JP2015081253A - 内毒素による臓器不全予防剤 - Google Patents

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Abstract

【課題】内毒素による敗血症及びそれに伴う臓器不全を予防することができる新規な薬剤を提供することを目的とする。【解決手段】本発明として、例えば、TLR4阻害剤(例、TAK242)を含有することを特徴とする、内毒素による敗血症やそれに伴う臓器不全(肝障害など)の予防剤を挙げることができる。また、TLR4阻害剤(例、TAK242)を含有し、バクテリアルトランスロケーションを誘発するおそれのある侵襲外科手術前に予め投与するものであることを特徴とする、内毒素による敗血症やそれに伴う臓器不全(肝障害など)の予防剤を挙げることができる。【選択図】図7

Description

本発明は、内毒素(エンドトキシン)による敗血症ないし臓器不全のための予防剤に関するものである。詳しくは、本発明は、Toll−Like Receptor(TLR)4阻害剤を含有することを特徴とする、内毒素による敗血症ないし臓器不全のための予防剤に関するものである。
胆管閉塞状態では、バクテリアルトランスロケーション(腸管から血中への菌の移行)が容易に発生する(非特許文献1参照)。バクテリアルトランスロケーションにより腸管から血中へ移行した菌は、門脈血流を介してまず肝臓に到達する。肝臓にはクッパー細胞が常在性マクロファージとして存在しており、門脈血流中のエンドトキシンは、このクッパー細胞によって処理されると考えられる。この時クッパー細胞は、大量の炎症性サイトカインを放出し、これが重篤な肝障害へとつながる(非特許文献2参照)。
また、大量肝切除術などの高度侵襲外科手術では、術中にバクテリアルトランスロケーションが誘発される(非特許文献3、4参照)。そのため胆管閉塞を伴う胆管癌などの症例で肝切除術を行うと、肝臓に流れ込んだエンドトキシンを処理するためクッパー細胞が肝臓に多く集積し、それが大量の炎症性サイトカインを放出する結果、時として術後に重篤な肝障害を引き起こす。
上記のような肝障害を防ぐため、経験的にステロイド剤の投与が行われているが、それ以外に有効な予防法が特にないのが現状である。
エンドトキシンの代表的な受容体はTLR4である。TLR4は、エンドトキシンの外膜の成分であるリポ多糖(Lipopolysaccharide:以下「LPS」という。)等をリガンドとして認識する受容体である。
LPSは、肝臓で作られるLPS結合タンパク質(LBP)と結合する。この結合体は、細胞膜上のCD14に運ばれ、CD14からTLR4とMD2との複合体に受け渡され細胞内にシグナルが伝わる。かかるシグナルを受けて活性化したマクロファージなどは、TNF−α等のサイトカインを分泌する。
エンドトキシン(LPS)により上記シグナルが過剰になると、大量の炎症性サイトカインが放出され、それが重篤な肝障害等を引き起こし、死に至らしめる。
従って、TLR4を有効に阻害することができれば、エンドトキシンによる大量の炎症性サイトカインの放出を抑制でき、重篤な肝障害等を軽減でき、ひいては生存率の向上につながる可能性がある。
TLR4を競合的に阻害する薬剤の一つとして、レサトルビド(Resatorvid、(6R)−6−[[(2−クロロ−4−フルオロフェニル)アミノ]スルフォニル]−1−シクロヘキセン−1−カルボン酸エチルエステル;以下「TAK242」という。)が知られている(非特許文献5参照)。このTAK242がTLR4を阻害することから、エンドトキシンによる重症敗血症の治療に有効か否かが検証されている。その結果、マウスで菌性敗血症を盲腸結紮穿孔により誘導後、TAK242を抗生剤と併用することにより生存率が改善され、重症敗血症におけるTAK242の有効性が示唆された(非特許文献6参照)。しかしながら、重症敗血症患者を対象に、このTAK242を投与した二重盲検試験では、用量依存的に生存率の改善はみられたものの、プラセボ投与群と統計学的な有意差はなく、その有効性が否定された(非特許文献7参照)。
