JP2015077841A - 電動パワーステアリング装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】中立位置からの切り込み時に操舵方向による操舵力差が発生するのを抑制でき、操舵感を向上させることができる電動パワーステアリング装置を提供する。【解決手段】基本アシストトルク指令値設定部41は、トルクセンサ11によって検出された検出操舵トルクTに基づいて、基本アシストトルク指令値Tao*を設定する。オフセット量設定部42は、モータ角速度演算部52によって演算されたロータ角速度ωMと検出操舵トルクTとに基づいて、操舵方向によるフリクション差を補償するためのオフセット量を設定する。オフセット量加算部43は、基本アシストトルク指令値設定部41によって設定された基本アシストトルク指令値Tao*に、オフセット量設定部42によって設定されたオフセット量αを加算することにより、基本アシストトルク指令値Tao*を補正する。【選択図】図1

Description

この発明は、電動パワーステアリング装置に関する。
電動モータが発生する駆動力を車両の転舵機構に伝達し、これにより運転者のステアリング操作を補助する電動パワーステアリング装置が知られている。電動モータは、ステアリングホイールに加えられた操舵トルクなどに基づいて、電子制御ユニットにより制御される。具体的には、操舵トルクを検出する操舵トルクセンサからの検出信号が電子制御ユニットに入力される。電子制御ユニットは、操舵トルクセンサからの入力信号に基づいてアシストトルク指令値を設定し、アシストトルク指令値に基づいて電動モータを制御する。
特開2013−63752号公報
電動パワーステアリング装置内に発生するフリクション(摩擦)の大きさは、操舵方向によって異なっている。このため、ステアリングホイール(操舵部材)を中立位置から左方向に切り込んだ際の操舵力と、中立位置から右方向に切り込んだ際の操舵力とに差が生じるため、運転者に違和感を与えてしまうという問題がある。
この発明の目的は、中立位置からの切り込み時に操舵方向による操舵力差が発生するのを抑制でき、操舵感を向上させることができる電動パワーステアリング装置を提供することである。
請求項1記載の発明は、車両の転舵機構(4)に電動モータ(18)から操舵補助力を与える電動パワーステアング装置(1)であって、車両の操向のために操作される操舵部材(2)に加えられる操舵トルクを検出する操舵トルク検出手段(11)と、前記操舵トルク検出手段によって検出される操舵トルクを用いて、基本アシストトルク指令値を設定する指令値設定手段(41,41A)と、前記操舵部材の操舵方向を検出する操舵方向検出手段(52,71)と、前記操舵方向検出手段によって検出された操舵方向に基づいて、操舵方向によるフリクション差を補償するためのオフセット量を設定するオフセット量設定手段(42,42A)と、前記オフセット量設定手段によって設定されたオフセット量を用いて、前記指令値設定手段によって設定された基本アシストトルク指令値を補正する補正手段(43)と、前記補正手段による補正後の基本アシストトルク指令値に基づいて、前記電動モータを制御する手段(44,45,46,47;45,46,47)とを含む、電動パワーステアリング装置である。なお、括弧内の英数字は、後述の実施形態における対応構成要素等を表すが、むろん、この発明の範囲は当該実施形態に限定されない。以下、この項において同じ。
この発明によれば、操舵方向によるフリクション差を補償するためのオフセット量を用いて、基本アシストトルク指令値が補正されるので、中立位置からの切り込み時に操舵方向による操舵力差が発生するのを抑制でき、操舵感を向上させることができる。
請求項2記載の発明は、前記オフセット量設定手段は、前記操舵方向検出手段によって検出された操舵方向と、前記操舵トルク検出手段によって検出される操舵トルクとに基づいて、操舵方向によるフリクション差を補償するためのオフセット量を設定するように構成されている、請求項1に記載の電動パワーステアリング装置である。
