JP2015077808A - インクジェット記録装置およびインクジェット記録方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】光硬化型インク組成物を用いて、混色が少なく、精細度および光沢度が良好な画像を、非吸収性の記録媒体に対して形成することができるインクジェット記録装置を提供する。
【解決手段】本発明にかかるインクジェット記録装置100は、ヘッド10と、第1光源21と、第2光源22と、第3光源23と、を備え、光硬化型インク組成物の液滴が記録媒体に付着された後、1秒以下の時間を経た後に第1光源21の光が前記液滴に照射され、第1光源21の光が照射された後、0.1秒以上1秒以下の時間を経た後に第2光源22の光が前記液滴に照射され、前記光硬化型インク組成物が、第1光源21の光によって1%以上30%以下の硬化率まで硬化され、第2光源22の光によって30%を超え80%以下の硬化率まで硬化される。
【選択図】図3

Description

本発明は、インクジェット記録装置およびインクジェット記録方法に関する。
近年、紫外線、電子線その他の光によって硬化する光硬化型インク組成物の開発が進められている。このような光硬化型インク組成物は、重合性化合物、重合開始剤、顔料その他の添加剤等から構成されることが一般的である。また、一般に、光硬化型インク組成物を用いて画像を形成する場合には、例えば、インクジェット記録装置によって記録媒体上に付着された後、適宜な光源を用いて、光を照射することにより、該組成物を硬化させて行われる。
例えば、特許文献1には、活性光線硬化型インクに対して、2つ以上の照射手段により、活性光線を照射する画像形成方法が開示されている。同公報には第1の活性光線によるインクの硬化度を6〜70%とし、全印字が終了した後、十分な活性光線を照射して完全硬化することで、高精細な画像を形成できる等の記載がある。
特開2004−216681号公報
ところで、光硬化型インク組成物は、プラスチック、ガラス、コート紙等のインクを吸収しないまたはほとんど吸収しない非吸収性の記録媒体に対する記録に用いられることがある。このような記録においては、光硬化型インク組成物が記録媒体にしみ込むことなく、液滴の形状がある期間保たれたまま付着されることになる。そして付着された液滴が流動性を有する場合には、例えば、隣り合う液滴と合一して混色を起こしたり、液滴が濡れ広がって画像の精細度が低下する場合があった。
また逆に光硬化型インク組成物を、非吸収性の記録媒体に対して付着させた後ただちに光を十分に照射するなどして硬化度を高くしてしまうと、液滴の流動性が失われるため、付着されたときの液滴の形状のままで画像が形成されることになる。この場合には、例えば、液滴が十分に濡れ広がらず、線幅が不足したり、画像の光沢性や質感が悪くなることがあった。
このように、非吸収性の記録媒体に対して光硬化型インク組成物を用いて画像を形成する場合には、所望の画像を形成することは比較的困難であった。例えば、上述した特許文献1に記載されたような、インクを完全硬化させる前に単に硬化度を6〜70%とするような方法では、液滴の流動性が小さくなる結果、画像の高精細化を図ることができるとしても、これに相反して、流動性が不足し、線幅が不足したり、光沢や質感が必ずしも良好とはならないことが懸念される。
本発明のいくつかの態様にかかる目的の一つは、光硬化型インク組成物を用いて、混色が少なく、精細度および光沢度が良好な画像を、記録媒体に対して形成することができるインクジェット記録装置、および当該装置を用いた記録方法を提供することにある。
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の態様または適用例として実現することができる。
[適用例1]
本発明にかかるインクジェット記録装置の一態様は、
第1方向に沿って記録媒体に対して相対的に走査されるとともに、光硬化型インク組成物の液滴をノズル孔から吐出して前記記録媒体に前記液滴を付着させるヘッドと、
前記第1方向に沿って、前記ヘッドの走査の方向の下流側に順に配置され、前記記録媒体に付着された液滴に光を照射する第1光源および第2光源と、
を備え、
前記液滴が前記記録媒体に付着された後、1秒以下の時間を経た後に前記第1光源の光を前記液滴に照射し、
前記第1光源の光が照射された後、0.1秒以上1秒以下の時間を経た後に前記第2光源の光を前記液滴に照射し、
前記光硬化型インク組成物が、前記第1光源の光によって1%以上30%以下の硬化率まで硬化され、前記第2光源の光によって30%を超え80%以下の硬化率まで硬化される。
本適用例のインクジェット記録装置によれば、第1光源および第2光源を備えることにより、光硬化型インク組成物に対して、本硬化前に2段階の予備硬化を行うことができる。そのため、記録媒体に形成される画像の混色、精細度および光沢を容易に制御することができる。これにより、例えば、光硬化型インク組成物を用いて、混色が少なく、精細度および光沢度が良好な画像を、記録媒体に対して形成することができる。
また、本適用例のインクジェット記録装置において、液滴に対して第1光源の光が照射されるまでの時間のほうが、第1光源の光が照射された後、第1光源の光が照射されるまでの時間よりも短くすることもできる。その場合には、時間光硬化型インク組成物の液滴に、第1光源からの光を照射された後、十分な期間を経て、第2光源からの光を照射することができる。これにより、記録媒体に付着された液滴の表面形状をより滑らかにすることができ、より光沢度が良好な画像を、記録媒体に対して形成することができる。
[適用例2]
適用例1において、
前記第1光源および前記第2光源は、発光波長が365nm以上410nm以下にピーク波長を有する光源であってもよい。
本適用例のインクジェット記録装置によれば、第1光源および第2光源が小型軽量化されるため、例えば、これらの配置の自由度を高めることができる。
[適用例3]
適用例1または適用例2において、
前記第1光源および前記第2光源による前記照射の後で、前記記録媒体に付着された前記液滴にさらに光を照射して、前記光硬化型インク組成物の硬化率を80%超としてもよい。
本適用例のインクジェット記録装置によれば、第1光源および第2光源によって、2段階のピニングを行わせ、その後にさらに本硬化を行うことができる。
[適用例4]
適用例3において、
前記第1光源および前記第2光源による前記照射の後で、前記記録媒体に付着された前記液滴にさらに光を照射する第3光源を有してもよい。
本適用例のインクジェット記録装置によれば、本硬化を、第3光源の光によっておこなうことができ、光硬化型インク組成物を十分に硬化させることができる。
[適用例5]
適用例1ないし適用例4のいずれか一例において、
前記ヘッドは、前記ノズル孔を複数有し、
前記ノズル孔は、前記第1方向に沿って配置されてもよい。
[適用例6]
適用例1ないし適用例5のいずれか一例において、
前記ヘッドの前記記録媒体に対する前記第1方向の相対的な走査の速度は、1m/分以上50m/分以下であってもよい。
[適用例7]
本発明にかかるインクジェット記録方法の一態様は、
第1方向に沿って記録媒体に対して相対的に走査されるとともに、光硬化型インク組成物の液滴をヘッドのノズル孔から吐出して前記記録媒体に前記液滴を付着させ、
前記第1方向に沿って、前記ヘッドの走査の方向の下流側に順に配置された第1光源および第2光源によって、前記記録媒体に付着された液滴に光を照射し、
前記液滴が前記記録媒体に付着された後、1秒以下の時間を経た後に前記第1光源の光を前記液滴に照射し、
前記第1光源の光が照射された後、0.1秒以上1秒以下の時間を経た後に前記第2光源の光を前記液滴に照射し、
前記光硬化型インク組成物が、前記第1光源の光によって1%以上30%以下の硬化率まで硬化され、前記第2光源の光によって30%を超え80%以下の硬化率まで硬化される。
本適用例のインクジェット記録方法によれば、光硬化型インク組成物を本硬化させる前に、第1光源による予備硬化および第2光源による予備硬化の2段階の予備硬化を行い、かつ、第1光源による予備硬化の硬化率が、1%以上30%以下となり、第2光源による予備硬化の硬化率が30%を超え80%以下となるように各光が照射される。これにより、光硬化型インク組成物によって形成される画像の混色を抑制しつつ、精細度および光沢度が良好な画像を形成することができる。
インクジェット記録装置を模式的に示す斜視図。 インクジェット記録装置のヘッドおよび光源の側面を模式的に示す図。 インクジェット記録装置のヘッドおよび光源の下面を模式的に示す図。 インクジェット記録装置のヘッドおよび光源の側面を模式的に示す図。 インクジェット記録装置のヘッドおよび光源の上面を模式的に示す図。
以下、本発明の実施形態について説明する。なお以下の実施形態は、本発明の例を説明するものである。そのため、本発明は、以下の実施形態に限定されるものではなく、要旨を変更しない範囲で実施される各種の変形例も含む。なお、以下の実施形態で説明される構成の全てが本発明の必須構成要件であるとは限らない。
1.インクジェット記録装置
図1は、本発明にかかるインクジェット記録装置の一実施形態であるインクジェット記録装置100を模式的に示す斜視図である。図2は、ヘッド10、並びに、第1光源21、第2光源22、および第3光源23の側面を模式的に示す図である。図3は、ヘッド10、並びに、第1光源21、第2光源22、および第3光源23の下面を模式的に示す図である。なお、各図には、記録媒体Pが描かれている。
本実施形態のインクジェット記録装置100は、インクジェット記録ヘッド10と、第1光源21と、第2光源22と、を備える。
1.1.インクジェット記録ヘッド
本実施形態にかかるインクジェット記録ヘッド10は、記録媒体Pに対して相対的に走査されるとともに、光硬化型インク組成物の液滴をノズル孔12から吐出して記録媒体Pに液滴を付着させることができる。本明細書では、インクジェット記録ヘッド10のことを単にヘッド10と称することがある。
ここで、「ヘッドが記録媒体に対して相対的に走査される」とは、ヘッドおよび記録媒体のいずれか一方が位置を移動することによって、両者の間の相対的な位置関係が変化すること、あるいは、ヘッドおよび記録媒体の両者が位置を移動することによって、両者の間の相対的な位置関係が変化することを含む。
ヘッド10が液滴を吐出する方式は、どのような方式であってよい。ヘッド10の記録方式としては、例えば、ノズルとノズルの前方に置いた加速電極の間に強電界を印加し、ノズルからインクを液滴状で連続的に噴射させ、インク滴が偏向電極間を飛翔する間に印刷情報信号を偏光電極に与えて記録する方式またはインク滴を偏向することなく印刷情報信号に対応して噴射させる方式(静電吸引方式)、小型ポンプでインク液に圧力を加え、ノズルを水晶振動子等で機械的に振動させることにより、強制的にインク滴を噴射させる方式、インク液に圧電素子で圧力と印刷情報信号を同時に加え、インク滴を噴射・記録させる方式(ピエゾ方式)、インク液を印刷情報信号にしたがって微小電極で加熱発泡させ、インク滴を噴射・記録させる方式(サーマルジェット方式)等が挙げられる。
これらのうちピエゾ方式は、さらに分類が可能であり、薄膜型のインクジェット記録ヘッドを備えたものと、積層型のインクジェット記録ヘッドを備えたものに分類することができる。薄膜型のインクジェット記録ヘッドは、いわゆるユニモルフ型の圧電アクチュエーターを含み、当該圧電アクチュエーターの変位によって、インク組成物をノズルから吐出させる態様のものである。一方、積層型のインクジェット記録ヘッドは、積層型の圧電素子のd31モードの駆動により、ノズルに連通する圧力室の壁を押してノズルから吐出させる態様のものである。後者のインクジェット記録ヘッドは、圧電素子が圧力室の壁を押すことから、縦モードのインクジェット記録ヘッドとも称される。
