチル基、2−メチル−1−イソプロピル基、1−t−ブチル−2−メチルプロピル基、n−ノニル基、3,5,5−トリメチルヘキシル基、n−デシル基、イソデシル基、n−ウンデシル基、1−メチルデシル基、n−ドデシル基、n−トリデシル基、n−テトラデシル基、n−ペンタデシル基、n−ヘキサデシル基、n−ヘプタデシル基、n−オクタデシル基、n−ノナデシル基、n−エイコシル基、n−ヘンエイコシル基、n−ドコシル基、n−トリコシル基、n−テトラコシル基等の直鎖、分岐状のアルキル基;シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、シクロノニル基、シクロデシル基、ノルボルニル基、アダマンチル基、イソボルニル基、デカヒドロナフチル基等の環状のアルキル基が挙げられる。これらのうち、炭素数1〜12の直鎖もしくは分岐状のアルキル基が好ましい。
アルコキシ基は、特に制限されないが、炭素数1〜24の直鎖、分岐状のアルコキシ基でありうる。より具体的には、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、イソブトキシ基、sec−ブトキシ基、tert−ブトキシ基、n−ペンチルオキシ基、イソペンチルオキシ基、tert−ペンチルオキシ基、ネオペンチルオキシ基、1,2−ジメチルプロポキシ基、n−ヘキシルオキシ基、イソヘキシルオキシ基、1,3−ジメチルブトキシ基、1−イソプロピルプロポキシ基、1,2−ジメチルブトキシ基、n−ヘプチルオキシ基、1,4−ジメチルペンチルオキシ基、3−エチルペンチルオキシ基、2−メチル−1−イソプロピルプロポキシ基、1−エチル−3−メチルブトキシ基、n−オクチルオキシ基、2−エチルヘキシルオキシ基、3−メチル−1−イソプロピルブトキシ基、2−メチル−1−イソプロポキシ基、1−t−ブチル−2−メチルプロポキシ基、n−ノニルオキシ基、3,5,5−トリメチルヘキシルオキシ基、n−デシルオキシ基、イソデシルオキシ基、n−ウンデシルオキシ基、1−メチルデシルオキシ基、n−ドデシルオキシ基、n−トリデシルオキシ基、n−テトラデシルオキシ基、n−ペンタデシルオキシ基、n−ヘキサデシルオキシ基、n−ヘプタデシルオキシ基、n−オクタデシルオキシ基、n−ノナデシルオキシ基、n−エイコシルオキシ基、n−ヘンエイコシルオキシ基、n−ドコシルオキシ基、n−トリコシルオキシ基、n−テトラコシルオキシ基などが挙げられる。これらのうち、炭素数1〜12の直鎖もしくは分岐状のアルキル基が好ましい。
アルキルオキシカルボニル基は、特に制限されないが、式:−C(=O)ORまたは式:−OC(=O)R(Rは、炭素数1〜24の直鎖、分岐状のアルキル基である)で示されるアルキルオキシカルボニル基でありうる。ここで、上記式中の置換基「R」は、炭素数1〜24の直鎖、分岐状のアルキル基であり、具体例は、上記アルキル基の項で記載されるのと同様であるため、ここでは、説明を省略する。好ましくは、Rは、炭素数1〜12の直鎖もしくは分岐状のアルキル基である。
アリール基は、特に制限されないが、炭素数6〜24のアリール基でありうる。より具体的には、フェニル基、ナフチル基、ビフェニル基、フルオレニル基、アンスリル基、ピレニル基、アズレニル基、アセナフチレニル基、ターフェニル基、フェナンスリル基などが挙げられる。
