本発明は、燃料タンクに燃料を導く燃料給油管を構成する接合組立管を組み立てる接合組立装置及び接合組立管の組立方法に関する。
従来より、一端が燃料タンクに接続された給油管本体と、一端側が上記給油管本体の他端側に接続され、且つ、他端が給油口を構成する短筒状リテーナとを備えている燃料給油管が知られ、上記給油管本体と上記リテーナとは、一般的に、上記リテーナの一端側を上記給油管本体の他端側に内嵌合して重合させるとともに、その重合部分に溶接による環状接合部を形成して組み立てられる。
ところで、リテーナの外周面にメッキ層が形成されている場合、給油管本体にリテーナを内嵌合させるとその重合部分にメッキ層が介在してしまう。すると、溶接における溶融部の凝固時において、メッキ層が蒸発することで環状接合部に陥没部やブローホールが形成され、当該陥没部やブローホールによって環状接合部の強度が低くなってしまうおそれがある。
これを回避するために、給油管本体及びリテーナの重合部分に介在するメッキ層を環状接合部の形成前に予め除去しておくことが考えられる。例えば、特許文献1では、2枚の亜鉛メッキ鋼板を重ねてその重合部分にレーザ光による接合部を形成する際、当該接合部を形成する箇所に予めエネルギー密度の低いレーザ光を上記重合部分の板厚方向から照射して、レーザ光の熱によって2枚の鋼板を溶融させることなく重合部分に介在するメッキ層だけを蒸発させて取り除くようにしている。
しかし、特許文献1のように鋼板の重合部分に板厚方向からレーザ光を照射して重合部分に介在するメッキ層を蒸発させようとすると、レーザ光の熱が多量に両鋼板に加わってしまい、これを起因として熱歪みによる変形が両鋼板共に発生してしまう。このように両鋼板共に熱歪みによる変形が発生すると、製造後の部品精度が悪くなったり、両鋼板間に大きな隙間が生じて該隙間を起因とする接合部の穴明きが発生するおそれがある。これら部品精度不良や接合不良を回避するために、熱歪みで変形した両鋼板を治具で矯正してレーザ光を照射することも考えられるが、2つの鋼板を接合するのではなく、2つの金属製筒部材を嵌合してその重合部分に環状接合部を形成して組み立てる場合では、両筒部材に発生した熱歪みによる変形を治具で矯正しようとするとその治具構造が複雑になってしまい費用が嵩むおそれがある。
本発明は、斯かる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、部品精度不良や接合不良の発生を抑制するとともに費用が嵩まない接合組立管の接合組立装置及び組立方法を提供することにある。
上記の目的を達成するために、本発明は、接合組立管を組み立てる工程において、レーザ光の熱によるメッキ層の除去の仕方に工夫を凝らしたことを特徴とする。
具体的には、回転軸を有する回転手段と、レーザ光を連続照射可能なレーザ溶接機と、上記回転手段及び上記レーザ溶接機に接続され、上記回転軸の回転動作及び上記レーザ光の照射動作を制御する制御手段とを備え、該制御手段は、溶接用の第1出力値を記憶する記憶部を有し、少なくとも外周面にメッキ層を有する第1筒部材を第2筒部材に内嵌合させて組み立てた仮組立管を上記回転軸にセットした状態で上記回転手段及び上記レーザ溶接機を制御し、上記仮組立管を1回転以上回転させながら上記仮組立管の重合部分の上記第2筒部材端部と上記第1筒部材外周面とが交わる部分に対して上記第1出力値でレーザ光を連続照射することにより環状接合部を形成して接合組立管とするよう構成されている接合組立装置において次のような解決手段を講じた。
すなわち、第1の発明では、上記記憶部は、上記第1出力値よりも低出力値である第2出力値を記憶しており、上記制御手段は、上記第1筒部材又は上記仮組立管を上記回転軸にセットした状態で上記回転手段及び上記レーザ溶接機を制御し、上記第1筒部材又は上記仮組立管を1回転以上回転させながら上記環状接合部が形成される上記第1筒部材外周面の領域に対して予め上記第2出力値でレーザ光を連続照射することによりメッキ層を蒸発させて環状の母材剥出部を形成しておくよう構成されていることを特徴とする。
第2の発明では、第1の発明において、上記第1筒部材外周面に上記母材剥出部を形成する際、上記レーザ溶接機から照射されるレーザ光の焦点位置をずらして所定量デフォーカスさせる焦点位置変更手段を備えていることを特徴とする。
また、本発明は、少なくとも外周面にメッキ層を有する第1筒部材を第2筒部材に内嵌合して組み立てた仮組立管の重合部分の上記第1筒部材外周面と上記第2筒部材端部とが交わる部分に対して第1出力値でレーザ光を連続照射することにより環状接合部を形成して燃料給油管用の接合組立管とする接合組立管の組立方法をも対象とし、次のような解決手段を講じた。
すなわち、第3の発明では、上記第1筒部材又は上記仮組立管を少なくとも1回転以上回転させながら上記環状接合部が形成される上記第1筒部材外周面の領域に対して、予め上記第1出力値よりも低出力値の第2出力値でレーザ光を連続照射することによりメッキ層を蒸発させて環状の母材剥出部を形成しておくことを特徴とする。
第1及び第3の発明では、メッキ層が除去された第1筒部材の母材剥出部と第2筒部材端部とが溶融して環状接合部を形成するので、該環状接合部に陥没部やブローホールといったメッキ層を起因とした欠陥が発生し難く、健全な接合部を形成することができる。また、接合箇所に対応する仮組立管のメッキ層を除去する際、第1筒部材の外周面にのみレーザ光を照射するので、メッキ層除去時の熱歪みによる変形は主に第1筒部材にしか発生せず、特許文献1の如きメッキ層除去時に2つの部材に熱歪みによる変形が発生する場合に比べて、製造後の部品精度が良くなるとともに、熱歪みが発生しても両筒部材の重合部分に発生する隙間を小さくして穴明きの発生を抑制でき、しかも、両筒部材を接合する際に熱歪みにより発生した変形を矯正する矯正治具が必要でなく、治具を簡素化して設備コストを低く抑えることができる。