上記いずれの方式のインクジェット記録ヘッドであっても本実施形態のヘッド10として使用することができるが、縦モードの方式は、光硬化型インク組成物の吐出力を比較的大きくすることができるため、印字位置のズレや、サテライト等の影響のさらに少ない高品質の画像を高速に形成することができる。他方、薄膜型のインクジェット記録ヘッドを用いる場合であって、比較的小型で軽量な構成となるため、本実施形態のインクジェット記録装置100のようなヘッド10が位置を移動する態様(シリアル型)である場合に、高速な動作が可能で、より高精細な高品質の画像を高速に形成することができる。
本実施形態のインクジェット記録装置100に使用することができる記録媒体Pとしては、光硬化型インク組成物の液滴が付着したときに、これを硬化するための光が当該液滴
に達することができるものである限り特に限定されない。記録媒体Pは、インク滴を吸収しない、または、ほとんど吸収しない印字面を有することが好ましい。このような印字面を有する記録媒体Pとしては、例えば、金属、ガラス、プラスチック等の非吸収性記録媒体などが挙げられる。また、記録媒体Pは、無色透明、半透明、着色透明、有彩色不透明、無彩色不透明等であってもよい。さらに、記録媒体Pは、グロス系、マット系、ダル系のいずれであってもよい。このような記録媒体Pとしては、例えば、コート紙、アート紙、キャストコート紙等の表面加工紙、および塩化ビニルシートやPETフィルム等のプラスチックフィルムなどを挙げることができる。市販の記録媒体としては、光沢塩化ビニルシート(例えば商品名SP−SG−1270C:ローランドディージー株式会社製)、PETフィルム(例えば商品名XEROX FILM<枠無し>:富士ゼロックス株式会社製)などがある。
ヘッド10が、第1方向に沿って相対的に走査されるとは、ヘッド10および記録媒体Pの少なくとも一方が移動して、両者の位置関係が第1方向において変化することを指す。
例えば、図1に示すようなシリアル型のインクジェット記録装置100では、キャリッジ50の動作によってヘッド10が走査方向MSに沿って移動する。すなわち、シリアル型のインクジェット記録装置100では、走査方向MSが第1方向となる。この動作によって、ヘッド10が第1方向に移動し、記録媒体P上の異なる位置に、光硬化型インク組成物を付着させることができる。
また、ヘッド10の走査の方向の下流側とは、ヘッド10の記録媒体Pに対する相対的な走査方向と反対側のことを指し、ヘッド10から当該走査において液滴が吐出される場合には、当該走査方向の下流側に位置する記録媒体Pには、ヘッド10から吐出された液滴が付着されることになる。また、記録媒体Pのみが移動される場合であっても、ヘッド10の走査の方向の下流側とは、ヘッド10の記録媒体Pに対する相対的な走査方向と反対側のことを指す。なお、ヘッド10の記録媒体Pに対する相対的な走査方向が変化する態様(例えばヘッド10が第1方向に沿って往復移動する態様)では、ヘッド10の走査の方向の下流側は、ヘッド10の走査方向が異なる度に定義される。
ヘッドが記録媒体Pに対して相対的に走査される速度は、特に限定されないが、例えば1m/分以上50m/分以下とすることができる。このようにすれば、高速に画像の記録を行うことができる。
ノズル孔12は、ヘッドの記録媒体Pと対向する面に形成されている。ヘッド10は、ノズル孔12から、光硬化型インク組成物の液滴を吐出することができる。ノズル孔12の数、および配置は、特に限定されない。図3に示す例では、シリアル型のインクジェット記録装置100のヘッド10では、ノズル孔12は、キャリッジ50の移動方向に対して直交する方向(走査方向SSに沿う方向)に列をなして設けられ、当該列が、キャリッジ50の走査方向MSに沿って、並列して8列形成されている。
1.2.光源
1.2.1.第1光源
第1光源21は、上述のヘッド10と同様に記録媒体Pに対して相対的に走査される。第1光源21の相対的な走査の内容は、上述したヘッド10の走査の内容と同様であるため説明を省略する。
第1光源21は、上述のヘッド10とともに移動し、ヘッド10の移動方向の少なくとも一方の端に配置される。図1ないし図3の例では、第1光源21は、ヘッド10ととも
にキャリッジ50に搭載されている。シリアル型のインクジェット記録装置100では、第1光源21は、ヘッド10の走査方向(図中矢印MS)の両端側に設けられることが好ましい。
第1光源21の形状は、特に限定されないが、キャリッジ50の一回の走査によって、ヘッド10のノズル孔12から吐出された光硬化型インク組成物の液滴に、光を照射できる形状であることが好ましい。例えば、図3の例では、ヘッド10が有するノズル孔12が、キャリッジ50の走査の際に第1光源21からの光の照射領域が描く軌跡を含む軌跡を描くことができるような、第1光源21の形状となっている。また、第1光源21の走査方向の大きさ、および、第1光源21と記録媒体Pとの間の距離は、照射する光の強度、照射する期間などを考慮して、任意に設定することができる。
第1光源21から発生させる光としては、例えば、410nmないし200nmの紫外線、可視光、遠紫外線、g線、h線、i線、KrFエキシマレーザー光、ArFエキシマレーザー光、またはX線等の電磁波が挙げられる。第1光源21の光発生手段としては、特に限定されない。第1光源21の具体的な態様としては、例えば、メタルハライドランプ、キセノンランプ、カーボンアーク灯、ケミカルランプ、低圧水銀ランプ、高圧水銀ランプや、Hランプ、Dランプ、Vランプ(Fusion System社等から入手可能)などの光を、光ガイド、光ファイバー等によって、第1光源21に導くものが挙げられる。また、他の第1光源21の具体的な態様としては、例えば、紫外線発光ダイオード(紫外線LED)や紫外線発光半導体レーザー等の発光素子を用いることができる。第1光源21の光の発生手段が、このような発光素子である場合は、例えば、発光波長が365nm以上410nm以下とすることができる。このような波長を選択すると、光硬化型インク組成物中の光重合開始剤の選択が容易になる。また、第1光源21の光の発生手段として、発光素子を選択すると、第1光源21を小型軽量化することができるとともに、第1光源21の配置に自由度を高めることができる。例えば、図2および図3の例では、第1光源21は、紫外線発光ダイオード(紫外線LED)(符号D)をノズル孔12の列に沿って複数配列させた構成を有している。
第1光源21は、記録媒体Pに付着された光硬化型インク組成物の液滴に、光を照射することができる。第1光源21は、光を発生し続けてもよいし、光を明滅、増減させてもよい。第1光源21は、光硬化型インク組成物の液滴が、吐出され記録媒体Pに付着してから、0.001秒以上1秒以下の時間間隔で第1光源21から発生される光が照射される位置に設けられる。すなわち、第1光源は、記録媒体P上の第1光源21に最も近いノズル孔12から第1距離G1の間隔を隔てた位置に設けられる。付着から1秒を超えてから第1光源21により照射される場合、ブリードが悪化する傾向がある。
また、図2や図3に示すようにヘッド10が第1方向(図示の例ではMSで示す方向)に沿って複数のノズル孔12(ノズル孔12の列)を有する場合は、各ノズル孔12から吐出され記録媒体Pに付着した液滴についてそれぞれ、付着後、1秒以下の時間間隔で第1光源21から発生される光が照射されることが好ましい。特に第1方向に沿って並ぶ複数のノズルから吐出された液滴のうち、付着から0.001秒以上1秒以下の時間間隔で第1光源21から発生される光が照射された液滴については良好な画質が得られる。
ここで、第1光源21が設置される位置は、キャリッジ50や記録媒体Pの走査速度に依存して変化される。例えば、第1光源21に最も近いノズル孔12から第1光源21の光発生部位の間の第1距離G1が10mmであれば、キャリッジ50の走査速度を10m/分とした場合には、当該ノズル孔12から吐出され記録媒体Pに付着してから、0.06秒後に第1光源21から発生される光が照射されることになる。このとき、第1方向の第1光源21に最も近いノズル孔12と最も遠いノズル孔12との第1方向の距離が30
mmであれば、最も遠いノズル孔12から吐出された液滴は記録媒体Pに着弾してから0.24秒後に第1光源21から発生される光が照射されることになる。同様に、例えば、第1光源21に最も近いノズル孔12から第1光源21の光発生部位の間の第1距離G1が140mmであれば、キャリッジ50の走査速度を20m/分とした場合には、当該ノズル孔12から吐出され記録媒体Pに付着してから、0.42秒後に第1光源21から発生される光が照射されることになる。このとき、最も遠いノズル孔12から吐出された液滴は記録媒体に着弾してから0.51秒後に第1光源21から発生される光が照射されることになる。このように、第1方向に沿って並ぶ複数のノズル孔12から吐出される液滴が、それぞれ、0.001秒以上1秒以下の時間間隔で第1光源21から発生される光が照射されるよう、複数のノズル孔の第1方向の距離と距離G1とキャリッジ走査速度を設定する。
上記の値は、各構成の実寸の例示であって、本実施形態のインクジェット記録装置100の実寸は、ヘッド10のノズル孔12から吐出され記録媒体Pに付着してから、1秒以下の時間間隔で第1光源21から発生される光が照射される限りなんら限定されない。
第1光源21の機能の一つとしては、記録媒体Pに付着した光硬化型インク組成物の液滴の硬化反応を行うことが挙げられる。光硬化型インク組成物の液滴は、記録媒体Pが非吸収性である場合には、未硬化であると、記録媒体P上で必要以上に濡れ広がったり、他の液滴と合一して必要以上に混色したりする。当該液滴が付着した後、第1光源21からの光が、上述の時間範囲内で照射されることにより、液滴を構成する光硬化型インク組成物の一部が硬化し、記録媒体P上で必要以上に濡れ広がること、および、他の液滴と合一して必要以上に混色等をすることを抑制することができる。本明細書では、このような光の照射の態様のことを「ピニング」(仮硬化)と称することがある。言い換えると第1光源21の機能の一つとしては、光硬化型インク組成物の液滴をピニングすることが挙げられる。
第1光源21によるピニングの程度は、液滴中の光硬化型インク組成物の転化率(硬化率)、すなわち、液滴全体の組成物に対する硬化された組成物の割合によって表現することができる。第1光源21によるピニングの程度は、転化率(硬化率)で表現する場合、1%以上30%未満となるように照射される。第1光源21によるピニングは、光硬化型インク組成物の液滴が、大幅に濡れ広がることや、顕著に混色することを抑制するために行われ、これらの現象を完全に抑えるものではない。第1光源21によるピニングの程度が転化率において30%以上となると、液滴の粘度が高くなりすぎて、必要な濡れ広がりや、必要な混色が得られなくなることがあり、また、液滴の形状が付着されたときの形状で維持されてしまい、例えば、形成される画像の光沢や質感に悪影響がある場合がある。第1光源21によるピニングの程度は、大きいドットを速く形成させる点では、転化率で1%以上10%未満であることがより好ましく、1%以上5%未満であることがさらに好ましい。本明細書においては、硬化率と転化率は同じ意味で用いる。
なお、第1光源21によるピニングの程度は、第1光源21の光量、光量の増減、明滅、走査方向の大きさ、および記録媒体Pとの間の距離、並びに、光硬化型インク組成物中の光重合開始剤の量、色材の種類などの少なくとも一種を調節することによって、上記範囲に設定することができる。
1.2.2.第2光源
第2光源22は、上述のヘッド10と同様に記録媒体Pに対して相対的に走査される。第2光源22の相対的な走査の内容は、上述したヘッド10の走査の内容と同様であるため説明を省略する。
第2光源22は、ヘッド10に対して第1光源21と組となって配置される。すなわち第2光源22は、第1光源21に対してヘッド10とは反対側の位置に配置される。図1ないし図3の例では、第2光源22は、ヘッド10とともにキャリッジ50に搭載されている。第2光源22は、図1に示すようなシリアル型のインクジェット記録装置100では、ヘッド10の走査方向(図中矢印MS)の両端側に設けられることが好ましい。そして、第2光源22は、第1光源21から、第2距離G2の間隔を隔てて配置される。