請求項3記載の発明は、前記操舵方向検出手段は、前記電動モータまたは前記操舵部材の角速度を検出する角速度検出手段(52,71)を含んでおり、前記オフセット量設定手段は、前記角速度検出手段によって検出された角速度に基づいて、操舵方向によるフリクション差を補償するためのオフセット量を設定するように構成されている、請求項1に記載の電動パワーステアリング装置である。
請求項4記載の発明は、前記操舵方向検出手段は、前記電動モータまたは前記操舵部材の角速度を検出する角速度検出手段を含んでおり、前記オフセット量設定手段は、前記角速度検出手段によって検出された角速度に基づいて、操舵方向によるフリクション差を補償するための基本オフセット量を設定する基本オフセット量設定手段(61,61A)と、前記操舵トルク検出手段によって検出される操舵トルクに基づいて、前記操舵トルクが零付近であるときに零の値をとるトルクゲインを設定するゲイン設定手段(62)と、前記基本オフセット量設定手段によって設定された基本オフセット量に、前記ゲイン設定手段によって設定されたトルクゲインを乗算することにより、オフセット量を演算するオフセット演算手段(63)とを含む、請求項2に記載の電動パワーステアリング装置である。
この構成によれば、操舵トルクが零付近であるときにオフセット量を零にすることができる。これにより、操舵トルクが零付近であるときに、補正手段による補正後の基本アシストトルク指令値を零に設定することが可能となる。
請求項5記載の発明は、前記ゲイン設定手段は、前記操舵トルク検出手段によって検出される操舵トルクの絶対値が第1所定値以下ではトルクゲインを0に設定し、前記操舵トルクの絶対値が前記第1所定値より大きな第2所定値以上ではトルクゲインを1に設定し、前記操舵トルクの絶対値が前記第1所定値と前記第2所定値の間では、前記操舵トルクの絶対値が大きくなるにしたがって、トルクゲインを0から1まで徐々に大きくなるように設定するように構成されている、請求項4に記載の電動パワーステアリング装置である。
図1は、本発明の一実施形態に係る電動パワーステアリング装置の概略構成を示す模式図である。 図2は、ECUの電気的構成を示すブロック図である。 図3は、電動モータの構成を図解的に示す模式図である。 図4は、検出操舵トルクTの絶対値|T|に対する基本アシストトルク指令値Taoの設定例を示すグラフである。 図5は、ロータ角速度ωに対する基本オフセット量αoの設定例を示すグラフである。 図6は、検出操舵トルクTの絶対値|T|に対するゲインの設定例を示すグラフである。 図7は、ECUの変形例を示すブロック図である。 図8は、検出操舵トルクTに対する基本アシストトルク指令値Taoの設定例を示すグラフである。 図9は、ロータ角速度ωに対する基本オフセット量αoの設定例を示すグラフである。
以下では、この発明の実施形態を、添付図面を参照して詳細に説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る電動パワーステアリング装置の概略構成を示す模式図である。
電動パワーステアリング装置1は、車両を操向するための操舵部材としてのステアリングホイール2と、このステアリングホイール2の回転に連動して転舵輪3を転舵する転舵機構4と、運転者の操舵を補助するための操舵補助機構5とを備えている。ステアリングホイール2と転舵機構4とは、ステアリングシャフト6および中間軸7を介して機械的に連結されている。
ステアリングシャフト6は、ステアリングホイール2に連結された入力軸8と、中間軸7に連結された出力軸9とを含む。入力軸8と出力軸9とは、トーションバー10を介して相対回転可能に連結されている。
ステアリングシャフト6の周囲には、トルクセンサ11が配置されている。トルクセンサ11は、入力軸8および出力軸9の相対回転変位量に基づいて、ステアリングホイール2に与えられた操舵トルクTを検出する。この実施形態では、トルクセンサ11によって検出される操舵トルクTは、たとえば、右方向への操舵のためのトルクが正の値として検出され、左方向への操舵のためのトルクが負の値として検出され、その絶対値が大きいほど操舵トルクの大きさが大きくなるものとする。
転舵機構4は、ピニオン軸13と、転舵軸としてのラック軸14とを含むラックアンドピニオン機構からなる。ラック軸14の各端部には、タイロッド15およびナックルアーム(図示略)を介して転舵輪3が連結されている。ピニオン軸13は、中間軸7に連結されている。ピニオン軸13は、ステアリングホイール2の操舵に連動して回転するようになっている。ピニオン軸13の先端(図1では下端)には、ピニオン16が連結されている。