また、場合によってはアルキル基、アルコキシ基、アルキルオキシカルボニル基またはアリール基に存在する置換基は、特に制限されない。具体的には、ハロゲン原子、アシル基、アルキル基、アリール基、アルコキシル基、ハロゲン化アルキル基、ハロゲン化アルコキシル基、ニトロ基、アミノ基、アルキルアミノ基、アルキルカルボニルアミノ基、アリールアミノ基、アリールカルボニルアミノ基、カルボニル基、アルコキシカルボニル基、アルキルアミノカルボニル基、アルコキシスルホニル基、アルキルチオ基、カルバモイル基、アリールオキシカルボニル基、オキシアルキルエーテル基、シアノ基、イミダゾール基、ベンズイミダゾール基などが例示できる。これらの置換基は、1〜5個置換可能であり、これらの置換基の種類も、複数個置換する場合には同種若しくは異種のいずれであってもよい。なお、上記において、同一の置換基で置換されることはない。すなわち、置換のアルキル基は、アルキル基で置換されることはない。
これらのうち、水保持能、プロトン伝導性向上効果、過酸化水素による分解を抑制・防止効果、溶媒溶解性などを考慮すると、YおよびYは、水素原子、アルキル基、アルキルオキシカルボニル基、アリール基を表わすことが好ましく、水素原子、アルキル基、アルキルオキシカルボニル基を表わすことがより好ましい。
上記式(3)において、X’は、硫黄原子または酸素原子を表わす。また、Y〜Yは、水素原子、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアルコキシ基(アルキルオキシ基)、置換基を有してもよいアルキルオキシカルボニル基(エステル基)または置換基を有してもよいアリール基を表わす。ここで、Y〜Yは、同じであってもあるいは相互に異なるものであってもよい。また、「アルキル基」、「アルコキシ基(アルキルオキシ基)」、「アルキルオキシカルボニル基(エステル基)」、「アリール基」及びこれらの基に存在しうる置換基は、上記YおよびYの項で記載されるのと同様であるため、ここでは、説明を省略する。
また、上記式(1)において、Mは、無金属、金属、金属酸化物または金属ハロゲン化物を表わす。ここで、無金属とは、金属以外の原子、例えば、2個の水素原子であることを意味する。また、金属としては、鉄、マグネシウム、ニッケル、コバルト、銅、パラジウム、亜鉛、バナジウム、マンガン、チタン、インジウム、錫等が挙げられる。金属酸化物としては、チタニル、バナジル等が挙げられる。金属ハロゲン化物としては、塩化アルミニウム、塩化インジウム、塩化ゲルマニウム、塩化錫(IV)、塩化珪素等が挙げられる。これらのうち、水保持能、プロトン伝導性向上効果、過酸化水素による分解を抑制・防止効果、溶媒溶解性など、特に過酸化水素による分解を抑制・防止効果を考慮すると、Mは、遷移金属、遷移金属酸化物または遷移金属ハロゲン化物を表わすことが好ましい。遷移金属としては、チタン、バナジウム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛等が挙げられる。遷移金属酸化物としては、チタニル、バナジル等が挙げられる。遷移金属ハロゲン化物としては、塩化アルミニウム、塩化インジウム等が挙げられる。水保持能、プロトン伝導性向上効果、過酸化水素による分解を抑制・防止効果、溶媒溶解性、特に過酸化水素による分解を抑制・防止効果などを考慮すると、マンガン、鉄、コバルト、亜鉛、バナジル、チタニルが好ましく、マンガン、鉄、コバルト、亜鉛がより好ましい。
本発明に係るフタロシアニン化合物の分子量は特に制限されないが、900以上であることが好ましい。このようにある程度以上の大きさ(分子量)を有するフタロシアニン化合物であれば、燃料電池部材(例えば、電解質膜、触媒層)中であまり移動しない(固定化される)。このため、燃料電池運転(作動)中であっても、フタロシアニン化合物は燃料電池部材中に均一に存在するため、特性低下が起こらず、フタロシアニン化合物による効果を長期間にわたって維持できる。一方、フタロシアニン化合物の分子量が900未満であると、フタロシアニン化合物が小さいため、燃料電池運転(作動)中に、例えば、電解質膜から触媒層(電極)近傍へ移動して、上記したような特性を低下させる可能性がある。水保持能、プロトン伝導性向上効果、過酸化水素による分解を抑制・防止効果、溶媒溶解性などを考慮すると、本発明に係るフタロシアニン化合物の分子量は、900〜4000であることがより好ましく、1000〜4000であることが特に好ましい。
