以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
<1.流動床装置の構成>
まず、図1に基づいて、流動床装置100の構成について説明する。図1に示すように、流動床装置100は、流動床本体120と、プレナム室130と、ホッパ165とを備える。流動床装置100は、いわゆる乾燥分級装置であり、流動床X21、X22を用いて石炭X1の乾燥及び分級を行う。
ホッパ165は、石炭X1を貯蔵する。また、ホッパ165は、流動床本体120に接続されており、石炭X1を流動床本体120に導入する。
石炭X1は、例えば総質量に対して10質量%前後程度の水分を含む。また、石炭X1は、例えば粒度が0.5mmより大きい粗粒炭と粒度0.3mm以下の微粉炭とを含む。本実施形態での粒度は、例えば目開きの大きさが異なる篩を用いて測定される。例えば、目開きが0.3mmの篩を用意し、測定対象の石炭をこの篩にかける。この篩に残留した石炭は、粒度が0.3mmより大きく、篩から落ちた粉鉱石は粒度0.3mm以下となる。
流動床本体120は、平面視で略長方形の形状となっており、隔壁111によって乾燥室121及び分級室122に分割される。隔壁111の下端部には空間、すなわち乾燥石炭排出口112が形成されている。プレナム室130は、流動床本体120に流動化ガスを導入する領域であり、隔壁135によってプレナム室131、132に分割される。隔壁111、135は同一の鉛直面内に設けられる。
乾燥室121は、石炭X1を後述する乾燥用流動化ガス131aによって流動床X21とする(すなわち流動化する)ことで石炭X1を乾燥させる。石炭X1は含水量が3〜5質量%となるまで乾燥室121で乾燥される。本実施形態では、乾燥室121で石炭X1を含水量が3〜5質量%となるまで乾燥させることで、石炭X1の分級精度を高める。
乾燥室121は、流動床部201と、フリーボード部211と、目皿板141と、原料投入口160と、排ガス排出口181とを備える。
流動床部201は、石炭X1の流動床X21が形成される領域であり、流動床部201の底面が目皿板141となっている。目皿板141は、複数のノズル141aを有する。ノズル141aは、目皿板141を厚さ方向に貫通する穴である。後述する乾燥用流動化ガス131aは、目皿板141のノズル141aを通って流動床部201に導入される。そして、乾燥用流動化ガス131aは、流動床部201内の石炭X1を流動床X21とする(すなわち流動化させる)ことで、石炭X1を乾燥させる。石炭X1を乾燥させた(すなわち石炭X1から水分を奪った)乾燥用流動化ガス131aは、排ガス181aとしてフリーボード部211に導入される。排ガス181aには、乾燥が十分でない(具体的には、含水量が5質量%よりも大きい)石炭X1が混入する場合がある。
フリーボード部211は、流動床部201の上側の領域である。フリーボード部211の幅は、天井に近いほど広くなるように設計されている。また、フリーボード部211の高さは、後述するTDHの0.6倍以上の高さに設計されていてもよい。これにより、分級精度がさらに向上する。詳細は後述する。原料投入口160は、流動床本体120の長さ方向の先端面120aに設けられる。原料投入口160は、ホッパ165に接続されており、石炭X1は、原料投入口160を介して乾燥室121内に投入される。排ガス排出口181は、フリーボード部211の天井に設けられている。排ガス181aはフリーボード部内で上昇し、排ガス排出口181から排出される。
ここで、排ガス排出口180から排出される排ガス181aには、なるべく石炭X1が含まれないことが好ましい。上述したように、排ガス181aに含まれる石炭X1は、乾燥が充分でない場合があるので、石炭X1が排ガス排出口181や後述するバグフィルタに付着する可能性があるからである。また、フリーボード部211内の湿度は極めて高くなっている(例えば、相対湿度100%程度となっている)。したがって、排ガス排出口181近傍では結露が発生している可能性が高い。このため、仮に乾燥した石炭X1がフリーボード部211内に飛ばされたとしても、石炭X1は排ガス排出口181近傍の結露によって湿ってしまう。また、石炭X1をなるべく排ガス排出口180から排出しないようにすることで、分級室122での分級制御性が向上する。すなわち、石炭X1の分級を実質的に分級室122のみで行うことになるので、分級室122で分級を制御すれば良いことになる。
一方、フリーボード部211内の排ガス181aの平均流速が小さいほど、石炭X1は排ガス排出口180から排出されにくい。したがって、フリーボード部211内の排ガス181aの平均流速は、石炭X1が3〜5質量%の含水量となるまで乾燥され、かつ、流動床X21が形成される範囲内でなるべく小さいことが好ましい。ここで、フリーボード部211内の排ガス181aの平均流速は、以下の式(2)で表される。
U01=熱風量(m3/s)÷乾燥室フリーボード面積(m2)・・・(2)