ラック軸14は、自動車の左右方向に沿って直線状に延びている。ラック軸14の軸方向の中間部には、ピニオン16に噛み合うラック17が形成されている。このピニオン16およびラック17によって、ピニオン軸13の回転がラック軸14の軸方向移動に変換される。ラック軸14を軸方向に移動させることによって、転舵輪3を転舵することができる。
ステアリングホイール2が操舵(回転)されると、この回転が、ステアリングシャフト6および中間軸7を介して、ピニオン軸13に伝達される。そして、ピニオン軸13の回転は、ピニオン16およびラック17によって、ラック軸14の軸方向移動に変換される。これにより、転舵輪3が転舵される。
操舵補助機構5は、操舵補助用の電動モータ18と、電動モータ18の出力トルクを転舵機構4に伝達するための減速機構19とを含む。電動モータ18は、この実施形態では、三相ブラシレスモータからなる。電動モータ18の近傍には、電動モータ18のロータの回転角を検出するための、例えばレゾルバからなる回転角センサ23が配置されている。減速機構19は、ウォーム軸20と、このウォーム軸20と噛み合うウォームホイール21とを含むウォームギヤ機構からなる。減速機構19は、伝達機構ハウジングとしてのギヤハウジング22内に収容されている。
ウォーム軸20は、電動モータ18によって回転駆動される。また、ウォームホイール21は、ステアリングシャフト6とは同方向に回転可能に連結されている。ウォームホイール21は、ウォーム軸20によって回転駆動される。
電動モータ18によってウォーム軸20が回転駆動されると、ウォームホイール21が回転駆動され、ステアリングシャフト6が回転する。そして、ステアリングシャフト6の回転は、中間軸7を介してピニオン軸13に伝達される。ピニオン軸13の回転は、ラック軸14の軸方向移動に変換される。これにより、転舵輪3が転舵される。すなわち、電動モータ18によってウォーム軸20を回転駆動することによって、転舵輪3が転舵されるようになっている。
電動モータ18は、モータ制御装置としてのECU(電子制御ユニット:Electronic Control Unit)12によって制御される。ECU12には、トルクセンサ11によって検出される操舵トルク、回転角センサ23の出力信号等が入力されている。
図2は、ECU12の電気的構成を示すブロック図である。
ECU12は、マイクロコンピュータ31と、マイクロコンピュータ31によって制御され、電動モータ18に電力を供給する駆動回路(インバータ回路)32と、電動モータ18に流れるモータ電流を検出する電流検出部33とを備えている。
電動モータ18は、例えば三相ブラシレスモータであり、図3に図解的に示すように、界磁としてのロータ100と、U相、V相およびW相のステータ巻線101,102,103を含むステータ105とを備えている。電動モータ18は、ロータの外部にステータを対向配置したインナーロータ型のものであってもよいし、筒状のロータの内部にステータを対向配置したアウターロータ型のものであってもよい。
各相のステータ巻線101,102,103の方向にU軸、V軸およびW軸をとった三相固定座標(UVW座標系)が定義される。また、ロータ100の磁極方向にd軸(磁極軸)をとり、ロータ100の回転平面内においてd軸と直角な方向にq軸(トルク軸)をとった二相回転座標系(dq座標系。実回転座標系)が定義される。dq座標系は、ロータ100とともに回転する回転座標系である。dq座標系では、q軸電流のみがロータ100のトルク発生に寄与するので、d軸電流を零とし、q軸電流を所望のトルクに応じて制御すればよい。ロータ100の回転角(電気角)θは、U軸に対するd軸の回転角である。dq座標系は、ロータ回転角θに従う実回転座標系である。このロータ回転角θを用いることによって、UVW座標系とdq座標系との間での座標変換を行うことができる。