第2光源22の形状は、特に限定されないが、キャリッジ50の一回の走査によって、ヘッド10のノズル孔12から吐出された光硬化型インク組成物の液滴に、光を照射できる形状であることが好ましい。例えば、図3の例では、ヘッド10が有するノズル孔12が、キャリッジ50の走査の際に第2光源22からの光の照射領域が描く軌跡を含む軌跡を描くことができるような、第2光源22の形状となっている。また、第2光源22の走査方向の大きさ、および、第2光源22と記録媒体Pとの間の距離は、照射する光の強度、照射する期間などを考慮して、任意に設定することができる。
第2光源22から発生させる光としては、上述の第1光源21と同様であるため、説明を省略する。図2および図3の例では、第2光源22は、紫外線発光ダイオード(紫外線LED)(符号D)をノズル孔12の列に沿って複数配列させた構成を有している。なお、第1光源21と第2光源22の光を発生させるための構成は、種類や波長の点で互いに異なっていてもよい。
第2光源22は、記録媒体Pに付着された光硬化型インク組成物の液滴に、光を照射することができる。第2光源22は、光を発生し続けてもよいし、光を明滅、増減させてもよい。第2光源22は、光硬化型インク組成物の液滴に、第1光源21からの光が照射され終わってから、0.1秒以上1秒以下の時間間隔で第2光源22から発生される光が照射される位置に設けられる。すなわち、第2光源は、記録媒体P上において、第1光源21からの光が照射され終わった液滴の位置に、記録媒体P上における第2光源22の光照射領域が、0.1秒以上1秒以下の時間間隔で到達するように、第1光源21から第2距離G2の間隔を隔てた位置に設けられる。このとき、第1方向における第1光源21に最も近いノズル孔12の位置以外の位置にあるノズル孔12から吐出される液滴も、第1光源21からの光が照射され終わってから、0.1秒以上1秒以下の時間間隔で第2光源22からの光が照射されることが好ましい。1秒を越えてから照射される場合、ブリードが悪化することがある。0.1秒未満の時間に照射される場合、線幅や光沢が低下することがある。
また、第2光源22が設置される位置は、キャリッジ50や記録媒体Pの走査速度に依存して変化される。例えば、第2光源22の光発生部位が、第1光源22の光発生部位の第2光源に近い側の端からの距離が20mm(第2距離G2)であれば、キャリッジ50の走査速度を10m/分とした場合には、第1光源21の光が照射された後、0.12秒後に第2光源22から発生される光が照射されることになる。このとき、第1方向に並ぶ複数のノズル孔の何れから吐出された液滴も、第1光源21の光が照射された後、第2光源22から発生される光が照射されるまでの時間は同様である。同様に、例えば、第2光源22の光発生部位が、第1光源22の光発生部位から140mm(第2距離G2)であれば、キャリッジ50の走査速度を20m/分とした場合には、第1光源21の光が照射された後、0.42秒後に第2光源22から発生される光が照射されることになる。これらの値は、各構成の実寸の例示であって、本実施形態のインクジェット記録装置100の実寸は、第2光源22が、光硬化型インク組成物の液滴に、第1光源21の光が照射された後、0.1秒以上1秒以下の時間間隔で、第2光源22から発生される光が照射される限りなんら限定されない。
第2光源22の機能の一つとしては、記録媒体Pに付着した光硬化型インク組成物の液滴の硬化反応を行うことが挙げられる。光硬化型インク組成物の液滴は、記録媒体Pが非吸収性である場合には、未硬化であると、記録媒体P上で必要以上に濡れ広がったり、他の液滴と合一して必要以上に混色したりする。本実施形態のインクジェット記録装置100では、既に述べた第1光源21によって、このような現象を抑制し、適度な転化率(液滴の粘性)を持たせ、制御された濡れ広がりや混色を、第2光源22の光が照射されるまでの期間(0.1秒以上1秒以下)に行わせる。そして、第2光源22の光によって、さらに、液滴を構成する光硬化型インク組成物の一部を硬化させ、記録媒体P上で濡れ広がること、および、他の液滴と合一して混色等をすることを制御する。すなわち、本実施形態のインクジェット記録装置100では、第1光源21の光および第2光源の光による2回のピニングによって、光硬化型インク組成物の液滴の形状や濡れ広がり、混色の程度を制御する。
第2光源22の光の照射によるピニングの硬化率の程度は、第1光源21の光によるピニングとの通算において、例えば、30%を超え80%以下となるように設定される。第2光源22によるピニングの程度が転化率で80%を超えると、液滴の粘度が高くなりすぎて、必要な濡れ広がりや、必要な混色が得られなくなることがある。また、第2光源22によるピニングの程度が転化率で80%を超えると、液滴の形状が付着されたときの形状で維持されてしまい、例えば、形成される画像の光沢や質感に悪影響がある場合がある。第2光源22によるピニングの程度は、例えば十分な線幅を確保する点で、転化率で40%以上80%以下であることがより好ましく、50%以上80%以下であることがさらに好ましい。
なお、第2光源22によるピニングの程度は、第2光源22の光量、光量の増減、明滅、走査方向の大きさ、および記録媒体Pとの間の距離、並びに光硬化型インク組成物中の光重合開始剤の量、色材の種類などの少なくとも一種を調節することによって、上記範囲に設定することができる。
また、上記のとおり、第1距離G1および第2距離G2は、上述の時間間隔が実現できるように設定されるが、第1距離G1のほうが第2距離G2よりも小さくなるようにすることもできる。このようにすれば、キャリッジ50または記録媒体Pの走査速度が一定である場合には、記録媒体Pに付着した光硬化型インク組成物の液滴の濡れ広がりや混色を、第1光源21の光によって制御するとともに、当該制御された状態で濡れ広がりや混色を生じさせる期間を長くすることができる。これにより、液滴のドット径や表面凹凸を制御しやすくすることができる。
第1光源21と第2光源22は、第1方向に沿って、例えば図2においてヘッド10が右側に走査する場合に、ヘッド10の左側(走査方向の下流側)に、ヘッド10から第1光源21、第2光源22の順番に配置させる。また、ヘッド10が図2の右側に走査するときに液滴の吐出を行い、左側に走査するときは液滴の吐出を行わない単方向印刷を行う場合は、ヘッド10の少なくとも左側に第1光源21と第2光源22を配置していればよい。ヘッド10が図2の右側へ走査する場合も左側へ走査する場合も液滴の吐出を行うのであれば図2のようにヘッド10の右側および左側(いずれもヘッド10の走査方向の下流側となる)に第1光源と第2光源をそれぞれ配置させることができる。
1.2.3.第3光源
本実施形態のインクジェット記録装置100は、さらに、ヘッド10および記録媒体Pの相対的な走査にともなって、記録媒体Pに付着された液滴に光を照射する第3光源23を備えてもよい。
第3光源23は、上述のヘッド10と同様に記録媒体Pに対して相対的に走査されてもよいし、記録媒体Pの移動方向の下流側にキャリッジ50と別に設置され、ヘッド10による走査より後に第3光源による照射が行われるようにしてもよい。図1ないし図3では、第3光源23がキャリッジに設けられてヘッド10とともに移動し、第1光源21および第2光源22による照射が行われる走査より後の走査によって、第3光源23による照射が行われる態様を例示している。この形態の他にも、例えば、第3光源がキャリッジにおける2つの第2光源22のそれぞれ主走査方向のヘッド10とは反対側の第2光源22と離れた位置に2つあり、第1光源21および第2光源22による照射が行われる走査と同じ走査にて第1光源21および第2光源22による照射の後に第3光源23による照射が行われるようにしてもよい。また、本実施形態のインクジェット記録装置100は、第3光源23を有さなくてもよく、その場合は、必要に応じて他の光照射装置等を用いて、記録媒体Pに付着され第1光源21および第2光源22によってピニングされた光硬化型インク組成物を硬化させればよい。あるいは、第1光源21および第2光源22による照射が行われる走査により所定の硬化率に硬化するピニングをした後に、さらにキャリッジ50が移動し第1光源21および第2光源22によって照射をさらに行ってもよい。
本実施形態のインクジェット記録装置100では、第3光源23は、ヘッド10に対して記録媒体Pの移動方向の下流側(ヘッド10の走査方向MSに交差する記録媒体Pの搬送方向SSの下流側)に配置される。そして本実施形態では、第3光源23は、上述のヘッド10とともに第1方向に走査される。第3光源23の走査の内容は、上述したヘッド10の走査の内容と同様であるため説明を省略する。
第3光源23の形状は、特に限定されない。第3光源23は、第1光源21および第2光源22によってピニングされた液滴を、さらに硬化させるための光を照射することができる。換言すると、第3光源23は、記録媒体Pの走査方向の下流側(光硬化型インク組成物が、記録媒体Pに付着した後に、第3光源23の光を照射できる側:図中矢印SSの先端側)の一端に設けられる。図示の例に基づくと、記録媒体Pの走査方向SSを示す矢印SSの先端側のヘッド10の端に沿って、第3光源23が設けられている。
第3光源23から発生させる光としては、上述の第1光源21と同様であるため、説明を省略する。図示の例では、第3光源23は、紫外線発光ダイオード(紫外線LED)(符号D)をマトリックス状に複数配列させた構成を有している。
第3光源23は、記録媒体Pに付着された光硬化型インク組成物の液滴に、光を照射することができる。第3光源23は、光を発生し続けてもよいし、光を明滅、増減させてもよい。第3光源23の大きさは、特に限定されない。しかし、図示の例では、第3光源23の、記録媒体Pの移動方向(走査方向SS)の大きさは、インクジェット記録装置100を稼働させたときの、記録媒体Pの移動の単位となる距離よりも大きいことが好ましい。このようにすれば、光硬化型インク組成物の液滴に確実に第3光源23の光を照射することができる。また、第3光源23の移動方向(走査方向MS)の大きさも限定されず、装置の筐体の大きさ等に合わせて設計することができる。
第3光源23の機能の一つとしては、記録媒体Pに付着した光硬化型インク組成物の液滴の硬化反応を行うことが挙げられる。光硬化型インク組成物の液滴は、記録媒体Pが非吸収性である場合には、上述の第1光源21および第2光源22の光によって、2段階のピニングが行われ、その後に、第3光源23の光によって、光硬化型インク組成物を十分に硬化させる(本硬化)ことができる。
本実施形態のインクジェット記録装置100では、第3光源23の光は、記録媒体Pの走査によって、液滴に到達することになる。すなわち液滴は、ヘッド10から吐出されて
、記録媒体Pに付着し、第1光源21および第2光源22の光によって、少なくとも2回のピニングを受ける。その後、記録媒体Pが走査方向SSに移動してヘッド10(キャリッジ50)がヘッド10の走査方向MSに移動して当該液滴の位置に到達したときに、第3光源23の光が照射される。そして、記録媒体Pの走査方向SSの搬送量に依存するが、当該液滴の位置に対して、第3光源23の光が複数回照射されることになる。したがって、このような場合には、ピニング後の液滴に対して、第3光源23の光が、複数回にわたって、間欠的に照射されることになる。
本実施形態のインクジェット記録装置100では、第3光源23の光が、ピニングされた後の光硬化型インク組成物の液滴に対して、間欠的に照射されることができる。したがって、ピニング後の液滴の硬化反応の進行が、より緩やかとなり、例えば、ドット表面がより平滑に近くなる、硬化による収縮が緩和される等の効果が得られる。
第3光源23の光の照射後の硬化の程度は、第1光源21ないし第3光源23の光による硬化率の通算において、例えば、80%を超え100%以下であることが好ましい。第3光源23による硬化(本硬化)の程度は、転化率で80%を超えていれば、十分な硬化が達成されるが90%以上であることがさらに好ましい。
1.3.その他の構成
本実施形態のインクジェット記録装置100は、以下の構成を有することができる。