第2の発明では、第1筒部材の外周面に対してレーザ光の照射範囲が広がることで母材剥出部の幅が広くなるので、接合時にレーザ光の照射位置がばらついても、レーザ光の照射位置が母材剥出部からはみ出るということを防止してメッキ層の蒸発を起因とした接合部の欠陥を確実に発生させないようにできる。また、レーザ光がデフォーカス状態で照射されるので、メッキ層を除去する際の第1筒部材外周面に加わるエネルギー密度が第1の発明よりさらに小さくなって、第1筒部材に発生する熱歪みによる変形をさらに抑制することができる。
本発明の実施形態に係る接合組立装置で組み立てられた接合組立管を有する燃料給油管と、燃料給油管が接続される燃料タンク及び給油口を旋蓋する給油キャップの斜視図である。
本発明の実施形態に係る接合組立装置の概略構成図である。
図1のA−A線における断面相当図であり、レーザ光によりリテーナ外周面の一部のメッキ層を除去する直前の状態を示す。
図1のA−A線における断面相当図であり、レーザ光によりリテーナ外周面の一部のメッキ層を除去した直後の状態を示す。
図1のA−A線における断面相当図であり、レーザ溶接を行う直前の状態を示す。
図1のA−A線における断面相当図であり、レーザ溶接を開始した直後の状態を示す。
図1のA−A線における断面相当図であり、レーザ溶接を終了した直後の状態を示す。
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。尚、以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎない。
図1は、本発明の実施形態に係る燃料給油管1を示す。該燃料給油管1は、車両の燃料タンク11に対して燃料を給油する際の通路となるものであり、一端が上記燃料タンク11に接続され、且つ、他端が拡径された略円形筒状の給油管本体2(第2筒部材)と、該給油管本体2の拡径部分に接続された略円形短筒状のリテーナ3(第1筒部材)とを備え、上記給油管本体2と上記リテーナ3とを接合により繋ぐことで接合組立管1bが組み立てられる。
上記給油管本体2の外周面及び内周面には、図3乃至図7に示すように、それぞれメッキ層2aが形成されている。具体的には、上記給油管本体2は、肉厚が約0.8〜1.0mm程度の鋼管の外周面及び内周面にニッケル亜鉛メッキや溶融亜鉛メッキからなるメッキ層2aを形成したものである。
尚、上記給油管本体2の鋼管は、製造する燃料給油管1に対して高い外面防錆性能を要求しない場合には、JIS規格でSTKM11A又はSTKM12A相当の材料からなるものを適用でき、具体的には、STKM11A相当の鋼管の外周面及び内周面に溶融亜鉛メッキ層が形成された丸一鋼管株式会社製のメッキ鋼管等を適用できる。また、上記給油管本体2の鋼管は、製造する燃料給油管1に対して高い外面防錆性能を要求する場合には、JIS規格でSUS429、SUS430、SUS430LX、SUS430J1L、SUS403LX、SUS434、SUS436L、SUS436J1L、SUS443J1及びSUS444相当の材料からなるものを適用でき、例えば、NSS439(JIS規格のSUS403LX)相当の鋼管の外周面及び内周面にニッケル亜鉛合金メッキ(電気メッキ)層が形成された日新製鋼株式会社製のメッキ鋼管等を適用できる。
また、上記リテーナ3の外周面及び内周面には、それぞれメッキ層3aが形成されている。具体的には、上記リテーナ3は、肉厚が約1.2〜1.6mm程度の電気亜鉛メッキや無電解ニッケルメッキからなるメッキ層3aが施された冷間圧延鋼板をプレス成形により短筒状にしたものや、肉厚が約1.2〜1.6mm程度のフェライト系ステンレス鋼板(例えば、JIS規格でSUS429、SUS430、SUS430LX、SUS430J1L、SUS434、SUS436L、SUS436J1L、SUS443J1及びSUS444相当の材料からなるもの)をプレス成形により短筒状にしたものである。
そして、上記リテーナ3の一端側を上記給油管本体2の他端側に内嵌合させて仮組立管1aとすると、該仮組立管1aの重合部分1cにはメッキ層2a,3aが介在するようになっている。
尚、図3〜図7では便宜上、メッキ層2a,3aの厚みを誇張して記載している。
上記リテーナ3の一端側は、端部に向かうにつれて緩やかに縮径する形状をなす一方、上記リテーナ3の他端は、上記燃料給油管1の給油口3bを構成している。
上記リテーナ3の他端側内周面には、給油キャップ12の雄螺旋部12aと螺合する雌螺旋部3cが一条形成され、上記給油口3bは、上記給油キャップ12で開閉可能に施蓋されるとともに、図示しない給油ガンのノズルが挿入されるようになっている。
上記接合組立管1bは、本発明の実施形態に係る接合組立装置5で組み立てられている。
該接合組立装置5は、図2に示すように、上記仮組立管1aをセット可能な回転治具6(回転手段)と、レーザ光Lzを連続照射可能な加工ヘッド7aを有するレーザ溶接機7と、上記加工ヘッド7aを移動させるマニピュレーター8(焦点位置変更手段)と、上記回転治具6、上記レーザ溶接機7及び上記マニピュレーター8に接続され、当該各機器に作動信号を出力する制御盤9(制御手段)とを備え、該制御盤9は、上記回転治具6の回転動作、上記レーザ光Lzの照射動作及び上記加工ヘッド7aの移動動作を制御するようになっている。
上記回転治具6は、箱形の治具本体6aを備え、該治具本体6a内部には、回転軸心を水平方向に向けたサーボモータ6bが設けられている。