図2に戻り、マイクロコンピュータ31は、CPUおよびメモリ(ROM、RAM、不揮発性メモリなど)を備えており、所定のプログラムを実行することによって、複数の機能処理部として機能するようになっている。この複数の機能処理部には、基本アシストトルク指令値設定部41と、オフセット量設定部42と、オフセット量加算部43と、アシストトルク指令値演算部44と、電流指令値設定部45と、電流偏差演算部46と、PI(比例積分)制御部47と、dq/UVW変換部48と、PWM(Pulse Width Modulation)制御部49と、UVW/dq変換部50と、回転角演算部51と、ロータ角速度演算部52とを含む。
回転角演算部51は、回転角センサ23の出力信号に基づいて、電動モータ18のロータの回転角θ,θを演算する。θは電気角であり、θは機械角である。回転角演算部51によって演算されるロータ回転角θ(電気角)は、dq/UVW変換部48およびUVW/dq変換部50に与えられる。回転角演算部51によって演算されるロータ回転角θ(機械角)は、ロータ角速度演算部52に与えられる。
ロータ角速度演算部52は、回転角演算部51によって演算されたロータ回転角θを時間微分することにより、電動モータ18のロータの角速度(以下、「ロータ角速度ω」という。)を演算する。このため、モータ角速度演算部52によって演算されるロータ角速度ωの符号は、電動モータ18の回転方向によって異なる。したがって、ロータ角速度ωに基づいて、電動モータ18の回転方向、つまり、操舵方向を判別することができる。なお、この実施形態では、電動モータ18が右操舵方向に対応した回転方向に回転しているときには、ロータ角速度ωは正の値となり、電動モータ18が左操舵方向に対応した回転方向に回転しているときには、ロータ角速度ωは負の値となるものとする。
基本アシストトルク指令値設定部41は、トルクセンサ11によって検出された検出操舵トルクTに基づいて、基本アシストトルク指令値Taoを設定する。検出操舵トルクTの絶対値|T|に対する基本アシストトルク指令値Taoの設定例は、図4に示されている。検出操舵トルクTの絶対値|T|が所定値T1(T1>0)未満である領域には不感帯が設定されている。つまり、検出操舵トルクTの絶対値|T|が所定値T1未満であるときには、基本アシストトルク指令値Taoは零とされる。そして、検出操舵トルクTの絶対値|T|が前記所定値T1以上である場合には、その絶対値|T|大きくなるほど、基本アシストトルク指令値Taoが大きくなるように、基本アシストトルク指令値Taoが設定されている。不感帯が設定されている理由は、ステアリングホイール2が運転者によって操作されていないときには、電動モータ18への通電を停止させることにより、不必要な電力消費を抑制するためである。
オフセット量設定部42は、基本アシストトルク指令値設定部41によって設定された基本アシストトルク指令値Taoに加算されるオフセット量を演算する。電動パワーステアリング装置1においては、電動モータ18、減速機構19、転舵機構4等において摩擦が発生する。電動パワーステアリング装置1内に発生するフリクション(摩擦)の大きさは、操舵方向によって異なっている。この実施形態では、オフセット量設定部42は、モータ角速度演算部52によって演算されたロータ角速度ωと検出操舵トルクTとに基づいて、操舵方向によるフリクション差(摩擦力差)を補償するためのオフセット量を設定する。
オフセット量設定部42は、基本オフセット量設定部61と、ゲイン設定部62と、ゲイン乗算部63とを含んでいる。基本オフセット量設定部61は、予め設定された右切り補正オフセット量αおよび左切補正オフセット量αと、モータ角速度演算部52によって演算されたロータ角速度ωに基づいて、基本オフセット量αoを設定する。
右切り補正オフセット量αおよび左切補正オフセット量αは、例えば、次のようにして予め求められている。つまり、車両がジャッキアップされた状態(無負荷状態)において、電動モータ18に電流が供給されない状態にする。この状態において、ステアリングホイール2を手動または自動で右操舵方向および左操舵方向に操作させながら、トルクセンサ11によって検出される操舵トルクをモニタリングする。右操舵方向にステアリングホイール2が操作されているときの操舵トルクは、そのときにステアリング装置1内に発生している摩擦力に対応した値となる。そこで、当該操舵トルクを右切リトルクTとして求める。一方、左操舵方向にステアリングホイール2が操作されているときの操舵トルクは、そのときにステアリング装置1内に発生している摩擦力に対応した値となる。そこで、当該操舵トルクを左切リトルクTとして求める。