ここで、式(1)中、U01はフリーボード部211内の排ガス181aの平均流速を示す。熱風量は、プレナム室131に導入される乾燥用流動化ガス131aの風量であり、乾燥室フリーボード面積は、フリーボード部211の平断面積である。したがって、風量一定の下で平均流速を調整するには、フリーボード部211の平断面積を調整すればよい。なお、式(2)は排ガス181aの平均流速の算出する数式の一例であり、平均流速の算出方法は特に制限されない。例えば、排ガス181aの平均流速は、流動床X21からの蒸発水分を考慮して算出しても良い。
プレナム室131は、乾燥用流動化ガス131aが外部から導入される部分である。プレナム室131に導入された乾燥用流動化ガス131aは、目皿板141のノズル141aを通って流動床部201に導入される。乾燥用流動化ガス131aの風量(単位時間あたりにプレナム室131に導入される乾燥用流動化ガス131aの体積)及び温度を乗じた値、すなわち投熱量は、石炭X1から除去される水分量に影響を与える。また、風量は、フリーボード部211内の排ガス181aの平均流速に影響を与える。また、温度は、ノズル141aから吹き出す乾燥用流動化ガス131aの流速に影響を与える。
したがって、乾燥用流動化ガス131aの風量及び温度は、少なくとも以下の(1a)、(2a)の条件が満たされるように決定される。さらに(3a)の条件が満たされることが好ましい。
(1a)石炭X1の含水量が3〜5質量%となるように石炭X1を乾燥させる。なお、石炭X1の含水量の制御方法については後述する。
(2a)流動床X21が形成される。なお、流動床X21が形成されるためには、ノズル141aから吹き出す乾燥用流動化ガス131aの流速は、例えば2.5〜4.5(m/s)であることを要する。
(3a)上記(1a)、(2a)を満たす範囲で、フリーボード部211内の排ガス181aの平均流速をフリーボード部212内の排ガス182aの平均流速よりも小さくする。
ここで、後述するように、フリーボード部211、212の平断面積は、フリーボード部211内の平断面によって異なりうる。したがって、排ガス181a、182aの平均流速もフリーボード部211、212内で変動する。したがって、(3a)の条件は、より詳細には、「排ガス181aの平均流速の最小値が排ガス182aの平均流速の最小値よりも小さい」となる。排ガス181aの平均流速は、上記(1a)、(2a)を満たす範囲でなるべく小さいことが好ましく、より好ましくは最小とする。
なお、排ガス181aの平均流速は、フリーボード部212の排ガス182aの平均流速と同程度であってもよい。この場合であっても、乾燥室内の石炭X1の含水量は分級室内の石炭X1の含水量よりも大きいので、石炭X1が排ガス排出口181から排出されにくい。もちろん、(3a)の条件が満たされる場合、石炭X1が排ガス排出口181からより排出されにくくなる。したがって、排ガス181aの平均流速を排ガス182aの平均流速よりも小さくすることが好ましい。
乾燥室121では、以下の処理が行われる。まず、ホッパ165は、原料投入口160から石炭X1を乾燥室121内に導入する。なお、石炭X1は、継続して導入される。一方、プレナム室131には、乾燥用流動化ガス131aが導入される。乾燥用流動化ガス131aの風量及び温度は、上記条件(1a)、(2a)、好ましくはさらに(3a)が満たされるように設定される。
乾燥用流動化ガス131aは、目皿板141のノズル141aを通って流動床部201内の石炭X1に導入される。これにより、石炭X1は流動床X21とされ、乾燥される。乾燥後の石炭X1は、乾燥石炭排出口112を通って分級室122に導入される。石炭X1の含水量は、石炭X1が乾燥石炭排出口112を通る際に、3〜5質量%となる。以下、石炭X1が乾燥石炭排出口112を通過する際の石炭X1の含水量を「石炭X1の境界水分量」とも称する。本実施形態では、石炭X1の境界水分量が3〜5質量%となる。
一方、石炭X1から水分を奪った乾燥用流動化ガス131aは、排ガス181aとしてフリーボード部211に導入される。排ガス181aは、フリーボード部211内を上昇し、排ガス排出口181から排出される。以上の処理により、石炭X1が乾燥される。
分級室122は、石炭X1を後述する分級用流動化ガス132aによって流動床X22とする(すなわち流動化する)ことで石炭X2を分級する。すなわち、分級室122は、所望の分級点より大きい石炭X1を流動床X22に残し、分級点以下の石炭X1を排ガス排出口182から排ガス182aと共に排出する。分級点は石炭X1の粒度を示すパラメータである。分級点が小さすぎると、排ガス排出口182から排出された石炭X1を塊成しにくくなり、分級点が大きすぎると、塊成炭がもろくなる。そこで、分級点は、例えば0.5mm±0.5mm(ただし0.0mmを除く)に設定される。
分級室122は、流動床部202と、フリーボード部212と、目皿板142と、石炭排出口170と、排ガス排出口182とを備える。
流動床部202は、石炭X1の流動床X22が形成される領域であり、流動床部202の底面が目皿板142となっている。目皿板142は、複数のノズル142aを有する。ノズル142aは、目皿板142を厚さ方向に貫通する穴である。後述する分級用流動化ガス132aは、目皿板142のノズル142aを通って流動床部202に導入される。そして、分級用流動化ガス132aは、流動床部202内の石炭X1を流動床X22とする(すなわち流動化させる)ことで、石炭X1を分級する。すなわち、分級用流動化ガス132aは、分級点以下の石炭X1をフリーボード部212に吹き飛ばす。分級用流動化ガス132aは排ガス182aとしてフリーボード部212に導入される。