該サーボモータ6bの出力軸には、上記治具本体6aから側方に略水平に延びる回転軸6cが取り付けられ、該回転軸6cは、上記サーボモータ6bの回転駆動に連動して回転するようになっている。
上記回転軸6cの外周面には、上記雌螺旋部3cに螺合可能な雄螺旋部6dが形成され、該雄螺旋部6dを上記仮組立管1aの上記雌螺旋部3cに螺合させることにより上記仮組立管1aを上記回転軸6cにセットした状態となり、この状態で上記サーボモータ6bを回転駆動させると、上記回転軸6cが回転して上記仮組立管1aが当該仮組立管1aの重合部分の筒中心線(水平軸)周りに回転するようになっている。
上記レーザ溶接機7は、レーザ光Lzを励起させる溶接機本体7bを備え、該溶接機本体7bと上記加工ヘッド7aとの間には、上記溶接機本体7bから上記加工ヘッド7aまでレーザ光Lzを伝送する光ファイバーケーブル7cが配索されている。
上記マニピュレーター8は、上記加工ヘッド7aを把持するアーム部8aを備え、該アーム部8aを作動させることにより、上記加工ヘッド7aから照射されるレーザ光Lzの焦点位置を照射方向X1に、レーザ光Lzの照射位置を仮組立管1aの筒中心線方向X2に、レーザ光Lzの照射角度を所定の角度に変更可能となっている。
上記制御盤9は、溶接用の第1出力値9b及び該第1出力値9bより低出力値である第2出力値9cを記憶する記憶部9aを有している。
そして、上記制御盤9は、上記回転治具6の回転軸6cに仮組立管1aをセットした状態で、図3に示すように、上記マニピュレーター8に作動信号を出力して、上記給油管本体2の他端側の端部に向かってレーザ光Lzが斜め下方に照射されるように加工ヘッド7aを約45度傾斜させ、且つ、加工ヘッド7aを照射方向X1及び筒中心線方向X2に移動させることにより、上記リテーナ3外周面の上記重合部分1cとの隣接領域R(後述する環状接合部Wが形成されるリテーナ3外周面の領域)にレーザ光Lzの照射位置を変更させるとともに、レーザ光Lzの焦点位置をずらして所定量デフォーカスさせるようになっている。
また、上記制御盤9は、レーザ光Lzの照射位置を上記隣接領域Rとした状態で、図4に示すように、上記回転治具6及び上記レーザ溶接機7に作動信号を出力して、上記仮組立管1aを1回転させながら予め第2出力値9cでレーザ光Lzを照射することによりメッキ層3aを蒸発させて環状の母材剥出部3dを形成しておくようになっている。
尚、上記母材剥出部3dを形成する際、上記重合部分1cに介在するメッキ層2a,3aのうち、給油管本体2の端部に対応する部分も、レーザ光Lzの照射熱が伝わって多少蒸発する。
さらに、上記制御盤9は、上記リテーナ3外周面に母材剥出部3dを形成した状態で、図5に示すように、上記マニピュレーター8に作動信号を出力して、加工ヘッド7aを筒中心線方向X2の給油管本体2側に距離L1だけ移動させるとともに、仮組立管1aの径方向外側に距離L2だけ移動させることにより、上記給油管本体2端部の隅角部2bにレーザ光Lzの照射位置を変更させるとともに、レーザ光Lzの焦点位置をずらして所定量デフォーカスさせるようになっている。
それに加えて、上記制御盤9は、レーザ光Lzの照射位置を上記隅角部2bとした状態で、図6に示すように、上記回転治具6及び上記レーザ溶接機7に作動信号を出力して、上記仮組立管1aを1回転させながら第1出力値9bでレーザ光Lzを照射することにより上記隅角部2bを溶融させて崩れさせるようになっている。
そして、上記制御盤9は、上記隅角部2bを溶融させて崩れさせている状態で、図7に示すように、上記マニピュレーター8に作動信号を出力して、加工ヘッド7aを筒中心線方向X2のリテーナ3側に距離L1だけ移動させるとともに、仮組立管1aの径方向内側に距離L3だけ移動させることにより、上記給油管本体2の他端側の端部と上記リテーナ3外周面とが交わっていた部分にレーザ光Lzの焦点位置を移動させ、且つ、上記仮組立管1aを1回転させながら第1出力値9bでレーザ光Lzを照射して上記隅角部2bの崩れた部分とリテーナ3の外周面とを環状接合部Wで繋ぐことにより、上記接合組立管1bを組み立てるようになっている。
尚、上記接合組立装置5で組み立てられた上記接合組立管1bは、図示しないブリーザパイプやリサーキュレーションパイプ等の枝管や車両搭載用のブラケット類がTIG溶接やMIGろう付けなどで組み付けられた後、塗装用の前処理を経てカチオン電着塗装や粉体塗装が施されるようになっている。
次に、上記接合組立装置5による上記接合組立管1bの組み立てについて説明する。
まず、作業者は、図示しない嵌合装置を用いてリテーナ3の一端側を給油管本体2の他端側に内嵌合させて仮組立管1aにするとともに、該仮組立管1aにおけるリテーナ3の雌螺旋部3cに回転治具6における回転軸6cの雄螺旋部6dを螺合させて仮組立管1aを回転軸6cにセットする。
次に、作業者は、図示しない溶接開始ボタンを押す。すると、制御盤9は、マニピュレーター8に作動信号を出力し、その信号に基づいて上記マニピュレーター8は上記給油管本体2の他端側の端部に向かってレーザ光Lzが斜め下方に照射されるように加工ヘッド7aを約45度傾斜させ、且つ、加工ヘッド7aを照射方向X1及び筒中心線方向X2に移動させて上記リテーナ3外周面の上記重合部分1cとの隣接領域Rにレーザ光Lzの照射位置を変更させるとともに、レーザ光Lzの焦点位置をずらして所定量デフォーカスさせる。
次いで、制御盤9は、上記回転治具6及び上記レーザ溶接機7に作動信号を出力し、その信号に基づいて上記回転治具6は仮組立管1aを1回転させ、且つ、上記レーザ溶接機7は上記第2出力値9cでレーザ光Lzを照射し、図4に示すように、メッキ層3aを蒸発させて環状の母材剥出部3dを形成する。
