以下、本発明の実施の形態について添付図面を参照して説明する。本発明に係る画像形成装置の一例について図1ないし図4を参照して説明する。図1は同画像形成装置の全体構成図、図2は同装置の機構部の平面説明図、図3は同じく用紙搬送部の側面説明図、図4は同装置でストレート排紙を行うときの搬送手段の状態及び従動ローラの接触及び離間を行う機構の説明に供する側面説明図である。
この画像形成装置は、装置本体10内に、被記録媒体である用紙100に液滴を吐出して画像を形成する画像形成手段である画像形成部2と、用紙100を搬送する搬送手段である用紙搬送部3を備えている。また、画像形成部2よりも用紙搬送方向上流側で用紙100に処理液401を塗布する処理液塗布装置400を備えている。さらに、画像が形成された用紙100を反転する反転部4と、画像形成された用紙100を排出する排紙トレイ104を備えている。また、装置本体10の下側に配置された、用紙100を収容する給紙カセット103を含む給紙部20を備えている。
ここで、画像形成部2は、図2にも示すように、ガイドロッド21及び図示しないガイドステーで各色のヘッドを主走査方向に配列させたキャリッジ23を主走査方向に移動可能に保持している。そして、主走査モータ27で駆動プーリ28Aと従動プーリ28B間に架け渡したタイミングベルト29を介してキャリッジ23を主走査方向に移動走査する。
このキャリッジ23上に、ブラック(Bk)、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)の各色の液滴を吐出する5個(Bkは2つ使用)の液体吐出ヘッドからなる記録ヘッド24を搭載している。そして、キャリッジ23を主走査方向に移動させ、搬送手段である用紙搬送部3によって用紙100を用紙搬送方向(副走査方向)に送りながら記録ヘッド24から液滴を吐出させて画像形成を行うシャトル型としている。
なお、各色のヘッドを副走査方向に配列させたライン型ヘッドを用いることもできる。また、ヘッドの配列方向、各色の配列順序、ヘッドのノズル列方向については例示した構成に限定されるものではない。
キャリッジ23には、各記録ヘッド24にそれぞれの色の液体を供給する各色のヘッドタンク25が搭載されている。各ヘッドタンク25には、図示しないが、装置本体10の前面から着脱自在に装着される液体カートリッジから所要の色の液体が供給される。なお、ブラックインクは1つの液体カートリッジから2つのヘッドタンク25に供給する構成としている。
記録ヘッド24としては、圧電型アクチュエータ、サーマル型アクチュエータ、静電型アクチュエータなどを圧力発生手段として使用するものなどを用いることができるが、液滴吐出手段においてはこれらに限定されるものではない。
また、キャリッジ23の走査方向一方側の非印字領域には、図2に示すように、記録ヘッド24のノズルの状態を維持し、回復するための維持回復機構121を配置している。
この維持回復機構121は、5個の記録ヘッド24のノズル面をキャピングするための吸引手段(図示しない)が接続された吸引キャップ122と、4個の保湿用キャップ123とを備えている。また、記録ヘッド24のノズル面をワイピングするためのワイパー部材124と、記録(画像形成)に寄与しない液滴の吐出(空吐出)を行うための空吐出受け部材125などを備えている。
さらに、キャリッジ23の走査方向他方側の非印字領域には、図2に示すように、5個の記録ヘッド24から記録(画像形成)に寄与しない液滴の吐出(空吐出)を行うための空吐出受け部材126を備えている。この空吐出受け部材126には、記録ヘッド24に対応して5個の開口127を形成している。
用紙搬送部3は、図3にも示すように、下方から給紙された用紙100を吸着して画像形成部2に対向させて搬送するための無端状の搬送部材である搬送ベルト31を備えている。
搬送ベルト31は、駆動ローラである搬送ローラ32と、搬送ローラ32と画像領域の平面を確保している搬送ローラ33と、搬送ローラ33よりも用紙搬送方向下流側に配置された分離ローラ34と、テンションローラ35との間に掛け回されている。そして、搬送ベルト31を画像形成部2に対向する領域でガイドするガイド部材40が配置されている。
なお、搬送ベルト31は、例えば、抵抗制御を行っていない純粋な樹脂材、例えばETFEピュア材で形成した用紙吸着面となる表層と、この表層と同材質でカーボンによる抵抗制御を行った裏層(中抵抗層、アース層)との2層構造とすることが好ましい。ただし、これに限るものではなく、1層構造あるいは3層以上の構造でも良い。
分離ローラ34は、搬送ベルト31に吸着されている画像が形成される用紙100を曲率分離で分離するローラである。分離ローラ34は、図3に示すように、搬送ローラ33の回転中心を支点36aとして矢印方向に回転移動可能なリンク36の先端部に軸36bで回転可能に保持されている。そして、分離ローラ34は、複数の搬送経路のそれぞれに対応する実線図示の位置と破線図示の位置との間で揺れ動くことが可能に設けられている。なお、対応するとは、当該搬送経路で用紙100を搬送できる位置になることを意味する。
ここでは、分離ローラ34を破線図示の位置に移動することで、画像が形成された用紙100を直線状に搬送して、排紙トレイ104に送り出すストレート排紙経路306側に切り替わる。
また、分離ローラ34を実線図示の位置に移動することで、画像が形成された用紙100を反転部4に送り込む反転経路311側に切り替わる。
このとき、搬送経路となるストレート排紙経路306と反転経路311のそれぞれにおいて、搬送ベルト31から用紙100を分離させる位置と画像形成部2が配置された位置との間の用紙搬送距離は、ほぼ同じになることが好ましい。このようにすることで、搬送経路が違っても用紙の乾燥度合いを同じにすることができ、どの搬送経路を使用しても同じ品質の画像を得ることができる。