フリーボード部212は、流動床部202の上側の領域である。フリーボード部212の幅は、天井に近いほど広くなるように設計されていてもよい。また、フリーボード部212の高さは、後述するTDHの0.6倍以上の高さに設計されていてもよい。これにより、分級精度がさらに向上する。詳細は後述する。
石炭排出口170は、流動床本体120の長さ方向の後端面120bに設けられる。分級後の石炭X3は、石炭排出口170から流動床装置100の外部に排出される。排ガス排出口182は、フリーボード部212の天井に設けられている。排ガス182a及び分級点以下の石炭X1はフリーボード部212内で上昇し、排ガス排出口182から排出される。
プレナム室132は、分級用流動化ガス132aが外部から導入される部分である。プレナム室132に導入された分級用流動化ガス132aは、目皿板142のノズル142aを通って流動床部202に導入される。分級用流動化ガス132aは、石炭X1を流動床X22とすることで、擬似粒子を分解し、かつ、石炭X1の一部をフリーボード部212内に吹き飛ばす。流動床X22を通過した分級用流動化ガス132aは、排ガス182aとしてフリーボード部212内に導入される。排ガス182aは、フリーボード部212内を上昇し、排ガス排出口182aから排出される。
ここで、分級用流動化ガス132aの風量(単位時間あたりにプレナム室132に導入される分級用流動化ガス132aの体積)は、フリーボード部212内の排ガス182aの平均流速に影響を与える。また、温度は、ノズル142aから吹き出す分級用流動化ガス132aの流速に影響を与える。
したがって、分級用流動化ガス132aの風量及び温度は、少なくとも以下の(1b)、(2b)の条件が満たされるように決定される。
(1b)フリーボード部212内の排ガス182の平均流速が分級点の石炭X1の終端速度より大きい。
これにより、分級点以下の石炭X1は排ガス排出口182から排ガス182aとともに排出される。
(2b)流動床X22が形成される。なお、流動床X22が形成されるためには、ノズル142aから吹き出す分級用流動化ガス132aの流速は、例えば2.5〜4.5(m/s)であることを要する。ここで、フリーボード部212内の排ガス182aの平均流速は、以下の式(3)で表される。
U02=熱風量(m3/s)÷分級室フリーボード面積(m2)・・・(3)
ここで、式(3)中、U02はフリーボード部212内の排ガス182aの平均流速を示す。熱風量は、プレナム室132に導入される分級用流動化ガス132aの風量であり、分級室フリーボード面積は、フリーボード部212の平断面積である。したがって、風量一定の下で平均流速を調整するには、フリーボード部212の平断面積を調整すればよい。なお、フリーボード部212の平断面積がフリーボード部212の平断面によって異なる場合には、フリーボード部212内の排ガス182aの平均流速の最小値が分級点の石炭X1の終端速度と同程度であればよい。乾燥用流動化ガス131aの風量及び温度と、分級用流動化ガス132aの風量及び温度とは、個別に制御されてもよく、一括で制御されてもよい。後者の場合、同じ流動化ガスがプレナム室131、132に分割されて供給されることになる。また、式(3)は排ガス182aの平均流速の算出する数式の一例であり、平均流速の算出方法は特に制限されない。例えば、排ガス182aの平均流速は、流動床X21からの蒸発水分を考慮して算出しても良い。
分級室122では、以下の処理が行われる。まず、分級室122内に、含水量3〜5質量%の石炭X1が導入される。なお、石炭X1は、継続して導入される。一方、プレナム室132には、分級用流動化ガス132aが導入される。分級用流動化ガス132aの風量及び温度は、上記条件(1b)、(2b)が満たされるように設定される。
分級用流動化ガス132aは、目皿板142のノズル142aを通って流動床部202内の石炭X1に導入される。これにより、石炭X1は流動床X22とされる。流動床X22を通った分級用流動化ガス132aは、排ガス182aとしてフリーボード部212に導入される。排ガス182aは、フリーボード部212内を上昇し、排ガス排出口182から排出される。
流動床X22内では、擬似粒子がもみ洗いされることで複数の粒子に分解される。流動床X22内の石炭X1の一部は、分級用流動化ガス132aによって流動床X22からフリーボード部212内に吹き飛ばされる。フリーボード部212内の石炭X1のうち、分級点以下の石炭X1は排ガス182aと共に排ガス排出口182から排出され、分級点より粒度が大きい石炭X1は流動床X22に沈降する。これにより、石炭X1が分級される。
乾燥及び分級が行われた石炭X3は、石炭排出口170から外部に排出される。排ガス排出口182から排出された石炭X1(以下、「石炭X4」とも称する)は、バグフィルタによって回収された後、塊成炭製造装置400に導入される。なお、バグフィルタは排ガス排出口181にも設けてよい。また、隔壁111、135は複数設けてもよい。この場合、流動床本体120及びプレナム室130は3つ以上の領域に分割される。これらの領域のうち、例えば後端面120bを含む領域を分級室とし、他の領域を乾燥室とすればよい。各領域には排ガス排出口が設けられる。