しかる後、制御盤9は、マニピュレーター8に作動信号を出力し、その信号に基づいてマニピュレーター8は、図5に示すように、上記加工ヘッド7aを筒中心線方向X2の給油管本体2側に距離L1だけ移動させ、且つ、仮組立管1aの径方向外側に距離L2だけ移動させるとともに、レーザ光Lzの焦点位置をずらして所定量デフォーカスさせる。
その後、上記制御盤9は、上記回転治具6及び上記レーザ溶接機7に作動信号を出力し、その信号に基づいて上記回転治具6は仮組立管1aを1回転させ、且つ、上記レーザ溶接機7は第1出力値9bでレーザ光Lzを照射し、図6に示すように、上記隅角部2bを溶融させて崩れさせる。
そして、上記制御盤9は、上記マニピュレーター8に作動信号を出力し、その信号に基づいて上記マニピュレーター8は加工ヘッド7aを筒中心線方向X2のリテーナ3側に距離L1だけ移動させるとともに仮組立管1aの径方向内側に距離L3だけ移動させて、上記給油管本体2の他端側の端部と上記リテーナ3外周面とが交わっていた部分にレーザ光Lzの焦点位置を移動させる。
その後、上記制御盤9は、上記回転治具6及び上記レーザ溶接機7に作動信号を出力し、その信号に基づいて上記回転治具6は仮組立管1aを1回転させ、且つ、上記レーザ溶接機7は、上記第1出力値9bでレーザ光Lzを照射し、図7に示すように、上記リテーナ3の外周面(母材剥出部3d)を溶融させることにより上記隅角部2bの崩れた部分とリテーナ3の外面側とが環状接合部Wで繋がって接合組立管1bが組み立てられる。
しかる後、上記接合組立管1bに対して図示しないブリーザパイプやリサーキュレーションパイプ等の枝管や車両搭載用のブラケット類をTIG溶接やMIGろう付けなどで組み付けた後、塗装用の前処理を経てカチオン電着塗装や粉体塗装を施して燃料給油管1を完成させる。
以上より、本発明の実施形態によると、メッキ層3aが除去されたリテーナ3の母材剥出部3dと給油管本体2の端部とが溶融して環状接合部Wを形成するので、該環状接合部Wに陥没部やブローホールといったメッキ層2aを起因とした欠陥が発生し難くなり、健全な接合部W1を形成することができる。また、接合箇所に対応する仮組立管1aのメッキ層3aを除去する際、リテーナ3の外周面にのみレーザ光Lzを照射するので、メッキ層3a除去時の熱歪みによる変形は主に第1筒部材にしか発生せず、特許文献1の如きメッキ層3a除去時に2つの部材に熱歪みによる変形が発生する場合に比べて、製造後の部品精度が良くなるとともに、熱歪みが発生しても給油管本体2及びリテーナ3の重合部分1cに発生する隙間を小さくして穴明きの発生を抑制でき、しかも、給油管本体2及びリテーナ3を接合する際に熱歪みにより発生した変形を矯正する矯正治具が必要でなく、治具を簡素化して設備コストを低く抑えることができる。
また、リテーナ3外周面に母材剥出部3dを形成する際、レーザ光Lzを所定量デフォーカスしているので、リテーナ3の外周面に対してレーザ光Lzの照射範囲が広がることで母材剥出部3dの幅が広くなり、接合時にレーザ光Lzの照射位置がばらついても、レーザ光Lzの照射位置が母材剥出部3dからはみ出るということを防止してメッキ層3aの蒸発を起因とした接合部W1の欠陥を確実に発生させないようにできる。また、レーザ光Lzがデフォーカス状態で照射されるので、メッキ層3aを除去する際のリテーナ3外周面に加わるエネルギー密度がさらに小さくなって、リテーナ3に発生する熱歪みによる変形をさらに抑制することができる。
尚、本発明の実施形態では、隣接領域Rのメッキ層3aをレーザ光Lzで蒸発させて母材剥出部3dを形成する工程と、給油管本体2の隅角部2bをレーザ光Lzで溶融させる工程と、上記隅角部2bの崩れた部分とリテーナ3の外周面とを環状接合部Wで繋ぐようレーザ光Lzを照射する工程とで、仮組立管1aを回転治具6でそれぞれ1回転しかさせていないが、それぞれの工程で複数回回転させながらレーザ光Lzを照射するようにしてもよい。
また、本発明の実施形態では、リテーナ3の一端側を給油管本体2の他端側に内嵌合してその重合部分を環状接合部Wで繋いで接合組立管1bを組み立てる場合について説明したが、給油管本体2を本発明の第1筒部材と、リテーナ3を本発明の第2筒部材として給油管本体2の他端側をリテーナ3の一端側に内嵌合してその重合部分を環状接合部Wで繋いで接合組立管1bを組み立てるような場合においても上記接合組立装置5を用いることができる。
また、本発明の実施形態では、内周面及び外周面にメッキ層2aが形成された給油管本体2の他端側に内周面及び外周面にメッキ層3aが形成されたリテーナ3の一端側を内嵌合して互いに接合する場合について述べたが、少なくとも外周面にメッキ層3aが形成されているリテーナ3の他端側を給油管本体2の一端側に内嵌合して接合する際に、本実施形態の接合組立装置5及び接合組立管1bの組立方法を適用することができる。
また、本発明の実施形態では、仮組立管1aの状態で母材剥出部3dを形成しているが、これに限らず、仮組立管1aとなる前のリテーナ3だけを回転軸6cにセットして上記リテーナ3を回転させながらレーザ光Lzを照射して母材剥出部3dを形成し、その後、図示しない嵌合装置でリテーナ3の一端側に給油管本体2の他端側を外嵌合させて仮組立管1aとするようにしてもよい。
本発明は、燃料タンクに燃料を導く燃料給油管を構成する接合組立管を組み立てる接合組立装置及び接合組立管の組立方法に適している。
1 燃料給油管
1a 仮組立管
1b 接合組立管
1c 重合部分
2 給油管本体(第2筒部材)
2a メッキ層
3 リテーナ(第1筒部材)
3a メッキ層
5 接合組立装置
6 回転治具(回転手段)
7 レーザ溶接機
8 マニピュレーター(焦点位置変更手段)
9 制御盤(制御手段)
9a 記憶部
R 隣接領域(環状接合部が形成されるリテーナ外周面の領域)
W 環状接合部
Lz レーザ光