このようにして求められた右切リトルクTおよび左切リトルクTと、電動パワーステアリング装置1の設計段階で決定されている基準操舵トルクToとに基づいて、右切り補正オフセット量αおよび左切補正オフセット量αを求める。具体的には、右切り補正オフセット量αおよび左切補正オフセット量αは、次式(1),(2)に基づいて求められる。
α=To−T …(1)
α=To−T …(2)
例えば、基準操舵トルクToが1.5Nmであり、右切リトルクTが1.1Nmであり、左切リトルクTが1.3Nmである場合には、右切り補正オフセット量αは0.4Nmとなり、左切補正オフセット量αは0.2Nmとなる。
右切り補正オフセット量αが0.4Nmであり、左切補正オフセット量αが0.1Nmである場合の、ロータ角速度ωに対する基本オフセット量αoの設定例は、図5に示されている。前述したように、ロータ角速度ωは、たとえば、ロータが右操舵方向に対応する回転方向に回転している場合には正の値となり、ロータが左操舵方向に対応する回転方向に回転している場合には負の値となる。ロータ角速度ωが所定値ω1(ω1>0)以上である場合には、基本オフセット量αoは0.4Nm(右切り補正オフセット量α)に設定される。ロータ角速度ωが所定値−ω1以下である場合には、基本オフセット量αoは0.2Nm(左切補正オフセット量α)に設定される。ロータ角速度ωが−ω1以上ω1以下の範囲では、基本オフセット量αoは、ロータ角速度ωが大きくなるに従って0.2Nmから0.4Nmまで徐々に大きくなるように設定される。
ゲイン設定部62は、トルクセンサ11によって検出される検出操舵トルクTに基づいて、基本オフセット量αoに乗じられるトルクゲインGを設定する。ゲイン設定部62は、検出操舵トルクTが零付近であるときに、オフセット量加算後の基本アシストトルク指令値を零にするために設けられている。
検出操舵トルクTの絶対値|T|に対するゲインの設定例は、図6に示されている。検出操舵トルクTの絶対値|T|が第1所定値T1(T1>0)未満であるときには、トルクゲインGは0とされる。検出操舵トルクTの絶対値|T|が前記第1所定値T1より大きな第2所定値T2(T2>T1)以上である場合には、トルクゲインGは1とされる。検出操舵トルクTの絶対値|T|がT1以上T2以下である場合には、トルクゲインGは、検出操舵トルクTの絶対値|T|が大きくなるに従って0から1まで徐々に大きくなるように設定される。
ゲイン乗算部63は、基本オフセット量設定部61によって設定された基本オフセット量αoに、ゲイン設定部62によって設定されたトルクゲインGを乗算することにより、オフセット量α(α=αo・G)を演算する。
オフセット量加算部43は、基本アシストトルク指令値設定部41によって設定された基本アシストトルク指令値Taoに、ゲイン乗算部63によって得られたオフセット量αを加算することにより、基本アシストトルク指令値Taoを補正する。オフセット量加算部43の加算結果(Tao+α)は、アシストトルク指令値演算部44に与えられる。
アシストトルク指令値演算部44は、オフセット量加算部43の加算結果(Tao+α)と、トルクセンサ11によって検出される検出操舵トルクTとに基づいて、アシストトルク指令値Taを演算する。アシストトルク指令値Taは、電動モータ18によって右方向操舵ためのアシストトルクを発生させるときには正の値とされ、電動モータ18によって左方向操舵ためのアシストトルクを発生させるときには負の値とされる。
アシストトルク指令値演算部44は、検出操舵トルクTが零以上(T≧0)であれば、オフセット量加算部43の加算結果(Tao+α)をそのままアシストトルク指令値Taとして出力する。一方、検出操舵トルクTが零未満(T<0)であれば、アシストトルク指令値演算部44は、オフセット量加算部43の加算結果(Tao+α)に負の符号を付した値{−(Tao+α)}を、アシストトルク指令値Taとして出力する。