この場合、上述したように、分離ローラ34が搬送ローラ33の回転中心を支点として回転可能である。これにより、搬送ベルト31から用紙100を分離させる分離ローラ34の位置と画像形成部2が配置された位置との間の用紙搬送距離を複数の搬送経路となるストレート排紙経路306と反転経路311とで容易にほぼ同じにすることができる。
また、分離ローラ34の位置は常に搬送ベルト31が搬送ローラ33に張力を持って接触する位置(搬送ローラ33から所定の最小距離)に配置している。このことにより、搬送経路を切り替えたとしても画像形成領域の搬送ベルト31の姿勢は変わることなく、安定した画像を形成することができる。
また、分離ローラ34は、破線図示の位置にあるときでも、搬送ベルト31を画像形成部2に対向させて保持している搬送ローラ32、33が形成する搬送面よりも分離ローラ34全体が下方になるように配置されている(図3に示す距離cだけ低くなっている)。これにより、搬送ベルト31が確実に搬送ローラ33に接触して平面性が確保される。
また、テンションローラ35は、図3に示すように、矢印方向に実線図示の位置と破線図示の位置との間で揺れ動くことが可能なアーム37に保持されている。アーム37は、回転支点37aを支点として回転移動可能であり、保持支点37bにテンションローラ35を回転可能に保持している。また、アーム37は、図示しない加圧手段により、テンションローラ35が搬送ベルト31を加圧する方向に加圧されている。
これにより、テンションローラ35は、搬送ベルト31の位置が分離ローラ34の回転によって変化しても追従して動き、搬送ベルト31に対してテンションを与える。
一方、画像形成部2の上流側には、用紙100を搬送ローラ32に対向する位置で搬送ベルト31に押し付ける第2電荷付与手段を兼ねる押さえコロ(加圧コロ)38を配置している。
この加圧コロ38には、用紙100を搬送ベルト31に吸着させるため、高圧電源((DC、或いは、DCとACの重畳バイアス供給部)から直流電圧又は直流に交流を重ねた高電圧(給電電圧)が供給され、用紙100上に電荷を付与する。
また、加圧コロ38の下流側であって画像形成手段(部)2よりも上流側には、表面電位センサ61が配置されている。
また、搬送ベルト31の表面を帯電させるために、加圧コロ38より上流側であって、搬送ベルト31の周回方向(搬送方向)で異なる位置に、第1電荷付与手段である導電性物質からなる2つの帯電ローラ39a、39bを備えている。
これらの帯電ローラ39a、39bには、高圧電源(DC或いはDCとACの重畳バイアス供給部)から直流電圧又は直流に交流を重畳した高電圧(給電電圧)が供給され、搬送ベルト31に電荷を付与する。
また、帯電ローラ39bの下流側には、搬送ベルト31の表面電位を測定する表面電位センサ51が配置されている。
また、搬送ベルト31は、図3に示すように、副走査モータ331からタイミングベルト332及びタイミングローラ333を介して搬送ローラ32が回転されることで、図2の用紙搬送方向(副走査方向)に周回する。
反転部4は、搬送ベルト31の下流側に配置された回転搬送部材である導電性弾性部材からなる搬送ローラ136を有している。そして、この搬送ローラ136に従動可能な従動回転部材である従動ローラ137が、矢印方向に搬送ローラ136に対して接触及び離間可能に配置されている。また、反転排紙経路309側と両面搬送経路304側に搬送経路を切り替える分岐爪41を有している。
この反転部4は、送り込まれた用紙100を反転して、反転排紙経路309側と両面搬送経路304側のいずれかに送り出す。
ここで、搬送ローラ136は、少なくとも表面が導電性弾性部材で形成されている。導電性弾性部材としては、例えば導電性ゴムやスポンジを挙げることができる。導電性ゴムからなる導電性弾性部材としては、例えば、EPゴム、クロロプレンゴム、ポリウレタンゴム等の材料のソリッドゴム若しくは発泡ゴムに導電性カーボン又は導電性イオンを分散させたものを使用することができる。
この場合、導電性弾性部材の体積抵抗は、102〜1012(Ω・cm)の範囲内が好ましく、103〜106(Ω・cm)の範囲内であることがより好ましい。
従動ローラ137は、上述したように、搬送ローラ136に対して接触及び離間可能に配置され、接触することで用紙100を搬送ローラ136に対して加圧する。
例えば、用紙の種類、具体的には厚紙等、搬送ローラ136の吸着力だけでは搬送力が不十分であると予め判断されている用紙種類や環境等が、図示していない用紙厚みセンサ情報や、温湿度センサ情報、またはユーザーからの入力情報により検出されたときには、従動ローラ137を搬送ローラ136に加圧接触させる。これにより、より搬送力が上がるため、紙詰まり等の問題を未然に防止できる。
反転部4から用紙100が送り出される反転排紙経路309には、搬送ローラ136と同様な回転搬送部材である少なくとも表面が導電性弾性部材からなる搬送ローラ148が配置されている。そして、搬送ローラ148に従動可能な従動回転部材である従動ローラ149が、矢印方向に搬送ローラ148に対して接触及び離間可能に配置されている。なお、搬送ローラ148は、搬送ベルト31の下流側に位置することになる。
反転排紙経路309に送り出された用紙100及びストレート排紙経路306から送り出される用紙100を排紙トレイ104に排紙するため、搬送ローラ136と同様な回転搬送部材である少なくとも表面が導電性弾性部材からなる搬送ローラ(排紙ローラ)143が配置されている。そして、搬送ローラ143に従動可能な従動回転部材である従動ローラ144が、搬送ローラ143に対して接触及び離間可能に配置されている。なお、搬送ローラ143、搬送ベルト31の下流側に位置することになる。