<2.塊成炭製造装置の構成>
次に、図2に基づいて、塊成炭製造装置400の構成について説明する。塊成炭製造装置400は、ホッパ410と、スクリュー420と、ロールコンパクタ430とを備える。ホッパ410は、バグフィルタによって回収された石炭X4を貯留する。スクリュー420は、ホッパ410内の石炭X4を順次ロールコンパクタ430に投入する。ロールコンパクタ430は、石炭X4を圧縮することで、塊成炭X5を製造する。塊成炭X5は、石炭X4同士を圧着させたものなので、粘結性が向上している。この塊成炭X5は、乾燥後の石炭X3に混入されてもよい。以上の一連の乾燥、分級、微粉炭塊成化処理により、原料である石炭X1をより効率的に乾留できるとともに、コークスの強度を向上させることができる。
なお、石炭X4の粒度分布は、流動床装置100の分級点によって異なる。塊成炭X5の強度及び安定製造性の観点からは、分級点が0.5mm程度とされることが好ましい。分級点が0.5mmを大きく超える場合、塊成炭X5の強度が低下する。また、分級点が0.5mmを大きく下回る場合、石炭X4同士が圧着されずにロールコンパクタ430間を落下する。したがって、分級点が0.5mm程度とされることで、塊成炭X5の強度が向上し、かつ、塊成炭X5が安定して製造される。
<3.フリーボード部の形状>
次に、図3及び図4に基づいて、フリーボード部211の形状について詳細に説明する。フリーボード部211は、図3に示すように、第1のフリーボード部211aと、第2のフリーボード部211bと、第3のフリーボード部211cとを備える。
第1のフリーボード部211aは、流動床部201の上側に形成される。第1のフリーボード部211aは、流動床本体120の天井に近いほど幅が広くなるように設計されている。第1のフリーボード部211aの側壁と水平面とのなす角θは、朝顔角とも称され、その値は65±5°であることが好ましい。なお、流動床部201の幅W0は、流動床本体120の長さ方向に一定となっている。
第2のフリーボード部211bは、第1のフリーボード部211aの上側に形成される。第2のフリーボード部211bの幅Wは、流動床本体120の長さ方向に一定となっている。第3のフリーボード部211cは、第2のフリーボード部210bの上側に形成される。第3のフリーボード部211cは、例えば、流動床本体120の天井に近いほど幅が狭くなるように設計される。第3のフリーボード部211cが設けられる場合、フリーボード部211内で排ガス181aがより円滑に流動する。第3のフリーボード部211cはなくてもよい。この場合、第2のフリーボード部211bの上端面に水平の天井が形成され、この天井に排ガス排出口181が形成される。
フリーボード部211の高さは、流動床部201の底面(すなわち目皿板141の表面)から第3のフリーボード部211cの上端面(第3のフリーボード部211cが存在しない場合には第2のフリーボード部211bの上端面)までの距離として定義される。
そして、フリーボード部211の高さは、以下の式(1)で示されるTDH(m)の0.6倍以上となる。
式(1)中、W0は流動床部201の幅(m)であり、U0はフリーボード平均流速(排ガス181aの第2のフリーボード部211b内の平均流速)(m/s)である。ここで、フリーボード部211を上記のように設計したのは以下の理由による。
上述したように、乾燥室121では、なるべく石炭X1が排ガス排出口181から排出されないことが好ましい。そこで、本発明者は、フリーボード部211の形状について鋭意検討した。具体的には、図4に示すように、フリーボード部211内の各領域の発塵強度は、流動床部201の底面から各領域までの高さが大きいほど小さくなることが知られている(例えば、「Zenz, F. A. and N. A. Weil: AIChE J., 4, 472(1958)」、「Horio, H., T.Shibata and I.Muchi: ’Fluidization’, ed. by Kunii and Toei, p.307, Engineering Foundation(1984).」参照)。本発明者は、フリーボード部211内の各領域の発塵強度と、流動床部201の底面から各領域までの高さとの対応関係についてさらに検討した。この結果、本発明者は、図4に示すように、流動床部201の底面からの高さがTDH×0.6(m)以上となる領域では、発塵強度が一定かつ最小となることを見出した。したがって、フリーボード部211の高さをTDHの0.6倍以上とすることで、石炭X1の排ガス排出口181からの排出量を低減することができる。
なお、フリーボード部212の形状に特に制限はないが、フリーボード部211と同様の形状を有することが好ましい。この理由は以下の通りである。なお、式(1)のTDHの定義のうち、W0は流動床部202の幅(m)となり、U0はフリーボード平均流速(排ガス182aの第2のフリーボード部内の平均流速)(m/s)となる。