すなわち、本発明に係るフタロシアニン化合物の好ましい例としては、下記がある。なお、本発明は、下記フタロシアニン化合物に限定されるものではない。なお、下記実施例において、フタロシアニン化合物を下記化合物番号にて規定する。
本発明のフタロシアニン化合物の製造方法は、特に制限されるものではなく、特開2002−302477号公報、特開2008−106258号公報等に記載される従来公知の方法を適当に利用することができる。好ましくは、溶融状態または有機溶媒中で、フタロニトリル化合物と金属塩とを環化反応する方法が特に好ましく使用できる。なお、上記環化反応において、置換基(a)および/または置換基(b)は予めフタロニトリル化合物に所望の数を所望の位置に導入した後に環化反応を行っても、あるいは環化反応後に、置換基(a)および/または置換基(b)をフタロシアニン骨格に導入してもよい。
(燃料電池用添加剤)
本発明の燃料電池用添加剤は、上記したような本発明に係るフタロシアニン化合物を含む。ここで、本発明の燃料電池用添加剤は、少なくとも1種の本発明に係るフタロシアニン化合物のみから構成されてもあるいは本発明に係るフタロシアニン化合物に加えて他の成分を含んでもよい。後者の場合の他の成分としては、特に制限されないが、他の構造を有するフタロシアニン化合物、溶媒、過酸化水素分解剤などが挙げられる。ここで、溶媒としては、本発明に係るフタロシアニン化合物が溶解できるものであれば特に制限されないが、N,N−ジメチルアセトアミド、ベンゾニトリル、メタノール、エタノール、イソプロパノール、2−ブタノン、シクロヘキサノンなどが好ましく挙げられる。また、過酸化水素分解剤もまた、特に制限されず、公知の過酸化水素分解剤が使用できる。具体的には、カタラーゼ、スーパーオキサイドディスムスターゼ、チトクロームオキシダーゼ、パーオキシダーゼ、グルタチオンペルオキシダーゼ、酸化マンガン、二酸化マンガン、ポルフィリン化合物の金属錯体、メタロセン化合物、ポリビニルアルコールの金属錯体、エチレンジアミン四酢酸の金属錯体などが挙げられる。ここで、本発明の燃料電池用添加剤が他の成分を含む場合の、他の成分の含有量は、本発明に係るフタロシアニン化合物による効果を阻害しない量であれば特に制限されない。具体的には、他の成分の含有量は、本発明に係るフタロシアニン化合物に対して、0.1〜30重量%程度である。
本発明の燃料電池用添加剤は、燃料電池、特に固体高分子形燃料電池(PEFC)のいずれの部材(例えば、電解質膜、触媒層、ガス拡散層、セパレータなど)に使用されてもよい。好ましくは、本発明の燃料電池用添加剤は、電解質膜、触媒層に使用され、電解質膜、触媒層に使用されることが特に好ましい。上記燃料電池部材に使用されると、特に所望の効果(水保持能、プロトン伝導性、過酸化水素による分解を抑制・防止効果、溶媒溶解性の少なくとも一の向上効果)が顕著である。なお、本発明の燃料電池用添加剤は、燃料電池を構成する部材(燃料電池部材)の少なくとも1に適用されればよく、2以上の部材に適用されてもよい。後者の場合には、各部材に適用される燃料電池用添加剤が同じであってもあるいは異なるものであってもよい。