また、搬送ローラ143の下流側で排紙トレイ104の上流側に、用紙100を除電する除電手段(ここでは、除電ブラシ)146が配置されている。除電手段146は、電荷付与手段である加圧コロ38で用紙100に付与された電荷を消去した状態で排紙トレイ104に排紙させるためのものである。
ここで、従動ローラ144は、図4に示すように、矢印方向に実線図示の位置と破線図示の位置との間で揺れ動くことが可能なリンク147に保持されている。リンク147は、回転支点147aを支点として回転移動可能であり、保持支点147bに従動ローラ144を回転可能に保持している。このリンク147は図示しない駆動機構によって回転移動される。
なお、前述した従動ローラ137、149を、対応する駆動ローラに接触及び離間させる機構も同様に構成している。
両面搬送経路304には、搬送ローラ138aと従動ローラ138b、搬送ローラ139aと従動ローラ139b、搬送ローラ140aと従動ローラ140bなどの搬送ローラ対が配置されている。
搬送ローラ138a、139a、140aは、いずれも搬送ローラ136と同様に少なくとも表面が導電性弾性部材からなる回転搬送部材である。なお、これらの搬送ローラ138a、139a、140aも搬送ベルト31の下流側に位置することになる。また、従動ローラ138b、139b、140bの接触及び離間を行う機構は、上述した従動ローラ144の接触及び離間を行う機構と同様である。
両面搬送経路304は、送り込まれた用紙100を、再度レジストローラ対134に再給紙する。
給紙部20は、装置本体10の前面側から抜き差し可能で、多数枚の用紙100を積載して収納する給紙カセット103と、給紙カセット103内の用紙100を1枚ずつ分離して送り出すためのピックアップローラ131と搬送ローラ対132を備えている。
また、用紙100を手差しで使用するストレート手差しトレイ105と、ストレート手差しトレイ105から1枚ずつ用紙100を給紙するためのピックアップローラ141と搬送ローラ対142を備えている。
処理液塗布装置400は、処理液401を収容した変形可能な例えばPETフィルムを袋状にした図示しない処理液容器と、この図示しない処理液容器から供給された処理液401を圧送する図示しないポンプと、処理液401を被記録媒体である用紙100に塗布する塗布部410などを備えている。図示しない処理液容器内の処理液401は図示しないポンプによって吸上げられ、図示しない供給経路を通じて塗布部410内の液室402へと供給され、塗布の準備がなされる。
液室402へ供給された処理液401は、液室402に設けた図示しない液面検知センサで液面高さと液面角度が所定内であることを確認する。液面検知センサは、例えば、電極ピン方式を用いる。電極ピン方式は、公知技術なのでここでは詳しく説明しないが、電極ピンに電気を通電させ電極ピン間で液体を介して電気が導通することにより液面を検知する。この方法により処理液401の供給不足や液室402へ所定量以上の供給を防止することができる。
塗布部410は、用紙100を搬送する搬送ローラ434と、搬送ローラ434に対向して用紙100に処理液401を塗布する塗布ローラ432と、塗布ローラ432に処理液401を供給して液膜を薄くするスクイーズローラ433を有している。
これらのローラは、搬送ローラ434に塗布ローラ432が接し、塗布ローラ432にスクイーズローラ433が接して配置されている。そして、スクイーズローラ433と塗布ローラ432とによって供給された処理液401の液膜層が塗布ローラ432上に形成されて、塗布ローラ432の回転によって移送され、用紙100に塗布される。
なお、ここで処理液401は、用紙100の表面に塗布することで用紙100の表面を改質する改質材である。例えば、処理液401は、予め用紙100にムラなく塗布しておくことで、インクの水分を速やかに用紙100に浸透させると共にインクの色成分を増粘させ、更には乾燥も早めることによって滲み(フェザリング、ブリーディング等)や裏抜けを防止し、生産性(単位時間当たりの画像出力枚数)をあげることを可能にする定着剤(セット剤)である。
この処理液401は、組成的には、例えば界面活性剤(アニオン系、カチオン系、ノニオン系のいずれか、若しくはこれらを2種類以上混合させたもの)に対して、水分の浸透を促進するセルロース類(ヒドロキシプロピルセルロース等)とタルク微粉体の様な基剤を加えた溶液等を挙げることができる。更に微粒子を含有することもできる。
給紙カセット103に収容された用紙100はピックアップローラ131で1枚ずつ分離給紙されて搬送ローラ対133によってレジストローラ対134に送られ、レジストローラ対134から所定のタイミングで搬送路300を介して処理液塗布装置400に送られ、処理液塗布装置400で処理液401が塗布される。
次に、この画像形成装置における回転搬送部材である搬送ローラへの用紙の吸着原理について図5も参照して説明する。図5は同説明に供する説明図である。なお、ここでは、搬送ローラ143について説明するが、その他の搬送ローラ136、148、138a〜140aについても同様である。
搬送ベルト31と加圧コロ38に挟まれた用紙100は、前述したように加圧コロ38に高圧電源から直流電圧(又は交流電圧が重畳された直流電圧)が加えられているので、加圧コロ38により例えば用紙100の表面(ここでは画像形成面)にマイナス(−)の電荷700が付与される。
用紙100にプラスの電荷700が付与されることで、搬送ベルト31には静電誘導でプラス(+)の電荷701が現れるので、用紙100はクーロン力で搬送ベルト31に吸着される。
このとき、搬送ベルト31に予めプラスの電荷を帯電ローラ39a、39bにより与えておくことで、更に吸着力を上げることができる。