すなわち、分級点以下の石炭X1が流動床X22からフリーボード部212に吹き飛ばされるが、分級点より大きい石炭X1も流動床X22から吹き飛ばされる。ここで、フリーボード部212内の排ガス182aの平均流速の最小値(すなわち、第2のフリーボード部内の排ガス182aの平均流速)は、分級点の石炭X1の終端速度と同程度に設定されるので、分級点より大きい石炭X1は、流動床X22に沈降する。
しかし、フリーボード部212の高さが十分でないと、分級点より大きい石炭X1は、流動床X22に沈降する前に排ガス排出口182から排出される可能性がある。一方、流動床部202の底面からの高さがTDH×0.6(m)以上となる領域では、発塵強度が一定になる。したがって、流動床部202の底面からの高さがTDH×0.6(m)以上となる領域では、分級点以下の石炭X1が流動しており、分級点より大きい石炭X1はほとんど存在しないこととなる。以上の理由により、フリーボード部212の高さはTDHの0.6倍以上となることが好ましい。
<4.石炭の含水量の制御方法>
次に、石炭X1の含水量の制御方法について説明する。まず、図5に基づいて、流動床本体120内の石炭X1の含水量と、石炭X1の先端面120aからの距離(すなわち機長方向の位置)との対応関係について説明する。なお、この例では、ホッパ165内の石炭X1の含水量は10質量%であるものとする。図5に示すように、機長方向の位置がL1(m)となるまでは、石炭X1内の水分が加熱される。したがって、含水量はほぼ一定である。その後、石炭X1の含水量は、含水量が4質量%程度となるまで一定の減少率(単位距離当りの減少量)で減少する。水分がこのような挙動を示すのは、以下の理由による。
すなわち、石炭X1に含まれる水分のうち、石炭X1の表面に存在する水分がまず蒸発する(すなわち、乾燥用流動化ガス131aに移動する)。表面に水分が存在する間は、石炭X1の表面の水分が乾燥用流動化ガス131aに移動する速度が律速し、石炭X1の表面の水分は、一定の速度(一定の減少率)で減少(蒸発)する。水分の減少率は、石炭X1への投熱量が大きいほど大きくなる。すなわち、図5のグラフの傾きが負方向に大きくなる。含水量が一定の減少率で減少する含水量の範囲は、恒率乾燥域とも称される。恒率乾燥域は、乾燥の対象となる材料によって異なり、石炭の場合には4質量%以上となる。恒率乾燥域では、石炭擬似粒子は表面水の存在により形態が保持される。
その後も石炭X1の含水量は減少するが、減少率は小さくなる。また、厳密には、含水量が小さくなるほど減少率が小さくなる(水分が減少しにくくなる)。水分がこのような挙動を示すのは、以下の理由による。すなわち、石炭X1の含水量が4質量%未満となる場合、表面には水分がほとんど存在しなくなる。したがって、石炭X1が加熱されると、石炭X1の内部に存在する水分が表面に移動し、表面に到達した水分が蒸発する。このように、水分が蒸発するために石炭粒子内部の拡散が律速となる。このため、減少率が低下する。恒率乾燥域よりも含水量の減少率が低い含水量の範囲は、減率乾燥域とも称される。この減率乾燥域では、石炭擬似粒子の結合を保持している水が失われるので、石炭擬似粒子はそれを構成する石炭粒子に分解していく。したがって、本実施形態では、乾燥室121内の石炭X1が恒率乾燥域に属し、分級室122内の石炭X1が減率乾燥域に属するように、隔壁111、135を設定する。図5の例では、機長方向の位置が7mとなる際に石炭X1が恒率乾燥域から減率乾燥域に移行するので、この位置に隔壁111、135を設置すればよい。
恒率乾燥域と減率乾燥域との境界は、排ガス181a、182aの温度または流動床X21、X22の温度を監視することで検出可能である。図6は、図5の例における排ガス温度と機長方向の位置との対応関係を示すグラフである。図7は、図5の例における流動床温度と機長方向の位置との対応関係を示すグラフである。機長方向の位置が0〜L1(m)となる範囲では、排ガス温度及び流動床温度は先端面120aからの距離が長くなるほど上昇する。この領域では、流動床本体120に投入した熱量は、流動床(すなわち石炭X1及び石炭X1中の水分)の温度上昇に使用される。機長方向の位置がL1〜7(m)となる範囲では、排ガス温度及び流動床温度は機長方向の位置によらずほぼ一定である。流動床本体120に投入した熱量が石炭X1の水分の気化熱として消費されるためである。したがって、この範囲では、石炭X1の含水量は一定の減少率で減少する。機長方向の位置が7(m)以上の範囲では、排ガス温度及び流動床温度は後端面120bに近づくほど上昇する。機長方向の位置が7(m)以上の範囲では、石炭X1の水分が蒸発しにくくなるので、流動床本体120に投入した熱量が気化熱として使用されにくくなるからである。
このように、排ガス温度及び流動床温度が一定から上昇に転じる際に、石炭X1が恒率乾燥域から減率乾燥域に移行する。したがって、フリーボード部211、212または流動床部201、202の機長方向に複数の温度計を設置することで、排ガス温度及び流動床温度が一定から上昇に転じる機長方向の位置を検出することができる。そして、排ガス温度及び流動床温度が一定から上昇に転じる機長方向の位置に隔壁111を設ければよい。