本実施形態で例示しているインクジェット記録装置100では、上述のようにヘッド10は、3色以上のインクを噴射するフルカラー印刷用のシリアル型ヘッドであり、各色ごとに多数のノズル孔12が備えられている。かかるヘッド10が搭載されるキャリッジ50には、ヘッド10の他に、ヘッド10に供給される各種の光硬化型インク組成物を収容したインク容器としてのカートリッジ52が複数搭載されている。各カートリッジ52に収容されるインクは、後述する光硬化型インク組成物である。なお、ヘッド10が吐出する光硬化型インク組成物は、1色でも良いし2色以上であっても良い。
また、図1に示したインクジェット記録装置100は、記録媒体Pを走査方向SSに送るモーター30と、プラテン40と、ヘッド10を搭載したキャリッジ50と、キャリッジ50を走査方向MSに移動させるキャリッジモーター60と、を備えている。
キャリッジ50は、キャリッジモーター60に駆動される牽引ベルト62によって牽引され、ガイドレール64に沿って移動する。ヘッド10は、キャリッジ50に搭載されており、キャリッジ50の走査方向MSへの動作に伴って、走査方向MSに移動する。
また、図示のインクジェット記録装置100では、キャリッジ50のホームポジション(図1の右側の位置)には、停止時にヘッド10のノズル孔12が形成された面を密閉するためのキャッピング装置80が設けられている。印刷ジョブが終了してキャリッジ50がこのキャッピング装置80の上まで到達すると、図示しない機構によってキャッピング装置80が自動的に上昇して、ヘッド10のノズル孔12が形成された面を密閉することができる。
1.4.変形例
以下本実施形態のインクジェット記録装置の変形例として、ヘッド12が固定され記録媒体Pが移動することにより両者の間の位置関係を変化させることによってヘッド12が記録媒体に対して相対的に走査される型式のインクジェット記録装置200(いわゆるライン型のインクジェット記録装置)について述べる。
図4は、ライン型のインクジェット記録装置200のヘッド210、第1光源21、および第2光源22の側面を模式的に示している。図5は、ライン型のインクジェット記録装置200のヘッド210、第1光源21、および第2光源22の上面を模式的に示している。また、これらの図には、記録媒体Pが描かれている。
図4および図5に示すように、変形例のインクジェット記録装置200では、記録媒体Pの移動する方向(走査方向SS)が第1方向となる。この場合においても、記録媒体Pが搬送されることによって、ヘッド210と記録媒体Pの間の位置関係が第1方向において変化する。これにより、記録媒体P上の異なる位置に、光硬化型インク組成物を付着させることができる。
また、ライン型のインクジェット記録装置200においては、第1光源21および第2光源22は、記録媒体Pの移動方向(第1方向)の下流側(ヘッド210によって付着された液滴に、第1光源21および第2光源22からの光が照射される側)の端に設けられる。
図4および図5に示すように、ライン型のインクジェット記録装置200においては、ヘッド210におけるノズル孔12の配置としては、記録媒体Pの移動方向に対して交差する方向(走査方向MSに沿う方向)に列をなして設けられ、当該列が、記録媒体Pの走査方向SSに沿って、並列して複数列形成されたものを例示することができる。
そして、ライン型のインクジェット記録装置200においては、記録媒体Pの移動によって、ヘッド210と記録媒体Pの間の位置関係が第1方向において変化すること以外は、実質的に上述の実施形態のシリアル型のインクジェット記録装置100と同様であるため、詳細な説明は省略する。
なお、実施形態および変形例では、ヘッドに複数のノズル列が設けられる態様を例示したが、ヘッドに単数のノズル列が設けられる態様であってもよい。ヘッドに単数のノズル列が設けられる態様では、単色の記録を行うことができるが、本発明にかかるインクジェット記録装置は、このような単色のヘッド、第1光源および第2光源の組を複数有して、複数色の画像の記録が可能なインクジェット記録装置としてもよい。図4のライン型のインクジェット記録装置においても、第3光源を備えて第1光源及び第2光源による照射のあとでさらに照射を行わせてもよい。第3光源は第2光源よりも記録媒体搬送方向の下流側に設ければよい。
1.5.光硬化型インク組成物
本実施形態のインクジェット記録装置100のヘッド100によって吐出される光硬化型インク組成物としては、例えば、少なくとも、重合性化合物と、光重合開始剤とを含有するものが挙げられる。
1.5.1.重合性化合物
本実施形態の光硬化型インク組成物は、重合性化合物を含有する。このような重合性化合物としては、光カチオン重合性および光ラジカル重合性の少なくとも一方を有するものが挙げられる。光硬化型インク組成物に含有される重合性化合物は、一分子内に光カチオン重合性の官能基と光ラジカル重合性の官能基を有してもよい。重合性化合物は、単量体であるモノマーと二量体から数量体もしくは分子量が数千程度までのオリゴマーを含む。それらの含有量は、インクジェット用インクとして使用可能な粘度範囲になるように調整される。
光ラジカル重合性の基としては、光ラジカル重合可能な不飽和二重結合を有する基から
なるものが挙げられ、例えば、アクリロイル基、メタクリロイル基、アクリルアミド基、メタクリルアミド基、アリル基、ビニルエーテル基、ビニルチオエーテル基、ビニルアミノ基、ビニル基が挙げられ、光ラジカル重合反応性が特に高いという観点から、より好ましくはアクリロイル基、アクリルアミド基、メタクリロイル基、メタクリルアミド基が挙げられ、さらに好ましくはアクリロイル基とアクリルアミド基が挙げられる。
光ラジカル重合性化合物のモノマーの具体例としては、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、フマル酸、及びマレイン酸等の不飽和カルボン酸及びそのエステル類、スチレン、ビニルトルエン、ジメチルスチレン等のスチレン誘導体、N−ビニルピロリドン、N−ビニルカプロラクタム、N−ビニルホルムアミド、N−ビニルアセトアミド等のN−ビニル化合物、N−置換マレイミド、アクリロニトリル、アクリロイルモルホリン等が挙げられる。
光ラジカル重合性化合物のオリゴマーの具体例としては、ポリエステルアクリレート、ポリウレタンアクリレート、エポキシアクリレート、ポリエーテルアクリレート、オリゴアクリレート、アルキドアクリレート、ポリオールアクリレート、ポリエステルメタクリレート、ポリウレタンメタクリレート、エポキシメタクリレート、ポリエーテルメタクリレート、オリゴメタクリレート、アルキドメタクリレート、ポリオールメタクリレート等が挙げられる。
これらの中でも、本実施形態の重合性化合物としては、アクリロイル基を有するアクリル酸エステル類、N−ビニル化合物及びアクリロイルモルホリンが、光重合性に優れることから好ましい。
また、重合性化合物の具体的な例としては、(メタ)アクリレート類、(メタ)アクリルアミド類、N−ビニル化合物などが挙げられる。
単官能(メタ)アクリレートとしては、ヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、tert−オクチル(メタ)アクリレート、イソアミル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、4−n−ブチルシクロへキシル(メタ)アクリレート、ボルニル(メタ)アクリレート、イソボニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシルジグリコール(メタ)アクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレート、2−クロロエチル(メタ)アクリレート、4−ブロモブチル(メタ)アクリレート、シアノエチル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、ブトキシメチル(メタ)アクリレート、3−メトキシブチル(メタ)アクリレート、アルコキシメチル(メタ)アクリレート、アルコキシエチル(メタ)アクリレート、2−(2−メトキシエトキシ)エチル(メタ)アクリレート、2−(2−ブトキシエトキシ)エチル(メタ)アクリレート、2,2,2−テトラフルオロエチル(メタ)アクリレート、1H,1H,2H,2H−パーフルオロデシル(メタ)アクリレート、4−ブチルフェニル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、2,4,5−テトラメチルフェニル(メタ)アクリレート、4−クロロフェニル(メタ)アクリレート、フェノキシメチル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、グリシジロキシブチル(メタ)アクリレート、グリシジロキシエチル(メタ)アクリレート、グリシジロキシプロピル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエ
チルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、トリメトキシシリルプロピル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、トリメトキシシリルプロピル(メタ)アクリレート、トリメチルシリルプロピル(メタ)アクリレート、ポリエチレンオキシドモノメチルエーテル(メタ)アクリレート、オリゴエチレンオキシドモノメチルエーテル(メタ)アクリレート、ポリエチレンオキシド(メタ)アクリレート、オリゴエチレンオキシド(メタ)アクリレート、オリゴエチレンオキシドモノアルキルエーテル(メタ)アクリレート、ポリエチレンオキシドモノアルキルエーテル(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコール(メタ)アクリレート、ポリプロピレンオキシドモノアルキルエーテル(メタ)アクリレート、オリゴプロピレンオキシドモノアルキルエーテル(メタ)アクリレート、2−メタクリロイロキシエチルコハク酸、2−メタクリロイロキシヘキサヒドロフタル酸、2−メタクリロイロキシエチル−2−ヒドロキシプロピルフタレート、ブトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、トリフロロエチル(メタ)アクリレート、パーフロロオクチルエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、EO変性フェノール(メタ)アクリレート、EO変性クレゾール(メタ)アクリレート、EO変性ノニルフェノール(メタ)アクリレート、PO変性ノニルフェノール(メタ)アクリレート、EO変性−2−エチルヘキシル(メタ)アクリレートが挙げられる。
多官能(メタ)アクリレートとしては、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,10−デカンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート(DPGD(M)A)、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート(TPGD(M)A)、2,4−ジメチル−1,5−ペンタンジオールジ(メタ)アクリレート、ブチルエチルプロパンジオールジ(メタ)アクリレート、エトキシ化シクロヘキサンメタノールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート(TEGD(M)A)、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、オリゴエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、2−エチル−2−ブチル−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ジメチロールトリシクロデカンジ(メタ)アクリレート、EO変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールFポリエトキシジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、オリゴプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、2−エチル−2−ブチル−プロパンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、プロポキシ化エトキシ化ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジ(メタ)アクリレート等の2官能の(メタ)アクリレートが挙げられる。