このように搬送ベルト31に吸着された用紙100は搬送ベルト31の周回移動で間歇搬送されながら画像形成部2によって画像が形成される。
その後、図5に示すように、画像が形成された用紙100は分離ローラ34の曲率により、搬送ベルト31から曲率分離される。
そして、分離された用紙100は、導電性弾性部材からなる搬送ローラ143に搬送される。搬送ローラ143の頂点は、搬送ベルト31で形成される用紙搬送面よりも低く配置されているので、用紙100が搬送ローラ143に吸着された後でも、用紙100は搬送ベルト31からは剥がれ難くなる。
このとき、用紙100にはマイナスの電荷700が付与されているので、導電性弾性部材からなる搬送ローラ143の表面にはプラスの電荷701が静電誘導される。
これにより、用紙100のマイナスの電荷700と搬送ローラ143のプラスの電荷701が引き合い、クーロン力により、用紙100は搬送ローラ143に吸着される。
このとき、搬送ローラ143の用紙100との接触面積は、搬送ベルト31と用紙100との接触面積よりも当然ながら小さいため、安定した搬送を行うためには搬送ベルト31よりもより強い用紙吸着力が必要となる。電気的な吸着力を高めるために、搬送ローラ143は、搬送ベルトのように表面を絶縁層、裏面をカーボンによる抵抗制御(導電)層とするような2層構造ではなく、表面が導電性部材となる構成で形成される。
搬送ローラ143に吸着された用紙100は、搬送ローラ143により排紙トレイ104に送られて排紙される。
このとき、搬送ローラ143と排紙トレイ104との間には、用紙100のプラスの電荷700を除電する除電手段146が設けられているので、用紙100のプラスの電荷700が除電された状態で排紙トレイ104に排紙される。これにより、排紙トレイ104に排紙される用紙100が静電気で相互に密着することが防止される。
なお、本実施形態では、コストが比較的廉価で、摩擦係数が高いために吸着による搬送力が比較的高くなる導電性弾性部材を回転搬送部材に使用した例で説明しているが、少なくとも表面が導電性部材からなるローラやベルトを使用しても、同様に搬送力を得ることができる。
次に、画像形成部2で画像を形成した用紙100をストレートに排紙トレイ104に排紙するときの動作について説明する。
前述したように処理液401が塗布された用紙100は、ローラ対145を経て印字搬送路305へ搬送される。搬送路305では、直流電界が与えられた搬送ベルト31上に用紙100が送り込まれ、搬送ベルト31と逆極性の電荷が与えられた加圧コロ38により、用紙100に搬送ベルト31と逆極性の電荷が付与されることで、用紙100は搬送ベルト31に静電吸着されて保持される。
画像形成開始位置に移動された用紙100に対し、キャリッジ23を移動させながら画像信号に基づいて記録ヘッド24を駆動することにより、停止している用紙100に液滴を吐出して1行分を記録し、1行分の記録が終了すると、用紙100を1行分送り、次の行の記録を行う。このように、用紙100を間歇的に搬送して、用紙100に画像をライン毎に順次形成する。記録終了信号又は用紙100の後端が記録領域の終了位置に到達した信号を受けることにより、記録動作を終了する。
ここで、分離ローラ34は、遅くとも画像形成中の用紙100の先端が搬送ローラ33に到達する前に図1の破線図示の位置(図4の実線図示の位置)に移動される。
これにより、画像が形成された用紙100は、搬送ベルト31の周回移動で搬送されてストレート排紙経路306を介し、搬送ローラ143に吸着されて搬送され、記録面を上にして排紙トレイ104に排紙される。このときも、前述したように、用紙100に電荷が付与されていることで、搬送ローラ143に用紙100と逆極性の電荷が励起され、用紙100が搬送ローラ143に静電吸着されて搬送される。
次に、この画像形成装置において、画像形成部2で画像を形成した用紙100を反転して排紙トレイ104に排紙するときの動作について説明する(図1参照)。
ストレートに排紙する場合と同様に、画像形成開始位置に移動された用紙100に対し、キャリッジ23を移動させながら画像信号に基づいて記録ヘッド24を駆動することにより、停止している用紙100に液滴を吐出して1行分を記録し、1行分の記録が終了すると、用紙100を1行分送り、次の行の記録を行う。このように、用紙100を間歇的に搬送して、用紙100に画像を順次形成する。記録終了信号又は用紙100の後端が記録領域の終了位置に到達した信号を受けることにより、記録動作を終了する。
ここで、分離ローラ34は、遅くとも画像形成中の用紙100の先端が搬送ローラ33に到達する前に図1の実線図示(図4の実線図示)の位置に移動される。
これにより、画像が形成された用紙100は、搬送ベルト31の周回移動で搬送されて反転経路311を介して斜め下方に送られ、反転部4に送り込まれる。
このとき、用紙100に電荷が付与されていることで、前述したように、搬送ローラ136に用紙100と逆極性の電荷が励起され、用紙100が搬送ローラ136に静電吸着されて搬送されて反転部4に取り込まれる。
そして、反転部4に搬送された用紙100は、搬送ローラ136を逆転することで、反転部4から送り出される。このとき、分岐爪41を実線図示の位置にしておくことで、搬送ローラ136により送り出される用紙100は、反転排紙経路309側に搬送される。
反転排紙経路309では、用紙100に電荷が付与されていることで、前述したように、搬送ローラ148に用紙100と逆極性の電荷が励起され、用紙100の画像が形成された面の裏面側が搬送ローラ148に静電吸着されて搬送される。
その後、反転排紙経路309から搬送ローラ143に送られ、前述したように、用紙100に電荷が付与されていることで、搬送ローラ143に用紙100と逆極性の電荷が励起され、用紙100が搬送ローラ143に静電吸着されて搬送され、記録面を下にして排紙トレイ104上に排紙される。