ただし、流動床本体120に投入する石炭X1の含水量が変動すると、恒率乾燥域と減率乾燥域との境界も変動する。この場合、隔壁の位置を調整しても良いが、乾燥室121への投熱量を調整することで、恒率乾燥域と減率乾燥域との境界を隔壁111の位置に合わせるようにしてもよい。乾燥室121への投熱量を調整するためには、プレナム室131に導入する乾燥用流動化ガス131aの風量及び温度のうち、少なくとも一方を調整すればよい。なお、乾燥用流動化ガス131aと分級用流動化ガス132aとを一括で制御する場合において、乾燥用流動化ガス131aの風量を落とすと、分級室122で流動床X22が形成されなくなる可能性があるので、温度で投熱量を調整することが好ましい。
このように、本実施形態では、恒率乾燥域と減率乾燥域との境界を検出し、この境界に隔壁111を設置することで、石炭X1の境界水分量、すなわち乾燥石炭排出口112を通過する石炭X1の含水量を4質量%程度とすることができる。また、隔壁の位置を変えるか、または乾燥室121への投熱量を調整することで、石炭X1の境界水分量を3〜5質量%に調整することができる。また、流動床本体120に投入する石炭X1の含水量が変動した場合には、乾燥室121への投熱量を調整することで、石炭X1の境界水分量を3〜5質量%に調整することができる。
なお、排ガス排出口181から排出される排ガス181aに含まれる水分と、乾燥用流動化ガス131aに含まれる水分との差分は、乾燥用流動化ガス131aが石炭X1から奪った水分に相当する。したがって、排ガス181aに含まれる水分に基づいて乾燥室121への投熱量を調整することによっても、石炭X1の境界水分量を3〜5質量%に調整することができる。
<5.境界水分量を3〜5質量%とした理由>
本実施形態では、石炭X1の境界水分量を3〜5質量%とした。以下、この理由について説明する。
図8に示す点P1は、発塵強度と石炭X1の含水量(石炭水分量)との対応関係を示す。また、グラフL2は、点P1を連結する近似曲線である。図8によれば、石炭X1の含水量が5質量%以下となる領域では、発塵強度が急激に上昇する。すなわち、石炭X1の擬似粒子が崩壊しやすくなる。すなわち、流動床X22によるもみ洗い効果によって擬似粒子が容易に崩壊する。
図9に含水量5質量%の擬似粒子、図10に含水量1.5質量%の擬似粒子を示す。これらの図からも明らかな通り、含水量が5質量%以下となる場合、擬似粒子の表面は大きく荒れる。すなわち、擬似粒子を構成する粒子同士が離れやすくなる。したがって、石炭X1の境界水分量を5質量%以下とすることで、擬似粒子が流動床X22によるもみ洗い効果によって容易に崩壊する。したがって、分級点よりも大きい擬似粒子に分級点以下の石炭X1が含まれていたとしても、擬似粒子から分級点以下の石炭X1を分離し、流動床X22から吹き飛ばすことができる。逆に、石炭X1の境界水分量が5質量%を超える場合、流動床X22内の石炭X1の含水量が多すぎて、もみ洗い効果が不十分となる。この結果、分級精度が低下する。
しかし、石炭X1の境界水分量は5質量%以下ならどのような値でもよいわけではない。すなわち、石炭X1の境界水分量が3質量%未満となる場合には、乾燥室121への投熱量がさらに上昇することになるが、この場合、上述した課題と同様の問題が生じうる。
具体的には、乾燥不十分な石炭X1が排ガス排出口181から排出される場合がある。この場合、乾燥不十分な石炭X1が排ガス排出口181やバグフィルタに付着し、これらを閉塞させる可能性がある。また、乾燥不十分な石炭X1は流動性が悪く、塊成炭製造装置400のロールコンパクタ430に噛み込みにくい。この結果、塊成炭X5の強度が低下する可能性がある。また、流動床X21内の石炭X1の含水量が3質量%未満まで低下するので、石炭X1の擬似粒子が崩壊しやすい。したがって、乾燥した石炭X1がフリーボード部211内に飛ばされる可能性もある。しかし、フリーボード部211内の湿度は極めて高くなっている。したがって、排ガス排出口181近傍では結露が発生している可能性が高い。このため、仮に乾燥した石炭X1がフリーボード部211内に飛ばされたとしても、石炭X1は排ガス排出口181近傍の結露によって湿ってしまう。したがって、石炭X1は、フリーボード部211を飛び出した際に乾燥していても、排ガス排出口181から排出される際には含水量が再度大きくなってしまう。
また、石炭X3の温度が過剰に上昇する。例えば、石炭X3の温度が空気中の自然発火管理上限温度(例えば95℃)程度まで上昇する可能性がある。また、分級点よりも大きい石炭X1が排ガス排出口181から排出される可能性がある。この場合、塊成炭製造装置400に粒度の大きな石炭が投入されるので、塊成炭X5の強度が低下する可能性がある。そこで、本実施形態では、石炭X1の境界水分量を3〜5質量%とした。なお、石炭X1の物性(例えば平均粒度等)によって、境界水分量の好ましい値が3〜5質量%の範囲内で変動する。したがって、石炭X1の物性に応じて、境界水分量を適宜調整すればよい。境界水分量の調整方法は上述した通りである。
<6.流動床装置を使用した石炭の乾燥分級方法>
流動床装置100を使用した石炭X1の乾燥分級方法を以下の通りである。