電流指令値設定部45は、dq座標系の座標軸に流すべき電流値を電流指令値として設定する。具体的には、電流指令値設定部45は、d軸電流指令値I およびq軸電流指令値I (以下、これらを総称するときには「二相電流指令値Idq 」という。)を設定する。さらに具体的には、電流指令値設定部45は、q軸電流指令値I を有意値とする一方で、d軸電流指令値I を零とする。より具体的には、電流指令値設定部45は、アシストトルク指令値演算部44によって演算されたアシストトルク指令値Taを、電動モータ18のトルク定数Kで除算することにより、q軸電流指令値I を設定する。
電流指令値設定部45によって設定された二相電流指令値Idq は、電流偏差演算部46に与えられる。
電流検出部33は、電動モータ18のU相電流I、V相電流IおよびW相電流I(以下、これらを総称するときは、「三相検出電流IUVW」という。)を検出する。電流検出部33によって検出された三相検出電流IUVWは、UVW/dq変換部50に与えられる。
UVW/dq変換部50は、電流検出部33によって検出されるUVW座標系の三相検出電流IUVW(U相電流I、V相電流IおよびW相電流I)を、dq座標系の二相検出電流IおよびI(以下総称するときには「二相検出電流Idq」という。)に座標変換する。この座標変換には、回転角演算部51によって演算されたロータ回転角θが用いられる。
電流偏差演算部46は、電流指令値設定部45によって設定される二相電流指令値Idq と、UVW/dq変換部50から与えられる二相検出電流Idqとの偏差を演算する。より具体的には、電流偏差演算部46は、d軸電流指令値I に対するd軸検出電流Iの偏差およびq軸電流指令値I に対するq軸検出電流Iの偏差を演算する。これらの偏差は、PI制御部47に与えられる。
PI制御部47は、電流偏差演算部46によって演算された電流偏差に対するPI演算を行なうことにより、電動モータ18に印加すべき二相電圧指令値Vdq (d軸電圧指令値V およびq軸電圧指令値V )を生成する。この二相電圧指令値Vdq は、dq/UVW変換部48に与えられる。
dq/UVW変換部48は、二相電圧指令値Vdq を三相電圧指令値VUVW に座標変換する。この座標変換には、回転角演算部51によって演算されたロータ回転角θが用いられる。三相電圧指令値VUVW は、U相電圧指令値V 、V相電圧指令値V およびW相電圧指令値V からなる。この三相電圧指令値VUVW は、PWM制御部49に与えられる。
PWM制御部49は、U相電圧指令値V 、V相電圧指令値V およびW相電圧指令値V にそれぞれ対応するデューティのU相PWM制御信号、V相PWM制御信号およびW相PWM制御信号を生成し、駆動回路32に供給する。
駆動回路32は、U相、V相およびW相に対応した三相インバータ回路からなる。このインバータ回路を構成するパワー素子がPWM制御部49から与えられるPWM制御信号によって制御されることにより、三相電圧指令値VUVW に相当する電圧が電動モータ18の各相のステータ巻線101,102,103に印加されることになる。
電流偏差演算部46およびPI制御部47は、電流フィードバック制御手段を構成している。この電流フィードバック制御手段の働きによって、電動モータ18に流れるモータ電流が、電流指令値設定部45によって設定された二相電流指令値Idq に近づくように制御される。
この実施形態では、基本アシストトルク指令値Taoに、操舵方向によるフリクション差を補償するためのオフセット量αを加算した値に基づいて、アシストトルク指令値Taを演算している。これにより、中立位置からの切り込み時に操舵方向による操舵力差が発生するのを抑制でき、操舵感を向上させることができる。
図7は、ECUの変形例を示すブロック図である。図7において、前述の図2の各部に対応する部分には図2と同じ符号を付して示す。
このECU12Aでは、基本アシストトルク指令値設定部41Aおよびオフセット量設定部42A内の基本オフセット量設定部61Aが、図2の基本アシストトルク指令値設定部41およびオフセット量設定部42内の基本オフセット量設定部61と異なっている。また、このECU12Aは、図2のアシストトルク指令値設定部44を含んでいない。
基本アシストトルク指令値設定部41Aは、トルクセンサ11によって検出された検出操舵トルクTに基づいて、基本アシストトルク指令値Taoを設定する。検出操舵トルクTに対する基本アシストトルク指令値Taoの設定例は、図8に示されている。