ここで、搬送ローラ143はストレート排紙の場合と兼用されることになるため、このような反転排紙の場合には搬送ローラ143は用紙100の画像記録面を吸着することになる。しかし、反転排紙の場合は反転部4を通過するため、ストレート排紙の場合に比べて搬送ローラ143に到達するまでに十分なインク乾燥定着時間を確保でき、搬送ローラ143へのインクの付着を引き起こすことはない。
なお、インクの乾燥定着性が悪い用紙を搬送する場合に備え、搬送ローラ143に対向する従動ローラ144も導電性弾性部材で形成し、反転排紙時には従動ローラ144側に吸着して搬送するように切り替えてもよい。
反転排紙の経路から明らかなように、搬送ベルト31の下流側の用紙裏面側に配置された搬送ローラのすべてを導電性部材として吸着する必要はなく、一部の搬送ローラのみで吸着を行う構成でもよい。特に、搬送ベルト31の近接する搬送ローラにおいて吸着を行うことが好ましい。
次に、用紙100の両面に画像を形成する場合の動作について説明する(図1参照)。
前述したように処理液401が塗布された用紙100は、ローラ対145を経て印字搬送路305へ搬送される。搬送路305では、直流電界が与えられた搬送ベルト31上に用紙100が送り込まれ、搬送ベルト31と逆極性の電荷が与えられた加圧コロ38により、用紙100に搬送ベルト31と逆極性の電荷が付与されることで、用紙100は搬送ベルト31に静電吸着されて保持される。
画像形成開始位置に移動された用紙100に対し、キャリッジ23を移動させながら画像信号に基づいて記録ヘッド24を駆動することにより、停止している用紙100に液滴を吐出して1行分を記録し、1行分の記録が終了すると、用紙100を1行分送り、次の行の記録を行う。このように、用紙100を間歇的に搬送して、用紙100に画像を順次形成する。記録終了信号又は用紙100の後端が記録領域の終了位置に到達した信号を受けることにより、記録動作を終了する。
ここで、分離ローラ34は、遅くとも画像形成中の用紙100の先端が搬送ローラ33に到達する前に図1の実線図示の位置に移動される。
これにより、画像が形成された用紙100は、搬送ベルト31の周回移動で搬送されて反転経路311を介して斜め下方に送られ、反転部4に送り込まれる。
このとき、用紙100に電荷が付与されていることで、前述したように、搬送ローラ136に用紙100と逆極性の電荷が励起され、用紙100が搬送ローラ136に静電吸着されて搬送されて反転部4に取り込まれる。
そして、反転部4に搬送された用紙100は、搬送ローラ136を逆転することで、反転部4から送り出される。このとき、分岐爪41を図1の破線図示の位置にしておくことで、搬送ローラ136により送り出される用紙100は、両面搬送経路304に搬送され、搬送ローラ138a、139a、140aにより搬送されて、レジストローラ対134に送られる。
ここでも、用紙100に電荷が付与されていることで、前述したように、搬送ローラ138a〜140aに用紙100と逆極性の電荷が励起され、用紙100が搬送ローラ1338a〜140aに静電吸着されて搬送される。
レジストローラ対134に送られた用紙100は、所定のタイミングで搬送路300を介して処理液塗布装置400に送られる。
その後、上述したと同様に、処理液塗布装置400で処理液401が塗布され、画像形成部2によって用紙100の他面に画像が形成された後、画像が形成された用紙100は、破線で示す搬送ベルト31の周回移動で搬送されてストレート排紙経路306を介し、搬送ローラ143により記録面を上にして排紙トレイ104に排紙される。
次に、手差しトレイ105から略直線状に給紙搬送してストレート排紙する動作について説明する(図1参照)。
手差しトレイ105を使用することで厚紙や剥離紙等の特殊な用紙にも容易に画像を形成できる。また、手差しトレイ105からの搬送路は、処理液塗布装置400よりも搬送方向下流側で搬送経路に合流しているため、処理液塗布を行う必要のないコート紙などの用紙もこの手差しトレイ105から供給することが好ましい。そのため、この手差しトレイ105は複数枚の用紙を積載可能とし、ピックアップローラ141で1枚ずつ供給可能としている。
手差しトレイ105に収容された用紙100は、ピックアップローラ141で1枚ずつ分離給紙されて搬送ローラ対142によって印字搬送路305へ搬送され、前述したと同様に、搬送ベルト31で間歇搬送されながら、画像形成部2で画像が形成される。
画像が形成された用紙100は、破線で示す搬送ベルト31の周回移動で搬送されてストレート排紙経路306を介し、搬送ローラ143により記録面を上にして排紙トレイ104に排紙される。
なお、上記の搬送動作の説明では、従動ローラ137、149、144、138b〜140bについては説明を省略しているが、前述したように、用紙種類、環境条件(温度、湿度)などに応じて、各搬送ローラへの用紙100の吸着力が不足する場合には、従動ローラ137、149、144、138b〜140bを対向する搬送ローラ136、148、143、138a〜140aに接触する方向に移動されて、用紙100を加圧する。
次に、この画像形成装置の制御部の概要について図6を参照して説明する。図6は同制御部のブロック説明図である。
この制御部200は、この画像形成装置全体の制御を司るCPU201と、CPU201が実行するプログラム、その他の固定データを格納するROM202と、画像データ(印刷データ)等を一時格納するRAM203とを備えている。
制御部200は、装置の電源が遮断されている間もデータを保持するための不揮発性メモリ(NVRAM)204を備えている。また、制御部200は、画像データに対する各種信号処理、並び替え等を行う画像処理やその他装置全体を制御するための入出力信号を処理するASIC205を備えている。