まず、石炭X1をホッパ165から乾燥室121に投入する。ついで、流動床部201内の石炭X1を乾燥用流動化ガス131aによって流動床X21とする。これにより、石炭X1が乾燥される。ここで、石炭X1の境界水分量は3〜5質量%となる。ついで、分級室122では、石炭X1を分級用流動化ガス132aによって流動床X22とすることで、分級点以下の石炭X1をフリーボード部212内に吹き飛ばす。分級点以下の石炭X1は、フリーボード部212内を上昇し、排ガス排出口182から外部に排出される。これにより、石炭X1が分級される。
次に、本実施形態の実施例を説明する。本実施例では、石炭X1の境界水分量を様々な値に調整し、各境界水分量に対する分級精度を測定した。
(実験例1)
実験例1では、図11に示すように、流動床本体120及びプレナム室130を隔壁によってA〜D槽に区分した。A〜D槽のうち、A〜C槽は乾燥室、D槽は分級室とした。A〜D槽のフリーボード部の横断面はすべて同一形状とし、第2のフリーボード部の幅は3300(mm)、朝顔角は68(°)とした。また、A〜D槽のフリーボード部の高さは5.9(m)、TDHは7.2(m)とした。したがって、A〜D槽のフリーボード部の高さはTDHの0.8倍となる。各槽の長さ(流動床本体120の機長方向の距離)は図11に示すとおりとした。また、各槽の排出口にはバグフィルタを設けた。
また、石炭X1の処理量は200(t/h)とし、石炭X1の初期含水量(ホッパ165内の石炭X1の含水量)を11.6(質量%)とした。A槽〜D槽の風量はそれぞれ49.8、53.8、46.0、55.0(単位はいずれもkNm3/h)とし、乾燥室の投熱比(流動床本体全体(ここではA〜D槽)の投熱量に対する乾燥室全体(ここではA〜C槽)の投熱量)は0.73とした。また、分級点を0.69(mm)とした。
図12に示すL3は、実験例1における石炭X1の含水量と機長方向の位置との対応関係を示す。なお、石炭X1の含水量は、流動床部の側壁から石炭X1をサンプリングすることで測定した。グラフL3が示す通り、実験例1では、石炭X1の境界水分量は4.9(質量%)であった。また、石炭X3(石炭排出口170から排出された石炭)の総質量に対する微粉炭(粒度0.3mm以下の石炭X1)の割合は4.7(質量%)であった。ここで、石炭X3に含まれる微粉炭の割合は5.0質量%以下であることが望ましい。したがって、実験例1では分級精度が良好であった。なお、石炭X3の含水量は2.4(質量%)、温度は93(℃)であった。塊成炭の含水量は1.4(質量%)、温度は85(℃)であった。なお、石炭X3の含水量及び温度は、石炭排出口170から排出された直後の値である。また、塊成炭の含水量及び温度は、塊成前の微粉炭の値である。以下の実験例でも同様である。
(実験例2)
実験例2では、実験例1と同様の構造の流動床装置を使用した。
また、石炭X1の処理量は262(t/h)とし、石炭X1の初期含水量を11.5(質量%)とした。A槽〜C槽の風量をいずれも123.3とし、D層の風量を67.6とした(単位はいずれもkNm3/h)。また、乾燥室の投熱比は0.65とした。また、分級点を0.78(mm)とした。
図12に示すL4は、実験例2における石炭X1の含水量と機長との対応関係を示す。グラフL4が示す通り、実験例2では、石炭X1の境界水分量は5.9(質量%)であった。また、石炭X3の総質量に対する微粉炭(粒度0.3mm以下の石炭X1)の割合は9.4(質量%)であった。したがって、実験例2では分級精度が良好ではなかった。なお、石炭X3の含水量は2.8(質量%)、温度は91(℃)であった。塊成炭の含水量は1.8(質量%)、温度は87(℃)であった。
(実験例3)
実験例3では、図13に示すように、流動床本体120及びプレナム室130を隔壁によってA〜D槽に区分した。A〜D槽のうち、A〜C槽は乾燥室、D槽は分級室とした。A〜D槽のフリーボード部の横断面はすべて同一形状とし、第2のフリーボード部の幅は3080(mm)、朝顔角は61(°)とした。また、また、A〜D槽のフリーボード部の高さは6.3(m)、TDHは6.6(m)とした。したがって、A〜D槽のフリーボード部の高さはTDHの0.96倍となる。各槽の長さ(流動床本体120の機長方向の距離)は図13に示すとおりとした。また、各槽の排出口にはバグフィルタを設けた。
また、石炭X1の処理量は190(t/h)とし、石炭X1の初期含水量を11.0(質量%)とした。A槽〜D槽の風量はそれぞれ112.6、59.5、31.4、59.4(単位はいずれもkNm3/h)とし、乾燥室の投熱比は0.77とした。また、分級点を0.5(mm)とした。
図14に示すL5は、実験例3における石炭X1の含水量と機長方向の位置との対応関係を示す。グラフL5が示す通り、実験例3では、石炭X1の境界水分量は4.7(質量%)であった。また、石炭X3の総質量に対する微粉炭の割合は5.0(質量%)であった。したがって、実験例3では分級精度が良好であった。なお、石炭X3の含水量は2.8(質量%)、温度は82°、塊成炭の含水量は1.5(質量%)、温度は87(℃)であった。
(実験例4)
実験例4では、実験例3と同様の流動床装置を使用した。また、石炭X1の処理量は195(t/h)とし、石炭X1の初期含水量を10.1(質量%)とした。A槽〜D槽の風量はそれぞれ98.8、92.3、43.1、70.1(単位はいずれもkNm3/h)とし、乾燥室の投熱比は0.77とした。また、分級点を0.5(mm)とした。