さらに、多官能の(メタ)アクリレートとしては、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンのアルキレンオキサイド変性トリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスルトールトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ((メタ)アクリロイルオキシプロピル)エーテル、イソシアヌル酸アルキレンオキサイド変性トリ(メタ)アクリレート、プロピオン酸ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリ((メタ)アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート、ヒドロキシピバルアルデヒド変性ジメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ソルビトールトリ(メタ)アクリレート、プロポキシ化トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エトキシ化グリセリントリ(メタ)アクリレート:以上3官能、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ソルビトールテトラ(メタ)アクリレ
ート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、プロピオン酸ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、エトキシ化ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート:以上4官能、ソルビトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート:以上5官能、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ソルビトールヘキサ(メタ)アクリレート、フォスファゼンのアルキレンオキサイド変性ヘキサ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート:以上6官能、等が挙げられる。
(メタ)アクリルアミド類としては、(メタ)アクリルアミド、N−メチル(メタ)アクリルアミド、N−エチル(メタ)アクリルアミド、N−プロピル(メタ)アクリルアミド、N−n−ブチル(メタ)アクリルアミド、N−t−ブチル(メタ)アクリルアミド、N−ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−イソプロピル(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチル(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリロイルモルフォリンが挙げられる。
N−ビニル化合物は、ビニル基が窒素に結合した構造(>N−CH=CH)を有する。N−ビニル化合物の具体例としては、例えば、N−ビニルホルムアミド、N−ビニルカルバゾール、N−ビニルインドール、N−ビニルピロール、N−ビニルアセトアミド、N−ビニルピロリドン、N−ビニルカプロラクタム、およびそれらの誘導体が挙げられ、これらの化合物の中でも特にN−ビニルカプロラクタムが好ましい。
光カチオン重合性の基としては、エポキシ環、オキセタン環、オキソラン環、ジオキソラン環、およびビニルエーテル基が挙げられる。エポキシ環については、芳香族系および脂環系が硬化速度に優れるという観点から好ましく、特に脂環式エポキシ環が好ましい。
カチオン重合性を有する重合性化合物の具体例としては、カチオン重合性化合物としては、エポキシ化合物、ビニルエーテル化合物、オキセタン化合物等が挙げられる。
光硬化型インク組成物に含有される重合性化合物の含有量は、光硬化型インク組成物全体に対して5質量%以上95質量以下が適当であり、好ましくは、7質量%以上90質量%以下、さらに好ましくは、10質量%以上80質量%以下の範囲である。
1.5.2.光重合開始剤
本実施形態の光硬化型インク組成物は、光重合開始剤を含有する。光重合開始剤としては、光によって、重合性化合物の重合を引き起こす活性種を生じる物質を挙げることができる。
光によってラジカルを発生する光重合開始剤(光ラジカル重合開始剤)としては、アリールアルキルケトン、オキシムケトン、チオ安息香酸S−フェニル、チタノセン、芳香族ケトン、チオキサントン、ベンジルとキノン誘導体、ケトクマリン類などの従来公知の開始剤が使用できる。
光ラジカル重合開始剤の具体例としては、アセトフェノン、2,2−ジエトキシアセトフェノン、p−ジメチルアミノアセトフェノン、ベンゾフェノン、2−クロロベンゾフェノン、p,p’−ジクロロベンゾフェノン、p,p’−ビスジエチルアミノベンゾフェノン、ミヒラーケトン、ベンジル、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾイン−n−プロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、ベンゾイン−n−ブチルエーテル、ベンジルメチルケタール、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、1−ヒドロキシシク
ロヘキシルフェニルケトン、2−ヒドロキシ−1−{4−[4−(2−ヒドキシ−2−メチルプロピオニル)ベンジル]フェニル}2−メチルプロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)ブタノン−1、2−ジメチルアミノ−2−(4−メチルベンジル)−1−(4−モルフォリン−4−イル−フェニル)ブタン−1−オン、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルフォスフィンオキサイド、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルフォスフィンオキサイド、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]2−モルフォリノプロパン−1−オン、チオキサントン、2−クロロチオキサントン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−1−オン、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、メチルベンゾフィルフォーメート、アゾビスイソブチリロニトリル、ベンゾイルペルオキシド、ジ−tert−ブチルペルオキシド等が挙げられる。
光ラジカル重合開始剤の市販品としては、例えば、IRGACURE 651(2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン)、IRGACURE 184(1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン)、DAROCUR 1173(2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン)、IRGACURE 2959(1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン)、IRGACURE 127(2−ヒドロキシ−1−{4−[4−(2−ヒドロキシ−2−メチル−プロピオニル)−ベンジル]フェニル}−2
−メチル−プロパン−1−オン)、IRGACURE 907(2−メチル−1−(4−メチルチオフェニル)−2−モルフォリノプロパン−1−オン)、IRGACURE 369(2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1)、IRGACURE 379(2−(ジメチルアミノ)−2−[(4−メチルフェニル)メチル]−1−[4−(4−モルホリニル)フェニル]−1−ブタノン)、DAROCUR TPO(2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニル−フォスフィンオキサイド)、IRGACURE 819(ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド)、IRGACURE 784(ビス(η5−2,4−シクロペンタジエン−1−イル)−ビス(2,6−ジフルオロ−3−(1H−ピロール−1−イル)−フェニル)チタニウム)、IRGACURE OXE 01(1.2−オクタンジオン,1−[4−(フェニルチオ)−,2−(O−ベンゾイルオキシム)])、IRGACURE OXE 02(エタノン,1−[9−エチル−6−(2−メチルベンゾイル)−9H−カルバゾール−3−イル]−,1−(O−アセチルオキシム))、IRGACURE 754(オキシフェニル酢酸、2−[2−オキソ−2−フェニルアセトキシエトキシ]エチルエステルとオキシフェニル酢酸、2−(2−ヒドロキシエトキシ)エチルエステルの混合物)(以上、チバ・ジャパン社(Ciba Japan K.K.)製)、DETX−S(2,4−ジエチルチオキサントン)(日本化薬社(Nippon Kayaku Co., Ltd.)製)、Lucirin TPO、LR8893、LR8970(以上、BASF社製)、及びユベクリルP36(UCB社製)が挙げられる。
光によってカチオン(酸)を発生する光重合開始剤(光カチオン重合開始剤)としては、アリールスルホニウム塩やアリールヨードニウム塩等のオニウム塩、o−ニトロベンジルトシレート、アリールスルホン酸p−ニトロベンジルエステル、スルホニウムアセトフェノン誘導体等のスルホン酸を発生する開始剤、鉄−アレン錯体等のアレン−イオン錯体誘導体、ジアゾニウム塩誘導体、トリアジン系開始剤及びその他のハロゲン化物等の酸発生剤が挙げられる。光カチオン重合開始剤の具体例としては、アリールスルホニウム塩誘導体としては、ユニオン・カーバイド社製のサイラキュアUVI−6990、サイラキュアUVI−6974、旭電化工業社製のアデカオプトマーSP−150、アデカオプトマーSP−152、アデカオプトマーSP−170、アデカオプトマーSP−172等が挙げられ、アリルヨードニウム塩誘導体としてはローディア社製のRP−2074等が挙げ
られ、アレン−イオン錯体誘導体としてはチバガイギー社製のイルガキュア261等が挙げられる。
光硬化型インク組成物に含有される重合開始剤の含有量は、光硬化型インク組成物全体に対して、1質量%以上20質量%以下含まれることが好ましく、3質量%以上15質量%以下含まれることがより好ましい。上記範囲とすることにより、硬化後の光硬化型インク組成物の機械的強度を低下させることなく硬化性を保持する効果を奏する。光重合開始剤は、照射される光に感度を有するものを適宜選択して使用することができる。また、光重合開始剤の種類および配合量によって、光硬化型インク組成物の液滴のピニングの程度を調節することができる。例えば、ピニングの程度を小さくしたい場合には、第1光源21および第2光源22の光量を減少させることによってピニングの程度が調節できるが、上記範囲内で、光重合開始剤の配合量を小さくすることによってもこれを行うことができる。
重合性化合物と光重合開始剤は、光ラジカル重合性化合物の光重合には光ラジカル重合開始剤を使用し、光カチオン重合性化合物の光重合には光カチオン重合開始剤を使用する。光ラジカル重合性化合物と光カチオン性重合性化合物を併用する場合は、光ラジカル重合開始剤と光カチオン重合開始剤を併用する。