本発明の燃料電池用添加剤の添加量(含有量)は、本発明による効果が達成できる量であれば特に制限されない。例えば、本発明の燃料電池用添加剤を電解質膜に使用する場合には、本発明の燃料電池用添加剤の添加量(含有量)は、電解質(固体高分子電解質)に対して、0.01〜30重量%であることが好ましく、0.1〜25重量%であることがより好ましく、10重量%を超えて20重量%以下であることが特に好ましい。このような量であれば、電解質膜は、十分な水保持能、プロトン伝導性を発揮できる。また、膜中での過酸化水素による分解を十分抑制・防止できる。また、例えば、本発明の燃料電池用添加剤を触媒層に使用する場合には、本発明の燃料電池用添加剤の添加量(含有量)は、電極触媒に対して、0.01〜30重量%であることが好ましく、0.1〜25重量%であることがより好ましく、10重量%を超えて20重量%以下であることが特に好ましい。このような量であれば、触媒層は、十分なプロトン伝導性を発揮できる。また、触媒層中での電極触媒(特に担体)や電解質の過酸化水素による分解を十分抑制・防止できる。
(燃料電池)
上述したように、本発明の燃料電池用添加剤は、燃料電池を構成するいずれかの部材(例えば、電解質膜、触媒層、ガス拡散層、セパレータなど)に適用される。このため、本発明の燃料電池用添加剤以外は、特開2005−56776号公報など、従来と同様の部材が同様にして使用できる。
例えば、電解質膜は、高分子電解質及び本発明の燃料電池用添加剤を含む。ここで、電解質膜を構成する高分子電解質は、特に制限されず、ポリマー骨格の全部又は一部にフッ素原子を含むフッ素系電解質と、ポリマー骨格にフッ素原子を含まない炭化水素系電解質などが使用される。これらのうち、フッ素系電解質が好ましく、全フッ素系電解質がより好ましい。ここで、「全フッ素系電解質」とは、高分子鎖内にC−H結合を持たず、C−F結合を有するものをいう。なお、全フッ素系電解質は、C−Cl結合やその他の結合(例えば、−O−、−S−、−C(=O)−、−N(R)−等)を含んでもよい。具体的には、ナフィオン(登録商標、デュポン社製)、アシプレックス(登録商標、旭化成株式会社製)、フレミオン(登録商標、旭硝子株式会社製)等のパーフルオロカーボンスルホン酸系ポリマー、ポリトリフルオロスチレンスルフォン酸系ポリマー、パーフルオロカーボンホスホン酸系ポリマー、トリフルオロスチレンスルホン酸系ポリマー、エチレンテトラフルオロエチレン−g−スチレンスルホン酸系ポリマー、エチレン−テトラフルオロエチレン共重合体、ポリビニリデンフルオリド−パーフルオロカーボンスルホン酸系ポリマーなどが挙げられる。
電解質膜が本発明の燃料電池用添加剤を含む場合の、電解質膜の調製方法は、特に制限されない。例えば、(ア)電解質膜を本発明の燃料電池用添加剤(本発明に係るフタロシアニン化合物)の溶液に浸漬した後、乾燥する方法;(イ)電解質、本発明の燃料電池用添加剤(本発明に係るフタロシアニン化合物)および必要であれば溶媒と混合した後、膜に成形する方法などが挙げられる。
このうち、上記(ア)において、本発明の燃料電池用添加剤(本発明に係るフタロシアニン化合物)を溶解するための溶媒は、本発明の燃料電池用添加剤(本発明に係るフタロシアニン化合物)が溶解できれば特に制限されない。具体的な溶媒例は上記と同様である。これらのうち、フタロシアニン化合物の溶解性、人体への影響、燃料電池部材への不活性などを考慮すると、N,N−ジメチルアセトアミド、ベンゾニトリル、メタノール、エタノール、イソプロパノール、2−ブタノン、シクロヘキサノンが好ましく、N,N−ジメチルアセトアミド、メタノール、エタノール、シクロヘキサノンがより好ましい。また、溶液中の本発明の燃料電池用添加剤(本発明に係るフタロシアニン化合物)の濃度もまた、特に制限されない。水保持能、プロトン伝導性向上効果、過酸化水素による分解を抑制・防止効果、溶媒溶解性などを考慮すると、溶液中の本発明の燃料電池用添加剤(本発明に係るフタロシアニン化合物)の濃度は、0.01〜30重量%であることが好ましい。溶液中の電解質膜の浸漬条件は、十分量の本発明の燃料電池用添加剤を膜に配置できる条件であれば特に制限されない。