なお、このTAK242は、武田薬品工業株式会社によって創製された化合物である(特許文献1参照)。武田薬品工業株式会社は、該化合物に対し、重症敗血症治療薬への承認申請に向けて日米欧の三極で臨床第3相試験まで行ったが、臨床試験を継続するための当社評価基準に合致しなかったためなどの理由から、該化合物の開発を中止された。
国際公開第99/46242号
Ding JW, J Surg Res, 1994;75(2):238−45 Eru J Gastroenterol Hepatol 2012;24(1):25−32 Mizuno T, Ann Surg, 2010;252(6):1013−9 Nishigaki E, Ann Surg 2013 in press Matsunaga N, Mol Pharmacol, 2011;79(1):34−41 Sha T, Shock, 2011;35(2):205−9 Rice TW, Crit Care Med, 2010;38(8):1685−94
本発明は、内毒素による敗血症及びそれに伴う臓器不全を予防することができる新規な薬剤を提供することを目的とする。
本発明者らは、鋭意検討を重ねた結果、上記課題を解決しうる新規な薬剤を見出し、本発明を完成した。
本発明として、例えば、次の(1)〜(4)を挙げることができる。
(1)TLR4阻害剤を含有することを特徴とする、内毒素による臓器不全の予防剤。
(2)TLR4阻害剤を含有することを特徴とする、内毒素による敗血症の予防剤。
(3)TLR4阻害剤を含有し、バクテリアルトランスロケーションを誘発するおそれのある侵襲外科手術前に予め投与するものであることを特徴とする、内毒素による臓器不全の予防剤。
(4)TLR4拮抗阻害剤を含有し、バクテリアルトランスロケーションを誘発するおそれのある侵襲外科手術前に予め投与するものであることを特徴とする、内毒素による敗血症の予防剤。
本発明の特徴は、敗血症や臓器不全を既に発症している患者にTLR4阻害剤を投与するものではなく、内毒素による敗血症ないし臓器不全に陥る前にTLR4阻害剤を予め投与するものである点にある。また、バクテリアルトランスロケーションを誘発するおそれのあるような侵襲外科手術に先立って予めTLR4阻害剤を投与するものである点にある。
TLR4阻害剤は、TLR4に結合し、TLR4からのシグナル伝達を阻害する薬剤である。本発明に係るTLR4阻害剤は、そのような作用を有する薬剤であれば特に制限されない。具体的には、例えば、前記TAK242や特許文献1に記載された化合物、エーザイ株式会社が重症敗血症治療剤として開発中のエリトラン(Eritoran、開発番号E5564)、かかるエリトランを開示する特開2011−121970号公報に記載された化合物、LPS−RS(InvivoGen社製品)、CRX−526、E5531、E5564(Pharm Res.2008;25(8):1751−61参照)、IAXO−101(AdipoGen社製品)を挙げることができる。
後述の試験例では、TAK242による結果を一例として掲げている。しかしながら、その他のTLR4阻害剤であっても、投与量や投与時期、投与方法等の点でTAK242とは異なり得るものの、同様の効果が期待される。後述の試験例から明らかな通り、胆管結紮により肝臓内のクッパー細胞が増え、そこに存在するTLR4の発現も肝臓全体で亢進する。そして、さらに微量のエンドトキシンの注入によりラット肝は著しい肝障害を惹起する。これは、肝臓全体に発現したTLR4にエンドトキシン(LPS)が結合し、そのシグナル伝達により過剰な炎症性サイトカインが分泌されたからである。このシグナル伝達が行われる前にTLR4阻害剤(TAK242)を予め投与すると、サイトカインの分泌が抑制され、肝障害も軽減された。従って、基本的にTLR4とLPSとの結合を阻止することができるTLR4阻害剤であれば、一般に同様の効果があるものと考えられる。
エンドトキシンが血液中に入ると内毒素血症になり、そこから敗血症やそれに伴う臓器不全に陥っていくが、その内毒素血症になる原因は本発明では特に制限されず、例えば、胆管閉塞状態で発生する場合を挙げることができる。胆管閉塞状態は、例えば、胆管癌や膵臓頭部癌、胆道内結石症に伴って起こりうる。