1.5.3.その他の成分
1.5.3.1.色材
本実施形態の光硬化型インク組成物は、色材および分散剤を含有することができる。
この場合、色材としては、顔料および染料が挙げられ、通常のインクに使用することのできる色材を特に制限なく用いることができる。
本実施形態のインク組成物は、色材をさらに含んでもよい。上記色材は、顔料及び染料から選択されるが、耐光性の観点から顔料を使用することが好ましい。本実施形態において、色材として顔料を用いることにより、インク組成物の耐光性を向上させることができる。顔料は、無機顔料及び有機顔料のいずれも使用することができる。インク組成物中に、色材は、1〜10質量%含まれると好ましく、1〜5質量%含まれるとより好ましい。
無機顔料としては、ファーネスブラック、ランプブラック、アセチレンブラック、チャネルブラック等のカーボンブラック(C.I.ピグメントブラック7)類、酸化鉄、酸化チタンを使用することができる。
また、有機顔料として、不溶性アゾ顔料、縮合アゾ顔料、アゾレーキ、キレートアゾ顔料等のアゾ顔料、フタロシアニン顔料、ペリレン及びペリノン顔料、アントラキノン顔料、キナクリドン顔料、ジオキサン顔料、チオインジゴ顔料、イソインドリノン顔料、キノフタロン顔料等の多環式顔料、染料キレート(たとえば、塩基性染料型キレート、酸性染料型キレート等)、染色レーキ(塩基性染料型レーキ、酸性染料型レーキ)、ニトロ顔料、ニトロソ顔料、アニリンブラック、昼光蛍光顔料が挙げられる。上記顔料は1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
更に詳しくは、ブラック用として使用される無機顔料として、以下のカーボンブラック、例えば、三菱化学製のNo.2300、No.900、MCF88、No.33、No.40、No.45、No.52、MA7、MA8、MA100、又はNo2200B等;コロンビア社製のRaven5750、Raven5250、Raven5000、Raven3500、Raven1255、又はRaven700等;キャボット社製のRegal 400R、Regal 330R、Regal 660R、Mogul L、
Monarch 700、Monarch 800、Monarch 880、Monarch 900、Monarch 1000、Monarch 1100、Monarch 1300、又はMonarch 1400等;あるいは、デグッサ社製のColor
Black FW1、Color Black FW2、Color Black FW2V、Color Black FW18、Color Black FW200、Color Black S150、Color Black S160、Color Black S170、Printex 35、Printex U、Printex V、Printex 140U、Special Black 6、Special Black 5、Special Black 4A、又はSpecial Black 4等を挙げることができる。
イエロー有機顔料としては、C.I.Pigment Yellow 1, C.I.Pigment Yellow 2, C.I.Pigment Yellow 3, C.I.Pigment Yellow 4, C.I.Pigment Yellow 5, C.I.Pigment Yellow 6, C.I.Pigment Yellow 7, C.I.Pigment Yellow 10, C.I.Pigment Yellow 11, C.I.Pigment Yellow 12, C.I.Pigment Yellow 13, C.I.Pigment Yellow 14, C.I.Pigment Yellow 16, C.I.Pigment Yellow 17, C.I.Pigment Yellow 24, C.I.Pigment Yellow 34, C.I.Pigment Yellow 35, C.I.Pigment Yellow 37, C.I.Pigment Yellow 53, C.I.Pigment Yellow 55,
C.I.Pigment Yellow 65, C.I.Pigment Yellow 73, C.I.Pigment Yellow 74, C.I.Pigment Yellow 75, C.I.Pigment Yellow 81, C.I.Pigment Yellow 83, C.I.Pigment Yellow 93, C.I.Pigment Yellow 94, C.I.Pigment Yellow 95, C.I.Pigment Yellow 97, C.I.Pigment Yellow 98, C.I.Pigment Yellow
99, C.I.Pigment Yellow 108, C.I.Pigment Yellow 109, C.I.Pigment Yellow 110, C.I.Pigment Yellow 113, C.I.Pigment Yellow 114, C.I.Pigment
Yellow 117, C.I.Pigment Yellow 120, C.I.Pigment Yellow 124, C.I.Pigment Yellow 128, C.I.Pigment Yellow 129, C.I.Pigment Yellow 133, C.I.Pigment Yellow 138, C.I.Pigment Yellow 139, C.I.Pigment Yellow 147,
C.I.Pigment Yellow 151, C.I.Pigment Yellow 153, C.I.Pigment Yellow 154, C.I.Pigment Yellow 167, C.I.Pigment Yellow 172, C.I.Pigment Yellow 180等が挙げられる。
マゼンタ有機顔料としては、C.I.Pigment Red 1, C.I.Pigment Red 2, C.I.Pigment Red 3, C.I.Pigment Red 4, C.I .Pigment Red 5, C.I.Pigment Red
6, C.I.Pigment Red 7, C.I.Pigment Red 8, C.I.Pigment Red 9, C.I.Pigment Red 10, C.I.Pigment Red 11, C.I.Pigment Red 12, C.I.Pigment
Red 14, C.I.Pigment Red 15, C.I.Pigment Red 16, C.I.Pigment Red 17, C.I.Pigment Red 18, C.I.Pigment Red 19, C.I.Pigment Red 21, C.I.Pigment Red 22, C.I.Pigment Red 23, C.I.Pigment Red 30, C.I.Pigment
Red 31, C.I.Pigment Red 32, C.I.Pigment Red 37, C.I.Pigment Red 38, C.I.Pigment Red 40, C.I.Pigment Red 41, C.I.Pigment Red 42, C.I.Pigment Red 48(Ca), C.I.Pigment Red 48(Mn), C.I.Pigment Red 57(Ca),
C.I.Pigment Red 57:1, C.I.Pigment Red 88, C.I.Pigment Red 112, C.I.Pigment Red 114, C.I.Pigment Red 122, C.I.Pigment Red 123, C.I.Pigment Red 144, C.I.Pigment Red 146, C.I.Pigment Red 149, C.I.Pigment Red 150, C.I.Pigment Red 166, C.I.Pigment Red 168, C.I.Pigment Red 170, C.I.Pigment Red 171, C.I.Pigment Red 175, C.I.Pigment Red 176,
C.I.Pigment Red 177, C.I.Pigment Red 178, C.I.Pigment Red 179, C.I.Pigment Red 184, C.I.Pigment Red 185, C.I.Pigment Red 187, C.I.Pigment Red 202, C.I.Pigment Red 209, C.I.Pigment Red 219, C.I.Pigment Red 224, C.I.Pigment Red 245, 又はC.I.Pigment Violet 19, C.I.Pigment
Violet 23, C.I.Pigment Violet 32, C.I.Pigment Violet 33, C.I.Pigment Violet 36, C.I.Pigment Violet 38, C.I.Pigment Violet 43, C.I.Pigment Violet 50等が挙げられる。
シアン有機顔料としては、C.I.Pigment Blue 1, C.I.Pigment Blue 2, C.I.Pigment Blue 3, C.I.Pigment Blue 15, C.I.Pigment Blue 15:1, C.I.Pigment Blue 15:2, C.I.Pigment Blue 15:3, C.I.Pigment Blue 15:34, C.I.Pigment Blue 15:4, C.I.Pigment Blue 16, C.I.Pigment Blue 18, C.I.Pigment Blue 22, C.I.Pigment Blue 25, C.I.Pigment Blue 60, C.I.Pigment Blue 65, C.I.Pigment Blue 66, C.I.Vat Blue 4, C.I.Vat Blue 60等が挙げられる。
また、マゼンタ、シアン及びイエロー以外の有機顔料としては、例えば、C.I.Pigment
Green 7, C.I.Pigment Green 10, C.I.Pigment Brawn 3, C.I.Pigment Brawn 5, C.I.Pigment Brawn 25, C.I.Pigment Brawn 26, C.I.Pigment Orange 1, C.I.Pigment Orange 2, C.I.Pigment Orange 5, C.I.Pigment Orange
7, C.I.Pigment Orange 13, C.I.Pigment Orange 14, C.I.Pigment Or ange 15, C.I.Pigment Orange 16, C.I.Pigment Orange 24, C.I.Pigment Orange 34, C.I.Pigment Orange 36, C.I.Pigment Orange 38, C.I.Pigment Orange 40, C.I.Pigment Orange 43, C.I.Pigment Orange 63, 等が挙げられる。
本実施形態においては、上記に挙げた有機顔料以外にも分散染料や油溶性染料等の水に不溶又は難溶の染料も好適に使用することができる。
上記の顔料をインクジェット用記録用インクの色材として使用する場合には、平均粒子径は500nm以下が好ましく、より好ましくは200nm以下であり、さらに50〜100nmが好ましい。芯物質の平均粒子径が斯かる範囲にあると、インクジェット記録用インクは吐出安定性や分散安定性等の信頼性に効果が得られるとともに、高画質の画像を出力することができる。
本実施形態の光硬化型インク組成物に色材を含有させる場合は、色材の添加量は、0.1質量%以上25質量%以下程度の範囲が好ましく、より好ましくは0.5質量%以上15質量%以下程度の範囲である。また、色材の種類および配合量によって、光硬化型インク組成物の液滴のピニングの程度を調節することができる。例えば、ピニングの程度を小さくしたい場合には、第1光源21および第2光源22の光量を減少させることによってピニングの程度が調節できるが、上記例示した色材の種類を選択することや、上記範囲内で、色材の配合量を変化させることによってもこれを行うことができる。