具体的には、電解質膜を上記溶液中に、10〜150℃の温度で0.1〜24時間浸漬することが好ましく、電解質膜を上記溶液中に、20〜100℃の温度で1〜12分間浸漬することがより好ましい。また、必要に応じて浸漬後に洗浄や乾燥工程を入れても良い。洗浄方法としては、燃料電池部材に対して悪影響を及ぼさない溶媒で洗浄してもよい。洗浄液としては、例えば、水やアルコール等が挙げられる。乾燥方法としては、25〜200℃(より好ましくは50〜150℃)で、5〜180分(より好ましくは10〜120分)間乾燥すればよい。
また、上記(イ)において、必要であれば使用される溶媒は、特に制限されず、上記(ア)と同様の溶媒が使用できる。電解質と本発明の燃料電池用添加剤(本発明に係るフタロシアニン化合物)との混合比もまた、特に制限されないが、好ましくは膜中の本発明に係るフタロシアニン化合物の添加量(含有量)が上記したような割合である。また、得られた混合物の膜への成形条件は、特に制限されず、使用される電解質やフタロシアニン化合物の種類などによって適宜選択される。具体的には、混合物を、適当な塗膜形成手段(例えば、ドクターブレード法、スキージ法、スピンコート法、スクリーン印刷法、キャスト法、ロールコート法、スプレーコート法、バーコート法、ディップコート法)によって塗膜を形成した後、25〜200℃の温度で5〜180分間乾燥することが好ましく、混合物を、適当な塗膜形成手段(例えば、スピンコート法)によって塗膜を形成した後、50〜150℃の温度で10〜120分間乾燥することがより好ましい。
また、触媒層は、高分子電解質、電極触媒及び本発明の燃料電池用添加剤を含む。ここで、高分子電解質は、特に制限されず、上記電解質膜で規定されるのと同様の電解質が使用できる。また、電極触媒は、触媒成分が導電性担体に担持されてなる。ここで、触媒成分は、特に制限されず、カソード触媒層であれば酸素の還元反応に触媒作用を有する触媒成分が、アノード触媒層であれば水素の酸化反応に触媒作用を有する触媒成分が、それぞれ、使用される。好ましくは、触媒成分は、白金を含む。また、導電性担体としては、触媒成分を担持し、十分な電子導電性を有しているものであれば特に制限されないが、カーボンブラック等の主成分がカーボンが好ましく使用される。
触媒層が本発明の燃料電池用添加剤を含む場合の、触媒層の調製方法は、特に制限されない。例えば、(ア’)触媒層を本発明の燃料電池用添加剤(本発明に係るフタロシアニン化合物)の溶液に浸漬した後、乾燥する方法;(イ’)電解質、電極触媒、本発明の燃料電池用添加剤(本発明に係るフタロシアニン化合物)および必要であれば溶媒と混合した後、電極を成形する方法などが挙げられる。
このうち、上記(ア’)において、本発明の燃料電池用添加剤(本発明に係るフタロシアニン化合物)を溶解するための溶媒は、本発明の燃料電池用添加剤(本発明に係るフタロシアニン化合物)が溶解できれば特に制限されない。具体的な溶媒例は上記と同様である。これらのうち、フタロシアニン化合物の溶解性、人体への影響、燃料電池部材への不活性などを考慮すると、N,N−ジメチルアセトアミド、ベンゾニトリル、メタノール、エタノール、イソプロパノール、2−ブタノン、シクロヘキサノンが好ましく、N,N−ジメチルアセトアミド、メタノール、エタノール、シクロヘキサノンがより好ましい。また、溶液中の本発明の燃料電池用添加剤(本発明に係るフタロシアニン化合物)の濃度もまた、特に制限されない。プロトン伝導性向上効果、過酸化水素による分解を抑制・防止効果、溶媒溶解性などを考慮すると、溶液中の本発明の燃料電池用添加剤(本発明に係るフタロシアニン化合物)の濃度は、0.01〜25重量%であることが好ましい。溶液中の触媒層の浸漬条件は、十分量の本発明の燃料電池用添加剤を触媒層に配置できる条件であれば特に制限されない。具体的には、触媒層を上記溶液中に、20〜150℃の温度で1〜180分間浸漬することが好ましく、触媒層を上記溶液中に、25〜100℃の温度で5〜120分間浸漬することがより好ましい。