図14に示すL6は、実験例4における石炭X1の含水量と機長との対応関係を示す。グラフL6が示す通り、実験例4では、石炭X1の境界水分量は4.5(質量%)であった。また、石炭X3の総質量に対する微粉炭の割合は4.0(質量%)であった。したがって、実験例4では分級精度が良好であった。なお、石炭X3の含水量は2.6(質量%)、温度は88(℃)、塊成炭の含水量は1.3(質量%)、温度は87(℃)であった。
(実験例5)
実験例5では、実験例3と同様の流動床装置を使用した。また、石炭X1の処理量は182(t/h)とし、石炭X1の初期含水量を12.1(質量%)とした。A槽〜D槽の風量はそれぞれ102.4、66.1、33.8、74.6(単位はいずれもkNm3/h)とし、乾燥室の投熱比は0.73とした。また、分級点を0.54(mm)とした。
図14に示すL7は、実験例5における石炭X1の含水量と機長方向の位置との対応関係を示す。グラフL7が示す通り、実験例5では、石炭X1の境界水分量は5.5(質量%)であった。また、石炭X3の総質量に対する微粉炭の割合は8.3(質量%)であった。したがって、実験例5では分級精度が良好でなかった。なお、石炭X3の含水量は3.0(質量%)、温度は85(℃)、塊成炭の含水量は1.5(質量%)、温度は87(℃)であった。
(実験例6)
実験例6では、図15に示すように、流動床本体120及びプレナム室130を隔壁によってA〜C槽に区分した。また、B槽の長さ方向の中央部分に更に隔壁を設けた。A〜C槽のうち、A槽とB槽の前半分とは乾燥室、B槽の後ろ半分とC槽とは分級室とした。A〜C槽のフリーボード部の横断面はすべて同一形状とし、第2のフリーボード部の幅は2200(mm)、朝顔角は66(°)とした。また、また、A〜C槽のフリーボード部の高さは7.8(m)、TDHは5.6(m)とした。したがって、A〜C槽のフリーボード部の高さはTDHの1.4倍となる。各槽の長さ(流動床本体120の機長方向の距離)は図15に示すとおりとした。また、各槽の排出口にはバグフィルタを設けた。
また、石炭X1の処理量は210(t/h)とし、石炭X1の初期含水量を8.9(質量%)とした。A槽及びB槽の前半分の風量は90とし、B槽の後ろ半分とC槽の風量は88(単位はいずれもkNm3/h)とした。乾燥室の投熱比は0.51とした。また、分級点を0.59(mm)とした。
図16に示すL8は、実験例6における石炭X1の含水量と機長方向の位置との対応関係を示す。グラフL8が示す通り、実験例6では、石炭X1の境界水分量は5.7(質量%)であった。また、石炭X3の総質量に対する微粉炭の割合は5.2(質量%)であった。したがって、実験例6では分級精度が良好でなかった。なお、石炭X3の含水量は2.7(質量%)、温度は91(℃)、塊成炭の含水量は2.8(質量%)、温度は87(℃)であった。
(実験例7)
実験例7では、実験例6と同様の流動床装置を使用した。また、石炭X1の処理量は220(t/h)とし、石炭X1の初期含水量を11.7(質量%)とした。A槽及びB槽の前半分の風量は90とし、B槽の後ろ半分とC槽の風量は88(単位はいずれもkNm3/h)とした。乾燥室の投熱比は0.51とした。また、分級点を0.49(mm)とした。
図16に示すL9は、実験例7における石炭X1の含水量と機長方向の位置との対応関係を示す。グラフL9が示す通り、実験例7では、石炭X1の境界水分量は7.1(質量%)であった。また、石炭X3の総質量に対する微粉炭の割合は6.4(質量%)であった。したがって、実験例7では分級精度が良好でなかった。なお、石炭X3の含水量は2.6(質量%)、温度は92.5°であった。塊成炭の含水量は2.0(質量%)、温度は84(℃)であった。
実験例1〜7の結果を図17にまとめて示す。図17に示すように、石炭X1の境界水分量が3〜5質量%となる場合、分級精度が良好となるが、境界水分量が5質量%を超える場合、分級精度が良好でないことがわかった。また、石炭X1の境界水分量が3〜5質量%となる場合、石炭X3及び塊成炭の温度及び含水量は、成品として問題ないレベルであった。なお、本発明者は、境界水分量が3質量%未満となる実験も行ったが、バグフィルタに石炭が大量に付着し、バグフィルタが詰まってしまったため、操業が行えなかった。
以上により、本実施形態では、石炭X1の境界水分量を3〜5質量%としたため、分級精度が向上する。また、フリーボード部211内の排ガス181aの平均流速をフリーボード部212内の排ガス182aの平均流速よりも小さくするので、乾燥室121の排ガス排出口181から乾燥が不十分な石炭X1が排出されるのを抑制することができる。また、フリーボード部211の高さはTDHの0.6倍以上なので、この点でも分級精度が向上する。
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明はかかる例に限定されない。本発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、これらについても、当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。