本発明は、燃料タンクに燃料を導く燃料給油管を構成する接合組立管を組み立てる接合組立装置及び接合組立管の組立方法に関する。
従来より、一端が燃料タンクに接続された給油管本体と、一端側が上記給油管本体の他端側に接続され、且つ、他端が給油口を構成する短筒状リテーナとを備えている燃料給油管が知られ、上記給油管本体と上記リテーナとは、一般的に、上記リテーナの一端側を上記給油管本体の他端側に内嵌合して重合させるとともに、その重合部分に溶接による環状接合部を形成して組み立てられる。
ところで、リテーナの外周面にメッキ層が形成されている場合、給油管本体にリテーナを内嵌合させるとその重合部分にメッキ層が介在してしまう。すると、溶接における溶融部の凝固時において、メッキ層が蒸発することで環状接合部に陥没部やブローホールが形成され、当該陥没部やブローホールによって環状接合部の強度が低くなってしまうおそれがある。
これを回避するために、給油管本体及びリテーナの重合部分に介在するメッキ層を環状接合部の形成前に予め除去しておくことが考えられる。例えば、特許文献1では、2枚の亜鉛メッキ鋼板を重ねてその重合部分にレーザ光による接合部を形成する際、当該接合部を形成する箇所に予めエネルギー密度の低いレーザ光を上記重合部分の板厚方向から照射して、レーザ光の熱によって2枚の鋼板を溶融させることなく重合部分に介在するメッキ層だけを蒸発させて取り除くようにしている。
しかし、特許文献1のように鋼板の重合部分に板厚方向からレーザ光を照射して重合部分に介在するメッキ層を蒸発させようとすると、レーザ光の熱が多量に両鋼板に加わってしまい、これを起因として熱歪みによる変形が両鋼板共に発生してしまう。このように両鋼板共に熱歪みによる変形が発生すると、製造後の部品精度が悪くなったり、両鋼板間に大きな隙間が生じて該隙間を起因とする接合部の穴明きが発生するおそれがある。これら部品精度不良や接合不良を回避するために、熱歪みで変形した両鋼板を治具で矯正してレーザ光を照射することも考えられるが、2つの鋼板を接合するのではなく、2つの金属製筒部材を嵌合してその重合部分に環状接合部を形成して組み立てる場合では、両筒部材に発生した熱歪みによる変形を治具で矯正しようとするとその治具構造が複雑になってしまい費用が嵩むおそれがある。
本発明は、斯かる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、部品精度不良や接合不良の発生を抑制するとともに費用が嵩まない接合組立管の接合組立装置及び組立方法を提供することにある。
上記の目的を達成するために、本発明は、接合組立管を組み立てる工程において、レーザ光の熱によるメッキ層の除去の仕方に工夫を凝らしたことを特徴とする。
具体的には、回転軸を有する回転手段と、レーザ光を連続照射可能なレーザ溶接機と、上記回転手段及び上記レーザ溶接機に接続され、上記回転軸の回転動作及び上記レーザ光の照射動作を制御する制御手段とを備え、該制御手段は、溶接用の第1出力値を記憶する記憶部を有し、少なくとも外周面にメッキ層を有する第1筒部材を第2筒部材に内嵌合させて組み立てた仮組立管を上記回転軸にセットした状態で上記回転手段及び上記レーザ溶接機を制御し、上記仮組立管を1回転以上回転させながら上記仮組立管の重合部分の上記第2筒部材端部と上記第1筒部材外周面とが交わる部分に対して上記第1出力値でレーザ光を連続照射することにより環状接合部を形成して接合組立管とするよう構成されている接合組立装置において次のような解決手段を講じた。
すなわち、第1の発明では、上記記憶部は、上記第1出力値よりも低出力値である第2出力値を記憶しており、上記制御手段は、上記第1筒部材又は上記仮組立管を上記回転軸にセットした状態で上記回転手段及び上記レーザ溶接機を制御し、上記第1筒部材又は上記仮組立管を1回転以上回転させながら上記環状接合部が形成される上記第1筒部材外周面の領域に対して予め上記第2出力値でレーザ光を連続照射することによりメッキ層を蒸発させて環状の母材剥出部を形成しておくよう構成されていることを特徴とする。
第2の発明では、第1の発明において、上記第1筒部材外周面に上記母材剥出部を形成する際、上記レーザ溶接機から照射されるレーザ光の焦点位置をずらして所定量デフォーカスさせる焦点位置変更手段を備えていることを特徴とする。
また、本発明は、少なくとも外周面にメッキ層を有する第1筒部材を第2筒部材に内嵌合して組み立てた仮組立管の重合部分の上記第1筒部材外周面と上記第2筒部材端部とが交わる部分に対して第1出力値でレーザ光を連続照射することにより環状接合部を形成して燃料給油管用の接合組立管とする接合組立管の組立方法をも対象とし、次のような解決手段を講じた。
すなわち、第3の発明では、上記第1筒部材又は上記仮組立管を少なくとも1回転以上回転させながら上記環状接合部が形成される上記第1筒部材外周面の領域に対して、予め上記第1出力値よりも低出力値の第2出力値でレーザ光を連続照射することによりメッキ層を蒸発させて環状の母材剥出部を形成しておくことを特徴とする。
第1及び第3の発明では、メッキ層が除去された第1筒部材の母材剥出部と第2筒部材端部とが溶融して環状接合部を形成するので、該環状接合部に陥没部やブローホールといったメッキ層を起因とした欠陥が発生し難く、健全な接合部を形成することができる。また、接合箇所に対応する仮組立管のメッキ層を除去する際、第1筒部材の外周面にのみレーザ光を照射するので、メッキ層除去時の熱歪みによる変形は主に第1筒部材にしか発生せず、特許文献1の如きメッキ層除去時に2つの部材に熱歪みによる変形が発生する場合に比べて、製造後の部品精度が良くなるとともに、熱歪みが発生しても両筒部材の重合部分に発生する隙間を小さくして穴明きの発生を抑制でき、しかも、両筒部材を接合する際に熱歪みにより発生した変形を矯正する矯正治具が必要でなく、治具を簡素化して設備コストを低く抑えることができる。