また、上記(イ’)において、電解質、電極触媒、本発明の燃料電池用添加剤(本発明に係るフタロシアニン化合物)の混合比もまた、特に制限されないが、好ましくは触媒層中の本発明に係るフタロシアニン化合物の添加量(含有量)が上記したような割合である。また、得られた混合物の触媒層への成形条件は、特に制限されず、使用される電解質、電極触媒、フタロシアニン化合物の種類などによって適宜選択される。具体的には、混合物を、適当な塗膜形成手段(例えば、ドクターブレード法、スキージ法、スピンコート法、スクリーン印刷法)によって塗膜を形成した後、25〜200℃の温度で5〜180分間乾燥することが好ましく、混合物を、適当な塗膜形成手段(例えば、スピンコート法)によって塗膜を形成した後、50〜150℃の温度で10〜120分間乾燥することがより好ましい。
燃料電池は、電解質膜ならびに上記電解質膜の両面にそれぞれ形成されたカソード触媒層及びアノード触媒層に加えて、ガス拡散層をさらに有してもよい。ここで、ガス拡散層としては、特に制限されず、カーボン繊維、カーボンペーパー等の公知の材料を用いることができる。また、ガス拡散層は、撥水性をより高めてフラッディング現象などを防ぐことを目的として、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)等の撥水剤を含んでもよい。さらに、撥水性をより向上させるために、ガス拡散層は、撥水剤を含むカーボン粒子の集合体からなるカーボン粒子層をさらに有するものであってもよい。
燃料電池の製造方法は、特に制限されず、触媒インクを電解質膜上に塗布・乾燥させて触媒層を形成させた後、さらにガス拡散層で挟持して、ホットプレスによりガス拡散層、触媒層及び電解質膜を接合する方法;触媒インクをガス拡散層上に塗布・乾燥させて触媒層を形成した後、これを電解質膜で挟持してホットプレスにより接合する等の、公知の方法が適宜使用できる。
上記したようにして得られた燃料電池は、優れた水保持能、プロトン伝導性及び過酸化水素による分解の抑制・防止能を有する。このため、上記燃料電池は、容易に小型化できる。また、上記燃料電池は、優れた発電性能を発揮できる。
本発明の効果を、以下の実施例および比較例を用いて説明する。ただし、本発明の技術的範囲が以下の実施例のみに制限されるわけではない。また、特記しない限り、「%」および「部」はそれぞれ「重量%」および「重量部」を意味し、下記各操作は室温(25℃)で行われる。
合成例1:フタロシアニン化合物2(化合物2)の合成
下記反応によって、フタロシアニン化合物2(化合物2)を合成した。
反応容器に、2−メルカプトイミダゾール 104.1g(1.04mol)及びジメチルアセトアミド 500mlを入れ、撹拌しながらゆっくりと水素化リチウム8.68g(1.092mol)を加えた。添加後、混合物を70℃で終夜撹拌し、2−メルカプトイミダゾールをリチウム塩化(Li塩化)した。
別途用意した反応容器に、1,2,3,4,8,9,10,11,15,16,17,18,22,23,24,25−ヘキサデカフルオロフタロシアニン亜鉛 100.00g(115.51mmol)およびジメチルアセトアミド 3000mlを入れた反応容器を用意した。これに、上記で調製した2−メルカプトイミダゾールのLi塩を滴下ロートを用いて加えた。添加終了後、混合物を120℃で3日間反応させた。続いて、反応液を5000gの氷水に注ぎ、1時間撹拌してろ過した。ろ過残さを熱ジメチルホルムアミド5000mlで洗浄してから2000mlの水を加えてろ過し、5000mlのメタノールで洗浄した後、40℃で1日乾燥して、フタロシアニン化合物2を合成した。この際、収量は、135.30gであった。また、S分の分析から、フタロシアニン化合物2(化合物2)は6個程度のメルカプトイミダゾール基が導入されていることを確認した。