「臓器不全」としては、例えば、肝障害、肺障害、心臓障害、腎障害を挙げることができる。なお、バクテリアルトランスロケーション等による内毒素血症により肝不全ないし肝障害がまず惹起され、続いて全身の様々な臓器が機能不全(多臓器不全)に陥っていくものと考えられる。従って、これら2つ以上の臓器が機能不全である多臓器不全や、また重篤な臓器不全の場合も本発明に係る臓器不全に含まれる。
「バクテリアルトランスロケーションを誘発するおそれのある侵襲外科手術」としては、例えば、肝切除術ないし胆管閉塞を伴う胆管癌、肝細胞癌、転移性肝癌、その他の肝腫瘍などの症例での(大量)肝切除術、膵頭十二指腸切除術、食道切除術を挙げることができる。
本発明の予防剤によれば、術後の敗血症及びそれに伴う重要な臓器の機能不全(肝障害等)を軽減することができる。本発明の予防剤を、例えば、胆管閉塞を伴う胆肝癌に対して肝切除術を行う前に有効量を投与しておくことによって、術後の敗血症及びそれに伴う重要な臓器の機能不全(肝障害等)を軽減することができる。
各群の操作手順、及びLPS等の投与量、投与時期などを表した模式図である。 aは、TLR4 mRNAの発現量を表す。bは、TLR4タンパク質の発現量を表す。各図の縦軸は任意単位(Arbitrary unit)を示す。 クッパー細胞の数を表す。 上図は血中の、下図は尿中のエンドトキシンの濃度推移をそれぞれ表す。各図の縦軸は濃度(pg/mL)を、各図の横軸は時間(時間)をそれぞれ示す。 上図は肝組織中の、下図は肺組織中のエンドトキシンの濃度推移をそれぞれ表す。各図の縦軸は濃度(pg/mL)を、各図の横軸は時間(時間)をそれぞれ示す。 肝組織全体に対する壊死組織の割合を表す。縦軸は壊死組織の割合(%)を示す。 血中における肝酵素(AST、ALT)量の推移を表す。各図の縦軸は酵素濃度(IU/L)を、各図の横軸は時間(時間)をそれぞれ示す。 血漿中サイトカイン(TNF−α、IL−6)量の推移を表す。各図の縦軸は酵素濃度(pg/mL)を、各図の横軸は時間(時間)をそれぞれ示す。
本発明の予防剤は、TAK242などのTLR4阻害剤を、そのまま又は医薬上許容される無毒性かつ不活性な担体中に、0.01〜99.5重量%の範囲内で、好ましくは0.5〜90重量%の範囲内で配合することによって製造することができる。
上記担体として、固形、半固形又は液状の希釈剤、充填剤、その他の処方用の助剤を挙げることができる。これらを一種又は二種以上用いることができる。
本発明の予防剤は、固形又は液状の用量単位で、末剤、カプセル剤、錠剤、糖衣剤、顆粒剤、散剤、懸濁剤、液剤、シロップ剤、エリキシル剤、トローチ剤等の経口投与製剤、注射剤、点滴製剤、坐剤等の非経口投与製剤のいずれの形態をもとることができる。徐放性製剤であってもよい。それらの中で、特に注射剤が好ましい。注射剤は、用時調製の注射用キットないし点滴用キットであってもよい。
末剤は、TLR4阻害剤を適当な細かさにすることにより製造することができる。
散剤は、TLR4阻害剤を適当な細かさにし、次いで同様に細かくした医薬用担体、例えば、澱粉、マンニトールのような可食性炭水化物と混合することにより製造することができる。任意に風味剤、保存剤、分散剤、着色剤、香料等を添加することができる。
カプセル剤は、まず上述のようにして粉末状となった末剤や散剤あるいは錠剤の項で述べるように顆粒化したものを、例えば、ゼラチンカプセルのようなカプセル外皮の中へ充填することにより製造することができる。滑沢剤や流動化剤、例えば、コロイド状のシリカ、タルク、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、固形のポリエチレングリコールを粉末状のものに混合し、その後充填操作を行うことにより製造することもできる。崩壊剤や可溶化剤、例えば、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースカルシウム、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、クロスカルメロースナトリウム、カルボキシメチルスターチナトリウム、炭酸カルシウム、炭酸ナトリウムを添加すれば、カプセル剤が摂取されたときの医薬の有効性を改善することができる。また、TLR4阻害剤の微粉末を植物油、ポリエチレングリコール、グリセリン、界面活性剤中に懸濁分散し、これをゼラチンシートで包んで軟カプセル剤とすることもできる。