第2の発明では、第1筒部材の外周面に対してレーザ光の照射範囲が広がることで母材剥出部の幅が広くなるので、接合時にレーザ光の照射位置がばらついても、レーザ光の照射位置が母材剥出部からはみ出るということを防止してメッキ層の蒸発を起因とした接合部の欠陥を確実に発生させないようにできる。また、レーザ光がデフォーカス状態で照射されるので、メッキ層を除去する際の第1筒部材外周面に加わるエネルギー密度が第1の発明よりさらに小さくなって、第1筒部材に発生する熱歪みによる変形をさらに抑制することができる。
本発明の実施形態に係る接合組立装置で組み立てられた接合組立管を有する燃料給油管と、燃料給油管が接続される燃料タンク及び給油口を旋蓋する給油キャップの斜視図である。
本発明の実施形態に係る接合組立装置の概略構成図である。
図1のA−A線における断面相当図であり、レーザ光によりリテーナ外周面の一部のメッキ層を除去する直前の状態を示す。
図1のA−A線における断面相当図であり、レーザ光によりリテーナ外周面の一部のメッキ層を除去した直後の状態を示す。
図1のA−A線における断面相当図であり、レーザ溶接を行う直前の状態を示す。
図1のA−A線における断面相当図であり、レーザ溶接を開始した直後の状態を示す。
図1のA−A線における断面相当図であり、レーザ溶接を終了した直後の状態を示す。
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。尚、以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎない。
図1は、本発明の実施形態に係る燃料給油管1を示す。該燃料給油管1は、車両の燃料タンク11に対して燃料を給油する際の通路となるものであり、一端が上記燃料タンク11に接続され、且つ、他端が拡径された略円形筒状の給油管本体2(第2筒部材)と、該給油管本体2の拡径部分に接続された略円形短筒状のリテーナ3(第1筒部材)とを備え、上記給油管本体2と上記リテーナ3とを接合により繋ぐことで接合組立管1bが組み立てられる。
上記給油管本体2の外周面及び内周面には、図3乃至図7に示すように、それぞれメッキ層2aが形成されている。具体的には、上記給油管本体2は、肉厚が約0.8〜1.0mm程度の鋼管の外周面及び内周面にニッケル亜鉛メッキや溶融亜鉛メッキからなるメッキ層2aを形成したものである。
尚、上記給油管本体2の鋼管は、製造する燃料給油管1に対して高い外面防錆性能を要求しない場合には、JIS規格でSTKM11A又はSTKM12A相当の材料からなるものを適用でき、具体的には、STKM11A相当の鋼管の外周面及び内周面に溶融亜鉛メッキ層が形成された丸一鋼管株式会社製のメッキ鋼管等を適用できる。また、上記給油管本体2の鋼管は、製造する燃料給油管1に対して高い外面防錆性能を要求する場合には、JIS規格でSUS429、SUS430、SUS430LX、SUS430J1L、SUS403LX、SUS434、SUS436L、SUS436J1L、SUS443J1及びSUS444相当の材料からなるものを適用でき、例えば、NSS439(JIS規格のSUS430LX相当)の鋼管の外周面及び内周面にニッケル亜鉛合金メッキ(電気メッキ)層が形成された日新製鋼株式会社製のメッキ鋼管等を適用できる。
また、上記リテーナ3の外周面及び内周面には、それぞれメッキ層3aが形成されている。具体的には、上記リテーナ3は、肉厚が約1.2〜1.6mm程度の電気亜鉛メッキや無電解ニッケルメッキからなるメッキ層3aが施された冷間圧延鋼板をプレス成形により短筒状にしたものや、肉厚が約1.2〜1.6mm程度のフェライト系ステンレス鋼板(例えば、JIS規格でSUS429、SUS430、SUS430LX、SUS430J1L、SUS434、SUS436L、SUS436J1L、SUS443J1及びSUS444相当の材料からなるもの)をプレス成形により短筒状にしたものである。
そして、上記リテーナ3の一端側を上記給油管本体2の他端側に内嵌合させて仮組立管1aとすると、該仮組立管1aの重合部分1cにはメッキ層2a,3aが介在するようになっている。
尚、図3〜図7では便宜上、メッキ層2a,3aの厚みを誇張して記載している。
上記リテーナ3の一端側は、端部に向かうにつれて緩やかに縮径する形状をなす一方、上記リテーナ3の他端は、上記燃料給油管1の給油口3bを構成している。
上記リテーナ3の他端側内周面には、給油キャップ12の雄螺旋部12aと螺合する雌螺旋部3cが一条形成され、上記給油口3bは、上記給油キャップ12で開閉可能に施蓋されるとともに、図示しない給油ガンのノズルが挿入されるようになっている。
上記接合組立管1bは、本発明の実施形態に係る接合組立装置5で組み立てられている。
該接合組立装置5は、図2に示すように、上記仮組立管1aをセット可能な回転治具6(回転手段)と、レーザ光Lzを連続照射可能な加工ヘッド7aを有するレーザ溶接機7と、上記加工ヘッド7aを移動させるマニピュレーター8(焦点位置変更手段)と、上記回転治具6、上記レーザ溶接機7及び上記マニピュレーター8に接続され、当該各機器に作動信号を出力する制御盤9(制御手段)とを備え、該制御盤9は、上記回転治具6の回転動作、上記レーザ光Lzの照射動作及び上記加工ヘッド7aの移動動作を制御するようになっている。
上記回転治具6は、箱形の治具本体6aを備え、該治具本体6a内部には、回転軸心を水平方向に向けたサーボモータ6bが設けられている。