検出操舵トルクTは、例えば右方向への操舵のためのトルクが正の値にとられ、左方向への操舵のためのトルクが負の値にとられている。また、基本アシストトルク指令値Taoは、電動モータ18によって右方向操舵のためのアシストトルクを発生させるときには正の値とされ、電動モータ18によって左方向操舵のためのアシストトルクを発生させるときには負の値とされる。基本アシストトルク指令値Taoは、検出操舵トルクTの正の値に対しては正の値をとり、検出操舵トルクTの負の値に対しては負の値をとる。検出操舵トルクTが−T1〜T1の範囲内の値のときには、基本アシストトルク指令値Taoは零とされる。そして、検出操舵トルクTが−T1〜T1の範囲以外の領域においては、基本アシストトルク指令値Taoは、検出操舵トルクTの絶対値が大きくなるほど、その絶対値が大きくなるように設定される。
基本オフセット量設定部61Aは、予め設定された右切り補正オフセット量αおよび左切補正オフセット量αと、モータ角速度演算部52によって演算されたロータ角速度ωに基づいて、基本オフセット量αoを設定する。右切り補正オフセット量αおよび左切補正オフセット量αの求め方については、既に説明したので、その説明を省略する。右切り補正オフセット量αが0.4Nmであり、左切補正オフセット量αが0.2Nmである場合の、ロータ角速度ωに対する基本オフセット量αoの設定例は、図9に示されている。
前述したように、ロータ角速度ωは、たとえば、ロータが右操舵方向に対応する回転方向に回転している場合には正の値となり、ロータが左操舵方向に対応する回転方向に回転している場合には負の値となる。ロータ角速度ωが所定値ω1(ω1>0)以上である場合には、基本オフセット量αoは0.4Nm(右切り補正オフセット量α)に設定される。ロータ角速度ωが所定値−ω1以下である場合には、基本オフセット量αoは−0.2Nm(左切補正オフセット量αに負の符号を付した値(−α))に設定される。ロータ角速度ωが−ω1以上ω1以下の範囲では、基本オフセット量αoは、ロータ角速度ωが大きくなるに従って−0.2Nmから0.4Nmまで徐々に大きくなるように設定される。
ゲイン設定部62は、図2のECU12内のゲイン設定部62と同様な動作により、トルクゲインGを設定する。ゲイン乗算部63は、図2のECU12内のゲイン乗算部63と同様な動作により、基本オフセット量設定部61Aによって設定された基本オフセット量αoに、ゲイン設定部62によって設定されたトルクゲインGを乗算することにより、オフセット量α(α=αo・G)を演算する。
オフセット量加算部43は、基本アシストトルク指令値設定部41Aによって設定された基本アシストトルク指令値Taoに、ゲイン乗算部63によって得られたオフセット量αを加算することにより、アシストトルク指令値Ta(Ta=Tao+α)を演算する。このアシストトルク指令値Taが、電流指令値設定部45に与えられる。
この変形例においても、中立位置からの切り込み時に操舵方向による操舵力差が発生するのを抑制でき、操舵感を向上させることができる。
以上、この発明の実施形態について説明したが、この発明はさらに他の形態で実施することもできる。例えば、前述の実施形態では、操舵方向(電動モータ18の回転方向)は、ロータ角速度ωに基づいて判別されているが、操舵角速度に基づいて電動モータ18の回転方向を検出してもよい。この場合には、図1に破線24で示すように、ステアリングシャフト6の周囲に、ステアリングシャフト6の回転角である操舵角を検出するための舵角センサ24が配置するとともに、図2および図7に示すように、ECU12,12A内に操舵角速度演算部71を設ける。舵角センサ24は、ステアリングホイール2の中立位置(基準位置)からのステアリングホイール2の正逆両方向の回転量(回転角)を検出するものであり、中立位置から右方向への回転量を正の値として出力し、中立位置から左方向への回転量を負の値として出力する。操舵角速度演算部71は、舵角センサ24の出力信号を時間微分することにより、操舵角速度を演算する。操舵角速度の値が正であれば、操舵方向が右操舵方向であると判定し、操舵角速度の値が負であれば、操舵方向が左操舵方向であると判定する。操舵方向を操舵角速度演算部71によって演算される操舵角速度に基づいて判定する場合には、基本オフセット量設定部61,61Aは、操舵角速度に基づいて基本オフセット量αoを設定する。