錠剤は、賦形剤を加えて粉末混合物を作り、顆粒化もしくはスラグ化し、次いで崩壊剤又は滑沢剤を加えた後、打錠することにより製造することができる。
粉末混合物は、適当に粉末化された物質を上述の希釈剤やベースと混合することにより製造することができる。必要に応じて、結合剤(例えば、カルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ゼラチン、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール)、溶解遅延化剤(例えば、パラフィン)、再吸収剤(例えば、四級塩)、吸着剤(例えばベントナイト、カオリン)等を添加することができる。
粉末混合物は、まず結合剤、例えば、シロップ、澱粉糊、アラビアゴム、セルロース溶液又は高分子物質溶液で湿らせ、攪拌混合し、これを乾燥、粉砕して顆粒とすることができる。このように粉末を顆粒化する代わりに、まず打錠機にかけた後、得られる不完全な形態のスラグを破砕して顆粒にすることも可能である。このようにして作られる顆粒に、滑沢剤としてステアリン酸、ステアリン酸塩、タルク、ミネラルオイル等を添加することにより、互いに付着することを防ぐことができる。
また、錠剤は、上述のように顆粒化やスラグ化の工程を経ることなく、TLR4阻害剤を流動性の不活性担体と混合した後に直接打錠することによっても製造することができる。
こうして製造された錠剤にフィルムコーティングや糖衣を施すことができる。シェラックの密閉被膜からなる透明又は半透明の保護被覆、糖や高分子材料の被覆及びワックスよりなる磨上被覆をも用いることができる。
他の経口投与製剤、例えば、液剤、シロップ剤、トローチ剤、エリキシル剤もまたその一定量がTLR4阻害剤の一定量を含有するように用量単位形態にすることができる。
シロップ剤は、TLR4阻害剤を適当な香味水溶液に溶解して製造することができる。エリキシル剤は、非毒性のアルコール性担体を用いることにより製造することができる。
懸濁剤は、TLR4阻害剤等を非毒性担体中に分散させることにより製造することができる。必要に応じて、可溶化剤や乳化剤(例えば、エトキシ化されたイソステアリルアルコール類、ポリオキシエチレンソルビトールエステル類)、保存剤、風味付与剤(例えば、ペパーミント油、サッカリン)等を添加することができる。
必要であれば、経口投与のための用量単位処方をマイクロカプセル化することができる。当該処方はまた、被覆をしたり、高分子・ワックス等中に埋め込んだりすることにより作用時間の延長や持続放出をもたらすこともできる。
非経口投与製剤は、皮下・筋肉又は静脈内注射用とした液状用量単位形態、例えば、溶液や懸濁液の形態をとることができる。当該非経口投与製剤は、TLR4阻害剤の一定量を、注射の目的に適合する非毒性の液状担体、例えば、水性や油性の媒体に懸濁し又は溶解し、次いで当該懸濁液又は溶液を滅菌することにより製造することができる。注射液を等張にするために非毒性の塩や塩溶液を添加することができる。また、安定剤、保存剤、乳化剤等を添加することもできる。同様に点滴製剤とすることもできる。
坐剤は、TLR4阻害剤を低融点の水に可溶又は不溶の固体、例えば、ポリエチレングリコール、カカオ脂、半合成の油脂[例えば、ウイテプゾール(登録商標)]、高級エステル類(例えば、パルミチン酸ミリスチルエステル)又はそれらの混合物に溶解又は懸濁させて製造することができる。
本発明の予防剤の投与量は、体重、年齢等の患者の状態、剤形、投与方法、投与経路、症状の程度等によって異なるが、一般的には成人(体重約60kg)に対して、TAK242などのTLR4阻害剤の用量として、1回当たり約0.1mg/kg〜約100mg/kgの範囲内が適当であり、約0.2mg/kg〜約10mg/kgの範囲内が好ましく、約0.4mg/kg〜約5mg/kgの範囲内がより好ましい。場合によっては、これ以下でも足りるし、また逆にこれ以上の用量を必要とするときもある。