該サーボモータ6bの出力軸には、上記治具本体6aから側方に略水平に延びる回転軸6cが取り付けられ、該回転軸6cは、上記サーボモータ6bの回転駆動に連動して回転するようになっている。
上記回転軸6cの外周面には、上記雌螺旋部3cに螺合可能な雄螺旋部6dが形成され、該雄螺旋部6dを上記仮組立管1aの上記雌螺旋部3cに螺合させることにより上記仮組立管1aを上記回転軸6cにセットした状態となり、この状態で上記サーボモータ6bを回転駆動させると、上記回転軸6cが回転して上記仮組立管1aが当該仮組立管1aの重合部分の筒中心線(水平軸)周りに回転するようになっている。
上記レーザ溶接機7は、レーザ光Lzを励起させる溶接機本体7bを備え、該溶接機本体7bと上記加工ヘッド7aとの間には、上記溶接機本体7bから上記加工ヘッド7aまでレーザ光Lzを伝送する光ファイバーケーブル7cが配索されている。
上記マニピュレーター8は、上記加工ヘッド7aを把持するアーム部8aを備え、該アーム部8aを作動させることにより、上記加工ヘッド7aから照射されるレーザ光Lzの焦点位置を照射方向X1に、レーザ光Lzの照射位置を仮組立管1aの筒中心線方向X2に、レーザ光Lzの照射角度を所定の角度に変更可能となっている。
上記制御盤9は、溶接用の第1出力値9b及び該第1出力値9bより低出力値である第2出力値9cを記憶する記憶部9aを有している。
そして、上記制御盤9は、上記回転治具6の回転軸6cに仮組立管1aをセットした状態で、図3に示すように、上記マニピュレーター8に作動信号を出力して、上記給油管本体2の他端側の端部に向かってレーザ光Lzが斜め下方に照射されるように加工ヘッド7aを約45度傾斜させ、且つ、加工ヘッド7aを照射方向X1及び筒中心線方向X2に移動させることにより、上記リテーナ3外周面の上記重合部分1cとの隣接領域R(後述する環状接合部Wが形成されるリテーナ3外周面の領域)にレーザ光Lzの照射位置を変更させるとともに、レーザ光Lzの焦点位置をずらして所定量デフォーカスさせるようになっている。
また、上記制御盤9は、レーザ光Lzの照射位置を上記隣接領域Rとした状態で、図4に示すように、上記回転治具6及び上記レーザ溶接機7に作動信号を出力して、上記仮組立管1aを1回転させながら予め第2出力値9cでレーザ光Lzを照射することによりメッキ層3aを蒸発させて環状の母材剥出部3dを形成しておくようになっている。
尚、上記母材剥出部3dを形成する際、上記重合部分1cに介在するメッキ層2a,3aのうち、給油管本体2の端部に対応する部分も、レーザ光Lzの照射熱が伝わって多少蒸発する。
さらに、上記制御盤9は、上記リテーナ3外周面に母材剥出部3dを形成した状態で、図5に示すように、上記マニピュレーター8に作動信号を出力して、加工ヘッド7aを筒中心線方向X2の給油管本体2側に距離L1だけ移動させるとともに、仮組立管1aの径方向外側に距離L2だけ移動させることにより、上記給油管本体2端部の隅角部2bにレーザ光Lzの照射位置を変更させるとともに、レーザ光Lzの焦点位置をずらして所定量デフォーカスさせるようになっている。
それに加えて、上記制御盤9は、レーザ光Lzの照射位置を上記隅角部2bとした状態で、図6に示すように、上記回転治具6及び上記レーザ溶接機7に作動信号を出力して、上記仮組立管1aを1回転させながら第1出力値9bでレーザ光Lzを照射することにより上記隅角部2bを溶融させて崩れさせるようになっている。
そして、上記制御盤9は、上記隅角部2bを溶融させて崩れさせている状態で、図7に示すように、上記マニピュレーター8に作動信号を出力して、加工ヘッド7aを筒中心線方向X2のリテーナ3側に距離L1だけ移動させるとともに、仮組立管1aの径方向内側に距離L3だけ移動させることにより、上記給油管本体2の他端側の端部と上記リテーナ3外周面とが交わっていた部分にレーザ光Lzの焦点位置を移動させ、且つ、上記仮組立管1aを1回転させながら第1出力値9bでレーザ光Lzを照射して上記隅角部2bの崩れた部分とリテーナ3の外周面とを環状接合部Wで繋ぐことにより、上記接合組立管1bを組み立てるようになっている。
尚、上記接合組立装置5で組み立てられた上記接合組立管1bは、図示しないブリーザパイプやリサーキュレーションパイプ等の枝管や車両搭載用のブラケット類がTIG溶接やMIGろう付けなどで組み付けられた後、塗装用の前処理を経てカチオン電着塗装や粉体塗装が施されるようになっている。
次に、上記接合組立装置5による上記接合組立管1bの組み立てについて説明する。
まず、作業者は、図示しない嵌合装置を用いてリテーナ3の一端側を給油管本体2の他端側に内嵌合させて仮組立管1aにするとともに、該仮組立管1aにおけるリテーナ3の雌螺旋部3cに回転治具6における回転軸6cの雄螺旋部6dを螺合させて仮組立管1aを回転軸6cにセットする。
次に、作業者は、図示しない溶接開始ボタンを押す。すると、制御盤9は、マニピュレーター8に作動信号を出力し、その信号に基づいて上記マニピュレーター8は上記給油管本体2の他端側の端部に向かってレーザ光Lzが斜め下方に照射されるように加工ヘッド7aを約45度傾斜させ、且つ、加工ヘッド7aを照射方向X1及び筒中心線方向X2に移動させて上記リテーナ3外周面の上記重合部分1cとの隣接領域Rにレーザ光Lzの照射位置を変更させるとともに、レーザ光Lzの焦点位置をずらして所定量デフォーカスさせる。
次いで、制御盤9は、上記回転治具6及び上記レーザ溶接機7に作動信号を出力し、その信号に基づいて上記回転治具6は仮組立管1aを1回転させ、且つ、上記レーザ溶接機7は上記第2出力値9cでレーザ光Lzを照射し、図4に示すように、メッキ層3aを蒸発させて環状の母材剥出部3dを形成する。