実施例1
上記合成例1で得られたフタロシアニン化合物2 0.195gをジメチルアセトアミド 6.305gに溶解して、フタロシアニン化合物溶液を調製した。次に、この溶液にNafion溶液(アリドリッチ社製、8%、DMA溶液)80gを混合した後、スピンコーターを用いて塗膜した。この塗膜を、100℃20分間乾燥した後、水を入れたビーカーに浸してジメチルアセトアミドを除いたのち、再度100℃で5時間乾燥することで、フタロシアニン化合物2が均一に分散した電解質膜を得た。
実施例2
上記合成例1で得られたフタロシアニン化合物2 0.4gをジメチルアセトアミド 14.7gに溶解して、フタロシアニン溶液を調製した。次に、Nafion117(アルドリッチ社製)をこの溶液に2時間浸して染色した後、メタノール次いで水で洗浄することで、フタロシアニン化合物2が均一に分散した電解質膜を得た。
比較測定例1
市販のNafion117膜(アルドリッチ社製)を測定用セルに設置し、恒温恒湿器中にて各温度及び湿度環境で1時間静置し平衡状態とする。その後、下記インピーダンス測定装置にてインピーダンスを測定し、プロトン伝導率(S/cm)を求めた。測定結果を表1に示す。
(インピーダンス測定装置)
・インピーダンスアナライザ1260(ソーラトロン社製)
・マルチポテンショスタット/ガルバノスタット1470E (ソーラトロン社製)
測定例1
実施例2で得られた電解質膜を用い、比較測定例1と同様の方法でプロトン伝導率を求めた。測定結果を表1に示す。
上記表1から、本発明のフタロシアニン化合物を含む電解質膜は、従来頻繁に使用されるNafion膜に比して、高いプロトン伝導性を発揮できることが分かる。
評価:水保持能力の試験
Nafion117膜(比較測定例2)と実施例2で得られた電解質膜(測定例2)をドライルームの中で、60℃で真空乾燥し、それぞれ重量を測定した。その後、水を入れたビーカーに入れて充分に吸水させた。水を拭き取った後、再度60℃で真空乾燥させ、重量を測定して水保持能力を比較した。測定結果を表2に示す。

Claims (1)

  1. 下記式(1):
    上記式(1)中、Z〜Z16は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、下記式(2):
    ただし、Xは、硫黄原子または酸素原子を表わし;YおよびYは、それぞれ独立して、水素原子、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアルコキシ基、置換基を有してもよいアルキルオキシカルボニル基または置換基を有してもよいアリール基を表わす、
    で示される置換基(a)または下記式(3):
    ただし、X’は、硫黄原子または酸素原子を表わし;Y〜Yは、それぞれ独立して、水素原子、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアルコキシ基、置換基を有してもよいアルキルオキシカルボニル基または置換基を有してもよいアリール基を表わす、
    で示される置換基(b)であり、
    Mは、無金属、金属、金属酸化物または金属ハロゲン化物を表わす、
    この際、Z〜Z16の少なくとも1つは置換基(a)または置換基(b)である、
    で示されるフタロシアニン化合物を含む燃料電池用添加剤。
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