また、光硬化型インク組成物に顔料を含有させる場合には、分散剤または界面活性剤で媒体中に分散させて得られた顔料分散液を用いることができる。さらに、光硬化型インク組成物に顔料を含有させる際には、これらの顔料と、分散剤または界面活性剤を含有させることができる。好ましい分散剤としては、顔料分散液を調製するのに慣用されている分散剤、例えば高分子分散剤を使用することができる。
分散剤としては、通常のインクにおいて用いられている任意の分散剤を用いることができる。分散剤としては市販品を利用することが可能であり、その具体例としてはヒノアクトKF1−M、T−6000、T−7000、T−8000、T−8350P、T−8000EL(武生ファインケミカル株式会社製)等のポリエステル系高分子化合物、solsperse13940、20000、24000、32000、32500、3350
0、34000、35200、36000(ルーブリゾール株式会社製)、disperbyk−161、162、163、164、166、180、190、191、192(ビック・ケミー社製)、フローレンDOPA−17、22、33、G−700(共栄社化学株式会社製)、アジスパーPB821、PB711(味の素株式会社製)、LP4010、LP4050、LP4055、POLYMER400、401、402、403、450、451、453(EFKAケミカルズ社製)の単独、または混合したものを挙げることができる。
光硬化型インク組成物に分散剤を含有させる場合の含有量としては、光硬化型インク組成物中の色材(特には顔料)の含有量に対して、5質量%以上200質量%以下、好ましくは30質量%以上120質量%以下であり、分散すべき色材によって適宜選択するとよい。
1.5.3.2.添加剤
本実施形態の光ラジカル重合性化合物からなる光硬化型インク組成物には重合促進剤を含有させても良い。光ラジカル重合の場合には、重合促進剤としては、特に限定されないが、Darocur EHA、EDB(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製)、EBECRYL 7100(ダイセル・サイテック社製)等が挙げられる。
また、光ラジカル重合性化合物からなる光硬化型インク組成物には、熱ラジカル重合禁止剤を含有させてもよい。これにより、光硬化型インク組成物の保存安定性を向上させることができる。熱ラジカル重合禁止剤の具体例としては、メチルエーテルハイドロキノン(MEHQ)(関東化学株式会社製)、tert−ブチル−p−ベンゾキノン、Irgastab UV−10、UV−22(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製)等が挙げられる。
さらに光硬化型インク組成物には、界面活性剤を含有させることができる。界面活性剤としては、光重合性化合物に溶解することが好ましく、シリコーン系界面活性剤やフッ素系界面活性剤を用いることができる。シリコーン系界面活性剤としては、ポリエーテル変性ポリジメチルシロキサン又はポリエステル変性ポリジメチルシロキサンを用いることができる。シリコーン系界面活性剤の具体例としては、BYK−347、BYK−348、BYK−UV3500、3510、3530、3570(ビックケミー・ジャパン株式会社製)、UV−3500(チバ・スペシャルティー・ケミカルズ社製)を挙げることができる。これらの界面活性剤は、スリップ剤としても機能することができる。界面活性剤を配合する場合の好ましい添加量としては、インク組成物中0.5質量%以上4.0質量%以下である。
またさらに、本実施形態の光硬化型インク組成物には、必要に応じて、紫外線吸収剤、レベリング剤等を添加することができる。
1.6.光硬化型インク組成物の硬化
本実施形態の光硬化型インク組成物は、少なくとも上記重合性化合物および上記重合開始剤を含有する。そのため光硬化型インク組成物は、第1光源21、および第2光源22等からの光を照射することにより硬化されることができる。
光源の光として紫外線を用いる場合は、光硬化型インク組成物への紫外線の最終的な照射量は、10mJ/cm以上、20,000mJ/cm以下であり、また好ましくは50mJ/cm以上、15,000mJ/cm以下の範囲で照射する。紫外線照射量が、上記範囲内となるようにすれば十分に重合性化合物の硬化反応を行うことができる。
本実施形態のインクジェット記録装置100では、第1光源21および第2光源22の光によって、光硬化型インク組成物はピニングされる。ピニング時の硬化率は、光硬化型インク組成物の硬化反応が、全て硬化したと仮定したときの硬化率を100%とすれば、この時点における光の照射量を100%と設定することができる。そして、あらかじめ、使用する光硬化型インク組成物について、光の照射量に対する硬化率の検量線を作成しておけば、光硬化型インク組成物の液滴が、所望の硬化率となるように、第1光源21および第2光源の光の照射量を設定することができる。なお、光硬化型インク組成物の転化率は、例えば、FT−IR(フーリエ変換赤外分光光度計)を用いて、特定の吸収スペクトルのピークにおける吸光度の変化値から求めることができる。
1.7.作用効果等
本実施形態のインクジェット記録装置によれば、第1光源21および第2光源22を備えることにより、光硬化型インク組成物に対して、本硬化前に2段階の予備硬化(ピニング)を行うことができる。そのため、記録媒体に形成される画像の混色、精細度および光沢を容易に制御することができる。そのため、例えば、光硬化型インク組成物を用いて、混色が少なく、精細度および光沢度が良好な画像を、記録媒体に対して形成することができる。また、本実施形態のインクジェット記録装置によれば、第1光源21および第2光源22が、ヘッド10から特定の間隔を有して配置されるため、各光源の光を点灯させたまま、上記2回のピニングを行うことができる。すなわち、各光源の光を明滅させる等の制御を行うことなく良好なピニングを行うことができる。
2.インクジェット記録方法
本実施形態のインクジェット記録方法は、上述のインクジェット記録装置を用いて、上述の光硬化型インク組成物を吐出させ、記録媒体に付着させることを含む。さらに具体的には、本実施形態のインクジェット記録方法では、第1方向に沿って記録媒体Pに対して相対的に走査されるとともに、光硬化型インク組成物の液滴Iをヘッドのノズル孔から吐出して記録媒体Pに液滴を付着させ、ヘッド10の第1方向の一方の側の端に位置するノズル孔12から、第1距離G1の間隔を隔てて配置された第1光源21から、記録媒体Pに付着された液滴Iに光を照射し、第1光源21のヘッド10とは反対側の端から第2距離G2の間隔を隔てて配置された第2光源22から、記録媒体Pに付着された液滴Iに光を照射し、液滴Iが記録媒体Pに付着された後、0.001秒以上1秒以下の時間を経た後に第1光源21の光を液滴Iに照射し、第1光源21の光が照射された後、0.1秒以上1秒以下の時間を経た後に第2光源22の光を前記液滴に照射し、光硬化型インク組成物が、第1光源21の光によって1%以上30%以下の硬化率まで硬化され、第2光源22の光によって30%を超え80%以下の硬化率まで硬化される。
以下では、インクジェット記録装置100を用いて、記録媒体P上に光硬化型インク組成物を吐出し、記録媒体P上に付着させてドット群を形成するインクジェット記録方法の一例を示す。
本実施形態のインクジェット記録方法は、光硬化型インク組成物の液滴を、ヘッド10から吐出させる液滴吐出工程と、第1光源21からの光を液滴に照射する第1照射工程と、第2光源22からの光を液滴に照射する第2照射工程と、を含む。
2.1.液滴吐出工程
本工程は、インクジェット記録装置100のヘッド10から、光硬化型インク組成物を液滴として吐出させ、当該液滴を記録媒体P上に付着させる工程である。
本実施形態のインクジェット記録方法において、ヘッド10の1つのノズル孔12から吐出される液滴の量は、1pl以上20pl以下であることが好ましい。液滴の量が上記
範囲内であることによって、吐出安定性が良好であり、より高画質の画像を得ることができる。図2には、本工程によって記録媒体Pに付着された液滴Iが描かれている。
2.2.照射工程
2.2.1.第1照射工程
本工程は、光を第1光源21によって、記録媒体Pに付着された液滴に照射する工程である。以下では、図2に示す、ヘッド10の走査方向MSの矢印Aの方向に、ヘッド10が移動する場合を例にとって、本工程を説明する。
液滴吐出工程で記録媒体Pに付着された液滴Iは、ヘッド10が図中矢印Aの方向に移動する結果、第1光源21の一方の光が照射される位置に移動する。その結果、第1光源21の光が液滴Iに照射される。本工程により、液滴Iを構成する光硬化型インク組成物の硬化反応が生じ、液滴Iの1回目のピニングが行われる。なお、図示しないが、本実施形態では、第1光源21は、ヘッド10の走査方向の両側に設けられているため、ヘッド10および記録媒体Pの移動の方向が、上記例示と逆であっても同様の工程となる。
第1照射工程は、上述のインクジェット記録装置100を用いれば非常に簡単に行うことができる。そして、液滴吐出工程の後、0.001秒以上1秒以内の時間間隔をおいて、第1照射工程が行われる。また、ヘッド10および記録媒体Pの相対的な走査の速度を、1m/分以上50m/分以下とすることにより、光硬化型インク組成物の液滴の硬化を、より良好に行うことができ、例えば、形成される画像の耐擦過性などを向上させることができる。
液滴Iの第1照射工程でピニングされる程度は、液滴Iを構成する光硬化型インク組成物の硬化率として、1%以上30%未満となるようにする。このようにすれば、液滴Iが、記録媒体P上で、大幅に濡れ広がることや、顕著に混色することを抑制することができるとともに、制御された濡れ広がりや混色を生じさせることができる。第1照射工程における液滴Iのピニングの程度は、硬化率で1%以上10%未満であることがより好ましく、1%以上5%未満であることがさらに好ましい。
2.2.2.第2照射工程
本工程は、光を第2光源22によって、記録媒体Pに付着された液滴に照射する工程である。以下では、図2に示す、ヘッド10の走査方向MSの矢印Aの方向に、ヘッド10が移動する場合を例にとって、本工程を説明する。
液滴吐出工程で記録媒体Pに付着された液滴Iは、第1照射工程の後、引き続きヘッド10が図中矢印Aの方向に移動する結果、一方の第2光源22の光が照射される位置に移動する。その結果、第2光源22の光が液滴Iに照射される。本工程により、液滴Iを構成する光硬化型インク組成物の硬化反応が生じ、液滴Iの2回目のピニングが行われる。なお、図示しないが、本実施形態では、第2光源22は、ヘッド10の走査方向の両側に設けられているため、ヘッド10および記録媒体Pの移動の方向が、上記例示と逆であっても同様の工程となる。
第2照射工程は、上述のインクジェット記録装置100を用いれば非常に簡単に行うことができる。そして、第1照射工程の後、0.1秒以上1秒以内の時間間隔をおいて、第2照射工程が行われる。また、ヘッド10および記録媒体Pの相対的な走査の速度を、1m/分以上50m/分以下とすることにより、光硬化型インク組成物の液滴の硬化を、より良好に行うことができ、例えば、形成される画像の耐擦過性などを向上させることができる。
液滴Iの第2照射工程でピニングされる程度は、液滴Iを構成する光硬化型インク組成物の硬化率として、第1照射工程の硬化率を含めて、30%を超え80%以下となるようにする。このようにすれば、例えば、記録媒体P上における液滴Iを、所望の形状としたり、複数の液滴Iがある場合には、それらの混色を所望の程度にすることができる。また、第2照射工程によるピニングの程度は、転化率で40%以上80%以下であることがより好ましく、50%以上80%以下であることがさらに好ましい。
2.3.その他の工程
(第3照射工程)
本実施形態のインクジェット記録方法は、第3照射工程を有してもよい。第3照射工程は、光を第3光源23によって、記録媒体Pに付着された液滴に照射する工程である。