本発明の予防剤は、内毒素による敗血症やそれに伴う臓器不全が懸念される前に有効量を投与することができる。投与方法としては、例えば、経口投与、静脈内投与、門脈内投与、皮下投与、点滴投与、局所投与(例、経粘膜投与、経鼻投与、吸入投与、経皮投与)を挙げることができる。投与回数は、TLR4阻害剤の種類や用量、剤形、患者の状態、侵襲手術の種類等によって異なるが、例えば、1日1回〜数回又は1日〜数日間の間隔で投与することができる。また、バクテリアルトランスロケーションを誘発するおそれのある侵襲外科手術の前であれば、1回ないし数回に分けて、注射や点滴等により、当該侵襲手術の約24時間前〜直前に投与することができる。
[試験例1]
(1)操作手順
図1に示す操作手順に従って実験を行った。
雄性ウィスターラット(250〜300g、チャールズ・リバー・ラボラトリーズ社製)の腹部正中を麻酔下で切開し、胆管2箇所を絹糸で結紮した。この胆管結紮(BDL)した群をBDL群とした。一方、切開や結紮をしない群を疑似群とした。また、BDLラットの中、BDL7日後に腹部を開腹し、シリコンカテーテルで胆管をドレナージした群をドレナージ群とした。
BDL群と疑似群については、結紮7日後にLPS(1μg/mLの大腸菌O111:B4)0.5mLを回盲静脈からゆっくりと注入した。ドレナージ群については、ドレナージ処置の24時間後に同様にLPSを注入した。
BDL群の数ラットについて、LPS注入の1時間前にTAK242(1mg/kg)を静脈投与し、これをTAK群とした。また、別にクッパー細胞の機能を阻害する三塩化ガドリニウム(GdCl3、1mg/kg)をLPS注入の24時間に静脈投与し、これをGdCl3群とした。
図2以降において、*は、疑似群に対するP<0.05(t検定)、◆は、BDL群に対するP<0.05(t検定)を表す。全ての結果は、平均値+−標準誤差(SE)として表している。
(2)肝臓におけるTLR4量
疑似群、BDL群、及びドレナージ群の各肝臓におけるTLR4量を、常法による定量的リアルタイムRT−PCR法に基づき、TLR4 mRNAの発現量として求めた。測定は、各群(n=6)について2回行った。その結果を図2aに示す。
図2aが示す通り、肝臓におけるTLR4 mRNAの発現量は、BDL群が疑似群と比較して有意に高かった。また、ドレナージ群が示すように、この増加したTLR4遺伝子発現は、胆管ドレナージの24時間後には有意に減退した。
また、各群の肝臓におけるTLR4タンパク質の濃度を常法のウェスタンブロット法に基づき測定した(各群ともn=6)。
肝臓検体をLaemmliサンプルバッファーで均質化し、それをドデシルスルフェート−ポリアクリルアミドゲルで電気泳動し、ポリビニリデンジフルオライド膜に転写した。そして、ウェスタンブロッティングECL化学発光検出システム(GEヘルスケアライフサイエンス社製)を用いて、抗TLR4抗体を検出し、X線写真(富士フィルム社製)に感光した。電気泳動写真から各群のTLR4タンパク質発現量を解析した。その結果を図2bに示す。各群におけるTLR4の強度は、相当するβ−アクチン(内部コントロール)との割合である。
図2bが示す通り、3群におけるTLR4タンパク質の濃度は、TLR4 mRNAの発現量と同様の傾向を示した。
これらの結果から、BDLにより、肝臓でTLR4が多く発現することが明らかである。
(3)肝臓におけるクッパー細胞数
疑似群、BDL群、及びドレナージ群の各肝臓におけるクッパー細胞数を次の方法により求めた。
蛍光イソチオシアネート(FITC)で標識されたラテックスビーズ(直径2μm)をラットの頸動脈から注入した。このラテックスビーズを注入してから10分後、肝臓表面の左側葉がLED励起システムで表面に照らされた。クッパー細胞に取り込まれた固着ラテックスビーズを生物顕微鏡により数えることにより、各群(n=3)におけるクッパー細胞の数を見積もった。その結果を図3に示す。
図3が示す通り、クッパー細胞の数は、BDL群が疑似群と比較して有意に増加した。このBDL群の変化は、ドレナージで元に戻された。
(4)TLR4の存在場所