また、前述の実施形態では、オフセット量設定部42,42Aは、基本オフセット量設定部61,61Aによって設定された基本オフセット量αoにゲイン設定部62によって設定されたトルクゲインGを乗算することによってオフセット量αを演算しているが、基本オフセット量設定部61,61Aによって設定された基本オフセット量αoをそのままオフセット量αとして用いてもよい。この場合には、ゲイン設定部62およびゲイン乗算部63は不要である。
その他、特許請求の範囲に記載された事項の範囲で種々の設計変更を施すことが可能である。
1…電動パワーステアリング装置、2…ステアリングホイール、4…転舵機構、11…トルクセンサ、12,12A…ECU、18…電動モータ、24…舵角センサ、41,41A…基本アシトストルク指令値設定部、42,42A…オフセット量設定部、43…オフセット量加算部、52…ロータ角速度演算部、61,61A…基本オフセット量設定部、62…ゲイン設定部、63…ゲイン乗算部、71…操舵角速度演算部

Claims (5)

  1. 車両の転舵機構に電動モータから操舵補助力を与える電動パワーステアング装置であって、
    車両の操向のために操作される操舵部材に加えられる操舵トルクを検出する操舵トルク検出手段と、
    前記操舵トルク検出手段によって検出される操舵トルクを用いて、基本アシストトルク指令値を設定する指令値設定手段と、
    前記操舵部材の操舵方向を検出する操舵方向検出手段と、
    前記操舵方向検出手段によって検出された操舵方向に基づいて、操舵方向によるフリクション差を補償するためのオフセット量を設定するオフセット量設定手段と、
    前記オフセット量設定手段によって設定されたオフセット量を用いて、前記指令値設定手段によって設定された基本アシストトルク指令値を補正する補正手段と、
    前記補正手段による補正後の基本アシストトルク指令値に基づいて、前記電動モータを制御する手段とを含む、電動パワーステアリング装置。
  2. 前記オフセット量設定手段は、前記操舵方向検出手段によって検出された操舵方向と、前記操舵トルク検出手段によって検出される操舵トルクとに基づいて、操舵方向によるフリクション差を補償するためのオフセット量を設定するように構成されている、請求項1に記載の電動パワーステアリング装置。
  3. 前記操舵方向検出手段は、前記電動モータまたは前記操舵部材の角速度を検出する角速度検出手段を含んでおり、
    前記オフセット量設定手段は、前記角速度検出手段によって検出された角速度に基づいて、操舵方向によるフリクション差を補償するためのオフセット量を設定するように構成されている、請求項1に記載の電動パワーステアリング装置。
  4. 前記操舵方向検出手段は、前記電動モータまたは前記操舵部材の角速度を検出する角速度検出手段を含んでおり、
    前記オフセット量設定手段は、
    前記角速度検出手段によって検出された角速度に基づいて、操舵方向によるフリクション差を補償するための基本オフセット量を設定する基本オフセット量設定手段と、
    前記操舵トルク検出手段によって検出される操舵トルクに基づいて、前記操舵トルクが零付近であるときに零の値をとるトルクゲインを設定するゲイン設定手段と、
    前記基本オフセット量設定手段によって設定された基本オフセット量に、前記ゲイン設定手段によって設定されたトルクゲインを乗算することにより、オフセット量を演算するオフセット演算手段とを含む、請求項2に記載の電動パワーステアリング装置。
  5. 前記ゲイン設定手段は、前記操舵トルク検出手段によって検出される操舵トルクの絶対値が第1所定値以下ではトルクゲインを0に設定し、前記操舵トルクの絶対値が前記第1所定値より大きな第2所定値以上ではトルクゲインを1に設定し、前記操舵トルクの絶対値が前記第1所定値と前記第2所定値の間では、前記操舵トルクの絶対値が大きくなるにしたがって、トルクゲインを0から1まで徐々に大きくなるように設定するように構成されている、請求項4に記載の電動パワーステアリング装置。
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