液滴吐出工程で記録媒体Pに付着された液滴Iは、少なくとも一組の、第1照射工程および第2照射工程の組の後、記録媒体Pが、走査方向SSに移動する結果、第3光源23の光が照射される位置に移動する。その結果、第3光源23の光が液滴Iに照射される。本工程により、液滴Iを構成する光硬化型インク組成物の硬化反応が生じ、液滴Iの本硬化が行われる。本硬化は記録物を使用するのに適した状態まで硬化させる硬化であり、本硬化による硬化率はピニングによる硬化率より高く80%以上である。なおピニングによる硬化率のままで記録物を使用するのであれば本硬化は行わなくてもよい。
第3照射工程は、上述のインクジェット記録装置100を用いれば非常に簡単に行うことができる。本実施形態のインクジェット記録方法は、上述したインクジェット記録装置100を用いており、上記の第3照射工程を有する場合には、液滴Iを記録媒体Pに付着させ、2回のピニングおよび本硬化を、記録媒体Pを走査させてヘッド10を走査することで実現することができる。
3.実験例
以下、いくつかの実験例を示し、本発明を具体的に説明するが、これらは本発明の範囲を限定するものではない。
3.1.光硬化型インク組成物
各実験例に共通する光硬化型インク組成物のセットを調製した。
重合性化合物として、フェノキシアクリレート(V#192:大阪有機工業株式会社製)を29.5質量%、ジシクロペンテニルオキシエチルアクリレート(FA512AS:日立化成工業株式会社製)を19.7質量%、ジシクロペンテニルアクリレート(FA511AS:日立化成工業株式会社製)を15.8質量%、ビニルカプロラクタムを9.8質量%、ジメチロールトリシクロデカンジアクリレート(EBECRYL IRR214K:ダイセルサイテック株式会社製)を9.8質量%、光重合開始剤として、IRGACURE 819(チバ・スペシャルティケミカルズ社製)を5質量%、DAROCURE
TPO(チバ・スペシャルティケミカルズ社製)を4質量%、DETX(日本化薬株式会社製)を1質量%、重合促進剤として、EBECRYL 7100(ダイセルサイテック株式会社製)を3質量%、スリップ剤として、BYK−UV3500(ビックケミー・ジャパン株式会社製)を0.2質量%、顔料分散剤として、solsperse36000(ルーブリゾール社製)を0.1質量%、および、顔料を2質量%となるように、配合し、混合かつ溶解させ、さらに常温・常圧下30分間マグネチックスターラーにて混合撹拌した。
光硬化型インク組成物のセットとしては、上記の顔料として、シアン顔料:IRGALITE BLUE GLVO(チバ・スペシャルティケミカルズ社製)を用いたもの、マ
ゼンタ顔料:ピグメントレッド122を用いたもの、イエロー顔料:ピグメントイエロー180を用いたもの、およびカーボンブラックを用いたものセットとした。
なお、光硬化型インク組成物が得られた後、重合禁止剤として、メチルエーテルハイドロキノン(関東化学株式会社製)、およびtert−ブチル−p−ベンゾキノン(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製)をいずれも2000ppm添加して各実験例に共通するインクセットを作製した。
3.2.インクジェット記録装置
各実験例の評価試料は、インクジェット記録装置として、シリアル型のインクジェットプリンターPX−G920(セイコーエプソン株式会社製)を改造したものを用いて作成した。該プリンターの各色のインクカートリッジに、上述の光硬化型インク組成物のセットを導入した。該プリンターは、改造により波長395nmのLEDで構成された第1光源、第2光源、および第3光源を備えている。これにより、上記実施形態で説明したインクジェット記録装置100と同様に、第1光源および第2光源がヘッドの走査方向MSの両側に設けられている。
3.3.評価用試料の作製
各実験例の試料は、記録媒体として、A4サイズにカットした塩化ビニルシートを用い、これに、表1に示す硬化率となるように、各光源の光量を設定して作製した。
いずれの試料においても、プリンターの設定として、メディア「塩ビ一般1」、印刷品質「きれい」の印字モードにて形成し、各色の1ドットのライン幅およびベタ部位の濃淡を評価できるとともに、ブリード(にじみ、混色)および光沢を評価できるテストパターンとした。また、各実験例の第1照射ないし第3照射の光量は、LEDの光量によって、表1に示した硬化率となるように光量を調節した。光硬化型インク組成物の硬化率は、各実験例の第1照射までを行なった時点の硬化率、第2の照射までを行った時点の硬化率、第3の照射までを行なった時点の硬化率を、それぞれ、FT−IR(フーリエ変換赤外分光光度計)を用いて、特定の吸収スペクトルのピークにおける吸光度の変化値から求めた。ヘッドの走査速度は、10m/分とした。ヘッドの主走査方向に並ぶノズル孔のうち第1光源に最も近いノズル孔と最も遠いノズル孔の距離は30mmであった。上記のインクセットのインクを、第1方向に並ぶ複数のノズル孔列の1列に1インクずつ充填した。各実験例ごとに、第1距離G1、第2距離G2を変えて、液滴が着弾してから第1照射が行なわれるまでの時間間隔、第1照射が終わってから第2照射が行なわれるまでの時間間隔を調整した。これにより、実験例1〜18では、光硬化型インク組成物の液滴が記録媒体に付着された後、0.001秒以上1秒以下の間の時間間隔で、第1光源からの光が当該液滴に照射される配置となっている。なお、第1光源に最も近いノズル孔から吐出される液滴は着弾してから最も早く第1照射を受け、最も遠いノズル孔から吐出される液滴は、着弾後、最も遅く第1照射を受ける。実験例1〜15、18〜19は、第1照射が終了した後、0.1秒後以上1秒以下の間の時間間隔で第2光源の光が当該液滴に照射される配置となっている。
Figure 2015077808
3.4.評価方法
得られた各実験例の試料につき、ブリード、線幅、および光沢を評価した。
ブリードは、テストパターンをルーペ等を用いて目視することにより評価した。各インクを他の色のインクのテストパターンと隣接させて印刷したテストパターンを作成した。テストパターンは720×720dpiで作成した。他の色のインクに隣接させて作成したテストパターンとについて、各色インクのテストパターンのいずれも、線の境界が不鮮明になったり、隣接するテストパターンとの混色がなかったものを「A」、隣接するテストパターンとの色の境界で混色が発生したテストパターンがあったものを「B」、テストパターンの境界の線が不鮮明となっていたものを「C」とし表1に記載した。
線幅は、テストパターンにおける、第1方向に沿って並ぶ画素(ドットを形成すべき最小単位領域)の全ての画素に対してドットを形成したときの、テストパターンをルーペ等を用いて目視することにより評価した。十分な線幅が得られベタ部位がドットによって埋められたものを「A」、Aに比べて線幅は細いが、ベタ部位がドットによって埋められていたものを「B」、線幅が細く、ベタ部位が埋まらないものを「C」とし表1に記載した。
光沢は、テストパターンを目視することにより評価した。高光沢であるものを「A」、光沢があるものを「B」、光沢が不足しているものを「C」とし表1に記載した。
3.5.評価結果
表1をみると、各実験例において、第1照射および第2照射における硬化率を変化させることにより、ブリード、線幅、および光沢を有意に変化させることが可能であることが判明した。すなわち、実験例で使用したインクジェット記録装置を用いれば、記録媒体に付着される光硬化型インク組成物の液滴の濡れ広がり方、および表面形状を広い範囲で変化させることができることが判明した。
また、実験例1ないし実験例7の試料は、ブリード、線幅、および光沢のいずれもが良好であることが判明した。すなわち、第1照射の時点での光硬化型インク組成物の転化率が1%ないし30%であり、かつ、第2照射の時点での光硬化型インク組成物の転化率が35%ないし80%とした試料では、ブリード、線幅、および光沢のいずれもが良好であることが判明した。
以上に述べた実施形態および変形実施形態は、任意の複数の形態を適宜組み合わせることが可能である。これにより、組み合わされた実施形態は、それぞれの実施形態が有する効果または相乗的な効果を奏することができる。
本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、さらに種々の変形が可能である。例えば、本発明は、実施形態で説明した構成と実質的に同一の構成(例えば、機能、方法および結果が同一の構成、あるいは目的および効果が同一の構成)を含む。また、本発明は、実施形態で説明した構成の本質的でない部分を置き換えた構成を含む。また、本発明は、実施形態で説明した構成と同一の作用効果を奏する構成または同一の目的を達成することができる構成を含む。また、本発明は、実施形態で説明した構成に公知技術を付加した構成を含む。
10…インクジェット記録ヘッド(ヘッド)、12…ノズル孔、20…光源、21…第1光源、22…第2光源、23…第3光源、30…モーター、40…プラテン、50…キャリッジ、52…カートリッジ、60…キャリッジモーター、62…牽引ベルト、64…ガイドレール、80…キャッピング装置、100…インクジェット記録装置、P…記録媒体、I…液滴、MS,SS…走査方向

Claims (7)

  1. 第1方向に沿って記録媒体に対して相対的に走査されるとともに、光硬化型インク組成物の液滴をノズル孔から吐出して前記記録媒体に前記液滴を付着させるヘッドと、
    前記第1方向に沿って、前記ヘッドの走査の方向の下流側に順に配置され、前記記録媒体に付着された液滴に光を照射する第1光源および第2光源と、
    を備え、
    前記液滴が前記記録媒体に付着された後、1秒以下の時間を経た後に前記第1光源の光を前記液滴に照射し、
    前記第1光源の光が照射された後、0.1秒以上1秒以下の時間を経た後に前記第2光源の光を前記液滴に照射し、
    前記光硬化型インク組成物が、前記第1光源の光によって1%以上30%以下の硬化率まで硬化され、前記第2光源の光によって30%を超え80%以下の硬化率まで硬化される、インクジェット記録装置。
  2. 請求項1において、
    前記第1光源および前記第2光源は、発光波長が365nm以上410nm以下にピーク波長を有する光源である、インクジェット記録装置。
  3. 請求項1または請求項2において、
    前記第1光源および前記第2光源による前記照射の後で、前記記録媒体に付着された前記液滴にさらに光を照射して、前記光硬化型インク組成物の硬化率を80%超とする、インクジェット記録装置。
  4. 請求項3において、
    前記第1光源および前記第2光源による前記照射の後で、前記記録媒体に付着された前記液滴にさらに光を照射する第3光源を有する、インクジェット記録装置。
  5. 請求項1ないし請求項4のいずれか一項において、
    前記ヘッドは、前記ノズル孔を複数有し、
    前記ノズル孔は、前記第1方向に沿って配置された、インクジェット記録装置。
  6. 請求項1ないし請求項5のいずれか一項において、
    前記ヘッドの前記記録媒体に対する前記第1方向の相対的な走査の速度は、1m/分以上50m/分以下である、インクジェット記録装置。
  7. 第1方向に沿って記録媒体に対して相対的に走査されるとともに、光硬化型インク組成物の液滴をヘッドのノズル孔から吐出して前記記録媒体に前記液滴を付着させ、
    前記第1方向に沿って、前記ヘッドの走査の方向の下流側に順に配置された第1光源および第2光源によって、前記記録媒体に付着された液滴に光を照射し、
    前記液滴が前記記録媒体に付着された後、1秒以下の時間を経た後に前記第1光源の光を前記液滴に照射し、
    前記第1光源の光が照射された後、0.1秒以上1秒以下の時間を経た後に前記第2光源の光を前記液滴に照射し、
    前記光硬化型インク組成物が、前記第1光源の光によって1%以上30%以下の硬化率まで硬化され、前記第2光源の光によって30%を超え80%以下の硬化率まで硬化される、インクジェット記録方法。
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