擬似群、BDL群、及びドレナージ群におけるTLR4タンパク質とED−1タンパク質(クッパー細胞によって発現される抗原)に対して、常法により二重免疫染色した(各群ともn=3)。細胞核については、DAPI(4’,6’−ジアミジノ−2−フェニルインドール)で対比染色した。
抗TLR4抗体と抗ED−1抗体を用いた二重免疫染色により、2つの抗原が同じ場所に存在し、TLR4は、主としてクッパー細胞に存在することが明らかとなった。加えて、BDL群におけるTLR4とED−1の発現量は、疑似群やドレナージ群のそれらと比べて非常に高かった。
以上のように、BDLにより、肝臓でクッパー細胞の数が増え、それに伴ってクッパー細胞に存在するTLR4の発現も増加したものと考えられる。そして、胆管のドレナージによりいずれも減少した。
(5)エンドトキシンの移行臓器
疑似群とBDL群について、LPS注入の0.5時間後、2時間後、及び4時間後に、ラットを犠牲にし、ラットの血液、尿、肝臓、肺のサンプルを採取した。
血中と尿中のLPS量は常法により測定した(各群ともn=6)。肝組織と肺組織のLPS量は、各組織の100mgを1000μLのリン酸緩衝生理食塩水(PBS)で混合し、均質化して遠心分離した後、上清のエンドトキシン量を常法により検出することにより行った(各群ともn=6)。その結果を図4と図5に示す。
図4が示す通り、血中のエンドトキシン量は、両群においてLPS注入後有意に増加した。その量は、疑似群よりBDL群の方が低い傾向にあった。また、両群とも、時間経過と共に徐々に減少した。尿中におけるエンドトキシンは、両群ともほとんど検出されなかった。
図5が示す通り、組織中のエンドトキシンについては、LPS注入後、肝組織での濃度が高かった。その時間経過は、血漿中のエンドトキシン量の変化とパラレルであった。一方、肺組織では、エンドトキシンはほとんど検出されなかった。
これらの結果から、門脈循環から侵入したエンドトキシンがまず移行する主要な臓器は肝臓であることが明らかである。
(6)肝組織全体における壊死組織の割合
LPS注入4時間後の疑似群、BDL群、及びドレナージ群の肝臓検体について、各群の肝臓検体を10%緩衝ホルマリン、脱水エタノールで直ちに固定し、パラフィン包埋し、ヘマトキシリンとエオシンで染色して、その切片を光学顕微鏡下で観察することにより肝組織全体における壊死組織の割合を求めた(各群ともn=6)。その結果を図6に示す。
図6が示す通り、LPSを微量注入しても、疑似群では肝臓の壊死は見られなかった(0%)。一方、BDL群では、LPSの微量注入により肝臓の壊死は疑似群と比較して有意に見られた(約5%)。しかし、ドレナージによりその壊死の程度は軽減され、ドレナージ群はBDL群と比較して有意な減少を示した。BDL群の壊死は、門脈領域(ゾーンI)で主として観察された。
(7)TAK242とGdCl3の事前投与効果
前記の通り、TAK242又はGdCl3をLPS注入前に静脈投与したTAK242群及びGdCl3群について、LPS注入の2時間後と4時間後の血中AST(アスパルテート アミノトランスフェラーゼ)及び血中ALT(アラニン アミノトランスフェラーゼ)の濃度を常法により測定した(各群ともn=6)。その結果を図7に示す。
図7が示す通り、LPS注入の4時間後の血中AST及び血中ALTの濃度は、擬似群やドレナージ群と比較して、BDL群で有意に高かった。一方、TAK242又はGdCl3を事前に投与した群では、LPS注入後のASTとALTの上昇が有意に抑制された。これら酵素の濃度は、ドレナージ群の各濃度とほぼ同じであった。
また、同様にTNF−α及びIL−6の血漿中濃度を常法のELISA法により測定した(各群ともn=6)。その結果を図8に示す。
図8が示す通り、TNF−α及びIL−6の血漿中濃度も、LPS注入の2時間後と4時間後においてBDL群で有意に高かった。しかし、TAK群とGdCl3群では、これらの変化は有意に減退した。
このように、BDLと極微量のLPSによる肝障害の発症が、LPSを注入する前にTAK242を投与しておくことにより抑制されたことから、TLR4阻害剤が内毒素による臓器不全の予防剤として有用となりうることが明からである。
(8)死亡率