しかる後、制御盤9は、マニピュレーター8に作動信号を出力し、その信号に基づいてマニピュレーター8は、図5に示すように、上記加工ヘッド7aを筒中心線方向X2の給油管本体2側に距離L1だけ移動させ、且つ、仮組立管1aの径方向外側に距離L2だけ移動させるとともに、レーザ光Lzの焦点位置をずらして所定量デフォーカスさせる。
その後、上記制御盤9は、上記回転治具6及び上記レーザ溶接機7に作動信号を出力し、その信号に基づいて上記回転治具6は仮組立管1aを1回転させ、且つ、上記レーザ溶接機7は第1出力値9bでレーザ光Lzを照射し、図6に示すように、上記隅角部2bを溶融させて崩れさせる。
そして、上記制御盤9は、上記マニピュレーター8に作動信号を出力し、その信号に基づいて上記マニピュレーター8は加工ヘッド7aを筒中心線方向X2のリテーナ3側に距離L1だけ移動させるとともに仮組立管1aの径方向内側に距離L3だけ移動させて、上記給油管本体2の他端側の端部と上記リテーナ3外周面とが交わっていた部分にレーザ光Lzの焦点位置を移動させる。
その後、上記制御盤9は、上記回転治具6及び上記レーザ溶接機7に作動信号を出力し、その信号に基づいて上記回転治具6は仮組立管1aを1回転させ、且つ、上記レーザ溶接機7は、上記第1出力値9bでレーザ光Lzを照射し、図7に示すように、上記リテーナ3の外周面(母材剥出部3d)を溶融させることにより上記隅角部2bの崩れた部分とリテーナ3の外面側とが環状接合部Wで繋がって接合組立管1bが組み立てられる。
しかる後、上記接合組立管1bに対して図示しないブリーザパイプやリサーキュレーションパイプ等の枝管や車両搭載用のブラケット類をTIG溶接やMIGろう付けなどで組み付けた後、塗装用の前処理を経てカチオン電着塗装や粉体塗装を施して燃料給油管1を完成させる。
以上より、本発明の実施形態によると、メッキ層3aが除去されたリテーナ3の母材剥出部3dと給油管本体2の端部とが溶融して環状接合部Wを形成するので、該環状接合部Wに陥没部やブローホールといったメッキ層2aを起因とした欠陥が発生し難くなり、健全な接合部W1を形成することができる。また、接合箇所に対応する仮組立管1aのメッキ層3aを除去する際、リテーナ3の外周面にのみレーザ光Lzを照射するので、メッキ層3a除去時の熱歪みによる変形は主に第1筒部材にしか発生せず、特許文献1の如きメッキ層3a除去時に2つの部材に熱歪みによる変形が発生する場合に比べて、製造後の部品精度が良くなるとともに、熱歪みが発生しても給油管本体2及びリテーナ3の重合部分1cに発生する隙間を小さくして穴明きの発生を抑制でき、しかも、給油管本体2及びリテーナ3を接合する際に熱歪みにより発生した変形を矯正する矯正治具が必要でなく、治具を簡素化して設備コストを低く抑えることができる。
また、リテーナ3外周面に母材剥出部3dを形成する際、レーザ光Lzを所定量デフォーカスしているので、リテーナ3の外周面に対してレーザ光Lzの照射範囲が広がることで母材剥出部3dの幅が広くなり、接合時にレーザ光Lzの照射位置がばらついても、レーザ光Lzの照射位置が母材剥出部3dからはみ出るということを防止してメッキ層3aの蒸発を起因とした接合部W1の欠陥を確実に発生させないようにできる。また、レーザ光Lzがデフォーカス状態で照射されるので、メッキ層3aを除去する際のリテーナ3外周面に加わるエネルギー密度がさらに小さくなって、リテーナ3に発生する熱歪みによる変形をさらに抑制することができる。
尚、本発明の実施形態では、隣接領域Rのメッキ層3aをレーザ光Lzで蒸発させて母材剥出部3dを形成する工程と、給油管本体2の隅角部2bをレーザ光Lzで溶融させる工程と、上記隅角部2bの崩れた部分とリテーナ3の外周面とを環状接合部Wで繋ぐようレーザ光Lzを照射する工程とで、仮組立管1aを回転治具6でそれぞれ1回転しかさせていないが、それぞれの工程で複数回回転させながらレーザ光Lzを照射するようにしてもよい。
また、本発明の実施形態では、リテーナ3の一端側を給油管本体2の他端側に内嵌合してその重合部分を環状接合部Wで繋いで接合組立管1bを組み立てる場合について説明したが、給油管本体2を本発明の第1筒部材と、リテーナ3を本発明の第2筒部材として給油管本体2の他端側をリテーナ3の一端側に内嵌合してその重合部分を環状接合部Wで繋いで接合組立管1bを組み立てるような場合においても上記接合組立装置5を用いることができる。
また、本発明の実施形態では、内周面及び外周面にメッキ層2aが形成された給油管本体2の他端側に内周面及び外周面にメッキ層3aが形成されたリテーナ3の一端側を内嵌合して互いに接合する場合について述べたが、少なくとも外周面にメッキ層3aが形成されているリテーナ3の他端側を給油管本体2の一端側に内嵌合して接合する際に、本実施形態の接合組立装置5及び接合組立管1bの組立方法を適用することができる。
また、本発明の実施形態では、仮組立管1aの状態で母材剥出部3dを形成しているが、これに限らず、仮組立管1aとなる前のリテーナ3だけを回転軸6cにセットして上記リテーナ3を回転させながらレーザ光Lzを照射して母材剥出部3dを形成し、その後、図示しない嵌合装置でリテーナ3の一端側に給油管本体2の他端側を外嵌合させて仮組立管1aとするようにしてもよい。
本発明は、燃料タンクに燃料を導く燃料給油管を構成する接合組立管を組み立てる接合組立装置及び接合組立管の組立方法に適している。
1 燃料給油管
1a 仮組立管
1b 接合組立管
1c 重合部分
2 給油管本体(第2筒部材)
2a メッキ層
3 リテーナ(第1筒部材)
3a メッキ層
5 接合組立装置
6 回転治具(回転手段)
7 レーザ溶接機
8 マニピュレーター(焦点位置変更手段)
9 制御盤(制御手段)
9a 記憶部
R 隣接領域(環状接合部が形成されるリテーナ外周面の領域)
W 環状接合部
Lz レーザ光