制御部200は、画像読取部11による画像読取及び読取画像のデータ処理などを行うスキャナ制御部206を備えている。
制御部200は、外部装置からデータを受信する場合に使用するデータ及び信号の送受を行うためのI/F207を備えている。また、制御部200は、画像形成部2の記録ヘッド24を駆動制御するためのヘッド駆動制御部208及びヘッドドライバ209を備えている。
制御部200は、キャリッジ23を主走査する主走査モータ27を駆動するモータ駆動部211と、搬送ローラ32を回転させて搬送ベルト31を回動させる副走査モータ331を駆動するモータ駆動部212を備えている。
制御部200は、給紙モータ45を駆動するモータ駆動部213と、排紙ローラ対143、搬送ローラ対144などの各ローラ類を回転駆動する排紙モータ271を駆動するモータ駆動部214を備えている。
制御部200は、両面搬送経路304のローラ類を回転駆動する両面搬送モータ291を駆動するモータ駆動部215と、反転部4の搬送ローラ対136を回転駆動する搬送モータ318を駆動するモータ駆動部317を備えている。
制御部200は、分離ローラ34を移動させる分離モータ319を駆動するモータ駆動部320を備えている。
制御部200は、クラッチ類241を駆動するためのクラッチ類駆動部216を備えている。クラッチ類241には、ピックアップローラ131と搬送ローラ対132、ピックアップローラ141と搬送ローラ対142をそれぞれ独立に回転駆動するための複数の給紙電磁クラッチを含む。また、クラッチ類241には、搬送経路をそれぞれ独立駆動するための電磁クラッチ、それぞれの搬送経路を切り替えるための分岐爪41を変位させる分岐板ソレノイドを含む。
制御部200は、帯電ローラ39a、39bに対して高電圧(第1給電電圧)を与える高圧電源217を備えている。高圧電源217は、帯電ローラ39aに与える高電圧と帯電ローラ39bに与える高電圧とを独立して制御することができる。
制御部200は、加圧コロ38に対して高電圧(第2給電電圧)を与える高圧電源218を備えている。
制御部200は、各種センサの検知信号を取り込むためのI/O221を備えている。I/O221には、環境条件としての温度及び湿度を検出する温湿度センサ500からの検知信号や図示しない画像形成開始センサや画像形成終了センサなどの検知信号が入力される。また、I/O221には、表面電位センサ51、61の各測定信号も入力される。
制御部200には、この装置に必要な情報の入力及び表示をおこなうための操作パネル222が接続されている。
この制御部200は、画像読取部11によって原稿画像を読み取った場合には、読取画像を処理してスキャナ制御部206内のバッファに格納する。また、外部I/F207を介してパーソナルコンピュータ等の情報処理装置、イメージスキャナなどの画像読み取り装置、デジタルカメラなどの撮像装置などの外部ホスト側から印刷データ等を受信した場合にはI/F207に含まれる受信バッファ内に格納する。
そして、CPU201は、スキャナ制御部206やI/F207から画像データを読み出して解析し、ASIC205にて必要な画像処理、データの並び替え処理等を行ってヘッド駆動制御部208に印刷画像データを転送する。なお、外部からのデータに基づいて画像出力するためのドットパターンデータの生成は、例えばROM202にフォントデータを格納して行っても良いし、外部ホスト側のプリンタドライバで画像データをビットマップデータに展開してこの画像形成装置に転送するようにしても良い。
ヘッド駆動制御部208は、各記録ヘッド24の1行分に相当する画像データ(ドットパターンデータ)を受け取ると、この1行分のドットパターンデータをヘッドドライバ209に転送する。ヘッドドライバ209はドットパターンデータに基づいて記録ヘッド24のアクチュエータ手段に対して選択的に所要の駆動波形を印加させて駆動して、各記録ヘッド24の所要のノズルから液滴を吐出させる。
このように構成した画像形成装置においては、給紙部20又は両面搬送経路310からから用紙100が1枚ずつ給紙され、加圧コロ38で搬送ベルト31に押し付けられ、略90°搬送方向を転換される。そして、搬送ベルト31に用紙100が静電的に吸着され、搬送ベルト31の周回移動によって用紙100が副走査方向に搬送される。
そこで、キャリッジ23を移動させながら画像信号に基づいて記録ヘッド24を駆動することにより、停止している用紙100にインク滴を吐出して1行分を記録し、1行分の記録が終了すると、用紙100を1行分送り、次の行の記録を行うというように、用紙100を間歇的に搬送して、用紙100に画像を形成する。
記録終了信号又は用紙100の後端が記録領域に到達した信号を受けることにより、記録動作を終了する。
このとき、搬送経路に応じて前述したように分離ローラ34を実線図示の位置と破線図示の位置とで移動させることで、画像が形成された用紙100を搬送する搬送経路を切り替え、所要の搬送経路を経て用紙100を搬送先である排紙トレイ104に送り出す。
次に、本実施形態における用紙に対する帯電制御(加圧コロに対する給電制御)について図7も参照して説明する。図7は同給電制御(表面電位制御)の説明に供する用紙及び搬送ベルトの帯電状態の説明図である。
まず、高圧電源217から高電圧(第1給電電圧)が印加される帯電ローラ39aによって、搬送ベルト31は電荷が付与されて正極に帯電される。その後、同じく、高圧電源217から高電圧(第1給電電圧)が印加される帯電ローラ39bによりさらに電荷が供給され、搬送ベルト31は一様に正極の電荷が付与される。