全てのラットは、LPS注入して8時間後まで生存したが、BDL群の50%のラットは、24時間以上生存しなかった。胆管ドレナージ処置やTAK242、GdCl3による前処置で、LPS注入から24時間後の死亡率が各々92%、100%、83%まで減少した。即ち、LPSを注入する前にTAK242を予め投与した群では、死亡例はなかった。
(9)結論
以上の結果から明らかな通り、BDLラットにおいてクッパー細胞の数が増加するのと同様に、TLR4タンパク質の発現量が増加した。この変化は、胆管ドレナージで効果的に元に戻った。TLR4は、主としてクッパー細胞で見出された。
BDLラットにおいて、微量のLPSを門脈内注入すると、血中肝酵素や炎症性サイトカインの顕著な増加が観察された。しかしながら、この顕著な増加は、TAK242をLPS注入前に予め投与しておくことにより、胆管ドレナージで見られたと同レベルまで有意に減退した。また、ラットの生存率が飛躍的に高まった。
これらの結果は、TAK242等のTLR4阻害剤が、例えば、バクテリアルトランスロケーションを受け易い胆管閉塞患者等に対する治療薬となりうることを示すものである。
本発明は、内毒素による敗血症及びそれに伴う臓器不全を予防するのに有効なTLR4阻害剤を提供することができる。また、バクテリアルトランスロケーションを誘発するおそれのある侵襲外科手術後の敗血症及びそれに伴う臓器機能不全を予防しうるTLR4阻害剤を提供することができる。
加えて、臨床試験まで行われたものの、開発が一旦中止されたTAK242を再活用することができる。

Claims (18)

  1. TLR(Toll−Like Receptor)4阻害剤を含有することを特徴とする、内毒素による臓器不全の予防剤。
  2. 内毒素による臓器不全が、胆管閉塞状態で発生する内毒素血症によるものである、請求項1記載の予防剤。
  3. TLR4阻害剤が、レサトルビド(Resatorvid)、エリトラン(Eritoran)である、請求項1又は2に記載の予防剤。
  4. 臓器が、肝臓、肺臓、心臓、腎臓である、請求項1〜3いずれか1項に記載の予防剤。
  5. TLR4阻害剤を含有し、バクテリアルトランスロケーションを誘発するおそれのある侵襲外科手術前に予め投与するものであることを特徴とする、内毒素による臓器不全の予防剤。
  6. 内毒素による臓器不全が、胆管閉塞状態で発生する内毒素血症によるものである、請求項5記載の予防剤。
  7. バクテリアルトランスロケーションを誘発するおそれのある侵襲外科手術が、胆管閉塞を伴う胆管癌に対する肝切除術である、請求項5又は6に記載の予防剤。
  8. TLR4阻害剤が、レサトルビド(Resatorvid)、エリトラン(Eritoran)である、請求項5〜7いずれか1項に記載の予防剤。
  9. 臓器が、肝臓、肺臓、心臓、腎臓である、請求項5〜8いずれか1項に記載の予防剤。
  10. TLR4阻害剤を含有することを特徴とする、内毒素による敗血症の予防剤。
  11. 内毒素による敗血症が、胆管閉塞状態で発生する内毒素血症によるものである、請求項10記載の予防剤。
  12. TLR4阻害剤が、レサトルビド(Resatorvid)、エリトラン(Eritoran)である、請求項10又は11に記載の予防剤。
  13. 臓器が、肝臓、肺臓、心臓、腎臓である、請求項9〜11いずれか1項に記載の予防剤。
  14. TLR4阻害剤を含有し、バクテリアルトランスロケーションを誘発するおそれのある侵襲外科手術前に予め投与するものであることを特徴とする、内毒素による敗血症の予防剤。
  15. 内毒素による敗血症が、胆管閉塞状態で発生する内毒素血症によるものである、請求項14記載の予防剤。
  16. バクテリアルトランスロケーションを誘発するおそれのある侵襲外科手術が、胆管閉塞を伴う胆管癌に対する肝切除術である、請求項14又は15に記載の予防剤。
  17. TLR4阻害剤が、レサトルビド(Resatorvid)、エリトラン(Eritoran)である、請求項14〜16いずれか1項に記載の予防剤。
  18. 臓器が、肝臓、肺臓、心臓、腎臓である、請求項14〜17いずれか1項に記載の予防剤。
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