この正極に帯電された帯電状態は、表面電位センサ51によって測定され、表面電位が所定の値となるように、制御部200によって高圧電源217から帯電ローラ39に与える第1給電電圧を調整制御する。このとき、帯電ローラ39a、39bの両方の電圧値を調整制御してもよいが、どちらか一方だけでもよく、この場合は最後に電圧を加える帯電ローラ39bに与える第1給電電圧の電圧値を調整制御することが好ましい。
そして、正極に帯電した搬送ベルト31上に用紙100が搬送される。そして、高圧電源218から高電圧(第2給電電圧)が印加される加圧コロ38によって電荷が供給されて、用紙100は負極に帯電される。
用紙100上から負極に帯電することにより、用紙100上の電荷と搬送ベルト31上の電荷がつり合い、用紙100の上面に表れる表面電位を抑制することができる。
次に、表面電位センサの位置と記録ヘッド下の位置との間で生じる表面電位の変化について図8を参照して説明する。
用紙100に加圧コロ38によって電荷を付与した場合、用紙100の電気抵抗により、負極の電荷が用紙100の裏面まで届くのに所定の時間を要する。特に、低温低湿環境では、抵抗値が1012(Ω・cm)〜1013(Ω・cm)になる用紙もあり、加圧コロ38によって印加された電荷がゆっくりと移動するため、図8に示すように、表面電位センサ61aの位置と記録ヘッド24下の位置で表面電位が変化する。
このため、図8に示すように表面電位センサ61aの位置で表面電位が0になるように設定したとしても、記録ヘッド24下に到達するまでに負極の電荷が用紙の搬送ベルトに接する面側に移動してしまうため、記録ヘッド24に対向する用紙表面には200V程度の正極の帯電が生じてしまう。
したがって、記録ヘッド24に対向する用紙表面での帯電をほぼ0とするためには、この電荷移動を想定して表面電位センサ61aの位置での表面電位を設定する必要がある。
ここで、この電荷移動は前述のとおり、用紙100の電気抵抗値の影響を受ける。また、電気抵抗値は、温度や湿度といった環境変化や用紙の保管環境に起因する含水率の影響を受けるため、印字動作の直前に計測することが好ましい。
そこで、本実施形態では、表面電位センサ61aの測定値を用いて印字動作直前の用紙の電気抵抗値を推定もしくは算出している。
すなわち、搬送ベルト31への印加電圧(第1給電電圧)と、用紙100への印加電圧(第2給電電圧)が決まれば、用紙100へ電圧を印加する加圧コロ38から表面電位センサ61aまでの距離の移動時間は一定であるため、表面電位センサ61aの測定値を計測することで、用紙100の電気抵抗値を推定もしくは算出することができる。
このとき、紙種等によって最初に用紙に印加する第2給電電圧を変更する場合には、第2給電電圧の電圧値も参照して、この用紙100の電気抵抗値の推定もしくは算出する。
そして、用紙の電気抵抗値が分かると、表面電位センサ61の位置と記録ヘッド24下の位置での表面電位の差を予測することができる。言い換えれば、この表面電位の差を予測して、目標となる表面電位センサ61の位置における用紙の表面電位の値(目標値)を決定することにより、記録ヘッド24下の表面電位を0ボルトに調整することが可能となる。
ここで、用紙の電気抵抗値と、記録ヘッド24下の表面電位を0Vに設定するための表面電位センサ61の位置における用紙の表面電位の値(目標値)との関係の一例を図9に示している。なお、図9は搬送ベルト31への印加電圧(第1給電電圧)2000V、用紙100への印加電圧(第2給電電圧)3000Vとしたときの関係である。
すなわち、導出された用紙の電気抵抗値を用いて、図9により表面電位センサ61の位置における用紙の表面電位の値を設定する。用紙の電気抵抗値が1013(Ω・cm)であれば、図9により表面電位センサ61の位置における用紙の表面電位の値を400Vにすれば、記録ヘッド24下の表面電位を0Vに設定できる。そして、表面電位センサ61の位置における用紙の表面電位の値が400Vとなるように、加圧コロ38に対する印加電圧を調整制御する。これにより、表面電位センサ61を記録ヘッド24下に設けて測定することなく、記録ヘッド24下の表面電位を0Vに設定できる。
ここで、表面電位センサ61での表面電位の検出値と、加圧コロ38に対する印加電圧(第2給電電圧)の電圧値と、この条件で記録ヘッド24下の表面電位が0Vとなる表面電位センサ61の位置における用紙の表面電位の値(目標値)との関係を予めテーブル化しておく。これにより、用紙の電気抵抗値の算出を行うことなく、表面電位の検出値と第2給電電圧とから直接的に用紙の表面電位の目標値を設定することができる。
ここで用いるテーブルは、加圧コロ38に対する印加電圧(第2給電電圧)の電圧値を所定値とする場合には、表面電位センサ61での表面電位の検出値と目標値との関係を示すテーブルでよい。
このように、第1電荷付与手段に第1給電電圧、第2電荷付与手段に第2給電電圧がそれぞれ印加されたときの、表面電位測定手段の検出値に基づいて、表面電位測定手段の位置における被記録媒体の表面電位の目標値を設定し、表面電位測定手段の位置における被記録媒体の表面電位が目標値になるように第2電荷付与手段に与える第2給電電圧を調整することで、画像形成手段下の電界を抑制でき、ミストの逆流による画像品質の低下を防止できる。
次に、両面印刷を行う場合について、図10を参照して説明する。なお、両面印刷において、「第1面」は先に画像を形成する面、「第2面」は後で画像を形成する面としている。
図10の実線は、初期(第1面を印字する前)の用紙の電気抵抗値と第1面を印字する際の表面電位センサ61の位置における用紙の表面電位の目標値との関係を示すもので図9と同じ関係を示している。
一方、図10の一点鎖線は、初期(第1面を印字する前)の用紙の電気抵抗値と第2面を印字する際の表面電位センサ61の位置における用紙の表面電位の目標値ととの関係を示している。
この場合、用紙の電気抵抗値は第1面の印字前に検知し、この電気抵抗値を使用して第2面の表面電位センサ61の位置における用紙の表面電位の目標値も設定している。この用紙の電気抵抗値の測定は第2面の印字前に行ってもよいが、第1面印字後は印字による水分付与の影響で抵抗値が不均一となるため、第2面印字時の表面電位の目標値は第1面の印字前の電気抵抗値を用いて決定することが好ましい。
ここで、第2面についての表面電位センサ61の位置における用紙の表面電位の目標値は、図10に示すように、第1面の目標値(図10の400V)より低い値(図10の200V)に設定する。これは、第1面に画像を形成することにより用紙は水分を含み、第2面の印字時の用紙の電気抵抗値は第1面の印字前に検知した電気抵抗値より低下しているために、表面電位が低くても電荷が容易に移動するためである。
次に、用紙の厚みとの関係について図11も参照して説明する。
図11は、用紙の厚み別に、用紙の電気抵抗値と、記録ヘッド24下の表面電位を0Vに設定するための表面電位センサ61の位置における用紙の表面電位の値(目標値)との関係の一例を示している。なお、図11は搬送ベルト31への印加電圧(第1給電電圧)2000V、用紙100への印加電圧(第2給電電圧)3000Vとしたときの関係である。
用紙の電気抵抗値が1013(Ω・cm)の場合、厚みが0.2mmのときは、表面電位センサ61の位置における用紙の表面電位の目標値は500Vとなり、厚みが0.06mmのときは、表面電位センサ61の位置における用紙の表面電位の目標値は300Vとなる。これは用紙が厚いほど用紙のヘッド対向面から裏面側まで電荷が移動しにくいため、表面電位の目標値を高く設定する必要があるためである。
したがって、用紙の厚みを検知して加圧コロ38に対する印加電圧の目標値の設定に反映することで、より正確な調整が可能になる。
なお、用紙の厚みの検知は、画像形成装置の操作部から入力から判断したり、あるいは、直接厚みを計測したりすればよい。
次に、制御部による表面電位制御の一例について図12のフロー図を参照して説明する。
給紙信号を受けると、制御部はまず、帯電ローラ39a、39bに所定の電圧値(例えば2000V)を与えて搬送ベルト31に電荷を付与し、加圧コロ38に所定の電圧値(例えば3000V)を与えて用紙100の表面に電荷を付与する。
そして、用紙100の先端が表面電位センサ61に到達したときに、表面電位センサ61を用いて用紙の表面電位を検出する。
帯電ローラ39a、39bに印加された所定の電圧と、加圧コロ38に印加された所定の電圧値と、表面電位センサ61で検出された表面電位の検知結果に基づいて用紙100の電気抵抗値を推定し、予め格納されているデータテーブルを参照して、記録ヘッド24下の用紙の表面電位が0Vとなる表面電位センサ61の位置における用紙の表面電位の目標値を設定する。
ここで、データテーブルは、加圧コロ38に対する印加電圧(第2給電電圧)の電圧値と表面電位センサ61の検知した表面電位、この条件で記録ヘッド24下の表面電位が0Vとなる表面電位センサ61の位置における用紙の表面電位の目標値を格納している。なお、用紙の表面電位の目標値に対する用紙の厚み情報による補正値もデータテーブルに格納している。
このとき、帯電ローラ39a、39bへの印加電圧や加圧コロ38への印加電圧が固定値であって変動しないのであれば、表面電位センサ61で検出された表面電位の検知結果のみに基づいて、表面電位センサ61の位置における用紙の表面電位の目標値を設定してもよい。
その後、用紙100の厚み情報を検知し、あるいは、予め格納されている情報から読取る。
そして、用紙100の厚み情報に基づき、設定された目標値を補正した上で、最終的な目標値を決定する。
次いで、決定された目標値になるように、加圧コロ38に対する印加電圧を制御する。これにより、決定された電圧を加圧コロ38に印加すると、記録ヘッド24下の表面電位を0Vに調整することができる。
その後、用紙後端が表面電位センサ61に到達したか否かを判別し、用紙後端が表面電位センサ61に到達するまでは、決定された目標値になるように、加圧コロ38に対する印加電圧を制御する。
そして、用紙後端が表面電位センサ61に到達した後、給紙信号が有りでなければ、この処理を終了する。
なお、前記説明では記録ヘッド24下の表面電位を0Vになるように表面電位制御を行っているが、記録ヘッド24下でインクミストの逆流を防止できる程度の電位であれば、厳密に0Vである必要はなく、0V近傍の値をとれば良い。
なお、本願において、「用紙」とは材質を紙に限定するものではなく、OHP、布、ガラス、基板などを含み、インク滴、その他の液体などが付着可能なものの意味であり、被記録媒体、記録媒体、記録紙、記録用紙などと称されるものを含む。また、画像形成、記録、印字、印写、印刷はいずれも同義語とする。
また、「画像形成装置」は、紙、糸、繊維、布帛、皮革、金属、プラスチック、ガラス、木材、セラミックス等の媒体に液体を吐出して画像形成を行う装置を意味する。また、「画像形成」とは、文字や図形等の意味を持つ画像を媒体に対して付与することだけでなく、パターン等の意味を持たない画像を媒体に付与すること(単に液滴を媒体に着弾させること)をも意味する。
また、「インク」とは、特に限定しない限り、インクと称されるものに限らず、記録液、定着処理液、液体などと称されるものなど、画像形成を行うことができるすべての液体の総称として用い、例えば、DNA試料、レジスト、パターン材料、樹脂なども含まれる。
また、「画像」とは平面的なものに限らず、立体的に形成されたものに付与された画像、また立体自体を三次元的に造形して形成された像も含まれる。
また、画像形成装置には、特に限定しない限り、シリアル型画像形成装置及びライン型画像形成装置のいずれも含まれる。